JP2004195527A - 材料溶解装置およびこれを設置した射出成型機 - Google Patents
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Abstract
【課題】最小量の不活性ガスの使用によって成型品への酸化物等または気泡の取り込みを解消し、さらに、スクリューを用いないで射出成型を可能にする、射出成型機用の材料溶解装置およびこれを設置した射出成型機を得ることを目的とする。
【解決手段】射出成型機2の射出室60とは別に、材料3溶解する筒体30を設け、該筒体30の底部と射出成型機2の射出室60とを連通する連通路50に、溶解した材料4が射出室60から筒体30に逆流することを防止する逆流防止手段40を配置する。また、前記筒体30の内部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段91を設ける。よって、酸化物等の発生を最小に抑えて材料を溶解することができ、発生した酸化物等は浮上するから良質な成型品が得られる。さらに、射出スクリューに代えて射出プランジャによって射出成型することが可能になる。
【選択図】 図3
【解決手段】射出成型機2の射出室60とは別に、材料3溶解する筒体30を設け、該筒体30の底部と射出成型機2の射出室60とを連通する連通路50に、溶解した材料4が射出室60から筒体30に逆流することを防止する逆流防止手段40を配置する。また、前記筒体30の内部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段91を設ける。よって、酸化物等の発生を最小に抑えて材料を溶解することができ、発生した酸化物等は浮上するから良質な成型品が得られる。さらに、射出スクリューに代えて射出プランジャによって射出成型することが可能になる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は射出成型機、特に、合金等の射出成型に好適な射出成型機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6は、従来の低融点金属材料の射出成型機を説明する模式図である。図6において、射出成型機900は、射出される低融点金属材料(以下、材料と称す)が投入されるホッパ919と、ホッパ919に連通して材料を加熱、混練、攪拌するためのシリンダバレル901(外面にヒータ914が配置されている)と、シリンダバレル901内に配置されて材料を移送しかつ射出するスクリュー902と、シリンダバレル901の先端に設置され図示しない金型に当接するノズル906を有している。
【0003】
すなわち、ホッパ919から供給された材料は、スクリュー902の回転によって図中左側に移送されながら加熱され、混練攪拌される。そして、スクリュー902の前進によってノズル906から図示しない金型内に射出される。
また、ホッパ919は、上蓋919aによって密閉され不活性ガス供給装置903から窒素、アルゴン等の不活性ガスが供給されている。さらに、シリンダバレル901の後端部には排気装置905が設置されてシリンダバレル901内のガスが強制排気されている。
したがって、シリンダバレル901の上流側(ホッパ側)に不活性ガスが供給されることにより材料の酸化が防止され、酸化物の再溶解に起因する不純物の混入が防止される。さらに、シリンダバレル901の上流側(ホッパ側)の不活性ガスを強制排気することにより不活性ガスの混入に起因する気泡が成型品に生ずることがないから、成型品の品質が良好に維持されるとするものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−304733号公報(第5頁、図4)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の射出成型機は、密閉したホッパに不活性ガスを注入して空気置換するものであるから、以下のような問題点があった。
▲1▼たとえば、マグネシウム合金を射出成型する際に供給されるマグネシウムチップ材は、かさ密度が0.79g/cm3と低く、体積比で44%が材料、残り56%にもなる多量の空気を含んでいる。そして、材料に付随する空気が十分に除去されないため、酸化物等が発生するから、成型品の品質劣化や装置の損傷が生じる。
▲2▼また、材料に付着した水分が除去されないため、酸化物等の発生がなくならないから、成型品の品質劣化や装置の損傷が防止できない。
▲3▼シリンダバレル901の下流側(射出ノズル側)で発生した二次的なガスを排気することができないため、該ガスの混入に起因する気泡が成型品に生じるおそれがある。
▲4▼強制排気に対応して不活性ガスの注入量が増大するため、成型コストが高くなる一因になっている。
さらに、従来の射出成型機はスクリューを用いるものであるから、以下のような問題点があった。
▲5▼スクリューが高価であるため、射出成型機の価格および保全コストが高くなる一因になっていた。特に、硬質の酸化物等が発生した場合には、射出成型機を分解して、スクリューの摩耗の補修または新規品への取替が頻発していた。
▲6▼スクリューの駆動機構が回転と並進を制御するものであるため、機構が複雑であって、作業停止や設備故障の一因になっていた。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、最小量の不活性ガスの使用によって成型品への酸化物等または気泡の取り込みを解消し、さらに、スクリューを用いないで射出成型を可能とする、射出成型機用の材料溶解装置およびこれを設置した射出成型機を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る材料溶解装置は、内部に収容した材料を溶解する筒体と、該筒体の底部と射出成型機の射出室とを連通する連通路と、前記連通路に配置され、溶解した材料が前記射出室から前記筒体に逆流することを防止する逆流防止手段とを有してなる。
これによると、▲1▼内部に収容した材料が筒体内で溶解されるから、該材料に付随した空気や水分が酸化物や窒化物等(以下、灰分と称す)を生じた場合でも、灰分は溶解した材料の表面に浮上して射出室に侵入することがなくなる。したがって、灰分の擦過による射出室や射出ノズルの損傷、並びに灰分の混入による成型品の品質低下がなくなる。
▲2▼また、該材料に付随した空気や二次的に発生したガス等が表面に浮上して射出室に侵入することがなくなる。したがって、ガス類の混入による成型品の品質低下がなくなる。
▲3▼さらに、射出成型機の射出室に、溶解状態の材料を供給するから、射出室内で材料を溶解する必要がなくなる。よって、射出室に材料を溶解するための加熱手段、並びに射出室内で固体状態、半溶解状態および溶解状態の材料を順次搬送するための搬送手段(通常、回転するスクリュー)等が不要になる。したがって、射出室回りの設備配置が簡素化され、かつ、耐熱材料で形成された複雑形状のスクリュー(高価である)が不要になるから射出成型機が安価になる。
▲4▼また、前記搬送が不要になるから、筒体に供給する材料の形状の制約がなくなる。すなわち、インゴット(鋳造ままの塊状体)や板状、粒状のものの供給が可能になるから、材料の加工コストが低減する。すなわち、従来は搬送容易(通常、スクリュー搬送容易)にするため、小片のチップに機械加工していたから材料コストが高くなっていた。なお、インゴット等はチップに比較して単位重量当たりの表面積が少ないから、筒体またはシリンダバレルに持ち込まれる空気や水分の量が激減する。
▲5▼また、逆流防止手段を有するから、射出室内を高圧にすることができるため、外部から射出室全体を加圧して該射出室内の材料を射出することが可能になる。すなわち、高温の材料に触れる範囲を最小にした射出プランジャーによる射出が可能になる。
特に、従来は溶解した材料中にスクリュー(搬送および射出の両機能を有する)を挿入していたから、高温(たとえば、マグネシウム合金を射出成型する場合、600℃前後)に曝されたスクリューが灰分との擦過によって早期に摩耗して短寿命であるため補修や取替に伴なって保全コストが上昇するという問題、また、補修や取替のため射出成型機を停止せざるを得ないため射出成型作業に支障を来していたという問題が、一挙に解決する。
【0008】
前記材料溶解装置において、前記筒体の内部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を有してなることが好ましい。
これによれば、筒体の内部が、材料と反応しない不活性ガスによって空気置換されるから、空気との反応によって生じる灰分の発生が最小に抑えられる。すなわち、筒体の表面に浮上する灰分が微量になるから、浮上した灰分を撤去することなく極めて長い期間連続して射出成型作業を継続することが可能になる。
なお、不活性ガスはアルゴン等の希ガス類に限定するものではなく、材料との間で硬質の酸化物ないし窒化物を生成しないものであればいずれのガスであってもよい。たとえば、窒化物が全くまたはほとんど生成されない材料を射出成型する場合には、窒素ガスを用いてもよい。同様に、炭化物が全くまたはほとんど生成されない材料を射出成型する場合には、一酸化炭素ガスまたは二酸化炭素ガスを用いてもよい。さらに、最終回の注気のみアルゴン等の希ガス類を使用して、それまでは安価な窒素、一酸化炭素ガスまたは二酸化炭素ガス等を用いてもよい。
【0009】
前記材料溶解装置において、前記材料が、マグネシウム合金であることが好ましい。
これによれば、特にかかる合金が空気と反応して生成する灰分が硬質であって、射出成型機の損傷を招くものであるものの、発生した灰分が浮上して射出室内に侵入しないため、該損傷が防止される。たとえば、溶解したマグネシウム合金AZ91Dの比重が1.82g/cm3であるのに対し、酸化マグネシウムMgOの比重は3.59g/cm3と重いものの、ポーラスなクラスター状に集塊するため浮上する。
なお、本発明において射出成型される材料は、チクソトロピー性を具備する低融点金属、ポリエチレンやポリプロピレン等の一般樹脂、金属粉末を分散した金属分散樹脂(MIM)等限定するものではない。
【0010】
前記材料溶解装置において、前記材料が、インゴット材、板状、塊状またはチップ状に形成してなることが好ましい。
これによれば、材料は筒体内で溶解自在な形状およびサイズであればよいから、インゴット材(所定の形状およびサイズに凝固(鋳造)したままの材料)をそのまま、筒体に供給することができるため、材料の加工が無くなり材料コストが低くなる。また、板状または塊状のまま、筒体に供給することができるため、材料の加工量が少なくなり材料の加工コストが低くなる(たとえば、スクリュウによる搬送可能なチップ状に加工する必要がない)。さらに、材料の表面積が少ないから、材料に付着する空気や水分量が少なく抑えられるため、灰分の発生量が少なくなる。
なお、チップ状に形成した場合は、筒体への供給量を微妙に調整することが可能になる。
【0011】
前記材料溶解装置において、前記筒体が上蓋によって略密閉されてなることが好ましい。
これによると、筒体内への空気の侵入が防止され、さらに、空気より軽い不活性ガス(ヘリウム等)を注入した場合でも上昇して散逸することがないから、少量の不活性ガスによって空気置換が確実になる。また、当然、高比重の六フッ化硫黄(SF6、1.9g/cm3)を使用する必要がないから、地球温暖化等の環境問題を誘起しない。
さらに、加熱された不活性ガスをホッパに誘導することができるから、これによって、筒体に供給される前の材料の予熱あるいは材料に付着した水分の除去を補助することができる。
【0012】
前記材料溶解装置において、前記筒体の外周に抵抗式加熱手段または電磁誘導加熱手段が設置されてなることが好ましい。
これによると、かかる加熱手段の発熱量の制御が容易であるから、材料の加熱温度を精度良く維持することが可能になる。すなわち、材料供給直後の温度低下に迅速に対応したり、材料供給直前の過剰加熱を防止することができる。また、材料の表面レベルの低下に応じて、筒体の上部の加熱を中止することが可能になるから、無駄な熱量に投入がなくなるため射出成型コストが低くなる。
【0013】
前記材料溶解装置において、前記逆流防止手段が、前記連通路に上面または下面が当接して該連通路を閉塞する昇降式遮蔽弁と、該昇降式遮蔽弁に設置された昇降棒と、該昇降棒を昇降する昇降棒昇降手段とを有することが好ましい。
これによると、昇降式遮蔽弁が下面を連通路に押し付けて連通路を閉塞するから、該押し付けによって確実な閉塞が可能になるとともに、昇降式遮蔽弁を持ち上げるだけで連通路が開通するから射出室への材料供給を容易かつ確実に制御することが可能になる。
あるいは、昇降式遮蔽弁が上面を連通路に押し当てて連通路を閉塞する場合は、射出成型の際の射出圧によって該押し当てがなされるから確実な閉塞が可能になるとともに、射出圧が作用していない時間帯に昇降式遮蔽弁を押し下げるだけで連通路が開通するから射出室への材料供給を容易かつ確実に制御することが可能になる。さらに、昇降棒を小径にして昇降棒昇降手段を小容量にすることが可能になる。
