JP2004209433A - 脱臭フィルター及び送風装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】吸湿機能を有する吸湿性材料に常温活性触媒を複合化した基材7におけるその吸湿性材料の表面に凝縮された水膜9に、空気を接触させてその空気に含まれる臭気ガス10を溶解させ、溶解させた臭気ガス10を常温活性触媒により酸化分解させるようにする。
【選択図】 図7
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、臭気ガスを含む空気、特に水溶性の臭気ガスを含む空気から臭気ガスを溶解し、脱臭する脱臭フィルター及びその脱臭フィルターを備えた送風装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、住居空間の断熱化及び高気密化が進むにつれ、室内空気の汚染が問題化している。室内空気の汚染源としては、煙草臭等の臭気ガス、ホルムアルデヒド等の有害ガス、カビや細菌等の空中浮遊微生物が主たるものである。これらのうちの臭気ガスを除去する手段としては、空気清浄機を使って室内空気を循環させながら脱臭するのが一般的である。実用化されている脱臭方式には、活性炭方式、オゾン脱臭方式、光触媒方式等がある(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭63−127759号公報
【特許文献2】
特開平2−78418号公報
【特許文献3】
特開平10−227469号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
活性炭を材料とする脱臭フィルターは、気流中に置かれるため気流中の臭気ガスを速やかに吸着することができ、脱臭効果の速効性は高い。しかしながら、活性炭の細孔表面に臭気ガスの分子が吸着し、細孔表面全体がこれらの分子に覆われると脱臭効果はなくなり、寿命となる。活性炭の脱臭フィルターが吸着した臭気ガスの分子を電気ヒーターの熱で脱着させて延命するにしろ、いずれにしても使い捨てられることになり、経済性が低く、環境保全のうえからも好ましくない。臭気ガスの分子を酸化分解することにより脱臭するオゾン脱臭方式や、微粒子状の酸化チタンに紫外線を照射して活性分子を発生させ、臭気ガスの分子と化学反応させて脱臭する光触媒方式では、吸着速度と比較して化学反応速度が遅いため、脱臭効果の速効性が低い。
【0005】
こうした問題点を解消すべく本発明者達は、高性能な吸湿性材料が、室温程度の低温度下でもその表面に凝縮された水膜が存在することに着目し、水洗い可能な吸湿性材料の水膜に空気を接触させて、水膜に空気に含まれる水溶性の臭気ガスを溶解させるようにして、水膜を水洗いにより除去し、再生できるようにした再生型脱臭フィルターを開発した。
【0006】
しかし、吸湿性材料の表面に凝縮された水膜に煙草臭や残留調理臭の主成分である水溶性の臭気ガスが、溶解し蓄積するにつれ、臭気の再放出や蓄積した臭気ガスが変質して異臭を発生するといった問題が生じた。この問題は、溶解した臭気ガスを水膜とともに洗い流すことにより解決できるが、例えば、煙草臭では比較的短期間に上記した問題が発生するため、実用上解決すべき課題となった。
【0007】
本発明は、係る課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、水溶性の臭気ガスを速やかに除去することができ、臭気の再放出や蓄積した臭気ガスが変質して異臭を発生するといったことのない、永年使用の可能な脱臭フィルターを開発することであり、その脱臭フィルターを使った空気清浄機や脱臭機等の送風装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を達成するために本発明は、吸湿機能を有する吸湿性材料に常温活性触媒を複合化した基材におけるその吸湿性材料の表面に凝縮された水膜に、空気を接触させて空気に含まれる臭気ガスを溶解させ、溶解させた臭気ガスを常温活性触媒により徐々に酸化分解させるようにする手段を採用する。
【0009】
前記課題を達成するために他の発明は、空気流を形成する送風機を備えた風路中に、吸湿機能を有する吸湿性材料に常温活性触媒を複合化した基材におけるその吸湿性材料の表面に凝縮された水膜に、空気流を接触させてその空気流に含まれる臭気ガスを溶解させ、溶解させた臭気ガスを常温活性触媒により徐々に酸化分解させる脱臭フィルターを設ける手段を採用する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本実施の形態は、図1や図2によって示すように循環風路1中や排気風路2中に除塵フィルター3及び送風機4を備えた空気清浄機や換気装置等の送風装置5に関するものである。この送風装置5は、室内空気を送風機4によって循環させながら除塵フィルター3によって塵埃を除去する図1に示すような構成か、室内空気を除塵フィルター3により浄化して室外に排気する図2に示すような構成である。図1では、送風機4の組込まれた循環風路1には、これを横断する形態に脱臭フィルター6が着脱可能に組込まれている。また、図2では、排気風路2に脱臭フィルター6が組込まれている。
