JP2004218534A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】筒内に噴射された燃料が排気バルブの閉弁前に排気ポートに到達して排気管へ排出される“噴射燃料のすり抜け”を防止できるようにする。
【解決手段】エンジン運転状態に基づいて算出したベース燃料噴射開始時期が排気バルブ閉弁時期よりも所定値D2(噴射燃料が排気ポートに到達するまでの時間)以上進角したときは、噴射燃料のすり抜けが発生する可能性があると判断して、ベース燃料噴射開始時期と排気バルブ閉弁時期との差に応じて遅角補正量を算出し、この遅角補正量によりベース燃料噴射開始時期を遅角補正して最終燃料噴射開始時期を設定する。これにより、排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期を進角する期間中でも、排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期との関係を、噴射燃料が排気ポートに到達する前に排気バルブの閉弁時期を迎える状態を維持するように制御することができ、噴射燃料のすり抜けを確実に防止できる。
【選択図】 図9

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、排気バルブのバルブタイミングを変化させる可変排気バルブタイミング機構を備えた内燃機関の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、低燃費、低排気エミッション、高出力の特長を兼ね備えた筒内噴射エンジンの需要が急増している。この筒内噴射エンジンは、低負荷時には、少量の燃料を圧縮行程で筒内に直接噴射して混合気を成層燃焼させ、高負荷時には、燃料噴射量を増量して吸気行程で筒内に燃料を直接噴射して混合気を均質燃焼させるようにしている。
【0003】
このような筒内噴射エンジンにおいて、例えば、特許文献1(特許第3147770号公報)、特許文献2(特開平10−103093号公報)に示すように、燃費、排気エミッション、出力の更なる向上を目指して、吸気バルブや排気バルブのバルブタイミングを変化させる可変バルブタイミング機構を搭載したものがある。
【0004】
ところで、筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射エンジンでは、噴射燃料が排気ポートに到達するまでの時間(以下「噴射燃料到達時間」という)が非常に短いため、燃料噴射開始時期が排気バルブの開弁期間と重なっていると(正確には、燃料噴射開始時期が排気バルブ閉弁時期よりも前記噴射燃料到達時間以上早いと)、噴射燃料の一部が排気バルブの閉弁前に排気ポートに到達して排気管へ排出されてしまい、排気エミッションが悪化するという不具合が発生する。
【0005】
この対策として、特許文献2(特開平10−103093号公報)では、燃料噴射開始時期が所定時期(排気バルブ閉弁時期)よりも進角された(早くなった)ときに、排気バルブ閉弁時期を進角する(早める)ことで、噴射燃料が排気ポートに到達する前に排気バルブを閉弁させるようにしている。
【0006】
【特許文献1】
特許第3147770号公報(第1頁等)
【特許文献2】
特開平10−103093号公報(第2頁等)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、図11に示すように、燃料噴射開始時期は、目標噴射開始時期の変化に応じてほとんど応答遅れなく変化させることができるが、排気バルブタイミングの制御では、目標排気バルブタイミングの変化に応じて可変排気バルブタイミング機構を変化後の目標排気バルブタイミングに相当する位置まで駆動する時間が無視できないため、排気バルブタイミングの制御には、燃料噴射開始時期の制御と比較して、かなり大きな応答遅れが生じる。この排気バルブタイミング制御の応答遅れによって次のような問題が生じる。
【0008】
例えば、図10(a)に示すように、排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期が両方とも遅角された状態から、図10(c)に示すように、排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期を両方とも進角させる場合、図10(a)に示す進角前の状態及び図10(c)に示す進角後の状態において、それぞれ排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期との関係を、噴射燃料が排気ポートに到達する前に排気バルブの閉弁時期を迎えるように設定することが望ましい。
【0009】
従来のシステムでは、排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期を図10(a)の位置から(c)の位置まで進角する過程で、燃料噴射開始時期は、ほとんど応答遅れなくほぼ瞬時に進角後の燃料噴射開始時期に進角されるが、排気バルブタイミングは、図11に示すように目標排気バルブタイミングの変化に対して応答遅れを持って変化するため、排気バルブタイミングの進角動作が完了するまで、図10(b)に示すように、燃料噴射開始時期の進角動作に対して排気バルブタイミングの進角動作が遅れて、燃料噴射開始時期と排気バルブの開弁期間とが重なる期間が発生してしまい、その期間に、噴射燃料の一部が閉弁前の排気バルブの隙間をすり抜けて排気管へ排出される“噴射燃料のすり抜け”が発生してしまい、排気エミッションが悪化するという不具合が発生する。
