JP2004218612A - 圧縮着火式内燃機関 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来技術では、低NOx、低スモークを実現できても燃焼騒音を低減できない。また、他の従来技術では、低NOx、低燃焼騒音を実現できてもスモークを低減できない。
【解決手段】ECU2は、エンジン1の運転状態が特定の運転領域であると判定すると、1サイクル中に燃料を2回(先噴射と後噴射)に分けて噴射させるとともに、先噴射の噴射終了後に先噴射の燃焼を開始させ、先噴射の燃焼の終了後に後噴射の噴射を開始させ、後噴射の噴射終了後に後噴射の燃焼を開始させる燃焼形態を実施する。この着火遅れ期間中に十分に気化した予混合気が噴射後に緩慢な燃焼を開始するため、NOxとスモークとを同時に抑制できる。また、噴射する回数を2回に分割したことにより、1回の燃焼量が抑えられて燃焼騒音も抑制できる。即ち、NOx、スモーク、燃焼騒音を低いレベルに抑えることができる。
【選択図】 図3
【解決手段】ECU2は、エンジン1の運転状態が特定の運転領域であると判定すると、1サイクル中に燃料を2回(先噴射と後噴射)に分けて噴射させるとともに、先噴射の噴射終了後に先噴射の燃焼を開始させ、先噴射の燃焼の終了後に後噴射の噴射を開始させ、後噴射の噴射終了後に後噴射の燃焼を開始させる燃焼形態を実施する。この着火遅れ期間中に十分に気化した予混合気が噴射後に緩慢な燃焼を開始するため、NOxとスモークとを同時に抑制できる。また、噴射する回数を2回に分割したことにより、1回の燃焼量が抑えられて燃焼騒音も抑制できる。即ち、NOx、スモーク、燃焼騒音を低いレベルに抑えることができる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は圧縮着火式内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
NOxとスモークの発生を同時に抑制する技術として、多量の排気循環(以下、EGRと称す)を行うとともに、燃料の噴射時期を上死点後まで遅らせる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この技術は、燃焼温度を低下させることでNOxの発生を抑制し、着火遅れ期間の大幅な延長により予混合燃焼化することでスモークの発生を抑制するものである。
【0003】
【特許文献1】
特許第2864896号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記で示した従来技術(例えば、特許文献1)では、燃焼は単段燃焼の形態をとるため、排ガス低減とともに低減要求の強い燃焼騒音低減には不利な燃焼技術といえる。
【0005】
上記に対し、NOxと燃焼騒音を同時に抑制する技術としてパイロット噴射が知られている。
この技術は、メイン噴射に先立って噴射されたパイロット噴射の燃料がメイン噴射の前に燃焼することにより燃焼室の温度を上昇させ、メイン噴射の燃料の着火遅れを短縮することにより、着火遅れ期間中に形成される予混合気が一気に燃え上がる初期燃焼を抑制するものである。
【0006】
しかし、NOxのレベルを下げるためにEGR量を増やすと、スモークが悪化する問題がある。これは、多量EGR下(低酸素濃度)ではパイロット噴射による燃焼によって酸素が消費され、さらに拡散燃焼となるメイン噴射による燃焼時に燃料と空気との混合が不十分となりスモークが発生するものである。なお、この場合におけるパイロット噴射の燃焼形態は、予混合的な燃焼であり、メイン噴射の燃焼形態は、拡散燃焼である。
【0007】
【発明の目的】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、NOx、スモーク、燃焼騒音を同時に抑制できる圧縮着火式内燃機関の提供にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1の手段〕
請求項1の圧縮着火式内燃機関は、1サイクル中に複数回の予混合燃焼を実施するものである。予混合燃焼は、燃焼開始前に予め一様に燃料と吸入空気が混合した予混合気が形成されるために、低NOx、低スモークとなる。また、燃焼を複数回実施することにより、1回の燃焼量が少なくなるために燃焼室内圧力変化が小さくなり、燃焼騒音を抑制できる。
つまり、請求項1の発明によって、NOx、スモーク、燃焼騒音を同時に抑制できる。
【0009】
〔請求項2の手段〕
請求項2の圧縮着火式内燃機関は、上死点後に複数回の予混合燃焼を行うものである。燃焼室内温度が低下していく膨張工程中に燃焼させることによって燃焼が緩慢となるため、NOx、スモーク、燃焼騒音を同時に抑制できる。
【0010】
〔請求項3の手段〕
請求項3の圧縮着火式内燃機関は、1サイクル中に燃料噴射を複数回に分けて噴射する多段噴射を行うとともに、各噴射の終了後にそれぞれの燃焼を開始させ、さらに最初の燃焼以外の燃焼を、直前の噴射終了後に開始するように燃焼開始を遅らせる手段を備えるものである。
この燃焼開始を遅らせる手段により、燃焼室に噴射された燃料は、噴射が終了するまで燃焼を開始しない。このため、着火遅れ期間中において噴射された燃料は十分に気化し、一様に燃料と吸入空気が混合した予混合気が形成され、噴射終了後に予混合燃焼が開始される。この結果、NOxとスモークを同時に抑制できる。また、多段噴射によって燃焼が複数回に分けられることによって1回の燃焼量が少なくなるために燃焼室内圧力変化が小さくなり、燃焼騒音を抑制できる。
【0011】
〔請求項4の手段〕
請求項4の圧縮着火式内燃機関は、上死点後に複数回の噴射を実施することにより、複数回の予混合燃焼を行うものである。上死点後に噴射を開始することにより、噴射される全ての燃料は膨張工程中に噴射されることになる。即ち、燃焼室内温度が低下していく工程中であるため、噴射される全ての噴射燃料の燃焼開始時期を遅らせることができる。その着火遅れ期間中に噴射された燃料はより十分に気化し、一様に燃料と吸入空気が混合した予混合気を形成することができ、緩慢な予混合燃焼を実現できる。
【0012】
〔請求項5の手段〕
請求項5の圧縮着火式内燃機関において燃焼室内に噴射された燃料の燃焼開始を遅らせる手段は、内燃機関から排出された排ガスの一部を内燃機関の吸気側へ戻すEGR(排気再循環)手段と、内燃機関の吸気側へ戻される排ガスを冷却するEGR(排気再循環)冷却手段と、内燃機関に吸い込まれる吸気(吸入空気)を冷却する吸気冷却手段と、を備えるものである。
即ち、EGR手段によって多量の排ガスを吸気へ戻すこと(多量のEGRの実施)により燃焼室の酸素濃度が下がるために噴射された燃料の燃焼開始を遅らせることができるとともに、EGR冷却手段によって燃焼室に供給される排ガスの温度が下がるために燃焼室に噴射された燃料の燃焼開始を遅らせることができ、さらに吸気冷却手段によって燃焼室に供給される吸入空気の温度が下がるために燃焼室内に噴射された燃料の燃焼開始を遅らせることができる。
【0013】
〔請求項6の手段〕
請求項6の圧縮着火式内燃機関は、燃焼室における燃焼開始を検出する燃焼開始検出手段および燃焼終了を検出する燃焼終了検出手段を備える。燃焼開始・終了検出手段が、燃料の噴射が終了する以前に燃焼が開始された旨を検出した場合、各噴射終了後に燃焼が開始し、最初の噴射以外の噴射が直前の燃焼の終了後に開始するように、燃焼開始時期補正手段が燃焼の開始時期を補正制御する。
この結果、外乱や運転状態の変動、機器類の個体差や経時変化など、燃焼開始時期の早まる要因が生じた場合であっても、燃料噴射の終了後に燃焼を開始するようにできる。
