JP2004206802A - 多結晶構造膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】多結晶構造膜32は、シード層35と多層結晶層36とを備える。シード層35は、基板31の表面に直交する法線に対して傾斜する斜め成長結晶粒から構成される。斜め成長結晶粒ではB2構造は確立される。同時に、斜め成長結晶粒の(100)面は所定の方向に優先配向される。斜め成長結晶粒は例えばAlRu合金から構成される。こうした斜め成長結晶粒によれば、多層結晶層36ではエピタキシャル成長に基づき結晶粒の結晶面は特定の方向に十分に揃えられることができる。
【選択図】 図3
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばハードディスク(HD)といった磁気記録媒体に使用されることができる多結晶構造膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハードディスクの分野では、例えば平滑なガラス基板上に、基板の表面に直交する法線から傾斜する斜め成長結晶粒を形成する方法は広く知られる(例えば、特許文献1参照)。こうした斜め成長結晶粒の表面には、下地層や記録磁性層は積層形成される。記録磁性層では斜め成長結晶粒の働きでいわゆる周方向の磁気異方性は高められる。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−203312号公報
【特許文献2】
特開昭62−082516号公報
【特許文献3】
特開平05−143988号公報
【特許文献4】
米国特許第5693426号明細書
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
斜め成長結晶粒は、一般に、例えばTaやNbなどを含む合金から構成される。かかる斜め成長結晶粒が例えば平滑なガラス基板上に形成されても、記録磁性層の結晶粒では結晶面はいわゆる面内方向に優先配向されることができない。ハードディスクの磁気特性は高められることができない。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、これまで以上に斜め成長結晶粒上で所定の結晶面を面内方向に優先配向させることができる多結晶構造膜を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1発明によれば、対象物の表面に沿って広がり、対象物の表面に直交する法線に対して傾斜する斜め成長結晶粒を含むシード層と、シード層の表面に沿って広がる結晶層とを備え、斜め成長結晶粒はB2構造を有することを特徴とする多結晶構造膜が提供される。このとき、斜め成長結晶粒の(100)面は所定の方向に優先配向されることが望まれる。
【0007】
こういった多結晶構造膜によれば、シード層の斜め成長結晶粒の働きで、結晶層ではエピタキシャル成長は確実に制御されることができる。かかるエピタキシャル成長に基づき、結晶層の結晶粒では所定の結晶面はこれまで以上に特定の方向に十分に揃えられることができる。
【0008】
こうした多結晶構造膜では、斜め成長結晶粒はAlおよびRuを含む合金から構成されればよい。例えば、44〜52at%の組成比でRuを含むAlRu合金から構成されることが望ましい。かかる組成比によれば、AlRu膜ではB2構造が確立される。
【0009】
結晶層は、hcp構造を有する記録磁性層と、シード層および記録磁性層の間に配置され、hcp構造を有する中間層とを備え、中間層の格子定数は、シード層の格子定数および記録磁性層の格子定数の間の値に設定されればよい。
【0010】
こういった多結晶構造膜によれば、中間層の働きで、シード層の格子定数と記録磁性層の格子定数との差は緩和される。シード層と記録磁性層の結晶粒同士では格子の整合性は高められることができる。記録磁性層の結晶粒では中間層の働きでエピタキシャル成長に基づき所定の結晶面は特定の方向に十分に揃えられることができる。
【0011】
こうした多結晶構造膜では、表面でシード層を受け止める非晶質層をさらに備えてもよい。非晶質層は例えばNiP膜から構成されればよい。かかる非晶質層によれば、シード層の成膜にあたって、シード層の斜め成長結晶粒は良好な状態で成長することができる。
【0012】
