JP2004204964A - 流体封入式防振装置 - Google Patents

流体封入式防振装置 Download PDF

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雄大 岡中
Masahiko Nagasawa
正彦 長澤
Tetsushi Ando
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Abstract

【課題】自動車用エンジンマウント等に適用される流体封入式の防振装置において従来から問題となっていた、衝撃的な振動荷重の入力時における異音や振動の発生を、簡単な構造によって解消せしめ得る、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することを目的とする。
【解決手段】衝撃的な振動荷重の入力に際してのキャビテーション気泡の発生が受圧室122内の特定箇所であるという新たに得た知見に基づいて、オリフィス通路126の受圧室122への開口部85に対して減衰ゴム層を被着形成した。これにより、仕切金具50において、受圧室68内で発生したキャビテーション気泡の崩壊に際して発せられる水撃圧が最も作用し易いオリフィス通路126の開口部85の周りを緩衝乃至は減衰せしめて、水撃圧に起因する異音や振動を効果的に抑えることが可能となった。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、内部に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式防振装置に係り、例えば自動車用のエンジンマウント等として好適に採用される流体封入式防振装置に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体乃至は防振支持体として、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結した防振ゴムが各種分野に広く採用されているが、その一種として、より優れた防振効果を得るために、封入した非圧縮性流体の共振作用等の流動作用を利用するようにした流体封入式防振装置が提案されている。かかる防振装置は、一般に、本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室と、可撓性膜で壁部の一部が構成されて容積変化が許容される平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入すると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を設けた構造とされている。
【0003】
例えば、以下に示す特許文献1〜5に開示されているものが、それであり、このような流体封入式防振装置は、例えば自動車用のエンジンマウントやボデーマウント等への適用が検討されている。
【0004】
【特許文献1】
特開昭57−9340号公報
【特許文献2】
特公平7−54131公報
【特許文献3】
特開平10−184769号公報
【特許文献4】
特開平3−177635号公報
【特許文献5】
特公平5−55739号公報
【0005】
ところが、このような流体封入式防振装置について検討を加えたところ、第一の取付部材と第二の取付部材の間に大きな振動荷重が入力されると、防振装置から異音や振動が発せられる場合のあることが確認された。具体的には、上述の如き従来構造の流体封入式防振装置をエンジンマウントとして採用した自動車では、波状路やスピードブレーカ等を走行した際に、車室内で乗員が体感できる程の異音や衝撃を発する場合があるのである。
【0006】
このような異音や振動の問題は、近年において、特に自動車におけるエンジンマウントの小型軽量化や、エンジンを含むパワーユニットの静粛性の向上等に伴って、問題が顕在化してきている傾向があり、何等かの対策が要求されている。
【0007】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、封入された非圧縮性流体の流動作用に基づいて発揮される防振効果を有効に確保しつつ、衝撃的に大きな振動や荷重が及ぼされた場合の異音や衝撃の発生を軽減乃至は防止することの出来る、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
【0008】
【解決手段】
先ず、前述の如き従来構造の流体封入式防振装置において異音や振動の発生現象について本発明者が多くの実験を行って検討を加えたところ、例えば自動車が波状路やスピードブレーカ上を走行すると、一般的な走行状態下で入力される振動のうちで振幅が大きいシェイク振動よりも、更に数十倍かそれ以上の加速度で衝撃的な振動荷重が、第一の取付部材と第二の取付部材の間に及ぼされることが明らかとなった。また、透明部材を用いて受圧室を可視化した装置モデルを用いて、実車での波状路走行程度の衝撃的な振動荷重が入力された際の流体封入式防振装置における作動状態を高速カメラで撮影して観察したところ、受圧室内におけるキャビテーションと解せられる気泡の発生が認められた。更にまた、かかる気泡の発生は、静置状態での衝撃的荷重の入力に比して、振動入力状態下で衝撃的荷重が入力された場合に、一層顕著となることが認められた。
【0009】
さらに、本発明者が、かかる気泡の状況を詳細に観察し、検討したところ、気泡は受圧室内の特定の場所で発生し、それが振動入力に伴う受圧室の圧力変動に際して、受圧室内において成長,崩壊,消失を繰り返すことが確認された。そして、キャビテーションに関する理論から推考すると、このように衝撃的な振動荷重の入力に際して、受圧室内で発生,成長,崩壊,消失を繰り返す気泡は、発生から成長に至る過程で略球状の安定状態を保つが、崩壊に際して変形し、爆発的な微小噴流(マイクロジェット)を形成することとなり、これが水撃圧となって第一の取付部材や第二の取付部材に伝播し、自動車のボデー等に伝達されることによって、前述の如き問題となる異音や振動が生ぜしめられるに至る、というのが従来からこの種の流体封入式防振装置において問題となっている異音や振動の発生メカニズムであろうとの知見を得た。
【0010】
