本発明は、光回路に関し、より詳細には、2次元的な屈折率分布に応じた多重散乱によりホログラフィックに波動を伝達させる媒体(ホログラフィック波動伝達媒体)を用いた光回路に関する。
光通信などの技術分野においては、光の分岐・干渉を容易に実現するための光回路を構成するために、光導波路構造を利用した集積光部品が開発されてきた。このような波動としての性質を利用した集積光部品は、光導波路長などを調整したり光干渉計等の作製を容易化したりすることを可能とし、さらに、半導体分野における回路加工技術を適用することで、光部品の集積化も可能となる。
しかしながら、このような光導波路回路においては、光導波路中を伝搬する光を屈折率の空間的分布を利用して空間的な光閉じ込めを実現する「光閉じ込め構造」により光回路の各構成要素を構成するために、光配線などを用いた縦列的な回路設計が必要となる。このため、光導波路回路の光路長は、光回路内で干渉現象などを生じさせるために求められる光路長よりも長くならざるを得ず、その結果、光回路そのものが極めて大型になってしまうという問題があった。
たとえば、典型的なアレイ導波路格子を例にとると、入力ポートから入力された複数の波長(λj)の光はスラブ導波路を有するスターカプラにより分波・合波を繰り返し、分波された光が出力ポートから出力されるが、波長の千分の1程度の分解能で光を分波するために要する光路長は、導波路を伝搬する光の波長の数万倍となる。また、光回路の導波路パターンニングをはじめとして、偏光状態に依存する回路特性を補正するための波長板などを設けるための加工も施す必要がある。(例えば、非特許文献1参照)。
また、光回路の小型化のためには光を導波路中に強く閉じ込める必要があるために、屈折率の空間的分布により光閉じ込め状態を制御するためには極めて大きな屈折率差を光導波路中にもたせることが必要とされ、例えば従来のステップインデクッス型の光導波路では、比屈折率差が0.1%よりも大きな値となるような屈折率の空間的分布を有するように光導波路が設計されていた。このような大きな屈折率差を利用して光閉じ込めを行うこととすると、回路構成の自由度が制限されてしまうという問題が生じる。特に、光導波路中での屈折率差を、局所的な紫外線照射、熱光学効果や電気光学効果などにより実現しようとする場合には、得られる屈折率の変化量は高々0.1%程度である場合が多く、光の伝搬方向を変化させる場合には光導波路の光路にそって徐々に向きを変化させざるを得ず、光回路長は必然的に極めて長いものとなってしまい、その結果として光回路の小型化が困難になってしまう。
さらに、グレーティング様の回路を光導波路回路に付与した回路は光の伝搬方向に対して概ね平行な向きの周期構造もしくは誘電体屈折率の周期変化により光回路を構成し、かつ、実際の設計においては概ねフーリエ変換で評価可能な強い周期性を有する構造もしくは周期性を僅かに歪ませたチャープ構造により光回路の特性を得ているために、波面に対して概ね均一な構造となって伝搬方向に垂直な方向(波面に沿った方向)での光制御が困難となる。例えば、非特許文献2に開示されている光回路では、光回路中で反射することなく透過する光は回路中に広がってしまい信号光として利用することができない。また、分岐回路のように伝搬方向に垂直な方向へ大きくスポット位置を変化させる回路では、光が形成する「場」(フィールド)を伝搬方向と垂直方向に大きく広げる必要があり回路が大きくならざるを得ない。さらに、実際の回路の設計においても、ファイバグレーティングのような従来の1次元のグレーティング回路の設計方法とほぼ等価な設計方法しか実現できないために、周期性の強い構造(すなわち、伝搬方向の波数に依存した光回路)に限定され、回路規模が大きくなり、波長に敏感になり易く、入出力の位置が波長の順に連続的に分布してしまうなど、設計の自由度が低い回路に限定されるという問題があった。
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本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、従来の光導波路回路や平面ホログラフィック回路を用いた光回路よりも小型で、光の入出力を可能な限り自由に設定でき、さらに、緩やかな屈折率分布(小さな高低差)でも充分に高効率の光信号制御を可能とする波動伝達媒体を用いることにより、高効率で小型の光回路を実現することにある。
本発明は、このような課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、基板上に、導波領域が設けられている光回路であって、空間的に広がりを有する所望の光入出力に対して伝搬方向に垂直な断面を考えて、そのフィールドの断面が与えられるべき回路上の場所をポートと呼ぶときに、前記導波領域は、入力ポートからの入射光が多重散乱しながらホログラフィックに伝搬して出力ポート位置に集光される空間的屈折率分布を有するとともに、前記基板の表面と平行なxz平面内に設けられた仮想的なメッシュにより画定される領域に対応した仮想的なピクセルに分割されており、当該ピクセルの各々の屈折率は、前記導波領域内における空間的屈折率分布の要素を成すとともに、前記基板に対して垂直方向に光を閉じ込めるように決定されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光回路において、前記の仮想的なメッシュは、周期的な繰り返しにより前記導波領域を形成する単位格子の構成要素であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の光回路において、前記単位格子は、準周期構造を形成する形状を有するものであることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の光回路において、前記ピクセルが取り得る屈折率値は2値化されており、高屈折率(nH)または低屈折率(nL)の何れかであることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の光回路において、前記高屈折率を有するピクセルのサイズは、前記導波領域内を伝搬する光の波長以下に設定されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の光回路において、(λq)/(πna)で与えられる値が0.1以下であることを特徴とする。ここで、λ:伝搬光波長、n:高屈折率を有するピクセルの屈折率値(nH)、a:高屈折率を有するピクセルの高さ、q:伝搬光のフィールド分布の放射成分の平均距離をzとしたときq=(z/a)で与えられる係数である。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の何れかに記載の光回路において、前記高屈折率を有するピクセルはn角形(nは3以上の整数)の多角形状を有し、当該の何れの辺も、前記導波領域を伝搬する光の伝搬方向と傾斜するように前記ピクセルが配置されていることを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の光回路において、前記多角形状は正方形であり、前記傾斜の角度が45度であることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8の何れかに記載の光回路において、前記ピクセルの各々は、前記仮想的なメッシュにより画定される領域以上の所望のサイズを有し、前記ピクセルの何れかは、前記仮想的なメッシュにより画定される格子位置からずれた位置に配置されていることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項4乃至9の何れかに記載の光回路において、前記高屈折率(nH)を有するピクセルは、第1の高屈折率層と当該第1の高屈折率層よりも低い屈折率を有する第2の高屈折率層とを順次積層させた導波部を有する一方、前記低屈折率(nL)を有するピクセルは、前記第2の高屈折率層からなる導波部を有し、前記高屈折率(nH)を有するピクセルの導波部を伝搬する光フィールド径の中心位置と前記低屈折率(nL)を有するピクセルの導波部を伝搬する光フィールド径の中心位置とが、前記基板表面と平行な同一平面上にあるように設定されていることを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10の何れかに記載の光回路において、前記導波領域は誘電体材料で構成されており、当該誘電体材料は、光損失機能または光増幅機能を備えていることを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の光回路において、前記誘電体材料は、光の波長に依存する複素屈折率を有することを特徴とする。
請求項13に記載の発明は、請求項1乃至12の何れかに記載の光回路において、前記導波領域は、少なくとも、第1の低屈折率層と導波部である高屈折率層と第2の低屈折率層とが順次積層された構造を有し、当該第1および第2の低屈折率層により前記高屈折率層中に光が閉じ込められることを特徴とする。
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の光回路において、前記高屈折率層の少なくとも一方の表面上には、凹部を設けることでレリーフ状のパターンニングが施されており、前記凹部を低屈折率部とし当該凹部以外の部分を高屈折率部とすることにより前記空間的屈折率分布が与えられていることを特徴とする。
請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の光回路において、前記レリーフ状のパターンニングが、前記高屈折率層の両面に施されていることを特徴とする。
請求項16に記載の発明は、請求項15に記載の光回路において、前記高屈折率層の両面に施されたレリーフ状のパターンは、互いに異なるパターンであることを特徴とする。
請求項17に記載の発明は、請求項15または16に記載の光回路において、前記高屈折率層の両面に施されたレリーフ状のパターンの前記凹部の深さが、何れも等しいことを特徴とする。
請求項18に記載の発明は、請求項1乃至17の何れかに記載の光回路において、前記ピクセルは、高屈折率(nH)または低屈折率(nL)の何れかの2値化された屈折率を有する複数の仮想のサブピクセルに分割されており、当該2値化されたサブピクセルの配列により前記ピクセルの屈折率分布が与えられていることを特徴とする。
請求項19に記載の発明は、請求項1乃至18の何れかに記載の光回路において、前記ピクセルでは屈折率差の変化の割合として屈折率差を1波長以上の距離をかけて変化させることを特徴とする。
請求項20に記載の発明は、請求項19に記載の光回路において、前記ピクセルまたは前記サブピクセルの前記基板と平行な断面形状は、円形であることを特徴とする。
請求項21に記載の発明は、請求項19または20に記載の光回路において、前記ピクセルまたは前記サブピクセルの前記基板に垂直な断面形状は、滑らかに変化する曲線を有する形状であることを特徴とする。
請求項22に記載の発明は、請求項13乃至20の何れかに記載の光回路において、前記第1または第2の低屈折率層の少なくとも一方は、互いに屈折率が異なる複数の層を積層させて構成されていることを特徴とする。
請求項23に記載の発明は、請求項1乃至22の何れかに記載の光回路において、前記光回路は複数の入力ポートを有し、かつ、当該複数の入力ポートから入力された光信号が同一の出射面から出力されるように構成されており、前記空間的屈折率分布は、前記複数の入力ポートから出力される各々の信号光の互いの位相を調整して重ねあわせ、出力される光フィールド形状を整形するように設定されていることを特徴とする。
請求項24に記載の発明は、請求項23に記載の光回路をアレイ導波路格子回路の入力側スラブに配置した光回路であって、前記複数の入力ポートの相互間の位相差は前記光回路の光導波路の回路長で与えられており、前記光導波路の回路長で与えられる位相差の繰り返し周期(free spectrum range)は前記アレイ導波路格子回路の出力の波長間隔と一致しており、前記アレイ導波路格子回路の波長分散特性を前記出力の波長間隔で周期的に打ち消すように、前記光回路からの出力のフィールド中心位置が周期的に変動することを特徴とする。
請求項25に記載の発明は、請求項1乃至24の何れかに記載の光回路において、前記空間的屈折率分布は、出力光のスポットサイズ変換を可能とするフィールドの強度分布と位相分布を実現するように設定されていることを特徴とする。
本発明により、従来の光導波路回路や平面ホログラフィック回路を用いた光回路よりも小型で、光の入出力を可能な限り自由に設定でき、さらに、緩やかな屈折率分布(小さな屈折率高低差)でも充分に高効率な光信号制御を可能とする波動伝達媒体を用いることにより、高効率で小型の光回路を実現することが可能となる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図面において同様の機能を有する箇所には同一の符号を付し、説明の重複は省略する。また、入力光と入力ポート、および、出力光と出力ポート、に同じ符号を用いる場合があり得る。
(ホログラフィック波動伝達媒体の基本概念)
以下に、本発明の光回路を構成するホログラフィック波動伝達媒体に関する基本的概念について説明するが、この説明に際しては、ホログラフィック波動伝達媒体中を伝搬する「波動」はレーザ光のようなコヒーレントを有する「光」であり、ホログラフィック波動伝達媒体は光回路として用いられているものと仮定する。なお、以下に説明する基礎理論は、一般の波動方程式に基づいて媒質の特性を指定するものであり、一般の波動においても原理的に成り立ち得るものである。よって、本基本概念は、広義の「電磁波」をホログラフィックに波動伝達させ得る媒体一般に応用可能であるのみならず、多体効果を無視できる電子波または巨視的にコヒーレンスを有する電子波にも適用可能である。
また、以下の説明では「屈折率」によって波動伝達媒質の性質を規定しているが、「屈折率」とはその文言の定義の通り一般的な平面状の波動の伝搬において波動を屈折させる割合(平面波の方向を偏向させる割合)を意味するものであり、光信号に対する媒体の性質を規定するものである。光信号の場合は主として誘電率である。