【0010】
要するに、前述した特許文献2のように、燃料噴射開始時期が所定時期(排気バルブ閉弁時期)よりも進角されたときに、排気バルブ閉弁時期を進角するように制御しても、可変排気バルブタイミング機構の応答遅れによって、図10(b)に示すように、燃料噴射開始時期の進角動作に対して排気バルブタイミングの進角動作が遅れるため、排気バルブタイミングの進角動作が完了するまで、噴射燃料のすり抜けが発生してしまい、排気エミッションが悪化するという不具合が発生する。
【0011】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、噴射燃料のすり抜けを確実に防止することができ、排気エミッションを向上させることができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1は、内燃機関の運転状態に応じて燃料噴射弁の燃料噴射時期と排気バルブのバルブタイミング(以下「排気バルブタイミング」という)とを制御するシステムにおいて、排気バルブタイミング検出手段で検出又は推定した実排気バルブタイミングに基づいて燃料噴射時期を噴射時期補正手段により遅角補正するようにしたものである。
【0013】
このようにすれば、排気バルブタイミングと燃料噴射時期を進角する過程で、実排気バルブタイミングが応答遅れを持って進角するのを検出しながら、その応答遅れに合わせて燃料噴射時期の進角動作を遅らせることができ、燃料噴射時期の進角動作に実排気バルブタイミングの応答遅れと同等の遅れを持たせることができる。これにより、排気バルブタイミングと燃料噴射時期を進角する過渡期間中でも、排気バルブタイミングと燃料噴射時期との関係を、噴射燃料が排気ポートに到達する前に排気バルブの閉弁時期を迎える状態を維持するように制御することができ、噴射燃料のすり抜けを確実に防止することができて、排気エミッションを向上させることができる。
【0014】
尚、排気バルブタイミングと燃料噴射時期のいずれか一方のみを進角する場合でも、排気バルブタイミングと燃料噴射時期との関係を、噴射燃料が排気ポートに到達する前に排気バルブの閉弁時期を迎える状態を維持するように、燃料噴射時期を適宜遅角補正することができ、噴射燃料のすり抜けを確実に防止することができる。
【0015】
前述したように、噴射燃料が排気ポートから排出される可能性があるのは、燃料噴射時期が排気バルブ閉弁時期よりも進角している(早い)ときである。従って、請求項2のように、燃料噴射時期が実排気バルブタイミングに基づいて検出される排気バルブ閉弁時期よりも進角しているときに(燃料噴射時期が排気バルブの開弁期間と重なっているときに)、該燃料噴射時期を遅角補正するようにしても良い。このようにすれば、噴射燃料のすり抜けが発生する可能性があるときに、確実に燃料噴射時期を遅角補正することができる。
【0016】
また、燃料噴射時期の遅角補正量を設定する際に、噴射燃料が排気ポートに到達する前に排気バルブの閉弁時期を迎えるのに必要最小限の遅角補正量を設定すれば、噴射燃料のすり抜け防止効果を十分に得ることができ、それ以上、燃料噴射時期の遅角補正量を大きくしても、噴射燃料のすり抜け防止効果にほとんど変わりはなく、逆に、燃焼性に悪影響を及ぼすだけである(燃料噴射時期は燃焼性を確保できるように設定する必要がある)。
【0017】
そこで、請求項3のように、燃料噴射時期と、実排気バルブタイミングに基づいて検出される実際の排気バルブ閉弁時期との差に応じて該燃料噴射時期の遅角補正量を設定するようにしても良い。このようにすれば、噴射燃料が排気ポートに到達する前に排気バルブの閉弁時期を迎えるのに必要最小限の遅角補正量を設定することができ、燃焼性に及ぼす影響を最小限に抑えながら、噴射燃料のすり抜けを防止することができ、燃焼性確保と噴射燃料のすり抜け防止とを両立させることができる。
【0018】
また、請求項4のように、実排気バルブタイミングと目標排気バルブタイミングとの差に応じて燃料噴射時期の遅角補正量を設定するようにしても良い。実排気バルブタイミングと目標排気バルブタイミングとの差が大きくなるほど、実排気バルブタイミングが目標排気バルブタイミングに到達するまでの応答遅れ時間(噴射燃料のすり抜けが発生する可能性がある期間)が長くなるという関係があるため、実排気バルブタイミングと目標排気バルブタイミングとの差に応じて燃料噴射時期の遅角補正量を設定すれば、実排気バルブタイミングの応答遅れ時間に応じた適正な遅角補正量を設定することができ、燃焼性に及ぼす影響を小さくしながら、噴射燃料のすり抜けを防止することができる。
【0019】