【0014】
前記材料溶解装置において、前記昇降棒に撹拌翼が設置され、前記昇降式遮蔽弁が前記連通路を開通している間、該昇降棒が回転自在であることが好ましい。これによると、筒体内で溶解状態または半溶解状態の材料が撹拌されるから、均一な溶解が促進されるとともに、溶解した材料全体が均一な温度になるため、射出成型の作業が安定して成型品の品質を維持することが可能になる。さらに、材料中で発生した灰分や二次的発生ガスの浮上を促進するため、成型品が高品質に維持されることになる。
【0015】
前記材料溶解装置において、前記逆流防止手段が、前記溶解した材料内で浮上して上面が前記連通路に当接する浮上式遮蔽弁からなることが好ましい。
これによると、浮上式遮蔽弁は溶解した材料中で浮上してその上面(外周面、端面または側面の上方に位置する範囲)が連通路に当接し、これを閉塞するから、射出成型の際の射出圧によって浮上式遮蔽弁は連通路に強く押し付けられるため、確実な閉塞が可能になる。
一方、射出室内に材料が吸引されるとき、浮上式遮蔽弁は該吸引圧によって下降して上部が連通路から遊離し、連通路を開通するから、射出室内に材料が流入することになる。したがって、浮上式遮蔽弁の昇降を制御するための制御手段が不要になる。
なお、当該浮上式遮蔽弁はマグネシウム合金よりも軽量であって、所定の高温強度を具備する必要がある。たとえば、耐熱合金製の中空体(球体、略円錐状体、略砲弾状体等)等によって形成する。
【0016】
前記材料溶解装置において、前記逆流防止手段が、前記連通路を横断する水平摺動式遮蔽弁と、該水平摺動式遮蔽弁を水平移動する遮断弁水平移動手段とを有することが好ましい。
これによると、遮断弁水平移動手段を連通路の側部に配置することができるから、溶解した材料内に該手段の構成部材を曝す必要がなくなる。
さらに、水平摺動式遮蔽弁の上面を連通路に押し当てて閉塞するから、射出圧を該押し当てに利用できるため確実な閉塞が可能になる。
なお、水平摺動式遮蔽弁の摺動は、射出圧が作用していない時間帯であるため、簡素かつ小容量の遮断弁水平移動手段(油圧シリンダ、ラックピニオン式等)によって可能である。
【0017】
さらに、本発明に係る射出成型機は、内部に収容した材料を溶解する筒体と、
該筒体の底部と射出成型機の射出室とを連通する連通路と、
前記連通路に配置され、溶解した材料が前記射出室から前記筒体に逆流することを防止する逆流防止手段と、
前記射出室の先端に設置された射出ノズルと、
前記射出室内に配置され、前記射出ノズル側に前進しながら前記射出ノズルから溶解した材料を射出し、かつ前記射出ノズルから後退しながら前記筒体から溶解した材料を吸引する射出プランジャとを有することが好ましい。
これによると、▲1▼内部に収容した材料が筒体内で溶解されるから、該材料に付随した空気や水分が酸化物や窒化物等(灰分)を生じた場合でも、灰分は溶解した材料の表面に浮上して射出室に侵入することがなくなる。したがって、灰分の擦過による射出室や射出ノズルの損傷、並びに灰分の混入による成型品の品質低下がなくなる。
▲2▼また、該材料に付随した空気や二次的に発生したガス等が表面に浮上して射出室に侵入することがなくなる。したがって、ガス類の混入による成型品の品質低下がなくなる。
特に、従来の射出成型機においては、射出室の射出ノズルに近い範囲(たとえば、流体輸送区間)において発生した二次的ガスを、遠方から(たとえば、相遷移区間および固体輸送区間を経由して)排出することが困難であったものが、極めて容易に除去されることになる。
▲3▼さらに、射出成型機の射出室に、溶解状態の材料を供給するから、射出室内で材料を溶解する必要がなくなる。よって、射出室に材料を溶解するための加熱手段、並びに射出室内で固体状態、半溶解状態および溶解状態の材料を順次搬送するための搬送手段(通常、回転するスクリュー)等が不要になる。したがって、射出室回りの設備配置が簡素化され、かつ、耐熱材料で形成された複雑形状のスクリュー(高価である)が不要になるから射出成型機が安価になる。
なお、射出室や射出ノズル回りに保熱用のヒータ(小発熱量)を設置しておけば、安定した射出成型を保証することができる。
▲4▼また、前記搬送が不要になるから、筒体に供給する材料の形状の制約がなくなる。すなわち、インゴット(鋳造ままの塊状体)や板状、粒状のものの供給が可能になるから、材料の加工コストが低減する。すなわち、従来は搬送容易(通常、スクリュー搬送容易)にするため、小片のチップに機械加工していたから材料コストが高くなっていた。なお、インゴット等はチップに比較して単位重量当たりの表面積が少ないから、筒体またはシリンダバレルに持ち込まれる空気や水分の量が激減する。
▲5▼また、逆流防止手段を有するから、射出室内を高圧にすることができるため、外部から射出室全体を加圧して該射出室内の材料を射出することが可能になる。すなわち、高温の材料に触れる範囲を最小にした射出プランジャーによる射出が可能になる。
特に、従来は溶解した材料中にスクリュー(搬送および射出の両機能を有する)を挿入していたから、高温に曝されたスクリューが灰分との擦過によって早期に摩耗して短寿命であるため補修や取替に伴なって保全コストが上昇するという問題、また、補修や取替のため射出成型機を停止せざるを得ないため射出成型作業に支障を来していたという問題が、一挙に解決する。
【0018】
前記射出成型機において、前記射出プランジャが前進している間は前記連通路を閉塞し、かつ後退している間は前記連通路を開通するよう前記逆流防止手段を制御する制御手段を有することが好ましい。
これによれば、射出プランジャの動作に確実に同調して連通路が開閉されるから、射出室に適宜適正な量の材料が供給される。また、逆流防止手段に射出圧が作用していない時間帯に限ってこれを動作させることができるから、該動作が円滑であって、該手段の損傷を防止することができる。
【0019】
前記射出成型機において、前記射出室または射出ノズルの一方または両方を加熱する、抵抗式加熱手段または電磁誘導加熱手段を有することが好ましい。
これによれば、筒体内で所定の温度に加熱された材用の温度を、さらに正確に保持または調整することが可能になるから、射出成型作業がさらに安定して成型品の品質を高く維持することができる。
【0020】
前記射出成型機において、前記筒体の内部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を有することが好ましい。
これによれば、筒体の内部が、材料と反応しない不活性ガスによって空気置換されるから、空気との反応によって生じる灰分の発生が最小に抑えられる。すなわち、筒体の表面に浮上する灰分が微量になるから、浮上した灰分を撤去することなく極めて長い期間連続して射出成型作業を継続することが可能になる。
【0021】
前記射出成型機において、前記材料が、マグネシウム合金であることが好ましい。
これによれば、特にかかる合金が空気と反応して生成する灰分が硬質であって、射出成型機の損傷を招くものであるものの、発生した灰分が浮上して射出室内に侵入しないため、該損傷が防止される。なお、本発明において射出成型される材料は、チクソトロピー性を具備する低融点金属、ポリエチレンやポリプロピレン等の一般樹脂、金属粉末を分散した金属分散樹脂(MIM)等限定するものではない。
【0022】
【発明の実施の形態】
[実施形態1]
(材料溶解装置)
図1は本発明の実施形態1に係る射出成型機の材料溶解装置を縦断面で示した模式図である。図1において、1は射出成型機の材料溶解装置(以下、材料溶解装置と称す)、3は射出成型される材料(以下、材料3と称す)、10は材料3を受け入れるホッパ、20は材料3を所定の量だけ切り出し自在な定量供給手段、30は材料3を加熱して溶解する溶解室、31は内部に溶解室30を具備する筒体、32は溶解室30を加熱する加熱ヒータ、33は溶解室を密閉する上蓋である。
また、40は溶解した材料3(以下、溶解または半溶解の材料を材料4と称する場合がある)が溶解室30に逆流しないように下記連通路50を遮断する遮蔽弁、41は遮断弁40を支持する遮断弁支持棒、42は遮断弁支持棒41を駆動する遮断弁開閉用油圧シリンダ、50は溶解室40と下記射出室60を連通する連通路である。
さらに、91はアルゴンガスを供給するアルゴン供給口、92は加熱された材料4の温度を測定する熱電対、93は材料4の表面(溶解または半溶解)の位置を測定するための材料位置センサである。以下、各部位毎に説明する。
【0023】
(材料)
材料3は、チクソトロピー性を具備する低融点金属(たとえば、マグネシウム合金AD91D)、ポリエチレンやポリプロピレン等の一般樹脂、金属粉末を分散した金属分散樹脂(MIM)等限定するものではない。
材料3は、溶解室20に供給自在であって溶解自在な形状およびサイズであればよいから、インゴット材(所定の形状およびサイズに凝固(鋳造)したままの材料)、板状または塊状のもの、さらにチップ状に加工されたもの等いずれであってもよい。
なお、インゴット材、板状または塊状のまま使用する場合には、チップ状に加工する必要がないため材料3の加工コストが低くなる。さらに、材料の表面積が少ないから、材料に付着する空気や水分量が少なく抑えられるため、灰分の発生量が少なくなる。
【0024】
(ホッパ)
ホッパ10は、底部に定量供給手段20が設置された筒状であって、図示しない材料搬送手段(たとえば、エアーローダ等)によって材料3が搬送されてくる。
また、ホッパ10には図示しない上蓋が設置され、あらかじめ乾燥された材料3の吸湿を防止している。
【0025】
(定量供給手段)
定量供給手段20は、材料3を所定の量だけ切り出して溶解室30に供給するものであって、その型式は限定するものではない。
たとえば、図示しない制御手段からの指令(たとえば、一定数のショット回数毎)に基づいて、材料位置センサ93が材料4の表面が供給上限位置に到達したことを検出するまで、スクリューフィーダが材料3を供給したり、あるいは、材料位置センサ93が材料4の表面が下限位置にまで減少したことを検出したところで、あらかじめボックスフィーダに切り出した一定量の材料3を供給したりする。
なお、材料3がインゴット材、板状または塊状のままの場合、定量供給手段20をベルトフィーダ(ベルトコンベアに同じ)によって形成し、材料位置センサ93が材料4の表面が下限位置にまで減少したことを検出したところで、ベルトフィーダを所定の時間だけ駆動(ベルトを所定の距離だけ移動)してベルト上の前記インゴット等を投入する。このとき、ホッパ10を振動ホッパにしてインゴット等を整列させてベルト上に載置すれば、より正確な個数の投入が可能になる。
また比較的大きい5kgインゴット等の場合はインゴットを傾斜させ、先端から除々にインゴットを落下させ、液面レベルをモニターしながら数100gづつ落とし込めば、溶湯の液温変化も少なく溶解が可能である。
【0026】
(溶解室)
溶解室30は、底部に連通路50が設けられた筒体31の内部に形成され、上蓋33および遮断弁40によって略気密的ないし液密的に閉塞されるものである。
溶解室30には、定量供給手段20を経由して材料3が供給され、加熱ヒータ32によって加熱されて溶解する。このとき、熱電対93によって材料4の温度が測定されて図示しない制御手段によって投入熱量が制御されるから、材料3は溶解して若しくは固液共存状態で所望の温度に達している(材料4になっている)。
また、上蓋33に設置されたアルゴン供給口91からアルゴンが供給されて溶解室30内の空気は置換されている。なお、過剰なアルゴンは定量供給手段20の隙間を経由してホッパ10に流出している。
よって、材料3は空気を排除した状態で加熱溶解されるから、酸化物や窒化物等の灰分の発生が最小に抑えられる。さらに、溶解室30が立設した筒状(軸方向が略鉛直方向に配置されている)であるから、灰分が発生したとしても、これらは容易に浮上する。また、溶解した材料4中に二次的なガスが発生した場合でも、これらは容易に浮上する。
なお、アルゴン供給口を筒体31の側壁下方にして、溶解した材料4中にアルゴンを注入してもよい。このとき、いわゆるバブリング効果によって発生した灰分の浮上が促進されるから材料4の清浄度がさらに向上する。
【0027】
(遮断弁)
遮断弁40は、連通路50を開通して材料4を射出室60に供給すると共に、連通路を遮断して射出成型の際に材料4が射出室60から溶解室40に逆流しないようにするものである。
すなわち、射出成型開始の直前に、遮断弁開閉用油圧シリンダは遮断弁40の下面を連通路50(正確には、溶解室30の底部で連通路50の周囲)に押し付けて、これを閉塞する。さらに、射出成型中(射出プランジャ70が前進中)は射出圧に対抗して遮断弁40を押し付け続ける。
