JP2004214334A - チョークコイルを用いた回路およびチョークコイル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】チョークコイル31の巻線36はボビン32の筒状胴部33の外周に単層密巻きされている。巻線37は巻線36の上に重ねて単層密巻きされている。巻線46はボビン42の筒状胴部43の外周に単層密巻きされている。巻線47は巻線46の上に重ねて単層密巻きされている。巻線36,37,46,47は、同相のノイズ電流が流れたときに相互に磁束を強め合うように巻回されている。そして、巻線36,37は、差動伝送通信を行い、かつ、電源電流の往路となる一対の信号線に接続される。巻線46,47は、差動伝送通信を行い、かつ、電源電流の復路となる一対の信号線に接続される。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、チョークコイルを用いた回路、特に、通信と給電の機能を有した信号線にチョークコイルを挿入した回路およびチョークコイルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の差動伝送回路は通信を目的に利用されている。差動伝送ではペア線のそれぞれに逆相の信号を流し、どちらの信号線の電位が高いかでHigh/Lowを判断する。例えば、パソコン用LANの規格として現在最も一般的なのがEthernet(登録商標)であり、そのインターフェースにはパルストランスが取付けられる。しかし、ケーブルからのノイズ放射が大きい場合、パルストランスの前後にコモンモードチョークコイルが用いられる。
【0003】
コモンモードチョークコイルを用いる効果は、ペア線に逆相で流れる信号には影響せず、コモンモードノイズに対しては制限作用が働くことである。つまり、差動伝送では同じ大きさの電流が逆相でペア線のそれぞれに流れるため、差動信号電流により発生する磁束は磁性体コア内で打ち消し合う。一方、同相で通過しようとするノイズ電流により発生する磁束は磁性体コア内で互いに強め合う。
【0004】
ちなみに、差動伝送通信には100MHz以上の信号を用いることもあり、信号の周波数とノイズの周波数帯が重なることが多い。従って、ノーマルモードチョークコイルのようなローパスフィルタでは、ノイズを制御すると同時に信号も制御してしまうため、利用することが難しい。
【0005】
なお、従来より、電話回線へノイズが侵入するのを防止するコモンモードチョークコイルとして、特許文献1に記載のものが知られている。図9に示すようにこのコモンモードチョークコイル1はU字形状の二つのコア部材10,11からなる磁性体コアと、二つのボビン2,3と、四つの巻線4,5,6,7とを備えている。
【0006】
ボビン2,3は、その筒状胴部2a,3aが互いに平行になるように配置されている。そして、筒状胴部2a,3aの穴2b,3bに、コア部材10,11の脚部10b,11bがそれぞれ挿通されている。これらコア部材10,11は、その各々の両脚部10b,11bの先端面が穴2b,3b内で互いに衝き合わされて一つの閉磁路を形成している。
【0007】
巻線4,5は、ボビン2の筒状胴部2aに一層だけバイファイラ巻きされている。同様に、巻線6,7は、ボビン3の筒状胴部3aに一層だけバイファイラ巻きされている。そして、巻線4〜7は、同相の電流が流れたときに磁性体コア内で相互に磁束を強め合うように巻回されている。
【0008】
以上の構成からなるコモンモードチョークコイル1において、巻線4と5、または、巻線6と7が隣接する巻線部分は図9において左右方向の2箇所だけであり、隣接する巻回部分に発生する浮遊容量は、巻回数分だけ直列に接続される。
