JP2004219229A - 表色方法とそれを利用した表色欄構造およびカラーチャート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(a)透明を基準としてシアンの濃度を0〜100%の数値で表示するシアン表色値と、(b)透明を基準としてマゼンダの濃度を0〜100%の数値で表示するマゼンダ表色値と、(c)透明を基準としてイエローの濃度を0〜100%の数値で表示するイエロー表色値と、(d)透明を基準としてホワイトの濃度を0〜100%の数値で表示するホワイト表色値と、を含んで色を表示するようにした表色方法を、特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【技術分野】
本発明は、色を数値で表示したり、数値で表示された色を可視化させる技術に係り、特に工業製品等に多用されている透明(無色透明および有色透明を含む)な物品における色を含んで色を数値で表示することの出来る技術と、そのように数値で表示された色を色見本として可視化させることの出来るカラーチャートに関するものである。
【0002】
【背景技術】
「色」は、人間にとって極めて身近なものであり、現代が「色の時代」といわれているように、多くの色が創り出されて提供されるようになってきており、特に工業製品をはじめとする商品において「色」は、商品価値に大きな影響を与える重要な要素であることに疑いがない。そこで、工業製品をはじめとする商品等においては、商品の品質保持の観点からも、商品の「色」を同一に揃えることが高度に要求されるようになってきている。
【0003】
しかしながら、「色」は、その特性上、物理的な定義が難しく、客観的な指標の確立が困難なものである。このことは、現代において「色」は、太陽等の光源から発せられた光(電磁波)が物体に照射されて反射,透過,屈折等を生じ、かかる反射光や透過光,屈折光等が人間の眼に入光して錐体細胞や桿体細胞が刺激されることによって、人間の脳が知覚することで認識されるものであるとされているが、要するに「物体自体には、何等の色もない」という事実と、「光も何等の色を持たない」という事実から、「色」の認識が、主観的要因に基づくものであることに、一つの原因がある。
【0004】
すなわち、最も身近な色の特定方法として、例えば「JIS Z 8102」や「JIS Z 8110」に規定されているような「色名」による特定が知られているが、色名は有限であり多様な実在する色に対応することができないばかりか、「青」や「赤」等といっても個人によって認識の程度が異なり、また日本人の「青」は紫みの青であって米国人の「ブルー」が緑みの青を指すのとかなり異なること等から、かかる「色名」が、近年の社会において工業上要求される程の精度を満足する指標となり得ないことは、言うまでもない。
【0005】
そこで、色を定量的に記号や数値(表色値という)で表示する表色(color specification)の方法の確立が要求されてきている。
【0006】
そして、その一つの手法として、「ASTM D 1535−80」や「JIS Z 8721」に規定されているようなマンセル色票を採用する表色系が知られている。マンセル色票は、色を色相(H),明度(V),彩度(C)の三属性に分けて表示したものであり、マンセル色票に従って色を数値で表示するには、例えば「5G5/10」等のようにHVCの各値を順に並記して行う。ところが、マンセル色票は、色相に関して、赤(R),黄(Y),緑(G),青(B),紫(P)の五段階に分割し、更にそれぞれの中間にYR,GY,BG,PB,RPを入れて十段階にして表したものであると共に、明度に関して、真っ黒を0,真っ白を10としてその間を十段階に分割したものである。従って、色相に関して主観的要因が強く、必ずしも数値的に特定できるものとは言い難いことに加えて、明確に特定される色数が段階的に少なく、現実にはそれらの値に小数点以下の数字を付記して主観的な判断で中間色を補完して運用されているために、色の特定が一層曖昧となってしまうという問題があった。
【0007】
また、表色の別の手法として、「JIS Z 8701」に規定されているように、三刺激値と呼ばれるXYZを計算して色を数値によって表す方法(XYZ系表示またはCIE表色法)が提案されている。これは、人間の眼が、可視光に対して三つの分光感度をもっており、赤の波長域に相当するXの視感と、緑の波長域に相当するYの視感と、青の波長域に相当するZの視感との、三つの視感を組み合わせて色を識別しているという生理的な色刺激に対する感度に基づく光学的表色方法である。
【0008】
