JP2004199760A - 磁気ディスクのクランプ機構、それを備えた磁気ディスク装置、および、磁気ディスクのクランプ方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気ディスクを装着対象に対して精度よく取り付けることを可能にすると共に、それに要するコストを低減することを目的とする。
【解決手段】磁気記録面3aと中心孔部31とを含む磁気ディスク3を保持するためのクランプ機構10は、磁気ディスク3の中心孔部31に嵌め込まれるクランプボス11と、クランプボス11に固定され、磁気ディスク3をクランプボス11に対して押さえ付けるバネ部材12と、磁気ディスク3とバネ部材12との間に配置されるリングスペーサ15とを備え、磁気ディスク3の中心孔部31周辺に形成された段差部32と、リングスペーサ15とが、互いに遊嵌し合うように構成されている。
【選択図】 図6
【解決手段】磁気記録面3aと中心孔部31とを含む磁気ディスク3を保持するためのクランプ機構10は、磁気ディスク3の中心孔部31に嵌め込まれるクランプボス11と、クランプボス11に固定され、磁気ディスク3をクランプボス11に対して押さえ付けるバネ部材12と、磁気ディスク3とバネ部材12との間に配置されるリングスペーサ15とを備え、磁気ディスク3の中心孔部31周辺に形成された段差部32と、リングスペーサ15とが、互いに遊嵌し合うように構成されている。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスクのクランプ機構、それを備えた磁気ディスク装置、および、磁気ディスクのクランプ方法に関する。
【0002】
従来、例えばハードディスクドライブ等の磁気ディスク装置等には、ガラスやアルミニウム合金等により形成された基板を用いた磁気ディスクが備えられていた。これに対して、近年では、この種の磁気ディスクとして、ガラスやアルミニウム合金等からなる基板の代わりに、プラスチック製の基板を用いたものも採用されるようになってきている。このようなプラスチック製の基板を用いた場合、光ディスクの場合と同様に、スタンパ等を用いた射出成形によってサーボ信号用パターン等を基板に対して形成することができる。従って、プラスチック製基板を有する磁気ディスクを用いれば、磁気ディスク装置の高記録密度化や生産コストの低減化を容易に達成することができる。
【0003】
プラスチック製の基板を含む磁気ディスクが備えられた磁気ディスク装置では、一般に、磁気ディスクがクランプ機構を介してディスク回転駆動手段に連結される。このようなクランプ機構としては、磁気ディスクの中心に形成された孔部に嵌め込まれるクランプボス(軸部)と、クランプボスに固定されて磁気ディスクをクランプボスに対して押さえ付ける弾性部材(押圧支持部材)と、磁気ディスクと弾性部材との間に介設されるスペーサ(集中荷重緩和部材)とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
国際公開第00/07189号パンフレット
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述されたような従来のクランプ機構を用いれば、弾性部材による荷重がスペーサを介して磁気ディスクに対して均一に作用することになるので、ガラスやアルミニウム合金等と比較して剛性が低いプラスチックからなる基板を用いた磁気ディスクを変形や反りのない状態で磁気ディスク装置に装着することができる。しかしながら、上述の従来のクランプ機構に含まれるスペーサは、クランプボスにほぼ隙間なく嵌め込まれて位置決めされるものであると共に、射出成形に際して磁気ディスク(プラスチック製基板)の周縁に形成されてしまう微小隆起部(スキージャンプ部)との干渉を防止するための凹部を含むものである。このため、スペーサを形成するに際して、比較的高い寸法精度が要求されることから、従来のクランプ機構を用いても、低コストで磁気ディスクを装着対象に対して精度よく取り付けることは困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、磁気ディスクを装着対象に対して精度よく取り付けることを可能にすると共に、容易にコストダウン化することができる磁気ディスクのクランプ機構、それを備えた磁気ディスク装置、および、磁気ディスクのクランプ方法の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による磁気ディスクのクランプ機構は、磁気記録面と中心孔部とを含む磁気ディスクを保持するためのクランプ機構において、磁気ディスクの中心孔部に嵌め込まれるクランプボスと、クランプボスに固定され、磁気ディスクをクランプボスに対して押さえ付ける弾性部材と、磁気ディスクと弾性部材との間に配置されるスペーサとを備え、磁気ディスクの中心孔部周辺の部位と、スペーサとが、互いに嵌り合うように構成されていることを特徴とする。
【0008】
このクランプ機構では、クランプボスに弾性部材を固定し、この弾性部材により、スペーサを介して磁気ディスクをクランプボスに対して押さえ付けることにより、磁気ディスクがクランプボスに装着される。この際、弾性部材からのモーメントは、スペーサによって緩衝され、磁気ディスク側には殆ど伝えられない。従って、このクランプ機構によれば、磁気ディスクを装着対象に対して歪みや反りを生じさせることなく、精度よく取り付けることが可能となる。そして、このクランプ機構では、磁気ディスクの中心孔部周辺の部位とスペーサとが互いに嵌り合うように構成されているので、両者を嵌め合わせるだけで、スペーサを磁気ディスクに対して位置決めすることができる。従って、本発明によれば、スペーサの構成を単純化することが可能となり、容易に機構全体のコストダウン化を図ることができる。
【0009】
この場合、磁気ディスクの中心孔部周辺には、スペーサが配置される凹部が形成されていると好ましい。このような構成を採用すれば、磁気ディスク(基板)に形成されている微小隆起部との干渉を防止するための対策をスペーサに施す必要がなくなる。また、磁気ディスクの凹部は、極めて低コストで形成し得るものである。従って、このような構成を採用すれば、クランプ機構に要するコストを極めて効果的に低減させることができる。
【0010】
また、凹部は、中心孔部に沿って形成された段差部であるとよく、中心孔部に沿って形成された溝であってもよい。更に、磁気ディスクの中心孔部周辺には、凹部が形成されており、スペーサは、磁気ディスクの凹部と係合する突出部を有していると好ましい。そして、環状凹部は、磁気ディスクの中心に対するスペーサの位置ズレを最小限にするように形成されていると好ましい。
