JP2004218792A - 磁性流体軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】軸の非回転中でも、軸受外輪と軸との接触がなくて、揺動運動部に適用でき、高剛性で摩擦の少ない軸受を提供する。特に、HDD装置の支点軸受等に効果的に適用でき、高い減衰機能を持たせることのできる軸受とする。
【解決手段】軸受外輪2と、この軸受外輪2内に軸受隙間gを介して嵌まった軸3のいずれか一方の軸受隙間形成面に、複数の磁極4を全周に設ける。これら複数の軸受4は、互いに円周方向および軸方向の両方に分離したものとする。軸受隙間g内に磁性流体5を入れ、上記複数の磁極4により保持させる。
【選択図】 図1
【解決手段】軸受外輪2と、この軸受外輪2内に軸受隙間gを介して嵌まった軸3のいずれか一方の軸受隙間形成面に、複数の磁極4を全周に設ける。これら複数の軸受4は、互いに円周方向および軸方向の両方に分離したものとする。軸受隙間g内に磁性流体5を入れ、上記複数の磁極4により保持させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、磁性流体によって軸を支持する磁性流体軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁性流体を用いた従来の軸受として、図10に示すように、軸受外輪32の両端に磁石34を設けて磁性流体35を保持させ、軸受外輪32と軸33間の軸受隙間Gから潤滑油36が洩れ出すのを上記磁性流体35で防ぐようにしたものが提案されている(例えば特許文献1)。この軸受は基本的には滑り軸受であり、軸33が回転することで軸受隙間G内の潤滑油36に生じる流体圧力により、軸33が支持される。このときの流体圧力の発生機構として、例えば軸33外周面にヘリングボーン型の動圧溝が付けられる場合もある。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−4765号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記構成の軸受では、軸33が回転していない間は流体圧力の発生がなく、図11のように軸33と軸受外輪32との接触が生じる。そのため、例えばHDD装置(ハードディスクドライブ装置)の支点軸受のように、揺動運動を行う軸の支持に上記構成の軸受を用いても、軸33と軸受外輪32との間に油膜が発生しないので適用できない。そこで、HDD装置の支点軸受には専ら転がり軸受が使用されている。
ところが、転がり軸受では、転がり接触により軸が支持されるので、値は小さくても起動摩擦は避けられない。このため、HDD装置では、ますますの高密度化に対して、転がり軸受を支点軸受として用いることによる起動摩擦が問題となっている。支点軸受は、高剛性で摩耗がなく、高い減衰機能を持つのが理想であり、このような機能を持つ軸受が要求されている。
【0005】
この発明の目的は、軸の非回転中でも、軸受外輪と軸との接触がないように支持できて、揺動運動部に適用でき、また高剛性で摩擦の少ない磁性流体軸受を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の磁性流体軸受は、軸受外輪と、この軸受外輪内に軸受隙間を介して嵌まった軸のいずれか一方の軸受隙間形成面に、複数の磁極を互いに円周方向に分離して全周に設け、他方は非磁性材料からなり、上記複数の磁極により上記軸受隙間内に磁性流体を保持させたものである。
この構成によると、軸受隙間内の磁性流体は、円周方向に分離して複数設けられた個々の磁極の表面に集まって保持される。そのため、軸に外力が作用して軸受隙間が円周の一部で小さくなろうとしても、磁極により保持された磁性流体は移動することがなく、軸受隙間は潤滑性のある磁性流体で一定の大きさに保持される。このように、非回転中でも磁性流体膜による軸の支持が可能であり、そのため支点軸受のような揺動運動部の軸受に適用しても、常に非接触で支持できて、高剛性で摩擦がない軸受とできる。