そして、射出成型が終了して射出プランジャ70が後退する際、遮断弁40は持ち上げられて連通路50は開通するから、材料4は射出プランジャ70による吸引圧および材料4自身のヘッド圧によって射出室60に流入することになる。なお、遮断弁40が持ち上げられている時間帯に限り、遮断弁支持棒41を回転して溶解した材料4を撹拌してもよい。このとき、遮断弁40の上部あるいは遮断弁支持棒41の側面に撹拌翼を設置しておけば、該撹拌が促進される。
さらに、溶解室30の底部で遮断弁40が当接する範囲を、溶解室の筒状部とは別材質で別個に製作して両者を嵌合してもよい(いわゆる中子を嵌合する)。このとき、筒状部の製作コストを安価に抑えたままで、該当接部を耐摩耗性に優れた構成にすることができる。
なお、遮断弁40は溶解室30の底部に面接触するものに限定するものではなく、円環状に線接触してもよい。たとえば、遮断弁40の形状が、円錐状、円錐台状、砲弾状等であって、これが連通路50の口元、溶解室30の底部に設けた円錐状の斜面や円環状の突起等に当接してもよい。
【0028】
(アルゴンガス)
溶解室30を空気置換するためのガスは、アルゴンガスやヘリウムガス等の希ガス類元素に限定するものではない。たとえば、材料3がマグネシウム合金等の金属の場合、一酸化炭酸ガスまたは二酸化炭酸ガス等の酸化物または窒化物を生成しない安価なガスであってもよい。また、材料が一般の熱可塑性樹脂の場合、安価な窒素ガスを用いて酸化を防止してもよい(本発明において、これらを不活性ガスと総称する)。
【0029】
(材料位置センサ)
材料位置センサ93は、所定の高さに材料4(溶解または半溶解)があることを検出するものであって、上昇して来る材料の表面(上面)が該センサ先端に到達したことを検出する場合と、材料4中に浸漬されて該センサ先端が下降する材料4から露出したことを検出する場合とがある。
なお、材料位置センサ93の形式は限定するものではなく、渦電流、誘電率または漏洩磁束等(またはその変化)を検出する電磁式、噴射する不活性ガスの圧力(またはその変化)を検出する流体式、あるいは熱電対と共用して温度変化を検出する測温式等いずれであってもよい。
【0030】
また、図中、材料位置センサ93は1本のみ記載されているが、本発明はこれに限定するものではなく、たとえば、上限位置、中央位置および下限位置にそれぞれ設置してもよい。このとき、上限位置の材料位置センサによって材料4が収容可能な最大量まで供給されたことを検出したり(材料供給の停止信号に利用)、中央位置の材料位置センサによって材料4が減少して新たに材料4を追加するタイミングに到達したことを検出したり(材料供給の開始信号に利用)、さらに下限位置の材料位置センサによって材料4が異常に減少したことを検出したりする(設備異常の警報に利用)。
【0031】
(筒体)
筒体31の底部外周にはフランジ34が設けられ、フランジ34に射出シリンダ(図示しない)に設置するための設置用ボルト39が貫通する設置用穴35が穿設されている。なお、フランジ34の下面は図示しない射出シリンダの外面に均一に当接するよう円筒状に形成され、さらに、連通路50の周囲にシール部材を設置するための環状溝36が設けられている。なお、環状溝36は射出シリンダ側に設けられた場合には省略することができる。
【0032】
(加熱ヒータ)
加熱ヒータ32は筒体31の外周を巻回する電気抵抗線または高周波加熱コイルである。したがって、投入熱量の調整が容易であって、細かい温度制御が可能になる。
さらに、加熱ヒータ32を鉛直方向で複数のブロックに区分し、各ブロック毎に通電停電の制御や通電量の制御を実施すれば溶解効率や熱効率が向上する。たとえば、ホッパから材料3が供給された直後は、上方ブロックの通電量を多めにして溶解を促進し、一方、材料3の表面レベルが下方にある間は、上方ブロックの通電を停止または通電量を絞って無駄な加熱を防止する等、適宜制御することが可能になる。また、熱電対92を複数箇所に配置して、複数箇所の測定温度に基づいてかかる制御を実施してもよい。
【0033】
(制御装置)
図示しない制御装置は、材料溶解装置1が設置される射出成型機から入力される射出成型信号に基づいて、遮断弁40、定量供給装置20、加熱ヒータ32を制御をするものである。後記実施の形態2において詳細に説明する。
【0034】
(実施例1)
図2は本発明の実施形態1に係る射出成型機の材料溶解装置の一部を断面で示した模式図である。なお、図1と同じ部分には下二桁をこれと同じ符号とし、一部の説明を省略する。
図2の(a)において、材料溶解装置100は、筒体131の底部に中子151が嵌設され、シール部材152を介して図示しない射出成型機の射出シリンダに液密的に設置されるものである。
中子151には連通路150が設けられ、連通路150の口元R部154に砲弾状の遮断弁140の先端曲面が当接する。すなわち、遮断弁140が遮断弁支持棒141によって押し下げられた際、連通路150が遮蔽される。また、遮断弁支持棒141には撹拌翼143が設置され、遮断弁支持棒141が持ち上げられている間(連通路150が開通している時間帯に同じ)に限り回転して溶解した材料4を撹拌する。
なお、遮断弁支持棒141は、射出成型の際に射出圧が作用しても座屈しないよう所定の剛性を具備した構造になっている。また、遮断弁支持棒141を昇降する図示しない遮断弁開閉用油圧シリンダは、同様に所定の容量を具備するものになっている。
【0035】
図2の(b)において、材料溶解装置200は、筒体231の底部に中子251が嵌設され、シール部材252を介して図示しない射出成型機の射出シリンダに液密的に設置されるものである。
中子251には連通路250と、連通路250の下部に遮断弁240を収納自在な拡大部253とが設けられている。そして、拡大部253の上面は円錐状に形成され、該円錐部の円環状の突起255が形成されている。
遮断弁240は円錐台状であって、上部に遮断弁支持棒241が設置されて図示しない遮断弁開閉用油圧シリンダによって昇降される。
したがって、遮断弁240が引き上げられた際、連通路250が遮蔽され、さらに、射出成型の際の射出圧が遮断弁240に作用するから、射出成型の際の遮断が確実になる。
また、射出成型が終了した後、射出圧が遮断弁240に作用していない間に、遮断弁240は押し下げられて連通路250が開通する。したがって、遮断弁支持棒241には射出成型時の大きな圧力が作用しないから座屈する心配がないため小径であって、図示しない遮断弁開閉用油圧シリンダは小容量のものにすることができる。
【0036】
図2の(c)および(d)において、材料溶解装置300は、筒体331の底部に中子351が嵌設され、シール部材352を介して図示しない射出成型機の射出シリンダに液密的に設置されるものである。
中子351には図中、鉛直方向に連通路350と、連通路350に直交して遮断弁340を収納自在な水平溝353とが設けられている。また、筒体331には水平溝353に連続した横穴337が穿設されている。
一方、遮蔽弁340は板状であって、連通路350と略同一形状の貫通穴343が穿設され、進退するための連結棒344を介して進退用シリンダ345に連結されている。
そして、板状の遮蔽弁340は横穴337を経由して水平溝353に挿入され、連通路350を遮断し、さらに、連通路350と貫通穴343が一致したところで連通路350を連通する。なお、遮断弁340の上面はシール部材346によって溶解した材料4のヘッド圧に対抗して液密的に密閉され、一方、遮断弁340の下面はシール部材347によって射出圧に対抗して液密的に密閉されている。
【0037】
図2の(e)において、材料溶解装置400は、筒体431の底部に中子451が嵌設され、シール部材452を介して図示しない射出成型機の射出シリンダに液密的に設置されるものである。
中子451には連通路450と、連通路450の下部に遮断弁440を収納自在な拡大部453とが設けられている。そして、拡大部453の上面は球状の遮断弁440が液密的に当接するよう円錐状に形成されている。
一方、遮断弁440は球状であって、射出成型される材料4より軽量であるため、溶解した材料4中で浮上して連通路450を遮断する。特に、射出成型の際は射出圧が遮断弁440に作用するから、射出成型の際の遮断が確実になる。
一方、射出成型が終了して射出室内が減圧(図示しない射出プランジャが後退)されたとき、遮断弁440は吸引されて下降するから、連通路450は開通する。
したがって、遮断弁440の昇降動作を制御するための制御手段を設置する必要がない。
なお、遮断弁440としてアルミナ粉末を焼結した球体を用いているが、本発明はこれに限定するものではなく、耐熱合金鋼によって形成された中空の球体等であってもよい。また、球体に代えて円錐状体や砲弾状体にしてもよい。
【0038】
[実施形態2]
(射出成型機)
図3は本発明の実施形態2に係る射出成型機を縦断面で示した模式図である。図3において、2は射出成型機、60は射出成型機2の射出室、61は内部に射出室60を具備する筒状の射出シリンダ、62および63は射出室60を保温する保温ヒータ、65は射出シリンダの側面に穿設して連通路、70は射出成型機2の射出プランジャ、71は射出プランジャ70を支持する射出プランジャロッド、72は射出プランジャロッド71を駆動する射出用油圧シリンダ、80は射出成型機2の射出ノズル、82および83は射出ノズル80を保温する保温ヒータである。
すなわち、射出成型機2は、射出シリンダ61の外面に実施の形態1(図1)に示す材料溶解装置1が、シール部材38によって液密性が保証された状態で設置用ボルト39によって設置されたものである。なお、材料溶解装置1の外周には断熱カバー37が配置され、底部には中子51(連通路50が穿設されている)が嵌合されて中子51にシール部材38が設置されている。
また、図示しない射出成型用の油圧ユニットと、金型をホールドして開閉する金型開閉機構とを有している。なお、実施の形態1(図1)と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0039】
(射出室)
射出室60は射出シリンダ61によって形成された円筒状の空間であって、略中央で連通路65が材料供給装置の連通路50に重なっている(以下、射出シリンダ61の連通路65と材料供給装置(筒体31に同じ)の連通路50を会わせて、連通路50と総称する)。また、一方の端部から射出プランジャ70が挿入され、他方の端部に射出ノズル80が設置されている。
さらに、射出シリンダ61の外周には保熱ヒータ62および63が、射出ノズル80の外周には保熱ヒータ82、83が設置され、それぞれ射出成型時の材料4の温度を正確に制御している。
【0040】
(射出プランジャ)
射出プランジャ70は射出プランジャロッド71を介して射出用油圧シリンダ72によって前後進され、これに配置したシールリング73が射出室60に液密的に当接して摺動するから、材料4のシール(漏れ出し防止)が図られている。なお、図中、2本のシールリング73が配置されているが、本発明はこれに限定するものではなく、3本またはそれ以上であってもよい。また、材料4が漏れ出した(リークした)場合でも、射出プランジャロッド71の温度が低いため、漏れ出した材料4が固化して後部のシールリング部でシール効果を奏する。
また、射出プランジャ70はその端面のみが溶解した材料4に直接接触するだけで全体が高温に曝されることがなく、しかも単純な形状をしている。したがって、耐摩耗性、耐熱変形性に優れているから、射出量を長時間に渡って正確に制御することが可能になる。
また、端面に限定して高価な耐熱合金や耐熱セラミックスを使用したり、外周に設けた円環状溝にシールリングを配置したりすることができるから、コストを抑えたまま、耐摩耗性、耐熱変形性、容易摺動性や液密性をさらに高めることが可能になる。特に、従来の射出スクリューに較べると、高温に曝される範囲が格段に狭く、また、形状も極めて簡単になっているから、高価な加工性の悪い特殊材料を用いて形成する必要が無くなるため製造コストが激減する。
【0041】
(射出プランジャロッドの断熱)
図4は、図3に示す射出成型機における射出プランジャロッドの断熱手段の実施例を説明する模式図であって、射出プランジャ70に材料4から伝わった熱が射出プランジャロッド71を介して射出用油圧シリンダ72に伝わることを防止する(作動油の劣化を防止する)ためのものである。なお、図3と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図4の(a)は射出プランジャロッド71の内面冷却を示す実施例である。射出プランジャロッド71の中間に冷却水が流れる空洞74を設け、ここに冷却水を給水管75から供給して排水管76から排水している。よって、射出プランジャロッド71は中間位置で冷却されるから、射出用油圧シリンダ72への伝熱が防止される。
図4の(b)では、図4の(a)の空洞74内に隔壁77を設けて略U字状の水路を形成し、ここに冷却水を給水管75から供給して排水管76から排水している。このとき、給水管75および排水管76を射出プランジャロッド71の軸方向で略同一位置に配置できるから、射出プランジャロッド71の長さを抑えることができる。
【0042】
