JP2004219784A - ハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ハロゲン化銀粒子表面上に色素発色団の吸着層と色素発色団を含まない化合物の吸着層が多層状態で吸着しているハロゲン化銀写真感光材料。
【選択図】 選択図なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は安定化された高感度なハロゲン化銀写真感光材料に関するものである。詳しくは、色素により高感度に分光増感されたハロゲン化銀写真感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ハロゲン化銀写真感光材料の高感度化のために多大な努力がなされてきた。ハロゲン化銀写真乳剤においては、ハロゲン化銀粒子表面に吸着した増感色素が感材に入射した光を吸収し、その光エネルギーをハロゲン化銀粒子に伝達することによって感光性が得られる。したがって、ハロゲン化銀の分光増感においては、ハロゲン化銀粒子単位粒子表面積あたりの光吸収率を増加させることによってハロゲン化銀へ伝達される光エネルギ−を増大させることができ、分光感度の高感度化が達成されると考えられる。ハロゲン化銀粒子表面の光吸収率を向上させるためには、単位粒子表面積あたりの分光増感色素の吸着量を増加させればよい。
しかし、ハロゲン化銀粒子表面への増感色素の吸着量には限界があり、単層飽和吸着(すなわち一層吸着)より多くの色素発色団を吸着させるのは困難である。従って、分光増感領域における個々のハロゲン化銀粒子の入射光量子の吸収率は未だ低いのが現状である。
【0003】
これらの点を解決する方法として増感色素を一層吸着より多く吸着させる多くの提案がなされてきた。例えば、特開2002−23294号の従来技術の説明においてこれらの先行技術文献・特許が記載されているが、特に、近年、特定のカチオン性の色素とアニオン性の色素の組合せによる多層吸着による高感度化が試みられている。(例えば、特許文献1、2、3参照)
しかし、これらの方法は、多層吸着構造の安定性で依然として十分満足できるレベルではなく、その改良が望まれている。また、増感色素が多層に吸着していない場合でも、その色素構造によっては安定性に問題がある場合があり、その問題解決も必要であった。
一方、高アスペクト比平板状ハロゲン化銀粒子(以下平板状粒子と呼ぶ)を用いると、その写真特性として、体積に対する表面積の比率が大きく、多量の増感色素を表面に吸着させる事ができるため、より高い色増感感度を得る事ができる。(例えば、特許文献4参照) ここで言うアスペクト比とは、平板状粒子の厚さに対する直径の比率で示される。さらに平板状粒子の直径とは乳剤を顕微鏡または電子顕微鏡で観察した時、粒子投影面積と等しい面積を有する円の直径を示すものである。また厚みは平板粒子を構成する二つの平行な面の距離で示される。このように、平板状粒子は高い色増感感度を得るために有利である。一方、高感度化のためにはハロゲン化銀乳剤をセレン増感することも有用であり、多くのセレン化合物が知られている。(例えば、特許文献5参照) しかし、これらの方法を用いても、上記の問題は解決できておらず、その改良が望まれている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−239789号公報
【特許文献2】
特開平10−171058号公報
【特許文献3】
欧州特許出願公開第0985965号明細書
【特許文献4】
米国特許第5、494、789号明細書
【特許文献5】
特開平4−109240号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高感度で安定なハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。さらには、多層吸着構造が塗布液経時に安定な高感度ハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は鋭意研究を行なった結果、下記の手段(1)〜(22)により達成されることを見出した。
(1) ハロゲン化銀粒子表面上に色素発色団及び色素発色団を含まない化合物が合わせて多層に吸着していることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
(2) (1)記載のハロゲン化銀写真感光材料において、色素発色団が1層より多く吸着していることを特徴とする(1)記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(3) (1)又は(2)記載のハロゲン化銀写真感光材料において、色素発色団を含まない化合物が多層吸着の最外層に存在することを特徴とする(1)又は(2)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(4) (1)〜(3)記載のハロゲン化銀写真感光材料において、色素発色団を含まない化合物の吸収極大波長が400nm以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(5) (1)記載の色素発色団を含む化合物と、それ以外の色素化合物とが、共有結合以外の引力によって相互に結合していることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(6) (1)記載の色素発色団を含む、複数の色素発色団からなる化合物を含むことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(7) (1)記載の色素発色団を含む化合物が、2価以上の荷電を有することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(8) (1)記載の色素発色団を含む化合物と、それ以外の色素化合物とが反対荷電を有することを特徴とする(5)記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(9) (1)記載の色素発色団を含む化合物が芳香族基を有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(10) (5)又は(8)記載の、それ以外の色素化合物が芳香族基を有することを特徴とする(5)又は(8)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(11) (1)記載の色素発色団を含む化合物が、水素結合供与基を有することを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(12) 分光吸収極大波長が500nm未満で光吸収強度が60以上、または分光吸収極大波長が500nm以上で光吸収強度が100以上のハロゲン化銀粒子を含有することを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(13) (1)〜(12)に記載のハロゲン化銀写真感光材料において、ハロゲン化銀粒子の増感色素による分光吸収率の最大値をAmaxとしたとき、Amaxの50%を示す最も短波長と最も長波長の波長間隔が120nm以下であることを特徴とする(1)〜 (12)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(14) (1)〜(12)に記載のハロゲン化銀写真感光材料において、ハロゲン化銀粒子の増感色素による分光感度の最大値をSmaxとしたとき、Smaxの50%を示す最も短波長と最も長波長の波長間隔が120nm以下であることを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(15) (1)〜(14)に記載のハロゲン化銀写真感光材料において、ハロゲン化銀粒子の一層目の色素発色団による分光吸収率の最大値をA1max、二層目以降の色素発色団による分光吸収率の最大値をA2max、ハロゲン化銀粒子の一層目の色素発色団による分光感度の最大値をS1max、二層目以降の色素発色団による分光感度の最大値をS2maxとしたとき、A1max及びA2maxまたはS1max及びS2maxが、400〜500nm、又は500〜600nm、又は600〜700nm、又は700〜1000nmの範囲にあることを特徴とする(1)〜(14)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(16) (1)〜(15)に記載のハロゲン化銀写真感光材料において、AmaxまたはSmaxの50%の分光吸収率を示す最も長波長が460nmから510nm、または560nmから610nm、または640nmから730nmの範囲であることを特徴とする(1)〜(15)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(17) (1)〜(16)に記載のハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀粒子において、二層目以降の色素発色団の励起エネルギーが一層目色素発色団へ、効率10%以上で移動することを特徴とする(1)〜(16)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(18) (1)〜(17)に記載のハロゲン化銀写真感光材料のハロゲン化銀粒子において、一層目の色素発色団と二層目以降の色素発色団がともにJバンド吸収を示すことを特徴とする(1)〜(17)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(19) (1)〜(18)に記載のハロゲン化銀写真感光材料において、該感光材料中のハロゲン化銀写真乳剤が、アスペクト比2以上の平板状粒子が乳剤中の全ハロゲン化銀粒子の50%(面積)以上存在する乳剤であることを特徴とする(1)〜(18)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(20) (1)〜(19)に記載のハロゲン化銀写真感光材料において、該感光材料中のハロゲン化銀写真乳剤が、セレン増感されていることを特徴とする(1)〜(19)のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(21) (1)において、色素発色団を含む化合物が1層以下の吸着であり、その外側に色素発色団を含まない化合物が層状に吸着していることを特徴とする(1)に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
(22) ハロゲン化銀乳剤に色素発色団を含む化合物をすべて添加後、色素発色団を含まない化合物を添加して多層に吸着させることを特徴とするハロゲン化銀粒子表面上に色素発色団及び色素発色団を含まない化合物を合わせて多層に吸着させる方法。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
本発明において、特定の部分を「基」と称した場合には、当該部分はそれ自体が置換されていなくても、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていても良いことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本発明における化合物に使用できる置換基は、置換の有無にかかわらず、どのような置換基でも良い。
【0009】
このような置換基をWとすると、Wで示される置換基としては、いかなるものでも良く、特に制限は無いが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基と言っても良い)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)2)、ホスファト基(−OPO(OH)2)、スルファト基(−OSO3H)、その他の公知の置換基、が例として挙げられる。
【0010】
更に詳しくは、Wは、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1、2、2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2、2、2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)はこのような概念のアルキル基を表すが、さらにアルケニル基、アルキニル基も含むこととする。アルケニル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換の
【0011】
アルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2、2、1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2、2、2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。〕、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)]、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、複素環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族の複素環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル、なお、1−メチル−2−ピリジニオ、1−メチル−2−キノリニオのようなカチオン性の複素環基でも良い。)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾールー5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換
【0012】
もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N、N−ジメチルカルバモイルオキシ、N、N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N、N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アンモニオ基(好ましくはアンモニオ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキル、アリール、ヘテロ環が置換したアンモニオ基、例えば、トリメチルアンモニオ、トリエチルアンモニオ、ジフェニルメチルアンモニオ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30
【0013】
の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3、4、5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N、N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N、N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N、N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2、3、5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N、N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、
【0014】
N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2から30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4から30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは
【0015】
無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N、N−ジメチルカルバモイル、N、N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1、3、4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、ホスフォ基、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)、ヒドラジノ基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のヒドラジノ基、例えば、トリメチルヒドラジノ)、ウレイド基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のウレイド基、例えばN、N−ジメチルウレイド)、を表す。
【0016】
また、2つのWが共同して環(芳香族、又は非芳香族の炭化水素環、又は複素環。これらは、さらに組み合わされて多環縮合環を形成することができる。例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環、が挙げられる。)を形成することもできる。
【0017】
上記の置換基Wの中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、−CONHSO2−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、−SO2NHSO2−基(スルフォニルスルファモイル基)、が挙げられる。
より具体的には、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセチルアミノスルホニル)、アリールカルボニルアミノスルホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基)、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル)、アリールスルホニルアミノカルボニル基(例えば、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル)が挙げられる。
【0018】
本発明において、色素発色団は、色素化合物の一部の部分構造として存在してもよいし、色素発色団のみで色素化合物を形成してもよい。後者の場合、色素発色団は色素化合物を表す。色素発色団を含む色素化合物は増感色素として好ましく用いることができる。
【0019】
本発明における色素発色団について以下の発色団[1]で説明する。
・発色団[1]
ここで述べた色素発色団とは、いかなるものでも良いが、具体的には、吸収極大波長が可視光(400nm〜700nm)、及び赤外光(700nm以上)にある、例えば、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素が挙げられる。
好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素などのメチン色素発色団が挙げられる。さらに好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素であり、さらに好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素であり、特に好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素であり、最も好ましくはシアニン色素である。
これらの色素の詳細については、下記の色素文献[2]に記載されている。
【0020】
・色素文献[2]
エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズーシアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds−Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社ーニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds−Special topics in heterocyclic chemistry)」、第18章、第14節、第482から515頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons) 社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds)」2nd.Ed.vol.IV、partB、1977刊、第15章、第369から422頁、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社刊、ニューヨーク、などに記載されている。
さらに説明を加えると、リサ−チ・ディスクロ−ジャ(RD)17643の23〜24頁、RD18716の648頁右欄〜649頁右欄、RD308119の996頁右欄〜998頁右欄、欧州特許第0565096A1号の第65頁7〜10行、に記載されているものを好ましく用いることができる。また、米国特許第5、747、236号(特に第30〜39頁)、米国特許第5、994、051号(特に第32〜43頁)、米国特許第5、340、694号(特に第21〜58頁、但し、(XI)、(XII)、(XIII)に示されている色素において、n 12、n15、n17、n18の数は限定せず、0以上の整数(好ましくは4以下)とする。)に記載されている、一般式及び具体例で示された部分構造、又は構造を持つ色素も好ましく用いることができる。
さらに、特開平10−239789号、特開平11−133531号、特開2000−267216号、特開2000−275772号、特開2001−75222号、特開2001−75247号、特開2001−75221号、特開2001−75226号、特開2001−75223号、特開2001−255615号、特開2002−23294号、特開平10−171058号、特開平10−186559号、特開平10−197980号、特開2000−81678号、特開2001−5132号、特開2001−166413号、特開2002−49113号、特開昭64−91134号、特開平10−110107号、特開平10−171058号、特開平10−226758号、特開平10−307358号、特開平10−307359号、特開平10−310715号、特開2000−231174 号、特開2000−231172号、特開2000−231173号、特開2001−356442号、欧州特許第0985965A号、欧州特許第0985964A号、欧州特許第0985966A号、欧州特許第0985967A号、欧州特許第1085372A号、欧州特許第1085373A号、欧州特許第1172688A号、欧州特許第1199595A号、欧州特許第887700A1号、特開平10−239789号、特開2001−75222号、特開平10−171058号に記載されている、一般式及び具体例で示された部分構造、又は構造を持つ色素も好ましく用いることができる。
【0021】
次に、本発明における色素発色団および色素発色団を含まない化合物の吸着について説明を加える。
「ハロゲン化銀粒子表面上に色素発色団、及び色素発色団を含まない化合物が合わせて多層吸着している」とは、ハロゲン化銀粒子表面上に色素発色団と色素発色団を含まない化合物を合わせて一層より多く吸着(別の表現をすると、積層)していることを意味する。1層以下の色素発色団、色素発色団を含まない化合物を合わせて1層より多く吸着している場合も本発明に含まれ、色素の吸着構造の安定化に効果的である。また、色素発色団を含まない化合物が最外層に存在する場合に、より顕著な安定化効果を示し好ましい。
さらに好ましくは、色素発色団だけで一層より多く吸着している場合(すなわち、色素発色団が多層吸着している場合)であり、多層吸着構造の安定化により顕著な効果を示す。また、係る場合、色素発色団を含まない化合物が多層吸着の最外層に存在する場合が、多層吸着構造の安定化に最も効果的であり、特に好ましい。
なお、ここで最外層とはハロゲン化銀粒子表面から最も遠い層を意味する。
【0022】
