JP2004204387A - 生分解性紐 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた機械特性を有し、高温多湿下での加水分解が抑制され、生分解性を有し、防カビ性、耐候性を兼ね備え、しかも縦割れ(フィブリル化)することがない紐を提供する。
【解決手段】結晶性ポリ乳酸と、ガラス転移温度が0℃以下の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとを主成分とし、生分解性を有する1軸延伸フィルムからなる紐であって、該紐の相対粘度が1.8以上、複屈折が0.035以下、および50℃、95%RHにおける加水分解係数が0.5以下であることを特徴とする生分解性紐。
【選択図】 なし
【解決手段】結晶性ポリ乳酸と、ガラス転移温度が0℃以下の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとを主成分とし、生分解性を有する1軸延伸フィルムからなる紐であって、該紐の相対粘度が1.8以上、複屈折が0.035以下、および50℃、95%RHにおける加水分解係数が0.5以下であることを特徴とする生分解性紐。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ乳酸を主成分とする生分解性を有するポリマーを原料として製造した紐に関するものであり、優れた強力を保持し、使用中はカビや病害虫の発生がなく、しかも、廃棄した後も自然環境下に蓄積することがない紐に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、農業用としてプラスチックフィルムが多用されており、例えば施設園芸用ハウスの外張り用や内張り用、トンネルハウス用、マルチ栽培用フィルムなどとして使用されている。これらのフィルムの原料としては、主にポリ塩化ビニル系樹脂やポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂が用いられている。中でもポリ塩化ビニル系樹脂フィルムの生産量は、年間10万トンにのぼっている。しかし、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムやポリエチレン系樹脂フィルムなどのポリオレフィン系樹脂フィルムは、自然環境下では分解しないか、または分解速度が極めて遅いため、使用後放置されたり、土中に埋設処理された場合、半永久的に地上や地中に残存することになる。また、海洋投棄された場合は、景観を損なったり、海洋生物の生活環境を破壊したりする。さらに、ポリ塩化ビニル系樹脂を焼却処理した場合には、塩化水素ガスなどの有害ガスが発生し、大気を汚染するだけでなく、焼却炉の劣化を促進するなど、消費の拡大とともにその廃棄処理が社会問題となっている。
【0003】
上記のような問題を解決する手段として、農業用資材として生分解性ポリマーを用いるための研究開発が以前より行われている。特に、ポリ乳酸は強度が優れているため、これまでに種々の利用が検討されてきた(特許文献1など)。たとえば、ポリ乳酸に、やしがら、デンプンなどを混合して、マルチ栽培フィルムや植木ポットに用いることにより、使用済みのものを土中に埋設したままで分解されるため大幅に労力が削減される例が示されている(特許文献2)。
【0004】
ところで、現在、農業用分野において、メロン、トマト、ミニトマト、スイトピー、キュウリ、ナスなどの蔓性作物を栽培する場合、ハウスの天井から垂らして蔓を巻き付かせて使用する吊り紐としては、茎や果実の重量をささえるために、従来、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)製のフィルムを軽く折った紐が使用されており、一本の苗に長さ数mの紐が複数本使用されている。作物を収穫した後は、PEやPP製の吊り紐は、作物から取り外して廃棄する必要があるが、蔓が強固に吊り紐に巻き付いているため、この取り外し作業は大変な労力を必要とするといった問題がある。また、近年、特に農村部においては、ゴミの一部をコンポストで処理することが推進されており、収穫後の作物をコンポストで処理し、肥料として再利用することが進められている。このコンポスト化を推進するためには、吊り紐として生分解性ポリマーを用いることが必要であるが、従来市販されているデンプン系、石化系の生分解性フィルムは、カビが生えやすく農業用途には適していない。したがって、特に上記のような農業用途においては、生分解性を有し、かつ、機械的性能に優れ、防カビ性、耐候性を兼ね備えた紐が求められているのが実状である。
【0005】
一方、牧草や藁の結束用に、安価で機械的特性に優れたPP製の紐が現在使用されている。これらの用途に使用されたPP製紐も上記蔓性作物の農業用紐と同様、使用後の廃棄処理の問題が近年とりざたされてきている。特に、牧草用の結束紐は、牛が牧草と間違えて食し、窒息死など種々の問題を引き起こす原因の一つにもなっており、これらの紐を動物が食しても安全な生分解性ポリマーからなる紐に代替する要望が強まっている。
【0006】
このような問題を解決するために、特許文献3では、ポリ乳酸に生分解性脂肪族ポリエステルを配合した1軸延伸フィルムからなる生分解性紐が提案されている。しかしこの生分解性紐を構成する1軸延伸フィルムは、縦割れ(フィブリル化)が発生することがあり、そのために紐の強度にばらつきを生じることがあった。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−256481号公報
【特許文献2】
特開平9−275820号公報
【特許文献3】
特開2001−248028号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題を解決し、優れた機械特性を有し、高温多湿下での加水分解性が抑制され、生分解性を有し、防カビ性、耐候性を兼ね備え、しかも、縦割れ(フィブリル化)することがない紐を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、結晶性ポリ乳酸とガラス転移温度(Tg)が0℃以下の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとからなる紐が上記課題を解決することを見出し本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は、結晶性ポリ乳酸と、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとを主成分とし、生分解性を有する1軸延伸フィルムからなる紐であって、該紐の相対粘度が1.8以上、複屈折が0.035以下、および、50℃、95%RHにおける加水分解係数が0.5以下であることを特徴とする生分解性紐である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の生分解性紐は、結晶性ポリ乳酸及びガラス転移温度(Tg)が0℃以下の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとから構成される。