JP2004203837A - ジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アミノ酸を含有するジアミン・ジカルボン酸塩水溶液からアミノ酸とジアミン・ジカルボン酸塩を分離する。
【解決手段】アミノ酸を含有するジアミン・ジカルボン酸塩水溶液を、濃縮し有機溶媒を添加することでジアミン・ジカルボン酸塩を選択的に有機溶媒中に溶解させることで、その有機溶媒からジアミン・ジカルボン酸塩を晶析操作することで解決される。
【選択図】なし
【解決手段】アミノ酸を含有するジアミン・ジカルボン酸塩水溶液を、濃縮し有機溶媒を添加することでジアミン・ジカルボン酸塩を選択的に有機溶媒中に溶解させることで、その有機溶媒からジアミン・ジカルボン酸塩を晶析操作することで解決される。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法に関するものであり、ジアミン・ジカルボン酸塩は、ポリアミド原料として有用である。
【0002】
ポリアミドは、樹脂、繊維およびフィルム等広い用途で使用されている重要な工業材料である。
【0003】
【従来の技術】
従来ポリアミドは、原料であるフリーのジアミンおよびフリーのジカルボン酸を、各々を精製した後、等モル混合し重合反応を行い製造していた。従来のジアミンおよびジカルボン酸は石油由来の原料を用いるため、溶媒を特に用いることなくフリーのジアミンおよびジカルボン酸が得られた(非特許文献1参照)。そのため水溶液からのジアミン・ジカルボン酸の晶析を検討する必要はなかった。
【0004】
しかし、発酵または酵素法によりポリアミド原料を製造するためには、溶媒として水を使うことが一般的であり、また発酵または酵素法を行うためにはpHの調整が一般的に必要である。そのため中和に無機化合物が一般的に用いられ、その無機塩としてジアミンまたはジカルボン酸が晶析されている。例えば、ジカルボン酸であるコハク酸の発酵による製法などでは、コハク酸カルシウムとして晶析し精製している(特許文献1参照)。
【0005】
また、発酵による副生成物としてアミノ酸が含まれることが一般的である。
【0006】
【非特許文献1】
向山光昭著「工業有機化学」東京化学同人,第4版,東京化学同人,p.270−273,275−281
【0007】
【特許文献1】
特開昭62−294090号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、発酵または酵素法により製造されたカルシウムイオンなどの塩として晶析されたジカルボン酸または塩酸などの塩として晶析されたジアミンでは解塩操作が必要になり、副生成物が発生しその処理問題があった。
【0009】
ジアミン・ジカルボン酸塩およびアミノ酸は共に水への溶解度は高く、水溶液から直接ジアミン・ジカルボン酸塩のみを晶析する事ができない。
【0010】
またポリアミドに重合する際にジアミン・ジカルボン酸塩中にアミノ酸が含まれていると、アミノ酸が重合されポリマーの分岐を起こしたり、ポリマーの結晶化度を低下させたりする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は、「アミノ酸と、官能基としては2つのアミノ基のみを有する脂肪族および/または芳香族のジアミンと、官能基としては2つのカルボキシル基のみを有する脂肪族および/または芳香族のジカルボン酸を含む水溶液から、ジアミン・ジカルボン酸塩を晶析させる際に、有機溶媒を添加することを特徴とするジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。」である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明で使用する、官能基としては2つのアミノ基のみを有する脂肪族または芳香族のジアミンとは、前記2つのアミノ基以外には、実質上、官能基が存在しないものである。ここでいう官能基とは、ポリアミド重合反応(反応条件としては、例えば、反応温度250〜270℃、圧力10から20kg/cm2で反応時間1から5時間)の際にアミノ基やカルボキシル基と反応して、ポリマーの分岐を引き起こしたり、ポリマー結晶化度を低下(結晶化度80%以下)させるような基を指す。例えばアミノ基やカルボキシル基がこれに該当するが、それ以外には、酸性基(スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等)や塩基性基(ヒドラジノ基)やプロトニックな極性基(水酸基等)や開裂性を有する基(エポシキ基、過酸化基等)やその他反応性の高い基(イソシアナート基等)が該当することが多い。一方、ハロゲン置換基や芳香族性置換基は比較的安定であり、エーテル、エステル、アミド等も安定であり、官能性が低い場合が多い。
【0015】
本発明で使用する、官能基としては2つのアミノ基のみを有する脂肪族または芳香族のジアミンに特に制限はない。好ましくは以下一般式(1)、(2)または(3)で示されたジアミンである。
H2N−(CH2)m−NH2 (1)
(但し、一般式(1)において、m=1〜16)
【0016】
【化5】
【0017】
【化6】
【0018】
(但し、一般式(2)、(3)において、n,o,p,q=0〜6)