具体的には、例えば、分子間力を利用することで色素、及び色素発色団を含まない化合物(以下、色素発色団等)をハロゲン化銀粒子表面へ一層飽和被覆量より多く吸着させたり、複数の色素発色団からなる化合物(いわゆる多発色団色素化合物、又は連結型色素)(該化合物において複数の色素発色団は共役していない方が好ましい)、及び色素発色団を含まない化合物をハロゲン化銀粒子に吸着させる方法などが挙げられ、色素発色団を含まない化合物を含有しない場合については、以下に示した多層吸着関連特許[3]の中に記載されている。
【0023】
・多層吸着関連特許[3]
特開平10−239789号、特開平11−133531号、特開2000−267216号、特開2000−275772号、特開2001−75222号、特開2001−75247号、特開2001−75221号、特開2001−75226号、特開2001−75223号、特開2001−255615号、特開2002−23294号、特開平10−171058号、特開平10−186559号、特開平10−197980号、特開2000−81678号、特開2001−5132号、特開2001−166413号、特開2002−49113号、特開昭64−91134号、特開平10−110107号、特開平10−171058号、特開平10−226758号、特開平10−307358号、特開平10−307359号、特開平10−310715号、特開2000−231174号、特開2000−231172号、特開2000−231173号、特開2001−356442号、欧州特許第0985965A号、欧州特許第0985964A号、欧州特許第0985966A号、欧州特許第0985967A号、欧州特許第1085372A号、欧州特許第1085373A号、欧州特許第1172688A号、欧州特許第1199595A号、欧州特許第887700A1号。更に、特開平10−239789号、特開2001−75222号、特開平10−171058号に示した特許に記載されている技術と併用することが好ましい。
【0024】
本発明においてハロゲン化銀粒子表面上に色素発色団等が多層吸着しているとは、ハロゲン化銀粒子表面に色素発色団等が一層より多く吸着したハロゲン化銀乳剤を指し、該乳剤に添加される色素のうち、ハロゲン化銀粒子表面の色素占有面積が最も小さい色素によって到達する単位表面積あたりの飽和吸着量を一層飽和被覆量とし、この一層飽和被覆量に対して色素発色団等の単位面積当たりの吸着量が多い状態をいう。また、吸着層数は一層飽和被覆量を基準とした時に単位粒子表面積あたりの色素発色団等の吸着量を意味する。ここで、多発色団色素化合物の場合には、各々連結しない状態での個々の色素発色団を有する色素の色素占有面積を基準とすることができる。例えば、連結部位をアルキル基やアルキルスルホン酸基に変更した、一つの色素発色団を有する色素を挙げることができる。
【0025】
色素占有面積は、遊離色素濃度と吸着色素量の関係を示す吸着等温線、および粒子表面積から求めることが出来る。吸着等温線は、例えばエー・ハーツ(A.Herz)らのアドソープション フロム アクエアス ソリューション(Adsorption from Aqueous Solution)アドバンシーズ イン ケミストリー シリーズ(Advances in Chemistry Series)No.17、173ページ(1968年)などを参考にして求めることが出来る。
【0026】
色素等(この項では「色素、及び色素発色団を含まない化合物」を「色素等」と表示)の乳剤粒子への吸着量は、色素等を吸着させた乳剤を遠心分離器にかけて乳剤粒子と上澄みのゼラチン水溶液に分離し、上澄み液の分光吸収測定から未吸着色素等の濃度を求めて添加色素等の量から差し引くことで吸着色素等の量を求める方法と、沈殿した乳剤粒子を乾燥し、一定質量の沈殿をハロゲン化銀可溶剤と色素等の可溶剤に、例えばチオ硫酸ナトリウム水溶液とメタノールの混合液に溶解し、分光吸収測定することで吸着色素等の量を求める方法の2つの方法を用いることが出来る。複数種の増感色素(複数種の色素発色団を含まない化合物の場合も同様)を用いている場合には高速液体クロマトグラフィーなどの手法で個々の色素について吸着量を求めることも出来る。上澄み液中の色素量を定量することで色素吸着量を求める方法は、例えばダブリュー・ウエスト(W.West)らのジャーナル オブ フィジカル ケミストリー(Journal ofPhysical Chemistry)第56巻、第1054頁(1952年)などを参考にすることができる。しかし、色素添加量の多い条件では未吸着色素までも沈降することがあり、上澄み中の色素濃度を定量する方法では必ずしも正しい吸着量を得られないことがあった。一方沈降したハロゲン化銀粒子を溶解して色素吸着量を測定する方法であれば乳剤粒子の方が圧倒的に沈降速度が速いため粒子と沈降した色素は容易に分離でき、粒子に吸着した色素量だけを正確に測定できる。この方法が色素吸着量を求める方法として最も信頼性が高い。
【0027】
ハロゲン化銀粒子表面積の測定方法の一例としては、レプリカ法による透過電子顕微鏡写真を撮影して、個々の粒子の形状とサイズを求め算出する方法がある。この場合、平板状粒子において厚みはレプリカの影(シャドー)の長さから算出する。透過型電子顕微鏡写真の撮影方法としては、例えば、日本電子顕微鏡学会関東支部編「電子顕微鏡試料技術集」誠分堂新光社1970年刊、バターワーズ社(Buttwrworths)、ロンドン、1965刊、ピー・ビー・ヒルシュ(P.B.Hirsch)らのエレクトロン マイクロスコープ オブ チン クリスタル(Electron Microscopy of ThinCrystals)を参考にすることができる。
【0028】
他の方法としては、例えばエイ・エム・クラギン(A.M.Kragin)らのらのジャーナル オブ フォトグラフィック サイエンス(The Journal of Photographic Science)第14巻、第185頁(1966年)、ジェイ・エフ・パディ(J.F.Paddy)のトランスアクションズ オブ ザ ファラデ− ソサイアティ(Transactions of the Faraday Society)第60巻、第1325頁(1964年)、エス・ボヤー(S.Boyer)らのジュナル デ シミフィジク エ デ フィジコシミ ビジョロジク(Journal de Chimie Physique et de Physicochimie biologique)第63巻、第1123頁(1963年)、ダブリュー・ウエスト(W.West)らのジャーナル オブ フィジカル ケミストリー(Journal of Physical Chemistry)第56巻、第1054頁(1952年)、エイチ・ソーヴエニアー(H.Sauvenier)編集、イー・クライン(E.Klein)らのインターナショナル・コロキウム(International Coloquium)、リエージュ(Liege)、1959年、「サイエンティフィック フォトグラフィー(Scientific Photography)」などを参考にすることができる。
色素等の占有面積は上記の方法で個々の場合について実験的に求められるが、通常 用いられる増感色素の分子占有面積はほぼ80Å2付近であるので、簡易的にすべての色素について色素占有面積を80Å2としておおよその吸着層数を見積もることもできる。
【0029】
ハロゲン化銀粒子への色素発色団等の吸着は、好ましくは1.3層以上、さらに好ましくは2.3層以上、特に好ましくは2.7層以上である。なお、上限は特にないが、11層以下が好ましく、さらに好ましくは6層以下であり、特に好ましくは4層以下である。
また、ハロゲン化銀粒子への色素発色団の吸着は、好ましくは1.3層以上、さらに好ましくは1.5層以上、特に好ましくは1.7層以上である。なお、上限は特にないが、10層以下が好ましく、さらに好ましくは5層以下であり、特に好ましくは3層以下である。
【0030】
本発明にかかわるハロゲン化銀写真乳剤は、分光吸収極大波長が500nm以上の粒子の場合には光吸収強度が100以上、分光吸収極大波長が500nm未満の粒子の場合には光吸収強度が60以上のハロゲン化銀粒子を全ハロゲン化銀粒子投影面積の1/2以上含むことが好ましい。また、分光吸収極大波長が500nm以上の粒子の場合には、光吸収強度は好ましくは150以上、さらに好ましくは170以上、特に好ましくは200以上、であり、分光吸収極大波長が500nm未満の粒子の場合には、光吸収強度は好ましくは90以上、さらに好ましくは100以上、特に好ましくは120以上である。上限は特にないが、好ましくは2000以下、さらに好ましくは800以下、特に好ましくは400以下である。
【0031】
本発明において光吸収強度とは、単位粒子表面積あたりの増感色素による光吸収面積強度であり、粒子の単位表面積に入射する光量をI0 、該表面で増感色素に吸収された光量をIとしたときの光学濃度Log(I0 /(I0 −I))を波数(cm−1)に対して積分した値と定義する。積分範囲は5000cm−1から35000cm−1までである。
【0032】
光吸収強度を測定する方法の一例としては、顕微分光光度計を用いる方法を挙げることができる。顕微分光光度計は微小面積での測定ができる装置であり、一粒子の透過スペクトルおよび反射スペクトルの測定が可能である。両者の測定より吸収スペクトルを得ることができる。顕微分光法による一粒子の吸収スペクトル測定の詳細については、山下らの報告(日本写真学会、1996年度年次大会講演要旨集、15ページ)を参照することができる。この吸収スペクトルから一粒子あたりの吸収強度が求められるが、粒子を透過する光は上部面と下部面の二面で吸収されるため、粒子表面の単位面積あたりの吸収強度は前述の方法で得られた一粒子あたりの吸収強度の1/2として求めることができる。このとき、吸収スペクトルを積分する区間は光吸収強度の定義上は5000cm−1から35000cm−1であるが、実験上は増感色素による吸収のある区間の前後500cm−1程度を含む区間の積分で構わない。
【0033】
また、光吸収強度は増感色素の振動子強度と単位面積当たりの吸着分子数で一義的に決定される値であり、増感色素の振動子強度、色素吸着量および粒子表面積を求めれば光吸収強度に換算することが出来る。
増感色素の振動子強度は、増感色素溶液の吸収面積強度(光学濃度×cm−1)に比例する値として実験的に求めることが出来るので、1Mあたりの色素の吸収面積強度をA(光学濃度×cm−1)、増感色素の吸着量をB(mol/molAg)、粒子表面積をC(m2 /molAg)とすれば、次の式により光吸収強度を誤差10%程度の範囲で求めることが出来る。
0.156 ×A×B/C
この式から光吸収強度を算出しても、前述の定義に基づいて測定された光吸収強度(Log(I0 /(I0 −I)))を波数(cm−1)に対して積分した値)と実質的に同じ値が得られる。
【0034】
本発明において、色素発色団が一つである通常の色素の場合は、一層目色素とはハロゲン化銀粒子に隣接し内側に吸着している色素のことで、二層目以降の色素とは前記の吸着量測定からハロゲン化銀粒子には吸着しているが、ハロゲン化銀粒子に直接は吸着せず一層目色素に隣接した外側の色素のことである。多発色団色素化合物の場合は、一層目色素とはハロゲン化銀粒子に隣接し内側に吸着している色素発色団のことで、二層目以降の色素とは、該内側の色素発色団に隣接した外側の色素発色団のことである。
【0035】
本発明において、二層目以降の色素の吸収極大波長は一層目色素の吸収極大波長と同じか短波長であることが好ましく、両者の波長の間隔は好ましくは0nm から50nm、さらに好ましくは0nm から30nm、特に好ましくは0nm から20nmである。
【0036】
本発明において、一層目色素と二層目以降の色素の還元電位、及び酸化電位はいかなるものでも良いが、一層目色素の還元電位が二層目以降の色素の還元電位の値から0.2vを引いた値よりも、貴であることが好ましく、さらに好ましくは0.1Vを引いた値よりも貴であり、特に好ましくは一層目色素の還元電位が二層目以降の色素の還元電位よりも貴であることである。
【0037】
還元電位、及び酸化電位の測定は、種々の方法が可能であるが、好ましくは、位相弁別式第二高調波交流ポーラログラフィーで行う場合であり、正確な値を求めることができる。なお、以上の位相弁別式第二高調波交流ポーラログラフィーによる電位の測定法はジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(Journal of Imaging Science)、第30巻、第27頁(1986年)に記載されている。
【0038】
また、二層目以降の色素は、ゼラチン乾膜中では発光性であることが好ましい。発光性色素の種類としては色素レーザー用に使用される色素の骨格構造を持つものが好ましい。これらは例えば、前田三男、レーザー研究、第8巻、694頁、803頁、958頁(1980年)及び第9巻、85頁(1981年)、及びF. Sehaefer著、「Dye Lasers」、Springer(1973年)の中に整理されている。
二層目色素部分のみの色素のゼラチン乾膜中での発光収率は、好ましくは0.05以上であり、より好ましくは、0.1以上であり、さらに好ましくは0.2以上であり、特に好ましくは0.5以上である。
【0039】
非平衡励起エネルギー移動機構で二層目以降の色素から一層目色素へのエネルギー伝達が起こる場合には、二層目色素部分のみのゼラチン乾膜中の励起寿命は長い方が好ましい。この場合には二層目色素部分の発光収率は高くても低くても構わない。二層目色素部分のみのゼラチン乾膜中の蛍光寿命は、好ましくは10ps以上、より好ましくは40ps以上、さらに好ましくは160ps以上である。二層目以降の色素の蛍光寿命に特に上限はないが、好ましくは1ms以下である。
二層目以降の色素の発光と一層目色素の吸収の重なりは大きいことが好ましい。二層目以降の色素の発光スペクトルをl(ν)、一層目色素の吸収スペクトルをa(ν)としたとき、それらの積l(ν)・ a(ν)は好ましくは0.001以上であり、より好ましくは0.01以上であり、さらに好ましくは0.1以上であり、特に好ましくは0.5以上である。ここでνは波数(cm−1)で、それぞれのスペクトルはスペクトル面積を1に規格化している。
【0040】
二層目以降の色素の励起エネルギーの一層目色素へのエネルギー移動効率は、好ましくは10%以上、さらに好ましくは30%、特に好ましくは60%以上、最も好ましくは90%以上である。ここで二層目以降の色素の励起エネルギーとは、二層目以降の色素が光エネルギーを吸収して生成した励起状態の色素が有するエネルギーを指す。ある分子の持つ励起エネルギーが他の分子に移動する場合には励起電子移動機構、フェルスター型エネルギー移動機構(Forster
Model)、デクスターエネルギー移動機構(Dextor Model)等を経て励起エネルギーが移動すると考えられているため、本研究の多層吸着系においても、これらの機構から考えられる効率よい励起エネルギー移動を起こすための条件を満たすことが好ましい。さらに、フェルスター型エネルギー移動機構を起こすための条件を満たすことが特に好ましい。フェルスター型のエネルギー移動効率を高めるためには、乳剤粒子表面近傍の屈折率を低下させることも有効である。
二層目色素の蛍光減衰速度解析や一層目色素の蛍光の立ち上がり速度等の光励起状態のダイナミクス解析によって二層目以降の色素から一層目色素へのエネルギー移動の効率を求めることができる。
また、二層目以降の色素から一層目色素へのエネルギー移動の効率は、二層目以降の色素励起時の分光増感効率/一層目色素励起時の分光増感効率としても求めることができる。
【0041】
本発明においては、一層目に吸着している色素はJ会合体を形成していることが好ましい。また二層目以降の色素は単量体で吸着してもH会合体のような短波長会合を形成しても良いが、特に好ましくはJ会合体を形成して吸着することである。J会合体は吸光係数が高く、吸収も鋭い点で好ましいため通常の単層吸着での分光増感においても非常に有用であるが、二層目以降の色素としても上記分光特性を持つことは非常に好ましい。しかも蛍光収率が高く、ストークスシフトも小さいため、光吸収波長の接近した一層目色素へ二層目以降の色素の吸収した光エネルギーをフェルスター型のエネルギー移動で伝達するのにも好ましい。
【0042】
光吸収強度60、又は100以上のハロゲン化銀写真乳剤粒子を含有する乳剤の増感色素による分光吸収率の最大値Amax、および分光感度の最大値Smaxのそれぞれ50%を示す最も短波長と最も長波長の間隔は、好ましくは120nm以下であり、さらに好ましくは100nm以下である。
またAmaxおよびSmaxの80%を示す最も短波長と最も長波長の間隔は好ましくは20nm以上で、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは80nm以下、特に好ましくは50nm以下である。
またAmaxおよびSmaxの20%を示す最も短波長と最も長波長の間隔は、好ましくは180nm以下、さらに好ましくは150nm以下、特に好ましくは120nm以下、最も好ましくは100nm以下である。
AmaxまたはSmaxの50%の分光吸収率を示す最も長波長は好ましくは460nmから510nm、または560nmから610nm、または640nmから730nmである。
【0043】
また、ハロゲン化銀粒子の一層目の色素発色団による分光吸収率の最大値をA1max、二層目以降の色素発色団による分光吸収率の最大値をA2maxとしたとき、A1max及びA2maxが、400〜500nm、又は500〜600nm、又は600〜700nm、又は700〜1000nmの範囲にあることが好ましい。
さらに、ハロゲン化銀粒子の一層目の色素発色団による分光感度の最大値をS1max、二層目以降の色素発色団による分光感度の最大値をS2maxとしたとき、S1max 及びS2maxが、400〜500nm、又は500〜600nm、又は600〜700nm、又は700〜1000nmの範囲にあることが好ましい。
【0044】
本発明では、本発明の色素以外を添加しても構わないが、本発明の色素は、好ましくは全色素添加量の50%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは90%以上である。
【0045】
本発明における色素発色団を含まない化合物について、以下に説明する。ここで、色素発色団とは、前述した色素等であり、かつ可視光(400nm〜700nm)、赤外光(700nm以上)に吸収極大波長を持つものを意味する。本発明における色素発色団を含まない化合物は、これら色素等を含まない化合物を意味し、色素発色団を含まない限り、400nmより長波長に吸光度の低い吸収極大波長を有していても良いが、吸収極大波長として好ましくは400nm以下、特に好ましくは350nm以下、最も好ましくは300nm以下である。吸収極大波長の下限は特にないが、好ましくは100nm以上、さらに好ましくは200nm以上である。 上記の吸収極大波長はハロゲン化銀への吸着状態における値であり、近似的には有機溶媒(例えば、メタノール)中での値で置き換えられる。
【0046】
また、色素発色団を含まない化合物は二層目以降に存在している場合が好ましく、さらに好ましくは最外層(最も外側の層)に存在する場合であり、特に好ましくは1層目、及び2層目が色素発色団から構成され、最外層の3層目に色素発色団を含まない化合物が存在する場合である。この場合に、多層吸着構造の安定化に最も効果的である。
これらの色素発色団を含まない化合物は、これらを色素発色団を含む化合物に置き換えた場合に比べて、写真処理後に残存する色素に由来する着色成分(いわゆる残色)として弊害をもたらすことがない点で優れている。
【0047】
なお、色素発色団を含まない化合物の存在量はいかなる量でも良いが、好ましくは、一層分の量の20%以上、さらに好ましくは50%以上、特に好ましくは80%以上であり、上限は特にないが、好ましくは180%以下、さらに好ましくは150%以下、特に好ましくは120%以下である。最も好ましくは100%±10%以内の場合である。
【0048】
本発明の色素発色団を含まない化合物は、多層吸着を形成する色素発色団又は色素発色団を含まない化合物と共有結合以外の引力によって相互に結合している場合が好ましく、これらの引力としてはいかなるものでも良いが、例えば、ファン・デル・ワールス(van der Waals)力(さらに細かくは、永久双極子−永久双極子間に働く配向力、永久双極子−誘起双極子間に働く誘起力、一時双極子−誘起双極子間に働く分散力に分けて表現できる。)、電荷移動力(CT)、クーロン力(静電力)、疎水結合力、水素結合力、配位結合力などが挙げられる。これらの結合力は、1つだけ利用することも、また任意のものを複数組み合わせて用いることもできる。
好ましくは、ファン・デル・ワールス力、電荷移動力、クーロン力、疎水結合力、水素結合力であり、さらに好ましくはファン・デル・ワールス力、クーロン力、水素結合力であり、特に好ましくはファン・デル・ワールス力、クーロン力であり、最も好ましくはファン・デル・ワールス力である。
相互に結合しているとは、これらの引力によって色素発色団を含まない化合物が拘束されていることを意味する。別の表現で説明すると、引力のエネルギー(すなわち吸着エネルギー(ΔG))として好ましくは15kJ/mol以上、さらに好ましくは20kJ/mol以上、特に好ましくは40kJ/mol以上の場合である。上限は特にないが、好ましくは5000kJ/mol以下、さらに好ましくは1000kJ/mol以下である。
また、本発明の色素発色団を含まない化合物は、会合体を形成していることが好ましい。
【0049】
本発明の色素発色団を含まない化合物は、陰電荷を持つ置換基を1〜5個持つ場合が好ましく、さらに好ましくは1、2個持つ場合であり、特に好ましくは1個だけ持つ場合である。
陰電荷を持つ置換基としては、いかなるものでも良いが、 後述する酸基を持ちプロトンが解離して陰電荷を持つ置換基を用いることができる。 具体的には、例えばスルホ基、カルボキシル基、スルファト基、−CONHSO2−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、−SO2NHSO2−基(スルフォニルスルファモイル基)、ホスファト基、ホスホノ基、ボロン酸基、解離性の水酸基、など、これらのpkaと周りのpHによっては、プロトンが解離する基が挙げられる。例えばpH5〜11の間で90%以上解離することが可能なプロトン解離性酸性基が好ましい。
さらに好ましくはスルホ基、カルボキシル基、−CONHSO2−基、−CONHCO−基、−SO2NHSO2−基であり、特に好ましくは、スルホ基、カルボキシル基であり、最も好ましくはスルホ基である。
【0050】
また、多層吸着状態では非解離のカルボキシル基を持つ化合物は、これらのカルボキシ基が現像時に解離することにより親水性が向上し、増感色素の残色を改良することができる点で好ましく用いることができる。
【0051】
本発明の色素発色団を含まない化合物においては、後述の色素の親疎水性及び会合性と、以下の関係にある場合が好ましい。
親疎水性:色素の親疎水性の70%以上の疎水性、さらに好ましくは90%以上の疎水性を持つ。上限は特にないが、200%以下の疎水性を持つ場合が好ましい。
会合性:色素の会合性の70%以上の会合性、さらに好ましくは90%以上の会合性を持つ。上限は特にないが、200%以下の会合性を持つ場合が好ましい。
親疎水性についての詳細は、構造活性相関懇話会(代表)藤田稔夫編、化学の領域増刊122号「薬物の構造活性相関−ドラッグデザインと作用機作研究への指針」、南江堂、1979年刊、第2章第43頁〜203頁に記載されており、フラスコ・シェーキング(Flask shaking)法、高速液体クロマトグラフ法、薄層クロマトグラフ法等を用いることができる。また、下記の文献a)記載のフラグメント法、又はb)に記載のソフトウェアーパッケージによる方法で計算して求めることもできる。
文献a):シー・ハンシュ(C.Hansch)、エー・ジェー・レオ(A.J.Leo)著、「 サブスティチュエント・コンスタンツ・フォー・コーリレイション・アナリシス・イン・ケミストリー・アンド・バイオロジー(Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology)」、ジョン・ウイリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)社、ニューヨーク(New York) 、1979年刊。
