JP2004206854A - 光情報記録媒体 - Google Patents

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逸郎 中村
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Abstract

【課題】青色レーザ光が入射される2層目の記録層からも良好な再生出力が得られる光情報記録媒体を提供する。
【解決手段】第1透明基板11上に、第1記録層13、透明接着層16、第2記録層18及び第2基板22が順次積層されており、第1透明基板11側から照射される青色レーザ光BLにより、第1又は第2記録層13、18に情報が記録され、及びその記録された情報が再生される光情報記録媒体において、第1透明基板11から青色レーザ光BLを照射した際、第1透明基板11側での反射率R12は、第2記録層18の反射率をR2、第1記録層13の光透過率をT11としたときに、R12=(T11)・R2、且つ、R12>1/20である条件を満足するようにした。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光情報記録媒体に係り、特に2層構成の相変化型の情報記録層を有し、青色レーザ光が入射する透明層側から2層目にある記録層からも十分な再生出力が得られる高密度記録に適する光情報記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、いわゆるマルチメディアの興隆に伴い、デジタル動画のような大容量の情報を取り扱う要請が生じており、このような大容量の情報を蓄積し、ランダムアクセスして再生することの必要が高まっている。
光ディスクは、ランダムアクセスが可能であり、大容量で、記録再生装置からの取出しが可能(リムーバブル)であるといった特長を有する光情報記録媒体であり、これまでも各方面で大量に使用されているが、前述のような大容量化に対応するためには、これまで以上に多量の情報を扱い得ることが必要となっている。
【0003】
このような光ディスクにおいて、2次元方向(同一面内)での記録密度は、用いるレーザ光の最小スポット径によって決まり、この最小スポット径が小さい程、高密度に信号記録が行える。このため、この最小スポット径を小さくすべく、光源の短波長化、対物レンズの開口数NAの増大化が図られている。
しかしながら、光源の短波長化や対物レンズの開口数NAの増大化には、技術上制限があり、2次元方向での記録密度の向上は限界にきているのが現状である。
【0004】
このため、3次元方向での記録容量を増大させること、すなわち情報信号を蓄積する情報記録層を厚み方向に複数積層することが考えられ、例えば情報記録層を2層化することが試みられている。
そして、2層の情報記録層を有し、赤色レーザ光を使用する光情報記録媒体(光ディスク)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−21016号公報(第3−4頁、図1)
【0006】
図4に示されるように、従来例の光情報記録媒体(光ディスク)Bは、赤色レーザ光RLが照射される透明基板51上に、第1情報記録層B1、透明層56、第2情報記録層B2及び基板61が順次積層されてなる2層構成の光ディスクである。
【0007】
第1情報記録層B1は、ポリカーボネイトからなる透明基板51上に、第1誘電体層52、相変化材料からなる第1記録層53、第2誘電体層54、放熱層55を順次積層してなる。
第2情報記録層B2は、透明層56上に、第3誘電体層57、相変化材料からなる第2記録層58、第4誘電体層59、反射層60を順次積層してなる。
【0008】
61は保護層であリ、ポリカーボネイトからなる透明基板である。
このように、前記した構成の光ディスクBは、2層の第1記録層53及び第2記録層58を備えた2記録層を有する光ディスク(以下、単に2層光ディスクともいう)である。
【0009】
ポリカーボネイトからなる光透過性の透明基板51は0.9mmと厚く、透明基板51上に前記各層を積層しても、各層の荷重に十分に耐えられ、ディスク面も歪まない安定した光ディスクである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述の赤色レーザを光源とする2層光ディスク同様に、青色レーザを用いる2層光ディスクの実現が強く望まれている。
現在、レーザ光源の短波長化(青色レーザ、例えばレーザ波長405nm)、対物レンズの高NA化(例えば、NAが0.85)によってDVDとは規格が異なるが、DVDの5〜6倍の記録容量を有する次世代光ディスクの開発が盛んに推進されている。
【0011】
しかるに、レンズの高NA化による光ディスク読出し面とのワーキングディスタンスの狭小化、及び光源短波長化によって、前記公報で開示された技術的内容では、青色レーザを光源とする2層の記録層で十分な記録、再生を実現することは困難であることが明らかとなった。
【0012】
半導体青色レーザ(波長405±5nm)が記録再生に使用される光ディスクの場合には、レーザ波長が現行のものより更に短波長になるので、2層構成の光ディスクの各材料の中にはその材料の厚さが現行のままでは適当でないという問題があり、その解決が求められていた。
【0013】
また、情報記録層(記録層)を2層化した2層光ディスクでは、第1記録層53、第2記録層58を区別して情報信号の記録再生を行う必要がある。
このような情報信号の記録再生は、通常、レーザ光を集光したときの焦点位置が、第1記録層53,第2記録層58で異なることを利用して行われる。
【0014】
ここで、問題となるのは、第2記録層58に対する記録再生の際における、第1記録層53の影響である。この影響が大であると、第2記録層58に対する記録再生は良好に行えないものとなる。
【0015】
即ち、第2記録層58には、第1記録層53を通過したレーザ光が照射されるが、このとき、レーザ光は第1記録層53によって、ある程度、吸収され光強度が減衰するため、第2記録層58に実際に照射されるレーザ光の強度は、光源から出射したときの強度よりもかなり弱くなる。
【0016】
また、第2記録層58で反射した反射光は、第1記録層53を通過して図示せぬ光ピックアップの受光部で受光される。
このときも、この反射光は第1記録層53によってある程度、吸収されるため、受光部で受光される光強度は、第2記録層58で反射されたときの強度よりも弱くなる。
【0017】
このような点から見たときに、これまで前記した2層光ディスクで用いられている、1層目の記録層53は光の吸収率が比較的高く、これを通過することでレーザ光の光量が大きく減衰する。
このため、第2記録層58では記録再生に必要な照射光強度、反射光強度を十分得るのが困難であり、十分な再生出力が得られないといった問題があった。
【0018】
