JP2004192734A - 記録テープカートリッジ - Google Patents
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Abstract
【課題】リールの回転時に制動部材と解除部材との間で溶融や摩耗が生じない記録テープカートリッジを得る。
【解決手段】記録テープカートリッジ10では、ケース12内でリールハブ60に磁気テープTを巻装したリール14は、ケース12内に回転不能に設けられたブレーキ部材74が底部60Bの係合突起72に係合する回転ロック位置に位置すると回転ロックされ、底部60Bとブレーキ部材74との間に配置されたリリースパッド90が押し上げられて該ブレーキ部材74を回転許容位置に保持すると回転可能となる。ケース12に対し回転不能なブレーキ部材74と、リール14と一体に回転するリリースパッド90とは、ベアリング82を介して同軸的な相対回転可能に連結されている。
【選択図】 図2
【解決手段】記録テープカートリッジ10では、ケース12内でリールハブ60に磁気テープTを巻装したリール14は、ケース12内に回転不能に設けられたブレーキ部材74が底部60Bの係合突起72に係合する回転ロック位置に位置すると回転ロックされ、底部60Bとブレーキ部材74との間に配置されたリリースパッド90が押し上げられて該ブレーキ部材74を回転許容位置に保持すると回転可能となる。ケース12に対し回転不能なブレーキ部材74と、リール14と一体に回転するリリースパッド90とは、ベアリング82を介して同軸的な相対回転可能に連結されている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気テープ等の記録テープが巻装されたリールを回転可能に収容した記録テープカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータ等の外部記録媒体として磁気テープ等の記録テープが用いられている。この記録テープとして、保存時の収容スペースが小さく、大容量の情報が記録できる、記録テープが巻装された単一のリールをケース内に回転可能に収容した所謂1リールの記録テープカートリッジが採用されている。
【0003】
このような記録テープカートリッジは、不使用時にはリールがケース内で回転しないようにブレーキ手段を備えている(例えば、特許文献1参照)。このブレーキ手段を備えた記録テープカートリッジについて、図13乃至図15に基づいて説明する。
【0004】
図13に示す記録テープカートリッジ200では、ケース202内に単一のリール204が収容されている。ケース202は、その底板202Aの中央部に設けられたギヤ開口206と、その天板202Bから下方へ突設された回転規制リブ208とを備えている。図15に示される如く、回転規制リブ208は、平面視で略十字形状に形成されている。
【0005】
リール204は、有底円筒状に形成され外周部に記録テープが巻装されるリールハブ210を備えており、リールハブ210の底部210Aの下面には、ドライブ装置の回転シャフト212に形成された駆動ギヤ212Aと噛合可能なリールギヤ214が環状に形成されている。このリールギヤ214の形成部位における円周上で等間隔となる複数箇所には、底部210Aを貫通する挿通孔216が設けられている。各挿通孔216の径はリールギヤ214のギヤピッチよりも大とされており、各挿通孔216廻りにはリールギヤ214の歯が設けられていない。
【0006】
一方、リールハブ210の底部210Aの上面には、所定の円周に沿う各挿通孔216の間の複数箇所から(部分的に)係止突起218が立設されている。各係止突起218の上端部には、ギヤ歯218Aが形成されている。
【0007】
そして、リールハブ210内には、ギヤ歯218Aと噛合い可能な環状の制動ギヤ220Aが下面に設けられた円板状の制動部材220が挿設されている。この制動部材220の上面軸心部からは、ケース202の回転規制リブ208を挿入させる挿入溝222Aが設けられた回転規制突起222が立設されている。挿入溝222Aは、制動部材220の軸心部で交差する十字形状とされており、ケース202の回転規制リブ208に対応して形成されている(図15参照)。
【0008】
この挿入溝222Aに回転規制リブ208を挿入することで、制動部材220は、ケース202に対し回転不能とされる。また、制動部材220は、回転規制リブ208にガイドされつつ上下方向に移動可能とされている。
【0009】
また、ケース202の天板202Bと制動部材220との間には圧縮コイルスプリング224が配設されており、通常は、制動部材220が圧縮コイルスプリング224の付勢力によって下方に付勢されて制動ギヤ220Aがギヤ歯218Aと噛み合うようになっている。これにより、通常はリール204のケース202に対する回転が阻止された回転ロック状態とされている。また、この付勢力によって、リール204がケース202の底板202Aに押し付けられつつリールギヤ214をギヤ開口206から露出させている。
【0010】
さらに、リールハブ210の底部210Aと制動部材220との間には、それぞれに当接するように解除部材226が配設されている。解除部材226は、係止突起218に干渉しない板状に形成されると共に、それぞれ挿通孔216に入り込む脚部226Aを備えている。
【0011】
これにより、駆動ギヤ212Aがリールギヤ214と噛み合う動作によって、図14に示される如く、圧縮コイルスプリング224の付勢力に抗して脚部226Aが駆動ギヤ212Aに押圧されて解除部材226が上方に押し上げられ、該解除部材226が底部210Aから離間しつつ制動部材220を上方に押し上げると制動ギヤ220Aとギヤ歯218Aとの噛み合いが解除される。このとき、リール204も底板202Aに対し浮上し、ケース202内でリール204が回転可能となる。
【0012】
この解除部材226は、駆動ギヤ212Aとリールギヤ214との噛み合いが維持されている状態では、その脚部226Aが駆動ギヤ212Aと接していることにより、制動部材220を上記解除位置に保持する構成である。
【0013】
そして、回転シャフト212が回転すると、リールギヤ214が該回転シャフト212の駆動ギヤ212Aと噛み合っているリール204がケース202内で回転する構成である。このとき、脚部226Aをリール204の挿通孔216に入り込ませている解除部材226は、リール204と一体に回転し、その軸心部分が制動部材220の軸心部分と摺接するようになっている。
【0014】
一方、駆動ギヤ212Aとリールギヤ214との噛み合い状態が解除されると、圧縮コイルスプリング224の付勢力によって、制動部材220が下方へ移動して制動ギヤ220Aとギヤ歯218Aとが噛み合うと共に、リール204が底板202Aに押し付けられる。これにより、リール204のケース202に対する回転が阻止された回転ロック状態に復帰する構成である。
【0015】
以上説明した制動部材220、解除部材226は、共に樹脂成形によって形成されており、複雑な形状が容易に得られるようになっている。そして、制動部材220と解除部材226とは、リール204回転時の摺接抵抗を低減するために、制動部材220の軸心部分から略球面状に突設された凸部220Bと解除部材226の軸心部分に設けられた凸部220Bの平坦面とが略点接触するようになっている。
【0016】
ところで、近年、記録テープカートリッジ200の高記録密度化が要求されており、これに対応するために、例えば、記録テープを薄肉化してリール204への巻装量を延長することが考えられている。また、記録テープへの情報の書き込みまたは記録テープに記録された情報の読み出しの高速化に伴って、記録テープの引き出し速度(送り速度)の高速化が考えらている。これらにより、記録テープカートリッジ200では、リール204の連続回転時間の延長、及びリール204の回転速度の高速化への対応が要求されている。
【0017】
しかしながら、記録テープカートリッジ200では、リール204の回転時には、それぞれ樹脂材である制動部材220の凸部220Bと解除部材226の凸部226Bとが互いに摺接するため、該リール204の回転速度が大きく(例えば、記録テープの送り速度で6m/s以上)かつ該回転時間が長いと、摺接抵抗による発熱によって凸部220Bと凸部226Bとが溶けてしまうという問題があった。
【0018】
そこで、上記発熱を抑えるために、解除部材226の凸部226Bに対応する部分を金属材にて構成し、樹脂材である凸部220Bとの間の摺接抵抗を低減する構成が考えられている(例えば、特許文献2参照)。この構成では、凸部220Bと凸部226Bとの摺接抵抗に基づく発熱が抑えられ、樹脂材である凸部220Bの溶け出しは防止される。
【0019】
しかしながら、この特許文献2記載の構成では、上記の如くリール204の回転速度を高速化すると共に回転時間を長時間化した条件下では、樹脂側の球面状の凸部220Bが摩耗または摩滅して(潰れて)高さが低くなってしまうという問題があった。すなわち、該特許文献2記載の構成では、今後想定される使用条件に対応してリール204の回転速度を高速化すると共に回転時間を長時間化した条件に対する対策が十分ではなかった。
【0020】
【特許文献1】
特許第3187022号明細書
【特許文献2】
特開2002−197833公報
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事実を考慮して、リールの回転時に制動部材と解除部材との間で溶融や摩耗が生じない記録テープカートリッジを得ることが目的である。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る記録テープカートリッジは、ケース内に収容され、記録テープを巻装したリールハブの底部に係合部が設けられたリールと、前記ケース内に回転不能に設けられ、前記リールハブの底部に対し接離して、前記係合部に係合する回転ロック位置と、該係合部との係合状態を解除する回転許容位置とを取り得る制動部材と、前記リールハブの底部と前記制動部材との間に配置され、前記リールを回転させる際に、前記制動部材を前記回転許容位置に保持しつつ該リールと一体に回転する解除部材と、前記制動部材と前記解除部材とを連結して該解除部材の回転を可能とする転がり軸受と、を備えている。
【0023】
請求項1記載の記録テープカートリッジでは、ケースに対し回転不能とされた制動部材が、リールハブの底部に設けられた係合部に係合する回転ロック位置に位置するときには、リールのケースに対する回転が阻止される回転ロック状態となる。
【0024】
一方、記録テープカートリッジの使用時には、解除部材が制動部材を係合部との係合を解除する回転許容位置に保持することで、リールのケースに対する回転が許容される。そして、この状態でリールが回転すると、ケースに対し回転不能な制動部材とリールと一体回転する解除部材とが相対回転する。
【0025】
ここで、制動部材と解除部材とが転がり軸受によって連結されて相対回転可能とされているため、該制動部材と解除部材とが互いの相対回転に伴って摺接(滑り接触)することがない。このため、制動部材と解除部材との間の相対回転速度が大きくかつ相対回転時間が長い場合でも、これらの間で溶融や摩耗等が生じることがなく、リールを高速で長時間連続して回転させることが可能となる。
【0026】
このように、請求項1記載の記録テープカートリッジでは、リールの回転時に制動部材と解除部材との間で溶融や摩耗が生じない。
【0027】
請求項2記載の発明に係る記録テープカートリッジは、請求項1記載の記録テープカートリッジにおいて、前記制動部材は、軸心部に設けられ前記転がり軸受を収容する収容筒部と、内縁または外縁が多角形状に形成されて前記収容筒部の外側から立設され、前記ケースに設けられた回転規制リブが内嵌または外嵌する回転規制壁部と、を有することを特徴としている。
【0028】
請求項2記載の記録テープカートリッジでは、制動部材の軸心部に設けられた収容筒部内に転がり軸受が収容されており、例えば解除部材から突出した連結軸が収容筒部内で該転がり軸受に連結されている。そして、制動部材の収容筒部の外側からは、外縁または内縁が多角形状に形成された回転規制壁部が立設されており、この回転規制壁部にはケースに設けられた回転規制リブが内嵌または外嵌している。これにより、制動部材は、リールハブの底部に対し接離を可能としつつ、ケースに対する回転が阻止されている。
【0029】
ここで、制動部材の収容筒部の外側に回転規制壁部を立設したため、互いに連結された制動部材と解除部材との軸方向寸法、すなわちケース(記録テープカートリッジ)の厚みを増加することなく、転がり軸受を設けることが可能である。換言すれば、回転規制壁部を多角形状(好ましくは正多角形状)に形成することにより、上記軸方向寸法を増加することのない回転規制壁部の内側に、転がり軸受を配置することが可能となった。
【0030】
なお、回転規制壁部と回転規制リブとは、互いの嵌合面が全体として多角形状とされて上記の通り制動部材の底部に対する接離を可能としつつケースに対する回転を阻止できれば足り、上記多角形状の各片または各頂点部分の一部が切欠かれていても良いが、これらの強度上の観点からは、それぞれ閉じた形状とすることが望ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態に係る記録テープカートリッジ10について、図1乃至図10に基づいて説明する。まず、記録テープカートリッジ10の概略の全体構成、開口及びドアの構成を説明し、次いで、本発明の要部であるリール14及び不使用時にリール14の回転を阻止する制動手段について説明する。なお、説明の便宜上、矢印Aで示す記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填方向を記録テープカートリッジ10の前方向(前側)とし、矢印Aと直交する矢印B方向を右方向とする。
(記録テープカートリッジの全体構成)