文献b):メディケム(Medchem)ソフトウェアーパッケージ(Pomona College、Claremont、Californiaから開発、販売されている第3.54版)
会合については、松原孝治、田中俊夫、日本写真学会誌、第52巻第5号、第395〜399頁、1989年、に記載の方法等を用いて評価することができる。
【0052】
また、本発明の色素発色団を含まない化合物においては、さらにハロゲン化銀粒子への吸着基を含まない化合物が好ましい。吸着基を含む場合、色素発色団を含まない本発明の化合物が、ハロゲン化銀粒子に直接吸着(すなわち、1層目に吸着)するため好ましくない。
以下にハロゲン化銀粒子への吸着基について説明する。ハロゲン化銀粒子への吸着基としては多くのものがあるが、例えば窒素原子、硫黄原子、リン原子、セレン原子、又はテルル原子のうち少なくとも一つの原子を有するハロゲン化銀粒子への吸着を促進する基が挙げられる。これらは、銀配位子、カチオン性界面活性剤部分であっても良い。銀配位子部分は、硫黄酸類、又はセレンやテルルの類似体、窒素酸類、チオエーテル類、又はセレンやテルルの類似体、ホスフィン類、チオアミド類、セレナアミド類、テルルアミド類、炭素酸類などからなる。前述の酸性化合物は、例えば酸解離定数pKaが5以上14以下である。硫黄酸類としては、銀イオンと銀メルカプタン、又は複塩を作る、メルカプタン、又はチオールが挙げられる。スルフィドイオン前駆体でない安定なC−S結合を持つチオール類は、”ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス”(The Theory of the Photographic Process)32−34頁(1977年刊)に記載されているようにハロゲン化銀吸着物質として作用する。
【0053】
ハロゲン化銀への吸着基として具体的な例としては、アルキルメルカプタン、環式又は非環式のチオエーテル基、ベンゾチアゾール、テトラアザインデン、ベンゾトリアゾール、テトラアルキルチオウレア、メルカプト置換複素環化合物(特に、メルカプトテトラゾール、メルカプトトリアゾール、メルカプトチアジアゾール、メルカプトイミダゾール、メルカプトオキサジアゾール、メルカプトチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、メルカプトベンジチアゾール、メルカプトベンゾオキサゾール、メルカプトピリミジン、メルカプトトリアジン、フェニルメルカプトテトラゾール、1、2、4ートリアゾリウムチオレートなど)が挙げられる。
カチオン性界面活性剤もまた、ハロゲン化銀への吸着基として作用する。これらは、ハロゲン、酸素、硫黄、又は窒素原子に基づく官能基で置換されていても良い炭素数4以上の炭化水素基を持つものが含まれ、カチオン部としてはアンモニウム基、スルホニウム基、フォスフォニウム基などが挙げられる。このようなカチオン性界面活性剤はジャーナル・コロイド・インターファイス・サイエンス(J.Colloid interface Sci.)、第22巻、第391頁(1966年)に記載されているように、大部分クーロン引力によって過剰のハロゲン化物イオンを有する乳剤中のハロゲン化銀粒子に吸着している。例えば、ジメチルドデシルスルホニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、Nードデシルニコチン酸ベタイン、デカメチレンピリジニウムイオンが挙げられる。
吸着基として具体的には、特開平9−211769号の第3頁〜第8頁に記載の吸着基が挙げられる。
【0054】
本発明の色素発色団を含まない化合物の還元電位、及び酸化電位はいかなるものでも良いが、該化合物の還元電位は色素発色団の還元電位の値よりも卑である場合が好ましい。
【0055】
本発明の色素発色団を含まない化合物としては、いかなるものでも良いが、好ましくは、以下のものが挙げられる。
(1)ビストリアジニル置換スチルベン化合物(これらの化合物の骨格については、特開平6−329936号公報、特開平7−140625号公報、特開平10−104809号公報または特開2001−281823号公報、「染色ノート」第19版(色染社)P.165〜P.168 などに挙げられている。)、ビスアリール置換トリアジン化合物(これらの化合物の骨格については、米国特許第6、153、364号などに記載されている。)、ビストリアジニル置換アリーレン化合物(これらの化合物の骨格については、特開2002−139822号公報などに記載されている。)、ビスアリール置換アリーレン化合物(これらの化合物の骨格については、特願2002−352759号明細書、特願2002−355512号明細書、特願2002−60245号明細書などに記載されている。)、ビスピリミジル置換スチルベン化合物(これらの化合物の骨格については、特開平6−161017号公報、米国特許第4、596、767号などに記載されている。)
(2)液晶性の化合物
これらの化合物の骨格については、松本正一、角田市郎著、液晶の基礎と応用、工業調査会(1991年刊)、吉野勝美、尾崎雅則著、液晶とディスプレー応用の基礎、コロナ社(1994年刊)、ディー.デムス(D.Demus)、ジェー.グッドバイ(J.Goodby)、ジー.ダブリュー.グレイ(G.W.Gray)、エッチ.ダブリュー.スピース(H.W.Spiess)、ヴイ.ヴィル(V.Vill)、ハンドブック・オブ・リキッド・クリスタルズ(Handbook of Liquid Crystals)、Vol.1、2A、2B、3、WILEY−VCH社(1998年刊)等に挙げられている。
【0056】
(3)水素結合性化合物(特に多点水素結合性化合物)
水素結合としては、いかなるものでも良いが、メラミン類とシアヌル酸類、メラミン類とバルビツール酸類、あるいは2−ベンズイミダゾロン類のような、一つより多い多点の水素結合を用いる方法が、好ましく用いられる。これらの多点水素結合については、G.M.Whitesides、E.E.Silmanek、J.P.Mathias、C.T.Seto、D.N.Chin、M.Mammen、D.M.Gordon、Acc.Chem.Res.、28、37(1995)、G.M.Whitesides、J.P.Mathias、C.T.Seto、Science、254、1312(1991)、K.E.Schwiebert、D.N.Chin、J.C.Mcdonald、G.M.Whitesides、J.Am.Chem.Soc.、118、4018(1996)、N.Kimizuka、et al、J.Am.Chem.Soc.、115、4387(1993)などに記載されている。
【0057】
(4)弱い相互作用を複数利用して、全体では強い相互作用となる化合物
例えば、ホスト−ゲスト相互作用がある化合物。具体的には、クラウンエーテル、クリプタンド、スフェランド、カリックスアレーン、シクロファン、シクロデキストリン、カテナン、ロタクサン、などが挙げられる。これらについては、F.Vogtle、”Supramolecular Chemistry”、John Wiley and Sons、Ltd、(1989)、M.Gubelmann、A.Harriman、J.M.Lehn、J.L.Sessler、J.Phys.Chem.94、308(1990)、などに記載されている。
【0058】
(5)LB膜、2分子膜を形成する化合物
これらは、T.L.Penner、D.Mobius、J.Am.Chem.Soc.104、7407(1982)、M.Shimomura、T.Kunitake、J.Am.Chem.Soc.、109、5175(1987)、下村政嗣、「固定化2分子膜‐光機能材料としての可能性」、ぶんしん出版、(1990)、F.Vogtle、”Supramolecular Chemistry”、John Wiley and Sons、Ltd、(1989)、などに記載されている。
【0059】
(6)ハロゲン化銀乳剤中で、一種の共有結合を形成する化合物
例えば、シリコン層を形成する場合がある。例えば、ヒドロキシ基を持つ化合物とテトラアルコキシシランを混合することで有機シリコン層を形成できる。また、リン酸基を持つ化合物とZr塩を基本単位とした層を形成する場合もある。これらは、いわゆる、有機−無機のハイブリッドしたゾルゲル法で形成可能である。これらについては、Chemical Reviews、95、399〜438(1995)(特に第433頁)、Li Dequan、M.A.Ratner、T.J.Marks、J.Am.Chem.Soc.、112、7389(1990)、松岡賢、「色素の化学と応用」、大日本図書(株)、(1994)、などに記載されている。
【0060】
上記の(1)〜(6)のなかで、好ましくは(1)〜(3)であり、さらに好ましくは(1)、(2)であり、特に好ましくは(1)である。(1)のなかで、好ましくは、ビストリアジニル置換スチルベン化合物、ビスアリール置換トリアジン化合物、ビスアリール置換アリーレン化合物、ビスピリミジル置換スチルベン化合物であり、さらに好ましくは、ビスアリール置換トリアジン化合物、ビスアリール置換アリーレン化合物である。
【0061】
本発明の色素発色団を含まない化合物としては、分子内に芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を1個以上含有する化合物が好ましく、より好ましくは芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を3個以上含有する化合物であり、さらに好ましくは芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を5個以上含有する化合物であり、特に好ましくは芳香族炭化水素環を5個以上含有する化合物である。芳香族炭化水素環又は芳香族複素環の個数に上限は特にないが、10個以下が好ましい。なお、ここでは、縮環系はそれぞれの環を計算し、例えば、ナフタレン環は2個と数える。なお、該化合物は、前述した、本発明の化合物の好ましい要件を満たす場合が好ましい。
本発明の色素発色団を含まない化合物としては、特に、以下の一般式(G)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0062】
一般式(G):
A1−(X1)n1−B1−(X2)n2−A2 Mdmd
【0063】
式中、A1及びA2はアリール基又は芳香族複素環基を表し、B1はπ電子を有する原子群を表し、X1及びX2は連結基を表す。n1及びn2は0又は1を表す。Mdは電荷均衡対イオンを表わし、mdは分子の電荷を中和するのに必要な0以上の数を表わす。
【0064】
一般式(G)について詳しく説明する。
一般式(G)で表わされる化合物は、前述した、本発明の化合物の好ましい要件を満たす場合が好ましい。
特に好ましくは、前述したように、陰電荷を持つ置換基を1〜5個持つ場合が好ましく、さらに好ましくは1、2個持つ場合であり、特に好ましくは1個だけ持つ場合である。
また、多層吸着状態では非解離のカルボキシル基を持つ化合物は、これらのカルボキシ基が現像時に解離することにより親水性が向上し、増感色素の残色を改良することができる点で好ましく用いることができる。
A1及びA2はアリール基または芳香族複素環基を表し、アリール基として好ましくは、炭素数6から20、さらに好ましくは、炭素数6から15の置換もしくは無置換のアリール基(置換アリール基としては、例えば置換基の例として挙げた前述のWが置換したアリール基が挙げられる。具体的には、フェニル、3−カルボキシフェニル、4−カルボキシフェニル、3、5−ジカルボキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−スルホフェニル、4−スルホフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、5−スルホ−2−ナフチル、5−カルボキシ−2−ナフチル、6−スルホ−2−ナフチル、1−ナフチル、6−カルボキシ−1−ナフチル、6−スルホ−1−ナフチル、5、7−ジスルホ−2−ナフチル、1−アントリル、5−フェナントリルなどが挙げられる。)、芳香族複素環基として好ましくは、炭素数2‐20、更に好ましくは、炭素数2‐15、特に好ましくは、炭素数2‐10の置換もしくは無置換の、5又は6員環の複素環基(置換複素環基としては、例えば置換基の例として挙げた前述のWが置換した複素環基が挙げられる。具体的には、2−フリル基、2−チエニル、2−ピリジル、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基などが挙げられる。)が挙げられる。好ましくは、置換又は無置換のナフチル基である。
【0065】
B1はπ電子を有する原子群を表し、好ましくは、カルボニル、2重結合(例えば、炭素と炭素の2重結合、炭素と窒素の2重結合など)、3重結合(例えば、炭素と炭素の3重結合、炭素と窒素の3重結合など)、芳香族の炭化水素環、又は複素環である。
好ましくは、芳香族環の炭化水素環、又は複素環であり、例えば、前述のWで述べたベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環、が挙げられ、好ましくは炭素数2‐20、更に好ましくは、炭素数3‐15のベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環であり、さらに好ましくはベンゼン環、ピリミジン環、トリアジン環である。これらには、置換基(例えば、前述のW)が置換していても良い。好ましくは、ベンゼン環、又はトリアジン環である。
B1には、好ましくはさらに−(X3)n3−A3が置換している場合が好ましい。ここで、X3はX1又はX2と同義であり、同様のものが挙げられ同様のものが好ましい。A3はA1又はA2と同義であり、同様のものが挙げられ同様のものが好ましい。n3は0又は1を表わし、好ましくは1である。
【0066】
X1及びX2は、連結基を表わし、例えば、後述のLaで述べる連結基が挙げられる。好ましくは、CHR1、CR1=CR1、NR1、O、S、C=O、 CONR1、SO2NR1、CO2が挙げられ(R1は水素原子、又は置換基を表わす。置換基としては、例えば、前述のWが挙げられるが、好ましくはアルキル基、アリール基、又は複素環基であり、さらに好ましくはアルキル基である。R1として、特に好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基である。)、さらに好ましくはNR1、O、S、C=O、 CONR1、SO2NR1、CO2であり、特に好ましくはNR1、 CONR1であり、最も好ましくはNR1である。
【0067】
n1及びn2は0又は1を表すが、好ましくは1である。Mdは電荷均衡対イオンを表わし、後述のM101等で示したものと同様のものが挙げられ、好ましくは陰イオンであり、さらに好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオンであり、特に好ましくはナトリウムイオンである。mdは分子の電荷を中和するのに必要な0以上の数を表わし、好ましくは0〜4の数であり、さらに好ましくは0〜2の数である。
また、一般式(G)で表わされる化合物の分子内には、−N=N−及び−SHで表される基を含有しないことが好ましい。
一般式(G)で表わされる化合物の好ましいものは、上記の個々の好ましいものの組合せ(特に個々の最も好ましいものの組合せ)である。
次に、発明の実施の形態の説明で詳細に述べた、色素発色団を含まない本発明の化合物のうち、特に好ましい具体例を以下に示す。もちろん、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
【化1】
【0069】
【化2】
【0070】
【化3】
【0071】
【化4】
【0072】
なお、本発明の色素発色団を含まない化合物が分子内に不斉炭素を複数個有する場合、同一構造に対して複数の立体異性体が存在するが、本発明は可能性のある全ての立体異性体を示しており、複数の立体異性のうち1つだけを使用することも、あるいはそのうちの数種を混合物として使用することもできる。
本発明の色素発色団を含まない化合物は1種を用いても複数を併用しても良く、用いる化合物の数と種類は任意に選ぶことができる。
【0073】
本発明の色素発色団を含まない化合物は、前述の(1)〜(6)で挙げた文献・特許に記載の方法に基づいて合成することができる。
【0074】
本発明の色素発色団を含まない化合物を、ハロゲン化銀乳剤中に添加する時期、添加量、添加する方法は、後述の本発明の色素化合物、増感色素等と同様に行うことができる。
添加する時期として好ましくは、本発明で多層吸着させる色素を添加した後に、本発明の色素発色団を含まない化合物を添加することが好ましい。
【0075】
前記の手段(5)記載の「共有結合以外の引力によって相互に結合している」場合について説明する。
共有結合以外の引力としてはいかなるものでも良いが、例えば、ファン・デル・ワールス(van der Waals)力(さらに細かくは、永久双極子−永久双極子間に働く配向力、永久双極子−誘起双極子間に働く誘起力、一時双極子−誘起双極子間に働く分散力に分けて表現できる。)、電荷移動力(CT)、クーロン力(静電力)、疎水結合力、水素結合力、配位結合力などが挙げられる。これらの結合力は、1つだけ利用することも、また任意のものを複数組み合わせて用いることもできる。
【0076】
好ましくは、ファン・デル・ワールス力、電荷移動力、クーロン力、疎水結合力、水素結合力であり、さらに好ましくはファン・デル・ワールス力、クーロン力、水素結合力であり、特に好ましくはファン・デル・ワールス力、クーロン力であり、最も好ましくはファン・デル・ワールス力である。
【0077】
相互に結合しているとは、これらの引力によって色素発色団が拘束されていることを意味する。別の表現で説明すると、引力のエネルギー(すなわち吸着エネルギー(ΔG))として好ましくは15kJ/mol以上、さらに好ましくは20kJ/mol以上、特に好ましくは40kJ/mol以上の場合である。上限は特にないが、好ましくは5000kJ/mol以下、さらに好ましくは1000kJ/mol以下である。
【0078】
具体的には、例えば、特開平10−239789に記載されている芳香族基を持つ色素、又は芳香族基を持つカチオン色素とアニオン色素を併用する方法、特開平10−171058号に記載されている多価電荷を持つ色素を用いる方法、特開平10−186559号に記載されている疎水性基を持つ色素を用いる方法、特開平10−197980号に記載されている配位結合基を持つ色素を用いる方法、特開2001−5132号に記載されている3核性塩基性核を持つ色素を用いる方法、特開2001−13614号に記載されている特定の親疎水性を持つ色素を用いる方法、特開2001−75220号に記載されている特定の分子内塩基型の色素を用いる方法、特開2001−75221号に記載されているシアニン以外の特定の色素を用いる方法、特開2001−152038号に記載されている特定のpKaの酸解離性基を持つ色素を用いる方法、特開2001−166413号、特開2001−323180号、特開2001−337409号に記載されている特定の水素結合基を持つ色素を用いる方法、特開2001−209143号に記載されている特定の蛍光量子収率を持つ色素を用いる方法、特開2001−264913号に記載されている特定の消色する色素を用いる方法、特開2001−343720号に記載されているゲル状マトリックスに含まれる色素を用いる方法、特開2002−23294号に記載されている特定の赤外色素を用いる方法、特開2002−99053号に記載されている特定の電位を持つ色素を用いる方法、欧州特許第0985964号、同0985965号、同0985966号、同0985967号、同1085372号、同1085373号、同1172688号、同1199595号に記載されている特定のカチオン色素を用いる方法などが好ましく用いられる。
【0079】
前述の手段(6)の、複数の色素発色団からなる化合物について説明する。該多発色団色素化合物は、複数の色素発色団を含む色素化合物である。
該化合物において、複数の色素発色団は、共有結合、又は配位結合で連結されることが可能であるが、好ましくは共有結合で連結されている場合である。(なお、配位結合については、前述の(5)の分子間力の一つの配位結合力とみなすこともできる。)また、該化合物において、共有結合、又は配位結合は予め形成されていても、ハロゲン化銀感光材料を作成する過程(例えばハロゲン化銀乳剤中)で形成されていても良い。後者の方法については、例えば、特開2000−81678号公報に記載の方法などを利用することができる。好ましくは結合が予め形成されている場合である。
【0080】
多発色団色素化合物における、色素発色団の数は少なくとも2つあればいかなる数でも良いが、好ましくは2〜7個、さらに好ましくは2〜5個、特に好ましくは2及び3個、最も好ましくは2個である。複数の色素発色団は同一でも異なってもよい。色素発色団としてはいかなるものでも良いが、好ましくは前述の発色団[1]で述べた色素発色団が挙げられ、同様なものが好ましく、特に、後述の一般式(A)、(B)、(C)、及び(D)が好ましい。
【0081】
多発色団色素化合物の例としては、例えば、特開平9−265144号に記載されているメチン鎖で連結された多発色団色素、特開平10−226758号に記載されているオキソノール染料が連結された多発色団色素、特開平10−110107号、同10−307358号、同10−307359号、同10−310715号に記載されているベンゾイミダゾール核等を持つ特定の多発色団色素、特開平9−265143号、特開2000−231172号、同2000−231173号、同2002−55406号、同2002−82403号、同2002−82404号、同2002−82405号に記載されている特定の基で連結された多発色団色素、特開2000−81678号に記載されている反応性基を持つ色素を用い乳剤中で生成した多発色団色素、特開2000−231174号に記載されている特定のベンゾオキサゾール核を持つ特定の多発色団色素、特開2001−311015号に記載されている特定の特性又は解離基を持つ多発色団色素、特開2001−356442号に記載されている特定の特性を持つ多発色団色素、特開2002−90927号に記載されている特定のメロシアニンを持つ多発色団色素、特開2002−90928号、同2002−90929号に記載されている特定の解離基を持つ多発色団色素、などが挙げられる。
【0082】
本発明の多発色団色素化合物として好ましくは、次の一般式(Q)で表される化合物である。
一般式(Q)
【0083】
【化5】
【0084】
式中、Da、及びDbは色素発色団を表す。
Laは連結基を表す。saは1から4の整数を表す。qaは1から5までの整数を表わす。ra及びrbは1から100までの整数を表わす。Mbは電荷均衡対イオンを表し、mbは分子の電荷を中和するのに必要な数を表す。
なお、一般式(Q)は、色素発色団が互いにどのような連結様式をとって連結されることも可能であることを表している。
Da、及びDbで表わされる色素発色団は、いかなるものでも良いが、前述の発色団[1]に記載したものと同様のものが挙げられ同様のものが好ましい。
また、Daのうち少なくとも1つがシアニン、メロシアニン色素発色団から選ばれる場合が好ましく、さらに好ましくは、シアニン色素発色団から選ばれる場合である。 Da、及びDbは同一でも異なっても良いが、異なる方が好ましい。
【0085】
本発明において、一般式(Q)で表される化合物がハロゲン化銀粒子に吸着した場合には、Daはハロゲン化銀に吸着し、Dbはハロゲン化銀に直接吸着していない場合が好ましい。すなわち、([−La−]sa[Db]qa )のハロゲン化銀粒子への吸着力はDaよりも弱い方が好ましい。
上記のように、Daはハロゲン化銀粒子への吸着性を持つ色素部分であることが好ましいが、物理吸着、または化学吸着いずれによって吸着させても構わない。
Dbはハロゲン化銀粒子への吸着性が弱く、また発光性色素の場合が好ましい。発光性色素の種類としては色素レーザー用に使用される色素の骨格構造を持つものが好ましい。これらはたとえば、前田三男、レーザー研究、第8巻、694頁、803頁、958頁(1980年)及び第9巻、85頁(1981年)、及びF. Sehaefer著、「Dye Lasers」、Springer(1973年)の中に整理されている。
【0086】