この発明において、磁極を設けない部材は非磁性材料にしておく必要がある。磁性流体は、軸受外輪および軸のいずれかに設けられた磁極の表面に集まって保持されるので、磁極の非形成側のものは、非磁性材料にすることで、上記磁性流体により常に一定隙間を生じさせる保持が可能である。
【0007】
上記複数の磁極は、互いに円周方向および軸方向の両方に分離して全周に設けることが好ましい。円周方向に分離した各磁極は、軸方向に連続するものあっても良いが、軸方向にも分離されたものとすることで、磁性流体が個々の磁極の表面に集まるように保持される効果が得易くなる。複数の磁極が互いに円周方向および軸方向の両方に分離して設けられる場合に、互いに軸方向に離れた磁極は、軸方向に沿って並べて配置しても良く、軸方向には揃わない配置、例えば千鳥状等の配置となるようにしても良い。また、複数の磁極が円周方向および軸方向に無秩序に分散して配置されていても良い。
【0008】
この発明において、軸および軸受外輪の一方が永久磁石材料であっても良い。また軸および軸受外輪の一方が半硬質磁鋼であっても良い。すなわち、永久磁石材料として半硬質磁鋼を用いても良い。永久磁石材料は、例えば軸受隙間形成面の表面部のみに設けても良い。半硬質磁鋼は、着磁の時の印加磁界が小さくて良く、加工性や取扱性が良い。
【0009】
この発明の磁性流体軸受は、軸と軸受外輪の相対回転が停止中にも軸を軸受外輪に対して非接触で支持が必要な用途に用いられるものとしても良い。特に、この磁性流体軸受は、揺動運動の支点軸受に用いられるものとしても良い。このような停止中の非接触支持や、揺動運動の支点軸受の用途として用いることで、この発明の軸受における回転停止時の非接触支持の効果が有効に活用される。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図4と共に説明する。この磁性流体軸受1は、円筒状の軸受外輪2と、この軸受外輪2内に軸受隙間gを介して嵌まった軸3のうち、軸受外輪2の内周面からなる軸受隙間形成面2aに複数の磁極4を設け、軸受隙間gに磁性流体5を入れたものである。磁性流体5には潤滑性のあるものが用いられる。上記複数の磁極4は、互いに円周方向および軸方向の両方に分離されたものとし、軸受隙間成形面2aの全周に設ける。図2は、軸受外輪2を、その内周面からなる軸受隙間形成面2aが表面となるように展開して示す図であり、具体的には各磁極4は同図のように配置されている。上記各磁極4は、軸方向に互いに離れた複数の磁極配置群14毎に分けて配置されているが、軸方向の全体にわたって分散配置されていても良い。
【0011】
軸受外輪2および軸3は共に非磁性材料からなる。各磁極4は、軸受外輪2に小片状の永久磁石4Aを埋め込むことにより設けられている。各磁極4の極性は、軸受形成面2a側が同一極性(同図ではS極)を持つように、永久磁石4Aの向きが定められている。磁極4の磁極形成面2aにおける表面の大きさは、磁極表面が磁性流体5の拘束力がないことから、縦横の幅がいずれも軸受隙間gと同等となる程度が好ましい。
【0012】
なお、上記複数の磁極4は、軸受外輪2の軸受形成面2aに設ける代わりに、軸3の外周面からなる軸受形成面に設けても良い。その場合に、軸3に永久磁石を埋め込むようにしても良い。
【0013】
この構成の磁性流体軸受1によると、図3および図4に模式的に示すように、磁性流体5が個々の磁極4の表面に集まって軸受隙間g内に保持される。軸3に外力が作用して軸受隙間gが円周の一部で小さくなろうとしても、磁極4により保持された磁性流体5は移動することがなく、軸受隙間gは潤滑性のある磁性流体5の介在により、全周にわたって一定の大きさに保持される。すなわち、軸3は、回転時だけでなく、非回転の状態においても、軸受外輪2と非接触でかつ軸心位置に支持され、高剛性で摩擦のない軸受となる。したがって、例えばHDD装置の支点軸受のような揺動運動部に適用した場合に、起動摩擦のない支持が行える。また、軸受隙間g内に常に潤滑性のある磁性流体5が介在するため、揺動位置決めの停止時に、高い減衰機能を持つことができ、迅速にかつ高精度に位置決めが行える。
【0014】