図1には記録テープカートリッジ10の全体構成が斜視図にて示されており、図2には記録テープカートリッジ10の概略の分解斜視図が示されている。
【0032】
これらの図に示される如く、記録テープカートリッジ10は、平面視で略矩形状のケース12内に、情報記録再生媒体である記録テープとしての磁気テープTを巻装した単一のリール14を回転可能に収容して構成されている。このリールの構成については後述する。
【0033】
ケース12は、ドライブ装置への装填方向先頭側の1つの角部である右前角部がそれぞれ切り欠かれた一対の上ケース16と下ケース18とを互いの周壁16A、18Aを突き合せて接合することで構成されており、内部に磁気テープTを巻装したリール14の収容空間が設けられている。そして、上ケース16及び下ケース18の周壁16A、18Aが切り取られた角部が磁気テープTの引き出し用の開口20とされている。開口20及び該開口20を開閉するドア50の詳細構成については後述する。
【0034】
この開口20から引き出される磁気テープTの自由端には、ドライブ装置の引出手段によって係止(係合)されつつ引き出し操作されるリーダピン22が接続されている。リーダピン22の磁気テープTの幅方向端部より突出した両端部には、環状溝22Aが形成されており、この環状溝22Aが引出手段のフック等に係止される。これにより、磁気テープTを引き出す際に、フック等が磁気テープTに接触して傷付けない構成である。
【0035】
また、ケース12の開口20の内側には、ケース12内においてリーダピン22を位置決め、保持する上下一対のピン台24が設けられている。ピン台24は、矢印B方向に開口する半円筒形状をしており、その凹部24Aに直立した状態のリーダピン22の両端部が保持されるようになっている。このピン台24は、後述するリブ44と連設されている。
【0036】
また、ピン台24の近傍には板ばね25が固定配置されており、この板ばね25がリーダピン22の上下端部に係合してリーダピン22をピン台24に保持するようになっている。リーダピン22がピン台24に出入りする際には、板ばね25はアーム部25Aを適宜弾性変形させてリーダピン22の移動を許容する構成である。
【0037】
さらに、下ケース18の中央部には、リール14のリールギヤ66(後述)を外部に露出するための「開口」としてのギヤ開口26が設けられており、リール14はリールギヤがドライブ装置の駆動ギヤに噛み合わされてケース12内で回転駆動されるようになっている。また、リール14は、上ケース16及び下ケース18の内面にそれぞれ部分的に突設されてギヤ開口26と同軸的な円形の軌跡上にある内壁としての遊動規制壁28によってガタ付かないように保持されている。また、下ケース18におけるギヤ開口26の縁部には、環状リブ26Aがケース12の内方へ向けて突設されており、リール14の位置決め用とされている。
【0038】
この遊動規制壁28の開口20近傍の端部には、内部に位置規制用孔が形成された袋部28Aが連設されている。また、ケース12の左前角部と遊動規制壁との間に挟まれた空間には、長孔である位置規制用孔が形成された袋部28Bが立設されている。袋部28A、28Bは、矢印B方向に沿った一直線上に配置されている。そして、袋部28Aが連設された端部を除いて、各遊動規制壁28は、それぞれ端部がケース12の周壁16Aまたは周壁18Aと連設されることで、その外側とリール14の設置空間とを仕切っている。
【0039】
また、下ケース18の右後部には、各記録テープカートリッジ10毎に、その各種情報を記憶されたメモリボードMが設置されるようになっており、下面側から読み取るドライブ装置と、背面側から読み取るライブラリ装置での検知が可能となるように、周壁18Aを構成する傾斜後壁18Cの一部が所定角度だけ傾斜され、メモリボードMが所定角度傾斜して配置されるようになっている。
(開口及び開口近傍のケースの構成)
上ケース16の底面図である図3及び下ケース18の平面図である図4にも示される如く、開口20の前後の縁部には、それぞれ上下一対のビスボス32、36が設けられている。ビスボス32、36は、図示しない他のビスボスと共に上ケース16と下ケース18とを接合するためのビス止め用とされている。
【0040】
開口20の前縁部に位置するビスボス32は、ケース12の前壁12A(周壁16A、18Aのうち、外面が矢印A方向を向く部分)の右端部、及び該前壁12Aの右端部から開口20の開放面に沿って短く屈曲された上下一対の防塵壁30とそれぞれ連設されている。ビスボス32と防塵壁30との間には後述するドア50の先端部が入り込む凹部30Aが形成されている。
【0041】
一方、開口20の後縁部に位置するビスボス36は、ケース12の右壁12B(周壁16A、18Aのうち、矢印A方向に沿った右側の壁)の前端部が開口20の開放面に略沿って屈曲された屈曲壁38、及び該右壁12Bの内側に設けられた上下一対の円弧壁34の前端部とそれぞれ連設されている。上下の円弧壁34は、それぞれ平面視で後述するドア50の外周面(の移動軌跡)に略対応した円弧状に形成されており、それぞれビスボス36から所定長さだけ後方へ伸び、該後部において短い連結壁34Aを介して右壁12B(周壁16Aまたは周壁18A)に連設されている。
【0042】
また、ケース12の右壁12Bには、ケース12の内外を連通する窓部としての所定長さのスリット40が設けらており、後述するドア50の操作突起52の露出用とされている。スリット40は、右壁12Bを構成する周壁16Aの下部を切り欠いて形成され、上ケース16の屈曲壁38の下部をも切り欠くことで前方へも開口されている。
【0043】
このケース12を構成する上ケース16及び下ケース18には、それぞれドア50をガイドするためのガイド溝42が設けられている。各ガイド溝42は、その溝壁が、それぞれ上ケース16の天板16B、下ケース18の底板18Bから立設されたリブ44、右壁12B(周壁16Aまたは周壁18A)、遊動規制壁28によって構成されることで、それぞれ天板16Bまたは底板18Bを薄肉化することなく形成されている。リブ44はピン台24に連設されている。
【0044】
各ガイド溝42は、凹部30Aを基端としケース12の右後角部まで至る所定の円周に沿った円弧状に形成されており、この所定の円周はビスボス32の外側、ビスボス36の内側、右壁12Bと遊動規制壁28との間を通る(縫う)ように決められている。そして、この所定の円周の中心位置(後述するドア50の回転中心)は、本実施の形態では、その左右方向の位置(座標)がケース12の左端よりも外側に、その前後方向の位置(座標)がリール14の回転中心(遊動規制壁28の軸心)と略一致するように設定されている。
【0045】
また、ガイド溝42の開口20に位置する部分は、リブ44がピン台24の右方において切り欠かれることで凹部24Aと連通されると共に、板ばね25のアーム部25Aが配置されるばね溝45とも連通している。また、ガイド溝42の切欠き部分では、リーダピン22をケース12内に誘い込むテーパ開口20Aがピン台24の凹部24Aに連通している。さらに、リブ44には、テーパ開口20Aの後縁、ビスボス36の前縁、開口20の開放面にそれぞれ沿って形成されたリブ46が連設されており、ケース12の開口20廻りの強度が確保または向上されている。
【0046】
さらに、各ガイド溝42の後半部分を構成するリブ44は、その後端において略U字状に折り返されて閉じている。そして、上ケース16のリブ44は、下ケース18のリブ44よりも後方に長く形成されている。これは、下ケース18の傾斜後壁18C(周壁18A)が所定角度の傾斜面になっており、その右壁12B側に配設したメモリボードMをドア50と干渉させないためである。
【0047】
さらに、後半部分のリブ44の内側部分における長手中央部には、上下一対のばね掛けピン55が設けられている。各ばね掛けピン55は、それぞれ遊動規制壁28に連設されており、下ケース18側が長く形成され、その遊動規制壁28よりも上方に突出した部分に後述するコイルばね56の一端側環状部56Aが引掛けられる構成である。そして、この下ケース18側のばね掛けピン55に上ケース16側の短いばね掛けピン55が突き当てられることで、コイルばね56の脱落が阻止されるようになっている。
【0048】
以上説明した上ケース16と下ケース18とは、互いの周壁16A、18Aを突き当てた状態で、各ビスボス32、36及び他のビスボスに下側から図示しないビスがねじ込まれて固定(接合)されケース12を構成している。そして、開口20は、右前角部が切り欠かれて形成されることで、その開放面が矢印A方向及び矢印B方向に向くため、ドライブ装置の引出手段が、矢印A方向、矢印B方向、或いは矢印A方向と矢印B方向との間からアクセスしてリーダピン22をチャックできる。これにより、リーダピン22を保持するピン台24を設置可能なエリアが広がり、ドライブ装置の引出手段がリーダピン22をチャック可能な領域が広いため、矢印A方向または矢印B方向からチャックするドライブ装置の仕様に合わせてピン台24の設置位置を設定できる。このため、ドライブ装置の設計の自由度も広がる。
(ドアの構成)
以上説明した開口20は、遮蔽部材としてのドア50によって開閉されるようになっている。ドア50は、板厚方向に湾曲され、その平面視における曲率がガイド溝42(所定の円周)の曲率と一致する円弧状に形成されている。また、ドア50は、その前部(少なくとも開口20を閉塞する部分)における板幅(高さ)が開口20の開口高さと略同一に形成された部分が閉塞部50Aとされると共に、閉塞部50Aよりも後側の板幅が若干小さくされた部分が駆動部50Bとされている。
【0049】
このドア50の板長(湾曲した長手寸法)は、開口20の閉塞状態において駆動部50Bの後端部がケース12の右後角部内に位置するように決められている(図5(A)参照)。なお、駆動部50Bの後下部は、下ケース18の傾斜後壁18Cの傾斜面に配設されたメモリボードMを回避するために、斜めに切り欠かれている。
【0050】
このドア50は、その閉塞部50Aの先端部がビスボス32の外側に位置する凹部30Aに入り込んだ状態で開口20を閉塞し(図5(A)参照)、ガイド溝42に沿って略後方へ移動(回動)して開口20を開放し(図5(B)参照)、閉塞部50Aの先端近傍の外周面がビスボス36の内側近傍に達すると開口20を完全に開放する(図5(C)参照)構成である。また、ドア50は、開口20を開放する際と略反対方向に回動して開口20を閉塞するようになっている。
【0051】
このように、ドア50は、その移動軌跡である所定の円周をはみ出すことなく回動して開口20を開閉するように湾曲形成されている。ドア50の回転中心及び半径(ガイド溝42の形状)は、ドライブ装置からの要求により決まる開口20前後の縁部(ビスボス32、36)の位置やライブラリ装置からの要求により決まる開口20の開放面の角度等に応じて適宜決められれば良い。
【0052】
また、ドア50の上下端には、それぞれ上下のガイド溝42に入り込むそれぞれ複数の凸部51が突設されている。各凸部51は、閉塞部50Aと駆動部50Bとで突出高が異なるが、ドア50の幅方向(長手方向に沿った)中心線からそれぞれの頂部までの距離は一定とされている。これにより、上下の凸部51は、ガイド溝42の底部である天板16Bまたは底板18Bと摺動するようになっている。
【0053】
また、各凸部51におけるドア50の板厚方向両側には、その頂部がドア50板厚方向端面に沿う突起51A(図5参照)が突設されており、ガイド溝42の溝壁(リブ44等)と摺動するようになっている。なお、最前に位置する凸部51は、開口20の開閉過程でガイド溝42と連通するテーパ開口20Aには入り込まないように配置されている。
【0054】
これらの凸部51及び突起51Aによって、ドア50は、開口20を開閉する際に各ガイド溝42にガイドされて上記移動軌跡からはみ出すことなく、ビスボス32の外側及びビスボス36の内側、右壁12Bと遊動規制壁28との間を縫うようにして確実に開動する構成である。
【0055】
このドア50の駆動部50Bの前端(閉塞部50A側)近傍における外周部には、操作部としての操作突起52がドア50の径方向に沿って突設されている。操作突起52は、スリット40からケース12の外側に露出されており、記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填(相対移動)に伴って該スリット40の前方に開口した部分から進入する係合突部104と係合することでドア50を開口20の開放方向に移動させる構成である。
【0056】
また、ドア50の駆動部50Bの後端部には、該ドア50の内面側に向けて略L字状のばね掛け部54が突設されており、ばね掛け部54は上側が自由端とされている。このばね掛け部54には、付勢手段としてのコイルばね56が係止保持用されている。具体的には、コイルばね56の端部にはそれぞれ係止用の環状部56A、56Bが設けられており、環状部56Aはケース12のばね掛けピン55を挿通させてケース12に係止保持され、環状部56Bはばね掛け部54を挿通させてドア50に係止保持される。
【0057】
これにより、ドア50は、コイルばね56の付勢力によって開口20の閉塞方向に付勢され、通常開口20を閉塞する構成である。このコイルばね56は、上記の通りドア50が開口20の閉塞状態でケース12の右後角部に至る長さであるため、該右後角部における遊動規制壁28と周壁16A、18A(傾斜後壁18C)との間の空間を有効利用して配設されている。
【0058】
また、ドア50の閉塞部50A内面には、開口20閉塞時にリーダピン22の上端部側面及び下端部側面に当接するストッパ58が突設されており、落下衝撃等によるリーダピン22のピン台24からの脱落を、確実に防止できるようになっている。
【0059】
以上説明したドア50は、記録テープカートリッジ10がドライブ装置へ装填される動作によって操作突起52がドライブ装置の係合突部104(図5(A)乃至(C)参照)に係合することでコイルばね56の付勢力に抗してケース12に対し移動し開口20を開放し、ドライブ装置から排出される際にはコイルばね56の付勢力によって開口20を閉塞する構成である。
