JP2004194602A - ネズミ科動物飼育ケージ用の床敷および箱型ケージ - Google Patents
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Abstract
【課題】リサイクル可能であり、人にも実験用動物にも環境に対しても有益なねずみ科動物飼育ケージ用の床敷を提供することを目的とする。
【解決手段】箱型のケージ1Mに複数のマウス11が飼育される。ケージ1Mの平底には本発明による床敷4が4枚敷かれている。床敷4はセルロース繊維に塩基性ガスを吸収する機能が付与された改質セルロース布であるので、糞尿から発生するアンモニアなどの塩基性ガスを短時間で強力に脱臭するとともに、保有するセルロース繊維本来の性質で吸水効果も発揮する。更には、改質セルロース布を洗濯乾燥させれば脱臭効果及び吸水効果は概復元でき、費用対効果に優れたリサイクルに有用な床敷を提供できる。
【選択図】 図2
【解決手段】箱型のケージ1Mに複数のマウス11が飼育される。ケージ1Mの平底には本発明による床敷4が4枚敷かれている。床敷4はセルロース繊維に塩基性ガスを吸収する機能が付与された改質セルロース布であるので、糞尿から発生するアンモニアなどの塩基性ガスを短時間で強力に脱臭するとともに、保有するセルロース繊維本来の性質で吸水効果も発揮する。更には、改質セルロース布を洗濯乾燥させれば脱臭効果及び吸水効果は概復元でき、費用対効果に優れたリサイクルに有用な床敷を提供できる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、哺乳類げっ歯目ネズミ科の小動物(ラット、モルモット、マウス等)が飼育されるゲージ用の床敷に関する。
【0002】
【従来の技術】
医学の研究や実験あるいは薬の開発には、ラットやマウス等の実験動物の飼育が欠かせないものとなってきている。こうした実験用小動物は、衛生的な環境において箱型のケージで飼育されている。
【0003】
一方、こうした箱型のケージに敷かれる床敷材としては、木材チップ、トウモロコシ軸粉砕物、パルプを加工した紙製品、古紙再生品、不織布再生品、などが市販され利用されてきた。
【0004】
ヘチマの果肉を裁断してシート状にし、繊維状に乾燥させて構成した床材を実験動物用のケージ内に敷くことが公開されている(例えば、特許文献1)。前記床材をケージ内に敷くことにより、ケージ内で適量の水と餌を与え所定の投薬を行なうラット、モルモットなどの実験用小動物に掛かるストレスを少なくし、しかも、この実験用動物の排泄した尿を、糞が混じることなく、かつ尿を腐敗させることなく採取することができる。
【0005】
【特許文献1】
実開平5−56号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のヘチマの果肉材による床材は、実験動物の糞尿による脱臭効果について詳しく記載されていない。糞尿の臭気が強い場合には、ヘチマ繊維の間に活性炭や木酢を混ぜることが提案されているが、ヘチマ繊維そのものに脱臭効果があるわけではない。ヘチマ繊維は糞尿に対する吸水効果があるのみである。
【0007】
このように、飼育ケージ用の従来の床敷材は、その購入価格が安価であることも手伝って、おがくずをはじめとする木や、紙のチップ材が使用され、その求めるところは主として糞尿に対する吸水効果であった。
【0008】
ILAR(Institute of Animal Resources)による動物実験に関する指針に依れば、このような床敷材は毎日あるいは週単位で新品と交換することが推奨されているが、環境対策の面から考慮すれば、週単位であっても床敷材を焼却処分することは好ましいことではない。そこで、リサイクル可能な床敷材が求められていた。
【0009】
また、前記指針によれば、アンモニアのような毒性のあるいは臭気を起こすガスは許容限界まで除去されなければならないとされているが、ガス除去のためには高価な空調設備を必要としていた。
【0010】
さらには、従来の床敷材には粉塵となって空気中に飛来するものもあり、実験関係者や実験動物にとっても好ましくなく、その対策が求められていた。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決すべく、リサイクル可能であり、人にも実験用動物にも環境に対しても有益なネズミ科動物飼育ケージ用の床敷および箱型ケージを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を満たすため、鋭意研究を重ね脱臭シートとなる新たな床敷とこの床敷を用いた箱型ケージを発明した。
【0013】
より具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
【0014】
(1) ネズミ科動物が飼育される箱型のケージにおいて、当該箱型ケージの平床に敷かれる床敷であって、セルロース繊維に塩基性ガスを吸収する機能が付与された改質セルロース布が床敷として敷かれていることを特徴とするネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。
【0015】
(1)記載の発明によれば、「ネズミ科動物が飼育される箱型のケージにおいて、当該箱型ケージの平床に敷かれる床敷であって、セルロース繊維に塩基性ガスを吸収する機能が付与された改質セルロース布が床敷として敷かれている」ので、改質セルロース布が糞尿から発生するアンモニアなどの塩基性ガスを短時間で強力に脱臭するとともにセルロース繊維本来の性質を保持しているので吸水効果も発揮する。更には、当該改質セルロース布を洗濯乾燥させれば脱臭効果及び吸水効果は概復元でき、費用対効果に優れたリサイクルに有用な床敷を提供できる。
【0016】