さらに、Daのハロゲン化銀写真感光材料中における吸収極大波長が([−La−]sa[Db]qa )の吸収極大波長よりも長波長であることが好ましい。さらに、([−La−]sa[Db]qa )の発光がDaの吸収と重なることが好ましい。また、DaはJ−会合体を形成した方が好ましい。さらに、一般式(I)で表される連結色素が所望の波長範囲に吸収および分光感度を有するためには、([−La−]sa[Db]qa )もJ会合体を形成していることが好ましい。
【0087】
Daと([−La−]sa[Db]qa )の還元電位、及び酸化電位はいかなるものでも良いが、Daの還元電位が([−La−]sa[Db]qa )の還元電位の値から0.2vを引いた値よりも、貴であることが好ましい。
【0088】
Laは連結基(好ましくは2価の連結基)である。なお、これらの連結基は、単結合(単なる結合手とも言う)も含むこととする。これらの連結基として好ましくは、単結合、又は炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子のうち、少なくとも1種を含む原子又は原子団からなる。好ましくは、単結合、又はアルキレン基(例えばメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン)、アリーレン基(例えばフェニレン、ナフチレン)、アルケニレン基(例えば、エテニレン、プロペニレン)、アルキニレン基(例えば、エチニレン、プロピニレン)、アミド基、エステル基、スルホアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、エーテル基、カルボニル基、−N(Va)−(Vaは水素原子、又は一価の置換基を表わす。一価の置換基としては前述のWが挙げられる。)、複素環2価基(例えば、6−クロロ−1、3、5−トリアジン−2、4−ジイル基、ピリミジン−2、4−ジイル基、キノキサリン−2、3−ジイル基)を1つまたはそれ以上組み合わせて構成される炭素数0以上100以下、好ましくは炭素数1以上20以下の連結基である。
【0089】
上記の連結基は、更に前述のWで表わされる置換基を有しても良い。また、これらの連結基は環(芳香族、又は非芳香族の炭化水素環、又は複素環)を含有しても良い。
【0090】
更に好ましくは、単結合、炭素数1以上10以下のアルキレン基(例えばメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン)、炭素数6以上10以下のアリーレン基(例えばフェニレン、ナフチレン)、炭素数2以上10以下のアルケニレン基(例えば)例えば、エテニレン、プロペニレン)、炭素数2以上10以下のアルキニレン基(例えば、エチニレン、プロピニレン)、エーテル基、アミド基、エステル基、スルホアミド基、スルホン酸エステル基を1つ又はそれ以上組み合わせて構成される炭素数1以上10以下の2価の連結基である。これらは、前述のWで置換されていても良い。
【0091】
Laはスルーボンド(through −bond)相互作用によりエネルギー移動または電子移動を行っても良い連結基である。スルーボンド相互作用にはトンネル相互作用、超交換(super−exchange)相互作用などがあるが、中でも超交換相互作用に基づくスルーボンド相互作用が好ましい。スルーボンド相互作用及び超交換相互作用は、シャマイ・スペイサー(Shammai Speiser)著、ケミカル・レビュー(Chem. Rev.)第96巻、第1960−1963頁、1996年で定義されている相互作用である。このような相互作用によりエネルギー移動または電子移動する連結基としては、シャマイ・スペイサー(Shammai Speiser)著、ケミカル・レビュー(Chem.Rev.)第96巻、第1967−1969頁、1996年に記載のものが好ましい。
【0092】
saは1から4の整数を表す。なお、saが2以上であるとは、DaとDbが複数の連結基で連結されていることを意味する。saとして好ましくは1、2であり、さらに好ましくは1である。saが2以上の場合、含まれる複数のLaはそれぞれ相異なる連結基であっても良い。
【0093】
qaは1から5までの整数を表すが、好ましくは1、2であり、さらに好ましくは1である。ra、及びrbは1から100までの整数を表わすが、好ましくは1から5までの整数であり、さらに好ましくは1、2であり、特に好ましくは1である。qa、ra、及びrbが2以上の場合、含まれる複数のDa、La、Sa、Db、及びqaはそれぞれ相異なる連結基、色素発色団、及び、数であっても良い。
【0094】
一般式(Q)で表される化合物には、さらに色素発色団が置換していても良い。
一般式(Q)においては、全体で−1以下の電荷を持つ場合が好ましく、さらに好ましくは−1の電荷を持つ場合である。
【0095】
本発明において用いられる色素発色団は、前述の発色団[1]で説明したものと同様のものが挙げられ同様のものが好ましいが、一般式で示すと、特に好ましくは、下記一般式(A)、(B)、(C)、又は(D)で表されるメチン色素発色団である場合である。
一般式(A)
【0096】
【化6】
【0097】
式(A)中、L101、L102、L103、L104、L105、L106、及びL107 はメチン基を表す。p101、及びp102は0または1を表す。n101は0、1、2、3または4を表す。Z101及びZ102は含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表す。ただし、これらに環が縮環していても置換基を有していても良い。M101は電荷均衡対イオンを表し、m101は分子の電荷を中和するのに必要な0以上の数を表す。R101及びR102は水素原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表す。
一般式(B)
【0098】
【化7】
【0099】
式(B)中、L108、L109、L110、及びL111はメチン基を表す。p103 は0又は1を表す。q101は0又は1を表わす。n102は0、1、2、3又は4を表す。Z103は含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表す。Z104とZ104’は(N−R104)q101と一緒になって環、又は非環式の酸性末端基を形成するために必要な原子群を表す。ただし、Z103、及びZ104とZ104’に環が縮環していても置換基を有していても良い。M102は電荷均衡対イオンを表し、m102は分子の電荷を中和するのに必要な0以上の数を表す。R103、及びR104は水素原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表す。
一般式(C)
【0100】
【化8】
【0101】
式(C)中、L112、L113、L114、L115、L116、L117、L118、L119及びL120はメチン基を表す。p104及びp105は0又は1を表す。q102 は0又は1を表わす。n103及びn104は0、1、2、3又は4を表す。Z105 、及びZ107は含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表す。Z106とZ106’は(N−R106)q102と一緒になって環を形成するために必要な原子群を表す。ただし、Z105、Z106とZ106’、及びZ107に環が縮環していても置換基を有していても良い。M103は電荷均衡対イオンを表し、m103は分子の電荷を中和するのに必要な0以上の数を表す。R105、R106、及びR107は水素原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表す。
一般式(D)
【0102】
【化9】
【0103】
式(D)中、L121、L122、及びL123はメチン基を表す。q103及びq104は0又は1を表す。n105は0、1、2、3又は4を表す。Z108とZ108’は(N−R108)q103と一緒になって、及び、Z109とZ109’は(N−R109)q104と一緒になって、環、又は非環式の酸性末端基を形成するために必要な原子群を表す。ただし、Z108とZ108’、及びZ109とZ109’に環が縮環していても置換基を有していても良い。M104は電荷均衡対イオンを表し、m104は分子の電荷を中和するのに必要な0以上の数を表す。R108、及びR109は水素原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表す。
【0104】
以下、一般式 (A)、(B)、(C)、及び(D)で表される色素発色団について詳細に述べる。
【0105】
Z101、Z102、Z103、Z105、及びZ107は含窒素複素環、好ましくは5又は6員の含窒素複素環を形成するのに必要な原子群を表す。ただし、これらに環が縮環していても良い置換基を有していても良い。環としては、芳香族環、又は非芳香族環のいずれでも、また炭化水素環、又は複素環のいずれでも良い。好ましくは芳香族環であり、例えばベンゼン環、ナフタレン環などの炭化水素芳香族環や、ピラジン環、チオフェン環などの複素芳香族環が挙げられる。置換基としては前述のWが挙げられる。
【0106】
含窒素複素環として、具体的にはチアゾリン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、オキサゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核、セレナゾリン核、セレナゾール核、ベンゾセレナゾール核、テルラゾリン核、テルラゾール核、ベンゾテルラゾール核、3、3−ジアルキルインドレニン核(例えば3、3−ジメチルインドレニン)、イミダゾリン核、イミダゾール核、ベンゾイミダゾール核、ピロリン核、2−ピリジン核、4−ピリジン核、2−キノリン核、4−キノリン核、1−イソキノリン核、3−イソキノリン核、イミダゾ〔4、5−b〕キノキザリン核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、ピラゾール核、テトラゾール核、ピリミジン核などを挙げることができるが、好ましくはベンゾチアゾール核、ベンゾオキサゾール核、3、3−ジアルキルインドレニン核(例えば3、3−ジメチルインドレニン)、ベンゾイミダゾール核、2−ピリジン核、4−ピリジン核、2−キノリン核、4−キノリン核、1−イソキノリン核、3−イソキノリン核が挙げられる。
【0107】
これらには、前述のWで表される置換基、及び環が置換していても縮合していても良い。好ましいものは、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、芳香環縮合、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基である。
【0108】
Z101、Z102、Z103、Z105、及びZ107によって形成される複素環の具体例としては、米国特許第5、340、694号第23〜24欄のZ11、Z12、Z13、Z14、及びZ16の例として挙げられているものと同様なものが挙げられる。
【0109】
一般式(A)、(B)、又は(C)で表される色素発色団が、1層目の色素発色団を表すとき、Z101、Z102、Z103、Z105、及びZ107として好ましくはベンゾチアゾール核、ベンゾオキサゾール核、3、3−ジアルキルインドレニン核(例えば3、3−ジメチルインドレニン)、ベンゾイミダゾール核であり、さらに好ましくはベンゾオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ベンゾイミダゾール核であり、特に好ましくはベンゾオキサゾール核、ベンゾチアゾール核である。これら核上の置換基Wとして、好ましくはハロゲン原子、芳香族基、芳香環縮合である。
【0110】
一般式(A)、(B)、又は(C)で表される色素発色団が、2層目以降の色素発色団を表すとき、Z101、Z102、Z103、Z105、及びZ107として好ましくはベンゾチアゾール核、ベンゾオキサゾール核、3、3−ジアルキルインドレニン核(例えば3、3−ジメチルインドレニン)、ベンゾイミダゾール核であり、さらに好ましくはベンゾオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ベンゾイミダゾール核であり、特に好ましくはベンゾオキサゾール核、ベンゾチアゾール核である。これらの核上の置換基Wとして、好ましくはハロゲン原子、芳香族基、芳香環縮合、酸基である。
【0111】
ここで、酸基について説明する。酸基とは、解離性プロトンを有する基である。
具体的には、例えばスルホ基、カルボキシル基、スルファト基、−CONHSO2−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、−SO2NHSO2−基(スルフォニルスルファモイル基)、スルホンアミド基、スルファモイル基、ホスファト基、ホスホノ基、ボロン酸基、フェノール性水酸基、など、これらのpkaと周りのpHによっては、プロトンが解離する基が挙げられる。例えばpH5〜11の間で90%以上解離することが可能なプロトン解離性酸性基が好ましい。
【0112】
さらに好ましくはスルホ基、カルボキシル基、−CONHSO2−基、−CONHCO−基、−SO2NHSO2−基であり、特に好ましくは、スルホ基、カルボキシル基であり、最も好ましくはスルホ基である。
【0113】
Z104とZ104’と(N−R104)q101、Z108とZ108’と(N−R108 )q103、及び、Z109とZ109’と(N−R109)q104はそれぞれ一緒になって、環、又は非環式の酸性末端基を形成するために必要な原子群を表わす。ここで環としてはいかなるものでも良いが、好ましくは複素環(好ましくは5又は6員の複素環)であり、さらに酸性核が好ましい。次に、酸性核及び非環式の酸性末端基について説明する。酸性核及び非環式の酸性末端基は、いかなる一般のメロシアニン色素の酸性核及び非環式の酸性末端基の形をとることもできる。好ましい形においてZ104、Z108、Z109は−(C=S)−で表されるチオカルボニル基(チオエステル基、チオカルバモイル基等を含む)、−(C=O)−で表されるカルボニル基(エステル基、カルバモイル基等を含む)、−(SO2)−で表されるスルホニル基(スルホン酸エステル基、スルファモイル基等を含む)、−(S=O)−で表されるスルフィニル基、シアノ基、であり、さらに好ましくはチオカルボニル基、カルボニル基である。Z104’、Z108’、Z109’は酸性核及び非環式の酸性末端基を形成するために必要な残りの原子群を表す。非環式の酸性末端基を形成する場合は、好ましくはチオカルボニル基、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、シアノ基などである。また、これらの酸性核、又は非環式の酸性末端基を形成しているカルボニル基もしくはチオカルボニル基を、酸性核、又は非環式の酸性末端基の原料となる活性メチレン化合物の活性メチレン位で置換したエキソメチレンを有する構造、及びこれらを繰り返した構造を用いることもできる。酸性核を酸性核で置換した場合は、色素としてはいわゆる3核メロシアニン、4核メロシアニン等を形成し、酸性末端基を酸性末端基で置換した場合としては、末端にジシアノメチレン基とシアノ基を持つもの等が挙げられる。
q101、q103、及びq104は0又は1であるが、好ましくは1である。
【0114】
ここでいう酸性核及び非環式の酸性末端基は、例えばジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス」(The Theory of the Photographic Process)第4版、マクミラン出版社、1977年、197〜200頁に記載されている。ここでは、非環式の酸性末端基とは、酸性すなわち電子受容性の末端基のうち、環を形成しないものを意味することとする。酸性核及び非環式の酸性末端基は、具体的には、米国特許第3、567、719号、第3、575、869号、第3、804、634号、第3、837、862号、第4、002、480号、第4、925、777号、特開平3ー167546号、米国特許第5、994、051号、米国特許5、747、236号などに記載されているものが挙げられる。
【0115】
酸性核は、炭素、窒素、及び/又はカルコゲン(典型的には酸素、硫黄、セレン、及びテルル)原子からなる複素環(好ましくは5員又は6員の含窒素複素環)を形成するとき好ましく、さらに好ましくは炭素、窒素、及び/又はカルコゲン(典型的には酸素、硫黄、セレン、及びテルル)原子からなる5員又は6員の含窒素複素環を形成するときである。具体的には、例えば次の核が挙げられる。
【0116】
2ーピラゾリンー5ーオン、ピラゾリジンー3、5ージオン、イミダゾリンー5ーオン、ヒダントイン、2または4ーチオヒダントイン、2ーイミノオキサゾリジンー4ーオン、2ーオキサゾリンー5ーオン、2―チオオキサゾリジンー2、5―ジオン、2ーチオオキサゾリンー2、4ージオン、イソオキサゾリンー5ーオン、2ーチアゾリンー4ーオン、チアゾリジンー4ーオン、チアゾリジンー2、4ージオン、ローダニン、チアゾリジンー2、4ージチオン、イソローダニン、インダンー1、3ージオン、チオフェンー3ーオン、チオフェンー3ーオンー1、1ージオキシド、インドリンー2ーオン、インドリンー3ーオン、2ーオキソインダゾリニウム、3ーオキソインダゾリニウム、5、7ージオキソー6、7ージヒドロチアゾロ[3、2−a]ピリミジン、シクロヘキサンー1、3ージオン、3、4ージヒドロイソキノリンー4ーオン、1、3ージオキサンー4、6ージオン、バルビツール酸、2ーチオバルビツール酸、クロマンー2、4ージオン、インダゾリンー2ーオン、ピリド[1、2−a]ピリミジンー1、3ージオン、ピラゾロ[1、5−b]キナゾロン、ピラゾロ[1、5−a]ベンゾイミダゾール、ピラゾロピリドン、1、2、3、4ーテトラヒドロキノリンー2、4ージオン、3ーオキソー2、3ージヒドロベンゾ[d]チオフェンー1、1ージオキサイド、3ージシアノメチンー2、3ージヒドロベンゾ[d]チオフェンー1、1ージオキサイドの核。
【0117】
これらの酸性核、及び非環式の酸性末端基には、環が縮環していても、置換基(例えば前述のW)が置換していても良い。
【0118】
酸性核として好ましくは、ヒダントイン、2または4ーチオヒダントイン、2ーオキサゾリンー5ーオン、2ーチオオキサゾリンー2、4ージオン、チアゾリジンー2、4ージオン、ローダニン、チアゾリジンー2、4ージチオン、バルビツール酸、2ーチオバルビツール酸であり、さらに好ましくは、ヒダントイン、2または4ーチオヒダントイン、2ーオキサゾリンー5ーオン、ローダニン、バルビツール酸、2ーチオバルビツール酸である。
【0119】
一般式(B)、(D)で表される色素発色団が、1層目の色素発色団を表す場合は、特に好ましくは2または4ーチオヒダントイン、2ーオキサゾリンー5ーオン、ローダニンである。
【0120】
一般式(B)、(D)で表される色素発色団が、2層目以降の色素発色団を表す場合は、特に好ましくはバルビツール酸である。
【0121】
Z106とZ106’と(N−R106)q102によって形成される環としてはいかなるものでも良いが、好ましくは複素環(好ましくは5又は6員の複素環)であり、前述のZ104とZ104’と(N−R104)q101などの環の説明で述べたものと同様のものが挙げられる。好ましくは前述のZ104とZ104’と(N−R104)q101などの環の説明で述べた酸性核からオキソ基、又はチオキソ基を除いたものである。
【0122】
さらに好ましくは、前述のZ104とZ104’と(N−R104)q101などの具体的として挙げた酸性核からオキソ基、又はチオキソ基を除いたものであり、さらに好ましくはヒダントイン、2または4ーチオヒダントイン、2ーオキサゾリンー5ーオン、2ーチオオキサゾリンー2、4ージオン、チアゾリジンー2、4ージオン、ローダニン、チアゾリジンー2、4ージチオン、バルビツール酸、2ーチオバルビツール酸からオキソ基、又はチオキソ基を除いたものであり、特に好ましくは、ヒダントイン、2または4ーチオヒダントイン、2ーオキサゾリンー5ーオン、ローダニン、バルビツール酸、2ーチオバルビツール酸からオキソ基、又はチオキソ基を除いたものであり、最も好ましくは2または4ーチオヒダントイン、2ーオキサゾリンー5ーオン、ローダニンからオキソ基、又はチオキソ基を除いたものである。
q102は0又は1であるが、好ましくは1である。
【0123】
R101、R102、R103、R104、R105、R106、R107、R108、及びR109は、水素原子、アルキル基、アリール基、及び複素環基であり、好ましくはアルキル基、アリール基、及び複素環基である。R101〜R109として表されるアルキル基、アリール基、及び複素環基として、具体的には、例えば、好ましくは炭素原子1から18、さらに好ましくは1から7、特に好ましくは1から4の無置換アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル、オクタデシル)、好ましくは炭素原子1から18、さらに好ましくは1から7、特に好ましくは1から4の置換アルキル基{例えば置換基として前述のWが置換したアルキル基が挙げられる。特に、上述した酸基を持つアルキル基が好ましい。好ましくはアラルキル基(例えばベンジル、2−フェニルエチル、2−(4−ビフェニル)エチル、2−スルホベンジル、4−スルホベンジル、4−スルホフェネチル、4−ホスホベンジル、4−カルボキシベンジル)、不飽和炭化水素基(例えばアリル基、ビニル基、すなわち、ここでは置換アルキル基にアルケニル基、アルキニル基も含まれることとする。)、ヒドロキシアルキル基(例えば、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル)、カルボキシアルキル基(例えば、2−カルボキシエチル、3−カルボキシプロピル、4−カルボキシブチル、カルボキシメチル)、アルコキシアルキル基(例えば、2−メトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル)、アリーロキシアルキル基(例えば2ーフェノキシエチル、2−(4−ビフェニロキシ)エチル、2ー(1ーナフトキシ)エチル、2−(4−スルホフェノキシ)エチル、2−(2−ホスホフェノキシ)エチル)、アルコキシカルボニルアルキル基(例えばエトキシカルボニルメチル、2ーベンジルオキシカルボニルエチル)、アリーロキシカルボニルアルキル基(例えば3ーフェノキシカルボニルプロピル、3−スルホフェノキシカルボニルプロピル)、アシルオキシアルキル基(例えば2ーアセチルオキシエチル)、アシルアルキル基(例えば2ーアセチルエチル)、カルバモイルアルキル基(例えば2ーモルホリノカルボニルエチル)、スルファモイルアルキル基(例えばN、Nージメチルスルファモイルメチル)、スルホアルキル基(例えば、2−スルホエチル、3−スルホプロピル、3−スルホブチル、4−スルホブチル、2−[3−スルホプロポキシ]エチル、2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル、3−スルホプロポキシエトキシエチル、3−フェニル−3−スルホプロピル、4−フェニル−4−スルホブチル、3−(2−ピリジル)−3−スルホプロピル)、スルホアルケニル基、スルファトアルキル基(例えば、2ースルファトエチル基、3−スルファトプロピル、4−スルファトブチル)、複素環置換アルキル基(例えば2−(ピロリジン−2−オン−1−イル)エチル、2−(2−ピリジル)エチル、テトラヒドロフルフリル、3−ピリジニオプロピル)、アルキルスルホニルカルバモイルアルキル基(例えばメタンスルホニルカルバモイルメチル基)、アシルカルバモイルアルキル基(例えばアセチルカルバモイルメチル基)、アシルスルファモイルアルキル基(例えばアセチルスルファモイルメチル基)、アルキルスルフォニルスルファモイルアルキル基(例えばメタンスルフォニルスルファモイルメチル基)、アンモニオアルキル基(例えば、3−(トリメチルアンモニオ)プロピル、3−アンモニオプロピル)、アミノアルキル基(例えば、3−アミノプロピル、3−(ジメチルアミノ)プロピル、4−(メチルアミノ)ブチル)、グアニジノアルキル基(例えば、4−グアノジノブチル)}、好ましくは炭素数6から20、さらに好ましくは炭素数6から10、さ特に好ましくは炭素数6から8の、置換または無置換アリール基(置換アリール基としては例えば置換基の例として挙げた前述のWが置換したアリール基が挙げられる。具体的にはフェニル、1ーナフチル、p−メトキシフェニル、p−メチルフェニル、p−クロロフェニル、ビフェニル、4―スルホフェニル、4−スルホナフチルなどが挙げられる。)、好ましくは炭素数1から20、さらに好ましくは炭素数3から10、特に好ましくは炭素数4から8の、置換または無置換複素環基(置換複素環基としては置換基の例として挙げた前述のWが置換した複素環基が挙げられる。具体的には2ーフリル、2ーチエニル、2ーピリジル、3ーピラゾリル、3ーイソオキサゾリル、3ーイソチアゾリル、2ーイミダゾリル、2ーオキサゾリル、2ーチアゾリル、2ーピリダジル、2ーピリミジル、3ーピラジル、2ー(1、3、5−トリアゾリル)、3ー(1 、2、4−トリアゾリル)、5ーテトラゾリル、5ーメチルー2ーチエニル、4ーメトキシー2ーピリジル、4−スルホー2−ピリジルなどが挙げられる。)が挙げられる。
