JP2004193018A - 有機電界発光素子の製造方法及び有機電界発光素子 - Google Patents

有機電界発光素子の製造方法及び有機電界発光素子 Download PDF

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Abstract

【課題】有機層を簡便に基板上に形成でき、均一性及び良好な接合界面を有する有機EL素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の有機電界発光素子の製造方法は、基板上に、陰極、無機金属塩と電子輸送性有機材料とを含む混合層、発光層を含む少なくとも一層の有機層、及び陽極をこの順に有する有機電界発光素子の製造方法であって、仮支持体上に少なくとも一層の有機層が形成された転写材料を用い、陰極と混合層とを有する前記基板の前記混合層面と前記転写材料の前記有機層面とを対面させ、加熱及び/又は加圧により前記有機層を前記混合層上に転写する工程と、前記転写材料の前記仮支持体を剥離する工程と、電極を貼り合せる工程とを有することを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はフルカラーディスプレイ、バックライト、照明光源等の面光源やプリンター等の光源アレイ等に有効に利用できる有機電界発光素子(有機EL素子(organic electroluminescent device))及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機EL素子は、発光層及び発光層を挟んだ一対の対向電極(背面電極及び透明電極)から構成されている。有機EL素子において、一対の対向電極間に電界が印加されると背面電極から電子が注入されるとともに、透明電極から正孔が注入される。電子と正孔とが発光層中で再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーが光として放出され素子が発光する。
【0003】
正孔を完全に阻止するために正孔阻止層を有し、電子輸送層内にアルカリ金属を含有させ、更にその一部をカチオン状態で分散させた有機電界発光素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、後述する逆構成素子についての示唆はない。
【0004】
また発光層を印刷法で形成し、且つ陰極と発光層との間に金属、金属酸化物、金属塩等をドープした緩衝層を蒸着法により設けた有機EL素子も提案されている(例えば、特許文献2参照)。この文献は基板上に陰極から積層した逆構成素子についても言及しているが、インクジェット等による印刷の場合、インクの溶媒の種類によっては下層の有機層を溶解する可能性がある。また下層を溶解することで短絡を生じ界面状態の変質により性能悪化を招く可能性がある。
【0005】
【特許文献1】
特開2002-100478号公報
【特許文献2】
特開2001-76874号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、陰極上に、電子輸送性有機材料のみからなる電子輸送層を積層した基板を用いて転写工程を行った場合、陰極と電子輸送層との親和性が、電子輸送層と転写される有機層との親和性より低いため、電子輸送層/陰極界面で剥がれてしまい、いわゆる“逆転写”を生じてしまう。
【0007】
従って本発明の目的は、有機層を簡便に基板上に形成でき、均一性及び良好な接合界面を有する有機EL素子及びその製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、陰極と有機層との界面に電子輸送性有機材料と無機金属塩との混合層を設けることにより、陰極/有機層間の親和性が向上し、逆転写を生じることなく有機層を転写可能であること、及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属の無機塩を有機層中へ混合することにより、陰極からの電子注入エネルギー障壁を低下させ、有機発光素子において、駆動電圧低下、高外部量子効率等の発光性能を改善できることを発見し、本発明に想到した。
【0009】
すなわち、本発明の有機電界発光素子は以下の手段により達成された。
(1) 湿式法により少なくとも一層の有機層を形成した転写材料を用いて、前記有機層側が基板の被成膜面に対面するように前記転写材料を少なくとも陰極を有する基板に重ねて加熱及び/又は加圧することにより、前記有機層を前記基板の被成膜面に転写して形成される有機電界発光素子であって、前記陰極と前記有機層との間に無機金属塩と電子輸送性有機材料とを含む混合層を有することを特徴とする有機電界発光素子。
(2) 湿式法により少なくとも一層の有機層を形成した転写材料を用いて、前記有機層側が基板の被成膜面に対面するように前記転写材料を少なくとも陰極を有する基板に重ねて加熱及び/又は加圧することにより、前記有機層を前記基板の被成膜面に転写し、更に前記有機層を転写した被成膜面と、電極及び/又は有機層が形成された基板を貼り合せて形成される有機電界発光素子であって、前記陰極と前記有機層との間に無機金属塩と電子輸送性有機材料とを含む混合層を有することを特徴とする有機電界発光素子。
(3) 前記混合層中の無機金属塩濃度が0.1〜99.0質量%であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の有機電界発光素子。
(4) 湿式法により少なくとも一層の有機層を形成した転写材料を用いて、前記有機層側が基板の被成膜面に対面するように前記転写材料を少なくとも陰極を有する基板に重ねて加熱及び/又は加圧することにより、前記有機層を前記基板の被成膜面に転写し、更に前記有機層を転写した被成膜面と、電極及び/又は有機層が形成された基板を貼り合せる工程を有する有機電界発光素子の製造方法であって、前記陰極と前記有機層との間に無機金属塩と電子輸送性有機材料とを含む混合層を形成することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。本発明における逆構成素子とは、基板上に順に陰極/有機層/陽極を積層した構成の素子をいう。具体的な層構成としては、陰極/発光性有機層(発光層)/陽極、陰極/電子輸送性有機層/発光性有機層/陽極、陰極/電子輸送性有機層/発光性有機層/正孔輸送性有機層/陽極、陰極/電子注入性有機層/電子輸送性有機層/発光性有機層/陽極、陰極/電子注入性有機層/電子輸送性有機層/発光性有機層/正孔輸送性有機層/正孔注入性有機層/陽極等が挙げられる。
【0011】
逆構成素子の利点の一つは、開口率(実際に発光する部分が画素中に占める割合)が高いことが挙げられる。通常、透光性の基板上に、α-Si、ポリシリコン等からなるTFT(thin film transister)が、画素一つに対して少なくとも一つ設けられ、さらにTFTを選択してONするために走査電極線及び信号電極線が基板上に多数設けられている。TFT素子と有機EL素子とを絶縁するために、TFT上には窒化シリコン、酸化シリコン等からなる絶縁膜が設けられている。しかしながら、TFTの厚さは、ゲート、ドレイン及びソース電極を含め0.2μm〜1μmとなり、凹凸があるのでこれを避けて下部電極を形成する必要があり、画素中に非発光部分が生ずるのを避けることができない。透光性基板側より光を取り出す場合には、さらに走査電極線及び信号電極線も光を遮るため画素の開口率が小さくなる。これに対し、逆構成素子はTFTが設けられた基板と反対側から光を取り出すため、高い開口率を得ることができる。
【0012】