図5は、上記構成の磁性流体軸受1を支点軸受として使用したHDD装置におけるスイングアーム装置を示す断面図である。このスイングアーム装置21は、スイングアーム22を基台23の回転支軸3に、磁性流体軸受1を介して正逆回動自在に設置してある。スイングアーム22の一端に、磁気ディスク25の情報記録面に対向する磁気ヘッド24を設け、スイングアーム22を正逆に駆動するヘッド位置決め機構26を設けている。
【0015】
基台23はHDD装置のハウジング等からなる。回転支軸3は、内径面に雌ねじを形成した中空軸からなり、基台23の裏面から挿通した止めねじ27により基台23に固定されている。ヘッド位置決め機構26は、スイングアーム22の他端に設けたロータ26aと、このロータ26aに対向して基台23に設置したステータ26bとで構成される揺動型のモータからなる。この例では、ロータ26aにコイルが設けられ、ステータ26bに磁石が用いられている。この逆に、ロータ26aを磁石、ステータ26bをコイルとしても良い。
【0016】
図6(A),(B)は、この発明の他の実施形態を示す。この磁性流体軸受1Aは、図1〜図4に示した第1の実施形態において、隣接する磁極4の極性を互いに異ならせ、隣接する磁極4が磁極対を構成するようにしている。その他の構成は第1の実施形態の場合と同じである。
【0017】
第1の実施形態では、複数の各磁極4が同一極性(単極)であったため、磁極4の中央では磁束密度の変化がなく、磁性流体5に対する拘束力は磁極周辺に限られたが、この実施形態では隣接する磁極4が磁極対を構成するので、各磁極4の全面に磁性流体5に対する拘束力が働くことになり、磁性流体5をより確実に保持できる。
【0018】
図7はこの発明のさらに他の実施形態である磁性流体軸受の縦断面図を示す。図8はその磁性流体軸受における軸受外輪を、その内周面が表面となるように展開した展開図を示す。この磁性流体軸受1Bは、図1〜図4に示した第1の実施形態において、複数の磁極4を、個々の磁極4毎の局部的な環状に形成したものである。ここでは、磁極4を二重環状に形成すると共に、内周の磁極4と外周の磁極4の極性を互いに異ならせて、内外の磁極4が磁極対を構成するようにしている。なお、図7における軸受外輪2の断面は、図8におけるVII −VII 矢視断面図に相当している。環状の磁極4で囲まれた部分には空気の混入が発生する場合があり、混入した空気の圧縮性により軸受剛性が低下することも考えられるので、その領域は狭い方が好ましい。その他の構成は図1〜図4に示した第1の実施形態の場合と同じである。
【0019】
図9(A),(B)はこの発明のさらに他の実施形態を示す。この磁性流体軸受1Cは、図1〜図4に示した第1の実施形態において、軸受外輪2側の軸受隙間形成面2aに磁極4を設けていたのに代えて、図9(C)に拡大して示すように、軸3側の軸受隙間形成面13aに複数の磁極4を設けたものである。軸3側の軸受隙間形成面13aは、軸3の外径面に巻回固定した永久磁石材料13の外周面とされ、この軸受隙間形成面13aに磁極4が設けられる。この場合の磁極4は、軸3に巻回固定した上記永久磁石材料13の外周面に着磁を施すことにより設けられる。永久磁石材料13としては、加工性や取扱性の観点から、着磁のときの印加磁界が小さくてよい半硬質磁鋼が好ましい。磁極4が円周方向および軸方向に分散形成されることなど、他の構成は第1の実施形態の場合と同じである。
【0020】
この磁性流体軸受1Cでは、軸3側の磁極4により磁性流体5が軸受隙間g内に保持される。磁極4は軸3に固定した後の永久磁石材料13に着磁を施すことで設けられるので、非磁性材料中に永久磁石を埋め込む先の各実施形態の場合に比べて製造が容易となり、特に小さい軸受の製造も可能となる。軸3の全体を永久磁石材料として、その外周面に着磁を施して磁極4を設けてもよいが、永久磁石は高価であるため、この実施形態のように軸3の外周面部のみを永久磁石材料13とすることにより、コストの低減が可能となる。
【0021】