かかるXYZ表色系(CIE表色系)は、人間が感ずる色を定量的に数値だけで特定することが出来るという点では、極めて優れている。ところが、XYZ表色系(CIE表色系)では、二つの問題点があった。その一つが、減法混色では、三刺激値(XYZ)の値と減法混色の原色(subtractive primaries)である三原色(シアン,マゼンダ,イエロー)の混合量の関係が複雑であるために、得られる色を予測することが非常に難しく、扱いづらいことであり、他の一つが、減法混色は、基準色を白とした上で、三原色(シアン,マゼンダ,イエロー)の混合によって生ずる色を対象とするが故に、透明を表すことが出来ないことである。特に、合成樹脂を材料とすることが多い工業製品では、その色が非発光色であり、色材やフィルタ等と同様に、混合する色成分の数を増やせば混色でできる色の明るさが引算(減法)的に暗くなる減法混色であることに加えて、内部着色が多用されており、無色透明や有色透明の製品も多く存在することから、上述の如きXYZ表色系(CIE表色系)による表色方法が、必ずしも有効ではなかったのである。
【0009】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、表色値に基づいて減法混色における色を予測することが比較的に容易であると共に、透明も含めて色を表色することの出来る、実用的で且つ新規な表色方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明は、かかる新規な表色方法に従う、例えば設計図や注文票,製品等における具体的な表色構造を提供することも、目的とする。
【0011】
更にまた、本発明は、上述の本発明に従う新規な表色方法によって数値で特定された色を、色見本として効率的に可視化させることの出来るカラーチャートを提供することも、目的とする。
【0012】
【解決手段】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0013】
(表色方法に関する本発明)
表色方法に関する本発明の特徴とするところは、(a)透明を基準としてシアンの濃度を0〜100%の数値で表示するシアン表色値と、(b)透明を基準としてマゼンダの濃度を0〜100%の数値で表示するマゼンダ表色値と、(c)透明を基準としてイエローの濃度を0〜100%の数値で表示するイエロー表色値と、(d)透明を基準としてホワイトの濃度を0〜100%の数値で表示するホワイト表色値と、を含んで色を表示するようにした表色方法にある。
【0014】
このような本発明に従えば、例えば、ホワイトの濃度を100%とした上で、シアン表色値やマゼンダ表色値,イエロー表色値を適当に調節することにより、減法混色の三原色の混合の法則に従って、透明を除く各種の有彩色及び無彩色を数値表示することが可能となる。また、ホワイトの濃度を0以上且つ100%未満とした上で、シアン表色値やマゼンダ表色値,イエロー表色値を適当に調節することにより、減法混色の三原色の混合の法則に従って、透明度をもった各種の有彩色及び無彩色を数値表示することが可能となる。
【0015】
なお、本発明において、シアン表色値とマゼンダ表色値およびイエロー表色値の各濃度は、何れも、光学濃度であって単色濃度乃至は分光濃度とすることが望ましく、例えば透過物体では透過濃度,反射物体では反射濃度として解釈され得るが、等価中性濃度(END)を採用することも可能である。また、濃度は、例えば既存の色を対象とする場合には、視覚濃度計や光電濃度計を用いて測定することが可能である。そして、各表色値に応じて得られる色に関しては、具体的には、例えばカラーフィルムを考えると、シアンの原色:C,マゼンダの原色:M,イエローの原色:Yを、それぞれ混合量c,m,yで混色したときに得られる色:Fは、ベールの法則を参酌して下式の如く表すことが出来る。
F = Cc × Mm × Yy
【0016】
また、減法混色の場合に、上述の三原色の混合量から生成される色を正確に予測することは、公知の通り加法混色に比して難しいが、例えば、着色対象や使用する着色材の相違等に応じてランベルト−ベールの法則やクベルカ−ムンクの理論等を利用して推定することが可能である。
【0017】
さらに、本発明において、ホワイトの濃度は、シアン表色値とマゼンダ表色値およびイエロー表色値において各基準となる透明に対して反映されるものであり、ホワイトの濃度を0とすることは、シアン表色値とマゼンダ表色値およびイエロー表色値における各基準を無色透明にすることに等しく、ホワイトの濃度を100とすることは、シアン表色値とマゼンダ表色値およびイエロー表色値における各基準を白色不透明にすることに等しい。
【0018】
(表色欄構造に関する本発明)
表色欄構造に関する本発明の特徴とするところは、(a′)透明を基準としてシアンの濃度を0〜100%の数値で表示するシアン表色値の表示欄と、(b′)透明を基準としてマゼンダの濃度を0〜100%の数値で表示するマゼンタ表色値の表示欄と、(c′)透明を基準としてイエローの濃度を0〜100%の数値で表示するイエロー表色値の表示欄と、(d′)透明を基準としてホワイトの濃度を0〜100%の数値で表示するホワイト表色値の表示欄と、を設けた色表示のための表色欄構造にある。