第2発明によれば、対象物の表面に沿って広がり、対象物の表面に直交する法線に対して傾斜する斜め成長結晶粒を含むシード層と、シード層の表面に沿って広がる結晶層とを備え、斜め成長結晶粒はAlおよびRuを含む合金から構成されることを特徴とする多結晶構造膜が提供される。このとき、斜め成長結晶粒はB2構造が確立されることが望まれる。このとき、斜め成長結晶粒の(100)面は所定の方向に優先配向されることが望まれる。
【0013】
こういった多結晶構造膜では、前述のように、シード層の斜め成長結晶粒の働きで、結晶層ではエピタキシャル成長は確実に制御されることができる。結晶層の結晶粒では所定の結晶面はこれまで以上に特定の方向に十分に揃えられることができる。合金は、44〜52at%の組成比でRuを含むAlRu合金から構成されればよい。
【0014】
結晶層は、hcp構造を有する記録磁性層と、シード層および記録磁性層の間に配置され、hcp構造を有する中間層とをさらに備え、中間層の格子定数は、シード層の格子定数および記録磁性層の格子定数の間の値に設定されればよい。こうした多結晶構造膜では、前述のように、シード層と記録磁性層の結晶粒同士では格子の整合性は高められることができる。記録磁性層の結晶粒では中間層の働きでエピタキシャル成長に基づき所定の結晶面は特定の方向に十分に揃えられることができる。こうした多結晶構造膜では、前述と同様に、表面で前記シード層を受け止める非晶質層をさらに備えてもよい。
【0015】
以上のような多結晶構造膜は例えば磁気記憶装置に組み込まれる磁気記録媒体で利用されることができる。磁気記録媒体では、例えば支持体の表面に、前述のシード層および結晶層は積層形成されればよい。例えば磁気ディスクといった磁気記録媒体では、支持体はディスク形に形成され、斜め成長結晶粒は、支持体の径線を含む直立平面内で傾斜すればよい。前述のように、斜め成長結晶粒でB2構造が確立され、(100)面が所定の方向に優先配向されると、結晶層の結晶粒では所定の結晶面はこれまで以上に面内方向に優先配向されることができる。その結果、磁気記録媒体では磁気特性はこれまで以上に高められることができる。
【0016】
こういった磁気記録媒体では支持体の表面にテクスチャ構造が確立されてもよい。テクスチャ構造によれば磁気記録媒体の磁気特性はより高められることができる。テクスチャ構造は、基板といった支持体の表面汚染や表面平滑性に問題のない程度に確立されればよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0018】
図1は磁気記録媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は、例えば平たい直方体の内部空間を区画する箱形の筐体本体12を備える。収容空間には、記録媒体としての1枚以上の磁気ディスク13が収容される。磁気ディスク13はスピンドルモータ14の回転軸に装着される。スピンドルモータ14は例えば7200rpmや10000rpmといった高速度で磁気ディスク13を回転させることができる。筐体本体12には、筐体本体12との間で収容空間を密閉する蓋体すなわちカバー(図示されず)が結合される。
【0019】
収容空間にはヘッドアクチュエータ15がさらに収容される。このヘッドアクチュエータ15は、垂直方向に延びる支軸16に回転自在に支持されるアクチュエータブロック17を備える。アクチュエータブロック17には、支軸16から水平方向に延びる剛体のアクチュエータアーム18が規定される。アクチュエータアーム18は磁気ディスク13の表面および裏面ごとに配置される。アクチュエータブロック17は例えば鋳造に基づきアルミニウムから成型されればよい。
【0020】
アクチュエータアーム18の先端にはヘッドサスペンション19が取り付けられる。ヘッドサスペンション19は、アクチュエータアーム18の先端から前方に向かって延びる。周知の通り、ヘッドサスペンション19の前端には浮上ヘッドスライダ21が支持される。こうして浮上ヘッドスライダ21はアクチュエータブロック17に連結される。浮上ヘッドスライダ21は磁気ディスク13の表面に向き合わせられる。
【0021】
浮上ヘッドスライダ21にはいわゆる磁気ヘッドすなわち電磁変換素子(図示されず)が搭載される。この電磁変換素子は、例えば、スピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化を利用して磁気ディスク13から情報を読み出す巨大磁気抵抗効果素子(GMR)やトンネル接合磁気抵抗効果素子(TMR)といった読み出し素子(図示されず)と、薄膜コイルパターンで生成される磁界を利用して磁気ディスク13に情報を書き込む薄膜磁気ヘッドといった書き込み素子(図示されず)とで構成されればよい。