このほか、非磁性材料の軸受外輪2の内周面部のみを永久磁石材料とし、その内周面からなる軸受隙間形成面に着磁を施して磁極4を設けても良い。さらには、軸受外輪2の全体が永久磁石材料からなるものとし、その内周面からなる軸受隙間形成面2aに着磁を施して磁極4を設けても良い。
【0022】
【発明の効果】
この発明の磁性流体軸受は、軸受外輪と、この軸受外輪内に軸受隙間を介して嵌まった軸のいずれか一方の軸受隙間形成面に、複数の磁極を互いに円周方向に分離して全周に設け、これら複数の磁極により上記軸受隙間内に磁性流体を保持させたため、軸の非回転中でも、軸受外輪と軸との接触がないように支持できて、揺動運動部に適用でき、また高剛性で摩擦がなく高い減衰機能を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A),(B)はこの発明の第1の実施形態にかかる磁性流体軸受の横断面図および縦断面図である。
【図2】同磁性流体軸受における軸受外輪の展開図である。
【図3】同磁性流体軸受における磁極による磁性流体の保持状態を示す要部拡大断面図である。
【図4】同磁性流体軸受における磁性流体の保持状態を示す横断面図である。
【図5】同磁性流体軸受を用いたHDD装置のスイングアーム装置の断面図である。
【図6】(A),(B)はこの発明の他の実施形態にかかる磁性流体軸受の横断面図および縦断面図である。
【図7】この発明のさらに他の実施形態にかかる磁性流体軸受の縦断面図である。
【図8】同磁性流体軸受における軸受外輪の展開図である。
【図9】(A),(B)はこの発明のさらに他の実施形態にかかる磁性流体軸受の横断面図および縦断面図、(C)は(B)におけるC部の拡大断面図である。
【図10】従来例の縦断面図である。
【図11】同従来例による軸支持状態を示す説明図である。
【符号の説明】
2…軸受外輪
2a…軸受隙間形成面
3…軸
4…磁極
5…磁性流体
g…軸受隙間
【発明の属する技術分野】
この発明は、磁性流体によって軸を支持する磁性流体軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁性流体を用いた従来の軸受として、図10に示すように、軸受外輪32の両端に磁石34を設けて磁性流体35を保持させ、軸受外輪32と軸33間の軸受隙間Gから潤滑油36が洩れ出すのを上記磁性流体35で防ぐようにしたものが提案されている(例えば特許文献1)。この軸受は基本的には滑り軸受であり、軸33が回転することで軸受隙間G内の潤滑油36に生じる流体圧力により、軸33が支持される。このときの流体圧力の発生機構として、例えば軸33外周面にヘリングボーン型の動圧溝が付けられる場合もある。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−4765号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記構成の軸受では、軸33が回転していない間は流体圧力の発生がなく、図11のように軸33と軸受外輪32との接触が生じる。そのため、例えばHDD装置(ハードディスクドライブ装置)の支点軸受のように、揺動運動を行う軸の支持に上記構成の軸受を用いても、軸33と軸受外輪32との間に油膜が発生しないので適用できない。そこで、HDD装置の支点軸受には専ら転がり軸受が使用されている。
ところが、転がり軸受では、転がり接触により軸が支持されるので、値は小さくても起動摩擦は避けられない。このため、HDD装置では、ますますの高密度化に対して、転がり軸受を支点軸受として用いることによる起動摩擦が問題となっている。支点軸受は、高剛性で摩耗がなく、高い減衰機能を持つのが理想であり、このような機能を持つ軸受が要求されている。
【0005】
この発明の目的は、軸の非回転中でも、軸受外輪と軸との接触がないように支持できて、揺動運動部に適用でき、また高剛性で摩擦の少ない磁性流体軸受を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の磁性流体軸受は、軸受外輪と、この軸受外輪内に軸受隙間を介して嵌まった軸のいずれか一方の軸受隙間形成面に、複数の磁極を互いに円周方向に分離して全周に設け、他方は非磁性材料からなり、上記複数の磁極により上記軸受隙間内に磁性流体を保持させたものである。