【0124】
一般式(A)、(B)、(C)、及び(D)で表されるで表される色素発色団が、1層目の色素発色団を表すとき、R101〜R109で表される置換基として好ましくは無置換アルキル基、置換アルキル基であり、置換アルキル基として好ましくは上述の酸基を持つアルキル基である。酸基として、好ましくはスルホ基、カルボキシル基、−CONHSO2−基、−CONHCO−基、−SO2NHSO2−基であり、特に好ましくは、スルホ基、カルボキシル基であり、最も好ましくはスルホ基である。
【0125】
一般式(A)、(B)、(C)、及び(D)で表されるで表される色素発色団が、2層目以降の色素発色団を表すとき、R101〜R109で表される置換基として好ましくは、無置換アルキル基、置換アルキル基であり、さらに好ましくは上述の酸基を持つアルキル基である。酸基として、好ましくはスルホ基、カルボキシル基、−CONHSO2−基、−CONHCO−基、−SO2NHSO2−基であり、特に好ましくは、スルホ基、カルボキシル基であり、最も好ましくはスルホ基である。
【0126】
L101、L102、L103、L104、L105、L106、L107、L108、L109 、L110、L111、L112、L113、L114、L115、L116、L117、L118 、L119、L120、L121、L122、及びL123はそれぞれ独立にメチン基を表す。L101〜L123で表されるメチン基は置換基を有していても良く、置換基としては前述のWが挙げられる。例えば置換又は無置換の炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、特に好ましくは炭素数1から5のアルキル基(例えば、メチル、エチル、2−カルボキシエチル)、置換または無置換の炭素数6から20、好ましくは炭素数6から15、更に好ましくは炭素数6から10のアリール基(例えばフェニル、o−カルボキシフェニル)、置換または無置換の炭素数3から20、好ましくは炭素数4から15、更に好ましくは炭素数6から10の複素環基(例えばN、N−ジメチルバルビツール酸基)、ハロゲン原子(例えば塩素、臭素、沃素、フッ素)、炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から5のアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ)、炭素数0から15、好ましくは炭素数2から10、更に好ましくは炭素数4から10のアミノ基(例えばメチルアミノ、N、N−ジメチルアミノ、N−メチル−N−フェニルアミノ、N−メチルピペラジノ)、炭素数1から15、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から5のアルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ)、炭素数6から20、好ましくは炭素数6から12、更に好ましくは炭素数6から10のアリールチオ基(例えばフェニルチオ、p−メチルフェニルチオ)などが挙げられる。また他のメチン基と環を形成してもよく、もしくはZ101〜Z109、R101〜R109と共に環を形成することもできる。
【0127】
L101、L102、L106、L107、L108、L109、L112、L113、L119 、及びL120はとして好ましくは、無置換メチン基である。
【0128】
n101、n102、n103、n104、及びn105はそれぞれ独立に0、1、2、3または4を表す。n101〜n105として好ましくは0、1、2、3であり、更に好ましくは0、1、2であり、特に好ましくは0、1である。n101〜n105 が2以上の時、メチン基が繰り返されるが同一である必要はない。
【0129】
p101、p102、p103、p104、及びp105はそれぞれ独立に0または1を表す。好ましくは0である。
【0130】
M101、M102、M103、M104、及びMbは、色素のイオン電荷を中性にするために必要であるとき、陽イオン又は陰イオンの存在を示すために式の中に含められている。典型的な陽イオンとしては水素イオン(H+)、アルカリ金属イオン(例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えばカルシウムイオン)などの無機陽イオン、アンモニウムイオン(例えば、アンモニウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、エチルピリジニウムイオン、1、8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムイオン)などの有機イオンが挙げられる。陰イオンは無機陰イオンあるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、ハロゲン陰イオン(例えばフッ素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオン)、置換アリ−ルスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロルベンゼンスルホン酸イオン)、アリ−ルジスルホン酸イオン(例えば1、3−ベンゼンスルホン酸イオン、1、5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2、6−ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが挙げられる。さらに、イオン性ポリマー又は色素と逆電荷を有する他の色素を用いても良い。また、CO2 −、SO3 −は、対イオンとして水素イオンを持つときはCO2H、SO3Hと表記することも可能である。
【0131】
m101、m102、m103、m104、及びmbは電荷を均衡させるのに必要な0 以上の数を表し、好ましくは0〜4の数であり、さらに好ましくは0〜1の数であり、分子内で塩を形成する場合には0である。
【0132】
次に、発明の実施の形態の説明で詳細に述べた、特に好ましい色素の具体例を以下に示す。もちろん、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0133】
【化10】
【0134】
【化11】
【0135】
【化12】
【0136】
【化13】
【0137】
【化14】
【0138】
なお、本発明における多層吸着を構成する色素としては、上述の多層吸着関連特許[3]に記載された色素を用いることができる。
また、一般式(Q)における、Da、La、及びDbとしては、特開2002−169251号に記載された各々D1、La、及びD2なども好ましく用いることができる。
【0139】
本発明の色素は、エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−シアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds−Cyanine Dyes and Related Compounds) 」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社−ニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer) 著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−スペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds−Special topics in heterocyclic chemistry) 」、第18章、第14節、第482から515頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons) 社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds)」2nd.Ed.vol.IV、partB、1977刊、第15章、第369から422頁、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社刊、ニューヨーク、などに記載の方法に基づいて合成することができる。
【0140】
本発明において、本発明の増感色素だけでなく、本発明以外の他の増感色素を用いたり、併用しても良い。用いられる色素として、好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、アロポーラー色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素などが挙げられる。さらに好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素であり、特に好ましくはシアニン色素である。これらの色素の詳細については、前述の色素文献[2]に記載されている。
【0141】
これらの増感色素は1種用いても良いが、2種以上用いても良く、増感色素の組み合わせは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる。その代表例は米国特許2,688,545号、同2,977,229号、同3,397,060号、同3,522,052号、同3,527,641号、同3,617,293号、同3,628,964号、同3,666,480号、同3,672,898号、同3,679,428号、同3,303,377号、同3,769,301号、同3,814,609号、同3,837,862号、同4,026,707号、英国特許1,344,281号、同1,507,803号、特公昭43−49336号、同53−12375号、特開昭52−110618号、同52−109925号などに記載されている。
【0142】
増感色素とともに、それ自身分光増感作用を持たない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んで良い。
【0143】
本発明における分光増感において有用な強色増感剤(例えば、ピリミジルアミノ化合物、トリアジニルアミノ化合物、アゾリウム化合物、アミノスチリル化合物、芳香族有機酸ホルムアルデヒド縮合物、アザインデン化合物、カドミウム塩)、及び強色増感剤と増感色素の組み合わせは、例えば米国特許3,511,664号、同3,615,613号、同3,615,632号、同3,615,641号、同4,596,767号、同4,945,038号、同4,965,182号、同4,965,182号、同2,933,390号、同3,635,721号、同3,743,510号、同3,617,295号、同3,635,721号等に記載されており、その使用法に関しても上記の特許に記載されている方法が好ましい。
【0144】
本発明の色素化合物、増感色素(また、その他の増感色素、強色増感剤についても同様)を本発明のハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、これまで有用である事が認められている乳剤調製の如何なる工程中であってもよい。例えば、米国特許2,735,766号、同3,628,960号、同4,183,756号、同4,225,666号、特開昭58−184142号、同60−196749号等に開示されているように、ハロゲン化銀の粒子形成工程または/及び脱塩前の時期、脱塩工程中及び/または脱塩後から化学熟成の開始前迄の時期、特開昭58−113920号等に開示されているように、化学熟成の直前または工程中の時期、化学熟成後塗布迄の時期の乳剤が塗布される前なら如何なる時期、工程に於いて添加されても良い。また、米国特許4,225,666号、特開昭58−7629号等に開示されているように、同一化合物を単独で、または異種構造の化合物と組み合わせて、例えば、粒子形成工程中と化学熟成工程中または化学熟成完了後とに分けたり、化学熟成の前または工程中と完了後とに分けるなどして分割して添加しても良く、分割して添加する化合物及び化合物の組み合わせの種類をも変えて添加されても良い。
【0145】
本発明の色素化合物、増感色素(また、その他の増感色素、強色増感剤についても同様)の添加量としては、ハロゲン化銀粒子の形状、サイズにより異なり、いずれの添加量でも良いが、ハロゲン化銀1モル当たり、好ましくは1×10−8〜1モル、さらに好ましくは1×10−6〜3×10−2モルで用いることができる。例えば、ハロゲン化銀粒子サイズが0.2〜1.3μmの場合には、ハロゲン化銀1モル当たり、2×10−6〜6×10−3モルの添加量が好ましく、5×10−5〜3×10−3モルの添加量がより好ましい。
但し、色素発色団を多層吸着させる場合は、そのために必要な量を添加することが必要である。
【0146】
本発明の色素化合物、増感色素(また、その他の増感色素、強色増感剤についても同様)は、直接乳剤中へ分散することができる。また、これらはまず適当な溶媒、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、メチルセロソルブ、アセトン、水、ピリジンあるいはこれらの混合溶媒などの中に溶解され、溶液の形で乳剤中へ添加することもできる。この際、塩基や酸、界面活性剤などの添加物を共存させることもできる。また、溶解に超音波を使用することもできる。また、この化合物の添加方法としては米国特許第3,469,987号などに記載のごとき、該化合物を揮発性の有機溶媒に溶解し、該溶液を親水性コロイド中に分散し、この分散物を乳剤中へ添加する方法、特公昭46−24185号などに記載のごとき、水溶性溶剤中に分散させ、この分散物を乳剤中へ添加する方法、米国特許第3、822、135号に記載のごとき、界面活性剤に化合物を溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法、特開昭51−74624号に記載のごとき、レッドシフトさせる化合物を用いて溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法、特開昭50−80826号に記載のごとき、化合物を実質的に水を含まない酸に溶解し、該溶液を乳剤中へ添加する方法などが用いられる。その他、乳剤中への添加には米国特許第2,912,343号、同3,342,605号、同2,996,287号、同3,429,835号などに記載の方法も用いられる。
【0147】
本発明において感光機構をつかさどる写真乳剤にはハロゲン化銀として臭化銀、ヨウ臭化銀、塩臭化銀、ヨウ化銀、ヨウ塩化銀、ヨウ臭塩化銀、塩化銀のいずれを用いてもよいが、乳剤最外表面のハロゲン組成が0.1mol%以上、さらに好ましくは1mol%以上、特に好ましくは5mol%以上のヨードを含むことによりより強固な吸着構造が構築できる。
本発明の感光材料において好ましく用いることのできる乳剤は沃臭化銀、臭化銀または塩沃臭化銀平板状粒子乳剤に関するものである。
【0148】
本発明の写真感光材料のうち、好ましいカラー写真感光材料は、好ましくは、各単位感光性層が実質的に感色性は同じであるが感光度の異なる複数のハロゲン化銀乳剤層から構成され、各単位感光性層を構成するハロゲン化銀乳剤層の中で最も感度の高い乳剤層のうち少なくとも1層に含有されるハロゲン化銀粒子の全投影面積の50%以上が平板状ハロゲン化銀粒子(以下、平板粒子ともいう。)である。本発明において該平板粒子の平均アスペクト比は、好ましくは2以上であり、さらに好ましくは8以上であり、特に好ましくは12以上であり、最も好ましくは15以上である。
【0149】
平板粒子において、アスペクト比とはハロゲン化銀における厚みに対する直径の比を意味する。すなわち、個々のハロゲン化銀粒子の直径を厚みで除した値である。ここで、直径とは、ハロゲン化銀粒子を顕微鏡または電子顕微鏡で観察したとき、粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径を指すものとする。また、本明細書において平均アスペクト比とは乳剤中の全平板粒子のアスペクト比の平均値である。
【0150】
アスペクト比の測定法の一例としては、レプリカ法による透過電子顕微鏡写真を撮影して個々の粒子の円相当直径と厚みを求める方法がある。この場合、厚みはレプリカの影(シャドー)の長さから算出する。
【0151】
本発明における平板粒子の形状は、通常、6角形である。6角形の形状とは平板粒子の主平面の形状が6角形であり、その隣接辺比率(最大辺長/最小辺長)が2以下の形状をなすことである。好ましくは、隣接辺比率が1.6以下、より好ましくは隣接辺比率が1.2以下である。下限は、1.0であることは言うまでもない。高アスペクト比粒子において特に、平板粒子中に三角平板粒子が増加する。三角平板粒子は、オストワルド熟成が進みすぎた場合に出現する。実質的に6角平板粒子を得るためには、この熟成を行う時間をできるだけ短くすることが好ましい。そのためには平板粒子の比率を核形成により高める工夫をしなければならない。斎藤による特開昭63−11928号に記載されているように、銀イオンと臭化物イオンをダブルジェット法により反応液中に添加する際、6角平板粒子の発生確率を高めるためには、銀イオン水溶液と臭化物イオン水溶液の一方もしくは、両方の溶液がゼラチンを含むことが好ましい。
【0152】
本発明の感光材料に含有される6角平板粒子は、核形成・オストワルド熟成・成長工程により形成される。これらいずれの工程も粒子サイズ分布の広がりを抑える上で重要であるが、左記の工程で生じたサイズ分布の広がりを後の工程で狭めることは不可能であるため、最初の核形成過程においてサイズ分布に広がりが生じないように注意しなければならない。核形成過程において重要な点は、銀イオンと臭化物イオンをダブルジェット法により反応液中に添加し、沈殿を生じさせる核形成時間と、反応溶液の温度との関係である。斎藤による特開昭63−92942号には、単分散性をよくするために核形成時の反応溶液の温度は20〜45℃の領域が好ましいと記載されている。また、ゾラ等による特開平2−222940号には、核形成時の好ましい温度は、60℃以下であると述べられている。
【0153】
アスペクト比が大きく、かつ単分散な平板粒子を得る目的で、粒子形成中にゼラチンを追添加する場合がある。この時、使用するゼラチンとしては、特開平10−148897号及び特開平11−143002号に記載されている化学修飾ゼラチンを用いるのが好ましい。この化学修飾ゼラチンは、ゼラチン中のアミノ基を化学修飾した際に新たにカルボキシル基を少なくとも二個以上導入されたことを特徴とするゼラチンであるが、トリメリット化ゼラチンを用いるのが好ましい、またコハク化ゼラチンを用いるのも好ましい。本ゼラチンは、成長工程前に添加することが好ましいが、さらに好ましくは核形成直後に添加するのがよい。添加量は、粒子形成中の全分散媒の質量に対して好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上がよい。
【0154】
平板粒子乳剤は沃臭化銀、臭化銀もしくは塩沃臭化銀より成る。塩化銀を含んでもよいが、好ましくは塩化銀含率は8モル%以下、より好ましくは3モル%以下、最も好ましくは0モル%である。沃化銀含有率については、平板粒子乳剤の粒子サイズの分布の変動係数が30%以下であることが好ましいので、沃化銀含有率は20モル%以下が好ましい。沃化銀含有率を低下させることにより平板粒子乳剤の円相当径の分布の変動係数を小さくすることが容易になる。特に平板粒子乳剤の粒子サイズの分布の変動係数は20%以下が好ましく、沃化銀含有率は10モル%以下が好ましい。
平板粒子乳剤は沃化銀分布について粒子内で構造を有していることが好ましい。この場合、沃化銀分布の構造は2重構造、3重構造、4重構造さらにはそれ以上の構造があり得る。
【0155】
本発明において、平板粒子は転位線を有することが好ましい。平板粒子の転位線は、例えばJ.F.Hamilton,Phot.Sci.Eng.,11,57,(1967)やT.Shiozawa,J.Soc.Phot.Sci.Japan,3,5,213,(1972)に記載の、低温での透過型電子顕微鏡を用いた直接的な方法により観察することができる。すなわち乳剤から粒子に転位線が発生するほどの圧力をかけないよう注意して取り出したハロゲン化銀粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、電子線による損傷(プリントアウト等)を防ぐように試料を冷却した状態で透過法により観察を行う。この時粒子の厚みが厚い程、電子線が透過しにくくなるので高圧型(0.25μmの厚さの粒子に対して200kV以上)の電子顕微鏡を用いた方がより鮮明に観察することができる。このような方法により得られた粒子の写真より、主平面に対して垂直方向から見た場合の各粒子についての転位線の位置および数を求めることができる。
【0156】
本発明の平板粒子の転位線の数は、1粒子当り平均10本以上が好ましい。より好ましくは1粒子当り平均20本以上である。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当りの転位線の数は明確には数えることができない場合がある。しかしながら、これらの場合においても、おおよそ10本、20本、30本という程度には数えることが可能であり、明らかに、数本しか存在しない場合とは区別できる。転位線の数の1粒子当りの平均数については100粒子以上について転位線の数を数えて、数平均として求める。数百に及ぶ転位線が認められる場合もある。
【0157】
転位線は、例えば平板粒子の外周近傍に導入することができる。この場合転位は外周にほぼ垂直であり、平板粒子の中心から辺(外周)までの距離の長さのx%の位置から始まり外周に至るように転位線が発生している。このxの値は好ましくは10以上100未満であり、より好ましくは30以上99未満であり、最も好ましくは50以上98未満である。この時、この転位線の開始する位置を結んでつくられる形状は粒子形と相似に近いが、完全な相似形ではなく、ゆがむことがある。この型の転位数は粒子の中心領域には見られない。転位線の方向は結晶学的におおよそ(211)方向であるがしばしば蛇行しており、また互いに交わっていることもある。
【0158】
また平板粒子の外周上の全域に渡ってほぼ均一に転位線を有していても、外周上の局所的な位置に転位線を有していてもよい。すなわち六角形平板ハロゲン化銀粒子を例にとると、6つの頂点の近傍のみに転位線が限定されていてもよいし、そのうちの1つの頂点近傍のみに転位線が限定されていてもよい。逆に6つの頂点近傍を除く辺のみに転位線が限定されていてもよい。
【0159】
また平板粒子の平行な2つの主平面の中心を含む領域に渡って転位線が形成されていてもよい。主平面の全域に渡って転位線が形成されている場合には転位線の方向は主平面に垂直な方向から見ると結晶学的におおよそ(211)方向の場合もあるが(110)方向またはランダムに形成されている場合もあり、さらに各転位線の長さもランダムであり、主平面上に短い線として観察される場合と、長い線として辺(外周)まで到達して観察される場合がある。転位線は直線のこともあれば蛇行していることも多い。また、多くの場合互いに交わっている。
【0160】
転位線の位置は以上のように外周上または主平面上または局所的な位置に限定されていてもよいし、これらが組み合わされて、形成されていてもよい。すなわち、外周上の主平面上に同時に存在していてもよい。
【0161】