【0019】
このような本発明に従う表色欄構造によれば、上述の本発明に従う表色方法の説明からも明らかなように、シアン表色値の表示欄とマゼンタ表色値の表示欄,イエロー表色値の表示欄およびホワイト表色値の表示欄にそれぞれ記載された各数値の組み合わせによって、一つの色が特定されることとなり、特にこのようにして特定された色は、透明度を含んで特定されたものとなるのである。
【0020】
従って、本発明の表色欄構造を、例えば工業製品の部品図や製品図等の設計図面に表示したり、注文票に表示すること等によって、取り引きされる工業製品の色を数値で特定して定量表示することが出来るのであり、取り引き等を効率的に行うことが可能となる。
【0021】
(カラーチャートに関する本発明)
カラーチャートに関する本発明の特徴とするところは、(e)シアン,マゼンダおよびイエローのうちの二色の濃度を0〜100%の範囲で変化させた座標軸を互いに直交するX軸とY軸にとって、該X軸と該Y軸の直交座標平面上に該二色の混色を表示した第一の表色プレートを多数枚用い、それら多数枚の第一の表色プレートにおける該X軸と該Y軸の交点である原点を、透明を基準としてシアン,マゼンダおよびイエローのうちの残りの一色の濃度が0〜100%となる範囲で変化させた色相系カラーチャートと、(f)透明を基準として、ホワイトの濃度を0〜100%の範囲で変化させてホワイトの単色を表示した第二の表色プレートからなる明度系カラーチャートと、を組み合わせて構成されて、前記色相系カラーチャートにおける前記第一の表色プレートを前記明度系カラーチャートにおける前記第二の表色プレートに重ね合わせて色を観察することが出来るようにしたカラーチャートにある。
【0022】
このような本発明に従う構造とされたカラーチャートにおいては、第一の表色プレートと第二の表色プレートが、何れも、透明を基準としているが故に、互いに重ね合わせることによって合成された混色を直接に視認することが出来るのであり、それによって、シアン,マゼンダ,イエローおよびホワイトをそれぞれ所定の濃度で混合することによって生成される色を容易に予測することが可能となるのである。
【0023】
なお、本発明に従うカラーチャートは、例えばアクリル等の透明な樹脂プレートによって生成することが可能である。その際、各濃度は、染料や顔料だけでなく、内部着色の場合のプレートの厚さ等も考慮して設定されるべきであることは言うまでもない。
【0024】
また、本発明に従うカラーチャートでは、各色の濃度を連続的無段階に変化させても良いが、好適には、前記第一の表色プレートを、前記X軸および前記Y軸の適当な単位数量刻みで二次元の碁盤目状に仕切って、かかる碁盤目の各枡目毎に各一つの混色を表示すると共に、前記第二の表色プレートを適当な単位数量刻みで一次元の枡目状に仕切って各枡目毎に各一つのホワイトの単色を表示するようにされる。更に、第一の表色プレートと第二の表色プレートの各枡目は、大きさを略同じとすることが望ましい。
【0025】
このような枡目構造を採用すると、各色の濃度を連続的に変化させる場合に比して表示される色の数が升目の数によって限定されることとなるが、色を具体的に把握し易くなると共に、重ね合わせによる観察も一層容易となる。なお、重ね合わせた第一および第二のカラーチャートの観察は、着色される物品等を考慮して、透過光観察や反射光観察によって行われる。また、観察する際の照明も着色される物品の観察状態を考慮することが望ましく、例えばD65などの標準光を採用しても良い。
【0026】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0027】
先ず、図1には、本発明に従う表色方法をより具体的に説明するための仮想的な色の立体図が示されている。この図示された立体10は、各辺が等長なキュービック(立方体)形状を有しており、一つの頂点12を原点として、互いに直交する三つの辺14,16,18がX軸,Y軸,Z軸とされている。これにより、X軸,Y軸,Z軸が、協働して、頂点12を原点とする立体的な三次元の直交座標系を構成している。
【0028】
また、X軸,Y軸,Z軸は、何れも、一端の原点12を0%とし、他端を最大値100%とする一定間隔の等差目盛を有しており、特に図示の例示のものでは、X軸,Y軸,Z軸のそれぞれにおいて、何れも、10等分する目盛が記されている。
【0029】
すなわち、このような立体10においては、Z軸の値:z=0とした場合に、X軸およびY軸を含む二次元の直交座標平面(X−Y平面)が観念される。そして、この直交座標平面と平行な直交座標平面が、zの値に応じてそれぞれ存在するものと観念されることから、かかる立体10は、Z軸に直交して広がる二次元の直交座標平面をZ軸方向に積み重ねたものとしてとらえることが出来るのである。同様にして、X軸を基準に考えると、かかる立体10は、X軸に直交して広がる二次元の直交座標平面(Y−Z平面)をX軸方向に積み重ねたものとしてとらえることも可能であり、また、Y軸を基準に考えると、かかる立体10は、Y軸に直交して広がる二次元の直交座標平面(Z−X平面)をY軸方向に積み重ねたものとしてとらえることも可能である。
