JP2004211664A - 筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】エンジン運転状態に基づいて吸気ポート吹き返しスモーク量Smretを算出し(S108)、このSmretが許容量Aretを越えていれば(S110で「YES」)、圧縮行程燃料噴射時では燃料噴射時期を進角補正する(S114〜S118)。このことにより燃料噴射時に燃料噴射弁とピストン頂面との距離が長くなり、ピストン頂面への液体燃料の付着量が少なくなる。このため既燃ガス中のスモーク濃度が抑制され、この結果として、吹き返す既燃ガスに乗って吸気系に侵入する吸気ポート吹き返しスモーク量Smretも少なくなる。このため吸気系のスモーク汚損を効果的に抑制できる。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
筒内噴射型エンジンは燃焼室内に燃料を噴射するため、エンジンの運転状態やピストン位置によっては、燃料噴射弁から噴射された燃料がピストンの頂面に液状で到達して、ピストン頂面に液膜状に付着する場合がある。このような液体燃料の付着が生じるとピストン頂面にて燃料の不完全燃焼が生じて、既燃ガス(燃焼後のガスを意味する)中のスモーク量が増加するおそれがある。
【0003】
更に、スモーク量が増加すると次の吸気行程において吸気バルブが開弁した時に、既燃ガスの吹き返しの程度によっては、吸気系がスモークにより汚損されるおそれがある。
【0004】
このようなスモーク量の抑制や吸気系のスモーク汚損を防止する技術として、機関冷間時に吸気行程時での燃料噴射時期を遅角してスモーク発生を抑制する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−176562号公報(第5頁、図5)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術では、吸気行程での燃料噴射時期の補正に限られ、筒内噴射型エンジンの圧縮行程での燃料噴射によるスモーク量やスモーク汚損に関しては対策がなされていない。このためスモーク量やスモーク汚損の抑制に関しては、筒内噴射型エンジンの圧縮行程では燃料噴射に対していかなる手法が有効かは不明である。
【0007】
本発明は、筒内噴射型エンジンにおいて圧縮行程での燃料噴射に対してスモーク量やスモーク汚損を有効に抑制し、又、圧縮行程と吸気行程とのいずれの燃料噴射時においても適切に吸気系のスモーク汚損を抑制することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置は、燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置であって、エンジンの運転状態に基づいて燃焼室内から吸気系への既燃ガスの吹き返し量を算出する吹き返し量算出手段と、該吹き返し量算出手段にて算出された既燃ガスの吹き返し量に基づいて、圧縮行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を進角補正する燃料噴射時期補正手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
燃焼室内から吸気系への既燃ガスの吹き返し量が多くなれば、既燃ガス中に存在するスモークも吸気系への吹き返し量が多くなり、吸気系を汚損させるおそれがある。したがって燃料噴射時期補正手段が既燃ガスの吹き返し量に基づいて、圧縮行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を進角補正している。この圧縮行程時での燃料噴射時期の進角補正により、燃料噴射時に燃料噴射弁とピストン頂面との距離が長くなり、ピストン頂面への液体燃料の付着量が少なくなる。このため不完全燃焼する燃料量が少なくなることで既燃ガス中のスモーク濃度が抑制され、この結果として、吹き返す既燃ガスに乗って吸気系に侵入するスモーク量も少なくなる。このため、吸気系のスモーク汚損を抑制できる。
【0010】
請求項2に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項1において、前記燃料噴射時期補正手段は、前記吹き返し量算出手段にて算出された既燃ガスの吹き返し量に基づいて、圧縮行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を進角補正するとともに、吸気行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を遅角補正することを特徴とする。
【0011】
尚、燃料噴射時期補正手段は、圧縮行程噴射時の進角補正に加えて、更に吸気行程期間での燃料噴射については燃料噴射時期を遅角補正しても良い。このことにより、吸気行程の燃料噴射時にも燃料噴射弁とピストン頂面との距離が長くなり、ピストン頂面への液体燃料の付着量が少なくなる。このため不完全燃焼する燃料量が少なくなることで既燃ガス中のスモーク濃度が抑制され、この結果として、吹き返す既燃ガスに乗って吸気系に侵入するスモーク量も少なくなり、吸気系のスモーク汚損を抑制できる。
【0012】
したがって圧縮行程噴射時の進角補正と吸気行程噴射時の遅角補正とを共に実行することにより、更に効果的に吸気系のスモーク汚損を抑制できる。
請求項3に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置は、燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置であって、エンジンの運転状態に基づいて燃焼室内から吸気系への既燃ガスの吹き返し量を算出する吹き返し量算出手段と、該吹き返し量算出手段にて算出された既燃ガスの吹き返し量に基づいて、吸気行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を遅角補正する燃料噴射時期補正手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
燃料噴射時期補正手段は既燃ガスの吹き返し量に基づいて、吸気行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を遅角補正している。この吸気行程時での燃料噴射時期の遅角補正により、燃料噴射時に燃料噴射弁とピストン頂面との距離が長くなり、ピストン頂面への液体燃料の付着量が少なくなる。このため不完全燃焼する燃料量が少なくなることで既燃ガス中のスモーク濃度が抑制され、この結果として、吹き返す既燃ガスに乗って吸気系に侵入するスモーク量も少なくなり、吸気系のスモーク汚損を抑制できる。
【0014】
請求項4に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記燃料噴射時期補正手段は、エンジンの運転状態に基づいて既燃ガスのスモーク濃度を求め、該スモーク濃度と、前記吹き返し量算出手段にて算出された既燃ガスの吹き返し量とに基づいて燃料噴射時期を補正することを特徴とする。
【0015】
吸気系に吹き返すスモーク量は、既燃ガス中のスモーク濃度と既燃ガスの吹き返し量とから決定できる。このため燃料噴射時期補正手段は、スモーク濃度と既燃ガスの吹き返し量とに基づいて燃料噴射時期を補正することにより、吸気系の汚損に対して噴射時期補正により、より適切に対処できるようになり、効果的に吸気系のスモーク汚損を抑制できる。
【0016】
請求項5に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項4において、前記燃料噴射時期補正手段は、前記スモーク濃度と、前記吹き返し量算出手段にて算出された既燃ガスの吹き返し量とに基づいて吸気系へのスモークの吹き返し量を求め、該スモークの吹き返し量が基準範囲となるように燃料噴射時期を補正することを特徴とする。
【0017】
このようにスモークの吹き返し量が基準範囲となるように燃料噴射時期を補正することによっても、吸気系の汚損に対して噴射時期補正により、より適切に対処できるようになり効果的に吸気系のスモーク汚損を抑制できる。
【0018】
請求項6に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記吹き返し量算出手段は、バルブオーバラップ期間に応じて前記吹き返し量を算出することを特徴とする。
【0019】
バルブオーバラップ期間によっては既燃ガスの吸気系への流れ込み易さは異なる。このため吹き返し量の算出のためにバルブオーバラップ期間のパラメータを用いることにより、より正確に吸気系への既燃ガスの吹き返し量を算出でき、吸気系の汚損の程度をより適切に判断できる。
【0020】
請求項7に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記吹き返し量算出手段は、吸気圧に応じて前記吹き返し量を算出することを特徴とする。
【0021】
吸気圧の程度によっては既燃ガスの吸気系への流れ込み易さが異なる。このため吹き返し量の算出のために吸気圧のパラメータを用いることにより、より正確に吸気系への既燃ガスの吹き返し量を算出でき、吸気系の汚損の程度をより適切に判断できる。
【0022】
請求項8に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記吹き返し量算出手段は、排気バルブの閉弁時期及び吸気バルブの開弁時期に応じて前記吹き返し量を算出することを特徴とする。
【0023】
排気バルブの閉弁時期及び吸気バルブの開弁時期によりバルブオーバラップ期間の程度も決定され、排気バルブの閉弁時期によっても、吸気バルブの開弁時期によっても、既燃ガスの吸気系への流れ込み易さも異なる。このため吹き返し量の算出のために排気バルブの閉弁時期及び吸気バルブの開弁時期のパラメータを用いることにより、より正確に吸気系への既燃ガスの吹き返し量を算出でき、吸気系の汚損の程度をより適切に判断できる。
【0024】
請求項9に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記吹き返し量算出手段は、エンジン回転数に応じて前記吹き返し量を算出することを特徴とする。
【0025】
エンジン回転数によっては既燃ガスの吸気系への流れ込み易さは異なる。このため吹き返し量の算出のためにエンジン回転数のパラメータを用いることにより、より正確に吸気系への既燃ガスの吹き返し量を算出でき、吸気系の汚損の程度をより適切に判断できる。
【0026】
請求項10に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記吹き返し量算出手段は、バルブオーバラップ期間及び吸気圧に応じて前記吹き返し量を算出することを特徴とする。
【0027】
このように吹き返し量算出手段がバルブオーバラップ期間及び吸気圧に応じて吹き返し量を算出するようにすることにより、より正確に吸気系への既燃ガスの吹き返し量を算出でき、吸気系の汚損の程度をより適切に判断できる。
【0028】
請求項11に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記吹き返し量算出手段は、バルブオーバラップ期間、吸気圧及びエンジン回転数に応じて前記吹き返し量を算出することを特徴とする。
【0029】
このように吹き返し量算出手段がバルブオーバラップ期間、吸気圧及びエンジン回転数に応じて吹き返し量を算出するようにすることにより、より正確に吸気系への既燃ガスの吹き返し量を算出でき、吸気系の汚損の程度をより適切に判断できる。
【0030】
請求項12に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記吹き返し量算出手段は、排気バルブの閉弁時期、吸気バルブの開弁時期及び吸気圧に応じて前記吹き返し量を算出することを特徴とする。
【0031】
このように吹き返し量算出手段が排気バルブの閉弁時期、吸気バルブの開弁時期及び吸気圧に応じて吹き返し量を算出するようにすることにより、より正確に吸気系への既燃ガスの吹き返し量を算出でき、吸気系の汚損の程度をより適切に判断できる。
【0032】
請求項13に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記吹き返し量算出手段は、排気バルブの閉弁時期、吸気バルブの開弁時期、吸気圧及びエンジン回転数に応じて前記吹き返し量を算出することを特徴とする。
【0033】
このように吹き返し量算出手段が排気バルブの閉弁時期、吸気バルブの開弁時期、吸気圧及びエンジン回転数に応じて吹き返し量を算出するようにすることにより、より正確に吸気系への既燃ガスの吹き返し量を算出でき、吸気系の汚損の程度をより適切に判断できる。
【0034】
請求項14に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項6,8,10〜13のいずれかにおいて 前記吹き返し量算出手段は、バルブオーバラップ期間が長くなるほど前記吹き返し量を大きく算出することを特徴とする。
【0035】
バルブオーバラップ期間が長くなれば、排気系に流れ出した既燃ガスが再度、吸気系側に流入する程度が高まるので、吹き返し量算出手段は、バルブオーバラップ期間が長くなるほど吹き返し量を大きく算出する。このことにより、より適切に吸気系への既燃ガスの吹き返し量を算出でき、吸気系の汚損の程度をより適切に判断できる。
【0036】
請求項15に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項7,10〜13のいずれかにおいて 前記吹き返し量算出手段は、吸気圧が低くなるほど前記吹き返し量を大きく算出することを特徴とする。
【0037】
吸気圧が低くなれば、吸気系の圧力に対抗して既燃ガスが流入し易くなるので、吹き返し量算出手段は、吸気圧が低くなるほど吹き返し量を大きく算出する。このことにより、より適切に吸気系への既燃ガスの吹き返し量を算出でき、吸気系の汚損の程度をより適切に判断できる。
【0038】
請求項16に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項9,11,13のいずれかにおいて 前記吹き返し量算出手段は、エンジン回転数が低くなるほど前記吹き返し量を大きく算出することを特徴とする。
【0039】
エンジン回転数が低くなれば、吸気バルブが開弁している時間やバルブオーバラップ期間の時間的な長さが長くなり、既燃ガスが再度、吸気系側に流入する程度が高まるので、吹き返し量算出手段は、エンジン回転数が低くなるほど吹き返し量を大きく算出する。このことにより、より適切に吸気系への既燃ガスの吹き返し量を算出でき、吸気系の汚損の程度をより適切に判断できる。
【0040】
請求項17に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置は、燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置であって、エンジンの運転状態に基づいて既燃ガス中のスモーク量を表す物理量あるいは該スモーク量を反映する物理量を算出するスモーク物理量算出手段と、圧縮行程期間に燃料噴射時期が存在する場合には、前記スモーク物理量算出手段にて算出された物理量に基づいて燃料噴射時期を進角補正する燃料噴射時期補正手段とを備えたことを特徴とする。
【0041】
既燃ガス中のスモークはピストン頂面への液体燃料の付着によって生じる。圧縮行程でのピストン頂面位置は早期であればあるほど、燃料噴射弁から離れた位置に存在する。したがって燃料噴射時期補正手段は、既燃ガス中のスモーク量を表す物理量あるいは該スモーク量を反映する物理量に基づいて燃料噴射時期を進角補正することにより、燃料噴射時期においてピストン頂面を燃料噴射弁から離すことができ、ピストン頂面への液体燃料の付着を抑制できる。このことにより排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0042】