また、請求項5のように、実排気バルブタイミングを推定する場合には、油温、冷却水温、機関回転速度のうちの少なくとも1つに基づいて実排気バルブタイミングを推定するようにすると良い。一般に、可変バルブタイミング機構を搭載したシステムでは、内燃機関の動力でオイルポンプを駆動して作動油を可変バルブタイミング機構に供給して可変バルブタイミング機構を駆動するため、機関回転速度に応じて作動油の油圧が変化して、可変バルブタイミング機構の応答性が変化する。また、作動油の油温に応じて作動油の粘度(流動性)が変化して、可変バルブタイミング機構の応答性が変化する。従って、油温、冷却水温(油温の代用情報)、機関回転速度は、いずれも可変バルブタイミング機構の応答性を評価するパラメータとなるため、油温、冷却水温、機関回転速度のうちの少なくとも1つを用いれば、目標排気バルブタイミングに対する実排気バルブタイミングの応答遅れ時間を推定して、この応答遅れ時間と目標排気バルブタイミングとに基づいて実排気バルブタイミングを推定することができる。この場合、一般に内燃機関の噴射・点火制御のために搭載されている既存のセンサの出力(冷却水温、機関回転速度等)を利用して実排気バルブタイミングを推定できるため、排気バルブタイミングを検出するセンサ類を新たに追加する必要がなく、低コスト化の要求を満たすことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。筒内噴射式の内燃機関である筒内噴射式エンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。このエアフローメータ14の下流側には、DCモータ等のモータ15によって駆動されるスロットルバルブ16が設けられ、このスロットルバルブ16の開度(スロットル開度)がスロットル開度センサ17によって検出される。
【0021】
また、スロットルバルブ16の下流側には、サージタンク18が設けられ、このサージタンク18に、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ19が設けられている。また、サージタンク18には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド20が設けられ、各気筒の吸気マニホールド20に、エンジン11の筒内の気流(スワール流やタンブル流)を制御する気流制御弁31が設けられている。
【0022】
エンジン11の各気筒の上部には、それぞれ燃料を筒内に直接噴射する燃料噴射弁21が取り付けられている。エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ22が取り付けられ、各点火プラグ22の火花放電によって筒内の混合気に着火される。また、エンジン11の吸気バルブ37には、吸気バルブタイミング(吸気バルブ37の開閉タイミング)を可変する可変吸気バルブタイミング機構39が設けられ、排気バルブ38には、排気バルブタイミング(排気バルブ38の開閉タイミング)を可変する可変排気バルブタイミング機構40が設けられている。
【0023】
エンジン11のシリンダブロックには、ノッキングを検出するノックセンサ32と、冷却水温を検出する冷却水温センサ23とが取り付けられている。また、クランク軸(図示せず)の外周側には、所定のクランク角毎にクランク角信号を出力するクランク角センサ24が取り付けられている。このクランク角センサ24からのクランク角信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。一方、吸気側カム軸と排気側カム軸(共に図示せず)の外周には、それぞれ所定のカム角毎にカム角信号を出力するカム角センサ41,42が取り付けられている。
【0024】
一方、エンジン11の排気管25には、排出ガスを浄化する上流側触媒26と下流側触媒27が設けられ、上流側触媒26の上流側に、排出ガスの空燃比又はリッチ/リーン等を検出する排出ガスセンサ28(空燃比センサ、酸素センサ等)が設けられている。本実施形態では、上流側触媒26として理論空燃比付近で排出ガス中のCO,HC,NOx等を浄化する三元触媒が設けられ、下流側触媒27としてNOx吸蔵還元型触媒が設けられている。このNOx吸蔵還元型触媒は、排出ガスの空燃比がリーンのときに排出ガス中のNOxを吸蔵し、空燃比が理論空燃比付近又はリッチになったときに吸蔵NOxを還元浄化して放出する特性を持っている。
【0025】
また、排気管25のうちの上流側触媒26の下流側と吸気管12のうちのスロットルバルブ16の下流側のサージタンク18との間に、排出ガスの一部を吸気側に還流させるためのEGR配管33が接続され、このEGR配管33の途中に排出ガス還流量(EGR量)を制御するEGR弁34が設けられている。また、アクセルペダル35の踏込量(アクセル開度)がアクセルセンサ36によって検出される。
【0026】
前述した各種センサの出力は、エンジン制御回路(以下「ECU」と表記する)30に入力される。このECU30は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種の制御ルーチンを実行することで、エンジン運転状態に応じて燃料噴射弁21の燃料噴射量や燃料噴射時期、点火プラグ22の点火時期等を制御する。
【0027】
このECU30は、後述する図2乃至図7に示す各ルーチンを実行することで、エンジン運転状態(要求トルクやエンジン回転速度等)に応じて成層燃焼モードと均質燃焼モードとを切り換える。成層燃焼モードでは、少量の燃料を圧縮行程で筒内に直接噴射して点火プラグ22の近傍に成層混合気を形成して成層燃焼させることで、燃費を向上させる。一方、均質燃焼モードでは、燃料噴射量を増量して吸気行程で筒内に直接噴射して均質混合気を形成して均質燃焼させることで、エンジン出力を高める。
【0028】