【0011】
脱臭フィルター6は、吸湿機能を持つ吸湿性材料に常温活性触媒を複合化した基材7を図3に示すようなハニカム状や、図4に示すようなコルゲート状に成形して構成されている。吸湿性材料としては、シリカゲル又はゼオライトをベースとした吸湿性セラミックスが用いられている。吸湿性材料に複合化する常温活性触媒としては、貴金属と金属酸化物を複合した触媒が用いられている。貴金属としては、金、白金、イリジウム、ロジウムまたはルテニウムが、金属酸化物としては、酸化錫、酸化マンガン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化セリウム等がそれぞれ用いられている。吸湿性セラミックスは、常温活性触媒との複合化が容易であり、長寿命化を図ることができる。
【0012】
図3に示す脱臭フィルター6は、吸湿性材料として吸湿性セラミックスを用い、これに常温活性触媒として酸化マンガンと白金またはパラジウムの複合したものが複合化された基材7を、通常のセラミックスの製造工程を経て、低圧損な通気路8を多数持つハニカム状に成形されている。具体的には、コージライトを無機バインダーとして原料を格子状等に成形し、焼成炉で焼成して作られている(図3に示すフィルター形態1)。この脱臭フィルター6は、このままの形態で使用することができるが、枠に組込むことで補強することができる。
【0013】
なお、脱臭フィルター6は衝撃に強ければいいので、全てを上述の基材7で作る必要はない。例えば、コルゲート構造体の表面に基材7をコーティングした構成を採ってもいいし、細かく砕いた基材7を表面に張付けた構成を採っても、表面積が増加するので多孔質材に近い特性が得られる。
【0014】
図4に示す脱臭フィルター6は、ゼオライトに無機繊維パルプの混合水溶液を湿式抄紙してゼオライト混抄紙を作り、このゼオライト混抄紙をコルゲート加工してハニカム構造とし、この表面に酸化マンガンと白金を複合した常温活性触媒を担持させたものである(図4に示すフィルター形態2)。
【0015】
こうしたフィルター形態1,2の脱臭フィルター6について風速0.2〜1.0m/Sにおける圧力損失の測定結果は、図5に示すとおりである。即ち、フィルター形態1は圧力損失が少なく、フィルター形態2の方がやや圧力損失が大きい。しかしながら、こうした形態による圧力損失の差は、実用レベルではそれ程大きな差ではなく、形状等の加工性を勘案してフィルター形態1,2を選定すればよい。
【0016】
また、脱臭フィルター6の脱臭性能は、臭気ガスを含む空気が脱臭フィルター6を一回通過したときに臭気ガスが除去される割合を「一過性除去効率」として評価される。水溶性の臭気ガスとして代表的なアンモニア、アセトアルデヒド及び酢酸について一過性除去効率の測定結果を図6に示す。一過性除去効率は、風速に依存するため、風速0.2、0.5、1.0m/Sにおける測定結果である。この測定結果からも分かるように、フィルター形態1,2のいずれも高い一過性除去効率を有し、水溶性の臭気ガスの除去に速効性があることが確認できた。
【0017】
この脱臭フィルター6は、吸湿性材料が室温程度の温度下でも空気中の水蒸気を表面に吸着・凝縮し、図7に示すように水膜9を形成し、この水膜9に空気中の水溶性の臭気ガス10を溶解することで臭気除去機能を果たす。吸湿性材料の水膜9に溶解され保持された水溶性の臭気ガス10は、常温活性触媒により徐々に酸化分解され、脱臭フィルター6は自己再生する。つまり、メンテナンスフリーで永年使用することができる。
【0018】
煙草臭の主成分は、アセトアルデヒド、アンモニア及び酢酸であり、煙草臭専用の脱臭フィルター6として使用した結果、煙草臭を高効率で脱臭し、自己再生機能によりメンテナンスフリーで長期間使用できることが確認できた。
【0019】
一方、残留調理臭の主成分は、低級アルデヒド及び低級脂肪酸であり、いずれも水溶性の臭気ガスである。残留調理臭専用の脱臭フィルター6として使用した結果、残留調理臭を高効率で脱臭し、自己再生機能によりメンテナンスフリーで長期間使用できることが確認できた。
【0020】