さらに、この波動伝達媒体が「ホログラフィック」波動伝達媒体であるとされている意味は、波動伝達媒体による回路全体での大域的なレベルでのホログラフィックな制御が、局所的なホログラフィック制御とその集合(制御された多重散乱)により実現されているという点にある。より具体的には、「ホログラフィック波動伝達媒体」とは、コヒーレンスな光のパターンを入力して所望の光のパターンとして出力させるために、この媒体中を伝搬する順伝搬光と逆伝搬光の位相差が媒体中の何れの場所においても小さくなるように屈折率を配置し、局所的なレベルでのホログラフィックな制御を多重に繰り返すことにより、大域的なホログラフィック制御を実現するものである。
図1(a)〜(c)は、ホログラフィック波動伝達媒体の基本概念と基本構造とを説明するための図である。まず、図1を参照して用語の説明をする。図1(a)中の1は光回路基板であり、1−1はホログラフィック波動伝達媒体により構成される光回路の設計領域である。光回路の一方の端面は入力光3−1が入射する入射面2−1であり、この入力光3−1はホログラフィック波動伝達媒体で構成された空間的な屈折率分布を有する光回路中を多重散乱しながら伝搬し、他方の端面である出射面2−2から出力光3−2として出力される。なお、ここでは、ホログラフィック波動伝達媒体は誘電体からなるものと仮定し、空間的な屈折率分布はこの媒体を構成している誘電体の局所的な屈折率を後述する理論に基づいて設定することにより実現されるものとする。
入力光3−1が形成している「場」(入力フィールド)は、光回路を構成するホログラフィック波動伝達媒体の屈折率の空間的分布に応じて変調され、出力光3−2の形成する「場」(出力フィールド)に変換される。換言すれば、ホログラフィック波動伝達媒体は、その空間的な屈折率分布に応じて入力フィールドと出力フィールドとを相関づけるための(電磁)フィールド変換手段である。なお、これらの入力フィールドおよび出力フィールドに対して、光回路中での伝搬方向(図中z軸方向)に垂直な断面(図中x軸に沿う断面)における光のフィールドをその場所(x,z)における(順)伝搬像(伝搬フィールドあるいは伝搬光)と呼ぶ(図1(b)参照)。図1(a)中の座標zは光の伝搬方向の座標(z=0が入射面、z=zeが出射面)であり、座標xは光の伝搬方向に対する横方向の座標である。
ここで、「フィールド」とは、一般に電磁場(電磁界)あるいは電磁場のベクトルポテンシャル場と呼ばれるものを意味しており、電磁場の制御は、光回路中に設けられた空間的な屈折率分布(すなわち誘電率の分布)を考えることに相当する。誘電率はテンソルとして与えられるが、通常は偏光状態間の遷移はそれほど大きくないので、電磁場の1成分のみを対象としてスカラー波近似しても良い近似となる。そこで、本説明では電磁場を複素スカラー波として扱う。なお、光の「状態」には、エネルギ状態(波長)と偏光状態とがあるため、「フィールド」を光の状態を表現するものとして用いる場合には、光の波長と偏光状態をも包含し得ることとなる。
また、通常、伝搬光の増幅や減衰を生じさせない光回路では、屈折率の空間的分布を決めると、焦点以外の入力光3−1の像(入力フィールド)は、出力光3−2の像(出力フィールド)に対して一意的に定まる。このような、出射面2−2側から入射面2−1側へと向かう光のフィールドを、逆伝搬像(逆伝搬フィールドあるいは逆伝搬光)と呼ぶ(図1(c)参照)。このような逆伝搬像は光回路中の場所ごとに定義することができる。すなわち、光回路中での任意の場所における光のフィールドを考えたとき、その場所を仮想的な「入力光」の出射点として考えれば、上記と同様に出力光3−2の像に対して、その場所での逆伝搬像を考えることができる。このように、光回路中の各場所ごとに逆伝搬像が定義できる。ここで特に、単一の光回路において、出射フィールドが入射フィールドの伝搬フィールドとなっている場合には、光回路の任意の点での伝搬フィールドと逆伝搬フィールドとは一致する。なお、フィールドは一般には対象とする空間全体の上の関数であるが、「入射フィールド」あるいは「出射フィールド」という場合は、入射面あるいは出射面におけるフィールドの断面を意味している。また、「フィールド分布」という場合でも、ある特定の断面に関して議論を行う場合にはその断面についてのフィールドの断面を意味している。
屈折率分布の決定方法を説明するためには記号を用いるほうが見通しがよいので、各量を表すために以下のような記号を用いることとする。なお、対象とされる光(フィールド)は単一状態の光には限定されないので、複数の状態の光が重畳された光をも対象とされ得るべく、個々の状態の光にインデックスjを充てて一般的に表記する。
ψj(x):j番目の入射フィールド(複素ベクトル値関数であり、入射面において設定する強度分布および位相の分布、ならびに、波長および偏波により規定される)。
φj(x):j番目の出射フィールド(複素ベクトル値関数であり、出射面において設定する強度分布および位相分布、ならびに、波長および偏波により規定される)。
なお、ψj(x)およびφj(x)は、回路中で強度増幅や波長変換や偏波変換が行われない限り、光強度の総和は同じ(あるいは無視できる程度の損失)であり、それらの波長も偏波も同じである。したがって、
{ψj(x)、φj(x)}:入出力ペア(入出力のフィールドの組み)
は、入射面および出射面における、強度分布および位相分布ならびに波長および偏波により規定される。
{nq}:屈折率分布(光回路設計領域全体の値の組)。
与えられた入射フィールドおよび出射フィールドに対して屈折率分布をひとつ与えたときに光のフィールドが決まるので、q番目の繰り返し演算で与えられる屈折率分布全体に対するフィールドを考える必要がある。そこで、(x,z)を不定変数として屈折率分布全体をnq(x,z)と表しても良いが、場所(x,z)における屈折率の値nq(x,z)と区別するために、屈折率分布全体に対しては{nq}と表す。
ncore:光導波路におけるコア部分のような、周囲の屈折率に対して高い屈折率の値を示す記号。
nclad:光導波路におけるクラッド部分のような、ncoreに対して低い屈折率の値を示す記号。
ψj(z,x,{nq}):j番目の入射フィールドψj(x)を屈折率分布{nq}中をzまで伝搬させたときの、場所(z,x)におけるフィールドの値。
φj(z,x,{nq}):j番目の出射フィールドφj(x)を屈折率分布{nq}中をzまで逆伝搬させたときの、場所(z,x)におけるフィールドの値。
以下に説明する屈折率分布の決定方法は、すべてのjについてψj(ze,x,{nq})=φj(x)あるいはそれに近い状態となるように{nq}を求める方法を与えるものである。
「入力ポート」および「出力ポート」とは、入射端面および出射端面におけるフィールドの集中した「領域」で、たとえば、その部分に光ファイバを接続することにより、光強度をファイバに伝搬できるような領域である。ここで、フィールドの強度分布および位相分布はj番目のものとk番目のものとで異なるように設計可能であるので、入射端面および出射端面に複数のポートを設けることが可能である。さらに、入射フィールドと出射フィールドの組を考えた場合、その間の伝搬により発生する位相が、光の周波数によって異なるので、周波数が異なる光(すなわち波長の異なる光)については、位相を含めたフィールド形状が同じであるか直交しているかの如何にかかわらず、異なるポートとして設定することが可能である。符号としては、入射ポート側にはアルファベットの大文字A、B、C、・・・を充て、出射ポート側にはアルファベットの小文字a、b、c、・・・を充てるものとする。
その他、α、γ、gやwは数値計算上の適当な係数であり、それらの程度については適宜文章中に示すこととするが、たとえば、通常の数値流体力学等で用いられる「スキームの安定性の議論」にしたがって、実際の数値計算では僅かに調整されるべきものである。
伝搬方向はz、伝搬方向に対して垂直な方向はxで表し、入射面2−1でのzの値を0、出射面2−2でのzの値をzeとする。後述するように、対象とする区別可能な光の状態に順次番号をつける。このとき、j番目の入射フィールドと、それに対応し出射させたい所望の出射フィールドをそれぞれψj(x)およびφj(x)とする。ここで、電磁界は実数ベクトル値の場で、かつ波長と偏光状態をパラメータとしてもつものとするが、その成分の値を一般な数学的取扱いが容易な複素数で表示して電磁波の解を表記する。また、以下の計算においては、フィールド全体の強度は1に規格化されているものとする。なお、j番目の入射フィールドや出射フィールドとは、フィールドの強度分布と位相分布あるいは波長や偏光により互いに区別される属性を有する光の組の要素に対して適当に順番をつけたものである。
図1(b)および図1(c)に示すように、j番目の入射フィールドψj(x)および出力フィールドφj(x)に対し、伝搬フィールドと逆伝搬フィールドをそれぞれ場所の複素ベクトル値関数として、ψj(z,x,{n})およびφj(z,x,{n})と表記する。これらの関数の値は屈折率分布{n}により変化するため、屈折率分布{n}がパラメータとなる。記号の定義により、ψj(x)=ψj(0,x,{n})、および、φj(x)=φj(ze,x,{n})となる。これらの関数の値は、入射フィールドψj(x)と出射フィールドφj(x)および屈折率分布{n}が与えられれば、ビーム伝搬法などの公知の手法により容易に計算することができる。これらの各フィールドの様子をより具体的な例を用いて説明すると以下のようになる。
図2は、従来のアレイ導波路格子回路の構成例を説明するための図で、光回路設計領域1−1には、2つのスターカプラ(光合分波器)4−1および4−2間に設けられたアレイ導波路5と、このアレイ導波路5の中央部に設けられた波長板6とが形成されている。この図に示したような波長多重通信における1×N波長分波器(Nは波長の数)を考えると、たとえば、1つの入力ポート3−1に対して、ほぼ同様なフィールド強度と位相分布をもつ入射フィールドで、波長λ1,λ2,λ3,・・・,λNの異なるN個の信号に番号をつけ、そのj番目の波長の光を所望の個別の出力ポート3−2から出力させる。このとき、光を分波するためには、導波路の出射面の断面におけるj番目の波長の光の強度および位相の分布は、独立な出射フィールドパターンとなっていることが求められ、これをj番目の出射フィールドと呼ぶ。分波された光を光ファイバへ出力させる場合を想定すれば、出力されるべきフィールドパターンは、独立した各々の出射フィールドが空間的に異なる場所となるフィールドの組となる。なお、与えられた入射フィールドの組を所望の出射フィールドで出力する光回路を構成するためには、入射フィールドあるいは出射フィールドのパターンは、その強度および位相の分布がj番目とk番目とで同一であってもよい。
以下に、空間的な屈折率分布を決定するための一般的なアルゴリズムを説明する。
図3はホログラフィック波動伝達媒体の空間的な屈折率分布を決定するための計算手順を説明するためのフローチャートである。この計算は繰り返し実行されるものであるので、繰り返し回数をqで表し、(q−1)番目まで計算が実行されているときのq番目の計算の様子が図示されている。
(q−1)番目の計算によって得られた屈折率分布{nq-1}をもとに、各j番目の入射フィールドψj(x)および出射フィールドφj(x)について伝搬フィールドと逆伝搬フィールドとを数値計算により求め、その結果を各々、ψj(z,x,{nq-1})およびφj(z,x,{nq-1})と表記する(ステップS220)。
これらの結果をもとに、各場所(z,x)における屈折率nq(z,x)を、次式により求める(ステップS240)。
nq(z,x)=nq-1(z,x)−αΣjIm[φj(z,x,{nq-1})*・ψj(z,x,{nq-1})]・・・(1)
ここで、右辺第2項中の記号「・」は内積演算を意味し、Im[]は[]内のフィールド内積演算結果の虚数成分を意味する。なお、記号「*」は複素共役である。係数αはnq(z,x)の数分の1以下の値をさらにフィールドの組の数で割った値であり、正の小さな値である。Σjはインデックスjについて和をとるという意味である。
ステップS220とS240を繰り返し、伝搬フィールドの出射面における値ψj(ze,x,{n})と出射フィールドφj(x)との差の絶対値が所望の誤差djよりも小さくなると(ステップS230:YES)計算が終了する。
上式(1)のように屈折率nq(z,x)を求める根拠は下記のとおりであり、屈折率分布を最急降下法により求めることに対応している。
まず、屈折率分布{nq-1}により入射光が伝搬したフィールドψj(ze,x,{nq-1})と、最終的に得たい出力φj(x)との差が最小となるためには、残差R=Σj |φj(x)−ψj(ze,x,{nq-1})|2が最小となればよい。なお、φj(x)などはxの関数であることを表しており、特定のxの座標を意味するわけではない。また、各ペアごとに重みをつけてもよいが簡単のため全て同じ重みで和をとることとする。
ここでは、光のフィールドの重ね合わせが可能な範囲で考えており、フィールドの重なり積分により内積が定義される。この光フィールドの重ね合わせは有限のエネルギをもち、かつ、取り扱われるフィールドは空間的に有限な範囲に限定される。したがって、ここでいうフィールドはヒルベルト空間を形成し、光の伝搬は以下の性質を有するユニタリ変換として定義される。
具体的には、z0からzまでのユニタリ変換演算子Uとして、
ψj(z,x,{nq-1})=U(z,z0,{nq-1})ψj(z0,x,{nq-1})・・・(2)
が成り立ち、ここで、反射が無視できる程度であるとすると、伝搬過程の加法性から、
U(z,z0,{nq-1})=U(z,z1,{nq-1})U(z,z0,{nq-1})・・・(3)
となる。
さらに、重なり積分により定義される内積に対してユニタリ性を有するから、
U(z,z0,{nq-1})*U(z,z0,{nq-1})=U(z,z0,{nq-1})-1U(z,z0,{nq-1})
=|U(z,z0,{nq-1})|2=1・・・(4)
となる。ここで、U(z,z0,{nq-1})*はU(z,z0,{nq-1})の自己随伴演算子である。また、U(z,z0,{nq-1})−1はU(z,z0,{nq-1})の逆演算子、つまり、逆方向の伝搬を与える演算子である。
z’とzの差(|z’−z|)が十分小さい範囲において、U(z',z,{nq-1})はビーム伝搬法などにおける丁度1ステップ分の変換をもたらす行列であると考えればよく、適当に伝搬方向を分割してこの演算を繰り返したものがU(z,z0,{nq-1})などであると考えればよい。
これらの結果を用いて残差Rを書き換えると、
R=Σj|φj(x)−U(ze,z',{nq-1})U(z',0,{nq-1})ψj(x)|2
=Σj|U(ze,z',{nq-1})|2|U(ze,z',{nq-1})-1φj(x)−U(z',0,{nq-1})ψj(x)|2
