JP3366273B2 - 生分解性紐 - Google Patents

生分解性紐

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリ乳酸を主成分
とする生分解性を有するポリマーを原料として用いて製
造した紐に関するものであり、優れた強力を保持し、使
用中はカビや病害虫の発生がなく、しかも、廃棄した後
も自然環境下に蓄積することがない紐に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年、農業用としてプラスチックフィル
ムが多用されており、例えば、施設園芸ハウスの外張り
用や内張り用、トンネルハウス用、マルチ栽培用フィル
ム等として使用されている。これらのフィルムの原料と
しては、主にポリ塩化ビニル系樹脂やポリオレフィン系
樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂が用いられている。中でも
ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムは、年間約10万トンの
生産量にのぼっている。しかし、ポリ塩化ビニル系樹脂
フィルムや、ポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系
フィルムは、自然環境下では分解しないか、または分解
速度が極めて遅いため、使用後放置されたり、土中に埋
設処理された場合、半永久的に地上や地中に残存するこ
とになる。また、海洋投棄された場合は、景観を損なっ
たり、海洋生物の生活環境を破壊したりする。さらに、
ポリ塩化ビニル系樹脂を焼却処理した場合には、塩化水
素ガス等の有害ガスが発生し、大気を汚染するだけでな
く、焼却炉の劣化を促進するなど、消費の拡大と共に廃
棄物処理が社会問題となっている。
【0003】上記のような問題を解決する手段として、
農業用資材として生分解性ポリマーを用いるための研究
開発が以前より行われており、特に、ポリ乳酸は強度が
優れているためこれまでに種々の利用が検討されてきた
(特開平6−256481号公報等)。たとえば、ポリ
乳酸に、やしがら、デンプン、脂肪族ポリエステル等を
混合して、マルチや植樹ポットに用いることにより、使
用済みのものを土中に埋設したままで分解されるため大
幅に労力が削減される例が示されている(特開平9−2
75820号公報)。また、ポリ乳酸の剛性を改良する
ために、ポリ乳酸に脂肪族ポリエステル、ポリカーボネ
ート、ポリエチレングリコール等を混ぜて、しなやかさ
を向上させることにより、肥料袋、ゴミ袋などの用途に
適用することが検討されている。
【0004】ところで、現在、農業用分野において、メ
ロン、トマト、ミニトマト、スイトピー等の蔓性作物を
栽培する場合、ハウスの天井から垂らして蔓を巻き付か
せて使用する吊紐としては、茎や果実の重量を支えるた
めに、従来、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン
(PP)のテープ状フィルムを用いた紐が使用されてお
り、一本の苗に数m×複数本の紐が使用されている。作
物を収穫した後は、PPやPE製の吊紐は、作物から取
り外して廃棄する必要があるが、蔓のとげで強固に吊紐
に巻き付いているため、この取り外し作業は大変な労力
を必要とするという問題がある。一方、近年、特に農村
部においては、ゴミの一部をコンポストで処理すること
が推進されており、収穫後の作物をコンポストで処理
し、肥料として再利用することが進められている。この
コンポスト化を推進するためには、吊紐として生分解性
ポリマーを用いることが必要であるが、従来より市販さ
れている、でん粉系、石化系の生分解性樹脂や、これら
の樹脂を含有したポリ乳酸からなるフィルムは、性能的
に強度が不十分であったり、カビが生えやすく農業用途
には適していない。したがって、特に上記のような農業
用途においては、生分解性を有し、かつ、機械的性能に
優れ、防カビ性、耐候性を兼ね備えた紐が求められてい
るのが実状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、優れた機械
特性を有し、高温多湿下での加水分解性が抑制され、し
かも、生分解性を有し、かつ、防カビ性、耐候性を兼ね
備えた紐を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するために鋭意研究した結果、ポリ乳酸系フィ
ルムからなる撚紐が優れた機械特性と防カビ性、生分解
性を有し、前記用途に最適の材料であることを見出し、
本発明に到達した。すなわち、本発明の要旨は、ポリ乳
酸が構成成分の95重量%以上の割合で混合されており
土壌分解性を有する紐であって、紐を構成する樹脂の相
対粘度が1.8以上であり、50℃、95%RHにおけ
る加水分解係数が0.05以下であり、さらに、テープ
状フィルムが撚数20〜100T/Mで撚られるか、又
はこれが合糸されていることを特徴とする生分解性紐で
ある。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明の紐を構成する樹脂は、構成成分の95重
量%以上がポリ乳酸成分であることが必要である。ポリ
乳酸成分が95重量%未満では、生分解性と紐に必要な
強度を兼ね備えることが困難であり、また、カビの発生
を招いたり、撚り特性が損なわれてフィルムを撚って撚
紐としても、撚りがほどけてしまい、その結果、表面積