結晶性ポリ乳酸にガラス転移温度(Tg)が0℃以下の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを配合することにより、紐のフィブリル化を防止したり、フィルム及び紐に、柔軟化にともなう粘りを付与するといったいわゆる高分子可塑剤的効果が得られる。ポリ乳酸と脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの配合割合は、(ポリ乳酸)/(脂肪族−芳香族共重合ポリエステル)=99/1〜75/25の範囲が好ましい。この範囲よりポリ乳酸の配合割合が少ないと、ポリ乳酸の良好な機械的特性が損なわれる。また、この範囲より脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの配合割合が少ないと、得られるフィルムにしっとり感と収束性を付与できず、フィブリル化が激しくなる。
【0011】
本発明において用いられる結晶性ポリ乳酸としては、乳酸の構造単位がL−乳酸であるポリL−乳酸、構造単位がD−乳酸であるポリD−乳酸、さらにはL−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリDL−乳酸、またはこれらの混合体が挙げられ、中でも、乳酸の構造単位の内、含有するD−乳酸が5モル%以下であり、かつ、数平均分子量が8万〜15万である結晶性ポリ乳酸が好ましい。含有するD−乳酸の割合が5モル%を超えると、出発原料として使用するポリ乳酸の結晶性が低下し、得られる紐は実用上必要な強力が得られないことがある。また、数平均分子量が8万未満では、実用上耐えうる強力が得られず、数平均分子量が15万を超えると、溶融粘度が高くなり、成形加工上問題となることがある。なお、D−乳酸は共重合されていても混合されていてもよい。
また、本発明の目的から外れない範囲でポリ乳酸に少量の共重合成分を含有していてもよく、共重合成分としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、ビスフェノールSのアルキレンオキシド付加物等のグリコール成分、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸成分が挙げられる。
【0012】
また、ポリ乳酸の分子量を増大させるために、少量の鎖長延長剤、たとえば、有機過酸化物、ビスオキサゾリン化合物、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物などを用いることができる。
【0013】
ポリ乳酸の相対粘度は、溶媒としてフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒を用い、温度20℃、濃度0.5g/dlの条件で測定した値が2.0〜2.5の範囲にあることが好ましい。また、ポリ乳酸の融点は、D−乳酸のモル比によって異なるが、140〜175℃の範囲のものが好ましい。
【0014】
本発明で使用する、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとしては、脂肪族成分および芳香族成分を有するものであればよく、たとえば、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸類、カプロラクトン、ブチロラクトン、ラクチド、グリコリド等の環状ラクトン類、エチレングリコール、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビス−ヒドロキシメチルベンゼン、トルエンジオール等のジオール類、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸類、環状酸無水物類、オキシラン類を成分とし、脂肪族成分と芳香族成分を有する共重合体が挙げられる。脂肪族成分としてコハク酸やアジピン酸、エチレングリコールや1,4−ブタンジオールを、芳香族成分としてテレフタル酸やイソフタル酸を有する共重合ポリエステルが好ましい。また、生分解性に影響を与えない範囲で、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合等を導入することができる。これらの脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの重合方法については特に限定されるものではないが、例えば、縮合重合法、開環重合法等が適用できる。また、重合時もしくは重合直後に他の重合体、モノマー、オリゴマー、オリゴマー成分等の1種以上の副成分を加え、さらに重合を進める方法も可能である。
【0015】
上記のように構成された脂肪族−芳香族共重合ポリエステルは、その重量平均分子量が1万以上であることが好ましく、2万〜30万の高分子量であるものがより好ましい。重量平均分子量が1万より小さいと、紐の機械的特性が劣ったものとなる。
【0016】
本発明の紐を構成する上記ポリ乳酸と脂肪族−芳香族共重合ポリエステルには、滑剤を添加することが好ましい。滑剤は、フィルム化する際の製膜性や延伸性に寄与するだけでなく、紐の滑り性の発現にも寄与することができる。ポリ乳酸のフィルムは摩擦抵抗が大きいため、紐の送りがスムーズにいかず、自動結束時の操業性を悪化させる場合がある。連続自動結束装置ではちょっとした不具合が操業性を悪化させるため、紐の摩擦抵抗を低減させる必要がある。紐の摩擦抵抗を低減させるためには、滑剤を0.1〜10%含有させることが好ましい。このような滑剤としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、タルク、炭酸カルシウムなどの無機物系滑剤、流動パラフィン、マイクロクリスタリンクワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリエチレンなどの脂肪族炭化水素系滑剤、ステアリン酸、ラウリル酸、ヒドロキシステアリン酸、硬化ひまし油などの脂肪酸系滑剤、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド系滑剤、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどの炭素数12〜30の脂肪酸金属塩である金属石鹸系滑剤、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの多価アルコールの脂肪酸(部分)エステル系滑剤、ステアリン酸ブチルエステル、モンタンワックスなどの長鎖エステルワックスなどの脂肪酸エステル系滑剤、またはこれらを複合した複合滑剤などが挙げられる。無機系滑剤と有機系滑剤の併用は更に好ましい。
