JP2004211170A - 磁気特性、溶接性に優れた高強度防爆バンド用鋼板 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた磁気特性および溶接性を有する高強度防爆バンド用鋼板を提供すること。
【解決手段】C:0.001〜0.05mass%(以下単に%と略記する)、Si:1%超3%以下、Mn:0.2〜2.5%、P:0.02〜0.12%、O:0.005%以下、S:0.020%以下、N:0.005%以下を含有し、かつ、(Pmax−Pave)×100/Pave(ただし、Pmaxは鋼板内での最大P濃度、Paveは鋼板内での平均P濃度を表す)で表される鋼板内でのPの偏析率が100%以下、フェライトの平均結晶粒径は10〜25μmであり、非履歴透磁率が10000以上である。
【選択図】 なし
【解決手段】C:0.001〜0.05mass%(以下単に%と略記する)、Si:1%超3%以下、Mn:0.2〜2.5%、P:0.02〜0.12%、O:0.005%以下、S:0.020%以下、N:0.005%以下を含有し、かつ、(Pmax−Pave)×100/Pave(ただし、Pmaxは鋼板内での最大P濃度、Paveは鋼板内での平均P濃度を表す)で表される鋼板内でのPの偏析率が100%以下、フェライトの平均結晶粒径は10〜25μmであり、非履歴透磁率が10000以上である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、テレビ等のカラー陰極線管において、パネルガラスの周部分を緊締する防爆バンド用鋼板に関し、特に、磁気特性、溶接性に優れた高強度防爆バンド用鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレビ等のカラー陰極線管は、内部の高真空状態によるパネル面の凹形状の変形や爆縮を防止するため、パネル面の周囲を防爆バンド(ヒートシュリンクバンド)で緊締している。さらに、この防爆バンドは、内部磁気シールドと同様に地磁気シールドを行う機能も有しており、地磁気による蛍光面に対する着弾位置のずれ、すなわち色ずれが生じることを防止している。
【0003】
従来この防爆バンド用の材料としては、降伏強度がおよそ230N/mm2程度の鋼板が用いられている。しかし、このような材料を防爆バンドとして用いた場合、パネル面の変形を補正する必要があり、そのためバンドの重量が重くなるといった問題があった。この問題を解決するため、強度の高い高強度鋼板を用い、これにより防爆バンドの板厚の減少を図るとともに、磁気シールド性といった観点から鋼板の透磁率も向上させる必要があった。
【0004】
これらの防爆バンド用材料に対する要求特性を満足すべく、特許文献1および特許文献2が提案されている。これらは、パネルガラスの軽量化にメリットがあると考えられる降伏強度340N/mm2以上の強度レベルを実現し、かつ透磁率もμ0.35が300以上の値を実現している。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−40417号公報
【特許文献2】
特開2001−40419号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1および2に開示された鋼板では、ある程度の地磁気シ−ルド性は得られるものの、必ずしも要求されるレベルに達しているとはいえない。
【0007】
また、防爆バンドはTV部材として組み込まれる際、スリット、曲げ加工後、前記バンドの端部をスポット溶接し、その後、拡張、焼きばめの工程を経てパネルガラスの周部分を緊締するため、前記スポット溶接部の接合の信頼性が高いこと、すなわち優れた溶接性も求められるが、特許文献1および2に開示される成分組成では溶接性が必ずしも良いレベルではない。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、優れた磁気特性および溶接性を有する高強度防爆バンド用鋼板を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した課題を解決すべ<研究を重ねた結果、成分組成を適切に調整し、かつPの偏析率、フェライトの平均結晶粒径、および非履歴透磁率を特定の範囲に規定することにより、優れた磁気特性および溶接性を有する高強度防爆バンド用鋼板が得られることを見出した。
【0010】