また、成層燃焼モードでは、空気系の制御パラメータ(吸気バルブタイミング、排気バルブタイミング等)、燃料系の制御パラメータ(燃料噴射量、燃料噴射時期等)、点火系の制御パラメータ(点火時期)の目標値として、それぞれ成層燃焼モード用のマップ等を用いてエンジン運転状態に応じた成層燃焼モード用の目標値を算出する。一方、均質燃焼モードでは、空気系の制御パラメータ、燃料系の制御パラメータ、点火系の制御パラメータの目標値として、それぞれ均質燃焼モード用のマップ等を用いてエンジン運転状態に応じた均質燃焼モード用の目標値を算出する。
【0029】
また、ECU30は、図示しない可変バルブタイミング制御ルーチンを実行することで、クランク角センサ24から出力されるクランク角信号と排気カム軸側のカム角センサ42から出力されるカム角信号とに基づいて実排気バルブタイミングを算出し、実排気バルブタイミングを目標排気バルブタイミングに一致させるように可変排気バルブタイミング機構40をフィードバック制御する。この場合、クランク角センサ24とカム角センサ42の出力信号に基づいて実排気バルブタイミング(実進角量VTac)を算出する機能が特許請求の範囲でいう排気バルブタイミング検出手段としての役割を果たす。
【0030】
例えば、図10(a)に示すように、排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期が両方とも遅角された状態から、図10(c)に示すように、排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期が両方とも進角された状態に変更する場合、図10(a)に示す変更前の状態及び図10(c)に示す変更後の状態において、それぞれ排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期との関係を、噴射燃料が排気ポートに到達する前に排気バルブの閉弁時期を迎えるように設定することが望ましい。従来のシステムでは、排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期を図10(a)の位置から(c)の位置まで進角する過程で、燃料噴射開始時期は、ほとんど応答遅れなくほぼ瞬時に進角後の燃料噴射開始時期に進角されるが、排気バルブタイミングは、図11に示すように目標排気バルブタイミングの変化に対して応答遅れを持って変化するため、排気バルブタイミングの進角動作が完了するまで、図10(b)に示すように、燃料噴射開始時期の進角動作に対して排気バルブタイミングの進角動作が遅れて、燃料噴射開始時期と排気バルブの開弁期間とが重なる期間が発生してしまい、その期間に、噴射燃料の一部が閉弁前の排気バルブの隙間をすり抜けて排気管へ排出される“噴射燃料のすり抜け”が発生してしまい、排気エミッションが悪化するという不具合が発生する。
【0031】
そこで、ECU30は、図8に示す噴射時期補正ルーチンを実行することで、エンジン運転状態に基づいて算出した燃料噴射開始時期が、実排気バルブタイミングに基づいて検出した排気バルブ閉弁時期よりも進角しているときに(燃料噴射開始時期が排気バルブ38の開弁期間と重なっているときに)、噴射燃料の一部が排気バルブ38の閉弁前に排気ポートに到達して排気管25へ排出される“噴射燃料のすり抜け”が発生する可能性があると判断して、燃料噴射開始時期と排気バルブ閉弁時期との差に応じて燃料噴射開始時期を遅角補正して、噴射燃料が排気ポートに到達する前に排気バルブ38が閉弁するように制御して、噴射燃料のすり抜けを防止する。
【0032】
以下、本実施形態でECU30が実行する図2乃至図8に示す各ルーチンの処理内容を説明する。
【0033】
[エンジン制御メインルーチン]
図2のエンジン制御メインルーチンは、イグニッションスイッチ(図示せず)のオン後に所定周期で実行される。本メインルーチンが起動されると、まずステップ100で、アクセル開度とエンジン回転速度等に基づいて要求トルクを算出する。この後、ステップ200に進み、図3の燃焼モード決定ルーチンを実行して燃焼モードを決定した後、ステップ300に進み、図4の燃焼モード切換制御ルーチンを実行して、燃焼モード切換要求があれば、燃焼モード切換制御を実行し、次のステップ400〜600で、図5の空気系制御ルーチン、図6の燃料系制御ルーチン、図7の点火系制御ルーチンを実行して、空気系、燃料系、点火系の各制御パラメータを後述するタイミングで切り換え先の燃焼モードの目標値に切り換えて燃焼モードを切り換える。
【0034】
[燃焼モード決定ルーチン]
図2のエンジン制御メインルーチンのステップ200で、図3の燃焼モード決定ルーチンが起動されると、まずステップ201で、要求燃焼モード判定マップを検索して現在のエンジン運転状態(例えばエンジン回転速度と要求トルク)に応じて成層燃焼モードと均質燃焼モードのいずれか一方を要求燃焼モードとして選択する。この要求燃焼モード判定マップは、低回転、低トルク領域では、燃費節減を優先して成層燃焼モードが選択され、一方、高回転、高トルク領域では、エンジン出力を優先して均質燃焼モードが選択されるように設定されている。
【0035】
この後、ステップ202に進み、現在のエンジン運転状態に応じて選択した要求燃焼モードが均質燃焼モードであるか否かを判定し、要求燃焼モードが均質燃焼モードであれば、ステップ203に進み、現在の実燃焼モードが均質燃焼モードであるか否かを判定する。もし、現在の実燃焼モードが均質燃焼モードでなければ、燃焼モードを切り換える必要があるため、ステップ204に進み、燃焼モード切換中フラグをONして、ステップ205に進み、空気系制御モードを均質燃焼モードに設定する。一方、現在の実燃焼モードが均質燃焼モードであれば、燃焼モードを切り換える必要がないため、ステップ204を飛び越して、ステップ205に進み、空気系制御モードを均質燃焼モードに維持する。