逆構成素子の他の利点としては、基板側から光を取り出す必要がないため、非透光性の基板を使用できることが挙げられる。例えば、ポリイミドフイルムを用いた屈曲自在のフレキシブル基板等、基板の選択の幅を広げることが可能となる。更に、有機層より先に陰極を製膜するので、陰極製膜時の有機層へのダメージを避けることができるという利点もある。
【0013】
本発明の有機EL素子は、無機金属塩と電子輸送性有機材料を含む混合層と、発光層を含む少なくとも一層の有機層とが転写法及び貼り合わせ法の少なくとも一つにより接合されている有機EL素子であり、基板、陰極、無機金属塩と電子輸送性有機材料とを含む混合層、及びこの混合層上に転写法及び/又は貼り合わせ法により設けた発光層を含む少なくとも一層の有機層を有する有機EL素子とも言える。さらに有機EL素子として必要な陽極が蒸着、転写又は貼り合わせにより設けられている。
【0014】
電界発光素子の陰極材料としては、電子注入効率向上のため、通常仕事関数の小さい金属が選択される。これらの金属からなる陰極は蒸着法、スパッタ法等により形成されるが、逆構成素子の場合は陰極が最下層に形成されるので、電極表面の凹凸が上層に与える影響が大きくなる。すなわち、電極同士の短絡や発光面状の悪化という問題点があるため、このような逆構成素子の製造は極めて困難であった。本発明では有機層を転写することにより電極表面の凹凸を緩和し、電極同士の短絡を防止し、発光面状を良化させることができた。
【0015】
[1] 混合層
混合層に含有する無機金属塩としては、Li等のアルカリ金属、Mg等のアルカリ土類金属、又は希土類金属を含む遷移金属の金属塩であれば特に限定はないが、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、CsCl、MgCl2、CaCl2、SrCl2、BaCl2等を好適に用いることができる。
【0016】
混合層における無機金属塩濃度は0.1〜99.0質量%であることが好ましく、1.0〜80.0質量%であることが更に好ましい。0.1質量%未満では、無機金属塩濃度が低すぎるために陰極と混合層の親和性が不十分であり、逆転写が起こりやすくなる。99質量%を超えると、陰極近傍で電子注入されるべき有機材料濃度が低すぎるために、電子注入効率が低下する。混合層の厚さは特に限定されないが、1〜200 nmが好ましく、20〜80 nmが特に好ましい。1nm未満では、混合層の膜厚が薄すぎて均一な膜形成が困難であり、本発明の効果は得られない。また200 nmを超えると、有機層全体の膜厚が厚すぎて駆動電圧が上昇する。
【0017】
電子輸送性有機材料は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、及び陽極から注入されたホールを障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特に限定されない。その具体例としては、例えばトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8-キノリノール誘導体等の金属錯体、メタロフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。混合層における電子輸送性有機材料の含有率としては、0.1〜99.0質量%が好ましく、さらに好ましくは1.0〜80.0質量%である。
【0018】
[2] 基板
本発明で使用する基板の具体例としては、ジルコニア安定化イットリウム(YSZ)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト等のポリエステルやポリスチレン、ポリカ−ボネ−ト、ポリエ−テルスルホン、ポリアリレ−ト、アリルジグリコ−ルカ−ボネ−ト、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料が挙げられる。有機材料の場合、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、加工性等に優れていることが好ましい。なかでも、水分透過率が0.01g/m2・day以下であることが好ましく、酸素透過率が0.01cc/m2・day以下であることが好ましい。水分透過率はJISK7129B法に準拠した方法で主としてMOCON法により測定できる。酸素透過率はJISK7126B法に準拠した方法で主としてMOCON法により測定できる。水分透過率及び酸素透過率をこのように調整することにより、発光素子内に耐久性悪化の原因となる水分や酸素の侵入を防ぐことが可能となる。
【0019】
本発明で使用する基板は、その熱線膨張係数が20 ppm/℃以下であることが好ましい。熱膨張係数は、試料を一定速度で加熱し、試料の長さの変化を検知する方法で測定し、主にTMA法により測定する。熱線膨張係数が20 ppm/℃よりも大きいと、加熱転写後の冷却時や加熱経時等で電極や有機層のクラックや剥がれが生じ、耐久性悪化の原因となる。本発明において、熱線膨張係数が20 ppm/℃以下である基板としては透明又は不透明のいずれのものも用いることができる。但し、後述する透明な電極が、発光層を含む有機層より該基板側にある等の発光を該支持体側から取り出す場合、散乱、減衰を抑えるため無色透明である必要がある。上記物性を満足し、かつ電極製膜し発光素子を作製した時に短絡しない可撓性基板として、金属箔の片面又は両面に絶縁層を設けた基板を用いるのが好ましい。
【0020】
金属箔は特に限定されず、アルミ箔、銅箔、ステンレス箔、金箔、銀箔等の金属箔を用いることができる。中でも加工のしやすさやコストの点からアルミ箔又は銅箔が好ましい。金属箔の厚さは10〜100μmであるのが好ましい。これよりも薄くなると、水分透過性及び酸素透過性が大きくなってガスバリア−性が乏しくなり、発光素子の耐久性が悪化する。また、これよりも厚いと可撓性が無くなり取り扱いに不便を生じる。
【0021】
本発明においては、上記のようにこの金属箔の片面又は両面に絶縁層を設けることが好ましい。絶縁層は特に限定されず、例えば無機酸化物や無機窒化物等の無機物や、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト等)、ポリスチレン、ポリカ−ボネ−ト、ポリエ−テルスルホン、ポリアリレ−ト、アリルジグリコ−ルカ−ボネ−ト、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリイミド等のプラスチックを用いることができる。本発明においては、この絶縁層の上に電極や転写により形成される有機層を設けるが、絶縁層の熱線膨張係数が大きいと転写後冷却時や加熱経時でのクラックや剥がれが生じ、耐久性悪化の原因となる。
【0022】
熱線膨張係数が20 ppm/℃以下である絶縁層としては、酸化珪素、酸化ゲルマニウム、酸化亜鉛、酸化アルミ、酸化チタン、酸化銅等の金属酸化物、窒化珪素、窒化ゲルマニウム、窒化アルミニウム等の金属窒化物を好ましく用いることができ一種又は二種以上を用いることができる。
【0023】
金属酸化物及び/又は金属窒化物絶縁層の厚さは10〜1000 nmであるのが好ましい。これよりも薄いと絶縁性が低下する。又これよりも厚いとクラックが生じやすくなり、ピンホ−ルができ絶縁性が低下する。金属酸化物及び/又は金属窒化物絶縁層を製膜する方法は特に限定されず、蒸着法、スパッタ法、CVD法等の乾式法、ゾル−ゲル法等の湿式法、又は金属酸化物及び/又は金属窒化物の粒子を溶剤に分散し塗布する方法を用いることができる。
【0024】
熱線膨張係数が20 ppm以下のプラスチック材料としては、特にポリイミドや液晶ポリマーを好ましく用いることができる。これらのプラスチック材料の性質等の詳細については「プラスチック・データブック」(旭化成アミダス(株)「プラスチック」編集部編)等に記載されている。ポリイミド等を絶縁層として用いる場合にはポリイミド等のシ−トとアルミ箔をラミネ−トし、貼り付けることが可能である。ポリイミド等のシ−トの厚さは10〜200μmであるのが好ましい。これよりも薄いとラミネ−ト時の取り扱いが困難になる。またこれよりも厚いと可撓性が損なわれ取り扱いに不便を生じる。