【0030】
ここにおいて、X軸,Y軸,Z軸に付された0〜100の各目盛の値は、減法混色の三原色(シアン,マゼンダ,イエロー)の濃度を、透明を基準として表すものである。なお、かかる濃度は、光学濃度の一種としての単色濃度であることが望ましく、例えば積分球と光電受光素子を用いた濃度計や、より簡単な構造の公知の光学濃度計を用いて測定される光学濃度に対応する値となるように設定される。なお、かかる光学濃度は、対象によって測定光線が異なり、専ら透過光の色が問題となる光透過フィルム等の場合には透過光が対象となるが、専ら反射光の色が問題となる光反射塗膜等の場合には反射光が対象となる。
【0031】
従って、図示された立体10においては、原点12が完全透明である。そして、X軸上では、シアンの濃度が0〜100%まで次第に増加すると共に、マゼンダおよびイエローの濃度が常に0となるように、色が特定されることとなる。同様に、Y軸上では、マゼンダの濃度が0〜100%まで次第に増加すると共に、シアンおよびイエローの濃度が常に0となるように、色が特定されることとなり、更に、Z軸上では、イエローの濃度が0〜100%まで次第に増加すると共に、マゼンダおよびシアンの濃度が常に0となるように、色が特定されることとなる。
【0032】
すなわち、図示された立体10では、X軸,Y軸,Z軸の各軸上に0と100を含む合計101の目盛が付されていると考えると、これら3つの目盛の値の組み合わせによって、合計1030301種類(101×101×101)の色を数値で一義的に特定することが出来るのである。
【0033】
さらに、直交3軸(X軸,Y軸,Z軸)からなる立体10によって表色される各色を具体的に把握できるようにするために、例えば、図2に示されているように、それら3軸をそれぞれ10等分してX−Y平面およびそれと平行な複数枚の第一表色プレートを観念することができる。
【0034】
例えばX−Y平面(z=0)を一つの第一表色プレート20と考えると、該第一表色プレート20には10×10=100個の碁盤目状の枡目が形成されており、それら何れの升目においても、イエローの濃度が0(z=0)であり、且つシアンの濃度(x)とマゼンダの濃度(y)の値の組み合わせが異なるが故に、互いに異なる色が特定されていることになる。なお、各枡目の色におけるx,yの値は,例えば各枡目の中央座標点とされる。更に、z=0の第一表色プレート20とは別に、該第一表色プレート20と平行に、イエローの濃度が異なる10種類(z=10%,20%,30%,40%,50%,60%,70%,80%,90%,100%)の第一表色プレート22,24,26,28,30,32,34,36,38,39が、存在する。そして、それら10枚の第一表色プレート22,24,26,28,30,32,34,36,38,39においては、何れも10×10=100個の碁盤目状の升目が形成されており、各第一表色プレート22,24,26,28,30,32,34,36,38,39毎にイエローの濃度(z)が互いに異なるだけで、各第一表色プレート22,24,26,28,30,32,34,36,38、39の100個の碁盤目状の升目には、シアンの濃度(x)とマゼンダの濃度(y)の値の各組み合わせに対応する色がそれぞれ特定されている。なお、このことから明らかなように、本実施形態では、0と100を含むZ軸方向でのみ,結果的に第一表色プレートが11種類に分けて表示されており,合計11枚によって1100(10×10×11)種類の色の枡目が表示されている。
【0035】
要するに、上述の1100種類の色は、合計11枚の第一表色プレートにおける合計1100個の枡目において、全て特定され、表示されているのである。また、かかる表色プレートにおいては、立体10の原点12と、その対頂点40を繋ぐ対頂線上で、シアンとマゼンダとイエローの各濃度が相互に同一とされることによって黒色が表されており、しかも、この黒色は、原点12から対頂点40の線上で透明度が変化している。
【0036】
このことから明らかなように、立体10によって認識され、具体的には上述の複数枚の第一表色プレート20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,39によって認識される色は、三原色(シアン,マゼンダ,イエロー)による減法混色の全てを表すことの出来るものなのであり、特に、原点10における基準が透明とされていることによって、透明色を含む減法混色によって創出される各色を表すことが出来るのである。そして、それらの色は、シアンとマゼンダおよびイエローの三原色の各濃度:x,y,zの数値によって一義的に特定することが出来る、定量表示可能なものとされるのである。
