JP2004208268A - 積層基板、積層基板の製造方法、非可逆回路素子及び通信装置 - Google Patents

積層基板、積層基板の製造方法、非可逆回路素子及び通信装置 Download PDF

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Abstract

【課題】レーザによるコンデンサ容量のトリミングでの不具合を解消した積層基板及びその製造方法を得るとともに、高性能で信頼性が高くかつ小型の積層基板、積層基板の製造方法、非可逆回路素子及び通信装置を得る。
【解決手段】積層基板30は、中心電極用接続電極P1〜P3やグランド用接続電極31を表面に設け、コンデンサ電極71a〜73aや抵抗体75などを内蔵している。コンデンサ電極71a〜73aの容量をトリミングするには、電極P1〜P3,31を覆って他の部分を開口部51としたマスク50を積層基板30の表面に載せて該開口部51からレーザを照射する。マスク50には容量を測定するためのプローブを取り付けてもよい。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層基板、積層基板の製造方法、非可逆回路素子及び通信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、サーキュレータやアイソレータなどの非可逆回路素子は、予め定められた特定方向にのみ電力を伝送し、逆方向には伝送しない特性を有している。この特性を利用して、例えばアイソレータは、自動車電話、携帯電話等の移動体通信機器の送信回路部に使用されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−289402号公報
【0004】
そして、この種の非可逆回路素子として、例えば、特許文献1に記載のように、積層基板の表面に形成した整合用コンデンサのコンデンサ電極をトリミングして所望の電気特性を得るものが知られている。この非可逆回路素子は、整合用コンデンサと中心電極を接続した後に整合用コンデンサをトリミングする。従って、コンデンサ電極が中心電極によって覆われているため、トリミング可能なコンデンサ電極面積が減少し、電気特性の調整幅が小さくなる。特に近年、移動体通信機器に用いられる非可逆回路素子は小型化が進み、整合用コンデンサの電極面積自体も小さくなっているので、トリミング可能面積が小さくなるのは非常に問題である。さらに、組立後に電気特性の調整をするため、トリミング調整を失敗したものは積層基板だけでなく、フェライトや中心電極などの他の部品も無駄となるので、コストアップになる。
【0005】
そこで、この問題を解消するため、図13に示す整合用コンデンサC1〜C3を設けた積層基板330と、この積層基板330上に実装される中心電極を設けたフェライトと、永久磁石と、これらの部品を覆う金属ケースとで構成された非可逆回路素子(アイソレータ)が提案されている。この非可逆回路素子は、整合用コンデンサC1〜C3と中心電極を接続する前に整合用コンデンサC1〜C3をトリミングする。
【0006】
すなわち、積層基板330は、図14に示すように、ホット側コンデンサ電極371a〜373aやグランド用接続電極331や回路用電極317や抵抗体375やビアホール318を表面に設けた誘電体シート342と、ホット側コンデンサ電極371b〜373bを表面に設けた誘電体シート344と、グランド電極374をそれぞれ表面に設けた誘電体シート343,345などにて構成されている。また、誘電体シート345の裏面にも金属ケースとはんだ付けするためのグランド電極が形成されている。そして、この積層基板330は、単体の状態で、表面に設けたコンデンサ電極371a,372a,373aにトリミング溝380を形成することにより、コンデンサ電極371a〜373aを分断するようなトリミングが行われる。従って、前記特許文献1に記載の非可逆回路素子が有する問題を解消することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図13に示す積層基板330を備えた非可逆回路素子は、トリミング用コンデンサ電極371a〜373aをトリミングした後に、これらトリミング用コンデンサ電極371a〜373aにそれぞれ中心電極をはんだペーストや導電ペーストなどの接続材料を用いて電気的に接続する。従って、トリミング溝380の一部がこれら接続材料によって埋まり、分断されたトリミング用コンデンサ電極371a〜373aが再び接続されるという問題がある。特に、レーザでトリミング用コンデンサ電極371a〜373aを分断するようなトリミングをした場合、トリミング溝380の溝幅は10μm〜100μmと狭く、ショートする可能性が高い。分断された不要な部分の電極を全て削除してショートを防止することもできるが、この場合、トリミング時間が長くなる。