(2) 前記ネズミ科動物飼育ケージ用の床敷は当該箱型ケージの平床における底形状に対応する形状になっていることを特徴とする(1)記載のネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。
【0017】
(2)記載の発明によれば、「(1)記載のネズミ科動物飼育ケージ用の床敷において、前記ネズミ科動物飼育ケージ用の床敷は当該箱型ケージの平床における底形状に対応する形状になっている」ので、箱型ケージの平床に改質セルロース布を敷くことが容易であり、2枚重ね3枚重ねする毎に消臭効果が増加する。
【0018】
(3) 繁殖実験用にマウスが雄雌混在して飼育される箱型ケージの平床に敷かれているものであることを特徴とする(1)または(2)記載のネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。
【0019】
(3)記載の発明によれば、「(1)または(2)記載のネズミ科動物飼育ケージ用の床敷において、繁殖実験用にマウスが雄雌混在して飼育される箱型ケージの平床に敷かれているものである」ので、本発明による布製の床敷を複数毎重ねておけば、新生児が潜りこんでいるときも親ネズミが新生児を傷めることなく育てることができる。
【0020】
(4) 前記改質セルロース布は複数枚が積層されていることを特徴とする(1)から(3)いずれか記載ネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。
【0021】
(5) ネズミ科動物が飼育される箱型ケージであって、セルロース繊維に塩基性ガスを吸収する機能が付与された改質セルロース布が床敷として敷かれていることを特徴とするネズミ科動物飼育ケージ用の箱型ケージ。
【0022】
(6) 前記ネズミ科動物飼育ケージ用の床敷は当該箱型ケージの平床における底形状に対応する形状になっていることを特徴とする(5)記載のネズミ科動物飼育ケージ用の箱型ケージ。
【0023】
(7) 前記改質セルロース布は複数枚が積層されていることを特徴とする(5)または(6)記載ネズミ科動物飼育ケージ用の箱型ケージ。
【0024】
(8) 前記改質セルロース布は、アクリル酸をグラフト重合させることによって得られることを特徴とする(1)記載のネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。
【0025】
(9) 前記改質セルロース布は、TEMPO法によりセルロースを酸化させることによって得られることを特徴とする(1)記載のネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は、ラット10が飼育される箱型のケージ1Rの構成図である。図1のケージ1Rは透明ポリカーボネートで成型され、逆台形状の有底ケージである。ケージ1Rの上面はステンレスワイヤによる蓋2Rで覆われている。蓋2Rの一部は窪みが形成され、給水瓶3が差し込まれている。給水瓶3の奥には図示されていないが、ペレット状の餌が給餌される。
【0028】
図1において、ケージ1Rの平底には本発明による改質セルロース布となる床敷4が4枚重ねて敷かれている。また、床敷4はケージ1Rの平底の形状(一般的には矩形)に対応した形状になっている。ケージ1R内において、ラット10は給水瓶3から適量の水を与えられ、給餌されて飼育される。そして、ラット10は床敷4上に糞尿する。
【0029】
図2は、複数のマウス11が飼育される箱型のケージ1Mの構成図である。図2のケージ1Mは透明ポリカーボネートで成型され、逆台形状の有底ケージである。ケージ1Mの上面はステンレスワイヤによる蓋2Mで覆われている。蓋2Mの一部は窪みが形成され、給水瓶3が差し込まれている。給水瓶3の奥には図示されていないが、ペレット状の餌が給餌される。
【0030】
図2は1匹の雄のマウス11と複数匹の雌のマウス11が混在する繁殖実験用のケージである。図2において、ケージ1Mの平底には本発明による床敷4が4枚重ねて敷かれている。ケージ1M内において、マウス11は給水瓶3から適量の水を与えられ、給餌されて飼育される。ケージ1M内で、新生児のマウス11が誕生した場合は、ケージ1M内で新生児のマウス11も飼育される。そして、マウス11は床敷4上に糞尿する。
【0031】
ラット10用のケージ1Rの外形寸法:幅(W)×奥行(D)×高さ(H)は、例えば、270×440×180(単位:mm)であり、マウス11用のケージ1Mの外形寸法:幅(W)×奥行(D)×高さ(H)は、例えば、220×320×130(単位:mm)である。
【0032】
ラット10に較べてマウス11は体長が小さい。一般的に、ラット10用のケージ1Rは、マウス11用のケージ1Mより外形寸法が大きい。しかし、ラット10用のケージ1Rでマウス11を飼育してもよい。
【0033】
このような、異なる外形寸法に対応して、例えば、A4判の大きさ210mm×297mmとB4判の大きさ257mm×364mmの床敷4を提供することが好ましい。
【0034】
次に、本発明で使用される床敷4について説明する。
【0035】
本発明で使用される床敷4となる脱臭布の材質は次のように規定される。基本的には改質セルロース布100gに対し、40〜140ミリモル、好ましくは60〜120ミリモルのカルボキシル基が化学結合して含有していることが好ましい。この改質セルロース布の代表的な製造方法を以下に説明する。
【0036】
改質セルロース布を製造するにあたっては、木綿繊維、麻繊維、レーヨン繊維、木材パルプなどのセルロース繊維を原材料としてカルボキシル基を導入する化学反応工程が必要である。カルボキシル基を導入する反応としては、次のいくつかの既知の方法で実施可能である。カルボキシル基を有するビニールモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸をセルロースにグラフト重合する方法、TEMPO法によるセルロースの触媒的酸化による一級水酸基のカルボキシル基への変換(磯貝 明 著「繊維学会誌 57巻 6号、2001年、P163参照)などが挙げられる。