つまり、この脱臭フィルター6を循環風路1中に設けた送風装置5では、循環風路1を流れる水溶性の臭気ガスを速やかに除去し、室内空気環境を向上させることができる。また、脱臭フィルター6を排気風路2中に設けた送風装置5では、室内に発生する水溶性の臭気ガスを速やかに除去し、室外へ排気することができ、ペットショップや焼肉店などについて、近隣に悪臭を放出することを回避できる。いずれにしろ、脱臭フィルター6は、自己再生するためメンテナンスフリーで長期にわたって機能し、使い捨てしないので、経済的であり地球環境保全の意味からも有効性がある。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、水溶性の臭気ガスを速やかに除去することができ、自己再生して臭気の再放出や蓄積した臭気ガスの変質による異臭を発生することのない、メンテナンスフリーの脱臭フィルターが得られる。
【0022】
また、他の発明によれば、水溶性の臭気ガスを速やかに除去することができ、自己再生して臭気の再放出や蓄積した臭気ガスの変質による異臭を発生することのない、メンテナンスフリーの送風装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態の送風装置の断面構成図である。
【図2】実施の形態の他の送風装置の断面構成図である。
【図3】実施の形態のフィルター形態1を示す斜視図である。
【図4】実施の形態のフィルター形態2を示す斜視図である。
【図5】実施の形態の各フィルター形態1,2の圧力損失を表に示す説明図である。
【図6】実施の形態の各フィルター形態の一過性除去効率を表に示す説明図である。
【図7】実施の形態の脱臭フィルター機能を示す説明図である。
【符号の説明】
1 循環風路、 2 排気風路、 4 送風機、 6 脱臭フィルター、 7基材、 8 通気路、 9 水膜。
Claims (8)
- 吸湿機能を有する吸湿性材料に常温活性触媒を複合化した基材におけるその吸湿性材料の表面に凝縮された水膜に、空気を接触させてその空気に含まれる臭気ガスを溶解させ、溶解させた臭気ガスを前記常温活性触媒により酸化分解させるようにした脱臭フィルター。
- 請求項1に記載の脱臭フィルターであって、基材の構成要素を少なくとも吸湿性材料と常温活性触媒と無機バインダーとした脱臭フィルター。
- 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の脱臭フィルターであって、吸湿性材料を吸湿性セラミックスとした脱臭フィルター。
- 請求項1〜請求項3までのいずれかに記載の脱臭フィルターであって、常温活性触媒を、貴金属と金属酸化物を複合させたものとした脱臭フィルター。
- 請求項1〜請求項4までのいずれかに記載の脱臭フィルターであって、吸湿性材料をハニカム状に成形し、多数の低圧損の通気路を構成した脱臭フィルター。
- 請求項1〜請求項4までのいずれかに記載の脱臭フィルターであって、基材を水溶性の臭気ガスを主成分とする煙草臭及び残留調理臭の脱臭に専ら機能するようにした脱臭フィルター。
- 風路中に空気流を形成する送風機を備え、その風路中には、吸湿機能を有する吸湿性材料に常温活性触媒を複合化した基材におけるその吸湿性材料の表面に凝縮された水膜に、空気流を接触させてその空気流に含まれる臭気ガスを溶解させ、溶解させた臭気ガスを前記常温活性触媒により酸化分解させる脱臭フィルターを設けた送風装置。
- 風路中に室内空気を循環させる送風機を備え、その風路中には、吸湿機能を有する吸湿性材料に常温活性触媒を複合化した基材におけるその吸湿性材料の表面に凝縮された水膜に、空気流を接触させてその空気流に含まれる臭気ガスを溶解させ、溶解させた臭気ガスを前記常温活性触媒により酸化分解させる脱臭フィルターを設けた送風装置。
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JP2003001897A JP2004209433A (ja) | 2003-01-08 | 2003-01-08 | 脱臭フィルター及び送風装置 |
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Cited By (3)
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JP2006181297A (ja) * | 2004-12-28 | 2006-07-13 | Kyushu Hitachi Maxell Ltd | 温風乾燥機 |
JP2007152311A (ja) * | 2005-12-08 | 2007-06-21 | Ebara Jitsugyo Co Ltd | 脱臭フィルター及び脱臭システム |
WO2013008497A1 (ja) * | 2011-07-08 | 2013-01-17 | 三菱電機株式会社 | 空気清浄機 |
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