JP2004223819A - 溶融樹脂の流動解析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶融樹脂の流動解析システムにより得られるシミュレーション結果と、成形装置で実際に成形することにより得られる成形結果が異なることによる弊害を除去し、これから新規に設計する金型の溶融樹脂の流動解析の精度を向上させる。
【解決手段】樹脂流路の断面形状が略均一であるテスト用金型モデルを用いて、流動解析システムに実験条件を設定して得たシミュレーション結果と、テスト用金型モデルと略同一のテスト用金型を用いて、実験条件と同一の条件で実際に溶融樹脂を流して得た成形結果とを比較し、溶融樹脂の流れ易さの違いを、樹脂流路における溶融樹脂が流れた距離の差分として求め、流動解析システムで、樹脂温度、金型温度若しくは一次射出圧力の少なくとも一つの実験条件を再設定して差分を無くした再実験条件により、金型内の溶融樹脂の流動解析を行う。
【選択図】なし
【解決手段】樹脂流路の断面形状が略均一であるテスト用金型モデルを用いて、流動解析システムに実験条件を設定して得たシミュレーション結果と、テスト用金型モデルと略同一のテスト用金型を用いて、実験条件と同一の条件で実際に溶融樹脂を流して得た成形結果とを比較し、溶融樹脂の流れ易さの違いを、樹脂流路における溶融樹脂が流れた距離の差分として求め、流動解析システムで、樹脂温度、金型温度若しくは一次射出圧力の少なくとも一つの実験条件を再設定して差分を無くした再実験条件により、金型内の溶融樹脂の流動解析を行う。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂成形用金型内の溶融樹脂の流動解析を行う方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の流動解析システムは、コンピュータ上に解析用モデル(メッシュとよばれる三角形の連続体)に対して、樹脂注入箇所(インジェクションノード)を配置し、実際の成形で用いる樹脂(既にコンピュータに登録済みのもの)と、樹脂温度、金型温度等の登録済みの成形条件により、溶融樹脂の流動状態、発生が予測される製品内部の圧力値、溶融樹脂先端部の樹脂温度等をシミュレーションにて得ることを目的とするものであった。
【0003】
また、従来のガスアシスト成形用の流動解析システムは、溶融樹脂の充填に続き、成形品内部に注入された例えば窒素等の不活性ガスの注入状態をシミュレーションにて得ることを目的とするもので、成形品各部へのガス注入は、成形品内部に設けた例えば断面形状が□6mmの偏肉部分(以下「ガスチャンネル」と称する)に不活性ガスを注入し、ガス充填シミュレーションを行うものであった。このシステムは、充填される溶融樹脂に引き続き不活性ガスが注入されるため、溶融樹脂の充填と、不活性ガスの充填のタイミングを考えることが重要であり、また、ガスアシスト成形は、AGI法、バッテンフェルド法、シンプレス法等、ガス注入プロセス、ガス注入方法、周辺装置等の様々な技術が存在している。こうした背景を考えると、ガスアシスト成形用の流動解析システムは、ガスアシスト成形法の種類、取り扱われる材料及び成形品の要求仕様等により、無数のラインアップを保有する必要があった。
【0004】
これらのCAE(コンピュータ支援技術)を用いた溶融樹脂の流動解析システムにより得られたシミュレーション結果は、シミュレーション条件と同一の条件で実際に成形装置を用いて成形した場合における成形結果と大きく掛け離れたものであるため、シミュレーション結果と、実際に成形装置を用いて得た成形結果を利用して、最適な成形条件を設定することが行われている(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−230006号公報
【特許文献2】
特開平9−272145号公報
【特許文献3】
特開2002−361704号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記した従来技術は、いずれも溶融樹脂の流動解析システムによるシミュレーション結果と実際の成形結果とを用いて既存の金型に対する最適な成形条件を設定する技術に関するものであり、成形装置や成形品に対しても最適な成形条件を設定するものではない。
すなわち、成形するために必須の金型は既に完成しており、金型の修正コストは高価であるため、既存の金型に変更を加えることなく良品を生産するための最適な成形条件を設定しているにすぎない。したがって、最適化した成形条件によっては高圧力、高温度の場合があり、必ずしも成形装置および成形品にとって最適な成形条件とは言えない場合がある。
【0007】
また、前記した従来技術は、溶融樹脂の流動解析システムにより得られたシミュレーション結果を成形装置の成形条件に反映できても、金型の構造に反映させることはできない。すなわち、溶融樹脂の流動解析システムの解析精度がいかに向上しても、そのシミュレーション結果を金型の温度調節回路、金型の表面処理、金型の材質等の最適化に使用することはできない。なぜなら、金型の製造後に、金型の温度調節回路および金型の表面処理を変更することは非常に困難であり、金型の材質変更は不可能だからである。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するものであり、溶融樹脂の流動解析システムにより得られたシミュレーション結果と、成形装置で実際に成形することにより得られた成形結果により、これから新規に製造する金型内の溶融樹脂の流動解析を行う溶融樹脂の流動解析方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の溶融樹脂の流動解析方法は、樹脂流路の断面形状が略均一であるテスト用金型モデルを用いて、流動解析システムに実験条件を設定して得たシミュレーション結果と、テスト用金型モデルと略同一のテスト用金型を用いて実験条件と同一の条件で実際に溶融樹脂を流して得た成形結果とを比較したときの溶融樹脂の流れ易さの違いを、樹脂流路における溶融樹脂が流れた距離の差分として求め、流動解析システムで、樹脂温度、金型温度若しくは一次射出圧力の少なくとも一つの実験条件を再設定して差分を無くした再実験条件により、金型内の溶融樹脂の流動解析を行うものである。
【0010】