【0025】
本発明においては、上記絶縁層を金属箔の片面だけに設けても良いが、両面に設けても良い。両面に設ける場合、両面とも金属酸化物及び/又は金属窒化物であっても良く、また両面ともポリイミド等のシ−トであっても良い。また一方の片面が金属酸化物及び/又は金属窒化物であり、他方の片面がポリイミド等のシ−トであっても良い。本発明においては、必要に応じてハードコート層やアンダーコート層を設けても良い。
【0026】
基板の形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状は板状である。
【0027】
[3] 有機電界発光素子の製造方法
本発明の有機電界発光素子の製造方法は、少なくとも一層の有機層を有する転写材料を用い、有機層側が基板の被成膜面に対面するように転写材料を基板に重ねて加熱することにより有機層を基板の被成膜面に転写する。転写材料は1種であっても良いし、同一又は異なる組成の有機層を有する2種以上の転写材料であっても良いが、有機EL素子の発光性能の観点から湿式法により形成された転写材料であることが好ましい。
【0028】
剥離転写法は、転写材料を加熱することにより有機層を軟化させて、基板の被成膜面に接着させた後、仮支持体を剥離することにより、有機層だけを被成膜面に残留させる方法(転写方法)である。加熱手段としては、一般に公知の方法を用いることができ、例えばラミネータ、赤外線ヒータ、レーザ、熱ヘッド、ヒートローラ等を用いることができる。大面積の転写の際には、加熱手段はラミネータ、赤外線ヒータ、ヒートローラ等を好ましく用いることができる。熱ヘッドとしては、例えばファーストラミネータVA-400III(大成ラミネータ(株)製)、熱転写プリント用の熱ヘッド等を用いることができる。
【0029】
転写用の温度は特に限定的でなく、有機層の材質や加熱部材によって変更することができるが、一般に40〜250℃が好ましく、更に50〜200℃が好ましく、特に60〜180℃が好ましい。ただし転写用の温度の好ましい範囲は、加熱部材、転写材料及び基板の耐熱性に関係しており、耐熱性が向上すればそれにともなって変化する。
【0030】
2種以上の転写材料を使用する場合には、最初に転写する転写材料の転写温度が次に転写する転写材料の転写温度以上であり、2種以上の有機層を有する転写材料を使用する場合には、最初に転写する有機層の転写温度が次に転写する有機層の転写温度以上であるのが好ましい。
【0031】
有機層又はその高分子成分のガラス転移温度又は流動開始温度が40℃以上で、かつ転写温度+40℃以下であるのが好ましい。また転写する2種以上の有機層は少なくとも1種の共通成分を含有しているのが好ましい。
【0032】
転写前に、基板及び/又は転写材料を予熱しておくのが好ましく、基板及び/又は転写材料の予熱温度は30℃以上で、かつ転写温度+20℃以下であるのが好ましい。また仮支持体を引き剥がす時の温度は10℃以上で、かつ転写温度以下であるのが好ましい。転写された有機層を再度加熱するのが好ましく、再加熱温度は、有機層のガラス転移温度又は流動開始温度以上であるのが好ましい。
【0033】
本発明の製造方法では、陰極及び有機層を好ましくは減圧下において転写することにより形成する。圧力は、発光素子の製造装置により適宜好適な圧力値を選択することができるが、1×10-3〜1×10-5Paが好ましい。
【0034】
有機層は少なくとも発光性有機化合物又はキャリア輸送性有機化合物を有するのが好ましい。また基板側から順に電子輸送性有機層、発光性有機層及びホール輸送性有機層を転写するのが好ましい。基板は基板支持体とその上に形成された透明導電膜からなるのが好ましい。
【0035】
有機層が基板の被成膜面に対面するように転写材料を基板に重ねて加熱する際に、加圧するのが好ましい。有機層が基板の被成膜面に対面するように転写材料を基板に重ねる際に、転写材料の基板に対する進入角度を90°以下にするのが好ましい。また仮支持体を用いて転写を行う場合には、仮支持体を基板上に転写された有機層から引き剥がす際に、仮支持体の有機層に対する剥離角度を90°以上にするのが好ましい。転写材料及び/又は基板は連続ウエブであるのが好ましい。
【0036】
本発明において有機EL素子の製造に使用する転写材料は、仮支持体上に湿式法により有機層を形成してなるものが好ましい。また、1つの仮支持体に同一又は異なる組成の2種以上の有機層が面順次に形成されていても良い。
【0037】
本発明では、転写・剥離工程を繰返し行い、複数の有機層を基板上に積層することもできる。複数の有機層は同一の組成であっても異なっていてもよい。同一組成の場合、転写不良や剥離不良による層の抜けを防止することができるという利点がある。また異なる層を設ける場合、機能を分離して発光効率を向上する設計とすることができ、例えば、本発明の転写法により被成膜面に、透明導電層/発光性有機層/電子輸送性有機層/電子注入層/背面電極、透明導電層/ホール注入層/ホール輸送性有機層/発光性有機層/電子輸送性有機層/電子注入層/背面電極を積層することができる。このとき転写温度は、先の転写層が次の転写層に逆転写されないように、先の転写材料を加熱する温度を次の転写材料を加熱する温度以上とするのが好ましい。
【0038】
基板に転写した有機層に対して、あるいは先に転写した有機層に転写した新たな有機層に対して、必要に応じて再加熱するのが好ましい。再加熱により有機層は基板又は先に転写した有機層にいっそう密着する。再加熱時に必要に応じて加圧するのが好ましい。再加熱温度は転写温度±50℃の範囲であるのが好ましい。
【0039】
先の転写層が次の転写層に逆転写されないように、先の転写工程と次の転写工程の間で、被成膜面に密着力を向上するような表面処理を施してもよい。このような表面処理としては、例えばコロナ放電処理、火炎処理、グロー放電処理、プラズマ処理等の活性化処理が挙げられる。表面処理を併用する場合、逆転写しなければ、先の転写材料の転写温度が次の転写材料の転写温度未満であってもよい。
【0040】
本発明の有機電界発光素子の製造装置は、仮支持体上に湿式法により有機層を形成した転写材料を送給する装置と、転写材料を加熱しながら基板の被成膜面に押し当てることにより、有機層を基板の被成膜面に転写する装置と、転写後に仮支持体を有機層から引き剥がす装置とを有する装置を用いることができる。製造装置は、転写装置に送給する前に転写材料及び/又は基板を予熱する手段を有するのが好ましい。また転写装置の後段に冷却装置を有するのが好ましい。
【0041】
転写装置の前面には、転写材料の基板に対する進入角度を90°以下にする進入角度調整部が設けられているのが好ましい。また転写装置又は冷却装置の後面には、仮支持体の有機層に対する剥離角度を90°以上にする剥離角度調整部が設けられているのが好ましい。以上の有機EL素子の製造法及び装置についての詳細は特開2002-289346号公報に記載されている。
【0042】
転写により有機層が形成された被成膜面に、さらに電極及び/又は有機層が形成された基板を貼り合わせてもよい。貼り合せ法は、2つの面の界面同士を密着、圧着、融着等により接合する方法である。具体的には被成膜面に転写された有機層と、電極及び/又は有機層が形成された基板とを重ね合せた後、加熱及び/又は加圧することにより有機薄膜層を軟化させ、電極及び/又は有機層が形成された基板に接着させる方法である。
【0043】
[4] 転写材料
以下転写材料の構成及び内容について説明する。特に転写材料として仮支持体を用いる場合について説明する。
(1) 構成