【0008】
また、ホット側コンデンサ電極371a〜373aとグランド用接続電極331が近接しており、トリミング溝380以外のところでもショートする可能性が高い。
【0009】
このような不具合に対処するため、コンデンサ電極を誘電体層からなる積層体の内部に設け、積層体の外層からレーザを照射してコンデンサ電極をトリミングすることが考えられる。しかし、この場合においても、トリミングされたコンデンサ電極や誘電体層からの飛散物が積層体の表面に設けた接続電極に付着し、該接続電極と中心電極とのはんだ付け不良が発生する。飛散物は洗浄やエアーの吹付けによって除去することが可能であるが、除去に手間と時間を要するという問題点が発生する。
【0010】
そこで、本発明の目的は、レーザによるコンデンサ容量のトリミングでの不具合を解消した積層基板及びその製造方法を提供するとともに、高性能で信頼性が高くかつ小型の積層基板、積層基板の製造方法、非可逆回路素子及び通信装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段及び作用】
前記目的を達成するため、本発明に係る積層基板は、複数の誘電体層を積み重ねて構成した積層体と、該積層体の表面に設けられた、非可逆回路素子の中心電極に電気的に接続するための中心電極用接続電極と、前記積層体の内部に設けられたコンデンサ電極とを備え、前記コンデンサ電極は、前記中心電極用接続電極を覆って他の部分を開口部としたマスクを前記積層体の表面に載せて該開口部からレーザを照射してコンデンサ容量のトリミングを行ったものであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る積層基板の製造方法は、複数の誘電体層とコンデンサ電極と非可逆回路素子の中心電極に電気的に接続するための中心電極用接続電極とを積み重ねて、前記中心電極用接続電極を表面に設けるとともに前記コンデンサ電極を内部に設けた積層体を構成する工程と、前記中心電極用接続電極を覆って他の部分を開口部としたマスクを前記積層体の表面に載せ、該開口部からレーザを照射してコンデンサ容量のトリミングを行う工程と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
以上の構成により、コンデンサ電極を積層体の内部に設けたため、トリミング可能なコンデンサ電極面積が大きくなり、静電容量調整範囲が広がる。さらに、積層基板の表面には、非可逆回路素子の中心電極に電気的に接続するため中心電極用接続電極などの必要最低限の電極しか形成されておらず、はんだ等の導電材料が拡がらない構造になっている。そして、コンデンサ容量のトリミングは接続電極を覆うマスクを使用して行われるため、レーザの照射によって発生する飛散物が接続電極に付着することはなく、中心電極とのはんだ付け不良が生じる不具合が解消される。なお、飛散物は積層体の表面であってマスクの開口部に相当する部分に付着するが、接続電極には全く付着しないので、信頼性が劣化するおそれはない。このことは、付着物を洗浄やエアーの吹付けによって除去する工程を省くことができることを意味する。
【0014】
本発明に係る製造方法において、前記マスクはステンレスや樹脂からなるもの、あるいは黄銅、銅、鉄等からなるものを使用することができる。特に、ステンレス製のマスクにあっては、耐摩耗性に優れており、酸化や錆の問題が発生しないことからメンテナンスが容易である。
【0015】
また、前記マスクにはコンデンサ容量を測定するためのプローブが取り付けられていてもよい。このマスクを前記積層体の表面に載せてプローブを用いてコンデンサ容量を測定し、その測定値に基づいてコンデンサ容量のトリミングを行い、その後、再度プローブを用いてトリミングされたコンデンサ容量を測定する。
【0016】