前記テスト用金型モデルおよび前記テスト用金型の樹脂流路は、渦巻き形状であることが望ましいが、曲率が異なる曲線形状を有するものであっても良い。
【0011】
【発明の実施の形態】
〔熱可塑性樹脂〕
本発明において、溶融樹脂の材料として使用することができる熱可塑性樹脂としては、一般的に成形に用いられている熱可塑性樹脂であれば種類を問わない。
【0012】
該熱可塑性樹脂を例示すれば、スチレン系単量体を重合せしめてなるポリスチレン系樹脂、例えばポリスチレン(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ニトリル系単量体、・スチレン系単量体との共重合体であるスチレン系樹脂、例えば、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、ニトリル系単量体・スチレン系単量体・ブタジエン系ゴムからなる樹脂、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)等のスチレン系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のエンジニアリングプラスチック、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、塩化ビニル(PVC)等のビニル系樹脂等、あるいは前記熱可塑性樹脂の二種以上の混合物である。
【0013】
なお、本発明の溶融樹脂の材料として特に有用であるのは、ポリスチレン系樹脂、ニトリル系単量体・スチレン系単量体との共重合体、PPE、ABS、AAS(ASA)、AES、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、あるいはABSおよび/またはHIPSを含むPPE、PP、ABSおよび/またはHIPSとPC、PA、PBT、PSF、PEI等の混合物、ポリマーブレンド、またはポリマーアロイである。
以下に前記熱可塑性樹脂のいくつかについて詳細な説明を行う。
【0014】
(スチレン系樹脂)
本発明の対象とするスチレン系樹脂とは、重合体中にスチレン系単量体を少なくとも25重量%以上含有する樹脂であり、スチレン系単量体の単独重合体または該スチレン系単量体の二種以上の共重合体、該スチレン系単量体と該スチレン系単量体と共重合可能な他の単量体の一種または二種以上との共重合体、前記ジエン系ゴムに前記スチレン系単量体の単独もしくは二種以上をグラフト重合せしめたグラフト共重合体、前記スチレン系樹脂と前記ジエン系ゴムとのミクロブレンドあるいはポリマーブレンド等が包含される。
【0015】
前記スチレン系樹脂の代表的なものとしては、スチレン単独重合体であるポリスチレン(PS)、前記ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、オレフィン系ゴムにスチレンをグラフト重合したゴム状重合体とポリスチレンとのブレンドポリマーである耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・α―メチルスチレン共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、スチレン・メチルメタクリレート共重合体、スチレン・エチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体、ジエン系ゴムにアクリロニトリルとスチレンとをグラフト共重合したグラフト共重合体にアクリロニトリル・スチレン共重合体をブレンドしたABS樹脂、塩素化ポリエチレンとアクリロニトリル・スチレン共重合体との混合樹脂であるACS、オレフィン系ゴムにアクリロニトリルとスチレンとをグラフト重合したオレフィン系ゴム含有のアクリロニトリルとスチレンとの3元共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体との混合樹脂であるAES、アクリル系ゴムにアクリロニトリルとスチレンとをグラフト重合したアクリル系ゴム含有のアクリロニトリルとスチレンとの3元共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体との混合樹脂であるAAS、アクリロニトリル・ジメチルシロキサン・スチレン共重合体とアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂との混合樹脂であるASiS、オレフィン系ゴムにスチレンとをグラフト重合したオレフィン系ゴム含有のスチレンとの共重合体とスチレン重合体との混合樹脂(EPDN−PS)アクリル系ゴムにスチレンとをグラフト重合したオレフィン系ゴム含有のスチレンとの共重合体とスチレン重合体との混合樹脂(アクリル−PSで)等がある。
【0016】
(ポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂)
本発明が対象とするPPE系樹脂の代表的なものとしては、2,6−キシレノールを銅触媒で酸化重合して得られるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)があるが、さらに2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテルと2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテルとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体等がある。また前記PPE系樹脂にスチレン系樹脂および/またはアミド系樹脂等で変性したものも本発明のPPE系樹脂に含まれる。
【0017】
(ポリカーボネート(PC)樹脂)
本発明においてPC樹脂は成形(型)用熱可塑性樹脂として単独に使用されることもできるが、主として前記スチレン系樹脂やPPE系樹脂等と混合してポリマーアロイ・ポリマーブレンドとする材料として使用される。
前記PC樹脂(芳香族PC樹脂)としては、芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導されたポリ炭酸エステルであれば特に制限はない。
【0018】