が大きくなり、高温高湿のハウス内で加水分解が促進さ
れたり、結び目がほどけやすくなったりする。
【0008】本発明におけるポリ乳酸は、L−乳酸とD
−乳酸の混合物からなり、特に、D−乳酸の割合が5モ
ル%以下、好ましくは3モル%以下の共重合体あるいは
混合体からなることが好ましい。また、本発明の目的が
損なわれない範囲で少量の共重合成分を含有していても
よい。共重合成分としては、5−ナトリウムスルホイソ
フタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジ
カルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分、アジピン酸、
セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸成分、エチレングリ
コール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、
1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール
Aのアルキレンオキシド付加物、ビスフェノールSのア
ルキレンオキシド付加物等のグリコール成分、4−ヒド
ロキシ安息香酸、ε-カプロラクトン等のヒドロキシカ
ルボン酸成分が挙げられる。
【0009】本発明の生分解性紐の構成成分であるポリ
乳酸系樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲におい
て、滑剤やアンチブロッキング剤、制電剤、難燃剤、耐
光剤、防汚剤等の添加剤、艶消剤、顔料等を配合しても
差し支えない。また、柔軟性を付与する為にポリブチレ
ンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート
等の脂肪族ポリエステルを含有させてもよい。
【0010】本発明の生分解性紐の構成成分であるポリ
乳酸系樹脂の20℃におけるフェノール/四塩化エタン
=50/50混合液の0.5wt%溶液を用いて測定し
た相対粘度が1.8以上であることが必要である。相対
粘度が1.8に満たない場合は、ハウス内で高温多湿の
状況下に晒すと、ポリ乳酸が加水分解されて、短期間で
強力が劣化し、メロンやトマトが充分成長する前に吊り
ひもが切断したりするため好ましくない。
【0011】また、本発明の生分解性紐の構成成分であ
るポリ乳酸系樹脂の50℃、95%RHにおける加水分
解係数が0.05以下であることが必要である。加水分
解係数は、50℃、95%RHの条件で6日間処理した
時の相対粘度の変化を縦軸に、処理日数を横軸にとり、
プロットした直線の傾きをいう。加水分解係数が0.0
5より大きいと高温下で、水や肥料に毎日晒されるハウ
ス内等において紐の強度が劣化して切れてしまい、せっ
かく育った作物の商品価値がなくなってしまう。
【0012】すなわち、ハウス内は、通常40℃以下に
保たれており、気象条件の変化でハウス内の温度が高く
なったり、湿度が高くなったりすると作物が枯れてしま
う為に、ハウスの窓を開けて温度と湿度が調整されてい
る。しかし、台風などにより温湿度が上がる場合は、窓
を開けることができないため、温度が50℃近くまで上
昇し、湿度も100%RH近くになる。従って、吊り紐
には、このようなハウス内の環境が変化しても強度を保
持することが必要であり、特に台風シーズンに大きな実
をつけるメロンや生育期間の長いトマト等を栽培する場
合にはポリ乳酸の加水分解係数は0.02以下であるこ
とが好ましい。加水分解係数を0.05以下にするため
には、ポリ乳酸中のラクチドなどの低分子量成分の含有
量を少なくすることが有効である。
【0013】本発明の生分解性紐は、フィルムをスリッ
トしてそのまま使用してもよいが、スリットした後に撚
りをかけ、表面積を小さくすることにより、より強度保
持性に優れた紐が得られる。撚り工程は、PP等のひも
と同様の公知の方法で行えばよく、芯糸に鞘糸を巻き付
ける方法などが用いられる。本発明の生分解性紐の形状
は、特に限定されないが、細長いフィルムを撚数20〜
100T/Mで撚ったものが1本以上合糸された紐が好
ましい。撚り数が20T/Mより少ないと、作業性が悪
く、また紐の表面積が大きくなり空気中の水分に触れて
加水分解速度が速くなり、高温、高湿のハウス内で劣化
が促進する場合があり、撚り数が100T/Mを超える
と、撚り工程でフィルムが擦過し、紐の強度が低くなる
だけでなく、紐が結びにくいなど、作業性が低下するの
で好ましくない。撚り紐は一本のフィルムで作ることも
できるが、使用する作物によって、より強力が必要なと
きは合糸して使用すればよい。
【0014】フィルムの厚さや幅は特に限定されず、作
物によって紐に要求される必要な強力が異なるため、撚
紐にするときの作業性や、必要な強力を考慮して設計す
ればよい。
【0015】本発明の生分解性紐の材料として用いられ
るポリ乳酸系フィルムを製膜する方法としては、例え
ば、溶融キャスト法、溶融押出法、カレンダー法などの
方法を用いることができるが、工業的には溶融押出法が
一般的である。
【0016】溶融押出法としては、公知のTダイ法、イ
ンフレーション法等を適用することができる。押出温度
は190〜280℃、好ましくは、200〜250℃の
範囲である。押出温度が低すぎると製膜成形が不安定に
なり、高すぎるとポリ乳酸が分解して得られるフィルム
の強度が低下したり、着色するなどの問題が発生し、ま
た、加水分解係数が大きくなるため好ましくない。