【0036】
前記ステップ202で、要求燃焼モードが均質燃焼モードでない(成層燃焼モードである)と判定された場合には、ステップ207に進み、現在の実燃焼モードが成層燃焼モードであるか否かを判定する。もし、現在の実燃焼モードが成層燃焼モードでなければ、燃焼モードを切り換える必要があるため、ステップ208に進み、燃焼モード切換中フラグをONして、ステップ209に進み、空気系制御モードを均質燃焼モードに設定する。一方、現在の実燃焼モードが成層燃焼モードであれば、燃焼モードを切り換える必要がないため、ステップ208を飛び越して、ステップ205に進み、空気系制御モードを成層燃焼モードに維持する。
【0037】
[燃焼モード切換制御ルーチン]
図2のエンジン制御メインルーチンのステップ300で、図4の燃焼モード切換制御ルーチンが起動されると、まずステップ301で、燃焼モード切換中フラグがONであるか否かによって燃焼モード切換中であるか否かを判定し、燃焼モード切換中でなければ、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
【0038】
一方、燃焼モード切換中であれば、ステップ302に進み、要求燃焼モードが成層燃焼モードであるか否かを判定し、要求燃焼モードが成層燃焼モードでなければ(つまり要求燃焼モードが均質燃焼モードであれば)、ステップ303に進み、実空燃比A/Fが均質燃焼領域判定値CAF2よりリッチであるか否かで、実空燃比A/Fが均質燃焼領域であるか否かを判定する。その結果、実空燃比A/Fが均質燃焼領域判定値CAF2よりリーンである(実空燃比A/Fが均質燃焼領域に入っていない)と判定された場合は、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
【0039】
その後、実空燃比A/Fが均質燃焼領域判定値CAF2よりもリッチになって実空燃比A/Fが均質燃焼可能な領域に入ったと判定された時点で、ステップ304に進み、燃料系制御モードを均質燃焼モードに設定して、燃料噴射モードを吸気行程噴射に切り換えた後、燃焼モード切換中フラグをOFFして本ルーチンを終了する。
【0040】
また、燃焼モード切換中で、且つ要求燃焼モードが成層燃焼モードであると判定された場合(ステップ301、302で共に「Yes」と判定された場合)は、ステップ306に進み、実空燃比A/Fが成層燃焼領域判定値CAF1よりもリーンであるか否かで、実空燃比A/Fが成層燃焼領域であるか否かを判定する。その結果、実空燃比A/Fが成層燃焼領域判定値CAF1よりもリッチである(実空燃比A/Fが成層燃焼領域に入っていない)と判定された場合は、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
【0041】
その後、実空燃比A/Fが成層燃焼領域判定値CAF1よりもリーンになって実空燃比A/Fが成層燃焼可能な領域に入ったと判定された時点で、ステップ308に進み、燃料系制御モードを成層燃焼モードに設定して、燃料噴射モードを圧縮行程噴射に切り換えた後、燃焼モード切換中フラグをOFFして本ルーチンを終了する。
【0042】
[空気系制御ルーチン]
図2のエンジン制御メインルーチンのステップ400で、図5の空気系制御ルーチンが起動されると、まずステップ401で、空気系制御モードが均質燃焼モードであるか否かを判定し、均質燃焼モードであれば、ステップ402に進み、空気系の各制御パラメータ(吸気バルブタイミング、排気バルブタイミング、スロットル開度、EGR弁34の開度、気流制御弁31の開度)の目標値として、それぞれ均質燃焼モード用のマップ等を用いてエンジン運転状態に応じた均質燃焼モード用の目標値を算出する。
【0043】
一方、上記ステップ401で、空気系制御モードが均質燃焼モードでない(成層燃焼モードである)と判定された場合は、ステップ403に進み、空気系の各制御パラメータの目標値として、それぞれ成層燃焼モード用のマップ等を用いてエンジン運転状態に応じた成層燃焼モード用の目標値を算出する。
【0044】
[燃料系制御ルーチン]
図2のエンジン制御メインルーチンのステップ500で、図6の燃料系制御ルーチンが起動されると、まずステップ501で、燃料系制御モードが均質燃焼モードであるか否かを判定し、均質燃焼モードであれば、ステップ502に進み、燃料系の制御パラメータ(燃料噴射量、燃料噴射開始時期)の目標値として、それぞれ均質燃焼モード用のマップ等を用いてエンジン運転状態に応じた均質燃焼モード用の目標値(燃料噴射時間、ベース燃料噴射開始時期INJBS)を算出する。
【0045】
また、上記ステップ501で、燃料系制御モードが均質燃焼モードでない(成層燃焼モードである)と判定された場合は、ステップ503に進み、燃料系の制御パラメータの目標値(燃料噴射量、燃料噴射開始時期)として、それぞれ成層燃焼モード用のマップ等を用いてエンジン運転状態に応じた成層燃焼モード用の目標値(燃料噴射時間、ベース燃料噴射開始時期INJBS)を算出する。
【0046】
[点火系制御ルーチン]