【0037】
また、カルボキシル基導入反応は原料繊維で行なった後、紡績することも、紡績後の布に対して行なうことも可能であり、不織布にも応用可能である。
【0038】
そして、改質セルロース布において、カルボキシル基含有量は100g当たり40〜140ミリモル、好ましくは60〜120ミリモルが適当である。この範囲を越えるとカルボキシル基導入反応に長時間を要すること、試薬量が増加することなど経済的な不利を生ずるとともに吸水性の低下などセルロース繊維本来の機能が低下する。一方、この範囲に満たないと十分な消臭効果を得ることができない。なお、カルボキシル基の含有量は反応時間や試薬の量によって調整することが可能であり、カルボキシル基高含有の繊維と非含有の繊維との混紡、あるいは混合によっても調整可能である。
【0039】
このようにして生成された改質セルロース布は、アンモニアやアミン、糞尿臭等の塩基性悪臭物質に対する吸着性にすぐれたもので、脱臭性繊維としての作用を示すものである。
【0040】
この改質セルロース布はセルロース布にカルボキシル基を導入させているが、このカルボン酸(COOH)に臭いの元であるアンモニア(NH3)が結合することによりカルボン酸アンモニウム(COONH4)となり中和消臭される。
【0041】
【化1】
−COOH+NH3→−COONH4
【0042】
このように生成された改質セルロース布は塩基性悪臭物質を中和、吸着させるカルボキシル基と、セルロース繊維本来の吸水性などのすぐれた性能を併せ持つものである。
【0043】
図3は、本発明による実施製品の床敷4と市販の複数の消臭布との残存アンモニア濃度を比較したグラフである。図3の横軸は経過時間(単位:分)、縦軸は残存アンモニア濃度(単位:ppm)である。なお、実施製品の床敷4は具体的には、メタクリル酸を8重量%グラフト重合した綿糸66%と無加工の綿糸33%で混紡したものを用いた(この布のカルボキシル基含有量は約60ミリモル/100gであった)。
【0044】
図3の残存アンモニア濃度線Pは、本発明による実施製品の床敷4の濃度データを示している。残存アンモニア濃度線A〜Cは、比較される消臭布の濃度データをそれぞれ示している。残存アンモニア濃度線Nは測定試料が無いときの試験容器内の濃度データを示している。
【0045】
測定試料は1.7gとし、測定試料を1リットルの試験容器となるポリプロピレン容器に密閉し、経過時間による試験容器内のアンモニア濃度を測定した。
【0046】
図3に示されるように、残存アンモニア濃度線A〜Cは、当初、アンモニア濃度が220ppmであったのが5分経過後はアンモニア濃度が半減し、約110ppmとなったが、その後は、残存アンモニア濃度線Nと同じ傾向で濃度が下がった。つまり、比較される消臭布においては、5分経過後は殆ど消臭能力を発揮していないと推察される。
【0047】
一方、本発明による実施製品の床敷4においては、残存アンモニア濃度線Pに示されるように、当初、アンモニア濃度が220ppmであったのが5分経過後はアンモニア濃度がほぼゼロとなり30分経過後もその状態を維持した。こうした測定により、本発明による実施製品の床敷4による消臭能力の高さが数値的に裏づけられる。
【0048】
本発明による床敷4は、100g当たり40〜140ミリモルのカルボキシル基を有し、理論的にはアンモニアを1〜2g吸収する能力がある。1回の使用で糞尿由来のアンモニアなどによって脱臭能力がどの位低下するかは動物の数量、使用期間などによって異なるが、大部分のカルボキシル基はそのまま残っている。ただし、糞尿による汚れや衛生面から床敷4の交換及び洗浄は必要である。
【0049】
本発明による床敷4の特徴は、床敷4を洗濯することによってその消臭能力がある程度復元することにある。この時、アルカリ洗剤を使用すると若干復元度に影響が見られるため、できれば中性洗剤で床敷4を洗濯するのが好ましい。また、更に復元力を強化させるには、酢酸や食酢などの酸性物質を濯ぎ時に加えるとよい。
【0050】
水洗いあるいは中性洗剤でのアンモニア消臭性能の復元は理論的には難しいが、下記の化学反応で、アンモニア消臭性能のごく僅かな復元が考えられる。
【0051】
【化2】
−COONH4+H2O→−COOH+NH4OH
【0052】
中性水溶液中では、洗剤成分による影響は受け難く、また水洗い時と同様に、ごく僅かの復元効果しか得られないものと考えられる。
【0053】
アンモニア消臭後、アルカリ洗剤で洗濯した場合は、洗濯槽内では下記の化学反応が考えられる。
【0054】
【化3】
−COONH4+NaOH→−COONa+NH4OH
【0055】
アルカリ水溶液中では、洗剤成分中のナトリウムイオン(−Na)がアンモニウムイオン(−NH4)に置換したカルボキシル基に結合しやすくなる。このカルボン酸塩(COONa)に酢酸(CH3COOH)での処理を加えても復元は理論的に難しい。よって中性洗剤に比べ消臭性能の劣化が若干発生することになるので、中性洗剤を使用することが好ましい。
【0056】
洗濯の濯ぎ中に酢酸(CH3COOH)を添加した場合は、次の化学反応でアンモニア消臭能力が復元する。
【0057】
【化4】
−COONH4+CH3COOH→−COOH+CH3COONH4
【0058】
洗濯の濯ぎ時に酢酸/食酢を加えると、アンモニウムイオン(−NH4)が外れ、消臭能力が復元する。理論的には酢酸による復元能力は、洗濯水の酢酸濃度ではなく、布重量に対する酢酸量に比例することが考えられる。
【0059】
