JP2004208604A - 新規酵素活性測定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便で、短時間で多量に処理できしかも感度の良く定量できる、SHAP−HAの合成を触媒する酵素の測定方法を得る。
【解決手段】下記の工程を含むことを特徴とする酵素活性測定方法。
(1)検体にヒアルロン酸とインター−α−トリプシンインヒビターとを共存させ、酵素反応条件下に置く工程;
(2)酵素反応により単位時間内に検体中に形成された「血清由来ヒアルロナン結合性タンパク質」と「ヒアルロン酸」との結合体を定量する工程;
(3)前記結合体の定量値を、検体中の「血清由来ヒアルロナン結合性タンパク質−ヒアルロン酸結合体合成酵素」の活性とする工程。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規酵素活性測定方法に関し、より詳細には、「血清由来ヒアルロナン結合性タンパク質とヒアルロン酸との結合体」の形成を触媒する「血清由来ヒアルロナン結合性タンパク質−ヒアルロン酸結合体合成酵素(以下「SHAP−HA合成酵素」とも略記する)」の活性を測定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
血清中の蛋白質の1つとして高濃度(0.4 mg/ml)に存在しているインター−α−トリプシンインヒビター(以下、「ITI」とも記載する)は、2本の重鎖(HC1およびHC2)とビクニン(bikunin)と呼ばれる低分子コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの3種類の異なる蛋白質からなる複合体であり、同じく血清中に存在するプレ−α−インヒビター(PαI)は一本の重鎖(HC3)とビクニンとの複合体である。かかる重鎖は、ヒアルロン酸(以下「HA」とも略記する)との結合性を有することから、血清由来ヒアルロナン結合性タンパク質(以下「SHAP」とも略記する)とも呼ばれている(非特許文献1)。血清中における「SHAPとヒアルロン酸との結合体(以下「SHAP−HA」とも記載する)」は、リウマチ性関節炎や変形性膝関節症の患者で上昇することが知られている(非特許文献2)。
【0003】
検体中のSHAP−HAの定量方法としては、従来酵素免疫測定(ELISA)法を改変した方法でなされていた(特許文献1)。例えば血清中のSHAP−HA結合体合成酵素の活性の測定は、かかる酵素反応の速度が遅いこと等の理由から、血清にヒアルロン酸を添加し、血清中の酵素でヒアルロン酸と血清中のITIとを24時間反応させて、SHAP−HAを形成させ、これを超遠心分離、ヒアルロニダーゼによる消化、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、及びウエスタンブロッティング法を組み合わせた方法で、行っていたため、全行程で約1週間の期間が必要とされていた(非特許文献1)。一方、長時間の酵素反応後、一回目の電気泳動により原点に残ったSHAP−HAをヒアルロニダーゼで処理し、遊離したSHAPを抗ITI抗体を使った免疫電気泳動する二段階電気泳動により測定する方法も報告されている(非特許文献3)が、全行程で3ないし4日間の期間がかかり、定量性に問題があった。また、従来の方法は、検体内在性のITIをヒアルロン酸との反応に用いていたため、検体はITIを含む検体(実質的には血清、関節液)に限られていた。
【0004】
【特許文献】特開平10−82784号公報
【非特許文献1】J.Biol.Chem.,(1993)268, 26725−26730
【非特許文献2】J.Rheumatol.,(1999)26,1230−1238
【非特許文献3】Reproduction,(2002)124,249−257
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、SHAP−HA合成酵素活性の増減は、各種の疾病とのつながりが深いと考えられ、その測定は重要視されているが、1週間程度の時間が要されるため、極めて煩雑であった。従って、様々な検体に含まれるSHAP−HA合成酵素活性のより簡便な測定法の開発が大いに期待されていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、簡便で、短時間で多量に処理できしかも感度良く定量できる、SHAP−HA合成酵素活性の測定方法を開発した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)下記の工程を含むことを特徴とする酵素活性測定方法。