更に好ましくは、一般式(1)において、
m=2〜9
、および/または、該一般式(2)および/または(3)において、
n,o,p,q=0〜2
である。
【0019】
例えばジアミンの具体的例として、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミンまたはメタキシレンジアミン等が挙げられる。
【0020】
本発明において、ジアミンとして、以上の通りのものが選択されると工業利用されているポリアミドが製造できるため好ましいのである。
【0021】
本発明で使用する、官能基としては2つのカルボキシル基のみを有する脂肪族または芳香族のジカルボン酸とは、前記2つのカルボキシル基以外には、実質上、官能基が存在しないものである。ここでいう官能基とは、ポリアミド重合反応(反応条件としては、例えば、反応温度250〜270℃、圧力10から20kg/cm2で反応時間1から5時間)の際にアミノ基やカルボキシル基等と反応して、ポリマーの分岐を引き起こしたり、ポリマーの結晶化度を低下(結晶化度80%以下)させるような基を指す。例えばアミノ基やカルボキシル基がこれに該当するが、それ以外には、酸性基(スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等)や塩基性基(ヒドラジノ基)やプロトニックな極性基(水酸基等)や開裂性を有する基(エポシキ基、過酸化基等)やその他反応性の高い基(イソシアナート基等)が該当することが多い。一方、ハロゲン置換基や芳香族性置換基は比較的安定であり、エーテル、エステル、アミド等も安定であり、官能性が低い場合が多い。
【0022】
本発明で使用する官能基として2つのカルボキシル基のみを有する脂肪族または芳香族のジカルボン酸に特に制限はない。好ましくは、以下一般式(4)、(5)または(6)で示されたジカルボン酸である。
HOOC−(CH2)r−COOH (4)
(但し、一般式(4)において、r=0〜16)
【0023】
【化7】
【0024】
【化8】
【0025】
(但し、一般式(5)、(6)において、s,t,u,v=0〜2)
更に好ましくは一般式(4)において、
r=0〜10
、および/または、該一般式(5)および/または(6)において、
s,t,u,v=0〜1
である。
【0026】
例えばジカルボン酸の具体的例として、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、コハク酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。
【0027】
なお、前記ジアミン又はジカルボン酸はそれぞれ、単種類で用いることが好ましい。ジアミン又はジカルボン酸が複数種類の混合物であると晶出が困難となり、化学純度の管理が複雑になる恐れがあるからである。
【0028】
本発明において、ジカルボン酸として、以上の通りのものが選択されると工業利用されているポリアミドが製造できるため好ましいのである。
【0029】
晶析操作前に水溶液中のジアミンとジカルボン酸を等モルに調整することが好ましい。更に好ましくはジカルボン酸を過剰(ジアミン:ジカルボン酸=1:1.1〜1.5[モル比]に加える方がよい。
【0030】
本発明の精製方法は、ジアミン・ジカルボン酸塩を含む水溶液に、不純物としてアミノ酸が含まれている場合の精製に特に有効に本発明の効果を発揮するものである。含まれているアミノ酸に特に制限はない。好ましくは、非電荷・極性アミノ酸(グリシン、L−セリン、L−トレオニン、L−システイン、L−チロシン、L−アスパラギンおよびL−グルタミン)、酸性アミノ酸(L−アスパラギン酸およびL−グルタミン酸)および塩基性アミノ酸(L−リジン、L−アルギニンおよびL−ヒスチジン)のいずれかが含まれている場合の精製に特に有効である。更に好ましくは、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸およびL−リジンのいずれかが含まれている場合である。本発明において、水溶液中に含まれるアミノ酸濃度は、好適には0.01から1重量%である。
【0031】
本発明で使用する官能基として2つのアミノ基のみを有する脂肪族または芳香族のジアミンと、官能基として2つのカルボキシル基のみを有する脂肪族または芳香族のジカルボン酸塩水溶液は、特に限定されない。例えば、官能基として2つのカルボキシル基のみを有する脂肪族または芳香族のジカルボン酸酸を生産することのできる微生物を、官能基として2つのアミノ基のみを有する脂肪族または芳香族のジアミンで中和しながら培養した液体培養液および固体培養物を熱水抽出した固体培養抽出水溶液などが好ましい。液体培養液を用いる場合は菌体を除去した方が好ましい。培養液中の金属イオンや低分子の陰イオン濃度は低い方が好ましい。
【0032】
また、脱色のために活性炭処理を行っても良い。活性炭処理を行う溶液のpHは特に限定されないが、中性付近で行うのが効率的であり好ましい。
【0033】