加えて、本発明者が多くの実験と検討を重ねた結果、問題となっている異音や振動の基本原因となるキャビテーション気泡は、受圧室における特定位置、具体的には受圧室へのオリフィス通路の開口部において発生するという事実が新たに確認されたのであり、更に、オリフィス通路の開口部で発生した気泡が、受圧室の内部で拡散と同時に成長し、その後、崩壊から消失に至る際に水撃圧を発生するということが明らかとなった。なお、オリフィス通路の開口部にキャビテーション気泡が発生する理由は、未だ充分に明らかにされていないが、オリフィス通路を流動せしめられる流体の共振作用によって受圧室に及ぼされる圧力変動と、入力振動によって受圧室に及ぼされる圧力変動との位相差を基本原因として、封入流体における減圧の程度や温度,流動状況,表面張力,粘度等の各種条件下で、オリフィス通路の受圧室への開口部に大きな減圧状態が発生することで一種の液体破壊現象が発生してキャビテーション気泡を生ずるに至るものと考えられる。
【0011】
(本発明の態様1)
本発明は、上述の如き新たに得られた知見に基づいて完成されたものであって、本発明の態様1は、第一の取付部材を筒状の第二の取付部材の一方の開口側に離隔配置せしめて該第一の取付部材と該第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結することにより、該第二の取付部材の該一方の開口部を流体密に覆蓋する一方、該第二の取付部材の他方の開口部を可撓性膜で流体密に覆蓋し、更に中央開口がゴム弾性板で閉塞された環状の仕切金具を該本体ゴム弾性体と該可撓性膜の対向面間に配設して該仕切金具の外周縁部を該第二の取付部材で支持せしめることにより、該ゴム弾性板を挟んだ一方の側に該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室を形成し、他方の側に該可撓性膜で壁部の一部が構成されて容積可変とされた平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入すると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を該仕切金具を利用して該仕切金具の周方向に延びるように形成した流体封入式防振装置において、前記仕切金具によって形成されて前記受圧室と前記オリフィス通路を区画する隔壁部に該オリフィス通路の該受圧室への開口部を形成すると共に、該仕切金具における該開口部の形成部位に対して、受圧室側とオリフィス通路側の両面に減衰ゴムを被着形成したことを、特徴とする。
【0012】
このような本態様は、衝撃的な振動荷重の入力に際してのキャビテーション気泡の殆どがオリフィス通路の受圧室への開口部に生ぜしめられるという、前述の如き本発明者によって新たに得られた知見に基づいて完成されたものであり、本態様に従う構造とされた流体封入式防振装置では、気泡の発生源となり該気泡が崩壊する際に発せられる水撃圧の作用が大きくなり易いことが明らかとなった仕切金具におけるオリフィス通路の開口部付近において、
▲1▼仕切金具の受圧室側の面に被着された減衰ゴムによる緩衝作用に基づいて、かかる水撃圧の仕切金具への作用が、直接に低減されると共に、
▲2▼水撃圧の作用に伴う仕切金具自体の振動が、該仕切金具の表裏両面に被着された減衰ゴムの制振作用によって抑えられる
こととなるのであり、それによって、受圧室内に惹起されるキャビテーション気泡の崩壊に伴う水撃圧が、仕切金具を介して第二の取付部材に伝達されて異音や振動を発生させるという問題が効果的に軽減乃至は回避され得るのである。
【0013】
(本発明の態様2)
本発明の態様2は、本発明の前記第1の態様に係る流体封入式防振装置において、前記ゴム弾性板と前記減衰ゴムを一体成形して、前記仕切金具に対して加硫接着せしめると共に、該仕切金具の前記受圧室側と前記平衡室側の少なくとも一方の面において、該仕切金具の内周縁部付近に位置する該ゴム弾性板と該減衰ゴムの連接部分を狭窄状として該減衰ゴムよりも肉厚寸法の小さい薄肉部を形成したことを、特徴とする。このような本態様においては、ゴム材料を仕切金具の内周側から仕切金具の両面に導いて減衰ゴムを成形するに際して、仕切金具の受圧室側の面とオリフィス通路側の面にそれぞれ導かれるゴム材料の成形キャビティへの充填量を、狭窄状の薄肉部において制限して調節することが出来るのであり、それによって、仕切金具に対してゴム材料の充填圧が過大に作用して仕切金具に変形等の不具合が発生することを防止することが可能となる。
【0014】
(本発明の態様3)
本発明の態様3は、本発明の前記第1又は第2の態様に係る流体封入式防振装置において、前記ゴム弾性板および前記減衰ゴムの成形キャビティを備えた成形型に前記仕切金具をセットすると共に、該仕切金具を前記オリフィス通路側の面で支持ピンにより位置決め支持せしめた状態下で、該ゴム弾性板の成形キャビティから該減衰ゴムの成形キャビティにゴム材料を射出充填せしめて該ゴム弾性板と該減衰ゴムを一体加硫成形することにより、該仕切金具における受圧室側の全面に前記減衰ゴムを被着形成したことを、特徴とする。このような本態様においては、特にキャビテーション気泡の崩壊に起因する水撃圧が及ぼされる仕切金具の受圧室側の面を減衰ゴムで被覆(好適には、受圧室に面する部分の全面を被覆)したことにより、かかる水撃圧の仕切金具を介しての伝達に起因する異音や振動の発生が一層有利に低減され得る。また、仕切金具におけるオリフィス通路側の面だけが支持ピンで支持せしめられることから、例えば本発明の前記態様2における狭窄状の薄肉部を本態様に組み合わせて採用すること等によって、仕切金具の両面に減衰ゴムを同時に加硫成形するに際して仕切金具に及ぼされるゴム材料の充填圧を、該仕切金具におけるオリフィス通路側の面よりも受圧室側の面の方を大きく設定することにより、仕切金具を支持ピンで安定して支持せしめて変形を回避せしめつつ、仕切金具の両面に減衰ゴムをそれぞれ有利に成形することが可能となるのである。
【0015】
(本発明の態様4)
本発明の態様4は、本発明の前記第1乃至3の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記仕切金具における前記受圧室側と前記オリフィス通路側の両面に、前記減衰ゴムを、前記オリフィス通路の該受圧室への開口部を含む全面に亘って被着形成したことを、特徴とする。このような本態様においては、本発明の前記態様2における狭窄状の薄肉部を採用することにより、仕切金具の両面に減衰ゴムを同時に加硫成形するに際して仕切金具の両面に及ぼされるゴム材料の充填圧を相対的に調節してバランスさせることが可能となるのであり、それによって、仕切金具を支持ピン等で保持することなく減衰ゴムの成形型内にセットして仕切金具の表裏両面を全体に亘って覆う減衰ゴムを形成することが出来る。そして、このように支持ピン等に起因する穴等もなく、仕切金具の表裏が全面に亘って減衰ゴムで覆われることにより、キャビテーション気泡の崩壊時の水撃圧によって仕切金具が加振されることに起因する異音や振動が一層有利に低減され得るのである。