【0060】
そして、円弧状に湾曲形成されたドア50は、その湾曲形状に沿った移動軌跡からはみ出すことなくリール14及びピン台24(リーダピン22)の外側を回り込むように回動して、矢印A方向に対し傾斜した開口20を開閉するようになっており、開口20の開閉に際してケース12の外形領域からはみ出さない構成である。
(リール及び制動手段の構成)
図2及び図6に示される如く、リール14は、外周面に磁気テープTが巻装される円筒部60Aと該円筒部60Aの下部を閉塞する底部60Bとを有する略有底円筒状のリールハブ60を備えている。リールハブ60の底部60B側端部(下端部)の近傍には、下フランジ62がその径方向外側に同軸的かつ一体に延設されている。一方、リールハブ60の上端部には、内径が円筒部60Aの内径と略同径とされると共に外径が下フランジ62の外径と同径とされた上フランジ64が超音波溶着等によって同軸的に接合されている。
【0061】
これにより、リール14は、下フランジ62と上フランジ64との対向面間において、リールハブ60の円筒部60Aの外周面に磁気テープTが巻き回されるようになっており、円筒部60Aは上方に開口している。下フランジ62、上フランジ64の外径は、ケース12の遊動規制壁28の内径よりも若干小径とされており、リール14がケース12内で回転可能とされている。
【0062】
また、図7にも示される如く、リールハブ60の底部60Bは、その下端部が下フランジ62の下面よりも若干突出しており、この下端面の外周近傍には環状に形成されたリールギヤ66が設けられている。リールギヤ66は、ドライブ装置の回転シャフト100の先端に設けられた駆動ギヤ102と噛み合い可能とされている。
【0063】
このリールギヤ66の設置部位における円周上で等間隔となる3箇所には、底部60B(リールギヤ66)を貫通する挿通孔68が設けられている。各挿通孔68の径はリールギヤ66のギヤピッチよりも大とされており、各挿通孔68廻りにはリールギヤ66の歯が設けられていない。
【0064】
さらに、リールハブ60の底部60Bの下端面におけるリールギヤ66の内側には、マグネットで吸着可能な磁性材料より成る環状板であるリールプレート70がインサート成形により一体に設けられている。
【0065】
このリールハブ60の底部60Bの下フランジ62よりも突出した下端部は、下フランジ62の径方向内端部分が環状リブ26Aの上端部に当接した状態でケース12のギヤ開口26に入り込んで(遊嵌されて)いる。これにより、リールギヤ66及びリールプレート70がケース12の外部に露出されるようになっている。
【0066】
一方、リールハブ60の底部60Bの上面における各挿通孔68の間の3箇所には、それぞれ本発明における「係合部」としての各一対(計6つ)の係止突起72が円周上で等間隔に立設されている(図2参照)。各係止突起72の先端部(上端部)にはギヤ歯72Aが形成されており(図8参照)、該ギヤ歯72Aは、後述するブレーキ部材74の制動ギヤ74Aと噛合可能とされている。
【0067】
また、記録テープカートリッジ10は、不使用時にリール14の回転を阻止するための制動手段を備えており、この制動手段は「制動部材」としてのブレーキ部材74を備えている。ブレーキ部材74は、略円板状に形成された円板部76を備えており、円板部76の下端面の外周近傍には、リール14のギヤ歯72Aと噛合可能な制動ギヤ74Aが環状に形成されている。
【0068】
また、図6及び図9に示される如く、ブレーキ部材74は、円板部76の上面から立設された「回転規制壁部」としての六角壁部78を備えている。六角壁部78は、平面視で内外縁共に閉じた正六角形状に形成されている。さらに、円板部76における六角壁部78の内側である軸心部には、「収容筒部」としてのベアリング保持部80が設けられている。ベアリング保持部80は、下方に開口した有底円筒状に形成されており、後述するベアリング82を収容保持するようになっているが、詳細構成については後述する。
【0069】
ブレーキ部材74は、制動ギヤ74Aが設けられた円板部76と、六角壁部78と、ベアリング保持部80とが樹脂成形によって一体に形成されている。
【0070】
以上説明したブレーキ部材74は、リールハブ60の円筒部60A内に、上下方向(リール14の軸線方向)の移動可能かつ略同軸的に挿設されている。すなわち、ブレーキ部材74は、上下方向に移動(底部60Bに対し接離)することで、その制動ギヤ74Aをリールハブ60に設けられた係止突起72のギヤ歯72Aと噛み合わせる位置(図7に示す回転ロック位置)と、該噛み合いを解除する位置(図8に示す回転許容位置)とを取り得るようになっている。
【0071】
そして、このブレーキ部材74の六角壁部78は、ケース12の天板16Bから下方へ突設された「回転規制リブ」としての六角リブ84内に入り込むようになっている。すなわち、ケース12の六角リブ84は、その内縁形状が六角壁部78の外縁形状に対応しており、該六角壁部78に外嵌するようになっている。
【0072】
これにより、互いに非円形状の六角壁部78の外縁と六角リブ84の内縁とが係合(干渉)することで、ブレーキ部材74のケース12に対する回転が阻止される構成である。なお、本実施の形態では、六角リブ84は、その外縁も平面視で六角形状とされ、六角壁部78と共に厚肉部位を生じさせない構成とされている。
【0073】
以上により、ブレーキ部材74は、図7に示す如く回転ロック位置に位置して制動ギヤ74Aをリールハブ60のギヤ歯72Aと噛み合わせた状態では、リール14の回転を阻止するようになっている。なお、六角リブ84は、ブレーキ部材74の上下方向の全移動ストロークに亘り六角壁部78に外嵌した状態が維持されるようになっており、該ブレーキ部材74の移動方向を上下方向に案内する機能をも果たす構成である。
【0074】
また、ブレーキ部材74における円板部76上面と天板16Bとの間には、「付勢手段」としての圧縮コイルスプリング86が配設されている。圧縮コイルスプリング86は、その一端部がベアリング保持部80と六角壁部78との間に入り込むと共に、他端部が六角リブ84内に入り込んでおり、径方向に位置ずれしないようになっている。
【0075】
この圧縮コイルスプリング86の付勢力によって、図7に示される如く、ブレーキ部材74が下方に付勢されて、通常は制動ギヤ74Aをギヤ歯72Aに噛み合わせてリール14の不用意な回転を確実に防止する(ブレーキ部材74を回転ロック位置に位置させる)構成である。また、この付勢力によって、係止突起72においてブレーキ部材74と噛み合っているリール14も下方に付勢され、上記の通り下フランジ62を環状リブ26Aに当接させてケース12内でガタつかないようになっている。
【0076】
また、リール14のリールハブ60(円筒部60A)内における底部60Bとブレーキ部材74との間には、解除部材としてのリリースパッド90が配設されている。リリースパッド90は、樹脂成形にて平面視略正三角形の平板状に形成されており、各頂部近傍の下面からは、それぞれ底部60Bの挿通孔68に対応した円柱状の3つの脚部92が突設されている。このリリースパッド90は、ベアリング82を介してブレーキ部材74と連結されているが、この連結構造については後述する。
【0077】
このリリースパッド90は、各脚部92を挿通孔68に上下方向の移動可能に挿通した状態で、各係止突起72と干渉しないようにリールハブ60の底部60B上に載置(下面が底部60Bの上面と当接)されている。この状態で各脚部92は、その先端とリールギヤ66の歯先とが略同位となるように挿通孔68の下端部より突出している。そして、ベアリング82を介してブレーキ部材74と連結されたリリースパッド90は、圧縮コイルスプリング86の付勢力によって脚部92の上記突出状態を維持する構成である。
【0078】
一方、リリースパッド90は、脚部92が圧縮コイルスプリング86の付勢力に抗して上方へ押圧移動されると、ベアリング82と共にブレーキ部材74を上方へ押し上げて制動ギヤ74Aと係止突起72のギヤ歯72Aとの噛合いを解除する(ブレーキ部材74を解除位置へ移動させる)ようになっている。
【0079】
具体的には図8に示される如く、リリースパッド90の各脚部92は、リール14のリールギヤ66に駆動ギヤ102を噛み合わせる際に回転シャフト100がケース12に対し上方向に相対移動することで駆動ギヤ102の歯先によって押圧されるようになっている。
【0080】
これにより、リール14は、そのリールギヤ66に駆動ギヤ102を噛み合わせる動作に伴って、圧縮コイルスプリング86の付勢力に抗してケース12内で浮上する(下フランジ62を環状リブ26Aから離間させる)と共に、ブレーキ部材74による回転阻止状態が解除されてケース12内で回転可能となるように構成されている。
【0081】
すなわち、リリースパッド90は、リールギヤ66と駆動ギヤ102とが噛み合う動作によってブレーキ部材74を回転許容位置へ移動させると共に、リールギヤ66と駆動ギヤ102との噛み合いが維持されている状態では(記録テープカートリッジ10を使用するためにリールを回転させる際には)ブレーキ部材74を回転許容位置に保持する構成である。なお、この保持状態でリリースパッド90の各脚部92は、リールハブ60の挿通孔68内に位置しており、該リリースパッド90は、回転シャフト100が回転するとリール14と共に(一体に)回転する構成である。
【0082】
このため、ブレーキ部材74とリリースパッド90とは、リール14の回転時に相対回転し、この相対回転が「転がり軸受」としてのベアリング82によって許容されるようになっている。以下、ベアリング82によるブレーキ部材74とリリースパッド90との連結構造について説明する。
【0083】
図10(A)に示される如く、ブレーキ部材74のベアリング保持部80内には、ベアリング82が収容されている。ベアリング82は、その外輪82Aがベアリング保持部80に嵌合して固定されると共に、その内輪82Bがリリースパッド90の上面軸心部から立設された連結軸部94を嵌合させて固定している。
【0084】
また、ベアリング保持部80の円筒部80Aと底部80Bとの間には、環状の段部80Cが内下方に突出しており、この段部80Cの下面が外輪82Aの上端に当接することにより、底部80Bと内輪82Bとが干渉しない構成である。なお、ベアリング保持部80は、底部80B及び段部80Cを設けず、単に円筒状に形成されても良い。
【0085】
さらに、ベアリング82の下端は、ベアリング保持部80の開口端から突出しないように各部の寸法が決められており、内輪82Bの下面には、連結軸部94の根元部に該内輪82Bの該径よりも小径に設けられたスペーサ段部94Aが当接している。このスペーサ段部94Aにより、リリースパッド90の上面とブレーキ部材74(円板部76)及び外輪82Aの下面とが干渉しないようになっている。
【0086】
以上により、ブレーキ部材74とリリースパッド90とが、ベアリング82を介して互いの同軸的な相対回転可能に連結されている。これにより、リリースパッド90は、ブレーキ部材74と共に上下方向に移動する機能を維持しつつ、該ブレーキ部材74に対し回転自在とされている。なお、本実施の形態では、ブレーキ部材74とリリースパッド90とが軸方向に相対移動しないように連結されているため、ブレーキ部材74、リリースパッド90、ベアリング82を一体のアセンブリとして取り扱うことができ、組み付け作業が容易となる。
【0087】
このベアリング82は、本実施の形態では、ラジアルボールベアリングとされており、特に、圧縮コイルスプリング86の付勢力に基づくスラスト荷重(一方向)を支持するために、アンギュラタイプのボールベアリングとされている。なお、本発明における「転がり軸受」としては、ラジアルボールベアリングに限定されることはなく、図10(B)に示されるスラストボールベアリングであるベアリング96を用いても良い。これは、記録テープカートリッジ10では、ブレーキ部材74とリリースパッド90との間には、基本的に圧縮コイルスプリング86の付勢力のみが作用し、ラジアル荷重を支持しなくても良いためである。また、ベアリング82、96に代えて、リール14の回転速度や耐久時間(想定寿命)に応じて各種タイプの転がり軸受を採用することができる。
【0088】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
【0089】
上記構成の記録テープカートリッジ10では、不使用時(保管時や運搬時等)には、コイルばね56の付勢力によって先端部を凹部30Aに入り込ませたドア50が開口20を閉塞している。
【0090】
また、リール14は、図7に示される如く、その係止突起72に噛み合うブレーキ部材74(及びリリースパッド90)を介して伝達される圧縮コイルスプリング86の付勢力によって、下フランジ62が環状リブ26Aに押し付けられ(当接され)つつリールギヤ66をギヤ開口26から露出させている。
【0091】
そして、この圧縮コイルスプリング86の付勢力によって、ブレーキ部材74の制動ギヤ74Aが係止突起72のギヤ歯72Aに噛み合わされてリール14のケース12に対する回転が阻止されている。すなわち、ブレーキ部材74が回転ロック位置に位置している。
【0092】
一方、磁気テープTを使用する際には、記録テープカートリッジ10を矢印A方向に沿ってドライブ装置のバケット(図示省略)へ装填する。この装填に伴って、バケットに固定された係合突部104(図5参照)がドア50の操作突起52に係合することでドア50が略後方へ回動して開口20が開放される。
【0093】
そして、記録テープカートリッジ10がバケットに所定深さまで装填されると、該バケットは下降し、ドライブ装置の回転シャフト100がケース12のギヤ開口26に向って相対的に接近(上方へ移動)してリール14を保持する。具体的には、回転シャフト100は、その先端部に配設されたマグネット(図示省略)によってリールプレート70を吸着保持しつつ、その駆動ギヤ102をリールギヤ66と噛合わせる。