【0011】
本発明による磁気ディスク装置は、上記磁気ディスクと、上述のクランプ機構とを備えるものである。
【0012】
本発明による磁気ディスクのクランプ方法は、磁気記録面と中心孔部とを含む磁気ディスクを保持するためのクランプ方法において、磁気ディスクの中心孔部周辺の部位と、スペーサとを互いに嵌り合うことができるようにしておき、磁気ディスクの中心孔部にクランプボスを嵌め込むと共に、磁気ディスクに対してスペーサを配置し、クランプボスに弾性部材を固定して、この弾性部材により、スペーサを介して磁気ディスクをクランプボスに対して押さえ付けることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面と共に本発明による磁気ディスクのクランプ機構、磁気ディスク装置、および、磁気ディスクのクランプ方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明による磁気ディスク装置を示す概略構成図である。同図に示される磁気ディスク装置1は、コンピュータ用外部記憶装置(ハードディスクドライブ)や、ディスクカートリッジ等として適用可能なものである。同図に示されるように、磁気ディスク装置1は、筐体2を有しており、筐体2の内部には、磁気ディスク3が収容されている。磁気ディスク3は、図示されないスピンドルモータの回転軸にクランプ機構10を介して連結され、スピンドルモータによって所望速度で回転駆動される。
【0015】
また、筐体2の内部には、磁気ディスク3に対する情報の読取/書込を行う磁気ヘッド(スライダ)4、および、その先端に磁気ヘッド4を支持するヘッドアーム(サスペンション)5が配置されている。ヘッドアーム5は、アクチュエータ6によって旋回移動させられ、これにより、磁気ヘッド4は、磁気ディスク3の所望トラック上に位置決めされる。更に、筐体2の内部には、磁気ヘッド4による読取/書込、スピンドルモータの動作、および、アクチュエータ6の動作等を制御する制御回路等が実装された回路基板7が配置されている。
【0016】
本実施形態において、磁気ディスク3は、例えば、およそ1.27mmの厚さを有する3.5インチ規格のものが採用される。磁気ディスク3は、例えばポリオレフィン等のプラスチックにより形成された円盤状の基板30(図4参照)と、基板30の少なくとも一方の表面(磁気記録面)3aに形成された磁性層および保護層とを含む。磁気ディスク3の磁気記録面3aには、各種情報が記録されるトラックが同心円状に形成されている。また、磁気ディスク3は、その中心部に中心孔部31を有する(図4等参照)。
【0017】
上述の磁気ディスク3の基板30は、図2に示される射出成形金型50を用いた射出成形により製造される。射出成形金型50は、固定側金型51と可動側金型52とを含み、両金型51および52の間に画成されるキャビティCに図示されない加熱シリンダ内において溶融させた樹脂を充填することによって磁気ディスク3の基板30を得ることができる。
【0018】
固定側金型51は、図示されない射出ユニットの固定側支持部材53に取り付けられる固定側ベースプレート54と、固定側ベースプレート54に固定された固定側スタンパ55と、固定側ベースプレート54に固定されて固定側スタンパ55の外周に配置される環状の固定側ガイドリング56とを含む。また、固定側ベースプレート54と固定側スタンパ55とに対しては、スプルー57aが形成されているスプルーブッシュ57と、スプルーブッシュ57の外周を覆うスリーブ状の固定側ブッシュ58とが設けられている。本実施形態において、スプルーブッシュ57と固定側ブッシュ58は、図2および図3に示されるように、それぞれの下端面が固定側スタンパ55のスタンパ面よりも可動側金型52に向けて所定量だけ突出するように配置される。
【0019】
一方、可動側金型52は、射出ユニットの可動側支持部材59に取り付けられる可動側ベースプレート60と、可動側ベースプレート60に固定された中間プレート61と、中間プレート61にボルト等により固定された可動側スタンパ62と、中間プレート61に固定されて可動側スタンパ62の外周に配置される環状の可動側ガイドリング63とを含む。また、中間プレート61と可動側スタンパ62とに対しては、スリーブ状の可動側ブッシュ64が設けられている。本実施形態において、可動側ブッシュ64は、図2および図3に示されるように、その上端面が可動側スタンパ62のスタンパ面よりも固定側金型51に向けて所定量だけ突出するように配置される。
【0020】
可動側ベースプレート60および中間プレート61の内部には、シリンダ65が画成されており、シリンダ65の内部には、ピストン66が配置されている。このピストン66には、可動側ブッシュ64を挿通可能なゲートカット67が固定されている。これにより、作動油等を用いてシリンダ65の内部でピストン66を図中上下に移動させることにより、ゲートカット67を固定側金型51に対して進退移動させることができる。
【0021】
このように構成される射出成形金型50を用いて磁気ディスク3の基板30を成形する場合、図示されない型締装置を作動させて可動側金型52を固定側金型51に対して移動させ、固定側ガイドリング56と可動側ガイドリング63とを突き当てることによって型閉じおよび型締めを行うと、固定側スタンパ55と可動側スタンパ62との間にキャビティC(図3参照)が画成される。ここで、固定側スタンパ55と可動側スタンパ62との間隔は、成形する基板の厚さと概ね一致するように予め調整される。そして、図示されない射出ユニットによる溶融樹脂の射出を開始すると、射出された溶融樹脂は、スプルー57aを通って固定側スタンパ55と可動側スタンパ62との間に画成されたキャビティC内に充填されていく。
【0022】
キャビティC内への樹脂の充填が完了すると、所定の冷却・固化行程が実行される。すなわち、固定側スタンパ55と、可動側スタンパ62とのそれぞれには、冷媒流路55a,62aが形成されており、冷却・固化行程に際しては、各冷媒流路55a,62aに図示されない冷媒供給源から冷媒が循環供給される。また、スプルーブッシュ57や、ゲートカット67にも、図示されない冷媒流路が形成されており、同様に、図示されない冷媒供給源から冷媒が循環供給される。
【0023】
