JP2004210865A - インクジェットプリンター用水性インク - Google Patents

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隆行 大川
Tomoya Yamamoto
智也 山本
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Abstract

【課題】印刷物の耐水性、耐光性、耐オゾン性等の画像堅牢性に優れた色材粒子分散型の、保存安定性、発色性に優れたインクジェットプリンター用水性インクを提供すること。
【解決手段】少なくとも樹脂と色材を含む水性インクにおいて、樹脂が、それぞれ少なくとも1種の親水性ブロック及び疎水性ブロックを含むブロック共重合体であり、色材が建染染料であることを特徴とするインクジェットプリンター用水性インク。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェットプリンター用水性インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピューターの普及に伴い広く利用されるようになっているインクジェットプリンター用のインクとしては、安全性などの面で水性インクが主流となっており、中でも水溶性染料を用いた水性インクは、発色性に優れることから最も普及している。しかし、前記水溶性染料を用いた水性インクは、染料が水溶性であるために耐水性に劣り、又染料分子が光やオゾンなどにより劣化し易いといった問題がある。
【0003】
これらの問題を解決するために、色材が分子ではなく、複数の分子が集合した形態をとる顔料等の不溶性色材を用いた分散型のインクが検討されている。これらの分散型のインクは、耐水性、耐光性、耐オゾン性等のいわゆる画像堅牢性において水溶性色素を用いたインクよりも優れているが、分散体の保存安定性に難があり、色材の沈降やインク吐出口での目詰まり、色材の凝集に伴う乱反射等による色相の鮮鋭度低下といった問題を起こしやすい。
【0004】
そこで、不溶性色材を水性媒質中で安定に分散させるために、これらの不溶性色材に吸着しやすい部分と、水性媒質への親和性が高い部分とを含有するブロック共重合体を用いたインク(特許文献1参照)やグラフト共重合体を用いたインク(特許文献2参照)が提案されている。更に、水に不溶の油溶性染料を有機溶媒に溶解させた後にブロック共重合体と混合し、これに水を添加することで媒質を水性化して油溶性染料を微粒子として析出させる手法(特許文献3暗証)も提案されている。
【0005】
これらの技術では、不溶性色材と水性媒質の夫々に対して親和性を持つセグメントを有するブロック共重合体やグラフト共重合体の働きにより色材の分散安定性は改善されている。しかし顔料分散型のインクにおいては、顔料を微細化するための工程が複雑で、その微粒子化にも限界があり、分散体の保存安定性も十分とは言い難い。又、油溶性染料を用いたインクでは、本来完全溶解した分子状で用いるべき染料を凝集させて用いるため、染料の種類によっては色相の変化などを伴、,色再現性に問題が生じやすい。
【0006】
これらとは別に、建染染料を還元剤の存在化に水性媒質に溶解させた後、酸化して再び分散体とする手法が提案されている(特許文献4参照)。建染染料はそのままの状態では水不溶性であるが、ハイドロサルファイト等の還元剤で還元することにより水可溶となる性質を有しており、水溶液化した後に酸化して再び水不溶性とすることで微細な粒子を得ている。建染染料は元来酸化状態で用いることを前提に設計されているので、この方法により目的の色相に近い色材微粒子分散体が得られることになるが、生成した微粒子はそれが微細であるほど凝集を起こしやすく、通常の分散剤で十分な分散安定性を得るのは極めて困難である。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−179183号公報
【特許文献2】
特開平9−188732号公報
【特許文献3】
特開2002−97395公報
【特許文献4】
特公昭62−10548号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の状況に鑑み、本発明は、印刷物の耐水性、耐光性、耐オゾン性等の画像堅牢性が高い色材粒子分散型の、保存安定性、発色性に優れた水性インクを提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題は以下の本発明によって達せられる。即ち、本発明は、少なくとも樹脂と色材を含む水性インクにおいて、樹脂が、それぞれ少なくとも1種の親水性ブロック及び疎水性ブロックを含むブロック共重合体であり、色材が建染染料であることを特徴とするインクジェット用水性インクである。
【0010】
建染染料は水不溶性であり、水性媒質中では微粒子状となっているので、分子状で溶解する水溶性染料と比較して高い耐水性、耐光性、耐オゾン性を有し、又粒子化することによる色相の劣化も少ない。又、ブロック共重合体の疎水性セグメントは建染染料微粒子に吸着、あるいは建染染料微粒子を包み込む働きをし、一方親水性セグメントは、水性媒質との親和性が高いので、建染染料微粒子を保持した状態で液中に分散する。これにより、画像堅牢性の高い、分散安定性、発色性に優れたインクジェット用水性インクを得ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】
本発明で使用する樹脂は、インクが紙等の記録材に付与された後は、記録材に対して色材を定着させる作用をするものである。