【0094】
このリールギヤ66と駆動ギヤ102との噛合いに伴って、該駆動ギヤ102の歯先がリリースパッド90の脚部92の先端(下端面)に当接し、圧縮コイルスプリング86の付勢力に抗してリリースパッド90を上方に押し上げる。これにより、ベアリング82を介してリリースパッド90と連結されいるブレーキ部材74も上方に移動し、ブレーキ部材74の制動ギヤ74Aと係止突起72のギヤ歯72Aとの噛み合いが解除される。
【0095】
回転シャフト100がさらに上方へ移動すると、圧縮コイルスプリング86の付勢力に抗して、リール14がリリースパッド90、ブレーキ部材74と共に(相対位置を変化させないまま)上方に持ち上げられ、下フランジ62が環状リブ26Aから離間する。以上により、リール14は、ケース12内で浮上し該ケース12内面と非接触状態で回転可能となる。
【0096】
また、上記バケットの下降によって記録テープカートリッジ10はドライブ装置内で位置決めされ、この状態でドライブ装置の引出手段が開放された開口20からリーダピン22を引き出し該ドライブ装置の巻取リールに収容する。そして、ドライブ装置が巻取リールとリール14(回転シャフト100)とを同期して回転駆動すると、磁気テープTは、巻取リールに巻き取られつつケース12から順次引き出され、所定のテープ経路に沿って配設された記録再生ヘッド等によって情報の記録や再生が行なわれる。
【0097】
このとき、ケース12に対し回転不能であるブレーキ部材74と、リール14に脚部92を係合させて該リール14と一体に回転するリリースパッド90とが互いに相対回転している。
【0098】
一方、磁気テープTがリール14に巻き戻されてリーダピン22がピン台24に保持されると、上記マグネットの磁力をOFFにして回転シャフト100とリールプレート70との吸着を解除すると共に、記録テープカートリッジ10が装填されたバケットを上昇させる。
【0099】
すると、リールギヤ66と駆動ギヤ102との噛合が解除されると共に駆動ギヤ102とリリースパッド90の脚部92との当接が解除され、該リリースパッド90が圧縮コイルスプリング86の付勢力によってブレーキ部材74と共に下方へ移動する。
【0100】
これにより、リリースパッド90の各脚部92がそれぞれ挿通孔68からリールギヤ66形成部位まで突出すると共に、ブレーキ部材74の制動ギヤ74Aが係止突起72のギヤ歯72Aと噛み合う。すなわち、ブレーキ部材74がリール14の回転を阻止する回転ロック位置へ復帰する。
【0101】
また、ブレーキ部材74とリリースパッド90とが圧縮コイルスプリング86の付勢力によって移動する動作に伴って、リール14も下方へ移動してその下フランジ62を環状リブ26Aに当接させつつリールギヤ66をギヤ開口26から露出させる初期状態に復帰する。
【0102】
さらに、記録テープカートリッジ10をバケットから排出する際には、記録テープカートリッジ10は、コイルばね56の付勢力または図示しないイジェクト機構によって矢印A方向とは反対方向に移動する。この移動に伴って、ドア50は、コイルばね56の付勢力によって開口20を閉塞する。以上により、記録テープカートリッジ10は、ドライブ装置から排出されて初期状態に復帰する。
【0103】
ここで、記録テープカートリッジ10では、ブレーキ部材74とリリースパッド90とがベアリング82によって同軸的な相対回転可能に連結されているため、ブレーキ部材74とリリースパッド90とが互いの相対回転に伴って摺接(滑り接触)することがない。このため、ブレーキ部材74とリリースパッド90との間の相対回転速度が大きくかつ相対回転時間が長い場合でも、これらの間で溶融や摩耗等が生じることがない。
【0104】
これにより、圧縮コイルスプリング86によって下方に付勢されているブレーキ部材74は、回転ロック位置及び回転許容位置の何れにおいても、ケース12に対する位置が一定に保たれる。すなわち、従来の如くブレーキ部材74とリリースパッド90との互いの摺接部位における溶融や摩滅等に伴う高さの減少がないため、ブレーキ部材74の六角壁部78とケース12の六角リブ84との嵌合深さ(係合量)が減少することがなく、該ブレーキ部材74のガタつきやリール14の回転中心に対する位置ずれ等が防止される。また、上記摺接部位の位置ずれに伴う異音等の発生も防止される。
【0105】
このように、本実施の形態に係る記録テープカートリッジ10では、リール14の回転時にブレーキ部材74とリリースパッド90との間で溶融や摩耗が生じない。
【0106】
またここで、ブレーキ部材74をケース12に対し回転不能とするための六角壁部78を平面視で六角形状に形成し、該六角壁部の内側(円板部76に対し同じ側)にベアリング保持部80を設けたため、ケース12(記録テープカートリッジ10)の厚みを増加することなく、ベアリング82を配設することが可能となった。すなわち、従来の如く、制動部材220の軸心部に平面視十字形状の回転規制突起222を設けた構成では、ベアリング82によってブレーキ部材74とリリースパッド90とを連結する場合、円板部76の下方に配置される該ベアリング82の厚み分だけ互いに連結された状態のブレーキ部材74及びリリースパッド90の軸方向寸法が大きくなり、これを収容するケース12の厚み(高さ)が大きくなってしまうが、記録テープカートリッジ10では、六角壁部78及びベアリング保持部80に干渉することなく六角壁部78に嵌合する六角リブ84を設けることで、ケース12の厚みを増すことなくベアリング82を設けて、リール14の回転時にブレーキ部材74とリリースパッド90との間で溶融や摩耗を生じさせない機能を達成した。
【0107】
また、六角壁部78、六角リブ84は、それぞれ周方向に連続して閉じた形状とされているため、換言すれば、周方向に自由端部がない(下端のみが自由端となる)形状とされているため、それぞれ強度(剛性)が高く、変形等によるブレーキ部材74のガタつきが防止される。
【0108】
なお、上記の実施の形態では、ブレーキ部材74の六角壁部78とケース12の六角リブ84とが、共に平面視六角形状に形成された構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、図11または図12に示される変形例に係る構成とすることも可能である。以下、各変形例について説明するが、上記実施の形態と基本的に同一の部品・部分については、上記実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0109】
図11には、第1変形例に係るブレーキ部材110が示されている。ブレーキ部材110は、六角壁部78に代えて、「回転規制壁部」としての四角壁部112を備えている。四角壁部112は、六角壁部78と同様に、ベアリング保持部80の外側における円板部76の上面から立設されており、内外縁共に平面視で略正方形状とされている。そして、ケース12の天板16Bからは、その内縁が四角壁部112の外縁形状に対応して形成された「回転規制リブ」としての四角リブ114が下方へ向けて立設されている。この四角リブ114が四角壁部112に外嵌することにより、ブレーキ部材110のケース12に対する回転が阻止される構成である。他の構成、機能等については、上記実施の形態と同様である。このように、本発明における回転規制壁部、回転規制リブは、内縁または外縁の形状をあらゆる多角形状とすることができる。また、例えば、これらの内縁または外縁を閉曲線で構成することもできるが、この場合、頂部を有する多角形状と比較して組み付け時の位置合わせが難しく、また自動組み付けおいてはハンドリング性が悪くなる。また、回転規制壁部と回転規制リブとは、互いに形状が異なっても良く、例えば、六角壁部78に四角リブ114を内嵌させることも可能である。
【0110】
図12には、第2変形例に係るブレーキ部材120が示されている。ブレーキ部材120は、六角壁部78に代えて、複数(本第2変形例では4つ)のスリット壁122を備えている。各スリット壁122は、ベアリング保持部80の外側における円板部76の上面から立設されており、周方向に等間隔に配置されている。各スリット壁122内には、上方に開口したスリット124が形成されている。そして、天板16Bからは、それぞれのスリット124に対応して係合片126が下方へ向けて立設されている。各係合片126がそれぞれスリット壁122に囲まれたスリット124に挿入されることにより、ブレーキ部材120のケース12に対する回転が阻止される構成である。他の構成、機能等については、上記実施の形態と同様である。このように、本発明は、制動部材の回転規制壁部とケースの回転規制リブとが多角形状である構成には限定されない。
【0111】
なお、上記の実施の形態及び各変形例では、ベアリング82、96がブレーキ部材74のベアリング保持部80内に収容される好ましい構成としたが、本発明はこれに限定されず、ベアリング82等は、ブレーキ部材74とリリースパッド90とを、組付状態において同軸的な相対回転可能に連結すれば足り、如何なる位置に配置されても良い。したがって、例えば、ベアリング82等の一部がリリースパッド90の軸心部に埋め込まれる構成としても良い。
【0112】
また、上記実施の形態及び第1変形例では、平面視で多角形状に形成された六角リブ84または四角リブ114が六角壁部78または四角壁部112に外嵌する構成としたが、本発明はこれに限定されず、六角リブ84等が六角壁部78等に内嵌する構成としても良いことは言うまでもない。
【0113】
さらに、本発明に係る記録テープカートリッジでは、上記回転ロック位置と回転許容位置とを取り得るブレーキ部材74が、使用時にリール14と共に回転するリリースパッド90によって回転許容位置に保持されれば足り、本発明がブレーキ部材74、リリースパッド90の形状等(リール14の回転ロック構造、ロック解除構造)によって限定されることはない。さらに、本発明が開口20やドア50等の好ましい構成によって限定されないことは言うまでもない。
【0114】
さらにまた、上記の実施の形態では、記録テープとして磁気テープTを用いた構成としたが、本発明はこれに限定されず、記録テープは情報の記録及び記録した情報の再生が可能な長尺テープ状の情報記録再生媒体として把握されるものであれば足り、本発明に係る記録テープカートリッジが如何なる記録再生方式の記録テープにも適用可能であることは言うまでもない。
【0115】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る記録テープカートリッジは、リールの回転時に制動部材と解除部材との間で溶融や摩耗が生じないという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成する上ケースの底面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成する下ケースの平面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの開口の開放過程を示す上ケースを取り除いて見た図であって、(A)はドアの操作突起へのドライブ装置の係合突部の係合初期状態を示す平面図、(B)は開口の開放途中を示す平面図、(C)は開口の開放完了状態を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成するリール及び制動手段を示す下方から見た分解斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジにおけるリールの回転ロック状態を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジにおけるリールの回転可能状態を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成する制動手段を拡大して示す分解斜視図である。
【図10】(A)は本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成するベアリングによるブレーキ部材とリリースパッドとの連結構造を示す拡大断面図、(B)はベアリングの変形例を示す図10(A)に対応する断面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成する制動手段の第1変形例を示す図9に対応する分解斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成する制動手段の第2変形例を示す図9に対応する分解斜視図である。
【図13】従来の記録テープカートリッジにおけるリールの回転ロック状態を示す断面図である。
【図14】従来の記録テープカートリッジにおけるリールの回転可能状態を示す断面図である。
【図15】従来の記録テープカートリッジにおける制動手段を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
10 記録テープカートリッジ
12 ケース
14 リール
60 リールハブ
60B 底部(リールハブの底部)
72 係止突起(係合部)
74 ブレーキ部材(制動部材)
78 六角壁部(回転規制壁部)
80 ベアリング保持部(収容筒部)
82 ベアリング(転がり軸受)
84 六角リブ(回転規制リブ)
90 リリースパッド(解除部材)
110、120 ブレーキ部材(制動部材)
112 四角壁部(回転規制壁部)
114 四角リブ(回転規制リブ)
T 磁気テープ(記録テープ)
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気テープ等の記録テープが巻装されたリールを回転可能に収容した記録テープカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータ等の外部記録媒体として磁気テープ等の記録テープが用いられている。この記録テープとして、保存時の収容スペースが小さく、大容量の情報が記録できる、記録テープが巻装された単一のリールをケース内に回転可能に収容した所謂1リールの記録テープカートリッジが採用されている。
