JP2020192704A - 熱溶融積層方式三次元造形物 - Google Patents

熱溶融積層方式三次元造形物 Download PDF

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Abstract

【課題】美麗な表面外観を有し、造形物の加工精度にも優れると共に、軋み音が抑制された熱溶融積層方式三次元造形物を提供する。【解決手段】エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる熱溶融積層方式三次元造形物。この熱溶融積層方式三次元造形物の表面粗さRzは100μm以下であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、美麗な表面外観を有し、造形物の加工精度に優れると共に、軋み音が抑制された熱溶融積層方式三次元造形物に関する。
キャド(CAD)上で入力された3次元形状を直接に立体モデル化するシステムはラピッドプロトタイピング(RP)システム、ラッピッドニューファクチャリング(RM)システム等と呼ばれる(以下、これらを纏めて「RPシステム」という)。このRPシステムの中には、使用する熱可塑性樹脂によって決定される所定の温度に維持された恒温室(構築チャンバ)内において、熱可塑性樹脂のストランドを溶融押出して積層する方式(FDM方式)、熱可塑性樹脂の粉末を溶融接着して積層する方式(SLS方式)等がある。
このような熱溶融積層方式三次元造形技術は、従来では困難であった形状や大きさの造形物の製造が可能であり、また、金型を用いずに部品、治具、製品を作ることができることから、幅広い分野で普及している。
このような熱溶融積層方式の三次元造形に使用される熱可塑性樹脂としては、従来、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ABS樹脂と芳香族ポリカーボネート(PC)樹脂から成る組成物などが知られている(例えば特許文献1)。
特表2004−532753号公報
従来、熱溶融積層方式三次元造形に用いられている一般的なABSやPC/ABS組成物では、得られる造形物同士が接触して擦れ合ったときに、軋み音が発生する問題がある。
造形物表面の凹凸が大きいと、接触面積が減ることで摩擦力が低減し、一般的なABSやPC/ABS組成物を用いたものでも軋み音は発生しない場合があるが、表面凹凸が大きいと表面外観が損なわれ、また、造形物の加工精度も劣るものとなる。
即ち、美麗な表面外観とするために造形物の表面粗さを小さくすると、軋み音が問題となり、軋み音を低減するために表面粗さを大きくすると、表面外観、造形物の加工精度が損なわれる。
このように、従来の熱溶融積層方式三次元造形物では、表面外観及び加工精度の向上と軋み音の低減とは二律背反の関係にあり、両者を共に満たすことは困難であった。
本発明は、上記課題に鑑み、美麗な表面外観を有し、造形物の加工精度に優れると共に、軋み音が抑制された熱溶融積層方式三次元造形物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、特定のゴム強化ビニル系樹脂を用いることで、表面粗さRzが小さく、表面外観及び加工精度に優れ、かつ軋み音が抑制された熱溶融積層方式三次元造形物を実現できることを見出した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる熱溶融積層方式三次元造形物。
[2] 前記熱可塑性樹脂組成物が、下記要件Iを満たすことを特徴とする[1]に記載の熱溶融積層方式三次元造形物。
要件I:ZIEGLER社製スティックスリップ測定装置「SSP−02」を用いて、該熱可塑性樹脂組成物により熱溶融積層方式にて三次元造形した、縦60mm、横100mm、厚さ4mmの試験片Aと、縦50mm、横25mm、厚さ4mmの試験片Bを80℃±5℃で300時間エージングした後、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下において、板面同士を以下の(1)〜(4)の荷重と速度の組み合わせで、それぞれ振幅20mmの条件で3回擦り合わせて測定した異音リスク値がすべて3以下である。
(1)荷重5N,速度1mm/秒
(2)荷重5N,速度10mm/秒
(3)荷重40N,速度1mm/秒
(4)荷重40N,速度10mm/秒
[3] 前記造形物の表面粗さRzが100μm以下である[1]又は[2]に記載の熱溶融積層方式三次元造形物。
本発明によれば、美麗な表面外観を有し、造形物の加工精度にも優れると共に、軋み音が抑制された熱溶融積層方式三次元造形物を提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の熱溶融積層方式三次元造形物は、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂を含む樹脂組成物(以下、「本発明の熱可塑性樹脂組成物」と称す場合がある。)からなることを特徴とする。
[熱可塑性樹脂組成物]
まず、本発明の熱可塑性樹脂組成物について説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂(以下、「ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕」又は「成分〔A〕」と称す場合がある。)を含むものである。
尚、本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合又は共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味する。
<ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕>
ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕は、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体(以下、「エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕」又は「成分〔a1〕」と称す場合がある。)の存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体(以下、「ビニル系単量体〔b1〕」又は「成分〔b1〕」と称す場合がある。)を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂(以下、「ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕」又は「成分〔A1〕」と称す場合がある。)の単独であってもよく、成分〔A1〕と、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体(以下、「ビニル系単量体〔b2〕」又は「成分〔b2〕」と称す場合がある。)の(共)重合体(以下、「(共)重合体〔B〕」又は「成分〔B〕」と称す場合がある。)との混合物であってもよい。成分〔B〕は、ゴム質重合体の非存在下に成分〔b2〕の芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られる。
<エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕>
(成分〔a1〕のモノマー組成)
エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕を構成するα−オレフィンとしては、例えば、炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられ、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。α−オレフィンの炭素数は、好ましくは3〜12、より好ましくは3〜8である。α−オレフィンの炭素数が20を超えると共重合性が低下し、成形品の表面外観が十分でなくなる場合がある。好ましいα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられる。これらのうち、より好ましくはプロピレン及び/又は1−ブテン、特に好ましくはプロピレンである。
成分〔a1〕を構成するエチレンとα−オレフィンの質量比は、通常エチレン:α−オレフィン=5〜95:95〜5、好ましくは50〜95:50〜5、より好ましくは60〜95:40〜5、特に好ましくは70〜90:30〜10である。α−オレフィンの質量比が95を超えると、得られるゴム強化ビニル系樹脂〔A〕の耐衝撃性が不十分となる傾向があるので好ましくない。また、α−オレフィンの質量比が5未満でも、成分〔a1〕のゴム弾性が十分でなくなるため、本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が十分でなくなる傾向があるので好ましくない。エチレン及びα−オレフィンの質量比は、重合処方から計算することにより、或いは13C−NMR法で測定すること等により求めることができる。
エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕は、軋み音低減の観点から、通常非共役ジエン成分を含有しないエチレン・α−オレフィン共重合体が用いられるが、必要に応じ、非共役ジエン成分を含有させることも可能である。非共役ジエンとしては、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン(DCP)等が挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
成分〔a1〕が非共役ジエン成分を含む場合、その含有量は、エチレン成分及びα−オレフィン成分の合計を100質量%として、3質量%以下が好ましい。非共役ジエン成分の含有量が3質量%を超えると、成分〔a1〕の結晶性が低下し、軋み音の低減効果が十分でなくなる場合がある。
また、成分〔a1〕のヨウ素価は、通常0〜10、好ましくは0〜5、より好ましくは0〜3である。ヨウ素価が10を超えると、軋み音の低減効果及び高温下に長時間置かれた場合の軋み音低減効果の維持が不十分になる場合がある。
成分〔a1〕のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体が好ましく、エチレン・プロピレン共重合体が特に好ましい。
(成分〔a1〕の物性)
エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕は、引張強さ(T)が0.5〜7MPa、引張伸び(E)が500%以上、硬度(タイプAデュロメータ)が40〜85、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が5〜60であることが好ましい。ここで、引張強さ(T)及び引張伸び(E)は、JIS K6251に準拠して測定される。また、硬度(タイプA型デュロメータ)は、JIS K6253に準拠して測定される。また、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、JIS K6300に準拠して測定される。
成分〔a1〕の引張強さ(T)は、好ましくは0.5〜7MPa、より好ましくは0.5〜5MPa、特に好ましくは0.5〜3MPaである。成分〔a1〕の引張強さ(T)が上記範囲内にあると、軋み音の低減効果に優れる。
成分〔a1〕の引張伸び(E)は、好ましくは500%以上、より好ましくは650%以上、好ましくは750%以上、特に好ましくは800%以上である。成分〔a1〕の引張伸び(E)が500%以上であると、軋み音の低減効果に優れる。成分(a1)の引張伸び(E)の上限は、通常3,000%である。
成分〔a1〕の硬度(タイプAデュロメータ)は、好ましくは40〜85、より好ましくは45〜85、特に好ましくは50〜85である。成分〔a1〕の硬度(タイプAデュロメータ)が上記範囲内にあると、軋み音の低減効果に優れる。
成分〔a1〕のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは5〜60、より好ましくは5〜50、特に好ましくは10〜45である。成分〔a1〕のムーニー粘度(ML1+4、100℃)が上記範囲内にあると、軋み音の低減効果、得られる造形物の表面外観に優れる。
成分〔a1〕は、Tm(融点)が存在することが好ましく、Tmが0℃以上であることが更に好ましい。ここで、Tm(融点)は、DSC(示差走査熱量計)を用い、1分間に20℃の一定昇温速度で吸熱変化を測定し、得られた吸熱パターンのピーク温度を読みとった値であり、詳細は、JIS K7121−1987に記載されている。成分〔a1〕のTm(融点)は、好ましくは0〜120℃、より好ましくは10〜100℃、特に好ましくは20〜80℃である。Tmが0℃未満では、軋み音の低減効果に劣る。尚、DSCの測定において、吸熱変化のピークを明瞭に示さないものは、実質的に結晶性がないものであり、Tmを持たないものと判断し、上記Tmが0℃以上のゴム質重合体には含まれないものとする。よって、Tmが存在しないものも軋み音の低減効果に劣る。
また、成分〔a1〕のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは、−20℃以下であり、より好ましくは、−30℃以下であり、特に好ましくは、−40℃以下である。ガラス転移温度(Tg)が、−20℃を超えると、耐衝撃性が不十分になる場合がある。尚、ガラス転移温度(Tg)は、Tm(融点)の測定と同様に、DSC(示差走査熱量計)を用い、JIS K7121−1987に準拠して求めることができる。
さらに、成分〔a1〕の結晶化度は、通常1〜20%、好ましくは1〜15%、より好ましくは3〜15%である。結晶化度が1%未満では、軋み音の低減効果が十分に得られない場合がある。一方、結晶化度が20%を超えると、耐衝撃性が不十分になったり、ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕の製造が困難になる場合がある。結晶化度は、公知のX線回折法により測定することができる。
(成分〔a1〕の製造方法)
成分〔a1〕のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体は、例えば、特公平06−018942号公報、特公平07−103280号公報に開示されているチーグラー系触媒を用いる方法等、公知の方法により得ることができる。
具体的には、以下のような触媒を用いて次のような製造方法によって好適に得ることができる。
、バナジウム化合物及び/又はチタン化合物と周期律表第I〜IV族の金属の有機金属化触媒成分としては合物との組み合わせからなる触媒が用いられる。
バナジウム化合物としては、不活性有機溶剤に可溶な3〜5価のバナジウム化合物が用いられる。
このバナジウム化合物としては、バナジウムのハライド、オキシハライド、含酸素化合物とのキレート錯体、バナジン酸エステルなどが好ましい。
これらの化合物を具体的に例示すれば、四塩化バナジウム、オキシ三塩化バナジウム、バナジウムトリスアセチルアセトナート、バナジン酸トリエトキシド、バナジン酸トリ−n−ブトキシド、バナジン酸ジ−n−ブトキシモノクロリド、バナジン酸エトキシジクロリド、四塩化バナジウム又はオキシ三塩化バナジウムとアルコールとの反応生成物などが挙げられる。これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの化合物のうちより好ましいものは、四塩化バナジウム、オキシ三塩化バナジウム及びこれらのバナジウム化合物とアルコールとの反応生成物である。
チタン化合物としては、固体又は溶解した三塩化チタン触媒、塩化マグネシウムに担持した三塩化チタン又は四塩化チタン触媒が用いられる。
触媒成分としては、特にバナジウム化合物が好ましい。
周期律表第I〜IV族の金属の有機金属化合物としては、有機リチウム化合物、有機亜鉛化合物、有機マグネシウム化合物及び有機アルミニウム化合物を挙げることができる。そのうち、有機アルミニウム化合物が特に好ましい。
有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−イソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウム、トリ−n−ドデシルアルミニウム、ジエチルモノクロルアルミニウム、ジブチルモノクロルアルミニウム、ジ−n−ヘキシルモノクロルアルミニウム、ジ−n−オクチルモノクロルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロリド、n−ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、n−ブチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、n−ヘキシルアルミニウムジクロリド、n−オクチルアルミニウムジクロリドなどが挙げられる。
また、これらの有機アルミニウム化合物とアルコール、アミンなどとの反応物を使用することもできる。
この場合用いるアルコール、アミンとしては例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチル−ヘキサノール、n−デカノール、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−イソブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−イソブチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、2−エチルヘキシルアミンなどが挙げられる。これらは、有機アルミニウム化合物に対しモル比で0.01〜0.5、好ましくは0.05〜0.2の割合で反応に使用される。
これらの有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウム化合物の反応物は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