そこで、本発明は、上記問題を解決して、半導体青色レーザ(波長405±5nm)を用いた場合に、青色レーザ光が入射する透明層側から2層目にある記録層(第2記録層)からも、1層目の記録層(第1記録層)の記録状態の如何によらず十分な再生出力が得られる2つの記録層を有する光情報記録媒体を提供することを第1の目的とする。
【0019】
一方、音楽情報、画像情報等の個人情報用のストレージとして使用するために、光ディスクサイズの小径化と共に、アプリケーション開発が活発に行われている現状がある。
また、現在、盛んに開発が進められている波長が450nm以下のレーザを用いた記録再生方式では、波長が650nmを用いた記録再生方式に比べ、高密度な記録が可能なため、従来と同様の情報を記録する場合には、ディスク容量の全てを使用する必要がなく、ディスク管理の上からもディスク直径が大きすぎるという問題がある。
【0020】
又、この問題点を解決するために、さまざまな寸法のディスクが作られるようになると、ディスクの記録容量が不明となるという新たな問題点が生じる。
これらの背景を踏まえて、今後一層の高密度化、様々な用途開発の過程で複数サイズ、複数記憶容量の光ディスクが出現することが予想され、ドライブ側の負荷が増えるという問題がある。
【0021】
そこで、本発明は上記問題を解決して、今後予想される複数サイズのこの種光ディスクに対応するためになされたものであり、再生時の条件から規定される記録密度の制約の問題を解決し、短波長レーザにより記録情報ビットの微小化を図った場合においても、光ディスク管理上における諸問題を解決した光情報気記録媒体を提供することを第2の目的とする。
【0022】
さらに、2層光ディスクの場合、異なる2つの記録面に記録している信号を再生するために、各々の記録面にリードイン及びリードアウトを設けなければならない。最内周にリードイン、最外周にリードアウトを設けると、光ディスク装置にとっては異なる2枚の光ディスクを再生することと等価となる。
【0023】
従って、一方の記録面の再生が終了した後、一度トラッキング及びフォーカス制御を外して最内周に光ピックアップを移動し、再度フォーカス及びトラッキング制御を行い、スピンドルモータの回転数をPLL制御しなければならない。従って、再生面の変更に時間がかかるという問題が生じる。すなわち、一方の記録面から他方の記録面へシームレスに記録及び再生を行う際、ピックアップの移動に時間がかかるという問題が生じる。
【0024】
そこで、本発明は上記問題を解決して、2層の光ディスクにおいて、記録再生層の切換えの容易な光ディスクを提供することを第3の目的とするものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する手段として、第1の発明は、第1透明基板11上に、第1記録層13、透明接着層16、第2記録層18及び第2基板22が順次積層されており、前記第1透明基板11側から照射される青色レーザ光BLにより、前記第1又は第2記録層13,18に情報が記録され、及びその記録された情報が再生される光情報記録媒体において、
前記第1透明基板11から前記青色レーザ光BLを照射した際、前記第1透明基板11側での反射率R12は、前記第2記録層18の反射率をR2、前記第1記録層13の光透過率をT11としたときに、
R12=(T11)・R2、
且つ、R12>1/20
である条件を満足することを特徴とした光情報記録媒体である。
また、第2の発明は、第1の発明の光情報記録媒体において、前記第1透明基板11と前記第1記録層12との間にSi層23を設け、且つ前記透明接着層16と前記第1記録層13との間に高屈折率誘電体層24を設け、前記第1記録層13を通過後の前記青色レーザ光BLが前記第2記録層18に到達する割合を高めたことを特徴とする光情報記録媒体である。
また、第3の発明は、第1又は第2の発明の光情報記録媒体において、前記光情報記録媒体の所定領域に、前記光情報記録媒体の直径及び/又は記録容量情報を予め記録して構成したことを特徴とする光情報記録媒体である。
また、第4の発明は、第1又は第2の発明の光情報記録媒体において、一方の前記記録層のリードインを最内周に、リードアウトを最外周に配置し、他方の前記記録層のリードインを最外周に、リードアウトを最内周に配置し、かつ前記一方の記録層と前記他方の記録層が形成される溝のスパイラル形状を前記一方の記録層と前記他方の記録層とで互いに逆方向に形成したことを特徴とする光情報記録媒体である。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき、好ましい実施例により、図面を参照して説明する。なお、参照符号については、同一構成には同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
<第1実施例>
図1は、本発明の光情報記録媒体の第1実施例を示す断面構成図である。
図2は、本発明の光情報記録媒体の第1実施例における記録再生状態を説明するため図である。
【0027】
図1に示すように、第1実施例の光情報記録媒体(光ディスク)Aは、青色レーザ光BLが照射される側から光透過性の第1透明基板11、第1情報記録層A1、透明接着層16、第2情報記録層A2及び第2基板22が順次積層されてなる2層の記録層を有する光ディスク(以下、単に2層ディスクともいう)である。
【0028】
第1情報記録層A1は、レーザ波長405±5nmの青色レーザ光BLが照射される側の反対面上に第1案内溝(図示しない)が形成された極薄の第1透明基板11の上に、第1誘電体層12、相変化材料からなる第1記録層13、第2誘電体層14及び放熱層15とがこの順に積層されたものより構成される。
さらに、第1記録層13の少なくとも1つの面に接して窒化物透明誘電体層(図示しない)が形成されている。
【0029】
第2情報記録層A2は、第1情報記録層A1とは別工程で製作され、第1透明基板11に対して十分厚い第2基板22の一方の面上に第2案内溝(図示しない)を形成し、その第2案内溝が形成された第2基板22面上に反射放熱層21、第3誘電体層19、相変化材料からなる第2記録層18、第4誘電体層17とをこの順に積層したものより構成される。
【0030】
第1情報記録層A1と第2情報記録層A2とは別工程にして、第1透明基板11上に積層した場合に第2情報記録層A2の荷重が加わり、第1透明基板11の平面度が損われるのを別工程にして分離することで防止している。
【0031】
さらに、第2記録層18の少なくとも1つの面に接して窒化物透明誘電体層(図示しない)を形成してある。
透明接着層16は第1情報記録層A1と第2情報記録層A2との接着層として機能する。
このように、本実施例の光ディスクAは、2層の相変化型記録層(第1記録層13及び第2記録層18)を備えた2層光ディスクである。
【0032】
この光ディスクAへの情報の記録再生は、次のように行われる。