前記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、たとえば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAともいう)、テトラメチルビスフェノールA、テトラブロムルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等を使用することができるが、通常はビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系ジヒドロキシ化合物が選択され、特にビスフェノールA、またはビスフェノールAと他の芳香族ジヒドロキシ化合物との組み合わせが好ましい。
【0019】
(ポリオレフィン系樹脂)
ポリオレフィン系樹脂とは、α−オレフィンの一種または二種以上をラジカル開始剤、金属酸化物系触媒、チーグラー・ナッタ触媒、カミンスキー触媒等を使用して重合することによって得られる樹脂であり、前記樹脂は二種以上混合されてもよい。
前記α−オレフィンはα位に重合性の二重結合を有する直鎖状・分岐状あるいは環状オレフィンであって、通常炭素数2〜8のものが選ばれる。
前記α−オレフィンの具体例としてはエチレンおよびプロピレンがある。
本発明の対象であるポリオレフィン系樹脂には、α−オレフィンと共重合可能な他の単量体が共重合されてもよい。
【0020】
他の単量体としてはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミド等のα−β不飽和有機酸またはその誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;ビニルトリメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシランがあり、さらに1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−4−メチル−1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン(4−エチリデン−2−ノンボルネン)等の非共役ジエンを少量共重合させてもよい。
【0021】
前記ポリオレフィン系樹脂として代表的なものは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等である。
前記ポリオレフィン系樹脂は、単独または二種以上の混合物の状態で成形材料として使用されるが、さらに前記スチレン系樹脂、例えばPS、HIPS、AS、ABS樹脂、PPE系樹脂等の他の熱可塑性樹脂と混合されてもよい。
【0022】
(ポリマーブレンド、ポリマーアロイ)
以上、本発明の成形物に使用される熱可塑性樹脂(成形用熱可塑性樹脂)の代表的なものについて詳細な説明をおこなったが、前記熱可塑性樹脂は二種以上を混合してポリマーブレンドあるいはポリマーアロイとされてもよい。
前記ポリマーブレンドあるいはポリマーアロイはたとえば押出成形機におけるスクリュー混練等によって製造される。
さらに前記成形用熱可塑性樹脂には、耐衝撃性を改良するために、前記ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム等例えば、NR、BR、SBR、STR、IR、CR、CBR、IBR、IBBR、IIR、アクリルゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロブチルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素系ゴム等のゴム類やエチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、塩化ビニル等で代表されるビニル系樹脂、ポリノルボリネン等の他の熱可塑性樹脂が混合されてもよい。
【0023】
さらに前記熱可塑性樹脂の耐衝撃性を改良するためには、熱可塑性エラストマー(TPE)を添加してもよい。該熱可塑性エラストマーとは常温で加硫ゴムの性質を有するが熱可塑性で熱成形可能なものであり、ハードセグメントとソフトセグメントとによって構成されるものである。
該TPEとしては、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ビニル系エラストマー、エステル系エラストマー等がある。
【0024】
〔成形加工法〕
本発明が対象とする成形加工法は、ソリッド成形法(中実射出成形法)以外にも、特殊な成形法である、旭化成工業のAGI、GPI、RFM、CGM、H2M、出光石油化学のGIM、新日鉄化学のPFP、英国のシンプレス、米国のGAIN Technology 独国のエアーモールド,コンツールなどに代表されるガスアシスト成形法(中空射出成形法)や、米国のUCC法、USM法、或いは、東芝機械と旭ダウとが開発したTAF法、EX−CELL−O社法、ヘッティンガーの発泡成形や、New−SF、GCP法、アライドケミカル社の技法等、更に超臨界状態の気態(体)を用いた米国トレクセル社のMuCell(ミューセル)や旭化成工業のAMOTECに代表される発泡成形法(発泡射出成形法)である。
〔ガスアシスト成形法と流動解析システム〕
【0025】
ガスアシスト成形において、不活性ガスは金型内部の溶融樹脂の溶融粘度が低い部分(=樹脂温度が最も高い部分に略一致する)と、圧力が低い部分とを選択して金型内の溶融樹脂内部(あるいは外部)に流れることにより、中空部を形成する。
しかし、ガスアシスト成形用の流動解析システムを用いて、実際に溶融樹脂の流動解析をしてみると、不活性ガスの注入部の近傍に大きな中空部が形成されるとのシミュレーション結果を得る。
つまり、シミュレーション結果と実際の成形結果は一致しない。すなわち、実際にガスアシスト成形を行うと、リブの根元に中空部が形成されるが、シミュレーション結果のように不活性ガスの注入部において中空部が円形に広がることはない。このように、ガスアシスト成形用の流動解析システムが不完全なものであることを容易に実証することができる。
しかし、ガスアシスト成形用の流動解析システムから得られるシミュレーション結果には、有益な情報が含まれている。それは、金型キャビティ内の溶融樹脂の圧力と温度である(図4)。これらの情報から不活性ガスがどの部分を中空にさせるかを推測することができる。
【0026】
流動解析システムを用いて溶融樹脂の流動解析を行うに当たり、シミュレーション結果の信頼性を向上させるには、テスト用金型モデルでのシミュレーション結果と、該テスト用金型モデルと略同一のテスト金型での実際の成形結果の差を無くす必要がある。