=Σj|U(ze,z',{nq-1})−1φj(x)−U(z',z,{nq-1})U(z,0,{nq-1})ψj(x)|2
=Σj|φj(z',x,{nq-1})−U(z',z,{nq-1})ψj(z,x,{nq-1})|2・・・(5)
となる。
|z’−z|→0の極限においては、特定のx座標の場所xにおけるU(z',z,{nq-1})の変化(δxU(z',z,{nq-1}))は、同じく特定のx座標の場所xにおけるnq-1(z,x)の変化(δxnq-1(z,x))と、
δxU(z',z,{nq-1})=−iκδxnq-1(z,x)・・・(6)
の関係を有する。なお、κは概ね真空中の伝搬定数程度の値で正数の適当な係数であるが、計算上他の係数と組み合わせるためここでは詳しく議論しない。
以上の結果より、特定のx座標の場所xにおける残差Rの変化(δxR))として、
δxR=Σj{−iκδnq-1(z,x)φj(z',x,{nq-1})*ψj(z,x,{nq-1})+c.c.}
=2κδnq-1(z,x)ImΣjφj(z',x,{nq-1})*ψj(z,x,{nq-1})・・・(7)
が得られる。
ここで、
δnq-1(z,x)=−αImΣjφj(z',x,{nq-1})*ψj(z,x,{nq-1}) (α>0)・・(8)
とすればδxR<0となり、この方向に変化させていけば極小値に向かうことになる。これが上式(1)の方向に屈折率分布を変化させる理由である。
以上の計算では、屈折率分布の初期値{n0}は適当に設定すればよいが、この初期値{n0}が予想される屈折率分布に近ければ、それだけ計算の収束は早くなる(ステップS200)。また、各jについてφj(z,x,{nq-1})およびψj(z,x,{nq-1})を計算するにあたっては、パラレルに計算が可能な計算機の場合は、jごと(すなわち、φj(z,x,{nq-1})およびψj(z,x,{nq-1})ごと)に計算すればよいので、クラスタシステム等を利用して計算の効率化を図ることができる(ステップS220)。また、比較的少ないメモリで計算機が構成されている場合は、式(1)のインデックスjについての和の部分で、各qで適当なjを選び、その分のφj(z,x,{nq-1})およびψj(z,x,{nq-1})のみを計算して、以降の計算を繰り返すことも可能である(ステップS220)。
以上の演算において、φj(z,x,{nq-1})の値とψj(z,x,{nq-1})の値とが近い場合には、式(1)中のIm[φj(z,x,{nq-1})*・ψj(z,x,{nq-1})]は位相差に対応する値となり、この値を減少させることで所望の出力を得ることが可能である。
図4は上述した計算手順の理解を容易にするために、ホログラフィック波動伝達媒体中でのフィールドの様子の一例を示した図である。ホログラフィック波動伝達媒体からなる光回路設計領域1−1の任意の位置(x,z)において、伝搬する光の波面に対して概ね平行でかつ概ね無視できる幅(Δz)を持った微小領域を仮定し、この微小領域の断面をXとする。なお、ここで「概ね無視できる幅」とは、屈折率分布をもたない媒体中を光がその距離Δzだけ伝搬したときに、伝搬光の位相がもとの波面と概ね同一であるような距離を意味している。断面Xよりも入射面2−1側にある光回路をA回路、出射面2−2側にある光回路をB回路とすると、断面XはA回路とB回路の界面となる。
いま、所望の各入出力の組を考えて、各組にj=1からNと番号を付け、j番目の組の入射フィールドψj(x)と出射フィールドφj(x)を仮定する。A回路に入射フィールドψj(x)を入力して伝搬させた場合の、界面Xにおける、導波光、回折光および散乱光の各々のフィールドの和はフィールドψj(zX,x,{nq})である。また、A回路中を伝搬する光の位相共役光として、出射フィールドφj(x)をA回路とは逆方向にB回路中を伝搬させた導波光、回折光および散乱光の各々のフィールドの和はフィールドφj(zX+Δz,x,{nq})である。これらのフィールドψj(zX,x,{nq})およびφj(zX+Δz,x,{nq})の位相差を、各組毎に平均(または重み付け平均)した値Pを求め、この位相差Pを、所望の屈折率の範囲において可能な限り打ち消すように界面X上での屈折率分布を決定する。このような屈折率分布は界面X毎に定まるから、界面Xの位置をz軸上で0(入射面)からze(出射面)まで変化させて演算を実行することとすれば、ホログラフィック波動伝達媒体全体の屈折率分布が定まることとなる。
屈折率の空間的分布の決定は、ホログラフィック波動伝達媒体に仮想的メッシュを定め、このメッシュによって画定される微小領域(「ピクセル」若しくは「ピクセル」と呼ぶ)の屈折率を各ピクセルごとに決定するものとも言い換えることが可能である。このような局所的な屈折率は、原理的には、その場所ごとに任意の(所望の)値とすることが可能であるが、基も単純な系は、低屈折率(nL)を有するピクセルと高屈折率(nH)を有するピクセルのみからなる系であり、これら2種のピクセルの空間的分布により全体的な屈折率分布が決定される。この場合、媒体中の低屈折率ピクセルが存在する場所を高屈折率ピクセルの空隙として観念したり、逆に、高屈折率ピクセルが存在する場所を低屈折率ピクセルの空隙として観念したりすることが可能である。すなわち、ホログラフィック波動伝達媒体とは、均一な屈折率を有する媒体中の所望の場所(ピクセル)をこれとは異なる屈折率のピクセルで置換したものと表現することも可能である。
上述した屈折率分布決定のための演算内容を要約すると次のようになる。すなわち、波動をホログラフィックに伝達させ得る媒体(光の場合には誘電体)に入力ポートと出力ポートとを設け、入力ポートから入射した伝搬光のフィールド分布1(伝搬光)と、入力ポートから入射した光信号が出力ポートから出力される際に期待される出力フィールドを出力ポート側から逆伝搬させた位相共役光のフィールド分布2(逆伝搬光)と、を数値計算により求める。そして、これらのフィールド分布1および2をもとに、伝搬光と逆伝搬光の各点(x,z)における位相差をなくすように、媒体中での空間的な屈折率分布を求める。なお、このような屈折率分布を得るための方法として最急降下法を採用すれば、各点の屈折率を変数として最急降下法により得られる方向に屈折率を変化させることにより、屈折率を式(1)のように変化させることで上記2つのフィールド間の差を減少させることが可能となる。そして、このようなホログラフィック波動伝達媒体を、入力ポートから入射した光を所望の出力ポートに出射させる光部品に応用すれば、媒体内で生じる伝搬波同士の多重散乱による干渉現象により、実効的な光路長が長くなり、緩やかな屈折率変化(分布)でも充分に高い光信号制御性を有する光回路を構成することが可能となる。
以下に実施例により、上述のホログラフィック波動伝達媒体を用いて構成した光回路について説明する。なお、以下の実施形態においては、特に断らない場合は、基板上に形成した埋め込み型石英系光導波路と同様の屈折率分布を、基板からの高さ方向に有する光回路であり、その光回路の厚み(層厚)は単一モード光導波路とほぼ同等のものであるものとする。さらに、基板にはシリコン基板を用い、その上に石英に添加物を加えて屈折率を調整した膜を堆積し、半導体作製工程で用いられる微細加工技術により、光回路をパターン化するものである。したがって、光回路パターンは2次元的であり、基板に対して水平方向に光回路としての機能を発現するようにパターン形成される。
しかしながら、高屈折率部分と低屈折率部分とからなる回路を基板面内に2次元的に展開した場合に、単純に、低屈折率部分を光導波路のコアに相当する部分が全くないものとしてしまうと、光回路における損失が発生してしまうこととなる。したがって、光回路としては2次元的であっても基板高さ方向をも考慮して光回路が設計されるべきであることはいうまでもない。
上述したように、本発明の光回路の作製には半導体微細加工技術が適用されるので、特に断らない限りは、光回路の屈折率分布は2値化されたパターンとなる。また、基板面内におけるパターンにおいて、屈折率が高い部分を高屈折率部分、低い部分を低屈折率部分と呼ぶ。また、屈折率調整された膜の堆積により屈折率変化が与えられているので、基板高さ方向での屈折率の高い部分を高屈折率層、低い部分を低屈折率層と呼ぶ。なお、特に問題がない場合には、光導波路の構造の慣例に従って、高屈折率部分を「コア」、低屈折率部分を「クラッド」と呼ぶ。さらに、基板水平面内のパターンについて議論する場合には、パターンの基本単位を「ピクセル」とよび、この「ピクセル」がブロック状に組み合わされることでマクロなパターンが形成される。このようなピクセルは、最も単純な場合には、仮想的に設けられたメッシュにより規定されるピクセルサイズの周期の格子点上に配置され、高屈折率部分と低屈折率部分とによれパターンが形成される。ただし、これらのピクセルを格子点上に配置する必要は必ずしもなく、所望の屈折率分布を得るために意図的に格子点上からずらして配置するようにしてもよい。
いわゆるステップインデクス型の光回路の場合には、屈折率の取り得る値が限られているため、上述した式(1)に基づいて光回路が設計可能か否かは自明ではない。しかし、屈折率の取り得る値が限られている場合であっても、局所的な屈折率の調整を繰り返すことにより、光の位相を大域的に調整することが可能である。したがって、光回路を構成する誘電体の屈折率の上限値とこの上限値に至る有限個の屈折率値とを有するステップ状の屈折率分布を仮定し、これらの屈折率を制限値として光回路の屈折率分布を計算することで光回路を設計することは可能である。本実施例ではこのような考えに基づいて光回路を設計する。
本実施例においてはこれを、ステップインデクス型平面光導波路と同様の構造の光導波路であって、かつ、その導波路のコアが光回路設計領域においてドット状にパターン化されている構造を有する光導波路に適応し、1.31μmと1.55μmの波長分割フィルタを設計した。
本実施例では、石英の光導波路が想定されている。また、屈折率の空間的分布を計算するにあたっては、コア(高屈折率部分)の屈折率とクラッド(低屈折率部分)の屈折率の2種類のみを考えることとし、これらの2種類の屈折率を光回路設計領域内で分布させて得られる屈折率分布を計算することとした。
また、図3を用いて説明した屈折率分布算出のアルゴリズムでは、パラメータである屈折率値は自由な値を取り得るものとしているが、ここでは、次式(9)で与えられるvqなる値を計算し、このvq値から次式(10)および(11)により屈折率を求めることとした。
vq(z,x)=vq-1(z,x)−αΣjIm[φj(z,x,{nq-1})*・ψj(z,x,{nq-1})]・・・(9)
vq(z,x) > (ncore+nclad)/2のときはnq(z,x)=ncore・・・(10)
vq(z,x) < (ncore+nclad)/2のときはnq(z,x)=ncladd・・・(11)
ここで、ncoreはコアに相当する屈折率、ncladはクラッドに相当する屈折率である。したがって、光回路設計領域内での屈折率分布は、これらの2種類の屈折率を空間的に分布させて得られることになる。なお、一般には、ncore > ncladの関係が成立する。このような計算によっても、以下に示すように、十分に所望の光出力を得ることが可能な光導波路を設計することができる。さらに、簡単化のために、上記2種類の屈折率のうち、コアのパターンに相当する屈折率(ncore)を有効屈折率とし、進行方向1次元、横方向1次元として計算した。
図5(a)および図5(b)は、本実施例における光回路設計の設定を説明するための図である。まず、入力ポート3−1から入力させた偏波多重された光を出力ポート3−2から出力させることとして屈折率分布を調整することにより、図5(a)のように、波長1.31μmの入射フィールドψ1(x)と出射フィールドφ1(x)(すなわち、上記の記号でj=1)の組と、図5(b)のように、波長1.55μmの入射フィールドψ2(x)と出射フィールドφ2(x)(すなわち、上記の記号でj=2)の組を設定した。フィールドは入射面2−1と出射面2−2の全域について定義されるものであるが、この図では理解の容易化のために、フィールド強度が集中している部分のみを図示している。このような入射/出射フィールドの組{ψj(x),φj(x)}を、以降、入出力ペアと呼ぶ。
図6(a)および図6(b)は、本実施例による屈折率分布(図6(a))と透過スペクトル(図6(b))を説明するための図である。上記のアルゴリズムにしたがって屈折率を計算する約200回の繰り返しにより、図6(a)に示した屈折率分布を有する光回路が得られる。ここで、図中の光回路設計領域(1−1)内の黒色部分(1−11)はコアに相当する高屈折率部(誘電体多重散乱部)であり、黒色部以外の部分はクラッドに相当する低屈折率部である。クラッドの屈折率としては石英ガラスの屈折率を想定しており、コアの屈折率は、石英ガラスに対する比屈折率が1.5%だけ高い値を有するものとしている。また、光回路のサイズは縦300μm、横140μmである。
屈折率分布を求める際の計算に用いられたメッシュは140×300(=42000)である。従って、屈折率分布のパラメータ数は42000となるから、これらのパラメータを最適化する必要がある。最急降下法を単純に適用して、これらの各々のパラメータについて1つずつ数値微分を求めることでパラメータを最適化する場合には、1ステップ分の計算を実行するのに42000の光の伝搬を計算する必要がある。これに対して、本実施例では2回の光の伝搬を計算するだけで足りるため、実用上妨げとならない短時間の計算で光回路の設計が可能となる。
このようにして設計された光回路の透過スペクトルは図6(b)のようになり、波長1.31μmの光が出力ポートaから出力される一方、波長1.55μmの光が出力ポートbから出力される特性を示す。すなわち、波長による分波器が形成されていることがわかる。なお、図5(a)および図5(b)に図示した光の入力方向と出力方向とを逆転させ、上記2つの波長の光の各々を出力ポートaおよびbから入力しこれらの光を合波して入射面2−1から出力させることも可能であるから、合波器としても動作させることができる。つまり、本実施例で説明した光回路は、光の波長による合分波器としての作用を奏することが分かる。
ところで、光回路としての機能を担保するためには、光回路内を伝搬する光がその光回路内で十分に閉じ込められることが必要である。図6(a)に示した屈折率分布では、高屈折率部であるコアは光回路設計領域内でドット状に分布しており、基板の厚み方向での光の閉じ込めが不十分になることが懸念される。