【0022】
浮上ヘッドスライダ21には、磁気ディスク13の表面に向かってヘッドサスペンション19から押し付け力が作用する。磁気ディスク13の回転に基づき磁気ディスク13の表面で生成される気流の働きで浮上ヘッドスライダ21には浮力が作用する。ヘッドサスペンション19の押し付け力と浮力とのバランスで磁気ディスク13の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ21は浮上し続けることができる。
【0023】
アクチュエータブロック17には例えばボイスコイルモータ(VCM)といった動力源22が接続される。この動力源22の働きでアクチュエータブロック17は支軸16回りで回転することができる。こうしたアクチュエータブロック17の回転に基づきアクチュエータアーム18およびヘッドサスペンション19の揺動は実現される。浮上ヘッドスライダ21の浮上中に、支軸16回りでアクチュエータアーム18が揺動すると、浮上ヘッドスライダ21は半径方向に磁気ディスク13の表面を横切ることができる。周知の通り、複数枚の磁気ディスク13が筐体本体12内に組み込まれる場合には、隣接する磁気ディスク13同士の間で2本のアクチュエータアーム18すなわち2つのヘッドサスペンション19が配置される。
【0024】
図2は磁気ディスク13の断面構造を詳細に示す。この磁気ディスク13は支持体としての基板31と多結晶構造膜32とを備える。基板31は例えばガラスから構成されればよい。ただし、基板31はシリコンやサファイアから構成されてもよくアルミニウムから構成されてもよい。基板31の表面には平滑面が確立される。多結晶構造膜32に磁気情報は記録される。多結晶構造膜32の表面は、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)といった保護膜33や、パーフルオロポリエーテル(PFPE)といった潤滑膜34で被覆される。
【0025】
図3に示されるように、多結晶構造膜32は、基板31の表面に沿って広がるシード層35と、シード層35の表面に沿って広がる多層結晶層36とを備える。シード層35は、基板31の表面に直交する法線に対して傾斜する斜め成長結晶粒から構成される。斜め成長結晶粒は、例えばAlおよびRuを含む合金から構成されればよい。ここでは、例えば膜厚3〜10nm程度のAlRu膜が用いられる。その他、斜め成長結晶粒には、例えばNiAlやCoAl、FeAl、FeRe、AlMnといった合金が用いられることができる。シード層35の膜厚は最大でも50nm程度に設定される。AlRu膜は44〜52at%程度の組成比でRuを含む。かかる組成比によれば、AlRu膜の斜め成長結晶粒ではB2構造が確立される。このとき、斜め成長結晶粒の(100)面は所定の方向に優先配向される。
【0026】
多層結晶層36は、シード層35の表面に沿って広がる下地層37を備える。下地層37は、前述のシード層35に基づくエピタキシャル成長で形成される。下地層37はbcc(体心立方晶)構造を有する。下地層37は、例えばCrやCrを含む合金から構成されればよい。ここでは、例えば膜厚1〜20nm程度のCr膜が用いられる。その他、下地層27には、例えばCrMoやCrW、CrTi、CrVといった合金材料が用いられることができる。Cr膜では結晶粒の(200)面は所定の方向に優先配向される。
【0027】
下地層37の表面には中間層38が広がる。中間層38は、前述の下地層37に基づくエピタキシャル成長で形成される。中間層38はhcp構造(六方細密構造)を有する。中間層38は、例えばCoおよびCrを含む合金から構成されればよい。例えば膜厚1〜10nm程度のCoCr膜といった金属材料が用いられる。CoCr膜には非磁性化されてもよい。非磁性化にあたってCoCr膜は37at%以上の組成比でCrを含む。その他、CoCr膜には例えばMoやTa、Nb、B、Cuが単独または組み合わせで添加されてもよい。
【0028】
中間層38の表面には記録磁性層39が広がる。記録磁性層39に磁気情報は記録される。記録磁性層39は、前述の中間層38に基づくエピタキシャル成長で形成される。記録磁性層39はhcp構造を有する。記録磁性層39は、例えばCoを含む合金から構成されればよい。ここでは、例えば膜厚5〜20nm程度のCoCrPtB膜が用いられる。その他、記録磁性層39には例えばCoCrやCoPt、CoCrPtTa、CoCrPtといった磁性金属材料が用いられることができる。記録磁性層39は例えば薄膜の積層体から構成されてもよい。この積層体では磁性膜が積層される。磁性膜同士の間には非磁性膜が挟みこまれてもよい。非磁性膜には例えばRu膜が用いられればよい。こういった積層体によれば磁気ディスク13の熱安定性は高められることができる。