晶析を効率的に行うために、および釜効率を良くするためにジアミン・ジカルボン酸塩を含む水溶液中におけるジアミン・ジカルボン酸塩濃度は、好ましくは60(より好ましくは80)重量%以上である。その為ジアミン・ジカルボン酸塩を含む水溶液は濃縮するのが好ましい。濃縮の程度は、無機塩およびジアミン・ジカルボン酸塩が結晶として析出しない程度が好ましい。水溶液中のジアミン・ジカルボン酸塩濃度、その他の塩濃度によって濃縮の程度は変わるが、重量基準で1/4〜1/30まで濃縮するのが好ましく、1/10から1/20まで濃縮するのがより好ましい。
【0034】
濃縮方法は常圧濃縮、減圧濃縮のいずれでもよいが、濃縮時の液温は通常、水の沸点以下で行われる。かかる液温とするとジアミン・ジカルボン酸塩が分解する恐れがない。
【0035】
本発明で、晶析母液に添加する有機溶媒は、アルコール類、ケトン類またはニトリル類が好ましい。更に好ましくは、炭素数6以下の脂肪族アルコール類、炭素数6以下の脂肪族ケトン類または炭素数6以下の脂肪族ニトリル類である。
【0036】
例えば有機溶媒の具体的例として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、イソプロパノール、アセトニトリルまたはアセトン等が挙げられる。
【0037】
その他、有機溶媒は単独である必要はなく、混合溶媒で有っても良い。例えば、エタノール・アセトン混合液等が挙げられる。
【0038】
本発明で用いる有機溶媒量は特に限定されないが、有機溶媒が添加される際のジアミン・ジカルボン酸塩を含む水溶液の重量に対して通常0.1〜5倍、本発明を特に効果的に実施するためには0.3〜2倍が使用される。あるいは、ジアミン・ジカルボン酸塩重量に対して、好ましくは1から10(より好ましくは3〜7)倍である。ジアミン・ジカルボン酸塩を含む水溶液と有機溶媒との接触方法は任意であり、バッチ法であっても連続法であってもよい。
【0039】
次いで、好ましくは濃縮工程で濃縮された、ジアミン・ジカルボン酸塩水溶液に有機溶媒を添加し、析出した結晶を遠心分離などの通常の固液分離の方法によって取り除き、この濾液である有機溶媒溶液からジアミン・ジカルボン酸塩を通常の晶析分離操作によりジアミン・ジカルボン酸塩を単離する。例えば、この有機溶媒溶液をそのまま冷却してジアミン・ジカルボン酸塩を晶析した後、結晶を遠心分離などの通常の固液分離の方法によって単離すると高純度のジアミン・ジカルボン酸塩を得ることができる。このようにして、製造されたジアミン・ジカルボン酸塩は、ジアミン1分子とジカルボン酸1分子よりなる塩であると考えて良いが、何等他の形態を排除するものでもなく、例えばジアミン2分子とカルボン酸2分子より形成された塩等が含まれていても良い。
【0040】
晶析行程でジアミン・ジカルボン酸塩から分離された有機溶媒は晶析操作にリサイクルすることが好ましい。
【0041】
かくして単離したジアミン・ジカルボン酸塩は、必要に応じて、再度既知の晶析精製方法で、つまり、有機溶媒で均一溶液とした後、その均一液を冷却したり、熱時ろ過したろ液を冷却したりしてジアミン・ジカルボン酸塩を結晶化させ、高純度品にできる。こうして得られたジアミン・ジカルボン酸塩がポリアミド原料として利用できる。
【0042】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0043】
[ヘキサメチレンジアミン、1,5−ペンタンジアミンおよび各種アミノ酸濃度のHPLCによる分析方法]
使用カラム:CAPCELL PAK C18(資生堂)
移動相:0.1重量%H3PO4水溶液:アセトニトリル=4.5:5.5
検出:UV360nm
サンプル前処理:分析サンプル25μlに内標として1,4−ジアミノブタン(0.03M)を25μl、炭酸水素ナトリウム(0.075M)を150μlおよび2,4−ジニトロフルオロベンゼン(0.2M)のエタノール溶液を添加混合し37℃で1時間保温する。上記反応溶液50μlを1mlアセトニトリルに溶解後、10,000rpmで5分間遠心した後の10μlをHPLC分析した。
【0044】
[コハク酸およびアジピン酸濃度のHPLCによる分析方法]
使用カラム:SCR−101H(島津製作所)
移動相:0.025重量%硫酸水溶液
検出:UV214nm
サンプル前処理:分析サンプルを、検量線が直線性を有することができる範囲内の濃度となるように、水で希釈し、10μlをHPLC分析した。
【0045】
比較例1(1,5−ペンタンジアミン、アジピン酸の有機溶媒を添加しない晶析)
10.2gの1,5−ペンタンジアミン、14.6gのアジピン酸および次のアミノ酸をそれぞれ0.73g(L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−リジン)を水500gに溶解させた。この水溶液を1L3つ口フラスコ内で100℃に加熱することにより水を留去した。スラリーの粘度が上昇し攪拌操作性が悪化し始めたところで濃縮を終了した(スラリー重量:30.5g)。徐々に室温まで冷却し、晶析、固液分離、乾燥して1,5−ペンタンジアミン・アジピン酸の等モル塩である結晶10.9gを得た。仕込み1,5−ペンタンジアミン・アジピン酸基準の1,5−ペンタンジアミン・アジピン酸塩単離収率は44%であった。この結晶の化学純度は87.6重量%であった。この結晶中にL−アスパラギン酸が0.43g、L−リジンが0.53g、L−グルタミン酸が0.58g含有されていた。
【0046】
実施例1(1,5−ペンタンジアミン、アジピン酸の晶析)