この構成によると、軸受隙間内の磁性流体は、円周方向に分離して複数設けられた個々の磁極の表面に集まって保持される。そのため、軸に外力が作用して軸受隙間が円周の一部で小さくなろうとしても、磁極により保持された磁性流体は移動することがなく、軸受隙間は潤滑性のある磁性流体で一定の大きさに保持される。このように、非回転中でも磁性流体膜による軸の支持が可能であり、そのため支点軸受のような揺動運動部の軸受に適用しても、常に非接触で支持できて、高剛性で摩擦がない軸受とできる。
この発明において、磁極を設けない部材は非磁性材料にしておく必要がある。磁性流体は、軸受外輪および軸のいずれかに設けられた磁極の表面に集まって保持されるので、磁極の非形成側のものは、非磁性材料にすることで、上記磁性流体により常に一定隙間を生じさせる保持が可能である。
【0007】
上記複数の磁極は、互いに円周方向および軸方向の両方に分離して全周に設けることが好ましい。円周方向に分離した各磁極は、軸方向に連続するものあっても良いが、軸方向にも分離されたものとすることで、磁性流体が個々の磁極の表面に集まるように保持される効果が得易くなる。複数の磁極が互いに円周方向および軸方向の両方に分離して設けられる場合に、互いに軸方向に離れた磁極は、軸方向に沿って並べて配置しても良く、軸方向には揃わない配置、例えば千鳥状等の配置となるようにしても良い。また、複数の磁極が円周方向および軸方向に無秩序に分散して配置されていても良い。
【0008】
この発明において、軸および軸受外輪の一方が永久磁石材料であっても良い。また軸および軸受外輪の一方が半硬質磁鋼であっても良い。すなわち、永久磁石材料として半硬質磁鋼を用いても良い。永久磁石材料は、例えば軸受隙間形成面の表面部のみに設けても良い。半硬質磁鋼は、着磁の時の印加磁界が小さくて良く、加工性や取扱性が良い。
【0009】
この発明の磁性流体軸受は、軸と軸受外輪の相対回転が停止中にも軸を軸受外輪に対して非接触で支持が必要な用途に用いられるものとしても良い。特に、この磁性流体軸受は、揺動運動の支点軸受に用いられるものとしても良い。このような停止中の非接触支持や、揺動運動の支点軸受の用途として用いることで、この発明の軸受における回転停止時の非接触支持の効果が有効に活用される。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図4と共に説明する。この磁性流体軸受1は、円筒状の軸受外輪2と、この軸受外輪2内に軸受隙間gを介して嵌まった軸3のうち、軸受外輪2の内周面からなる軸受隙間形成面2aに複数の磁極4を設け、軸受隙間gに磁性流体5を入れたものである。磁性流体5には潤滑性のあるものが用いられる。上記複数の磁極4は、互いに円周方向および軸方向の両方に分離されたものとし、軸受隙間成形面2aの全周に設ける。図2は、軸受外輪2を、その内周面からなる軸受隙間形成面2aが表面となるように展開して示す図であり、具体的には各磁極4は同図のように配置されている。上記各磁極4は、軸方向に互いに離れた複数の磁極配置群14毎に分けて配置されているが、軸方向の全体にわたって分散配置されていても良い。
【0011】
軸受外輪2および軸3は共に非磁性材料からなる。各磁極4は、軸受外輪2に小片状の永久磁石4Aを埋め込むことにより設けられている。各磁極4の極性は、軸受形成面2a側が同一極性(同図ではS極)を持つように、永久磁石4Aの向きが定められている。磁極4の磁極形成面2aにおける表面の大きさは、磁極表面が磁性流体5の拘束力がないことから、縦横の幅がいずれも軸受隙間gと同等となる程度が好ましい。
【0012】
なお、上記複数の磁極4は、軸受外輪2の軸受形成面2aに設ける代わりに、軸3の外周面からなる軸受形成面に設けても良い。その場合に、軸3に永久磁石を埋め込むようにしても良い。
【0013】