【0029】
こういった多結晶構造膜32によれば、シード層35の斜め成長結晶粒の働きで、記録磁性層39では周方向の磁気異方性は高められることができる。すなわち、基板31の表面にテクスチャ構造が確立されなくても、テクスチャ構造と同様の効果は得られることができる。しかも、記録磁性層39では面内方向に十分に磁化容易軸は揃えられることができる。磁気ディスク13の磁気特性は高められることができる。
【0030】
次に磁気ディスク13の製造方法を簡単に説明する。まず、ディスク形の基板31は用意される。基板31の表面は平滑化される。基板31は例えばスパッタリング装置に装着される。スパッタリング装置内で基板31の表面には多結晶構造膜32が形成される。形成方法の詳細は後述される。その後、多結晶構造膜32の表面には保護膜33が積層形成される。積層形成にあたって例えばCVD法(化学的気相蒸着法)が用いられる。保護膜33の表面には潤滑膜34が塗布される。塗布にあたって基板31は例えばパーフルオロポリエーテルを含む溶液に浸されればよい。
【0031】
図4に示されるように、多結晶構造膜32の形成にあたって、基板31の表面にはシード層35すなわちAlRu合金層41が成膜される。成膜にあたってスパッタリング装置にはAlRuターゲットが装着される。AlRuターゲットではAlおよびRuの組成比[at%]は例えば50:50に設定される。AlRuターゲットからAl原子およびRu原子が放出されると、Al原子およびRu原子は、基板31の法線Nに対して所定の入射角αで入射する。ここでは入射角αは例えば60度に設定されればよい。AlRu合金の結晶粒は基板31表面の法線Nに対して所定の傾斜角αで成長する。結晶粒は、基板31の径線を含む直立平面内で傾斜する。ここでは、AlRu合金の結晶粒は基板31の外周に向かって傾斜する。AlRu合金層41すなわちシード層35の結晶粒ではB2構造が確立される。同時に、シード層35では結晶粒の(100)面は所定の方向に揃えられる。
【0032】
続いて、図5に示されるように、AlRu合金層41の表面には下地層37すなわちCr層42が成膜される。成膜にあたってスパッタリング装置にはCrターゲットが装着される。CrターゲットからCr原子は基板31の法線Nに沿って降り注ぐ。すなわち、入射角αは0度に設定されればよい。ただし、AlRu合金層41と同様に、Cr原子の入射角αは60度に設定されてもよい。こうしてAlRu合金層41の表面にはCr層42が形成される。Cr層42内では前述のAlRu合金層41に基づきエピタキシャル成長が確立される。Cr層42すなわち下地層37の結晶粒ではbcc構造が確立される。同時に、下地層37では結晶粒の(200)面は所定の方向に優先配向される。
【0033】
続いて、図6に示されるように、Cr層42の表面には中間層38すなわちCoCr層43が成膜される。成膜にあたってスパッタリング装置にはCoCrターゲットが装着される。CoCrターゲットからCo原子やCr原子は基板31の法線Nに沿って降り注ぐ。すなわち、入射角αは0度に設定されればよい。こうしてCr層42の表面にはCoCr層43が形成される。CoCr層43内では前述のCr層42に基づきエピタキシャル成長が確立される。CoCr層43すなわち中間層38の結晶粒ではhcp構造が確立される。
【0034】
続いて、図7に示されるように、CoCr層43の表面には記録磁性層39すなわちCoCrPtB合金層44が成膜される。成膜にあたってスパッタリング装置にはCoCrPtBターゲットが装着される。CoCrPtBターゲットからCo原子、Cr原子、Pt原子およびB原子は基板31の法線Nに沿って降り注ぐ。すなわち、入射角αは0度に設定されればよい。こうしてCoCr層43の表面にはCoCrPtB合金層44が形成される。CoCrPtB合金層44内では前述のCoCr層43に基づきエピタキシャル成長が確立される。CoCrPtB合金層44すなわち記録磁性層39の結晶粒ではhcp構造が確立される。
【0035】