10.2gの1,5−ペンタンジアミン、14.6gのアジピン酸および次のアミノ酸をそれぞれ0.73g(L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−リジン)を水500gに溶解させた。この水溶液を1L3つ口フラスコ内で減圧下で水を留去した。スラリーの粘度が上昇し攪拌操作性が悪化し始めたところで濃縮を終了した(スラリー重量:46.5g)。素早く80gのエタノールを加え、65℃まで加熱し溶解させた。溶解せずに析出した結晶をろ過により固液分離した。その後均一に溶解した溶媒を徐々に冷却し、晶析、固液分離、乾燥して1,5−ペンタンジアミン・アジピン酸の等モル塩である結晶18.9gを得た。仕込み1,5−ペンタンジアミン・アジピン酸基準の1,5−ペンタンジアミン・アジピン酸塩単離収率は76%であった。この結晶の化学純度は99.6重量%であった。この結晶中にL−アスパラギン酸が0.029g、L−リジンが0.026g、L−グルタミン酸が0.021g含有されていた。
【0047】
比較例1に比べ化学純度の高いジアミン・ジカルボン酸塩が得られた。
【0048】
実施例2(1,5−ペンタンジアミン、コハク酸の晶析)
10.2gの1,5−ペンタンジアミン、11.8gのコハク酸および次のアミノ酸をそれぞれ0.73g(L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−リジン)を水500gに溶解させた。この水溶液を1L3つ口フラスコ内で減圧下で水を留去した。スラリーの粘度が上昇し攪拌操作性が悪化し始めたところで濃縮を終了した(スラリー重量:43.8g)。素早く80gのエタノールを加え、65℃まで加熱し溶解させた。溶解せずに析出した結晶をろ過により固液分離した。その後均一に溶解した溶媒を徐々に冷却し、晶析、固液分離、乾燥して1,5−ペンタンジアミン・コハク酸の等モル塩である結晶15.4gを得た。仕込み1,5−ペンタンジアミン・コハク酸基準の1,5−ペンタンジアミン・コハク酸塩単離収率は70%であった。この結晶の化学純度は99.4重量%であった。この結晶中にL−アスパラギン酸が0.032g、L−リジンが0.039g、L−グルタミン酸が0.022g含有されていた。
【0049】
ジカルボン酸成分としてアジピン酸に代えて、コハク酸について実施例1に記載と同様の条件にて実施したところ、化学純度は99.4重量%となった。
【0050】
実施例3(ヘキサメチレンジアミン・コハク酸塩の晶析)
11.6gのヘキサメチレンジアミン、11.8gのコハク酸および次のアミノ酸をそれぞれ0.73g(L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−リジン)を水500gに溶解させた。 この水溶液を1L3つ口フラスコ内で減圧下で水を留去した。スラリーの粘度が上昇し攪拌操作性が悪化し始めたところで濃縮を終了した(スラリー重量:44.5g)。素早く80gのエタノールを加え、65℃まで加熱し溶解させた。溶解せず析出した結晶をろ過により固液分離した。その後均一に溶解した溶媒を徐々に冷却し、晶析、固液分離、乾燥してヘキサメチレンジアミン・コハク酸の等モル塩である結晶19.2gを得た。仕込みヘキサメチレンジアミン・コハク酸基準のヘキサメチレンジアミン・コハク酸塩単離収率は82%であった。この結晶の化学純度は99.5重量%であった。この結晶中にL−アスパラギン酸が0.032g、L−リジンが0.033g、L−グルタミン酸が0.031g含有されていた。
【0051】
ジアミン成分として1,5−ペンタンジアミンに代えて、ヘキサメチレンジアミンについて実施例2に記載と同様の条件にて実施したところ、化学純度は99.5重量%となった。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、アミノ酸を含有するジアミン・ジカルボン酸塩水溶液からジアミン・ジカルボン酸塩とアミノ酸を分離できる。
【発明の属する技術分野】
本発明はジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法に関するものであり、ジアミン・ジカルボン酸塩は、ポリアミド原料として有用である。
【0002】
ポリアミドは、樹脂、繊維およびフィルム等広い用途で使用されている重要な工業材料である。
【0003】
【従来の技術】
従来ポリアミドは、原料であるフリーのジアミンおよびフリーのジカルボン酸を、各々を精製した後、等モル混合し重合反応を行い製造していた。従来のジアミンおよびジカルボン酸は石油由来の原料を用いるため、溶媒を特に用いることなくフリーのジアミンおよびジカルボン酸が得られた(非特許文献1参照)。そのため水溶液からのジアミン・ジカルボン酸の晶析を検討する必要はなかった。
【0004】
しかし、発酵または酵素法によりポリアミド原料を製造するためには、溶媒として水を使うことが一般的であり、また発酵または酵素法を行うためにはpHの調整が一般的に必要である。そのため中和に無機化合物が一般的に用いられ、その無機塩としてジアミンまたはジカルボン酸が晶析されている。例えば、ジカルボン酸であるコハク酸の発酵による製法などでは、コハク酸カルシウムとして晶析し精製している(特許文献1参照)。