(a)検体にヒアルロン酸とインター−α−トリプシンインヒビターとを共存させ、酵素反応条件下に置く工程;
(b)酵素反応により単位時間内に検体中に形成された「血清由来ヒアルロナン結合性タンパク質」と「ヒアルロン酸」との結合体を定量する工程;
(c)前記結合体の定量値を、検体中の「血清由来ヒアルロナン結合性タンパク質−ヒアルロン酸結合体合成酵素」の活性とする工程。
(2)工程(a)において、更に二価金属陽イオンを共存させることを特徴とする(1)記載の酵素活性測定方法。
(3)工程(b)における「結合体」の定量が、該結合体とヒアルロン酸親和性分子とを結合させる工程と、ヒアルロン酸親和性分子に結合した結合体を定量する工程を更に含むことを特徴とする(1)又は(2)記載の酵素活性測定方法。
(4)「ヒアルロン酸親和性分子」が、固相に固着していることを特徴とする(3)記載の酵素活性測定方法。
(5)結合体の定量が、前記結合体と「抗インター−α−トリプシンインヒビター抗体」とを反応させて形成させた複合体を定量することによってなされることを特徴とする(1)〜(4)何れか記載の酵素反応測定方法。
(6)検体が細胞培養液、全血、血清、血漿、関節液、卵胞液、リンパ液、及び尿から選択される検体であることを特徴とする(1)〜(5)何れか記載の酵素活性測定方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態により詳述する。
本発明測定法は、下記の工程を含むことを特徴とする酵素活性測定方法である。
(1)検体にHAとITIとを共存させ、酵素反応条件下に置く工程;
(2)酵素反応により単位時間内に検体中に形成された「SHAP」と「HA」との結合体を定量する工程;
(3)前記結合体の定量値を、検体中の「SHAP−HA合成酵素」の活性とする工程。
【0009】
本発明測定法における工程(1)は、検体にHAとITIとを共存させ、酵素反応条件下に置く工程である。ここで検体とは、生体内、好ましくは体内から取り出した液体状の検体(全血、血清、血漿、関節液、リンパ液、涙液、精液、乳汁、尿、卵胞液等)や細胞を培養した培養液(細胞培養液)、或いはSHAP−HA合成酵素の精製工程で得られた粗酵素液、精製酵素液等が例示され、特に全血、血清、血漿、関節液、リンパ液、尿、卵胞液、細胞培養液、及び精製酵素液が好ましくは挙げられるが、必ずしもこれらに限定はされない。
【0010】
本発明測定法で「ヒアルロン酸(HA)」とは、グリコサミノグリカンの一種であり、D−グルクロン酸とN−アセチル−D−グルコサミンの二糖の繰り返し構造からなる多糖である。本発明に使用するHAは、その由来は特に限定はされない。HAの由来としては、例えばストレプトコッカス(培養法によって調製されたヒアルロン酸)や、鶏冠及び臍帯(抽出法によって調製されたヒアルロン酸)が挙げられ、何れも使用することができる。
【0011】
本発明測定法に使用するHAの重量平均分子量は特に限定はされないが、例えば2,000〜10,000,000、好ましくは5,000〜7,000,000、更に好ましくは10,000〜5,000,000、最も好ましくは30,000〜3,000,000が挙げられる。
【0012】
本発明測定法に使用するHAは、適当な塩を形成した状態のHAも包含する概念である。かかる「塩」としては例えばナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属イオンとの塩、マグネシウム塩やカルシウム塩等のアルカリ土類金属イオンとの塩が例示され、特に限定はされないが、アルカリ金属イオンとの塩が好ましくは例示される。
【0013】
検体へのHAを共存させる方法は、HAを蒸留水、食塩水、Tris−HCl緩衝液、或いはリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)等に予め溶解した溶液を添加して行うことが、酵素反応におけるHAの均一性を保つ観点から好ましい。検体中におけるHAの最終濃度は、5ng/ml〜100μg/ml、好ましくは50ng/ml〜80μg/ml、より好ましくは100ng/ml〜50μg/mlが挙げられ、500ng/ml〜10μg/mlが最も好ましい。しかし、これに限定はされず、本発明測定法が目的とする敏速な測定が可能な範囲において、当業者であれば適宜調整することが可能である。