ここで、射出成形金型50では、固定側金型51の冷媒系統と可動側金型52の冷媒系統との双方に対して、それぞれ温度調整手段が備えられている。そして、各温度調整手段は、図示されない制御装置によって個別に作動させられ、各冷媒系統における冷媒温度をそれぞれ独立に設定する。これにより、成形品である基板の反り角、面振れといった特性を自在に調整することが可能となる。
【0024】
冷却・固定行程が終了すると、ピストン66を移動させることにより、ゲートカット67が固定側金型51側に突き出され、これにより、キャビティC内で成形された基板の中心部に中心孔部が形成される。そして、中心孔部の打ち抜き後、型締装置により、可動側金型52を固定側金型51から離脱させる型開き操作が行われる。型開き操作の開始と同時に、または、型開き操作の直前に、固定側ブッシュ58および可動側ブッシュ64から所定の圧縮空気がキャビティC側に供給され、キャビティC内で成形された基板は、吹き出される圧縮空気によって固定側スタンパ55および可動側スタンパ62から離脱させられる。その後、スタンパ55,62から離脱させられた基板は、所定の取出装置によって射出成形金型50から取り出される。
【0025】
図4は、上述のようにして成形された基板30を示す部分断面図である。同図に示されるように、基板30は、その中心部に中心孔部31を有する。また、基板30の中心孔部31の周囲には、固定側スタンパ55のスタンパ面よりも可動側金型52に向けて所定量だけ突出するように配置されたスプルーブッシュ57および固定側ブッシュ58と、可動側スタンパ62のスタンパ面よりも固定側金型51に向けて所定量だけ突出するように配置された可動側ブッシュ64とによって、表裏両面に環状の段差部(凹部)32が形成されている。段差部32は、基板30の中心孔部31に沿って延びる。
【0026】
ここで、上述のようにしてキャビティC内に充填された樹脂は、冷却・固化行程においてスタンパ55,62により冷却される。この際、樹脂はその温度−密度特性によりキャビティC内で収縮しながら固化する。また、キャビティC内の樹脂は、内周近傍(中心孔部近傍)の領域および外周近傍の領域における冷却効率が中周領域よりも大きいことに起因して、内周近傍の領域および外周近傍の領域においてスタンパ側から早期に冷却されていく。このため、内周近傍の領域および外周近傍の領域における樹脂の収縮量が他の部位に比べて小さくなるので、成形された基板30の内周近傍および外周近傍の領域は、結果として相対的に膨らんだ形状となる。
【0027】
この結果、基板30の段差部32のエッジ部と、基板30の表裏面の中心孔部31側のエッジ部には、外周側から内周側に向かうに連れてなだらかに立ち上がる(徐々に板厚が漸増する)微小隆起部(スキージャンプ部)33が形成される。このような微小隆起部は、基板30の外周側のエッジ部にも形成され、外周側の微小隆起部(図示省略)は、内周側から外周側に向かうに連れてなだらかに立ち上がる(徐々に板厚が漸増する)ことになる。各微小隆起部33の立ち上がり量(本来の表面からの高さ)は、およそ1.27mmの厚さを有する3.5インチ規格の磁気ディスク用基板(ポリオレフィン系樹脂製)の場合、およそ数μmから十数μm程度になる。
【0028】
さて、磁気ディスク装置1では、磁気ディスク3が図示されないスピンドルモータの回転軸にクランプ機構10を介して連結されるが、本発明において、クランプ機構10は、上述の基板30(磁気ディスク3)の微小隆起部33を考慮した上で、プラスチック製の基板30を有する磁気ディスク3を変形や反りのない状態でスピンドルモータに連結することができるように構成されている。
【0029】
すなわち、クランプ機構10は、図5に示されるように、クランプボス11、バネ部材(弾性部材)12、固定ネジ14およびリングスペーサ15を含む。クランプボス11は、図示されないスピンドルモータの回転軸に連結(固定)されるものである。クランプボス11は、図5に示されるように、磁気ディスク3の中心孔部31に挿入される(嵌め込まれる)軸部11aと、磁気ディスク3を支持するディスク支持部11bとを有する。本実施形態では、ディスク支持部11bは、磁気ディスク3(基板30)の図中下側の段差部32の表面を支持する。また、クランプボス11には、磁気ディスク3の図中下側の段差部32に生じている微小隆起部33との干渉を防止するための環状溝11cが形成されている。
【0030】
バネ部材12は、円盤状を呈しており、その外周部を全周にわたって図中下方に撓ませることにより、板バネとして構成されている。また、リングスペーサ15は、磁気ディスク3(基板30)構成するプラスチックよりも高い剛性を有する鉄、ステンレスといった金属や、セラミック等の素材により形成される。図5からわかるように、リングスペーサ15は、磁気ディスク3の中心孔部31の周囲に形成された上側の段差部32に配置され得る(遊嵌され得る)寸法をもった環状かつ平板状の部材として形成され、極めて容易かつ低コストで製造することができる。
【0031】
このようなクランプ機構10を用いて磁気ディスク3を磁気ディスク装置1に装着するに際しては、磁気ディスク3の中心孔部31にクランプボス11の軸部11aを嵌め込み、磁気ディスク3の下側の段差部32とクランプボス11のディスク支持部11bとを当接させる。また、磁気ディスク3の上側の段差部32にリングスペーサ15を配置(遊嵌)する。そして、固定ネジ14を用いてクランプボス11の軸部11aにバネ部材12を固定する。これにより、バネ部材12は、図6に示されるように撓んで、リングスペーサ15を介して磁気ディスク3をクランプボス11に対して押さえ付ける。
【0032】
図6に示されるようにバネ部材12をクランプボス11に固定した状態において、磁気ディスク3には、バネ部材12による力F1と、クランプボス11からの反力F2、および、バネ部材12の変形に伴って発生するモーメントMが作用し、これらの力F1、F2およびモーメントMの合成の具合によっては、磁気ディスク3に歪みや反りを生じてしまうおそれがある。
【0033】
これに対して、クランプ機構10では、例えば弾性率200GPa程度の鉄製のリングスペーサ15を用いた場合、クランプ部分の剛性が見かけ上大きくなるため、バネ部材12からのモーメントは、リングスペーサ15によって緩衝され、磁気ディスク3側には殆ど伝えられないことになる。また、バネ部材12からの力F1と、クランプボス11からの反力F2とは、磁気ディスク3とリングスペーサ15とに対してほぼ均等に作用して互いに釣り合う。従って、クランプ機構10によれば、磁気ディスク3を装着対象に対して歪みや反りを生じさせることなく、精度よく取り付けることが可能となる。
【0034】