即ち、第1透明基板11側から照射される記録青色レーザ光BLを、1層目(上層)の第1記録層13、2層目(下層)の第2記録層18にそれぞれ別々に集光することで、各記録層に情報(信号)をそれぞれ独立して記録することが出来る。
【0033】
また、第1透明基板11側から照射される青色レーザ光BLを、各記録層13、18にそれぞれ別々に集光することで、各記録層13、18に記録された情報(信号)をそれぞれ独立して再生することが出来る。
【0034】
第1透明基板11としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂よりなるプラスチック基板やガラス基板等が用いられる。
前者の場合には射出成形によって、後者の場合にはフォトポリマー法(2P法)によって、グルーブ(第1案内溝)、ピット等が凹凸形状として同心円状又は螺旋状に形成されるものとなる。
【0035】
第1記録層13、第2記録層18は、結晶状態と非晶質状態間で相変化する相変化材料でそれぞれ構成されている。
相変化材料としては、GeSbTe系化合物、AgInTeSb系化合物が用いられる。
各記録層13、18には次のようにして記録ピットが形成される。即ち、この相変化材料からなる各記録層13,18はスパタッリング法によって成膜された場合、成膜直後では非晶質状態を呈している。
【0036】
まず、成膜直後、非晶質状態の記録層の全体に、結晶化温度以上、融点以下の温度領域に達するような低パワーの青色レーザ光BLを照射して、これを結晶状態に相変化させる初期化を行う。
【0037】
次に、第1透明基板11側から入射する青色レーザ光BLを結晶状態の第1記録層13に集光させて記録を行う。
第1記録層13を構成する相変化材料の融点以上に上昇させる高パワーの記録青色レーザ光BLを記録層13に照射することにより、第1記録層13は記録青色レーザ光BLのエネルギーを吸収し、溶融液相化し、急速に冷却された後、非晶質状態となる。この結果、各記録層上に非晶質状態の記録ピットがそれぞれ新たに形成される。このことは、オーバーライトの場合でも同様である。
【0038】
次に、第1透明基板11側から入射する青色レーザ光BLを記録層13上の記録ピットに集光させて再生を行う。結晶化温度まで達しない低パワーの青色レーザ光BLを照射する。
【0039】
これにより、この記録ピットから、これ以外の部分(ミラー部分)からの反射光とは異なる反射率を有する反射光が得られる(結晶状態のミラー部分の反射率>非晶質状態の記録ピットの反射率)。
この結果、この反射率の差を利用することにより、記録層13上の前記記録ピットを検出再生することが出来る。
【0040】
次に、記録層13、18に用いられる相変化型記録材料の光学特性について以下に説明する。
記録層としての相変化型記録材料の光学特性は、第1透明基板11に対する第1情報記録層A1と第2情報記録層A2との位置関係を考慮することによって決定される。
【0041】
即ち、第1透明基板11側に近接している第1情報記録層A1に照射される記録再生青色レーザ光BLの強度、第1情報記録層A1の光透過率、光吸収率などによって、第1情報記録層A1の下層にある第2情報記録層A2の光学特性は大きな影響を受け、第1情報記録層A1の下層にある第2情報記録層A2の記録再生が不可能となる場合も起こり得る。
【0042】
このために、第1情報記録層A1の光透過率は、第1情報記録層A1の未記録、記録済の如何に拘らず、第2の情報記録層A2が記録済である低反射率の場合でも、第1情報記録層A1を透過して得られる第2情報記録層A2からの反射光に基づいて、十分な(再生)信号振幅を得られるだけの光透過率が必要である。
【0043】
これに対して、第1情報記録層A1に照射され青色レーザ光BLの強度は、第2の情報記録層A2に照射される青色レーザ光BLの強度よりも低くても、そこに記録ピットを形成出来、また、この記録ピットから十分な再生信号振幅を得られるだけの反射光の強度を得ることが出来ることは勿論のことである。
【0044】
前記した条件の第1記録層13、第2記録層18にそれぞれ用いられる相変化型記録材料を決定するためには、反射率、光透過率、光吸収率をそれぞれ考慮することが必要となる。
2層記録の為には相変化型記録材料を決定する際に、次の条件の成立が必要であることが実験等から判った。
【0045】
第1透明基板11に照射される青色レーザ光BLの光強度を1とした場合に、第1記録層13に記録される場合の第1透明基板11での反射率R11は、
第1記録層13が結晶状態の場合に、R11=Rc1>1/10、
第1記録層13が非晶質状態の場合には、R11=Ra1>1/20である。但し、Rc1は第1記録層13の結晶状態における反射率を、Ra1は第1記録層13の非晶質状態における反射率をそれぞれ示す。
【0046】
第2の記録層18に記録される場合の第1透明基板11での反射率R12は、
前記第1記録層13及び前記第2記録層18が共に結晶状態の場合に、
R12=(Tc1)・Rc2>1/10、
前記第1記録層13が非晶質状態で且つ前記第2記録層18が結晶状態の場合に、
R12=(Ta1)・Rc2>1/20、
第1記録層13が結晶状態で且つ第2記録層18が非晶質状態の場合に、
R12=(Tc1)・Ra2>1/10、
第1記録層13及び第2記録層18が共に非晶質状態の場合には、
R12=(Ta1)・Ra2>1/20である。
【0047】
但し、Rc2は第2記録層18の結晶状態における反射率を、Ra2は第2記録層18の非晶質状態における反射率を、Tc1は第1記録層13の結晶状態における光透過率を、Ta1は第1記録層13の非晶質状態における光透過率をそれぞれ示す。
【0048】
これは、第2記録層18に記録される場合の第1透明基板11での反射率R12は、第1記録層13及び第2記録層18が共に、結晶状態の場合に、第1記録層13を光透過率T11で透過した透過光が第2記録層18で反射率R2で反射し、その反射した反射光T11・R2が再度第1記録層13を光透過率T11で透過して出力の強さ(T11)・R2の出力光、すなわち、これが第2記録層に記録される場合の光情報記録媒体の反射率R12となる。
【0049】
よって、第2記録層18に記録される場合の第1透明基板11での反射率R12は、
反射率R12=(T11)・R2となる。但し、第2記録層の反射率をR2、第1記録層の光透過率をT11とする。
且つ、R12>1/20である条件を最小限満足することが必要となる。
【0050】
この第2記録層18に記録される場合の反射率R12>1/20の条件について、更に詳しく説明する。
反射光、すなわち記録層からの戻り光は、PD(フォトディテクタ)の感度から反射率は入射光強度を1とした時に、1/20(5パーセント)以上必要である。
この反射率を下回った場合には、再生信号品質(C/N、ジッター)に劣化をもたらし、記録再生特性の悪化を招く。
【0051】