【0014】
本発明測定法に使用するITIは、内在性のものであっても遺伝子工学的に調製されたものであっても、又は生物由来の試料から抽出・精製して調製されたものであっても良く、またそのような抽出・精製を行なう前の試料で代用することも可能である。ITIは例えばJ. Biochem., 120(1996), pp.145−152に記載された方法などに基づいて、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウシ、ブタ、サル或いはヒトなど、好ましくは哺乳動物の血清から精製することが可能であるが、測定対象となる酵素と由来が同一であることが好ましい。また、内在性のITIで代用する場合には、上述の哺乳動物の血清を使用することが可能である。ただし、このような血清には本発明測定法の測定対象となる「SHAP−HA合成酵素」が含まれているため、対照として同様の検体を使用して対照の測定値を差し引く等、バックグラウンドの厳密な調整が必要となることに留意すべきである。
【0015】
検体にITIを共存させる方法は、ITIを蒸留水、食塩水、Tris−HCl緩衝液、或いはリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)等に予め溶解した溶液を添加して行うことが、酵素反応においてITIの均一性を保つ観点から好ましい。検体中におけるITIの最終濃度(酵素反応時の濃度)は、5ng/ml〜300μg/ml、好ましくは50ng/ml〜150μg/ml、より好ましくは100ng/ml〜100μg/mlが挙げられ、500ng/ml〜50μg/mlが最も好ましい。しかしこれに限定はされず、本発明測定法が目的とする敏速な測定が可能な範囲において、当業者であれば適宜調整することが可能である。
【0016】
尚、本発明測定法の測定対象となる「SHAP−HA合成酵素」は、その反応に二価の金属陽イオンが必要なことが知られており(J. Biol. Chem., 268(1993), pp.26725−26730)、検体にはHA、ITIの他に、更に二価の金属陽イオンを共存させることが好ましい。このような金属陽イオンとしては、例えばカルシウムイオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、及び亜鉛イオンが挙げられる。これらの金属陽イオンは、0.01mmol/l〜100mmol/l、好ましくは0.1mmol/l〜50mmol/l、更に好ましくは1mmol/l〜10mmol/lが挙げられる。特にカルシウムイオン及びマグネシウムイオンの両者を1mmol/l〜10mmol/l程度含むように調製することが最も好ましい。
【0017】
また、この様な二価金属陽イオンを反応に必要とするSHAP−HA合成酵素の性質から、二価金属陽イオンを捕獲する金属キレート剤を添加することにより、SHAP−HA合成酵素の活性を完全に阻害することができる。従って「対照」として二価金属陽イオンの代わりに金属キレート剤を添加すると、内在的に検体中に存在していたSHAP−HAのみを定量することが可能となり、二価金属陽イオンを添加して反応させた場合の測定値から差し引くことで、正味の酵素活性を算出することができる。この様な金属キレート剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)やエチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)四酢酸(EGTA)が挙げられる。これらの金属キレート剤は、0.01〜2000mmol/l、好ましくは0.1〜100mmol/l、更に好ましくは1〜50mmol/l、特にEDTAを2〜40mmol/l程度含むように調製すると対照として好ましい。また、反応液中のNaCl濃度は、0.1〜0.5mmol/lが好ましく、0.2〜0.3mmol/lでSHAP−HA合成酵素の反応を行うことが最も好ましい。
【0018】