請求項18に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項17において、前記燃料噴射時期補正手段は、前記スモーク物理量算出手段にて算出された物理量に基づいて、圧縮行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を進角補正するとともに、吸気行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を遅角補正することを特徴とする。
【0043】
尚、燃料噴射時期補正手段は、前記物理量に基づく圧縮行程噴射時の進角補正に加えて、更に吸気行程期間での燃料噴射については前記物理量に基づいて燃料噴射時期を遅角補正しても良い。このことにより、吸気行程の燃料噴射時にも燃料噴射弁とピストン頂面との距離が長くなり、ピストン頂面への液体燃料の付着量が少なくなる。このように圧縮行程噴射時の進角補正と、吸気行程噴射時の遅角補正とを共に実行することにより、より効果的に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0044】
請求項19に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項17又は18において、前記スモーク物理量算出手段は、前記物理量として、エンジンの運転状態に基づいて燃料噴射に伴うピストン頂面への燃料付着量を算出することを特徴とする。
【0045】
このように物理量としてピストン頂面への燃料付着量を算出しても良い。このことにより適切にスモークの発生程度を判断できる物理量が得られ、この物理量に基づいて燃料噴射時期を補正することで、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0046】
請求項20に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項17〜19のいずれかにおいて、前記スモーク物理量算出手段は、燃料噴射圧力に応じて前記物理量を算出することを特徴とする。
【0047】
燃料噴射圧力は、燃料噴射速度に影響することから、ピストン頂面への液体燃料付着量に影響する。したがって燃料噴射圧力を前記物理量を算出するためのパラメータとすることにより、適切にスモークの発生程度を判断できる物理量が得られ、この物理量に基づいて燃料噴射時期を補正することで、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0048】
請求項21に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項20において、前記スモーク物理量算出手段は、燃料噴射圧力が高いほど前記物理量を大きく算出することを特徴とする。
【0049】
燃料噴射圧力が高いほど燃料噴射速度は速くなり、液体燃料の到達距離も長くなり、ピストン頂面に液体燃料が付着しやすくなって、スモーク濃度が高くなりやすくなる。したがって燃料噴射圧力が高いほど前記物理量を大きくすることにより、適切にスモークの発生程度を判断できる物理量が設定でき、この物理量に基づいて燃料噴射時期を補正することで、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0050】
請求項22に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項17〜19のいずれかにおいて、前記スモーク物理量算出手段は、エンジン回転数に応じて前記物理量を算出することを特徴とする。
【0051】
エンジン回転数は、ピストンの移動速度を表すことから、ピストン頂面への液体燃料付着量に影響する。したがってエンジン回転数を前記物理量を算出するためのパラメータとすることにより、適切にスモークの発生程度を判断できる物理量が得られ、この物理量に基づいて燃料噴射時期を補正することで、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0052】
請求項23に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項22において、前記スモーク物理量算出手段は、圧縮行程期間に噴射時期が存在する場合には、エンジン回転数が高いほど前記物理量を大きく算出することを特徴とする。
【0053】
圧縮行程噴射時には、ピストン頂面は燃料噴射弁に近づきつつあるので、エンジン回転数が高いほど迅速に近づいて、液体燃料が付着しやすくなる。このためスモーク物理量算出手段は、圧縮行程噴射時には、エンジン回転数が高いほど前記物理量を大きく算出することで、適切にスモークの発生程度を判断できる物理量が得られる。したがって、この物理量に基づいて燃料噴射時期を補正することで、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0054】
請求項24に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項22において、前記スモーク物理量算出手段は、吸気行程期間に噴射時期が存在する場合には、エンジン回転数が低いほど前記物理量を大きく算出することを特徴とする。
【0055】
吸気行程噴射時には、ピストン頂面は燃料噴射弁から遠ざかりつつあるので、エンジン回転数が低いほど遠ざかるのが遅くなり、液体燃料が付着しやすくなる。このためスモーク物理量算出手段は、吸気行程噴射時には、エンジン回転数が低いほど前記物理量を大きく算出することで、適切にスモークの発生程度を判断できる物理量が得られる。したがって、この物理量に基づいて燃料噴射時期を補正することで、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0056】
請求項25に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置は、請求項17〜19のいずれかにおいて、前記スモーク物理量算出手段は、エンジン温度に応じて前記物理量を算出することを特徴とする。
【0057】
エンジン温度は、液体燃料の気化に影響することから、ピストン頂面への液体燃料付着量に影響する。したがってエンジン温度を前記物理量を算出するためのパラメータとすることにより、適切にスモークの発生程度を判断できる物理量が得られ、この物理量に基づいて燃料噴射時期を補正することで、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0058】
請求項26に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項25において、前記スモーク物理量算出手段は、エンジン温度が低いほど前記物理量を大きく算出することを特徴とする。
【0059】
エンジン温度が低いほど液体燃料がピストン頂面に到達しやすく、かつピストン頂面での液体燃料は気化しにくくなるので、ピストン頂面への液体燃料は蓄積しやすくなる。このためスモーク物理量算出手段は、エンジン温度が低いほど前記物理量を大きく算出することで、適切にスモークの発生程度を判断できる物理量が得られる。したがって、この物理量に基づいて燃料噴射時期を補正することで、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0060】
請求項27に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置は、燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置であって、圧縮行程期間に燃料噴射時期が存在する場合には、エンジン温度に基づいて燃料噴射時期を進角補正する燃料噴射時期補正手段を備えたことを特徴とする。
【0061】
エンジン温度は、噴射された燃料の気化及びピストン頂面での液体燃料の気化に影響することからピストン頂面への液体燃料付着量に影響する。このことによりスモークの発生程度に影響する。したがって燃料噴射時期補正手段は、圧縮行程噴射時にエンジン温度に基づいて燃料噴射時期を進角補正することにより、燃料噴射時の燃料噴射弁とピストン頂面との距離を長くしている。このことから、ピストン頂面への液体燃料付着量が抑制されて、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0062】
請求項28に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項27において、前記燃料噴射時期補正手段は、エンジン温度に基づいて、圧縮行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を進角補正するとともに、吸気行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を遅角補正することを特徴とする。
【0063】
尚、燃料噴射時期補正手段は、圧縮行程噴射時の進角補正に加えて、更に吸気行程期間での燃料噴射については燃料噴射時期を遅角補正しても良い。このことにより、吸気行程の燃料噴射時にも燃料噴射弁とピストン頂面との距離が調節でき、ピストン頂面への液体燃料の付着量を少なくできる。このことから圧縮行程噴射時の進角補正と吸気行程噴射時の遅角補正とを共に実行することにより、更に効果的にピストン頂面への液体燃料付着量が抑制されて、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0064】
請求項29に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置は、燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置であって、圧縮行程期間に燃料噴射時期が存在する場合には、エンジン温度及びエンジン回転数に基づいて燃料噴射時期を進角補正する燃料噴射時期補正手段を備えたことを特徴とする。
【0065】
エンジン回転数はピストンの移動速度に影響するので、ピストン頂面への液体燃料付着量に影響する。このことから燃料噴射時期補正手段は、圧縮行程噴射時にはエンジン温度とエンジン回転数とに基づいて燃料噴射時期を進角補正している。このことによりピストン頂面への液体燃料付着量が抑制されて、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0066】
請求項30に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項29において、前記燃料噴射時期補正手段は、エンジン温度及びエンジン回転数に基づいて、圧縮行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を進角補正するとともに、吸気行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を遅角補正することを特徴とする。
【0067】
尚、エンジン温度とエンジン回転数とに基づく場合も、燃料噴射時期補正手段は、圧縮行程噴射時の進角補正に加えて、更に吸気行程期間での燃料噴射について燃料噴射時期を遅角補正しても良い。このことにより、吸気行程の燃料噴射時にも燃料噴射弁とピストン頂面との距離が調節でき、ピストン頂面への液体燃料の付着量を少なくできる。このことから圧縮行程噴射時の進角補正と吸気行程噴射時の遅角補正とを共に実行することにより、更に効果的にピストン頂面への液体燃料付着量が抑制されて、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0068】
請求項31に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項27〜30のいずれかにおいて、前記燃料噴射時期補正手段は、エンジン温度が低いほど燃料噴射時期を大きく補正することを特徴とする。
【0069】
エンジン温度が低いほど噴射後に燃料は気化しにくく、更にピストン頂面での液体燃料も気化しにくいので、ピストン頂面への液体燃料は蓄積しやすくなり、スモークを発生しやすくなる。このため燃料噴射時期補正手段は、エンジン温度が低いほど燃料噴射時期を大きく補正することで、燃料噴射タイミングで燃料噴射弁とピストン頂面とを離している。このことにより燃料付着量が減少できるので、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0070】
請求項32に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項27〜31のいずれかにおいて、前記燃料噴射時期補正手段は、圧縮行程期間に噴射時期が存在する場合には、エンジン回転数が高いほど燃料噴射時期を大きく進角補正することを特徴とする。
【0071】
圧縮行程噴射時には、ピストン頂面は燃料噴射弁に近づきつつあるので、エンジン回転数が高いほど迅速に近づいて、液体燃料が付着しやすくなる。このため燃料噴射時期補正手段は、圧縮行程噴射時には、エンジン回転数が高いほど燃料噴射時期を大きく進角補正することで、燃料付着量が減少できるので、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0072】
請求項33に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項27〜31のいずれかにおいて、前記燃料噴射時期補正手段は、吸気行程期間に噴射時期が存在する場合には、エンジン回転数が低いほど燃料噴射時期を大きく遅角補正することを特徴とする。
【0073】
吸気行程噴射時には、ピストン頂面は燃料噴射弁から遠ざかりつつあるので、エンジン回転数が低いほど遠ざかるのが遅くなり、液体燃料が付着しやすくなる。このため燃料噴射時期補正手段は、吸気行程噴射時には、エンジン回転数が低いほど燃料噴射時期を大きく遅角補正することで、燃料付着量が減少できるので、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0074】
請求項34に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置は、エンジンの運転状態に応じてバルブタイミングを調節する可変動弁系を備えるとともに燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置であって、バルブオーバラップ期間を検出するバルブオーバラップ検出手段と、吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態か否かを判定するスモーク吹き返し状態判定手段と、圧縮行程期間に燃料噴射時期が存在する時に、前記スモーク吹き返し状態判定手段にて吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態であると判定された場合には、前記バルブオーバラップ検出手段にて検出されたバルブオーバラップ期間に基づいて燃料噴射時期を進角補正する燃料噴射時期補正手段とを備えたことを特徴とする。
【0075】
可変動弁系を備えることによりエンジンの運転状態に応じてバルブタイミングを調節している場合においては、バルブオーバラップ期間が長くても常に吸気系のスモーク汚損のおそれがあるとは限らず、スモークの吹き返し量が多い場合にバルブオーバラップ期間による影響が生じる。したがって燃料噴射時期補正手段は、圧縮行程噴射時に、スモーク吹き返し状態判定手段にて吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態であると判定された場合にはバルブオーバラップ期間に基づいて燃料噴射時期を進角補正している。このことにより的確に吸気系の汚損を抑制できるとともに、限定された条件下に吸気系の汚損抑制のための進角補正をしているので、エンジン性能を高い状態に維持し易くなる。