図2のエンジン制御メインルーチンのステップ600で、図7の点火系制御ルーチンが起動されると、まずステップ601で、点火系制御モード(=燃料系制御モード)が均質燃焼モードであるか否かを判定し、均質燃焼モードであれば、ステップ602に進み、点火系の制御パラメータ(点火時期)の目標値として、均質燃焼モード用のマップ等を用いてエンジン運転状態に応じた均質燃焼モード用の目標値を算出する。
【0047】
また、上記ステップ601で、点火系制御モードが均質燃焼モードでない(成層燃焼モードである)と判定された場合は、ステップ603に進み、点火系の制御パラメータの目標値として、成層燃焼モード用のマップ等を用いてエンジン運転状態に応じた成層燃焼モード用の目標値を算出する。
【0048】
[噴射時期補正ルーチン]
図8に示す噴射時期補正ルーチンは、イグニッションスイッチ(図示せず)のオン後に所定周期で実行され、特許請求の範囲でいう噴射時期補正手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まずステップ701で、図5の空気系制御ルーチンで算出した目標排気バルブタイミングVTtgと、クランク角センサ24とカム角センサ42の出力信号に基づいて算出した実排気バルブタイミングVTacを読み込んだ後、ステップ702に進み、実排気バルブタイミングVTacと目標排気バルブタイミングVTtgとの差が所定値D1よりも大きいか否かを判定する。
【0049】
その結果、実排気バルブタイミングVTacと目標排気バルブタイミングVTtgとの差が所定値D1以下であると判定された場合には、実排気バルブタイミングVTacが目標排気バルブタイミングVTtgにほぼ収束していると判断して、ステップ707に進み、遅角補正量VTCMPを「0」にする。この場合、燃料噴射開始時期の遅角補正は行われない。
【0050】
一方、上記ステップ702で、実排気バルブタイミングVTacと目標排気バルブタイミングVTtgとの差が所定値D1よりも大きいと判定された場合には、目標排気バルブタイミングVTtgに対して実排気バルブタイミングVTacの進角動作に遅れが生じていると判断して、ステップ703に進み、図6の燃料系制御ルーチンによってエンジン運転状態に基づいて算出したベース燃料噴射開始時期INJBSを読み込むと共に、排気バルブ38の作動角VT1と排気バルブタイミングのセット位置VT0を読み込む。この排気バルブタイミングのセット位置VT0は、排気バルブタイミングの指令値をセットする位置であり、最進角位置(実排気バルブタイミングVTac=0)に相当する位置である。
【0051】
従って、図9に示すように、排気バルブタイミングのセット位置VT0から実排気バルブタイミングVTacを減算した位置が排気バルブ開弁時期(VT0−VTac)となり、この排気バルブ開弁時期(VT0−VTac)から排気バルブ38の作動角VT1を減算した位置が排気バルブ閉弁時期(VT0−VTac−VT1)となる。
【0052】
この後、ステップ704に進み、ベース燃料噴射開始時期INJBSと排気バルブ閉弁時期(VT0−VTac−VT1)との差DANGを求める。
DANG=INJBS−(VT0−VTac−VT1)
【0053】
そして、次のステップ705で、ベース燃料噴射開始時期INJBSと排気バルブ閉弁時期(VT0−VTac−VT1)との差DANGが所定値D2よりも大きいか否かを判定する。ここで、所定値D2は、燃料噴射弁21から筒内に噴射された燃料が排気ポートに到達するまでの時間(以下「噴射燃料到達時間」という)に相当する値に設定されている。この所定値D2は、予め設定した固定値としても良いし、エンジン回転速度Neに応じてマップ等により設定する可変値としても良い。尚、所定値D2は、噴射燃料到達時間の他に、燃料噴射弁21の応答遅れ時間やその他の誤差要因を見込んで設定しても良く、勿論、これらの影響を無視して、簡易的に所定値D2を0に設定しても良い。
【0054】
上記ステップ705で、ベース燃料噴射開始時期INJBSと排気バルブ閉弁時期(VT0−VTac−VT1)との差DANGが所定値D2(噴射燃料到達時間)以下であると判定された場合、つまり、ベース燃料噴射開始時期INJBSが排気バルブ閉弁時期(VT0−VTac−VT1)よりも遅い(遅角している)か又はベース燃料噴射開始時期INJBSが排気バルブ閉弁時期(VT0−VTac−VT1)よりも早くても(進角していても)、その時間差が所定値D2(噴射燃料到達時間)以下である場合は、噴射燃料が排気ポートに到達する前に排気バルブ38が閉弁すると判断して、ステップ707に進み、遅角補正量VTCMPを「0」にセットする。この場合は、燃料噴射開始時期の遅角補正は行われない。
【0055】
一方、上記ステップ705で、ベース燃料噴射開始時期INJBSと排気バルブ閉弁時期(VT0−VTac−VT1)との差DANGが所定値D2よりも大きいと判定された場合、つまり、ベース燃料噴射開始時期INJBSが排気バルブ閉弁時期(VT0−VTac−VT1)よりも所定値D2(噴射燃料到達時間)以上進角している場合は、噴射燃料が排気バルブ38の閉弁前に排気ポートに到達して排気管25に排出される“噴射燃料のすり抜け”が発生する可能性があると判断して、ステップ706に進み、遅角補正量VTCMPのマップを用いて、ベース燃料噴射開始時期INJBSと排気バルブ閉弁時期(VT0−VTac−VT1)との差DANGと、エンジン回転速度Neとに応じた遅角補正量VTCMPを算出する。
【0056】