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものであり、C:0.001〜0.05mass%(以下単に%と略記する)、Si:1%超3%以下、Mn:0.2〜2.5%、P:0.02〜0.12%、O:0.005%以下、S:0.020%以下、N:0.005%以下を含有し、かつ、(Pmax−Pave)×100/Pave(ただし、Pmaxは鋼板内での最大P濃度、Paveは鋼板内での平均P濃度を表す)で表される鋼板内でのPの偏析率が100%以下、フェライトの平均結晶粒径は10〜25μmであり、非履歴透磁率が10000以上であることを特徴とする磁気特性、溶接性に優れた高強度防爆バンド用鋼板を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、磁気特性について説明する。
本発明においては、優れた磁気シールド性を得るために非履歴透磁率を10000以上とする。非履歴透磁率とは、電子情報通信学会誌、Vol.J79−C−11,No.6,p311〜319,’96.6に述べられているように、地磁気中で消磁後の残留磁化を地磁気で除したものである。本発明者らは、前記バンド材の磁気シールド性の最適な指標となる磁気特性パラメータを系統的に調査した結果、例えば、上記特許文献1および2(特開2001−40417および特開2001−40419)の中で指標とされている低磁場(0.35Oe)での透磁率が高い鋼板が必ずしも非履歴透磁率が高いとは限らないこと、および上記低磁場(0.35Oe)での透磁率より非履歴透磁率の方が、地磁気中の消磁後のバンド材の磁気シールド性の指標として適していることを見出した。このため、本発明では、良好な磁気シールド性を実現するための磁気特性として非履歴透磁率を10000以上に規定した。
【0012】
次に、本発明の鋼板の成分組成について説明する。
本発明に係る防爆バンド用鋼板は、C:0.001〜0.05mass%(以下単に%と略記する)、Si:1%超3%以下、Mn:0.2〜2.5%、P:0.02〜0.12%、O:0.005%以下、S:0.020%以下、N:0.005%以下である。
【0013】
Cは、0.001%未満であると鋼板の溶接部強度が母材に対して向上しないため、本発明で意図する溶接性が向上しない。一方、Cが0.05%を超える場合、素材の保磁力が防爆バンドに作用する合理的な消磁回路による最大消磁磁界(170A/m)を大きく超えてしまうため、消磁不十分となって本来の磁気シールド性能が得られない。以上より、C含有量を0.001〜0.05%の範囲とした。なお、より好ましくはC含有量は0.03%以下、さらに好ましくは0.02%以下である。
【0014】
Siは、本発明で意図する磁気特性を向上させるとともに、強度を上昇させる元素である。Si含有量が1%以下であると、本発明で意図する磁気特性が得られない。一方Si含有量が3%を超えると本発明で意図する溶接性が劣化する。
そのため、Si含有量を1%超3%以下とした。
【0015】
Mnは本発明においては、強度を上昇させ、さらには溶接性も改善する好ましい添加元素である。しかし、Mn含有量が0.2%未満では、前記した本発明の効果が得られず、一方、2.5%を超えると本発明で意図する磁気特性が得られなくなる。よって、Mn含有量を0.2〜2.5%とした。
【0016】
Pは、本発明で意図する磁気特性を劣化させることなく強度を上昇させる元素であるため、添加することが好ましい。しかし、P含有量が0.02%未満ではその効果が得られず、0.12%を超えると溶接性および磁気特性が劣化する。
そのためP含有量を0.02〜0.12%とした。
【0017】
Oは本発明で意図する磁気特性を得るために低減すべき元素である。O含有量が0.005%を超えると本発明で意図する磁気特性が得られないため、その上限を0.005%とする。
【0018】
Sは本発明で意図する磁気特性を得るために低減すべき元素である。S量が0.020%を超えると本発明で意図する磁気特性が得られないため、その上限を0.020%とする。S含有量のより好ましい範囲は、0.01%以下である。
【0019】
Nは本発明で意図する磁気特性を得るために低減すべき元素である。N量含有量が0.005%を超えると本発明で意図する磁気特性が得られないため、その上限を0.005%とする。N含有量のより好ましい範囲は、0.003%以下である。
【0020】
次に、鋼板内でのPの偏析率について説明する。
本発明においては、良好な溶接性を得るために、鋼板内でのPの偏析率を特定値内へ制御することが必須である。すなわち、(Pmax−Pave)×100/Pave(ただし、Pmaxは鋼板内での最大P濃度、Paveは鋼板内での平均P濃度を表す。)で表される鋼板内のPの偏析率を100%以下とすることで、本発明範囲内の化学成分組成範囲において溶接性を本発明で意図する良好なレベルまで高めることができる。
【0021】