【0005】
また、発酵による副生成物としてアミノ酸が含まれることが一般的である。
【0006】
【非特許文献1】
向山光昭著「工業有機化学」東京化学同人,第4版,東京化学同人,p.270−273,275−281
【0007】
【特許文献1】
特開昭62−294090号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、発酵または酵素法により製造されたカルシウムイオンなどの塩として晶析されたジカルボン酸または塩酸などの塩として晶析されたジアミンでは解塩操作が必要になり、副生成物が発生しその処理問題があった。
【0009】
ジアミン・ジカルボン酸塩およびアミノ酸は共に水への溶解度は高く、水溶液から直接ジアミン・ジカルボン酸塩のみを晶析する事ができない。
【0010】
またポリアミドに重合する際にジアミン・ジカルボン酸塩中にアミノ酸が含まれていると、アミノ酸が重合されポリマーの分岐を起こしたり、ポリマーの結晶化度を低下させたりする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は、「アミノ酸と、官能基としては2つのアミノ基のみを有する脂肪族および/または芳香族のジアミンと、官能基としては2つのカルボキシル基のみを有する脂肪族および/または芳香族のジカルボン酸を含む水溶液から、ジアミン・ジカルボン酸塩を晶析させる際に、有機溶媒を添加することを特徴とするジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。」である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明で使用する、官能基としては2つのアミノ基のみを有する脂肪族または芳香族のジアミンとは、前記2つのアミノ基以外には、実質上、官能基が存在しないものである。ここでいう官能基とは、ポリアミド重合反応(反応条件としては、例えば、反応温度250〜270℃、圧力10から20kg/cm2で反応時間1から5時間)の際にアミノ基やカルボキシル基と反応して、ポリマーの分岐を引き起こしたり、ポリマー結晶化度を低下(結晶化度80%以下)させるような基を指す。例えばアミノ基やカルボキシル基がこれに該当するが、それ以外には、酸性基(スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等)や塩基性基(ヒドラジノ基)やプロトニックな極性基(水酸基等)や開裂性を有する基(エポシキ基、過酸化基等)やその他反応性の高い基(イソシアナート基等)が該当することが多い。一方、ハロゲン置換基や芳香族性置換基は比較的安定であり、エーテル、エステル、アミド等も安定であり、官能性が低い場合が多い。
【0015】
本発明で使用する、官能基としては2つのアミノ基のみを有する脂肪族または芳香族のジアミンに特に制限はない。好ましくは以下一般式(1)、(2)または(3)で示されたジアミンである。
H2N−(CH2)m−NH2 (1)
(但し、一般式(1)において、m=1〜16)
【0016】
【化5】
【0017】
【化6】
【0018】
(但し、一般式(2)、(3)において、n,o,p,q=0〜6)
更に好ましくは、一般式(1)において、
m=2〜9
、および/または、該一般式(2)および/または(3)において、
n,o,p,q=0〜2
である。
【0019】
例えばジアミンの具体的例として、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミンまたはメタキシレンジアミン等が挙げられる。
【0020】
本発明において、ジアミンとして、以上の通りのものが選択されると工業利用されているポリアミドが製造できるため好ましいのである。
【0021】
本発明で使用する、官能基としては2つのカルボキシル基のみを有する脂肪族または芳香族のジカルボン酸とは、前記2つのカルボキシル基以外には、実質上、官能基が存在しないものである。ここでいう官能基とは、ポリアミド重合反応(反応条件としては、例えば、反応温度250〜270℃、圧力10から20kg/cm2で反応時間1から5時間)の際にアミノ基やカルボキシル基等と反応して、ポリマーの分岐を引き起こしたり、ポリマーの結晶化度を低下(結晶化度80%以下)させるような基を指す。例えばアミノ基やカルボキシル基がこれに該当するが、それ以外には、酸性基(スルホン酸基、リン酸基、フェノール性水酸基等)や塩基性基(ヒドラジノ基)やプロトニックな極性基(水酸基等)や開裂性を有する基(エポシキ基、過酸化基等)やその他反応性の高い基(イソシアナート基等)が該当することが多い。一方、ハロゲン置換基や芳香族性置換基は比較的安定であり、エーテル、エステル、アミド等も安定であり、官能性が低い場合が多い。
【0022】
本発明で使用する官能基として2つのカルボキシル基のみを有する脂肪族または芳香族のジカルボン酸に特に制限はない。好ましくは、以下一般式(4)、(5)または(6)で示されたジカルボン酸である。
HOOC−(CH2)r−COOH (4)
(但し、一般式(4)において、r=0〜16)
【0023】
【化7】
【0024】
【化8】
【0025】
(但し、一般式(5)、(6)において、s,t,u,v=0〜2)