図4の(c)は射出プランジャロッド71の外面冷却を示す実施例である。射出プランジャロッド71が貫通する冷却箱101を射出シリンダ61と射出用油圧シリンダ72との間に配置し、ここに冷却水を給水管102から供給して排水管103から排水している。このとき、射出プランジャロッド71の側面に給水管等の部材を設置しないから射出プランジャロッド71の長さを該冷却のために延長する必要がない。
なお、給水管102および排水管103の設置位置は図示するものに限定するものではなく、下方から上方への流れ、水平方向の流れ、対角方向の流れ等いずれの方向であってもよい。
さらに、給水管102にスプレイノズルを設置してスプレイ冷却をしてもよい。このとき、スプレイノズルを複数にして射出プランジャロッド71の側面の全周に直射すれば高い冷却効果が得られる。また、冷却水を霧状に直射するミスト冷却をしてもよい。
【0043】
図4の(d)は射出プランジャ70と射出プランジャロッド71とを断熱手段を介して接合した実施例を示す断面図である。射出プランジャ70に止まり孔201が設けられ、止まり孔201に断熱スリーブ202(工業用セラミックスによって形成された底付の短管)を介して射出プランジャロッド71が連結され、軸方向と直角の方向に抜け出し防止のための断熱ピン203(工業用セラミックスによって形成された棒)が挿入されている。よって、射出プランジャ70に流入した熱が射出プランジャロッド71に伝わり難くなるから、射出用油圧シリンダ72への伝熱が防止される。
なお、断熱ピン203が緩んだ場合でもその端面が射出室60の内壁に当接するから脱落することがない。また、断熱ピン203とシールリング73とを同一位相に配置して、シールリング73よって脱落防止を図ってもよい。
さらに、前記内面冷却または外面冷却を併用してもよい。また、射出プランジャ70と射出プランジャロッド71とを直接連結して、射出プランジャロッド71を軸方向で二分割し、該両者を断熱スリーブおよび断熱ピンを介して連結してもよい。
【0044】
(定量供給手段)
図5は本発明の実施形態2に係る射出成型機の定量供給手段の一実施例を縦断面で示した模式図である。なお、図3と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図5において、定量供給手段21は、インゴット5(たとえば、厚さ5cm、幅11cm、長さ50cm)を供給するためのものであって、溶解室30の上部に連通して、筒体31に傾斜して設置された供給箱22と、供給箱22の上部を気密的に遮蔽する蓋23と、供給箱22に供給されたインゴット5を把持して、所定の量だけ搬送自在な定量供給ローラ24を有している。
【0045】
すなわち、蓋23を開いて、図示しないインゴット搬送手段によってインゴット5を供給箱22内に収容し、その後、蓋23を気密的に閉じる。そして、溶解室30内の溶解している材料4の減少量に応じて、定量供給ローラ24を回転してインゴット5を下方に搬送し、その先端から除々に溶解している材料4中に浸漬する。
したがって、比較的大きい(たとえば、5kg)インゴット等の場合であっても、溶解している材料4のレベルをモニターしながら所定の量(たとえば、数100g)づつ落とし込むことができるから、溶解している材料の温度変化を最少に押さえるため、均一で安定した品質の溶解した材料4を射出室60に供給することが可能になる。
なお、図中、3台の定量供給ローラ24を一列に配置して、定量供給ローラ24がインゴット5を供給箱22の底面に押圧しているが、本発明はこれに限定するものではなく、定量供給ローラ24を二列に配置してこれによってインゴット5を挟持してもよい。また、定量供給ローラ24の数量は限定するものではない。
【0046】
(制御手段)
射出成型機2における図示しない制御手段は、以下のような作業が円滑に実行されるよう各部材の制御を行っている。
▲1▼ホッパ10に材料3が供給される。すなわち、ホッパ10内に収容された材料3の量を計測する計測手段(図示しない)によって、ホッパ10内の材料3が所定の量より減少したことが検出されると、図示しない材料搬送手段(たとえば、エアーフィーダ、ベルトコンベア等)によって、材料3が所定の量だけホッパ10に供給される。
▲2▼材料3は定量供給手段20によって溶解室30に定期的に供給される。したがって、溶解室30内にはその量が増減するものの常時所定の量の材料3が収容され、加熱ヒータ32によって加熱され溶解している(溶解した材料を材料4と称す)。
定量供給手段20は、一定時間毎に起動されて所定の上限位置まで材料3を供給するように制御されたり、一定の下限位置まで材量4が減少したときに、あらかじめ収容している一定量の材料3を供給するように制御してもよい。
また、加熱ヒータ32の制御は、熱電対92の測定信号に基づいて実施される。
さらに、溶解室30における材料3の温度信号を、射出室60の保温ヒータ62または射出ノズル80の保温ヒータ82の制御にフィードフォワードして、射出成型時の材料4の温度を高精度に維持してもよい。
【0047】
▲3▼射出室60が溶解した材料4で満たされた状態(定常作業状態)において、遮断弁40が下降して連通路50を閉塞する。
▲4▼そして、射出プランジャ70が射出ノズル80側に移動(以下、前進と称す)して、射出室60内の材料4を射出ノズル80を経由して図示しない金型内に射出する。プランジャ70は、連通路65よりノズル80側に移動することはない。
▲5▼射出プランジャ70は所定の量の射出を終えると所定の時間だけ停止する。この間に金型内の材料4は冷却されて固化する(すなわち、成型品となる)。
また、射出ノズル80の先端は図示しない金型のスプールに当接しているため冷却され、射出ノズル80の先端部に停留している材料3もまた冷却されて固化し、いわゆるコールドプラグと呼ばれる栓が形成される。
【0048】
▲6▼つぎに、遮断弁40が上昇して連通路50が開通した状態で、射出プランジャ70が後退する。このとき、溶解室30内の材料4は自らのヘッド圧および射出プランジャ70の吸引圧によって射出室60に流入する。
なお、これに並行して、図示しない金型は開かれて成型品が回収される。また、射出ノズル80は前記コールドプラグによって閉塞されているため、射出ノズルを経由して空気が射出室60内に吸引されることはない。
▲7▼そして、射出室60に所定の量(1回のショットで射出される量に同じ)の材料4が供給されると、すなわち、射出プランジャ70が所定の距離だけ後退すると、遮断弁40が下降して連通路50を閉塞する。
▲8▼以降、前記▲4▼〜▲7▼の動作が繰り返されて成型品が継続して製造される。
【0049】
なお、射出ノズル80の先端を閉塞していた前記コールドプラグは、次回の射出成型の際、射出圧によって金型内に押し出される。通常、金型のメインランナの終端部(射出ノズルの延長線上に位置する主湯路の終端部)にコールドプラグポット(コールドプラグ捕捉用凹部)が設けられているため、コールドプラグはここに捕捉されるから、メインランナに直交して各キャビティに向けて分岐したサブランナ(副湯路)に侵入すること、あるいは、成型品に混入することがない。
【0050】
さらに、溶解室30に材料4が無い状態で、すなわち、射出室60が溶解した材料4で満たされていない状態で、射出成型作業が継続されることを防止するため、射出プランジャ70の前進開始に際し所定のインターロックを設けてもよい。
たとえば、溶解室30の底部に材料4を検出する材料確認センサを設置したり、プランジャ70の前進開始直後に射出圧が立ち上がらないことを検出する圧力センサまたは荷重センサを設置したり(たとえば、遮断弁支持棒41は射出プランジャロッド71に設置)して、該センサの検出信号を利用することができる。
【0051】
なお、溶解室30で浮上した灰分は、アルゴンガスの供給によって最小に抑えられているから、溶解した材料4の表面を覆うこともなく頻繁に除去する必要がない。また、材料3の供給時に溶融した材料4内に巻き込まれることもない。
【0052】
(実施例)
以下、前記射出成型機2を用いてマグネシウム合金AZ91Z(以下、本実施例において、材料はマグネシウム合金AZ91Zを示す)を射出成型して液晶パネルを製造する場合について説明する。なお、成型重量は45g、射出成型機2の型締め力は140tonである。
【0053】
材料3は、あらかじめ旋盤またはフライス盤等で削り出された5〜10mmサイズのチップ(以下、合金チップと称す)を使用し、エアーローダによってホッパ10に供給した。
また、定量供給装置20としてスクリューフィーダを使用して、溶解室30への供給量の調整を容易にした。すなわち、材料位置センサ93の一方を材料4の下限位置に配置し、他方を上限位置に配置して、材料4の液面が下限位置に達した時点でスクリューフィーダの回転を開始し、材料4の液面が上限位置に達した時点でスクリューフィーダの回転を停止した。
【0054】
溶解室30は内径が略150mm、高さが略200mmの円筒であって、約5Kgの材料4を収容することができる。また、上蓋31に設けたアルゴン供給口91から毎分略1リットルのアルゴンを常時供給した。溶解室30は略密閉されているため、十分に空気置換され、供給したアルゴンはスクリューフィーダの隙間を通ってホッパ10に流出した。
【0055】
溶解室30に供給された合金チップは既に溶解している材料4の表面で容易に溶解した。なお、発生した灰分は材料の表面に浮上するものの、発生量はわずかであるため、合金チップが灰分の上に乗って溶解が遅延することはなかつた。
また、蓄積した灰分は1週間の連続操業で300g程度であったから、週1回のペースで除去すれば全く支障がなかつた。該除去は上蓋33を開き、掬い取り手段または吸引手段によって実施したが、筒体31に灰分排出用の貫通穴を設け、ここから筒体31外に排出してもよい。
【0056】
また、溶解室30には10Kwの加熱ヒータ32が設置され、図示しない制御装置によって620±10℃に管理された。加熱ヒータ32は大容量として、射出成形機を起動した際の溶解の迅速化を図っている。
さらに、射出シリンダ60および射出ノズル80においても、材料4は保熱ヒータ62および保熱ヒータ82によって620±10℃に管理されている。材料温度が610℃以下になると、固相が発生し始め射出成型時の金型充填性が悪化し(キャビティにアンダーフィルが発生する)、一方、材料温度が630℃を超えると射出シリンダ61や金型を構成する金属材料が急速に強度を失ってしまうからである。
【0057】
遮断弁40は射出シリンダ70が後退動作をしている間上昇して、材料4が射出室60に流入する。また、射出成型時には、高圧(ピーク時には100MPaに達する)が働くため、遮断弁開閉用油圧シリンダ42によって強力に下方に押し付けている。なお、連通路50の内径を射出室60の内径のたとえば1/4程度にして、連通路50の面積を小さく(1/16)することによって該押し付け力を低く抑えている。
【0058】
射出成型終了後に射出ノズルに栓をするコールドプラグは、次の射出成型時に金型内のコールドプラグポケットに捕捉され、サブランナの詰まりや成型品に混入することがなかった。
すなわち、射出成型作業は極めて円滑に継続され、得られた成型品には、灰分の混入がないため、成型後の二次加工において刃物の折損がなく、また刃物の寿命が延長した。また、成型品の表面にシワや異物が現れないため、防錆処置の効果が高く、塗装性も向上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1に係る射出成型機の材料溶解装置の模式図。
【図2】実施形態1に係る射出成型機の材料溶解装置の一部の模式図。
【図3】実施形態2に係る射出成型機を縦断面で示した模式図。
【図4】射出プランジャロッドの断熱手段の実施例を説明する模式図。
【図5】射出成型機の定量供給手段の一実施例を縦断面で示した模式図。
【図6】従来の低融点金属材料の射出成型機を説明する模式図。
【符号の説明】
1 材料溶解装置、2 射出成型機、3 材料、4 溶解または半溶解の材料、10 ホッパ、20 定量供給手段、30 溶解室、40 遮蔽弁、50 連通路、60 射出室、70 射出プランジャ、80 射出ノズル
【発明の属する技術分野】
本発明は射出成型機、特に、合金等の射出成型に好適な射出成型機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6は、従来の低融点金属材料の射出成型機を説明する模式図である。図6において、射出成型機900は、射出される低融点金属材料(以下、材料と称す)が投入されるホッパ919と、ホッパ919に連通して材料を加熱、混練、攪拌するためのシリンダバレル901(外面にヒータ914が配置されている)と、シリンダバレル901内に配置されて材料を移送しかつ射出するスクリュー902と、シリンダバレル901の先端に設置され図示しない金型に当接するノズル906を有している。
【0003】
すなわち、ホッパ919から供給された材料は、スクリュー902の回転によって図中左側に移送されながら加熱され、混練攪拌される。そして、スクリュー902の前進によってノズル906から図示しない金型内に射出される。