Pの偏析率については、鋼板サンプルの圧延方向断面においてEMPA(Electron Probe Micro Analyzer)によるPの線分析を板厚方向に行い、得られたデータのPの平均濃度をPave、P偏析部の最高濃度をPmaxとして、前記した計算式にて求めることができる。
【0022】
次に、鋼板のフェライトの平均結晶粒径について説明する。
フェライトの平均結晶粒径については、本発明で意図する強度、磁気特性を得るためには、10〜25μmとする必要がある。10μm未満では本発明で意図する磁気特性が得られず、一方25μmを超えると所用の強度が得られない。よって、フェライトの平均結晶粒径を10〜25μmにとした。フェライト結晶粒径は、ナイタールエッチングにより結晶粒径を現出させた後に顕微鏡写真をとり、この写真を用いて切断法(既知の長さの直線を引き、これと交わる粒の数を計算する方法)により求めることができる。
【0023】
次に、以上の本発明の鋼板を得るための製造方法の一例について説明する。
上述した成分組成を有する鋼の連続鋳造スラブ(連続鋳造時に電磁攪拌および/または軽圧下鋳造を実施)を連続鋳造後、1200℃以下の温度にて加熱し、その後、粗圧延を開始し、830〜890℃で熱間圧延を終了し、冷却後620〜680℃にて巻き取り、引き続き場合により680〜720℃で熱延板焼鈍を施し(焼鈍前で調質圧延を施してもよい)、得られた熱延コイルを酸洗の後、冷間圧延を施し、連続焼鈍もしくは箱焼鈍を700〜850℃で施す。これにより本発明の鋼板が得られる。
【0024】
本発明においては、上記のようにして得られた鋼板に対し、耐食性付与のため、電気めっきラインに通板して、電気Zn−Niめっき(例えば付着量20g/m2程度)等のZn系めっきや、それに加えて表面に耐食性または耐熱性を向上させる皮膜を形成させる処理を行ってもよい。
【0025】
【実施例】
次に、本発明による具体的な実施例について、比較例と比較しながら以下に説明する。
表1に示すような化学成分を有するNo.1〜9の鋼を溶製後鋳造し(鋳造時に電磁攪拌を実施)、スラブとした後、熱間圧延を行い熱延コイル(板厚2.8mm)を得た。仕上げ圧延温度は870℃とした。また、仕上げ圧延後の巻取温度は680℃とした。材料No.7は鋳造時に電磁攪拌を行わなかった。
【0026】
得られた熱延コイルに対して700℃で熱延板焼鈍を施し、引き続き酸洗の後、冷問圧延を施し、1.0mmtの冷延板を得た。得られた冷延板を700℃で60秒焼鈍を施して供試鋼板を得た。
【0027】
得られた供試鋼板からサンプルを切り出し、降伏強度、および0.35Oeのオフセット磁界を重畳させて消磁処理を行った場合の非履歴透磁率を測定した。
なお、非履歴透磁率は、以下のように測定した。
【0028】
1)1次コイルに減衰する交流電流を流してリング試験片を完全消磁する。
2)3次コイルに直流電流を流して0.35Oeの直流バイアス磁界を発生させた状態で、再度1次コイルに減衰する交流電流を流して試験片を消磁する。
3)1次コイルに電流を流して試験片を励磁し、発生した磁束を2次コイルで検出してB−H曲線を測定する。
4)B−H曲線より非履歴透磁率を測定する。
【0029】
また、以上の供試鋼板について溶接性を評価した。溶接性については、焼鈍板を4枚重ねて、スポット溶接を行い評価した。溶接は、電極 F形−DR形先端径6mmの組み合わせにて、溶接電流7.0kAで通電時間0.5秒(30サイクル/60Hz)、加圧力5880Nで1段通電し、その後、溶接部を2枚まとめて剥離するピール試験を行い、溶接部内で剥離破断した場合を評点“×”の不良、溶接部周囲の母材部でのプラグ破断した場合を評点“○”の良好とした。
【0030】
降伏強度および非履歴透磁率の測定結果、ならびに溶接性の評価結果を表2に示す。
【0031】
表2に示すように、本発明で規定される成分組成、P偏析率、組織を有するNo.1〜5の材料は、降伏強度が340N/mm2以上で、非履歴透磁率が10000以上、保磁力が240A/m未満であるため良好な磁気シールド性を示し、溶接性も良好であった。これらに対して、材料No.6はSi含有量が本発明規定上限を超えるもの、材料No.7はP偏析率が本発明規定上限を超えるもの、材料No.8はP含有量が本発明規定の上限を超えるもの、材料No.9はC含有量が本発明規定上限を超えるものであり、磁気特性、溶接性の1つ以上が劣っており、良好な磁気特性および溶接性を得るためには本発明の範囲内であることが必要であることが理解される。
【0032】