【0017】本発明において、生分解性紐の材料として
用いられるポリ乳酸系フィルムは、少なくとも一軸方向
に延伸されていることが強度的に好ましく、特に、一軸
方向に延伸された一軸延伸フィルムは延伸方向の強度が
高く本発明の用途には特に好適である。一軸延伸フィル
ムの延伸倍率としては1.3〜10倍程度である。延伸
倍率が低いと、フィルムの強度が低く、また、高すぎる
と延伸時にフィルムが破れることが多くなり好ましくな
い。延伸温度は用いる乳酸系ポリマーのガラス転移点
(Tg)〜(Tg+50)℃の範囲が好ましい。延伸温
度がTg未満では延伸が困難であり、(Tg+50)℃
を超えると延伸による強度向上が認められないことがあ
る。また、フィルムの耐熱性を向上させるために延伸し
た後、緊張下で70℃以上、融点未満の温度で熱処理を
行ってもよい。
【0018】本発明の紐は、特にハウス用の農作物の吊
り紐に好適であるが、用途はこれに限定されるものでは
なく、木、野菜、花などの結束用紐はもちろん、農業分
野以外の結束用紐、梱包用紐などの種々の用途に使用で
きる。
【0019】
【実施例】次に、実施例によって本発明を具体的に説明
する。
【0020】実施例1〜2 D%が1mol%、残留ラクチドが0.18%のポリ乳
酸(カーギル社製ECOPLA4030D)98重量
部、ポリブチレンサクシネート(昭和高分子社製ビオノ
ーレ1903)2重量部をチップ混合して、押出機を用
いて、温度180℃でTダイより溶融押出し、厚さ70
μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを1
00mm幅にスリットした後、温度90℃に加熱し、長
さ方向にロール法にて4.5倍延伸し、厚み30μm、
幅50mmの一軸延伸フィルムを得た。このフィルムを
それぞれ表1に示した撚り数(T/M:紐1mあたりの
撚り数)で撚った後、表1に示した本数で合撚し、紐を
作成した。得られた紐の相対粘度、50℃、95%RH
の条件で6日間処理して測定した加水分解係数および強
力を測定した結果を表1に示した。次に、得られた紐2
0本をメロンの吊り紐として、夏期8月から10月まで
ハウス内で使用した結果、黴などの発生はなく、切断す
ることも無かった。
【0021】実施例3〜4、比較例1 ポリ乳酸とビオノーレの混合割合を変更した以外は、実
施例1と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られ
たフィルムを、表1に記載した撚数で各々撚り、表1に
記載した本数で各々合撚し、紐を作成した。得られた紐
の上記の特性値を表1に示した。
【0022】実施例5、比較例2 分子量の小さいポリ乳酸を用いた以外は、実施例1と同
様にして、相対粘度の異なる一軸延伸フィルムを得た。
得られたフィルムを、表1に記載した撚数で各々撚り、
表1に記載した本数で各々合撚し、紐を作成した。得ら
れた紐の特性およびハウステストの結果を表1に示す。
【0023】実施例6〜7、比較例3 D%の異なるポリ乳酸を用いた以外は、実施例1と同様
にして、一軸延伸フィルムを得た。得られたフィルム
を、表1に記載した撚数で各々撚り、表1に記載した本
数で各々合撚し、紐を作成した。得られた紐の上記の特
性値を表1に示した。
【0024】実施例8 ビオノーレ1903の代わりにビオノーレ3020を用
いた以外は、実施例1と同様にして、一軸延伸フィルム
を得た。得られたフィルムを、表1に記載した撚数で各
々撚り、表1に記載した本数で各々合撚し、紐を作成し
た。得られた紐の上記の特性値を表1に示した。
【0025】比較例4 残留ラクチドが0.38%のポリ乳酸を用いた以外は、
実施例1と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得ら
れたフィルムを、表1に記載した撚数で各々撚り、表1
に記載した本数で各々合撚し、紐を作成した。得られた
紐の上記の特性値を表1に示した。
【0026】比較例5 ビオノーレ1903の代わりにでんぷん系樹脂を10重
量%混合した以外は、実施例1と同様にして、一軸延伸
フィルムを得た。得られたフィルムを、表1に記載した
撚数で各々撚り、表1に記載した本数で各々合撚し、紐
を作成した。得られた紐の上記の特性値を表1に示し
た。
【0027】
【表1】
【0028】
【効果】本発明によれば、優れた機械特性を有し、高温
多湿下での加水分解性が抑制され、しかも生分解性を有
する紐が提供される。この紐をメロン、トマト、ミニト
マト、スイトピー等の蔓性作物を栽培する場合のハウス
内の吊紐として用いることにより、作物を収穫した後も
作物から取り外す必要がなく、そのまま廃棄すれば地中
で分解するので作業性が大幅に改善される。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリ乳酸が構成成分の95重量%以上の
    割合で混合されており土壌分解性を有する紐であって、
    紐を構成する樹脂の相対粘度が1.8以上であり、50
    ℃、95%RHにおける加水分解係数が0.05以下で
    り、さらに、テープ状フィルムが撚数20〜100T
    /Mで撚られるか、又はこれが合糸されていることを特
    徴とする生分解性紐。
  2. 【請求項2】 50℃、95%RHにおける加水分解係
    数が0.02以下であることを特徴とする請求項1記載
    の生分解性紐。
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