【0003】
このような記録テープカートリッジは、不使用時にはリールがケース内で回転しないようにブレーキ手段を備えている(例えば、特許文献1参照)。このブレーキ手段を備えた記録テープカートリッジについて、図13乃至図15に基づいて説明する。
【0004】
図13に示す記録テープカートリッジ200では、ケース202内に単一のリール204が収容されている。ケース202は、その底板202Aの中央部に設けられたギヤ開口206と、その天板202Bから下方へ突設された回転規制リブ208とを備えている。図15に示される如く、回転規制リブ208は、平面視で略十字形状に形成されている。
【0005】
リール204は、有底円筒状に形成され外周部に記録テープが巻装されるリールハブ210を備えており、リールハブ210の底部210Aの下面には、ドライブ装置の回転シャフト212に形成された駆動ギヤ212Aと噛合可能なリールギヤ214が環状に形成されている。このリールギヤ214の形成部位における円周上で等間隔となる複数箇所には、底部210Aを貫通する挿通孔216が設けられている。各挿通孔216の径はリールギヤ214のギヤピッチよりも大とされており、各挿通孔216廻りにはリールギヤ214の歯が設けられていない。
【0006】
一方、リールハブ210の底部210Aの上面には、所定の円周に沿う各挿通孔216の間の複数箇所から(部分的に)係止突起218が立設されている。各係止突起218の上端部には、ギヤ歯218Aが形成されている。
【0007】
そして、リールハブ210内には、ギヤ歯218Aと噛合い可能な環状の制動ギヤ220Aが下面に設けられた円板状の制動部材220が挿設されている。この制動部材220の上面軸心部からは、ケース202の回転規制リブ208を挿入させる挿入溝222Aが設けられた回転規制突起222が立設されている。挿入溝222Aは、制動部材220の軸心部で交差する十字形状とされており、ケース202の回転規制リブ208に対応して形成されている(図15参照)。
【0008】
この挿入溝222Aに回転規制リブ208を挿入することで、制動部材220は、ケース202に対し回転不能とされる。また、制動部材220は、回転規制リブ208にガイドされつつ上下方向に移動可能とされている。
【0009】
また、ケース202の天板202Bと制動部材220との間には圧縮コイルスプリング224が配設されており、通常は、制動部材220が圧縮コイルスプリング224の付勢力によって下方に付勢されて制動ギヤ220Aがギヤ歯218Aと噛み合うようになっている。これにより、通常はリール204のケース202に対する回転が阻止された回転ロック状態とされている。また、この付勢力によって、リール204がケース202の底板202Aに押し付けられつつリールギヤ214をギヤ開口206から露出させている。
【0010】
さらに、リールハブ210の底部210Aと制動部材220との間には、それぞれに当接するように解除部材226が配設されている。解除部材226は、係止突起218に干渉しない板状に形成されると共に、それぞれ挿通孔216に入り込む脚部226Aを備えている。
【0011】
これにより、駆動ギヤ212Aがリールギヤ214と噛み合う動作によって、図14に示される如く、圧縮コイルスプリング224の付勢力に抗して脚部226Aが駆動ギヤ212Aに押圧されて解除部材226が上方に押し上げられ、該解除部材226が底部210Aから離間しつつ制動部材220を上方に押し上げると制動ギヤ220Aとギヤ歯218Aとの噛み合いが解除される。このとき、リール204も底板202Aに対し浮上し、ケース202内でリール204が回転可能となる。
【0012】
この解除部材226は、駆動ギヤ212Aとリールギヤ214との噛み合いが維持されている状態では、その脚部226Aが駆動ギヤ212Aと接していることにより、制動部材220を上記解除位置に保持する構成である。
【0013】
そして、回転シャフト212が回転すると、リールギヤ214が該回転シャフト212の駆動ギヤ212Aと噛み合っているリール204がケース202内で回転する構成である。このとき、脚部226Aをリール204の挿通孔216に入り込ませている解除部材226は、リール204と一体に回転し、その軸心部分が制動部材220の軸心部分と摺接するようになっている。
【0014】
一方、駆動ギヤ212Aとリールギヤ214との噛み合い状態が解除されると、圧縮コイルスプリング224の付勢力によって、制動部材220が下方へ移動して制動ギヤ220Aとギヤ歯218Aとが噛み合うと共に、リール204が底板202Aに押し付けられる。これにより、リール204のケース202に対する回転が阻止された回転ロック状態に復帰する構成である。
【0015】
以上説明した制動部材220、解除部材226は、共に樹脂成形によって形成されており、複雑な形状が容易に得られるようになっている。そして、制動部材220と解除部材226とは、リール204回転時の摺接抵抗を低減するために、制動部材220の軸心部分から略球面状に突設された凸部220Bと解除部材226の軸心部分に設けられた凸部220Bの平坦面とが略点接触するようになっている。
【0016】
ところで、近年、記録テープカートリッジ200の高記録密度化が要求されており、これに対応するために、例えば、記録テープを薄肉化してリール204への巻装量を延長することが考えられている。また、記録テープへの情報の書き込みまたは記録テープに記録された情報の読み出しの高速化に伴って、記録テープの引き出し速度(送り速度)の高速化が考えらている。これらにより、記録テープカートリッジ200では、リール204の連続回転時間の延長、及びリール204の回転速度の高速化への対応が要求されている。
【0017】
しかしながら、記録テープカートリッジ200では、リール204の回転時には、それぞれ樹脂材である制動部材220の凸部220Bと解除部材226の凸部226Bとが互いに摺接するため、該リール204の回転速度が大きく(例えば、記録テープの送り速度で6m/s以上)かつ該回転時間が長いと、摺接抵抗による発熱によって凸部220Bと凸部226Bとが溶けてしまうという問題があった。
【0018】
そこで、上記発熱を抑えるために、解除部材226の凸部226Bに対応する部分を金属材にて構成し、樹脂材である凸部220Bとの間の摺接抵抗を低減する構成が考えられている(例えば、特許文献2参照)。この構成では、凸部220Bと凸部226Bとの摺接抵抗に基づく発熱が抑えられ、樹脂材である凸部220Bの溶け出しは防止される。
【0019】
しかしながら、この特許文献2記載の構成では、上記の如くリール204の回転速度を高速化すると共に回転時間を長時間化した条件下では、樹脂側の球面状の凸部220Bが摩耗または摩滅して(潰れて)高さが低くなってしまうという問題があった。すなわち、該特許文献2記載の構成では、今後想定される使用条件に対応してリール204の回転速度を高速化すると共に回転時間を長時間化した条件に対する対策が十分ではなかった。
【0020】
【特許文献1】
特許第3187022号明細書
【特許文献2】
特開2002−197833公報
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事実を考慮して、リールの回転時に制動部材と解除部材との間で溶融や摩耗が生じない記録テープカートリッジを得ることが目的である。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る記録テープカートリッジは、ケース内に収容され、記録テープを巻装したリールハブの底部に係合部が設けられたリールと、前記ケース内に回転不能に設けられ、前記リールハブの底部に対し接離して、前記係合部に係合する回転ロック位置と、該係合部との係合状態を解除する回転許容位置とを取り得る制動部材と、前記リールハブの底部と前記制動部材との間に配置され、前記リールを回転させる際に、前記制動部材を前記回転許容位置に保持しつつ該リールと一体に回転する解除部材と、前記制動部材と前記解除部材とを連結して該解除部材の回転を可能とする転がり軸受と、を備えている。
【0023】
請求項1記載の記録テープカートリッジでは、ケースに対し回転不能とされた制動部材が、リールハブの底部に設けられた係合部に係合する回転ロック位置に位置するときには、リールのケースに対する回転が阻止される回転ロック状態となる。
【0024】
一方、記録テープカートリッジの使用時には、解除部材が制動部材を係合部との係合を解除する回転許容位置に保持することで、リールのケースに対する回転が許容される。そして、この状態でリールが回転すると、ケースに対し回転不能な制動部材とリールと一体回転する解除部材とが相対回転する。
【0025】
ここで、制動部材と解除部材とが転がり軸受によって連結されて相対回転可能とされているため、該制動部材と解除部材とが互いの相対回転に伴って摺接(滑り接触)することがない。このため、制動部材と解除部材との間の相対回転速度が大きくかつ相対回転時間が長い場合でも、これらの間で溶融や摩耗等が生じることがなく、リールを高速で長時間連続して回転させることが可能となる。
【0026】
このように、請求項1記載の記録テープカートリッジでは、リールの回転時に制動部材と解除部材との間で溶融や摩耗が生じない。
【0027】
請求項2記載の発明に係る記録テープカートリッジは、請求項1記載の記録テープカートリッジにおいて、前記制動部材は、軸心部に設けられ前記転がり軸受を収容する収容筒部と、内縁または外縁が多角形状に形成されて前記収容筒部の外側から立設され、前記ケースに設けられた回転規制リブが内嵌または外嵌する回転規制壁部と、を有することを特徴としている。
【0028】
請求項2記載の記録テープカートリッジでは、制動部材の軸心部に設けられた収容筒部内に転がり軸受が収容されており、例えば解除部材から突出した連結軸が収容筒部内で該転がり軸受に連結されている。そして、制動部材の収容筒部の外側からは、外縁または内縁が多角形状に形成された回転規制壁部が立設されており、この回転規制壁部にはケースに設けられた回転規制リブが内嵌または外嵌している。これにより、制動部材は、リールハブの底部に対し接離を可能としつつ、ケースに対する回転が阻止されている。
【0029】
ここで、制動部材の収容筒部の外側に回転規制壁部を立設したため、互いに連結された制動部材と解除部材との軸方向寸法、すなわちケース(記録テープカートリッジ)の厚みを増加することなく、転がり軸受を設けることが可能である。換言すれば、回転規制壁部を多角形状(好ましくは正多角形状)に形成することにより、上記軸方向寸法を増加することのない回転規制壁部の内側に、転がり軸受を配置することが可能となった。
【0030】
なお、回転規制壁部と回転規制リブとは、互いの嵌合面が全体として多角形状とされて上記の通り制動部材の底部に対する接離を可能としつつケースに対する回転を阻止できれば足り、上記多角形状の各片または各頂点部分の一部が切欠かれていても良いが、これらの強度上の観点からは、それぞれ閉じた形状とすることが望ましい。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態に係る記録テープカートリッジ10について、図1乃至図10に基づいて説明する。まず、記録テープカートリッジ10の概略の全体構成、開口及びドアの構成を説明し、次いで、本発明の要部であるリール14及び不使用時にリール14の回転を阻止する制動手段について説明する。なお、説明の便宜上、矢印Aで示す記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填方向を記録テープカートリッジ10の前方向(前側)とし、矢印Aと直交する矢印B方向を右方向とする。
(記録テープカートリッジの全体構成)
図1には記録テープカートリッジ10の全体構成が斜視図にて示されており、図2には記録テープカートリッジ10の概略の分解斜視図が示されている。
【0032】
これらの図に示される如く、記録テープカートリッジ10は、平面視で略矩形状のケース12内に、情報記録再生媒体である記録テープとしての磁気テープTを巻装した単一のリール14を回転可能に収容して構成されている。このリールの構成については後述する。
【0033】
ケース12は、ドライブ装置への装填方向先頭側の1つの角部である右前角部がそれぞれ切り欠かれた一対の上ケース16と下ケース18とを互いの周壁16A、18Aを突き合せて接合することで構成されており、内部に磁気テープTを巻装したリール14の収容空間が設けられている。そして、上ケース16及び下ケース18の周壁16A、18Aが切り取られた角部が磁気テープTの引き出し用の開口20とされている。開口20及び該開口20を開閉するドア50の詳細構成については後述する。
【0034】
この開口20から引き出される磁気テープTの自由端には、ドライブ装置の引出手段によって係止(係合)されつつ引き出し操作されるリーダピン22が接続されている。リーダピン22の磁気テープTの幅方向端部より突出した両端部には、環状溝22Aが形成されており、この環状溝22Aが引出手段のフック等に係止される。これにより、磁気テープTを引き出す際に、フック等が磁気テープTに接触して傷付けない構成である。
【0035】
また、ケース12の開口20の内側には、ケース12内においてリーダピン22を位置決め、保持する上下一対のピン台24が設けられている。ピン台24は、矢印B方向に開口する半円筒形状をしており、その凹部24Aに直立した状態のリーダピン22の両端部が保持されるようになっている。このピン台24は、後述するリブ44と連設されている。
【0036】
また、ピン台24の近傍には板ばね25が固定配置されており、この板ばね25がリーダピン22の上下端部に係合してリーダピン22をピン台24に保持するようになっている。リーダピン22がピン台24に出入りする際には、板ばね25はアーム部25Aを適宜弾性変形させてリーダピン22の移動を許容する構成である。