【0016】
(本発明の態様5)
本発明の態様5は、本発明の前記第1乃至第4の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記仕切金具を、(a)軸直角方向に広がるプレート状部と、(b)該プレート状部の内周縁部から軸方向で平衡室側に延びる筒状部とを、含んで形成して、前記ゴム弾性板の外周縁部を該筒状部に加硫接着せしめることにより該ゴム弾性板を該仕切金具で支持せしめる一方、該仕切金具において該プレート状部と該筒状部で形成されて周方向に延びるL字状断面の隅部領域を、前記第二の取付部材によって支持された他部材で覆蓋することにより前記オリフィス通路を形成したことを、特徴とする。このような本態様においては、特定形状の仕切金具を採用したことにより、構造が簡単で容易に製造することの出来る仕切金具を用いてオリフィス通路を効率的に形成することが可能となる。
【0017】
(本発明の態様6)
本発明の態様6は、本発明の前記第1乃至第5の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記可撓性膜の外周縁部に環状の固定金具を加硫接着せしめて、該固定金具の外周縁部を前記仕切金具の外周縁部に重ね合わせて、それら固定金具と仕切金具の両外周縁部を該第二の取付金具における前記他方の開口部に対してかしめ固定すると共に、該固定金具と該仕切金具の間を周方向に延びるようにして前記オリフィス通路を形成したことを、特徴とする。
【0018】
(本発明の態様7)
本発明の態様7は、本発明の前記第1乃至第6の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記仕切金具に形成された前記オリフィス通路の前記受圧室への開口部の孔内周面を覆う孔被覆ゴムを、該仕切金具における該オリフィス通路の開口部の形成部位において受圧室側とオリフィス通路側の両面に被着形成された減衰ゴムと一体成形したことを、特徴とする。このような本態様においては、オリフィス通路の開口部の孔内周面までも孔被覆ゴムで覆われることから、キャビテーション気泡の崩壊に伴う水撃圧の仕切金具への伝達をより有効に低減することが出来る。また、かかる孔被覆ゴムによって仕切金具の表裏両面の減衰ゴムが接続されることから、それら表裏両面の減衰ゴムの仕切金具への被着強度の向上が図られることは勿論、それに加えて、仕切金具の表裏両面における減衰ゴムの成形時におけるゴム材料の充填圧差が低減されることにより、仕切金具の変形の回避も図られ得る。
【0019】
(本発明の態様8)
本発明の態様8は、本発明の前記第1乃至第7の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記仕切金具における前記オリフィス通路の開口部の形成部位において前記受圧室側の面に被着形成された減衰ゴムを、1mm以上の肉厚寸法としたことを、特徴とする。このような本態様においては、減衰ゴムによる仕切金具の制振効果が一層有利に発揮され得る。なお、減衰ゴムの肉厚寸法は、より好適には2mm以上に設定されることとなる。また、減衰ゴムの肉厚寸法を余り厚くすると、仕切金具の受圧室側の面ではオリフィス通路の開口部が減衰ゴムで狭窄されて流体の流動抵抗が大きくなったり、仕切金具のオリフィス通路側の面ではオリフィス通路の通路断面積が狭窄されてオリフィス通路の設計自由度が制限されてしまうおそれがあることから、かかる減衰ゴムは、少なくとも受圧室側におけるオリフィス通路の開口部の周囲とオリフィス通路側においては、5mm以下とすることが望ましい。
【0020】
(本発明の態様9)
本発明の態様9は、本発明の前記第1乃至第8の何れかの態様に係る流体封入式防振装置において、前記第一の取付部材と前記第二の取付部材の一方をパワーユニットに取り付けると共に他方を車両ボデーに取り付けることによりエンジンマウントを構成し、該パワーユニットの支持荷重が該第一の取付部材と該第二の取付部材の間に及ぼされることにより、該第一の取付部材と該第二の取付部材が相互に離隔せしめられて前記本体ゴム弾性体の弾性変形に基づいて前記受圧室の容積が増大せしめられるようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、パワーユニットの自重やバウンド方向荷重が第一の取付部材と第二の取付部材を離隔側に引張る方向に及ぼされる所謂吊下タイプのエンジンマウントが、本発明に従って構成されることとなり、特にバウンド方向荷重によって受圧室が減圧化されると共に受圧室が正圧状態に復元し難い吊下タイプのエンジンマウントであるが故に問題となり易いキャビテーション気泡に起因する異音や振動の問題が、極めて有効に軽減乃至は回避され得て、優れた防振性能が実現可能となるのである。
【0021】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0022】
先ず、図1には、本発明の第一の実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、互いに所定距離を隔てて配された第一の取付部材としてのインナ金具12と第二の取付部材としてのアウタ筒金具14が、本体ゴム弾性体16で連結された構造を有しており、インナ金具12がパワーユニット側に取り付けられる一方、アウタ筒金具14がボデー側に取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して吊り下げ状態で防振支持せしめるようになっている。なお、以下の説明において上下方向とは、原則として、図1における上下方向をいうものとする。
【0023】
より詳細には、インナ金具12は、略有底円筒形状を有するカップ状金具18の底部に略円筒形状の筒状金具20が溶接等で固着されることにより形成されている。また、筒状金具20の中心孔は、ねじ穴22とされており、このねじ穴22に螺着されるボルト26によって、図示しないパワーユニットに固設されたブラケット28が固着されるようになっている(図7参照)。