この構成の磁性流体軸受1によると、図3および図4に模式的に示すように、磁性流体5が個々の磁極4の表面に集まって軸受隙間g内に保持される。軸3に外力が作用して軸受隙間gが円周の一部で小さくなろうとしても、磁極4により保持された磁性流体5は移動することがなく、軸受隙間gは潤滑性のある磁性流体5の介在により、全周にわたって一定の大きさに保持される。すなわち、軸3は、回転時だけでなく、非回転の状態においても、軸受外輪2と非接触でかつ軸心位置に支持され、高剛性で摩擦のない軸受となる。したがって、例えばHDD装置の支点軸受のような揺動運動部に適用した場合に、起動摩擦のない支持が行える。また、軸受隙間g内に常に潤滑性のある磁性流体5が介在するため、揺動位置決めの停止時に、高い減衰機能を持つことができ、迅速にかつ高精度に位置決めが行える。
【0014】
図5は、上記構成の磁性流体軸受1を支点軸受として使用したHDD装置におけるスイングアーム装置を示す断面図である。このスイングアーム装置21は、スイングアーム22を基台23の回転支軸3に、磁性流体軸受1を介して正逆回動自在に設置してある。スイングアーム22の一端に、磁気ディスク25の情報記録面に対向する磁気ヘッド24を設け、スイングアーム22を正逆に駆動するヘッド位置決め機構26を設けている。
【0015】
基台23はHDD装置のハウジング等からなる。回転支軸3は、内径面に雌ねじを形成した中空軸からなり、基台23の裏面から挿通した止めねじ27により基台23に固定されている。ヘッド位置決め機構26は、スイングアーム22の他端に設けたロータ26aと、このロータ26aに対向して基台23に設置したステータ26bとで構成される揺動型のモータからなる。この例では、ロータ26aにコイルが設けられ、ステータ26bに磁石が用いられている。この逆に、ロータ26aを磁石、ステータ26bをコイルとしても良い。
【0016】
図6(A),(B)は、この発明の他の実施形態を示す。この磁性流体軸受1Aは、図1〜図4に示した第1の実施形態において、隣接する磁極4の極性を互いに異ならせ、隣接する磁極4が磁極対を構成するようにしている。その他の構成は第1の実施形態の場合と同じである。
【0017】
第1の実施形態では、複数の各磁極4が同一極性(単極)であったため、磁極4の中央では磁束密度の変化がなく、磁性流体5に対する拘束力は磁極周辺に限られたが、この実施形態では隣接する磁極4が磁極対を構成するので、各磁極4の全面に磁性流体5に対する拘束力が働くことになり、磁性流体5をより確実に保持できる。
【0018】
図7はこの発明のさらに他の実施形態である磁性流体軸受の縦断面図を示す。図8はその磁性流体軸受における軸受外輪を、その内周面が表面となるように展開した展開図を示す。この磁性流体軸受1Bは、図1〜図4に示した第1の実施形態において、複数の磁極4を、個々の磁極4毎の局部的な環状に形成したものである。ここでは、磁極4を二重環状に形成すると共に、内周の磁極4と外周の磁極4の極性を互いに異ならせて、内外の磁極4が磁極対を構成するようにしている。なお、図7における軸受外輪2の断面は、図8におけるVII −VII 矢視断面図に相当している。環状の磁極4で囲まれた部分には空気の混入が発生する場合があり、混入した空気の圧縮性により軸受剛性が低下することも考えられるので、その領域は狭い方が好ましい。その他の構成は図1〜図4に示した第1の実施形態の場合と同じである。
【0019】
図9(A),(B)はこの発明のさらに他の実施形態を示す。この磁性流体軸受1Cは、図1〜図4に示した第1の実施形態において、軸受外輪2側の軸受隙間形成面2aに磁極4を設けていたのに代えて、図9(C)に拡大して示すように、軸3側の軸受隙間形成面13aに複数の磁極4を設けたものである。軸3側の軸受隙間形成面13aは、軸3の外径面に巻回固定した永久磁石材料13の外周面とされ、この軸受隙間形成面13aに磁極4が設けられる。この場合の磁極4は、軸3に巻回固定した上記永久磁石材料13の外周面に着磁を施すことにより設けられる。永久磁石材料13としては、加工性や取扱性の観点から、着磁のときの印加磁界が小さくてよい半硬質磁鋼が好ましい。磁極4が円周方向および軸方向に分散形成されることなど、他の構成は第1の実施形態の場合と同じである。
【0020】