【0017】
滑剤の添加方法は、マスターバッチによる添加や直接添加、あるいは、予め脂肪族−芳香族共重合ポリエステル中に0.5〜50質量%分散させてポリ乳酸に添加する方法、あるいは、これらの方法を併用することができる。特に、この両方法を併用して滑剤を添加する場合、マトリックスであるポリ乳酸中に分散した滑剤が与える滑り効果に加え、ポリ乳酸中にミクロ分散した非相容の樹脂中の滑剤がさらに滑り性を向上させるため好ましい。また、ポリ乳酸にマスターバッチや直接添加される滑剤と、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル中に分散させる滑剤とは、同種であっても異なっていてもどちらでもよい。滑剤の添加量は、得られる紐の機械的物性などを著しく損なわない範囲で添加されるが、通常、構成成分の0.1〜10質量%が好ましい。0.1質量%未満では、実質的に滑剤としての効果が現れない。また、10質量%を超えると、滑剤効果が頭打ちとなり好ましくない。
【0018】
また、本発明の紐には、発明の効果を阻害しない範囲で、紫外線防止剤、光安定剤、耐電防止剤、難燃剤、酸化防止剤、充填剤、顔料などの他の添加剤も添加できる。
【0019】
本発明の紐の相対粘度は、少なくとも1.8以上、好ましくは1.95以上であることが必要である。ここでいう相対粘度とは、溶媒としてフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒を用い、濃度0.5g/dl、温度20℃の条件で測定した溶液粘度をいう。紐の相対粘度が1.8に満たない場合は、ハウス内で高温多湿の状況下に晒すと、ポリ乳酸が加水分解されて、短期間で強度が低下し、メロンやトマトが十分成長する前に紐が切断したりするため好ましくない。
【0020】
本発明の紐で特に重要な特性は、紐の出発形態であるフィルムの複屈折である。複屈折は0.035以下、好ましくは0.033以下であることが必要である。ここでいう複屈折は、偏光顕微鏡を用いたレターデーション法で測定する。複屈折が0.035を超えると、配向が進んでいるためにトラバースによる紙管での巻き取り時にフラットヤーンがこすれて縦割れ(フィブリル化)を起こし、製膜時の延伸・巻き取り工程においてフィブリル化が原因で切断し、操業性が著しく悪化するため好ましくない。
【0021】
また、本発明の生分解性紐の50℃、95%RHにおける加水分解係数は0.5以下であることが必要である。加水分解係数は、50℃、95%RHの条件で6日間処理したときの相対粘度を縦軸に、処理日数を横軸にとり、プロットした直線の傾きをいう。加水分解係数が0.5より大きいと、高温下で水や肥料に毎日晒されているハウス内などにおいて、紐の強度が低下して切れてしまい、作物が落下して傷つき、作物の商品価値がなくなってしまう。すなわち、ハウス内は、通常40℃以下に保たれており、気象条件の変化でハウス内の温度が高くなったり、湿度が高くなったりすると作物が枯れてしまうために、ハウスの窓を開けて温度と湿度が調整されている。しかし、台風などにより温湿度が上がる場合は、窓を開けることができないため、温度が50℃近くまで上昇し、湿度も100%RH近くになる。したがって、紐には、このようなハウス内の環境が変化しても強度を保持することが必要であり、特に台風シーズンに大きな実をつけるメロンや生育期間の長いトマトなどを栽培する場合には、加水分解係数は0.2以下であることが好ましい。
【0022】
また、本発明の紐は、繊度が8500〜25000dtexであり、かつ、引張強度が1.5cN/dtex以上あることが好ましい。繊度が8500dtexよりも小さいと、絶対強力が不足し、延伸工程中にフィルムが引きちぎれてしまうとともに、仮に紐ができたとしても紐としての強力が低く、農作業中に切断してしまう恐れがあるため好ましくない。一方、25000dtexを超えると、撚り機の規格に合わず撚り加工できないことがある。引張強度が1.5cN/dtexよりも小さいと、成長過程の作物を支えきれないため、実用上好ましくない。フィルムの厚さや幅は上記繊度の範囲に入るように設計すれば特に限定されないが、厚みは20〜60μm、幅は30〜80mmが好ましい。
【0023】
本発明の生分解性紐の材料として用いられる、ポリ乳酸と脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとからなるフィルムを製膜する方法としては、例えば、溶融キャスト法、溶融押出法、カレンダー法などの方法を用いることができるが、工業的には溶融押出法が一般的である。溶融押出法としては、公知のTダイ法、インフレーション法などを適用することができる。押出温度は、好ましくは170〜250℃、より好ましくは、190〜230℃の範囲である。成形温度が低すぎると、製膜成形が不安定となり、高すぎると、ポリ乳酸が分解して、得られる紐の強度が低下したり、着色するなどの問題が発生し好ましくない。本発明においてフィルムは、1軸延伸することが必要である。2軸延伸フィルムから得られる紐では、分子が縦横に配向しているため、横方向に亀裂が少しでも存在すると、容易に破断し、製膜や撚り工程時の切断多発に通ずるため好ましくない。1軸延伸する際の延伸倍率は、縦方向に4〜10倍であることが好ましい。延伸倍率が低すぎると、延伸斑を生じるだけでなく、十分に満足しうる強度を有する紐が得難く、また、高すぎると分子配向して複屈折が高くなり、トラバースによる縦割れ(フィブリル化)が多発するため好ましくない。延伸温度は、用いるポリ乳酸のガラス転移温度(Tg)〜(Tg+65℃)の範囲が好ましい。延伸温度がTg未満では延伸が困難であり、Tg+65℃を超えると延伸による強度向上が認められないことがある。また、耐熱性および寸法安定性を増すために延伸後、緊張下で70℃以上、融点未満の範囲で熱処理を行ってもよい。
【0024】