ただし、アルカリ洗剤で洗濯後にナトリウム塩(−COONa)となったカルボキシル基の場合には酢酸/食酢を加えても理論的には復元することはなく、消臭能力を復元することはあまり期待できない。
【0060】
以上説明したように、本発明による床敷4において、アンモニア消臭能力を低下させる要因の一つに洗濯洗浄がある。洗濯回数によるアンモニア消臭能力の減少程度については、洗濯1回で5%ダウン、洗濯10回で10%ダウン、洗濯20回で20%ダウンと考えられる。
【0061】
本発明による床敷4によるアンモニア消臭能力の絶対値としては、実施製品100g当たり1〜2g程度のアンモニア量を消臭でき、従来品の消臭繊維と比較して20倍程度のアンモニア消臭能力がある。
【0062】
図4は、本発明による実施製品の新品床敷4(図3と同じ製品)と2ヶ月使用後の床敷4における残存アンモニア濃度を比較したグラフである。図4の横軸は経過時間(単位:分)、縦軸は残存アンモニア濃度(単位:ppm)である。
【0063】
図4の残存アンモニア濃度線P1は、本発明による実施製品の新品床敷4の濃度データを示している。残存アンモニア濃度線P2は、2ヶ月使用後の床敷4における残存アンモニア濃度データを示している。残存アンモニア濃度線Dは比較のため、紙パルプによる消臭床敷(新品)の濃度データを示した。
【0064】
測定試料は120gとし、マウスケージ内に各測定試料を敷き、マウスケージ内に1%アンモニア液50ミリリットルを添加後、マウスケージ内のアンモニア濃度をプロットした。
【0065】
図4に示されるように、残存アンモニア濃度線P1(新品)と残存アンモニア濃度線P2(2ヶ月使用品)は、当初、アンモニア濃度が約200ppmであったのが4時間経過後は、アンモニア濃度はそれぞれ0ppmと、約10ppmとなった。使用経過によるが、アンモニア消臭能力に大きな差は見られなかった。特に、紙パルプによる従来品と比べると実施製品のアンモニア消臭能力の高さは歴然としている。
【0066】
木綿繊維にアクリル酸を10重量%グラフト重合し改質繊維と無加工の木綿繊維を5対5の重量比で混紡した改質セルロース布(カルボキシル基含有量は床敷100g当たり70ミリモル)及びTEMPO法に従い木綿製の床敷4を酸化して得た改質床敷(カルボキシル基含有量は床敷100g当たり62ミリモル)についても図3及び図4と同様の方法でアンモニアの吸収テストを行なった結果、前記とほぼ同様の消臭効果を得られる。
【0067】
本発明による床敷4をネズミ科動物飼育ケージに使用するにあたっては、週2回のサイクルで使用するとして、6ヶ月間は廃棄することなく使用可能と考えられる。あるいは50回洗濯後でも使用可能と考えられる。
【0068】
さらに、本発明による床敷4をネズミ科動物飼育ケージに使用するにあたっては、前記ケージの平底に4枚程度本発明による床敷4を敷くのがアンモニア消臭能力を発揮出来て好ましい。
【0069】
本発明による床敷4を複数枚重ねて敷く場合は、箱型ケージの平床における底形状に対応する形状に裁断した床敷4を複数枚、糸等で縫い付けて積層して一体にして敷いてもよい。複数の床敷4を積層して一体にする場合は、糸等で部分的に縫い付けてもよい。さらに、床敷4の隅にファスナーを設け、複数の床敷4が着脱自在に積層して一体となるようにしてもよい。あるいは、複数の床敷4を縫い付けることなく、重ねておいてもよい。
【0070】
本発明による床敷4をネズミ科動物飼育ケージに敷くことによって飼育される動物にとっても生活環境が良くなり、繁殖力が増したとの報告がなされている。
【0071】
さらに、本発明による布製の床敷4をネズミ科動物飼育ケージに複数毎重ねておけば、新生児が潜りこんでいるときも親ネズミが新生児を傷めることなく育てることができる。すなわち、動物の新生児は暗いところに潜り込む習性があり、親ネズミが新生児を引きずりだすときに、紙を破って誤って新生児を傷めることがなくなるのである。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、「ネズミ科動物が飼育される箱型のケージにおいて、当該箱型ケージの平床に敷かれる床敷であってセルロース繊維に塩基性ガスを吸収する機能が付与された改質セルロース布が床敷として敷かれている」ので、改質セルロース布が糞尿から発生するアンモニアなどの塩基性ガスを短時間で強力に脱臭するとともにセルロース繊維本来の性質を保持しているので吸水効果も発揮する。更には、当該改質セルロース布を洗濯乾燥させれば脱臭効果及び吸水効果は概復元でき、費用対効果に優れたリサイクルに有用な床敷を提供できる。
【0073】
また、本発明によれば、「ネズミ科動物が飼育される箱型ケージであって、セルロース繊維に塩基性ガスを吸収する機能が付与された改質セルロース布が床敷として敷かれている」ので、箱型ケージに飼育されている動物の糞尿から発生するアンモニアなどの塩基性ガスを排気するための空調設備を不要とすることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるラットが飼育されるケージの構成図である。
【図2】本発明におけるマウスが飼育されるケージの構成図である。
【図3】本発明による実施製品の床敷と市販の複数の消臭布との残存アンモニア濃度を比較したグラフである。
【図4】本発明による実施製品の新品床敷と2ヶ月使用後の床敷における残存アンモニア濃度を比較したグラフである。
【符号の説明】
1R ケージ
1M ケージ
2R 蓋
2M 蓋
3 給水瓶
4 床敷
10 ラット
11 マウス
【発明の属する技術分野】
本発明は、哺乳類げっ歯目ネズミ科の小動物(ラット、モルモット、マウス等)が飼育されるゲージ用の床敷に関する。
【0002】
【従来の技術】
医学の研究や実験あるいは薬の開発には、ラットやマウス等の実験動物の飼育が欠かせないものとなってきている。こうした実験用小動物は、衛生的な環境において箱型のケージで飼育されている。