【0037】
さらに、下ケース18の中央部には、リール14のリールギヤ66(後述)を外部に露出するための「開口」としてのギヤ開口26が設けられており、リール14はリールギヤがドライブ装置の駆動ギヤに噛み合わされてケース12内で回転駆動されるようになっている。また、リール14は、上ケース16及び下ケース18の内面にそれぞれ部分的に突設されてギヤ開口26と同軸的な円形の軌跡上にある内壁としての遊動規制壁28によってガタ付かないように保持されている。また、下ケース18におけるギヤ開口26の縁部には、環状リブ26Aがケース12の内方へ向けて突設されており、リール14の位置決め用とされている。
【0038】
この遊動規制壁28の開口20近傍の端部には、内部に位置規制用孔が形成された袋部28Aが連設されている。また、ケース12の左前角部と遊動規制壁との間に挟まれた空間には、長孔である位置規制用孔が形成された袋部28Bが立設されている。袋部28A、28Bは、矢印B方向に沿った一直線上に配置されている。そして、袋部28Aが連設された端部を除いて、各遊動規制壁28は、それぞれ端部がケース12の周壁16Aまたは周壁18Aと連設されることで、その外側とリール14の設置空間とを仕切っている。
【0039】
また、下ケース18の右後部には、各記録テープカートリッジ10毎に、その各種情報を記憶されたメモリボードMが設置されるようになっており、下面側から読み取るドライブ装置と、背面側から読み取るライブラリ装置での検知が可能となるように、周壁18Aを構成する傾斜後壁18Cの一部が所定角度だけ傾斜され、メモリボードMが所定角度傾斜して配置されるようになっている。
(開口及び開口近傍のケースの構成)
上ケース16の底面図である図3及び下ケース18の平面図である図4にも示される如く、開口20の前後の縁部には、それぞれ上下一対のビスボス32、36が設けられている。ビスボス32、36は、図示しない他のビスボスと共に上ケース16と下ケース18とを接合するためのビス止め用とされている。
【0040】
開口20の前縁部に位置するビスボス32は、ケース12の前壁12A(周壁16A、18Aのうち、外面が矢印A方向を向く部分)の右端部、及び該前壁12Aの右端部から開口20の開放面に沿って短く屈曲された上下一対の防塵壁30とそれぞれ連設されている。ビスボス32と防塵壁30との間には後述するドア50の先端部が入り込む凹部30Aが形成されている。
【0041】
一方、開口20の後縁部に位置するビスボス36は、ケース12の右壁12B(周壁16A、18Aのうち、矢印A方向に沿った右側の壁)の前端部が開口20の開放面に略沿って屈曲された屈曲壁38、及び該右壁12Bの内側に設けられた上下一対の円弧壁34の前端部とそれぞれ連設されている。上下の円弧壁34は、それぞれ平面視で後述するドア50の外周面(の移動軌跡)に略対応した円弧状に形成されており、それぞれビスボス36から所定長さだけ後方へ伸び、該後部において短い連結壁34Aを介して右壁12B(周壁16Aまたは周壁18A)に連設されている。
【0042】
また、ケース12の右壁12Bには、ケース12の内外を連通する窓部としての所定長さのスリット40が設けらており、後述するドア50の操作突起52の露出用とされている。スリット40は、右壁12Bを構成する周壁16Aの下部を切り欠いて形成され、上ケース16の屈曲壁38の下部をも切り欠くことで前方へも開口されている。
【0043】
このケース12を構成する上ケース16及び下ケース18には、それぞれドア50をガイドするためのガイド溝42が設けられている。各ガイド溝42は、その溝壁が、それぞれ上ケース16の天板16B、下ケース18の底板18Bから立設されたリブ44、右壁12B(周壁16Aまたは周壁18A)、遊動規制壁28によって構成されることで、それぞれ天板16Bまたは底板18Bを薄肉化することなく形成されている。リブ44はピン台24に連設されている。
【0044】
各ガイド溝42は、凹部30Aを基端としケース12の右後角部まで至る所定の円周に沿った円弧状に形成されており、この所定の円周はビスボス32の外側、ビスボス36の内側、右壁12Bと遊動規制壁28との間を通る(縫う)ように決められている。そして、この所定の円周の中心位置(後述するドア50の回転中心)は、本実施の形態では、その左右方向の位置(座標)がケース12の左端よりも外側に、その前後方向の位置(座標)がリール14の回転中心(遊動規制壁28の軸心)と略一致するように設定されている。
【0045】
また、ガイド溝42の開口20に位置する部分は、リブ44がピン台24の右方において切り欠かれることで凹部24Aと連通されると共に、板ばね25のアーム部25Aが配置されるばね溝45とも連通している。また、ガイド溝42の切欠き部分では、リーダピン22をケース12内に誘い込むテーパ開口20Aがピン台24の凹部24Aに連通している。さらに、リブ44には、テーパ開口20Aの後縁、ビスボス36の前縁、開口20の開放面にそれぞれ沿って形成されたリブ46が連設されており、ケース12の開口20廻りの強度が確保または向上されている。
【0046】
さらに、各ガイド溝42の後半部分を構成するリブ44は、その後端において略U字状に折り返されて閉じている。そして、上ケース16のリブ44は、下ケース18のリブ44よりも後方に長く形成されている。これは、下ケース18の傾斜後壁18C(周壁18A)が所定角度の傾斜面になっており、その右壁12B側に配設したメモリボードMをドア50と干渉させないためである。
【0047】
さらに、後半部分のリブ44の内側部分における長手中央部には、上下一対のばね掛けピン55が設けられている。各ばね掛けピン55は、それぞれ遊動規制壁28に連設されており、下ケース18側が長く形成され、その遊動規制壁28よりも上方に突出した部分に後述するコイルばね56の一端側環状部56Aが引掛けられる構成である。そして、この下ケース18側のばね掛けピン55に上ケース16側の短いばね掛けピン55が突き当てられることで、コイルばね56の脱落が阻止されるようになっている。
【0048】
以上説明した上ケース16と下ケース18とは、互いの周壁16A、18Aを突き当てた状態で、各ビスボス32、36及び他のビスボスに下側から図示しないビスがねじ込まれて固定(接合)されケース12を構成している。そして、開口20は、右前角部が切り欠かれて形成されることで、その開放面が矢印A方向及び矢印B方向に向くため、ドライブ装置の引出手段が、矢印A方向、矢印B方向、或いは矢印A方向と矢印B方向との間からアクセスしてリーダピン22をチャックできる。これにより、リーダピン22を保持するピン台24を設置可能なエリアが広がり、ドライブ装置の引出手段がリーダピン22をチャック可能な領域が広いため、矢印A方向または矢印B方向からチャックするドライブ装置の仕様に合わせてピン台24の設置位置を設定できる。このため、ドライブ装置の設計の自由度も広がる。
(ドアの構成)
以上説明した開口20は、遮蔽部材としてのドア50によって開閉されるようになっている。ドア50は、板厚方向に湾曲され、その平面視における曲率がガイド溝42(所定の円周)の曲率と一致する円弧状に形成されている。また、ドア50は、その前部(少なくとも開口20を閉塞する部分)における板幅(高さ)が開口20の開口高さと略同一に形成された部分が閉塞部50Aとされると共に、閉塞部50Aよりも後側の板幅が若干小さくされた部分が駆動部50Bとされている。
【0049】
このドア50の板長(湾曲した長手寸法)は、開口20の閉塞状態において駆動部50Bの後端部がケース12の右後角部内に位置するように決められている(図5(A)参照)。なお、駆動部50Bの後下部は、下ケース18の傾斜後壁18Cの傾斜面に配設されたメモリボードMを回避するために、斜めに切り欠かれている。
【0050】
このドア50は、その閉塞部50Aの先端部がビスボス32の外側に位置する凹部30Aに入り込んだ状態で開口20を閉塞し(図5(A)参照)、ガイド溝42に沿って略後方へ移動(回動)して開口20を開放し(図5(B)参照)、閉塞部50Aの先端近傍の外周面がビスボス36の内側近傍に達すると開口20を完全に開放する(図5(C)参照)構成である。また、ドア50は、開口20を開放する際と略反対方向に回動して開口20を閉塞するようになっている。
【0051】
このように、ドア50は、その移動軌跡である所定の円周をはみ出すことなく回動して開口20を開閉するように湾曲形成されている。ドア50の回転中心及び半径(ガイド溝42の形状)は、ドライブ装置からの要求により決まる開口20前後の縁部(ビスボス32、36)の位置やライブラリ装置からの要求により決まる開口20の開放面の角度等に応じて適宜決められれば良い。
【0052】
また、ドア50の上下端には、それぞれ上下のガイド溝42に入り込むそれぞれ複数の凸部51が突設されている。各凸部51は、閉塞部50Aと駆動部50Bとで突出高が異なるが、ドア50の幅方向(長手方向に沿った)中心線からそれぞれの頂部までの距離は一定とされている。これにより、上下の凸部51は、ガイド溝42の底部である天板16Bまたは底板18Bと摺動するようになっている。
【0053】
また、各凸部51におけるドア50の板厚方向両側には、その頂部がドア50板厚方向端面に沿う突起51A(図5参照)が突設されており、ガイド溝42の溝壁(リブ44等)と摺動するようになっている。なお、最前に位置する凸部51は、開口20の開閉過程でガイド溝42と連通するテーパ開口20Aには入り込まないように配置されている。
【0054】
これらの凸部51及び突起51Aによって、ドア50は、開口20を開閉する際に各ガイド溝42にガイドされて上記移動軌跡からはみ出すことなく、ビスボス32の外側及びビスボス36の内側、右壁12Bと遊動規制壁28との間を縫うようにして確実に開動する構成である。
【0055】
このドア50の駆動部50Bの前端(閉塞部50A側)近傍における外周部には、操作部としての操作突起52がドア50の径方向に沿って突設されている。操作突起52は、スリット40からケース12の外側に露出されており、記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填(相対移動)に伴って該スリット40の前方に開口した部分から進入する係合突部104と係合することでドア50を開口20の開放方向に移動させる構成である。
【0056】
また、ドア50の駆動部50Bの後端部には、該ドア50の内面側に向けて略L字状のばね掛け部54が突設されており、ばね掛け部54は上側が自由端とされている。このばね掛け部54には、付勢手段としてのコイルばね56が係止保持用されている。具体的には、コイルばね56の端部にはそれぞれ係止用の環状部56A、56Bが設けられており、環状部56Aはケース12のばね掛けピン55を挿通させてケース12に係止保持され、環状部56Bはばね掛け部54を挿通させてドア50に係止保持される。
【0057】
これにより、ドア50は、コイルばね56の付勢力によって開口20の閉塞方向に付勢され、通常開口20を閉塞する構成である。このコイルばね56は、上記の通りドア50が開口20の閉塞状態でケース12の右後角部に至る長さであるため、該右後角部における遊動規制壁28と周壁16A、18A(傾斜後壁18C)との間の空間を有効利用して配設されている。
【0058】
また、ドア50の閉塞部50A内面には、開口20閉塞時にリーダピン22の上端部側面及び下端部側面に当接するストッパ58が突設されており、落下衝撃等によるリーダピン22のピン台24からの脱落を、確実に防止できるようになっている。
【0059】
以上説明したドア50は、記録テープカートリッジ10がドライブ装置へ装填される動作によって操作突起52がドライブ装置の係合突部104(図5(A)乃至(C)参照)に係合することでコイルばね56の付勢力に抗してケース12に対し移動し開口20を開放し、ドライブ装置から排出される際にはコイルばね56の付勢力によって開口20を閉塞する構成である。
【0060】
そして、円弧状に湾曲形成されたドア50は、その湾曲形状に沿った移動軌跡からはみ出すことなくリール14及びピン台24(リーダピン22)の外側を回り込むように回動して、矢印A方向に対し傾斜した開口20を開閉するようになっており、開口20の開閉に際してケース12の外形領域からはみ出さない構成である。
(リール及び制動手段の構成)
図2及び図6に示される如く、リール14は、外周面に磁気テープTが巻装される円筒部60Aと該円筒部60Aの下部を閉塞する底部60Bとを有する略有底円筒状のリールハブ60を備えている。リールハブ60の底部60B側端部(下端部)の近傍には、下フランジ62がその径方向外側に同軸的かつ一体に延設されている。一方、リールハブ60の上端部には、内径が円筒部60Aの内径と略同径とされると共に外径が下フランジ62の外径と同径とされた上フランジ64が超音波溶着等によって同軸的に接合されている。
【0061】
これにより、リール14は、下フランジ62と上フランジ64との対向面間において、リールハブ60の円筒部60Aの外周面に磁気テープTが巻き回されるようになっており、円筒部60Aは上方に開口している。下フランジ62、上フランジ64の外径は、ケース12の遊動規制壁28の内径よりも若干小径とされており、リール14がケース12内で回転可能とされている。
【0062】
また、図7にも示される如く、リールハブ60の底部60Bは、その下端部が下フランジ62の下面よりも若干突出しており、この下端面の外周近傍には環状に形成されたリールギヤ66が設けられている。リールギヤ66は、ドライブ装置の回転シャフト100の先端に設けられた駆動ギヤ102と噛み合い可能とされている。
【0063】
このリールギヤ66の設置部位における円周上で等間隔となる3箇所には、底部60B(リールギヤ66)を貫通する挿通孔68が設けられている。各挿通孔68の径はリールギヤ66のギヤピッチよりも大とされており、各挿通孔68廻りにはリールギヤ66の歯が設けられていない。