本発明で使用する樹脂は、それぞれ少なくとも1種類の親水性ブロック(A)及び疎水性ブロック(B)からなるブロック共重合体である。
ブロック共重合体における各ブロックの配置は特に限定されないが、色材の分散性を高める観点からは親水性ブロックがポリマー鎖の末端にあるものが好ましい。例えば、AB型、ABA′型(AとA′は同じでも異なっていてもよい)、AA′B型、BB′A型等が挙げられる。又、A、A′、B、B′はホモポリマー又はコポリマーのブロックである。
【0013】
本発明で使用する好ましいブロック共重合体は、(メタ)アクリレート系モノマーのホモポリマー又はコポリマーからなる親水性ブロックと(メタ)アクリレ−ト系モノマーのホモポリマー又はコポリマーからなる疎水性ブロックを含むブロック共重合体、ビニルエーテル系モノマーのホモポリマー又はコポリマーからなる親水性ブロックとビニルエーテル系モノマーのホモポリマー又はコポリマーからなる疎水性ブロックを含むブロック共重合体である。
【0014】
(メタ)アクリレ−ト系モノマーのホモ又はコポリマーにおける親水性(メタ)アクリレ−ト系モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−トリメチルシロキシエチルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、1−エトキシエチルアクリレート、メタクリルアミド、アクリルアミド等が挙げられる。親水性ブロックがコポリマーの場合には、上記の親水性モノマーと下記の疎水性モノマーとのコポリマーも含まれる。
【0015】
(メタ)アクリレ−ト系モノマーのホモ又はコポリマーにおける疎水性(メタ)アクリレ−ト系モノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレ−ト、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等が挙げられる。
【0016】
上記の如き(メタ)アクリレート系モノマーを用いたブロック共重合体は、公知のアニオン重合やグループ移動重合等によって製造することができる。ブロック共重合体の数平均分子量(GPCによる)は、1,000〜20,000程度である。各ブロックの数平均分子量は500以上が好ましい。
【0017】
ビニルエーテル系ポリマーからなるブロックを有するポリマーは、例えば、疎水性を有するビニルエーテル類のブロックとしては、下記一般式(1)で示される繰り返し単位構造を有するブロックが好ましい。
−(CH2−CH(OR1))− (1)
上記の一般式(1)において、R1は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基のような脂肪族炭化水素基、フェニル基、ピリジル基、ベンジル基、トルイル基、キシリル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキレン基、ビフェニル基、フェニルピリジル基等のような、炭素原子が窒素原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基を表わす。また、芳香環上の水素原子は、炭化水素基で置換されていてもよい。R1の炭素数は1〜18が好ましい。
【0018】
またR1は、−(CH(R2)−CH(R3)−O)p−R4若しくは−(CH2m−(O)n−R4で表される基でもよい。この場合、R2及びR3は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を表わし、R4は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基のような脂肪族炭化水素基、フェニル基、ピリジル基、ベンジル基、トルイル基、キシリル基、アルキルフェニル基、フェニルアルキレン基、ビフェニル基、フェニルピリジル基等のような、炭素原子が窒素原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基(芳香環上の水素原子は、炭化水素基で置換されていてもよい)、−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2、−CH2−CH=CH2、−CH2−C(CH3)=CH2を表わし、これらの基のうちの水素原子は、化学的に可能である範囲で、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子と置換されていてもよい。R4の炭素数は1〜18が好ましい。pは1〜18が好ましく、mは1〜36が好ましく、nは0または1であるのが好ましい。
【0019】
1及びR4において、アルキル基またはアルケニル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、オレイル等であり、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロオクチル等である。
【0020】
次に、親水性を有するビニルエーテル類のブロックとしては、下記一般式(2)で選ばれる繰り返し単位構造を有するブロックが好ましい。
−(CH2−CH(OR5))− (2)
