JP2004190493A - 車両の制御装置および制御方法 - Google Patents

車両の制御装置および制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フューエルカット領域を拡大して燃費を向上させる。
【解決手段】車両の減速中に、エンジン100の回転数が所定回転数よりも大きいと、フューエルカットを実行するフューエルカット実行回路と、フューエルカット実行回路によるフューエルカットの開始時にトルクコンバータ200のロックアップクラッチ210のスリップ制御が実行されるまで、エンジン100の回転数の低下を抑制するためにエンジン100に動力を伝達するモータジェネレータ500と、モータジェネレータ500によるエンジン回転数の低下の抑制が可能であるときには、所定回転数を小さくするECT_ECU400とを含む。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フューエルカットにより燃費を向上させる車両における制御に関し、特に、減速時に変速機のロックアップクラッチをスリップ制御または係合制御するとともに、エンジンの燃料供給を停止する車両の制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、トルクコンバータの入力側と出力側とを直結可能とするロックアップクラッチを制御する際に、入力側のポンプ回転速度(エンジン回転速度に対応)と出力側のタービン回転速度との回転差に応じて、該ロックアップクラッチの係合力を所定の状態にフィードバック制御し(スリップ制御し)、これによってトルクコンバータのスリップ状態を適正に制御して振動及び騒音の発生を防止すると共に、燃費性能の改善を図るようにした技術が知られている。
【0003】
このスリップ制御は、所定の条件が成立したときに開始されるが、従来、特にアクセルを全閉とした減速が検出されたときにこのスリップ制御を実行することにより、フューエルカットされている時間(燃料の供給が中止されている時間)をできるだけ長く維持して燃費の向上を図ると共に、適度なエンジンブレーキを確保するようにすることが提案されている。
【0004】
即ち、アクセルペダルが開放されると、一般にエンジンのフューエルカットが実施されるが、このフューエルカットはエンジン回転速度が所定値以下になると中止される。従って、ロックアップクラッチのスリップ制御によってエンジン回転速度が急激に低下しないようにすることにより、フューエルカットされている時間を長く保つことができ、同時にこの間は適度なエンジンブレーキを確保することができるものである。
【0005】
一般に、このような減速時の制御において、フューエルカットされている時間を延ばして燃費をできるだけ改善するには、フューエルカットの状態から燃料供給再開に転換する際の閾値をできるだけ低く設定しておく必要があるが、あまり低く設定し過ぎるとエンジンストールする可能性がある。
【0006】
特開平8−99564号公報は、このような問題を解決する車両用エンジンの補助装置を開示する。特許文献1に開示された補助装置は、(a)燃料の燃焼によって回転動力を発生するエンジンと、(b)このエンジンの発生した回転動力を変速して駆動輪へ伝える変速機と、(c)エンジンと変速機との間に設けられ、エンジンの回転動力を流体を介して変速機へ伝える流体継手と、(d)この流体継手に設けられ、油圧によってエンジンの回転動力を直接、変速機へ伝えるロックアップクラッチと、(e)このロックアップクラッチの作動を制御するロックアップ制御回路と、(f)エンジンへ燃料の供給を行うとともに、燃料の供給停止を行う燃料調節回路と、(g)エンジンによって駆動されるジェネレータと、(h)このジェネレータの発電した電力を蓄えるバッテリと、(i)ジェネレータあるいはバッテリから電力の供給を受けて、エンジンを駆動するモータと、(j)エンジンの回転数を検出する回転数検出回路と、(k)車両の減速を検出する減速検出回路と、(l)この減速検出回路が減速を検出した際、回転数検出回路の検出する回転数が所定回転数より高い場合に、ロックアップ制御回路によってロックアップクラッチをロックアップさせる減速ロックアップ回路と、(m)減速検出回路が減速を検出した際、燃料調節回路によってエンジンの燃料の供給停止を行うフューエルカット回路と、(n)減速ロックアップ回路によるロックアップの解除後、油圧遅れにより実際にロックアップが解除されたか否かを判断するロックアップ解除判断回路と、(o)このロックアップ解除判断回路でロックアップが実際に解除されたと判断されると、燃料調節回路によってエンジンへ燃料の供給を行う燃料復帰回路と、(p)ロックアップ解除判断回路でロックアップが実際に解除されたと判断されると、モータを作動させる電動作動回路と、(q)この電動作動回路の作動時に、エンジンの再始動を検出する再爆発検出回路と、(r)この再爆発検出回路がエンジンの再始動を検出すると、ジェネレータを作動させる発電作動回路とを含む。