そこで、高屈折率部を2つの高屈折率部(第1の高屈折率部と第2の高屈折率部)で構成することとし、この高屈折率部が低屈折率部で上下から挟まれている構造の光回路を想定し、その屈折率分布を求めた。
図7(a)は、平面光波回路状の屈折率分布を有し、かつ、基板垂直方向での光閉じ込め可能な光回路の断面概念図であり、この光回路の高屈折率部1−11は、2つの高屈折率部(第1の高屈折率部1−11aと第2の高屈折率部1−11b)で構成され、第2の高屈折率部1−11bは第1の高屈折率部1−11aよりも高い屈折率を有している。そして、高屈折率部1−11が上下の低屈折率部1−12で挟まれて光回路が構成されている。なお、この光回路において所謂「コア」として作用するのは第2の高屈折率部1−11bであり、第1の高屈折率部1−11aは、このコア中を伝搬する光を基板の厚み方向(垂直方向)に閉じ込めるためのものである。なお、この図において、低屈折率部1−12と第1の高屈折率部1−11aの比屈折率差、および、第1の高屈折率部1−11aと第2の高屈折率部1−11bの比屈折率差は、各々1.5%として計算を行っている。図7(a)の右側には光回路の垂直方向での有効屈折率プロファイルが、下側には高屈折率部1−11における水平方向での有効屈折率プロファイルが示されている。
このような構造の光回路によれば、コアである第2の高屈折率部1−11bの周りに設けられた第2の高屈折率部1−11aによって、基板厚み方向での光閉じ込めが容易に実現できる。
このような光回路に光入出力部を設けるに際しては、第1の高屈折率部1−11aで光をガイドする場合(図7(b))と第2の高屈折率部1−11bで光をガイドする場合(図7(c))とが考えられる。また、第1の高屈折率部1−11aおよび第2の高屈折率部1−11bの各々の形状を最適化したりこれらを組み合わせたりすることにより、フィールド径の調整を行って光ファイバとの光結合の最適化が可能となる。
なお、出力フィールドは複素数値で計算されるから、出力フィールドの位相を求めることも可能である。従って、例えば、上述の光回路と無反射コートを施した半導体光アンプとを組み合わせて外部共振器レーザを作製する場合などのように、光の位相の調整も必要とされる場合にも、上述の光フィールドの計算手順は適用可能である。
これまで説明してきた光フィールドの計算にはビーム伝搬法を用いたが、演算に用いるコンピュータのメモリ容量が十分な場合には時間領域差分法を用いて計算してもよい。一般に、ビーム伝搬法は直線的な方向への光出力を計算するため、出力ポートの位置が限定される。例えば、本実施例の場合には、入射面の対向面を出射面とした。これに対して、時間領域差分法を用いて計算すれば、出力ポートの位置は自由に選択可能となるから、急激な屈曲を有する光路を備えた構成の光回路などを容易に設計することができる。このことは、以下の実施例においても同様である。また、このような回路を方向性結合器の組み合わせによって実現しようとすると、方向性結合器部分だけでも数百μmの光回路部分を要することとなるのに対して、上述の方法によれば数分の1程度の大きさの光回路構成とすることができて小型化を図ることが可能となる。
本実施例の光回路は、指向性が低くかつ波長依存性が高いレイリー散乱を利用した1.31μm/1.55μmの波長フィルタである。
光の波長の10分の1以下程度の大きさを有する物体による散乱は一般にレイリー散乱とよばれ、指向性が低くかつ波長依存性(波長の4乗分の1に比例)の高い散乱がえられる。本実施例では、光回路を構成するホログラフィック波動伝達媒質の高屈折率部分のピクセルサイズを、光回路中を伝搬する光の、伝搬方向に垂直な方向の波長成分の長さ程度以下のサイズとすることで、レイリー散乱の発生条件を満足する屈折率分布(誘電体分布)を実現して充分に大きな光制御性を得ている。
図8は本実施例の1.31μm/1.55μmの波長フィルタの構成例を説明するための図で、図8(a)はこの光回路の平面図であり、図8(b)は高屈折率部のピクセルと低屈折率部のピクセルの配置の様子を説明するための図である。
図8(a)中の黒色部は高屈折率部を意味しており、入力ポート3−1から、1.31μmと1.55μmの波長の光を入力し、出力ポートaから1.31μmの光を、出力ポートbから1.55μmの光を、それぞれ出力させる。なお、この光回路の光伝搬方向の長さは1000μmであり幅は160μmである。この光回路の屈折率分布は、図8(b)に示すように、各々がピクセルサイズWを有する、高屈折率部のピクセル(網掛け部)と低屈折率部(白抜き部)のピクセルを配置させることにより決定される。
このような、ピクセルサイズWを有する誘電体を多数配置して構成される導波路構造(すなわち、光閉じ込め構造)中において形成される光のフィールド半径wには、1次元のガウシアン近似による変分法により、概ね、
なる条件が要求される。ここで、k0は真空中の波数、nは屈折率、Δはピクセル部分の比屈折率差である。
一方、本光回路を構成する誘電体のピクセルを光の散乱点として考え、このピクセルによるフィールド半径wを開口半径wとする(図9)。このとき、この開口からの回折角(遠視野角)をθとすると、真空中での波数λを用いて、
となる(図9)。媒質中における、光の伝搬方向に垂直な向きの波数
と、伝搬方向の波数
との比をとると、
が得られる。ここで、
は光の伝搬方向成分の波長であり、
は伝搬方向に垂直な方向成分の波長である。
ここで、光の波数(運動量と等価)の殆どは伝搬方向に集中しているとして仮定すると、
となり、
が得られる。レイリー散乱の条件として、
となることから、
となり、さらに、式(15)から、
として式(12)に代入してwを消去すると、
なる条件を得る。
式(16)の右辺のうちの括弧部分(λ以外の係数)は、例えば石英系光導波路(n=1.5、Δ=0.01)や半導体導波路(n=3.5、Δ=0.05)でも概ね1程度であるから、
であればレイリー散乱の条件が成り立つこととなる。
図10(a)および図10(b)は、ピクセルサイズWをパラメータとして変化させて1.31μm/1.55μmの波長フィルタの光回路を構成した場合の、透過損失特性および漏話特性のピクセルサイズ依存性(図10(b))を説明するための図で、この光回路の光伝搬方向の長さは600μmであり、出力ポートaと出力ポートbの間隔は30μmである(図10(a))。
図10(b)に示した結果から、ピクセルサイズWが波長レベル程度(図10(b)中に示す)以下の場合には、漏話が非常に効率よく抑えられて優れた透過損失特性が得られており、本実施例のようにレイリー散乱条件を満足するようにピクセルサイズWを設定することが有効であることが分かる。
本実施例の光回路は、基板高さ方向(基板表面と垂直な方向)への光の放射を抑制することで光損失を抑制することを可能とした光回路である。
光回路の屈折率分布を高屈折率部と低屈折率部とで2値化して得られるピクセルパターンにおいては、低屈折率部を高屈折率部の空孔(空隙)と考えると、高屈折率部に相当するピクセル相互間に存在することとなる低屈折率部は、光導波路でいうところのクラッド部分への放射部分(導波路間のギャップ)に相当する。光回路を設計するに際しては、基板横方向(基板表面と平行な方向)への光は多重散乱により制御可能である。しかしながら、平面光回路の場合には、基板高さ方向へ漏れた光は通常そのまま放射されて(光)損失の原因となる。
図11は平面光回路における、基板垂直方向と基板水平方向での光の閉じ込めレベルを説明するための図で、実線は基板垂直方向の光、破線は基板水平方向の光を示している。この図に示すように、基板水平方向に広がってゆく光は、光回路内で反射・散乱を繰り返しながら光回路内に閉じ込められるが、基板垂直方向への光はそのまま光回路の外へと放射される。
図12は、最小ピクセル単位を3μm角としたときの1点当たりの放射損失(結合損失)のフィールド半径依存性を説明するための図である。この図に示すように、光回路内で放射される光は光のフィールド径に大きく依存し、一般にフィールド径が小さい場合は回折の影響により大きな放射角をもつこととなる。逆にフィールド径を大きく取ることにより光の放射を抑制することが可能となり、光回路としての損失を抑制することができる。数千μm程度の回路サイズを仮定すると数百点の散乱点が発生する可能性があることとなるから、光回路全体としての損失を抑えるためには個々の散乱点における光損失を充分低く抑える必要がある。
石英系光導波路のような光閉じ込め効果の弱い単一モード光導波路中を伝搬する光のフィールドは、良い近似でガウス分布とすることができる。また、光のフィールドは、波面内の光の振幅の分布F(x,y)を変数分離してF(x,y)=f(x)g(y)としても良い近似となる。ここで、基板平面方向をx、基板垂直方向をyとして座標を(x,y)で表してある。すなわち、光のフィールドとしてガウス分布を仮定すると、x方向とy方向の各々の関数に変数分離される。
ここで、基板水平方向の関数であるf(x)については多重散乱により制御されて光回路内への閉じ込めが可能であるので問題ない。一方、基板垂直方向の関数であるg(y)については、放射された光は高屈折率領域から外れて放射損失となる。したがって、個々の散乱点における光損失を充分低く抑えるためには、g(y)成分に起因する放射回折損失を低減させる方法を考えればよいこととなる。
g(y)についてガウス分布を仮定すると、
と表記できる。ここで、wはフィールド半径である。フィールド半径wは、主として、コアの大きさと屈折率とにより制御可能であることがよく知られている。そこで、パラメータwの制御性が高いことを前提として、個々の散乱点における光損失を充分低く抑えるために必要な条件を求める。
図11(b)に「ピクセル」として示した高屈折率部が分断されて配置された場合を想定すると、高屈折率部相互間に高屈折率部のギャップが生じる。このギャップの存在により、ガウス分布を有する光のフィールドが導波路外に放射されるものとする。この場合、光フィールドの形状のガウス分布は維持されるものの、フィールド半径が変化するとともにその波面に湾曲を生じる。この状態のフィールド分布を形式的にg(y,z)と表す。ここで、zは放射部分の距離の平均値として与えられるパラメータである。
上記ギャップ部により導波路外に放射された光フィールドのうち、再び高屈折率部へと結合する量は、次式の重なり積分で与えられる。
ここで、λは光の波長、nは高屈折率部の屈折率である。
ここで、図11に示した光回路の高屈折率部の高さをaとし、フィールド直径も概ねこのaと同程度であると考えてw=a/2と仮定する。また、放射部分の距離の平均値を適当な係数qによりz=qaとすると、ギャップひとつ当たりの、損失の期待値<η>は、
で表される。この式(19)の値は(λq/na)で規格化できる。本発明の光回路中を伝搬する光は概ね100回程度の散乱を重ねることになるので、1/100dB程度の損失を期待すると、
の条件を満足すれば個々の散乱点における光損失を充分低く抑えることが可能となる。
図12は、ギャップ幅を3μmと設定し、q=1、λ=1.55μm、n=1.45とした場合の、高屈折率部の厚みaをパラメータとしてフィールド半径を変化させ、結合損失のフィールド半径依存性を求めた結果である。フィールド半径3μm(高屈折部分の膜厚aに換算して6μm程度)に相当するところで充分低い損失となる結果が得られた。
実施例2でも説明したように、光回路面内方向のピクセルサイズが光回路中を伝搬する光に及ぼす影響が大きい。本実施例においては、ピクセルを光伝搬方向に対して傾斜させて配置することにより、効率的な光制御を可能とした。
図13(a)はピクセルを光伝搬方向に配置した光回路を説明するための図、そして図13(b)はピクセルを光伝搬方向に対して傾斜させて配置した光回路を説明するための図である。図13(b)のように、ピクセルを光伝搬方向に対して傾斜させて配置することとすると、光伝搬方向と垂直方向にピクセルサイズよりも短い周期の格子面が形成され、これにより効率的な光の制御が可能となる。ここで、傾斜角を45度より浅く(または深く)すればより短い周期の格子面を形成することが可能であるが、格子面を構成する反射面の中心位置の間隔が大きくなって、反射面としての機能が低下する。とくに、本回路は数ピクセルサイズで屈折率が変化するので、その程度の距離でブラッグ反射面として機能させるためには、45度程度が適当である。
これまで説明してきた実施形態では、屈折率分布を定める高屈折率部(または低屈折率部)のピクセルを仮想的なメッシュで画定される格子点上に配置することとし、かつ、屈折率分布をパターン化し易い大きさとなるように各ピクセルのサイズを限定したため、格子点間隔は各ピクセルサイズ以下とすることはできないこととなる。このため、ピクセルに関するデジタイジング誤差とピクセルエッジにおける伝搬光の散乱により、光回路特性が劣化することが生じ得る。さらに、導波路面内(xy平面内)における光の伝搬方向(x方向)と垂直な方向(y方向:光の伝搬方向に対して横方向)での屈折率の規則的な周期性が、ピクセルサイズに応じて、空間的な遮断周波数を発生させるために光の制御性も制約を受けてしまう。本実施例の光回路においては、光の伝搬方向に対する横方向において、ピクセルサイズの最小単位およびピクセル間隔の最小単位のみを条件として設定することとして、任意の位置に高屈折率部(または低屈折率部)のピクセルを配置することで屈折率分布を形成するようにした。
図14(a)は仮想的なメッシュで画定された格子点にピクセルを配置して屈折率分布を形成した光回路を説明するための図であり、図14(b)はかかる格子点の位置とは無関係にy方向でのピクセル配置を行って屈折率分布を形成した光回路を説明するための図である。図14(a)に示した導波路においては、各ピクセルは、仮想的なメッシュで画定された格子点位置に配置されているのに対して、図14(b)に示した本実施例の導波路においては、光の伝搬方向(x方向)には各ピクセルが仮想的なメッシュで画定された格子点位置に配置されているものの、光の伝搬方向に対して横方向(y方向)には、(必ずしも)各ピクセルが仮想的なメッシュで画定された格子点位置に配置されておらず、任意の位置に高屈折率部または低屈折率部のピクセルが配置されている。
なお、本実施例の場合は、ピクセルの配置により定まる屈折率分布を、最小ピクセルサイズ(格子点間隔)よりも充分に小さい間隔を配置パラメータの最小単位として計算することとしている。そして、ピクセル同士の間隔がこの最小単位よりも大きな場合は適当な境界を定めてその境界において屈折率の値が変化するように各ピクセルに高屈折率部の値または低屈折率部の値を与える一方、ピクセル同士の間隔が最小単位よりも小さい場合にはその領域の範囲内で屈折率の平均を求めて高屈折率部の値もしくは低屈折率部の値のうちの何れか近いほうを採用することとしている。