具体的には、図1に示した前記テスト用金型モデルと溶融樹脂の流路の断面形状が略同一の前記テスト用金型を用いて実際に溶融樹脂を金型内に流し込み、溶融樹脂が流れた距離L(メルトフローレート、以下「MFR」と称する)を測定し、これを樹脂流路の深さ(成形品の板厚)tで除算した値L/tを、シミュレーション結果から同様にして得た値L/tで除算した値を補正値とし、該補正値が1になるように、樹脂温度等の実験条件を修正することにより行う。
【0027】
〔ガスアシスト成形法〕
シミュレーション結果の信頼性の向上について、ガスアシスト成形を例にして以下に詳細に説明する。
【0028】
(Step1)
成形品のモデルを作成し、テスト金型モデル(冷却回路、ゲート位置と形状、ゲート断面積等)および使用する樹脂(動粘度、ポアソン比等)、成形条件(射出速度、圧力、金型温度等)を実験条件として溶融樹脂の流動解析システムに入力し、テスト金型モデル内の圧力分布、温度分布を把握する。この際に用いるテスト用金型モデルを図1に示す。
【0029】
(Step2)
前記Step1で設定した樹脂、及び成形加工に関わる諸条件を用いて得たシミュレーション結果からL/tを算出する。
【0030】
(Step3)
次に前記テスト金型モデルと略同一の金型モデルを用いて、同一樹脂で、同一の実験条件を設定し、実際に射出成形装置を用いて試験片を成形し、MFRを測定してL/tを求める。この際に実際に成形に用いる場合と同一の不活性ガスの注入条件でノズルから、スプルーランナーからガス注入を行う。
【0031】
(Step4)
前記Step2、及びStep3のL/tが一致していればCEAは信頼性は高いといえる。不一致ならばそれぞれのL/tより補正値(除数)を求め、流動解析システムにおける実験条件を再設定し、補正値が略1になるまで繰り返す。ここで、実験条件の再設定は、実験条件を構成する多くの条件の内、少なくとも樹脂温度、金型温度若しくは一次射出圧力の少なくともいずれかの条件は再設定こととする。当然、前記3つの条件以外の他の条件の再設定を伴ってもよい。
【0032】
(Step5)
Step4で得られた再実験条件を、これから製作する新規の金型を対象とする流動解析システムの解析条件として導入することにより、溶融樹脂の流動解析システムの信頼性は、実成形の補正がなされているので、高めることができる。
【0033】
(Step6)
ガスアシスト成形では、金型キャビティ内の溶融樹脂が略均一な圧力,均一な温度である事が中空率を大きくする事、反り・変形のない成形品が得られる事であるので、前記Step1〜Step5を繰り返し、CAEでのガスアシスト成形法での最適値を求め、金型の製作、成形条件の設定に使用する。
【0034】
〔発泡成形法〕
実際の発泡射出成形では発泡剤を含む事で、溶融樹脂の流動性は中実射出成形の場合に比べ大きくなる。しかも、発泡射出成形の場合は、発泡性溶融樹脂が発泡を、あるいは固化を始める前に金型キャビティ内に充填する必要があるので、成形条件は高速および/または高圧に設定される。この様な場合は以下のSTEPをとり、流動解析システムでのシミュレーション結果と、実際の発泡射出成形での成形結果とを一致させる。
【0035】
(STEP1)
これから新規に製作しようとしている金型の発泡成形の成型条件(金型温度,樹脂温度,射出速度と圧力等)を実験条件として図1に示す形状のテスト用金型モデルを対象に、流動解析システムでのシミュレーション結果も基づいてMFRを求め、L/tを算出する。
【0036】
(STEP2)
STEP2で設定した諸条件を用い、前記テスト用金型モデルと略同一のテスト用金型を用いて実際に成形を行い、MFRを測定してL/tを算出し、差異を確認する。この際使用する樹脂は発泡剤を含む発泡性樹脂を用いることにする。
【0037】
(STEP3)
STEP1とSTEP2との差異から、前記ガスアシスト成形法の場合と同様に、補正値を算出し、流動解析システムでの前記実験条件の再設定を繰り返すことにより、補正値が略1になる再実験条件を求める。ここで、実験条件の再設定は、実験条件を構成する多くの条件の内、少なくとも樹脂温度、金型温度若しくは一次射出圧力の少なくともいずれかの条件は再設定こととする。当然、前記3つの条件以外の他の条件の再設定を伴ってもよい。
【0038】
【実施例】
(実施例1)
A&Mスチレン製GPPS樹脂(HF77)を用い、図1に示したテスト用金型で実際に成形を行ない、MFRを測定した(図2)。同時に溶融樹脂の流動解析システムを用い、図1に示したテスト用金型モデルでシミュレーション上でのMFRを求めた(図3)。それぞれのL/tを算出した結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
以上の結果から、補正値が略1になるように流動解析システムの実験条件を再設定し、圧力の分布が均一となる様なゲート設計、溶融樹脂の温度が均一となるような樹脂温度、金型温度、一次射出圧力を設定し、リブの根元は温度差が有り、しかも圧力は低く、他の平面には略均一な温度バランスを持つようにした。
【0041】
補正値が略1となる前記シミュレーション結果から得た再設定条件に基づき、図4に示した成形品用の金型内の溶融樹脂の流動解析シミュレーションを行い、金型設計に反映させた。該金型を製作し、成形品をガスアシスト成形加工(注入ガスの圧力と時間は、シミュレーションの結果から設定した。)し、中実成形品に比べ5重量%Lossでリブ根元に中空部の形成を確認した。
【0042】
【発明の効果】
溶融樹脂の流動解析システムにより得られたシミュレーション結果と、成形装置で実際に成形することにより得られた成形結果により、溶融樹脂の流動解析システムの信頼性を向上させ、これから新規に製造する金型内の溶融樹脂の流動解析を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いられるテスト用金型モデルの平面図である。
【図2】設定した実験条件でテスト用金型を用いて実際に成形した成形結果を示す平面図である。
【図3】設定した実験条件でテスト用金型モデルを用いてシミュレーションしたシミュレーション結果を示す平面図である。
【図4】金型キャビティー内の圧力分布を示す平面図である。
【符号の説明】
1 溶融樹脂