更に好ましくは一般式(4)において、
r=0〜10
、および/または、該一般式(5)および/または(6)において、
s,t,u,v=0〜1
である。
【0026】
例えばジカルボン酸の具体的例として、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、コハク酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。
【0027】
なお、前記ジアミン又はジカルボン酸はそれぞれ、単種類で用いることが好ましい。ジアミン又はジカルボン酸が複数種類の混合物であると晶出が困難となり、化学純度の管理が複雑になる恐れがあるからである。
【0028】
本発明において、ジカルボン酸として、以上の通りのものが選択されると工業利用されているポリアミドが製造できるため好ましいのである。
【0029】
晶析操作前に水溶液中のジアミンとジカルボン酸を等モルに調整することが好ましい。更に好ましくはジカルボン酸を過剰(ジアミン:ジカルボン酸=1:1.1〜1.5[モル比]に加える方がよい。
【0030】
本発明の精製方法は、ジアミン・ジカルボン酸塩を含む水溶液に、不純物としてアミノ酸が含まれている場合の精製に特に有効に本発明の効果を発揮するものである。含まれているアミノ酸に特に制限はない。好ましくは、非電荷・極性アミノ酸(グリシン、L−セリン、L−トレオニン、L−システイン、L−チロシン、L−アスパラギンおよびL−グルタミン)、酸性アミノ酸(L−アスパラギン酸およびL−グルタミン酸)および塩基性アミノ酸(L−リジン、L−アルギニンおよびL−ヒスチジン)のいずれかが含まれている場合の精製に特に有効である。更に好ましくは、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸およびL−リジンのいずれかが含まれている場合である。本発明において、水溶液中に含まれるアミノ酸濃度は、好適には0.01から1重量%である。
【0031】
本発明で使用する官能基として2つのアミノ基のみを有する脂肪族または芳香族のジアミンと、官能基として2つのカルボキシル基のみを有する脂肪族または芳香族のジカルボン酸塩水溶液は、特に限定されない。例えば、官能基として2つのカルボキシル基のみを有する脂肪族または芳香族のジカルボン酸酸を生産することのできる微生物を、官能基として2つのアミノ基のみを有する脂肪族または芳香族のジアミンで中和しながら培養した液体培養液および固体培養物を熱水抽出した固体培養抽出水溶液などが好ましい。液体培養液を用いる場合は菌体を除去した方が好ましい。培養液中の金属イオンや低分子の陰イオン濃度は低い方が好ましい。
【0032】
また、脱色のために活性炭処理を行っても良い。活性炭処理を行う溶液のpHは特に限定されないが、中性付近で行うのが効率的であり好ましい。
【0033】
晶析を効率的に行うために、および釜効率を良くするためにジアミン・ジカルボン酸塩を含む水溶液中におけるジアミン・ジカルボン酸塩濃度は、好ましくは60(より好ましくは80)重量%以上である。その為ジアミン・ジカルボン酸塩を含む水溶液は濃縮するのが好ましい。濃縮の程度は、無機塩およびジアミン・ジカルボン酸塩が結晶として析出しない程度が好ましい。水溶液中のジアミン・ジカルボン酸塩濃度、その他の塩濃度によって濃縮の程度は変わるが、重量基準で1/4〜1/30まで濃縮するのが好ましく、1/10から1/20まで濃縮するのがより好ましい。
【0034】
濃縮方法は常圧濃縮、減圧濃縮のいずれでもよいが、濃縮時の液温は通常、水の沸点以下で行われる。かかる液温とするとジアミン・ジカルボン酸塩が分解する恐れがない。
【0035】
本発明で、晶析母液に添加する有機溶媒は、アルコール類、ケトン類またはニトリル類が好ましい。更に好ましくは、炭素数6以下の脂肪族アルコール類、炭素数6以下の脂肪族ケトン類または炭素数6以下の脂肪族ニトリル類である。
【0036】
例えば有機溶媒の具体的例として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、イソプロパノール、アセトニトリルまたはアセトン等が挙げられる。
【0037】
その他、有機溶媒は単独である必要はなく、混合溶媒で有っても良い。例えば、エタノール・アセトン混合液等が挙げられる。
【0038】
本発明で用いる有機溶媒量は特に限定されないが、有機溶媒が添加される際のジアミン・ジカルボン酸塩を含む水溶液の重量に対して通常0.1〜5倍、本発明を特に効果的に実施するためには0.3〜2倍が使用される。あるいは、ジアミン・ジカルボン酸塩重量に対して、好ましくは1から10(より好ましくは3〜7)倍である。ジアミン・ジカルボン酸塩を含む水溶液と有機溶媒との接触方法は任意であり、バッチ法であっても連続法であってもよい。
【0039】
次いで、好ましくは濃縮工程で濃縮された、ジアミン・ジカルボン酸塩水溶液に有機溶媒を添加し、析出した結晶を遠心分離などの通常の固液分離の方法によって取り除き、この濾液である有機溶媒溶液からジアミン・ジカルボン酸塩を通常の晶析分離操作によりジアミン・ジカルボン酸塩を単離する。例えば、この有機溶媒溶液をそのまま冷却してジアミン・ジカルボン酸塩を晶析した後、結晶を遠心分離などの通常の固液分離の方法によって単離すると高純度のジアミン・ジカルボン酸塩を得ることができる。このようにして、製造されたジアミン・ジカルボン酸塩は、ジアミン1分子とジカルボン酸1分子よりなる塩であると考えて良いが、何等他の形態を排除するものでもなく、例えばジアミン2分子とカルボン酸2分子より形成された塩等が含まれていても良い。