図15(a)および図15(b)は、各々、図14(a)および図14(b)のピクセル配置に対応させて作製した実際の光回路(1.31μmと1.55μmの波長フィルタ)の屈折率分布を説明するための図で、これらの図の左側の図が回路全体像、右側の図が回路の一部の拡大像である。これらの図において、白い部分は高屈折率部、黒い部分は低屈折率部分であり、比屈折率差は1.5%である。また、この光回路の回路長は1200μmとし、最小パターンルール(配置パラメータの最小単位)を3μmとした。
図15(a)と図15(b)とを比較すると、本実施例の光回路においては屈折率パターンが平滑化されていることがわかる。また、図15(a)に示した屈折率分布の光回路では2dBの損失があったのに対して、図15(b)の屈折率分布の光回路では概ね0.5dB程度の損失改善が認められた。この事実は、本実施例の光回路のように屈折率分布を滑らかとすることにより、図15(a)のような屈折率分布を有する光回路では制御不可能であった強い散乱による損失が低減され、伝搬光の制御性が改善されたことによる効果である。具体的には、図15(a)に示したような光回路では、例えばピクセルの構造が波面の進行方向に対して概ね垂直な辺を有する四角形のピクセル構造であるために、ちょうどナイフエッジにより光が回折されるように、激しい干渉が生じて光回路の設計精度が低下することに加え、大きな波数を有する光が発生して、小さな屈折率差の屈折率分布では光制御しきれなくなる。これに対して、本実施例の光回路のように、滑らかな屈折率分布を有する光回路とすることにより、光回路内での激しい干渉や大きな波数の光の発生を抑制することが可能となることによる効果である。
実施例3の光回路においては、図11および図12を用いて説明したように、高屈折率部から低屈折率部へ向かう光放射を抑制するために高屈折率層の厚みaを厚くしたが、低屈折率部が長く連続する場合(すなわちギャップ間隔が長い場合)には原理的に大きな損失が発生してしまう。そこで、本実施例の光回路においては、基板に対して垂直方向での光閉じ込めを低屈折率部においても可能ならしめて、ギャップ間隔が長い場合でも低損失となる光回路の構造を提供する。
図16は本実施例の光回路の作製手順を説明するための図で、まず、通常の光導波路の作製と同様に、例えばSi基板上にコア下部となるクラッド部分(低屈折率部分)を堆積し、この低屈折率部分の上にコアに相当する第1の高屈折率層を堆積する(図16(a))。ここで、低屈折率部分の屈折率をnとしたとき、第1の高屈折率層の屈折率はn(1+Δ2)である。
次に、第1の高屈折率層の一部をエッチングによりパターンニングする(図16(b))。このときのパターンは、光回路の高屈折率部分と低屈折率部分に対応するパターンであり、第1の高屈折率層がエッチングにより残される部分が光回路の高屈折率部分となる。なお、第1の高屈折率層が導波路パターンを有するように残存させれば、その残存部分に導波構造を形成することも可能である。このパターンニング工程においては、エッチングで除去される第1の高屈折率層直下にある低屈折率部分の表面部分にまで施し、当該箇所の低屈折率部分が所望の厚みとなるように後述する適当な高さでエッチングを停止する。
さらに、一定膜厚の第2の高屈折率層を堆積し、必要に応じてこの第2の高屈折率層にパターンニングを施し、第2の高屈折率層を用いて導波路形成などを実行してもよい。第2の高屈折率層の屈折率はn(1+Δ1)であり、第1の高屈折率層の屈折率n(1+Δ2)に比較して、n(1+Δ2)>n(1+Δ1)(すなわち、Δ2>Δ1)の関係がある。最後に、図示しない上部クラッドを堆積して、第1および第2の高屈折率層を埋め込む。
このようにして得られる光回路は、後述するパラメータ調整により、損失が低く、かつ、低屈折率部分を多く含む光回路でも損失増大のない光回路構造とすることが可能である。以下では、これらの高屈折率層の比屈折率差を用いて、第1の高屈折率層を「高屈折率層Δ2」、第2の高屈折率層を「高屈折率層Δ1」と表記する。以下、パラメータの設定方法について説明する。
既に実施例3で説明したように、光回路においてはピクセルの各界面におけるフィールド形状が同じであれば損失なく光を伝搬させることができる。以下でも、基板に対して垂直方向の光のフィールド分布のみに着目して説明する。
図17に示すように、高屈折率層Δ2をエッチング除去した領域を「低屈折率領域」、高屈折率層Δ2をエッチング除去せずに残存させた領域を「高屈折率領域」と呼ぶとすると、高屈折率領域においては、高屈折率層Δ1と高屈折率層Δ2との和に相当する「導波路コア」に相当する部分の厚みが、低屈折率領域に比較して厚くなっている。導波路中を伝搬する光フィールドは、導波路全体に分布して伝搬するほうが運動エネルギを低く抑えられる。従って、上述の高屈折率領域は、光フィールドの分布を導波路全体に広げて運動エネルギを低くする作用がある。一方、光フィールドの位置エネルギに着目すると、高屈折率層Δ2と高屈折率層Δ1とでは、高屈折率層Δ2の屈折率のほうが高いために、光フィールドは高屈折率層Δ2に集中するほうが位置エネルギは低くなるため、できるだけ高屈折率層Δ2に集中しようとする傾向がある。このように、光フィールドを導波路全体に広く分布させる作用と導波路の一部に集中させようとする作用とが競合することになる。さらに、高屈折率層Δ2に集中させようとする作用は、光フィールドの中心位置を基板側にシフトさせるように働く。このような光フィールドのエネルギ最小化に起因する性質を利用して、高屈折率領域中での光フィールドが、低屈折率領域中での光フィールドと同じフィールド半径でかつ中心位置が同じになるように、パラメータを調整すればよい。
図18は本実施例におけるパラメータ調整のための計算例を説明するための図で、この場合のパラメータは、図18に示したように、既に説明したn、Δ1およびΔ2の他に、高屈折率層Δ1の膜厚W1、高屈折率層Δ2の膜厚W2、高屈折率層Δ2の層上面から低屈折率領域のフィールド中心位置までの距離xc、フィールド半径w、光の波長λ(すなわち、波数k0=2π/λ)である。通常は、屈折率nと波長λは回路設計時には決まっているので、残りの6個のパラメータを決定することになる。ここでは、これらのパラメータを変分法を用いて求める。また、便宜のため、添字fillおよびgapを用い、高屈折率領域における波動関数をufill、低屈折率領域における波動関数をugap、などと表記する。
高屈折率領域における波動関数ufillは、次式(21)で与えられ、
また、高屈折率領域における波動関数ufillは、次式(22)で与えられる。
波動方程式を近軸光線近似して得られるフレネル方程式
について、フィールド半径wおよび高屈折率層Δ2の層上面から低屈折率領域のフィールド中心位置(センター位置)までの距離xcを決める変分方程式を以下のように立てて演算を進めると、最終的には、次式(27)のように3つの方程式が導出される。
この結果は丁度、フィールド半径wが同じで、適当なセンター位置xcがあるという条件式に相当する。従って、結果的には、残り3つのパラメータを与えることにより光フィールドの系が決定されることとなる。
図19は、本実施例の光回路である1.31/1.55μmWDM回路の特性(透過損失の波長依存性)を説明するための図である。なお、ここでは、Δ1=1.5%、Δ2=2%、W1=5.5μmと設定してある。また、低屈折率領域が全回路面積に占める割合を約50%とし、回路長は1200μmとした。比較的多くの高屈折率領域と低屈折率領域との界面、および、連続した低屈折率領域が含まれている光回路であるが、図19にあるように、約2dBという良好な透過損失が得られた。
本発明の光回路を製造するに際しては、従来から一般的に用いられてきている通常のプロセスによることのほか、近年開発された手法であるところの、光照射によって屈折率や構造を変化させる手法を光回路製造プロセスの一部に採用することも可能である。本実施例では、このような光照射を用いた光回路作製の幾つかの実施例について説明する。本実施例によれば、通常用いられているプロセスと比較して、製造工程数を大幅に低減する事ができることのほか、所望の構造を容易に作製できるという効果が得られる。
(実施例7−1)
図20は、本実施例の第1の形態の光回路の製造方法を説明するための図で、まず、シリコン基板21上に、火炎堆積法(FHD法)により、下部クラッド層22、コア層23、上部クラッド層24を順次形成した(図20(a))。下部クラッド層22および上部クラッド層24としては、石英ガラス(SiO2)をベースとする母材料にBやPなどの酸化物をドーピングさせた材料を用いている。コア層23としては、BやPなどの酸化物の不純物に加え、Geの酸化物をドーピングした材料を用いている。このような材料選択により、下部クラッド層22および上部クラッド層24よりもコア層24の方が高い屈折率をもつように設定してある。また、下部クラッド層22の厚さを20μm、コア層23の厚さを7μm、上部クラッド層24の厚さを10μmとした。なお、上部クラッド層24はUV光を照射したときの回折広がりを抑えるために、通常の光回路の構造に比較して若干薄い厚みとなるように設計した。
次に、上部クラッド層24の上に、図20(b)に示すような光照射用の遮光膜としてのシリコン薄膜25を形成した後、感光性レジストでパターンを形成し、ドライエッチングプロセスによりシリコン膜を部分的に除去することでパターン形成を実行した(図20(b))。なお、感光性レジストはシリコンパターン形成後に除去されている。また、この遮光マスクパターンの形成に際しては、所望の回路特性を得るために必要とされる屈折率パターンが最終的に得られるように、プロセス依存性や照射光の広がりを考慮して、かかるプロセス依存性等を考慮せずに得られるコア形状の設計値に若干の補正が加えられている。
次に、光感受性を向上させるため、高圧水素雰囲気中でサンプル中への水素拡散を実行した。具体的には、密閉容器中にサンプルを設置し、室温にて150気圧の水素雰囲気中に一週間放置した。
この水素拡散に続いて、ArFエキシマレーザを用いて波長193nmのUV光を照射することにより、照射前の屈折率よりも大きな屈折率を有するようにコア層23部分の屈折率を変化させた。図20(b)中に斜線で示した領域(23´)がレーザ照射により屈折率変化を生じた領域である。このときの照射パワーは120mJ、照射時間は10分である。光照射後に遮光膜をエッチングにより除去した後に、熱処理を施し、サンプル中に拡散させた水素を除去するとともに、光照射により生じたガラスの不安定状態を解消することにより屈折率の安定化を図った。
このようなプロセスにより、遮光マスク25が形成されなかった領域のコア層の屈折率を選択的に変化させ、遮光マスク25を形成した領域のコア層の屈折率とは異なる屈折率とすることができる。このような屈折率変化の程度は、リファレンスとして設定した広い照射領域の測定から、約0.3%程度と推定される。
上述の製造工程により、(1×4)の分岐回路を作製した。回路設計から期待される特性に比較して2dB程度の大きな損失特性ではあったものの、基本的な分岐動作が確認された。損失特性が設計値からずれた原因は、屈折率変化量が設計値とは異なっていたことによるものと考えられる。
なお、上述した製造方法はあくまでも一例を示したものに過ぎない。製造工程として、下部クラッド層22、コア層23および上部クラッド層24の形成工程、遮光マスク層25の形成工程、および、光照射工程を含んでいることが必須の要素であるが、これらの必須工程を含めて各工程に関しては様々な変更を加えることが可能であることはいうまでもない。例えば、下部クラッド層22、コア層23、上部クラッド層24の形成には、CVD法やスパッタ法あるいはスピンコート法などの成膜方法を用いることも可能である。また、図20に示した例では、各層は単一組成の材料で構成されるものとしたが、組成の異なるガラスを複数枚重ね合わせて堆積を行って得られる多層構造の層を1つの層として取り扱うこととしても構わない。
遮光マスク層25としては、照射する光を遮蔽する効果のある材料であれば、シリコン以外の別の材料を用いても構わない。また、遮光用のマスクの形成方法の一例として、上部クラッド上24に形成する方法をあげたが、別のガラス基板上にマスク形成を行い、このガラス基板をサンプルに密着させて光照射することによっても同様の結果を得ることができる。さらに、光感受性を向上させるための手法については、高圧下での水素添加方法によることの他に、高温で短時間の水素処理や、重水素を添加するなどの手法によることも可能である。また、照射光として、193nmのUVエキシマレーザ光のほか、KrFエキシマレーザやXeFエキシマレーザ等の他のレーザからの光や、短パルスの可視光レーザ光などを用いても、上記と同様の光回路構造を作製することができる。
(実施例7−2)
図21は、本実施例の第2の形態の光回路の製造方法を説明するための図である。この実施形態は第1の実施形態(実施例7−1)とほぼ同じであるので、相違する部分についてのみ説明を行う。第1の実施形態においては、下部クラッド層22および上部クラッド層24にはGeの酸化物をドーピングしないこととしたので、光照射した際の上部クラッド層24および下部クラッド層22における屈折率変化はないか、若しくは、ほとんど無視できる程度となる。これに対して、本実施形態では、これらの層もコア層23と同様に感光層となるように、Geドープされたガラス組成で上部クラッド層24および下部クラッド層22を形成することとし、光照射による屈折率変化が誘起されることとしている。
第1の実施形態と同様に、下部クラッド層22、コア層23、上部クラッド層24を順次形成し(図21(a))、上部クラッド層24の上に光照射用の遮光膜としてのシリコン薄膜25を形成してパターン形成する(図21(b))。遮光マスク25でマスキングされていない領域が光照射されると、コア層23のみならず上部クラッド層24および下部クラッド層22も感光し、Geドープ量に応じた屈折率変化が生じる。図21(b)中に斜線で示した領域(23´)がレーザ照射により屈折率変化を生じた領域である。上述の製造工程により、(1×4)の分岐回路を作製した結果、第1の実施形態の分岐回路よりも優れた損失特性が得られることが確認された。
すなわち、コア層23およびクラッド層(22および24)の双方が感光層となるように組成選択することにより、光照射により形成された高屈折率領域と低屈折率領域とにおける光伝播方向でのフィールド分布の差分が少なくなり、素子の損失特性を改善することができる。