この工程を採用することにより、初期容量測定、レーザトリミング、トリミング後の容量測定までを自動機を用いて短時間で行うことが可能になり、非可逆回路素子の低価格化が達成される。
【0017】
また、プローブによってコンデンサ容量を測定する場合、樹脂製のマスクを用いることが好ましい。容量測定時にグランド電流が流れないので、測定誤差の小さい安定した容量の測定が可能となり、周波数特性のばらつきの小さい非可逆性回路素子が得られる。また、樹脂は加工性、寸法安定性に優れており、薄肉微細加工が可能であり、小型化した非可逆回路素子の多層基板の製造に最適である。
【0018】
非可逆回路素子がアイソレータであると、積層基板には終端抵抗が内蔵される。この場合、必要に応じて終端抵抗に対してもマスクの開口部からレーザを照射してトリミングを行うことが好ましい。また、この場合、マスクには終端抵抗を測定するためのプローブが取り付けられることになる。
【0019】
さらに、本発明に係る非可逆回路素子や通信装置は、前記積層基板を備えることにより、性能や信頼性が向上する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る積層基板、積層基板の製造方法、非可逆回路素子及び通信装置の実施の形態について添付の図面を参照して説明する。
【0021】
[第1実施形態、図1〜図8参照]
本発明に係る非可逆回路素子の一実施形態の分解斜視図を図1に示す。該非可逆回路素子1は、集中定数型アイソレータである。図1に示すように、この集中定数型アイソレータ1は、概略、金属製上側ケース4と金属製下側ケース8とからなる金属ケースと、永久磁石9と、フェライト20と中心電極21,22,23とからなる中心電極組立体13と、積層基板30を備えている。
【0022】
金属製上側ケース4は略箱形状であり、上部4a及び四つの側部4bからなる。金属製下側ケース8は、左右の側部8bと底部8aからなる。金属製上側ケース4及び金属製下側ケース8は磁気回路を形成するため、例えば、軟鉄などの強磁性体からなる材料で形成され、その表面にAgやCuがめっきされる。
【0023】
中心電極組立体13は、矩形状のマイクロ波フェライト20の上面に三つの中心電極21,22,23を、絶縁層(図示せず)を介在させて略120度ごとに交差するように配置している。本第1実施形態では、中心電極21,22,23は二つのラインで構成した。中心電極21,22,23は銅箔を用いてフェライト20に巻きつけてもよいし、フェライト20上あるいは内部に銀ペーストを印刷して形成してもよい。ただし、印刷した方が中心電極21,22,23の位置精度が高いので、積層基板30との接続が安定する。特に、本第1実施形態のように微小な中心電極用接続電極P1,P2,P3(後述)で接続する場合には、中心電極21,22,23を印刷にて形成した方が信頼性、作業性が良い。
【0024】
積層基板30は、図2に示すように、中心電極用接続電極P1,P2,P3やグランド用接続電極31やビアホール18を設けた誘電体シート41と、ホット側コンデンサ電極71a,72a,73aや回路用電極17や抵抗体75などを表面に設けた誘電体シート42と、ホット側コンデンサ電極71b,72b,73bを表面に設けた誘電体シート44と、グランド電極74をそれぞれ表面に設けた誘電体シート43,45などにて構成されている。また、誘電体シート45の裏面にも下側ケース8とはんだ付けするためのグランド電極が形成されている。
【0025】
電極P1〜P3,17,31,71a〜73a,71b〜73b,74は、パターン印刷等の方法により誘電体シート41〜45に形成されている。電極P1,P2,P3等の材料としては、抵抗率が低く、誘電体シート41〜45と同時焼成可能なAg,Cu,Ag−Pdなどが用いられる。この電極P1,P2,P3等の表面には、Niめっきを下地としてAuめっきが施されている。Niめっきは、電極P1,P2,P3等のAgとAuめっきの固着強度を強くする。Auめっきは、はんだ濡れ性を良くするとともに、導電率が高いのでアイソレータ1を低損失にできる。
【0026】
電極P1,P2,P3等の厚みは2〜20μm程度である。誘電体シート41〜45の材料は、Alを主成分とし、SiO、SrO、CaO、PbO、NaO、KO、MgO,BaO,CeO,Bのうちの1種類あるいは複数種類を副成分として含む低温焼結誘電体材料である。誘電体シート41〜45のシート厚みは10〜200μm程度である。