【0024】
一方、アウタ筒金具14は、インナ金具12の外径寸法よりも十分に大径とされた薄肉の略円筒形状を有しており、軸方向下側部分が、軸方向下端の開口部に行くに従って次第に小径化する逆向きのテーパ筒部30とされていると共に、軸方向上側部分が、全長に亘って内外径寸法が略一定の円筒形状を有する大径筒部32とされている。また、アウタ筒金具14の軸方向上側(大径筒部32)の開口部には、径方向外方に広がる段差部38が一体形成されていると共に、この段差部38の外周縁部には、軸方向上方に延びる略筒状のかしめ部40が一体形成されている。
【0025】
また、このアウタ筒金具14に対して、インナ金具12が、アウタ筒金具14の軸方向下側(テーパ筒部30)の開口部から挿入配置されており、インナ金具12とアウタ筒金具14が同一中心軸上で径方向に離隔して配設されている。更にまた、かかる配設状態下では、インナ金具12の軸方向下端部分がアウタ筒金具14の下側開口部から軸方向下方に突出せしめられている。
【0026】
さらに、インナ金具12とアウタ筒金具14の径方向対向面間には、本体ゴム弾性体16が介装されている。この本体ゴム弾性体16は、下方に向かって大径化するテーパ状の外周面を備えた全体として厚肉の略テーパ筒形状を有しており、その小径側端部内周面がインナ金具12の外周面に対して加硫接着されていると共に、その大径側端部外周面がアウタ筒金具14の内周面に対して加硫接着されていることにより、本体ゴム弾性体16が、インナ金具12およびアウタ筒金具14を備えた第一の一体加硫成形品44として形成されている。これにより、インナ金具12とアウタ筒金具14が本体ゴム弾性体16によって弾性連結されている一方、アウタ筒金具14における下側開口部が、本体ゴム弾性体16とインナ金具12によって流体密に閉塞されている。
【0027】
また、本体ゴム弾性体16の外周縁部には、略筒状の被覆ゴム層46が一体形成されており、かかる被覆ゴム層46が、大径筒部32の内周面の略全面を覆うようにアウタ筒金具14に加硫接着されている。なお、本体ゴム弾性体16には、軸直角方向でインナ金具12を挟んだ両側において、下方に開口するポケット形状を有する一対のすぐり部48,48が、それぞれ、本体ゴム弾性体16の周方向で略1/4周に亘って形成されている。
【0028】
さらに、アウタ筒金具14における大径筒部32の上側開口部には、図1にも示されているように、仕切部材49と、蓋部材52が重ね合わされて配設されている。
【0029】
蓋部材52は、可撓性膜としてのダイヤフラム54と固定金具としての蓋金具56を含んで構成されている。ダイヤフラム54は、変形容易な薄肉のゴム弾性膜で形成されており、全体に亘って薄肉の略半球殻形状を有しており、軸方向下方に向かって開口せしめられている。また、蓋金具56は、全体として大径の略円筒形状を有しており、その軸方向上端部には、径方向内方に広がる略円環板形状の環状上壁部60が一体形成されている一方、その軸方向下端部には、径方向外方に広がるフランジ状部62が一体形成されている。そして、蓋金具56の環状上壁部60に対してダイヤフラム54の外周縁部が加硫接着されており、ダイヤフラム54によって蓋金具56の軸方向上側の開口が流体密に閉塞されている。また、蓋金具56は、フランジ状部62を除く略全体が、ダイヤフラム54と一体形成されたシールゴム層58で被覆されており、蓋金具56を備えたダイヤフラム54の一体加硫成形品として形成されている。
【0030】
また一方、仕切部材49は、図2〜5に示されているように、仕切金具50と、ゴム弾性板としての弾性ゴム板68によって構成されており、全体として略円板形状を有している。仕切金具50は、略円環形状を有しており、金属のプレス成形品にて形成されている。また、仕切金具50は、円環板形状を有しており、その中央開口66の開口周縁部から軸方向上方に向かって突出する円筒形状の筒状壁部64を一体的に備えている。そして、かかる中央開口66を閉塞せしめるようにして弾性ゴム板68が軸直角方向に広がって配設されている。弾性ゴム板68は、全体に亘って略一定の肉厚の円板形状を有しており、その外周面に対して仕切金具50における筒状壁部64が加硫接着されている。これにより、仕切金具50の中央開口66が弾性ゴム板68で流体密に閉塞されている。
【0031】
また、仕切金具50には、径方向中間部分を周方向の全周に亘って連続して延びる段差部80が形成されており、段差部80よりも外周部分が環状の固定部82とされて、該固定部82が、アウタ筒金具14の段差部38に重ね合わされてかしめ部40でかしめ固定されている(図1参照)。一方、仕切金具50における段差部80よりも内周部分は、アウタ筒金具14の径方向内方に突出位置せしめられる環状板壁部83とされている。そして、この環状板壁部83には、周上の一カ所に通孔85が、所定幅の円弧形状をもって貫設されていると共に、かかる環状板壁部83の上下(表裏)両面に対して上下の減衰ゴム層70,72が加硫接着されている。
【0032】
かかる上側減衰ゴム層70は、環状板壁部83の上面を全体に亘って被覆するようにして形成されており、特に上側減衰コム層70の内周部分は、仕切金具50の筒状壁部64の外周面に沿って周方向に延びる厚肉の厚肉環状ゴム層84とされていると共に、減衰ゴム層70の外周部分は、薄肉環状ゴム層86とされている。また、薄肉環状ゴム層86は、周上の一カ所において厚肉とされており、厚肉環状ゴム層84から一体的に外周側に延び出す仕切壁88が形成されている。そして、この仕切壁88の周方向一方の側には、仕切金具50の通孔85が位置せしめられていると共に、仕切壁88の周方向他方の側には、厚肉環状ゴム層84が周方向所定長さで切り欠かれた形態をもって、薄肉環状ゴム層86から内周側に広がる開口連絡部90が形成されている。
【0033】
要するに、仕切部材49には、仕切金具50の環状板壁部83と筒状壁部64からなるL字状断面の部分により、環状板壁部83の上周側で筒状壁部64の外周側に位置して隅部領域92が周方向に一周弱の長さで延びるように形成されており、この隅部領域92の底壁を構成する環状板壁部83と筒状壁部64が薄肉ゴム層86と厚肉環状ゴム層84で全面に亘って覆われている。また、この隅部領域92の周方向一方の端部では、仕切金具50の通孔85の周囲が薄肉ゴム層86で全体に亘って覆われている。なお、環状板部83上における厚肉環状ゴム層84の肉厚寸法は、環状板壁部83からの筒状壁部64の突出高さよりも僅かに大きく設定されており、厚肉環状ゴム層84が、仕切金具50の中央開口66に配設された弾性ゴム板68と、筒状壁部64の突出先端部を覆うように形成された薄肉の上側狭窄部94によって一体的に連結されている。これにより、上側減衰ゴム層70の全体が、仕切金具50の中央開口66に配設された弾性ゴム板68と一体形成されているのである。