重合反応は、通常不活性炭化水素溶媒中で行われる。反応に用いる不活性炭化水素溶媒としては、ペンタン、へキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。尚、これらの炭化水素を構成する水素原子の一部がハロゲン原子で置換された、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、塩化エチレン等であってもよい。これらの炭化水素溶媒は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
重合反応に使用する重合溶媒としては、より具体的には、n−へキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−デカン、シクロヘキサン、塩化メチル、塩化エチル、塩化メチレン、塩化エチレン等の不活性炭化水素溶媒が挙げられる。
重合温度は、通常−50℃〜120℃、好ましくは0〜80℃である。重合温度が−50℃未満では、反応系の冷却に多量のエネルギーが必要で経済的に不利である。一方、重合温度が120℃より高い場合には、重合活性が低下し、さらにα−オレフィンの共重合性が低下するために、成分〔a1〕が得られない場合がある。
エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の製造における重合形態は、スラリー重合、均一溶液重合のどちらでもよい。また重合の反応操作は、回分式又は連続式のどちらでも良い。使用する反応器は、単一又は複数個を直列、又は並列に連結し、各原料オレフィンを別個にあるいは予め混合して導入する。反応系における反応温度の維持は、外部冷却法あるいは溶媒モノマーの蒸発潜熱の利用等によって行なう。また圧力は減圧状態(100Pa程度)から加圧状態(15MPa程度)で行なうことができる。
エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の分子量は、先に述べた触媒組成比、触媒量、触媒種、重合温度を適当に選択することのみによっても制御できるが、さらに水素等の分子量調節剤を用いて行なうことができる。
反応により生成したエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の反応媒体及び未反応モノマーからの分離、用いた触媒の活性停止、触媒残査の除去、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の乾燥及び造粒等の処理は、当該業界で周知な一般的方法で行なうことが可能である。
エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕は、例えば、特許第3518081号公報に開示されているメタロセン触媒を用いる方法によっても得ることができる。メタロセン触媒によれば、有機金属錯体の分子構造、すなわち錯体の配位構造により活性点をデザインすることができ、分子量や組成が非常に均一なポリマーや、従来のチーグラー系触媒では困難であった、炭素数が大きなα−オレフィンとエチレンの共重合ゴム質重合体を製造することができる。
<ビニル系単量体〔b1〕、〔b2〕>
ビニル系単量体とは、不飽和結合を有する重合性化合物であり、本発明に係る成分〔b1〕、〔b2〕のビニル系単量体は、通常芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む。その他、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル、マレイミド化合物等の、他の共重合可能なビニル系単量体、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、オキサゾリン基等の官能基を1種以上有する官能基含有ビニル系単量体を併用してもよい。
成分〔b2〕のビニル系単量体は、成分〔b1〕のビニル系単量体と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
芳香族ビニル化合物としては、少なくとも1つのビニル結合と、少なくとも1つの芳香族環とを有する化合物であれば、特に限定されることなく用いることができる。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、スチレン及びα−メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸エステルが挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。
マレイミド化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、N−シクロヘキシルマレイミド及びN−フェニルマレイミドが好ましい。
尚、マレイミド化合物からなる単量体単位を重合体に導入する方法としては、予め、無水マレイン酸を共重合させ、その後、イミド化する方法がある。
官能基含有ビニル系単量体のうち、カルボキシル基を有するビニル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸無水物基を有するビニル系単量体としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ヒドロキシル基を有するビニル系単量体としては、ヒドロキシスチレン、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アミノ基を有するビニル系単量体としては、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジエチルアミノメチル、アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸アミノエチル、メタクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノメチル、メタクリル酸ジエチルアミノメチル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、p−アミノスチレン、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アクリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アミド基を有するビニル系単量体としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
エポキシ基を有するビニル系単量体としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
オキサゾリン基を有するビニル系単量体としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ビニル系単量体〔b1〕及び〔b2〕は、目的、用途等に応じてその種類及び使用量が選択されるが、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の合計量は、ビニル系単量体全量100質量%に対して、通常30〜100質量%、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%である。上記他の共重合可能なビニル系単量体の含有量は、ビニル系単量体全体100質量%に対して通常0〜70質量%、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜30質量%である。上記官能基含有ビニル系単量体の含有量は、ビニル系単量体全量100質量%に対して、通常0〜40質量%、好ましくは、0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%である。また、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の使用比率(芳香族ビニル化合物/シアン化ビニル化合物)は、これらの合計を100質量%とした場合、通常40〜85質量%/15〜60質量%、好ましくは45〜85質量%/15〜55質量%、特に好ましくは60〜85質量%/15〜40質量%である。
<ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕の製造方法>
(ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕の形態)
ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕は、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕を含有する重合体成分であるが、その含有形態は特に限定されない。
前述の通り、ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕には、通常ビニル系単量体〔b1〕の(共)重合体がエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕にグラフトしているグラフト共重合体である成分〔A1〕と、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕にグラフトしていないビニル系単量体〔b2〕の(共)重合体である成分〔B〕が含まれる。