【0014】
〔請求項7の手段〕
請求項7の圧縮着火式内燃機関の燃焼開始検出手段が、燃料の噴射が終了する以前に燃焼が開始された旨を検出した場合、燃焼開始時期補正手段が内燃機関の吸気側へ戻される排ガス量を増量する方向にEGR(排気再循環)手段を制御するとともに、燃料の噴射時期を遅角側へ補正制御する。
この結果、外乱や運転状態の変動、機器類の個体差や経時変化など、燃焼開始時期の早まる要因が生じた場合であっても、燃料噴射の終了後に燃焼を開始するようにできる。
【0015】
〔請求項8の手段〕
請求項8の圧縮着火式内燃機関の燃焼開始・終了検出手段は、燃焼室の圧力を検出する筒内圧検出センサであるため、燃焼室の燃焼開始を高い精度で監視できる。このため、燃料の噴射の終了後に燃焼を開始する補正制御を高い精度で実現できる。
【0016】
〔請求項9の手段〕
請求項9の圧縮着火式内燃機関は、多段噴射のうちの最初の噴射を上死点後に開始し、複数回の噴射のうちの最後の噴射を、燃料消費量が大きく増加しない範囲までに終了するように制御する。これにより、1度の噴射期間内に噴射される全ての燃料は膨張工程中に噴射されることになり、燃焼室内温度が低下していくために噴射される全ての噴射燃料の燃焼開始時期を遅らせることができる。それとともに燃焼が緩慢となり、低NOx、低スモーク、低燃焼騒音を実現できる。
なお、前述の「燃料消費量が大きく増加しない範囲」とは、例えば燃費悪化が5%以内の範囲である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、実施例と変形例を用いて説明する。
[実施例の構成]
図1〜図5を参照して本発明が適用された実施例を説明する。まず、圧縮着火式内燃機関の構成を図3を参照して説明する。
本実施例に示す4気筒ディーゼルエンジン等の内燃機関(以下、エンジン)1は、吸排気システムと、燃料噴射システムとを備え、ECU(エンジン・コントロール・ユニットの略)2によって制御されるものである。
【0018】
(吸排気システムの説明)
吸排気システムは、エンジン1の各燃焼室(図示しない)に吸入空気(吸気)を供給する吸気管3と、エンジン1の各燃焼室から排出された排ガスを車両の外部へ排出する排気管4と、排気管4を流れる排ガスの一部の排ガスを、排気再循環ガス(以下、EGRガス)として吸気管3へ導く排気再循環手段(以下、EGR手段)5と、排ガスの排気エネルギーによって吸入空気を過給する過給器(ターボチャージャ)6とを備える。
【0019】
吸気管3の途中には、エンジン1の各燃焼室に供給される吸入空気量を調整するスロットルバルブ7が配置されている。このスロットルバルブ7には、スロットルバルブ7の開度を測定するスロットル開度センサ(図示しない)が取り付けられ、スロットル開度がECU2でモニターされる。
また、吸気管3の途中には、過給器6によって圧縮されて高温になった吸入空気を外気等の冷却用熱媒体と熱交換させて冷却する吸気冷却手段(インタークーラ)8が配置されている。この吸気冷却手段8は、吸入空気を冷却することで、吸入空気の圧力を下げてエンジン1の燃焼室に供給される空気の実質的な質量を高めるものである。
ここで、吸気冷却手段8は、本発明においてエンジン1の燃焼室に供給される空気の温度を下げることで、燃焼室内に噴射供給された燃料の燃焼開始時期を遅らせる燃焼遅延手段の1つとして機能するものである。
【0020】
排気管4の途中には、トラップフィルタ、触媒等の排気浄化器11が配置されており、排気浄化器11を通過して浄化された排ガスは消音器(マフラー:図示しない)を通過した後、大気中に排出される。なお、排気管4の途中には、排気管4の内部を流れる酸素濃度を測定する空燃比センサ(例えば、O2 センサ)12が取り付けられ、排ガス中の酸素濃度がECU2でモニターされる。
【0021】
EGR手段5は、排気管4を流れる排ガスの一部の排ガスを、EGRガスとして吸気管3へ導く排ガス還流管(以下、EGR管)13と、このEGR管13の開度を調整して吸気管3内に戻されるEGRガス量を調整する排気再循環装置用バルブ(以下、EGRバルブ)14とから構成される。
従って、エンジン1の燃焼室に吸い込まれる吸入空気には、窒素酸化物(NOx)の生成量を少なくする目的でEGRガスが混入される。ECU2は、吸入空気に混入されるEGRガス量が適切になるように、エンジン1の運転状態毎にEGRバルブ14の開度を設定する。
ここで、EGR手段5は、本発明においてエンジン1の燃焼室に吸い込まれるEGRガス量を増やすことで、燃焼室内に噴射供給された燃料の燃焼開始時期を遅らせる燃焼遅延手段の1つとして機能するものである。
【0022】
EGR管13の途中には、吸気管3に戻されるEGRガス(排ガス)を冷却する排気再循環冷却手段(以下、EGR冷却手段)15が配置されている。このEGR冷却手段15は、EGR管13を通過するEGRガスを液体熱媒体(例えば、エンジン冷却水等)あるいは気体熱媒体(例えば、外気等)と熱交換することで冷却するものである。
ここで、EGR冷却手段15は、本発明においてエンジン1の燃焼室に吸い込まれるEGRガスを冷却することで、燃焼室内に噴射供給された燃料の燃焼開始時期を遅らせる燃焼遅延手段の1つとして機能するものである。
【0023】
(燃料噴射システムの説明)
燃料噴射システムは、燃料噴射圧力に相当する高圧燃料を蓄圧する高圧容器としてのコモンレール16と、このコモンレール16に蓄圧された蓄圧燃料をエンジン1の各燃焼室に噴射供給するインジェクタ17と、吸入した燃料を加圧してコモンレール16に圧送する燃料供給ポンプとしてのサプライポンプ(図示しない)とを備える。
【0024】
コモンレール16は、連続的に燃料噴射圧力に相当するコモンレール圧が蓄圧される必要があり、高圧のコモンレール圧が蓄圧されるように高圧燃料を圧送するサプライポンプの吐出口と接続されている。なお、コモンレール16には、コモンレール圧を測定するコモンレール圧センサ18が取り付けられ、コモンレール圧がECU2でモニターされる。
【0025】
インジェクタ17は、エンジン1の各気筒毎に個別に対応して取り付けられる燃料噴射弁であり、各気筒毎に高圧燃料を噴射する燃料噴射ノズル、この燃料噴射ノズル内のノズルニードルを開弁方向に駆動するアクチュエータ(電磁弁)、およびノズルニードルを閉弁方向に付勢するスプリング等の付勢手段などから構成される。そして、電磁弁が開弁してノズルニードルが上昇している間、コモンレール16に蓄圧された高圧燃料がインジェクタ17から噴射される。なお、電磁弁のソレノイド19の通電時間が長いほど開弁時間が長くなり、インジェクタ17から噴射される噴射量が多くなるとともに、コモンレール16のコモンレール圧が高いほど、インジェクタ17から噴射される噴射量が多くなる。
【0026】
ECU2には、各種の演算処理を行うCPU、各プログラムおよびデータを保存する記憶装置(ROM、スタンバイRAM、EEPROM、RAM等のメモリ)、入力回路、出力回路、電源回路、インジェクタ駆動回路、ポンプ駆動回路等の機能を含んで構成される。そして、各センサからのアナログ信号(電圧信号等)は入力回路のA/D変換器でA/D変換された後に、ECU2に内蔵された記憶装置に入力されるように構成される。
【0027】
そして、ECU2は、キースイッチ(図示しない)によってイグニッションがONされると、記憶装置に記憶されたプログラムと、読み込まれたセンサ類の信号(エンジン1の運転状態等に応じた信号)とに基づいて各種の演算処理をCPUで行い、演算結果に基づいて各気筒毎のインジェクタ17など、エンジン制御に係わる種々のアクチュエータ類を電子制御する。