また、ホッパ919は、上蓋919aによって密閉され不活性ガス供給装置903から窒素、アルゴン等の不活性ガスが供給されている。さらに、シリンダバレル901の後端部には排気装置905が設置されてシリンダバレル901内のガスが強制排気されている。
したがって、シリンダバレル901の上流側(ホッパ側)に不活性ガスが供給されることにより材料の酸化が防止され、酸化物の再溶解に起因する不純物の混入が防止される。さらに、シリンダバレル901の上流側(ホッパ側)の不活性ガスを強制排気することにより不活性ガスの混入に起因する気泡が成型品に生ずることがないから、成型品の品質が良好に維持されるとするものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−304733号公報(第5頁、図4)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の射出成型機は、密閉したホッパに不活性ガスを注入して空気置換するものであるから、以下のような問題点があった。
▲1▼たとえば、マグネシウム合金を射出成型する際に供給されるマグネシウムチップ材は、かさ密度が0.79g/cm3と低く、体積比で44%が材料、残り56%にもなる多量の空気を含んでいる。そして、材料に付随する空気が十分に除去されないため、酸化物等が発生するから、成型品の品質劣化や装置の損傷が生じる。
▲2▼また、材料に付着した水分が除去されないため、酸化物等の発生がなくならないから、成型品の品質劣化や装置の損傷が防止できない。
▲3▼シリンダバレル901の下流側(射出ノズル側)で発生した二次的なガスを排気することができないため、該ガスの混入に起因する気泡が成型品に生じるおそれがある。
▲4▼強制排気に対応して不活性ガスの注入量が増大するため、成型コストが高くなる一因になっている。
さらに、従来の射出成型機はスクリューを用いるものであるから、以下のような問題点があった。
▲5▼スクリューが高価であるため、射出成型機の価格および保全コストが高くなる一因になっていた。特に、硬質の酸化物等が発生した場合には、射出成型機を分解して、スクリューの摩耗の補修または新規品への取替が頻発していた。
▲6▼スクリューの駆動機構が回転と並進を制御するものであるため、機構が複雑であって、作業停止や設備故障の一因になっていた。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、最小量の不活性ガスの使用によって成型品への酸化物等または気泡の取り込みを解消し、さらに、スクリューを用いないで射出成型を可能とする、射出成型機用の材料溶解装置およびこれを設置した射出成型機を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る材料溶解装置は、内部に収容した材料を溶解する筒体と、該筒体の底部と射出成型機の射出室とを連通する連通路と、前記連通路に配置され、溶解した材料が前記射出室から前記筒体に逆流することを防止する逆流防止手段とを有してなる。
これによると、▲1▼内部に収容した材料が筒体内で溶解されるから、該材料に付随した空気や水分が酸化物や窒化物等(以下、灰分と称す)を生じた場合でも、灰分は溶解した材料の表面に浮上して射出室に侵入することがなくなる。したがって、灰分の擦過による射出室や射出ノズルの損傷、並びに灰分の混入による成型品の品質低下がなくなる。
▲2▼また、該材料に付随した空気や二次的に発生したガス等が表面に浮上して射出室に侵入することがなくなる。したがって、ガス類の混入による成型品の品質低下がなくなる。
▲3▼さらに、射出成型機の射出室に、溶解状態の材料を供給するから、射出室内で材料を溶解する必要がなくなる。よって、射出室に材料を溶解するための加熱手段、並びに射出室内で固体状態、半溶解状態および溶解状態の材料を順次搬送するための搬送手段(通常、回転するスクリュー)等が不要になる。したがって、射出室回りの設備配置が簡素化され、かつ、耐熱材料で形成された複雑形状のスクリュー(高価である)が不要になるから射出成型機が安価になる。
▲4▼また、前記搬送が不要になるから、筒体に供給する材料の形状の制約がなくなる。すなわち、インゴット(鋳造ままの塊状体)や板状、粒状のものの供給が可能になるから、材料の加工コストが低減する。すなわち、従来は搬送容易(通常、スクリュー搬送容易)にするため、小片のチップに機械加工していたから材料コストが高くなっていた。なお、インゴット等はチップに比較して単位重量当たりの表面積が少ないから、筒体またはシリンダバレルに持ち込まれる空気や水分の量が激減する。
▲5▼また、逆流防止手段を有するから、射出室内を高圧にすることができるため、外部から射出室全体を加圧して該射出室内の材料を射出することが可能になる。すなわち、高温の材料に触れる範囲を最小にした射出プランジャーによる射出が可能になる。
特に、従来は溶解した材料中にスクリュー(搬送および射出の両機能を有する)を挿入していたから、高温(たとえば、マグネシウム合金を射出成型する場合、600℃前後)に曝されたスクリューが灰分との擦過によって早期に摩耗して短寿命であるため補修や取替に伴なって保全コストが上昇するという問題、また、補修や取替のため射出成型機を停止せざるを得ないため射出成型作業に支障を来していたという問題が、一挙に解決する。
【0008】
前記材料溶解装置において、前記筒体の内部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を有してなることが好ましい。
これによれば、筒体の内部が、材料と反応しない不活性ガスによって空気置換されるから、空気との反応によって生じる灰分の発生が最小に抑えられる。すなわち、筒体の表面に浮上する灰分が微量になるから、浮上した灰分を撤去することなく極めて長い期間連続して射出成型作業を継続することが可能になる。
なお、不活性ガスはアルゴン等の希ガス類に限定するものではなく、材料との間で硬質の酸化物ないし窒化物を生成しないものであればいずれのガスであってもよい。たとえば、窒化物が全くまたはほとんど生成されない材料を射出成型する場合には、窒素ガスを用いてもよい。同様に、炭化物が全くまたはほとんど生成されない材料を射出成型する場合には、一酸化炭素ガスまたは二酸化炭素ガスを用いてもよい。さらに、最終回の注気のみアルゴン等の希ガス類を使用して、それまでは安価な窒素、一酸化炭素ガスまたは二酸化炭素ガス等を用いてもよい。
【0009】
前記材料溶解装置において、前記材料が、マグネシウム合金であることが好ましい。
これによれば、特にかかる合金が空気と反応して生成する灰分が硬質であって、射出成型機の損傷を招くものであるものの、発生した灰分が浮上して射出室内に侵入しないため、該損傷が防止される。たとえば、溶解したマグネシウム合金AZ91Dの比重が1.82g/cm3であるのに対し、酸化マグネシウムMgOの比重は3.59g/cm3と重いものの、ポーラスなクラスター状に集塊するため浮上する。
なお、本発明において射出成型される材料は、チクソトロピー性を具備する低融点金属、ポリエチレンやポリプロピレン等の一般樹脂、金属粉末を分散した金属分散樹脂(MIM)等限定するものではない。
【0010】
前記材料溶解装置において、前記材料が、インゴット材、板状、塊状またはチップ状に形成してなることが好ましい。
これによれば、材料は筒体内で溶解自在な形状およびサイズであればよいから、インゴット材(所定の形状およびサイズに凝固(鋳造)したままの材料)をそのまま、筒体に供給することができるため、材料の加工が無くなり材料コストが低くなる。また、板状または塊状のまま、筒体に供給することができるため、材料の加工量が少なくなり材料の加工コストが低くなる(たとえば、スクリュウによる搬送可能なチップ状に加工する必要がない)。さらに、材料の表面積が少ないから、材料に付着する空気や水分量が少なく抑えられるため、灰分の発生量が少なくなる。
なお、チップ状に形成した場合は、筒体への供給量を微妙に調整することが可能になる。
【0011】
前記材料溶解装置において、前記筒体が上蓋によって略密閉されてなることが好ましい。
これによると、筒体内への空気の侵入が防止され、さらに、空気より軽い不活性ガス(ヘリウム等)を注入した場合でも上昇して散逸することがないから、少量の不活性ガスによって空気置換が確実になる。また、当然、高比重の六フッ化硫黄(SF6、1.9g/cm3)を使用する必要がないから、地球温暖化等の環境問題を誘起しない。
さらに、加熱された不活性ガスをホッパに誘導することができるから、これによって、筒体に供給される前の材料の予熱あるいは材料に付着した水分の除去を補助することができる。
【0012】
前記材料溶解装置において、前記筒体の外周に抵抗式加熱手段または電磁誘導加熱手段が設置されてなることが好ましい。
これによると、かかる加熱手段の発熱量の制御が容易であるから、材料の加熱温度を精度良く維持することが可能になる。すなわち、材料供給直後の温度低下に迅速に対応したり、材料供給直前の過剰加熱を防止することができる。また、材料の表面レベルの低下に応じて、筒体の上部の加熱を中止することが可能になるから、無駄な熱量に投入がなくなるため射出成型コストが低くなる。
【0013】
前記材料溶解装置において、前記逆流防止手段が、前記連通路に上面または下面が当接して該連通路を閉塞する昇降式遮蔽弁と、該昇降式遮蔽弁に設置された昇降棒と、該昇降棒を昇降する昇降棒昇降手段とを有することが好ましい。
これによると、昇降式遮蔽弁が下面を連通路に押し付けて連通路を閉塞するから、該押し付けによって確実な閉塞が可能になるとともに、昇降式遮蔽弁を持ち上げるだけで連通路が開通するから射出室への材料供給を容易かつ確実に制御することが可能になる。
あるいは、昇降式遮蔽弁が上面を連通路に押し当てて連通路を閉塞する場合は、射出成型の際の射出圧によって該押し当てがなされるから確実な閉塞が可能になるとともに、射出圧が作用していない時間帯に昇降式遮蔽弁を押し下げるだけで連通路が開通するから射出室への材料供給を容易かつ確実に制御することが可能になる。さらに、昇降棒を小径にして昇降棒昇降手段を小容量にすることが可能になる。
【0014】
前記材料溶解装置において、前記昇降棒に撹拌翼が設置され、前記昇降式遮蔽弁が前記連通路を開通している間、該昇降棒が回転自在であることが好ましい。これによると、筒体内で溶解状態または半溶解状態の材料が撹拌されるから、均一な溶解が促進されるとともに、溶解した材料全体が均一な温度になるため、射出成型の作業が安定して成型品の品質を維持することが可能になる。さらに、材料中で発生した灰分や二次的発生ガスの浮上を促進するため、成型品が高品質に維持されることになる。
【0015】
前記材料溶解装置において、前記逆流防止手段が、前記溶解した材料内で浮上して上面が前記連通路に当接する浮上式遮蔽弁からなることが好ましい。
これによると、浮上式遮蔽弁は溶解した材料中で浮上してその上面(外周面、端面または側面の上方に位置する範囲)が連通路に当接し、これを閉塞するから、射出成型の際の射出圧によって浮上式遮蔽弁は連通路に強く押し付けられるため、確実な閉塞が可能になる。
一方、射出室内に材料が吸引されるとき、浮上式遮蔽弁は該吸引圧によって下降して上部が連通路から遊離し、連通路を開通するから、射出室内に材料が流入することになる。したがって、浮上式遮蔽弁の昇降を制御するための制御手段が不要になる。
なお、当該浮上式遮蔽弁はマグネシウム合金よりも軽量であって、所定の高温強度を具備する必要がある。たとえば、耐熱合金製の中空体(球体、略円錐状体、略砲弾状体等)等によって形成する。
【0016】
前記材料溶解装置において、前記逆流防止手段が、前記連通路を横断する水平摺動式遮蔽弁と、該水平摺動式遮蔽弁を水平移動する遮断弁水平移動手段とを有することが好ましい。
これによると、遮断弁水平移動手段を連通路の側部に配置することができるから、溶解した材料内に該手段の構成部材を曝す必要がなくなる。
さらに、水平摺動式遮蔽弁の上面を連通路に押し当てて閉塞するから、射出圧を該押し当てに利用できるため確実な閉塞が可能になる。
なお、水平摺動式遮蔽弁の摺動は、射出圧が作用していない時間帯であるため、簡素かつ小容量の遮断弁水平移動手段(油圧シリンダ、ラックピニオン式等)によって可能である。
【0017】
さらに、本発明に係る射出成型機は、内部に収容した材料を溶解する筒体と、
該筒体の底部と射出成型機の射出室とを連通する連通路と、
前記連通路に配置され、溶解した材料が前記射出室から前記筒体に逆流することを防止する逆流防止手段と、
前記射出室の先端に設置された射出ノズルと、
前記射出室内に配置され、前記射出ノズル側に前進しながら前記射出ノズルから溶解した材料を射出し、かつ前記射出ノズルから後退しながら前記筒体から溶解した材料を吸引する射出プランジャとを有することが好ましい。