【0007】
特許文献1に開示された制御装置によると、車両が減速して、減速検出回路が車両の減速状態を判断すると、減速ロックアップ回路が、エンジンの回転数が所定回転数より高い場合に、ロックアップクラッチをロックアップさせ、変速機とエンジンとを流体継手を介すことなく直結するとともに、フューエルカット回路が燃料調節回路によって燃料供給を停止する。これによって、車両の走行エネルギーが、燃料の燃焼を行わないエンジンに伝えられる。このため、エンジンの負荷が、ロックアップクラッチ、変速機を介して駆動輪へ伝えられる。その結果、ロックアップが実際に解除されるとモータが作動して、エンジンの回転数の落ち込みが防がれるとともに、エンジンが再爆発するとジェネレータが作動して、エンジンの回転数の上昇が防がれることにより、減速後のエンストが確実に防がれるとともに、減速後の回転数が安定する。また、ロックアップが解除された後にモータが作動することによって消費した電力は、エンジンの再爆発後のジェネレータの作動によって回収される。このため、エンジンの燃費が向上する。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−99564号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示された補助装置によると、ロックアップクラッチの応答性が悪い場合には、ロックアップクラッチの係合が遅れて、エンジンが駆動輪により回転させられないのでエンジン回転数がすぐに低下してしまい、フューエルカットが中止されるので燃費が悪くなる可能性がある。
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、流体継手に設けられるロックアップクラッチを制御して、フューエルカット状態を持続させたり、フューエルカット領域を広げたりして、燃費を向上させる車両の制御装置および制御方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る制御装置は、エンジンと、エンジンに対して動力を伝達する電動機と、ロックアップクラッチを有する流体継手とを搭載した車両を制御する。この制御装置は、車両の減速中にロックアップクラッチをスリップ状態および係合状態のいずれかにさせて、エンジンの回転数が所定回転数よりも高い時にエンジンへの燃料供給を停止させるフューエルカットを実行するためのフューエルカット実行手段と、フューエルカット実行手段によりロックアップクラッチが解放状態からスリップ状態および係合状態のいずれかに移行するまでの間において、電動機によりエンジン回転数の低下を抑制するように、電動機を制御するための制御手段とを含む。
【0012】
第1の発明によると、フューエルカット開始手段により、ロックアップクラッチが係合されるとともにフューエルカットが開始される。ロックアップクラッチが解放状態から係合状態に移行するまでの間に、たとえば、ロックアップクラッチが完全に解放された状態から電動機によりエンジン回転数の低下を抑制したり、ロックアップクラッチが解放状態と係合状態との間のスリップ状態から電動機によりエンジン回転数の低下を抑制したりする。ロックアップクラッチの応答性が悪い場合であってロックアップクラッチの係合が遅れても、電動機によりエンジン回転数がすぐに低下することなく、フューエルカットが実行されるので、燃費が向上する。その結果、フューエルカット状態を持続させて、燃費を向上させる車両の制御装置を提供することができる。
【0013】
第2の発明に係る制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、フューエルカット実行手段は、ロックアップクラッチが解放状態から、スリップ状態および係合状態のいずれかへの移行を開始したことに応答して、フューエルカットを実行するための手段を含む。
【0014】