【0034】
また一方、下側の減衰ゴム層72は、環状板壁部83の下面を全体に亘って被覆するようにして形成されており、特に下側減衰ゴム層72の外周部分は他の部分よりも厚肉化されており、周方向に略半周の長さで延びる厚肉減衰部96とされている。即ち、厚肉減衰部96の内周側には、薄肉の下側狭窄部98が形成されており、この下側狭窄部98によって、厚肉減衰部96が、仕切金具50の中央開口66に配設された弾性ゴム板68と連結されて一体形成されている。
【0035】
そして、かかる厚肉減衰部96において、仕切金具50の通孔85が位置せしめられて開口している。また、仕切金具50における通孔85の孔内周面にも薄肉の孔被覆ゴム100が被着形成されており、この孔被覆ゴム100によって、環状板壁部83の上下面に被着形成された上下の減衰ゴム層70,72が相互に一体的に連結されている。
【0036】
ところで、このように仕切金具50に対して弾性ゴム板68や上下の減衰ゴム層70,72等が被着せしめられた仕切部材49は、例えば、図6に示されているように、弾性ゴム板68や上下の減衰ゴム層70,72等の成形キャビティ102を協働して形成する成形金型104,106を用い、その成形キャビティ102の所定位置に仕切金具50をセットせしめた状態下で、図示しない射出装置等を用いて所定のゴム材料を成形キャビティ102に充填し、加硫成形することによって、第二の一体加硫成形品107として製造されることとなる。
【0037】
その際、ゴム材料は、成形キャビティ102の略中央から注入されて、弾性ゴム板68の成形キャビティ部分108から外周側に広がり、上側減衰ゴム層70の成形キャビティ部分110と下側減衰ゴム層72の成形キャビティ部分112に至るようにして充填される。
【0038】
そこにおいて、成形キャビティ102にセットされた仕切金具50は、その固定部80を成形金型104,106間で挟持せしめられると共に、環状板壁部83が、一方の成形金型104に突設された複数本の支持ピン103により軸方向一方の側(筒状壁部64が突設された軸方向上側)からだけにおいて支持せしめられることによって位置決め配置される。
【0039】
また、弾性ゴム板68の成形キャビティ部分108と上側減衰ゴム層70の成形キャビティ部分110の接続部位、即ち上側狭窄部94の成形キャビティ部分114は、仕切金具50の筒状壁部64の先端縁部によって狭窄されており、下側減衰ゴム層72や下側狭窄部98の成形キャビティ部分112,116よりも狭幅とされている。
【0040】
従って、成形型104,106で画成された成形キャビティ102にゴム材料を充填すると、上側減衰ゴム層70の成形キャビティ部分110へのゴム材料の流入が上側狭窄部94の成形キャビティ部分114で制限されて抑えられることにより、かかるゴム材料が、下側減衰ゴム層72や厚肉減衰部96の成形キャビティ部分112,118に対して優先的に導かれて、上側減衰ゴム層70の成形キャビティ部分110よりも先に下側減衰ゴム層72の成形キャビティ部分112に充填されることとなる。また、仕切金具50の環状板壁部83における成形キャビティ102への上下の露出面積、即ち成形キャビティに充填されるゴム材料の作用面積は、略支持ピン103の当接面積分だけ、上面よりも下面の方が大きくされている。
【0041】
その結果、ゴム材料の成形キャビティ102への充填に際して仕切金具50に及ぼされる充填圧は、過渡的にも最終的にも、環状板壁部83を軸方向上方に向かって押圧して支持ピン103に対して押し付ける方向となる。従って、環状板壁部83は、軸方向上側だけを支持ピン103が支持されているのに拘わらず、ゴム材料の充填圧による変形が可及的に防止されることとなり、目的とする上下の減衰ゴム層70,72が一体加硫成形された第二の一体加硫成形品107を高精度に安定して製造することが可能となる。そして、仕切金具50における環状板壁部83の下面は、支持ピン103による支持を必要とせず、その全面が成形キャビティ102に露呈されることから、かかる下面を全面に亘って覆うようにして下側減衰ゴム層72が被着形成され得るのである。
【0042】
そして、上述の如き構造とされた仕切部材49と蓋部材52は、図1にも示されているように、仕切部材49に対して、蓋部材52が軸方向上側から重ね合わされて、アウタ筒金具14の上側開口部に対して組み付けられており、仕切金具50の固定部82と蓋金具56のフランジ状部62が、アウタ筒金具14の段差部38上で互いに重ね合わされて、かしめ部40で一体的にかしめ固定されることにより、アウタ筒金具14(大径筒部32)の上側開口部に対して組み付けられている。
【0043】
また、上述の如くしてアウタ筒金具14に仕切部材49と蓋部材52がかしめ固定されることにより、アウタ筒金具14の上側開口部が、蓋部材52によって流体密に覆蓋されており、以て、アウタ筒金具14の内部には、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム54の対向面間において、内部に非圧縮性流体が封入された流体封入領域120が形成されている。また、かかる流体封入領域120には、仕切部材49が、軸直角方向に広がって配設されており、この仕切部材49で流体封入領域120が仕切られて二分されることによって、仕切部材49を挟んだ一方の側(インナ金具12等が位置せしめられた軸方向下側)には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成された受圧室122が形成されていると共に、仕切金具50を挟んだ他方の側(蓋部材52等が位置せしめられた軸方向上側)には、壁部の一部がダイヤフラム54で構成された平衡室124が形成されている。
受圧室122は、インナ金具12とアウタ筒金具14の間への振動入力時に、本体ゴム弾性体16の弾性変形に基づいて圧力変化が生ぜしめられるようになっている一方、平衡室124は、ダイヤフラム54の弾性変形に基づいて、容積変化が容易に許容されるようになっている。
【0044】