【0040】
晶析行程でジアミン・ジカルボン酸塩から分離された有機溶媒は晶析操作にリサイクルすることが好ましい。
【0041】
かくして単離したジアミン・ジカルボン酸塩は、必要に応じて、再度既知の晶析精製方法で、つまり、有機溶媒で均一溶液とした後、その均一液を冷却したり、熱時ろ過したろ液を冷却したりしてジアミン・ジカルボン酸塩を結晶化させ、高純度品にできる。こうして得られたジアミン・ジカルボン酸塩がポリアミド原料として利用できる。
【0042】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
【0043】
[ヘキサメチレンジアミン、1,5−ペンタンジアミンおよび各種アミノ酸濃度のHPLCによる分析方法]
使用カラム:CAPCELL PAK C18(資生堂)
移動相:0.1重量%H3PO4水溶液:アセトニトリル=4.5:5.5
検出:UV360nm
サンプル前処理:分析サンプル25μlに内標として1,4−ジアミノブタン(0.03M)を25μl、炭酸水素ナトリウム(0.075M)を150μlおよび2,4−ジニトロフルオロベンゼン(0.2M)のエタノール溶液を添加混合し37℃で1時間保温する。上記反応溶液50μlを1mlアセトニトリルに溶解後、10,000rpmで5分間遠心した後の10μlをHPLC分析した。
【0044】
[コハク酸およびアジピン酸濃度のHPLCによる分析方法]
使用カラム:SCR−101H(島津製作所)
移動相:0.025重量%硫酸水溶液
検出:UV214nm
サンプル前処理:分析サンプルを、検量線が直線性を有することができる範囲内の濃度となるように、水で希釈し、10μlをHPLC分析した。
【0045】
比較例1(1,5−ペンタンジアミン、アジピン酸の有機溶媒を添加しない晶析)
10.2gの1,5−ペンタンジアミン、14.6gのアジピン酸および次のアミノ酸をそれぞれ0.73g(L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−リジン)を水500gに溶解させた。この水溶液を1L3つ口フラスコ内で100℃に加熱することにより水を留去した。スラリーの粘度が上昇し攪拌操作性が悪化し始めたところで濃縮を終了した(スラリー重量:30.5g)。徐々に室温まで冷却し、晶析、固液分離、乾燥して1,5−ペンタンジアミン・アジピン酸の等モル塩である結晶10.9gを得た。仕込み1,5−ペンタンジアミン・アジピン酸基準の1,5−ペンタンジアミン・アジピン酸塩単離収率は44%であった。この結晶の化学純度は87.6重量%であった。この結晶中にL−アスパラギン酸が0.43g、L−リジンが0.53g、L−グルタミン酸が0.58g含有されていた。
【0046】
実施例1(1,5−ペンタンジアミン、アジピン酸の晶析)
10.2gの1,5−ペンタンジアミン、14.6gのアジピン酸および次のアミノ酸をそれぞれ0.73g(L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−リジン)を水500gに溶解させた。この水溶液を1L3つ口フラスコ内で減圧下で水を留去した。スラリーの粘度が上昇し攪拌操作性が悪化し始めたところで濃縮を終了した(スラリー重量:46.5g)。素早く80gのエタノールを加え、65℃まで加熱し溶解させた。溶解せずに析出した結晶をろ過により固液分離した。その後均一に溶解した溶媒を徐々に冷却し、晶析、固液分離、乾燥して1,5−ペンタンジアミン・アジピン酸の等モル塩である結晶18.9gを得た。仕込み1,5−ペンタンジアミン・アジピン酸基準の1,5−ペンタンジアミン・アジピン酸塩単離収率は76%であった。この結晶の化学純度は99.6重量%であった。この結晶中にL−アスパラギン酸が0.029g、L−リジンが0.026g、L−グルタミン酸が0.021g含有されていた。
【0047】
比較例1に比べ化学純度の高いジアミン・ジカルボン酸塩が得られた。
【0048】
実施例2(1,5−ペンタンジアミン、コハク酸の晶析)
10.2gの1,5−ペンタンジアミン、11.8gのコハク酸および次のアミノ酸をそれぞれ0.73g(L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−リジン)を水500gに溶解させた。この水溶液を1L3つ口フラスコ内で減圧下で水を留去した。スラリーの粘度が上昇し攪拌操作性が悪化し始めたところで濃縮を終了した(スラリー重量:43.8g)。素早く80gのエタノールを加え、65℃まで加熱し溶解させた。溶解せずに析出した結晶をろ過により固液分離した。その後均一に溶解した溶媒を徐々に冷却し、晶析、固液分離、乾燥して1,5−ペンタンジアミン・コハク酸の等モル塩である結晶15.4gを得た。仕込み1,5−ペンタンジアミン・コハク酸基準の1,5−ペンタンジアミン・コハク酸塩単離収率は70%であった。この結晶の化学純度は99.4重量%であった。この結晶中にL−アスパラギン酸が0.032g、L−リジンが0.039g、L−グルタミン酸が0.022g含有されていた。