有機層は仮支持体上に湿式法で作製する。有機層を設けた転写材料は、個々独立した転写材料として作製してもよいし、図1に示すように面順次に設けても良い。すなわち、進行方法順に112a,112b,112c等と複数の有機層を1枚の仮支持体に設けても良い。この転写材料110を使用すれば、転写材料の交換の必要なしに、複数の有機層を連続的に形成することができる。
【0044】
また仮支持体上に2層以上の有機層を予め積層した転写材料を使用すれば、1回の転写工程で基板の被成膜面に多層膜を積層することができる。仮支持体上に予め積層する場合、積層される各有機層の界面が均一でないと正孔や電子の移動にムラが生じてしまうので、界面を均一にするために溶剤を慎重に選ぶ必要があり、またその溶剤に可溶な有機層用の有機化合物を選択する必要がある。
【0045】
(2) 仮支持体
仮支持体を用いて転写を行う場合、本発明に使用する仮支持体は、化学的及び熱的に安定であって、可撓性を有する材料により構成されるべきであり、具体的にはフッ素樹脂[例えば4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、3フッ化塩化エチレン樹脂(PCTFE)等]、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等)、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエーテルスルホン(PES)等の薄いシート、又はこれらの積層体が好ましい。仮支持体の厚さは1μm〜300μmが適当であり、更に3μm〜200μmが好ましく、特に3μm〜50μmであるのが好ましい。
【0046】
(3) 仮支持体への有機層の形成
バインダーとして高分子化合物を含む有機層は、湿式法により仮支持体に形成するのが好ましい。これには、有機層用材料を有機溶剤に所望の濃度に溶解し、得られた溶液を仮支持体に塗布する。塗布法としては、有機層の乾燥膜厚が200 nm以下で均一な膜厚分布が得られれば特に制限はなく、スピンコート法、グラビアコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、エクストルージェンコート法、インクジェット塗布法等が挙げられる。中でも、ロールツーロールによる生産性の高いエクストルージェンコート法が好ましい。
【0047】
(4) 有機層
有機層は有機EL素子を構成する層であり、有機EL素子に用いることのできる層を意味し、具体的にはそれぞれの特質から発光性有機層、電子輸送性有機層、ホール輸送性有機層、電子注入層、ホール注入層等が挙げられる。また発色性を向上するための種々の層を挙げることができる。各層に用いる化合物の具体例については、例えば「月刊ディスプレイ」1998年10月号別冊の「有機ELディスプレイ」(テクノタイムズ社)等に記載されている。なお、以下の有機層の説明において、誘導体という用語は、その化合物自身とその誘導体を意味する。
【0048】
有機層自体又はその中の成分のガラス転移温度は40℃以上で、かつ転写温度+40℃以下が好ましく、更に50℃以上で、かつ転写温度+20℃以下が好ましく、特に60℃以上で、かつ転写温度以下が好ましい。また転写材料の有機層自体又はその中の成分の流動開始温度は40℃以上で、かつ転写温度+40℃以下が好ましく、更に50℃以上で、かつ転写温度+20℃以下が好ましく、特に60℃以上で、かつ転写温度以下が好ましい。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置(DSC)により測定することができる。また流動開始温度は、例えば島津製作所(株)製のフローテスターCFT-500を用いて測定することができる。
【0049】
(a) 発光性有機層(発光層)
発光性有機層は少なくとも一種の発光性化合物を含有する。発光性化合物は特に限定的ではなく、蛍光発光性化合物であっても燐光発光性化合物であってもよい。また蛍光発光性化合物及び燐光発光性化合物を同時に用いてもよい。本発明では、発光輝度及び発光効率の点から燐光発光性化合物の使用が好ましい。
【0050】
蛍光発光性化合物としては、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリデン化合物、金属錯体(8-キノリノール誘導体の金属錯体、希土類錯体等)、高分子発光性化合物(ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等)等が使用できる。これらは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0051】
燐光発光性化合物は、好ましくは三重項励起子から発光することができる化合物であり、オルトメタル化錯体及びポルフィリン錯体が好ましい。ポルフィリン錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。燐光発光性化合物は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0052】
本発明でいうオルトメタル化錯体とは、山本明夫著「有機金属化学 基礎と応用」,150頁及び232頁,裳華房社(1982年)、H. Yersin著「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」,71〜77頁及び135〜146頁,Springer-Verlag社(1987年)等に記載されている化合物群の総称である。オルトメタル化錯体を形成する配位子は特に限定されないが、2-フェニルピリジン誘導体、7,8-ベンゾキノリン誘導体、2-(2-チエニル)ピリジン誘導体、2-(1-ナフチル)ピリジン誘導体又は2-フェニルキノリン誘導体であるのが好ましい。これら誘導体は置換基を有してもよい。またこれらのオルトメタル化錯体形成に必須の配位子以外に他の配位子を有していてもよい。オルトメタル化錯体を形成する中心金属としては、遷移金属であればいずれも使用可能であり、本発明ではロジウム、白金、金、イリジウム、ルテニウム、パラジウム等を好ましく用いることができる。このようなオルトメタル化錯体を含む有機化合物層は、発光輝度及び発光効率に優れている。オルトメタル化錯体については、米国特許出願公開第2002/0055014号明細書に具体例が記載されている。
【0053】
本発明で用いるオルトメタル化錯体は、Inorg. Chem., 30, 1685, 1991、Inorg. Chem., 27, 3464, 1988、Inorg. Chem., 33, 545, 1994、Inorg. Chim. Acta, 181, 245, 1991、J. Organomet. Chem., 335, 293, 1987、J. Am. Chem. Soc., 107, 1431, 1985等に記載の公知の方法により合成することができる。
【0054】
発光性有機層中の発光性化合物の含有量は特に制限されないが、例えば0.1〜70質量%であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましい。発光性化合物の含有量が0.1質量%未満であるか又は70質量%を超えると、その効果が十分に発揮されないことがある。
【0055】
発光性有機層は必要に応じてホスト化合物、ホール輸送材料、電子輸送材料、電気的に不活性なポリマーバインダー等を含有してもよい。なおこれらの材料の機能は1つの化合物により同時に達成できる。例えば、カルバゾール誘導体はホスト化合物として機能するのみならず、ホール輸送材料としても機能する。
【0056】