また、繰返し書換え耐久性、高S/Nを確保するために高変調度(記録ピットとミラー部の反射率差又は再生信号振幅)の再生信号が必要である。
このためには記録ピットの反射率は消去状態(ミラー部)の反射率の下限(0.05)の2倍以上必要となる。従って、記録マークの反射率は、1/10(10パーセント)以上必要である。
【0052】
この反射率を下回った場合、C/Nの低下のため実用的な繰返し書換え耐久性の確保が困難となる。以上から第1情報記録層A1の反射率R11、第2情報記録層A2の反射率R12はそれぞれ決められる。
【0053】
第1記録層13の結晶状態における光透過率Tc1、非晶質状態における光透過率Ta1は、記録層を通過(透過)することによる記録又は再生青色レーザ光BLの減衰を抑える点から決められるものである。
【0054】
この光透過率Tc1、Ta1が小であると、第1記録層13を通過することで記録又は再生青色レーザ光BLの強度は減衰し、第2記録層18に十分な強度で青色レーザ光BLを照射することが出来ない。従って、第2記録層18を用いた情報信号の記録再生は行えない不都合が発生する。
【0055】
また、第2記録層18の結晶状態における反射率Rc2、非晶質状態における反射率Ra2は、十分な再生信号振幅が得られるための反射率の点から設定されるものである。
【0056】
この反射率Rc2、Ra2が小さいと、第2記録層18からの反射光は第1記録層13を透過して第1透明基板11側に出射したときに、十分な強度で出力することが出来ない。
従って、第2記録層18を用いての情報信号の再生は行えない不都合が発生する。
【0057】
このような第1記録層13の反射率Rc1、Ra1、光透過率Tc1、Ta1と、第2記録層8の反射率Rc2、Ra2との光学特性は、特に、記録材料として用いられる相変化材料の屈折率nや消衰係数kに大きく依存する。
【0058】
一方、第1記録層13、第2記録層18の各熱的特性は、第1情報記録層A1と第2情報記録層A2との層構成に大きく依存する。
即ち、第1記録層13の記録時に発生する熱は、第2誘電体層14、放熱層15から放熱される。また、第2記録層18の記録時に発生する蓄熱は、第3誘電体層19、反射放熱層21から放熱される。
【0059】
詳しくは、第1記録層13(第2記録層18)を挟み込むようにして第1誘電体層12、第2誘電体層14(第3誘電体層19、第4誘電体層17)を設けた場合、第1透明基板11側の第1誘電体層12(第4誘電体層17)は、光学的干渉効果により、第1記録層13(第2記録層18)の光学的特性(反射率、光透過率、光吸収率)に大きく作用する。
【0060】
一方、第1誘電体層12(第4誘電体層17)を形成する誘電体材料は、一般に熱拡散しにくい性質を有している。
この結果、第2誘電体層14(第3誘電体層19)は第1記録層13(第2記録層18)の冷却速度に大きく影響する。
【0061】
第2誘電体層14(第3誘電体層19)の膜厚が厚い程、第1記録層13(第2記録層18)は蓄熱しやすくなり、冷却速度は遅くなる(徐冷構造)。
この場合、青色レーザ光に対する記録感度は向上するが、第1記録層13(第2記録層18)の蓄熱により第1記録層13(第2記録層18)を構成する相変化材料が流動もしくは偏析するといった問題が生じる。
【0062】
このために、第1記録層13の蓄熱を抑えるためには、第2誘電体層14、放熱層15の併用が有効である。この放熱層15は、比較的熱伝導率の大きな金属薄膜層または誘電体層、もしくはその組み合わせであり、これを用いることにより熱の拡散が促進され、第1記録層13の再結晶化及び第2記録層18への熱伝導を大幅に防止することが出来る。
【0063】
また、第2誘電体層14の厚さを薄くするか、もしくは第2誘電体層14を第1誘電体層12とは材質が異なる比較的熱伝導率の大きな透明誘電体層とすると共に、この上に放熱層15を設けると、第1記録層13の熱が第2誘電体層14を介して放熱層15に伝導し易くなるので、一層、冷却速度は速くなる(急冷構造)。
【0064】
一方、2層目の記録層18の蓄熱を抑えるためには、第3誘電体層19、反射放熱層21の併用が有効である。また、第3誘電体層19の厚さを薄くすると、記録層18の熱が第3誘電体層19を介して反射放熱層21に伝導し易くなるので、一層、冷却速度は速くなる(急冷構造)。
【0065】
さらに、第1、第2誘電体層12、14(第3、第4誘電体層19、17)として、熱伝導率(放熱効果)が高いものを用いるようにしても、第1記録層13(第2記録層18)の蓄熱は大幅に抑制することが出来る。
【0066】
また、前記した第1記録層13と接して第1又は第2誘電体層12、14との間の少なくとも一面に窒化物透明誘電体層を形成する。
また、第2記録層18と接して第3又は第4誘電体層19、17との間の少なくとも一面に窒化物透明誘電体層を形成する。
【0067】
これらの窒化物透明誘電体層を形成することにより、第1乃至第4誘電体層12、14、19、17中のS(硫黄)成分の記録層13,18への拡散を抑制し、光ディスクAの繰返し書換え耐久性(オーバーライト)を向上させることが可能となる。
【0068】
さて、第1乃至第4誘電体層12、14、19、17の材料としては、レーザ光BLの波長領域において吸収の少ないものであればいずれでもよく、Al等の金属やSi等の半導体元素の窒化物、酸化物、硫化物、例えばZnS(80mol%)−SiO(20mol%)混合体等が挙げられる。
【0069】
なお、熱の拡散効果を期待する場合には、AlNやSiC等の熱伝導率の高いものを用いるのが望ましい。
反射放熱層21には、Al、Au、Agや、これらとTi、Cr、Pd、Cu等の合金等が用いられる。
【0070】
記録層13、18の熱的特性には、記録層を構成する相変化材料の膜厚も大きく影響する。膜厚が、厚過ぎる場合には熱容量が大きくなり、再結晶化し易くなる。
この場合、消去比は向上するが、蓄熱効果によって相変化材料膜の流動もしくは偏析が起き易くなり、オーバーライト特性(耐久性)が劣化する。
【0071】
一方、相変化材料膜の膜厚が薄すぎると、膜自体の劣化も激しくなる。記録層の層構成は、以上のような光学特性や熱的特性への影響を考慮して最適化されることが必要である。
【0072】
透明接着層16は、図2に示すように、第2記録層18からの反射光RL2を第1記録層13からの反射光RL1と、第1透明基板11側に近接する図示せぬ光ピックアップにおいて光学的に分離可能とする程度の厚さを有している。
【0073】
具体的には、透明接着層16の厚さは30μm程度(好ましくは20〜40μm、最良は30μm)とすることが好ましい。
透明接着層16の厚さがこれより薄い(20μm以下)と、2つの反射光RL1、RL2は光学的に分離出来ない。
【0074】
一方、透明接着層16の厚さがこれより厚い(50〜100μm)と、球面収差等が発生することから、2つの反射光RL1、RL2は光学的に分離出来るものの、その検出出力はその周囲がぼけたスポット光となるので、良好な再生信号を得ることが出来ない。この点を考慮して適正な厚さに設定する必要がある。