本発明の生分解性紐は、上記方法等によって製造されるフィルムからなるものであるが、強度保持性に優れた紐とするために、フィルムをスリットした後に撚りをかけて表面積を小さくすることが好ましい。撚り工程は、PP製などの紐と同様の公知の方法で行えばよく、芯糸に鞘糸を巻き付ける方法などが用いられる。本発明の生分解性紐の形状は、特に限定されないが、細長いフィルムを撚り数20〜100T/Mで撚ったものが1本以上合糸された紐が好ましい。撚り数が20T/Mより少ないと、作業性が悪く、また紐の表面積が大きくなり空気中の水分に触れて加水分解速度が速くなり、高温、高湿のハウス内で劣化が促進する場合があり、撚り数が100T/Mを超えると、撚り工程でフィルムが擦過し、紐の強度が低下するだけでなく、紐が結びにくいなど、作業性が低下するので好ましくない。撚り紐は1本のフィルムで作ることもできるが、使用する作物によって、より強度が必要なときは合糸して使用すればよい。本発明の生分解性紐は、特にハウス用の農業用吊り紐に好適であるが、用途はこれに限定されるものではなく、牧草や藁用の結束紐などの結束用、あるいは梱包用など農業分野以外にも使用できる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明について実施例、比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における紐の引張強度は、オートグラフAGS−500(島津製作所社製)を用い、チャック間距離500mm、引張りスピード300mm/minで紐を引張り、切断するまでの最大荷重である強力を紐の繊度(デシテックス)で除した値である。
【0026】
実施例1
数平均分子量が10万、D%が1モル%であるポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマーズ社製、ECOPLA)95質量%と、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(BASF社製、エコフレックス)を2質量%と、タルクを50質量%含有したエコフレックスを1質量%(以下、タルクを含有したエコフレックスをタルクマスターと略称する)と、エルカ酸アミドを10質量%含有したエコフレックスを2質量%(以下、エルカ酸アミドを含有したエコフレックスをエルカ酸アミドマスターと略称する)をチップ混合して、Tダイが装着された押出機を用いて、200℃で溶融混練して押出し、未延伸フィルムを作成した。この未延伸フィルムをスリットした後、110℃に加熱し、長さ方向にロール法にて7倍に1軸延伸し、40T/MでS撚りにて撚りをかけ、繊度が13500dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0027】
実施例2
ポリ乳酸90質量%、タルクマスター8質量%、及びエルカ酸アミドマスター2質量%をチップ混合し、実施例1と同様にして繊度が13500dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0028】
実施例3
ポリ乳酸82質量%、タルクマスター16質量%、及びエルカ酸アミドマスター2質量%をチップ混合し、実施例1と同様にして繊度が13500dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0029】
実施例4
1軸延伸の倍率を4.5倍にした以外は実施例1と同様にして、繊度が13500dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0030】
実施例5
フィルムのスリット幅を調整した以外は実施例2と同様にして、繊度が22000dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0031】
実施例6
ポリ乳酸95質量%と脂肪族−芳香族共重合ポリエステル5質量%を混合した以外は実施例1と同様にして、繊度が13500dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0032】
比較例1
脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを使用しなかった以外は実施例1と同様にして、繊度が13500dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0033】
比較例2
数平均分子量が3万でD%が1モル%のポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマーズ社製、ECOPLA)を使用した以外は実施例2と同様にして、繊度が13500dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0034】
比較例3
延伸倍率を15倍にした以外は実施例2と同様にして、繊度が13500dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1〜6において、引張強度に優れ、フィブリル化が認められない生分解性紐が得られた。
比較例1は、脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが配合されていないフィルムであったため、フィルムの柔軟性に劣り、フィブリル化が発生しやすかった。そのため、得られた紐の引張強度は低いものであった。
比較例2は、使用したポリ乳酸の分子量が低かったために、得られた紐の相対粘度も低く、そのため引張強度の低いものであった。
比較例3は、延伸倍率が15倍であったため、得られた紐の複屈折が高く、フィブリル化が激しく、そのため引張強度も低いものであった。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリ乳酸と脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとからなる1軸延伸フィルムをスリットし、相対粘度が1.8以上、複屈折が0.035以下、加水分解係数が0.5以下である紐は、機械特性に優れ、滑り性が格段に向上するため加工が安定し操業性にも優れ、高温多湿下での加水分解性が抑制され、また生分解性を有し、しかもフィブリル化することもない。この紐をメロン、トマト、スィートピーなどの蔓性作物をハウス栽培する場合のハウス内の吊り紐として、ナスやキュウリなどの蔓性作物を路地栽培する場合にも結束紐や蔓を這わせる紐として、また、牧草や藁の結束用として用いることにより、作物を収穫した後も作物から取り外す必要がなくそのまま廃棄すれば地中で分解するので作業性が大幅に改善される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ乳酸を主成分とする生分解性を有するポリマーを原料として製造した紐に関するものであり、優れた強力を保持し、使用中はカビや病害虫の発生がなく、しかも、廃棄した後も自然環境下に蓄積することがない紐に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、農業用としてプラスチックフィルムが多用されており、例えば施設園芸用ハウスの外張り用や内張り用、トンネルハウス用、マルチ栽培用フィルムなどとして使用されている。