【0003】
一方、こうした箱型のケージに敷かれる床敷材としては、木材チップ、トウモロコシ軸粉砕物、パルプを加工した紙製品、古紙再生品、不織布再生品、などが市販され利用されてきた。
【0004】
ヘチマの果肉を裁断してシート状にし、繊維状に乾燥させて構成した床材を実験動物用のケージ内に敷くことが公開されている(例えば、特許文献1)。前記床材をケージ内に敷くことにより、ケージ内で適量の水と餌を与え所定の投薬を行なうラット、モルモットなどの実験用小動物に掛かるストレスを少なくし、しかも、この実験用動物の排泄した尿を、糞が混じることなく、かつ尿を腐敗させることなく採取することができる。
【0005】
【特許文献1】
実開平5−56号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のヘチマの果肉材による床材は、実験動物の糞尿による脱臭効果について詳しく記載されていない。糞尿の臭気が強い場合には、ヘチマ繊維の間に活性炭や木酢を混ぜることが提案されているが、ヘチマ繊維そのものに脱臭効果があるわけではない。ヘチマ繊維は糞尿に対する吸水効果があるのみである。
【0007】
このように、飼育ケージ用の従来の床敷材は、その購入価格が安価であることも手伝って、おがくずをはじめとする木や、紙のチップ材が使用され、その求めるところは主として糞尿に対する吸水効果であった。
【0008】
ILAR(Institute of Animal Resources)による動物実験に関する指針に依れば、このような床敷材は毎日あるいは週単位で新品と交換することが推奨されているが、環境対策の面から考慮すれば、週単位であっても床敷材を焼却処分することは好ましいことではない。そこで、リサイクル可能な床敷材が求められていた。
【0009】
また、前記指針によれば、アンモニアのような毒性のあるいは臭気を起こすガスは許容限界まで除去されなければならないとされているが、ガス除去のためには高価な空調設備を必要としていた。
【0010】
さらには、従来の床敷材には粉塵となって空気中に飛来するものもあり、実験関係者や実験動物にとっても好ましくなく、その対策が求められていた。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決すべく、リサイクル可能であり、人にも実験用動物にも環境に対しても有益なネズミ科動物飼育ケージ用の床敷および箱型ケージを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を満たすため、鋭意研究を重ね脱臭シートとなる新たな床敷とこの床敷を用いた箱型ケージを発明した。
【0013】
より具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
【0014】
(1) ネズミ科動物が飼育される箱型のケージにおいて、当該箱型ケージの平床に敷かれる床敷であって、セルロース繊維に塩基性ガスを吸収する機能が付与された改質セルロース布が床敷として敷かれていることを特徴とするネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。
【0015】
(1)記載の発明によれば、「ネズミ科動物が飼育される箱型のケージにおいて、当該箱型ケージの平床に敷かれる床敷であって、セルロース繊維に塩基性ガスを吸収する機能が付与された改質セルロース布が床敷として敷かれている」ので、改質セルロース布が糞尿から発生するアンモニアなどの塩基性ガスを短時間で強力に脱臭するとともにセルロース繊維本来の性質を保持しているので吸水効果も発揮する。更には、当該改質セルロース布を洗濯乾燥させれば脱臭効果及び吸水効果は概復元でき、費用対効果に優れたリサイクルに有用な床敷を提供できる。
【0016】
(2) 前記ネズミ科動物飼育ケージ用の床敷は当該箱型ケージの平床における底形状に対応する形状になっていることを特徴とする(1)記載のネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。
【0017】
(2)記載の発明によれば、「(1)記載のネズミ科動物飼育ケージ用の床敷において、前記ネズミ科動物飼育ケージ用の床敷は当該箱型ケージの平床における底形状に対応する形状になっている」ので、箱型ケージの平床に改質セルロース布を敷くことが容易であり、2枚重ね3枚重ねする毎に消臭効果が増加する。
【0018】
(3) 繁殖実験用にマウスが雄雌混在して飼育される箱型ケージの平床に敷かれているものであることを特徴とする(1)または(2)記載のネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。
【0019】
(3)記載の発明によれば、「(1)または(2)記載のネズミ科動物飼育ケージ用の床敷において、繁殖実験用にマウスが雄雌混在して飼育される箱型ケージの平床に敷かれているものである」ので、本発明による布製の床敷を複数毎重ねておけば、新生児が潜りこんでいるときも親ネズミが新生児を傷めることなく育てることができる。
【0020】
(4) 前記改質セルロース布は複数枚が積層されていることを特徴とする(1)から(3)いずれか記載ネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。
【0021】
(5) ネズミ科動物が飼育される箱型ケージであって、セルロース繊維に塩基性ガスを吸収する機能が付与された改質セルロース布が床敷として敷かれていることを特徴とするネズミ科動物飼育ケージ用の箱型ケージ。
【0022】
(6) 前記ネズミ科動物飼育ケージ用の床敷は当該箱型ケージの平床における底形状に対応する形状になっていることを特徴とする(5)記載のネズミ科動物飼育ケージ用の箱型ケージ。