ホスト化合物とは、その励起状態から発光性化合物へエネルギー移動が起こり、その結果その発光性化合物を発光させる化合物である。その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8-キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾール等を配位子とする金属錯体、ポリシラン化合物、ポリ(N-ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。ホスト化合物は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。ホスト化合物の発光性有機層における含有率としては0〜99.9質量%が好ましく、さらに好ましくは0〜99.0質量%である。
【0057】
ホール輸送材料は、陽極からホールを注入する機能、ホールを輸送する機能、及び陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有しているものであれば特に限定されず、低分子材料であっても高分子材料であってもよい。その具体例としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン化合物、ポルフィリン化合物、ポリシラン化合物、ポリ(N-ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。ホール輸送材料の発光性有機層における含有率としては0〜99.9質量%が好ましく、さらに好ましくは0〜80.0質量%である。
【0058】
電子輸送材料としては、電子輸送性有機材料の具体例として挙げた有機化合物等を好適に用いることができる。これらは単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。電子輸送材料の発光性有機層における含有率としては0〜99.9質量%が好ましく、さらに好ましくは0〜80.0質量%である。
【0059】
ポリマーバインダーとしては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等が使用可能である。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。ポリマーバインダーを含有する発光性有機層は、湿式製膜法により容易に大面積に塗布形成できる。発光性有機層の厚さは10〜200 nmとするのが好ましく、20〜80nmとするのがより好ましい。厚さが200 nmを超えると駆動電圧が上昇することがある。一方10 nm未満であると有機EL素子が短絡することがある。
【0060】
(b) ホール輸送性有機層
有機電界発光素子は、必要に応じて上記ホール輸送材料からなるホール輸送性有機層を有してよい。ホール輸送性有機層は上記ポリマーバインダーを含有してもよい。ホール輸送性有機層の厚さは10〜200 nmとするのが好ましく、20〜80 nmとするのがより好ましい。厚さが200 nmを超えると駆動電圧が上昇することがあり、10 nm未満であると素子が短絡することがある。
【0061】
(c) 電子輸送性有機層
有機電界発光素子は、必要に応じて上記電子輸送材料からなる電子輸送性有機層を有してもよい。電子輸送性有機層は上記ポリマーバインダーを含有してもよい。電子輸送性有機層の厚さは10〜200 nmとするのが好ましく、20〜80 nmとするのがより好ましい。厚さが200 nmを超えると駆動電圧が上昇することがあり、10 nm未満であると素子が短絡することがある。
【0062】
以上の有機層を湿式製膜法により塗布形成する場合、有機化合物層の材料を溶解して塗布液を調製する際に用いる溶剤は特に制限はなく、正孔輸送材、オルトメタル化錯体、ホスト材、ポリマ−バインダ−等の種類に応じて適宜選択することができ、例えば、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n-プロピルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン形容剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン、炭酸ジエチル等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエ−テル系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤、ジメチルスルホキシド、水等が挙げられる。なお、塗布液における固形分量又は溶剤に対する固形分量は特に制限はなく、その粘度も湿式製膜方法に応じて任意に選択することができる。
【0063】
複数の有機層を形成する際に、本発明の転写法以外に蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、ディッピング、スピンコ−ト法、ディップコ−ト法、キャスト法、ダイコ−ト法、ロ−ルコ−ト法、バ−コ−ト法、グラビアコ−ト法等の湿式製膜法、印刷法等を併用することもできる。
【0064】
[5] 有機電界発光素子
(1) 構成
有機電界発光素子の全体構成は、前述の通り基板上に順に陰極/混合層/発光性有機層/陽極、陰極/混合層/電子輸送性有機層/発光性有機層/陽極、陰極/混合層/電子輸送性有機層/発光性有機層/正孔輸送性有機層/陽極、陰極/混合層/電子注入性有機層/電子輸送性有機層/発光性有機層/陽極、陰極/混合層/電子輸送性有機層/発光性有機層/正孔輸送性有機層/正孔注入性有機層/陽極等を積層した構成であってよい。発光性有機層は蛍光発光性化合物及び/又は燐光発光性化合物を含有し、陰極あるいは陽極側から発光が取り出される。各層に用いる化合物の具体例については、例えば「月刊ディスプレイ」1998年10月号別冊の「有機ELディスプレイ」(テクノタイムズ社)等に記載されている。
【0065】
(2) 電極
陰極及び陽極のどちらも透明導電層又は背面電極として使用でき、いずれかは有機電界発光素子を構成する組成により決まる。陽極としては、通常、有機化合物層に正孔を供給する陽極としての機能を有すればよく、その形状、構造、大きさ等について特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じ公知の電極の中から適宜選択できる。
【0066】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、有機導電性化合物、又はこれらの混合物を好適に挙げられ、仕事関数が4.0 eV以上の材料が好ましい。具体例としては、アンチモンやフッ素等をド−プした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の半導性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質、半導性金属酸化物又は金属化合物の分散物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ−ル等の有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物等が挙げられる。
【0067】
陽極は例えば、印刷方式、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等の中から材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、該陽極の形成は、直流あるいは高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレ−ティング法等に従って行うことができる。また陽極の材料として有機導電性化合物を選択する場合には湿式製膜法に従って行うことができる。中でも本発明においては発光素子の大面積化や、その生産性の点から湿式製膜法を用いることが好ましい。