【0075】
以上、詳述した構造の2層光ディスクA(図1参照)に対する情報信号の記録再生は、以下に示すような周知の構成の光学系を有する光ヘッド(光ピックアップ)によって行われる。
【0076】
この光ピックアップは、光源となる半導体青色レーザー(波長405±5nm)、コリメータレンズ、1/4波長板及びNAが0.85の対物レンズよりなる照射系と、集光レンズ、シリンドリカルレンズ及びフォトダイオードよりなるフォーカスサーボ系によって構成されている。光学特性が測定される光ディスクAは、第1透明基板11側を、この光学系の対物レンズと対向させて、ターンテーブル上に載置される。
【0077】
このような光学系では、光源から出射した記録又は再生青色レーザ光BLは、コリメータレンズを通過することで平行光になり、この平行光はビームスプリッタ、1/4波長板、NAが0.85の対物レンズを通過し、光ディスク面(第1記録層13又は第2記録層18)上にビームスポットを形成する。
【0078】
一方、第1記録層13又は第2記録層18から反射された反射光RL1、RL2は、再び対物レンズ、1/4波長板を通過し、ビームスプリッタに入射する。ビームスプリッタに入射した光は、フォーカスサーボ系に反射され、集光レンズ、シリンドリカルレンズを経てフォトダイオードで受光され、光強度が検出される。
【0079】
この光強度の情報は、対物レンズを光軸方向に移動制御する2軸デバイスに伝わり、記録又は再生すべき記録層上に青色レーザ光BLが正確に集束するように、対物レンズが移動操作される。
このようにして、2層光ディスクAに対する情報信号の記録再生を行うことが出来る。
【0080】
次に、本実施例の光ディスクAの作製方法について説明する。
光ディスクAは、第1情報記録層A1、第2情報記録層A2に、いずれも書換え可能用として情報信号の記録、再生が行われる。この2層構成の光ディスクAを、以下の順序(工程1)〜(工程5)で作製した。
【0081】
光ディスクAにおいては、青色レーザ光を使用するので、第1透明基板11は従来の1/10程度の厚さにに薄くする必要があり、強度的に弱くなるため、その第1透明基板11に掛かる負担を軽減させるために片側から全部の層を積層するのを止めて、前半の(工程1)及び(工程2)だけ行い、そこで止め、後半の(工程3)及び(工程4)は別に反対側から積層処理し、最後に(工程5)により両者を張り合わせて平面度が良好に確保される2層構成の光ディスクAを作製するものである。
【0082】
(工程1)第1透明基板11の作製
まず、前記した第1透明基板11としては、第1誘電体層12が積層される面に、グルーブ(第1案内溝)、ピット等が凹凸形状として同心円状又は螺旋状に形成されたポリカーボネート基板(シート状)を用意した。この第1透明基板11の厚さは0.09mmであり、直径120mmである。
【0083】
ここで、第1透明基板11の厚さはレーザ光の短波長化、対物レンズの高NA化によるディスクのチルト(レーザー光軸からディスク面が垂直からずれる角度)マージン等の都合から従来のものに対して略1/10程度に薄くしてある。
【0084】
(工程2)第1情報記録層A1の作製
次に、この第1透明基板11上に、ZnS(80mol%)−SiO(20mol%)混合体よりなる第1誘電体層12、GeSb70Te21の三元合金よりなる相変化材料膜である第1記録層13、及び、ZnS(80mol%)−SiO(20mol%)混合体よりなる第2誘電体層14、Ag(98wt%)Pd(1wt%)Cu(1wt%)からなる放熱層15を順次被着形成することで、前記した第1情報記録層A1を形成した。
【0085】
この第1情報記録層A1を構成する各層の膜厚は、次の通りである。
第1誘電体層12の膜厚は20〜60nm、望ましくは35nmである。図示しない透明窒化物誘電体(GeN)の膜厚は2nmである。第1記録層13の膜厚は3〜7nm、望ましくは5nmである。第2誘電体層14の膜厚は6〜15nm、望ましくは9nmである。放熱層15の膜厚は6〜12nm、望ましくは10nmであり、且つ熱伝導率が50W/mK以上である。
【0086】
(工程3)第2基板22の作製
次に、フォトポリマー(2P)法によって、グルーブ(第2案内溝)、ピット等が凹凸形状として第2基板22に同心円状又は螺旋状に形成される。
第2基板22の直径は120mmであり、厚さは1.1mmであり、第1透明基板11の厚さ0.09mmと比較すると略10倍で十分に厚いものである。
【0087】
(工程4)第2情報記録層A2の作製
続いて、第2基板22上に、Ag(98wt%)Pd(1wt%)Cu(1wt%)よりなる反射放熱層21、ZnS(80mol%)−SiO(20mol%)混合体よりなる第3誘電体層19、GeSb70Te21の三元合金よりなる相変化材料膜である第2記録層18、ZnS(80mol%)−SiO(20mol%)混合体よりなる第4誘電体層17を順次被着形成することで、第2情報記録層A2を形成した。
【0088】
第2情報記録層A2を構成する各層の膜厚は、次の通りである。反射放熱層21の膜厚は200nmである。第3誘電体層19の膜厚は8〜12nm、望ましくは10nmである。透明窒化物誘電体(GeN)の膜厚は2nmである。第2記録層18の膜厚は8〜12nm、望ましくは10nmである。第4誘電体層17の膜厚は20〜60nm、望ましくは35nmである。
【0089】
(工程5)透明接着層16の作製
さらに、この第2情報記録層A2(第4誘電体層17)上に、接着層として紫外線硬化樹脂をスピンコートし、第1情報記録層A1(放熱層15)と接着した。これにより膜厚30μmの透明接着層16を作製した。
【0090】
こうして、第1情報記録層A1を有する第1透明基板11に負担を掛けずに第2情報記録層A2を有する第2基板22を接着で張り合わせることで、2層光ディスクAを安定に平面度を確保して作製することが出来た。
【0091】
各情報記録層の初期化は、各情報記録層を形成した後に別個に記録層全面に初期化レーザ光を照射することで初期化を行った。
以上のようにして作製された情報記録層を高精度の芯出しを行い(工程4)の張合わせを行うことによって光ディスクAを作製した。
こうして、前記した(工程1)〜(工程5)の順序によって光ディスクAを作製した。
【0092】
なお、光ディスクAの作製方法としては、以下の作製方法によってもよいことを確認している。
すなわち、フォトポリマー(2P)法によって、グルーブ(案内溝)、ピット等が凹凸形状として同心円状又は螺旋状に形成された第2基板22上に第2情報記録層A2を形成する。
【0093】
その記録層を初期化した後、透明接着層16として、透明接着層を介してこの上に、フォトポリマー法によって、グルーブ、ピット等が凹凸形状として同心円状又は螺旋状に形成された透明層を形成する。