更に、クランプ機構10では、スペーサ15が磁気ディスク3(基板30)の段差部32に遊嵌されることから、磁気ディスク3(基板30)に形成されてしまう微小隆起部33との干渉を防止するための対策をリングスペーサ15に施す必要がなくなる。従って、リングスペーサ15を環状かつ平板状の単純な構成にすることが可能となるので、容易に機構全体のコストダウン化を図ることができる。
【0035】
そして、クランプ機構10では、磁気ディスクの中心孔部31周囲の段差部32とリングスペーサ15とが互いに遊嵌し合うように構成されることから、両者を嵌め合わせるだけで、リングスペーサ15を磁気ディスク3に対して位置決めすることができる。すなわち、上述の射出成形に際して、基板30の段差部32を形成するためにスタンパ面から突出される固定側ブッシュ58および可動側ブッシュ64の外径は、磁気ディスク装置1の使用時に磁気ディスク3(基板30)が熱収縮しても段差部32とリングスペーサ15とが干渉し合わないように、図7に示されるクリアランスd1を考慮して定められている。
【0036】
クリアランスd1は、樹脂の熱膨張率をA1とし、リングスペーサ15を構成する素材の熱膨張率をA2とし、リングスペーサ15の外径をRrとし、使用温度範囲をdTとすると、d1>(A1−A2)×Rr×dTとして定めることができる。このようして基板30に段差部32を形成しておくことにより、図8からわかるように、リングスペーサ15を段差部32に遊嵌させた際に生じる磁気ディスク3の中心とリングスペーサ15の中心とのズレd2をd1以下、すなわち、必要最小限にすることが可能となる。また、このようなクリアランスd1を考慮して磁気ディスク3(基板30)に段差部32を形成しておけば、製品として完成後に外部から衝撃が加えられても、磁気ディスク3の段差部32によって、リングスペーサ15の位置ズレを防止することができる。
【0037】
なお、上述の射出成形金型50を用いて基板30を成形する場合、例えば、射出成形金型50を公差1/1000程度のオーダーで作成しておくことにより、ほぼ同じ寸法精度の基板30を数十万枚成形することができる。従って、基板30に対して段差部32を形成するのに伴って生じるコストアップは、ごく僅かであり、この点からも、クランプ機構10に要するコストの上昇を効果的に抑制することができる。
【0038】
図9〜図12は、それぞれ、上述のクランプ機構10の変形例を示すものである。図9に示される例では、磁気ディスク3(基板30)の図中上側にのみ段差部32が形成されており、これにより、基板30の成形に要するコストをより一層低減させることができる。この場合、クランプボス11のディスク支持部11bは、磁気ディスク3の図中下面を支持することになる。
【0039】
また、図10に示される例は、磁気ディスク3(基板30)の図中上側かつ中心孔部31の周囲に、リングスペーサ15が遊嵌される環状の溝34を形成したものである。このように、段差部の代わりに、環状の溝34を磁気ディスク3に形成しておくことにより、磁気ディスク3に対するリングスペーサ15の位置決め精度をより一層向上させることができる。このような環状の溝34は、例えば、図2の射出成形金型50の固定側金型51において、固定側ブッシュ58のみをスタンパ面から突き出させておくことにより形成することができる。そして、図11に示されるように、磁気ディスク3の図中上側のみならず、ディスク下側に、クランプボス11のディスク支持部11bと当接する環状の溝35を形成しておいてもよい。
【0040】
更に、図12に示されるように、リングスペーサ15に、磁気ディスク3の段差部32と係合する突出部15aを形成してもよい。このような構成を採用した場合、リングスペーサ15を作成するのに要するコストが若干増加するものの、磁気ディスク3に対するリングスペーサ15の位置決め精度をより一層向上させることができる。何れにしても、図9〜図12の構成を採用すれば、図5および図6に示される構成を採用した場合と同様に、磁気ディスク3を装着対象に対して精度よく取り付け可能となり、かつ、クランプ機構10のコストダウン化を図ることができる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明されたように、本発明によれば、容易かつ低コストで磁気ディスクを装着対象に対して精度よく取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による磁気ディスク装置を示す概略構成図である。
【図2】図1の磁気ディスクに含まれる磁気ディスク用の基板を製造するための射出成形金型を示す断面図である。
【図3】図2の射出成形金型の要部を示す概略構成図である。
【図4】図2の射出成形金型を用いて製造される磁気ディスク用基板を示す断面図である。
【図5】本発明によるクランプ機構を示す部分断面図である。
【図6】本発明によるクランプ機構を示す部分断面図である。
【図7】磁気ディスクとリングスペーサとが互いに位置決めされる状態を説明するための模式図である。
【図8】磁気ディスクとリングスペーサとが互いに位置決めされる状態を説明するための模式図である。
【図9】本発明によるクランプ機構の変形例を示す部分断面図である。
【図10】本発明によるクランプ機構の変形例を示す部分断面図である。
【図11】本発明によるクランプ機構の変形例を示す部分断面図である。
【図12】本発明によるクランプ機構の変形例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 磁気ディスク装置
3 磁気ディスク
3a 磁気記録面
10 クランプ機構
11 クランプボス
12 バネ部材
15 リングスペーサ
15a 突出部
30 基板
31 中心孔部
32 段差部
33 微小隆起部
34,35 環状の溝
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスクのクランプ機構、それを備えた磁気ディスク装置、および、磁気ディスクのクランプ方法に関する。
【0002】
従来、例えばハードディスクドライブ等の磁気ディスク装置等には、ガラスやアルミニウム合金等により形成された基板を用いた磁気ディスクが備えられていた。これに対して、近年では、この種の磁気ディスクとして、ガラスやアルミニウム合金等からなる基板の代わりに、プラスチック製の基板を用いたものも採用されるようになってきている。このようなプラスチック製の基板を用いた場合、光ディスクの場合と同様に、スタンパ等を用いた射出成形によってサーボ信号用パターン等を基板に対して形成することができる。従って、プラスチック製基板を有する磁気ディスクを用いれば、磁気ディスク装置の高記録密度化や生産コストの低減化を容易に達成することができる。