これらのフィルムの原料としては、主にポリ塩化ビニル系樹脂やポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂が用いられている。中でもポリ塩化ビニル系樹脂フィルムの生産量は、年間10万トンにのぼっている。しかし、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムやポリエチレン系樹脂フィルムなどのポリオレフィン系樹脂フィルムは、自然環境下では分解しないか、または分解速度が極めて遅いため、使用後放置されたり、土中に埋設処理された場合、半永久的に地上や地中に残存することになる。また、海洋投棄された場合は、景観を損なったり、海洋生物の生活環境を破壊したりする。さらに、ポリ塩化ビニル系樹脂を焼却処理した場合には、塩化水素ガスなどの有害ガスが発生し、大気を汚染するだけでなく、焼却炉の劣化を促進するなど、消費の拡大とともにその廃棄処理が社会問題となっている。
【0003】
上記のような問題を解決する手段として、農業用資材として生分解性ポリマーを用いるための研究開発が以前より行われている。特に、ポリ乳酸は強度が優れているため、これまでに種々の利用が検討されてきた(特許文献1など)。たとえば、ポリ乳酸に、やしがら、デンプンなどを混合して、マルチ栽培フィルムや植木ポットに用いることにより、使用済みのものを土中に埋設したままで分解されるため大幅に労力が削減される例が示されている(特許文献2)。
【0004】
ところで、現在、農業用分野において、メロン、トマト、ミニトマト、スイトピー、キュウリ、ナスなどの蔓性作物を栽培する場合、ハウスの天井から垂らして蔓を巻き付かせて使用する吊り紐としては、茎や果実の重量をささえるために、従来、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)製のフィルムを軽く折った紐が使用されており、一本の苗に長さ数mの紐が複数本使用されている。作物を収穫した後は、PEやPP製の吊り紐は、作物から取り外して廃棄する必要があるが、蔓が強固に吊り紐に巻き付いているため、この取り外し作業は大変な労力を必要とするといった問題がある。また、近年、特に農村部においては、ゴミの一部をコンポストで処理することが推進されており、収穫後の作物をコンポストで処理し、肥料として再利用することが進められている。このコンポスト化を推進するためには、吊り紐として生分解性ポリマーを用いることが必要であるが、従来市販されているデンプン系、石化系の生分解性フィルムは、カビが生えやすく農業用途には適していない。したがって、特に上記のような農業用途においては、生分解性を有し、かつ、機械的性能に優れ、防カビ性、耐候性を兼ね備えた紐が求められているのが実状である。
【0005】
一方、牧草や藁の結束用に、安価で機械的特性に優れたPP製の紐が現在使用されている。これらの用途に使用されたPP製紐も上記蔓性作物の農業用紐と同様、使用後の廃棄処理の問題が近年とりざたされてきている。特に、牧草用の結束紐は、牛が牧草と間違えて食し、窒息死など種々の問題を引き起こす原因の一つにもなっており、これらの紐を動物が食しても安全な生分解性ポリマーからなる紐に代替する要望が強まっている。
【0006】
このような問題を解決するために、特許文献3では、ポリ乳酸に生分解性脂肪族ポリエステルを配合した1軸延伸フィルムからなる生分解性紐が提案されている。しかしこの生分解性紐を構成する1軸延伸フィルムは、縦割れ(フィブリル化)が発生することがあり、そのために紐の強度にばらつきを生じることがあった。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−256481号公報
【特許文献2】
特開平9−275820号公報
【特許文献3】
特開2001−248028号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような問題を解決し、優れた機械特性を有し、高温多湿下での加水分解性が抑制され、生分解性を有し、防カビ性、耐候性を兼ね備え、しかも、縦割れ(フィブリル化)することがない紐を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、結晶性ポリ乳酸とガラス転移温度(Tg)が0℃以下の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとからなる紐が上記課題を解決することを見出し本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は、結晶性ポリ乳酸と、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとを主成分とし、生分解性を有する1軸延伸フィルムからなる紐であって、該紐の相対粘度が1.8以上、複屈折が0.035以下、および、50℃、95%RHにおける加水分解係数が0.5以下であることを特徴とする生分解性紐である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の生分解性紐は、結晶性ポリ乳酸及びガラス転移温度(Tg)が0℃以下の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとから構成される。結晶性ポリ乳酸にガラス転移温度(Tg)が0℃以下の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを配合することにより、紐のフィブリル化を防止したり、フィルム及び紐に、柔軟化にともなう粘りを付与するといったいわゆる高分子可塑剤的効果が得られる。ポリ乳酸と脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの配合割合は、(ポリ乳酸)/(脂肪族−芳香族共重合ポリエステル)=99/1〜75/25の範囲が好ましい。この範囲よりポリ乳酸の配合割合が少ないと、ポリ乳酸の良好な機械的特性が損なわれる。また、この範囲より脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの配合割合が少ないと、得られるフィルムにしっとり感と収束性を付与できず、フィブリル化が激しくなる。
【0011】