これによると、▲1▼内部に収容した材料が筒体内で溶解されるから、該材料に付随した空気や水分が酸化物や窒化物等(灰分)を生じた場合でも、灰分は溶解した材料の表面に浮上して射出室に侵入することがなくなる。したがって、灰分の擦過による射出室や射出ノズルの損傷、並びに灰分の混入による成型品の品質低下がなくなる。
▲2▼また、該材料に付随した空気や二次的に発生したガス等が表面に浮上して射出室に侵入することがなくなる。したがって、ガス類の混入による成型品の品質低下がなくなる。
特に、従来の射出成型機においては、射出室の射出ノズルに近い範囲(たとえば、流体輸送区間)において発生した二次的ガスを、遠方から(たとえば、相遷移区間および固体輸送区間を経由して)排出することが困難であったものが、極めて容易に除去されることになる。
▲3▼さらに、射出成型機の射出室に、溶解状態の材料を供給するから、射出室内で材料を溶解する必要がなくなる。よって、射出室に材料を溶解するための加熱手段、並びに射出室内で固体状態、半溶解状態および溶解状態の材料を順次搬送するための搬送手段(通常、回転するスクリュー)等が不要になる。したがって、射出室回りの設備配置が簡素化され、かつ、耐熱材料で形成された複雑形状のスクリュー(高価である)が不要になるから射出成型機が安価になる。
なお、射出室や射出ノズル回りに保熱用のヒータ(小発熱量)を設置しておけば、安定した射出成型を保証することができる。
▲4▼また、前記搬送が不要になるから、筒体に供給する材料の形状の制約がなくなる。すなわち、インゴット(鋳造ままの塊状体)や板状、粒状のものの供給が可能になるから、材料の加工コストが低減する。すなわち、従来は搬送容易(通常、スクリュー搬送容易)にするため、小片のチップに機械加工していたから材料コストが高くなっていた。なお、インゴット等はチップに比較して単位重量当たりの表面積が少ないから、筒体またはシリンダバレルに持ち込まれる空気や水分の量が激減する。
▲5▼また、逆流防止手段を有するから、射出室内を高圧にすることができるため、外部から射出室全体を加圧して該射出室内の材料を射出することが可能になる。すなわち、高温の材料に触れる範囲を最小にした射出プランジャーによる射出が可能になる。
特に、従来は溶解した材料中にスクリュー(搬送および射出の両機能を有する)を挿入していたから、高温に曝されたスクリューが灰分との擦過によって早期に摩耗して短寿命であるため補修や取替に伴なって保全コストが上昇するという問題、また、補修や取替のため射出成型機を停止せざるを得ないため射出成型作業に支障を来していたという問題が、一挙に解決する。
【0018】
前記射出成型機において、前記射出プランジャが前進している間は前記連通路を閉塞し、かつ後退している間は前記連通路を開通するよう前記逆流防止手段を制御する制御手段を有することが好ましい。
これによれば、射出プランジャの動作に確実に同調して連通路が開閉されるから、射出室に適宜適正な量の材料が供給される。また、逆流防止手段に射出圧が作用していない時間帯に限ってこれを動作させることができるから、該動作が円滑であって、該手段の損傷を防止することができる。
【0019】
前記射出成型機において、前記射出室または射出ノズルの一方または両方を加熱する、抵抗式加熱手段または電磁誘導加熱手段を有することが好ましい。
これによれば、筒体内で所定の温度に加熱された材用の温度を、さらに正確に保持または調整することが可能になるから、射出成型作業がさらに安定して成型品の品質を高く維持することができる。
【0020】
前記射出成型機において、前記筒体の内部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を有することが好ましい。
これによれば、筒体の内部が、材料と反応しない不活性ガスによって空気置換されるから、空気との反応によって生じる灰分の発生が最小に抑えられる。すなわち、筒体の表面に浮上する灰分が微量になるから、浮上した灰分を撤去することなく極めて長い期間連続して射出成型作業を継続することが可能になる。
【0021】
前記射出成型機において、前記材料が、マグネシウム合金であることが好ましい。
これによれば、特にかかる合金が空気と反応して生成する灰分が硬質であって、射出成型機の損傷を招くものであるものの、発生した灰分が浮上して射出室内に侵入しないため、該損傷が防止される。なお、本発明において射出成型される材料は、チクソトロピー性を具備する低融点金属、ポリエチレンやポリプロピレン等の一般樹脂、金属粉末を分散した金属分散樹脂(MIM)等限定するものではない。
【0022】
【発明の実施の形態】
[実施形態1]
(材料溶解装置)
図1は本発明の実施形態1に係る射出成型機の材料溶解装置を縦断面で示した模式図である。図1において、1は射出成型機の材料溶解装置(以下、材料溶解装置と称す)、3は射出成型される材料(以下、材料3と称す)、10は材料3を受け入れるホッパ、20は材料3を所定の量だけ切り出し自在な定量供給手段、30は材料3を加熱して溶解する溶解室、31は内部に溶解室30を具備する筒体、32は溶解室30を加熱する加熱ヒータ、33は溶解室を密閉する上蓋である。
また、40は溶解した材料3(以下、溶解または半溶解の材料を材料4と称する場合がある)が溶解室30に逆流しないように下記連通路50を遮断する遮蔽弁、41は遮断弁40を支持する遮断弁支持棒、42は遮断弁支持棒41を駆動する遮断弁開閉用油圧シリンダ、50は溶解室40と下記射出室60を連通する連通路である。
さらに、91はアルゴンガスを供給するアルゴン供給口、92は加熱された材料4の温度を測定する熱電対、93は材料4の表面(溶解または半溶解)の位置を測定するための材料位置センサである。以下、各部位毎に説明する。
【0023】
(材料)
材料3は、チクソトロピー性を具備する低融点金属(たとえば、マグネシウム合金AD91D)、ポリエチレンやポリプロピレン等の一般樹脂、金属粉末を分散した金属分散樹脂(MIM)等限定するものではない。
材料3は、溶解室20に供給自在であって溶解自在な形状およびサイズであればよいから、インゴット材(所定の形状およびサイズに凝固(鋳造)したままの材料)、板状または塊状のもの、さらにチップ状に加工されたもの等いずれであってもよい。
なお、インゴット材、板状または塊状のまま使用する場合には、チップ状に加工する必要がないため材料3の加工コストが低くなる。さらに、材料の表面積が少ないから、材料に付着する空気や水分量が少なく抑えられるため、灰分の発生量が少なくなる。
【0024】
(ホッパ)
ホッパ10は、底部に定量供給手段20が設置された筒状であって、図示しない材料搬送手段(たとえば、エアーローダ等)によって材料3が搬送されてくる。
また、ホッパ10には図示しない上蓋が設置され、あらかじめ乾燥された材料3の吸湿を防止している。
【0025】
(定量供給手段)
定量供給手段20は、材料3を所定の量だけ切り出して溶解室30に供給するものであって、その型式は限定するものではない。
たとえば、図示しない制御手段からの指令(たとえば、一定数のショット回数毎)に基づいて、材料位置センサ93が材料4の表面が供給上限位置に到達したことを検出するまで、スクリューフィーダが材料3を供給したり、あるいは、材料位置センサ93が材料4の表面が下限位置にまで減少したことを検出したところで、あらかじめボックスフィーダに切り出した一定量の材料3を供給したりする。
なお、材料3がインゴット材、板状または塊状のままの場合、定量供給手段20をベルトフィーダ(ベルトコンベアに同じ)によって形成し、材料位置センサ93が材料4の表面が下限位置にまで減少したことを検出したところで、ベルトフィーダを所定の時間だけ駆動(ベルトを所定の距離だけ移動)してベルト上の前記インゴット等を投入する。このとき、ホッパ10を振動ホッパにしてインゴット等を整列させてベルト上に載置すれば、より正確な個数の投入が可能になる。
また比較的大きい5kgインゴット等の場合はインゴットを傾斜させ、先端から除々にインゴットを落下させ、液面レベルをモニターしながら数100gづつ落とし込めば、溶湯の液温変化も少なく溶解が可能である。
【0026】
(溶解室)
溶解室30は、底部に連通路50が設けられた筒体31の内部に形成され、上蓋33および遮断弁40によって略気密的ないし液密的に閉塞されるものである。
溶解室30には、定量供給手段20を経由して材料3が供給され、加熱ヒータ32によって加熱されて溶解する。このとき、熱電対93によって材料4の温度が測定されて図示しない制御手段によって投入熱量が制御されるから、材料3は溶解して若しくは固液共存状態で所望の温度に達している(材料4になっている)。
また、上蓋33に設置されたアルゴン供給口91からアルゴンが供給されて溶解室30内の空気は置換されている。なお、過剰なアルゴンは定量供給手段20の隙間を経由してホッパ10に流出している。
よって、材料3は空気を排除した状態で加熱溶解されるから、酸化物や窒化物等の灰分の発生が最小に抑えられる。さらに、溶解室30が立設した筒状(軸方向が略鉛直方向に配置されている)であるから、灰分が発生したとしても、これらは容易に浮上する。また、溶解した材料4中に二次的なガスが発生した場合でも、これらは容易に浮上する。
なお、アルゴン供給口を筒体31の側壁下方にして、溶解した材料4中にアルゴンを注入してもよい。このとき、いわゆるバブリング効果によって発生した灰分の浮上が促進されるから材料4の清浄度がさらに向上する。
【0027】
(遮断弁)
遮断弁40は、連通路50を開通して材料4を射出室60に供給すると共に、連通路を遮断して射出成型の際に材料4が射出室60から溶解室40に逆流しないようにするものである。
すなわち、射出成型開始の直前に、遮断弁開閉用油圧シリンダは遮断弁40の下面を連通路50(正確には、溶解室30の底部で連通路50の周囲)に押し付けて、これを閉塞する。さらに、射出成型中(射出プランジャ70が前進中)は射出圧に対抗して遮断弁40を押し付け続ける。
そして、射出成型が終了して射出プランジャ70が後退する際、遮断弁40は持ち上げられて連通路50は開通するから、材料4は射出プランジャ70による吸引圧および材料4自身のヘッド圧によって射出室60に流入することになる。なお、遮断弁40が持ち上げられている時間帯に限り、遮断弁支持棒41を回転して溶解した材料4を撹拌してもよい。このとき、遮断弁40の上部あるいは遮断弁支持棒41の側面に撹拌翼を設置しておけば、該撹拌が促進される。
さらに、溶解室30の底部で遮断弁40が当接する範囲を、溶解室の筒状部とは別材質で別個に製作して両者を嵌合してもよい(いわゆる中子を嵌合する)。このとき、筒状部の製作コストを安価に抑えたままで、該当接部を耐摩耗性に優れた構成にすることができる。
なお、遮断弁40は溶解室30の底部に面接触するものに限定するものではなく、円環状に線接触してもよい。たとえば、遮断弁40の形状が、円錐状、円錐台状、砲弾状等であって、これが連通路50の口元、溶解室30の底部に設けた円錐状の斜面や円環状の突起等に当接してもよい。
【0028】
(アルゴンガス)
溶解室30を空気置換するためのガスは、アルゴンガスやヘリウムガス等の希ガス類元素に限定するものではない。たとえば、材料3がマグネシウム合金等の金属の場合、一酸化炭酸ガスまたは二酸化炭酸ガス等の酸化物または窒化物を生成しない安価なガスであってもよい。また、材料が一般の熱可塑性樹脂の場合、安価な窒素ガスを用いて酸化を防止してもよい(本発明において、これらを不活性ガスと総称する)。
【0029】
(材料位置センサ)
材料位置センサ93は、所定の高さに材料4(溶解または半溶解)があることを検出するものであって、上昇して来る材料の表面(上面)が該センサ先端に到達したことを検出する場合と、材料4中に浸漬されて該センサ先端が下降する材料4から露出したことを検出する場合とがある。
なお、材料位置センサ93の形式は限定するものではなく、渦電流、誘電率または漏洩磁束等(またはその変化)を検出する電磁式、噴射する不活性ガスの圧力(またはその変化)を検出する流体式、あるいは熱電対と共用して温度変化を検出する測温式等いずれであってもよい。
【0030】
また、図中、材料位置センサ93は1本のみ記載されているが、本発明はこれに限定するものではなく、たとえば、上限位置、中央位置および下限位置にそれぞれ設置してもよい。このとき、上限位置の材料位置センサによって材料4が収容可能な最大量まで供給されたことを検出したり(材料供給の停止信号に利用)、中央位置の材料位置センサによって材料4が減少して新たに材料4を追加するタイミングに到達したことを検出したり(材料供給の開始信号に利用)、さらに下限位置の材料位置センサによって材料4が異常に減少したことを検出したりする(設備異常の警報に利用)。
【0031】
(筒体)
筒体31の底部外周にはフランジ34が設けられ、フランジ34に射出シリンダ(図示しない)に設置するための設置用ボルト39が貫通する設置用穴35が穿設されている。なお、フランジ34の下面は図示しない射出シリンダの外面に均一に当接するよう円筒状に形成され、さらに、連通路50の周囲にシール部材を設置するための環状溝36が設けられている。なお、環状溝36は射出シリンダ側に設けられた場合には省略することができる。