【0028】
[実施例の特徴]
本実施例の圧縮着火式内燃機関は、特定の運転領域においてNOx、スモーク、燃焼騒音を低いレベルに低減する低NOx、低スモーク、低燃焼騒音運転を行う。この特定の運転領域については後述する。
ECU2には、特定の運転域において低NOx、低スモーク、低燃焼騒音運転を実行する低NOx・低スモーク・低燃焼騒音運転手段(燃焼開始を遅らせる手段に相当する)が盛り込まれている。
【0029】
この低NOx・低スモーク・低燃焼騒音運転手段は、エンジン回転数センサ21で読み込んだエンジン回転数(NE)、アクセル開度センサ22で読み込んだアクセル開度(ACCP)等からエンジン1の運転状態が上述した特定の運転領域であると判定すると、1サイクル中に燃料を2回(先噴射と後噴射)に分けて噴射させるとともに、先噴射の噴射終了後に先噴射の燃焼を開始させ、先噴射の燃焼の終了後に後噴射の噴射を開始させ、後噴射の噴射終了後に後噴射の燃焼を開始させる燃焼形態を実施させるものである。
【0030】
この実施例では、上記の燃焼形態(先噴射終了後に先噴射の燃焼開始→先噴射の燃焼の終了後に後噴射の噴射開始→後噴射終了後に後噴射の燃焼開始)を実現するために、即ち、先噴射と後噴射の両着火遅れを長くとるために、次の手段を採用している。
【0031】
▲1▼上死点(以下、TDC)後に先噴射を開始する。なお、後噴射は、燃料消費量が大きく悪化しない範囲、例えば、TDC後のクランク角が20°CA(クランク・アングルの略)までに噴射終了する。
▲2▼吸気冷却手段8によってエンジン1に吸い込まれる吸気を冷却し、燃焼室の混合気の温度を下げる。
▲3▼EGR冷却手段15によって排気管4から吸気管3に戻されるEGRガスを冷却し、燃焼室への吸入ガス(吸入空気にEGRガスを含むガス)の温度を下げる。
▲4▼EGR手段5のEGRバルブ14を制御して、排気管4から吸気管3に戻されるEGRガスを増量し、吸入ガスの酸素濃度を抑える。
【0032】
なお、上記▲2▼、▲3▼は、吸気とEGRガスの冷却によって、燃焼室に吸入される吸入ガスの温度を所定値以下(例えば、40℃以下)に抑えるものである。
また、上記▲4▼は、EGRガスの増量によって、吸入ガス中のEGRガスの濃度を所定値以上(例えば、40%以上)にするものである。
【0033】
上述したように、上記の燃焼形態(先噴射終了後に先噴射の燃焼開始→先噴射の燃焼の終了後に後噴射の噴射開始→後噴射終了後に後噴射の燃焼開始)を実現するために、TDC(上死点)〜ATDC(上死点後)20°CAの間に、先噴射の噴射開始〜後噴射の噴射終了までを実施する必要がある。後噴射は、先噴射、先噴射の燃焼終了後に実施する必要があるために噴射時期は遅角する必要がある。後噴射の燃焼は、さらに前述の後噴射時期よりも遅い時期に燃焼するため、燃焼効率が低下して燃費の悪化を伴う。このため、例えば燃料消費量の低下が5%以内となる時期までに後噴射を終了する必要がある。
【0034】
上記を満足する領域が、上述した特定の運転領域に相当するものであり、その領域はエンジン1の仕様等によって変化するものであるが、概略的には図4のハッチングAに示す領域(エンジン1に要求される発生トルクが比較的低く、且つエンジン1の回転数が低い領域)であり、この特定の運転領域は低NOx、低スモーク、低燃焼騒音の要求の高い領域である。
即ち、本実施例では低NOx、低スモーク、低燃焼騒音の要求の高い領域において、低NOx・低スモーク・低燃焼騒音運転手段を作動させて、これらを低いレベルに低減できる。
【0035】
また、本実施例の圧縮着火式内燃機関は、燃焼室の圧力を検出する筒内圧検出センサ(図示しない)を備える。この筒内圧検出センサの出力はECU2に入力され、ECU2は筒内圧検出センサの出力によって燃焼室の燃焼開始および燃焼終了をモニターするようになっている。
なお、燃焼開始・終了をモニターするセンサは筒内圧検出センサに限定されるものではなく、Gセンサ(加速度センサ)、イオン電流センサ等を用いても良い。
【0036】
そして、ECU2は、低NOx・低スモーク・低燃焼騒音運転手段によって上記の燃焼形態を実施している期間、燃料の噴射が終了する以前に燃焼が開始されることを検出すると、噴射後の燃焼が遅延するようにEGRバルブ14の開度を制御してEGR量を増量制御するとともに、噴射時期を遅角側へ補正制御する機能(燃焼開始時期補正手段による機能)が設けられている。
【0037】
燃焼開始時期補正手段による具体的な補正例を説明する。
先噴射が終了する以前に燃焼の開始が確認される場合は、EGR量を増量側へ補正制御するとともに、先噴射の噴射開始時期を遅角側へ補正制御する。また、後噴射が終了する以前に燃焼の開始が確認される場合は、EGR量を増量側へ補正制御するとともに、先噴射と後噴射の噴射間隔(インターバル)を長くする側へ補正制御する。もちろん、補正制御によって得られた補正値は、学習値として記憶装置に記憶されて、次回の噴射に反映されるものである。
【0038】
次に、低NOx・低スモーク・低燃焼騒音運転手段の制御を図5のフローチャートを参照して説明する。
この制御ルーチンに侵入すると(スタート)、まず、エンジン1の運転状態の読み込みを行う(ステップS1 )。即ち、ステップS1 では、エンジン回転数(NE)、アクセル開度(ACCP)等の読み込みを行う。
次に、ステップS1 で読み込んだエンジン1の運転状態からエンジン1に要求される出力トルクを算出する(ステップS2 )。
【0039】
ステップS2 で算出された出力トルクと、エンジン回転数(NE)との関係が、図4に示す特定の運転領域(ハッチング領域A)の範囲内であるか否かの判断を行う(ステップS3 )。
このステップS3 の判断結果がNOの場合は、本ルーチンから抜け出し、通常の噴射制御を実施する制御フロー(図示せず)へ進む。
ステップS3 の判断結果がYES の場合は、上述した低NOx・低スモーク・低燃焼騒音運転手段を作動させ、低NOx、低スモーク、低燃焼騒音運転を実施する(ステップS4 )。
【0040】
このステップS4 の制御の一例を説明する。
このステップS4 の制御は、概略的に、先噴射と後噴射の噴射時期(噴射量)を算出するステップと、先噴射と後噴射の間隔を算出するステップと、EGRガス量を算出するステップとによって構成される。
【0041】
まず、エンジン回転数(NE)とアクセル開度(ACCP)と予め実験等により測定して作成した特性マップ(図示せず)によって最適な基本噴射量(Q)を求め、さらにその基本噴射量(Q)に、燃料温度、エンジン冷却水温等を考慮した噴射補正量を加味して目標噴射量(Qfin )を算出する。
次に、エンジン1の1周期(1行程:吸入行程−圧縮行程−膨張行程(爆発行程)−排気行程)中、つまりエンジン1のクランクシャフトが2回転(720°CA)する間における1サイクル中に噴射を2度噴射(先噴射と後噴射)することを決定する。
【0042】
続いて、エンジン回転数(NE)とアクセル開度(ACCP)と予め実験等により測定して作成した特性マップ(図示せず)によって先噴射の噴射量が得られる先噴射の噴射期間を算出するとともに、目標噴射量(Qfin )から先噴射の噴射量を減算した後噴射の噴射量が得られる後噴射の噴射期間を算出する。
【0043】
なお、上記の求め方とは別の手段によって先噴射と後噴射の噴射量を算出しても良い。即ち、例えば、このステップS4 に侵入すると、エンジン回転数(NE)とアクセル開度(ACCP)と予め実験等により測定して作成した特性マップ(図示せず)によって、先噴射と後噴射の噴射期間を求めても良い。
【0044】