上記一般式(2)において、R5は、−(CH2−CH2−O)k−R6、−(CH2m−(O)n−R6、−R7−X、−(CH2−CH2−O)k−R7−X、−(CH2m−(O)n−Xで表わされる基である。この場合、R6は、水素原子、炭素数1から4までの直鎖または分枝状のアルキル基、及び−CO−CH=CH2、−CO−C(CH3)=CH2、−CH2−CH=CH2、−CH2−C(CH3)=CH2を表わし、R7はアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基またはシクロアルケニレン基のような脂肪族炭化水素基、フェニレン基、ピリジレン基、ベンジレン基、トルイレン基、キシリレン基、アルキルフェニレン基、フェニレンアルキレン基、ビフェニレン基、フェニルピリジレン基等のような、炭素原子が窒素原子で置換されていてもよい芳香族炭化水素基(芳香環上の水素原子は、炭化水素基で置換されていてもよい)を表わし、これらの基のうちの水素原子は、化学的に可能である範囲で、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子と置換されていてもよい。Xは、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基から選ばれるアニオン性を有する基を表わす。R7の炭素数は1〜18が好ましい。kは1〜18が好ましく、mは1〜36が好ましく、nは0または1であるのが好ましい。
【0021】
下記に、上記で説明した繰り返し単位を含むモノマー(I−a〜I−o)及びポリマー(II−a〜II−e)の構造を例示するが、本発明に用いられるポリビニルエーテル構造は、これらに限定されるものではない。
【0022】
【化1】
Figure 2004210865
【0023】
【化2】
Figure 2004210865
【0024】
更に、ポリビニルエーテルの繰り返し単位数[上記(II−a)〜(II−e)においては、m、n、l]は、それぞれ独立に、1〜10,000であることが好ましい。また、その合計が[上記(II−a)〜(II−e)においては、m+n+l]が、10〜20,000であることがより好ましい。また、数平均分子量で、500〜20,000,000ものが好ましく、1,000〜5,000,000のものがより好ましく、2,000〜2,000,000のものが最も好ましい。また、これらポリビニルエーテルは、それを他の高分子にグラフト結合させたもの使用しても良いし、他の繰り返し単位構造と共重合されたものを使用しても良い。又、各ブロックともビニルエーテル系モノマーとそれ以外のモノマーとの共重合体も含まれる。
【0025】
ビニルエーテル系ポリマーブロックを有する共重合体の合成方法は、特に限定されないが、カチオンリビング重合法を用いることにより長さ(分子量)を正確に揃えたホモポリマーや2成分以上のモノマーからなる共重合体、さらにはブロックポリマー、グラフトポリマー、グラジュエーションポリマー等の様々なポリマーを合成することができる。また、ポリビニルエーテルは、その側鎖に様々な官能基を導入することができる。
【0026】
本発明のインクジェットプリンター用水性インクで使用される色材は、建染染料である。本発明に用いる建染染料は、適当な還元剤によって還元すると水溶性となり、再び酸化すると水不溶性となるもので、例えば、インダントロン系、ピラントロン系、ベンザントロン系、アントラキノンカルバゾール系、アシルアミノアントラキノン系、アントラキノンアクリドン系、アントラキノンオキサゾール系等の各種染料を適用することができる。
【0027】
これらの建染染料は、水性インクを製造する際、それを水性媒質中に分散させた後、親水性ブロックと疎水性ブロックを有するブロック共重合体を適当量添加して安定な分散体を得る。さらに好ましくは、建染染料を水性媒質中に分散させた後、水酸化ナトリウムなどのアルカリを加え、さらにハイドロサルファイトなどの還元剤を添加することで水可溶な形に変換して均一な水溶液とし、然る後に、親水性ブロックと疎水性ブロックを有するブロック共重合体を適当量添加した後、空気の吹き込み、あるいは過酸化水素等の酸化剤の添加により酸化して、建染染料を微粒子として析出させる。
【0028】
インク中における建染染料と樹脂との質量比率は、固形分比で1:0.01〜1:2であることが好ましい。樹脂量が少なすぎると、本発明のインクによって形成される画像の耐擦過性、耐水性、耐マーカー性等、インクの記録材への定着性が十分でない場合があり、また、樹脂量が多すぎると、水性インクの粘性が高くなり、水性インクの吐出安定性や耐目詰まり性が低下する場合がある。
【0029】
本発明の水性インクは、前記の色材及び樹脂を分散又は溶解させる液媒体が必要であり、該液媒体は少なくとも水溶性の有機溶剤を含んでいてもよい。好ましくは水と水溶性有機溶剤との混合溶剤を水性インクの液媒体として使用する。本発明において液媒体に占める水溶性有機溶剤の割合は、例えば、5〜50質量%が好ましく、更に好ましくは10〜40質量%である。
【0030】
上記水溶性有機溶剤は、本発明のインクに、ノズル部分での乾燥による水性インクの固化を防止するために使用するものであって、具体的には、炭素数1から4のアルキルアルコール類(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等);ケトン又はケトアルコール類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン、ジアセトンアルコール等);エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等);ポリアルキレングリコール類(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等);アルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等);多価アルコール等のアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、トリエチレンモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等)、さらにはN−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0031】