また、ビニル系単量体の(共)重合体がグラフトしていない、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕が含まれていてもよい。
即ちエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の含有態様には以下の(1),(2)がある。
(1)エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕が、グラフト共重合体として含有される場合
(2)エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕が、未グラフトのゴム質重合体として含有される場合
これらのうち、(1)の態様が特に好ましい。
態様(1)のゴム強化ビニル系樹脂〔A〕としては、以下のものが挙げられる。
[i]上記エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下に、ビニル系単量体〔b1〕を重合して得られたゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕
[ii]上記[i]と、ビニル系単量体〔b2〕の(共)重合体〔B〕とからなる混合物。
これらのうち、ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕中のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の量を自由に調整できる点で[ii]の態様が特に好ましい。
ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕としては、上記[i]及び[ii]の組み合わせであってもよい。
(ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕の製造方法)
ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕を製造する際の重合方法としては、乳化重合、溶液重合、懸濁重合、塊状重合等の公知の重合方法が挙げられる。いずれにおいても、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の存在下に、ビニル系単量体〔b1〕を一括投入して反応させてもよいし、分割又は連続添加して反応させてもよい。また、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕は、全量又は一部を、ビニル系単量体〔b1〕との重合の途中で添加して反応させてもよい。
エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の使用量は、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕とビニル系単量体〔b1〕の合計を100質量%とした場合、通常5〜80質量%、好ましくは10〜70質量%である。
ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕を製造する際の重合方法は、好ましくは乳化重合、溶液重合及び塊状重合、より好ましくは溶液重合であり、これらの方法を組み合わせたものであってもよい。ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕を乳化重合で製造する場合には、通常重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、水等が用いられる。尚、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕がラテックス状でなく、固形状である場合には、再乳化によりラテックス状として使用することができる。
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物と、含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等で代表される還元剤との組み合わせによるレドックス系重合開始剤;過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレイト、tert−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ系重合開始剤等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合開始剤の使用量は、ビニル系単量体〔b1〕に対し、通常0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜1質量%である。
重合開始剤は、通常反応系に一括添加又は連続添加される。
連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ターピノーレン類、α−メチルスチレンのダイマー、テトラエチルチウラムスルフィド、アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコール等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤の使用量は、ビニル系単量体〔b1〕に対し、通常0.05〜2質量%である。
乳化剤としては、アニオン系界面活性剤及びノニオン系界面活性剤が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩;ロジン酸塩、リン酸塩等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型化合物、アルキルエーテル型化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。乳化剤の使用量は、ビニル系単量体〔b1〕に対し、通常0.3〜5質量%である。
乳化重合は、用いるビニル系単量体〔b1〕、重合開始剤等の種類、量に応じ、公知の条件で行うことができる。乳化重合により得られたラテックスは、通常凝固剤により凝固させ、重合体成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩;硫酸、塩酸等の無機酸;酢酸、乳酸、クエン酸等の有機酸等が用いられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、要求される性能に応じて、凝固後にアルカリ成分又は酸成分を添加し中和処理した後、洗浄してもよい。
ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕を溶液重合により製造する場合には、通常溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤等が用いられる。
溶媒としては、公知のラジカル重合で使用される不活性重合溶媒、例えば、エチルベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類;ジクロルメチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等を用いることができる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
重合開始剤としては、ケトンパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、ターピノーレン類、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶液重合は、用いるビニル系単量体〔b1〕、重合開始剤等の種類に応じ、公知の条件で行うことができる。重合温度は、通常80〜140℃の範囲である。尚、溶液重合に際し、重合開始剤を使用せずに製造することもできる。
塊状重合及び懸濁重合による場合も、公知の方法を適用することができる。これらの方法において用いる重合開始剤、連鎖移動剤等は特に制限はないが、乳化重合、溶液重合において例示した化合物と同じものを用いることができる。
(ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕の物性)
ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕のグラフト率は、通常10〜150質量%、好ましくは20〜120質量%、特に好ましくは30〜70質量%である。このグラフト率が10質量%未満では、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕とビニル系単量体〔b1〕の(共)重合体との界面強度が劣るため、耐衝撃性が十分でない場合がある。一方、150質量%を超えると、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕表面におけるビニル系単量体〔b1〕の(共)重合体からなる層が厚くなり、また、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の内部にグラフトしたビニル系単量体〔b1〕の(共)重合体からなる層が発達するため、ゴム弾性が低下し、その結果、耐衝撃性が低下したり、得られる造形物の外観が低下する場合がある。