【0064】
さらに、リールハブ60の底部60Bの下端面におけるリールギヤ66の内側には、マグネットで吸着可能な磁性材料より成る環状板であるリールプレート70がインサート成形により一体に設けられている。
【0065】
このリールハブ60の底部60Bの下フランジ62よりも突出した下端部は、下フランジ62の径方向内端部分が環状リブ26Aの上端部に当接した状態でケース12のギヤ開口26に入り込んで(遊嵌されて)いる。これにより、リールギヤ66及びリールプレート70がケース12の外部に露出されるようになっている。
【0066】
一方、リールハブ60の底部60Bの上面における各挿通孔68の間の3箇所には、それぞれ本発明における「係合部」としての各一対(計6つ)の係止突起72が円周上で等間隔に立設されている(図2参照)。各係止突起72の先端部(上端部)にはギヤ歯72Aが形成されており(図8参照)、該ギヤ歯72Aは、後述するブレーキ部材74の制動ギヤ74Aと噛合可能とされている。
【0067】
また、記録テープカートリッジ10は、不使用時にリール14の回転を阻止するための制動手段を備えており、この制動手段は「制動部材」としてのブレーキ部材74を備えている。ブレーキ部材74は、略円板状に形成された円板部76を備えており、円板部76の下端面の外周近傍には、リール14のギヤ歯72Aと噛合可能な制動ギヤ74Aが環状に形成されている。
【0068】
また、図6及び図9に示される如く、ブレーキ部材74は、円板部76の上面から立設された「回転規制壁部」としての六角壁部78を備えている。六角壁部78は、平面視で内外縁共に閉じた正六角形状に形成されている。さらに、円板部76における六角壁部78の内側である軸心部には、「収容筒部」としてのベアリング保持部80が設けられている。ベアリング保持部80は、下方に開口した有底円筒状に形成されており、後述するベアリング82を収容保持するようになっているが、詳細構成については後述する。
【0069】
ブレーキ部材74は、制動ギヤ74Aが設けられた円板部76と、六角壁部78と、ベアリング保持部80とが樹脂成形によって一体に形成されている。
【0070】
以上説明したブレーキ部材74は、リールハブ60の円筒部60A内に、上下方向(リール14の軸線方向)の移動可能かつ略同軸的に挿設されている。すなわち、ブレーキ部材74は、上下方向に移動(底部60Bに対し接離)することで、その制動ギヤ74Aをリールハブ60に設けられた係止突起72のギヤ歯72Aと噛み合わせる位置(図7に示す回転ロック位置)と、該噛み合いを解除する位置(図8に示す回転許容位置)とを取り得るようになっている。
【0071】
そして、このブレーキ部材74の六角壁部78は、ケース12の天板16Bから下方へ突設された「回転規制リブ」としての六角リブ84内に入り込むようになっている。すなわち、ケース12の六角リブ84は、その内縁形状が六角壁部78の外縁形状に対応しており、該六角壁部78に外嵌するようになっている。
【0072】
これにより、互いに非円形状の六角壁部78の外縁と六角リブ84の内縁とが係合(干渉)することで、ブレーキ部材74のケース12に対する回転が阻止される構成である。なお、本実施の形態では、六角リブ84は、その外縁も平面視で六角形状とされ、六角壁部78と共に厚肉部位を生じさせない構成とされている。
【0073】
以上により、ブレーキ部材74は、図7に示す如く回転ロック位置に位置して制動ギヤ74Aをリールハブ60のギヤ歯72Aと噛み合わせた状態では、リール14の回転を阻止するようになっている。なお、六角リブ84は、ブレーキ部材74の上下方向の全移動ストロークに亘り六角壁部78に外嵌した状態が維持されるようになっており、該ブレーキ部材74の移動方向を上下方向に案内する機能をも果たす構成である。
【0074】
また、ブレーキ部材74における円板部76上面と天板16Bとの間には、「付勢手段」としての圧縮コイルスプリング86が配設されている。圧縮コイルスプリング86は、その一端部がベアリング保持部80と六角壁部78との間に入り込むと共に、他端部が六角リブ84内に入り込んでおり、径方向に位置ずれしないようになっている。
【0075】
この圧縮コイルスプリング86の付勢力によって、図7に示される如く、ブレーキ部材74が下方に付勢されて、通常は制動ギヤ74Aをギヤ歯72Aに噛み合わせてリール14の不用意な回転を確実に防止する(ブレーキ部材74を回転ロック位置に位置させる)構成である。また、この付勢力によって、係止突起72においてブレーキ部材74と噛み合っているリール14も下方に付勢され、上記の通り下フランジ62を環状リブ26Aに当接させてケース12内でガタつかないようになっている。
【0076】
また、リール14のリールハブ60(円筒部60A)内における底部60Bとブレーキ部材74との間には、解除部材としてのリリースパッド90が配設されている。リリースパッド90は、樹脂成形にて平面視略正三角形の平板状に形成されており、各頂部近傍の下面からは、それぞれ底部60Bの挿通孔68に対応した円柱状の3つの脚部92が突設されている。このリリースパッド90は、ベアリング82を介してブレーキ部材74と連結されているが、この連結構造については後述する。
【0077】
このリリースパッド90は、各脚部92を挿通孔68に上下方向の移動可能に挿通した状態で、各係止突起72と干渉しないようにリールハブ60の底部60B上に載置(下面が底部60Bの上面と当接)されている。この状態で各脚部92は、その先端とリールギヤ66の歯先とが略同位となるように挿通孔68の下端部より突出している。そして、ベアリング82を介してブレーキ部材74と連結されたリリースパッド90は、圧縮コイルスプリング86の付勢力によって脚部92の上記突出状態を維持する構成である。
【0078】
一方、リリースパッド90は、脚部92が圧縮コイルスプリング86の付勢力に抗して上方へ押圧移動されると、ベアリング82と共にブレーキ部材74を上方へ押し上げて制動ギヤ74Aと係止突起72のギヤ歯72Aとの噛合いを解除する(ブレーキ部材74を解除位置へ移動させる)ようになっている。
【0079】
具体的には図8に示される如く、リリースパッド90の各脚部92は、リール14のリールギヤ66に駆動ギヤ102を噛み合わせる際に回転シャフト100がケース12に対し上方向に相対移動することで駆動ギヤ102の歯先によって押圧されるようになっている。
【0080】
これにより、リール14は、そのリールギヤ66に駆動ギヤ102を噛み合わせる動作に伴って、圧縮コイルスプリング86の付勢力に抗してケース12内で浮上する(下フランジ62を環状リブ26Aから離間させる)と共に、ブレーキ部材74による回転阻止状態が解除されてケース12内で回転可能となるように構成されている。
【0081】
すなわち、リリースパッド90は、リールギヤ66と駆動ギヤ102とが噛み合う動作によってブレーキ部材74を回転許容位置へ移動させると共に、リールギヤ66と駆動ギヤ102との噛み合いが維持されている状態では(記録テープカートリッジ10を使用するためにリールを回転させる際には)ブレーキ部材74を回転許容位置に保持する構成である。なお、この保持状態でリリースパッド90の各脚部92は、リールハブ60の挿通孔68内に位置しており、該リリースパッド90は、回転シャフト100が回転するとリール14と共に(一体に)回転する構成である。
【0082】
このため、ブレーキ部材74とリリースパッド90とは、リール14の回転時に相対回転し、この相対回転が「転がり軸受」としてのベアリング82によって許容されるようになっている。以下、ベアリング82によるブレーキ部材74とリリースパッド90との連結構造について説明する。
【0083】
図10(A)に示される如く、ブレーキ部材74のベアリング保持部80内には、ベアリング82が収容されている。ベアリング82は、その外輪82Aがベアリング保持部80に嵌合して固定されると共に、その内輪82Bがリリースパッド90の上面軸心部から立設された連結軸部94を嵌合させて固定している。
【0084】
また、ベアリング保持部80の円筒部80Aと底部80Bとの間には、環状の段部80Cが内下方に突出しており、この段部80Cの下面が外輪82Aの上端に当接することにより、底部80Bと内輪82Bとが干渉しない構成である。なお、ベアリング保持部80は、底部80B及び段部80Cを設けず、単に円筒状に形成されても良い。
【0085】
さらに、ベアリング82の下端は、ベアリング保持部80の開口端から突出しないように各部の寸法が決められており、内輪82Bの下面には、連結軸部94の根元部に該内輪82Bの該径よりも小径に設けられたスペーサ段部94Aが当接している。このスペーサ段部94Aにより、リリースパッド90の上面とブレーキ部材74(円板部76)及び外輪82Aの下面とが干渉しないようになっている。
【0086】
以上により、ブレーキ部材74とリリースパッド90とが、ベアリング82を介して互いの同軸的な相対回転可能に連結されている。これにより、リリースパッド90は、ブレーキ部材74と共に上下方向に移動する機能を維持しつつ、該ブレーキ部材74に対し回転自在とされている。なお、本実施の形態では、ブレーキ部材74とリリースパッド90とが軸方向に相対移動しないように連結されているため、ブレーキ部材74、リリースパッド90、ベアリング82を一体のアセンブリとして取り扱うことができ、組み付け作業が容易となる。
【0087】
このベアリング82は、本実施の形態では、ラジアルボールベアリングとされており、特に、圧縮コイルスプリング86の付勢力に基づくスラスト荷重(一方向)を支持するために、アンギュラタイプのボールベアリングとされている。なお、本発明における「転がり軸受」としては、ラジアルボールベアリングに限定されることはなく、図10(B)に示されるスラストボールベアリングであるベアリング96を用いても良い。これは、記録テープカートリッジ10では、ブレーキ部材74とリリースパッド90との間には、基本的に圧縮コイルスプリング86の付勢力のみが作用し、ラジアル荷重を支持しなくても良いためである。また、ベアリング82、96に代えて、リール14の回転速度や耐久時間(想定寿命)に応じて各種タイプの転がり軸受を採用することができる。
【0088】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
【0089】
上記構成の記録テープカートリッジ10では、不使用時(保管時や運搬時等)には、コイルばね56の付勢力によって先端部を凹部30Aに入り込ませたドア50が開口20を閉塞している。
【0090】
また、リール14は、図7に示される如く、その係止突起72に噛み合うブレーキ部材74(及びリリースパッド90)を介して伝達される圧縮コイルスプリング86の付勢力によって、下フランジ62が環状リブ26Aに押し付けられ(当接され)つつリールギヤ66をギヤ開口26から露出させている。
【0091】
そして、この圧縮コイルスプリング86の付勢力によって、ブレーキ部材74の制動ギヤ74Aが係止突起72のギヤ歯72Aに噛み合わされてリール14のケース12に対する回転が阻止されている。すなわち、ブレーキ部材74が回転ロック位置に位置している。
【0092】
一方、磁気テープTを使用する際には、記録テープカートリッジ10を矢印A方向に沿ってドライブ装置のバケット(図示省略)へ装填する。この装填に伴って、バケットに固定された係合突部104(図5参照)がドア50の操作突起52に係合することでドア50が略後方へ回動して開口20が開放される。
【0093】
そして、記録テープカートリッジ10がバケットに所定深さまで装填されると、該バケットは下降し、ドライブ装置の回転シャフト100がケース12のギヤ開口26に向って相対的に接近(上方へ移動)してリール14を保持する。具体的には、回転シャフト100は、その先端部に配設されたマグネット(図示省略)によってリールプレート70を吸着保持しつつ、その駆動ギヤ102をリールギヤ66と噛合わせる。
【0094】
このリールギヤ66と駆動ギヤ102との噛合いに伴って、該駆動ギヤ102の歯先がリリースパッド90の脚部92の先端(下端面)に当接し、圧縮コイルスプリング86の付勢力に抗してリリースパッド90を上方に押し上げる。これにより、ベアリング82を介してリリースパッド90と連結されいるブレーキ部材74も上方に移動し、ブレーキ部材74の制動ギヤ74Aと係止突起72のギヤ歯72Aとの噛み合いが解除される。
【0095】
回転シャフト100がさらに上方へ移動すると、圧縮コイルスプリング86の付勢力に抗して、リール14がリリースパッド90、ブレーキ部材74と共に(相対位置を変化させないまま)上方に持ち上げられ、下フランジ62が環状リブ26Aから離間する。以上により、リール14は、ケース12内で浮上し該ケース12内面と非接触状態で回転可能となる。
【0096】
また、上記バケットの下降によって記録テープカートリッジ10はドライブ装置内で位置決めされ、この状態でドライブ装置の引出手段が開放された開口20からリーダピン22を引き出し該ドライブ装置の巻取リールに収容する。そして、ドライブ装置が巻取リールとリール14(回転シャフト100)とを同期して回転駆動すると、磁気テープTは、巻取リールに巻き取られつつケース12から順次引き出され、所定のテープ経路に沿って配設された記録再生ヘッド等によって情報の記録や再生が行なわれる。
【0097】
このとき、ケース12に対し回転不能であるブレーキ部材74と、リール14に脚部92を係合させて該リール14と一体に回転するリリースパッド90とが互いに相対回転している。
【0098】
一方、磁気テープTがリール14に巻き戻されてリーダピン22がピン台24に保持されると、上記マグネットの磁力をOFFにして回転シャフト100とリールプレート70との吸着を解除すると共に、記録テープカートリッジ10が装填されたバケットを上昇させる。
【0099】