この後、ステップ708に進み、ベース燃料噴射開始時期INJBSを遅角補正量VTCMPだけ遅角補正して最終燃料噴射開始時期INJを求める。
INJ=INJBS−VTCMP
【0057】
以上説明した本実施形態によれば、図9に示すように、エンジン運転状態に基づいて算出したベース燃料噴射開始時期INJBSが排気バルブ閉弁時期(VT0−VTac−VT1)よりも所定値D2(噴射燃料到達時間)以上進角している場合は、噴射燃料が排気バルブ38の閉弁前に排気ポートに到達して排気管25に排出される“噴射燃料のすり抜け”が発生する可能性があると判断して、ベース燃料噴射開始時期INJBSと排気バルブ閉弁時期(VT0−VTac−VT1)との差DANGに応じて遅角補正量VTCMPを算出し、この遅角補正量VTCMPを用いてベース燃料噴射開始時期INJBSを遅角補正して最終燃料噴射開始時期INJを設定する。
【0058】
これにより、例えば、図10(a)に示すように、排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期が両方とも遅角された状態から、図10(c)に示すように、排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期が両方とも進角された状態に変更する過程で、実排気バルブタイミングVTacの進角動作に応答遅れが生じるという事情があっても、図11に示すように、実排気バルブタイミングVTacの応答遅れに合わせて燃料噴射開始時期の進角動作を遅らせることができ、燃料噴射開始時期の進角動作に実排気バルブタイミングの応答遅れと同等の遅れを持たせることができる。これにより、排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期を進角する過渡期間中でも、排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期との関係を、噴射燃料が排気ポートに到達する前に排気バルブ38の閉弁時期を迎える状態を維持するように制御することができ、噴射燃料のすり抜けを確実に防止することができて、排気エミッションを向上させることができる。
【0059】
尚、排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期のいずれか一方のみを進角する場合でも、排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期との関係を、噴射燃料が排気ポートに到達する前に排気バルブ38の閉弁時期を迎える状態を維持するように、燃料噴射開始時期を適宜遅角補正することができ、噴射燃料のすり抜けを確実に防止することができる。
【0060】
本実施形態では、ベース燃料噴射開始時期INJBSが排気バルブ閉弁時期(VT0−VTac−VT1)よりも所定値D2(噴射燃料到達時間)以上進角しているときに燃料噴射開始時期を遅角補正するようにしたが、ベース燃料噴射開始時期INJBSが排気バルブ閉弁時期(VT0−VTac−VT1)よりも進角しているときに燃料噴射開始時期を遅角補正するようにしても良く、この場合でも、噴射燃料のすり抜けを確実に防止することができる。
【0061】
ところで、燃料噴射開始時期の遅角補正量VTCMPを設定する際に、噴射燃料が排気ポートに到達する前に排気バルブ38の閉弁時期を迎えるのに必要最小限の遅角補正量を設定すれば、噴射燃料のすり抜け防止効果を十分に得ることができ、それ以上、燃料噴射開始時期の遅角補正量VTCMPを大きくしても、噴射燃料のすり抜け防止効果にほとんど変わりはなく、逆に、燃焼性に悪影響を及ぼすだけである(燃料噴射開始時期は燃焼性を確保できるように設定する必要がある)。
【0062】
その点、本実施形態では、ベース燃料噴射開始時期INJBSと排気バルブ閉弁時期との差に応じて遅角補正量VTCMPを求めるようにしたので、噴射燃料が排気ポートに到達する前に排気バルブ38の閉弁時期を迎えるのに必要最小限の遅角補正量VTCMPを設定することができ、燃焼性に及ぼす影響を最小限に抑えながら、噴射燃料のすり抜けを防止することができ、燃焼性確保と噴射燃料のすり抜け防止とを両立させることができる。
【0063】
尚、上記実施形態では、ベース燃料噴射開始時期INJBSと排気バルブ閉弁時期との差に応じて遅角補正量VTCMPを設定するようにしたが、実排気バルブタイミングVTacと目標排気バルブタイミングVTtgとの差に応じて遅角補正量VTCMPを設定するようにしても良い。実排気バルブタイミングVTacと目標排気バルブタイミングVTtgとの差が大きくなるほど、実排気バルブタイミングVTacが目標排気バルブタイミングVTtgに到達するまでの応答遅れ時間(噴射燃料のすり抜けが発生する可能性がある期間)が長くなるという関係があるため、実排気バルブタイミングVTacと目標排気バルブタイミングVTtgとの差に応じて燃料噴射時期の遅角補正量を設定すれば、実排気バルブタイミングVTacの応答遅れ時間に応じた適正な遅角補正量VTCMPを設定することができ、燃焼性に及ぼす影響を小さくしながら、噴射燃料のすり抜けを防止することができる。
【0064】