次に、この透明接着層16上に第1情報記録層A1を形成し、最後に第1誘電体層12上に第1透明基板11を形成し、光ディスクAを作製する。
【0094】
このようにして作製した光ディスクAに対して、記録青色レーザ光BLを照射して、各記録層に記録ピットをそれぞれ形成した。
そして記録ピットが形成された部分と形成されていない部分での波長405(±5)nmの青色レーザ光に対する光ディスクAの各光学特性を測定した。
【0095】
以下に、第1情報記録層A1及び第2情報記録層A2の各光学特性について説明する。
ここで、第2情報記録層A2の反射率は、第1透明基板11側から照射される青色レーザ光Lが第1情報記録層A1を透過し、第2情報記録層A2で反射し、再度、第1の情報記録層A1を透過して第1透明基板11側へ戻るまでの光強度に対応している。
【0096】
反射率Rc1、Ra1、光透過率Tc1、Ta1の測定結果は、第1透明基板11に照射される青色レーザ光BLの光強度を1とした場合に、下記のようになった。
第1記録層13の結晶状態における反射率Rc1は、Rc1=0.187である。第1記録層13の非晶質状態における反射率Ra1は、Ra1=0.091である。第1記録層13の結晶状態における光透過率Tc1は、Tc1=0.715である。第1記録層13の非晶質状態における光透過率Ta1は、Ta1=0.561である。第2記録層18の結晶状態における反射率Rc2は、Rc2=0.298である。第2記録層18の非晶質状態における反射率Ra2は、Ra2=0.216である。
【0097】
このことから、第1記録層13に記録される場合の反射率R11は、第1記録層13が結晶状態の場合に、
反射率R11=Rc1=0.187>1/10
となり、第1記録層13が非晶質状態の場合には、
反射率R11=Ra1=0.091>1/20
となった。
【0098】
一方、第2記録層18に記録される場合の反射率R12は、第1記録層13及び第2記録層18が共に結晶状態の場合に、
Figure 2004206854
となり、第1記録層13が非晶質状態で且つ前記第2記録層18が結晶状態の場合に、
Figure 2004206854
となり、第1記録層13が結晶状態で且つ第2記録層18の非晶質状態の場合に、
Figure 2004206854
となり、第1記録層13及び第2記録層18が共に非晶質状態の場合に、
Figure 2004206854
となる。
【0099】
このように、この2層光ディスクAでは、第1記録層13で高い光透過率Tc1(結晶状態における光透過率)、Ta1(非晶質状態における光透過率)が得られているので、この第1記録層13を透過して第2記録層18に十分な強度で光を入射させることが出来た。
【0100】
また、第1情報記録層A1、第2情報記録層A2のいずれにおいても、高い反射率R11、R12が得られ、良好な記録再生特性を得ることが出来た。
他のサンプルでも反射率が1/20(第1記録層が非晶質状態の場合)、1/10(第1記録層が結晶状態の場合)より大であれば、良好な記録再生特性が得られた。
【0101】
記録面からの戻り光は、PD(フォトディテクタ)の感度から反射率は入射光強度を1とした時に、1/20(5パーセント)以上必要である。
この反射率を下回った場合には、再生信号品質(C/N、ジッター)に劣化をもたらし、記録再生特性の悪化を招く。
以上、第1実施例の記録層が2層の光ディスクAについて説明した。
【0102】
ところで、光ディスクの記録容量についてであるが、記録容量が多い場合は、情報の多寡にとらわれる必要がないので、使用しやすいという長所がある反面、記録容量の少ない光ディスクを用いて、1枚ごとの管理を容易にしたいという要望が一面にはある。そこで、これらの要望を満足させるには、ディスクの直径を変化させ、使いやすい容量のディスクを取りそろえておくとすこぶる都合がよい。
【0103】
ここで、本実施例において直径120mm(記録容量25GB)の光ディスクAを用いたが、これとは別に直径50.8mmであり、第1実施例と同様の構成の光ディスクA’を作製した。ここでは直径が2種類の例を示したが、これにとらわれることなく、各種の直径のディスクを存在させることで、使い勝手が良くなるという利点が新たに生じる。
言い換えれば、例えば、3GBの容量の入る光ディスクとか、5GBの容量の入る光ディスクとかを直径で管理することでなく、記録容量で管理することも可能となる効果がある。
【0104】
このように、いろいろな直径の光ディスクを取り揃えた場合、光ディスクの記録再生装置にはディスク直径の判別装置を設けておくことが望ましくなる。ディスクの直径判別装置の最も確実で安価な方法は、光ディスクの情報信号領域にディスクの直径、又は記録容量などを予め記録しておくことで達成できる。記録方法は、ピット形状としてディスク作製時に書き換えできない形状変化として記録しても良いし、ディスク作製後書き換えできる領域にディスク1枚毎に記録しておいても良い。
【0105】
一方記録再生装置に於いては、動作手順として、ステップ1:ディスクが記録再生装置に挿入されたことを検出し、ディスクを回転させ、光学ヘッドを用いてディスクの情報信号表面にフォーカスを合わせる。ステップ2:フォーカスを合わせた後トラッキングを合わせ、ディスクの特定領域(例えばトラッキング領域)を再生する。ステップ3:ディスクの特定領域(例えばリードイン領域)に記録
されているディスク直径情報/または記録容量情報を読み込む。ステップ4:ディスクの直径情報及びまたは記録容量情報を記録再生装置上の表示装置に表示させる。
このようなステップを踏むことで、各種直径を有するディスクを間違いなく使用できる効果が生じる。
【0106】
ディスク上に記録してある、ディスクの直径及びまたは記録容量情報の記録位置は任意な場所を特定領域とすることができるが、上記ステップ動作で示したとおり、光ヘッドが最初にフォーカスを合わせに行く場所に記録されていることが望ましく、一般的には、ディスクのリードイン領域に施されることが望ましい。
このような方法としておけば、ディスク及び記録再生装置に大幅な変更を加えることなく、機能の向上が図れ、使用者にとっても使いやすいシステムとなる。
【0107】
ここで、リードイン領域に予め光ディスクの直径と記録領域を記録してある直径50.8mmの光ディスクA’を判別した。この光ディスクA’を光記録再生装置に装着して、この光ディスクA’を回転させ、光学ヘッドを用いて光ディスクA’の情報信号表面にフォーカスを合わせ、しかる後、トラッキングを合わせ、光ディスクA’の特定領域を再生したところ、光ディスクA’のリードイン領域より、ディスク直径が50.8mm、ディスク記録容量が3GBであるという情報を検出した。これは、記録再生装置上のディスプレー画面に表示され、記録再生を行おうとする人が、光ディスクA’の仕様を視認できた。
【0108】