平板粒子に転位線を導入するには粒子内部に特定の高沃化銀相を設けることによって達成できる。この場合、高沃化銀相には、不連続に高沃化銀領域を設けてもよい。具体的には粒子内部の高沃化銀相は基盤粒子を調製した後、高沃化銀相を設けその外側を高沃化銀相より沃化銀含有率の低い相でカバーすることによって得られる。基盤の平板粒子の沃化銀含有率は高沃化銀相よりも低く、好ましくは0〜20モル%、より好ましくは0〜15モル%である。
【0162】
本明細書において、粒子内部の高沃化銀相とは沃化銀を含むハロゲン化銀固溶体をいう。この場合のハロゲン化銀としては沃化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀が好ましいが、沃化銀または沃臭化銀(当該高沃化銀相に含有されるハロゲン化銀に対する沃化銀含有率が10〜40モル%)であることがより好ましい。この粒子内部の高沃化銀相(以下、内部高沃化銀相という)を基盤粒子の辺上、角上、面上のいずれかの場所に選択的に存在せしめるためには基盤粒子の生成条件および内部高沃化銀相の生成条件およびその外側をカバーする相の生成条件をコントロールすることが望ましい。基盤粒子の生成条件としてはpAg(銀イオン濃度の逆数の対数)およびハロゲン化銀溶剤の有無、種類および量、温度が重要な要因である。基盤粒子の成長時のpAgを8.5以下、より好ましくは8以下で行うことにより、後の内部高沃化銀相の生成時に、該内部高沃化銀相を基盤粒子の頂点近傍もしくは面上に選択的に存在せしめることができる。
【0163】
一方基盤粒子の成長時のpAgを8.5以上より好ましくは9以上で行うことにより、後の内部高沃化銀相の生成において、内部高沃化銀相を基盤粒子の辺上に存在せしめることができる。これらpAgのしきい値は温度およびハロゲン化銀溶剤の有無、種類および量によって上下に変化する。ハロゲン化銀溶剤として、例えばチオシアネートを用いた場合にはこのpAgのしきい値は高い値の方向にずれる。成長時のpAgとして特に重要なものはその基盤粒子の成長の最終時のpAgである。一方、成長時のpAgが上記の値を満足しない場合においても、基盤粒子の成長後、該pAgに調整し、熟成することにより、内部高沃化銀相の選択位置をコントロールすることも可能である。この時、ハロゲン化銀溶剤としてアンモニア、アミン化合物、チオ尿素誘導体、チオシアネート塩が有効である。内部高沃化銀相の生成はいわゆるコンバージョン法を用いることができる。
【0164】
この方法には、粒子形成途中に、その時点での粒子あるいは粒子の表面近傍を形成しているハロゲンイオンより、銀イオンをつくる塩の溶解度が小さいハロゲンイオンを添加する方法などがあるが、本発明においては、添加する溶解度の小さいハロゲンイオンがその時点の粒子の表面積に対してある値(ハロゲン組成に関係する)以上の量であることが好ましい。たとえば粒子形成途中においてその時点のハロゲン化銀粒子の表面積に対してある量以上のKI量を添加することが好ましい。具体的には8.2×10−5モル/m2以上の沃化物塩を添加することが好ましい。
【0165】
より好ましい内部高沃化銀相の生成法は沃化物塩を含むハロゲン化物塩水溶液の添加と同時に銀塩水溶液を添加する方法である。
例えばKI水溶液の添加と同時にAgNO3水溶液をダブルジェットで添加する。この時KI水溶液とAgNO3水溶液の添加開始時間と添加終了時間はお互いにずれて前後していてもよい。KI水溶液に対するAgNO3水溶液の添加モル比は0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。さらに好ましくは1以上である。系中のハロゲンイオンおよび添加沃素イオンに対してAgNO3水溶液の総添加モル量が銀過剰領域となってもよい。これらの沃素イオンを含むハロゲン化物水溶液の添加と銀塩水溶液とのダブルジェットによる添加時のpAgは、ダブルジェットでの添加時間に伴なって減少することが好ましい。添加開始前のpAgは、6.5以上13以下が好ましい。より好ましくは7.0以上11以下が好ましい。添加終了時のpAgは6.5以上10.0以下が最も好ましい。
【0166】
以上の方法を実施する際には、混合系のハロゲン化銀の溶解度が極力低い方が好ましい。したがって高沃化銀相を形成する時の混合系の温度は30℃以上80℃以下が好ましいが、より好ましくは30℃以上70℃以下である。
【0167】
さらに好ましくは内部高沃化銀相の形成は微粒子沃化銀または微粒子沃臭化銀または微粒子塩沃化銀または微粒子塩沃臭化銀を添加して行うことができる。特に微粒子沃化銀を添加して行うことが好ましい。これら微粒子は通常0.01μm以上0.1μm以下の粒子サイズであるが、0.01μm以下または0.1μm以上の粒子サイズの微粒子も、用いることができる。これら微粒子ハロゲン化銀粒子の調製方法に関しては特開平1−183417号、同2−44335号、同1−183644号、同1−183645号、同2−43534号および同2−43535号に関する記載を参考にすることができる。これら微粒子ハロゲン化銀を添加して熟成することにより内部高沃化銀相を設けることが可能である。熟成して微粒子を溶解する時には、前述したハロゲン化銀溶剤を用いることも可能である。これら添加した微粒子は直ちに全て溶解して消失する必要はなく、最終粒子が完成した時に溶解消失していればよい。
【0168】
内部高沃化銀相の位置は粒子の投影される六角形等の中心から測り、粒子全体の銀量に対して5モル%以上100モル%未満の範囲に存在することが好ましく、さらに好ましくは20モル%以上95モル%未満、特に50モル%以上90モル%未満の範囲内であることが好ましい。これら内部高沃化銀相を形成するハロゲン化銀の量は銀量にして粒子全体の銀量の50モル%以下であり、より好ましくは20モル%以下である。これら高沃化銀相に関してはハロゲン化銀乳剤製造の処方値であって、最終粒子のハロゲン組成を種々の分析法にて測定した値ではない。内部高沃化銀相は最終粒子においては、シェル付け過程における再結晶等により消失してしまうことがよくあり、上記の銀量は全てその処方値に関するものである。
【0169】
したがって最終粒子においては転位線の観測は上述した方法によって容易に行えるが、転位線の導入のために導入した内部沃化銀相は、境界の沃化銀組成が連続的に変化するため明確な相としては確認することができない場合が多い。粒子各部のハロゲン組成についてはX線回析、EPMA(XMAという名称もある)法(電子線でハロゲン化銀粒子を走査してハロゲン化銀組成を検出する方法)、ESCA(XPSという名称もある)法(X線を照射し粒子表面から出て来る光電子を分光する方法)などを組み合わせることにより確認することができる。
【0170】
内部高沃化銀相をカバーする外側の相は高沃化銀相の沃化銀含有率よりも低く、好ましくは沃化銀含有率は、当該カバーする外側の相に含有されるハロゲン化銀量に対して0〜30モル%、より好ましくは0〜20モル%、最も好ましくは0〜10モル%である。
【0171】
内部高沃化銀相をカバーする外側の相の形成時の温度、pAgは任意であるが、好ましい温度は30℃以上、80℃以下である。最も好ましくは35℃以上70℃以下である。好ましいpAgは6.5以上11.5以下である。前述したハロゲン化銀溶剤を用いると好ましい場合もあり、最も好ましいハロゲン化銀溶剤はチオシアネート塩である。
【0172】
さらに、平板粒子に転位線を導入する別の方法には、特開平6−11782号に記載されているように沃化物イオン放出剤を用いる方法もあり、好ましく用いられる。
【0173】
この転位線を導入する方法と、前述した転位線を導入する方法を適宜、組み合わせて用いて転位線を導入することも可能である。
【0174】
本発明の感光材料に含有されるハロゲン化銀粒子の粒子間ヨード分布の変動係数は20%以下であることが好ましい。より好ましくは15%以下であり、特に好ましくは10%以下である。個々のハロゲン化銀のヨード含有率分布の変動係数が20%より大きい場合は、硬調ではなく、圧力を加えたときの感度の減少も大きくなってしまい好ましくない。
【0175】
本発明の感光材料に含有される粒子間ヨード分布の狭いハロゲン化銀粒子の製造方法それ自体としては、公知のいずれの方法、例えば特開平1−183417号等に示されているような微粒子を添加する方法、特開平2−68538号に示されているような沃化物イオン放出剤を用いる方法等を単独、もしくは組み合わせて用いることができる。
【0176】
本発明のハロゲン化銀粒子は、粒子間ヨード分布の変動係数が20%以下であることが好ましいが、粒子間ヨード分布を単分散化する最も好ましい方法として、特開平3−213845号に記載されている方法を用いることができる。すなわち、95モル%以上の沃化銀を含有する微細なハロゲン化銀粒子が、反応容器の外に設けられた混合器において、水溶性銀塩の水溶液及び水溶性ハライド(95モル%以上のヨードイオンを含有する)の水溶液を混合して形成され、かつ形成後ただちに該反応容器中に供給されることで、単分散な粒子間ヨード分布を達成することが可能である。ここで、反応容器とは平板状ハロゲン化銀粒子の核形成及び/又は結晶成長を起こさせる容器をいう。
【0177】
混合器で調製されたハロゲン化銀粒子を添加する方法及びそれに用いる調製手段は特開平3−213845号に記載されているように、以下の三つの技術を用いることができる。
(1) 混合器で微粒子を形成した後、ただちにそれを反応容器に添加する。
(2) 混合器で強力かつ効率のよい攪拌を行う。
(3) 保護コロイド水溶液の混合器への注入。
【0178】
上記(3)で用いる保護コロイドは、単独で混合器に注入してもよいし、ハロゲン塩水溶液又は硝酸銀水溶液に保護コロイドを含有させて混合器に注入してもよい。保護コロイドの濃度は1質量%以上、好ましくは2〜5質量%である。本発明に用いられるハロゲン化銀粒子に対して保護コロイド作用を有する高分子化合物としては、ポリアクリルアミドポリマー、アミノポリマー、チオエーテル基を有するポリマー、ポリビニルアルコール、アクリル酸ポリマー、ヒドロキシキノリンを有するポリマー、セルローズ、澱粉、アセタール、ポリビニルピロリドン、三元ポリマーなどがあるが、低分子量ゼラチンを用いるのが好ましい。低分子量ゼラチンの重量平均分子量は、30000以下がよく、さらに好ましくは10000以下である。
【0179】
微細なハロゲン化銀粒子を調製する際の粒子形成温度は、35℃以下が好ましく、特に好ましくは25℃以下である。微細なハロゲン化銀粒子を添加する反応容器の温度は50℃以上、好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上である。
【0180】
本発明によって用いられる微細なサイズのハロゲン化銀の粒子サイズは粒子をメッシュにのせてそのまま透過型電子顕微鏡によって確認できる。本発明の微粒子のサイズは好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。この微細なハロゲン化銀は他のハロゲンイオン、銀イオンの添加と同時に添加してもよいし、微細なハロゲン化銀のみを添加してもよい。微細なハロゲン化銀粒子は全ハロゲン化銀に対して0.005〜20モル%、好ましくは0.01〜10モル%の範囲で混合される。
【0181】
個々の粒子の沃化銀含有率はX線マイクロアナライザーを用いて、一個一個の粒子の組成を分析することで測定できる。粒子間ヨード分布の変動係数とは少なくとも100個、より好ましくは200個、特に好ましくは300個以上の乳剤粒子の沃化銀含有率を測定した際の沃化銀含有率の標準偏差と平均沃化銀含有率を用いて関係式
(標準偏差/平均沃化銀含有率)×100=変動係数
で定義される値である。個々の粒子の沃化銀含有率測定は例えば欧州特許第147、868号に記載されている。個々の粒子の沃化銀含有率Yi(モル%)と各粒子の球相当径Xi(ミクロン)の間には、相関がある場合と無い場合があるが、相関が無いことが望ましい。本発明の粒子のハロゲン化銀組成に関する構造については、例えば、X線回折、EPMA法(電子線でハロゲン化銀粒子を走査して、ハロゲン化銀組成を検出する方法)、ESCA法(X線を照射して粒子表面から出てくる光電子を分光する方法)を組み合わせることにより確認することができる。本発明において沃化銀含有率を測定する際、粒子表面とは、表面より50Å程度の深さの領域のことを言い、粒子内部とは上記の表面以外の領域を言う。このような粒子表面のハロゲン組成は、通常ESCA法により測定することができる。
【0182】
本発明には前述の平板状粒子のほかに立方体、8面体、14面体などの正常晶粒子や不定形の双晶粒子を使用することができる。
【0183】
本発明のハロゲン化銀乳剤はセレン増感または金増感することが好ましく、特にセレン増感することが好ましい。
本発明で用い得るセレン増感剤としては、従来公知の特許に開示されているセレン化合物を用いることができる。通常、不安定型セレン化合物および/または非不安定型セレン化合物は、これを添加して高温、好ましくは40℃以上で乳剤を一定時間攪拌することにより用いられる。不安定型セレン化合物としては、特公昭44−15748号、特公昭43−13489号、特開平4−25832号、特開平4−109240号などに記載の化合物を用いることが好ましい。
【0184】
具体的な不安定セレン増感剤としては、例えばイソセレノシアネート類(例えばアリルイソセレノシアネートの如き脂肪族イソセレノシアネート類)、セレノ尿素類、セレノケトン類、セレノアミド類、セレノカルボン酸類(例えば、2−セレノプロピオン酸、2−セレノ酪酸)、セレノエステル類、ジアシルセレニド類(例えば、ビス(3−クロロ−2、6−ジメトキシベンゾイル)セレニド)、セレノホスフェート類、ホスフィンセレニド類、コロイド状金属セレンがあげられる。
【0185】
不安定型セレン化合物の好ましい類型を上に述べたが、これらは限定的なものではない。写真乳剤の増感剤としての不安定型セレン化合物といえば、セレンが不安定である限り該化合物の構造はさして重要なものではなく、セレン増感剤分子の有機部分はセレンを担持し、それを不安定な形で乳剤中に存在せしめる以外何らの役割をもたないことが、当業者には一般に理解されている。本発明においては、かかる広範な概念の不安定セレン化合物が有利に用いられる。
【0186】
本発明で用い得る非不安定型セレン化合物としては、例えば特公昭46−4553号、特公昭52−34492号および特公昭52−34491号に記載の化合物を挙げることができる。具体的な非不安定型セレン化合物としては、例えば亜セレン酸、セレノシアン化カリウム、セレナゾール類、セレナゾール類の四級塩、ジアリールセレニド、ジアリールジセレニド、ジアルキルセレニド、ジアルキルジセレニド、2−セレナゾリジンジオン、2−セレノオキサゾリジンチオンおよびこれらの誘導体があげられる。
【0187】
これらのセレン増感剤は水またはメタノール、エタノールなどの有機溶媒の単独または混合溶媒に溶解して、化学増感時に添加される。好ましくは、化学増感開始前に添加される。使用されるセレン増感剤は1種に限られず、上記セレン増感剤の2種以上を併用して用いることができる。不安定セレン化合物と非不安定セレン化合物との併用は好ましい。
【0188】
本発明に使用し得るセレン増感剤の添加量は、用いるセレン増感剤の活性度、ハロゲン化銀の種類や大きさ、熟成の温度および時間などにより異なるが、好ましくは、ハロゲン化銀1モル当り2×10−6モル以上5×10−6モル以下である。セレン増感剤を用いた場合の化学増感の温度は、好ましくは40℃以上80℃以下である。pAgおよびpHは任意である。例えばpHについては、4から9までの広い範囲で本発明の効果が得られる。
【0189】
セレン増感は、ハロゲン化銀溶剤の存在下で行うことにより、より効果的に達成される。
本発明で用いることができるハロゲン化銀溶剤としては、例えば米国特許第3,271,157号、同第3,531,289号、同第3,574,628号、特開昭54−1019号、同54−158917号に記載された(a)有機チオエーテル類、特開昭53−82408号、同55−77737号、同55−2982号に記載された(b)チオ尿素誘導体、特開昭53−144319号に記載された(c)酸素または硫黄原子と窒素原子とにはさまれたチオカルボニル基を有するハロゲン化銀溶剤、特開昭54−100717号に記載された(d)イミダゾール類、(e)亜硫酸塩、(f)チオシアネートが挙げられる。
【0190】
特に好ましいハロゲン化銀溶剤としては、チオシアネートおよびテトラメチルチオ尿素がある。また、用いられる溶剤の量は種類によっても異なるが、好ましい量はハロゲン化銀1モル当り1×10−4モル以上1×10−2モル以下である。
【0191】
上記金増感の金増感剤としては、金の酸化数が+1価でも+3価でもよく、金増感剤として通常用いられる金化合物を用いることができる。代表的な例としては、塩化金酸塩、カリウムクロロオーレート、オーリックトリクロライド、カリウムオーリックチオシアネート、カリウムヨードオーレート、テトラシアノオーリックアシド、アンモニウムオーロチオシアネート、ピリジルトリクロロゴールド、硫化金、金セレナイドが挙げられる。金増感剤の添加量は種々の条件により異なるが、目安としてはハロゲン化銀1モル当たり1×10−7モル以上5×10−5モル以下が好ましい。
【0192】
本発明の乳剤は、化学増感において硫黄増感を併用することが望ましい。
この硫黄増感は、通常、硫黄増感剤を添加して、高温、好ましくは40℃以上で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。
【0193】
上記の硫黄増感には、硫黄増感剤として公知のものを用いることができる。例えばチオ硫酸塩、アリルチオカルバミドチオ尿素、アリルイソチアシアネート、シスチン、p−トルエンチオスルホン酸塩、ローダニンなどが挙げられる。その他、例えば米国特許第1,574,944号、同第2,410,689号、同第2,278,947号、同第2,728,668号、同第3,501,313号、同第3,656,955号、ドイツ特許1,422,869号、特公昭56−24937号、特開昭55−45016号公報に記載されている硫黄増感剤も用いることができる。硫黄増感剤の添加量は、乳剤の感度を効果的に増大させるのに十分な量でよい。この量は、pH、温度、ハロゲン化銀粒子の大きさなどの種々の条件の下で相当の範囲にわたって変化するが、ハロゲン化銀1モル当り1×10−7モル以上、5×10−5モル以下が好ましい。
【0194】
本発明のハロゲン化銀乳剤を粒子形成中、粒子形成後でかつ化学増感前あるいは化学増感中、あるいは化学増感後に還元増感することもできる。
【0195】
還元増感としては、ハロゲン化銀乳剤に還元増感剤を添加する方法、銀熟成と呼ばれるpAg1〜7の低pAgの雰囲気で成長または、熟成させる方法、高pH熟成と呼ばれるpH8〜11の高pHの雰囲気で成長または熟成させる方法のいずれを選ぶことができる。また2つ以上の方法を併用することもできる。
還元増感剤を添加する方法は還元増感のレベルを微妙に調節できる点で好ましい方法である。
【0196】
還元増感剤として例えば、第一錫塩、アスコルビン酸およびその誘導体、アミンおよびポリアミン類、ヒドラジン誘導体、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物、ボラン化合物などが公知である。本発明の還元増感にはこれら公知の還元増感剤を選んで用いることができ、また2種以上の化合物を併用することもできる。還元増感剤として塩化第一錫、二酸化チオ尿素、ジメチルアミンボラン、アスコルビン酸およびその誘導体が好ましい化合物である。還元増感剤の添加量は乳剤製造条件に依存するので添加量を選ぶ必要があるが、ハロゲン化銀1モル当り10−7〜10−3モルの範囲が適当である。
【0197】
還元増感剤は水あるいはアルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類のような有機溶媒に溶かし粒子成長中に添加される。あらかじめ反応容器に添加するのもよいが、粒子成長の適当な時期に添加する方が好ましい。また水溶性銀塩あるいは水溶性アルカリハライドの水溶液にあらかじめ還元増感剤を添加しておき、これらの水溶液を用いてハロゲン化銀粒子を沈澱せしめてもよい。また粒子成長に伴って還元増感剤の溶液を何回かに分けて添加しても連続して長時間添加するのも好ましい方法である。
【0198】
本発明の乳剤の製造工程中に銀に対する酸化剤を用いることが好ましい。銀に対する酸化剤とは、金属銀に作用してこれを銀イオンに変換せしめる作用を有する化合物をいう。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および化学増感過程において副生するきわめて微小な銀粒子を、銀イオンに変換せしめる化合物が有効である。ここで生成する銀イオンは、ハロゲン化銀、硫化銀、セレン化銀のように水に難溶の銀塩を形成してもよく、又、硝酸銀のように水に易溶の銀塩を形成してもよい。銀に対する酸化剤は、無機物であっても、有機物であってもよい。無機の酸化剤としては、オゾン、過酸化水素およびその添加物(例えば、NaBO2・H2O2・3H2O、2NaCO3・3H2O2、Na4P2O7・2H2O2 、2Na2SO4・H2O2・2H2O)、ペルオキシ酸塩(例えばK2S2O8、K2C2O6、K2P2O8)、ペルオキシ錯体化合物(例えば、K2[Ti(O2)C2O4]・3H2O、4K2SO4・Ti(O2)OH・SO4・2H2O、Na3[VO(O2)(C2H4)2・6H2O]、過マンガン酸塩(例えば、KMnO4)、クロム酸塩(例えば、K2Cr2O7)のような酸素酸塩、沃素や臭素のようなハロゲン元素、過ハロゲン酸塩(例えば過沃素酸カリウム)、高原子価の金属の塩(例えば、ヘキサシアノ第二鉄酸カリウム)、およびチオスルフォン酸塩などがある。
【0199】
また、有機の酸化剤としては、p−キノンのようなキノン類、過酢酸や過安息香酸のような有機過酸化物、活性ハロゲンを放出する化合物(例えば、N−ブロムサクシイミド、クロラミンT、クロラミンB)が例として挙げられる。
【0200】
本発明において、好ましい酸化剤は、オゾン、過酸化水素およびその付加物、ハロゲン元素、チオスルフォン酸塩のような無機酸化剤及びキノン類のような有機酸化剤である。
【0201】
前述の還元増感と銀に対する酸化剤を併用するのは好ましい態様である。酸化剤を用いたのち還元増感を施こす方法、その逆方法あるいは両者を同時に共存させる方法を用いることができる。これらの方法は粒子形成工程でも化学増感工程でも適用できる。
【0202】
本発明においては、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物を含有する場合が好ましい。
これらの化合物については、それぞれ特願2002−192373号、特願2002−188537号、特願2002−188536号、特願2001−272137号において、詳細に説明がなされており、これらに記載された化合物を好ましく用いることができる。また、特開平9−211769号(28〜32頁の表Eおよび表Fに記載の化合物PMT−1〜S−37)、特開平9−211774号、特開平11−95355号(化合物INV1〜36)、特表2001−500996号(化合物1〜74、80〜87、92〜122)、米国特許5,747,235号、米国特許5,747,236号、欧州特許786692A1号(化合物INV1〜35)、欧州特許893732A1号、米国特許6,054,260号、米国特許5,994,051号などにおいて、詳細な説明がなされており、これらに記載された「1光子2電子増感剤」または「脱プロトン化電子供与増感剤」と称される化合物を好ましく用いることができる。好ましくは、前者に記載の化合物である。
【0203】
本発明のハロゲン化銀粒子は、双晶面間隔が0.017μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.007〜0.017μmであり、特に好ましくは0.007〜0.015μmである。
【0204】
本発明のハロゲン化銀乳剤は、化学増感時に予め調製した沃臭化銀乳剤を添加し、溶解させることで経時中のカブリを改善することができる。添加時期は化学増感時ならいつでもよいが、最初に沃臭化銀乳剤を添加して溶解させた後、続いて増感色素及び化学増感剤の順に添加するのが好ましい。使用する沃臭化銀乳剤のヨード含量は、ホスト粒子の表面ヨード含量より低濃度のヨード含量の沃臭化銀乳剤であり、好ましくは純臭化銀乳剤である。この沃臭化銀乳剤のサイズは、完全に溶解させられるならばサイズに制限はないが、好ましくは球相当直径0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。沃臭化銀乳剤の添加量は、用いるホスト粒子により変化するが、基本的には銀1モルに対して、0.005〜5モル%が好ましく、より好ましくは0.1〜1モル%である。