【0037】
ところで、上述の立体10では、減法混色であるが故に、ホワイトの色系が表れず、それ故、シアン,マゼンダ,イエローの各単色よりも白色系の色(明るい色)を創出して特定することが出来ないこととなる。そこで、ホワイトの色系を表して特定することが出来るようにするために、図3には、第二表色プレート42が、例示されている。この第二表色プレート42は、透明を基準として、ホワイトの濃度を一次元的に0〜100(%)の数値範囲で変化させてホワイトの単色を異なる濃度順に表示したものであり、図2の第二表色プレート42では、例示的に0〜100の濃度を10等分して表したものが示されている。なお、濃度とは、前述の立体10における三原色の濃度に従う値である。
【0038】
すなわち、かかる第二表色プレート42では、濃度:hがh=0の点で無色透明であり、この点での表色は、前述の減法三原色の立体10の原点:(x,y,z)=(0,0,0)の点での表色と同じである。一方、第二表色プレート42では、濃度:hがh=100の点で不透明な白色となる。但し、本実施形態では、第二表色プレート42に設けられた10個の枡目の色は,各枡目の中央座標点に相当する濃度とされていることから,完全な黒および白は存在しない。
【0039】
従って、上述の11枚の第一表色プレート20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,39と一枚の第二表色プレート42を組み合わせることによって、理論的に、前述の如き、x,y,z,hの各値の組み合わせで定量的に数値で特定することの出来る有彩色と無彩色を含む全ての色の範囲を、具体的且つ例示的に視認可能とすることが出来る。
【0040】
なお、一つの立体10を用いて色を表現することを考えると,観念的には、考慮すべき白色の濃度に応じて、立体10の原点の透明が、該当する第二表色プレート42における適当な濃度の白色に置換されるものとして把握することが可能である。要するに、立体10の原点の透明が、第二表色プレート42で表された10種類の濃度の何れかの白色に置換されるものとなるのであり、結果的には、第二表色プレート42における10種類の濃度を白色を基準として各別に立体10が存在し、合計10個の立体10が観念されると解することも出来る。
【0041】
これにより、白色系までを考慮した表色系が完成されることとなり、図1〜3に示された例示のモデルでは、対頂点40においてはもはや濃度変化が見られない点を考慮すると,101×101×101×100−100=103030000種類の色が、上述のx,y,z,hの各値の組み合わせによって一義的に数値表現されて特定されることとなる。そして、特に注目すべき点は、かかる表色系においては、x,y,z,hの各値の基準を何れも透明としたことによって、透明も考慮した色系を表わすことが出来るのであり、それによって、例えば有色透明の製品が多用される、内部着色形の合成樹脂成形品に関しても、表色することが可能となるのである。
【0042】
また、例示のモデルでは、第一表色プレート20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,39と第二表色プレート42の全てが、アクリル樹脂等の透明な素材によって薄肉平板形状をもって形成されることが望ましく、それによって、第二表色プレート42の適当なhの値の升目に対して、適当なx,y,z値を有する第一表色プレートの升目を重ね合わせることによって、合成創出される色を簡易且つ概略的に視認観察可能とすることも出来る。なお、特に透過形のフィルタ等の場合では、第一表色プレートと第二の表色プレートの重ね合わせ順序が限定されるものでない。
【0043】
更にまた、上述の如き表色系においては、x,y,z,hの各値の組み合わせを特定することで、無彩色と有彩色および透明を含む広範な領域の色を一義的に表すことが出来ることから、例えば、商品の発注や製造の際の色の指定に関して、図4に示されているように、注文票や設計図面44において、適当な箇所に「シアン濃度(x)」,「マゼンダ濃度(y)」,「イエロー濃度(z)」,「ホワイト濃度(h)」の各値の記入欄を設けて、そこに各指示値を記入するようにした構造の表色欄46が有利に採用され得る。なお、一枚の注文票や設計図面において複数の色の指定を行う場合には、そのような記入欄が複数設けられることは言うまでもない。
【0044】
なお、上述の説明から明らかなように、例示したモデルでは、第一表色プレート20,22,24,26,28,30,32,34,36,38、39によって色相系カラーチャートが構成されていると共に、第二表色プレート42によって明度系カラーチャートが構成されている。
【0045】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0046】