このとき、CoCrPtB合金層44は複数積層されてもよい。すなわち、CoCrPtB合金層44の成膜は繰り返されればよい。その他、CoCrPtB合金層44同士の間に非磁性のRu層が挟み込まれてもよい。こういった積層体によれば、磁気ディスク13の熱安定性は高められることができる。
【0036】
以上のように製造された多結晶構造膜32では、シード層35の結晶粒の働きで多層結晶層36ではエピタキシャル成長は確実に制御されることができる。かかるエピタキシャル成長に基づき、記録磁性層39では所定の結晶面は面内方向に優先配向されることができる。すなわち、記録磁性層39では結晶粒の磁化容易軸は面内方向に揃えられることができる。
【0037】
本発明者は、X線回折に基づき、以上のように製造された多結晶構造膜32のシード層35を観察した。その結果、図8に示されるように、結晶粒ではB2構造の(100)面および(200)面に対応するピークが明瞭に出現した。シード層35では、B2構造の確立が確認された。しかも、シード層35では(100)面の優先配向が確認された。
【0038】
次に、本発明者は記録磁性層39の磁気異方性を検証した。検証にあたって本発明者は複数の磁気ディスク13を用意した。個々の磁気ディスク13ごとに異なる膜厚でシード層35は形成された。磁気ディスク13の周方向に沿って保磁力Hccは測定された。同時に、磁気ディスク13の半径方向に沿って保磁力Hcrは測定された。周方向の保磁力Hccが半径方向の保磁力Hcrよりも大きい場合、磁気ディスク13では周方向の磁気異方性が高いことを示す。図9から明らかなように、シード層35の膜厚が50nm以下に設定されると、周方向の保磁力Hccは確実に半径方向の保磁力Hcrを上回ることが確認された。特に、シード層35の膜厚が3〜10nmの範囲に設定されると、十分な磁気異方性が確立されることが確認された。
【0039】
続いて、本発明者は入射角αの影響を検証した。図10に示されるように、入射角αが30度以上に設定されると、磁気異方性Hcc/Hcrは高められることが確認された。特に、入射角αが60度に設定されると、周方向の磁気異方性は最も高められることが確認された。
【0040】
さらに、本発明者は、記録磁性層39の面内方向の磁気異方性を検証した。検証にあたって比較例は用意された。比較例ではシード層35にAlRu合金に代えてCrNb合金が用いられた。シード層35以外の構成については同様に形成された。磁気ディスク13の表面に垂直方向に沿って保磁力Hcpは測定された。同時に、磁気ディスク13の周方向に沿って保磁力Hccは測定された。本実施形態に係る磁気ディスク13ではHcp/Hccは0.13を記録した。その一方で、比較例に係る磁気ディスク13では0.25を記録した。実用化された面内記録用磁気ディスクではHcp/Hccは0.15程度を示すことが知られる。本実施形態の磁気記録層39では、磁化容易軸が十分に面内方向に揃えられることが確認された。
【0041】
以上のような多結晶構造膜32では、中間層38の格子定数は下地層37の格子定数と記録磁性層39の格子定数との間の値に設定されればよい。かかる中間層38の働きで、下地層37の格子定数と記録磁性層39の格子定数との差は緩和される。すなわち、下地層36と記録磁性層39の結晶粒同士では格子の整合性は高められることができる。なお、多結晶構造膜32では、下地層37の形成は省略されてもよい。すなわち、中間層38はシード層35と記録磁性層39との間に挟み込まれてもよい。この場合には、中間層38の格子定数は、シード層35の格子定数と記録磁性層39の格子定数との間に設定されればよい。かかる構成によれば、シード層35と記録磁性層39の結晶粒同士で格子の整合性は高められる。
【0042】
さらに、基板31の表面には、表面でシード層35を受け止める非晶質層が配置されてもよい。非晶質層は例えばNiP膜から構成されればよい。かかる非晶質層によれば、シード層35の成膜にあたって、シード層35の斜め成長結晶粒は良好な状態で成長することができる。
【0043】
なお、以上のような磁気ディスク13では、基板31の表面にテクスチャ構造が確立されてもよい。テクスチャ構造は、基板31の表面汚染や表面平滑性に問題のない程度に確立されることが望まれる。かかるテクスチャ構造によれば、磁気ディスク13の磁気特性はより高められることができる。
【0044】
本発明の多結晶構造膜は、前述のようなハードディスク駆動装置(HDD)に加えて、例えば磁気テープ駆動装置や磁気メモリといった磁気記憶装置に組み込まれてもよい。
【0045】