(実施例7−3)
図22は、本実施例の第3の形態の光回路の製造方法を説明するための図である。この実施形態は第1および第2の実施形態(実施例7−1および実施例7−2)を併用するものに相当している。従って、以下では、これらの実施形態に追加される工程部分についてのみ説明を行う。
本実施形態においては、位相マスクを用いたUV光照射により局所的な屈折率変化を生じさせ、図22(d)に示すような(1×2)分岐回路を作製した。位相マスクを用いたUV光照射方法は、ファイバーグレーティングなどの製造において用いられているものであり、グレーティング構造などのような、周期的かつ微細な構造を比較的容易かつ正確に作製することができるという利点がある。また、複数の位相マスクを用いることにより、ある程度の複雑な構造であっても比較的容易に製造が可能である。しかし、本発明の光回路のように構造が複雑であると、位相マスクを用いたUV光照射のみによって所望の屈折率分布を完全に実現することは困難となるため、第1および第2の実施形態で説明した製造方法などと併用して用いることが必要となるのである。
第1の実施形態と同様に、下部クラッド層22、コア層23、上部クラッド層24を順次形成し(図22(a))、上部クラッド層24の上に光照射用のパターン化された遮光マスク25を形成してUV光照射を実行した(図22(b))。図22(b)中に斜線で示した領域(23´)がUV光照射により屈折率変化を生じた領域である。遮光マスク25を除去した後に、図22(d)に示すように、出力ポート近傍の一部領域に、グレーティングフィルタの形成を行う。具体的には、グレーティングフィルタを形成したい領域(図22(d)中の27に相当)の出力ポート近傍に、図22(c)に示すようにパターン化された位相マスク26を形成し、この位相マスク26を介してUV照射を実行してコア層23内の所望領域23´´を感光させてグレーティングフィルタとする。この工程の後に、実施例7−1と同様の工程により熱処理を行い、サンプル中に拡散させた水素を除去するとともに、光照射により生じたガラスの不安定状態を解消して屈折率の安定化を図った。
グレーティングを追加形成した出力ポート(図22(d)の27で示す領域の出力ポート)においては、そのフィルタ動作により、透過波長特性が変化することが確認された。なお、本実施例では、実施例7−1の製造工程途中に、図22(c)に相当するUV光照射工程を割り込ませて製造の簡略化を図っているが、実施例7−1の工程を全て完了した後に、上記図22(c)に相当するUV光照射工程を実施するようにしてもよい。
(実施例7−4)
図23は、本実施例の第4の形態の光回路の製造方法を説明するための図で、この実施形態においても、実施例7−1と同様に、シリコン基板21上に、下部クラッド層22、コア層23、および、上部クラッド層24を、火炎堆積法(FHD法)により順次形成した(図23(a))。
これに続いて、上記各層を形成したウエハを、図示しないXYZ方向3軸の可動ステージ上に固定し、レンズ29によりレーザ光28をコア近傍に集光させて光照射を行い、照射点付近の屈折率を変化させた(図23(b))。図23(b)中に斜線で示した領域(23´)がレーザ照射により屈折率変化を生じた領域である。この図に示したように、屈折率変化した領域の大きさは一定ではなく、所望の屈折率分布が実現されるように、個々の領域の大きさを決定することができる。
これらの領域の横方向(XY方向)の広がりは、レーザ光照射中のステージのXY平面内での駆動量やレーザパワー量により決定される。一方、縦方向(Z方向)の広がり(厚み)は、レーザパワー量の制御とステージのZ方向での駆動量によってレーザ光28の集光状態を制御することにより決定され、コア層23と同じ厚みを有するようにしたり、コア層23よりも薄い或いは厚い厚みとすることが可能である。また、照射領域の屈折率変化量は、主としてレーザパワー量の制御により行われる。なお、この実施形態では、レーザ光として775nmの波長のフェムト秒パルスレーザを用い、パルス幅は150fsである。このようにして(1×4)の分岐回路を製造し、基本的な分岐動作を確認した。
上述した手法によりレーザ光を集光描画して屈折率の空間的分布を実現する場合には、予めマスク形成などを行う必要性がないという特徴を有しているが、各ドット毎にレーザ光照射を行う必要があるため、光回路の作製に時間がかかる傾向がある。このため、本手法を、上述の実施例7−1または実施例7−2で説明した、一括描画による屈折率分布形成方法と併用することが有効である。
また、レーザ光としては、フェムト秒レーザに限らず、UVエキシマレーザ光やCWのUVレーザ光などを用いることも可能である。この場合も、実施例7−1で説明したように、大きな屈折率変化を得るために、水素添加などを用いてUV光に対する増感を行うこととすることが効果的である。
さらに、本実施例では、下部クラッド層22、コア層23、および、上部クラッド層24の3層構造とされているが、本手法はレーザ光の集光点付近の屈折率変化を利用しているので、バルクガラスのような単一組成の材料に適用することも可能である。
(実施例7−5)
上記実施例7−1および7−2で説明した手法により光回路を作製した例を説明する。
図24は、作製した光回路の屈折率分布の様子を説明するための導波路断面図で、図24(a)は光照射前の屈折率分布、図24(b)は実施例7−1の手法により形成した屈折率分布、そして、図24(c)は実施例7−2の手法により形成した屈折率分布の様子である。なお、これらの図において、屈折率分布ピクセルサイズは3×3μmであり、コア層の厚みは4.5μmである。
図24(a)〜(c)に示す何れの屈折率分布においても、高屈折率部分と低屈折率部分は同等の有効屈折率差(高屈折率部分:Δ=1.5%、低屈折率部分:Δ=1.3%)を有しており、直接比較することが可能である。
図25は、図24(a)〜(c)で示した構造を有する、1.31μm/1.55μmの(1×2)分岐回路の各々の損失特性(透過率)を説明するための図である。なお、回路サイズは1200μm×120μmである。図24(a)に対応する構造(従来構造)の光回路の特性を破線で示し、図24(b)および図24(c)に対応する構造の光回路特性を、それぞれ、(A)および(B)で示してある。
この図からわかるように、本発明の光回路の損失特性は、従来構造の光回路の損失特性に比較して、約1dB程度の改善が認められ、特性良好な光回路が得られている。
本実施例では、屈折率を複素屈折率として取り扱う。複素屈折率の虚部は、媒質中における光の利得若しくは損失を意味する。従って、波動伝達媒質は、吸収または増幅効果を有するものであるものとする。本実施例の光回路においては、通常材料の複素屈折率が波長に依存して変化するという特徴を有効に利用したものである。なお、光回路構造としては、実施例2で説明した1.31μm/1.55μmの(1×2)分波回路の例を考える。
図26は、本実施例の光回路の構成を説明するための概略図で、図26(a)は回路全体の概念図であり、図26(b)および図26(c)は出力側における複素屈折率分布の概念図であり、これらの図はそれぞれ、1.31μm用ポート(図中a)および1.55μm用ポート(図中b)の近傍の複素屈折率分布の様子を示している。
この光回路は、通常の回路設計に加えて、1.31μmの出力ポート近傍の複素屈折率分布を、1.31μm帯の光に対してはほぼ透明で、かつ、1.55μm帯の光に対しては大きな損失を有するように設計(図26(b))する一方、1.55μmの出力ポート近傍の複素屈折率分布を、1.55μm帯の光に対してはほぼ透明で、かつ、1.3μm帯の光に対しては大きな損失を有するように設計している(図26(c))。すなわち、この光回路においては、出力させたい波長の信号光については透明であり、かつ、不要な信号光は光回路内で吸収させて出力されないように複素屈折率分布が決定されている。
詳細な図示はしないが、1.31μmの出力ポート(a)と1.55μmの出力ポート(b)との間には、両方の波長の光に対して大きな損失を有するように複素屈折率分布が与えられており、不要な信号光が散乱することにより生じるクロストークを防ぐ設計となっている。本実施例の光回路の構成材料としては半導体ドープガラス系材料が選択されており、これにより、光に対して透明な材料のみで光回路を作製した場合に比較して、1.55μmの出力ポートに対する1.3μm帯の信号光のクロストークが大きく減少した。また、1.31μmの出力ポートに対する1.55μm帯の信号光のクロストークも若干減少した。なお、信号光の損失の増加は殆ど認められなかった。また、実数のみの屈折率分布を与えた光回路と、複素屈折率分布を与えた本実施例の光回路とを比較すると、同一の回路特性を得るための回路長を短くすることが可能となる。
なお、本実施例では、回路を構成するに際して半導体材料を用いることとしたが、複素屈折率を与える材料であればよく、有機材料、金属、誘電体材料など様々な材料を用いることができる。
本発明の回路においては、多重の回折・干渉現象を利用しているため、極めて多彩な機能を実現できるという特長を有しているが、実数のみの屈折率分布で充分な回路特性を実現することが困難な場合も生じ得る。そのような場合に、本実施例のように、回路の一部もしくは全ての領域において、複素屈折率分布を与えるように設計することとすれば、回路特性を改善したり、あるいは、素子長の短い回路を作製することが可能となる。
本実施例の光回路は、これまで説明してきた光回路の高屈折率部分と低屈折率部分として、レリーフ状に屈折率の高い層を加工することで屈折率分布を形成した回路である。
図27(a)〜(c)は、本実施例の光回路の構成を説明するための断面図で、図27(a)は本光回路を構成する基本的な構造であり、低屈折率層であるクラッド層(22、24)に挟まれた高屈折率層である厚み5μmのコア層23の上部の一部を2μmの深さ分だけ除去してレリーフ状のパターニングを施すことにより、実効的な「高屈折率部分」23aと「低屈折率部分」23bとを形成することで屈折率分布を形成している。
このようなパターン形成は、反応性イオンエッチングにより実行可能である。一般に、エッチングによるパターン形成では、その加工深さが深いほどパターン変形の度合いが大きくなってパターン形成の制御性が低下するため、深いエッチングを施すこととすると形成可能なパターンサイズは大きくならざるを得ないという問題がある。発明者らは、本発明の光回路においてはエッチングにより形成されるパターンサイズは極めて重要なパラメータであることを見出した。これは、パターンサイズにより決定される空間的屈折率分布が光の制御性に影響を与え、ひいては光回路の特性そのものに影響を与えることになるためである。
そこで、パターンサイズの制御性を高めてより小さいサイズのパターンの形成を可能とするために、以下に説明するような方法により、比較的浅いエッチング深さのレリーフ状のパターニングを施して所望の屈折率分布を実現することとした。図27(b)は、その一例を説明するための図で、図27(a)の構造では高屈折率層であるコア層23の一方の面からのみ凹凸を形成しているのに対して、この図に示した構造では、コア層23の両面から凹凸を形成し、これにより、個々の凹凸に施すエッチング深さを1/2の1μmとして同等の屈折率分布を実現したものである。
図27(b)に示した回路構造を作製するには、先ず、図示しないシリコン基板上に下部クラッド部分として低屈折率のガラスを堆積し、その一部に反応性イオンエッチングにより溝を形成して下部クラッド層22とする。後述するように、この溝の部分が本光回路のコア層23の高屈折率部分に相当することとなる。ここでは、高屈折率層であるコア層23のクラッド層(22、24)に対する比屈折率差Δを1.5%とし、最終的に得られるコア層23の高屈折率部分の厚みが5μmとなるように設計しているので、この層厚に対して十分なステップカバレッジが得られるように約1μmの溝を形成している。
下部クラッド層22に対する溝形成に続いて、下部クラッド層22上に高屈折率のガラスの層を堆積して高温で加熱する。この加熱により、下部クラッド層22の溝の両端近傍(段差部分)にも高屈折率ガラスが隙間なく充填され、かつ、高屈折率層の表面も平坦化される。なお、この高屈折率ガラスの堆積は、本光回路のコア層23の高屈折率部分に相当することとなる溝上の高屈折率ガラス層の厚みが6μmとなるように実行される。
ここで、高屈折率ガラス層の厚みを6μmとするのは、この高屈折率ガラス層の上表面にエッチングにより溝を形成して、最終的な高屈折率部分の厚みが5μmのコア層23を得るために、エッチングによる「とりしろ」を1μmとしたことによる。
高屈折率ガラス層の表面に形成する溝は、図27(b)に示すように、下部クラッド層22に設けた凹部(凸部)が高屈折率ガラス層の凸部(凹部)となるように、すなわち、コア層23の表面と裏面に形成される低屈折率部分と高屈折率部分が互いに対応する位置に設けられるように形成される。これは、コア層23中を伝搬する光のフィールドの形状が光伝搬方向に伸びる直線に対して対称であるため、余分な損失を回避するためには、コア層23の表面と裏面に形成される低屈折率部分と高屈折率部分も光伝搬方向に伸びる直線に対して対称であるべきであるという発明者らの知見に基づくものである。
このようなレリーフ状パターンのコア層23を形成した後に、導波部分であるコア層23の上部に上クラッド層24を設け、高屈折率部分23aと低屈折率部分23bとを有するコア層23が上下のクラッド層に埋め込まれた構造とし、上述の実施例2同様、1.31/1.55μmWDM光回路とした。
従来、クラッド層とコア層の比屈折率差Δが1.5%程度の光導波路の場合には、基板厚み方向に単一モードにするために、コアの膜厚を約4.5μm程度の厚みとするため、同程度の通常の半導体プロセスにおけるエッチング深さ約1μmと比較して、かなり深いエッチングが必要で微細パターンを加工するのが困難であった。これに対して、本実施例の光回路のようにレリーフ状の構造とすることで、エッチングの深さを1μmと浅くして0.5μm程度の微細なパターン化が可能となった。
図27(b)に示した構造を有する光回路では、コア層23の高屈折率部分と低屈折率部分の有効屈折率差Δ´は、計算上、クラッドを形成する低屈折率ガラスとコアを形成する高屈折率ガラスの比屈折率差Δ(約1.5%)の約20%程度と見積もられ、本実施例の光回路の空間屈折率分布を形成するための有効屈折率差Δ´は、僅かに約0.3%となる。