【0027】
抵抗体75は、パターン印刷等の方法により誘電体シート42の表面に形成されている。抵抗体75の材料としては、サーメット、カーボン、ルテニウムなどが使用される。抵抗体75は単独で終端抵抗Rを構成する。なお、終端抵抗Rは省略してもよく、この場合にはサーキュレータが構成される。
【0028】
ビアホール18は、誘電体シート41,42,43にレーザ加工やパンチング加工などにより、予めビアホール用孔を形成した後、そのビアホール用孔に導電ペーストを充填することにより形成される。
【0029】
コンデンサ電極71a,71b、72a,72b、73a,73bはそれぞれ、誘電体シート42,43,44を間に挟んでグランド電極74に対向して整合用コンデンサC1,C2,C3を構成する。これら整合用コンデンサC1,C2,C3や終端抵抗Rは、電極P1,P2,P3,17,31やビアホール18とともに、積層基板30の内部に電気回路を構成する。
【0030】
以上の誘電体シート41〜45は積層され、さらに、予め表面に電極が形成されていないダミー用誘電体シート47が複数枚その下に積層された後、一体的に焼成され、図1に示すような積層基板30とされる。積層基板30の両端部には、それぞれ入力端子電極14、出力端子電極15及びグランド端子電極16が設けられる。入力端子電極14はコンデンサ電極71a,71bに電気的に接続され、出力端子電極15はコンデンサ電極72a,72bに電気的に接続されている。グランド端子電極16はそれぞれ、回路用電極17やグランド電極74に電気的に接続されている。これらの端子電極14,15,16は、Ag,Ag−Pd,Cu等の導電ペーストを塗布後、焼付けたり、乾式めっきしたりすることによって形成される。また、各シートの側面にビアホールを形成することにより電極14,15,16としてもよい。
【0031】
なお、この積層基板30は通常マザーボード状態で作成され(図6、図7参照)、このマザーボード100に所定のピッチで形成されたハーフカット溝101に沿って折ることにより、マザーボード100から所望のサイズの積層基板30を得る。あるいは、マザーボード100をダイサーやレーザなどで切断することにより、マザーボード100から所望のサイズの積層基板30を切り出してもよい。
【0032】
こうして得られた積層基板30は、内部に整合用コンデンサC1,C2,C3及び終端抵抗Rを有している。整合用コンデンサC1,C2,C3のトリミングは、整合用コンデンサC1,C2,C3と中心電極21,22,23とを接続する前に行われる。また、必要に応じて終端抵抗Rのトリミングも行われる。
【0033】
つまり、積層基板30は、単体の状態で、内部(2層目)のコンデンサ電極71a,72a,73aを表層の誘電体とともにレーザにてトリミング(削除)される。トリミングには、例えば、YAGの基本波、2倍波、3倍波のレーザが用いられる。レーザを用いるのは、早くかつ精度の良い加工が得られるからである。なお、トリミングは、マザーボード状態の積層基板30に対して効率良く行ってもよい。
【0034】
ここで、レーザトリミングについて説明する。レーザトリミングはコンデンサ電極71a,72a,73aに対して行われ、図4に示すマスク50が用いられる。このマスク50は、積層基板30の表面に設けられている中心電極用接続電極P1,P2,P3と端子電極31を覆って他の部分を開口部51としたものである。マスク50を図4に示す状態で積層基板30の表面に載せ、開口部51からレーザを照射してコンデンサ容量のトリミングを行う。トリミング跡をトリミング溝80,81として示す。
【0035】
レーザトリミングにおいては、トリミング(レーザの走査)開始から徐々にトリミング深さが深くなっていくため、電極を完全に切断するためには、トリミング開始位置を電極の端部から若干離れた位置に設定する必要がある。具体的には、電極の端部から50μm離れた位置が好ましい。なお、この数値は、レーザの走査速度、誘電体シートや電極の厚みなどに応じて異なる。
【0036】
レーザトリミングの条件は以下のとおりであり、()内は本発明者らが行った実験での具体的数値である。
レーザ:レーザダイオードを光源とするYAGレーザの3倍波
出力:1.5〜2.5W(2.0W)
発振周波数:2〜4KHz(3KHz)
走査速度:30〜60mm/s(50mm/s)