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂成形用金型内の溶融樹脂の流動解析を行う方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の流動解析システムは、コンピュータ上に解析用モデル(メッシュとよばれる三角形の連続体)に対して、樹脂注入箇所(インジェクションノード)を配置し、実際の成形で用いる樹脂(既にコンピュータに登録済みのもの)と、樹脂温度、金型温度等の登録済みの成形条件により、溶融樹脂の流動状態、発生が予測される製品内部の圧力値、溶融樹脂先端部の樹脂温度等をシミュレーションにて得ることを目的とするものであった。
【0003】
また、従来のガスアシスト成形用の流動解析システムは、溶融樹脂の充填に続き、成形品内部に注入された例えば窒素等の不活性ガスの注入状態をシミュレーションにて得ることを目的とするもので、成形品各部へのガス注入は、成形品内部に設けた例えば断面形状が□6mmの偏肉部分(以下「ガスチャンネル」と称する)に不活性ガスを注入し、ガス充填シミュレーションを行うものであった。このシステムは、充填される溶融樹脂に引き続き不活性ガスが注入されるため、溶融樹脂の充填と、不活性ガスの充填のタイミングを考えることが重要であり、また、ガスアシスト成形は、AGI法、バッテンフェルド法、シンプレス法等、ガス注入プロセス、ガス注入方法、周辺装置等の様々な技術が存在している。こうした背景を考えると、ガスアシスト成形用の流動解析システムは、ガスアシスト成形法の種類、取り扱われる材料及び成形品の要求仕様等により、無数のラインアップを保有する必要があった。
【0004】
これらのCAE(コンピュータ支援技術)を用いた溶融樹脂の流動解析システムにより得られたシミュレーション結果は、シミュレーション条件と同一の条件で実際に成形装置を用いて成形した場合における成形結果と大きく掛け離れたものであるため、シミュレーション結果と、実際に成形装置を用いて得た成形結果を利用して、最適な成形条件を設定することが行われている(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−230006号公報
【特許文献2】
特開平9−272145号公報
【特許文献3】
特開2002−361704号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記した従来技術は、いずれも溶融樹脂の流動解析システムによるシミュレーション結果と実際の成形結果とを用いて既存の金型に対する最適な成形条件を設定する技術に関するものであり、成形装置や成形品に対しても最適な成形条件を設定するものではない。
すなわち、成形するために必須の金型は既に完成しており、金型の修正コストは高価であるため、既存の金型に変更を加えることなく良品を生産するための最適な成形条件を設定しているにすぎない。したがって、最適化した成形条件によっては高圧力、高温度の場合があり、必ずしも成形装置および成形品にとって最適な成形条件とは言えない場合がある。
【0007】
また、前記した従来技術は、溶融樹脂の流動解析システムにより得られたシミュレーション結果を成形装置の成形条件に反映できても、金型の構造に反映させることはできない。すなわち、溶融樹脂の流動解析システムの解析精度がいかに向上しても、そのシミュレーション結果を金型の温度調節回路、金型の表面処理、金型の材質等の最適化に使用することはできない。なぜなら、金型の製造後に、金型の温度調節回路および金型の表面処理を変更することは非常に困難であり、金型の材質変更は不可能だからである。
【0008】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するものであり、溶融樹脂の流動解析システムにより得られたシミュレーション結果と、成形装置で実際に成形することにより得られた成形結果により、これから新規に製造する金型内の溶融樹脂の流動解析を行う溶融樹脂の流動解析方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の溶融樹脂の流動解析方法は、樹脂流路の断面形状が略均一であるテスト用金型モデルを用いて、流動解析システムに実験条件を設定して得たシミュレーション結果と、テスト用金型モデルと略同一のテスト用金型を用いて実験条件と同一の条件で実際に溶融樹脂を流して得た成形結果とを比較したときの溶融樹脂の流れ易さの違いを、樹脂流路における溶融樹脂が流れた距離の差分として求め、流動解析システムで、樹脂温度、金型温度若しくは一次射出圧力の少なくとも一つの実験条件を再設定して差分を無くした再実験条件により、金型内の溶融樹脂の流動解析を行うものである。
【0010】
前記テスト用金型モデルおよび前記テスト用金型の樹脂流路は、渦巻き形状であることが望ましいが、曲率が異なる曲線形状を有するものであっても良い。
【0011】
【発明の実施の形態】
〔熱可塑性樹脂〕
本発明において、溶融樹脂の材料として使用することができる熱可塑性樹脂としては、一般的に成形に用いられている熱可塑性樹脂であれば種類を問わない。
【0012】
該熱可塑性樹脂を例示すれば、スチレン系単量体を重合せしめてなるポリスチレン系樹脂、例えばポリスチレン(PS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ニトリル系単量体、・スチレン系単量体との共重合体であるスチレン系樹脂、例えば、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、ニトリル系単量体・スチレン系単量体・ブタジエン系ゴムからなる樹脂、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)等のスチレン系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のエンジニアリングプラスチック、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、塩化ビニル(PVC)等のビニル系樹脂等、あるいは前記熱可塑性樹脂の二種以上の混合物である。
【0013】