以上のように、本発明に規定される構成要件を満たすことにより、所要の降伏強度、磁気特性、溶接性を実現できることが確認された。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、成分組成を適切に調整し、かつPの偏析率、フェライトの平均結晶粒径、および非履歴透磁率を特定の範囲に規定することにより、優れた磁気特性および溶接性を有する高強度防爆バンド用鋼板を得ることができ、工業上有用な効果がもたらされる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、テレビ等のカラー陰極線管において、パネルガラスの周部分を緊締する防爆バンド用鋼板に関し、特に、磁気特性、溶接性に優れた高強度防爆バンド用鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレビ等のカラー陰極線管は、内部の高真空状態によるパネル面の凹形状の変形や爆縮を防止するため、パネル面の周囲を防爆バンド(ヒートシュリンクバンド)で緊締している。さらに、この防爆バンドは、内部磁気シールドと同様に地磁気シールドを行う機能も有しており、地磁気による蛍光面に対する着弾位置のずれ、すなわち色ずれが生じることを防止している。
【0003】
従来この防爆バンド用の材料としては、降伏強度がおよそ230N/mm2程度の鋼板が用いられている。しかし、このような材料を防爆バンドとして用いた場合、パネル面の変形を補正する必要があり、そのためバンドの重量が重くなるといった問題があった。この問題を解決するため、強度の高い高強度鋼板を用い、これにより防爆バンドの板厚の減少を図るとともに、磁気シールド性といった観点から鋼板の透磁率も向上させる必要があった。
【0004】
これらの防爆バンド用材料に対する要求特性を満足すべく、特許文献1および特許文献2が提案されている。これらは、パネルガラスの軽量化にメリットがあると考えられる降伏強度340N/mm2以上の強度レベルを実現し、かつ透磁率もμ0.35が300以上の値を実現している。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−40417号公報
【特許文献2】
特開2001−40419号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1および2に開示された鋼板では、ある程度の地磁気シ−ルド性は得られるものの、必ずしも要求されるレベルに達しているとはいえない。
【0007】
また、防爆バンドはTV部材として組み込まれる際、スリット、曲げ加工後、前記バンドの端部をスポット溶接し、その後、拡張、焼きばめの工程を経てパネルガラスの周部分を緊締するため、前記スポット溶接部の接合の信頼性が高いこと、すなわち優れた溶接性も求められるが、特許文献1および2に開示される成分組成では溶接性が必ずしも良いレベルではない。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、優れた磁気特性および溶接性を有する高強度防爆バンド用鋼板を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述した課題を解決すべ<研究を重ねた結果、成分組成を適切に調整し、かつPの偏析率、フェライトの平均結晶粒径、および非履歴透磁率を特定の範囲に規定することにより、優れた磁気特性および溶接性を有する高強度防爆バンド用鋼板が得られることを見出した。
【0010】
本発明は、このような知見に基づいて完成されたものであり、C:0.001〜0.05mass%(以下単に%と略記する)、Si:1%超3%以下、Mn:0.2〜2.5%、P:0.02〜0.12%、O:0.005%以下、S:0.020%以下、N:0.005%以下を含有し、かつ、(Pmax−Pave)×100/Pave(ただし、Pmaxは鋼板内での最大P濃度、Paveは鋼板内での平均P濃度を表す)で表される鋼板内でのPの偏析率が100%以下、フェライトの平均結晶粒径は10〜25μmであり、非履歴透磁率が10000以上であることを特徴とする磁気特性、溶接性に優れた高強度防爆バンド用鋼板を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、磁気特性について説明する。
本発明においては、優れた磁気シールド性を得るために非履歴透磁率を10000以上とする。非履歴透磁率とは、電子情報通信学会誌、Vol.J79−C−11,No.6,p311〜319,’96.6に述べられているように、地磁気中で消磁後の残留磁化を地磁気で除したものである。本発明者らは、前記バンド材の磁気シールド性の最適な指標となる磁気特性パラメータを系統的に調査した結果、例えば、上記特許文献1および2(特開2001−40417および特開2001−40419)の中で指標とされている低磁場(0.35Oe)での透磁率が高い鋼板が必ずしも非履歴透磁率が高いとは限らないこと、および上記低磁場(0.35Oe)での透磁率より非履歴透磁率の方が、地磁気中の消磁後のバンド材の磁気シールド性の指標として適していることを見出した。このため、本発明では、良好な磁気シールド性を実現するための磁気特性として非履歴透磁率を10000以上に規定した。