走査回数:4〜10回(7回)
マスクと電極との距離:(0.1mm)
走査開始位置:電極端部から(50μm)離れた位置
【0037】
本第1実施形態においては電極P1,P2,P3,31を覆うマスク50を使用してレーザトリミングを行うため、レーザの照射によって発生する飛散物がこれらの電極に付着することがなく、中心電極21,22,23とのはんだ付け不良が生じる不具合が解消される。
【0038】
すなわち、マスク50を使用することなくトリミングを行うと、図5(A)に斜線で示すように、電極P1,P2,P3,31に飛散物が付着する。しかし、マスク50を使用することにより、図5(B)に斜線で示すように、電極P1,P2,P3,31に飛散物が付着することはない。
【0039】
なお、飛散物は積層基板30の表面であってマスク50の開口部51に相当する部分には付着する(図5(B)の斜線参照)。しかし、電極P1,P2,P3,31には全く付着しないので、該付着物を洗浄やエアーの吹付けによって積層基板30の表面から除去しなくても、信頼性が劣化するおそれはない。
【0040】
前記マスク50の材質としては、ステンレス、黄銅、銅、鉄等を使用することができる。また、後述するように樹脂であってもよい。特に、ステンレス製のマスク50は耐摩耗性に優れており、酸化や錆の問題がなく、メンテナンスが容易である。
【0041】
また、本第1実施形態では、トリミング用コンデンサ電極71a,72a,73aを積層基板30の内部に設けているため、トリミング可能なコンデンサ電極領域が大きくなり、静電容量調整範囲が拡がり、積層基板30の良品率を向上することができる。
【0042】
さらに、積層基板30の表面には、必要最低限の接続電極P1,P2,P3,31しか形成されておらず、はんだ等の導電材料が拡がらない構造になっている。従って、トリミング溝80(図4参照)に導電材料が流れ込んで、分断されたコンデンサ電極71a,72a,73aが再び接続されるという不具合を防止できる。そして、接続電極P1,P2,P3,31相互間の距離を長くできるので、中心電極組立体13のサイズを大きくできる。従って、中心電極21,22,23が形成するインダクタンスが大きくなるため、アイソレータ1の通過帯域幅を広くでき、電気特性を向上させることができる。
【0043】
また、最も外側の層に位置するコンデンサ電極71a,72a,73aをトリミング用コンデンサ電極としているので、トリミング時に除去する誘電体層の厚みを最小限にできる。さらに、トリミングの障害となる電極が少なくなるので(本第1実施形態の場合は接続電極P1,P2,P3,31のみ)、トリミング可能なコンデンサ電極領域が広くなり、静電容量調整範囲を広くできる。
【0044】
さらに、トリミング用コンデンサ電極71a,72a,73aを矩形にすることにより、電極幅を一定にしているので、トリミング溝80の位置と得られる静電容量の値との間に略比例関係が成立し、静電容量の調整作業が容易になる。
【0045】
また、トリミング用コンデンサ電極71a,72a,73aは、誘電体シート41〜45の積み重ね方向において、中心電極用接続電極P1,P2,P3にのみ重なっている。これにより、トリミングの妨げとなる他の電極が、トリミング用コンデンサ電極71a,72a,73aと重ならないようにすることができる。また、トリミング用コンデンサ電極71a,72a,73aがグランド用接続電極31と重なると、その部分で静電容量を形成するので、トリミング精度が悪くなるという不具合もある。
【0046】
さらに、図3において、積層基板30は、一方の側に整合用コンデンサC3のホット側コンデンサ電極73a,73bを設け、他方の側の右端に整合用コンデンサC1のホット側コンデンサ電極71a,71bを設け、他方の側の左端に整合用コンデンサC2のホット側コンデンサ電極72a,72bを設けている。言い換えると、終端抵抗側整合用コンデンサC3のホット側コンデンサ電極73a,73bは、積層基板30の終端抵抗Rが配置されている側に配置され、入力側整合用コンデンサC1のホット側コンデンサ電極71a,71bは、積層基板30の入力側に配置され、出力側整合用コンデンサC2のホット側コンデンサ電極72a,72bは、積層基板30の出力側に配置されることになる。これにより、トリミングの調整が容易で、かつ、積層基板30の面積を有効利用した整合用コンデンサC1,C2,C3を得ることができる。