次に、記録層が2層の光ディスクの使い勝手について検討した。
ここで、直径120mmであり、各層の構成が第1実施例の光ディスクAと同様であるが、第1記録層のリードインが最内周にあり、リードアウトが最外周にあり、第2記録層のリードインが最外周にあり、リードアウトが最内周にあり、かつ第1記録層と第2記録層が形成される溝のスパイラル形状が互いに逆方向である光ディスクA’’を作製して、使用具合を評価した。
【0109】
光ディスクA’’が光ディスク装置に挿入され、信号再生を開始すると、光ピックアップは次のような軌跡を描くように移動する。すなわち、まず一方の記録面上に光ピックアップから出射したレーザ光が集光するようにフォーカス制御が行われ、トラッキング制御及びリードインの読み込みと進行する。光ピックアップは記録面のデータ領域を再生し、リードアウトへと進む。記録面の再生終了後、トラッキング及びフォーカスの制御を外し、他方の記録面上に光ピックアップのフォーカス制御を行う。
【0110】
これによって、一方の記録面の再生終了後、光ピックアップがほとんど移動することなく、もう一方の記録面でフォーカス及びトラッキング制御の動作が可能となる。また、記録面が変わっても線速度の変化はほとんど無いため、スピンドルモータの回転数は、記録面変更前の状態を維持していればよい。
このように光ディスクA’’においては、記録再生層の切換えにおいて、最小限のビームスポットジャンプと焦点合わせを行うことで、連続記録再生が可能となる。
【0111】
<第2実施例>
図3は、本発明の光情報記録媒体の第2実施例を示す断面構成図である。
同図に示すように、第2実施例の光情報記録媒体(光ディスク)AAは、第1実施例の光ディスクAにおいて、さらに、第1透明基板11と第1誘電体層12の間に膜厚2乃至4nmのSi層23を設け、かつ放熱層15と透明接着層16との間に膜厚50乃至200nmの屈折率分散機能を有する高屈折率誘電体層24を設けた以外は第1実施例の光ディスクAと同様に構成したものである。これにより、第1記録層13を通過後の青色レーザ光BLが第2記録層18に到達する割合を高めたものである。
【0112】
まず、第2実施例の光ディスクAAにおいて、第1透明基板11としては、第1誘電体層12が積層される面に、グルーブ(第1案内溝)、ピット等が凹凸形状として同心円状又は螺旋状に形成されたポリカーボネート基板(シート状)を用意した。この第1透明基板11の厚さは0.09mmである。
【0113】
ここで、第1透明基板11の厚さは短波長化、光NA化によるディスクのチルト(レーザー光軸からディスク面が垂直からずれる角度)マージン等の都合から従来のものに対して略1/10程度に薄くしてある。
【0114】
この第1光透過性透明基板11上に、Si層23、ZnS−SiO混合体よりなる第1誘電体層12、GeSbTeの三元合金よりなる相変化材料膜である第1記録層13、ZnS−SiO混合体よりなる第2誘電体層14、AgPdCuよりなる放熱層15、及び、TiO−ZrOの混合物よりなる高屈折率誘電体層24を順次被着形成することで、第1情報記録層A1Aを形成した。
【0115】
この第1情報記録層A1Aを構成する各層の膜厚は、次の通りである。
Si層23の膜厚は2〜4nmである。第1誘電体層12の膜厚は20〜60nmであり、望ましくは35nmである。透明窒化物誘電体(GeN)の膜厚は2nmである。第1記録層13の膜厚は3〜7nmであり、望ましくは5nmである。第2誘電体層14の膜厚は6〜15nmであり、望ましくは9nmである。放熱層15の膜厚は6〜12nm、望ましくは10nmであり、且つ熱伝導率が50W/mK以上である。高屈折率誘電体層(TiO−ZrOの混合物)24の膜厚は50〜200nmであり、望ましくは150nmである。
【0116】
第2基板22の作製、第2情報記録層A2の作製は、第1実施例と同様であるので、その説明を省略する。
さらに、第2情報記録層A2(第4誘電体層17)上に、透明接着層16として紫外線硬化樹脂(透明接着層16)をスピンコートし、第1情報記録層A1A(高屈折率誘電体層24)と接着する。透明接着層16の膜厚は30μmである。
【0117】
第2実施例の光情報記録媒体AAは、第1透明基板11と第1誘電体層12の間に厚さ2〜4nmのSi層23を設け、かつ透明接着層16と放熱層15の間に屈折率分散を有する高屈折率誘電体層24、例えばTiOx(x≧1)、ZnS、TiO−ZrO(混合物)のいずれかの層を50〜200nm設けることにより、透過光は第1記録層13の相状態すなわち結晶質か非晶質かの影響を受けずにほぼ等しい透過率を示し、さらに高屈折率誘電体層15aがSi層23による透過光の減衰を相殺し透過率を高める効果を有するため、これらの2層を効果的に配置することにより第2記録層18における反射率が向上し、結果として記録再生特性の向上がもたらされる。
【0118】
(Si層23の役割)
Si層23は記録層13、18を透過する青色レーザ光BLの吸収率を制御する役割をしている。
具体的には、記録層13、18には、結晶質の反射率が大きくなる光学的な膜構造を採用しているため、第1情報記録層A1Aによる吸収率が結晶質の場合より非晶質の場合の方が大きくなる。このため、第1記録層13の透過光も結晶質より非晶質の場合の方が大きくなり、第2記録層18上における青色レーザ光BLの強度に差が生ずる結果となる。
【0119】
光学的吸収膜の複素屈折率(nc=n+ik、n:屈折率、k:消衰係数)の相互作用を考慮し、Si層23の光学定数は、本実施例のレーザ波長域では複素消衰係数が小さいため、第1記録層13が非晶質の場合、消衰係数は増加し、消衰係数が非晶質より大きい結晶質の場合は減少する。
この結果、結晶質、非晶質の実効的な消衰係数の差がほとんどなくなり、第1記録層13を透過する青色レーザー光強度がほぼ等しくなる。
【0120】
Si層23の厚さが2nm未満の場合、複素屈折率の相互作用による効果が不十分となり、第1記録層13を透過する青色レーザ光BLの強度の差が解消せず、また4nmより大きい場合は複素屈折率の相互作用による効果は得られるものの、厚さの増大によるSi層23における青色レーザ光BLの吸収が大きくなる結果、第2記録層18における良好な記録再生特性が得られない。
従って、Si層23が2〜4nmの場合、第1記録層13が結晶質、非晶質の場合の消衰係数の差がほとんどなくなり、第2記録層18へ入射する青色レーザ光BLの強度がほぼ等しくなり、結果として第2記録層18における良好な記録再生特性が実現可能となる。
【0121】
Si層23による吸収率制御の結果、第1記録層13における結晶質、非結晶の吸収率の大きさが逆転し、その結果、透過率がほぼ同等となり、第2記録層18における青色レーザ光BLの強度がほぼ等しくなり、良好な記録再生特性が実現可能となるものである。
【0122】
(高屈折率誘電体層24の役割)