次に、エンジン回転数(NE)とアクセル開度(ACCP)と予め実験等により測定して作成した特性マップ(図示せず)によって先噴射の噴射開始時期(指令噴射時期)を求める。もちろん、先噴射の噴射開始時期は、TDC後に設定される。
続いて、エンジン回転数(NE)とアクセル開度(ACCP)と予め実験等により測定して作成した特性マップ(図示せず)によって先噴射と後噴射の噴射間隔(インターバル)、即ち後噴射の噴射開始時期を算出する。
【0045】
次に、エンジン回転数(NE)とアクセル開度(ACCP)と予め実験等により測定して作成した特性マップ(図示せず)によって、燃焼室に吸引される混合気中におけるEGRガスの混合率が所定値以上(例えば、40%以上)となるEGRバルブ14の開度を算出する。
そして、上記で算出した結果を基に、インジェクタ17の噴射制御およびEGRバルブ14の開度制御等を実施する。
【0046】
上記ステップS4 の実行後、筒内圧検出センサの出力によって燃焼室の燃焼開始をモニターする(ステップS5 )。
次に、ステップS5 のモニターの結果、噴射が終了する以前に燃焼が開始されることを検出すると、上述した燃焼開始時期補正手段の機能によって、噴射後の燃焼が遅延するようにEGR量を増量制御するとともに、噴射時期を遅角側へ補正制御する(ステップS6 )。
【0047】
[実施例の効果]
上述した圧縮着火式内燃機関の効果を、図1、図2を参照して説明する。
図1(a)は、本発明が適用された圧縮着火式内燃機関の噴射パターン(ノズルリフトの上昇パターン)と、燃焼状態(熱発生率)との関係を示す説明図である。
図1(b)は、EGR手段5によって多量のEGRガスを吸気側へ戻すとともに、燃料の噴射時期をTDC後まで遅らせた従来技術(1)の圧縮着火式内燃機関(従来技術の項において特許文献1に示した技術)の噴射パターンと、燃焼状態との関係を示す説明図である。
図1(c)は、EGR手段5によって多量のEGRガスを吸気側へ戻すとともに、パイロット噴射を行う従来技術(2)の圧縮着火式内燃機関(発明が解決しようとする課題の項において示した技術)の噴射パターンと、燃焼状態との関係を示す説明図である。
【0048】
図2(a)は、NOxの発生率とEGR率の関係を示すグラフである。このグラフから読み取れるように、従来技術(1)、(2)はEGR率を上げることにより、NOxを低いレベルに抑えることができる。
また、本発明が適用された圧縮着火式内燃機関でも、従来技術(1)、(2)と同様、NOxを低いレベルに抑えることができる。
【0049】
図2(b)は、スモークの発生率とEGR率の関係を示すグラフである。このグラフから読み取れるように、従来技術(1)はスモークの発生量を低いレベルに抑えることができるが、従来技術(2)はスモークの発生量を低いレベルに抑えることができない。
これに対し、本発明が適用された圧縮着火式内燃機関は、従来技術(1)とほぼ同様にスモークを低いレベルに抑えることができる。
【0050】
図2(c)は、燃焼騒音の発生率とEGR率の関係を示すグラフである。このグラフから読み取れるように、従来技術(2)は燃焼騒音の発生量を低いレベルに抑えることができるが、従来技術(1)は燃焼騒音の発生量を低いレベルに抑えることができない。
これに対し、本発明が適用された圧縮着火式内燃機関は、従来技術(2)と同様、燃焼騒音を低いレベルに抑えることができる。
【0051】
即ち、従来技術(1)は低NOx、低スモークであるが、燃焼騒音を低いレベルに抑えることができない不具合があり、従来技術(2)は低NOx、低燃焼騒音であるが、スモークを低いレベルに抑えることができない不具合がある。
これに対し、本発明が適用された圧縮着火式内燃機関は、上述した特定の運転領域において、上述した運転制御を実施し、燃焼室に噴射した燃料は、噴射が終了するまで燃焼を開始しない。このため、着火遅れ期間中において十分に気化した予混合気が形成され、噴射後に予混合気の燃焼が開始される。この結果、NOxとスモークとを同時に抑制できる。また、1サイクル中の燃料噴射回数を2回(先噴射と後噴射)に分割したことにより、燃焼も2回に分けられることによって1回の燃焼量が少なくなるため、燃焼騒音も抑制できる。
つまり、本発明が適用された圧縮着火式内燃機関は、上述した特定の運転領域において、NOx、スモーク、燃焼騒音のいずれも低いレベルに抑えることができる。
【0052】
[変形例]
上記実施例では、図1に示されるように、先噴射の噴射量が後噴射の噴射量より少ない例を示したが、エンジン1の運転状態に応じて先噴射の噴射量が後噴射の噴射量より多くなるように設けても良い。
上記の実施例では、本発明にかかる制御を実施する際、1サイクル中に燃料噴射を2回(先噴射と後噴射)に分けて噴射する例を示したが、3回以上に分けて噴射しても良い。この場合、3回以上の噴射量を均等に噴射しても良いし、エンジン1の運転状態に応じて噴射量の割合が変化するように設けても良い。
【0053】
上記の実施例では、過給器6を搭載する例を示したが、過給器6を搭載しない圧縮着火式内燃機関に本発明を適用しても良い。この場合、燃焼室内に噴射された燃料の燃焼開始を遅らせる手段である吸気冷却手段8を廃止しても良い。
上記の実施例で示した制御方法や数値等は、実施例説明のための一例であって、本発明を達成するために、他の制御方法や数値等を採用しても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】作動説明のためのタイムチャートである。
【図2】NOx、スモーク、燃焼騒音とEGR率との関係を示すグラフである。
【図3】圧縮着火式内燃機関の概略構成図である。
【図4】本発明が実施される運転領域を説明するトルクとエンジン回転数の関係を示すグラフである。
【図5】制御の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン(内燃機関)
2 ECU(低NOx・低スモーク・低燃焼騒音運転手段および燃焼開始時期補正手段の機能を具備する制御装置)
5 EGR手段(排気再循環手段)
8 吸気冷却手段
15 EGR冷却手段(排気再循環冷却手段)
17 インジェクタ
【発明の属する技術分野】
本発明は圧縮着火式内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
NOxとスモークの発生を同時に抑制する技術として、多量の排気循環(以下、EGRと称す)を行うとともに、燃料の噴射時期を上死点後まで遅らせる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この技術は、燃焼温度を低下させることでNOxの発生を抑制し、着火遅れ期間の大幅な延長により予混合燃焼化することでスモークの発生を抑制するものである。
【0003】
【特許文献1】
特許第2864896号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記で示した従来技術(例えば、特許文献1)では、燃焼は単段燃焼の形態をとるため、排ガス低減とともに低減要求の強い燃焼騒音低減には不利な燃焼技術といえる。
【0005】
上記に対し、NOxと燃焼騒音を同時に抑制する技術としてパイロット噴射が知られている。
この技術は、メイン噴射に先立って噴射されたパイロット噴射の燃料がメイン噴射の前に燃焼することにより燃焼室の温度を上昇させ、メイン噴射の燃料の着火遅れを短縮することにより、着火遅れ期間中に形成される予混合気が一気に燃え上がる初期燃焼を抑制するものである。
【0006】