【0032】
(加熱ヒータ)
加熱ヒータ32は筒体31の外周を巻回する電気抵抗線または高周波加熱コイルである。したがって、投入熱量の調整が容易であって、細かい温度制御が可能になる。
さらに、加熱ヒータ32を鉛直方向で複数のブロックに区分し、各ブロック毎に通電停電の制御や通電量の制御を実施すれば溶解効率や熱効率が向上する。たとえば、ホッパから材料3が供給された直後は、上方ブロックの通電量を多めにして溶解を促進し、一方、材料3の表面レベルが下方にある間は、上方ブロックの通電を停止または通電量を絞って無駄な加熱を防止する等、適宜制御することが可能になる。また、熱電対92を複数箇所に配置して、複数箇所の測定温度に基づいてかかる制御を実施してもよい。
【0033】
(制御装置)
図示しない制御装置は、材料溶解装置1が設置される射出成型機から入力される射出成型信号に基づいて、遮断弁40、定量供給装置20、加熱ヒータ32を制御をするものである。後記実施の形態2において詳細に説明する。
【0034】
(実施例1)
図2は本発明の実施形態1に係る射出成型機の材料溶解装置の一部を断面で示した模式図である。なお、図1と同じ部分には下二桁をこれと同じ符号とし、一部の説明を省略する。
図2の(a)において、材料溶解装置100は、筒体131の底部に中子151が嵌設され、シール部材152を介して図示しない射出成型機の射出シリンダに液密的に設置されるものである。
中子151には連通路150が設けられ、連通路150の口元R部154に砲弾状の遮断弁140の先端曲面が当接する。すなわち、遮断弁140が遮断弁支持棒141によって押し下げられた際、連通路150が遮蔽される。また、遮断弁支持棒141には撹拌翼143が設置され、遮断弁支持棒141が持ち上げられている間(連通路150が開通している時間帯に同じ)に限り回転して溶解した材料4を撹拌する。
なお、遮断弁支持棒141は、射出成型の際に射出圧が作用しても座屈しないよう所定の剛性を具備した構造になっている。また、遮断弁支持棒141を昇降する図示しない遮断弁開閉用油圧シリンダは、同様に所定の容量を具備するものになっている。
【0035】
図2の(b)において、材料溶解装置200は、筒体231の底部に中子251が嵌設され、シール部材252を介して図示しない射出成型機の射出シリンダに液密的に設置されるものである。
中子251には連通路250と、連通路250の下部に遮断弁240を収納自在な拡大部253とが設けられている。そして、拡大部253の上面は円錐状に形成され、該円錐部の円環状の突起255が形成されている。
遮断弁240は円錐台状であって、上部に遮断弁支持棒241が設置されて図示しない遮断弁開閉用油圧シリンダによって昇降される。
したがって、遮断弁240が引き上げられた際、連通路250が遮蔽され、さらに、射出成型の際の射出圧が遮断弁240に作用するから、射出成型の際の遮断が確実になる。
また、射出成型が終了した後、射出圧が遮断弁240に作用していない間に、遮断弁240は押し下げられて連通路250が開通する。したがって、遮断弁支持棒241には射出成型時の大きな圧力が作用しないから座屈する心配がないため小径であって、図示しない遮断弁開閉用油圧シリンダは小容量のものにすることができる。
【0036】
図2の(c)および(d)において、材料溶解装置300は、筒体331の底部に中子351が嵌設され、シール部材352を介して図示しない射出成型機の射出シリンダに液密的に設置されるものである。
中子351には図中、鉛直方向に連通路350と、連通路350に直交して遮断弁340を収納自在な水平溝353とが設けられている。また、筒体331には水平溝353に連続した横穴337が穿設されている。
一方、遮蔽弁340は板状であって、連通路350と略同一形状の貫通穴343が穿設され、進退するための連結棒344を介して進退用シリンダ345に連結されている。
そして、板状の遮蔽弁340は横穴337を経由して水平溝353に挿入され、連通路350を遮断し、さらに、連通路350と貫通穴343が一致したところで連通路350を連通する。なお、遮断弁340の上面はシール部材346によって溶解した材料4のヘッド圧に対抗して液密的に密閉され、一方、遮断弁340の下面はシール部材347によって射出圧に対抗して液密的に密閉されている。
【0037】
図2の(e)において、材料溶解装置400は、筒体431の底部に中子451が嵌設され、シール部材452を介して図示しない射出成型機の射出シリンダに液密的に設置されるものである。
中子451には連通路450と、連通路450の下部に遮断弁440を収納自在な拡大部453とが設けられている。そして、拡大部453の上面は球状の遮断弁440が液密的に当接するよう円錐状に形成されている。
一方、遮断弁440は球状であって、射出成型される材料4より軽量であるため、溶解した材料4中で浮上して連通路450を遮断する。特に、射出成型の際は射出圧が遮断弁440に作用するから、射出成型の際の遮断が確実になる。
一方、射出成型が終了して射出室内が減圧(図示しない射出プランジャが後退)されたとき、遮断弁440は吸引されて下降するから、連通路450は開通する。
したがって、遮断弁440の昇降動作を制御するための制御手段を設置する必要がない。
なお、遮断弁440としてアルミナ粉末を焼結した球体を用いているが、本発明はこれに限定するものではなく、耐熱合金鋼によって形成された中空の球体等であってもよい。また、球体に代えて円錐状体や砲弾状体にしてもよい。
【0038】
[実施形態2]
(射出成型機)
図3は本発明の実施形態2に係る射出成型機を縦断面で示した模式図である。図3において、2は射出成型機、60は射出成型機2の射出室、61は内部に射出室60を具備する筒状の射出シリンダ、62および63は射出室60を保温する保温ヒータ、65は射出シリンダの側面に穿設して連通路、70は射出成型機2の射出プランジャ、71は射出プランジャ70を支持する射出プランジャロッド、72は射出プランジャロッド71を駆動する射出用油圧シリンダ、80は射出成型機2の射出ノズル、82および83は射出ノズル80を保温する保温ヒータである。
すなわち、射出成型機2は、射出シリンダ61の外面に実施の形態1(図1)に示す材料溶解装置1が、シール部材38によって液密性が保証された状態で設置用ボルト39によって設置されたものである。なお、材料溶解装置1の外周には断熱カバー37が配置され、底部には中子51(連通路50が穿設されている)が嵌合されて中子51にシール部材38が設置されている。
また、図示しない射出成型用の油圧ユニットと、金型をホールドして開閉する金型開閉機構とを有している。なお、実施の形態1(図1)と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0039】
(射出室)
射出室60は射出シリンダ61によって形成された円筒状の空間であって、略中央で連通路65が材料供給装置の連通路50に重なっている(以下、射出シリンダ61の連通路65と材料供給装置(筒体31に同じ)の連通路50を会わせて、連通路50と総称する)。また、一方の端部から射出プランジャ70が挿入され、他方の端部に射出ノズル80が設置されている。
さらに、射出シリンダ61の外周には保熱ヒータ62および63が、射出ノズル80の外周には保熱ヒータ82、83が設置され、それぞれ射出成型時の材料4の温度を正確に制御している。
【0040】
(射出プランジャ)
射出プランジャ70は射出プランジャロッド71を介して射出用油圧シリンダ72によって前後進され、これに配置したシールリング73が射出室60に液密的に当接して摺動するから、材料4のシール(漏れ出し防止)が図られている。なお、図中、2本のシールリング73が配置されているが、本発明はこれに限定するものではなく、3本またはそれ以上であってもよい。また、材料4が漏れ出した(リークした)場合でも、射出プランジャロッド71の温度が低いため、漏れ出した材料4が固化して後部のシールリング部でシール効果を奏する。
また、射出プランジャ70はその端面のみが溶解した材料4に直接接触するだけで全体が高温に曝されることがなく、しかも単純な形状をしている。したがって、耐摩耗性、耐熱変形性に優れているから、射出量を長時間に渡って正確に制御することが可能になる。
また、端面に限定して高価な耐熱合金や耐熱セラミックスを使用したり、外周に設けた円環状溝にシールリングを配置したりすることができるから、コストを抑えたまま、耐摩耗性、耐熱変形性、容易摺動性や液密性をさらに高めることが可能になる。特に、従来の射出スクリューに較べると、高温に曝される範囲が格段に狭く、また、形状も極めて簡単になっているから、高価な加工性の悪い特殊材料を用いて形成する必要が無くなるため製造コストが激減する。
【0041】
(射出プランジャロッドの断熱)
図4は、図3に示す射出成型機における射出プランジャロッドの断熱手段の実施例を説明する模式図であって、射出プランジャ70に材料4から伝わった熱が射出プランジャロッド71を介して射出用油圧シリンダ72に伝わることを防止する(作動油の劣化を防止する)ためのものである。なお、図3と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図4の(a)は射出プランジャロッド71の内面冷却を示す実施例である。射出プランジャロッド71の中間に冷却水が流れる空洞74を設け、ここに冷却水を給水管75から供給して排水管76から排水している。よって、射出プランジャロッド71は中間位置で冷却されるから、射出用油圧シリンダ72への伝熱が防止される。
図4の(b)では、図4の(a)の空洞74内に隔壁77を設けて略U字状の水路を形成し、ここに冷却水を給水管75から供給して排水管76から排水している。このとき、給水管75および排水管76を射出プランジャロッド71の軸方向で略同一位置に配置できるから、射出プランジャロッド71の長さを抑えることができる。
【0042】
図4の(c)は射出プランジャロッド71の外面冷却を示す実施例である。射出プランジャロッド71が貫通する冷却箱101を射出シリンダ61と射出用油圧シリンダ72との間に配置し、ここに冷却水を給水管102から供給して排水管103から排水している。このとき、射出プランジャロッド71の側面に給水管等の部材を設置しないから射出プランジャロッド71の長さを該冷却のために延長する必要がない。
なお、給水管102および排水管103の設置位置は図示するものに限定するものではなく、下方から上方への流れ、水平方向の流れ、対角方向の流れ等いずれの方向であってもよい。
さらに、給水管102にスプレイノズルを設置してスプレイ冷却をしてもよい。このとき、スプレイノズルを複数にして射出プランジャロッド71の側面の全周に直射すれば高い冷却効果が得られる。また、冷却水を霧状に直射するミスト冷却をしてもよい。
【0043】
図4の(d)は射出プランジャ70と射出プランジャロッド71とを断熱手段を介して接合した実施例を示す断面図である。射出プランジャ70に止まり孔201が設けられ、止まり孔201に断熱スリーブ202(工業用セラミックスによって形成された底付の短管)を介して射出プランジャロッド71が連結され、軸方向と直角の方向に抜け出し防止のための断熱ピン203(工業用セラミックスによって形成された棒)が挿入されている。よって、射出プランジャ70に流入した熱が射出プランジャロッド71に伝わり難くなるから、射出用油圧シリンダ72への伝熱が防止される。
なお、断熱ピン203が緩んだ場合でもその端面が射出室60の内壁に当接するから脱落することがない。また、断熱ピン203とシールリング73とを同一位相に配置して、シールリング73よって脱落防止を図ってもよい。
さらに、前記内面冷却または外面冷却を併用してもよい。また、射出プランジャ70と射出プランジャロッド71とを直接連結して、射出プランジャロッド71を軸方向で二分割し、該両者を断熱スリーブおよび断熱ピンを介して連結してもよい。
【0044】
(定量供給手段)
図5は本発明の実施形態2に係る射出成型機の定量供給手段の一実施例を縦断面で示した模式図である。なお、図3と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図5において、定量供給手段21は、インゴット5(たとえば、厚さ5cm、幅11cm、長さ50cm)を供給するためのものであって、溶解室30の上部に連通して、筒体31に傾斜して設置された供給箱22と、供給箱22の上部を気密的に遮蔽する蓋23と、供給箱22に供給されたインゴット5を把持して、所定の量だけ搬送自在な定量供給ローラ24を有している。
【0045】