【0023】
(7) 前記改質セルロース布は複数枚が積層されていることを特徴とする(5)または(6)記載ネズミ科動物飼育ケージ用の箱型ケージ。
【0024】
(8) 前記改質セルロース布は、アクリル酸をグラフト重合させることによって得られることを特徴とする(1)記載のネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。
【0025】
(9) 前記改質セルロース布は、TEMPO法によりセルロースを酸化させることによって得られることを特徴とする(1)記載のネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は、ラット10が飼育される箱型のケージ1Rの構成図である。図1のケージ1Rは透明ポリカーボネートで成型され、逆台形状の有底ケージである。ケージ1Rの上面はステンレスワイヤによる蓋2Rで覆われている。蓋2Rの一部は窪みが形成され、給水瓶3が差し込まれている。給水瓶3の奥には図示されていないが、ペレット状の餌が給餌される。
【0028】
図1において、ケージ1Rの平底には本発明による改質セルロース布となる床敷4が4枚重ねて敷かれている。また、床敷4はケージ1Rの平底の形状(一般的には矩形)に対応した形状になっている。ケージ1R内において、ラット10は給水瓶3から適量の水を与えられ、給餌されて飼育される。そして、ラット10は床敷4上に糞尿する。
【0029】
図2は、複数のマウス11が飼育される箱型のケージ1Mの構成図である。図2のケージ1Mは透明ポリカーボネートで成型され、逆台形状の有底ケージである。ケージ1Mの上面はステンレスワイヤによる蓋2Mで覆われている。蓋2Mの一部は窪みが形成され、給水瓶3が差し込まれている。給水瓶3の奥には図示されていないが、ペレット状の餌が給餌される。
【0030】
図2は1匹の雄のマウス11と複数匹の雌のマウス11が混在する繁殖実験用のケージである。図2において、ケージ1Mの平底には本発明による床敷4が4枚重ねて敷かれている。ケージ1M内において、マウス11は給水瓶3から適量の水を与えられ、給餌されて飼育される。ケージ1M内で、新生児のマウス11が誕生した場合は、ケージ1M内で新生児のマウス11も飼育される。そして、マウス11は床敷4上に糞尿する。
【0031】
ラット10用のケージ1Rの外形寸法:幅(W)×奥行(D)×高さ(H)は、例えば、270×440×180(単位:mm)であり、マウス11用のケージ1Mの外形寸法:幅(W)×奥行(D)×高さ(H)は、例えば、220×320×130(単位:mm)である。
【0032】
ラット10に較べてマウス11は体長が小さい。一般的に、ラット10用のケージ1Rは、マウス11用のケージ1Mより外形寸法が大きい。しかし、ラット10用のケージ1Rでマウス11を飼育してもよい。
【0033】
このような、異なる外形寸法に対応して、例えば、A4判の大きさ210mm×297mmとB4判の大きさ257mm×364mmの床敷4を提供することが好ましい。
【0034】
次に、本発明で使用される床敷4について説明する。
【0035】
本発明で使用される床敷4となる脱臭布の材質は次のように規定される。基本的には改質セルロース布100gに対し、40〜140ミリモル、好ましくは60〜120ミリモルのカルボキシル基が化学結合して含有していることが好ましい。この改質セルロース布の代表的な製造方法を以下に説明する。
【0036】
改質セルロース布を製造するにあたっては、木綿繊維、麻繊維、レーヨン繊維、木材パルプなどのセルロース繊維を原材料としてカルボキシル基を導入する化学反応工程が必要である。カルボキシル基を導入する反応としては、次のいくつかの既知の方法で実施可能である。カルボキシル基を有するビニールモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸をセルロースにグラフト重合する方法、TEMPO法によるセルロースの触媒的酸化による一級水酸基のカルボキシル基への変換(磯貝 明 著「繊維学会誌 57巻 6号、2001年、P163参照)などが挙げられる。
【0037】
また、カルボキシル基導入反応は原料繊維で行なった後、紡績することも、紡績後の布に対して行なうことも可能であり、不織布にも応用可能である。
【0038】
そして、改質セルロース布において、カルボキシル基含有量は100g当たり40〜140ミリモル、好ましくは60〜120ミリモルが適当である。この範囲を越えるとカルボキシル基導入反応に長時間を要すること、試薬量が増加することなど経済的な不利を生ずるとともに吸水性の低下などセルロース繊維本来の機能が低下する。一方、この範囲に満たないと十分な消臭効果を得ることができない。なお、カルボキシル基の含有量は反応時間や試薬の量によって調整することが可能であり、カルボキシル基高含有の繊維と非含有の繊維との混紡、あるいは混合によっても調整可能である。
【0039】
このようにして生成された改質セルロース布は、アンモニアやアミン、糞尿臭等の塩基性悪臭物質に対する吸着性にすぐれたもので、脱臭性繊維としての作用を示すものである。
【0040】
この改質セルロース布はセルロース布にカルボキシル基を導入させているが、このカルボン酸(COOH)に臭いの元であるアンモニア(NH3)が結合することによりカルボン酸アンモニウム(COONH4)となり中和消臭される。
【0041】
【化1】
−COOH+NH3→−COONH4
【0042】
このように生成された改質セルロース布は塩基性悪臭物質を中和、吸着させるカルボキシル基と、セルロース繊維本来の吸水性などのすぐれた性能を併せ持つものである。
【0043】