【0003】
プラスチック製の基板を含む磁気ディスクが備えられた磁気ディスク装置では、一般に、磁気ディスクがクランプ機構を介してディスク回転駆動手段に連結される。このようなクランプ機構としては、磁気ディスクの中心に形成された孔部に嵌め込まれるクランプボス(軸部)と、クランプボスに固定されて磁気ディスクをクランプボスに対して押さえ付ける弾性部材(押圧支持部材)と、磁気ディスクと弾性部材との間に介設されるスペーサ(集中荷重緩和部材)とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
国際公開第00/07189号パンフレット
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述されたような従来のクランプ機構を用いれば、弾性部材による荷重がスペーサを介して磁気ディスクに対して均一に作用することになるので、ガラスやアルミニウム合金等と比較して剛性が低いプラスチックからなる基板を用いた磁気ディスクを変形や反りのない状態で磁気ディスク装置に装着することができる。しかしながら、上述の従来のクランプ機構に含まれるスペーサは、クランプボスにほぼ隙間なく嵌め込まれて位置決めされるものであると共に、射出成形に際して磁気ディスク(プラスチック製基板)の周縁に形成されてしまう微小隆起部(スキージャンプ部)との干渉を防止するための凹部を含むものである。このため、スペーサを形成するに際して、比較的高い寸法精度が要求されることから、従来のクランプ機構を用いても、低コストで磁気ディスクを装着対象に対して精度よく取り付けることは困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、磁気ディスクを装着対象に対して精度よく取り付けることを可能にすると共に、容易にコストダウン化することができる磁気ディスクのクランプ機構、それを備えた磁気ディスク装置、および、磁気ディスクのクランプ方法の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による磁気ディスクのクランプ機構は、磁気記録面と中心孔部とを含む磁気ディスクを保持するためのクランプ機構において、磁気ディスクの中心孔部に嵌め込まれるクランプボスと、クランプボスに固定され、磁気ディスクをクランプボスに対して押さえ付ける弾性部材と、磁気ディスクと弾性部材との間に配置されるスペーサとを備え、磁気ディスクの中心孔部周辺の部位と、スペーサとが、互いに嵌り合うように構成されていることを特徴とする。
【0008】
このクランプ機構では、クランプボスに弾性部材を固定し、この弾性部材により、スペーサを介して磁気ディスクをクランプボスに対して押さえ付けることにより、磁気ディスクがクランプボスに装着される。この際、弾性部材からのモーメントは、スペーサによって緩衝され、磁気ディスク側には殆ど伝えられない。従って、このクランプ機構によれば、磁気ディスクを装着対象に対して歪みや反りを生じさせることなく、精度よく取り付けることが可能となる。そして、このクランプ機構では、磁気ディスクの中心孔部周辺の部位とスペーサとが互いに嵌り合うように構成されているので、両者を嵌め合わせるだけで、スペーサを磁気ディスクに対して位置決めすることができる。従って、本発明によれば、スペーサの構成を単純化することが可能となり、容易に機構全体のコストダウン化を図ることができる。
【0009】
この場合、磁気ディスクの中心孔部周辺には、スペーサが配置される凹部が形成されていると好ましい。このような構成を採用すれば、磁気ディスク(基板)に形成されている微小隆起部との干渉を防止するための対策をスペーサに施す必要がなくなる。また、磁気ディスクの凹部は、極めて低コストで形成し得るものである。従って、このような構成を採用すれば、クランプ機構に要するコストを極めて効果的に低減させることができる。
【0010】
また、凹部は、中心孔部に沿って形成された段差部であるとよく、中心孔部に沿って形成された溝であってもよい。更に、磁気ディスクの中心孔部周辺には、凹部が形成されており、スペーサは、磁気ディスクの凹部と係合する突出部を有していると好ましい。そして、環状凹部は、磁気ディスクの中心に対するスペーサの位置ズレを最小限にするように形成されていると好ましい。
【0011】
本発明による磁気ディスク装置は、上記磁気ディスクと、上述のクランプ機構とを備えるものである。
【0012】
本発明による磁気ディスクのクランプ方法は、磁気記録面と中心孔部とを含む磁気ディスクを保持するためのクランプ方法において、磁気ディスクの中心孔部周辺の部位と、スペーサとを互いに嵌り合うことができるようにしておき、磁気ディスクの中心孔部にクランプボスを嵌め込むと共に、磁気ディスクに対してスペーサを配置し、クランプボスに弾性部材を固定して、この弾性部材により、スペーサを介して磁気ディスクをクランプボスに対して押さえ付けることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面と共に本発明による磁気ディスクのクランプ機構、磁気ディスク装置、および、磁気ディスクのクランプ方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明による磁気ディスク装置を示す概略構成図である。同図に示される磁気ディスク装置1は、コンピュータ用外部記憶装置(ハードディスクドライブ)や、ディスクカートリッジ等として適用可能なものである。同図に示されるように、磁気ディスク装置1は、筐体2を有しており、筐体2の内部には、磁気ディスク3が収容されている。磁気ディスク3は、図示されないスピンドルモータの回転軸にクランプ機構10を介して連結され、スピンドルモータによって所望速度で回転駆動される。
【0015】
また、筐体2の内部には、磁気ディスク3に対する情報の読取/書込を行う磁気ヘッド(スライダ)4、および、その先端に磁気ヘッド4を支持するヘッドアーム(サスペンション)5が配置されている。ヘッドアーム5は、アクチュエータ6によって旋回移動させられ、これにより、磁気ヘッド4は、磁気ディスク3の所望トラック上に位置決めされる。更に、筐体2の内部には、磁気ヘッド4による読取/書込、スピンドルモータの動作、および、アクチュエータ6の動作等を制御する制御回路等が実装された回路基板7が配置されている。