すなわち、蓋23を開いて、図示しないインゴット搬送手段によってインゴット5を供給箱22内に収容し、その後、蓋23を気密的に閉じる。そして、溶解室30内の溶解している材料4の減少量に応じて、定量供給ローラ24を回転してインゴット5を下方に搬送し、その先端から除々に溶解している材料4中に浸漬する。
したがって、比較的大きい(たとえば、5kg)インゴット等の場合であっても、溶解している材料4のレベルをモニターしながら所定の量(たとえば、数100g)づつ落とし込むことができるから、溶解している材料の温度変化を最少に押さえるため、均一で安定した品質の溶解した材料4を射出室60に供給することが可能になる。
なお、図中、3台の定量供給ローラ24を一列に配置して、定量供給ローラ24がインゴット5を供給箱22の底面に押圧しているが、本発明はこれに限定するものではなく、定量供給ローラ24を二列に配置してこれによってインゴット5を挟持してもよい。また、定量供給ローラ24の数量は限定するものではない。
【0046】
(制御手段)
射出成型機2における図示しない制御手段は、以下のような作業が円滑に実行されるよう各部材の制御を行っている。
▲1▼ホッパ10に材料3が供給される。すなわち、ホッパ10内に収容された材料3の量を計測する計測手段(図示しない)によって、ホッパ10内の材料3が所定の量より減少したことが検出されると、図示しない材料搬送手段(たとえば、エアーフィーダ、ベルトコンベア等)によって、材料3が所定の量だけホッパ10に供給される。
▲2▼材料3は定量供給手段20によって溶解室30に定期的に供給される。したがって、溶解室30内にはその量が増減するものの常時所定の量の材料3が収容され、加熱ヒータ32によって加熱され溶解している(溶解した材料を材料4と称す)。
定量供給手段20は、一定時間毎に起動されて所定の上限位置まで材料3を供給するように制御されたり、一定の下限位置まで材量4が減少したときに、あらかじめ収容している一定量の材料3を供給するように制御してもよい。
また、加熱ヒータ32の制御は、熱電対92の測定信号に基づいて実施される。
さらに、溶解室30における材料3の温度信号を、射出室60の保温ヒータ62または射出ノズル80の保温ヒータ82の制御にフィードフォワードして、射出成型時の材料4の温度を高精度に維持してもよい。
【0047】
▲3▼射出室60が溶解した材料4で満たされた状態(定常作業状態)において、遮断弁40が下降して連通路50を閉塞する。
▲4▼そして、射出プランジャ70が射出ノズル80側に移動(以下、前進と称す)して、射出室60内の材料4を射出ノズル80を経由して図示しない金型内に射出する。プランジャ70は、連通路65よりノズル80側に移動することはない。
▲5▼射出プランジャ70は所定の量の射出を終えると所定の時間だけ停止する。この間に金型内の材料4は冷却されて固化する(すなわち、成型品となる)。
また、射出ノズル80の先端は図示しない金型のスプールに当接しているため冷却され、射出ノズル80の先端部に停留している材料3もまた冷却されて固化し、いわゆるコールドプラグと呼ばれる栓が形成される。
【0048】
▲6▼つぎに、遮断弁40が上昇して連通路50が開通した状態で、射出プランジャ70が後退する。このとき、溶解室30内の材料4は自らのヘッド圧および射出プランジャ70の吸引圧によって射出室60に流入する。
なお、これに並行して、図示しない金型は開かれて成型品が回収される。また、射出ノズル80は前記コールドプラグによって閉塞されているため、射出ノズルを経由して空気が射出室60内に吸引されることはない。
▲7▼そして、射出室60に所定の量(1回のショットで射出される量に同じ)の材料4が供給されると、すなわち、射出プランジャ70が所定の距離だけ後退すると、遮断弁40が下降して連通路50を閉塞する。
▲8▼以降、前記▲4▼〜▲7▼の動作が繰り返されて成型品が継続して製造される。
【0049】
なお、射出ノズル80の先端を閉塞していた前記コールドプラグは、次回の射出成型の際、射出圧によって金型内に押し出される。通常、金型のメインランナの終端部(射出ノズルの延長線上に位置する主湯路の終端部)にコールドプラグポット(コールドプラグ捕捉用凹部)が設けられているため、コールドプラグはここに捕捉されるから、メインランナに直交して各キャビティに向けて分岐したサブランナ(副湯路)に侵入すること、あるいは、成型品に混入することがない。
【0050】
さらに、溶解室30に材料4が無い状態で、すなわち、射出室60が溶解した材料4で満たされていない状態で、射出成型作業が継続されることを防止するため、射出プランジャ70の前進開始に際し所定のインターロックを設けてもよい。
たとえば、溶解室30の底部に材料4を検出する材料確認センサを設置したり、プランジャ70の前進開始直後に射出圧が立ち上がらないことを検出する圧力センサまたは荷重センサを設置したり(たとえば、遮断弁支持棒41は射出プランジャロッド71に設置)して、該センサの検出信号を利用することができる。
【0051】
なお、溶解室30で浮上した灰分は、アルゴンガスの供給によって最小に抑えられているから、溶解した材料4の表面を覆うこともなく頻繁に除去する必要がない。また、材料3の供給時に溶融した材料4内に巻き込まれることもない。
【0052】
(実施例)
以下、前記射出成型機2を用いてマグネシウム合金AZ91Z(以下、本実施例において、材料はマグネシウム合金AZ91Zを示す)を射出成型して液晶パネルを製造する場合について説明する。なお、成型重量は45g、射出成型機2の型締め力は140tonである。
【0053】
材料3は、あらかじめ旋盤またはフライス盤等で削り出された5〜10mmサイズのチップ(以下、合金チップと称す)を使用し、エアーローダによってホッパ10に供給した。
また、定量供給装置20としてスクリューフィーダを使用して、溶解室30への供給量の調整を容易にした。すなわち、材料位置センサ93の一方を材料4の下限位置に配置し、他方を上限位置に配置して、材料4の液面が下限位置に達した時点でスクリューフィーダの回転を開始し、材料4の液面が上限位置に達した時点でスクリューフィーダの回転を停止した。
【0054】
溶解室30は内径が略150mm、高さが略200mmの円筒であって、約5Kgの材料4を収容することができる。また、上蓋31に設けたアルゴン供給口91から毎分略1リットルのアルゴンを常時供給した。溶解室30は略密閉されているため、十分に空気置換され、供給したアルゴンはスクリューフィーダの隙間を通ってホッパ10に流出した。
【0055】
溶解室30に供給された合金チップは既に溶解している材料4の表面で容易に溶解した。なお、発生した灰分は材料の表面に浮上するものの、発生量はわずかであるため、合金チップが灰分の上に乗って溶解が遅延することはなかつた。
また、蓄積した灰分は1週間の連続操業で300g程度であったから、週1回のペースで除去すれば全く支障がなかつた。該除去は上蓋33を開き、掬い取り手段または吸引手段によって実施したが、筒体31に灰分排出用の貫通穴を設け、ここから筒体31外に排出してもよい。
【0056】
また、溶解室30には10Kwの加熱ヒータ32が設置され、図示しない制御装置によって620±10℃に管理された。加熱ヒータ32は大容量として、射出成形機を起動した際の溶解の迅速化を図っている。
さらに、射出シリンダ60および射出ノズル80においても、材料4は保熱ヒータ62および保熱ヒータ82によって620±10℃に管理されている。材料温度が610℃以下になると、固相が発生し始め射出成型時の金型充填性が悪化し(キャビティにアンダーフィルが発生する)、一方、材料温度が630℃を超えると射出シリンダ61や金型を構成する金属材料が急速に強度を失ってしまうからである。
【0057】
遮断弁40は射出シリンダ70が後退動作をしている間上昇して、材料4が射出室60に流入する。また、射出成型時には、高圧(ピーク時には100MPaに達する)が働くため、遮断弁開閉用油圧シリンダ42によって強力に下方に押し付けている。なお、連通路50の内径を射出室60の内径のたとえば1/4程度にして、連通路50の面積を小さく(1/16)することによって該押し付け力を低く抑えている。
【0058】
射出成型終了後に射出ノズルに栓をするコールドプラグは、次の射出成型時に金型内のコールドプラグポケットに捕捉され、サブランナの詰まりや成型品に混入することがなかった。
すなわち、射出成型作業は極めて円滑に継続され、得られた成型品には、灰分の混入がないため、成型後の二次加工において刃物の折損がなく、また刃物の寿命が延長した。また、成型品の表面にシワや異物が現れないため、防錆処置の効果が高く、塗装性も向上した。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1に係る射出成型機の材料溶解装置の模式図。
【図2】実施形態1に係る射出成型機の材料溶解装置の一部の模式図。
【図3】実施形態2に係る射出成型機を縦断面で示した模式図。
【図4】射出プランジャロッドの断熱手段の実施例を説明する模式図。
【図5】射出成型機の定量供給手段の一実施例を縦断面で示した模式図。
【図6】従来の低融点金属材料の射出成型機を説明する模式図。
【符号の説明】
1 材料溶解装置、2 射出成型機、3 材料、4 溶解または半溶解の材料、10 ホッパ、20 定量供給手段、30 溶解室、40 遮蔽弁、50 連通路、60 射出室、70 射出プランジャ、80 射出ノズル
Claims (15)
- 内部に収容した材料を溶解する筒体と、
該筒体の底部と射出成型機の射出室とを連通する連通路と、
前記連通路に配置され、溶解した材料が前記射出室から前記筒体に逆流することを防止する逆流防止手段とを有することを特徴とする材料溶解装置。 - 前記筒体の内部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を有してなることを特徴とする請求項1記載の材料溶解装置。
- 前記材料が、マグネシウム合金であることを特徴とする請求項1または2記載の材料溶解装置。
- 前記材料が、インゴット材、板状、塊状またはチップ状に形成してなることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の材料溶解装置。
- 前記筒体が上蓋によって略密閉されてなることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の材料溶解装置。
- 前記筒体の外周に抵抗式加熱手段または電磁誘導加熱手段が設置されてなることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の材料溶解装置。
- 前記逆流防止手段が、前記連通路に上面または下面が当接して該連通路を閉塞する昇降式遮蔽弁と、該昇降式遮蔽弁に設置された昇降棒と、該昇降棒を昇降する昇降棒昇降手段とを有することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の材料溶解装置。
- 前記昇降棒に撹拌翼が設置され、前記昇降式遮蔽弁が前記連通路を開通している間、該昇降棒が回転自在であることを特徴とする請求項7記載の材料溶解装置。
- 前記逆流防止手段が、前記溶解した材料内で浮上して上面が前記連通路に当接する浮上式遮蔽弁からなることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の材料溶解装置。
- 前記逆流防止手段が、前記連通路を横断する水平摺動式遮蔽弁と、該水平摺動式遮蔽弁を水平移動する遮断弁水平移動手段とを有することを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の材料溶解装置。
- 内部に収容した材料を溶解する筒体と、
該筒体の底部と射出成型機の射出室とを連通する連通路と、
前記連通路に配置され、溶解した材料が前記射出室から前記筒体に逆流することを防止する逆流防止手段と、
前記射出室の先端に設置された射出ノズルと、
前記射出室内に配置され、前記射出ノズル側に前進しながら前記射出ノズルから溶解した材料を射出し、かつ前記射出ノズルから後退しながら前記筒体から溶解した材料を吸引する射出プランジャとを有することを特徴とする射出成型機。 - 前記射出プランジャが前進している間は前記連通路を閉塞し、かつ後退している間は前記連通路を開通するよう前記逆流防止手段を制御する制御手段を有することを特徴とする請求項11記載の射出成型機。
- 前記射出室または射出ノズルの一方または両方を加熱する、抵抗式加熱手段または電磁誘導加熱手段を有することを特徴とする請求項11または12記載の射出成型機。
- 前記筒体の内部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を有することを特徴とする請求項11乃至13の何れかに記載の射出成型機。
- 前記材料が、マグネシウム合金であることを特徴とする請求項11乃至14の何れかに記載の射出成型機。
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