図3は、本発明による実施製品の床敷4と市販の複数の消臭布との残存アンモニア濃度を比較したグラフである。図3の横軸は経過時間(単位:分)、縦軸は残存アンモニア濃度(単位:ppm)である。なお、実施製品の床敷4は具体的には、メタクリル酸を8重量%グラフト重合した綿糸66%と無加工の綿糸33%で混紡したものを用いた(この布のカルボキシル基含有量は約60ミリモル/100gであった)。
【0044】
図3の残存アンモニア濃度線Pは、本発明による実施製品の床敷4の濃度データを示している。残存アンモニア濃度線A〜Cは、比較される消臭布の濃度データをそれぞれ示している。残存アンモニア濃度線Nは測定試料が無いときの試験容器内の濃度データを示している。
【0045】
測定試料は1.7gとし、測定試料を1リットルの試験容器となるポリプロピレン容器に密閉し、経過時間による試験容器内のアンモニア濃度を測定した。
【0046】
図3に示されるように、残存アンモニア濃度線A〜Cは、当初、アンモニア濃度が220ppmであったのが5分経過後はアンモニア濃度が半減し、約110ppmとなったが、その後は、残存アンモニア濃度線Nと同じ傾向で濃度が下がった。つまり、比較される消臭布においては、5分経過後は殆ど消臭能力を発揮していないと推察される。
【0047】
一方、本発明による実施製品の床敷4においては、残存アンモニア濃度線Pに示されるように、当初、アンモニア濃度が220ppmであったのが5分経過後はアンモニア濃度がほぼゼロとなり30分経過後もその状態を維持した。こうした測定により、本発明による実施製品の床敷4による消臭能力の高さが数値的に裏づけられる。
【0048】
本発明による床敷4は、100g当たり40〜140ミリモルのカルボキシル基を有し、理論的にはアンモニアを1〜2g吸収する能力がある。1回の使用で糞尿由来のアンモニアなどによって脱臭能力がどの位低下するかは動物の数量、使用期間などによって異なるが、大部分のカルボキシル基はそのまま残っている。ただし、糞尿による汚れや衛生面から床敷4の交換及び洗浄は必要である。
【0049】
本発明による床敷4の特徴は、床敷4を洗濯することによってその消臭能力がある程度復元することにある。この時、アルカリ洗剤を使用すると若干復元度に影響が見られるため、できれば中性洗剤で床敷4を洗濯するのが好ましい。また、更に復元力を強化させるには、酢酸や食酢などの酸性物質を濯ぎ時に加えるとよい。
【0050】
水洗いあるいは中性洗剤でのアンモニア消臭性能の復元は理論的には難しいが、下記の化学反応で、アンモニア消臭性能のごく僅かな復元が考えられる。
【0051】
【化2】
−COONH4+H2O→−COOH+NH4OH
【0052】
中性水溶液中では、洗剤成分による影響は受け難く、また水洗い時と同様に、ごく僅かの復元効果しか得られないものと考えられる。
【0053】
アンモニア消臭後、アルカリ洗剤で洗濯した場合は、洗濯槽内では下記の化学反応が考えられる。
【0054】
【化3】
−COONH4+NaOH→−COONa+NH4OH
【0055】
アルカリ水溶液中では、洗剤成分中のナトリウムイオン(−Na)がアンモニウムイオン(−NH4)に置換したカルボキシル基に結合しやすくなる。このカルボン酸塩(COONa)に酢酸(CH3COOH)での処理を加えても復元は理論的に難しい。よって中性洗剤に比べ消臭性能の劣化が若干発生することになるので、中性洗剤を使用することが好ましい。
【0056】
洗濯の濯ぎ中に酢酸(CH3COOH)を添加した場合は、次の化学反応でアンモニア消臭能力が復元する。
【0057】
【化4】
−COONH4+CH3COOH→−COOH+CH3COONH4
【0058】
洗濯の濯ぎ時に酢酸/食酢を加えると、アンモニウムイオン(−NH4)が外れ、消臭能力が復元する。理論的には酢酸による復元能力は、洗濯水の酢酸濃度ではなく、布重量に対する酢酸量に比例することが考えられる。
【0059】
ただし、アルカリ洗剤で洗濯後にナトリウム塩(−COONa)となったカルボキシル基の場合には酢酸/食酢を加えても理論的には復元することはなく、消臭能力を復元することはあまり期待できない。
【0060】
以上説明したように、本発明による床敷4において、アンモニア消臭能力を低下させる要因の一つに洗濯洗浄がある。洗濯回数によるアンモニア消臭能力の減少程度については、洗濯1回で5%ダウン、洗濯10回で10%ダウン、洗濯20回で20%ダウンと考えられる。
【0061】
本発明による床敷4によるアンモニア消臭能力の絶対値としては、実施製品100g当たり1〜2g程度のアンモニア量を消臭でき、従来品の消臭繊維と比較して20倍程度のアンモニア消臭能力がある。
【0062】
図4は、本発明による実施製品の新品床敷4(図3と同じ製品)と2ヶ月使用後の床敷4における残存アンモニア濃度を比較したグラフである。図4の横軸は経過時間(単位:分)、縦軸は残存アンモニア濃度(単位:ppm)である。
【0063】
図4の残存アンモニア濃度線P1は、本発明による実施製品の新品床敷4の濃度データを示している。残存アンモニア濃度線P2は、2ヶ月使用後の床敷4における残存アンモニア濃度データを示している。残存アンモニア濃度線Dは比較のため、紙パルプによる消臭床敷(新品)の濃度データを示した。
【0064】
測定試料は120gとし、マウスケージ内に各測定試料を敷き、マウスケージ内に1%アンモニア液50ミリリットルを添加後、マウスケージ内のアンモニア濃度をプロットした。
【0065】
図4に示されるように、残存アンモニア濃度線P1(新品)と残存アンモニア濃度線P2(2ヶ月使用品)は、当初、アンモニア濃度が約200ppmであったのが4時間経過後は、アンモニア濃度はそれぞれ0ppmと、約10ppmとなった。使用経過によるが、アンモニア消臭能力に大きな差は見られなかった。特に、紙パルプによる従来品と比べると実施製品のアンモニア消臭能力の高さは歴然としている。
【0066】