【0047】
また、一般に、移動体通信機器に使用されるアイソレータは、入出力側整合用コンデンサC1,C2の静電容量と比較して、抵抗側整合用コンデンサC3の静電容量が大きくなることが多い。従って、抵抗側整合用コンデンサC3の静電容量を確保するため、整合用コンデンサC3のホット側コンデンサ電極73a,73bの面積が、整合用コンデンサC1,C2,C3のトータルのホット側コンデンサ電極の面積の1/3以上になるように設定することが好ましい。
【0048】
また、積層基板30には終端抵抗Rも内蔵されており、整合用コンデンサC1,C2,C3と同様に終端抵抗Rも、表層の誘電体とともにトリミングすることにより、抵抗値を調整することができる。抵抗体75は1箇所でも幅が細くなると抵抗値が上がるので、幅方向の途中まで削る。終端抵抗Rは積層基板30に内蔵されているため、電極P1,P2,P3等の表面にNiめっきやAuめっきを施す際に、抵抗体75の表面にNiめっき等が施される心配がなく、終端抵抗Rの抵抗値が下がることはない。図4に示すように、本第1実施形態では、トリミング用コンデンサ電極71a,72a,73aをそれぞれ分断する3本のトリミング溝80と、抵抗体75に切れ込みを入れる1本のトリミング溝81とを積層基板30に形成している。
【0049】
以上の構成部品は以下のようにして組み立てられる。すなわち、図1に示すように、永久磁石9は金属製上側ケース4の天井に接着剤によって固定される。積層基板30上には、中心電極組立体13が、中心電極組立体13の中心電極21,22,23の各々の一端が積層基板30の表面に形成された中心電極用接続電極P1,P2,P3にはんだ付けされ、かつ、中心電極21,22,23の各々の他端がグランド用接続電極31にはんだ付けされることにより、実装される。接続電極P1,P2,P3,31は狭面積であるため、はんだ溶融時のセルフアライメント効果により、中心電極組立体13を位置決めすることができる。
【0050】
また、中心電極21,22,23の両端部は、フェライト20の底面に必要最低限の延在部しか有していないので、積層基板30の上面のトリミング溝80,81を中心電極21,22,23が横断しない。従って、フェライト20の底面の中心電極21,22,23を介して、はんだがトリミング溝80,81に流れ込むことが防止され、信頼性の優れたものとなる。なお、中心電極21,22,23と接続電極P1,P2,P3,31とのはんだ付けは、マザーボード状態の積層基板30に対して効率良く行ってもよい。
【0051】
積層基板30は金属製下側ケース8の底部8a上に載置され、シート47の裏面に設けた電極がはんだによって底部8aと接続固定されることにより、グランド端子電極16が底部8aに電気的に接続される。これにより、アースを十分にとることができるので、アイソレータ1の電気特性を向上させることができる。
【0052】
そして、金属製下側ケース8の側部8bと金属製上側ケース4の側部4bをはんだ等で接合することにより金属ケースとなり、ヨークとしても機能する。つまり、この金属ケースは、永久磁石9と中心電極組立体13と積層基板30を囲む磁路を形成する。また、永久磁石9はフェライト20に直流磁界を印加する。
【0053】
図8はアイソレータ1の電気等価回路図である。整合用コンデンサC3と終端抵抗Rは、中心電極用接続電極P3とグランド端子電極16の間に並列接続されている。
【0054】
[第2実施形態、図9〜図11参照]
図9は、コンデンサ電極71a,72a,73aに対してレーザトリミングを行う際に、コンデンサC1,C2,C3の容量を測定するためのプローブ58を設けたマスク55を使用する方法を示している。なお、積層基板30の構成は前記第1実施形態と同様であり、図9において付されている符号は第1実施形態と同じ部材を示し、重複する説明は省略する。
【0055】
マスク55は、前記第1実施形態で示したマスク50と同様に、積層基板30の電極P1,P2,P3,31を覆って他の部分を開口部56としたもので、開口部56からレーザを照射してコンデンサ電極71a,72a,73a及び終端抵抗Rを必要に応じてトリミングする。プローブ58は電極P1,P2,P3,31に対応する位置(図10参照)に形成した孔57からマスク55の下面に突出可能に取り付けられている。各々のプローブ58の形状は図11に示すとおりであり、図示しないスプリング機構によって保持筒59から出し入れ可能とされている。