従って、浮遊容量を小さくでき、高帯域におけるノイズ侵入阻止能力を向上させることができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1のコモンモードチョークコイル1は、巻線4と5、または、巻線6と7を交互にボビン2,3の筒状胴部2a,3aに一層だけ巻回する、いわゆるバイファイラ巻き構造であるため、単位長さ当たりの巻線4〜7のターン数が少なく、ボビン2,3の大きさに比べて得られるインダクタンスが小さいという問題があった。また、このようなバイファイラ巻き構造にするためには、高い精度の巻線機が必要であるが、それでも巻線の乱れによる部品不良が発生してしまう。巻線の乱れは部品の高周波特性に大きく影響することになる。
【0010】
【特許文献1】
実開平4−4712号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、最近、米国電気電子技術者協会(Institute of Electrical and Electronic Engineers)では、IEEE802.3afという規格が提案されている。この規格は、従来の差動伝送回路に、給電回路が取り付けられた回路の規格であり、信号の送受信を行うLANケーブルなどの信号線を通して給電も行う規格である。この規格は、LANケーブルに接続されるIP電話や無線LANのアクセスポイント等の機器に適用される。そして、この規格の対象の信号線のノイズ対策にコモンモードチョークコイルを使用すると、電源電流により発生する磁束はコモンモードチョークコイルの磁性体コア内で強め合う向きに発生する。そのため、電源電流で発生する磁束により磁性体コアの磁束密度が飽和磁束密度に近くなり、コモンモードチョークコイルインダクタンスが低下してノイズ対策効果が低減する。
【0012】
磁束密度を大きくさせないための対策としては、磁性体コアの断面積を大きくする方法がある。しかし、磁性体コアサイズと同時に部品サイズが大きくなる。
また、磁性体コアは部品材料費の多くを占めているため、磁性体コアサイズが大きくなることは部品価格に大きく影響する。
【0013】
また、巻線のターン数を小さくすれば、磁性体コア内に発生する磁束が小さくなり、飽和しにくくなる。しかし、インダクタンスを小さくすることになり、ノイズ対策効果が低減する。
【0014】
そこで、本発明の目的は、小型でインダクタンスが大きいチョークコイルを用いた回路およびチョークコイルを提供することにある。特に、本発明の目的はIEEE802.3afの規格が適用される信号線回路に挿入することができる小型でインダクタンスが大きく高周波特性に優れたチョークコイルを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段および作用】
前記目的を達成するため、本発明に係るチョークコイルを用いた回路は、
(a)差動伝送通信を行い、かつ、電源電流の往路となる第1および第2信号線と、
(b)差動伝送通信を行い、かつ、電源電流の復路となる第3および第4信号線と、
(c)第1、第2、第3および第4巻線と、該第1、第2、第3および第4巻線を巻回した閉磁路を構成する磁性体コアとをもつチョークコイルとを備え、
(d)第1、第2、第3および第4信号線のそれぞれに第1、第2、第3および第4巻線を電気的に接続し、
(e)第1巻線および第2巻線は、同相のノイズ電流が流れたときに磁性体コア内に発生する磁束が相互に強め合うように同方向に巻回されるとともに、第3巻線および第4巻線は、同相のノイズ電流が流れたときに磁性体コア内に発生する磁束が相互に強め合うように同方向に巻回され、かつ、第1巻線および第2巻線と第3巻線および第4巻線とは、同相のノイズ電流が流れたときに磁性体コア内に発生する磁束が相互に強め合うように巻回されていること、
を特徴とする。
【0016】
以上の構成により、通信と給電の機能を有した信号線回路、より具体的にはIEEE802.3afの規格の信号線回路に適したチョークコイルを用いた回路が得られる。
【0017】
また、本発明に係るチョークコイルは、通信と給電の機能を有した信号線に挿入されるチョークコイルであって、
(f)筒状胴部を有する第1ボビンおよび第2ボビンと、
(g)第1ボビンの筒状胴部に設けられた単層密巻きの第1巻線および該第1巻線の上に重ねて設けられた単層密巻きの第2巻線と、