この磁性流体軸受1Cでは、軸3側の磁極4により磁性流体5が軸受隙間g内に保持される。磁極4は軸3に固定した後の永久磁石材料13に着磁を施すことで設けられるので、非磁性材料中に永久磁石を埋め込む先の各実施形態の場合に比べて製造が容易となり、特に小さい軸受の製造も可能となる。軸3の全体を永久磁石材料として、その外周面に着磁を施して磁極4を設けてもよいが、永久磁石は高価であるため、この実施形態のように軸3の外周面部のみを永久磁石材料13とすることにより、コストの低減が可能となる。
【0021】
このほか、非磁性材料の軸受外輪2の内周面部のみを永久磁石材料とし、その内周面からなる軸受隙間形成面に着磁を施して磁極4を設けても良い。さらには、軸受外輪2の全体が永久磁石材料からなるものとし、その内周面からなる軸受隙間形成面2aに着磁を施して磁極4を設けても良い。
【0022】
【発明の効果】
この発明の磁性流体軸受は、軸受外輪と、この軸受外輪内に軸受隙間を介して嵌まった軸のいずれか一方の軸受隙間形成面に、複数の磁極を互いに円周方向に分離して全周に設け、これら複数の磁極により上記軸受隙間内に磁性流体を保持させたため、軸の非回転中でも、軸受外輪と軸との接触がないように支持できて、揺動運動部に適用でき、また高剛性で摩擦がなく高い減衰機能を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A),(B)はこの発明の第1の実施形態にかかる磁性流体軸受の横断面図および縦断面図である。
【図2】同磁性流体軸受における軸受外輪の展開図である。
【図3】同磁性流体軸受における磁極による磁性流体の保持状態を示す要部拡大断面図である。
【図4】同磁性流体軸受における磁性流体の保持状態を示す横断面図である。
【図5】同磁性流体軸受を用いたHDD装置のスイングアーム装置の断面図である。
【図6】(A),(B)はこの発明の他の実施形態にかかる磁性流体軸受の横断面図および縦断面図である。
【図7】この発明のさらに他の実施形態にかかる磁性流体軸受の縦断面図である。
【図8】同磁性流体軸受における軸受外輪の展開図である。
【図9】(A),(B)はこの発明のさらに他の実施形態にかかる磁性流体軸受の横断面図および縦断面図、(C)は(B)におけるC部の拡大断面図である。
【図10】従来例の縦断面図である。
【図11】同従来例による軸支持状態を示す説明図である。
【符号の説明】
2…軸受外輪
2a…軸受隙間形成面
3…軸
4…磁極
5…磁性流体
g…軸受隙間
Claims (6)
- 軸受外輪と、この軸受外輪内に軸受隙間を介して嵌まった軸のいずれか一方の軸受隙間形成面に、複数の磁極を互いに円周方向に分離して全周に設け、他方は非磁性材料からなり、上記複数の磁極により上記軸受隙間内に磁性流体を保持させた磁性流体軸受。
- 請求項1において、上記複数の磁極は、互いに円周方向および軸方向の両方に分離して全周に設けた磁性流体軸受。
- 請求項1または請求項2において、磁極を有する軸および軸受外輪の一方が永久磁石材料である磁性流体軸受。
- 請求項1または請求項2において、磁極を有する軸および軸受外輪の一方が半硬質磁鋼である磁性流体軸受。
- 請求項1ないし請求項4のいずれかにおいて、軸と軸受外輪の相対回転の停止中にも軸を軸受外輪に対して非接触で支持が必要な用途に用いられる磁性流体軸受。
- 請求項1ないし請求項5のいずれかにおいて、揺動運動の支点軸受に用いられる磁性流体軸受。
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WO2007094401A1 (ja) * | 2006-02-16 | 2007-08-23 | Ntn Corporation | 軸受ユニット |
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2003
- 2003-01-17 JP JP2003009089A patent/JP2004218792A/ja active Pending
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