本発明において用いられる結晶性ポリ乳酸としては、乳酸の構造単位がL−乳酸であるポリL−乳酸、構造単位がD−乳酸であるポリD−乳酸、さらにはL−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリDL−乳酸、またはこれらの混合体が挙げられ、中でも、乳酸の構造単位の内、含有するD−乳酸が5モル%以下であり、かつ、数平均分子量が8万〜15万である結晶性ポリ乳酸が好ましい。含有するD−乳酸の割合が5モル%を超えると、出発原料として使用するポリ乳酸の結晶性が低下し、得られる紐は実用上必要な強力が得られないことがある。また、数平均分子量が8万未満では、実用上耐えうる強力が得られず、数平均分子量が15万を超えると、溶融粘度が高くなり、成形加工上問題となることがある。なお、D−乳酸は共重合されていても混合されていてもよい。
また、本発明の目的から外れない範囲でポリ乳酸に少量の共重合成分を含有していてもよく、共重合成分としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、ビスフェノールSのアルキレンオキシド付加物等のグリコール成分、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸成分が挙げられる。
【0012】
また、ポリ乳酸の分子量を増大させるために、少量の鎖長延長剤、たとえば、有機過酸化物、ビスオキサゾリン化合物、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物などを用いることができる。
【0013】
ポリ乳酸の相対粘度は、溶媒としてフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒を用い、温度20℃、濃度0.5g/dlの条件で測定した値が2.0〜2.5の範囲にあることが好ましい。また、ポリ乳酸の融点は、D−乳酸のモル比によって異なるが、140〜175℃の範囲のものが好ましい。
【0014】
本発明で使用する、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとしては、脂肪族成分および芳香族成分を有するものであればよく、たとえば、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸類、カプロラクトン、ブチロラクトン、ラクチド、グリコリド等の環状ラクトン類、エチレングリコール、ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビス−ヒドロキシメチルベンゼン、トルエンジオール等のジオール類、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸類、環状酸無水物類、オキシラン類を成分とし、脂肪族成分と芳香族成分を有する共重合体が挙げられる。脂肪族成分としてコハク酸やアジピン酸、エチレングリコールや1,4−ブタンジオールを、芳香族成分としてテレフタル酸やイソフタル酸を有する共重合ポリエステルが好ましい。また、生分解性に影響を与えない範囲で、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合等を導入することができる。これらの脂肪族−芳香族共重合ポリエステルの重合方法については特に限定されるものではないが、例えば、縮合重合法、開環重合法等が適用できる。また、重合時もしくは重合直後に他の重合体、モノマー、オリゴマー、オリゴマー成分等の1種以上の副成分を加え、さらに重合を進める方法も可能である。
【0015】
上記のように構成された脂肪族−芳香族共重合ポリエステルは、その重量平均分子量が1万以上であることが好ましく、2万〜30万の高分子量であるものがより好ましい。重量平均分子量が1万より小さいと、紐の機械的特性が劣ったものとなる。
【0016】
本発明の紐を構成する上記ポリ乳酸と脂肪族−芳香族共重合ポリエステルには、滑剤を添加することが好ましい。滑剤は、フィルム化する際の製膜性や延伸性に寄与するだけでなく、紐の滑り性の発現にも寄与することができる。ポリ乳酸のフィルムは摩擦抵抗が大きいため、紐の送りがスムーズにいかず、自動結束時の操業性を悪化させる場合がある。連続自動結束装置ではちょっとした不具合が操業性を悪化させるため、紐の摩擦抵抗を低減させる必要がある。紐の摩擦抵抗を低減させるためには、滑剤を0.1〜10%含有させることが好ましい。このような滑剤としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、タルク、炭酸カルシウムなどの無機物系滑剤、流動パラフィン、マイクロクリスタリンクワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリエチレンなどの脂肪族炭化水素系滑剤、ステアリン酸、ラウリル酸、ヒドロキシステアリン酸、硬化ひまし油などの脂肪酸系滑剤、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド系滑剤、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどの炭素数12〜30の脂肪酸金属塩である金属石鹸系滑剤、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの多価アルコールの脂肪酸(部分)エステル系滑剤、ステアリン酸ブチルエステル、モンタンワックスなどの長鎖エステルワックスなどの脂肪酸エステル系滑剤、またはこれらを複合した複合滑剤などが挙げられる。無機系滑剤と有機系滑剤の併用は更に好ましい。
【0017】
滑剤の添加方法は、マスターバッチによる添加や直接添加、あるいは、予め脂肪族−芳香族共重合ポリエステル中に0.5〜50質量%分散させてポリ乳酸に添加する方法、あるいは、これらの方法を併用することができる。特に、この両方法を併用して滑剤を添加する場合、マトリックスであるポリ乳酸中に分散した滑剤が与える滑り効果に加え、ポリ乳酸中にミクロ分散した非相容の樹脂中の滑剤がさらに滑り性を向上させるため好ましい。また、ポリ乳酸にマスターバッチや直接添加される滑剤と、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル中に分散させる滑剤とは、同種であっても異なっていてもどちらでもよい。滑剤の添加量は、得られる紐の機械的物性などを著しく損なわない範囲で添加されるが、通常、構成成分の0.1〜10質量%が好ましい。0.1質量%未満では、実質的に滑剤としての効果が現れない。また、10質量%を超えると、滑剤効果が頭打ちとなり好ましくない。
【0018】
また、本発明の紐には、発明の効果を阻害しない範囲で、紫外線防止剤、光安定剤、耐電防止剤、難燃剤、酸化防止剤、充填剤、顔料などの他の添加剤も添加できる。
【0019】