特に好ましい水溶性有機溶媒は、グリセリン、多価アルコール(例えば、ジエチレングリコールやエチレングリコール等)であり、グリセリン以外の多価アルコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールやプロピレングリコールなどが挙げられる。水性インク中にはこれらの水性有機溶媒を2種類以上混合して用いてもよい。
【0032】
本発明のインクは上記水溶性有機溶剤とともに水を含有する。液媒体に占める水の割合としては、例えば、50〜100質量%、更には60〜100質量%であることが好ましい。また、水としては純水又はイオン交換水を用いることが好ましい。
【0033】
本発明のインク中における色材の水性インク全質量に占める割合は、例えば、0.1〜20質量%、更には1〜10質量%であることが好ましい。色材の量が1%未満では印字画像に十分な画像濃度が得られず、色材の量が10質量%を超えると、ノズルにおける目詰り等の吐出安定性が低下するだけで、画像の濃度が特別向上するわけでもない。
【0034】
また、本発明の水性インク中における前記樹脂の水性インク全質量に占める割合は、例えば、0.001〜40質量%、更には0.01〜20質量%であることが好ましい。前記樹脂の量が0.001質量%未満では得られる画像の耐擦過性、耐マーカ性等が低下し、一方、前記樹脂の量が40質量%を超えると、水性インクの粘性が高くなり、ノズルにおける水性インクの目詰り等の吐出安定性が低下する。
【0035】
なお、本発明の水性インクには、前記成分以外にも、例えば、界面活性剤、pH調整剤、酸化防止剤、防黴剤等各種の添加剤を添加してもよい。また、本発明の水性インクの粘度は25℃において1.0mPa・s〜5.0mPa・sであることが好ましい。
【0036】
【実施例】
次に合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、下記実施例により限定されるものではない。尚、以下の記載で「部」又は「%」とあるものは特に断らない限り質量基準である。又、以下の実施例において樹脂の分子量及び分子量分布はGPC(GelPermeation Chromatography:東ソー社製HLC−8220GPCを使用)により、樹脂の同定はNMR(ブルカー・バイオスピン社製DPX400を使用)により行なった。
【0037】
合成例1(疎水性ブロックと2つの親水性ブロックからなるABCトリブロック共重合体の合成)
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、1−イソブトキシエチルビニルエーテル12ミリモル、酢酸エチル16ミリモル、1−イソブトキシエチルアセテート0.1ミリモル、及びトルエン11cm3を加え、系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロライド0.2ミリモルを加え重合を開始し、ABCトリブロックポリマーのAブロックを合成した。
【0038】
分子量を時分割にGPCを用いてモニタリングし、Aブロックの重合が完了した後、1−メトキシエチルビニルエーテル(Bブロック)12ミリモルを添加して重合を続行した。同様にGPCで分子量をモニタリングし、Bブロックの重合が完了した後、2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エトキシビニルエーテル12ミリモルを添加して重合することで合成を行った。重合反応の停止は、系内に0.3%のアンモニア/メタノール溶液を加えて行た。この溶液中にジクロロメタンを加えて希釈し、0.6Nの塩酸溶液で3回、次いで蒸留水で3回洗浄し、エバポレーターで濃縮・乾固したものを真空乾燥させてABCトリブロック共重合体を得た(Mn(数平均分子量)=3.7×104、Mn/Mw=1.2(Mwは重量平均分子量))
【0039】
合成例2(疎水性ブロックと親水性ブロックからなるABジブロック共重合体の合成)
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス雰囲気下250℃で加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、1−メトキシエチルビニルエーテル12ミリモル、酢酸エチル16ミリモル、1−イソブトキシエチルアセテート0.1ミリモル、及びトルエン11cm3を加え、系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロライド0.2ミリモルを加え重合を開始し、ABジブロックポリマーのAブロックを合成した。
【0040】
分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、Aブロックの重合が完了した後、1−イソブトキシエチルビニルエーテル12ミリモルを添加することで合成を行った。重合反応の停止は、系内に0.3%のアンモニア/メタノール溶液を加えて行い、後は合成例1と同様にして、ABジブロック共重合体を得た(Mn=3.5×104、Mn/Mw=1.2)。