(h)第2ボビンの筒状胴部に設けられた単層密巻きの第3巻線および該第3巻線の上に重ねて設けられた単層密巻きの第4巻線と、
(i)第1ボビンおよび第2ボビンのそれぞれの筒状胴部の穴に脚部が挿通され、閉磁路を構成する磁性体コアとを備え、
(j)第1巻線および第2巻線は、同相のノイズ電流が流れたときに磁性体コア内に発生する磁束が相互に強め合うように同方向に巻回されるとともに、第3巻線および第4巻線は、同相のノイズ電流が流れたときに磁性体コア内に発生する磁束が相互に強め合うように同方向に巻回され、かつ、第1巻線および第2巻線と第3巻線および第4巻線とは、同相のノイズ電流が流れたときに磁性体コア内に発生する磁束が相互に強め合うように巻回されていること、
を特徴とする。第1ボビンと第2ボビンの間には、絶縁性樹脂材、磁粉入り絶縁性樹脂材、絶縁性樹脂で表面が被覆されているフェライト材、絶縁性樹脂で表面が被覆されている金属材、あるいは、金属材が配設されていてもよい。
【0018】
以上の構成により、第1〜第4巻線はそれぞれ単層密巻きされているため、単位長さ当たりのターン数が多くなり、ボビンの筒状胴部の長さが短くても、大きなインダクタンスが得られる。また、第1巻線と第2巻線、または、第3巻線と第4巻線が隣接する巻回部分は図2において上下方向の1箇所だけである。従って、隣接する巻回部分に発生する浮遊容量は巻回部分だけ並列に接続されるものの、その浮遊容量は小さい。
【0019】
また、本発明に係るチョークコイルは、第1ボビンおよび第2ボビンがそれぞれ筒状胴部の両端部に鍔部を有し、第1ボビンの鍔部の外周面と第2ボビンの鍔部の外周面が面接触もしくは嵌合していることを特徴とする。これにより、一方のボビンに加わった機械的ストレスが他方のボビンに分散されるとともに、部品全体の剛性が高まり、機械的ストレスによるインダクタンス変化が抑えられる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るチョークコイルを用いた回路およびチョークコイルの実施の形態について添付の図面を参照して説明する。
【0021】
コモンモードチョークコイルの外観を図1に示し、その水平断面図を図2に示し、電気等価回路図を図3に示す。コモンモードチョークコイル31は、U字形状を有する二つのコア部材50a,50bからなる磁性体コア50と、二つのボビン32,42と、四つの巻線36,37,46,47と、止め金具60とを備えている。
【0022】
ボビン32,42の各々は、筒状胴部33,43と、該筒状胴部33,43の両端部に設けた鍔部34,35、44,45とを有している。鍔部34,35,44,45にはそれぞれ一対のリード端子53a,54aと53b,54bと55a,56aと55b,56bとの八つの端子が植設されている。ボビン32,42は、その筒状胴部33,43が互いに平行になるように配置される。ボビン32,42は樹脂などで形成されている。
【0023】
巻線36はボビン32の筒状胴部33の外周に単層密巻きされている。巻線37は巻線36の上に重ねて単層密巻きされている。巻線36と37は、同相のノイズ電流が流れたときに相互に磁束を強め合うように同方向に等しいターン数で巻回されている。同様に、巻線46はボビン42の筒状胴部43の外周に単層密巻きされている。巻線47は巻線46の上に重ねて単層密巻きされている。巻線46と47は、同相のノイズ電流が流れたときに相互に磁束を強め合うように同方向に等しいターン数で巻回されている。さらに、巻線36および37と巻線46および47とは、同相のノイズ電流が流れたときに相互に磁束を強め合うように等しいターン数で巻回されている。
【0024】
巻線36の両終端はボビン32に設けられたリード端子53a,53bにそれぞれ電気的に接続され、巻線37の両終端はリード端子54a,54bにそれぞれ電気的に接続されている。同様に、巻線46の両終端はボビン42に設けられたリード端子55a,55bにそれぞれ電気的に接続され、巻線47の両終端はリード端子56a,56bにそれぞれ電気的に接続されている。
【0025】