【0076】
請求項35に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項34において、前記燃料噴射時期補正手段は、前記スモーク吹き返し状態判定手段にて吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態であると判定された場合には、前記バルブオーバラップ検出手段にて検出されたバルブオーバラップ期間に基づいて、圧縮行程期間に噴射時期が存在する時には燃料噴射時期を進角補正するとともに、吸気行程期間に噴射時期が存在する時には燃料噴射時期を遅角補正することを特徴とする。
【0077】
尚、燃料噴射時期補正手段は、前記圧縮行程噴射時の進角補正に加えて、更に吸気行程噴射時は、吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態であると判定された場合にバルブオーバラップ期間に基づいて燃料噴射時期を遅角補正している。このことにより吸気行程噴射時も的確に吸気系の汚損を抑制できるとともに、限定された条件下に吸気系の汚損抑制のための遅角補正をしているので、エンジン性能を高い状態に維持し易くなる。
【0078】
請求項36に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置は、エンジンの運転状態に応じてバルブタイミングを調節する可変動弁系を備えるとともに燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置であって、バルブオーバラップ期間を検出するバルブオーバラップ検出手段と、吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態か否かを判定するスモーク吹き返し状態判定手段と、吸気行程期間に燃料噴射時期が存在する時に、前記スモーク吹き返し状態判定手段にて吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態であると判定された場合には、前記バルブオーバラップ検出手段にて検出されたバルブオーバラップ期間に基づいて燃料噴射時期を遅角補正する燃料噴射時期補正手段とを備えたことを特徴とする。
【0079】
このように燃料噴射時期補正手段は、吸気行程噴射時に、スモーク吹き返し状態判定手段にて吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態であると判定された場合にはバルブオーバラップ期間に基づいて燃料噴射時期を遅角補正するようにしても良い。このことにより吸気行程噴射時に的確に吸気系の汚損を抑制できるとともに、限定された条件下に吸気系の汚損抑制のための遅角補正をしているので、エンジン性能を高い状態に維持し易くなる。
【0080】
請求項37に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項34〜36のいずれかにおいて 前記燃料噴射時期補正手段は、バルブオーバラップ期間が長くなるほど燃料噴射時期を大きく補正することを特徴とする。
【0081】
吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態では、バルブオーバラップ期間が長くなるほど、吸気系への既燃ガスの吹き返し量が大きくなり、連動して既燃ガス中のスモークの吹き返し量も多くなる。したがって燃料噴射時期補正手段はバルブオーバラップ期間が長くなるほど燃料噴射時期を大きく補正することで、的確に吸気系の汚損を抑制できる。
【0082】
請求項38に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項34〜37のいずれかにおいて、前記スモーク吹き返し状態判定手段は、低回転、低吸気圧及び低エンジン温度の内の1つ又は2つ以上の条件が成立した場合に、吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態であると判定することを特徴とする。
【0083】
エンジン回転数が低くなれば、吸気バルブが開弁している時間やバルブオーバラップ期間の時間的な長さが長くなり、既燃ガスが再度、吸気系側に流入する程度が高まるので吹き返し量が多くなる。吸気圧が低くなれば、吸気系の圧力に対抗して既燃ガスが流入し易くなるので吹き返し量が多くなる。そしてエンジン温度が低くなれば噴射された液体燃料やピストン頂面での液体燃料の気化が遅れ、ピストン頂面への液体燃料付着量が増加して、スモーク濃度が大きくなる。これら低回転、低吸気圧及び低エンジン温度のいかずか1つ又は2つ以上の条件が成立した場合には、スモークの吹き返し量としては悪い条件となる。このような条件下において燃料噴射時期補正手段がバルブオーバラップ期間に基づいて燃料噴射時期を補正することにより、的確に吸気系の汚損を抑制できるとともに、限定された条件下に吸気系の汚損抑制のための噴射時期補正をしているので、エンジン性能を高い状態に維持し易くなる。
【0084】
請求項39に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項38において、前記燃料噴射時期補正手段は、前記スモーク吹き返し状態判定手段にて低エンジン温度の条件成立により吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態であると判定されたことで燃料噴射時期を補正した時には、エンジン温度の上昇に応じて燃料噴射時期に対する補正を徐々に小さくすることを特徴とする。
【0085】
低エンジン温度の条件が成立した場合に吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態であると判定してバルブオーバラップ期間に基づいて燃料噴射時期を補正した場合には、燃料噴射時期補正手段は、エンジン温度の上昇に応じて燃料噴射時期に対する補正を徐々に小さくするようにしても良い。このことにより燃料噴射時期を通常の燃料噴射時期に戻す際のエンジンに生じるショックを防止できる。
【0086】
請求項40に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置では、請求項38又は39において、前記燃料噴射時期補正手段は、エンジン温度の上昇に応じてバルブオーバラップ期間が増加した場合には該バルブオーバラップ期間の増加に応じて前記補正を大きくする処理を加えることを特徴とする。
【0087】
尚、エンジン制御によってはエンジン温度の上昇に応じてバルブオーバラップ期間を増加する場合がある。このようなエンジン温度上昇に伴うバルブオーバラップ期間の増加が行われた場合には、既燃ガスの吹き返しが大量になることから、このバルブオーバラップ期間の増加に応じて吸気系の汚損抑制のための噴射時期補正を大きくする処理を加えても良い。このことにより的確に吸気系の汚損を抑制できる。
【0088】
請求項41に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置は、請求項1〜16のいずれかにおける前記吹き返し量算出手段と前記燃料噴射時期補正手段との処理を予め実行することによって得られているエンジンの運転状態をパラメータとする燃料噴射時期の補正値あるいは補正後の燃料噴射時期のマップを用いて、筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期を制御することを特徴とする。
【0089】
このように予め前記吹き返し量算出手段と前記燃料噴射時期補正手段との処理を実行することにより得られている上記マップを用いることで、筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期を制御する際には、請求項1〜16のいずれかの作用効果と共に燃料噴射時期制御装置に対する負荷を抑制できる。このため演算装置に安価なものを利用できたり、処理を迅速化することができる。
【0090】
請求項42に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置は、請求項17〜26のいずれかにおける前記スモーク物理量算出手段と前記燃料噴射時期補正手段との処理を予め実行することによって得られているエンジンの運転状態をパラメータとする燃料噴射時期の補正値あるいは補正後の燃料噴射時期のマップを用いて、筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期を制御することを特徴とする。
【0091】
このように予め前記スモーク物理量算出手段と前記燃料噴射時期補正手段との処理を実行することにより得られている上記マップを用いることで、筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期を制御する際には、請求項17〜26のいずれかの作用効果と共に燃料噴射時期制御装置に対する負荷を抑制できる。このため演算装置に安価なものを利用できたり、処理を迅速化することができる。
【0092】
請求項43に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置は、請求項27〜33のいずれかにおける前記燃料噴射時期補正手段の処理を予め実行することによって得られているエンジンの運転状態をパラメータとする燃料噴射時期の補正値あるいは補正後の燃料噴射時期のマップを用いて、筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期を制御することを特徴とする。
【0093】
このように予め前記燃料噴射時期補正手段の処理を実行することにより得られている上記マップを用いることで、筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期を制御する際には、請求項27〜33のいずれかの作用効果と共に燃料噴射時期制御装置に対する負荷を抑制できる。このため演算装置に安価なものを利用できたり、処理を迅速化することができる。
【0094】
請求項44に記載の筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置は、請求項34〜40のいずれかにおける前記バルブオーバラップ検出手段、前記スモーク吹き返し状態判定手段及び前記燃料噴射時期補正手段の処理を予め実行することによって得られているエンジンの運転状態をパラメータとする燃料噴射時期の補正値あるいは補正後の燃料噴射時期のマップを用いて、筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期を制御することを特徴とする。
【0095】
このように予め前記バルブオーバラップ検出手段、前記スモーク吹き返し状態判定手段及び前記燃料噴射時期補正手段の処理を実行することにより得られている上記マップを用いることで、筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期を制御する際には、請求項34〜40のいずれかの作用効果を生じる。そしてこれと共に燃料噴射時期制御装置に対する負荷を抑制できる。このため演算装置に安価なものを利用できたり、処理を迅速化することができる。
【0096】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1は、車両に搭載された筒内噴射式エンジンに相当するガソリンエンジン(以下、「エンジン」と略す)2、及び燃料噴射制御装置に相当する電子制御ユニット(以下、「ECU」と称す)4の概略系統図を示している。エンジン2は4気筒の内燃機関であるが、図1では1気筒のみを縦断面図にて示している。更に、各気筒には吸気バルブ2aと排気バルブ2bとはそれぞれ2つ設けられた4バルブエンジンである。尚、気筒数は6気筒でも8気筒でも良く、更に2バルブエンジンでも5バルブエンジンでも良い。
【0097】
エンジン2の出力は変速機を介して最終的に車輪に走行駆動力として伝達される。エンジン2には、燃焼室10内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁12と、この噴射された燃料に点火する点火プラグ14とがそれぞれ設けられている。燃焼室10に接続している吸気ポート16は吸気バルブ2aが駆動されることにより開閉される。吸気ポート16に接続された吸気通路20の途中にはサージタンク22が設けられ、サージタンク22の上流側にはモータ24によって開度が調節されるスロットルバルブ26が設けられている。このスロットルバルブ26の開度(スロットル開度TA)により吸気量が調節される。スロットル開度TAはスロットル開度センサ28により検出され、エンジン2の吸入空気量Gaは吸気通路20に設けられた吸入空気量センサ30により検出されて、ECU4に読み込まれている。
【0098】
燃焼室10に接続している排気ポート32は排気バルブ2bが駆動されることにより開閉される。排気ポート32に接続された排気通路36の途中には三元触媒やNOx吸蔵還元触媒等の排気浄化触媒38が配置されている。
【0099】
燃料噴射弁12は、高圧燃料経路を構成しているデリバリパイプに接続し、デリバリパイプを介して高圧燃料ポンプから高圧燃料を供給されている。デリバリパイプにおいては、燃料圧力センサ40により検出される燃料圧力Pf(燃料噴射圧力に相当)がエンジン運転状態に応じた目標燃料圧力となるように、ECU4により、高圧燃料ポンプからデリバリパイプ側への吐出量を調節することにより行われている。
【0100】
ここで吸気バルブ2a及び排気バルブ2bは可変動弁系の吸排気バルブとして構成されている。すなわち吸気カム42は吸気用可変動弁機構43を介して吸気バルブ2aを開閉駆動する。排気カム44は排気用可変動弁機構45を介して排気バルブ2bを開閉駆動する。各可変動弁機構43,45は、例えば特開2001−263015号公報に記載の可変動弁機構を用いることができるが、これ以外の構成の可変動弁機構を用いても良い。各可変動弁機構43,45はECU4からの指令により吸気バルブ2a及び排気バルブ2bのバルブタイミングを変更することができる。このことにより吸気バルブ2aと排気バルブ2bとの開弁時期の重なりであるバルブオーバラップ期間の長さやクランク角位相位置を調節することが可能である。尚、各可変動弁機構43,45は、コントロールシャフトのストローク量にてバルブタイミングが調節される構成であり、このストローク量を各ストロークセンサ43a,45aが検出してECU4に出力している。
【0101】
ECU4はCPU、ROM、RAMなどを備えたデジタルコンピュータを中心として構成されているエンジン制御回路であり、上述したスロットル開度センサ28、吸入空気量センサ30、燃料圧力センサ40、ストロークセンサ43a,45a以外にも各種センサ類より信号を入力している。すなわちアクセルペダル46の踏み込み量(アクセル開度ACCP)を検出するアクセル開度センサ48、クランクシャフト回転からエンジン回転数NEを検出するエンジン回転数センサ50、吸気カムシャフト回転から基準クランク角を決定する基準クランク角センサ52より信号を入力している。更に、エンジン冷却水温THWを検出する冷却水温センサ54、排気通路において排気成分から混合気の空燃比を検出する空燃比センサ56、及び走行距離メータ58より信号を入力している。
【0102】