なお、本発明の溶融樹脂の材料として特に有用であるのは、ポリスチレン系樹脂、ニトリル系単量体・スチレン系単量体との共重合体、PPE、ABS、AAS(ASA)、AES、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、あるいはABSおよび/またはHIPSを含むPPE、PP、ABSおよび/またはHIPSとPC、PA、PBT、PSF、PEI等の混合物、ポリマーブレンド、またはポリマーアロイである。
以下に前記熱可塑性樹脂のいくつかについて詳細な説明を行う。
【0014】
(スチレン系樹脂)
本発明の対象とするスチレン系樹脂とは、重合体中にスチレン系単量体を少なくとも25重量%以上含有する樹脂であり、スチレン系単量体の単独重合体または該スチレン系単量体の二種以上の共重合体、該スチレン系単量体と該スチレン系単量体と共重合可能な他の単量体の一種または二種以上との共重合体、前記ジエン系ゴムに前記スチレン系単量体の単独もしくは二種以上をグラフト重合せしめたグラフト共重合体、前記スチレン系樹脂と前記ジエン系ゴムとのミクロブレンドあるいはポリマーブレンド等が包含される。
【0015】
前記スチレン系樹脂の代表的なものとしては、スチレン単独重合体であるポリスチレン(PS)、前記ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、オレフィン系ゴムにスチレンをグラフト重合したゴム状重合体とポリスチレンとのブレンドポリマーである耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・α―メチルスチレン共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、スチレン・メチルメタクリレート共重合体、スチレン・エチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・ブタジエン共重合体、ジエン系ゴムにアクリロニトリルとスチレンとをグラフト共重合したグラフト共重合体にアクリロニトリル・スチレン共重合体をブレンドしたABS樹脂、塩素化ポリエチレンとアクリロニトリル・スチレン共重合体との混合樹脂であるACS、オレフィン系ゴムにアクリロニトリルとスチレンとをグラフト重合したオレフィン系ゴム含有のアクリロニトリルとスチレンとの3元共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体との混合樹脂であるAES、アクリル系ゴムにアクリロニトリルとスチレンとをグラフト重合したアクリル系ゴム含有のアクリロニトリルとスチレンとの3元共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体との混合樹脂であるAAS、アクリロニトリル・ジメチルシロキサン・スチレン共重合体とアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂との混合樹脂であるASiS、オレフィン系ゴムにスチレンとをグラフト重合したオレフィン系ゴム含有のスチレンとの共重合体とスチレン重合体との混合樹脂(EPDN−PS)アクリル系ゴムにスチレンとをグラフト重合したオレフィン系ゴム含有のスチレンとの共重合体とスチレン重合体との混合樹脂(アクリル−PSで)等がある。
【0016】
(ポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂)
本発明が対象とするPPE系樹脂の代表的なものとしては、2,6−キシレノールを銅触媒で酸化重合して得られるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)があるが、さらに2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテルと2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテルとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体等がある。また前記PPE系樹脂にスチレン系樹脂および/またはアミド系樹脂等で変性したものも本発明のPPE系樹脂に含まれる。
【0017】
(ポリカーボネート(PC)樹脂)
本発明においてPC樹脂は成形(型)用熱可塑性樹脂として単独に使用されることもできるが、主として前記スチレン系樹脂やPPE系樹脂等と混合してポリマーアロイ・ポリマーブレンドとする材料として使用される。
前記PC樹脂(芳香族PC樹脂)としては、芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導されたポリ炭酸エステルであれば特に制限はない。
【0018】
前記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、たとえば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAともいう)、テトラメチルビスフェノールA、テトラブロムルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等を使用することができるが、通常はビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系ジヒドロキシ化合物が選択され、特にビスフェノールA、またはビスフェノールAと他の芳香族ジヒドロキシ化合物との組み合わせが好ましい。
【0019】
(ポリオレフィン系樹脂)
ポリオレフィン系樹脂とは、α−オレフィンの一種または二種以上をラジカル開始剤、金属酸化物系触媒、チーグラー・ナッタ触媒、カミンスキー触媒等を使用して重合することによって得られる樹脂であり、前記樹脂は二種以上混合されてもよい。
前記α−オレフィンはα位に重合性の二重結合を有する直鎖状・分岐状あるいは環状オレフィンであって、通常炭素数2〜8のものが選ばれる。
前記α−オレフィンの具体例としてはエチレンおよびプロピレンがある。
本発明の対象であるポリオレフィン系樹脂には、α−オレフィンと共重合可能な他の単量体が共重合されてもよい。
【0020】