磁性体コア50を構成しているコア部材50a,50bの各々は、腕部51a,51bと、該腕部51a,51bの両端から直角方向に延在した脚部52a,52bとを有している。そして、ボビン32,42の筒状胴部33,43の穴33a,43aには、コア部材50a,50bの脚部52a,52bがそれぞれ挿入されている。これらコア部材50a,50bは、その各々の両脚部52a,52bの先端面が穴33a,43a内で互いに衝き合わされて一つの閉磁路を形成している。
【0026】
コア部材50a,50bの材料には、Mn−Zn系もしくはNi−Zn系のフェライト、もしくは、両方が用いられる。Mn−Zn系フェライトは高透磁率を有するため、Ni−Zn系フェライトに比べて大きなインダクタンス(数十〜数百mH)を得ることができる。因みに、低周波帯域(数kHz)からのノイズ電圧を抑制するためには、数十〜数百mHのインダクタンスを必要とする。一方、Ni−Zn系フェライトは透磁率の周波数特性が優れているため、Mn−Zn系フェライトに比べて高い周波数(数十〜数百MHz)で大きなインダクタンス特性を得ることができる。また、Mn−Zn系とNi−Zn系のフェライトを両方用いて広範囲の周波数帯域で大きなインダクタンスを得ることができる構成もある。
【0027】
さらに、コア部材50a,50bの衝き合わせ面を堅固に密着させるためのコ字型止め金具60が嵌め込まれている。なお、止め金具60の替わりに、接着剤を用いてコア部材50a,50bを堅固に密着させてもよい。各部品32,42,50a,50b,60は、固定治具(図示せず)により固定したり、必要最低限の量の接着剤やワニス(図示せず)をボビン32,42とコア部材50a,50bとの間に塗布して固定したりする。
【0028】
以上の構成からなるコモンモードチョークコイル31は、巻線36,37,46,47がそれぞれ単層密巻きされているので、単位長さ当たりのターン数が多くなり、ボビン32,42の筒状胴部33,43の長さが短くても、大きなインダクタンスを得ることができる。また、巻線36と37,または、巻線46と47が隣接する巻回部分は、図2において上下方向の1箇所だけである。従って、隣接する巻回部分に発生する浮遊容量は抑えられる。この結果、高周波帯域でのノイズ除去性能の優れた4端子コモンモードチョークコイルを得ることができる。
【0029】
ここで、IEEE802.3afの規格では低周波領域から高周波領域までのノイズ除去が必要であり、通信信号の波形を形成する成分もノイズ対策が必要な周波数帯と重なっているため、コモンモードチョークコイル31には大きなインダクタンスと、低い漏れインダクタンスと、高周波特性とが要求される。また、通信線に対して低周波領域(30MHz以下)の雑音端子電圧規制が適用されても、コモンモードチョークコイル31は、低周波領域から高周波領域までのノイズ除去を行うのに適しており、低周波領域(30MHz以下)における雑音端子電圧に対しても、高周波領域(30MHz以上)における放射ノイズに対しても除去効果を有している。従って、コモンモードチョークコイル31はIEEE802.3afの規格に適したチョークコイルと言える。
【0030】
なお、ボビンの筒状胴部に設けた分割板で巻回領域を区切り、巻線を別々の巻回領域に巻き回す構造のコモンモードチョーク、いわゆる分割タイプのコモンモードチョークコイルの場合には、漏れ磁束が大きくなる。従って、小さい漏れインダクタンスが要求されるIEEE802.3afの規格には不適なコモンモードチョークと言える。
【0031】
図4は、このコモンモードチョークコイル31を、通信と給電の両方の機能をもたせることを目的とした規格IEEE802.3afが適用される信号線71〜74に接続した回路を示すものである。例えば、信号線71〜74は、信号の送受信を行うLANケーブルに電源電流を重畳させたものである。図4において、61A,61BはLANスイッチ側のパルストランス、62は給電源、65,66はコネクタ(規格RJ−45)、68は負荷、69A,69Bはデータ端末側のパルストランスである。
【0032】