【0205】
本発明に用いられる乳剤は、ハロゲン化銀乳剤に有用であることが知られている通常のドーパントを用いることができる。通常のドーパントにはFe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Pb、Tlなどがある。本発明では、ヘキサシアノ鉄(II)錯体およびヘキサシアノルテニウム錯体(以下、単に「金属錯体」ともいう)が好ましく用いられる。
【0206】
該金属錯体の添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり10−7モル以上、かつ10−3モル以下であることが好ましく、ハロゲン化銀1モル当たり、1.0×10−5モル以上、かつ5×10−4モル以下であることが更に好ましい。
【0207】
本発明に用いる金属錯体は、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加し含有させてもよい。また、数回にわたって分割して添加し含有させてもよい。しかしながら、ハロゲン化銀粒子中に含有される金属錯体の全含有量の50%以上が用いるハロゲン化銀粒子の最表面から銀量で1/2以内の層に含有されることが好ましい。ここで述べた金属錯体を含む層の更に支持体を基準として外側に金属錯体を含まない層を設けてもよい。
【0208】
これらの金属錯体は水または適当な溶媒で溶解して、ハロゲン化銀粒子の形成時に反応溶液中に直接添加するか、ハロゲン化銀粒子を形成するためのハロゲン化物水溶液中、銀塩水溶液中、あるいはそれ以外の溶液中に添加して粒子形成を行う事により含有させるのが好ましい。また、あらかじめ金属錯体を含有させたハロゲン化銀微粒子を添加溶解させ、別のハロゲン化銀粒子上に沈積させることによって、これらの金属錯体を含有させることも好ましく行われる。
これらの金属錯体を添加するときの反応溶液中の水素イオン濃度はpHが1以上10以下が好ましく、さらに好ましくはpHが3以上7以下である。
【0209】
本発明において、例えばEP1016902A2、US2002/0042033A、US6319660B1に記載された、ハロゲン化銀写真感光材料の高感度化に有用な化合物を用いる場合が好ましい。
【0210】
多層ハロゲン化銀カラー写真感光材料においては、一般に単位感光性層の配列が、支持体側から順に赤感色性層、緑感色性層、青感色性の順に設置される。しかし、目的に応じて上記設置順が逆であっても、また同一感色性層中に異なる感光性層が挟まれたような設置順をもとり得る。上記のハロゲン化銀感光性層の間および最上層、最下層には非感光性層を設けてもよい。これらには、後述のカプラー、DIR化合物、混色防止剤等が含まれていてもよい。各単位感光性層を構成する複数のハロゲン化銀乳剤層は、DE1,121,470あるいはGB923,045に記載されているように高感度乳剤層、低感度乳剤層の2層を、支持体に向かって順次感光度が低くなる様に配列するのが好ましい。また、特開昭57−112751号、同62−200350号、同62−206541号、同62−206543号に記載されているように支持体より離れた側に低感度乳剤層、支持体に近い側に高感度乳剤層を設置してもよい。
【0211】
具体例として支持体から最も遠い側から、低感度青感光性層(BL)/高感度青感光性層(BH)/高感度緑感光性層(GH)/低感度緑感光性層(GL)/高感度赤感光性層(RH)/低感度赤感光性層(RL)の順、またはBH/BL/GL/GH/RH/RLの順、またはBH/BL/GH/GL/RL/RHの順等に設置することができる。
【0212】
また特公昭55−34932公報に記載されているように、支持体から最も遠い側から青感光性層/GH/RH/GL/RLの順に配列することもできる。また特開昭56−25738号、同62−63936号に記載されているように、支持体から最も遠い側から青感光性層/GL/RL/GH/RHの順に配列することもできる。
【0213】
また特公昭49−15495号に記載されているように上層を最も感光度の高いハロゲン化銀乳剤層、中層をそれよりも低い感光度のハロゲン化銀乳剤層、下層を中層よりも更に感光度の低いハロゲン化銀乳剤層を配置し、支持体に向かって感光度が順次低められた感光度の異なる3層から構成される配列が挙げられる。このような感光度の異なる3層から構成される場合でも、特開昭59−202464号に記載されているように、同一感色性層中において支持体より離れた側から中感度乳剤層/高感度乳剤層/低感度乳剤層の順に配置されてもよい。
【0214】
その他、高感度乳剤層/低感度乳剤層/中感度乳剤層、あるいは低感度乳剤層/中感度乳剤層/高感度乳剤層の順に配置されていてもよい。
また、4層以上の場合にも、上記の如く配列を変えてよい。
【0215】
色再現性を改善するための手段として層間抑制効果を利用することが好ましい。
赤感層に重層効果を与える層に用いられるハロゲン化銀粒子は、例えば、そのサイズ、形状について特に限定されないが、アスペクト比の高いいわゆる平板状粒子や粒子サイズのそろった単分散乳剤、ヨードの層状構造を有する沃臭化銀粒子が好ましく用いられる。また、露光ラチチュードを拡大するために、粒子サイズの異なる2種以上の乳剤を混合することが好ましい。
【0216】
赤感層に重層効果を与えるドナー層は、支持体上のどの位置に塗設してもよいが、青感層より支持体に近く赤感性層より支持体から遠い位置に塗設することが好ましい。またイエローフィルター層より支持体に近い側にあるのが更に好ましい。
【0217】
赤感層に重層効果を与えるドナー層は、緑感性層よりも支持体に近く、赤感性層よりも支持体から遠い側にあることがさらに好ましく、緑感性層の支持体に近い側に隣接して位置することが最も好ましい。この場合「隣接する」とは中間層などを間に介さないことを言う。
赤感層に重層効果を与える層は複数の層から成ってもよい。その場合、それらの位置はお互いに隣接していても離れていてもよい。
本発明には、特開平11−305396号に記載の固体分散染料を用いることができる。
【0218】
本発明の感光材料に用いる乳剤は潜像を主として表面に形成する表面潜像型でも、粒子内部に形成する内部潜像型でも表面と内部のいずれにも潜像を有する型のいずれでもよいが、ネガ型の乳剤であることが必要である。内部潜像型のうち、特開昭63−264740号に記載のコア/シェル型内部潜像型乳剤であってもよく、この調製方法は特開昭59−133542号に記載されている。この乳剤のシェルの厚みは現像処理等によって異なるが、3〜40nmが好ましく、5〜20nmが特に好ましい。
【0219】
ハロゲン化銀乳剤は、通常、物理熟成、化学増感および分光増感を行ったものを使用する。このような工程で使用される添加剤はRDNo.17643、同No.18716および同No.307105に記載されており、その該当箇所を後掲の表にまとめた。
【0220】
本発明の感光材料には、感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子サイズ、粒子サイズ分布、ハロゲン組成、粒子の形状、感度の少なくとも1つの特性の異なる2種類以上の乳剤を、同一層中に混合して使用することができる。
【0221】
米国特許4,082,553に記載の粒子表面をかぶらせたハロゲン化銀粒子、米国特許4,626,498、特開昭59−214852号に記載の粒子内部をかぶらせたハロゲン化銀粒子、コロイド銀を感光性ハロゲン化銀乳剤層および/または実質的に非感光性の親水性コロイド層に適用することが好ましい。粒子内部または表面をかぶらせたハロゲン化銀粒子とは、感光材料の未露光部および露光部を問わず、一様に(非像様に)現像が可能となるハロゲン化銀粒子のことをいい、その調製法は、米国特許4,626,498号、特開昭59−214852号に記載されている。粒子内部がかぶらされたコア/シェル型ハロゲン化銀粒子の内部核を形成するハロゲン化銀は、ハロゲン組成が異なっていてもよい。粒子内部または表面をかぶらせたハロゲン化銀としては、塩化銀、塩臭化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀のいずれをも用いることができる。これらのかぶらされたハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズとしては0.01〜0.75μm、特に0.05〜0.6μmが好ましい。また、粒子形状は規則的な粒子でもよく、多分散乳剤でもよいが、単分散性(ハロゲン化銀粒子の質量または粒子数の少なくとも95%が平均粒子径の±40%以内の粒子径を有するもの)であることが好ましい。
【0222】
本発明には、非感光性微粒子ハロゲン化銀を使用することが好ましい。非感光性微粒子ハロゲン化銀とは、色素画像を得るための像様露光時においては感光せずに、その現像処理において実質的に現像されないハロゲン化銀微粒子であり、あらかじめカブラされていないほうが好ましい。微粒子ハロゲン化銀は、臭化銀の含有率が0〜100モル%であり、必要に応じて塩化銀および/または沃化銀を含有してもよい。好ましくは沃化銀を0.5〜10モル%含有するものである。微粒子ハロゲン化銀は、平均粒径(投影面積の円相当直径の平均値)が0.01〜0.5μmが好ましく、0.02〜0.2μmがより好ましい。
【0223】
微粒子ハロゲン化銀は、通常の感光性ハロゲン化銀と同様の方法で調製できる。ハロゲン化銀粒子の表面は、光学的に増感される必要はなく、また分光増感も不要である。ただし、これを塗布液に添加するのに先立ち、あらかじめトリアゾール系、アザインデン系、ベンゾチアゾリウム系、もしくはメルカプト系化合物または亜鉛化合物などの公知の安定剤を添加しておくことが好ましい。この微粒子ハロゲン化銀粒子含有層に、コロイド銀を含有させることができる。
【0224】
本技術に関する感光材料には、前記の種々の添加剤が用いられるが、それ以外にも目的に応じて種々の添加剤を用いることができる。
これらの添加剤は、より詳しくはリサーチディスクロージャー Item 17643(1978年12月)、同 Item 18716(1979年11月)および同 Item 308119(1989年12月)に記載されており、その該当個所を後掲の表にまとめて示した。
【0225】
【0226】
本発明の乳剤ならびにその乳剤を用いた写真感光材料に使用することができる層配列等の技術、ハロゲン化銀乳剤、色素形成カプラー、DIRカプラー等の機能性カプラー、各種の添加剤等、及び現像処理については、欧州特許第0565096A1号(1993年10月13日公開)及びこれに引用された特許に記載されている。以下に各項目とこれに対応する記載個所を列記する。
【0227】
1.層構成:61頁23〜35行、61頁41行〜62頁14行
2.中間層:61頁36〜40行、
3.重層効果付与層:62頁15〜18行、
4.ハロゲン化銀ハロゲン組成:62頁21〜25行、
5.ハロゲン化銀粒子晶癖:62頁26〜30行、
6.ハロゲン化銀粒子サイズ:62頁31〜34行、
7.乳剤製造法:62頁35〜40行、
8.ハロゲン化銀粒子サイズ分布:62頁41〜42行、
9.平板粒子:62頁43〜46行、
10.粒子の内部構造:62頁47行〜53行、
11.乳剤の潜像形成タイプ:62頁54行〜63頁5行、
12.乳剤の物理熟成・化学増感:63頁6〜9行、
13.乳剤の混合使用:63頁10〜13行、
14.かぶらせ乳剤:63頁14〜31行、
15.非感光性乳剤:63頁32〜43行、
【0228】
16.塗布銀量:63頁49〜50行、
17.ホルムアルデヒドスカベンジャー:64頁54〜57行、
18.メルカプト系カブリ防止剤:65頁1〜2行、
19.かぶらせ剤等放出剤:65頁3〜7行、
20.色素:65頁7〜10行、
21.カラーカプラー全般:65頁11〜13行、
22.イエロー、マゼンタ及びシアンカプラー:65頁14〜25行、
23.ポリマーカプラー:65頁26〜28行、
24.拡散性色素形成カプラー:65頁29〜31行、
25.カラードカプラー:65頁32〜38行、
26.機能性カプラー全般:65頁39〜44行、
27.漂白促進剤放出カプラー:65頁45〜48行、
28.現像促進剤放出カプラー:65頁49〜53行、
29.その他のDIRカプラー:65頁54行〜66頁4行、
30.カプラー分散方法:66頁5〜28行、
【0229】
31.防腐剤・防かび剤:66頁29〜33行、
32.感材の種類:66頁34〜36行、
33.感光層膜厚と膨潤速度:66頁40行〜67頁1行、
34.バック層:67頁3〜8行、
35.現像処理全般:67頁9〜11行、
36.現像液と現像薬:67頁12〜30行、
37.現像液添加剤:67頁31〜44行、
38.反転処理:67頁45〜56行、
39.処理液開口率:67頁57行〜68頁12行、
40.現像時間:68頁13〜15行、
41.漂白定着、漂白、定着:68頁16行〜69頁31行、
42.自動現像機:69頁32〜40行、
43.水洗、リンス、安定化:69頁41行〜70頁18行、
44.処理液補充、再使用:70頁19〜23行、
45.現像薬内蔵感材:70頁24〜33行、
46.現像処理温度:70頁34〜38行、
47.レンズ付フィルムへの利用:70頁39〜41行
【0230】
また重層効果を与える素材としては、現像により得た現像主薬の酸化生成物と反応して現像抑制剤又はその前駆体を放出する化合物を用いる。例えば、DIR(現像抑制剤放出型)カプラー、DIR−ハイドロキノン、DIR−ハイドロキノン又はその前駆体を放出するカプラー等が用いられる。拡散性の大きい現像抑制剤の場合には、このドナー層を重層多層構成中どこに位置させても、現像抑制効果を得ることができるが、意図しない方向への現像抑制効果も生じるためこれを補正するために、ドナー層を発色させる(例えば、望ましくない現像抑制剤の影響を受ける層と同じ色に発色させる)ことが好ましい。本発明の感光材料が所望する分光感度を得るには、重層効果を与えるドナー層は、マゼンタ発色することが好ましい。
【0231】
また、欧州特許第602600号公報に記載の、2−ピリジンカルボン酸または2, 6−ピリジンジカルボン酸と硝酸第二鉄のごとき第二鉄塩、及び過硫酸塩を含有した漂白液も好ましく使用できる。この漂白液の使用においては、発色現像工程と漂白工程との間に、停止工程と水洗工程を介在させることが好ましく、停止液には酢酸、コハク酸、マレイン酸などの有機酸を使用することが好ましい。さらに、この漂白液には、pH調整や漂白カブリの目的に、酢酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸などの有機酸を0.1〜2モル/リットル(以下、リットルを「L」と表記する。また、ミリリットルを「mL」とも表記する。)の範囲で含有させることが好ましい。
【0232】
次に、本発明に好ましく用いられる磁気記録層について説明する。
本発明に好ましく用いられる磁気記録層とは、磁性体粒子をバインダー中に分散した水性もしくは有機溶媒系塗布液を支持体上に塗設したものである。
【0233】
本発明で用いられる磁性体粒子は、γFe2O3などの強磁性酸化鉄、Co被着γFe2O3、Co被着マグネタイト、Co含有マグネタイト、強磁性二酸化クロム、強磁性金属、強磁性合金、六方晶系のBaフェライト、Srフェライト、Pbフェライト、Caフェライトなどを使用できる。Co被着γFe2O3などのCo被着強磁性酸化鉄が好ましい。形状としては針状、米粒状、球状、立方体状、板状等いずれでもよい。比表面積はSBETで20m2/g以上が好ましく、30m2/g以上が特に好ましい。
【0234】
強磁性体の飽和磁化(σs)は、好ましくは3.0×104〜3.0×105A/mであり、特に好ましくは4.0×104〜2.5×105A/mである。強磁性体粒子に、シリカおよび/またはアルミナや有機素材による表面処理を施してもよい。さらに、磁性体粒子は特開平6−161032号に記載された如くその表面にシランカップリング剤又はチタンカップリング剤で処理されてもよい。又特開平4−259911号、同5−81652号に記載の表面に無機、有機物を被覆した磁性体粒子も使用できる。
【0235】
磁性体粒子に用いられるバインダーとしては、特開平4−219569号に記載の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、反応型樹脂、酸、アルカリ又は生分解性ポリマー、天然物重合体(セルロース誘導体、糖誘導体など)およびそれらの混合物を使用することができる。上記の樹脂のTgは−40℃〜300℃、重量平均分子量は0.2万〜100万であることが好ましい。バインダーとしては、例えばビニル系共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルローストリプロピオネートなどのセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂を挙げることができ、ゼラチンも好ましい。特にセルロースジ(トリ)アセテートが好ましい。バインダーは、エポキシ系、アジリジン系、イソシアネート系の架橋剤を添加して硬化処理することができる。イソシアネート系の架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、などのイソシアネート類、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの反応生成物(例えば、トリレンジイソシアナート3molとトリメチロールプロパン1molの反応生成物)、及びこれらのイソシアネート類の縮合により生成したポリイソシアネートなどがあげられ、例えば特開平6−59357号に記載されている。
【0236】
前述の磁性体を上記バインダー中に分散する方法は、特開平6−35092号に記載されている方法のように、ニーダー、ピン型ミル、アニュラー型ミルなどが好ましく併用も好ましい。特開平5−088283号に記載の分散剤や、その他の公知の分散剤が使用できる。磁気記録層の厚みは好ましくは0.1μm〜10μm、より好ましくは0.2μm〜5μm、さらに好ましくは0.3μm〜3μmである。磁性体粒子とバインダーの質量比は好ましくは 0.5:100〜60:100からなり、より好ましくは1:100〜30:100である。磁性体粒子の塗布量は0.005〜3g/m2、好ましくは0.01〜2g/m2、さらに好ましくは0.02〜0.5g/m2である。磁気記録層の透過イエロー濃度は、0.01〜0.50が好ましく、0.03〜0.20がより好ましく、0.04〜0.15が特に好ましい。磁気記録層は、写真用支持体の裏面に塗布又は印刷によって全面またはストライプ状に設けることができる。磁気記録層を塗布する方法としてはエアードクター、ブレード、エアナイフ、スクイズ、含浸、リバースロール、トランスファーロール、グラビヤ、キス、キャスト、スプレイ、ディップ、バー、エクストリュージョン等が利用でき、特開平5−341436号等に記載の塗布液が好ましい。
【0237】
磁気記録層に、潤滑性向上、カール調節、帯電防止、接着防止、ヘッド研磨などの機能を合せ持たせてもよいし、別の機能性層を設けて、これらの機能を付与させてもよく、粒子の少なくとも1種以上がモース硬度が5以上の非球形無機粒子の研磨剤であることが好ましい。非球形無機粒子の組成としては、酸化アルミニウム、酸化クロム、二酸化珪素、二酸化チタン、シリコンカーバイト等の酸化物、炭化珪素、炭化チタン等の炭化物、ダイアモンド等の微粉末が好ましい。これらの研磨剤は、その表面をシランカップリング剤又はチタンカップリング剤で処理されてもよい。これらの粒子は磁気記録層に添加してもよく、また磁気記録層上にオーバーコート(例えば保護層、潤滑剤層など)してもよい。この時使用するバインダーは前述のものが使用でき、好ましくは磁気記録層のバインダーと同じものがよい。磁気記録層を有する感材については、米国特許 5,336,589、同5 ,250,404、同 5,229,259、同 5,215,874、EP 466,130に記載されている。
【0238】
次に本発明に好ましく用いられるポリエステル支持体について記すが、後述する感材、処理、カートリッジ及び実施例なども含め詳細については、公開技報、公技番号94−6023(発明協会;1994.3.15.)に記載されている。本発明に用いられるポリエステルはジオールと芳香族ジカルボン酸を必須成分として形成され、芳香族ジカルボン酸として2,6−、1,5−、1,4−、及び2,7−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジオールとしてジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールが挙げられる。この重合ポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート等のホモポリマーを挙げることができる。特に好ましいのは2,6−ナフタレンジカルボン酸を50モル%〜100モル%含むポリエステルである。中でも特に好ましいのはポリエチレン−2,6−ナフタレートである。重量平均分子量の範囲は約5,000ないし200,000である。本発明のポリエステルのTgは好ましくは50℃以上であり、さらに90℃以上が好ましい。
【0239】
次に、ポリエステル支持体は、巻き癖をつきにくくするために熱処理温度は好ましくは40℃以上Tg未満、より好ましくはTg−20℃以上Tg未満で熱処理を行う。熱処理はこの温度範囲内の一定温度で実施してもよく、冷却しながら熱処理してもよい。この熱処理時間は、好ましくは0.1時間以上1500時間以下、さらに好ましくは0.5時間以上200時間以下である。支持体の熱処理は、ロ−ル状で実施してもよく、またウェブ状で搬送しながら実施してもよい。表面に凹凸を付与し(例えばSnO2やSb2O5等の導電性無機微粒子を塗布する)、面状改良を図ってもよい。又端部にロ−レットを付与し端部のみ少し高くすることで巻芯部の切り口写りを防止するなどの工夫を行うことが望ましい。これらの熱処理は支持体製膜後、表面処理後、バック層塗布後(帯電防止剤、滑り剤等)、下塗り塗布後のどこの段階で実施してもよい。好ましいのは帯電防止剤塗布後である。
【0240】
このポリエステルには紫外線吸収剤を練り込んでもよい。又ライトパイピング防止のため、三菱化成製のDiaresin、日本化薬製のKayaset等ポリエステル用として市販されている染料または顔料を練り込むことにより目的を達成することが可能である。
【0241】
次に、本発明では支持体と感材構成層を接着させるために、表面処理することが好ましい。薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理、などの表面活性化処理が挙げられる。表面処理の中でも好ましいのは、紫外線照射処理、火焔処理、コロナ処理、グロー処理である。
【0242】
次に、下塗法について述べると、単層でもよく2層以上でもよい。下塗層用バインダーとしては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの中から選ばれた単量体を出発原料とする共重合体を始めとして、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、グラフト化ゼラチン、ニトロセルロース、ゼラチンが挙げられる。支持体を膨潤させる化合物としてレゾルシンとp−クロルフェノールがある。下塗層にはゼラチン硬化剤としてはクロム塩(クロム明ばんなど)、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒドなど)、イソシアネート類、活性ハロゲン化合物(2、4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンなど)、エピクロルヒドリン樹脂、活性ビニルスルホン化合物などを挙げることができる。SiO2、TiO2、無機物微粒子又はポリメチルメタクリレート共重合体微粒子(0.01〜10μm)をマット剤として含有させてもよい。
【0243】
また、本発明においては、帯電防止剤が好ましく用いられる。それらの帯電防止剤としては、カルボン酸及びカルボン酸塩、スルホン酸塩を含む高分子、カチオン性高分子、イオン性界面活性剤化合物を挙げることができる。
【0244】