ECU4は、上述した各センサ類からの検出内容に基づいて、エンジン2の燃料噴射時期、燃料噴射量、スロットル開度、吸排気バルブ2a,2bのバルブタイミング等を適宜制御する。このことにより、燃焼形態が、圧縮行程噴射による成層燃焼と、吸気行程噴射による均質燃焼との間で切り換えられる。本実施の形態1では、例えば、始動時には吸気行程噴射が実行され、始動後にエンジン回転数NEが安定化すると圧縮行程噴射に切り換え、その後、エンジン回転数NEと負荷率eklqとのマップに基づいて燃焼形態が決定される。ここで負荷率eklqは、アクセル開度ACCP及びエンジン回転数NEに基づいて、最大機関負荷に対する現在の負荷の割合を示すものとして、例えばアクセル開度ACCPとエンジン回転数NEとをパラメータとするマップから求められる値である。
【0103】
又、始動時及び冷間時には、吸排気バルブ2a,2bのバルブタイミング制御により、バルブオーバラップ期間が「0」(吸排気バルブ2a,2bの開弁時期が重複しない状態)あるいは「0」に近い小さいクランク幅にされる。そして暖機後のエンジン運転においては、エンジン回転数NEと負荷率eklqとのマップに基づいてバルブオーバラップ期間が決定される。
【0104】
次にECU4により実行される制御の内、燃料噴射時期制御処理について説明する。本処理のフローチャートを図2に示す。本処理は気筒数に対応したクランク角周期、ここでは4気筒であるので180°CA(CA:クランク角)周期で繰り返し実行される処理である。尚、個々の処理内容に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
【0105】
本処理が開始されると、まず現在検出されている吸入空気量Ga、エンジン回転数NE、負荷率eklq、ストロークセンサ43a,45aの検出値から算出されている吸気バルブ2a及び排気バルブ2bのバルブタイミングが、ECU4内に設けられたRAMの作業領域に読み込まれる(S102)。そして負荷率eklqとエンジン回転数NEとに基づいて、予め実験により作成してある基本燃料噴射時期マップにより基本燃料噴射時期θainjを算出する(S104)。
【0106】
次に吸入空気量Gaとエンジン回転数NEとから、吸気ポート16における吸気圧Piを算出する(S106)。吸気圧Piの算出は演算式から求めても良く、又、予め実験により作成してあるマップにより求めても良い。
【0107】
次に吸気ポート吹き返しスモーク量Smret(mg)を算出する(S108)。この吸気ポート吹き返しスモーク量Smretは燃焼室10側から吸気系へ吹き返されるスモーク量を表している。吸気ポート吹き返しスモーク量Smretは次のように算出される。
【0108】
まず吸気ポート吹き返し既燃ガス量Exret(mg)が、吸気バルブ2aの開弁タイミングと排気バルブ2bの閉弁タイミングとから算出されるクランク角幅にて表されるバルブオーバラップ期間Lovr、吸気圧Pi及びエンジン回転数NEに基づいて、予め実験により作成してあるマップにより求められる。
【0109】
この吸気ポート吹き返し既燃ガス量Exretを求めるマップは、バルブオーバラップ期間Lovrについては長くなるほど吸気ポート吹き返し既燃ガス量Exretが大きくなるように設定されている。バルブオーバラップ期間Lovrが長くなれば、排気系(排気ポート32や排気通路36)に流れ出した既燃ガスが燃焼室10を介して再度、吸気系(吸気ポート16や吸気通路20)側に流入する程度が高まるからである。
【0110】
吸気圧Piについては低くなるほど吸気ポート吹き返し既燃ガス量Exretが大きくなるように設定されている。吸気圧Piが低くなれば、燃焼室10側から吸気系に既燃ガスが吸い込まれやすくなるからである。
【0111】
エンジン回転数NEについては低くなるほど吸気ポート吹き返し既燃ガス量Exretが大きくなるように設定されている。エンジン回転数NEが低くなれば、吸気バルブ2aが開弁している時間やバルブオーバラップ期間Lovrが時間的に長くなり、既燃ガスが再度、吸気系側に流入する程度が高まるからである。
【0112】
次にエンジン2の運転状態に応じて発生するスモーク濃度Smdty(重量%)を算出する。スモーク濃度Smdtyは、ここでは、負荷率eklq、エンジン回転数NE、吸気行程噴射か圧縮行程噴射かの燃料噴射モードに基づいて、予め実験にて作成されているマップにより算出される。尚、後述する実施の形態において算出されるようなピストン頂面6aへの液体燃料付着量もパラメータに含めても良い。
【0113】
そして、吸気ポート吹き返し既燃ガス量Exretとスモーク濃度Smdtyとの積により、吸気ポート吹き返しスモーク量Smretを求める。
次に吸気ポート吹き返しスモーク量Smretが吸気ポート吹き返しスモーク許容量Aretよりも大きいか否かが判定される(S110)。Smret≦Aretであれば(S110で「NO」)、燃料噴射時期θinjにステップS104にて求められている基本燃料噴射時期θainjを設定する(S112)。そしてこの燃料噴射時期θinjに基づいて実際の燃料噴射時期の設定がなされ(S118)、一旦本処理を終了する。尚、燃料噴射時期θinjは基準クランク角に対する進角値として設定される。このため、燃料噴射時期θinjが大きくなると、これに対応して実際の燃料噴射時期も進角されることになる。
【0114】
一方、Smret>Aretであれば(S110で「YES」)、吸気ポート吹き返しスモーク量を抑制するために、燃料噴射モード及び吸気ポート吹き返しスモーク量Smretの値に応じた補正値θsmが算出される(S114)。尚、補正値θsmは進角補正値として表され、進角側に補正する場合にはθsm>0、遅角側に補正する場合にはθsm<0となる。したがって進角側に補正する場合も遅角側に補正する場合も、補正値θsmの絶対値が大きくなれば、大きく補正されることになる。
【0115】
ここで図3に燃料噴射時期とスモーク濃度Smdtyとの関係を示す。すなわちスモーク濃度Smdtyが小さい燃料噴射時期領域が存在し、この燃料噴射時期領域を吸気行程において進角側に外れた場合、あるいは圧縮行程において遅角側に外れた場合には、スモーク濃度Smdtyは急激に上昇する。これは吸気行程での燃料噴射ではピストン頂面6aが燃料噴射弁12から離れる方向に移動しているので、燃料噴射時期を進角させるとピストン頂面6aが燃料噴射弁12に近い位置で燃料が噴射される。このことにより液体燃料がピストン頂面6aに付着しやすくなり不完全燃焼によりスモークを生じやすくなるからである。又、圧縮行程での燃料噴射ではピストン頂面6aが燃料噴射弁12に近づく方向に移動しているので、燃料噴射時期を遅角させるとピストン頂面6aが燃料噴射弁12に近い位置で燃料が噴射される。このことにより液体燃料がピストン頂面6aに付着しやすくなり不完全燃焼によりスモークを生じやすくなるからである。
【0116】
燃料噴射モードが吸気行程噴射である場合には、図3において、Smret>Aretであるスモーク濃度Smdty=Saであるとすると、このスモーク濃度Saに対応する現在の燃料噴射時期θsaは、Smret=Aretとなる燃料噴射時期θaxよりもΔθax分進角側にある。したがって、吸気行程噴射時では、吸気ポート吹き返しスモーク量Smretを小さくするためには、補正値θsmには「−Δθax」の値あるいは「−Δθax」よりも更に小さい値(絶対値として大きい値)が設定されることになる。
【0117】
燃料噴射モードが圧縮行程噴射である場合には、図3において、Smret>Aretであるスモーク濃度Smdty=Sbであるとすると、このスモーク濃度Sbに対応する現在の燃料噴射時期θsbは、Smret=Aretとなる燃料噴射時期θbxよりもΔθbx分遅角側にある。したがって、圧縮行程噴射時では、吸気ポート吹き返しスモーク量Smretを小さくするためには、補正値θsmには「Δθbx」の値あるいは「Δθbx」よりも更に大きい値が設定されることになる。
【0118】
このようにして補正値θsmが設定されると、次式1により燃料噴射時期θinjが設定される(S116)。
【0119】
【数1】
θinj ← θainj + θsm … [式1]
上記式1により、吸気行程噴射時にはθsm≦−Δθaxであるので、燃料噴射時期θinjは基本燃料噴射時期θainjよりも小さくなる。このためステップS118にて燃料噴射時期θinjに基づいて設定される実際の燃料噴射時期は基本燃料噴射時期θainjよりも遅角されて、Smdty≦「Aret/Exret」となる。この結果、実際の吸気ポート吹き返しスモーク量は吸気ポート吹き返しスモーク許容量Aret以下に抑制される。
【0120】
又、圧縮行程噴射時にはθsm≧Δθbxであるので、燃料噴射時期θinjは基本燃料噴射時期θainjよりも大きくなる。このためステップS118にて燃料噴射時期θinjに基づいて設定される実際の燃料噴射時期は基本燃料噴射時期θainjよりも進角されて、Smdty≦「Aret/Exret」となる。この結果、実際の吸気ポート吹き返しスモーク量は吸気ポート吹き返しスモーク許容量Aret以下に抑制される。
【0121】
上述した構成において、燃料噴射時期制御処理(図2)が吹き返し量算出手段及び燃料噴射時期補正手段としての処理に相当する。
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
【0122】
(イ).燃焼室10内から吸気系への既燃ガスの吹き返し量が多くなれば、既燃ガス中に存在するスモークについても吸気系への吹き返し量が多くなり、吸気系を汚損させるおそれがある。したがって燃料噴射時期制御処理(図2)では、吸気ポート吹き返し既燃ガス量Exretに基づいて吸気ポート吹き返しスモーク量Smretを算出している。実際には吸気ポート吹き返し既燃ガス量Exretとスモーク濃度Smdtyとの積により吸気ポート吹き返しスモーク量Smretを算出している。
【0123】
そしてこの吸気ポート吹き返しスモーク量Smretにより、圧縮行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を進角補正している。この圧縮行程時での燃料噴射時期の進角補正により、燃料噴射時に燃料噴射弁12とピストン頂面6aとの距離が長くなり、ピストン頂面6aへの液体燃料の付着量が少なくなる。このため既燃ガス中のスモーク濃度Smdtyが抑制され、この結果として、吹き返す既燃ガスに乗って吸気系に侵入する吸気ポート吹き返しスモーク量Smretも少なくなる。このため吸気系のスモーク汚損を効果的に抑制できる。
【0124】
更に、燃料噴射時期制御処理(図2)では、圧縮行程噴射時の進角補正に加えて、更に吸気行程期間での燃料噴射については、吸気ポート吹き返しスモーク量Smretにより燃料噴射時期を遅角補正している。このことにより、吸気行程の燃料噴射時にも燃料噴射弁12とピストン頂面6aとの距離が長くなり、ピストン頂面6aへの液体燃料の付着量が少なくなる。このため既燃ガス中のスモーク濃度Smdtyが抑制され、この結果として、吹き返す既燃ガスに乗って吸気系に侵入する吸気ポート吹き返しスモーク量Smretも少なくなり、吸気系のスモーク汚損を効果的に抑制できる。
【0125】
このように圧縮行程噴射時の進角補正と吸気行程噴射時の遅角補正とを共に実行することにより、更に効果的に吸気系のスモーク汚損を抑制できる。
(ロ).特に吸気ポート吹き返しスモーク量Smretが、吸気ポート吹き返しスモーク許容量Aret以下となるように、燃料噴射時期を補正しているので、吸気系の汚損に対して噴射時期補正により適切に対処できるようになり効果的に吸気系のスモーク汚損を抑制できる。
【0126】
(ハ).燃料噴射時期の補正は、排気バルブの閉弁時期及び吸気バルブの開弁時期から求められるバルブオーバラップ期間が長いほど、吸気圧Piが低いほど、エンジン回転数NEが低いほど、吸気ポート吹き返し既燃ガス量Exretを大きく設定している。このようにバルブオーバラップ期間、吸気圧Pi及びエンジン回転数NEに応じて吸気ポート吹き返し既燃ガス量Exretを算出している。このことにより、より正確に吸気系への吸気ポート吹き返し既燃ガス量Exret及び吸気ポート吹き返しスモーク量Smretを算出でき、吸気系の汚損の程度をより適切に判断できる。
【0127】
[実施の形態2]
本実施の形態では、既燃ガス中のスモーク量Smptn(スモーク量を表す物理量に相当)を算出して、このスモーク量Smptn(mg)に基づいて、燃料噴射時期を補正する処理を行う。本実施の形態では、前記実施の形態1の燃料噴射時期制御処理(図2)の代わりに図4に示す燃料噴射時期制御処理を実行する。これ以外の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0128】
燃料噴射時期制御処理(図4)について説明する。本処理は燃料噴射時期制御処理(図2)と同じクランク角周期で繰り返し実行される。本処理が開始されると、まず現在検出されているエンジン回転数NE、燃料圧力Pf、エンジン冷却水温THW、負荷率eklq、燃料噴射時間Tinj及び走行距離Ldが読み込まれる(S202)。ここで燃料噴射時間TinjはECU4にて別途実行している燃料噴射量算出処理にて、負荷率eklq、エンジン回転数NE及び燃料圧力Pfから求められている値である。
【0129】
次に前記ステップS104と同様にして、負荷率eklqとエンジン回転数NEとに基づいて基本燃料噴射時期マップにより基本燃料噴射時期θainjが算出される(S204)。
【0130】
次にピストン付着燃料量Fptn(mg)を算出する(S206)。このピストン付着燃料量Fptnは、ステップS204にて求められた基本燃料噴射時期θainjにて燃料噴射弁12から噴射された燃料により、点火時期までにピストン頂面6aに液状で付着している推定燃料量を表している。ピストン付着燃料量Fptnは次のように算出される。
【0131】
ピストン付着燃料量Fptnは、点火タイミングまでのピストン頂面6aへの液体燃料到達量Finとピストン頂面6aからの燃料気化量Foutにより次式2のごとく決定される。
【0132】
【数2】
Fptn ← Fin − Fout … [式2]
図5に実線に黒丸で示すごとく、燃料噴射弁12からの燃料噴射速度Vsに応じて液体燃料が到達する距離が長くなる。このため吸気行程噴射時も圧縮行程噴射時も、燃料圧力Pfが高くなるほど燃焼室10内の圧力との差が大きくなって燃料噴射速度Vsが増加し、ピストン頂面6a(一点鎖線)への液体燃料到達量Finは大きくなる。
【0133】
液体燃料は飛翔の途中で気化するので、図6に実線に黒丸で示すごとく、吸気行程噴射時も圧縮行程噴射時も、エンジン温度、ここではエンジン冷却水温THWが高くなるほど液体燃料到達量Finは小さくなる。
【0134】
そして吸気行程噴射時も圧縮行程噴射時も、燃料噴射時間Tinjが長くなるほど、燃料噴射量が増加して液体燃料到達量Finは大きくなる。
吸気行程噴射時は、ピストン頂面6aが燃料噴射弁12から離れる方向に移動しているので、図7の左側に実線で示すごとく、エンジン回転数NEが高くなるほど液体燃料到達量Finは小さくなる。圧縮行程噴射時は、ピストン頂面6aが燃料噴射弁12に近づく方向に移動しているので、図7の右側に実線で示すごとく、エンジン回転数NEが高くなるほど液体燃料到達量Finは大きくなる。
【0135】
又、図5〜7から判るように、各図の左側で示す吸気行程噴射時では、遅角するほどピストン頂面6aが燃料噴射弁12の噴射口から離れて、液体燃料到達量Finは小さくなる。各図の右側で示す圧縮行程噴射時では、進角するほどピストン頂面6aが燃料噴射弁12の噴射口から離れて、液体燃料到達量Finは小さくなる。
【0136】
これらのことから予め実験や上述したモデルに基づく計算により、図8に示すごとく、基本燃料噴射時期θainjと燃料圧力Pf(あるいは燃料圧力Pfと燃焼室内圧との差圧)とをパラメータとして基本到達量F0を求めるマップを燃料噴射モード毎に作成しておく。燃料圧力Pfと燃焼室内圧との差圧を用いる場合には、クランク角により燃焼室内圧を推定して、燃料圧力Pfとの差圧を算出する。尚、図8のマップにおいて破線は、基本到達量F0の値変化の概略を等高線的に示すものである。他のマップにおいても同様である。