【0012】
次に、本発明の鋼板の成分組成について説明する。
本発明に係る防爆バンド用鋼板は、C:0.001〜0.05mass%(以下単に%と略記する)、Si:1%超3%以下、Mn:0.2〜2.5%、P:0.02〜0.12%、O:0.005%以下、S:0.020%以下、N:0.005%以下である。
【0013】
Cは、0.001%未満であると鋼板の溶接部強度が母材に対して向上しないため、本発明で意図する溶接性が向上しない。一方、Cが0.05%を超える場合、素材の保磁力が防爆バンドに作用する合理的な消磁回路による最大消磁磁界(170A/m)を大きく超えてしまうため、消磁不十分となって本来の磁気シールド性能が得られない。以上より、C含有量を0.001〜0.05%の範囲とした。なお、より好ましくはC含有量は0.03%以下、さらに好ましくは0.02%以下である。
【0014】
Siは、本発明で意図する磁気特性を向上させるとともに、強度を上昇させる元素である。Si含有量が1%以下であると、本発明で意図する磁気特性が得られない。一方Si含有量が3%を超えると本発明で意図する溶接性が劣化する。
そのため、Si含有量を1%超3%以下とした。
【0015】
Mnは本発明においては、強度を上昇させ、さらには溶接性も改善する好ましい添加元素である。しかし、Mn含有量が0.2%未満では、前記した本発明の効果が得られず、一方、2.5%を超えると本発明で意図する磁気特性が得られなくなる。よって、Mn含有量を0.2〜2.5%とした。
【0016】
Pは、本発明で意図する磁気特性を劣化させることなく強度を上昇させる元素であるため、添加することが好ましい。しかし、P含有量が0.02%未満ではその効果が得られず、0.12%を超えると溶接性および磁気特性が劣化する。
そのためP含有量を0.02〜0.12%とした。
【0017】
Oは本発明で意図する磁気特性を得るために低減すべき元素である。O含有量が0.005%を超えると本発明で意図する磁気特性が得られないため、その上限を0.005%とする。
【0018】
Sは本発明で意図する磁気特性を得るために低減すべき元素である。S量が0.020%を超えると本発明で意図する磁気特性が得られないため、その上限を0.020%とする。S含有量のより好ましい範囲は、0.01%以下である。
【0019】
Nは本発明で意図する磁気特性を得るために低減すべき元素である。N量含有量が0.005%を超えると本発明で意図する磁気特性が得られないため、その上限を0.005%とする。N含有量のより好ましい範囲は、0.003%以下である。
【0020】
次に、鋼板内でのPの偏析率について説明する。
本発明においては、良好な溶接性を得るために、鋼板内でのPの偏析率を特定値内へ制御することが必須である。すなわち、(Pmax−Pave)×100/Pave(ただし、Pmaxは鋼板内での最大P濃度、Paveは鋼板内での平均P濃度を表す。)で表される鋼板内のPの偏析率を100%以下とすることで、本発明範囲内の化学成分組成範囲において溶接性を本発明で意図する良好なレベルまで高めることができる。
【0021】
Pの偏析率については、鋼板サンプルの圧延方向断面においてEMPA(Electron Probe Micro Analyzer)によるPの線分析を板厚方向に行い、得られたデータのPの平均濃度をPave、P偏析部の最高濃度をPmaxとして、前記した計算式にて求めることができる。
【0022】
次に、鋼板のフェライトの平均結晶粒径について説明する。
フェライトの平均結晶粒径については、本発明で意図する強度、磁気特性を得るためには、10〜25μmとする必要がある。10μm未満では本発明で意図する磁気特性が得られず、一方25μmを超えると所用の強度が得られない。よって、フェライトの平均結晶粒径を10〜25μmにとした。フェライト結晶粒径は、ナイタールエッチングにより結晶粒径を現出させた後に顕微鏡写真をとり、この写真を用いて切断法(既知の長さの直線を引き、これと交わる粒の数を計算する方法)により求めることができる。
【0023】
次に、以上の本発明の鋼板を得るための製造方法の一例について説明する。