第2の発明によると、ロックアップクラッチが少なくとも解放されている状態でないスリップ状態および係合状態のいずれかへの移行を開始すると、フューエルカットが実行される.このため、エンジンへの燃料供給が停止される時にはロックアップクラッチは少なくとも解放された状態ではないので、エンジンが車輪により回転させられる状態になり、エンジン回転数がすぐに低下することなく、フューエルカットが実行されるので、燃費が向上する。
【0015】
第3の発明に係る制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、制御手段は、ロックアップクラッチが解放状態から、スリップ状態および係合状態のいずれかへ移行したことに応答して、エンジン回転数の低下を抑制する制御を終了するように、電動機を制御するための手段を含む。
【0016】
第3の発明によると、ロックアップクラッチがスリップ状態であるか係合状態になると、エンジンが駆動輪による被駆動の状態になり、電動機によりエンジン回転数低下を抑制する制御を終了しても、エンジン回転数がすぐに低下することなく、フューエルカットが未実行にならないので、燃費が向上する。
【0017】
第4の発明に係る制御装置は、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、制御手段が電動機を制御することによりエンジン回転数の低下を抑制することが可能であるか否かを判断するための判断手段と、判断手段により可能であると判断されるときには、所定回転数を低くするように変更するための変更手段とをさらに含む。
【0018】
第4の発明によると、判断手段により、フューエルカットの開始時に電動機によるエンジンの回転数低下の抑制が可能であると判断されると、変更手段がフューエルカット範囲を規定する所定回転数を下げるように変更する。すなわち、フューエルカットを開始できるエンジン回転数を下げて、フューエルカットから一旦復帰してエンジン回転数が上昇している状態でアクセルが戻されたときに、フューエルカットの開始が許可されるエンジン回転数が下げられているため、エンジン回転数が低い状態であってもフューエルカットされるようになる。このようにすると、フューエルカット開始回転数とフューエルカット復帰回転数との差が小さくなるため、フューエルカット開始時に電動機によりエンジン回転数の低下を抑制しないと、ロックアップクラッチの応答性によっては、エンジンが被駆動状態となる前にエンジン回転数が低下してフューエルカットからの復帰が頻繁に発生する可能性がある。しかし、制御手段により電動機が制御されるので、フューエルカットの開始時のエンジンの回転数の落込みは防止される。その結果、フューエルカット領域を広げて燃費の向上を実現できる、車両の制御装置を提供することができる。
【0019】
第5の発明に係る制御方法は、エンジンと、エンジンに対して動力を伝達する電動機と、ロックアップクラッチを有する流体継手とを搭載した車両を制御する。この制御方法は、車両の減速中にロックアップクラッチをスリップ状態および係合状態のいずれかにさせて、エンジンの回転数が所定回転数よりも高い時にエンジンへの燃料供給を停止させるフューエルカットを実行するフューエルカット実行ステップと、フューエルカット実行ステップによりロックアップクラッチが解放状態からスリップ状態および係合状態のいずれかに移行するまでの間において、電動機によりエンジン回転数の低下を抑制するように、電動機を制御する制御ステップとを含む。
【0020】
第5の発明によると、フューエルカット開始ステップにて、ロックアップクラッチが係合されるとともにフューエルカットが開始される。ロックアップクラッチが解放状態から係合状態に移行するまでの間に、たとえば、ロックアップクラッチが完全に解放された状態から電動機によりエンジン回転数の低下を抑制したり、ロックアップクラッチが解放状態と係合状態との間のスリップ状態から電動機によりエンジン回転数の低下を抑制したりする。ロックアップクラッチの応答性が悪い場合であってロックアップクラッチの係合が遅れても、電動機によりエンジン回転数がすぐに低下することなく、フューエルカットが実行されるので、燃費が向上する。その結果、フューエルカット状態を持続させて、燃費を向上させる車両の制御方法を提供することができる。
【0021】
第6の発明に係る制御方法においては、第5の発明の構成に加えて、フューエルカット実行ステップは、ロックアップクラッチが解放状態から、スリップ状態および係合状態のいずれかへの移行を開始したことに応答して、フューエルカットを実行するステップを含む。