【0016】
本実施形態において、磁気ディスク3は、例えば、およそ1.27mmの厚さを有する3.5インチ規格のものが採用される。磁気ディスク3は、例えばポリオレフィン等のプラスチックにより形成された円盤状の基板30(図4参照)と、基板30の少なくとも一方の表面(磁気記録面)3aに形成された磁性層および保護層とを含む。磁気ディスク3の磁気記録面3aには、各種情報が記録されるトラックが同心円状に形成されている。また、磁気ディスク3は、その中心部に中心孔部31を有する(図4等参照)。
【0017】
上述の磁気ディスク3の基板30は、図2に示される射出成形金型50を用いた射出成形により製造される。射出成形金型50は、固定側金型51と可動側金型52とを含み、両金型51および52の間に画成されるキャビティCに図示されない加熱シリンダ内において溶融させた樹脂を充填することによって磁気ディスク3の基板30を得ることができる。
【0018】
固定側金型51は、図示されない射出ユニットの固定側支持部材53に取り付けられる固定側ベースプレート54と、固定側ベースプレート54に固定された固定側スタンパ55と、固定側ベースプレート54に固定されて固定側スタンパ55の外周に配置される環状の固定側ガイドリング56とを含む。また、固定側ベースプレート54と固定側スタンパ55とに対しては、スプルー57aが形成されているスプルーブッシュ57と、スプルーブッシュ57の外周を覆うスリーブ状の固定側ブッシュ58とが設けられている。本実施形態において、スプルーブッシュ57と固定側ブッシュ58は、図2および図3に示されるように、それぞれの下端面が固定側スタンパ55のスタンパ面よりも可動側金型52に向けて所定量だけ突出するように配置される。
【0019】
一方、可動側金型52は、射出ユニットの可動側支持部材59に取り付けられる可動側ベースプレート60と、可動側ベースプレート60に固定された中間プレート61と、中間プレート61にボルト等により固定された可動側スタンパ62と、中間プレート61に固定されて可動側スタンパ62の外周に配置される環状の可動側ガイドリング63とを含む。また、中間プレート61と可動側スタンパ62とに対しては、スリーブ状の可動側ブッシュ64が設けられている。本実施形態において、可動側ブッシュ64は、図2および図3に示されるように、その上端面が可動側スタンパ62のスタンパ面よりも固定側金型51に向けて所定量だけ突出するように配置される。
【0020】
可動側ベースプレート60および中間プレート61の内部には、シリンダ65が画成されており、シリンダ65の内部には、ピストン66が配置されている。このピストン66には、可動側ブッシュ64を挿通可能なゲートカット67が固定されている。これにより、作動油等を用いてシリンダ65の内部でピストン66を図中上下に移動させることにより、ゲートカット67を固定側金型51に対して進退移動させることができる。
【0021】
このように構成される射出成形金型50を用いて磁気ディスク3の基板30を成形する場合、図示されない型締装置を作動させて可動側金型52を固定側金型51に対して移動させ、固定側ガイドリング56と可動側ガイドリング63とを突き当てることによって型閉じおよび型締めを行うと、固定側スタンパ55と可動側スタンパ62との間にキャビティC(図3参照)が画成される。ここで、固定側スタンパ55と可動側スタンパ62との間隔は、成形する基板の厚さと概ね一致するように予め調整される。そして、図示されない射出ユニットによる溶融樹脂の射出を開始すると、射出された溶融樹脂は、スプルー57aを通って固定側スタンパ55と可動側スタンパ62との間に画成されたキャビティC内に充填されていく。
【0022】
キャビティC内への樹脂の充填が完了すると、所定の冷却・固化行程が実行される。すなわち、固定側スタンパ55と、可動側スタンパ62とのそれぞれには、冷媒流路55a,62aが形成されており、冷却・固化行程に際しては、各冷媒流路55a,62aに図示されない冷媒供給源から冷媒が循環供給される。また、スプルーブッシュ57や、ゲートカット67にも、図示されない冷媒流路が形成されており、同様に、図示されない冷媒供給源から冷媒が循環供給される。
【0023】
ここで、射出成形金型50では、固定側金型51の冷媒系統と可動側金型52の冷媒系統との双方に対して、それぞれ温度調整手段が備えられている。そして、各温度調整手段は、図示されない制御装置によって個別に作動させられ、各冷媒系統における冷媒温度をそれぞれ独立に設定する。これにより、成形品である基板の反り角、面振れといった特性を自在に調整することが可能となる。
【0024】
冷却・固定行程が終了すると、ピストン66を移動させることにより、ゲートカット67が固定側金型51側に突き出され、これにより、キャビティC内で成形された基板の中心部に中心孔部が形成される。そして、中心孔部の打ち抜き後、型締装置により、可動側金型52を固定側金型51から離脱させる型開き操作が行われる。型開き操作の開始と同時に、または、型開き操作の直前に、固定側ブッシュ58および可動側ブッシュ64から所定の圧縮空気がキャビティC側に供給され、キャビティC内で成形された基板は、吹き出される圧縮空気によって固定側スタンパ55および可動側スタンパ62から離脱させられる。その後、スタンパ55,62から離脱させられた基板は、所定の取出装置によって射出成形金型50から取り出される。
【0025】
図4は、上述のようにして成形された基板30を示す部分断面図である。同図に示されるように、基板30は、その中心部に中心孔部31を有する。また、基板30の中心孔部31の周囲には、固定側スタンパ55のスタンパ面よりも可動側金型52に向けて所定量だけ突出するように配置されたスプルーブッシュ57および固定側ブッシュ58と、可動側スタンパ62のスタンパ面よりも固定側金型51に向けて所定量だけ突出するように配置された可動側ブッシュ64とによって、表裏両面に環状の段差部(凹部)32が形成されている。段差部32は、基板30の中心孔部31に沿って延びる。
【0026】
ここで、上述のようにしてキャビティC内に充填された樹脂は、冷却・固化行程においてスタンパ55,62により冷却される。この際、樹脂はその温度−密度特性によりキャビティC内で収縮しながら固化する。また、キャビティC内の樹脂は、内周近傍(中心孔部近傍)の領域および外周近傍の領域における冷却効率が中周領域よりも大きいことに起因して、内周近傍の領域および外周近傍の領域においてスタンパ側から早期に冷却されていく。このため、内周近傍の領域および外周近傍の領域における樹脂の収縮量が他の部位に比べて小さくなるので、成形された基板30の内周近傍および外周近傍の領域は、結果として相対的に膨らんだ形状となる。