上述した成分組成を有する鋼の連続鋳造スラブ(連続鋳造時に電磁攪拌および/または軽圧下鋳造を実施)を連続鋳造後、1200℃以下の温度にて加熱し、その後、粗圧延を開始し、830〜890℃で熱間圧延を終了し、冷却後620〜680℃にて巻き取り、引き続き場合により680〜720℃で熱延板焼鈍を施し(焼鈍前で調質圧延を施してもよい)、得られた熱延コイルを酸洗の後、冷間圧延を施し、連続焼鈍もしくは箱焼鈍を700〜850℃で施す。これにより本発明の鋼板が得られる。
【0024】
本発明においては、上記のようにして得られた鋼板に対し、耐食性付与のため、電気めっきラインに通板して、電気Zn−Niめっき(例えば付着量20g/m2程度)等のZn系めっきや、それに加えて表面に耐食性または耐熱性を向上させる皮膜を形成させる処理を行ってもよい。
【0025】
【実施例】
次に、本発明による具体的な実施例について、比較例と比較しながら以下に説明する。
表1に示すような化学成分を有するNo.1〜9の鋼を溶製後鋳造し(鋳造時に電磁攪拌を実施)、スラブとした後、熱間圧延を行い熱延コイル(板厚2.8mm)を得た。仕上げ圧延温度は870℃とした。また、仕上げ圧延後の巻取温度は680℃とした。材料No.7は鋳造時に電磁攪拌を行わなかった。
【0026】
得られた熱延コイルに対して700℃で熱延板焼鈍を施し、引き続き酸洗の後、冷問圧延を施し、1.0mmtの冷延板を得た。得られた冷延板を700℃で60秒焼鈍を施して供試鋼板を得た。
【0027】
得られた供試鋼板からサンプルを切り出し、降伏強度、および0.35Oeのオフセット磁界を重畳させて消磁処理を行った場合の非履歴透磁率を測定した。
なお、非履歴透磁率は、以下のように測定した。
【0028】
1)1次コイルに減衰する交流電流を流してリング試験片を完全消磁する。
2)3次コイルに直流電流を流して0.35Oeの直流バイアス磁界を発生させた状態で、再度1次コイルに減衰する交流電流を流して試験片を消磁する。
3)1次コイルに電流を流して試験片を励磁し、発生した磁束を2次コイルで検出してB−H曲線を測定する。
4)B−H曲線より非履歴透磁率を測定する。
【0029】
また、以上の供試鋼板について溶接性を評価した。溶接性については、焼鈍板を4枚重ねて、スポット溶接を行い評価した。溶接は、電極 F形−DR形先端径6mmの組み合わせにて、溶接電流7.0kAで通電時間0.5秒(30サイクル/60Hz)、加圧力5880Nで1段通電し、その後、溶接部を2枚まとめて剥離するピール試験を行い、溶接部内で剥離破断した場合を評点“×”の不良、溶接部周囲の母材部でのプラグ破断した場合を評点“○”の良好とした。
【0030】
降伏強度および非履歴透磁率の測定結果、ならびに溶接性の評価結果を表2に示す。
【0031】
表2に示すように、本発明で規定される成分組成、P偏析率、組織を有するNo.1〜5の材料は、降伏強度が340N/mm2以上で、非履歴透磁率が10000以上、保磁力が240A/m未満であるため良好な磁気シールド性を示し、溶接性も良好であった。これらに対して、材料No.6はSi含有量が本発明規定上限を超えるもの、材料No.7はP偏析率が本発明規定上限を超えるもの、材料No.8はP含有量が本発明規定の上限を超えるもの、材料No.9はC含有量が本発明規定上限を超えるものであり、磁気特性、溶接性の1つ以上が劣っており、良好な磁気特性および溶接性を得るためには本発明の範囲内であることが必要であることが理解される。
【0032】
以上のように、本発明に規定される構成要件を満たすことにより、所要の降伏強度、磁気特性、溶接性を実現できることが確認された。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、成分組成を適切に調整し、かつPの偏析率、フェライトの平均結晶粒径、および非履歴透磁率を特定の範囲に規定することにより、優れた磁気特性および溶接性を有する高強度防爆バンド用鋼板を得ることができ、工業上有用な効果がもたらされる。
Claims (1)
- C:0.001〜0.05mass%(以下単に%と略記する)、Si:1%超3%以下、Mn:0.2〜2.5%、P:0.02〜0.12%、O:0.005%以下、S:0.020%以下、N:0.005%以下を含有し、かつ、(Pmax−Pave)×100/Pave(ただし、Pmaxは鋼板内での最大P濃度、Paveは鋼板内での平均P濃度を表す)で表される鋼板内でのPの偏析率が100%以下、フェライトの平均結晶粒径は10〜25μmであり、非履歴透磁率が10000以上であることを特徴とする磁気特性、溶接性に優れた高強度防爆バンド用鋼板。
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