しかし、NOxのレベルを下げるためにEGR量を増やすと、スモークが悪化する問題がある。これは、多量EGR下(低酸素濃度)ではパイロット噴射による燃焼によって酸素が消費され、さらに拡散燃焼となるメイン噴射による燃焼時に燃料と空気との混合が不十分となりスモークが発生するものである。なお、この場合におけるパイロット噴射の燃焼形態は、予混合的な燃焼であり、メイン噴射の燃焼形態は、拡散燃焼である。
【0007】
【発明の目的】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、NOx、スモーク、燃焼騒音を同時に抑制できる圧縮着火式内燃機関の提供にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1の手段〕
請求項1の圧縮着火式内燃機関は、1サイクル中に複数回の予混合燃焼を実施するものである。予混合燃焼は、燃焼開始前に予め一様に燃料と吸入空気が混合した予混合気が形成されるために、低NOx、低スモークとなる。また、燃焼を複数回実施することにより、1回の燃焼量が少なくなるために燃焼室内圧力変化が小さくなり、燃焼騒音を抑制できる。
つまり、請求項1の発明によって、NOx、スモーク、燃焼騒音を同時に抑制できる。
【0009】
〔請求項2の手段〕
請求項2の圧縮着火式内燃機関は、上死点後に複数回の予混合燃焼を行うものである。燃焼室内温度が低下していく膨張工程中に燃焼させることによって燃焼が緩慢となるため、NOx、スモーク、燃焼騒音を同時に抑制できる。
【0010】
〔請求項3の手段〕
請求項3の圧縮着火式内燃機関は、1サイクル中に燃料噴射を複数回に分けて噴射する多段噴射を行うとともに、各噴射の終了後にそれぞれの燃焼を開始させ、さらに最初の燃焼以外の燃焼を、直前の噴射終了後に開始するように燃焼開始を遅らせる手段を備えるものである。
この燃焼開始を遅らせる手段により、燃焼室に噴射された燃料は、噴射が終了するまで燃焼を開始しない。このため、着火遅れ期間中において噴射された燃料は十分に気化し、一様に燃料と吸入空気が混合した予混合気が形成され、噴射終了後に予混合燃焼が開始される。この結果、NOxとスモークを同時に抑制できる。また、多段噴射によって燃焼が複数回に分けられることによって1回の燃焼量が少なくなるために燃焼室内圧力変化が小さくなり、燃焼騒音を抑制できる。
【0011】
〔請求項4の手段〕
請求項4の圧縮着火式内燃機関は、上死点後に複数回の噴射を実施することにより、複数回の予混合燃焼を行うものである。上死点後に噴射を開始することにより、噴射される全ての燃料は膨張工程中に噴射されることになる。即ち、燃焼室内温度が低下していく工程中であるため、噴射される全ての噴射燃料の燃焼開始時期を遅らせることができる。その着火遅れ期間中に噴射された燃料はより十分に気化し、一様に燃料と吸入空気が混合した予混合気を形成することができ、緩慢な予混合燃焼を実現できる。
【0012】
〔請求項5の手段〕
請求項5の圧縮着火式内燃機関において燃焼室内に噴射された燃料の燃焼開始を遅らせる手段は、内燃機関から排出された排ガスの一部を内燃機関の吸気側へ戻すEGR(排気再循環)手段と、内燃機関の吸気側へ戻される排ガスを冷却するEGR(排気再循環)冷却手段と、内燃機関に吸い込まれる吸気(吸入空気)を冷却する吸気冷却手段と、を備えるものである。
即ち、EGR手段によって多量の排ガスを吸気へ戻すこと(多量のEGRの実施)により燃焼室の酸素濃度が下がるために噴射された燃料の燃焼開始を遅らせることができるとともに、EGR冷却手段によって燃焼室に供給される排ガスの温度が下がるために燃焼室に噴射された燃料の燃焼開始を遅らせることができ、さらに吸気冷却手段によって燃焼室に供給される吸入空気の温度が下がるために燃焼室内に噴射された燃料の燃焼開始を遅らせることができる。
【0013】
〔請求項6の手段〕
請求項6の圧縮着火式内燃機関は、燃焼室における燃焼開始を検出する燃焼開始検出手段および燃焼終了を検出する燃焼終了検出手段を備える。燃焼開始・終了検出手段が、燃料の噴射が終了する以前に燃焼が開始された旨を検出した場合、各噴射終了後に燃焼が開始し、最初の噴射以外の噴射が直前の燃焼の終了後に開始するように、燃焼開始時期補正手段が燃焼の開始時期を補正制御する。
この結果、外乱や運転状態の変動、機器類の個体差や経時変化など、燃焼開始時期の早まる要因が生じた場合であっても、燃料噴射の終了後に燃焼を開始するようにできる。
【0014】
〔請求項7の手段〕
請求項7の圧縮着火式内燃機関の燃焼開始検出手段が、燃料の噴射が終了する以前に燃焼が開始された旨を検出した場合、燃焼開始時期補正手段が内燃機関の吸気側へ戻される排ガス量を増量する方向にEGR(排気再循環)手段を制御するとともに、燃料の噴射時期を遅角側へ補正制御する。
この結果、外乱や運転状態の変動、機器類の個体差や経時変化など、燃焼開始時期の早まる要因が生じた場合であっても、燃料噴射の終了後に燃焼を開始するようにできる。
【0015】
〔請求項8の手段〕
請求項8の圧縮着火式内燃機関の燃焼開始・終了検出手段は、燃焼室の圧力を検出する筒内圧検出センサであるため、燃焼室の燃焼開始を高い精度で監視できる。このため、燃料の噴射の終了後に燃焼を開始する補正制御を高い精度で実現できる。
【0016】
〔請求項9の手段〕
請求項9の圧縮着火式内燃機関は、多段噴射のうちの最初の噴射を上死点後に開始し、複数回の噴射のうちの最後の噴射を、燃料消費量が大きく増加しない範囲までに終了するように制御する。これにより、1度の噴射期間内に噴射される全ての燃料は膨張工程中に噴射されることになり、燃焼室内温度が低下していくために噴射される全ての噴射燃料の燃焼開始時期を遅らせることができる。それとともに燃焼が緩慢となり、低NOx、低スモーク、低燃焼騒音を実現できる。
なお、前述の「燃料消費量が大きく増加しない範囲」とは、例えば燃費悪化が5%以内の範囲である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、実施例と変形例を用いて説明する。
[実施例の構成]
図1〜図5を参照して本発明が適用された実施例を説明する。まず、圧縮着火式内燃機関の構成を図3を参照して説明する。
本実施例に示す4気筒ディーゼルエンジン等の内燃機関(以下、エンジン)1は、吸排気システムと、燃料噴射システムとを備え、ECU(エンジン・コントロール・ユニットの略)2によって制御されるものである。
【0018】
(吸排気システムの説明)
吸排気システムは、エンジン1の各燃焼室(図示しない)に吸入空気(吸気)を供給する吸気管3と、エンジン1の各燃焼室から排出された排ガスを車両の外部へ排出する排気管4と、排気管4を流れる排ガスの一部の排ガスを、排気再循環ガス(以下、EGRガス)として吸気管3へ導く排気再循環手段(以下、EGR手段)5と、排ガスの排気エネルギーによって吸入空気を過給する過給器(ターボチャージャ)6とを備える。
【0019】
吸気管3の途中には、エンジン1の各燃焼室に供給される吸入空気量を調整するスロットルバルブ7が配置されている。このスロットルバルブ7には、スロットルバルブ7の開度を測定するスロットル開度センサ(図示しない)が取り付けられ、スロットル開度がECU2でモニターされる。
また、吸気管3の途中には、過給器6によって圧縮されて高温になった吸入空気を外気等の冷却用熱媒体と熱交換させて冷却する吸気冷却手段(インタークーラ)8が配置されている。この吸気冷却手段8は、吸入空気を冷却することで、吸入空気の圧力を下げてエンジン1の燃焼室に供給される空気の実質的な質量を高めるものである。