【0027】
この結果、基板30の段差部32のエッジ部と、基板30の表裏面の中心孔部31側のエッジ部には、外周側から内周側に向かうに連れてなだらかに立ち上がる(徐々に板厚が漸増する)微小隆起部(スキージャンプ部)33が形成される。このような微小隆起部は、基板30の外周側のエッジ部にも形成され、外周側の微小隆起部(図示省略)は、内周側から外周側に向かうに連れてなだらかに立ち上がる(徐々に板厚が漸増する)ことになる。各微小隆起部33の立ち上がり量(本来の表面からの高さ)は、およそ1.27mmの厚さを有する3.5インチ規格の磁気ディスク用基板(ポリオレフィン系樹脂製)の場合、およそ数μmから十数μm程度になる。
【0028】
さて、磁気ディスク装置1では、磁気ディスク3が図示されないスピンドルモータの回転軸にクランプ機構10を介して連結されるが、本発明において、クランプ機構10は、上述の基板30(磁気ディスク3)の微小隆起部33を考慮した上で、プラスチック製の基板30を有する磁気ディスク3を変形や反りのない状態でスピンドルモータに連結することができるように構成されている。
【0029】
すなわち、クランプ機構10は、図5に示されるように、クランプボス11、バネ部材(弾性部材)12、固定ネジ14およびリングスペーサ15を含む。クランプボス11は、図示されないスピンドルモータの回転軸に連結(固定)されるものである。クランプボス11は、図5に示されるように、磁気ディスク3の中心孔部31に挿入される(嵌め込まれる)軸部11aと、磁気ディスク3を支持するディスク支持部11bとを有する。本実施形態では、ディスク支持部11bは、磁気ディスク3(基板30)の図中下側の段差部32の表面を支持する。また、クランプボス11には、磁気ディスク3の図中下側の段差部32に生じている微小隆起部33との干渉を防止するための環状溝11cが形成されている。
【0030】
バネ部材12は、円盤状を呈しており、その外周部を全周にわたって図中下方に撓ませることにより、板バネとして構成されている。また、リングスペーサ15は、磁気ディスク3(基板30)構成するプラスチックよりも高い剛性を有する鉄、ステンレスといった金属や、セラミック等の素材により形成される。図5からわかるように、リングスペーサ15は、磁気ディスク3の中心孔部31の周囲に形成された上側の段差部32に配置され得る(遊嵌され得る)寸法をもった環状かつ平板状の部材として形成され、極めて容易かつ低コストで製造することができる。
【0031】
このようなクランプ機構10を用いて磁気ディスク3を磁気ディスク装置1に装着するに際しては、磁気ディスク3の中心孔部31にクランプボス11の軸部11aを嵌め込み、磁気ディスク3の下側の段差部32とクランプボス11のディスク支持部11bとを当接させる。また、磁気ディスク3の上側の段差部32にリングスペーサ15を配置(遊嵌)する。そして、固定ネジ14を用いてクランプボス11の軸部11aにバネ部材12を固定する。これにより、バネ部材12は、図6に示されるように撓んで、リングスペーサ15を介して磁気ディスク3をクランプボス11に対して押さえ付ける。
【0032】
図6に示されるようにバネ部材12をクランプボス11に固定した状態において、磁気ディスク3には、バネ部材12による力F1と、クランプボス11からの反力F2、および、バネ部材12の変形に伴って発生するモーメントMが作用し、これらの力F1、F2およびモーメントMの合成の具合によっては、磁気ディスク3に歪みや反りを生じてしまうおそれがある。
【0033】
これに対して、クランプ機構10では、例えば弾性率200GPa程度の鉄製のリングスペーサ15を用いた場合、クランプ部分の剛性が見かけ上大きくなるため、バネ部材12からのモーメントは、リングスペーサ15によって緩衝され、磁気ディスク3側には殆ど伝えられないことになる。また、バネ部材12からの力F1と、クランプボス11からの反力F2とは、磁気ディスク3とリングスペーサ15とに対してほぼ均等に作用して互いに釣り合う。従って、クランプ機構10によれば、磁気ディスク3を装着対象に対して歪みや反りを生じさせることなく、精度よく取り付けることが可能となる。
【0034】
更に、クランプ機構10では、スペーサ15が磁気ディスク3(基板30)の段差部32に遊嵌されることから、磁気ディスク3(基板30)に形成されてしまう微小隆起部33との干渉を防止するための対策をリングスペーサ15に施す必要がなくなる。従って、リングスペーサ15を環状かつ平板状の単純な構成にすることが可能となるので、容易に機構全体のコストダウン化を図ることができる。
【0035】
そして、クランプ機構10では、磁気ディスクの中心孔部31周囲の段差部32とリングスペーサ15とが互いに遊嵌し合うように構成されることから、両者を嵌め合わせるだけで、リングスペーサ15を磁気ディスク3に対して位置決めすることができる。すなわち、上述の射出成形に際して、基板30の段差部32を形成するためにスタンパ面から突出される固定側ブッシュ58および可動側ブッシュ64の外径は、磁気ディスク装置1の使用時に磁気ディスク3(基板30)が熱収縮しても段差部32とリングスペーサ15とが干渉し合わないように、図7に示されるクリアランスd1を考慮して定められている。
【0036】
クリアランスd1は、樹脂の熱膨張率をA1とし、リングスペーサ15を構成する素材の熱膨張率をA2とし、リングスペーサ15の外径をRrとし、使用温度範囲をdTとすると、d1>(A1−A2)×Rr×dTとして定めることができる。このようして基板30に段差部32を形成しておくことにより、図8からわかるように、リングスペーサ15を段差部32に遊嵌させた際に生じる磁気ディスク3の中心とリングスペーサ15の中心とのズレd2をd1以下、すなわち、必要最小限にすることが可能となる。また、このようなクリアランスd1を考慮して磁気ディスク3(基板30)に段差部32を形成しておけば、製品として完成後に外部から衝撃が加えられても、磁気ディスク3の段差部32によって、リングスペーサ15の位置ズレを防止することができる。
【0037】
なお、上述の射出成形金型50を用いて基板30を成形する場合、例えば、射出成形金型50を公差1/1000程度のオーダーで作成しておくことにより、ほぼ同じ寸法精度の基板30を数十万枚成形することができる。従って、基板30に対して段差部32を形成するのに伴って生じるコストアップは、ごく僅かであり、この点からも、クランプ機構10に要するコストの上昇を効果的に抑制することができる。