本発明測定法における工程(2)は単位時間内に検体中に形成された「SHAP」と「HA」との結合体を定量する工程である。酵素反応を行なう時間は、5分以上であれば特に限定はされないが、好ましくは20分〜24時間、より好ましくは30分〜15時間、更に好ましくは1時間〜10時間が挙げられる。しかし、操作上からは30分〜2時間、或いは一晩(12〜20時間)が最も好ましい。また、酵素反応度行なう温度は4℃以上であることが好ましく、特に20〜42℃、より好ましくは30〜40℃、最も好ましくは35〜37℃が挙げられる。更に酵素反応を行なうpHは中性付近が好ましく、pH6.5〜7.5が更に好ましく、特にpH7.0〜7.3程度が好ましい。
【0019】
本発明測定法における「SHAP」と「HA」との結合体の定量は、SHAPに対する抗体を用いて行うことが、操作の簡便性、検出感度の面から好ましい。このようなSHAPに対する抗体とは、市販の抗ITI抗体が例示され、例えばヒトITIを「ITI」として本発明測定法で使用する場合にはウサギ抗ヒトインター−α−トリプシンインヒビター抗体(例えばDAKO社製等)等が挙げられる。かかる抗体は、ITIの重鎖を特異的に認識する抗体であれば何れの抗体であっても使用することができる。
【0020】
かかる抗体を使用したSHAP−HAの定量は、例えばアクリルアミドゲルを用いて(SDS−PAGE等)によりSHAP−HAを泳動し、かかる泳動の後のゲルを抗体で標識し、更に上記抗体に対する抗体(二次抗体:ペルオキシダーゼ、放射性物質、或いは蛍光物質などで標識物質で標識したもの)を用いてその検出量から行うことができる。しかし、より簡便な定量を行うためには、以下の方法が例示される。すなわち、固相にヒアルロン酸親和性分子を固着させ、そこにSHAP−HA合成酵素の反応によって生じたSHAP−HAを、SHAP−HAのHA部分を介して結合させ、固液分離手段を用いて上記「ヒアルロン酸に特異的に結合する物質」を介して固相に結合したSHAP−HAを検体から分離する。この固相に対して抗ITI抗体と、その抗体に対する抗体であって標識物質を結合させてある抗体(標識された二次抗体)とを使用し、二次抗体を検出して定量を行うことが好ましい。
【0021】
なお、本発明測定法における「ヒアルロン酸親和性分子」とは、例えばヒアルロン酸結合性プロテオグリカン(アグリカン、バーシカン/PG−M、ニューロカン等)や、それらの糖鎖を切断したコアタンパク質、及びヒアルロン酸結合領域を含むポリペプチド、抗ヒアルロン酸抗体、ヒアルロン酸結合性タンパク質(以下「HABP」とも略記する)、ヒアルロン酸結合性の合成ペプチド等が挙げられ、天然物からの精製によって得られたものでも、化学合成で得られたものでも使用することが可能である。
【0022】
また、上記「固相」とは、例えばマイクロプレート、ゲル(シリカゲル、アガロースゲルなど)、ビーズ、チューブ、メンブレン、微粒子状固相担体〔例えば、ゼラチン粒子、カオリン粒子、合成ポリマー粒子(ラテックス粒子等)〕などが例示され、マイクロプレート、ビーズ、チューブ又は微粒子固相担体が好ましく、特に取扱、測定の簡便性からマイクロプレートが好ましい。また、固相に固着したSHAP−HAは固液分離手段によって液相から分離するが、固相としてマイクロプレートやチューブ、メンブレンを使用する場合には溶液を廃棄する等の通常の手段で固液分離を行うことが可能である。固相としてゲル、ビーズ、微粒子状固相担体を使用する場合には、例えば濾紙による濾過、遠心分離等の手段で固液分離を行うことができる。
【0023】
また、標識物質としては、例えば特異的結合対(例えばビオチンとストレプトアビジン等のアビジン類、又はレクチンと糖鎖)の一方の物質;フルオロセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン、ユーロピウム、フィコシアニン、ローダミン、テキサスレッド、ウンベリフェロン、トリカラー、シアニン、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸(AMCA)等の蛍光物質;アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等の酵素類;ジニトロフルオロベンゼン、アデノシン一リン酸(AMP)、2,4−ジニトロアニリン等のハプテン;125I、131I、H等のアイソトープ等を用いることが可能であるが、検出、定量の容易性から酵素類及びアイソトープが好ましく、特に酵素類、その中でもペルオキシダーゼが取扱の容易性から好ましい。