本発明の紐の相対粘度は、少なくとも1.8以上、好ましくは1.95以上であることが必要である。ここでいう相対粘度とは、溶媒としてフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(質量比1/1)の混合溶媒を用い、濃度0.5g/dl、温度20℃の条件で測定した溶液粘度をいう。紐の相対粘度が1.8に満たない場合は、ハウス内で高温多湿の状況下に晒すと、ポリ乳酸が加水分解されて、短期間で強度が低下し、メロンやトマトが十分成長する前に紐が切断したりするため好ましくない。
【0020】
本発明の紐で特に重要な特性は、紐の出発形態であるフィルムの複屈折である。複屈折は0.035以下、好ましくは0.033以下であることが必要である。ここでいう複屈折は、偏光顕微鏡を用いたレターデーション法で測定する。複屈折が0.035を超えると、配向が進んでいるためにトラバースによる紙管での巻き取り時にフラットヤーンがこすれて縦割れ(フィブリル化)を起こし、製膜時の延伸・巻き取り工程においてフィブリル化が原因で切断し、操業性が著しく悪化するため好ましくない。
【0021】
また、本発明の生分解性紐の50℃、95%RHにおける加水分解係数は0.5以下であることが必要である。加水分解係数は、50℃、95%RHの条件で6日間処理したときの相対粘度を縦軸に、処理日数を横軸にとり、プロットした直線の傾きをいう。加水分解係数が0.5より大きいと、高温下で水や肥料に毎日晒されているハウス内などにおいて、紐の強度が低下して切れてしまい、作物が落下して傷つき、作物の商品価値がなくなってしまう。すなわち、ハウス内は、通常40℃以下に保たれており、気象条件の変化でハウス内の温度が高くなったり、湿度が高くなったりすると作物が枯れてしまうために、ハウスの窓を開けて温度と湿度が調整されている。しかし、台風などにより温湿度が上がる場合は、窓を開けることができないため、温度が50℃近くまで上昇し、湿度も100%RH近くになる。したがって、紐には、このようなハウス内の環境が変化しても強度を保持することが必要であり、特に台風シーズンに大きな実をつけるメロンや生育期間の長いトマトなどを栽培する場合には、加水分解係数は0.2以下であることが好ましい。
【0022】
また、本発明の紐は、繊度が8500〜25000dtexであり、かつ、引張強度が1.5cN/dtex以上あることが好ましい。繊度が8500dtexよりも小さいと、絶対強力が不足し、延伸工程中にフィルムが引きちぎれてしまうとともに、仮に紐ができたとしても紐としての強力が低く、農作業中に切断してしまう恐れがあるため好ましくない。一方、25000dtexを超えると、撚り機の規格に合わず撚り加工できないことがある。引張強度が1.5cN/dtexよりも小さいと、成長過程の作物を支えきれないため、実用上好ましくない。フィルムの厚さや幅は上記繊度の範囲に入るように設計すれば特に限定されないが、厚みは20〜60μm、幅は30〜80mmが好ましい。
【0023】
本発明の生分解性紐の材料として用いられる、ポリ乳酸と脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとからなるフィルムを製膜する方法としては、例えば、溶融キャスト法、溶融押出法、カレンダー法などの方法を用いることができるが、工業的には溶融押出法が一般的である。溶融押出法としては、公知のTダイ法、インフレーション法などを適用することができる。押出温度は、好ましくは170〜250℃、より好ましくは、190〜230℃の範囲である。成形温度が低すぎると、製膜成形が不安定となり、高すぎると、ポリ乳酸が分解して、得られる紐の強度が低下したり、着色するなどの問題が発生し好ましくない。本発明においてフィルムは、1軸延伸することが必要である。2軸延伸フィルムから得られる紐では、分子が縦横に配向しているため、横方向に亀裂が少しでも存在すると、容易に破断し、製膜や撚り工程時の切断多発に通ずるため好ましくない。1軸延伸する際の延伸倍率は、縦方向に4〜10倍であることが好ましい。延伸倍率が低すぎると、延伸斑を生じるだけでなく、十分に満足しうる強度を有する紐が得難く、また、高すぎると分子配向して複屈折が高くなり、トラバースによる縦割れ(フィブリル化)が多発するため好ましくない。延伸温度は、用いるポリ乳酸のガラス転移温度(Tg)〜(Tg+65℃)の範囲が好ましい。延伸温度がTg未満では延伸が困難であり、Tg+65℃を超えると延伸による強度向上が認められないことがある。また、耐熱性および寸法安定性を増すために延伸後、緊張下で70℃以上、融点未満の範囲で熱処理を行ってもよい。
【0024】
本発明の生分解性紐は、上記方法等によって製造されるフィルムからなるものであるが、強度保持性に優れた紐とするために、フィルムをスリットした後に撚りをかけて表面積を小さくすることが好ましい。撚り工程は、PP製などの紐と同様の公知の方法で行えばよく、芯糸に鞘糸を巻き付ける方法などが用いられる。本発明の生分解性紐の形状は、特に限定されないが、細長いフィルムを撚り数20〜100T/Mで撚ったものが1本以上合糸された紐が好ましい。撚り数が20T/Mより少ないと、作業性が悪く、また紐の表面積が大きくなり空気中の水分に触れて加水分解速度が速くなり、高温、高湿のハウス内で劣化が促進する場合があり、撚り数が100T/Mを超えると、撚り工程でフィルムが擦過し、紐の強度が低下するだけでなく、紐が結びにくいなど、作業性が低下するので好ましくない。撚り紐は1本のフィルムで作ることもできるが、使用する作物によって、より強度が必要なときは合糸して使用すればよい。本発明の生分解性紐は、特にハウス用の農業用吊り紐に好適であるが、用途はこれに限定されるものではなく、牧草や藁用の結束紐などの結束用、あるいは梱包用など農業分野以外にも使用できる。
【0025】
【実施例】
以下、本発明について実施例、比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における紐の引張強度は、オートグラフAGS−500(島津製作所社製)を用い、チャック間距離500mm、引張りスピード300mm/minで紐を引張り、切断するまでの最大荷重である強力を紐の繊度(デシテックス)で除した値である。
【0026】
実施例1
数平均分子量が10万、D%が1モル%であるポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマーズ社製、ECOPLA)95質量%と、脂肪族−芳香族共重合ポリエステル(BASF社製、エコフレックス)を2質量%と、タルクを50質量%含有したエコフレックスを1質量%(以下、タルクを含有したエコフレックスをタルクマスターと略称する)と、エルカ酸アミドを10質量%含有したエコフレックスを2質量%(以下、エルカ酸アミドを含有したエコフレックスをエルカ酸アミドマスターと略称する)をチップ混合して、Tダイが装着された押出機を用いて、200℃で溶融混練して押出し、未延伸フィルムを作成した。この未延伸フィルムをスリットした後、110℃に加熱し、長さ方向にロール法にて7倍に1軸延伸し、40T/MでS撚りにて撚りをかけ、繊度が13500dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0027】