上記グラフト率は、下記式により求めることができる。
グラフト率(質量%)={(S−T)/T}×100
上記式中、Sはゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕1gをアセトン20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tはゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕1gに含まれるエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の質量(g)である。このエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)により求める方法等により得ることができる。
ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕のグラフト率は、製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、通常0.1〜1.5dl/g、好ましくは0.2〜0.8dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内にあれば、得られる造形物の外観、成形加工性及び耐衝撃性の物性バランスに優れ、好ましい。
なお、極限粘度[η]は以下の方法で測定される。
ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕のアセトン可溶分をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点調製する。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求める。単位は、dl/gである。
ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕の極限粘度は、製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
((共)重合体〔B〕)
(共)重合体〔B〕は、ゴム質重合体の非存在下、ビニル系単量体〔b2〕を、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等の公知の方法で重合することにより製造することができる。上記重合は、重合開始剤を用いない熱重合であってもよいし、重合開始剤を用いる触媒重合であってもよい。
(共)重合体〔B〕の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、通常0.1〜1.5dl/g、好ましくは0.2〜1.0dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内にあれば、成形加工性と耐衝撃性の物性バランスに優れ、好ましい。
この極限粘度[η]は以下の方法で測定される。
(共)重合体〔B〕をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点調製する。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求める。単位は、dl/gである。
(共)重合体〔B〕の極限粘度は、(共)重合体〔B〕の製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成分〔A1〕、所望により成分〔B〕を所定の配合比率で混合し、溶融混練することにより得られる。成分〔A1〕と成分〔B〕の配合量(成分〔A1〕/成分〔B〕)は、成分〔A1〕と成分〔B〕の合計100質量%に対して、好ましくは10〜90質量%/10〜90質量%、より好ましくは20〜80質量%/20〜80質量%である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、部品同士が接触する界面に、ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕中のフリーゴムが存在することで、軋み音発生の原因となるスティックスリップ現象の発生を抑制するもの考えられる。また、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の引張強さ(T)、引張伸び(E)、硬度(タイプAデュロメータ)及びムーニー粘度(ML1+4、100℃)をそれぞれ前述の好適範囲にすることで、部品接触時にゴムが変形し、軋み音発生の原因となるスティックスリップ現象の発生を抑制するもの考えられる。
軋み音発生の原因と考えられるスティックスリップ現象は、従来の摺動試験では評価することが困難であったが、ZIEGLER社製スティックスリップ試験機「SSP−002」を用いることにより評価することが可能である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分の極限粘度[η]は、通常0.1〜1.5dl/g、好ましくは0.3〜0.7dl/gである。極限粘度[η]が上記範囲内にあれば、成形加工性及び耐衝撃性の物性バランスに優れる。
上記極限粘度は、成分〔A1〕及び〔B〕の製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物の極限粘度[η]は以下の方法で測定される。
本発明の熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点調製する。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求める。単位は、dl/gである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体〔a1〕の含有量は、該本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量%に対して好ましくは5〜30質量%であり、より好ましくは5〜25質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。成分〔a1〕の含有量が5質量%未満であると軋み音の低減効果、耐衝撃性に劣り、一方、30質量%を超えると耐熱性が低下する傾向がある。
本発明の本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、充填剤、造核剤、滑剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、老化防止剤、可塑剤、抗菌剤、着色剤等の各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス〔2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,2′−エチリデンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−エチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4′−ビフェニレンジフォスフォナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、2,2′−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルフォスファイト、テトラトリデシル4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジフォスファイト、2,2′−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フルオロフォスファイト、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジラウリル3,3′−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3′−チオジプロピオネート等が挙げられる。
また、高温加工時の熱安定性を図るため、所謂2官能型加工安定剤を配合してもよい。2官能型加工安定剤としては、例えば、特開平7−26107号公報に記載のアクリレート系化合物:2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−ブチル−6−〔1−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルメタクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルメタクリレート等が挙げられる。
本発明においては、フェノール系酸化防止剤にリン系酸化防止剤及び/又はイオウ系酸化防止剤を組合せて使用するのが好ましい。更に、酸化防止剤に官能型加工安定剤を組合せて使用するのが好ましい。
また、本発明においては、不活性及び/又は活性な充填剤材料を使用し、RF遮蔽特性、導電性特性又は高周波不透過特性などを向上させることが出来る。代表的な充填剤としては、ガラスファイバー、カーボンファイバー、カーボンブラック、ガラスマイクロスフェア、炭酸カルシウム、雲母、タルク、シリカ、アルミナ、炭化ケイ素、ケイ灰石、グラファイト、金属及び塩が挙げられる。また、色素又は顔料を使用して着色することも可能である。