【0137】
更に、図9に示すごとく、基本燃料噴射時期θainjとエンジン冷却水温THWとをパラメータとして温度補正係数kthwを求めるマップを燃料噴射モード毎に作成しておく。更に、図10に示すごとく、基本燃料噴射時期θainjとエンジン回転数NEとをパラメータとして回転数補正係数kneを求めるマップを燃料噴射モード毎に作成しておく。更に、図11に示すごとく、燃料噴射時間Tinjをパラメータとして噴射時間補正係数kinjを求めるマップを両燃料噴射モード共通で作成しておく。
【0138】
そしてステップS202,S204にて得られたデータに基づいて各マップから該当する数値を算出して、次式3のごとくに、液体燃料到達量Finを算出する。
【0139】
【数3】
Fin ← F0×kthw×kne×kinj … [式3]
ピストン頂面6aからの燃料気化量Foutは、燃料噴射時期から点火までのエンジン温度と時間とにより決定される。このため、ここではエンジン冷却水温THW、基本燃料噴射時期θainj、エンジン回転数NE及び点火時期に基づいて燃料気化量Foutを求めるマップを予め実験やモデル計算により作成しておく。例えば点火時期が一定であるとすると図12に示すごとくである。そしてこのマップから燃料気化量Foutを求める。
【0140】
このことにより液体燃料到達量Finと燃料気化量Foutとが求められるので、前記式2の計算によりピストン付着燃料量Fptnを推定することができる。
【0141】
こうしてステップS206にて基本燃料噴射時期θainjでの燃料噴射によるピストン付着燃料量Fptnが推定されると、次にピストン付着燃料量Fptnの値に基づいてスモーク量Smptnが推定される(S208)。尚、推定式fsm()は、燃料噴射モード毎に決定されるが、スモーク量Smptnの大きさは、ピストン付着燃料量Fptnの大きさに対応しているので、ピストン付着燃料量Fptnの値をそのままスモーク量Smptnとして設定しても良い。すなわち、ピストン付着燃料量Fptnをスモーク量を反映する物理量として用いても良い。
【0142】
次にスモーク量Smptnがスモーク許容量smaxを越えているか否かが判定される(S210)。Smptn≦smaxであれば(S210で「NO」)、燃料噴射時期θinjにステップS204にて求められている基本燃料噴射時期θainjを設定する(S212)。
【0143】
そしてこの燃料噴射時期θinjに基づいて実際の燃料噴射時期の設定がなされ(S218)、一旦本処理を終了する。
一方、Smptn>smaxであれば(S210で「YES」)、燃料噴射モード及びスモーク量Smptnの値に応じた補正値θptnが算出される(S214)。尚、補正値θptnは進角補正値として表されている。
【0144】
ここで図13に燃料噴射時期θinjとスモーク量Smptnとの関係を実線で示す。すなわちスモーク量Smptnが小さい燃料噴射時期領域が存在し、この燃料噴射時期領域を吸気行程において進角側に外れた場合、あるいは圧縮行程において遅角側に外れた場合には、スモーク量Smptnは急激に上昇する。これは吸気行程噴射時ではピストン頂面6aが燃料噴射弁12から離れる方向に移動しているので、燃料噴射時期を進角させるとピストン頂面6aが燃料噴射弁12に近い位置で燃料が噴射され、液体燃料がピストン頂面6aに付着しやすくなるからである。又、圧縮行程噴射時ではピストン頂面6aが燃料噴射弁12に近づく方向に移動しているので、燃料噴射時期を遅角させるとピストン頂面6aが燃料噴射弁12に近い位置で燃料が噴射され、液体燃料がピストン頂面6aに付着しやすくなるからである。
【0145】
吸気行程噴射時では、図13において、Smptn>smaxであるスモーク量Smptn=Sa1であるとすると、このスモーク量Sa1に対応する現在の燃料噴射時期θsa1は、Smptn=smaxとなる燃料噴射時期θax1よりもΔθax1分進角側にある。したがって、燃料噴射モードが吸気行程噴射である場合には、スモーク量Smptnを小さくするために補正値θptnには「−Δθax1」の値あるいは「−Δθax1」よりも更に小さい値(絶対量としては大きい値)が設定されることになる。
【0146】
圧縮行程噴射時では、図13において、Smptn>smaxであるスモーク量Smptn=Sb1であるとすると、このスモーク量Sb1に対応する現在の燃料噴射時期θsb1は、Smptn=smaxとなる燃料噴射時期θbx1よりもΔθbx1分遅角側にある。したがって、燃料噴射モードが圧縮行程噴射である場合には、スモーク量Smptnを小さくするために補正値θptnには「Δθbx1」の値あるいは「Δθbx1」よりも更に大きい値が設定されることになる。
【0147】
このようにして補正値θptnが設定されると、次に走行距離Ldに応じた補正値θldが算出される(S215)。尚、補正値θldは進角補正値として表されている。
【0148】
図13にて実線で示すスモーク量Smptnは、エンジン2が新品の場合の燃料噴射時期とスモーク量Smptnとの関係を示している。エンジン2が運転されることにより、ピストン頂面6aの表面状態はスモークに汚損されたりして、新品の場合よりも液体燃料を保持しやすくなるため、付着している液体燃料を気化により放出しにくくなる。このため同じエンジン運転状態であってもピストン付着燃料量Fptnが上昇することで、一点鎖線で示すごとく全体にスモーク量Smptnが増加する。
【0149】
このため吸気行程噴射時では、スモーク量Sa1をスモーク許容量smax以下に納めるには、更にΔθax2分遅角させることが必要となる。圧縮行程噴射時では、スモーク量Sb1をスモーク許容量smax以下に納めるには、更にΔθbx2分進角させることが必要となる。したがって予め実験やモデル計算にて、図14に示すごとく、走行距離Ldに基づいて補正値θldを算出するマップを求めておき、このマップを用いて走行距離Ldから補正値θldを算出する。
【0150】
このようにして2つの補正値θptn,θldが設定されると、次式4により燃料噴射時期θinjが設定される(S216)。
【0151】
【数4】
θinj ← θainj + θptn + θld … [式4]
上記式4により、吸気行程噴射時にはθptn≦−Δθax1で、θld≦0であるので、燃料噴射時期θinjは基本燃料噴射時期θainjよりも小さくなる。このためステップS218にて燃料噴射時期θinjに基づいて設定される実際の燃料噴射時期は基本燃料噴射時期θainjよりも遅角されて、スモーク量Smptnはスモーク許容量smax以下に抑制される。
【0152】
又、圧縮行程噴射時にはθptn≧Δθbx1で、θld≧0であるので、燃料噴射時期θinjは基本燃料噴射時期θainjよりも大きくなる。このためステップS218にて燃料噴射時期θinjに基づいて設定される実際の燃料噴射時期は基本燃料噴射時期θainjよりも進角されて、スモーク量Smptnはスモーク許容量smax以下に抑制される。
【0153】
上述した構成において、燃料噴射時期制御処理(図4)がスモーク物理量算出手段及び燃料噴射時期補正手段としての処理に相当する。
以上説明した本実施の形態2によれば、以下の効果が得られる。
【0154】
(イ).既燃ガス中のスモークはピストン頂面6aへの液体燃料の付着によって生じる。圧縮行程噴射時でのピストン頂面6a位置は噴射時期が早期であればあるほど、燃料噴射弁12から離れた位置に存在する。したがって既燃ガス中のスモーク量Smptnに基づいて基本燃料噴射時期θainjを進角補正することにより、燃料噴射時期θinjにおいてピストン頂面6aを燃料噴射弁12から離すことができ、ピストン頂面6aへの液体燃料の付着を抑制できる。このことにより排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0155】
更に吸気行程噴射時についても、スモーク量Smptnに基づいて基本燃料噴射時期θainjを遅角補正している。このことにより、吸気行程噴射時にも燃料噴射弁12とピストン頂面6aとの距離が長くなり、ピストン頂面6aへの液体燃料の付着量が少なくなる。このように圧縮行程噴射時の進角補正と、吸気行程噴射時の遅角補正とを実行することにより、より効果的に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0156】
(ロ).ピストン頂面6aのピストン付着燃料量Fptnの変化要因である燃料圧力Pf、エンジン冷却水温THW及びエンジン回転数NEのデータを前述したごとく用いることにより、ピストン付着燃料量Fptnを正確に推定している。このためピストン付着燃料量Fptnに対応して生じるスモーク量Smptnについても正確に推定でき、燃料噴射時期を適切に補正することができる。したがって、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0157】
(ハ).エンジン2が新品状態である時点からの走行距離Ldに応じてピストン付着燃料量Fptnが大きくなっているものとして、補正値θldを求め、スモーク量Smptnに対応する補正値θptnとともに基本燃料噴射時期θainjを補正している。
【0158】
この走行距離Ldはエンジン2の累積の運転時間に対応する。エンジン2の累積運転時間が長くなると、前述したごとくピストン頂面6aにはスモークに汚損されて表面性状が変化しピストン付着燃料量Fptnも大きくなる。したがってこの変化を反映させた補正値θldを補正に加えていることにより、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0159】
[実施の形態3]
本実施の形態では、エンジン温度がピストン付着燃料量に大きく影響することを考慮して、エンジン温度に基づいて、燃料噴射時期を補正する処理を行う。本実施の形態では、前記実施の形態1の燃料噴射時期制御処理(図2)の代わりに図15に示す燃料噴射時期制御処理を実行する。これ以外の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0160】
燃料噴射時期制御処理(図15)について説明する。本処理は燃料噴射時期制御処理(図2)と同じクランク角周期で繰り返し実行される。本処理が開始されると、まず現在検出されているエンジン回転数NE、負荷率eklq及びエンジン冷却水温THWが読み込まれる(S302)。
【0161】
次に前記ステップS104(図2)と同様にして、負荷率eklqとエンジン回転数NEとに基づいて基本燃料噴射時期マップにより基本燃料噴射時期θainjを算出する(S304)。
【0162】
次にエンジン2が冷間時か否かが判定される(S306)。この判定は、エンジン冷却水温THWが暖機を判定するための基準温度Thot未満であれば冷間時、基準温度Thot以上であれば冷間時でなく暖機後であると判定する。
【0163】
ここでエンジン2が冷間時ではない場合には(S306で「NO」)、燃料噴射時期θinjにステップS304にて求められている基本燃料噴射時期θainjを設定する(S308)。そしてこの燃料噴射時期θinjに基づいて実際の燃料噴射時期の設定がなされ(S316)、一旦本処理を終了する。
【0164】
一方、冷間時であれば(S306で「YES」)、燃料噴射モード及びエンジン冷却水温THWの値に応じた補正値θthwが算出される(S310)。尚、補正値θthwは進角補正値として表されている。
【0165】
ここで暖機後のエンジン2における燃料噴射時期とスモーク濃度Smdtyとの関係を図18に実線で示す。この関係は図3にて説明したごとく、スモーク濃度Smdtyが小さい燃料噴射時期領域が存在し、この燃料噴射時期領域を吸気行程において進角側に外れた場合、あるいは圧縮行程において遅角側に外れた場合には、スモーク濃度Smdtyは急激に上昇する。そして冷間時においては図18に一点鎖線にて示すごとく全体にスモーク濃度Smdtyが上昇する。
【0166】
ステップS304にて求められている基本燃料噴射時期θainjは、暖機後においてスモーク濃度Smdtyがスモーク許容濃度smdmax以下となる範囲で設定されている。ここで基本燃料噴射時期θainjが吸気行程にある場合に、暖機後のスモーク濃度Smdtyがスモーク許容濃度smdmax以下(=Sa3)となる燃料噴射時期θsa3に設定されたものとする。この時、実際にはスモーク濃度Smdtyが一点鎖線にて示すごとくの冷間時であるとすると、実際のスモーク濃度Smdty=Saa3>smdmaxとなってしまう。又、基本燃料噴射時期θainjが圧縮行程にある場合に、暖機後のスモーク濃度Smdtyがスモーク許容濃度smdmax以下(=Sb3)となる燃料噴射時期θsb3に設定されたものとする。この時、実際にはスモーク濃度Smdtyが一点鎖線にて示すごとくの冷間時であるとすると、実際のスモーク濃度Smdty=Sbb3>smdmaxとなってしまう。
【0167】
したがって暖機後と同じレベルのスモーク濃度Smdtyとするには、基本燃料噴射時期θainjに対して、吸気行程噴射時にはΔθsax3の幅の遅角補正をする必要があり、圧縮行程噴射時にはΔθsbx3の幅の進角補正をする必要がある。
【0168】
このためステップS310では実験あるいはモデル計算により作成しておいた図16に示すごとくのエンジン冷却水温THWと基本燃料噴射時期θainjとをパラメータとする補正値θthwマップを用いて、エンジン冷却水温THW及び基本燃料噴射時期θainjに基づいて補正値θthwを算出する。尚、冷間時でもスモーク濃度Smdtyに影響しない範囲の基本燃料噴射時期θainjについては補正値θthw=「0」とされている。
【0169】
次に燃料噴射モード及びエンジン回転数NEの値に応じた補正値θneが算出される(S312)。尚、補正値θneは進角補正値として表されている。補正値θneは、図17に示す燃料噴射モード及びエンジン回転数NEをパラメータとする補正値θneマップから、燃料噴射モードとエンジン回転数NEとに基づいて算出される。尚、図17の補正値θneの傾向については、前記実施の形態2の図10において説明したごとくである。ただし、尚、冷間時でもスモーク濃度Smdtyに影響しない範囲の基本燃料噴射時期θainjについては補正値θne=「0」とされている。
【0170】
このようにして2つの補正値θthw,θneが設定されると、次式5により燃料噴射時期θinjが設定される(S314)。
【0171】
【数5】
θinj ← θainj + θthw + θne … [式5]
上記式5により、吸気行程噴射時にはθthw≦0で、θne≦0であるので、燃料噴射時期θinjは基本燃料噴射時期θainj以下となる。このためステップS316にて燃料噴射時期θinjに基づいて設定される実際の燃料噴射時期は基本燃料噴射時期θainjと同一あるいは遅角されて、スモーク濃度Smdtyはスモーク許容濃度smdmax以下となるように抑制される。
【0172】
又、圧縮行程噴射時にはθthw≧0で、θne≧0であるので、燃料噴射時期θinjは基本燃料噴射時期θainj以上となる。このためステップS316にて燃料噴射時期θinjに基づいて設定される実際の燃料噴射時期は基本燃料噴射時期θainjと同一あるいは進角されて、スモーク濃度Smdtyはスモーク許容濃度smdmax以下となるように抑制される。
【0173】
上述した構成において、燃料噴射時期制御処理(図15)が燃料噴射時期補正手段としての処理に相当する。
以上説明した本実施の形態3によれば、以下の効果が得られる。
【0174】
(イ).エンジン温度(ここではエンジン冷却水温THW)は、噴射された燃料の気化及びピストン頂面6aでの液体燃料の気化に影響することからピストン頂面6aへの液体燃料付着量に影響する。このことによりスモークの発生程度に影響する。したがって圧縮行程噴射時にはエンジン温度に基づいて燃料噴射時期を進角補正することにより、燃料噴射時の燃料噴射弁12とピストン頂面6aとの距離を長くしている。このことからピストン頂面6aへの液体燃料付着量が抑制されて、スモーク濃度の上昇が抑制でき、適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0175】