【0022】
第6の発明によると、ロックアップクラッチが少なくとも解放されている状態でないスリップ状態および係合状態のいずれかへの移行を開始すると、フューエルカットが実行される.このため、エンジンへの燃料供給が停止される時にはロックアップクラッチは少なくとも解放された状態ではないので、エンジンが車輪により回転させられる状態になり、エンジン回転数がすぐに低下することなく、フューエルカットが実行されるので、燃費が向上する。
【0023】
第7の発明に係る制御方法においては、第5の発明の構成に加えて、制御ステップは、ロックアップクラッチが解放状態から、スリップ状態および係合状態のいずれかへ移行したことに応答して、エンジン回転数を抑制する制御を終了するように、電動機を制御するステップを含む。
【0024】
第7の発明によると、ロックアップクラッチがスリップ状態であるか係合状態になると、エンジンが駆動輪による被駆動の状態になり、電動機によりエンジン回転数低下を抑制する制御を終了しても、エンジン回転数がすぐに低下することなく、フューエルカットが未実行にはならないので、燃費が向上する。
【0025】
第8の発明に係る制御方法は、第5〜7の発明の構成に加えて、制御ステップにおいて電動機を制御することによりエンジン回転数の低下を抑制することが可能であるか否かを判断する判断ステップと、判断ステップにて可能であると判断されるときには、所定回転数を低くするように変更する変更ステップとをさらに含む。
【0026】
第8の発明によると、判断ステップにて、フューエルカットの開始時に電動機によるエンジンの回転数低下の抑制が可能であると判断されると、変更ステップにてフューエルカット範囲を規定する所定回転数を下げるように変更する。すなわち、フューエルカットを開始できるエンジン回転数を下げて、フューエルカットから一旦復帰してエンジン回転数が上昇している状態でアクセルが戻されたときに、フューエルカットの開始が許可されるエンジン回転数が下げられているため、エンジン回転数が低い状態であってもフューエルカットされるようになる。このようにすると、フューエルカット開始回転数とフューエルカット復帰回転数との差が小さくなるため、フューエルカット開始時に電動機によりエンジン回転数の低下を抑制しないと、ロックアップクラッチの応答性によっては、エンジンが被駆動状態となる前にエンジン回転数が低下してフューエルカットからの復帰が頻繁に発生する可能性がある。しかし、制御ステップにて電動機が制御されるので、フューエルカットの開始時のエンジンの回転数の落込みは防止される。その結果、フューエルカット領域を広げて燃費の向上を実現できる、車両の制御方法を提供することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0028】
以下、本発明の実施の形態に係る制御装置を搭載した車両のパワートレインについて説明する。以下の説明においては、トルクを伝達する機構を、トルク増幅機能を有するロックアップクラッチ付きトルクコンバータとして、変速機を、自動変速機として説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。たとえば、トルク伝達機構は、ロックアップクラッチ付きフルードカップリングであってもよいし、変速機は、無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)であってもよいし、手動変速機であってもよい。また、本実施の形態に係るECT_ECU(Electronic Controlled Automatic Transmission_Electronic Control Unit)が制御する車両には、エンジンとそのエンジンに対して動力を伝達することの可能なモータジェネレータとが搭載される。ECT_ECUは、車両減速時にフューエルカットを実行するとともに、そのフューエルカットの開始およびフューエルカットからの復帰に関して、トルクコンバータのロックアップクラッチと、モータジェネレータとを制御する。
【0029】
図1を参照して、本実施の形態に係る制御装置を含む車両のパワートレインについて説明する。本実施の形態に係る制御装置は、図1に示すECT_ECU400により実現される。
【0030】