【0024】
このような方法によって得られた定量値を、工程(3)で検体中の「SHAP−HA合成酵素」の活性とすることで本発明測定法はなされる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
<精製方法>
ITIはマウス血清から以下の方法で精製して使用した。
すなわち、20mlのマウスの血清に0.2mlのTris−HCl緩衝液(1mol/l:pH7.2)、0.2mlのNaCl(3mol/l)、0.2mlのEDTA(0.5mol/l:pH8.0)を添加し、これを0.15mol/lでNaClを含む50mmol/lのTris−HCl緩衝液(平衡化緩衝液)で平衡化したカラム容積10mlのQ−セファロースカラム(ファルマシア社製)に通筒した。平衡化緩衝液でカラムを洗浄し、次いで0.3mol/lのNaClを含むTris−HCl緩衝液で洗浄した。その後、0.45mol/lのNaClを含む50mmol/lのTris−HCl緩衝液でITIの溶出を行なった。溶出したITIは50%の飽和硫酸アンモニウムで塩析により溶液から沈殿させた(この様にして得られたITIを以下「精製mITI」と記載する)。タンパク質濃度はMicroBCAキット(ピアス社製)で説明書に従って行なった。
【0026】
<測定方法>
SHAP−HAの測定は、J. Rheumatol., (1999)26, pp.1230−1238及び特開平10−82784号に記載された方法を改変しておこなった。すなわち、
(1)HABP(生化学工業株式会社製)を4μg/mlで含む0.1mol/lの炭酸水素ナトリウム水溶液(pH8.2)を96穴マルチプレート(ナルジェヌンク社製)に一穴あたり50μlずつ添加し、4℃で14時間インキュベートした。
(2)このマルチプレートをPBSにより3回洗浄し、その後3%の牛血清アルブミンを含むPBSを一穴あたり200μlずつ添加して室温で2時間インキュベートし、ブロッキングを行なった。
(3)このマルチプレートをTween20(商標名)を0.1%(w/v)で含むPBS(以下「PBST」とも記載する)で3回洗浄した。
(4)検体を一穴あたり50μlずつ添加し、37℃で1時間インキュベートした。
(5)このマルチプレートをPBSTで3回洗浄した。
(6)PBSTでヒト由来の抗ITI抗体(ウサギ抗ヒトITI抗体:Dako社製:一次抗体)を3,000倍に希釈した一次抗体液を調製し、これを一穴あたり50μlずつ添加して、その後37℃で1時間インキュベートした。
(7)このマルチプレートをPBSTで3回洗浄した。
(8)PBSTで西洋ワサビ由来ペルオキシダーゼで標識した抗ウサギIgG抗体(Jackson社製)を3,000倍に希釈して二次抗体液を調製し、これを一穴あたり50μlずつ添加して、その後37℃で1時間インキュベートした。
(9)このマルチプレートをPBSTで3回洗浄した。
(10)テトラメチルベンジジン発色液(KPL社製)を一穴あたり50μlずつ添加し、37℃で15分間反応させ、その後1mol/lのHClを50μlずつ添加して反応を停止させた。
(11)ペルオキシダーゼによる発色を450nmの吸光度により測定した。
【0027】
<検量線の作成>
前記測定方法の(4)で検体に代えて、SHAP−HAの標準液(特開平10−82784号)を加えて測定を行なった(図1)。
その結果、SHAP−HA濃度が0.1〜2μg/mlの範囲内で確実に直線性が得られ、定量性が確認された。以下、この検量線を用いて、SHAP−HA合成酵素の活性を算出した。すなわち1時間に1μg/mlのSHAP−HAを合成する活性を1単位(unit)とした。
【0028】
<実施例1> 細胞培養液におけるSHAP−HA合成酵素活性の測定
ラット脳腫瘍由来グリオーマ細胞株C6、ラット副腎由来交感神経様細胞株PC12、ヒト肺由来線維芽細胞株IMR90、ヒト肝癌由来へパトーマ株HLFを10%FCS(ウシ胎児血清)を含むダルベッコの調整イーグル培地(DMEM)中でコンフルエントに近くなるまで培養し(2〜3日程度)、ついで血清を添加しないコスメディウム001培地に変えて2日に1回培地を交換し、最初の2回の培地は廃棄して、3回目から数回の培養液を集めて酵素標品とした。
【0029】