更に、エンジン温度に基づく圧縮行程噴射時の進角補正に加えて、エンジン温度に基づいて吸気行程噴射時の遅角補正をしている。このことにより吸気行程噴射時にも燃料噴射弁12とピストン頂面6aとの距離が調節でき、ピストン頂面6aへの液体燃料の付着量を少なくできる。このようにしてエンジン温度に基づいて圧縮行程噴射時の進角補正と吸気行程噴射時の遅角補正とを共に実行することにより、効果的にピストン頂面6aへの液体燃料付着量が抑制されて、スモーク濃度の上昇が抑制でき、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0176】
(ロ).前記実施の形態2にて述べたごとくエンジン回転数NEはピストン6の移動速度に影響するので、ピストン頂面6aへの液体燃料付着量に影響する。したがってエンジン回転数NEに基づいても前述したごとく燃料噴射時期を補正している。このことによりピストン頂面6aへの液体燃料付着量が抑制されて、スモーク濃度の上昇が抑制でき、より適切に排気中のスモーク量や吸気系のスモーク汚損を抑制することができる。
【0177】
[実施の形態4]
本実施の形態では、吸気ポート吹き返しスモーク量が大きい運転状態であると判定される場合にはバルブオーバラップ期間に基づいて、燃料噴射時期を補正している。本実施の形態では、前記実施の形態1の燃料噴射時期制御処理(図2)の代わりに図19,20に示す燃料噴射時期制御処理を実行する。これ以外の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0178】
燃料噴射時期制御処理(図19,20)について説明する。本処理は燃料噴射時期制御処理(図2)と同じクランク角周期で繰り返し実行される。本処理が開始されると、まず現在検出されているエンジン回転数NE、負荷率eklq、吸入空気量Ga、エンジン冷却水温THW及びバルブオーバラップ期間Lovr(クランク角幅で表される)が読み込まれる(S402)。尚、バルブオーバラップ期間Lovrは、ECUが別途、吸排気バルブ2a,2bのバルブタイミングを読み込んで常時計算しているので、この値を読み込んでいる。バルブオーバラップ期間Lovrが常に計算されていない場合には吸排気バルブ2a,2bのバルブタイミングを読み込んで、本処理の中でバルブオーバラップ期間Lovrを算出しても良い。
【0179】
次に、前記実施の形態1のステップS104(図2)と同様にして、負荷率eklqとエンジン回転数NEとに基づいて基本燃料噴射時期マップにより基本燃料噴射時期θainjを算出する(S404)。そして前記ステップS106(図2)と同様にして吸入空気量Gaとエンジン回転数NEとから吸気ポート16における吸気圧Piを算出する(S406)。
【0180】
次にエンジン冷却水温THWが低温基準値THWL以下か否かが判定される(S408)。この低温基準値THWLは、エンジン温度が低いことにより既燃ガス中のスモーク量が多くなって、吸気系に既燃ガスの吹き返しがあった場合に、吸気ポート吹き返しスモーク量が大きくなる程度を判定するために設けた判定値である。
【0181】
ここでTHW>THWLであれば(S408で「NO」)、次に燃料噴射時期制御処理の一部である燃料噴射時期減衰処理(S450:図20)が実行される。
【0182】
燃料噴射時期減衰処理(図20)では、まず噴射時期補正実行フラグFinjが「ON」か否かが判定される(S452)。噴射時期補正実行フラグFinjはスモーク量抑制のために噴射時期補正が実行されていることを示すフラグであるが、初期設定においてはFinj=「OFF」である。このことから(S452で「NO」)、図19の処理に戻り、燃料噴射時期θinjにステップS404にて求められている基本燃料噴射時期θainjを設定する(S424)。そしてこの燃料噴射時期θinjに基づいて実際の燃料噴射時期の設定がなされ(S420)、一旦本処理を終了する。
【0183】
一方、THW≦THWLであれば(S408で「YES」)、吸気圧Piが低吸気圧基準値PL以下か否かが判定される(S410)。この低吸気圧基準値PLは、吸気圧Piが低いことにより吸気系への既燃ガスの吹き返し量が大きくなる程度を判定するために設けた判定値である。
【0184】
ここでPi>PLであれば(S410で「NO」)、次に噴射時期補正実行フラグFinjに「OFF」を設定し(S422)、燃料噴射時期θinjに基本燃料噴射時期θainjを設定する(S424)。そしてこの燃料噴射時期θinjに基づいて実際の燃料噴射時期の設定がなされ(S420)、一旦本処理を終了する。
【0185】
一方、Pi≦PLであれば(S410で「YES」)、次にエンジン回転数NEが低回転数基準値NEL以下か否かが判定される(S412)。この低回転数基準値NELは、エンジン回転数NEが低いことにより吸気系への既燃ガスの吹き返し量が大きくなる程度を判定するために設けた判定値である。
【0186】
ここでNE>NELであれば(S412で「NO」)、噴射時期補正実行フラグFinjに「OFF」を設定し(S422)、燃料噴射時期θinjに基本燃料噴射時期θainjを設定し(S424)、燃料噴射時期θinjに基づいて実際の燃料噴射時期の設定がなされ(S420)、一旦本処理を終了する。
【0187】
上述のごとく、Finj=「OFF」の状態で、THW>THWL(S408で「NO」)、Pi>PL(S410で「NO」)、又はNE>NELであれば(S412で「NO」)、吸気ポート吹き返しスモーク量を抑制するための噴射時期補正は実行されない。
【0188】
NE≦NELと判定された場合、すなわちTHW≦THWL(S408で「YES」)、Pi≦PL(S410で「YES」)、及びNE≦NELであった場合には(S412で「YES」)、次に噴射時期補正実行フラグFinjに「ON」を設定する(S414)。
【0189】
そして燃料噴射モード、基本燃料噴射時期θainj及びバルブオーバラップ期間Lovrに基づいて、予め実験により作成してあるマップにより燃料噴射時期補正値θovrが求められる(S416)。この燃料噴射時期補正値θovrのマップは図21に傾向を示すごとくである。すなわち吸気行程噴射時にはバルブオーバラップ期間Lovrが長くなるほど大きく遅角補正(θovr≦0)されるように、圧縮行程噴射時にはバルブオーバラップ期間Lovrが長くなるほど大きく進角補正(θovr≧0)されるように、予め実験やモデル計算にて設定されている。これはバルブオーバラップ期間Lovrが長くなれば、燃焼室10を介して排気系(排気ポート32や排気通路36)に流れ出した既燃ガスが再度、吸気系(吸気ポート16や吸気通路20)側に流入する程度が高まるからである。そして、これをピストン頂面6aの液体燃料付着量の低下によってスモーク量を抑制することにより対処するものである。
【0190】
このように燃料噴射時期補正値θovrが算出されると、次式6に示すごとく、基本燃料噴射時期θainjを燃料噴射時期補正値θovrにより補正することで、燃料噴射時期θinjが算出される(S418)。
【0191】
【数6】
θinj ← θainj + θovr … [式6]
そしてこの燃料噴射時期θinjに基づいて実際の燃料噴射時期の設定がなされ(S420)、一旦本処理を終了する。この結果として、吹き返す既燃ガスに乗って吸気系に侵入するスモーク量は少なくなり、吸気系のスモーク汚損を効果的に抑制できる。
【0192】
このようにして燃料噴射時期補正値θovrにより基本燃料噴射時期θainjが補正されている状態からステップS408,S410,S412のいずれかの条件が満足されなくなった場合を説明する。ここでPi>PL(S410で「NO」)あるいはNE>NEL(S412で「NO」)となった場合には、噴射時期補正実行フラグFinjは「OFF」に戻される(S422)。そして燃料噴射時期θinjに基本燃料噴射時期θainjを設定し(S424)、燃料噴射時期θinjに基づいて実際の燃料噴射時期の設定がなされて(S420)、一旦本処理を終了する。このことにより燃料噴射時期補正値θovrによる補正はなされなくなる。
【0193】
燃料噴射時期補正値θovrにより基本燃料噴射時期θainjが補正されている状態から、THW>THWL(S408で「NO」)となった場合には、燃料噴射時期補正減衰処理(図20)にては、最初はFinj=「ON」である(S452で「YES」)。したがって次に燃料噴射時期補正値θovrの絶対値に対して減衰値dθ分の減少が行われる(S454)。すなわち吸気行程噴射時であってθovr≦0である場合には、次式7に示すごとく減衰値dθが加算される。
【0194】
【数7】
θovr ← θovr + dθ … [式7]
圧縮行程噴射時であってθovr≧0である場合には、次式8に示すごとく減衰値dθが減算される。
【0195】
【数8】
θovr ← θovr − dθ … [式8]
ここで減衰値dθは、燃料噴射時期補正値θovrを制御周期毎に徐々に減衰させて消滅させるための値である。尚、燃料噴射時期補正値θovrの絶対値がdθより小さい場合には、燃料噴射時期補正値θovrには「0」を設定する。
【0196】
前記式7又は前記式8にて燃料噴射時期補正値θovrの絶対値が減少されると、次に燃料噴射時期補正値θovrが「0」か否かが判定される(S456)。θovr≠「0」であれば(S456で「NO」)、前記式6と同じ処理にて基本燃料噴射時期θainjを燃料噴射時期補正値θovrにより補正することで、燃料噴射時期θinjが算出される(S460)。
【0197】
そして図19のステップS420にて燃料噴射時期θinjに基づいて実際の燃料噴射時期の設定がなされて、一旦本処理を終了する。このことにより減衰された燃料噴射時期補正値θovrにより補正された燃料噴射時期θinjによる燃料噴射が実行される。
【0198】
以後、THW>THWL(S408で「NO」)であって、ステップS454の計算にて燃料噴射時期補正値θovr≠0である限りは(S456で「NO」)、次第に減衰される燃料噴射時期補正値θovrにより補正された燃料噴射時期θinjにて燃料噴射が実行される。
【0199】
そしてθovr=0となると(S456にて「YES」)、噴射時期補正実行フラグFinjが「OFF」に戻される(S458)。したがって、次の制御周期では、ステップS408で「NO」、そしてステップS452では「NO」と判定されて、ステップS424が実行されるようになる。このため吸気ポート吹き返しスモーク量抑制のための燃料噴射時期補正はされなくなる。
【0200】
上述した構成において、吸排気バルブ2a,2bのバルブタイミングを読み込んでバルブオーバラップ期間Lovrを計算している処理がバルブオーバラップ検出手段としての処理に相当する。燃料噴射時期制御処理(図19,20)がスモーク吹き返し状態判定手段及び燃料噴射時期補正手段としての処理に相当する。
【0201】
以上説明した本実施の形態4によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態1にて述べたごとく、吸気バルブ2a及び排気バルブ2bが可変動弁系として構成されていることによりエンジン運転状態に応じてバルブタイミングを調節している場合においては、バルブオーバラップ期間が長くても常に吸気系のスモーク汚損のおそれがあるとは限らない。すなわち吸気系に吹き返すスモーク量が少ない時には、バルブオーバラップ期間によらず吸気系のスモーク汚損は問題ないが、吸気系に吹き返すスモーク量が多い運転状態となるとバルブオーバラップ期間に応じて吸気系のスモーク汚損のおそれが出てくる。
【0202】
したがって圧縮行程噴射時に、低エンジン温度、低吸気圧、低エンジン回転数(S408、S410、S412で「YES」)である場合に吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態であると判定し、バルブオーバラップ期間Lovrが長くなるほど燃料噴射時期を大きく進角補正している。このことにより的確に吸気系のスモーク汚損を抑制できるとともに、限定された条件下に吸気系の汚損抑制のための進角補正をしているのでエンジン性能を高い状態に維持し易くなる。
【0203】
更に吸気行程噴射時についても、低エンジン温度、低吸気圧、低エンジン回転数(S408、S410、S412で「YES」)では、バルブオーバラップ期間Lovrが長くなるほど燃料噴射時期を大きく遅角補正している。このことにより吸気行程噴射時においても、的確に吸気系のスモーク汚損を抑制できるとともに、限定された条件下に吸気系の汚損抑制のための遅角補正をしているので、エンジン性能を高い状態に維持し易くなる。
【0204】
(ロ).エンジン冷却水温THWが上昇して低温基準値THWLより高くなった場合には、燃料噴射時期の補正を直ちに停止するのではなく、徐々に補正量を減衰している。このため冷間時からエンジン温度上昇により燃料噴射時期の補正を停止する状態となった時の燃料噴射時期急変によるショックを防止することができる。
【0205】
[実施の形態5]
本実施の形態では、燃料噴射時期補正減衰処理(図20)の代わりに、図22に示す燃料噴射時期補正減衰処理を実行する点が前記実施の形態4と異なる。他の構成は前記実施の形態4と同じである。
【0206】
燃料噴射時期補正減衰処理(図22)について説明する。本処理は前記実施の形態4にて説明したごとく、燃料噴射時期制御処理(図19)にてエンジン冷却水温THW>低温基準値THWL(S408で「NO」)と判定された場合に実行される。
【0207】
まず噴射時期補正実行フラグFinjが「ON」か否かが判定される(S502)。初期設定においてはFinj=「OFF」であることから(S502で「NO」)、図19の処理に戻り、燃料噴射時期θinjにステップS404にて求められている基本燃料噴射時期θainjを設定する(S424)。そして、この燃料噴射時期θinjに基づいて実際の燃料噴射時期の設定がなされ(S420)、一旦本処理を終了する。
【0208】
燃料噴射時期補正値θovrによる燃料噴射時期補正がなされている状態から、THW>THWL(S408で「NO」)となった場合には、燃料噴射時期補正減衰処理(図22)にては、最初はFinj=「ON」であるので(S502で「YES」)、次式9により減衰補正値θxが算出される(S504)。
【0209】
【数9】
θx ← θovr×(THWh−THW)/(THWh−THWL) … [式9]
ここで高温判定温度THWhは、低温基準値THWLよりも高いエンジン冷却水温度として設定され、燃料噴射弁12からの噴射燃料の気化、及びピストン頂面6aの付着燃料の気化が迅速に行われることにより吸気系への吹き返しスモーク量が問題なくなるエンジン冷却水温である。尚、前記式9は、THW≧THWhとなると、以後、減衰補正値θxには「0」を設定する。
【0210】
当初は、エンジン冷却水温THWは低温基準値THWLよりわずかに高くなった状態であるので、前記式9により、減衰補正値θxは燃料噴射時期補正値θovrより絶対値としてわずかに小さい値に設定される。
【0211】
次にθx=「0」か否かが判定される(S506)。θx≠「0」であれば(S506で「NO」)、次式10により基本燃料噴射時期θainjを減衰補正値θxにより補正することで、燃料噴射時期θinjが算出される(S510)。
【0212】
【数10】
θinj ← θainj + θx … [式10]
そして図19のステップS420にて燃料噴射時期θinjに基づいて実際の燃料噴射時期の設定がなされて、一旦本処理を終了する。このことによりエンジン冷却水温THWの上昇に対応して減衰された減衰補正値θxによる燃料噴射時期補正がなされる。
【0213】