木綿繊維にアクリル酸を10重量%グラフト重合し改質繊維と無加工の木綿繊維を5対5の重量比で混紡した改質セルロース布(カルボキシル基含有量は床敷100g当たり70ミリモル)及びTEMPO法に従い木綿製の床敷4を酸化して得た改質床敷(カルボキシル基含有量は床敷100g当たり62ミリモル)についても図3及び図4と同様の方法でアンモニアの吸収テストを行なった結果、前記とほぼ同様の消臭効果を得られる。
【0067】
本発明による床敷4をネズミ科動物飼育ケージに使用するにあたっては、週2回のサイクルで使用するとして、6ヶ月間は廃棄することなく使用可能と考えられる。あるいは50回洗濯後でも使用可能と考えられる。
【0068】
さらに、本発明による床敷4をネズミ科動物飼育ケージに使用するにあたっては、前記ケージの平底に4枚程度本発明による床敷4を敷くのがアンモニア消臭能力を発揮出来て好ましい。
【0069】
本発明による床敷4を複数枚重ねて敷く場合は、箱型ケージの平床における底形状に対応する形状に裁断した床敷4を複数枚、糸等で縫い付けて積層して一体にして敷いてもよい。複数の床敷4を積層して一体にする場合は、糸等で部分的に縫い付けてもよい。さらに、床敷4の隅にファスナーを設け、複数の床敷4が着脱自在に積層して一体となるようにしてもよい。あるいは、複数の床敷4を縫い付けることなく、重ねておいてもよい。
【0070】
本発明による床敷4をネズミ科動物飼育ケージに敷くことによって飼育される動物にとっても生活環境が良くなり、繁殖力が増したとの報告がなされている。
【0071】
さらに、本発明による布製の床敷4をネズミ科動物飼育ケージに複数毎重ねておけば、新生児が潜りこんでいるときも親ネズミが新生児を傷めることなく育てることができる。すなわち、動物の新生児は暗いところに潜り込む習性があり、親ネズミが新生児を引きずりだすときに、紙を破って誤って新生児を傷めることがなくなるのである。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、「ネズミ科動物が飼育される箱型のケージにおいて、当該箱型ケージの平床に敷かれる床敷であってセルロース繊維に塩基性ガスを吸収する機能が付与された改質セルロース布が床敷として敷かれている」ので、改質セルロース布が糞尿から発生するアンモニアなどの塩基性ガスを短時間で強力に脱臭するとともにセルロース繊維本来の性質を保持しているので吸水効果も発揮する。更には、当該改質セルロース布を洗濯乾燥させれば脱臭効果及び吸水効果は概復元でき、費用対効果に優れたリサイクルに有用な床敷を提供できる。
【0073】
また、本発明によれば、「ネズミ科動物が飼育される箱型ケージであって、セルロース繊維に塩基性ガスを吸収する機能が付与された改質セルロース布が床敷として敷かれている」ので、箱型ケージに飼育されている動物の糞尿から発生するアンモニアなどの塩基性ガスを排気するための空調設備を不要とすることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるラットが飼育されるケージの構成図である。
【図2】本発明におけるマウスが飼育されるケージの構成図である。
【図3】本発明による実施製品の床敷と市販の複数の消臭布との残存アンモニア濃度を比較したグラフである。
【図4】本発明による実施製品の新品床敷と2ヶ月使用後の床敷における残存アンモニア濃度を比較したグラフである。
【符号の説明】
1R ケージ
1M ケージ
2R 蓋
2M 蓋
3 給水瓶
4 床敷
10 ラット
11 マウス
Claims (9)
- ネズミ科動物が飼育される箱型のケージにおいて、当該箱型ケージの平床に敷かれる床敷であって、
セルロース繊維に塩基性ガスを吸収する機能が付与された改質セルロース布が床敷として敷かれていることを特徴とするネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。 - 前記ネズミ科動物飼育ケージ用の床敷は当該箱型ケージの平床における底形状に対応する形状になっていることを特徴とする請求項1記載のネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。
- 繁殖実験用にマウスが雄雌混在して飼育される箱型ケージの平床に敷かれているものであることを特徴とする請求項1または2記載のネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。
- 前記改質セルロース布は複数枚が積層されていることを特徴とする請求項1から3いずれか記載ネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。
- ネズミ科動物が飼育される箱型ケージであって、
セルロース繊維に塩基性ガスを吸収する機能が付与された改質セルロース布が床敷として敷かれていることを特徴とするネズミ科動物飼育ケージ用の箱型ケージ。 - 前記ネズミ科動物飼育ケージ用の床敷は当該箱型ケージの平床における底形状に対応する形状になっていることを特徴とする請求項5記載のネズミ科動物飼育ケージ用の箱型ケージ。
- 前記改質セルロース布は複数枚が積層されていることを特徴とする請求項5または6記載のネズミ科動物飼育ケージ用の箱型ケージ。
- 前記改質セルロース布は、アクリル酸をグラフト重合させることによって得られることを特徴とする請求項1記載のネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。
- 前記改質セルロース布は、TEMPO法によりセルロースを酸化させることによって得られることを特徴とする請求項1記載のネズミ科動物飼育ケージ用の床敷。
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