実施例2
ポリ乳酸90質量%、タルクマスター8質量%、及びエルカ酸アミドマスター2質量%をチップ混合し、実施例1と同様にして繊度が13500dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0028】
実施例3
ポリ乳酸82質量%、タルクマスター16質量%、及びエルカ酸アミドマスター2質量%をチップ混合し、実施例1と同様にして繊度が13500dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0029】
実施例4
1軸延伸の倍率を4.5倍にした以外は実施例1と同様にして、繊度が13500dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0030】
実施例5
フィルムのスリット幅を調整した以外は実施例2と同様にして、繊度が22000dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0031】
実施例6
ポリ乳酸95質量%と脂肪族−芳香族共重合ポリエステル5質量%を混合した以外は実施例1と同様にして、繊度が13500dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0032】
比較例1
脂肪族−芳香族共重合ポリエステルを使用しなかった以外は実施例1と同様にして、繊度が13500dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0033】
比較例2
数平均分子量が3万でD%が1モル%のポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマーズ社製、ECOPLA)を使用した以外は実施例2と同様にして、繊度が13500dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0034】
比較例3
延伸倍率を15倍にした以外は実施例2と同様にして、繊度が13500dtexの紐を得た。この紐の各種物性を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例1〜6において、引張強度に優れ、フィブリル化が認められない生分解性紐が得られた。
比較例1は、脂肪族−芳香族共重合ポリエステルが配合されていないフィルムであったため、フィルムの柔軟性に劣り、フィブリル化が発生しやすかった。そのため、得られた紐の引張強度は低いものであった。
比較例2は、使用したポリ乳酸の分子量が低かったために、得られた紐の相対粘度も低く、そのため引張強度の低いものであった。
比較例3は、延伸倍率が15倍であったため、得られた紐の複屈折が高く、フィブリル化が激しく、そのため引張強度も低いものであった。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリ乳酸と脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとからなる1軸延伸フィルムをスリットし、相対粘度が1.8以上、複屈折が0.035以下、加水分解係数が0.5以下である紐は、機械特性に優れ、滑り性が格段に向上するため加工が安定し操業性にも優れ、高温多湿下での加水分解性が抑制され、また生分解性を有し、しかもフィブリル化することもない。この紐をメロン、トマト、スィートピーなどの蔓性作物をハウス栽培する場合のハウス内の吊り紐として、ナスやキュウリなどの蔓性作物を路地栽培する場合にも結束紐や蔓を這わせる紐として、また、牧草や藁の結束用として用いることにより、作物を収穫した後も作物から取り外す必要がなくそのまま廃棄すれば地中で分解するので作業性が大幅に改善される。
Claims (4)
- 結晶性ポリ乳酸と、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の脂肪族−芳香族共重合ポリエステルとを主成分とし、生分解性を有する1軸延伸フィルムからなる紐であって、該紐の相対粘度が1.8以上、複屈折が0.035以下、および、50℃、95%RHにおける加水分解係数が0.5以下であることを特徴とする生分解性紐。
- 結晶性ポリ乳酸が、乳酸の構造単位の内、D−乳酸を5モル%以下含有し、かつ、数平均分子量が8万〜15万であることを特徴とする請求項1記載の生分解性紐。
- 滑剤を、0.1〜10質量%含有することを特徴とする請求項1または2記載の生分解性紐。
- 1軸延伸フィルムからなる紐が、該フィルムをスリットし、撚り数20〜100T/Mで撚るか、またはこれを合糸した紐であり、紐の繊度が8500〜25000dtexであり、かつ、引張強度が1.5cN/dtex以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の生分解性紐。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006076576A (ja) * | 2004-09-07 | 2006-03-23 | Unitika Ltd | ひねり包装用フィルム |
JP2008056851A (ja) * | 2006-09-01 | 2008-03-13 | Toyo Seikan Kaisha Ltd | 脂肪族ポリエステル樹脂組成物及びその製造方法 |
WO2021053529A1 (pt) * | 2019-09-16 | 2021-03-25 | Sicor-Sociedade Industrial De Cordoaria S.A | Processo para a produção de uma formulação que contém poli(ácido láctico) e poliésteres alifáticos e/ou aromáticos e produtos que a utilizam |
-
2002
- 2002-12-25 JP JP2002374505A patent/JP2004204387A/ja active Pending
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