ここで、吸気冷却手段8は、本発明においてエンジン1の燃焼室に供給される空気の温度を下げることで、燃焼室内に噴射供給された燃料の燃焼開始時期を遅らせる燃焼遅延手段の1つとして機能するものである。
【0020】
排気管4の途中には、トラップフィルタ、触媒等の排気浄化器11が配置されており、排気浄化器11を通過して浄化された排ガスは消音器(マフラー:図示しない)を通過した後、大気中に排出される。なお、排気管4の途中には、排気管4の内部を流れる酸素濃度を測定する空燃比センサ(例えば、O2 センサ)12が取り付けられ、排ガス中の酸素濃度がECU2でモニターされる。
【0021】
EGR手段5は、排気管4を流れる排ガスの一部の排ガスを、EGRガスとして吸気管3へ導く排ガス還流管(以下、EGR管)13と、このEGR管13の開度を調整して吸気管3内に戻されるEGRガス量を調整する排気再循環装置用バルブ(以下、EGRバルブ)14とから構成される。
従って、エンジン1の燃焼室に吸い込まれる吸入空気には、窒素酸化物(NOx)の生成量を少なくする目的でEGRガスが混入される。ECU2は、吸入空気に混入されるEGRガス量が適切になるように、エンジン1の運転状態毎にEGRバルブ14の開度を設定する。
ここで、EGR手段5は、本発明においてエンジン1の燃焼室に吸い込まれるEGRガス量を増やすことで、燃焼室内に噴射供給された燃料の燃焼開始時期を遅らせる燃焼遅延手段の1つとして機能するものである。
【0022】
EGR管13の途中には、吸気管3に戻されるEGRガス(排ガス)を冷却する排気再循環冷却手段(以下、EGR冷却手段)15が配置されている。このEGR冷却手段15は、EGR管13を通過するEGRガスを液体熱媒体(例えば、エンジン冷却水等)あるいは気体熱媒体(例えば、外気等)と熱交換することで冷却するものである。
ここで、EGR冷却手段15は、本発明においてエンジン1の燃焼室に吸い込まれるEGRガスを冷却することで、燃焼室内に噴射供給された燃料の燃焼開始時期を遅らせる燃焼遅延手段の1つとして機能するものである。
【0023】
(燃料噴射システムの説明)
燃料噴射システムは、燃料噴射圧力に相当する高圧燃料を蓄圧する高圧容器としてのコモンレール16と、このコモンレール16に蓄圧された蓄圧燃料をエンジン1の各燃焼室に噴射供給するインジェクタ17と、吸入した燃料を加圧してコモンレール16に圧送する燃料供給ポンプとしてのサプライポンプ(図示しない)とを備える。
【0024】
コモンレール16は、連続的に燃料噴射圧力に相当するコモンレール圧が蓄圧される必要があり、高圧のコモンレール圧が蓄圧されるように高圧燃料を圧送するサプライポンプの吐出口と接続されている。なお、コモンレール16には、コモンレール圧を測定するコモンレール圧センサ18が取り付けられ、コモンレール圧がECU2でモニターされる。
【0025】
インジェクタ17は、エンジン1の各気筒毎に個別に対応して取り付けられる燃料噴射弁であり、各気筒毎に高圧燃料を噴射する燃料噴射ノズル、この燃料噴射ノズル内のノズルニードルを開弁方向に駆動するアクチュエータ(電磁弁)、およびノズルニードルを閉弁方向に付勢するスプリング等の付勢手段などから構成される。そして、電磁弁が開弁してノズルニードルが上昇している間、コモンレール16に蓄圧された高圧燃料がインジェクタ17から噴射される。なお、電磁弁のソレノイド19の通電時間が長いほど開弁時間が長くなり、インジェクタ17から噴射される噴射量が多くなるとともに、コモンレール16のコモンレール圧が高いほど、インジェクタ17から噴射される噴射量が多くなる。
【0026】
ECU2には、各種の演算処理を行うCPU、各プログラムおよびデータを保存する記憶装置(ROM、スタンバイRAM、EEPROM、RAM等のメモリ)、入力回路、出力回路、電源回路、インジェクタ駆動回路、ポンプ駆動回路等の機能を含んで構成される。そして、各センサからのアナログ信号(電圧信号等)は入力回路のA/D変換器でA/D変換された後に、ECU2に内蔵された記憶装置に入力されるように構成される。
【0027】
そして、ECU2は、キースイッチ(図示しない)によってイグニッションがONされると、記憶装置に記憶されたプログラムと、読み込まれたセンサ類の信号(エンジン1の運転状態等に応じた信号)とに基づいて各種の演算処理をCPUで行い、演算結果に基づいて各気筒毎のインジェクタ17など、エンジン制御に係わる種々のアクチュエータ類を電子制御する。
【0028】
[実施例の特徴]
本実施例の圧縮着火式内燃機関は、特定の運転領域においてNOx、スモーク、燃焼騒音を低いレベルに低減する低NOx、低スモーク、低燃焼騒音運転を行う。この特定の運転領域については後述する。
ECU2には、特定の運転域において低NOx、低スモーク、低燃焼騒音運転を実行する低NOx・低スモーク・低燃焼騒音運転手段(燃焼開始を遅らせる手段に相当する)が盛り込まれている。
【0029】
この低NOx・低スモーク・低燃焼騒音運転手段は、エンジン回転数センサ21で読み込んだエンジン回転数(NE)、アクセル開度センサ22で読み込んだアクセル開度(ACCP)等からエンジン1の運転状態が上述した特定の運転領域であると判定すると、1サイクル中に燃料を2回(先噴射と後噴射)に分けて噴射させるとともに、先噴射の噴射終了後に先噴射の燃焼を開始させ、先噴射の燃焼の終了後に後噴射の噴射を開始させ、後噴射の噴射終了後に後噴射の燃焼を開始させる燃焼形態を実施させるものである。
【0030】
この実施例では、上記の燃焼形態(先噴射終了後に先噴射の燃焼開始→先噴射の燃焼の終了後に後噴射の噴射開始→後噴射終了後に後噴射の燃焼開始)を実現するために、即ち、先噴射と後噴射の両着火遅れを長くとるために、次の手段を採用している。
【0031】
▲1▼上死点(以下、TDC)後に先噴射を開始する。なお、後噴射は、燃料消費量が大きく悪化しない範囲、例えば、TDC後のクランク角が20°CA(クランク・アングルの略)までに噴射終了する。
▲2▼吸気冷却手段8によってエンジン1に吸い込まれる吸気を冷却し、燃焼室の混合気の温度を下げる。
▲3▼EGR冷却手段15によって排気管4から吸気管3に戻されるEGRガスを冷却し、燃焼室への吸入ガス(吸入空気にEGRガスを含むガス)の温度を下げる。
▲4▼EGR手段5のEGRバルブ14を制御して、排気管4から吸気管3に戻されるEGRガスを増量し、吸入ガスの酸素濃度を抑える。
【0032】
なお、上記▲2▼、▲3▼は、吸気とEGRガスの冷却によって、燃焼室に吸入される吸入ガスの温度を所定値以下(例えば、40℃以下)に抑えるものである。
また、上記▲4▼は、EGRガスの増量によって、吸入ガス中のEGRガスの濃度を所定値以上(例えば、40%以上)にするものである。
【0033】
上述したように、上記の燃焼形態(先噴射終了後に先噴射の燃焼開始→先噴射の燃焼の終了後に後噴射の噴射開始→後噴射終了後に後噴射の燃焼開始)を実現するために、TDC(上死点)〜ATDC(上死点後)20°CAの間に、先噴射の噴射開始〜後噴射の噴射終了までを実施する必要がある。後噴射は、先噴射、先噴射の燃焼終了後に実施する必要があるために噴射時期は遅角する必要がある。後噴射の燃焼は、さらに前述の後噴射時期よりも遅い時期に燃焼するため、燃焼効率が低下して燃費の悪化を伴う。このため、例えば燃料消費量の低下が5%以内となる時期までに後噴射を終了する必要がある。
【0034】
上記を満足する領域が、上述した特定の運転領域に相当するものであり、その領域はエンジン1の仕様等によって変化するものであるが、概略的には図4のハッチングAに示す領域(エンジン1に要求される発生トルクが比較的低く、且つエンジン1の回転数が低い領域)であり、この特定の運転領域は低NOx、低スモーク、低燃焼騒音の要求の高い領域である。