他の単量体としてはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、アリールマレイン酸イミド、アルキルマレイン酸イミド等のα−β不飽和有機酸またはその誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル;スチレン、メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;ビニルトリメチルメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシランがあり、さらに1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−4−メチル−1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン(4−エチリデン−2−ノンボルネン)等の非共役ジエンを少量共重合させてもよい。
【0021】
前記ポリオレフィン系樹脂として代表的なものは、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等である。
前記ポリオレフィン系樹脂は、単独または二種以上の混合物の状態で成形材料として使用されるが、さらに前記スチレン系樹脂、例えばPS、HIPS、AS、ABS樹脂、PPE系樹脂等の他の熱可塑性樹脂と混合されてもよい。
【0022】
(ポリマーブレンド、ポリマーアロイ)
以上、本発明の成形物に使用される熱可塑性樹脂(成形用熱可塑性樹脂)の代表的なものについて詳細な説明をおこなったが、前記熱可塑性樹脂は二種以上を混合してポリマーブレンドあるいはポリマーアロイとされてもよい。
前記ポリマーブレンドあるいはポリマーアロイはたとえば押出成形機におけるスクリュー混練等によって製造される。
さらに前記成形用熱可塑性樹脂には、耐衝撃性を改良するために、前記ジエン系ゴム、オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム等例えば、NR、BR、SBR、STR、IR、CR、CBR、IBR、IBBR、IIR、アクリルゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロブチルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素系ゴム等のゴム類やエチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、塩化ビニル等で代表されるビニル系樹脂、ポリノルボリネン等の他の熱可塑性樹脂が混合されてもよい。
【0023】
さらに前記熱可塑性樹脂の耐衝撃性を改良するためには、熱可塑性エラストマー(TPE)を添加してもよい。該熱可塑性エラストマーとは常温で加硫ゴムの性質を有するが熱可塑性で熱成形可能なものであり、ハードセグメントとソフトセグメントとによって構成されるものである。
該TPEとしては、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ビニル系エラストマー、エステル系エラストマー等がある。
【0024】
〔成形加工法〕
本発明が対象とする成形加工法は、ソリッド成形法(中実射出成形法)以外にも、特殊な成形法である、旭化成工業のAGI、GPI、RFM、CGM、H2M、出光石油化学のGIM、新日鉄化学のPFP、英国のシンプレス、米国のGAIN Technology 独国のエアーモールド,コンツールなどに代表されるガスアシスト成形法(中空射出成形法)や、米国のUCC法、USM法、或いは、東芝機械と旭ダウとが開発したTAF法、EX−CELL−O社法、ヘッティンガーの発泡成形や、New−SF、GCP法、アライドケミカル社の技法等、更に超臨界状態の気態(体)を用いた米国トレクセル社のMuCell(ミューセル)や旭化成工業のAMOTECに代表される発泡成形法(発泡射出成形法)である。
〔ガスアシスト成形法と流動解析システム〕
【0025】
ガスアシスト成形において、不活性ガスは金型内部の溶融樹脂の溶融粘度が低い部分(=樹脂温度が最も高い部分に略一致する)と、圧力が低い部分とを選択して金型内の溶融樹脂内部(あるいは外部)に流れることにより、中空部を形成する。
しかし、ガスアシスト成形用の流動解析システムを用いて、実際に溶融樹脂の流動解析をしてみると、不活性ガスの注入部の近傍に大きな中空部が形成されるとのシミュレーション結果を得る。
つまり、シミュレーション結果と実際の成形結果は一致しない。すなわち、実際にガスアシスト成形を行うと、リブの根元に中空部が形成されるが、シミュレーション結果のように不活性ガスの注入部において中空部が円形に広がることはない。このように、ガスアシスト成形用の流動解析システムが不完全なものであることを容易に実証することができる。
しかし、ガスアシスト成形用の流動解析システムから得られるシミュレーション結果には、有益な情報が含まれている。それは、金型キャビティ内の溶融樹脂の圧力と温度である(図4)。これらの情報から不活性ガスがどの部分を中空にさせるかを推測することができる。
【0026】
流動解析システムを用いて溶融樹脂の流動解析を行うに当たり、シミュレーション結果の信頼性を向上させるには、テスト用金型モデルでのシミュレーション結果と、該テスト用金型モデルと略同一のテスト金型での実際の成形結果の差を無くす必要がある。
具体的には、図1に示した前記テスト用金型モデルと溶融樹脂の流路の断面形状が略同一の前記テスト用金型を用いて実際に溶融樹脂を金型内に流し込み、溶融樹脂が流れた距離L(メルトフローレート、以下「MFR」と称する)を測定し、これを樹脂流路の深さ(成形品の板厚)tで除算した値L/tを、シミュレーション結果から同様にして得た値L/tで除算した値を補正値とし、該補正値が1になるように、樹脂温度等の実験条件を修正することにより行う。
【0027】
〔ガスアシスト成形法〕
シミュレーション結果の信頼性の向上について、ガスアシスト成形を例にして以下に詳細に説明する。
【0028】
(Step1)
成形品のモデルを作成し、テスト金型モデル(冷却回路、ゲート位置と形状、ゲート断面積等)および使用する樹脂(動粘度、ポアソン比等)、成形条件(射出速度、圧力、金型温度等)を実験条件として溶融樹脂の流動解析システムに入力し、テスト金型モデル内の圧力分布、温度分布を把握する。この際に用いるテスト用金型モデルを図1に示す。
【0029】
(Step2)
前記Step1で設定した樹脂、及び成形加工に関わる諸条件を用いて得たシミュレーション結果からL/tを算出する。
【0030】