なお、これら受圧室122と平衡室124への非圧縮性流体の封入は、例えば、第一の一体加硫成形品44に対する仕切部材49(第二の一体加硫成形品107)と蓋部材52の組み付けを、非圧縮性流体中で行うこと等によって、有利に為され得る。また、封入される非圧縮性流体としては、例えば、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール、シリコーン油等が何れも採用可能であり、特に、流体の共振作用に基づく防振効果を有効に得るために、粘度が0.1Pa・s以下の低粘性流体が好適に採用される。
【0045】
また、仕切部材49と蓋部材52が相互に軸方向に組み合わされることにより、仕切部材49に設けられた厚肉環状ゴム層84の上面に対して、蓋金具56の環状上壁部60の内周縁部が、シールゴム層58を介して圧接されている。これにより、仕切部材49において周方向に延びるように形成された隅部領域92が蓋金具56で覆蓋されており、以て、仕切部材49と蓋部材52の重ね合わせ面間において、仕切部材49の外周部分を周方向に一周弱の長さで延びるオリフィス通路126が形成されている。そして、このオリフィス通路126の周方向一方の端部が、仕切金具50に形成された通孔85を通じて受圧室122に接続されていると共に、オリフィス通路126の他方の端部が、仕切部材49の開口連絡部90を通じて平衡室124に接続されており、以て、受圧室122と平衡室124の間での流体流動がオリフィス通路126を通じて許容されるようになっている。
【0046】
而して、このようなエンジンマウント10は、図7に示されているように、インナ金具12が、ねじ穴22に螺着されるボルト26で図示しないパワーユニット側に取り付けられるブラケット28に固着されることにより、該ブラケット28を介してパワーユニットに取り付けられている一方、アウタ筒金具14が、大径筒部32よりも一回り大きな保持金具130に対して圧入等で固着されて、該保持金具130に溶着されたブラケット128を介して、図示しない車両ボデー側にボルト固定等で取り付けられるるようになっている。これにより、かかるエンジンマウント10は、図7にも示される如く、パワーユニット荷重の入力により本体ゴム弾性体16が弾性変形するに伴って、アウタ筒金具14に対してインナ金具12が軸方向下方に所定量だけ相対変位せしめられて受圧室122の容積が増大せしめられた状態で装着されることとなり、防振すべき主たる振動が、インナ金具12とアウタ筒金具14に対して、主に図7中の上下方向に入力されるようになっており、以て、パワーユニットをボデーに対して吊り下げ状態で防振支持せしめるようになっている。
【0047】
上述の如き構造とされた自動車用エンジンマウント10においては、軸方向に主たる振動が入力されると、受圧室122と平衡室124の間で相対的な圧力変動が生ぜしめられて、それら両室122,124間でオリフィス通路126を通じての流体流動が惹起されるのであり、以て、かかる流体の共振作用に基づいて有効な防振効果が発揮されることとなる。なお、オリフィス通路126を流動せめしられる流体の共振作用に基づいて発揮される防振効果は、オリフィス通路126のチューニング周波数に対応した周波数域の振動に対して有効に発揮されることとなり、そのために、オリフィス通路126の通路断面積と通路長さの比の値が、防振すべき振動周波数域に応じて適当に調節される。具体的には、オリフィス通路126の通路長さや通路断面積を適当に調節することにより、自動車の走行時に問題となるエンジンシェイク等に対して有効な防振効果を得ることが可能となる。
【0048】
さらに、本実施形態では、受圧室122と平衡室124の隔壁の一部が弾性ゴム板68で形成されていることから、オリフィス通路126のチューニング周波数域よりも高周波数域の振動が入力された場合でも、かかる弾性ゴム板68が弾性的に小変位せしめられることにより、受圧室122の圧力変動が軽減乃至は吸収されるようになっている。これにより、例えば車両停車時に問題となるアイドリング振動や車両走行時に問題となるこもり音等のの中乃至高周波数域の振動に対しても、オリフィス通路126が実質的に閉塞してしまうことに起因する動ばね定数の著しい増大が防止されて良好な防振性能を得ることが可能となる。
【0049】
ところで、上述の如き構造とされたエンジンマウント10において、車両が波状路やスピードブレーカ等を走行することによって衝撃的な振動荷重が及ぼされた場合には、受圧室122に惹起される大きな負圧により、オリフィス通路126の開口部位である通孔85の付近にキャビテーション気泡が発生することがある。この通孔85の付近に発生した気泡は、受圧室122内で成長して崩壊に至ることとなり、崩壊時に発せられるエネルギーが水撃圧として自動車ボデーに伝達されることによって問題となる異音や振動が実機されることとなる。
【0050】
そこにおいて、本実施形態のエンジンマウント10においては、受圧室122においてキャビテーション気泡の発生源であるオリフィス通路126の通孔85の付近が、下側減衰ゴム層72の厚肉減衰部90で覆われていることから、通孔85の付近で生ぜしめられたキャビテーション気泡が最も多く存在し、受圧室122の壁部を構成する剛性材のうちで気泡の崩壊に伴う水撃圧が最も多く作用せしめられる仕切金具50の通孔85の周囲において、作用せしめられる水撃圧が厚肉減衰部96によって有効に減衰、緩和されて、仕切金具50へのエネルギ伝達量が軽減され得るのであり、これによって、大きな振動荷重に際して問題となり易い異音や振動の発生が効果的に軽減乃至は回避され得ることとなる。
【0051】
しかも、仕切金具50における通孔85の周囲は、単に受圧室122側の面に下側減衰ゴム層72(厚肉減衰部96)が被着形成されているだけでなく、反対のオリフィス通路126側の面にも、上側減衰ゴム層70が被着形成されていることから、これら上下減衰ゴム層72によって仕切金具50に有効な制振効果が発揮され得ることとなり、以て、受圧室122に惹起されるキャビテーション気泡の崩壊に伴う水撃圧の作用によって仕切金具50が加振されることに起因する異音や振動の発生や、その車両ボデーへの伝達が、一層有利に抑えられるのである。
【0052】