即ち、本実施例では低NOx、低スモーク、低燃焼騒音の要求の高い領域において、低NOx・低スモーク・低燃焼騒音運転手段を作動させて、これらを低いレベルに低減できる。
【0035】
また、本実施例の圧縮着火式内燃機関は、燃焼室の圧力を検出する筒内圧検出センサ(図示しない)を備える。この筒内圧検出センサの出力はECU2に入力され、ECU2は筒内圧検出センサの出力によって燃焼室の燃焼開始および燃焼終了をモニターするようになっている。
なお、燃焼開始・終了をモニターするセンサは筒内圧検出センサに限定されるものではなく、Gセンサ(加速度センサ)、イオン電流センサ等を用いても良い。
【0036】
そして、ECU2は、低NOx・低スモーク・低燃焼騒音運転手段によって上記の燃焼形態を実施している期間、燃料の噴射が終了する以前に燃焼が開始されることを検出すると、噴射後の燃焼が遅延するようにEGRバルブ14の開度を制御してEGR量を増量制御するとともに、噴射時期を遅角側へ補正制御する機能(燃焼開始時期補正手段による機能)が設けられている。
【0037】
燃焼開始時期補正手段による具体的な補正例を説明する。
先噴射が終了する以前に燃焼の開始が確認される場合は、EGR量を増量側へ補正制御するとともに、先噴射の噴射開始時期を遅角側へ補正制御する。また、後噴射が終了する以前に燃焼の開始が確認される場合は、EGR量を増量側へ補正制御するとともに、先噴射と後噴射の噴射間隔(インターバル)を長くする側へ補正制御する。もちろん、補正制御によって得られた補正値は、学習値として記憶装置に記憶されて、次回の噴射に反映されるものである。
【0038】
次に、低NOx・低スモーク・低燃焼騒音運転手段の制御を図5のフローチャートを参照して説明する。
この制御ルーチンに侵入すると(スタート)、まず、エンジン1の運転状態の読み込みを行う(ステップS1 )。即ち、ステップS1 では、エンジン回転数(NE)、アクセル開度(ACCP)等の読み込みを行う。
次に、ステップS1 で読み込んだエンジン1の運転状態からエンジン1に要求される出力トルクを算出する(ステップS2 )。
【0039】
ステップS2 で算出された出力トルクと、エンジン回転数(NE)との関係が、図4に示す特定の運転領域(ハッチング領域A)の範囲内であるか否かの判断を行う(ステップS3 )。
このステップS3 の判断結果がNOの場合は、本ルーチンから抜け出し、通常の噴射制御を実施する制御フロー(図示せず)へ進む。
ステップS3 の判断結果がYES の場合は、上述した低NOx・低スモーク・低燃焼騒音運転手段を作動させ、低NOx、低スモーク、低燃焼騒音運転を実施する(ステップS4 )。
【0040】
このステップS4 の制御の一例を説明する。
このステップS4 の制御は、概略的に、先噴射と後噴射の噴射時期(噴射量)を算出するステップと、先噴射と後噴射の間隔を算出するステップと、EGRガス量を算出するステップとによって構成される。
【0041】
まず、エンジン回転数(NE)とアクセル開度(ACCP)と予め実験等により測定して作成した特性マップ(図示せず)によって最適な基本噴射量(Q)を求め、さらにその基本噴射量(Q)に、燃料温度、エンジン冷却水温等を考慮した噴射補正量を加味して目標噴射量(Qfin )を算出する。
次に、エンジン1の1周期(1行程:吸入行程−圧縮行程−膨張行程(爆発行程)−排気行程)中、つまりエンジン1のクランクシャフトが2回転(720°CA)する間における1サイクル中に噴射を2度噴射(先噴射と後噴射)することを決定する。
【0042】
続いて、エンジン回転数(NE)とアクセル開度(ACCP)と予め実験等により測定して作成した特性マップ(図示せず)によって先噴射の噴射量が得られる先噴射の噴射期間を算出するとともに、目標噴射量(Qfin )から先噴射の噴射量を減算した後噴射の噴射量が得られる後噴射の噴射期間を算出する。
【0043】
なお、上記の求め方とは別の手段によって先噴射と後噴射の噴射量を算出しても良い。即ち、例えば、このステップS4 に侵入すると、エンジン回転数(NE)とアクセル開度(ACCP)と予め実験等により測定して作成した特性マップ(図示せず)によって、先噴射と後噴射の噴射期間を求めても良い。
【0044】
次に、エンジン回転数(NE)とアクセル開度(ACCP)と予め実験等により測定して作成した特性マップ(図示せず)によって先噴射の噴射開始時期(指令噴射時期)を求める。もちろん、先噴射の噴射開始時期は、TDC後に設定される。
続いて、エンジン回転数(NE)とアクセル開度(ACCP)と予め実験等により測定して作成した特性マップ(図示せず)によって先噴射と後噴射の噴射間隔(インターバル)、即ち後噴射の噴射開始時期を算出する。
【0045】
次に、エンジン回転数(NE)とアクセル開度(ACCP)と予め実験等により測定して作成した特性マップ(図示せず)によって、燃焼室に吸引される混合気中におけるEGRガスの混合率が所定値以上(例えば、40%以上)となるEGRバルブ14の開度を算出する。
そして、上記で算出した結果を基に、インジェクタ17の噴射制御およびEGRバルブ14の開度制御等を実施する。
【0046】
上記ステップS4 の実行後、筒内圧検出センサの出力によって燃焼室の燃焼開始をモニターする(ステップS5 )。
次に、ステップS5 のモニターの結果、噴射が終了する以前に燃焼が開始されることを検出すると、上述した燃焼開始時期補正手段の機能によって、噴射後の燃焼が遅延するようにEGR量を増量制御するとともに、噴射時期を遅角側へ補正制御する(ステップS6 )。
【0047】
[実施例の効果]
上述した圧縮着火式内燃機関の効果を、図1、図2を参照して説明する。
図1(a)は、本発明が適用された圧縮着火式内燃機関の噴射パターン(ノズルリフトの上昇パターン)と、燃焼状態(熱発生率)との関係を示す説明図である。
図1(b)は、EGR手段5によって多量のEGRガスを吸気側へ戻すとともに、燃料の噴射時期をTDC後まで遅らせた従来技術(1)の圧縮着火式内燃機関(従来技術の項において特許文献1に示した技術)の噴射パターンと、燃焼状態との関係を示す説明図である。
図1(c)は、EGR手段5によって多量のEGRガスを吸気側へ戻すとともに、パイロット噴射を行う従来技術(2)の圧縮着火式内燃機関(発明が解決しようとする課題の項において示した技術)の噴射パターンと、燃焼状態との関係を示す説明図である。
【0048】
図2(a)は、NOxの発生率とEGR率の関係を示すグラフである。このグラフから読み取れるように、従来技術(1)、(2)はEGR率を上げることにより、NOxを低いレベルに抑えることができる。
また、本発明が適用された圧縮着火式内燃機関でも、従来技術(1)、(2)と同様、NOxを低いレベルに抑えることができる。
【0049】
図2(b)は、スモークの発生率とEGR率の関係を示すグラフである。このグラフから読み取れるように、従来技術(1)はスモークの発生量を低いレベルに抑えることができるが、従来技術(2)はスモークの発生量を低いレベルに抑えることができない。
これに対し、本発明が適用された圧縮着火式内燃機関は、従来技術(1)とほぼ同様にスモークを低いレベルに抑えることができる。
【0050】
図2(c)は、燃焼騒音の発生率とEGR率の関係を示すグラフである。このグラフから読み取れるように、従来技術(2)は燃焼騒音の発生量を低いレベルに抑えることができるが、従来技術(1)は燃焼騒音の発生量を低いレベルに抑えることができない。