培養液40μlに、精製ITI(0.2mg/mlPBS)5μl(最終濃度20μg/ml)、鶏冠由来のヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量800,000;生化学工業株式会社製)(50μg/mlPBS)1μl(最終濃度1μg/ml)、CaCl−MgCl溶液(0.1mol/lPBS)1μl、及びPBS 3μlを混合し、全体を50μlに調製した(これを以下「反応液」とも記載する)。なお対照として、CaCl−MgCl溶液に代えてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液(0.5mol/l)1μlを添加した対照を調製した。これらを37℃で14時間反応させ、その反応液中のSHAP−HAの含量を上記測定方法により測定した(表1)。
【0030】
【表1】
Figure 2004208604
【0031】
その結果、ラット脳腫瘍由来グリオーマ細胞株C6が他の細胞に比べ非常に高い「血清由来ヒアルロナン結合性タンパク質−ヒアルロン酸結合体合成酵素」の活性を示すことが明かとなった。
【0032】
<実施例2> SHAP−HA合成酵素の反応最適条件の決定
上記ラット脳腫瘍由来グリオーマ細胞株C6の細胞培養液を検体として、SHAP−HAの形成反応の最適条件を決めた。反応液中、ヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量800,000;生化学工業株式会社製)を0から2μg/ml、精製mITIを0から16μg/ml、検体量を0から45μlそれぞれ添加量を変えて、実施例1と同様に反応を行い、上記測定方法に従って測定を行った(図2〜図4)。
【0033】
その結果、反応液50μlの条件下において、HAは0.5〜1μg/mlが適当であるが、量をさらに過剰にしてもそれほど測定値は低下しなかった(図2)。精製mITIは16μg/ml以上の量が必要であった(図3)。従って実施例1の20μg/mlが適当と考えられる。検体の量は用量依存的に測定値が増加するが、反応液量に対して20%以上の添加が適当であった(図4)。
なお、酵素の活性化に必要な二価金属塩(CaCl,MgCl)は1〜2mmol/l、酵素阻害剤であるEDTAは5〜10mmol/lが適当であった。
【0034】
<実施例3> 血清中に存在するSHAP−HA合成酵素活性の測定
PBSで5倍希釈した2種類のヒト標準血清(健常人から採取した血液から調製した血清:SHAP−HA合成酵素及びITIを含有する:血清1、血清2)25μl、ヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量800,000;生化学工業株式会社製)O.5μl(最終濃度2μg/ml)として、実施例1と同様に14時間反応させ、上記測定方法に従って測定を行った(表2)。
【0035】
【表2】
Figure 2004208604
【0036】
原液のヒト標準血清で、SHAP−HA合成酵素活性が測定でき、「SHAP−HA合成酵素」の存在が確認できた。
【0037】
<実施例4> SHAP−HA合成酵素反応の反応時間による変化
実施例3のヒト標準血清を検体として用いて、実施例3に準じて酵素反応時間による変化を調べた。反応は37℃で30分から24時間行った(表3)。
【0038】
【表3】
Figure 2004208604
【0039】
その結果、約14時間まで暫時SHAP−HAは増加し、反応は一晩(14時間程度)が適当であることが確認された。また、反応時間が30分であっても測定値に差が現れていることからも、反応時間は30分であっても本発明測定法は実施可能であることが示された。
【0040】
<実施例5> 卵胞液中に存在する酵素活性の測定
0.3mol/lのNaCl含有50mmol/l Tris−HCl緩衝液(pH7.2)で50倍希釈したヒト卵胞液を10μl用い、ヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量800,000;生化学工業株式会社製)0.5μl(最終濃度1μg/ml)として、精製mITI2μl(最終濃度8μg/ml)として実施例1と同様に反応し、上記測定方法に従って測定を行った(表4)。
【0041】
【表4】
Figure 2004208604
【0042】
ヒト卵胞液は、非常に高い酵素活性を示し、SHAP−HA合成酵素が多く存在していることが分かった。
【0043】