【0068】
陽極のパタ−ニングは、フォトリソグラフィ−等による化学的エッチングにより行ってもよいし、レ−ザ−等による物理的エッチングにより行ってもよい。また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等により行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0069】
陽極の厚さは材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10 nm〜50μmであり、50 nm〜20μmが好ましい。陽極の抵抗値としては、106Ω/□以下が好ましく、105Ω/□以下がより好ましい。105Ω/□以下の場合、バスライン電極を設置することにより性能の優れた大面積発光素子を得ることができる。
【0070】
陽極は、無色透明であっても、有色透明であっても、不透明であっても良いが、陽極を透明陽極とし、透明陽極側から発光を取り出す場合にその透過率としては60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。この透過率は、分光高度計を用いた公知の方法に従って測定できる。透明陽極としては「透明導電膜の新展開」(沢田豊監修、シーエムシー刊、1999年)等に詳細に記載されている電極も本発明に適用できる。特に耐熱性の低いプラスチック基板支持体を用いる場合は、透明導電層材料としてITO又はIZOを使用し、150℃以下の低温で製膜するのが好ましい。
【0071】
(3) 陰極
陰極としては、通常、有機化合物層に電子を注入する陰極としての機能を有していれば良く、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極の中から適宜選択することができる。
【0072】
陰極の材料としては、例えば、金属単体、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等が挙げられ、仕事関数が4.5 eV以下のものが好ましい。具体例としてはアルカリ金属(例えばLi、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を併用するのが好ましい。
【0073】
これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ度類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属との合金(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金等)、又は混合物をいう。
【0074】
陰極側から光を取り出す場合、透明陰極を使用する必要がある。透明陰極は光に対して実質上透明であればよい。電子注入性と透明性を両立するためには、薄膜の金属層と透明な導電層の2層構造とすることもできる。なお、薄膜金属層の材料については、特開平2-15595号公報、特開平5-121172号公報等に詳述されている。薄膜の金属層の厚さは1nm〜50 nmであることが好ましい。1nmより薄いと、均一に薄膜層を製膜することが困難になる。また50 nmよりも厚いと光に対する透明性が悪くなる。
【0075】
2層構造をとる場合の透明導電層に用いる材料としては導電性と半導性の材料があるが、透明な材料であれば特に限定されず、上記陽極に記載した材料を好適に用いることができる。中でもアンチモンやフッ素等をド−プした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等がより好ましい。透明導電層の厚さは30〜500 nmであるのが好ましい。これよりも薄いと導電性又は半導性が劣り、これよりも厚いと生産性が悪くなる。
【0076】
陰極の形成法は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができるが、真空機器内で行うのが好ましい。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等の中から材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って基板上に形成することができる。例えば、陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。また、有機導電性材料を用いる場合、湿式製膜法を用いても良い。
【0077】
陰極のパタ−ニングは、フォトリソグラフィ−等による化学的エッチングにより行ってもよいし、レ−ザ−等による物理的エッチングにより行ってもよい。また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等により行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0078】
陰極と有機化合物層との間にアルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚さで挿入してもよい。なお、該誘電体層は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等により形成することができる。
【0079】
(4) パターニング
微細パターン状有機層の形成には、微細パターン状の開口部を有するマスク(微細マスク)を使用する。マスクの材質は限定的でないが、金属、ガラス、セラミック、耐熱性樹脂等の耐久性があって安価なものが好ましい。またこれらの材料を組み合わせて使用できる。機械的強度及び有機層の転写精度の観点から、マスクの厚さは2〜100μmであるのが好ましく、5〜60μmがより好ましい。
【0080】
転写材料の有機層が正確にマスクの開口部の形状通りに下地の透明導電層又は他の有機層に接着するように、マスク開口部は基板側より転写材料側の方が大きくなるようにテーパしているのが好ましい。
【0081】
本発明においては、仮支持体上に有機層を少なくとも一層形成することにより、単数又は複数の転写材料を形成する転写材料形成工程と、得られた転写材料のうちの1種の転写材料表面を、表面に所定パターンの凹凸が形成された押圧部材で押圧することにより、該転写材料表面に押圧部材の凹凸に対応する凹凸パターンを形成するパターン形成工程と、凹凸パターンが形成された単数又は複数の転写材料のうちの1種の転写材料の表面を所定の被成膜面と重ね合わせ、該転写材料の凸部の被転写材料に転写する操作を少なくとも一回繰り返すことにより、被成膜面上に上記単数又は複数の異なる組成の有機層が形成されたパターン材料を製造する転写工程とを有するパターニング方法を用いた有機EL素子の製造方法も好適に利用できる。
【0082】
(5) その他の層
有機EL素子を構成する層として、発光性能の劣化を防止するために保護層や封止層を設けるのが好ましい。さらに転写材料においては発光性能に影響しなければ、転写性を向上するために仮支持体と有機層の間に剥離層を設けたり、有機層と被成膜面の間に接着層を設けたりしてもよい。
【0083】
(a) 保護層
有機EL素子は、特開平7-85974号公報、同7-192866号公報、同8-22891号公報、同10-275682号公報、同10-106746号公報等に記載の保護層を有していてもよい。保護層は有機EL素子の最上面に形成する。ここで最上面とは、例えば基板支持体、透明導電層、有機化合物層及び背面電極をこの順に積層する場合には背面電極の外側表面を指し、また例えば基板支持体、背面電極、有機化合物層及び透明導電層をこの順に積層する場合には透明導電層の外側表面を指す。保護層の形状、大きさ、厚さ等は特に限定的でない。保護層をなす材料は、水分や酸素等の有機EL素子を劣化させ得るものが素子内に侵入又は透過するのを抑制する機能を有しているものであれば特に限定されず、例えば一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、一酸化ゲルマニウム、二酸化ゲルマニウム等が使用できる。