帯電防止剤として最も好ましいものは、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO3、V2O5の中から選ばれた少くとも1種の体積抵抗率が107Ω・cm以下、より好ましくは105Ω・cm以下である粒子サイズ0.001〜1.0μm結晶性の金属酸化物あるいはこれらの複合酸化物(Sb、P、B、In、S、Si、Cなど)の微粒子、更にはゾル状の金属酸化物あるいはこれらの複合酸化物の微粒子である。感材への含有量としては、5〜500mg/m2が好ましく特に好ましくは10〜350mg/m2である。導電性の結晶性酸化物又はその複合酸化物とバインダーの量の比は1/300〜100/1が好ましく、より好ましくは1/100〜100/5である。
【0245】
本発明の感材には滑り性がある事が好ましい。滑り剤含有層は感光層面、バック面ともに用いることが好ましい。好ましい滑り性としては動摩擦係数で0.25以下0.01以上である。この時の測定は直径5mmのステンレス球に対し、60cm/分で搬送した時の値を表す(25℃、60%RH)。この評価において相手材として感光層面に置き換えてももほぼ同レベルの値となる。
【0246】
本発明に使用可能な滑り剤としては、ポリオルガノシロキサン、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸と高級アルコールのエステル等であり、ポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリスチリルメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等を用いることができる。添加層としては乳剤層の最外層やバック層が好ましい。特にポリジメチルシロキサンや長鎖アルキル基を有するエステルが好ましい。
【0247】
本発明の感材にはマット剤が有る事が好ましい。マット剤としては乳剤面、バック面とどちらでもよいが、乳剤側の最外層に添加するのが特に好ましい。マット剤は処理液可溶性でも処理液不溶性でもよく、好ましくは両者を併用することである。例えばポリメチルメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート/メタクリル酸=9/1又は5/5(モル比))、ポリスチレン粒子などが好ましい。粒径としては0.8〜10μmが好ましく、その粒径分布も狭いほうが好ましく、平均粒径の0.9〜1.1倍の間に全粒子数の90%以上が含有されることが好ましい。また、マット性を高めるために0.8μm以下の微粒子を同時に添加することも好ましく例えばポリメチルメタクリレート(0.2μm)、ポリ(メチルメタクリレート/メタクリル酸=9/1(モル比)、0.3μm))、ポリスチレン粒子(0.25μm)、コロイダルシリカ(0.03μm)が挙げられる。
【0248】
本実施例で用いる支持体は、特開2001−281815号の実施例1に記載の方法により作成することができる。
【0249】
次に、本発明で用いられるフィルムパトローネについて記載する。本発明で使用されるパトローネの主材料は金属でも合成プラスチックでもよい。
【0250】
好ましいプラスチック材料はポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニルエーテルなどである。更に本発明のパトローネは、各種の帯電防止剤を含有してもよくカーボンブラック、金属酸化物粒子、ノニオン、アニオン、カチオン及びベタイン系界面活性剤又はポリマー等を好ましく用いることが出来る。これらの帯電防止されたパトローネは特開平1−312537号、同1−312538号に記載されている。特に25℃、25%RHでの抵抗が1012Ω以下が好ましい。通常プラスチックパトローネは、遮光性を付与するためにカーボンブラックや顔料などを練り込んだプラスチックを使って製作される。パトローネのサイズは現在135サイズのままでもよいし、カメラの小型化には、現在の135サイズの25mmのカートリッジの径を22mm以下とすることも有効である。パトローネのケースの容積は、30cm3以下好ましくは25cm3以下とすることが好ましい。パトローネおよびパトローネケースに使用されるプラスチックの質量は5g〜15gが好ましい。
【0251】
更に本発明で用いられる、スプールを回転してフイルムを送り出すパトローネでもよい。またフィルム先端がパトローネ本体内に収納され、スプール軸をフィルム送り出し方向に回転させることによってフィルム先端をパトローネのポート部から外部に送り出す構造でもよい。これらはUS 4、834、306、同 5、226、613に開示されている。本発明に用いられる写真フィルムは現像前のいわゆる生フィルムでもよいし、現像処理された写真フィルムでもよい。又、生フィルムと現像済みの写真フィルムが同じ新パトローネに収納されていてもよいし、異なるパトローネでもよい。
【0252】
本発明のカラー写真感光材料は、アドバンスト・フォト・システム(以下、APシステムという)用ネガフィルムとしても好適であり、富士写真フイルム(株)(以下、富士フイルムという)製NEXIA A 、NEXIA F 、NEXIA H (順にISO200 /100 / 400)のようにフィルムをAPシステムフォーマットに加工し、専用カートリッジに収納したものを挙げることができる。これらのAPシステム用カートリッジフィルムは、富士フイルム製エピオンシリーズ(エピオン300Z等)等のAPシステム用カメラに装填して用いられる。
また、本発明のカラー写真感光材料は、富士フイルム製フジカラー写ルンですスーパースリム、写ルンですACE800のようなレンズ付きフィルムにも好適である。
【0253】
これらにより撮影されたフィルムは、ミニラボシステムでは次のような工程を経てプリントされる。
(1) 受付(露光済みカートリッジフィルムをお客様からお預かり)
(2) デタッチ工程(カートリッジから、フィルムを現像工程用の中間カートリッジに移す)
(3) フィルム現像
(4) リアタッチ工程(現像済みのネガフィルムを、もとのカートリッジに戻す)
(5) プリント(C/H/P3タイプのプリントとインデックスプリントをカラーペーパー〔好ましくは富士フイルム製SUPER FA8 〕に連続自動プリント)
(6) 照合・出荷(カートリッジとインデックスプリントをIDナンバーで照合し、プリントとともに出荷)
【0254】
これらのシステムとしては、富士フイルムミニラボチャンピオンスーパーFA−298/FA−278/FA−258/FA−238 及び富士フイルムデジタルラボシステム フロンティアが好ましい。ミニラボチャンピオンのフィルムプロセサーとしてはFP922AL/FP562B/FP562B、AL/FP362B/FP362B、ALが挙げられ、推奨処理薬品はフジカラージャストイットCN−16L及びCN−16Qである。プリンタープロセサーとしては、PP3008AR/ PP3008A/ PP1828AR/ PP1828A/ PP1258AR/ PP1258A/ PP728AR/ PP728Aが挙げられ、推奨処理薬品はフジカラージャストイットCP−47L及びCP−40FAIIである。フロンティアシステムでは、スキャナー&イメージプロセサー SP−1000及びレーザープリンター&ペーパープロセサー LP−1000P もしくはレーザープリンターLP−1000Wが用いられる。デタッチ工程で用いるデタッチャー、リアタッチ工程で用いるリアタッチャーは、それぞれ富士フイルムのDT200/DT100及びAT200/AT100が好ましい。
【0255】
APシステムは、富士フイルムのデジタルイメージワークステーションAladdin 1000を中心とするフォトジョイシステムにより楽しむこともできる。例えば、Aladdin 1000に現像済みAPシステムカートリッジフィルムを直接装填したり、ネガフィルム、ポジフィルム、プリントの画像情報を、35mmフィルムスキャナーFE−550やフラットヘッドスキャナーPE−550を用いて入力し、得られたデジタル画像データを容易に加工・編集することができる。そのデータは、光定着型感熱カラープリント方式によるデジタルカラープリンターNC−550ALやレーザー露光熱現像転写方式のピクトログラフィー3000によって、又はフィルムレコーダーを通して既存のラボ機器によりプリントとして出力することができる。また、Aladdin 1000は、デジタル情報を直接フロッピーディスクやZipディスクに、もしくはCDライターを介してCD−Rに出力することもできる。
【0256】
一方、家庭では、現像済みAPシステムカートリッジフィルムを富士フイルム製フォトプレイヤーAP−1に装填するだけでTVで写真を楽しむことができるし、富士フイルム製フォトスキャナーAS−1に装填すれば、パソコンに画像情報を高速で連続的に取り込むこともできる。また、フィルム、プリント又は立体物をパソコンに入力するには、富士フイルム製フォトビジョンFV−10/FV−5が利用できる。更に、フロッピーディスク、Zipディスク、CD−Rもしくはハードディスクに記録された画像情報は、富士フイルムのアプリケーションソフトフォトファクトリーを用いてパソコン上で様々に加工して楽しむことができる。パソコンから高画質なプリントを出力するには、光定着型感熱カラープリント方式の富士フイルム製デジタルカラープリンターNC−2/NC−2Dが好適である。
【0257】
現像済みのAPシステムカートリッジフィルムを収納するには、フジカラーポケットアルバムAP−5ポップL、AP−1ポップL、AP−1ポップKG又はカートリッジファイル16が好ましい。
【0258】
本発明により調製されたハロゲン化銀乳剤はカラー写真感光材料および黒白写真感光材料のいずれにも用いることができる。カラー写真感光材料としては特にカラー印画紙、カラー撮影用フィルム、カラーリバーサルフィルム、カラーインスタントフイルム、黒白写真感光材料としては一般撮影用フィルム、X−レイ用フィルム、医療診断用フィルム、印刷感材用フィルム等を挙げることができる。
【0259】
医療診断用フィルム、印刷感材用フィルム分野において、レーザー・イメージセッターまたはレーザー・イメージャーにより効率的に露光させることができる。
これらの分野の技術については、特開平7−287、337号、特開平4−335、342号、特開平5−313、289号、特開平8−122、954号、特開平8−292、512号などに記載されている。
【0260】
また、熱現像感光材料を好ましく用いることもできる。例えば、触媒活性量の光触媒(例えば、ハロゲン化銀)、還元剤、還元可能な銀塩(例えば、有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した感光性層を有している材料などが知られている。これらについては、例えば、米国特許3152904号、米国特許3457075号、米国特許2910377号、米国特許第4、500、626号、特公昭43−4924号、特開平11−24200号、同11−24201号、同11−30832号、同11−84574号、同11−65021号、同11−109547号、同11−125880号、同11−129629号、同11−133536号〜同11−133539号、同11−133542号、同11−133543号、同11−223898号、同11−352627号、同6−130607号、同6−332134号、同6−332136号、同6−347970号、同7−261354号、特願2000−89436号、等を挙げることができる。
【0261】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料の露光方法について説明する。
写真像を得るための露光は通常の方法を用いて行なえばよい。すなわち自然光(日光)、タングステン電灯、蛍光灯、水銀灯、キセノンアーク灯、炭素アーク灯、キセノンフラッシュ灯、レーザー、LED、CRTなど公知の多種の光源をいずれでも用いることができる。また、電子線、X線、γ(ガンマ)線、α(アルファ)線などによって励起された蛍光体から放出する光によって露光されてもよい。
【0262】
本発明においては、レーザー光源が好ましく用いられることもある。レーザー光には、レーザー発振媒体としてヘリウム−ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、二酸化炭素ガスなどを利用したもの、またルビー、カドミウムなどの固体を発振媒体としたレーザー、その他液体レーザー、半導体レーザーなどがある。これらのレーザー光は、通常の照明などに用いられている光と異なり、単一周波数で位相のそろった鋭い方向性を有するコヒーレントな光であることから、それらを光源として露光するためのハロゲン化銀写真感光材料は、使用するレーザーの発光波長に合致した分光特性を有することを必要とする。 上記のレーザーのうち、好ましくは半導体レーザーを使用する場合である。
【0263】
【実施例】
次に本発明をより詳細に説明するため、以下に実施例を示すが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0264】
実施例1
臭化銀八面体乳剤(乳剤A)および臭化銀平板乳剤(乳剤Bおよび乳剤C)の調製。
反応容器中に水1000ml、脱イオン化した骨ゼラチン25g、50%のNH4NO3水溶液15mlおよび25%のNH3水溶液7.5mlを加えて50℃に保ち、良く攪拌し、1Nの硝酸銀水溶液750mlと、1mol/lの臭化カリウム水溶液を50分で添加し、反応中の銀電位を−40mVに保った。得られた臭化銀粒子は八面体で、球相当径が0.846±0.036μmであった。上記乳剤の温度を下げ、限外濾過法を用いて脱塩した。次いで、脱イオン化した骨ゼラチン95gと水430mlとを加え、50℃でpH6.5、およびpAg8.3に調整した後、最適感度となるようにチオシアン酸カリウム、塩化金酸およびチオ硫酸ナトリウムを添加し55℃で50分間熟成した。この乳剤を乳剤Aとした。
【0265】
1.2リットルの水に臭化カリウム6.4gと平均分子量が1万5千以下の低分子量ゼラチン6.2gを溶解させ30℃に保ちながら16.4%の硝酸銀水溶液8.1mlと23.5%の臭化カリウム水溶液7.2mlを10秒にわたってダブルジェット法で添加した。次に11.7%のゼラチン水溶液をさらに添加して75℃に昇温し40分間熟成させた後、32.2%の硝酸銀水溶液370mlと20%の臭化カリウム水溶液を、銀電位をー20mVに保ちながら10分間にわたって添加し、1分間物理熟成後温度を35℃に下げた。このようにして平均投影面積径2.32μm、厚み0.09μm、直径の変動係数15.1%の単分散純臭化銀平板乳剤(比重1.15)を得た。この後、限外濾過法を用いて脱塩した。再び温度を40℃に保ち、ゼラチン45.6g、1mol/lの濃度の水酸化ナトリウム水溶液を10ml、水167ml、さらに35%フェノキシエタノールを1.66ml添加し、pAgを8.3、pHを6.20に調整した。
この乳剤を、最適感度となるようにチオシアン酸カリウム、塩化金酸およびチオ硫酸ナトリウムを添加し55℃で50分間熟成した。この乳剤を乳剤Bとした。また、チオシアン酸カリウム、塩化金酸およびチオ硫酸ナトリウムの替わりに、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、ペンタフルオロフェニル−ジフェニルフォスフィンセレニドおよびチオ硫酸ナトリウムで化学増感した乳剤を乳剤Cとした。 色素占有面積を80Å2としたときの乳剤A、B、Cの一層飽和被覆量はそれぞれ5.4×10−4、1.42×10−3mol/mol、1.42×10−3mol/molAgであった。
【0266】
上記のようにして得られた乳剤を50℃に保ちながら、表1に示した色素、及び、化合物を添加した。
添加量、及び添加方法は下記の通りである。
試料11:(11)5.4×10−4mol/molAg添加
試料12:(11)5.4×10−4mol/molAg添加10分後に(10)5.4×10−4mol/molAg添加
試料13:(11)5.4×10−4mol/molAg添加10分後に(10)5.4×10−4mol/molAg添加、さらに10分後に(M−1)5.4×10−4mol/molAg添加
試料14:(11)5.4×10−4mol/molAg添加10分後に(10)5.4×10−4mol/molAg添加、さらに10分後に(M−14)5.4×10−4mol/molAg添加
試料15、19:(11)1.42×10−4mol/molAg添加
試料16、20:(11)1.42×10−4mol/molAg添加10分後に(10)1.42×10−4mol/molAg添加
試料17、21:(11)1.42×10−4mol/molAg添加10分後に(10)1.42×10−4mol/molAg添加、さらに10分後に(M−1)1.42×10−4mol/molAg添加
試料18、22:(11)1.42×10−4mol/molAg添加10分後に(10)1.42×10−4mol/molAg添加、さらに10分後に(M−14)1.42×10−4mol/molAg添加
また、これらの色素、及び化合物は、特開平11−52507号に記載の方法で作成した固体微分散物として、使用した。すなわち硝酸ナトリウム0.8質量部および硫酸ナトリウム3.2質量部をイオン交換水43部に溶解し、色素及び化合物13質量部を添加し、60℃の条件下でヂゾルバ−翼を用い2000rpmで20分間分散することにより、色素及び化合物の固体分散物を得た。
(M−1)及び(M−14)は、その吸収極大が400nm以上にないことを確認した。
【0267】
色素及び本発明の化合物の吸着量は、得られた液体乳剤を10、000rpmで10分間遠心沈降させ、沈殿を凍結乾燥した後、沈殿0.05gを25%チオ硫酸ナトリウム水溶液25mlとメタノールを加えて50mlにした。この溶液を高速液体クロマトグラフィーで分析し、色素及び化合物濃度を定量して求めた。このようにして求めた、色素及び化合物吸着量と一層飽和被覆量から色素発色団及び化合物の合計の吸着層数を求めた。
【0268】
単位面積当たりの光吸収強度の測定は、得られた乳剤をスライドガラス上に薄く塗布し、カールツアイス株式会社製の顕微分光光度計MSP65を用いて以下の方法でそれぞれの粒子の透過スペクトルおよび反射スペクトルを測定して、吸収スペクトルを求めた。透過スペクトルのリファレンスは粒子の存在しない部分を、反射スペクトルは反射率の分かっているシリコンカーバイドを測定してリファレンスとした。測定部は直径1μmの円形アパチャー部であり、粒子の輪郭にアパーチャー部が重ならないように位置を調整して10000cm−1(1000nm)から28000cm−1(357nm)までの波数領域で透過スペクトル及び反射スペクトルを測定し、1−T(透過率)−R(反射率)を吸収率Aとして吸収スペクトルを求めた。ハロゲン化銀の吸収を差し引いて吸収率A’とし、−Log(1−A’)を波数(cm−1)に対して積分した値を1/2にして単位表面積あたりの光吸収強度とした。積分範囲は10000cm−1から28000cm−1までである。この際、光源はタングステンランプを用い、光源電圧は8Vとした。光照射による色素の損傷を最小限にするため、一次側のモノクロメータを使用し、波長間隔は2nm、スリット幅を2.5nmに設定した。200粒子について吸収スペクトルおよび光吸収強度を求め、平均値を採用した。
【0269】
(4)塗布試料の作製
表1に示すように、上記で得られた乳剤と乳化物(カプラー、B−1、トリクレジルフォスフェート、及びゼラチン水溶液から調整される乳化物)を混合3分後(塗布液経時3分間)又は混合60分間後(塗布液経時60分間)に、下塗り層を設けてあるトリアセチルセルロースフィルム支持体に、表1に示すような構成で乳剤層および保護層を塗布し、試料を作成した。
【0270】
【表1】
【0271】
これらの試料に、タングステン電球(色温度2854K)を用い、色フィルターとして色素側を励起するためマイナス青露光用の富士ゼラチンフィルターSC−50(富士フイルム(株)製)を用いて500nm以下の光を遮断し、センシトメトリー用露光(1/100秒)を与え、下記のカラー現像処理を行った。
【0272】
次に、処理液の組成を記す。
【0273】
【0274】
処理済みの試料を緑色フィルターで濃度測定して、感度を評価した。感度は被り濃度より0.2高い濃度を与える露光量の逆数で定義し、試料11〜14の感度(3分間、60分間)は、試料11の感度(3分間)の値を100とした相対値で表し、試料15〜18の感度(3分間、60分間)は、試料15の感度(3分間)の値を100とした相対値で表し試料19〜22の感度(3分間、60分間)は、試料19の感度(3分間)の値を100とした相対値で表した。各試料に使用した乳剤および色素及び化合物と各試料の感度(3分間、60分間)の結果をの表2に示す。なお、感度(3分間)は塗布液経時3分後に塗布した場合の感度、感度(60分間)は塗布液経時60分後に塗布した場合の感度を表わす。吸着層数は塗布液経時60分後の液体乳剤について測定した。
【0275】
【表2】
【0276】
表2より、本発明の試料は比較の試料に比べて高感度であり、この傾向は特に塗布液経時60分間の試料で顕著である。本発明の試料は、塗布液経時安定性が向上しており、このことは塗布液経時60分後の吸着層数からも分かる。以上、本発明の試料は、多層吸着構造が安定化しており、高感度であることが分かる。また、試料20と22について、塗布液経時60分間後の液体乳剤の光吸収強度を測定したところ、比較試料20の光吸収強度=125に対して、本発明の試料22の光吸収強度=190と高かった。
さらに、増感色素の処理後の残存着色を評価するために、試料20、22について、表2の塗布液経時60分間後に塗布した試料を露光せず、上記と同様に処理を行った試料の残存着色を目視で評価したところ、比較試料20に比べて、本発明の試料22の方が残存着色が減少していた。
また、乳剤A、B、Cの比較から、本発明は平板粒子でさらに優れた性能を示すこと、またセレン増感した乳剤でさらに優れた性能を示すことが分かる。なお、乳剤Bと同様な方法で、銀電位を調整することによって、種々のアスペクト比の平板粒子を作成して、同様に評価したところ、アスペクト比は2以上、さらに8以上で特に優れた性能を示すことが分かった。
【0277】
実施例2
実施例1において、添加した色素、及び化合物を表3のように変えた以外は、全く同様にして評価した。なお、添加量・添加方法は下記の通りである。
試料51:(10)1.42×10−4mol/molAg添加
試料52:(11)、(10)各々1.42×10−4mol/molAg添加、さらに10分後に(M−1)を1.42×10−4mol/molAg添加
下記表3から、本発明の試料は比較の試料に比べて、塗布液経時60分間の試料での感度低下がなく、塗布液経時安定性が向上していることが分かる。
【0278】
実施例3
実施例1、2と同様の比較を、特開平11−305369の実施例1のカラーネガ感材の系、特開平7−92601号、同11−160828号の実施例1のカラー反転感材の系、特開平6−347944号の実施例1のカラーペーパー感材の系、特開2000−284442号の実施例1のインスタント感材の系、特開平8−292512号の実施例1の印刷感材の系、特開平8−122954号の実施例1のXレイ感材の系、特開2000−122206の実施例5、特開2001−281785(特願2000−89436)号の実施例1、及び特開平6−130607の実施例1の熱現像感材の系で評価して行った。その結果、実施例1、2と同様の効果を示した。
【0279】
【発明の効果】
本発明により、高感度で安定なハロゲン化銀写真感光材料を得ることができる。
Claims (4)
- ハロゲン化銀粒子表面上に色素発色団を含む化合物及び色素発色団を含まない化合物が合わせて多層に吸着していることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
- 請求項1記載のハロゲン化銀写真感光材料において、色素発色団が1層より多く吸着していることを特徴とする請求項1記載のハロゲン化銀写真感光材料。
- 請求項1又は2記載のハロゲン化銀写真感光材料において、色素発色団を含まない化合物が多層吸着の最外層に存在することを特徴とする請求項1又は2に記載のハロゲン化銀写真感光材料。
- 請求項1〜3記載のハロゲン化銀写真感光材料において、色素発色団を含まない化合物の吸収極大波長が400nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハロゲン化銀写真感光材料。
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