この有効屈折率差Δ´(約0.3%)をもとに光回路を設計した結果、ピクセルサイズを3μmと設定した場合であっても、比屈折率差Δ1.5%で設計した実施例1の光回路と比較して僅かに1.5倍程度の長さの回路長におさめることが可能であった。また、本実施例の光回路においては、ピクセルサイズを0.5μmにまで小さく設定することが可能であり、ピクセルサイズ0.5μmで光回路を設計すれば横方向への大きな波数の光フィールドを発生させることが可能となり、実施例1の光回路と比較して約半分の回路長とすることができる。
すなわち、本実施例の光回路では、例えば0.3%程度の低い屈折率差で光伝搬領域を形成したとしても、レリーフ状のパターンを有する導波路構造による多重散乱を利用して比較的大きな反射・散乱を発生させることが可能となり、高効率で光干渉を生じさせ得る。このため、光回路を大幅に小型化することが可能である。
なお、コア層23に設けるレリーフの形状は、所望する屈折率分布に応じて自由に変更が可能であり、例えば、図27(c)に示すように、コア層23の上下面で異なるパターンを有するようにするにして、高屈折率部分23aと低屈折率部分23bに加え、中間屈折率部分23cを設けるようにしてもよい。
既に実施例5において説明したように、図15(a)に示したような光回路では、ピクセルの構造が波面の進行方向に対して概ね垂直な辺を有する四角形のピクセル構造であるために、ちょうどナイフエッジにより光が回折されるように、激しい干渉が生じて光回路の設計精度が低下することに加え、大きな波数を有する光が発生して、小さな屈折率差の屈折率分布では光制御しきれなくなるという問題が生じ得るが、コア層23に上述のレリーフ状パターンを施すこととすれば、高屈折率を有するピクセル相互間に介在する低屈折率を有するピクセルの存在により、屈折率パターンが実効的に平滑化されて、伝搬光の激しい散乱を抑制することが可能となる。
本実施例の光回路は、屈折率の異なる膜を多層に積層させた多層膜によりクラッドを構成することで光閉じ込めを実現したものである。
図28は、本実施例の光回路の導波路部分の断面図で、コア層23を挟む下部クラッド層22および上部クラッド層24は、何れも、屈折率の異なる膜(22a〜dおよび24a〜d)を多層に積層させた多層膜で構成されている。
これまで説明してきた光回路においては、低屈折率部分のフィールドパターンは、通常は、実施例2の光回路のように放射的となり、実施例6や実施例8のような回路構成としても、原理的に損失が発生してしまう。本実施例の光回路は、この問題を解消すべく、クラッドを屈折率の異なる膜を多層に積層した多層膜とすることで、基板の上下に漏れる光を完全に抑制するようにしたものである。なお、光回路の設計方法は非特許文献4と同様である。
屈折率が互いに異なる媒質を多層に組み込むこととすると、全反射や無反射条件が実現可能となる。特に、横方向の波数が小さい場合には、比較的容易に全反射条件を形成することが可能である(例えば、非特許文献4参照)。
したがって、クラッド層を上記多層膜で構成し、低屈折率領域においてコア層23の上下側両面において全反射(もしくは充分に高い反射率)が得られるようにこれらの層を配置することにより、低屈折率領域と高屈折率領域の割合が同程度とされた光回路においても、充分に低損失の回路を実現することが可能となる。
このような回路構成は、(図示しない)基板の上下方向にのみブラッグ条件を満足すれば効果が得られるため、図28に示した構成のように基板上下方向のみに周期構造をもたせた多層膜構造とすることのほか、フォトニック結晶を用いて上下のクラッド層を構成することによっても同様の効果を得ることができる。
本実施例の光回路は、1つのピクセルを複数のサブピクセルに分割して屈折率分布を設計し、実施例3で説明した回路よりも低損失の光回路を実現するものである。
一般に、大雑把な近似として、光がその波長よりも小さな構造を有する物体と相互作用する際には、回折現象のために、波長程度の大きさの領域において平均化された屈折率を、実効的な屈折率として感受する。したがって、単位ピクセルを構成する複数のサブピクセルにおいて、高屈折率を有するサブピクセル数と低屈折率を有するサブピクセル数との配分の仕方によって、実効的な屈折率が異なる単位ピクセルを任意に作り出すことができる。
図29(a)および(b)はそのようなサブピクセルの例を示す上面図であり、図29(c)はサブピクセルにより分割されたピクセルを用いて屈折率分布を設計した光回路の一部の上面概念図である。単位ピクセルは1μm角の大きさであり、このピクセルを2分割する場合(図29(a))と4分割する場合(図29(b))について例示している。このようなピクセル分割によって、ギャップの実効値は約0.5μm(図29(a)の場合)または0.25μm(図29(b)の場合)となり、このような媒体中を伝搬する光はギャップの存在を殆ど感受することがなくなる。また、屈折率分布を設計するに際しても、計算に必要なデータ量を例えば1/2や1/4とすることが可能となるため、1万ピクセル×1万ピクセル(この場合には、1cm角に相当する)程度の大規模な回路であっても容易に形成することができることとなる。
本実施例の光回路においては、ピクセルを複数のサブピクセルに分割するが、屈折率分布の設計に際してはピクセル単位で計算を実行することにより、屈折率分布の計算を容易化している。また、微細パターンを実現する場合に、サブピクセルによる分割状態が同じ単位ピクセルを多用して計算を行うこととすれば、フォトプロセスにおける位相シフトマスクなどによる回折補正工程やプロセスによるエッチング量の補正工程における補正条件設定などが容易化される。
既に実施例5において説明したように、図15(a)に示したような光回路では、ピクセルの構造が波面の進行方向に対して概ね垂直な辺を有する四角形のピクセル構造であるために、ちょうどナイフエッジにより光が回折されるように、激しい干渉が生じて光回路の設計精度が低下することに加え、大きな波数を有する光が発生して、小さな屈折率差の屈折率分布では光制御しきれなくなるという問題がある。
この問題を解決するために、本実施例の光回路では、ピクセル形状をこれまでの矩形から変形させた形状としている。このようなピクセル形状の変形の態様としては、基板に水平な方向に変形させる場合と基板に垂直な方向に変形させる場合とがある。なお、屈折率分布を計算する際には、実施例11と同様に、実効的な屈折率の差を有する高低2つの屈折率を仮定すればよい。
図30(a)は、基板に対して水平な方向に屈折率が変化する構造を有する導波路の屈折率分布の概念図であり、図30(b)は、図30(a)に示す屈折率分布中に平面波を伝搬させた際の反射減衰の様子を説明するための図である。なお、図30(b)の横軸は屈折率の勾配(伝搬定数の空間的な変化の割合)であり、縦軸は伝搬定数不整合による反射減衰量である。空間的な長さは媒体中での光の波長で規格化することとし、かつ、各場所の屈折率を基準屈折率(n=1.45:波長1.55μmにおける石英系導波路の屈折率)で規格化して比屈折率差を求めている。
これらの図からわかるように、屈折率の勾配を1よりも小さくすることで反射減衰量が改善される。すなわち、ピクセルの形状を徐々に変化させればよい。例えば、3μm角の屈折率分布のピクセルを仮定すると、このピクセルサイズは、真空中の波長が1.55μmの光に対して約2波長程度の大きさであるから、勾配が1/2程度となるように屈折率を変化させると、散乱を数dB程度減衰させることが可能であると予想される。
図31(a)は、ピクセル形状を円形とした場合の単位ピクセルにおける屈折率分布の様子を説明するための概念図、図31(b)は、図31(a)に示した円形ピクセルを用いて構成した回路の一部の上面概念図、そして、図31(c)は、図31(b)における高屈折率部と低屈折率部の配置を逆転させた場合の回路の一部の上面概念図である。
フィールドの広がりの程度をピクセルサイズと同程度と仮定すると、局所的な実効屈折率は概ね円形ピクセルの断面積に比例して変化すると考えられる。ここでは、直径約3μmの円形領域を、クラッドと同じ屈折率とし、その円形領域の周囲を高屈折率の膜で形成している。つまり、図31(b)に示した回路は、高い屈折率を有する膜からなる高屈折率部が一様に形成され、この高屈折率部の一部領域を円形にくりぬいてその部分に低屈折率部を設けた構成となっている。これとは逆に、図31(c)に示した回路は、低い屈折率を有する膜からなる低屈折率部が一様に形成され、この低屈折率部の一部領域を円形にくりぬいてその部分に高屈折率部を設けた構成となっている。
基板に対して垂直方向に屈折率が変化する回路構成の場合には、先ず、基板にアンダークラッドを堆積した後、屈折率がクラッドよりも高い膜を堆積する。フォトレジストをマスクとして用いた反応性イオンエッチングによってコアのパターン形成を行う場合には、マスクであるフォトレジストの厚みを空間的に変化させることにより、厚みの異なる膜をコアとして残すことができる。例えば、フォトレジストを塗布後、約130℃に過熱してレジストを溶融させ、表面張力によりパターンのエッジを丸め、この状態のレジストをエッチングマスクとして用いることとすれば、レジストパターン周囲はエッチングによって削られて、最終的に高屈折率膜に転写されるパターンもパターン外周部分が丸められたパターンとなる。
なお、例えば、AZ系のフォトレジストを用いることとすれば、露光量に概ね比例する深さのレジストを除去することが可能である。従って、異なるパターンを複数回に分けて露光することとすれば、最終的には所望のパターンを形成することが可能である。この場合にも、最終的に得られるパターンの外周部分を滑らかにすることができる。
光回路を構成するピクセルの配置は、光回路の平面領域の分割方法により規定することができる。換言すれば、結晶学において行うのと同様に、単位格子を考えてその対称性によりピクセルの配置位置を規定することができる。ここで、単位格子は1つ以上のピクセルからなるものと仮定する。このような取扱いをすると、回路全体としては結晶と同様の周期性を有することとなる。このような周期性を有する回路に空間的に横方向に大きく広がった理想的な平面波を入射すると、特定の波数成分に対して強い散乱が生じる。ただし、ピクセルの配置位置には、低屈折率あるいは高屈折率の媒体が適宜配置されるので、完全な周期性があるというわけではない(これらについては、たとえば、非特許文献5を参照)。
この場合、ピクセルのサイズおよび配置ならびに光の入射方向(あるいは出射方向)に対して回路の結晶学的な配向をどのように設定するかで光回路特性が異なるため、所望の特性を得るためには、光の入射方向と波数とが重要となる。そして、上述の特定の波数成分に対する強い散乱を利用すれば、回路の小型化や特性改善が可能となる。
もっとも単純な単位格子は単一ピクセルからなるもので、このピクセルの形状を丸形やn角形(nは3以上の整数)とすることもできる。
図32は、このピクセル形状を蜂の巣状とした場合のピクセル配列の様子を説明するための図で、このピクセル配列とすると比較的等方的な回折面が得られる。したがって、図中の矢印のように複数の方向から光を入出力させる光回路において、さまざまな方向に大きな反射を発生させやすくなり回路特性が改善される。
また、図13で示したのと同様に、例え同じピクセル配列構造であってもそのピクセルの配向状態を変えることにより特性改善が可能である。
なお、図33に示したように、いわゆる「準周期構造」と呼ばれる不完全周期構造も知られている。この場合の回折スペクトルはフラクタル形状となり、かつ、比較的広い範囲にスペクトルが分布することとなるため、回路を構成するうえで好都合な散乱が得られるという利点がある。
従来、複数の入出力ポートを備える光回路において、各ポートから他のポートに一斉に信号を配信し且つ同一のポートから信号を受信するように構成されている回路には、光のパワーを単純に合分波するだけの光合分波器が用いられてきた。このため、信号を受信する際に、1つのポートだけから信号が入力される場合には、Nポートからなる回路では光が1/Nに減衰してしまうというなどの問題があった。このような問題が生じる原因は、光の位相を考慮した回路設計がなされていない点にある。これに対して、本発明のホログラフィック波動伝達媒体を用いれば、位相をも含めて合分配機能を実現できるため、余分な損失を発生させずに光を合分配することが可能となる。
図34は、相互一斉配信・一斉受信構成とした光回路の構成例を説明するための図であり、図35は、この光回路の各ポート間での信号の流れを模式化した図である。この光回路は4つのポートを有し、各ポートは他の3つのポートに向けて光を出射する一方、他の3つのポートから独立に出力される信号を受信する回路構成とされている。なお、このような光回路を基板上に作製した場合には、これらのポートに光ファイバを接続し、各ポートを終端装置または光増幅装置などに接続して使用する。
図35で模式化して示した各ポート間での信号の流れを、論理的な信号の流れを崩さずに変形すると図36のようになる。この図において、上下の互いに対向するポートは実際には同一ポートであるが、信号の流れを明確化するために、下側を送信ポート、上側を受信ポートとして、機能ごとに区別して示している。だだし、これらは同一の回路により構成されるから、あくまでも、論理上の構成を示しているに過ぎない。
このとき、通常のパワー分岐回路では、送信側の3分岐によりパワーが1/3となり、受信側の合波器によりパワーが1/3となるため、結局1/9にまでパワーが低減する。すなわち、8/9もの損失が発生するのである。このうち、受信側の損失は他の2ポートから位相整合した光が入力されないために発生する損失である。そこで、他の2ポートからの光とは独立に受信できるように分岐方法を工夫すれば損失がなくなると考えられる。これは以下に示すように、各光の位相をも考慮して各ポートへの分配を行うことにより実現できる。
まず、各ポートの位相を、4つの数の組(すなわちベクトル)として表す。ここで、振幅は1としている。ただし、特定のポートへの光の分配がない場合は、その成分を0とする。例えば位相が、ポート1が0、ポート2がπ、ポート3がπ、ポート4には光がないとすると、
というベクトルを考えることとする。このような表現方法で考えると、フィールドの重なり積分はちょうどベクトルの内積として計算できるから、これを用いて所望のベクトルの組を見出せばよい。
いま、1つのポートからそのポート以外の全てのポートに均等に信号を分配するものと仮定すると、分配する側のポートに対応する成分は0となり、他のポートについては絶対値が
となるフィールドを考えればよい。そして、それらの位相を調整することにより全てのベクトルが互いに直交すれば、他のフィールドからの信号とは独立に各ポートが光を受けることが可能となり、損失が分岐損失のみで光信号を受けることができる。