また、上記実施形態では、クランク角センサ24とカム角センサ42の出力信号に基づいて実排気バルブタイミングVTacを算出したが、油温、冷却水温、エンジン回転速度のうちの少なくとも1つに基づいて実排気バルブタイミングVTacを推定するようにしても良い。一般に、可変排気バルブタイミング機構40を搭載したシステムでは、エンジン11の動力でオイルポンプを駆動して作動油を可変排気バルブタイミング機構40に供給して可変排気バルブタイミング機構40を駆動するため、エンジン回転速度に応じて作動油の油圧が変化して、可変排気バルブタイミング機構40の応答性が変化する。また、作動油の油温に応じて作動油の粘度(流動性)が変化して、可変排気バルブタイミング機構40の応答性が変化する。従って、油温、冷却水温(油温の代用情報)、エンジン回転速度は、可変排気バルブタイミング機構40の応答性、つまり、目標排気バルブタイミングVTtgに対する実排気バルブタイミングVTacの応答遅れを評価するパラメータとなるため、油温、冷却水温、エンジン回転速度のうちの少なくとも1つを用いれば、目標排気バルブタイミングVTtgに対する実排気バルブタイミングVTacの応答遅れ時間を推定して、この応答遅れ時間と目標排気バルブタイミングVTtgとに基づいて実排気バルブタイミングVTacを推定することができる。
【0065】
また、排気バルブタイミングを可変する駆動源は、油圧に限定されず、電磁アクチュエータ等で排気バルブタイミングを可変する内燃機関にも本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態におけるエンジン制御システム全体の概略構成図
【図2】エンジン制御メインルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図3】燃焼モード決定ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図4】燃焼モード切換制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図5】空気系制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図6】燃料系制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図7】点火系制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図8】噴射時期補正ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図9】燃料噴射開始時期の遅角補正方法を説明する図
【図10】(a)は排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期が遅角された状態を示す図、(b)は排気バルブタイミングの進角動作の応答遅れを説明する示す図、(c)は排気バルブタイミングと燃料噴射開始時期が進角された状態を示す図
【図11】燃料噴射開始時期と排気バルブタイミングの挙動を示すタイムチャート
【符号の説明】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管、16…スロットルバルブ、21…燃料噴射弁、22…点火プラグ、24…クランク角センサ、25…排気管、30…ECU(排気バルブタイミング検出手段,噴射時期補正手段)、37…吸気バルブ、38…排気バルブ、39…可変吸気バルブタイミング機構、40…可変排気バルブタイミング機構、41,42…カム角センサ。

Claims (5)

  1. 筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁と、排気バルブのバルブタイミング(以下「排気バルブタイミング」という)を変化させる可変排気バルブタイミング機構とを備え、内燃機関の運転状態に応じて前記燃料噴射弁の燃料噴射時期と前記排気バルブタイミングとを制御する内燃機関の制御装置において、
    前記排気バルブタイミングを検出又は推定する排気バルブタイミング検出手段と、
    前記排気バルブタイミング検出手段で検出又は推定した実排気バルブタイミングに基づいて前記燃料噴射時期を遅角補正する噴射時期補正手段と
    を備えていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記噴射時期補正手段は、前記燃料噴射時期が前記実排気バルブタイミングに基づいて検出される実際の排気バルブ閉弁時期よりも進角しているときに、該燃料噴射時期を遅角補正することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記噴射時期補正手段は、前記燃料噴射時期と、前記実排気バルブタイミングに基づいて検出される実際の排気バルブ閉弁時期との差に応じて該燃料噴射時期の遅角補正量を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記噴射時期補正手段は、前記実排気バルブタイミングと目標排気バルブタイミングとの差に応じて前記燃料噴射時期の遅角補正量を設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記排気バルブタイミング検出手段は、油温、冷却水温、機関回転速度のうちの少なくとも1つに基づいて実排気バルブタイミングを推定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
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