図1に示すように、この車両は、エンジン100と、トルクコンバータ200と、自動変速機300と、エンジン100をアシストするモータジェネレータ500と、モータジェネレータ500を制御するインバータ600と、エンジン100の駆動力により回転されるオイルポンプ700とから構成される。オイルポンプ700に加えて、電動式のオイルポンプを設けてもよい。
【0031】
エンジン100の出力軸は、模式的に表現されたエンジンイナーシャ110を介してトルクコンバータ200の入力軸に接続される。エンジン100とトルクコンバータ200とは回転軸150により連結されている。したがって、エンジン100の出力軸回転数N(E)とトルクコンバータ200の入力軸回転数N(P)とは同じである。また、エンジン100の出力トルクをT(E)と、トルクコンバータ200への入力トルクをT(P)として表わす。
【0032】
モータジェネレータ500は、エンジン100とトルクコンバータ200とを接続する回転軸150に動力を伝達するように構成される。このモータジェネレータ500は、車両の発進時や加速時に所望の加速度を得るためにモータとして作動してエンジン100をアシストする。また、回生制動時にはジェネレータとして作動して運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する。モータジェネレータ500は、このような車両の発進時、加速時および回生制動時に加えて、フューエルカットの開始時およびフューエルカットからの復帰時にも、モータとして作動して、エンジン100の回転数を制御する。これらの詳細については、後述する。
【0033】
トルクコンバータ200は、ロックアップクラッチ210を含み、ポンプ羽根車220とタービン羽根車230とから構成される。トルクコンバータ200と自動変速機300とは、回転軸250により接続される。トルクコンバータ200の出力軸回転数をN(T)と、トルクコンバータ200の出力トルクをT(T)として表わす。
【0034】
これらのパワートレインを制御するECT_ECU400には、ポンプ回転数N(P)、タービン回転数N(T)、アクセル開度、車速、車両加速度、スロットル開度、AT信号、エンジン冷却水温信号およびシフトポジション信号が入力される。また、ECT_ECU400から、トルクコンバータ200のロックアップクラッチ210に対してロックアップクラッチ係合圧信号が出力される。ECT_ECU400から、自動変速機300に対してAT制御信号が出力される。ECT_ECU400から、インバータ600に対して、モータジェネレータ500をモータとして作動させてエンジン100の回転数を制御する際の出力量やエンジン100のアシストを実現する際のアシスト量などを表わす制御信号や、モータジェネレータ500をジェネレータとして作動させてエンジン100の回転エネルギの回収を実現したり車両の走行エネルギの回収を実現したりする際の回生発電量などを表わす制御信号が出力される。
【0035】
図1において、エンジン100またはエンジン100およびモータジェネレータ500の動力は、ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ200を備えた自動変速機300を介して連結される駆動輪に伝達される。トルクコンバータ200は、エンジン100のクランク軸(トルクコンバータ200の入力軸)150に固定されたポンプ羽根車220と、自動変速機300の入力軸(トルクコンバータ200の出力軸)250に連結されたタービン羽根車230と、それらポンプ羽根車220および入力軸250を直結するロックアップクラッチ210と、ステータ222とを備えている。
【0036】
図2に自動変速機300のスケルトン図を、図3に自動変速機300の作動表を示す。図2に示すスケルトン図および図3に示す作動表によると、摩擦要素であるクラッチ要素(図中のC(0)〜C(2))や、ブレーキ要素(B(0)〜B(4))、ワンウェイクラッチ要素(F(0)〜F(2))が、どのギヤ段の場合に係合および解放されるかを示している。車両の発進時に使用される1速時には、クラッチ要素(C(0)、C(1))、ブレーキ要素(B(4))、ワンウェイクラッチ要素(F(0)、F(2))が係合する。
【0037】