例えば、本発明に従う表色方法によって特定される色を視認可能に表すための一手法としては、上述の如き第一及び第二の表色プレート20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,39,42からなるカラーチャートが有効ではあるが、かかるカラーチャートにおける色の表示区分数は、例示の如き各軸方向で10区分に限定されるものではない。
【0047】
また、本発明に従う表色方法によって特定される色を視認可能に表すための手法も,例示のカラーチャートに限定されるものではない。具体的には、上述の如き表色系によって色を数値で特定することが可能となることから、予め各数値に対応した色を電子データとして登録したデータベースを作成しておき、コンピュータを用いて、このデータベースに基づき、上述のx,y,z,hの各値を入力することにより特定された色をカラーディスプレイ上に表示させること等も可能である。
【0048】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明の表色方法に従えば、無彩色と有彩色および無色透明と有色透明を含む広範な色を定量的且つ一義的に表すことが出来るのであり、それによって、例えば工業製品における色の指定を、統一した方式で充分な精度をもって、少ない労力負担で容易に行うことが可能となるのである。
【0049】
また、本発明に従う表色欄構造を採用すれば、例えば設計図面等において製品等の色の指定を、本発明の表色方法に従い、数値によって一義的に且つ簡潔に行うことが可能となる。
【0050】
また、本発明に従う構造のカラーチャートを採用すれば、本発明の表色方法によって数値で一義的に特定される色の概略サンプルを、簡単な構造と容易な操作性をもって視認可能に表すことが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う表色方法を具体的に説明するための仮想的な色の立体図を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態としてのカラーチャートを構成する第一表色プレートを示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態としてのカラーチャートを構成する第二表色プレートを示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態としての表色欄構造を示す説明図である。
【符号の説明】
10 立体
20,22,24,26,28,30,32,34,36,38,39 第一表色プレート
42 第二表色プレート
44 設計図面
46 表色欄
Claims (4)
- 透明を基準としてシアンの濃度を0〜100%の数値で表示するシアン表色値と、
透明を基準としてマゼンダの濃度を0〜100%の数値で表示するマゼンタ表色値と、
透明を基準としてイエローの濃度を0〜100%の数値で表示するイエロー表色値と、
透明を基準としてホワイトの濃度を0〜100%の数値で表示するホワイト表色値と
を、含んで色を表示することを特徴とする表色方法。 - 透明を基準としてシアンの濃度を0〜100%の数値で表示するシアン表色値の表示欄と、
透明を基準としてマゼンダの濃度を0〜100%の数値で表示するマゼンタ表色値の表示欄と、
透明を基準としてイエローの濃度を0〜100%の数値で表示するイエロー表色値の表示欄と、
透明を基準としてホワイトの濃度を0〜100%の数値で表示するホワイト表色値の表示欄と
を、設けたことを特徴とする色表示のための表色欄構造。 - シアン,マゼンダおよびイエローのうちの二色の濃度を0〜100%の範囲で変化させた座標軸を互いに直交するX軸とY軸にとって、該X軸と該Y軸の直交座標平面上に該二色の混色を表示した第一の表色プレートを多数枚用い、それら多数枚の第一の表色プレートにおける該X軸と該Y軸の交点である原点を、透明を基準としてシアン,マゼンダおよびイエローのうちの残りの一色の濃度が0〜100%となる範囲で変化させた色相系カラーチャートと、
透明を基準として、ホワイトの濃度を0〜100%の範囲で変化させてホワイトの単色を表示した第二の表色プレートからなる明度系カラーチャートと
を、組み合わせて構成し、前記色相系カラーチャートにおける前記第一の表色プレートを前記明度系カラーチャートにおける前記第二の表色プレートに重ね合わせて色を観察することが出来るようにしたことを特徴とするカラーチャート。 - 前記第一の表色プレートを、前記X軸および前記Y軸の適当な単位数量刻みで二次元の碁盤目状に仕切って、かかる碁盤目の各枡目毎に各一つの混色を表示すると共に、前記第二の表色プレートを適当な単位数量刻みで一次元の枡目状に仕切って各枡目毎に各一つのホワイトの単色を表示した請求項3に記載のカラーチャート。
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