<実施例6> RA患者血清中の酵素活性
慢性リウマチ関節炎(RA)の患者血清は、内在性のSHAP−HA濃度が非常に高いことが知られている。内在性のSHAP−HAの影響を少なくするためにRA患者血清(5検体)を希釈してその酵素活性の測定を行った。血清をPBSで20倍に希釈し、その5μlを用い、ヒアルロン酸ナトリウム(重量平均分子量800,000:生化学工業株式会社製)(100μg/ml)0.5μl、精製mITI(0.2mg/ml)2μ1、CaCl−MgCl液(各0.1mol/l)1μl(対照は代わりに0.5mol/l EDTA1μl)、PBSを加え、全量を50μlとして反応を行った(37℃、一晩)、この反応液を用いて上記測定方法に従って測定を行った(表5)。
【0044】
【表5】
Figure 2004208604
【0045】
内在性SHAP−HAが多いRA患者血清は希釈すると、対照の値が下がり、酵素反応との差がはっきりして、充分に酵素活性が測定できることが分かった。実施例3の測定結果と対比しても、RA患者においてSHAP−HA合成酵素の活性が大幅に高まっていることが明かとなったことから、本発明測定法が関節炎の血清診断にも応用できる可能性が示された。
【0046】
【発明の効果】
細胞培養液、全血、血清、血漿、関節液、卵胞液などの体液等に含まれるSHAP−HA合成酵素の活性を迅速に定量でき、該酵素の精製のための手段として使用することも可能である。また、本発明測定法を使って、血清、関節液、卵胞液、リンパ液、尿などを測定することにより、RA等の関節炎、肝炎、婦人の不妊症の診断に有用となる可能性がある。本発明測定法により、該酵素の阻害剤や促進剤の働きを測定することが可能であり、SHAP−HA合成酵素の阻害剤や促進剤の開発にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】作成したSHAP−HAの検量線を示す図である。横軸はSHAP−HAの検体中での濃度(μg/ml)を示し、縦軸は450nmの波長の吸光度を示す。
【図2】本発明測定法における、ヒアルロン酸ナトリウムの反応液への添加量が測定値に与える影響を示す図である。横軸(HA)は反応液中のヒアルロン酸ナトリウムの濃度(μg/ml)を示し、縦軸は450nmの波長の吸光度を示す。
【図3】本発明測定法における、ITIの反応液への添加量が測定値に与える影響を示す図である。横軸(ITI)は反応液中のインター−α−トリプシンインヒビターの濃度(μg/ml)を示し、縦軸は450nmの波長の吸光度を示す。
【図4】本発明測定法における、検体の反応液への添加量が測定値に与える影響を示す図である。横軸(Conditioned medium)は反応液中の検体(細胞培養液)の濃度(%)を示し、縦軸は450nmの波長の吸光度を示す。

Claims (6)

  1. 下記の工程を含むことを特徴とする酵素活性測定方法。
    (1)検体にヒアルロン酸とインター−α−トリプシンインヒビターとを共存させ、酵素反応条件下に置く工程;
    (2)酵素反応により単位時間内に検体中に形成された「血清由来ヒアルロナン結合性タンパク質」と「ヒアルロン酸」との結合体を定量する工程;
    (3)前記結合体の定量値を、検体中の「血清由来ヒアルロナン結合性タンパク質−ヒアルロン酸結合体合成酵素」の活性とする工程。
  2. 工程(1)において、更に二価金属陽イオンを共存させることを特徴とする請求項1記載の酵素活性測定方法。
  3. 工程(2)における「結合体」の定量が、該結合体とヒアルロン酸親和性分子とを結合させる工程と、ヒアルロン酸親和性分子に結合した結合体を定量する工程を更に含むことを特徴とする請求項1又は2記載の酵素活性測定方法。
  4. 「ヒアルロン酸親和性分子」が、固相に固着していることを特徴とする請求項3記載の酵素活性測定方法。
  5. 結合体の定量が、前記結合体と「抗インター−α−トリプシンインヒビター抗体」とを反応させて形成させた複合体を定量することによってなされることを特徴とする請求項1〜4何れか一項記載の酵素活性測定方法。
  6. 検体が細胞培養液、全血、血清、血漿、関節液、卵胞液、リンパ液、及び尿から選択される検体であることを特徴とする請求項1〜5何れか一項記載の酵素活性測定方法。
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