以後の制御周期では、エンジン冷却水温THWが上昇する毎に、前記式9にて算出される減衰補正値θxの絶対値は小さくなるので、減衰補正値θx≠0である限りは(S506で「NO」)、次第に減衰される減衰補正値θxにより燃料噴射時期補正がなされる。
【0214】
そしてステップS504の処理にてθx=0となると(S506にて「YES」)、噴射時期補正実行フラグFinjが「OFF」に戻される(S508)。したがって、次の制御周期では、ステップS502では「NO」と判定されて、図18のステップS424が実行されるようになる。このため吸気ポート吹き返しスモーク量抑制のための燃料噴射時期補正はなされなくなる。
【0215】
上述した構成において、燃料噴射時期制御処理(図19,22)がスモーク吹き返し状態判定手段及び燃料噴射時期補正手段としての処理に相当する。
以上説明した本実施の形態5によれば、以下の効果が得られる。
【0216】
(イ).前記実施の形態4の(イ)の効果を生じる。
(ロ).エンジン冷却水温THWの上昇に応じて燃料噴射時期の補正も減衰させているので、燃料噴射時期をよりエンジン運転状態に適合するものとでき、エンジンショックを防止することができる。
【0217】
[実施の形態6]
本実施の形態では、燃料噴射時期制御処理(図19,22)の代わりに、図23,24に示す燃料噴射時期制御処理を実行する点が前記実施の形態5と異なる。他の構成は前記実施の形態5と同じである。又、図23におけるステップS602〜S622までは、図19におけるステップS402〜S422と同じ処理である。異なるのは、ステップS622の直後に後述する補正量θyに「0」を設定する処理(S623)が実行される点である。そして、図19のステップS424の処理の代わりにステップS624では次式11の処理にて燃料噴射時期θinjが算出される点である。
【0218】
【数11】
θinj ← θainj + θy … [式11]
燃料噴射時期補正減衰処理(図24)が図22と異なる点は、最初に燃料噴射モード及び低温基準値THWLからのエンジン冷却水温THWの上昇に対応するバルブオーバラップ期間Lovrの増加に応じた補正量θyの算出が行われる点である。又、図22のステップS510の燃料噴射時期θinj算出の代わりに、次式12の処理にて燃料噴射時期θinjが算出される点である。
【0219】
【数12】
θinj ← θainj + θx + θy … [式12]
尚、ECUにて実行されているバルブオーバラップ期間Lovrの設定は、冷間時においては暖機後よりは小さくされている。そしてエンジン冷却水温THWの上昇と共にバルブオーバラップ期間Lovrは通常の大きさまで増加されることになる。
【0220】
したがってTHW≦THWLでのバルブオーバラップ期間Lovrでは吸気系への吹き返しスモーク量は問題ない状態でも、エンジン冷却水温THWが低温基準値THWLよりも高くなることによりバルブオーバラップ期間Lovrが増加するので、吹き返しスモーク量が問題化するおそれがある。このバルブオーバラップ期間Lovrの増大に対処するために補正量θyが設けられている。
【0221】
したがってステップS618の処理にて燃料噴射時期補正値θovrにより燃料噴射時期補正がなされていた状態から、THW>THWLとなることにより(S608で「NO」)、燃料噴射時期補正減衰処理(図24)が実行されると補正量θyが機能することになる。
【0222】
すなわち、まず低温基準値THWLからのエンジン冷却水温THWの上昇に対応するバルブオーバラップ期間Lovrの増加に応じた補正量θyの算出が行われる(S651)。この補正量θyは、燃料噴射モード及びTHW>THWLとなった後のバルブオーバラップ期間Lovrに基づいて、実験やモデル計算により作成している図25に示すごとくのマップから算出される。
【0223】
この時、Finj=「ON」であるので(S652で「YES」)、次に前記式9に示したごとく減衰補正値θxを算出し(S654)、減衰補正値θx≠「0」であれば(S656で「NO」)、前記式12の計算が実行される(S660)。したがって、燃料噴射時期θinjには減衰補正値θxとバルブオーバラップ期間増加に伴う補正量θyとによる補正が加えられることになる。
【0224】
以後、エンジン冷却水温THWの上昇と共に、減衰補正値θxは減衰してゆくが、補正量θyは増加してゆく。そして減衰補正値θx=「0」となると(S656で「YES」)、噴射時期補正実行フラグFinjには「OFF」が設定される(S658)。そして次に行われる前記式12の計算ではθx=「0」であるので実質的に補正量θyのみの燃料噴射時期補正となる(S660)。
【0225】
次の制御周期では、ステップS608で「NO」、そして補正量θyが算出された(S651)後に、ステップS652で「NO」と判定され、ステップS624が実行される。ここでは前記式11により、補正量θyのみの燃料噴射時期補正がなされる。したがって以後も、エンジン冷却水温THWの上昇に応じた分のバルブオーバラップ期間Lovrに対応する補正量θyは、燃料噴射時期θinjに反映されることになる。
【0226】
上述した構成において、燃料噴射時期制御処理(図23,24)がスモーク吹き返し状態判定手段及び燃料噴射時期補正手段としての処理に相当する。
以上説明した本実施の形態6によれば、以下の効果が得られる。
【0227】
(イ).前記実施の形態5の(イ)、(ロ)の効果を生じる。
(ロ).ここではエンジン冷却水温THWの上昇に応じてバルブオーバラップ期間Lovrを増加しているため、エンジン冷却水温THWの上昇後に大量の既燃ガスが吸気系に吹き込むおそれがある。したがってエンジン冷却水温THWの上昇に伴うバルブオーバラップ期間Lovrの増加に対応して燃料噴射時期を補正することで、より的確に吸気系のスモーク汚損を抑制できる。
【0228】
[その他の実施の形態]
(a).図1のエンジン2は、吸気用可変動弁機構43と排気用可変動弁機構45とを用いたが、いずれか一方を用いて、バルブオーバラップ期間を調節するシステムとして構成したエンジンでも良い。
【0229】
(b).前記各実施の形態ではエンジン温度として、エンジン冷却水温THWを用いたが、この代わりにエンジンオイルの温度を用いても良い。又、エンジンの燃焼室内温度やピストン頂面温度をエンジンの運転状態から推定計算して用いても良い。
【0230】
(c).図1におけるエンジン2は4気筒エンジンであったが、他の気筒数のエンジンである場合には、各制御処理の割り込み周期が異なる。例えば6気筒エンジンの場合は、前記各制御処理は120°CA毎に実行される。
【0231】
(d).前記実施の形態2では補正値θldを車両の走行距離Ldに応じて求めたが、エンジン2のトータルの運転時間に応じて、あるいはエンジン2のトータルの回転回数に応じて補正値θldを求めても良い。
【0232】
(e).前記図19の処理では、THW>THWLの場合(S408で「NO」)のみでなく、更に、Pi>PL(S410で「NO」)あるいはNE>NEL(S412で「NO」)の場合にも、ステップS422の代わりに、燃料噴射時期補正減衰処理(図20)を実行しても良い。
【0233】
(f).前記実施の形態4〜6においては、THW≦THWL、Pi≦PL及びNE≦NELの全ての条件でなく、いずれか1つ又は2つの条件が満足された場合に、燃料噴射モードとバルブオーバラップ期間Lovrとに応じた燃料噴射時期補正値θovrにより燃料噴射時期を補正するようにしても良い。ただし、図22,24の燃料噴射時期補正減衰処理は、少なくもとTHW≦THWLが満足されることで燃料噴射時期が補正された場合に実行する。
【0234】
(g).ピストン付着燃料量Fptnを求める前記式2の内、液体燃料到達量Finについては、マップで求める代わりに次式13の関係に基づいて求めても良い。すなわち次式13の左辺(ピストン頂面6aの移動距離)と右辺(ピストン方向の液体燃料到達距離)との大小関係を、噴射燃料気化必要時間tvの間、短時間間隔で繰り返し算出し、式13の関係を満足している時間の長さにより液体燃料到達量Finを求めても良い。
【0235】
【数13】
この式13は、液体燃料がピストン頂面6aに到達している時の関係を表している。尚、θ(t)はクランク角の時間変化、Vp(NE,θ(t))はピストン6の移動速度、Vsは噴射燃料先端速度、αは噴射角(図1)である。又、噴射燃料気化必要時間(燃料噴射時から液体燃料が完全に気化するまでの時間)tvはエンジン冷却水温THWの関数で与えられる。
【0236】
(h).前記実施の形態1では、ECU4は、ステップS102にて読み込んだデータから最終的に補正値θsmを求める計算を順次実行した。この代わりに、補正値θsmを求めるために用いられている上記データをパラメータとするマップを、予め実施の形態1にて説明した計算により求めてECU4内のROMなどのメモリに格納しておいても良い。したがって補正値θsmが必要な場合には、ステップS102で読み込んだデータに基づいて上記マップから補正値θsmを求めることになる。吸気ポート吹き返しスモーク量Smretについても同様に実施の形態1にて説明した計算によりマップとして予め構成してROMなどのメモリに格納しておき、このマップからステップS102にて読み込んだデータに基づいて吸気ポート吹き返しスモーク量Smretを求めても良い。
【0237】
又、「θainj+θsm」の値自体を、ステップS102にて読み込んだデータをパラメータとするマップとして予め実施の形態1にて説明した計算にて求めてECU4内のROMなどのメモリに格納しておいても良い。したがって燃料噴射時期θinjが必要な場合には、ステップS102で読み込んだデータに基づいて上記マップから燃料噴射時期θinjを求めることになる。
【0238】
前記実施の形態2においても、上述したごとく補正値θptn、スモーク量Smptnあるいは燃料噴射時期θinjを実施の形態2にて説明した計算によりマップ化して、このマップからステップS202にて読み込んだデータに基づいて求めても良い。同様に補正値θptnと補正値θldとを一つにした補正値マップを、予め補正値θptn及び補正値θldを求めるために用いられている各データをパラメータとして実施の形態2にて説明した計算により求めてECU4内のROMなどのメモリに格納しておいても良い。そして必要時にステップS202にて読み込んだデータに基づいて補正値θptnと補正値θldとを一つにした補正値を上記マップから求めて用いても良い。
【0239】
前記実施の形態3においても、上述したごとく補正値θthw、θne、θthw+θne、あるいは燃料噴射時期θinjを実施の形態3にて説明した計算によりマップ化して、このマップからステップS302にて読み込んだデータに基づいて求めても良い。
【0240】
前記実施の形態4,5,6においても、上述したごとく補正値θovrあるいは燃料噴射時期θinjを実施の形態4,5,6にて説明した計算によりマップ化して、このマップからステップS402,S602にて読み込んだデータに基づいて求めても良い。
【0241】
上述したごとくマップ処理により各実施の形態を構成することで、ECUに対する負荷を抑制できる。このためECUに用いるCPUなどの演算装置に安価なものを利用できたり、処理を迅速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の筒内噴射式エンジン及びECUの概略系統図。
【図2】上記ECUが実行する燃料噴射時期制御処理のフローチャート。
【図3】実施の形態1の燃料噴射時期補正処理を説明するための燃料噴射時期とスモーク濃度Smdtyとの関係を示すグラフ。
【図4】実施の形態2の燃料噴射時期制御処理のフローチャート。
【図5】燃料圧力Pfの違いによる噴射燃料とピストン頂面との位置関係を示すタイミングチャート。
【図6】エンジン冷却水温THWの違いによる噴射燃料とピストン頂面との位置関係を示すタイミングチャート。
【図7】エンジン回転数NEの違いによる噴射燃料とピストン頂面との位置関係を示すタイミングチャート。
【図8】燃料噴射モード毎に基本燃料噴射時期θainjと燃料圧力Pfとに基づいて基本到達量F0を求めるマップの構成説明図。
【図9】燃料噴射モード毎に基本燃料噴射時期θainjとエンジン冷却水温THWとに基づいて温度補正係数kthwを求めるマップの構成説明図。
【図10】燃料噴射モード毎に基本燃料噴射時期θainjとエンジン回転数NEとに基づいて回転数補正係数kneを求めるマップの構成説明図。
【図11】燃料噴射時間Tinjから噴射時間補正係数kinjを求めるマップの構成説明図。
【図12】基本燃料噴射時期θainjとエンジン冷却水温THWとに基づいて燃料気化量Foutを求めるマップの構成説明図。
【図13】実施の形態2の燃料噴射時期補正処理を説明するための燃料噴射時期とスモーク量Smptnとの関係を示すグラフ。
【図14】走行距離Ldに基づいて補正値θldを算出するマップの構成説明図。
【図15】実施の形態3の燃料噴射時期制御処理のフローチャート。
【図16】燃料噴射モード毎に基本燃料噴射時期θainjとエンジン冷却水温THWとに基づいて補正値θthwを求めるマップの構成説明図。
【図17】燃料噴射モード毎に基本燃料噴射時期θainjとエンジン回転数NEとに基づいて補正値θneを求めるマップの構成説明図。
【図18】実施の形態3の燃料噴射時期補正処理を説明するための燃料噴射時期とスモーク濃度Smdtyとの関係を示すグラフ。
【図19】実施の形態4の燃料噴射時期制御処理のフローチャート。
【図20】実施の形態4の燃料噴射時期補正減衰処理のフローチャート。
【図21】燃料噴射モード毎に基本燃料噴射時期θainjとバルブオーバラップ期間Lovrとに基づいて燃料噴射時期補正値θovrを求めるマップの構成説明図。
【図22】実施の形態5の燃料噴射時期補正減衰処理のフローチャート。
【図23】実施の形態6の燃料噴射時期制御処理のフローチャート。
【図24】実施の形態6の燃料噴射時期補正減衰処理のフローチャート。
【図25】燃料噴射モード毎に基本燃料噴射時期θainjとバルブオーバラップ期間Lovrとに基づいて補正量θyを求めるマップの構成説明図。
【符号の説明】
2…エンジン、2a…吸気バルブ、2b…排気バルブ、4…ECU、6…ピストン、6a…ピストン頂面、10…燃焼室、12…燃料噴射弁、14…点火プラグ、16…吸気ポート、20…吸気通路、22…サージタンク、24…モータ、26…スロットルバルブ、28…スロットル開度センサ、30…吸入空気量センサ、32…排気ポート、36…排気通路、38…排気浄化触媒、40…燃料圧力センサ、42…吸気カム、43…吸気用可変動弁機構、43a…ストロークセンサ、44…排気カム、45…排気用可変動弁機構、45a…ストロークセンサ、46…アクセルペダル、48…アクセル開度センサ、50…エンジン回転数センサ、52…基準クランク角センサ、54…冷却水温センサ、56…空燃比センサ、58…走行距離メータ。
Claims (44)
- 燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置であって、
エンジンの運転状態に基づいて燃焼室内から吸気系への既燃ガスの吹き返し量を算出する吹き返し量算出手段と、
該吹き返し量算出手段にて算出された既燃ガスの吹き返し量に基づいて、圧縮行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を進角補正する燃料噴射時期補正手段と、
を備えたことを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。 - 請求項1において、前記燃料噴射時期補正手段は、前記吹き返し量算出手段にて算出された既燃ガスの吹き返し量に基づいて、圧縮行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を進角補正するとともに、吸気行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を遅角補正することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置であって、