【0049】
ジカルボン酸成分としてアジピン酸に代えて、コハク酸について実施例1に記載と同様の条件にて実施したところ、化学純度は99.4重量%となった。
【0050】
実施例3(ヘキサメチレンジアミン・コハク酸塩の晶析)
11.6gのヘキサメチレンジアミン、11.8gのコハク酸および次のアミノ酸をそれぞれ0.73g(L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−リジン)を水500gに溶解させた。 この水溶液を1L3つ口フラスコ内で減圧下で水を留去した。スラリーの粘度が上昇し攪拌操作性が悪化し始めたところで濃縮を終了した(スラリー重量:44.5g)。素早く80gのエタノールを加え、65℃まで加熱し溶解させた。溶解せず析出した結晶をろ過により固液分離した。その後均一に溶解した溶媒を徐々に冷却し、晶析、固液分離、乾燥してヘキサメチレンジアミン・コハク酸の等モル塩である結晶19.2gを得た。仕込みヘキサメチレンジアミン・コハク酸基準のヘキサメチレンジアミン・コハク酸塩単離収率は82%であった。この結晶の化学純度は99.5重量%であった。この結晶中にL−アスパラギン酸が0.032g、L−リジンが0.033g、L−グルタミン酸が0.031g含有されていた。
【0051】
ジアミン成分として1,5−ペンタンジアミンに代えて、ヘキサメチレンジアミンについて実施例2に記載と同様の条件にて実施したところ、化学純度は99.5重量%となった。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、アミノ酸を含有するジアミン・ジカルボン酸塩水溶液からジアミン・ジカルボン酸塩とアミノ酸を分離できる。
Claims (12)
- アミノ酸と、官能基としては2つのアミノ基のみを有する脂肪族および/または芳香族のジアミンと、官能基としては2つのカルボキシル基のみを有する脂肪族および/または芳香族のジカルボン酸を含む水溶液から、ジアミン・ジカルボン酸塩を晶析させる際に、有機溶媒を添加することを特徴とするジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。
- 該一般式(1)において、
m=2〜9
、および/または、該一般式(2)および/または(3)において、
n,o,p,q=0〜2
であることを特徴とする請求項2に記載のジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。 - ジアミンが、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミンまたはメタキシレンジアミンであることを特徴とする請求項1に記載のジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。
- 該一般式(4)において、
r=0〜10
、および/または、該一般式(5)および/または(6)において、
s,t,u,v=0〜1
であることを特徴とする請求項5に記載のジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。 - ジカルボン酸が、アジピン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、コハク酸、イソフタル酸、テレフタル酸のいずれかであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。
- 有機溶媒が、アルコール類、ケトン類またはニトリル類のいずれかであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。
- 有機溶媒が、炭素数6以下の脂肪族アルコール類、炭素数6以下の脂肪族ケトン類または炭素数6以下の脂肪族ニトリル類のいずれか1種または複数種類であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。
- 有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、イソプロパノール、アセトニトリルまたはアセトンのいずれか1種または複数種類であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。
- 該アミノ酸は、非電荷・極性アミノ酸、酸性アミノ酸および塩基性アミノ酸のいずれか1種または複数種類が含まれていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。
- アミノ酸が、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸およびL−リジンのいずれか1種または複数種類が含まれていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のジアミン・ジカルボン酸塩の製造方法。
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