上記酸化防止剤及び2官能型加工安定剤の配合割合は、それぞれ、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し、通常0.01〜1質量部、好ましくは0.05〜0.5質量部である。また、充填剤材料の配合量の上限は約20質量%である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中のケイ素含有量は、該熱可塑性樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは0.15質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0.07質量%以下、特に好ましくは0.03質量%以下である。本発明の熱可塑性樹脂組成物中のケイ素含有量が0.15質量%を超えると、同種材からなる接触用部品を組み合わせて用いた場合に軋み音が発生したり、成形外観が不十分になる可能性がある。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、ゴム強化ビニル系樹脂〔A1〕以外の他の樹脂、例えばポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド等を、本発明の目的を損なわない範囲で含有することができる。
特に他の樹脂としてポリカーボネートを用いることは、耐熱性、耐衝撃性の観点から好ましい。また、他の樹脂としてABS樹脂を用いることは、耐衝撃性、流動性の観点から好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物がゴム強化ビニル系樹脂〔A〕以外の他の樹脂を含有する場合、その含有量はゴム強化ビニル系樹脂〔A〕と他の樹脂との合計100質量%中に80質量%以下、特に60質量%以下であることが軋み音の抑制効果の面で好ましい。
ただし、本発明の熱可塑性樹脂組成物が他の樹脂としてABS樹脂及び/又はポリカーボネートを含有する場合は、ゴム強化ビニル系樹脂〔A〕とABS樹脂及び/又はポリカーボネートとの合計100質量%中にゴム強化ビニル系樹脂〔A〕を20〜80質量%、ABS樹脂及び/又はポリカーボネートを80〜20質量%含むことが軋み音低減の観点から好ましい。
本発明の本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各成分を所定の配合比で、タンブラーミキサーやヘンシェルミキサーなどで混合した後、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等の混合機を用いて、適当な条件下で溶融混練して製造することができる。好ましい混練機は、二軸押出機である。さらに、それぞれの成分を混練するに際しては、それぞれの成分を一括して混練しても、多段、分割配合して混練してもよい。尚、バンバリーミキサー、ニーダー等で混練した後、押出機によりペレット化することもできる。また、充填材のうち繊維状のものは、混練中での切断を防止するためにサイドフィーダーにより押出機の途中から供給する方が好ましい。溶融混練温度は、通常200〜300℃、好ましくは220〜280℃である。
本発明の熱溶解造形用熱可塑性樹脂組成物のISO 1133に準拠し、温度220℃、荷重10kgの条件下に測定したメルトフローレート(MFR)は、通常5〜100g/10min、好ましくは10〜80g/10minである。MFRが5g/10min未満の場合は、FDM方式でモデルを構築する際、後述するフィラメントが形成できないか或いは連続ロード(溶融ストランド)が得られずにモデルの構築ができないことがあり、更に、モデル表面の外観が低下することがある。これらの問題は、樹脂組成物の溶融温度や構築チャンバー内の温度を上げることによって解決し得る場合もあるが、モデリング材料の初期の色調が変化して黄色や褐色に造形物が着色するという問題が惹起される。MFRが100g/10minを超える場合は、後述するフィラメントが形成できない、形成されたフィラメントが切れる、連続ロード(溶融ストランド)が得られない等によりモデルの構築ができないことがある。
<異音リスク値>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、下記要件Iを満たすことが好ましく、下記要件Iを満たすことで、表面粗さRzの小さい造形物において、軋み音を効果的に抑制することができる。以下の異音リスク値は3以下が好ましいが、より好ましくは2以下である。
要件I:ZIEGLER社製スティックスリップ測定装置「SSP−02」を用いて、該熱可塑性樹脂組成物により熱溶融積層方式にて三次元造形した、縦60mm、横100mm、厚さ4mmの試験片Aと、縦50mm、横25mm、厚さ4mmの試験片Bを80℃±5℃で300時間エージングした後、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下において、板面同士を以下の(1)〜(4)の荷重と速度の組み合わせで、それぞれ振幅20mmの条件で3回擦り合わせて測定した異音リスク値がすべて3以下である。
(1)荷重5N,速度1mm/秒
(2)荷重5N,速度10mm/秒
(3)荷重40N,速度1mm/秒
(4)荷重40N,速度10mm/秒
より具体的な異音リスク値の測定方法は、後述の実施例の項に示す通りである。
[熱溶融積層方式三次元造形]
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いる熱溶融積層方式三次元造形法による造形物の製造は、常法に従って行うことができる。
即ち、熱溶融積層方式三次元造形には、FDM方式やSLS方式があるが、CAD上で入力された3次元形状を直接に立体モデル化するRPシステムそれ自体は、公知の方法を採用することが出来る。なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、FDM方式ではフィラメント化して使用され、SLS方式では粒状化して使用される。通常フィラメントの直径は1〜3mm、粒子の直径は0.01〜0.5mmである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物から造形用フィラメントを製造する方法は特に限定されないが、例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物を、成形機のダイス孔より溶融ストランドとして押出し、冷却水槽に導いてストランドを得る押出し工程、ストランドを加熱延伸してフィラメントを得る延伸工程、延伸したフィラメントを巻き取る巻き取り工程を有する方法が挙げられる。得られたフィラメントを用いて材料押出堆積法等の公知の成形法により造形物を製造することができる。
例えばFDM方式によって複雑の形状を形成する場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物(モデリング材料)と共に「支持材料」と呼ばれる物質が使用される。モデリング材料及び支持材料は、両方の材料(フィラメント)が同じ構築チャンバ内に首尾良く押し出され得るように、同じ熱変形特性を有するべきである。勿論、支持材料は造形後にモデリング材料から容易に除去し得る様な特性(例えば非相溶性)を有する必要がある。本発明の熱可塑性樹脂組成物(モデリング材料)と共に使用し得る支持材料の一例としては、ポリフェニレンエーテル40〜80重量%とポリスチレン20〜60重量%から成る耐衝撃性ポリスチレン系組成物が挙げられる。
[熱溶融積層方式三次元造形物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いて熱溶融積層方式三次元造形により製造された本発明の熱溶融積層方式三次元造形物(以下、「本発明の造形物」と称す場合がある。)は、その表面の表面粗さRzが100μm以下であることが好ましい。
即ち、本発明の熱溶融積層方式三次元造形物は、表面粗さRz100μm以下というような優れた平滑表面を有する造形物において、軋み音を低減することができるものであり、表面粗さRz100μm以下であることにより、表面外観、加工精度に優れたものとすることができる。造形物の表面外観、加工精度の観点から表面粗さRzは特に95μm以下、とりわけ90μm以下であることが好ましい。
なお、ここで、表面粗さRzが100μm以下となる面とは、少なくとも本発明の造形物の意匠面である。
なお、造形物の表面粗さRzは後述の実施例の項に記載の方法で測定される。
[接触用部品]
本発明の熱溶融積層方式三次元造形物は、その軋み音抑制効果から、特に接触用部品として好適に用いられる。
本発明の造形物よりなる接触用部品としては、部品同士が接触、接合、嵌合する箇所を有する自動車用部品、事務用機器、住宅用部品、家電用部品等における各種構造体が挙げられる。