さらに、本実施形態では、仕切金具50において、受圧室122に惹起されたキャビテーション気泡の崩壊に伴う水撃圧が直接に作用せしめられる受圧室122側の面が、その全面に亘って、支持ピン等による微小な露呈面もなく下側減衰ゴム層72で被覆されていることから、かかる水撃圧の作用が、より一層効果的に抑えられることとなる。なお、かかる下側減衰ゴム層72は、オリフィス通路126の通孔85の周りに比して、そこから大きく外れた部分が薄肉とされていることから、特に気泡が発生し易い通孔85の周りにおいて水撃圧に対する有効な緩衝作用乃至は減衰作用を確保しつつ、下側減衰ゴム層72の容積を抑えることが可能となる。
【0053】
なお、仕切金具50に被着された上下の減衰ゴム層70,72のうち、特にオリフィス通路126の通孔85の受圧室122側への開口部位の周りを被覆し、気泡崩壊に伴う水撃圧が直接に作用せしめられる厚肉減衰部96は、水撃圧に対して有効な低減効果を発揮し得るように、肉厚寸法を1mm以上とすることが望ましく、より好適には2mm以上の肉厚寸法とされる。尤も、仕切金具50を被覆する上下の減衰ゴム層70,72は、水撃圧に起因する異音や振動を有効に抑えるためには、上側狭窄部94や孔被覆ゴム100等を除く実質的に全体に亘って1mm以上の肉厚寸法を設定することが望ましい。
【0054】
また、本実施形態では、受圧室122の壁部を構成する全ての剛性部材(第二の取付金具14および仕切金具50)における受圧室68を形成する全ての面が、ゴム弾性体(本体ゴム弾性体16および下側減衰ゴム層72)によって覆われていることから、受圧室122内で成長,崩壊するキャビテーション気泡の水撃圧のそれら剛性部材に対する直接的な伝達が緩和されると共に、それら剛性部材自体に制振効果が付与され得て、キャビテーション気泡に起因する異音や振動の問題がより効果的に軽減されるようになっている。
【0055】
更にまた、本実施形態では、オリフィス通路126の壁部を構成する全ての剛性部材(仕切金具50および蓋金具56)におけるオリフィス通路126を画成する全ての部位にゴム弾性体(上側減衰ゴム層70およびシールゴム層58)が加硫接着されていることから、キャビテーョン気泡の水撃圧が直接的乃至は間接的に及ぼされることに起因する、それら剛性部材の共振等に起因する異音や振動の問題も効果的に軽減乃至は防止され得るのである。
【0056】
また、上述の如きエンジンマウント10においては、受圧室122の壁部の一部が弾性ゴム板68で構成されていることからかかる弾性ゴム板68によっても仕切金具50に対する制振効果が発揮されて、受圧室122に惹起されるキャビテーション気泡の崩壊に伴う水撃圧に起因する異音や振動の発生が一層低減され得ると共に、弾性ゴム板68の弾性変形に基づく受圧室122の液圧吸収作用により、受圧室122に惹起される負圧が軽減されてキャビテーション気泡自体の発生量が抑えられる効果も期待することが出来る。
【0057】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【0058】
例えば、仕切部材49においては、仕切金具50に対して上下の減衰ゴム層70,72以外に、適当な作用部を、必要に応じて適宜に設けることが可能である。即ち、図8〜12に示されているように、仕切金具50の環状板壁部83において、軸方向下方に突出して受圧室122の特定部位を狭窄する作用突部134を突出形成することも可能である。図13,14に示されているように、このような作用突部134を設けて受圧室122の外周部分を、本体ゴム弾性体16の外周側において狭窄することにより、受圧室122の外周部分を周方向に流動せしめられる流体の共振作用に起因すると考えられる防振性能の悪化を軽減乃至は回避することも可能となる。なお、作用突部134の突出先端面には、周上の複数箇所において、径方向に延びる弾性の緩衝フィン138が一体形成されており、これら緩衝フィン138によって、本体ゴム弾性体16への悪影響を回避しつつ、図14に示されている如きパワーユニット支持荷重の作用状態下において、受圧室122が一層有利に狭窄されるようになっている。
【0059】
なお、仕切金具50に大型の作用突部134を形成する場合には、仕切金具50に形成された通孔85を通じてオリフィス通路126を流動せしめられる流体の流動に対して大きな抵抗を及ぼさないように、通孔85の近くを避けるようにして、作用突部134を設けることが望ましい。換言すれば、作用突部134には、周上の適当な部位に(本実施形態では一カ所)に、切欠部136が形成されており、この切欠部136に厚肉減衰部96が被着されて、オリフィス通路126の通孔85が設けられている。
【0060】
また、図8〜14においては、その理解を容易とするために、各図中、前記1〜7に示された第一の実施形態と同様な構造とされた部材および部位に対して、それぞれ、第一の実施形態と同一の符号を付しておく。
【0061】
また、図示はしないが、本発明においては、例えば上下の減衰ゴム層70,72の成形キャビティにおいて形成される上下の狭窄部94,98の相対的な狭窄程度を調節して、仕切金具50の上下面に及ぼされるゴム材料の充填圧力を相対的にバランスをとることにより、仕切金具50を成形キャビティ102内に位置決めする支持ピン等を全廃して、仕切金具50の下側減衰ゴム層72だけでなく、上側減衰ゴム層70においても、支持ピンによる成形穴が形成されることを回避することも可能である。そして、支持ピンによる成形穴を無くすことは、前記実施形態のエンジンマウント10のように、非圧縮性流体の封入時にかかる成形穴にエアが残留して特に受圧室122側にエアが混入することを防止することが要求される防振性能を安定して得るために有効であるが、上下の減衰ゴム層70,72の何れにおいても支持ピンによる成形穴を無くすことは、特にオリフィス通路内の成形穴への残留エアが非圧縮性流体の吹きつけでも解消することが難しいことから有効である。
【0062】
また、本発明が適用される流体封入式防止装置の具体的構造は、前記実施形態のものに限定されるものでなく、例えば特開2001−50333号公報等に記載されているように、パワーユニット等の支持荷重が及ぼされることによって受圧室に正圧が生ぜしめられるようなエンジンマウントや、その他、オリフィス通路で連通された受圧室と平衡室を備えた各種の公知の流体封入式防振装置に対して、広く適用可能である。
【0063】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、従来から問題となっていた衝撃的な振動荷重の入力時における異音や振動の発生が、極めて簡単な構造によって軽減乃至は解消され得るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態としての自動車用エンジンマウントを示す縦断面図であって、図2におけるI−I断面に相当する図である。