次に、図5に示す概略図を用いてコモンモードチョークコイル31の作用効果を説明する。差動伝送通信では、2組の一対の巻線36と37、並びに、46と47のそれぞれに同じ大きさで逆相の差動信号電流が流れる。そのため、一対の巻線36,37のうち一方の巻線36に信号電流が流れることにより発生する磁性体コア50内の磁束φ1は、他方の巻線37に信号電流が流れることにより発生する磁性体コア50内の磁束φ1と同じ大きさだが、逆向きに発生する。従って、両方の磁束φ1とφ1は打ち消し合う。一対の巻線46,47に対しても、同様である。
【0033】
また、この磁束を打ち消し合う現象は、それぞれの一対の巻線36と37、並びに46と47で独立して生じている。従って、二つの異なる差動信号電流が2組の一対の巻線36,37、並びに巻線46,47によってそれぞれ同時に伝送される場合も、磁気結合により磁性体コア50内で干渉し合うことはない。
【0034】
また、巻線36と37を合わせて(並列接続して)電源電流の往路のラインとして使用し、巻線46と47を合わせて(並列接続して)電源電流の復路のラインとして使用する。この場合、巻線36,37を通電する電源電流の総和と、巻線46,47を通電する電源電流の総和とは大きさが等しくかつ位相が逆である。従って、巻線36,37によって磁性体コア50内に発生する磁束φ2と巻線46,47によって磁性体コア50内に発生する磁束φ2とは打ち消し合う。この結果、磁性体コア50が磁気飽和せず、小型の磁性体コア50であっても、巻線36,37,46,47のターン数を多くして、インダクタンスを大きくすることができる。
【0035】
こうして、コモンモードチョークコイルとしての性能を十分に発揮することができる。さらに、巻線36と37を合わせ、巻線46と47を合わせることで、ラインに流すことができる許容電流が大きくなる。
【0036】
一方、コモンモードチョークコイル31は、巻線36,37,46,47の各々にコモンモード(同相)ノイズ電流Icが流れると、巻線36,37,46,47により磁性体コア50内にそれぞれ同一方向に磁束φcが発生する。この磁束φcは磁性体コア50内を強め合いながら周回する。この結果、コモンモードノイズ電流Icに対するインピーダンスが大きくなり、コモンモードノイズ電流Icが抑制される。因みに、コモンモードノイズ電流Icはピークで数mA程度であり、電源電流は数百mA程度を想定している。
【0037】
また、図2の円S内に示すように本実施形態では、ボビン32の鍔部34,35の外周面とボビン42の鍔部44,45の外周面を面接触させている。これにより、一方のボビンに加わった機械的ストレスが他方のボビンに分散されるとともに、コモンモードチョークコイル31全体の剛性が高まる。従って、機械的ストレスが磁性体コア50に局部的にかかりにくくなり、コア部材50aと50bの衝き合わせ面がずれたり、ギャップが生じたりする心配がなくなる。この結果、磁性体コア50の実効透磁率が変化しにくく、安定したインダクタンス特性が得られる。さらに、鍔部34,35,44,45のサイズを変えることにより、巻線36,37と巻線46,47との間の距離を調整でき、電磁干渉および絶縁特性を調整することができる。
【0038】
この場合、鍔部34,35の外周面と鍔部44,45の外周面を単に面接触させるだけでなく、例えば図6の(A)〜(D)に示すように、鍔部34,35と鍔部44,45を互いに嵌合させるようにすれば、より一層の効果が得られる。
【0039】
ところで、一般に、コモンモードチョークコイルは、ノーマルモードの漏れインダクタンス成分を僅かながら有しているため、ノーマルモードノイズを除去する効果もある。しかしながら、信号(電源)ラインに、コモンモードノイズの他に、強いノーマルモードノイズも流れる場合には、コモンモードチョークコイルとノーマルモードチョークコイルの両方の部品を使用してノイズ対策する必要がある。また、ノーマルモードの漏れインダクタンス成分が比較的大きいコモンモードチョークコイルの場合には、漏れ磁束が周辺回路に悪影響を与えることがあるため、コモンモードチョークコイルの外周に磁気シールド材を設ける必要がある。
【0040】