自動車用部品においては、例えば車両走行時の振動により、部品同士が接触し、擦れ合うことにより発生する軋み音を大幅に低減させることが可能である。このような自動車用部品としてはドア(例えば、ドアトリム(内張りパネル全体)、ドアライニング(ハンドル回りのパネル)、ドアポケット、インサイドドアハンドル(ドアノブ)、グラブハンドル、アウトサイドドアハンドル、ハンドルグリップ、アシストグリップなど)、コンソール(例えば、A/Tインジケーターパネル、オーバーヘッドコンソール、眼鏡ケース、コンソールパネル、コンソールリッド(蓋の裏側)、コンソールボックス(蓋をあけた箱部分)など)、ベンチレーター、エアコン(例えば、板状羽根(ルーバー)、吹き出し口、ダクト、バルブシャッター、グリルフロントデフロスター、グリルサイドデフロスターなど)、メーター(例えば、メーターバイザー、メーターパネル、メーターケースなど)、インパネ(例えば、インパネアッパーガーニッシュ、インパネロアガーニッシュ(カバーインストロアー)、クロックインジケーター、センターパネル、リッドクラスター、ヒートコントロールパネルなど)、マスク類(例えば、マスクスイッチ、マスクラジオなど)、グローブボックス、ポケット類(例えば、ポケットデッキ、ポケットカードなど)、ステアリングホイール(例えば、ステアリングホイールホーンパッド)、カップホルダー、スイッチ部品(例えば、スイッチボックス、スイッチベゼル、スイッチノブ、スイッチボディスイッチケースなど)、カーナビゲーション(例えば、ナビパネル、ナビケース、外装など)、リアエンターテイメントシステム(例えば、リアディスプレイパネルなど)、サンバイザー、ルームミラー(例えば、ルームミラーケースなど)、ルームランプ(例えば、ルームランプケース、パネルなど)、アームレスト、スピーカー、ETCケース、間接照明ケース(例えば、室内足元周辺、ドア周辺、インパネ周辺、ポケット内など)、ピラーガーニッシュ、グリル、スポイラー、ドアミラー、アウトサイドドアハンドル等を挙げることができる。その中でも、ベンチレータ、エアコンの板状羽根、バルブシャッター、スイッチ部品、カーナビゲーション用外装部品等として特に好適に用いることができる。
事務用機器部品においては、例えば機器作動時の振動、デスク引き出しの開閉により、他の部品と接触し、擦れ合うことにより発生する軋み音を大幅に低減させることが可能である。このような事務用機器部品としては、外装部品、内装部品、スイッチまわりの部品、可動部の部品、デスクロック部品(鍵の中の棒状部品(ロック機構部品))、デスク引き出し、複写機の紙用トレイ等に好適に用いることができる。
住宅用部品においては、例えば扉、引き戸の開閉により、他の部品と接触し、擦れ合うことにより発生する軋み音を大幅に低減させることが可能である。このような住宅用部品としては、シェルフ扉、チェアダンパー、テーブル折りたたみ脚可動部品、扉開閉ダンパー、引き戸レール、カーテンレール、折れ戸のガイドレール、ユニットバスの目地部分等に好適に用いることができる。
家電用部品においては、例えば機器作動時の振動により、他の部品と接触し、擦れ合うことにより発生する軋み音を大幅に低減させることが可能である。このような家電用部品としては、ケース、ハウジング等の外装部品、内装部品、スイッチまわりの部品、可動部の部品等が挙げられ、除湿機のモニターカメラ、エアコン(例えば、エアコンバックカバー、エアコンフィルターハウジング、銅管固定部品(ヘアピンホルダー))に好適に用いることができる。
光学機器としては、カメラのレンズキャップ等、家庭用音響機器としてはヘッドフォンイヤージョイント部等が挙げられる。
このような接触用部品の少なくとも2個を接触するように組み付けて構造体とすることができる。この構造体は、本発明の熱溶融積層方式三次元造形物よりなる接触用部品を含むものであり、好ましくは、全ての接触用部品が本発明の熱溶融積層方式三次元造形物よりなる。
構造体に含まれる接触用部品の素材の組み合わせには特に制限はなく、例えば、本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなる接触用部品同士、或いは本発明の熱可塑性樹脂組成物よりなる接触用部品と、本発明の熱可塑性樹脂組成物とは異なる熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂組成物、ゴム、有機質材料、無機質材料、金属材料等よりなる接触用部品との組み合わせが挙げられるが、特に、少なくとも2個の接触用部品同士が本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる場合に効果的であり、更に、接触用部品の全てが本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる場合により一層効果的である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物以外の熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、PMMA、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、EVA、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート(PC)、ポリ乳酸、PC/ABS、PC/AES、PA/ABS、PA/AES等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上の組み合わせで使用できる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
ゴムとしては、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、SEBS、SBS、SIS等の各種合成ゴム、天然ゴム等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
有機質材料としては、例えば、インシュレーションボード、MDF(中質繊維板)、ハードボード、パーティクルボード、ランバーコア、LVL(単板積層材)、OSB(配向性ボード)、PSL(パララム)、WB(ウェハーボード)、硬質繊維板、軟質繊維板、ランバーコア合板、ボードコア合板、特殊コア−合板、ベニアコア−ベニヤ板、タップ樹脂を含浸させた紙の積層シート・板、(古)紙等を砕いた細かい小片・線状体に接着剤を混合して加熱圧縮したボード、各種の木材等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
無機質材料としては、例えば、ケイ酸カルシウムボード、フレキシブルボード、ホモセメントボード、石膏ボード、シージング石膏ボード、強化石膏ボード、石膏ラスボード、化粧石膏ボード、複合石膏ボード、各種セラミック、ガラス等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
更に、金属材料としては、鉄、アルミニウム、銅、各種の合金等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何等制約されるものではない。尚、以下の実施例中、部及び%は特に断らない限り質量基準である。
[評価方法]
<ムーニー粘度(ML1+4、100℃)>
JIS K6300に準拠し,測定温度100℃、予熱1分、測定4分の条件で測定した。
<引張強さ(T)・引張伸び(E)>
JIS K6251に準拠し、3号型試験片を用い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で、引張強さ(T)(MPa)及び引張伸び(E)(%)を測定した。
<硬度(タイプAデュロメータ)>
JIS K6253に準拠して測定した。
<グラフト率>
前記方法を用いて測定した。
<極限粘度>
前記方法を用いて測定した。
<軋み音評価(異音リスク値)>
後述の実施例における方法で、熱溶融積層方式三次元造形法により、縦60mm、横100mm、厚さ4mmの試験片Aと縦50mm、横25mm、厚さ4mmの試験片Bを製造した。
2枚の試験片A,Bを80℃±5℃に調整したオーブンで300時間エージングした後、25℃で24時間冷却後、大きい方の試験片Aと小さい方の試験片BをZIEGLER社製スティックスリップ試験機「SSP−02」に固定し、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で、以下の(1)〜(4)の荷重と速度の4条件の組み合わせにて、振幅2mmで3回擦り合わせたときの異音リスク値を測定した。
そして、異音リスク値が最も大きい条件の数値を抽出して測定値とした。
異音リスク値が大きいほど軋み音の発生リスクは高くなり、異音リスク値が3以下であれば良好である。
(1)荷重5N,速度1mm/秒
(2)荷重5N,速度10mm/秒
(3)荷重40N,速度1mm/秒
(4)荷重40N,速度10mm/秒
<表面粗さRz>
OLYMPUS製レーザー顕微鏡「LEXT OLS4000」を用いて、試験片Aの異音リスク値測定面(ただし、異音リスク値測定前)について、表面粗さRzを測定した。
[製造例1:エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体の製造]
チッ素置換した20Lオートクレーブにトルエン8L、トルエン40mlに溶解したアルミニウム原子換算で60mmolのメチルアルミノキサンを加え、40℃に昇温した後、エチレンを3.2L/時間、プロピレンを2.0L/時間で連続的に供給した。