図4を参照して、ECT_ECU400のメモリに記憶されるフューエルカット領域を示すマップについて説明する。このマップは、エンジン冷却水温に対するエンジン100の回転数の関数によりフューエルカット領域を規定する。このマップには、フューエルカットの開始回転数と復帰回転数とが記憶される。車両減速に伴ってフューエルカットが開始されると、図4に示すように、このフューエルカットの開始回転数と復帰回転数とにより規定される範囲にエンジン回転数がある場合に、他の条件を満足するとフューエルカットが実行される。たとえば、エンジン100がアイドル状態のときであって、車両の減速時においてフューエルカットが実行されている場合に、現在のエンジン100の回転数が図4に示すフューエルカットの復帰回転数よりも大きいか否かを判定し、フューエルカットの復帰回転数よりも大きいときには、継続して減速時のフューエルカットを実行し、フューエルカットの復帰回転数以下のときには、減速時のフューエルカットの実行状態から燃料噴射実行状態へと復帰(フューエルカットからの復帰)する。
【0038】
このフューエルカットが実行されているときには、トルクコンバータ200のロックアップクラッチ210をスリップ制御することによって、エンジン100の回転速度が急激に低下しないようにすることにより、フューエルカットが実行されている時間を長く保つことができ、同時にこの間は適度なエンジンブレーキを確保することができる。
【0039】
また、フューエルカットの実行中にアクセルが踏まれて、フューエルカットの実行状態から燃料噴射実行状態へと復帰した後、エンジン100の回転数が上昇したところで、エンジン100がアイドル状態になって、車両が減速状態になった場合に、現在のエンジン100の回転数が図4に示すフューエルカットの開始回転数よりも大きいか否かを判定し、フューエルカットの開始回転数よりも大きいときには、減速時のフューエルカットを再開し、フューエルカットの開始回転数以下のときには、燃料噴射実行状態を継続する。このため、フューエルカットの開始回転数を下げて設定すると、フューエルカットが再開しやすくなる。
【0040】
このように、フューエルカットの開始回転数を下げることは、フューエルカットが実行される場合が多くなるので、本発明においては、このようにして、フューエルカットの開始回転数を下げる場合を、フューエルカットをより多く実行するために、エンジン回転数に基づいて規定されるフューエルカットの範囲を広げるという。なお、フューエルカットの開始回転数は、エンジン100の回転数がその開始回転数以上であれば、エンジン回転数以外の他の条件を満足すると、フューエルカットを開始できることを意味する。
【0041】
ECT_ECU400は、このようなマップをメモリに記憶するとともに、フューエルカットの開始回転数を下げるように演算することができる。また、ECT_ECU400は、フューエルカットの開始回転数が通常であるマップと、フューエルカットの開始回転数が下げられたマップとを記憶しておいてもよい。いずれの場合であっても、ECT_ECU400は、後述するように、フューエルカットの開始時にトルクコンバータ200のロックアップクラッチ210の係合が遅れることによりエンジン100の回転数が低下することを防止するために、モータジェネレータ500をモータとして作動させてエンジン100をトルクアシストすることができる場合には、フューエルカットの開始回転数が下げられたマップを使用して、フューエルカットをより多く実行して、車両の燃費を向上させる。
【0042】
図5を参照して、本実施の形態に係るECT_ECU400で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0043】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECT_ECU400は、車両が減速中であるか否かを判断する。この判断は、ECT_ECU400に入力される車速の時間微分値に基づいて行なわれる。
【0044】
車両が減速中であると(S100にてYES)、処理はS200へ移される。もしそうでないと(S100にてNO)、この処理は終了する。
【0045】
S200にて、ECT_ECU400は、モータ制御が可能であるか否かを判断する。この判断は、モータジェネレータ500によるモータ制御によりトルク制御が可能か否かを判断するものであって、たとえば、バッテリの電力が十分であるか否か、モータ作動しないような故障フラグが立っていないか否かなどに基づいて行なわれる。モータ制御が可能である場合には(S200にてYES)、処理はS300へ移される。もしそうでないと(S200にてNO)、処理はS500へ移される。
【0046】