そこで、図7に示すように、コモンモードチョークコイル31の隣接する二つのボビン32,42の間に、比透磁率が1以上(例えば2〜数十)の磁粉入り絶縁性樹脂材80を配設する。磁粉入り絶縁性樹脂材80は、ボビン32,42の鍔部34,35,44,45の外周面と面接触もしくは嵌合している。磁粉入り絶縁性樹脂材80は、例えば、80〜90wt%のNi−Zn系フェライトと、ナイロン系やポリフェニレンサルファイド系の樹脂とを混練したものからなる。
磁粉入り絶縁性樹脂材80は加工が容易で、それ自体が絶縁性を有するので、コア部材50a,50bとの間に絶縁性スペーサを挟み込む必要がない。
【0041】
磁粉入り絶縁性樹脂材80を設けることにより、ノーマルモードの磁路の実効透磁率が上がり、また、その実効透磁率の大きい磁路(磁粉入り絶縁性樹脂材80およびコア部材50a,50b)に磁束φが集中する。そのため、ノーマルモードインダクタンス成分が大きくなり、強いノーマルモードノイズも除去することができるコモンモードチョークコイル31が得られ、漏れ磁束による周辺回路への悪影響も抑制できる。
【0042】
ノーマルモードインダクタンス成分の値は、コア部材50a,50bと磁粉入り絶縁性樹脂材80との接触面積やギャップ、磁粉入り絶縁性樹脂材80の比透磁率などで決まる。コモンモードチョークコイル31でノーマルモードインダクタンス成分を大きくしていくと、コア部材50a,50bが飽和し易くなるため、使用するコア部材50a,50bの特性(飽和特性と比透磁率など)やそのコモンモードチョークコイル31に流れる電流により、どの程度までノーマルモードインダクタンス成分を大きくできるかが決まる。つまり、コモンモードチョークコイル31の使用保証範囲で、コア部材50a,50bが飽和しないように、磁粉入り絶縁性樹脂材80を利用してノーマルモードインダクタンス成分を大きくする必要がある。
【0043】
また、二つのボビン32,42の間に、磁粉入り絶縁性樹脂材80を配設することで、巻線37,47間の絶縁距離を長くすることができるとともに、コモンモードチョークコイル31の空間スペースを有効活用してサイズが大型化するのを防止する。
【0044】
なお、磁粉入り絶縁性樹脂材80の代わりに、絶縁性樹脂で表面が被覆されているフェライト材を使用したものであってもよい。このフェライト材(Mn−Zn系やNi−Zn系などの材料からなるもの)も、磁粉入り絶縁性樹脂材80と同様の作用効果を奏する。
【0045】
あるいは、磁粉入り絶縁性樹脂材80の代わりに、絶縁性樹脂材を使用したものであってもよい。これにより、絶縁性樹脂材の板厚で巻線36,37と巻線46,47との間の距離を調整でき、電磁干渉および絶縁特性を効率良く向上させることができる。
【0046】
また、磁粉入り絶縁性樹脂材80の代わりに、図8に示すような金属材90を使用したものであってもよい。この金属材90は接地用リード端子91を有しており、この接地用リード端子91をプリント回路基板のグランドパターンにはんだ付けする。これにより、金属材90は電磁シールド材として機能し、巻線36,37と巻線46,47との間の電磁干渉を抑制する。さらに、金属材90の表面を絶縁性樹脂で被覆することにより、絶縁特性も高めることができる。
【0047】
なお、本発明は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。例えば、磁性体コアとして口字型の一体コアや日字型の一体コアを使用し、ボビンとして2以上に分割させた歯車構造のボビンを使用してもよい。
【0048】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、小型でインダクタンスが大きいチョークコイルを用いた回路が得られる。また、本発明のチョークコイルは、第1〜第4巻線はそれぞれ単層密巻きされているため、単位長さ当たりのターン数が多くなり、ボビンの筒状胴部の長さが短くても、大きなインダクタンスが得られる。また、第1巻線と第2巻線、または、第3巻線と第4巻線が隣接する巻回部分に発生する浮遊容量は小さい。この結果、IEEE802.3afの規格が適用される信号線回路に挿入することができる小型でインダクタンスが大きく高周波特性に優れたチョークコイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るチョークコイルの一実施形態を示す外観斜視図。