(付記1) 対象物の表面に沿って広がり、対象物の表面に直交する法線に対して傾斜する斜め成長結晶粒を含むシード層と、シード層の表面に沿って広がる結晶層とを備え、斜め成長結晶粒はB2構造を有することを特徴とする多結晶構造膜。
【0046】
(付記2) 付記1に記載の多結晶構造膜において、前記斜め成長結晶粒の(100)面は所定の方向に優先配向されることを特徴とする多結晶構造膜。
【0047】
(付記3) 付記2に記載の多結晶構造膜において、前記斜め成長結晶粒はAlおよびRuを含む合金から構成されることを特徴とする多結晶構造膜。
【0048】
(付記4) 付記3に記載の多結晶構造膜において、前記合金は、44〜52at%の組成比でRuを含むAlRu合金であることを特徴とする多結晶構造膜。
【0049】
(付記5) 付記4に記載の多結晶構造膜において、前記結晶層は、hcp構造を有する記録磁性層と、前記シード層および記録磁性層の間に配置され、hcp構造を有する中間層とを備え、中間層の格子定数は、前記シード層の格子定数および記録磁性層の格子定数の間の値に設定されることを特徴とする多結晶構造膜。
【0050】
(付記6) 付記5に記載の多結晶構造膜において、表面で前記シード層を受け止める非晶質層をさらに備えることを特徴とする多結晶構造膜。
【0051】
(付記7) 対象物の表面に沿って広がり、対象物の表面に直交する法線に対して傾斜する斜め成長結晶粒を含むシード層と、シード層の表面に沿って広がる結晶層とを備え、斜め成長結晶粒はAlおよびRuを含む合金から構成されることを特徴とする多結晶構造膜。
【0052】
(付記8) 付記7に記載の多結晶構造膜において、前記斜め成長結晶粒はB2構造を有することを特徴とする多結晶構造膜。
【0053】
(付記9) 付記8に記載の多結晶構造膜において、前記斜め成長結晶粒の(100)面は所定の方向に優先配向されることを特徴とする多結晶構造膜。
【0054】
(付記10) 付記9に記載の多結晶構造膜において、前記合金は、44〜52at%の組成比でRuを含むAlRu合金であることを特徴とする多結晶構造膜。
【0055】
(付記11) 付記10に記載の多結晶構造膜において、前記結晶層は、hcp構造を有する記録磁性層と、前記シード層および記録磁性層の間に配置され、hcp構造を有する中間層とをさらに備え、中間層の格子定数は、前記シード層の格子定数および記録磁性層の格子定数の間の値に設定されることを特徴とする多結晶構造膜。
【0056】
(付記12) 付記11に記載の多結晶構造膜において、表面で前記シード層を受け止める非晶質層をさらに備えることを特徴とする多結晶構造膜。
【0057】
(付記13) 支持体と、支持体の表面に沿って広がり、支持体の表面に直交する法線に対して傾斜する斜め成長結晶粒を含むシード層と、シード層の表面に沿って広がる結晶層とを備え、斜め成長結晶粒はB2構造を有することを特徴とする磁気記録媒体。
【0058】
(付記14) 付記13に記載の磁気記録媒体において、前記支持体はディスク形に形成され、前記斜め成長結晶粒は、支持体の径線を含む直立平面内で傾斜することを特徴とする磁気記録媒体。
【0059】
(付記15) 付記14に記載の磁気記録媒体において、前記斜め成長結晶粒の(100)面は所定の方向に優先配向されることを特徴とする磁気記録媒体。
【0060】
(付記16) 付記15に記載の磁気記録媒体において、前記斜め成長結晶粒はAlおよびRuを含む合金から構成されることを特徴とする磁気記録媒体。
【0061】
(付記17) 付記16に記載の磁気記録媒体において、前記支持体の表面にはテクスチャ構造が確立されることを特徴とする磁気記録媒体。
【0062】
(付記18) 支持体と、支持体の表面に沿って広がり、支持体の表面に直交する法線に対して傾斜する斜め成長結晶を含むシード層と、シード層の表面に沿って広がる結晶層とを備え、斜め成長結晶粒はAlおよびRuを含む合金から構成されることを特徴とする磁気記録媒体。
【0063】
(付記19) 付記18に記載の磁気記録媒体において、前記支持体はディスク形に形成され、前記斜め成長結晶粒は、支持体の径線を含む直立平面内で傾斜することを特徴とする磁気記録媒体。
【0064】
(付記20) 付記19に記載の磁気記録媒体において、前記斜め成長結晶粒はB2構造を有することを特徴とする磁気記録媒体。
【0065】
(付記21) 付記20に記載の磁気記録媒体において、前記斜め成長結晶粒の(100)面は所定の方向に優先配向されることを特徴とする磁気記録媒体。
【0066】