【0056】
本第2実施形態では、レーザトリミングを行う前に、積層基板30のコンデンサC1,C2,C3の初期容量を測定する。すなわち、積層基板30を固定してマスク55を降下させて積層基板30上に載せ、プローブ58を下降させてその先端を電極P1,P2,P3,31に接触させ、コンデンサC1,C2,C3の容量を測定する。
【0057】
次に、プローブ58を上昇させて電極P1,P2,P3,31から離間させ、測定された初期容量に基づいて決定されたトリミング位置にレーザを照射し、コンデンサ電極71a,72a,73aをトリミングする。その後、プローブ58を再度下降させてトリミングされたコンデンサ容量を測定する。
【0058】
以上の工程(初期容量測定、レーザトリミング、トリミング後の容量測定)は自動機を用いて短時間で行われ、これにて、非可逆回路素子の低価格化が達成される。勿論、マスク55を用いてレーザトリミングを行う作用効果は前記第1実施形態と同様である。
【0059】
ところで、プローブによってコンデンサ容量を測定する場合、マスク55は樹脂製であることが好ましい。容量測定時にグランド電流が流れないので、測定誤差の小さい安定した容量の測定が可能となり、周波数特性のばらつきの小さい非可逆性回路素子が得られる。また、樹脂は加工性、寸法安定性に優れており、薄肉微細加工が可能であり、小型化した非可逆回路素子の多層基板の製造に最適である。この意味で前記第1実施形態に示したマスク50も樹脂製としてもよい。
【0060】
[第3実施形態、図12]
第3実施形態は、本発明に係る通信装置として、携帯電話を例にして説明する。図12は携帯電話220のRF部分の電気回路を示し、222はアンテナ素子、223はデュプレクサ、231は送信側アイソレータ、232は送信側増幅器、233は送信側段間用帯域通過フィルタ、234は送信側ミキサ、235は受信側増幅器、236は受信側段間用帯域通過フィルタ、237は受信側ミキサ、238は電圧制御発振器(VCO)、239はローカル用帯域通過フィルタである。
【0061】
ここに、送信側アイソレータ231として、前記第1実施形態の集中定数型アイソレータ1を使用することができる。これらのアイソレータを実装することにより、電気的特性の向上した、かつ、信頼性の高い携帯電話を実現することができる。
【0062】
[他の実施形態]
なお、本発明は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0063】
例えば、前記実施形態のコンデンサは、複数のホット側コンデンサ電極と複数のグランド電極からなるものであるが、一つのホット側コンデンサ電極と一つのグランド電極からなるものであってもよい。
【0064】
さらに、積層基板の内部に形成されるコンデンサは、整合用コンデンサに限るものではなく、低域通過フィルタやトラップ回路などを構成するためのコンデンサであってもよい。また、本発明に係る非可逆回路素子は、アイソレータ以外に、サーキュレータやカップラー内蔵の非可逆回路素子などであってもよい。
【0065】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、コンデンサ電極を積層体の内部に設けるとともに、コンデンサ容量のトリミングは接続電極を覆うマスクを使用して行われるため、レーザの照射によって発生する飛散物が接続電極に付着することはなく、中心電極とのはんだ付け不良が生じる不具合を解消することができる。
【0066】
また、前記マスクにプローブを取り付け、このマスクを積層体の表面に載せて該プローブを用いてコンデンサ容量を測定し、その測定値に基づいてコンデンサ容量のトリミングを行い、その後、再度プローブを用いてトリミングされたコンデンサ容量を測定するようにしたため、初期容量測定、レーザトリミング、トリミング後の容量測定までを自動機を用いて短時間で行うことが可能になり、非可逆回路素子の低価格化が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る非可逆回路素子の一実施形態を示す分解斜視図。
【図2】図1に示した積層基板の分解斜視図。
【図3】前記積層基板に形成された各種電極を示す平面図。
【図4】前記積層基板にマスクを載せてせレーザトリミングを行った状態を示す平面図。