すると、リールギヤ66と駆動ギヤ102との噛合が解除されると共に駆動ギヤ102とリリースパッド90の脚部92との当接が解除され、該リリースパッド90が圧縮コイルスプリング86の付勢力によってブレーキ部材74と共に下方へ移動する。
【0100】
これにより、リリースパッド90の各脚部92がそれぞれ挿通孔68からリールギヤ66形成部位まで突出すると共に、ブレーキ部材74の制動ギヤ74Aが係止突起72のギヤ歯72Aと噛み合う。すなわち、ブレーキ部材74がリール14の回転を阻止する回転ロック位置へ復帰する。
【0101】
また、ブレーキ部材74とリリースパッド90とが圧縮コイルスプリング86の付勢力によって移動する動作に伴って、リール14も下方へ移動してその下フランジ62を環状リブ26Aに当接させつつリールギヤ66をギヤ開口26から露出させる初期状態に復帰する。
【0102】
さらに、記録テープカートリッジ10をバケットから排出する際には、記録テープカートリッジ10は、コイルばね56の付勢力または図示しないイジェクト機構によって矢印A方向とは反対方向に移動する。この移動に伴って、ドア50は、コイルばね56の付勢力によって開口20を閉塞する。以上により、記録テープカートリッジ10は、ドライブ装置から排出されて初期状態に復帰する。
【0103】
ここで、記録テープカートリッジ10では、ブレーキ部材74とリリースパッド90とがベアリング82によって同軸的な相対回転可能に連結されているため、ブレーキ部材74とリリースパッド90とが互いの相対回転に伴って摺接(滑り接触)することがない。このため、ブレーキ部材74とリリースパッド90との間の相対回転速度が大きくかつ相対回転時間が長い場合でも、これらの間で溶融や摩耗等が生じることがない。
【0104】
これにより、圧縮コイルスプリング86によって下方に付勢されているブレーキ部材74は、回転ロック位置及び回転許容位置の何れにおいても、ケース12に対する位置が一定に保たれる。すなわち、従来の如くブレーキ部材74とリリースパッド90との互いの摺接部位における溶融や摩滅等に伴う高さの減少がないため、ブレーキ部材74の六角壁部78とケース12の六角リブ84との嵌合深さ(係合量)が減少することがなく、該ブレーキ部材74のガタつきやリール14の回転中心に対する位置ずれ等が防止される。また、上記摺接部位の位置ずれに伴う異音等の発生も防止される。
【0105】
このように、本実施の形態に係る記録テープカートリッジ10では、リール14の回転時にブレーキ部材74とリリースパッド90との間で溶融や摩耗が生じない。
【0106】
またここで、ブレーキ部材74をケース12に対し回転不能とするための六角壁部78を平面視で六角形状に形成し、該六角壁部の内側(円板部76に対し同じ側)にベアリング保持部80を設けたため、ケース12(記録テープカートリッジ10)の厚みを増加することなく、ベアリング82を配設することが可能となった。すなわち、従来の如く、制動部材220の軸心部に平面視十字形状の回転規制突起222を設けた構成では、ベアリング82によってブレーキ部材74とリリースパッド90とを連結する場合、円板部76の下方に配置される該ベアリング82の厚み分だけ互いに連結された状態のブレーキ部材74及びリリースパッド90の軸方向寸法が大きくなり、これを収容するケース12の厚み(高さ)が大きくなってしまうが、記録テープカートリッジ10では、六角壁部78及びベアリング保持部80に干渉することなく六角壁部78に嵌合する六角リブ84を設けることで、ケース12の厚みを増すことなくベアリング82を設けて、リール14の回転時にブレーキ部材74とリリースパッド90との間で溶融や摩耗を生じさせない機能を達成した。
【0107】
また、六角壁部78、六角リブ84は、それぞれ周方向に連続して閉じた形状とされているため、換言すれば、周方向に自由端部がない(下端のみが自由端となる)形状とされているため、それぞれ強度(剛性)が高く、変形等によるブレーキ部材74のガタつきが防止される。
【0108】
なお、上記の実施の形態では、ブレーキ部材74の六角壁部78とケース12の六角リブ84とが、共に平面視六角形状に形成された構成としたが、本発明はこれに限定されず、例えば、図11または図12に示される変形例に係る構成とすることも可能である。以下、各変形例について説明するが、上記実施の形態と基本的に同一の部品・部分については、上記実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0109】
図11には、第1変形例に係るブレーキ部材110が示されている。ブレーキ部材110は、六角壁部78に代えて、「回転規制壁部」としての四角壁部112を備えている。四角壁部112は、六角壁部78と同様に、ベアリング保持部80の外側における円板部76の上面から立設されており、内外縁共に平面視で略正方形状とされている。そして、ケース12の天板16Bからは、その内縁が四角壁部112の外縁形状に対応して形成された「回転規制リブ」としての四角リブ114が下方へ向けて立設されている。この四角リブ114が四角壁部112に外嵌することにより、ブレーキ部材110のケース12に対する回転が阻止される構成である。他の構成、機能等については、上記実施の形態と同様である。このように、本発明における回転規制壁部、回転規制リブは、内縁または外縁の形状をあらゆる多角形状とすることができる。また、例えば、これらの内縁または外縁を閉曲線で構成することもできるが、この場合、頂部を有する多角形状と比較して組み付け時の位置合わせが難しく、また自動組み付けおいてはハンドリング性が悪くなる。また、回転規制壁部と回転規制リブとは、互いに形状が異なっても良く、例えば、六角壁部78に四角リブ114を内嵌させることも可能である。
【0110】
図12には、第2変形例に係るブレーキ部材120が示されている。ブレーキ部材120は、六角壁部78に代えて、複数(本第2変形例では4つ)のスリット壁122を備えている。各スリット壁122は、ベアリング保持部80の外側における円板部76の上面から立設されており、周方向に等間隔に配置されている。各スリット壁122内には、上方に開口したスリット124が形成されている。そして、天板16Bからは、それぞれのスリット124に対応して係合片126が下方へ向けて立設されている。各係合片126がそれぞれスリット壁122に囲まれたスリット124に挿入されることにより、ブレーキ部材120のケース12に対する回転が阻止される構成である。他の構成、機能等については、上記実施の形態と同様である。このように、本発明は、制動部材の回転規制壁部とケースの回転規制リブとが多角形状である構成には限定されない。
【0111】
なお、上記の実施の形態及び各変形例では、ベアリング82、96がブレーキ部材74のベアリング保持部80内に収容される好ましい構成としたが、本発明はこれに限定されず、ベアリング82等は、ブレーキ部材74とリリースパッド90とを、組付状態において同軸的な相対回転可能に連結すれば足り、如何なる位置に配置されても良い。したがって、例えば、ベアリング82等の一部がリリースパッド90の軸心部に埋め込まれる構成としても良い。
【0112】
また、上記実施の形態及び第1変形例では、平面視で多角形状に形成された六角リブ84または四角リブ114が六角壁部78または四角壁部112に外嵌する構成としたが、本発明はこれに限定されず、六角リブ84等が六角壁部78等に内嵌する構成としても良いことは言うまでもない。
【0113】
さらに、本発明に係る記録テープカートリッジでは、上記回転ロック位置と回転許容位置とを取り得るブレーキ部材74が、使用時にリール14と共に回転するリリースパッド90によって回転許容位置に保持されれば足り、本発明がブレーキ部材74、リリースパッド90の形状等(リール14の回転ロック構造、ロック解除構造)によって限定されることはない。さらに、本発明が開口20やドア50等の好ましい構成によって限定されないことは言うまでもない。
【0114】
さらにまた、上記の実施の形態では、記録テープとして磁気テープTを用いた構成としたが、本発明はこれに限定されず、記録テープは情報の記録及び記録した情報の再生が可能な長尺テープ状の情報記録再生媒体として把握されるものであれば足り、本発明に係る記録テープカートリッジが如何なる記録再生方式の記録テープにも適用可能であることは言うまでもない。
【0115】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る記録テープカートリッジは、リールの回転時に制動部材と解除部材との間で溶融や摩耗が生じないという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成する上ケースの底面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成する下ケースの平面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジの開口の開放過程を示す上ケースを取り除いて見た図であって、(A)はドアの操作突起へのドライブ装置の係合突部の係合初期状態を示す平面図、(B)は開口の開放途中を示す平面図、(C)は開口の開放完了状態を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成するリール及び制動手段を示す下方から見た分解斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジにおけるリールの回転ロック状態を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジにおけるリールの回転可能状態を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成する制動手段を拡大して示す分解斜視図である。
【図10】(A)は本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成するベアリングによるブレーキ部材とリリースパッドとの連結構造を示す拡大断面図、(B)はベアリングの変形例を示す図10(A)に対応する断面図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成する制動手段の第1変形例を示す図9に対応する分解斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジを構成する制動手段の第2変形例を示す図9に対応する分解斜視図である。
【図13】従来の記録テープカートリッジにおけるリールの回転ロック状態を示す断面図である。
【図14】従来の記録テープカートリッジにおけるリールの回転可能状態を示す断面図である。
【図15】従来の記録テープカートリッジにおける制動手段を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
10 記録テープカートリッジ
12 ケース
14 リール
60 リールハブ
60B 底部(リールハブの底部)
72 係止突起(係合部)
74 ブレーキ部材(制動部材)
78 六角壁部(回転規制壁部)
80 ベアリング保持部(収容筒部)
82 ベアリング(転がり軸受)
84 六角リブ(回転規制リブ)
90 リリースパッド(解除部材)
110、120 ブレーキ部材(制動部材)
112 四角壁部(回転規制壁部)
114 四角リブ(回転規制リブ)
T 磁気テープ(記録テープ)
Claims (2)
- ケース内に収容され、記録テープを巻装したリールハブの底部に係合部が設けられたリールと、
前記ケース内に回転不能に設けられ、前記リールハブの底部に対し接離して、前記係合部に係合する回転ロック位置と、該係合部との係合状態を解除する回転許容位置とを取り得る制動部材と、
前記リールハブの底部と前記制動部材との間に配置され、前記リールを回転させる際に、前記制動部材を前記回転許容位置に保持しつつ該リールと一体に回転する解除部材と、
前記制動部材と前記解除部材とを連結して該解除部材の回転を可能とする転がり軸受と、
を備えた記録テープカートリッジ。 - 前記制動部材は、
軸心部に設けられ前記転がり軸受を収容する収容筒部と、
外縁または内縁が多角形状に形成されて前記収容筒部の外側から立設され、前記ケースに設けられた回転規制リブが内嵌または外嵌する回転規制壁部と、
を有することを特徴とする請求項1記載の記録テープカートリッジ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002360456A JP2004192734A (ja) | 2002-12-12 | 2002-12-12 | 記録テープカートリッジ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002360456A JP2004192734A (ja) | 2002-12-12 | 2002-12-12 | 記録テープカートリッジ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004192734A true JP2004192734A (ja) | 2004-07-08 |
Family
ID=32759523
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002360456A Pending JP2004192734A (ja) | 2002-12-12 | 2002-12-12 | 記録テープカートリッジ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004192734A (ja) |
-
2002
- 2002-12-12 JP JP2002360456A patent/JP2004192734A/ja active Pending
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