次いで、トルエン12ml中に溶解したジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド12μmolを添加して重合を開始した。
反応中は温度を40℃に保ち、連続的にエチレン、プロピレンを供給しつつ、20分間反応させた。その後、メタノールを添加して反応を停止させ、水蒸気蒸留にてクラム状のエチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体(EP−1)を得た。
エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体(EP−1)の物性は以下の通りであった。
α−オレフィン種:プロピレン
α−オレフィン含量:22(質量%)
引張強さ(T):2.9(MPa)
引張伸び(T):1000(%)
硬度(タイプAデュロメータ):73
ムーニー粘度(ML1+4、100℃):19
MFR(230℃、2.16kgf):3.6(g/10min)
結晶化度(X線回折法):11(%)
融点(Tm):41(℃)
ガラス転移温度(Tg):−50(℃)
[製造例2:エチレン・α−オレフィン系ゴム強化ビニル系樹脂の製造]
リボン型攪拌機翼、助剤連続添加装置、温度計などを装備した容積20リットルのステンレス製オートクレーブに、エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体(EP−1)22部、スチレン55部、アクリロニトリル23部、t−ドデシルメルカプタン0.5部、トルエン110部を仕込み、内温を75℃に昇温して、オートクレーブ内容物を1時間攪拌して均一溶液とした。その後、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.5部を添加し、内温を更に昇温して、100℃に達した後は、この温度を保持しながら、攪拌回転数100rpmとして重合反応を行った。重合反応開始後4時間目から、内温を120℃に昇温し、この温度を保持しながら更に2時間反応を行って重合反応を終了した。その後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部、ジメチルシリコーンオイル;KF−96−100cSt(商品名:信越シリコーン株式会社製)0.02部を添加した後、反応混合物をオートクレーブより抜き出し、水蒸気蒸留により未反応物と溶媒を留去し、さらに40mmφベント付き押出機(シリンダー温度220℃、真空度760mmHg)を用いて揮発分を実質的に脱気させ、ペレット化して、エチレン・α−オレフィン系ゴム強化ビニル系樹脂(AES−1)(後掲の表1では「AES−1」と表記)を得た。
エチレン・α−オレフィン系ゴム強化ビニル系樹脂(AES−1)のグラフト率は41質量%で、アセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は0.42dl/gであった。
[製造例3:共重合体の製造]
リボン翼を備えたジャケット付き重合用反応器を、2基連結した合成装置を用いた。各反応器内に、窒素ガスをパージした後、1基目の反応器に、スチレン73部、アクリロニトリル27部及びトルエン20部からなる混合物と、分子量調節剤であるtert−ドデシルメルカプタン0.15部をトルエン5部に溶解した溶液と、重合開始剤であるジクミルパーオキサイド0.1部をトルエン5部に溶解した溶液とを連続的に供給し、110℃で重合を行った。供給した単量体等の平均滞留時間は2時間であり、2時間後の重合転化率は56%であった。
次いで、得られた重合体溶液を、1基目の反応器の外部に設けられたポンプにより、連続的に取り出して、2基目の反応器に供給した。連続的に取り出す量は、1基目の反応器に供給する量と同じである。尚、2基目の反応器においては、130℃で2時間重合を行い、2時間後の重合転化率は74%であった。
その後、2基目の反応器から、重合体溶液を回収し、これを、2軸3段ベント付き押出機に導入した。そして、直接、未反応単量体及びトルエン(重合用溶媒)を脱揮し、スチレン・アクリロニトリル共重合体(AS−1)(後掲の表1では「AS−1)と表記)を回収した。このスチレン・アクリロニトリル共重合体(AS−1)の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.60dl/gであった。
[製造例4:ジエン系ゴム強化ビニル系樹脂の製造]
攪拌機付き重合器に、水280部及びジエン系ゴム質重合体として、重量平均粒子径0.26μm、ゲル分率90%のポリブタジエンラテックス60部(固形分換算)、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部、硫酸第一鉄0.0025部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01部を仕込み、脱酸素後、窒素気流中で攪拌しながら60℃に加熱した後、アクリロニトリル10部、スチレン30部、t−ドデシルメルカプタン0.2部、クメンハイドロパーオキサイド0.3部からなる単量体混合物を60℃で5時間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合温度を65℃にし、1時間攪拌続けた後、重合を終了させ、グラフト共重合体のラテックスを得た。重合転化率は98%であった。その後、得られたラテックスに、2,2′−メチレン−ビス(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し、塩化カルシウムを添加して凝固し、洗浄、濾過及び乾燥工程を経てパウダー状のジエン系ゴム強化ビニル系樹脂(ABS−1)(後掲の表1では「ABS−1」と表記)を得た。得られたジエン系ゴム強化ビニル系樹脂(ABS−1)の極限粘度は0.38dl/gであった。
[実施例1〜6及び比較例1、2]
表1に記載の配合割合で、各成分をそれぞれヘンシェルミキサーにより混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製、TEX44α、バレル設定温度250℃)で溶融混練し、ペレット化することにより本発明の熱可塑性樹脂組成物を得た。
なお、ポリカーボネート(後掲の表1では「PC」と表記)としては三菱エンジニアリングプラスチック社製ポリカーボネート樹脂「NOVAREX 7022J」を用いた。
また、得られた熱可塑性樹脂組成物を株式会社テクノベル製の小型二軸押出機KZW15TW-30mg-NHのダイス孔より溶融ストランドとして押出し、冷却水槽に導いてストランドを得、このストランドを5.1m/minの速度で加熱延伸して直径1.75mmのフィラメントとして巻き取った。
得られたフィラメントを用いて、日本3Dプリンター社の3Dプリンター 機種「Raise3D N2」を用いて前述の試験片Aと試験片Bを製造した。
このとき、形状データをAutodesk Inventerで作成、Raide3D用スライサーソフトideamakerにて形状データを縦置きに配置し、Ideamakerの造形条件設定で積層ピッチを任意に設定して(粗)0.25mmから(細)0.15mmの間で変更して形状の内部充填率100%の造形条件に設定してプリンターで造形することで、表面粗さRzの異なる試験片を得た。
得られた試験片A,Bを用いて、異音リスク値の評価を行った。また、試験片Aの表面粗さRzを測定した。
これらの結果を表1に示す。
Figure 2020192704
表1より、AES−1を含む、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いた実施例1〜6の造形物は、AES−1を用いていない比較例1,2に比べて表面粗さRzが小さくても異音リスク値が小さいことが分かる。

Claims (3)

  1. エチレン・α−オレフィン系ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られるゴム強化ビニル系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなる熱溶融積層方式三次元造形物。
  2. 前記熱可塑性樹脂組成物が、下記要件Iを満たすことを特徴とする請求項1に記載の熱溶融積層方式三次元造形物。
    要件I:ZIEGLER社製スティックスリップ測定装置「SSP−02」を用いて、該熱可塑性樹脂組成物により熱溶融積層方式にて三次元造形した、縦60mm、横100mm、厚さ4mmの試験片Aと、縦50mm、横25mm、厚さ4mmの試験片Bを80℃±5℃で300時間エージングした後、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下において、板面同士を以下の(1)〜(4)の荷重と速度の組み合わせで、それぞれ振幅20mmの条件で3回擦り合わせて測定した異音リスク値がすべて3以下である。
    (1)荷重5N,速度1mm/秒
    (2)荷重5N,速度10mm/秒
    (3)荷重40N,速度1mm/秒
    (4)荷重40N,速度10mm/秒
  3. 前記造形物の表面粗さRzが100μm以下である請求項1又は2に記載の熱溶融積層方式三次元造形物。
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