高屈折率誘電体層24は、透明接着層16と放熱層15の界面で生ずる反射光を極力低減させる反射防止効果を有する。このため、第1記録層13を透過し第2記録層18に入射する青色レーザ光BLの強度が増大し、第2記録層18における再生時の戻り光強度が増加する。従って、第2記録層18の記録再生信号の品質が向上し、良好な記録再生特性が得られる。
【0123】
高屈折率誘電体層24の厚さが50nm未満の場合、または200nmより大きい場合は光学的に反射防止構造とはならず、場合によっては反射増幅構造となり得る可能性もあり、第2記録層18の記録再生信号の品質が劣化する。
高屈折率誘電体層24の膜厚が50〜200nmの場合、反射防止効果による実効的な透過率が向上し、第2記録層18における良好な記録再生特性が実現可能となる。
【0124】
透明接着層16と放熱層15の界面で生ずる反射光を極力低減する反射防止効果を有し、結果的に第1記録層13を透過し第2記録層18に入射する青色レーザ光BLの強度が増大し、第2記録層18における再生時の戻り光強度が増加し、従って、第2記録層18の記録再生信号品質が向上し、良好な記録再生特性が得られるものである。
【0125】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明係る光情報記録媒体において、請求項1記載によれば、第1透明基板から青色レーザ光を照射した際、前記第1透明基板側での反射率R12は、第2記録層の反射率をR2、第1記録層の光透過率をT11としたときに、
R12=(T11)・R2、
且つ、R12>1/20
である条件を満足することとしたので、青色レーザー光を利用して3次元方向での記録容量を増大して高密度記録を可能とする2記録層構成の光情報記録媒体を提供できるという効果がある。
【0126】
また、請求項2記載によれば、第1透明基板と第1記録層との間にSi層を設け、且つ透明接着層と前記第1記録層との間に高屈折率誘電体層を設け、前記第1記録層を通過後の前記青色レーザ光が前記第2記録層に到達する割合を高めたことにより、第2記録層に十分な強度で記録又は再生青色レーザ光を照射することが出来、また、この記録層からの反射光を十分な強度で受光することが可能な青色レーザ光対応の2記録層構成の光情報記録媒体を提供できるという効果がある。
【0127】
また、請求項3記載によれば、光情報記録媒体の特定領域に、前記光情報記録媒体の直径及び/又は記録容量情報を予め記録して構成してあることにより、再生動作に先立ち、その情報を読み出すことによってドライブの負荷を軽減でき、多種サイズ、多種記憶容量の光情報記録媒体を容易に記録再生する事ができる。
【0128】
また、請求項4によれば、一方の記録層のリードインを最内周に、リードアウトを最外周に配置し、他方の記録層のリードインを最外周に、リードアウトを最内周に配置し、かつ前記一方の記録層と前記他方の記録層が形成される溝のスパイラル形状を前記一方の記録層と前記他方の記録層とで互いに逆方向に形成したことにより、記録再生層の切換えを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光情報記録媒体の第1実施例を示す断面構成図である。
【図2】本発明の光情報記録媒体の第1実施例における記録再生状態を説明するため図である。
【図3】本発明の光情報記録媒体の第2実施例を示す断面構成図である。
【図4】従来例の光情報記録媒体を示す断面構成図である。
【符号の説明】
11…第1透明基板、12…第1誘電体層、13…第1記録層、14…第2誘電体層、15…放熱層、16…透明接着層、17…第4誘電体層、18…第2記録層、19…第3誘電体層、21…反射放熱層、22…第2基板、23…Si層、24…高屈折率誘電体層、51…基板、52…第1誘電体層、53…第1記録層、54…第2誘電体層、55…放熱層、56…透明層、57…第3誘電体層、58…第2記録層、59…第4誘電体層、61…反射層、62…保護層、A,AA…光情報記録媒体、A1,A1A…第1情報記録層、A2…第2情報記録層、B…光情報記録媒体、B1…第1情報記録層、B2…第2情報記録層、BL…青色レーザ光、RL…赤色レーザ光、RL1,RL2…反射光、R1…第1記録層の反射率、R2…第2記録層の反射率、R11…第1記録層に記録される場合の反射率、R12…第2記録層に記録される場合の反射率、Ra1…第1記録層の非晶質状態における反射率、Ra2…第2記録層の非晶質状態における反射率、Rc1…第1記録層の結晶状態における反射率、Rc2…第2記録層の結晶状態における反射率、T11…第1記録層の光透過率、Tc1…第1記録層の結晶状態における光透過率、Ta1…第1記録層の非晶質状態における光透過率。

Claims (4)

  1. 第1透明基板上に、第1記録層、透明接着層、第2記録層及び第2基板が順次積層されており、前記第1透明基板側から照射される青色レーザ光により、前記第1又は第2記録層に情報が記録され、及びその記録された情報が再生される光情報記録媒体において、
    前記第1透明基板から前記青色レーザ光を照射した際、前記第1透明基板側での反射率R12は、前記第2記録層の反射率をR2、前記第1記録層の光透過率をT11としたときに、
    R12=(T11)・R2、
    且つ、R12>1/20
    である条件を満足することを特徴とした光情報記録媒体。
  2. 請求項1記載の光情報記録媒体において、
    前記第1透明基板と前記第1記録層との間にSi層を設け、且つ前記透明接着層と前記第1記録層との間に高屈折率誘電体層を設け、前記第1記録層を通過後の前記青色レーザ光が前記第2記録層に到達する割合を高めたことを特徴とする光情報記録媒体。
  3. 請求項1又は2記載の光情報記録媒体において、
    前記光情報記録媒体の所定領域に、前記光情報記録媒体の直径及び/又は記録容量情報を予め記録して構成したことを特徴とする光情報記録媒体。
  4. 請求項1又は2記載の光情報記録媒体において、
    一方の前記記録層のリードインを最内周に、リードアウトを最外周に配置し、他方の前記記録層のリードインを最外周に、リードアウトを最内周に配置し、かつ前記一方の記録層と前記他方の記録層が形成される溝のスパイラル形状を前記一方の記録層と前記他方の記録層とで互いに逆方向に形成したことを特徴とする光情報記録媒体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US7477592B2 (en) 2004-12-14 2009-01-13 Kabushiki Kaisha Toshiba Optical disc, optical disc apparatus, optical disk reproducing method, and digital work publication

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