これに対し、本発明が適用された圧縮着火式内燃機関は、従来技術(2)と同様、燃焼騒音を低いレベルに抑えることができる。
【0051】
即ち、従来技術(1)は低NOx、低スモークであるが、燃焼騒音を低いレベルに抑えることができない不具合があり、従来技術(2)は低NOx、低燃焼騒音であるが、スモークを低いレベルに抑えることができない不具合がある。
これに対し、本発明が適用された圧縮着火式内燃機関は、上述した特定の運転領域において、上述した運転制御を実施し、燃焼室に噴射した燃料は、噴射が終了するまで燃焼を開始しない。このため、着火遅れ期間中において十分に気化した予混合気が形成され、噴射後に予混合気の燃焼が開始される。この結果、NOxとスモークとを同時に抑制できる。また、1サイクル中の燃料噴射回数を2回(先噴射と後噴射)に分割したことにより、燃焼も2回に分けられることによって1回の燃焼量が少なくなるため、燃焼騒音も抑制できる。
つまり、本発明が適用された圧縮着火式内燃機関は、上述した特定の運転領域において、NOx、スモーク、燃焼騒音のいずれも低いレベルに抑えることができる。
【0052】
[変形例]
上記実施例では、図1に示されるように、先噴射の噴射量が後噴射の噴射量より少ない例を示したが、エンジン1の運転状態に応じて先噴射の噴射量が後噴射の噴射量より多くなるように設けても良い。
上記の実施例では、本発明にかかる制御を実施する際、1サイクル中に燃料噴射を2回(先噴射と後噴射)に分けて噴射する例を示したが、3回以上に分けて噴射しても良い。この場合、3回以上の噴射量を均等に噴射しても良いし、エンジン1の運転状態に応じて噴射量の割合が変化するように設けても良い。
【0053】
上記の実施例では、過給器6を搭載する例を示したが、過給器6を搭載しない圧縮着火式内燃機関に本発明を適用しても良い。この場合、燃焼室内に噴射された燃料の燃焼開始を遅らせる手段である吸気冷却手段8を廃止しても良い。
上記の実施例で示した制御方法や数値等は、実施例説明のための一例であって、本発明を達成するために、他の制御方法や数値等を採用しても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】作動説明のためのタイムチャートである。
【図2】NOx、スモーク、燃焼騒音とEGR率との関係を示すグラフである。
【図3】圧縮着火式内燃機関の概略構成図である。
【図4】本発明が実施される運転領域を説明するトルクとエンジン回転数の関係を示すグラフである。
【図5】制御の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 エンジン(内燃機関)
2 ECU(低NOx・低スモーク・低燃焼騒音運転手段および燃焼開始時期補正手段の機能を具備する制御装置)
5 EGR手段(排気再循環手段)
8 吸気冷却手段
15 EGR冷却手段(排気再循環冷却手段)
17 インジェクタ
Claims (9)
- 内燃機関の燃焼室内に噴射供給した燃料が圧縮着火する圧縮着火式内燃機関において、
この圧縮着火式内燃機関は、1サイクル中に複数回の予混合燃焼を実施することを特徴とする圧縮着火式内燃機関。 - 請求項1に記載の圧縮着火式内燃機関において、
前記予混合燃焼は、上死点後に複数回の予混合燃焼を実施することを特徴とする圧縮着火式内燃機関。 - 請求項2に記載の圧縮着火式内燃機関において、
1サイクル中に燃料噴射を複数回に分けて噴射する多段噴射を行うとともに、各噴射の終了後にそれぞれの燃焼を開始させ、さらに最初の燃焼以外の燃焼が、直前の噴射終了後に開始するように燃焼開始を遅らせる手段を備えることを特徴とする圧縮着火式内燃機関。 - 請求項2または請求項3に記載の圧縮着火式内燃機関において、
前記燃焼室内に噴射された燃料の燃焼開始を遅らせる手段として、上死点後に複数回の噴射を実施することを特徴とする圧縮着火式内燃機関。 - 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の圧縮着火式内燃機関において、
前記燃焼室内に噴射された燃料の燃焼開始を遅らせる手段として、
前記内燃機関から排出された排ガスの一部を前記内燃機関の吸気側へ戻す排気再循環手段と、
この排気再循環手段によって前記内燃機関の吸気側へ戻される排ガスを冷却する排気再循環冷却手段と、
前記内燃機関に吸い込まれる吸気を冷却する吸気冷却手段と、を備え、
運転条件に応じ、排気再循環量を所定値以上に制御するとともに、燃焼室内に吸入される吸入ガス温度を所定値以下に制御することを特徴とする圧縮着火式内燃機関。 - 請求項1〜請求項5のいずれかに記載の圧縮着火式内燃機関において、
前記燃焼室の燃焼開始を検出する燃焼開始検出手段および燃焼終了を検出する燃焼終了検出手段を備え、
前記燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタを制御する制御装置は、
前記燃焼開始検出手段および燃焼終了検出手段によって燃焼状態を検出し、各噴射の終了後に燃焼が開始し、最初の噴射以外の噴射が直前の燃焼の終了後に開始するように燃焼の開始時期を補正制御する燃焼開始時期補正手段を備えることを特徴とする圧縮着火式内燃機関。 - 請求項6に記載の圧縮着火式内燃機関において、
前記燃焼開始時期補正手段は、
前記燃焼開始検出手段が、燃料の噴射が終了する以前に燃焼が開始された旨を検出した場合、前記内燃機関の吸気側へ戻される排ガス量を増量する方向に前記排気再循環手段を制御するとともに、燃料の噴射時期を遅角側へ補正制御することを特徴とする圧縮着火式内燃機関。 - 請求項6または請求項7に記載の圧縮着火式内燃機関において、
前記燃焼開始検出手段および燃焼終了検出手段は、前記燃焼室の圧力を検出する筒内圧検出センサであることを特徴とする圧縮着火式内燃機関。 - 請求項1〜請求項8のいずれかに記載の圧縮着火式内燃機関において、
1サイクル中に燃料噴射を複数回に分けて噴射する多段噴射のうちの最初の噴射を、前記内燃機関の上死点後に開始し、前記複数回の噴射のうちの最後の噴射を、前記内燃機関の燃料消費量が大きく増加しない範囲までに終了するように制御することを特徴とする圧縮着火式内燃機関。
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---|---|---|---|
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006348791A (ja) * | 2005-06-14 | 2006-12-28 | Isuzu Motors Ltd | 多気筒ディーゼルエンジン |
JP2007100661A (ja) * | 2005-10-07 | 2007-04-19 | Nissan Motor Co Ltd | 自動車用内燃機関の制御装置 |
JP2016133097A (ja) * | 2015-01-22 | 2016-07-25 | 株式会社デンソー | 内燃機関の制御装置 |
-
2003
- 2003-01-17 JP JP2003009952A patent/JP2004218612A/ja active Pending
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JP4586641B2 (ja) * | 2005-06-14 | 2010-11-24 | いすゞ自動車株式会社 | 多気筒ディーゼルエンジン |
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