(付記22) 付記21に記載の磁気記録媒体において、前記支持体の表面にはテクスチャ構造が確立されることを特徴とする磁気記録媒体。
【0067】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、これまで以上に斜め成長結晶粒上で所定の結晶面を面内方向に優先配向させることができる多結晶構造膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気記録媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】磁気ディスクの構造を示す拡大垂直断面図である。
【図3】磁気ディスクの構造を詳細に示す拡大垂直断面図である。
【図4】シード層の成膜工程を概念的に示す基板の垂直部分断面図である。
【図5】下地層の成膜工程を概念的に示す基板の垂直部分断面図である。
【図6】中間層の成膜工程を概念的に示す基板の垂直部分断面図である。
【図7】記録磁性層の成膜工程を概念的に示す基板の垂直部分断面図である。
【図8】X線回折に基づく検証結果を示すグラフである。
【図9】シード層の膜厚と記録磁性層の磁気異方性との関係を示すグラフである。
【図10】入射角αと記録磁性層の磁気異方性との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
11 磁気記憶装置としてのハードディスク駆動装置(HDD)、12 筐体としての筐体本体、13 磁気記録媒体としての磁気ディスク、19 ヘッドスライダ、31 支持体としての基板、32 多結晶構造膜、33 保護膜、34潤滑膜、35 シード層、36 結晶層、37 下地層、38 中間層、39記録磁性層。
Claims (10)
- 対象物の表面に沿って広がり、対象物の表面に直交する法線に対して傾斜する斜め成長結晶粒を含むシード層と、シード層の表面に沿って広がる結晶層とを備え、斜め成長結晶粒はB2構造を有することを特徴とする多結晶構造膜。
- 請求項1に記載の多結晶構造膜において、前記斜め成長結晶粒の(100)面は所定の方向に優先配向されることを特徴とする多結晶構造膜。
- 請求項2に記載の多結晶構造膜において、前記斜め成長結晶粒はAlおよびRuを含む合金から構成されることを特徴とする多結晶構造膜。
- 請求項3に記載の多結晶構造膜において、前記合金は、44〜52at%の組成比でRuを含むAlRu合金であることを特徴とする多結晶構造膜。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の多結晶構造膜において、前記結晶層は、hcp構造を有する記録磁性層と、前記シード層および記録磁性層の間に配置され、hcp構造を有する中間層とを備え、中間層の格子定数は、前記シード層の格子定数および記録磁性層の格子定数の間の値に設定されることを特徴とする多結晶構造膜。
- 対象物の表面に沿って広がり、対象物の表面に直交する法線に対して傾斜する斜め成長結晶粒を含むシード層と、シード層の表面に沿って広がる結晶層とを備え、斜め成長結晶粒はAlおよびRuを含む合金から構成されることを特徴とする多結晶構造膜。
- 支持体と、支持体の表面に沿って広がり、支持体の表面に直交する法線に対して傾斜する斜め成長結晶粒を含むシード層と、シード層の表面に沿って広がる結晶層とを備え、斜め成長結晶粒はB2構造を有することを特徴とする磁気記録媒体。
- 支持体と、支持体の表面に沿って広がり、支持体の表面に直交する法線に対して傾斜する斜め成長結晶を含むシード層と、シード層の表面に沿って広がる結晶層とを備え、斜め成長結晶粒はAlおよびRuを含む合金から構成されることを特徴とする磁気記録媒体。
- 請求項7または8に記載の磁気記録媒体において、前記支持体はディスク形に形成され、前記斜め成長結晶粒は、支持体の径線を含む直立平面内で傾斜することを特徴とする磁気記録媒体。
- 請求項9に記載の磁気記録媒体において、前記支持体の表面にはテクスチャ構造が確立されることを特徴とする磁気記録媒体。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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- 2002-12-25 JP JP2002375165A patent/JP2004206802A/ja active Pending
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