【0041】
実施例1
Nihonthrene Yellow GCN(住友化学社製C.I.バットイエロー2)10部を100部の水に分散させ、40%水酸化ナトリウム水溶液10部を添加した。この溶液にハイドロサルファイト5部を加え、60℃に加温しながら攪拌して透明な均一溶液を得た。この溶液を室温まで冷却後、合成例1で得たブロック共重合体10部を加えて溶解させ、35%過酸化水素水5部を加えて酸化することで黄色微粒子の分散液を得た。これを10%リン酸水溶液で中和した後、限外ろ過により無機塩を除去し、10部のグリセリンと10部のジエチレングリコールを添加した。更に最終的に色材の含量が5%となるように水を添加して水性インクとした。得られた水性インクを紙に塗布して色相を通常使用の場合と比較し、ほぼ同等(○)、やや劣化(△)、激しく劣化(×)で評価した。又、インク中の分散粒子の径を光散乱法により測定した。更に、水性インクを試験管に入れて静置し、1週間後の沈澱の生成状況を目視で調べ、沈澱なし(○)、微量の沈澱生成(△)、多量に沈澱(×)の3段階で評価した。以下の実施例及び比較例も同様である。結果を表1に示す。
【0042】
実施例2
合成例1のブロック共重合体を合成例2のブロック共重合体に代える以外は実施例1と同様にして水性インクを調製、評価した。
【0043】
実施例3
Nihonthrene Yellow GCNの代わりにNihonthrene Blue BC(住友化学社製C.I.バットブルー6)を用い、実施例1と同様にして水性インクを調製、評価した。
【0044】
実施例4
Nihonthrene Yellow GCNの代わりにNihonthrene Orange RRTS(住友化学社製)を用い、実施例1と同様にして水性インクを調製、評価した。
【0045】
実施例5
Nihonthrene Yellow GCNの代わりにIndanthrene Yellow 5GB(三井−BASF社製)を用い、実施例1と同様にして水性インクを調製、評価した。
【0046】
実施例6
Nihonthrene Yellow GCNSの代わりにIndanthrene Red FBB(三井−BASFは製)を用い、実施例1と同様にして水性インクを調製、評価した。
【0047】
実施例7
Nihonthrene Yellow GCNの代わりにCibanon Orange 3G MD(Ciba社製)を用い、実施例1と同様にして水性インクを調製、評価した。
【0048】
実施例8
Nihonthrene Yellow GCNの代わりにCibanon Red 2B MD(Ciba社製)を用い、実施例1と同様にして水性インクを調製、評価した。
【0049】
実施例9
Nihonthrene Yellow GCNの代わりにCibanon Blue GFJ MD(Ciba社製)を用い、実施例1と同様にして水性インクを調製、評価した。
【0050】
比較例1
Nihonthrene Yellow GCN(住友化学社製C.I.バットイエロー2)10部を100部の水に分散させ、40%水酸化ナトリウム水溶液10部を添加した。この溶液にハイドロサルファイト5部を加え、60℃に加温しながら攪拌して透明な均一溶液を得た。この溶液を室温まで冷却後、スチレン−マレイン酸共重合体10部を加えて溶解させ、35%過酸化水素水5部を加えて酸化することで黄色微粒子の分散液を得た。これを10%リン酸水溶液で中和した後、限外ろ過により無機塩を除去し、10部のグリセリンと10部のジエチレングリコールを添加した。さらに最終的に色材の含量が5%となるように水を添加して水性インクとした。得られた水性インクを紙に塗布して色相を通常使用の場合と比較し、ほぼ同等(○)、やや劣化(△)、激しく劣化(×)で評価した。又、インク中の分散粒子の径を光散乱法により測定した。さらに、水性インクを試験管に入れて静置し、1週間後の沈澱の生成状況を目視で調べ、沈澱なし(○)、微量の沈澱生成(△)、多量に沈澱(×)の3段階で評価した。結果を表1に示す。
【0051】
比較例2
Cibanon Orange 3G MD(Ciba社製)を用いて、比較例1と同様にして水性インクを調製した。得られた水性インク中の分散粒子の径を光散乱法により測定した。結果を表1に示す。
社製]を用いて減圧ろ過を行い、実施例及び比較例の水性インクを調製した。
【0052】
Figure 2004210865
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、耐擦過性、耐水性、耐マーカー性に優れ、またノズルでの吐出安定性の良好なインクジェット用インクが提供される。

Claims (3)

  1. 少なくとも樹脂と色材を含む水性インクにおいて、樹脂が、それぞれ少なくとも1種の親水性ブロック及び疎水性ブロックを含むブロック共重合体であり、色材が建染染料であることを特徴とするインクジェットプリンター用水性インク。
  2. 還元により水性媒質に溶解させた建染染料と前記ブロック共重合体とを混合した後に、酸化によって該建染染料を析出させる工程を含む製造工程を経て製造された請求項1に記載のインクジェットプリンター用水性インク。
  3. 前記ブロック共重合体の各ブロックが、ビニルエーテル系ポリマーからなる請求項1又は2に記載のインクジェットプリンター用水性インク。
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