(Step3)
次に前記テスト金型モデルと略同一の金型モデルを用いて、同一樹脂で、同一の実験条件を設定し、実際に射出成形装置を用いて試験片を成形し、MFRを測定してL/tを求める。この際に実際に成形に用いる場合と同一の不活性ガスの注入条件でノズルから、スプルーランナーからガス注入を行う。
【0031】
(Step4)
前記Step2、及びStep3のL/tが一致していればCEAは信頼性は高いといえる。不一致ならばそれぞれのL/tより補正値(除数)を求め、流動解析システムにおける実験条件を再設定し、補正値が略1になるまで繰り返す。ここで、実験条件の再設定は、実験条件を構成する多くの条件の内、少なくとも樹脂温度、金型温度若しくは一次射出圧力の少なくともいずれかの条件は再設定こととする。当然、前記3つの条件以外の他の条件の再設定を伴ってもよい。
【0032】
(Step5)
Step4で得られた再実験条件を、これから製作する新規の金型を対象とする流動解析システムの解析条件として導入することにより、溶融樹脂の流動解析システムの信頼性は、実成形の補正がなされているので、高めることができる。
【0033】
(Step6)
ガスアシスト成形では、金型キャビティ内の溶融樹脂が略均一な圧力,均一な温度である事が中空率を大きくする事、反り・変形のない成形品が得られる事であるので、前記Step1〜Step5を繰り返し、CAEでのガスアシスト成形法での最適値を求め、金型の製作、成形条件の設定に使用する。
【0034】
〔発泡成形法〕
実際の発泡射出成形では発泡剤を含む事で、溶融樹脂の流動性は中実射出成形の場合に比べ大きくなる。しかも、発泡射出成形の場合は、発泡性溶融樹脂が発泡を、あるいは固化を始める前に金型キャビティ内に充填する必要があるので、成形条件は高速および/または高圧に設定される。この様な場合は以下のSTEPをとり、流動解析システムでのシミュレーション結果と、実際の発泡射出成形での成形結果とを一致させる。
【0035】
(STEP1)
これから新規に製作しようとしている金型の発泡成形の成型条件(金型温度,樹脂温度,射出速度と圧力等)を実験条件として図1に示す形状のテスト用金型モデルを対象に、流動解析システムでのシミュレーション結果も基づいてMFRを求め、L/tを算出する。
【0036】
(STEP2)
STEP2で設定した諸条件を用い、前記テスト用金型モデルと略同一のテスト用金型を用いて実際に成形を行い、MFRを測定してL/tを算出し、差異を確認する。この際使用する樹脂は発泡剤を含む発泡性樹脂を用いることにする。
【0037】
(STEP3)
STEP1とSTEP2との差異から、前記ガスアシスト成形法の場合と同様に、補正値を算出し、流動解析システムでの前記実験条件の再設定を繰り返すことにより、補正値が略1になる再実験条件を求める。ここで、実験条件の再設定は、実験条件を構成する多くの条件の内、少なくとも樹脂温度、金型温度若しくは一次射出圧力の少なくともいずれかの条件は再設定こととする。当然、前記3つの条件以外の他の条件の再設定を伴ってもよい。
【0038】
【実施例】
(実施例1)
A&Mスチレン製GPPS樹脂(HF77)を用い、図1に示したテスト用金型で実際に成形を行ない、MFRを測定した(図2)。同時に溶融樹脂の流動解析システムを用い、図1に示したテスト用金型モデルでシミュレーション上でのMFRを求めた(図3)。それぞれのL/tを算出した結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
以上の結果から、補正値が略1になるように流動解析システムの実験条件を再設定し、圧力の分布が均一となる様なゲート設計、溶融樹脂の温度が均一となるような樹脂温度、金型温度、一次射出圧力を設定し、リブの根元は温度差が有り、しかも圧力は低く、他の平面には略均一な温度バランスを持つようにした。
【0041】
補正値が略1となる前記シミュレーション結果から得た再設定条件に基づき、図4に示した成形品用の金型内の溶融樹脂の流動解析シミュレーションを行い、金型設計に反映させた。該金型を製作し、成形品をガスアシスト成形加工(注入ガスの圧力と時間は、シミュレーションの結果から設定した。)し、中実成形品に比べ5重量%Lossでリブ根元に中空部の形成を確認した。
【0042】
【発明の効果】
溶融樹脂の流動解析システムにより得られたシミュレーション結果と、成形装置で実際に成形することにより得られた成形結果により、溶融樹脂の流動解析システムの信頼性を向上させ、これから新規に製造する金型内の溶融樹脂の流動解析を精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いられるテスト用金型モデルの平面図である。
【図2】設定した実験条件でテスト用金型を用いて実際に成形した成形結果を示す平面図である。
【図3】設定した実験条件でテスト用金型モデルを用いてシミュレーションしたシミュレーション結果を示す平面図である。
【図4】金型キャビティー内の圧力分布を示す平面図である。
【符号の説明】
1 溶融樹脂
Claims (3)
- 流動解析システムにより金型内の溶融樹脂の流動解析を行う溶融樹脂の流動解析方法において、
樹脂流路の断面形状が略均一であるテスト用金型モデルを用いて、前記流動解析システムに実験条件を設定して得たシミュレーション結果と、
前記テスト用金型モデルと略同一のテスト用金型を用いて、前記実験条件と同一の条件で実際に溶融樹脂を流して得た成形結果とを比較し、
前記溶融樹脂の流れ易さの違いを、前記樹脂流路における前記溶融樹脂が流れた距離の差分として求め、
前記流動解析システムで、樹脂温度、金型温度若しくは一次射出圧力の少なくとも一つの実験条件を再設定して前記差分を無くした再実験条件により、金型内の溶融樹脂の流動解析を行うことを特徴とする溶融樹脂の流動解析方法。 - 請求項1に記載した溶融樹脂の流動解析方法において、
前記樹脂流路は、渦巻き形状を有することを特徴とする溶融樹脂の流動解析方法。 - 請求項1に記載した溶融樹脂の流動解析方法において、
前記樹脂流路は、曲率が異なる曲線形状を有することを特徴とする溶融樹脂の流動解析方法。
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-
2003
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