【0084】
保護層の形成方法は特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子センエピタキシ法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザCVD法、熱CVD法、コーティング法等が適用できる。
【0085】
(b) 封止層
有機EL素子には水分や酸素の侵入を防止するための封止層を設けるのが好ましい。封止層を形成する材料としては、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとの共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン又はジクロロジフルオロエチレンと他のコモノマーとの共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、金属(In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等)、金属酸化物(MgO、SiO、SiO2、Al2O3、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe2O3、Y2O3、TiO2等)、金属フッ化物(MgF2、LiF、AlF3、CaF2等)、液状フッ素化炭素(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、液状フッ素化炭素に水分や酸素の吸着剤を分散させたもの等が使用可能である。
【0086】
外部からの水分や酸素を遮断する目的で、有機化合物層を封止板、封止容器等の封止部材により封止するのが好ましい。封止部材を背面電極側のみに設置しても、発光積層体全体を封止部材で覆ってもよい。有機化合物層を封止でき外部の空気を遮断することができれば、封止部材の形状、大きさ、厚さ等は特に限定されない。封止部材に用いる材料としては、ガラス、ステンレススチール、金属(アルミニウム等)、プラスチック(ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート等)、セラミック等が使用できる。
【0087】
封止部材を発光積層体に設置する際には、適宜封止剤(接着剤)を用いてもよい。発光積層体全体を封止部材で覆う場合は、封止剤を用いずに封止部材同士を熱融着してもよい。封止剤としては紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、二液型硬化樹脂等が使用可能である。
【0088】
さらに封止容器と有機EL素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を挿入してもよい。水分吸収剤は特に限定されず、具体例としては酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化リン、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム等が挙げられる。不活性液体としてはパラフィン類、流動パラフィン類、フッ素系溶剤(パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等)、塩素系溶剤、シリコーンオイル類等が使用可能である。
【0089】
本発明の発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2〜40 V)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。本発明の発光素子の駆動方法については、特開平2-148687号公報、同6-301355号公報、同5-29080号公報、同7-134558号公報、同8-234685号公報、同8-241047号公報、米国特許5828429号明細書、同6023308号明細書、日本特許第2784615号公報等に記載の方法を利用することができる。
【0090】
【実施例】
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
実施例1
(A) 転写材料Aの作製
ポリエーテルスルホン(住友ベークライト(株)製、厚さ188μm)の仮支持体の片面上に、下記組成:
ポリビニルカルバゾール(Mw=63000、アルドリッチ社製): 40質量部
トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム錯体(オルトメタル化錯体):
1質量部
ジクロロエタン: 3500質量部
を有する発光性有機層用塗布液をバーコータを用いて塗布し、室温で乾燥することにより、厚さ40 nmの発光性有機層を仮支持体上に形成した転写材料Aを作製した。
【0092】
(B) 転写材料Bの作製
ポリエーテルスルホン(住友ベークライト(株)製、厚さ188μm)の仮支持体の片面上に、下記組成:
高分子化合物(PTPDES) :40質量部
添加剤(TBPA) :10質量部
ジクロロエタン: 3500質量部
を有する有機層用塗布液をエクストルージョン型塗布機を用いて塗布し、室温で乾燥することにより、厚さ40 nmのホール輸送性有機層を仮支持体上に形成した転写材料Bを作製した。
【0093】
【化1】
Figure 2004193018
【0094】
(C) 有機EL素子の作製
5 cm角(厚さ30μm)のアルミ箔の両面にポリイミドシ−ト(ユ−ピレックス50S、厚さ50μm、宇部興産製)を接着剤を用いてラミネ−トし、支持基板を作製した。尚、該支持基板の熱線膨張係数は10 ppm/℃であった(TMA測定)。また、該支持基板の水分透過率は0.01 g/m2・day以下(MOCON法、25℃、90%RH)、酸素透過率は0.01cc/m2・day以下(MOCON法、25℃、0%RH)であった。
【0095】
この基板上に蒸着法により250 nmの膜厚でAlを製膜した(陰極)。更にこの上に、下記構造を有する電子輸送性有機材料(ET-1)に対しLiFが10質量%となるように各々の材料の蒸着速度を調整し、36 nmの膜厚で混合層を積層した。減圧状態を維持したまま、この基板上に転写材料Aの発光性有機層側を重ね、転写材料Aの仮支持体側から0.3MPaの加圧力の1対のローラー(一方が155℃の加熱ローラー)の間を0.05 m/分の速度で通すことにより転写材料Aの仮支持体側から加熱しながら加圧した。ついで転写材料Aから仮支持体を引き剥がすことにより、混合層の上面に発光性有機層を形成した。
【0096】
電子輸送性有機材料(ET-1)
【化2】
Figure 2004193018
【0097】
更に、発光性有機層の上面に転写材料Bのホール輸送性有機層側を重ね、転写材料Bの仮支持体側から0.3 MPaの加圧力の1対のローラー(一方が150℃の加熱ローラー)の間を0.05 m/分の速度で通すことにより転写材料Bの支持体側から加熱しながら加圧し、仮支持体を引き剥がすことにより、発光性有機層の上面にホール輸送性有機層を形成した。以上の様にして設けた有機化合物層の上にDCマグネトロンスパッタにより200 nmの膜厚でITO(インジウム/錫=95/5モル比)を成膜し陽極の透明導電層を得た。次に陽極、陰極よりそれぞれアルミニウムのリード線を出して発光素子を作製した。さらにリ−ド線部以外の部分をスパッタ法により窒化珪素により被い封止膜を作製し本発明に従う素子101を作製した。
【0098】