【図2】図1に示されたエンジンマウントを構成する仕切部材を示す平面図である。
【図3】図2に示された仕切部材の底面図である。
【図4】図2に示された仕切部材の正面図である。
【図5】図2におけるV−V断面図である。
【図6】図2に示された仕切部材におけるゴム材の加硫成形操作を説明するための説明図である。
【図7】図1に示されたエンジンマウントの装着状態を示す縦断面説明図である。
【図8】本発明の別の実施形態としての図1に対応する縦断面図である。
【図9】図8に示されたエンジンマウントを構成する仕切部材を示す平面図である。
【図10】図9に示された仕切部材の底面図である。
【図11】図9に示された仕切部材の正面図である。
【図12】図9におけるXII −XII 断面図である。
【図13】図9におけるXIII−XIII断面図である。
【図14】図8に示されたエンジンマウントの装着状態を示す縦断面説明図である。
【符号の説明】
10 エンジンマウント
12 第一の取付金具
14 第二の取付金具
16 本体ゴム弾性体
49 仕切部材
50 仕切金具
52 蓋部材
54 ダイヤフラム
56 蓋金具
68 弾性ゴム板
70 上側減衰ゴム層
72 下側減衰ゴム層
85 通孔
94 上側狭窄部
96 厚肉減衰部
122 受圧室
124 平衡室
126 オリフィス通路

Claims (9)

  1. 第一の取付部材を筒状の第二の取付部材の一方の開口側に離隔配置せしめて該第一の取付部材と該第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結することにより、該第二の取付部材の該一方の開口部を流体密に覆蓋する一方、該第二の取付部材の他方の開口部を可撓性膜で流体密に覆蓋し、更に中央開口がゴム弾性板で閉塞された環状の仕切金具を該本体ゴム弾性体と該可撓性膜の対向面間に配設して該仕切金具の外周縁部を該第二の取付部材で支持せしめることにより、該ゴム弾性板を挟んだ一方の側に該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて振動入力時に圧力変動が生ぜしめられる受圧室を形成し、他方の側に該可撓性膜で壁部の一部が構成されて容積可変とされた平衡室を形成して、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入すると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を該仕切金具を利用して該仕切金具の周方向に延びるように形成した流体封入式防振装置において、
    前記仕切金具によって形成されて前記受圧室と前記オリフィス通路を区画する隔壁部に該オリフィス通路の該受圧室への開口部を形成すると共に、該仕切金具における該開口部の形成部位に対して、受圧室側とオリフィス通路側の両面に減衰ゴムを被着形成したことを特徴とする流体封入式防振装置。
  2. 前記ゴム弾性板と前記減衰ゴムを一体成形して、前記仕切金具に対して加硫接着せしめると共に、該仕切金具の前記受圧室側と前記平衡室側の少なくとも一方の面において、該仕切金具の内周縁部付近に位置する該ゴム弾性板と該減衰ゴムの連接部分を狭窄状として該減衰ゴムよりも肉厚寸法の小さい薄肉部を形成した請求項1に記載の流体封入式防振装置。
  3. 前記ゴム弾性板および前記減衰ゴムの成形キャビティを備えた成形型に前記仕切金具をセットすると共に、該仕切金具を前記オリフィス通路側の面で支持ピンにより位置決め支持せしめた状態下で、該ゴム弾性板の成形キャビティから該減衰ゴムの成形キャビティにゴム材料を射出充填せしめて該ゴム弾性板と該減衰ゴムを一体加硫成形することにより、該仕切金具における受圧室側の面に前記減衰ゴムを被着形成した請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
  4. 前記仕切金具における前記受圧室側と前記オリフィス通路側の両面に、前記減衰ゴムを、前記オリフィス通路の該受圧室への開口部を含む全面に亘って被着形成した請求項1乃至3の何れかに記載の流体封入式防振装置。
  5. 前記仕切金具を、(a)軸直角方向に広がるプレート状部と、(b)該プレート状部の内周縁部から軸方向で平衡室側に延びる筒状部とを、含んで形成して、前記ゴム弾性板の外周縁部を該筒状部に加硫接着せしめることにより該ゴム弾性板を該仕切金具で支持せしめる一方、該仕切金具において該プレート状部と該筒状部で形成されて周方向に延びるL字状断面の隅部領域を、前記第二の取付部材によって支持された他部材で覆蓋することにより前記オリフィス通路を形成した請求項1乃至4の何れかに記載の流体封入式防振装置。
  6. 前記可撓性膜の外周縁部に環状の固定金具を加硫接着せしめて、該固定金具の外周縁部を前記仕切金具の外周縁部に重ね合わせて、それら固定金具と仕切金具の両外周縁部を該第二の取付金具における前記他方の開口部に対してかしめ固定すると共に、該固定金具と該仕切金具の間を周方向に延びるようにして前記オリフィス通路を形成した請求項1乃至5の何れかに記載の流体封入式防振装置。
  7. 前記仕切金具に形成された前記オリフィス通路の前記受圧室への開口部の孔内周面を覆う孔被覆ゴムを、該仕切金具における該オリフィス通路の開口部の形成部位において受圧室側とオリフィス通路側の両面に被着形成された減衰ゴムと一体成形した請求項1乃至6の何れかに記載の流体封入式防振装置。
  8. 前記仕切金具における前記オリフィス通路の開口部の形成部位において前記受圧室側の面に被着形成された前記減衰ゴムを、1mm以上の肉厚寸法とした請求項1乃至7の何れかに記載の流体封入式防振装置。
  9. 前記第一の取付部材と前記第二の取付部材の一方をパワーユニットに取り付けると共に他方を車両ボデーに取り付けることによりエンジンマウントを構成し、該パワーユニットの支持荷重が該第一の取付部材と該第二の取付部材の間に及ぼされることにより、該第一の取付部材と該第二の取付部材が相互に離隔せしめられて前記本体ゴム弾性体の弾性変形に基づいて前記受圧室の容積が増大せしめられるようにした請求項1乃至8の何れかに記載の流体封入式防振装置。
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