実際、この場合は
がそのような組み合わせの一つである。これにより、従来の受信側での原理損失をなくすことができ、3倍の強度で光信号を受信することができた。
さらに、図37に示す不均等分配回路のように、不均等に光を分配(分岐)することによって、送信距離に伴う損失を補うことができるとともに、適当な位相を選ぶことにより損失を少なくすることが可能となり、光アンプなどを用いない低コストな光通信システムが実現できる。なお、図37では、基地局から一斉送受信をするとともに、各端末間の通信も行っている。
本実施例は、実施例14と同様の構成の光回路であるが、直交状態が存在しない場合において出力信号の重なりを最小にするための光回路の構成例である。ここでは、3ポートの光回路の場合を考える。この場合、ポートは3つしかないので、直交状態を実現することはできない。しかし、下記に示すように、できるだけ直交状態に近い状態を選ぶことで損失の少ない構成を実現することができる。
実施例14と同様に、ポートの出力を
とする。ここで、自分自身にも出力があるが、これは反射戻り光として取り扱うことができる。
これにより、必要なポートでは4/9=3.5dBの光を得ることができる。これは従来の3dBカプラを2つ組み合わせる場合に比べて2.5dB低い損失である。
図38は、このような不均等分配回路の応用概念図である。この図に示すように、3ポート光回路を縦列配置することによりタップ回路が実現できる。ここでは、光回路を構成する無機ガラス材料にEr元素をドープして1.5μm波長帯での増幅機能をもたせてある。回路の損失は従来よりも十分低いから、僅かな消費電力かつ短距離で増幅可能であるため、小型で低消費電力のタップ回路が構成可能である。図中にはそれを損失補償型回路として示した。
導波路回折格子においては、図39(a)および図39(b)に示すように、入射側スラブにおける入射導波路位置を固定した場合、波長により出力位置が方向Aにずれる(図39(a))。また、入射導波路の位置Bをずらすと、出力位置が方向Cにずれる(図39(b))。このような性質を利用して、波長に応じて入射導波路側のフィールドの中心位置を方向Bにずらすと、方向Aへの動きと方向Cへの動きが打ち消しあって、フィールドが動かなくなる。
入射導波路側のフィールドの中心位置を入射導波路側のフィールドの中心位置が動かない場合の出力ポート間の波長間隔で周期的変化させると、図40に示すように、プラトーが形成される。このプラトー部分に出射ポートの光導波路が配置されれば、矩形上の波長フィルタ特性が得られる。
これを実現するために、入射導波路部分に方向性結合器を配置し、その前段に分岐遅延回路を配置したものが提案されている。このとき、フィールドの中心位置が振れる振れ幅はフィールド径程度必要とされるために、方向性結合器のコア幅を小さくすることはできない。このため、フィールドの形状が必要なスポット径よりも広い構造となってフィールド形状が歪むこととなる。これは、その共役像である出射側の光出力像を歪ませることになり、結果として光結合が劣化するという問題がある。
そこで、本実施例においては、本発明のホログラフィック波動伝達媒体を用いて、複数の入射ポートからの光を、それぞれ、整形して出力し且つそれらの波を重ねあわせることにより、良好な入射フィールド形状を得るとともに、その入射ポート間の位相を調整することで、フィールドの中心位置を調整することとした。なお、本実施例では、入射ポートを2本とした。
ここで、座標をxで表して、入射ポートの像を、それぞれf0(x)、f1(x)として、ポート間の位相差をφと表す。このとき、その重ね合わせ像f(x、φ)は、
となる。所望のフィールド形状が、位相差φの関数xc(φ)を中心位置、θ(φ)を位相として、関数
で与えられているとする。ここで、簡単のためxc(0)=0、θ(0)=0とした。このとき、φについて1次の係数を比較すると
となる。これは関数g(x)、h(x)が満たさなくてはならない式である。φは後に示すように、波長差に対応する量であることから、
は中心位置の動くべき速さに対応するので設計条件で決まる量である。
f0(x)、f1(x)の直交条件と規格化条件から、
となる。ここで、Gは
を規格化した関数であり、sは1を越えない量で、
で決められる量である。なお、
はノルムの平方根である。
本発明で用いるホログラフィック波動伝達媒体は、直交するフィールドであれば、それぞれのフィールド形状を位相を含めて任意に設定できるので、ホログラフィック波動伝達媒体を用いてこれらの出力フィールドを各入力ポートに対して設定することができる。いま、前段の位相差を図41(アレイ導波路格子を除く入射部のみを図示してある)に示すように、導波路回路の遅延で与え、遅延回路の波長に対する出力の繰り返し周期と出力側導波路間の出力波長間隔を同一にすると、出力ポート間の導波路の間隔Dを用いて、
となる関係式が得られ、所望のフィールドFを決めさえすれば全てのパラメータが決まることになる。
たとえば、Fとしてガウス関数を仮定し、フィールド半径をwとすると、
である。
図42は、フィールド形状としてガウス関数を仮定した場合の、中心位置の移動の様子を示す例である。フィールドの動きが分かるようにアレイ導波路格子に入る前の部分のフィールド形状を近視野像で観察したものである。図41に示した遅延回路を含んだ構成であり、約10nm間隔で周期的にフィールドの中心位置が周期的変化していることが分かる。ただし、遷移領域では近似からずれて、2ピークになっているが、この部分は1つの出力ポートから隣の出力ポートへの遷移領域にあたるため結合には関係ない。遅延回路部分は導波路の長さで自由に設定可能であり、かつ2分岐回路の分岐比率も自由に設定できることから、アレイ導波路格子にあわせて上記の方法で調整すれば、平坦な波長分波特性が得られる。
以上の実施形態においては、入力側導波路を2本の入力導波路としたが、より精度を向上するためには、入力側導波路の本数を増やせばよい。そのための一般論を以下に示す。
ηをパラメータとする所望の関数F(x;η)について、1次までの近似は上記と同様の方法で得られ、2次まで展開すると、
となる。したがって、
を変形して、
とおけば、
を上記実施形態と同様にして適当な形で決めることができる。ここで、上記の実施形態の場合には簡単のためφをパラメータとしたが、ここでは明確な形とするため、所望のフィールドのパラメータηで条件式を記述している。また、
は
に直交したフィールドになるようにする。また、3つ目の導波路に付加すべき位相項は
となる。
以上のように、所望の関数をテイラー展開して、前の次数の項にまとめて、見かけ上、1つ次数の低い項の係数にパラメータ依存性をもたせ、その項について、1次の近似を施すことで、順次近似を上げることが可能である。また、パラメータが複数ある場合も同様に一つのパラメータにあうように設定して、そのあとで、上記の方法で、もう1つのパラメータについて設定する手順で順次近似させればよい。
一般に石英系光導波路と半導体光導波路においては、フィールド径が異なることから、光ファイバと光半導体レーザなどではレンズを介して光結合損失を低減する。しかしながら、レンズを用いるためには、光導波路構造とレンズの間を十分にとる必要があるため、小型集積化には適さない。そこで、光導波路と光半導体素子とをレンズを介さずに光結合する方法が試みられているが、図43(a)にあるように、光導波路は回路内部において概ね平面波的な等位相面を有しているため、開口部からの放射では光が回折して光結合に損失が生じることになる。さらに、一般にはフィールド径の違いがあると光結合損失を生じるため、たとえば石英系光導波路と半導体光導波路の光結合系においては石英系光導波路のフィールド径を小さくする必要がある。
本実施例は、ホログラフィック波動伝達媒体を用いて上記の波面の制御とフィールド形状の制御を同時に行うことで光結合を改善するものである。ホログラフィック波動伝達媒体は光の多重散乱を用いるため、光導波路と異なり、通常放射光となる高い横方向の波数をもつ光を制御できるために、フィールド径を導波路構造により絞り込める値よりも小さくすることが可能である。さらに、ホログラフィック波動伝達媒体はフィールドの位相分布を制御できることから、図43(b)に示すように、等位相面を凹状すればよい。
図44は、比屈折率差1.5%の石英系の平面光波回路技術で作製したホログラフィック波動伝達媒体によりスポット径を基板水平方向のみ整形したものの近視野像の基板面に垂直な方向の断面である。ホログラフィック波動伝達媒体は出射端から約5μm先にビームウエストを形成するように設計したもので、近視野像においても出射端から約5μmに最小のフィールド径が実現された。参照は光導波路によるフィールドでホログラフィック波動伝達媒体の縦方向のフィールドの広がりと一致しているのが分かる。それに対して基板水平方向のフィールドは約3μmのフィールド直径であり、光導波路構造よりも小さなフィールド径が実現できた。これにより、従来、半導体レーザーとの結合損失が約8dBであったものが、4dBまで改善することができた。
本発明は、緩やかな屈折率分布(小さな屈折率高低差)でも充分に高効率で小型の光回路の提供を可能とする。
ホログラフィック波動伝達媒体の基本概念と基本構造とを説明するための図である。
従来のアレイ導波路格子回路の構成例を説明するための図である。
ホログラフィック波動伝達媒体の空間的な屈折率分布を決定するための計算手順を説明するためのフローチャートである。
計算手順の理解を容易にするために、ホログラフィック波動伝達媒体中でのフィールドの様子の一例を示した図である。
実施例1における光回路設計の設定を説明するための図である。
実施例1による屈折率分布((a))と透過スペクトル((b))を説明するための図である。
実施例1の平面光波回路状の屈折率分布を説明するための図である。
実施例2の1.31μm/1.55μmの波長フィルタの構成例を説明するための図である。
実施例2の光回路を構成する誘電体のピクセルを光の散乱点として考えた場合の光の広がりの様子を説明するための図である。
ピクセルサイズWをパラメータとして変化させて1.31μm/1.55μmの波長フィルタの光回路を構成した場合の、透過損失特性および漏話特性のピクセルサイズ依存性を説明するための図である。
実施例3の平面光回路における、基板垂直方向と基板水平方向での光の閉じ込めレベルを説明するための図である。
最小ピクセル単位を3μm角としたときの1点当たりの放射損失(結合損失)のフィールド半径依存性を説明するための図である。
実施例4における、ピクセルを光伝搬方向に配置した光回路を説明するための図((a))、および、ピクセルを光伝搬方向に対して傾斜させて配置した光回路を説明するための図((b))である。
実施例5における、仮想的なメッシュで画定された格子点にピクセルを配置して屈折率分布を形成した光回路を説明するための図((a))、および、格子点の位置とは無関係にy方向でのピクセル配置を行って屈折率分布を形成した光回路を説明するための図((b))である。
図14に示したピクセル配置に対応させて作製した実際の光回路(1.31μmと1.55μmの波長フィルタ)の屈折率分布を説明するための図である。
実施例6における、光回路の作製手順を説明するための図である。
高屈折率層Δ2をエッチング除去した領域を「低屈折率領域」、高屈折率層Δ2をエッチング除去せずに残存させた領域を「高屈折率領域」とする光回路の構成を説明するための図である。
実施例6におけるパラメータ調整のための計算例を説明するための図である。
実施例6の光回路である1.31/1.55μmWDM回路の特性(透過損失の波長依存性)を説明するための図である。
実施例7−1の光回路の製造方法を説明するための図である。
実施例7−2の光回路の製造方法を説明するための図である。
実施例7−3の光回路の製造方法を説明するための図である。
実施例7−4の光回路の製造方法を説明するための図である。
実施例7−5の光回路の屈折率分布の様子を説明するための導波路断面図である。
図24で示した構造を有する、1.31μm/1.55μmの(1×2)分岐回路の各々の損失特性(透過率)を説明するための図である。
実施例8の光回路の構成を説明するための概略図である。
実施例9の光回路の構成を説明するための断面図である。
実施例10の光回路の導波路部分の断面図である。
実施例11の光回路のサブピクセルの例を示す上面図である。
実施例12における、基板に対して水平な方向に屈折率が変化する構造を有する導波路の屈折率分布の概念図((a))、および、この屈折率分布中に平面波を伝搬させた際の反射減衰の様子を説明するための図((b))である。
ピクセル形状を円形とした場合の単位ピクセルにおける屈折率分布の様子を説明するための概念図((a))、および、円形ピクセルを用いて構成した回路の一部の上面概念図((b)、(c))である。
ピクセル形状を蜂の巣状とした場合のピクセル配列の様子を説明するための図である。
「準周期構造」と呼ばれる不完全周期構造を説明するための図である。
相互一斉配信・一斉受信構成とした光回路の構成例を説明するための図である。
図34の光回路の各ポート間での信号の流れを模式化した図である。
図35で模式化して示した各ポート間での信号の流れを、論理的な信号の流れを崩さずに変形した様子を説明するための図である。
不均等分配回路を用いた通信網の概念図である。
不均等分配回路の応用概念図である。
導波路回折格子の性質を説明するための図である。
出力スポット中心位置と波長との関係を説明するための図である。
実施例16における光回路の構成を説明するための図である。
フィールド形状としてガウス関数を仮定した場合の、中心位置の移動の様子を説明するための図である。
(a)は従来構成の導波路からの出射フィールドの等位相面の様子、(b)は本発明の回路構成の導波路からの出射フィールドの等位相面の様子を説明するための図である。
比屈折率差1.5%の石英系の平面光波回路技術で作製したホログラフィック波動伝達媒体によりスポット径を基板水平方向のみ整形したものの近視野像の基板面に垂直な方向の断面図である。
符号の説明
1 光回路基板
1−1 光回路の設計領域
1−11 高屈折率部
1−11a 第1の高屈折率部
1−11b 第2の高屈折率部
1−12 低屈折率部
2−1 入射面
2−2 出射面
3−1 入力光
3−2 出力光
4−1、4−2 スターカプラ(光合分波器)
5 アレイ導波路
6 波長板
21 シリコン基板
22 下部クラッド層
23 コア層
24 上部クラッド層
25 遮光マスク層
26 位相マスク
27 出力ポートの一部領域
28 レーザ光
29 レンズ