素子101において、電子輸送性有機材料としてトリス(8-キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)、無機金属塩としてMgF2を用い、Alq3に対しMgF2が20質量%となるように蒸着速度を調整して混合層を形成した以外は素子101と同様な方法で素子102を作製した。
【0099】
比較例1
素子101において、Al及びLiFを積層した基板上に、下記組成:
ポリビニルブチラール(Mw=50000、アルドリッチ社製): 10質量部
1-ブタノール: 3500質量部
電子輸送性有機材料(ET-1): 20質量部
を有する電子輸送性有機層用塗布液をスピンコーターで塗布し、膜厚40 nmの電子輸送性有機層を作製し、さらに発光性有機層を転写した基板上に、ホール輸送性有機層用塗布液をスピンコーターで塗布し、膜厚40 nmのホール輸送性有機層を作製した以外は素子101と同様の方法で素子103を作製した。
【0100】
比較例2
素子101において、転写材料Aの発光性有機層を転写するかわりに、トリス(2-フェニルピリジル)イリジウム錯体及び4,4'-N,N'-ジカルバゾ−ルビフェニルをそれぞれ0.1 nm/秒、1nm/秒の速度で共蒸着して、0.024μmの発光層を形成した。
【0101】
その上に、転写材料Bのホール輸送性有機層を転写するかわりに、N,N'-ジナフチル-N,N'-ジフェニルベンジジンを1nm/秒の速度で蒸着して0.04μmのホール輸送層を設けた。それ以外は素子101と同様にして素子104を作製した。
【0102】
以上のようにして得られた本発明の発光素子を以下の方法で評価した。東洋テクニカ製ソ−スメジャ−ユニット2400型を用いて、直流電圧を有機EL素子に印加し発光させ、1cd/m2時の電圧を駆動電圧、200cd/m2時の発光効率(η200)を外部量子効率とし、更に欠陥の有無を目視で評価した。欠陥は1mm2の面積での個数により評価した。
5個以下 ◎
20個以下 ○
21個以上 ×
【0103】
【表1】
Figure 2004193018
【0104】
以上の様に本発明の素子では低駆動電圧かつ高発光効率であり、欠陥も著しく少ないことが分かった。
【0105】
実施例2
(a) 陰極側基板Nの作製
実施例1で使用したものと同様の支持基板上に、蒸着法により250 nmの膜厚でAlを製膜した。更にこの上に、電子輸送性有機材料(ET-1)に対しLiFが10質量%となるように各々の材料の蒸着速度を調整し、36 nmの膜厚で混合層を積層した。この混合層の上面に、実施例1で使用したものと同様の転写材料Aを用いて、実施例1と同じ条件で発光性有機層を転写し、陰極側基板Nを作製した。
【0106】
(b) 陽極側基板Pの作製
25 mm角のガラス基板上に、ITOターゲット(インジウム/錫=95/5モル比)を用いて、DCマグネトロンスパッタ(条件:基板温度100℃、酸素圧1×10-3Pa)により厚さ200 nmのITO薄膜からなる透明電極(陽極)を形成した。このITO薄膜の表面抵抗は10Ω/□であった。次に、この透明電極上にポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水性分散液(BAYER社製、Baytron P:固形分1.3質量%)をスピンコートした後、150℃で2時間真空乾燥して厚さ100 nmのホール輸送層を形成し、陽極側基板Pを作製した。
【0107】
(c) 有機電界発光素子の作製
作製した基板Nと基板Pとを、それぞれの電極が交差し、且つ、発光層が転写された被成膜面とホール輸送層が対面するように重ね合わせ、0.3 MPaの加圧力の1対のローラー(一方が155℃の加熱ローラー)の間を0.05 m/分の速度で通すことにより加熱しながら加圧し、貼り合せた。次に陽極、陰極よりアルミニウムのリード線を結線して発光素子を作製した。更に紫外線硬化型接着剤(長瀬チバ(株)製、XNR5493)を用い、ガラス製の封止容器で封止して素子201を作製した。
【0108】
素子201において、電子輸送性有機材料としてトリス(8-キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)、無機金属塩としてMgF2を用い、Alq3に対しMgF2が20質量%となるように蒸着速度を調整して混合層を形成した以外は素子201と同様の方法で素子202を作製した。
【0109】
比較例3
素子201において、Al及びLiFを積層した陰極側基板上に、下記組成:
ポリビニルブチラール(Mw=50000、アルドリッチ社製): 10質量部
1-ブタノール: 3500質量部
電子輸送性有機材料(ET-1): 20質量部
を有する電子輸送性有機層用塗布液をスピンコーターで塗布し、膜厚40 nmの電子輸送性有機層を作製した以外は素子201と同様の方法で素子203を作製した。
【0110】
比較例4
素子201において、転写材料Aの発光性有機層を転写するかわりに、トリス(2-フェニルピリジル)イリジウム錯体及び4,4'-N,N'-ジカルバゾ−ルビフェニルをそれぞれ0.1 nm/秒、1nm/秒の速度で共蒸着して、0.024μmの発光層を形成する以外は素子201と同様に素子204を作製した。
【0111】
作製した素子201〜204を用いて実施例1と同様の評価を行った。その結果、素子201及び202は実施例1と同様の良好な結果が得られた。
【0112】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、転写材料を用いて有機層を転写により形成するため、発光面の欠陥が少なく、発光特性や耐久性に優れた発光素子が得られるとともに、蒸着法と比較して製造工程が簡便になり、効率良く有機EL素子を製造できる。また、本発明の製造方法による発光素子は、基板上に順次積層された陰極、有機層及び陽極層を有する素子(逆構成素子)であるので、高い開口率を有し、発光特性や耐久性に優れた発光素子が得られる。さらに、本発明の製造方法では無機金属塩と電子輸送性有機材料層を混合し混合層を形成するため、逆転写を生じることなく、発光素子の性能も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】複数の有機層を面順次に有する転写材料を示す概略図である。
【符号の説明】
110・・・転写材料
112・・・有機層

Claims (4)

  1. 基板上に、陰極、無機金属塩と電子輸送性有機材料とを含む混合層、発光層を含む少なくとも一層の有機層、及び陽極をこの順に有する有機電界発光素子の製造方法であって、仮支持体上に少なくとも一層の有機層が形成された転写材料を用い、陰極と混合層とを有する前記基板の前記混合層面と前記転写材料の前記有機層面とを対面させ、加熱及び/又は加圧により前記有機層を前記混合層上に転写する工程と、前記転写材料の前記仮支持体を剥離する工程と、電極を貼り合せる工程とを有することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
  2. 前記電極を貼り合せる工程における電極は、電極が形成された基板であることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子の製造方法。
  3. 基板上に、陰極、無機金属塩と電子輸送性有機材料とを含む混合層、発光層を含む少なくとも一層の有機層、及び陽極をこの順に有する有機電界発光素子であって、前記有機層は転写法及び貼り合わせ法の少なくとも一つにより前記混合層に接合されていることを特徴とする有機電界発光素子。
  4. 前記有機層同士が転写法及び貼り合わせ法の少なくとも一つにより接合されていることを特徴とする請求項3に記載の有機電界発光素子。
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