【図5】(A)はマスクを用いずにレーザトリミングを行った場合の飛散物の付着状況を示す平面図、(B)はマスクを用いてレーザトリミングを行った場合の飛散物の付着状況を示す平面図。
【図6】積層基板のマザーボード状態を示す平面図。
【図7】図6に示した積層基板上に部品を搭載した状態を示す平面図。
【図8】図1に示した非可逆回路素子の電気等価回路図。
【図9】プローブを取り付けたマスクと積層基板を示す斜視図。
【図10】図9に示したマスクの裏面図。
【図11】図9に示したプローブの立面図。
【図12】本発明に係る通信装置の電気回路ブロック図。
【図13】従来の積層基板を示す外観斜視図。
【図14】図13に示した積層基板の分解斜視図。
【符号の説明】
1…集中定数型アイソレータ
4,8…金属製ケース
9…永久磁石
13…中心電極組立体
20…フェライト
21〜23…中心電極
30…積層基板
31…グランド用接続電極
50,55…マスク
51,56…開口部
58…プローブ
71a〜73a,71b〜73b…コンデンサ電極
74…グランド電極
75…抵抗体
80,81…トリミング溝
220…携帯電話
C1〜C3…整合用コンデンサ
R…終端抵抗
P1〜P3…中心電極用接続電極

Claims (11)

  1. 複数の誘電体層を積み重ねて構成した積層体と、
    前記積層体の表面に設けられた、非可逆回路素子の中心電極に電気的に接続するための中心電極用接続電極と、
    前記積層体の内部に設けられたコンデンサ電極とを備え、
    前記コンデンサ電極は、前記中心電極用接続電極を覆って他の部分を開口部としたマスクを前記積層体の表面に載せて該開口部からレーザを照射してコンデンサ容量のトリミングを行ったものであること、
    を特徴とする積層基板。
  2. 前記積層体に終端抵抗が内蔵されており、該終端抵抗は前記マスクの開口部からレーザを照射してトリミングを行ったものであることを特徴とする請求項1に記載された積層基板。
  3. 複数の誘電体層とコンデンサ電極と非可逆回路素子の中心電極に電気的に接続するための中心電極用接続電極とを積み重ねて、前記中心電極用接続電極を表面に設けるとともに前記コンデンサ電極を内部に設けた積層体を構成する工程と、
    前記中心電極用接続電極を覆って他の部分を開口部としたマスクを前記積層体の表面に載せ、該開口部からレーザを照射してコンデンサ容量のトリミングを行う工程と、
    を備えたことを特徴とする積層基板の製造方法。
  4. 前記マスクはステンレスからなるものを使用することを特徴とする請求項3に記載された積層基板の製造方法。
  5. 前記マスクにはコンデンサ容量を測定するためのプローブが取り付けられていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載された積層基板の製造方法。
  6. 前記マスクを前記積層体の表面に載せて前記プローブを用いてコンデンサ容量を測定し、その測定値に基づいてコンデンサ容量のトリミングを行い、その後、再度前記プローブを用いてトリミングされたコンデンサ容量を測定することを特徴とする請求項5に記載された積層基板の製造方法。
  7. 前記マスクは樹脂からなるものを使用することを特徴とする請求項6に記載された積層基板の製造方法。
  8. 前記積層体には終端抵抗が内蔵されており、前記マスクの開口部からレーザを照射して該終端抵抗のトリミングを行う工程をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載された積層基板の製造方法。
  9. 前記マスクには終端抵抗を測定するためのプローブが取り付けられていることを特徴とする請求項8に記載された積層基板の製造方法。
  10. 請求項1又は請求項2に記載された積層基板と、
    永久磁石と、
    前記永久磁石により直流磁界が印加されるフェライトと、
    前記フェライトに配置されている複数の中心電極と、
    前記フェライトに配置されている積層基板用接続電極と、
    を備えたことを特徴とする非可逆回路素子。
  11. 請求項10に記載された非可逆回路素子を備えたことを特徴とする通信装置。
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