【0038】
図9〜図12は、それぞれ、上述のクランプ機構10の変形例を示すものである。図9に示される例では、磁気ディスク3(基板30)の図中上側にのみ段差部32が形成されており、これにより、基板30の成形に要するコストをより一層低減させることができる。この場合、クランプボス11のディスク支持部11bは、磁気ディスク3の図中下面を支持することになる。
【0039】
また、図10に示される例は、磁気ディスク3(基板30)の図中上側かつ中心孔部31の周囲に、リングスペーサ15が遊嵌される環状の溝34を形成したものである。このように、段差部の代わりに、環状の溝34を磁気ディスク3に形成しておくことにより、磁気ディスク3に対するリングスペーサ15の位置決め精度をより一層向上させることができる。このような環状の溝34は、例えば、図2の射出成形金型50の固定側金型51において、固定側ブッシュ58のみをスタンパ面から突き出させておくことにより形成することができる。そして、図11に示されるように、磁気ディスク3の図中上側のみならず、ディスク下側に、クランプボス11のディスク支持部11bと当接する環状の溝35を形成しておいてもよい。
【0040】
更に、図12に示されるように、リングスペーサ15に、磁気ディスク3の段差部32と係合する突出部15aを形成してもよい。このような構成を採用した場合、リングスペーサ15を作成するのに要するコストが若干増加するものの、磁気ディスク3に対するリングスペーサ15の位置決め精度をより一層向上させることができる。何れにしても、図9〜図12の構成を採用すれば、図5および図6に示される構成を採用した場合と同様に、磁気ディスク3を装着対象に対して精度よく取り付け可能となり、かつ、クランプ機構10のコストダウン化を図ることができる。
【0041】
【発明の効果】
以上説明されたように、本発明によれば、容易かつ低コストで磁気ディスクを装着対象に対して精度よく取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による磁気ディスク装置を示す概略構成図である。
【図2】図1の磁気ディスクに含まれる磁気ディスク用の基板を製造するための射出成形金型を示す断面図である。
【図3】図2の射出成形金型の要部を示す概略構成図である。
【図4】図2の射出成形金型を用いて製造される磁気ディスク用基板を示す断面図である。
【図5】本発明によるクランプ機構を示す部分断面図である。
【図6】本発明によるクランプ機構を示す部分断面図である。
【図7】磁気ディスクとリングスペーサとが互いに位置決めされる状態を説明するための模式図である。
【図8】磁気ディスクとリングスペーサとが互いに位置決めされる状態を説明するための模式図である。
【図9】本発明によるクランプ機構の変形例を示す部分断面図である。
【図10】本発明によるクランプ機構の変形例を示す部分断面図である。
【図11】本発明によるクランプ機構の変形例を示す部分断面図である。
【図12】本発明によるクランプ機構の変形例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 磁気ディスク装置
3 磁気ディスク
3a 磁気記録面
10 クランプ機構
11 クランプボス
12 バネ部材
15 リングスペーサ
15a 突出部
30 基板
31 中心孔部
32 段差部
33 微小隆起部
34,35 環状の溝
Claims (8)
- 磁気記録面と中心孔部とを含む磁気ディスクを保持するためのクランプ機構において、
前記磁気ディスクの中心孔部に嵌め込まれるクランプボスと、
前記クランプボスに固定され、前記磁気ディスクを前記クランプボスに対して押さえ付ける弾性部材と、
前記磁気ディスクと前記弾性部材との間に配置されるスペーサとを備え、
前記磁気ディスクの前記中心孔部周辺の部位と、前記スペーサとが、互いに嵌り合うように構成されていることを特徴とする磁気ディスクのクランプ機構。 - 前記磁気ディスクの前記中心孔部周辺には、前記スペーサが配置される凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスクのクランプ機構。
- 前記凹部は、前記中心孔部に沿って形成された段差部であることを特徴とする請求項2に記載の磁気ディスクのクランプ機構。
- 前記凹部は、前記中心孔部に沿って形成された溝であることを特徴とする請求項2に記載の磁気ディスクのクランプ機構。
- 前記磁気ディスクの前記中心孔部周辺には、凹部が形成されており、前記スペーサは、前記磁気ディスクの前記凹部と係合する突出部を有していることを特徴とする請求項2に記載の磁気ディスクのクランプ機構。
- 前記凹部は、前記磁気ディスクの中心に対する前記スペーサの位置ズレを最小限にするように形成されていることを特徴とする請求項2〜5の何れかに記載の磁気ディスクのクランプ機構。
- 前記磁気ディスクと、請求項1〜6の何れか一項に記載の磁気ディスクのクランプ機構とを備えた磁気ディスク装置。
- 磁気記録面と中心孔部とを含む磁気ディスクを保持するためのクランプ方法において、
前記磁気ディスクの前記中心孔部周辺の部位と、スペーサとを互いに嵌り合うことができるようにしておき、前記磁気ディスクの中心孔部にクランプボスを嵌め込むと共に、前記磁気ディスクに対して前記スペーサを配置し、前記クランプボスに弾性部材を固定して、この弾性部材により、前記スペーサを介して前記磁気ディスクを前記クランプボスに対して押さえ付けることを特徴とする磁気ディスクのクランプ方法。
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US7260886B2 (en) | 2004-11-24 | 2007-08-28 | Hitachi Global Storage Technologies Netherlands B.V. | Fastening a magnetic disk to a hub structure |
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2002
- 2002-12-17 JP JP2002365710A patent/JP2004199760A/ja active Pending
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