エンジンの運転状態に基づいて燃焼室内から吸気系への既燃ガスの吹き返し量を算出する吹き返し量算出手段と、
該吹き返し量算出手段にて算出された既燃ガスの吹き返し量に基づいて、吸気行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を遅角補正する燃料噴射時期補正手段と、
を備えたことを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。 - 請求項1〜3のいずれかにおいて、前記燃料噴射時期補正手段は、エンジンの運転状態に基づいて既燃ガスのスモーク濃度を求め、該スモーク濃度と、前記吹き返し量算出手段にて算出された既燃ガスの吹き返し量とに基づいて燃料噴射時期を補正することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項4において、前記燃料噴射時期補正手段は、前記スモーク濃度と、前記吹き返し量算出手段にて算出された既燃ガスの吹き返し量とに基づいて吸気系へのスモークの吹き返し量を求め、該スモークの吹き返し量が基準範囲となるように燃料噴射時期を補正することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項1〜5のいずれかにおいて、前記吹き返し量算出手段は、バルブオーバラップ期間に応じて前記吹き返し量を算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項1〜5のいずれかにおいて、前記吹き返し量算出手段は、吸気圧に応じて前記吹き返し量を算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項1〜5のいずれかにおいて、前記吹き返し量算出手段は、排気バルブの閉弁時期及び吸気バルブの開弁時期に応じて前記吹き返し量を算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項1〜5のいずれかにおいて、前記吹き返し量算出手段は、エンジン回転数に応じて前記吹き返し量を算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項1〜5のいずれかにおいて、前記吹き返し量算出手段は、バルブオーバラップ期間及び吸気圧に応じて前記吹き返し量を算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項1〜5のいずれかにおいて、前記吹き返し量算出手段は、バルブオーバラップ期間、吸気圧及びエンジン回転数に応じて前記吹き返し量を算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項1〜5のいずれかにおいて、前記吹き返し量算出手段は、排気バルブの閉弁時期、吸気バルブの開弁時期及び吸気圧に応じて前記吹き返し量を算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項1〜5のいずれかにおいて、前記吹き返し量算出手段は、排気バルブの閉弁時期、吸気バルブの開弁時期、吸気圧及びエンジン回転数に応じて前記吹き返し量を算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項6,8,10〜13のいずれかにおいて 前記吹き返し量算出手段は、バルブオーバラップ期間が長くなるほど前記吹き返し量を大きく算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項7,10〜13のいずれかにおいて 前記吹き返し量算出手段は、吸気圧が低くなるほど前記吹き返し量を大きく算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項9,11,13のいずれかにおいて 前記吹き返し量算出手段は、エンジン回転数が低くなるほど前記吹き返し量を大きく算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置であって、
エンジンの運転状態に基づいて既燃ガス中のスモーク量を表す物理量あるいは該スモーク量を反映する物理量を算出するスモーク物理量算出手段と、
圧縮行程期間に燃料噴射時期が存在する場合には、前記スモーク物理量算出手段にて算出された物理量に基づいて燃料噴射時期を進角補正する燃料噴射時期補正手段と、
を備えたことを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。 - 請求項17において、前記燃料噴射時期補正手段は、前記スモーク物理量算出手段にて算出された物理量に基づいて、圧縮行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を進角補正するとともに、吸気行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を遅角補正することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項17又は18において、前記スモーク物理量算出手段は、前記物理量として、エンジンの運転状態に基づいて燃料噴射に伴うピストン頂面への燃料付着量を算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項17〜19のいずれかにおいて、前記スモーク物理量算出手段は、燃料噴射圧力に応じて前記物理量を算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項20において、前記スモーク物理量算出手段は、燃料噴射圧力が高いほど前記物理量を大きく算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項17〜19のいずれかにおいて、前記スモーク物理量算出手段は、エンジン回転数に応じて前記物理量を算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項22において、前記スモーク物理量算出手段は、圧縮行程期間に噴射時期が存在する場合には、エンジン回転数が高いほど前記物理量を大きく算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項22において、前記スモーク物理量算出手段は、吸気行程期間に噴射時期が存在する場合には、エンジン回転数が低いほど前記物理量を大きく算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項17〜19のいずれかにおいて、前記スモーク物理量算出手段は、エンジン温度に応じて前記物理量を算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項25において、前記スモーク物理量算出手段は、エンジン温度が低いほど前記物理量を大きく算出することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置であって、
圧縮行程期間に燃料噴射時期が存在する場合には、エンジン温度に基づいて燃料噴射時期を進角補正する燃料噴射時期補正手段を備えたことを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。 - 請求項27において、前記燃料噴射時期補正手段は、エンジン温度に基づいて、圧縮行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を進角補正するとともに、吸気行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を遅角補正することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置であって、
圧縮行程期間に燃料噴射時期が存在する場合には、エンジン温度及びエンジン回転数に基づいて燃料噴射時期を進角補正する燃料噴射時期補正手段を備えたことを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。 - 請求項29において、前記燃料噴射時期補正手段は、エンジン温度及びエンジン回転数に基づいて、圧縮行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を進角補正するとともに、吸気行程期間に噴射時期が存在する場合には燃料噴射時期を遅角補正することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項27〜30のいずれかにおいて、前記燃料噴射時期補正手段は、エンジン温度が低いほど燃料噴射時期を大きく補正することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項27〜31のいずれかにおいて、前記燃料噴射時期補正手段は、圧縮行程期間に噴射時期が存在する場合には、エンジン回転数が高いほど燃料噴射時期を大きく進角補正することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項27〜31のいずれかにおいて、前記燃料噴射時期補正手段は、吸気行程期間に噴射時期が存在する場合には、エンジン回転数が低いほど燃料噴射時期を大きく遅角補正することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- エンジンの運転状態に応じてバルブタイミングを調節する可変動弁系を備えるとともに燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置であって、
バルブオーバラップ期間を検出するバルブオーバラップ検出手段と、
吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態か否かを判定するスモーク吹き返し状態判定手段と、
圧縮行程期間に燃料噴射時期が存在する時に、前記スモーク吹き返し状態判定手段にて吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態であると判定された場合には、前記バルブオーバラップ検出手段にて検出されたバルブオーバラップ期間に基づいて燃料噴射時期を進角補正する燃料噴射時期補正手段と、
を備えたことを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。 - 請求項34において、前記燃料噴射時期補正手段は、前記スモーク吹き返し状態判定手段にて吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態であると判定された場合には、前記バルブオーバラップ検出手段にて検出されたバルブオーバラップ期間に基づいて、圧縮行程期間に噴射時期が存在する時には燃料噴射時期を進角補正するとともに、吸気行程期間に噴射時期が存在する時には燃料噴射時期を遅角補正することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- エンジンの運転状態に応じてバルブタイミングを調節する可変動弁系を備えるとともに燃焼室内に燃料を噴射する筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置であって、
バルブオーバラップ期間を検出するバルブオーバラップ検出手段と、
吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態か否かを判定するスモーク吹き返し状態判定手段と、
吸気行程期間に燃料噴射時期が存在する時に、前記スモーク吹き返し状態判定手段にて吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態であると判定された場合には、前記バルブオーバラップ検出手段にて検出されたバルブオーバラップ期間に基づいて燃料噴射時期を遅角補正する燃料噴射時期補正手段と、
を備えたことを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。 - 請求項34〜36のいずれかにおいて 前記燃料噴射時期補正手段は、バルブオーバラップ期間が長くなるほど燃料噴射時期を大きく補正することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項34〜37のいずれかにおいて、前記スモーク吹き返し状態判定手段は、低回転、低吸気圧及び低エンジン温度の内の1つ又は2つ以上の条件が成立した場合に、吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態であると判定することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項38において、前記燃料噴射時期補正手段は、前記スモーク吹き返し状態判定手段にて低エンジン温度の条件成立により吸気系へのスモークの吹き返し量が多くなるエンジン運転状態であると判定されたことで燃料噴射時期を補正した時には、エンジン温度の上昇に応じて燃料噴射時期に対する補正を徐々に小さくすることを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項38又は39において、前記燃料噴射時期補正手段は、エンジン温度の上昇に応じてバルブオーバラップ期間が増加した場合には該バルブオーバラップ期間の増加に応じて前記補正を大きくする処理を加えることを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項1〜16のいずれかにおける前記吹き返し量算出手段と前記燃料噴射時期補正手段との処理を予め実行することによって得られているエンジンの運転状態をパラメータとする燃料噴射時期の補正値あるいは補正後の燃料噴射時期のマップを用いて、筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期を制御することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項17〜26のいずれかにおける前記スモーク物理量算出手段と前記燃料噴射時期補正手段との処理を予め実行することによって得られているエンジンの運転状態をパラメータとする燃料噴射時期の補正値あるいは補正後の燃料噴射時期のマップを用いて、筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期を制御することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項27〜33のいずれかにおける前記燃料噴射時期補正手段の処理を予め実行することによって得られているエンジンの運転状態をパラメータとする燃料噴射時期の補正値あるいは補正後の燃料噴射時期のマップを用いて、筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期を制御することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
- 請求項34〜40のいずれかにおける前記バルブオーバラップ検出手段、前記スモーク吹き返し状態判定手段及び前記燃料噴射時期補正手段の処理を予め実行することによって得られているエンジンの運転状態をパラメータとする燃料噴射時期の補正値あるいは補正後の燃料噴射時期のマップを用いて、筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期を制御することを特徴とする筒内噴射型エンジンの燃料噴射時期制御装置。
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