【図2】図1に示したチョークコイルの水平断面図。
【図3】図1に示したチョークコイルの電気等価回路図。
【図4】図1に示したチョークコイルをIEEE802.3afが適用される信号線に接続した回路を示す回路図。
【図5】図4に示したチョークコイルの作用効果を説明するための概略図。
【図6】(A)〜(D)はそれぞれ、ボビンの鍔部の外周面同士の接合状態を示す一部拡大断面図。
【図7】本発明に係るチョークコイルの別の実施形態を示す水平断面図。
【図8】ボビンの間に配設される金属材を示す斜視図。
【図9】従来のチョークコイルを示す水平断面図。
【符号の説明】
31…コモンモードチョークコイル
32,42…ボビン
33,43…筒状胴部
33a,43a…穴
34,35,44,45…鍔部
36,37,46,47…巻線
50…磁性体コア
52a,52b…脚部
71〜74…信号線
80…磁粉入り絶縁性樹脂材
90…金属材
Claims (4)
- 差動伝送通信を行い、かつ、電源電流の往路となる第1および第2信号線と、
差動伝送通信を行い、かつ、電源電流の復路となる第3および第4信号線と、第1、第2、第3および第4巻線と、該第1、第2、第3および第4巻線を巻回した閉磁路を構成する磁性体コアとをもつチョークコイルとを備え、
前記第1、第2、第3および第4信号線のそれぞれに前記第1、第2、第3および第4巻線を電気的に接続し、
前記第1巻線および前記第2巻線は、同相のノイズ電流が流れたときに前記磁性体コア内に発生する磁束が相互に強め合うように同方向に巻回されるとともに、前記第3巻線および前記第4巻線は、同相のノイズ電流が流れたときに前記磁性体コア内に発生する磁束が相互に強め合うように同方向に巻回され、かつ、前記第1巻線および第2巻線と前記第3巻線および第4巻線とは、同相のノイズ電流が流れたときに前記磁性体コア内に発生する磁束が相互に強め合うように巻回されていること、
を特徴とするチョークコイルを用いた回路。 - 通信と給電の機能を有した信号線に挿入されるチョークコイルであって、
筒状胴部を有する第1ボビンおよび第2ボビンと、
前記第1ボビンの筒状胴部に設けられた単層密巻きの第1巻線および該第1巻線の上に重ねて設けられた単層密巻きの第2巻線と、
前記第2ボビンの筒状胴部に設けられた単層密巻きの第3巻線および該第3巻線の上に重ねて設けられた単層密巻きの第4巻線と、
前記第1ボビンおよび前記第2ボビンのそれぞれの筒状胴部の穴に脚部が挿通され、閉磁路を構成する磁性体コアとを備え、
前記第1巻線および前記第2巻線は、同相のノイズ電流が流れたときに前記磁性体コア内に発生する磁束が相互に強め合うように同方向に巻回されるとともに、前記第3巻線および前記第4巻線は、同相のノイズ電流が流れたときに前記磁性体コア内に発生する磁束が相互に強め合うように同方向に巻回され、かつ、前記第1巻線および第2巻線と前記第3巻線および第4巻線とは、同相のノイズ電流が流れたときに前記磁性体コア内に発生する磁束が相互に強め合うように巻回されていること、を特徴とするチョークコイル。 - 前記第1ボビンおよび前記第2ボビンがそれぞれ筒状胴部の両端部に鍔部を有し、第1ボビンの鍔部の外周面と第2ボビンの鍔部の外周面が面接触もしくは嵌合していることを特徴とする請求項2に記載のチョークコイル。
- 前記第1ボビンと前記第2ボビンの間に、絶縁性樹脂材、磁粉入り絶縁性樹脂材、絶縁性樹脂で表面が被覆されているフェライト材、絶縁性樹脂で表面が被覆されている金属材、および、金属材のいずれか一つが配設されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のチョークコイル。
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