S300にて、ECT_ECU400は、フューエルカットが可能であるか否かを判断する。この判断は、予め定められたフューエルカットの開始に対するエンジン100の回転数などの条件を満足するか否かに基づいて行なわれる。フューエルカットが可能であると(S300にてYES)、処理はS400へ移される。もしそうでないと(S300にてNO)、処理はS500へ移される。
【0047】
S400にて、ECT_ECU400は、フューエルカット領域として、フューエルカット領域が拡大されたマップ(フューエルカットの開始回転数が下げられたマップ)を設定する。
【0048】
S500にて、ECT_ECU400は、フューエルカット領域として、通常のフューエルカット領域(フューエルカットの開始回転数が下げられていないマップ)を設定する。
【0049】
S600にて、ECT_ECU400は、フューエルカットの開始条件が満足されているか否かを判断する。たとえば、実際のエンジン100の回転数が、フューエルカット開始回転数に達したか否かを判定する。フューエルカット開始条件を満足すると(S600にてYES)、処理はS700へ移される。もしそうでないと(S600にてNO)、処理はS800へ移される。
【0050】
S700にて、ECT_ECU400は、モータトルクによる回転数維持制御を実行する。具体的には、この回転数維持制御は、フューエルカットの開始に先立って、モータジェネレータ500をモータとして作動させて、トルクコンバータ200のロックアップクラッチ210が係合するまでの間、フューエルカットの実行によるエンジン100の回転数の低下を抑制する。すなわち、フューエルカットの実行によって、エンジン100のトルクが低下し、かつトルクコンバータ200のロックアップクラッチ210に係合指示を出力してもその応答性が良好でない場合に、エンジン100が車輪による回転状態にならないのでエンジン100の回転数がすぐに低下する。このとき、回転数維持制御により、エンジン100の回転数がフューエルカット復帰回転数を下回らないように、モータジェネレータ500により、エンジン100の回転数がフューエルカット復帰回転数以上に維持される。
【0051】
S800にて、ECT_ECU400は、フューエルカットの復帰条件を満足したか否かを判断する。たとえば、エンジン100の回転数がフューエルカットの復帰回転数に到達したか否かにより行なわれる。フューエルカット復帰条件を満足すると(S800にてYES)、処理はS900へ移される。もしそうでないと(S800にてNO)、この処理は終了する。
【0052】
S900にて、ECT_ECU400は、モータトルクによるエンジン回転数維持制御を実行する。このエンジン回転数維持制御は、フューエルカットからの復帰時に、エンジン100の回転数が不安定になることを防止するために、モータジェネレータ500をモータとして作動させて、エンジン100の回転数を維持する。
【0053】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る車両の制御装置であるECT_ECU400の動作について説明する。
【0054】
図6を参照して、フューエルカット開始時あるいは実行中にトルクコンバータ200のロックアップクラッチ210の応答性により係合遅れが発生しても、モータジェネレータ500をモータとして作動させてエンジン100に動力を伝達してエンジン100の回転数を維持する動作を説明する。なお、図6に示すように、フューエルカットの開始回転数(1)はフューエルカットの開始回転数(2)に下げられている。このようにフューエルカットの開始回転数を、開始回転数(1)から開始回転数(2)に下げることにより、フューエルカット領域は拡大する。このような場合であっても、フューエルカットの開始時にトルクコンバータ200のロックアップクラッチ210の係合あるいはスリップが遅れてエンジン100が被駆動状態となる場合であっても、エンジン100の回転数の低下が抑制される。
【0055】
ここでは、エンジン100に燃料が噴射されている状態でエンジン回転数NEが上昇し、スロットル開度が全閉状態にされると、スロットル開度が全閉になった状態からトルクコンバータ200のロックアップクラッチ210が完全に係合(オン)あるいはスリップ状態に移行するまで、モータジェネレータ500はエンジン100に動力を伝達する。モータジェネレータ500はモータとしてECT_ECU400により制御される。モータとして作動したモータジェネレータ500による回転数制御がなされ、トルクコンバータ200のロックアップクラッチ210の係合あるいはスリップ状態へ移行するので、エンジン100の回転数が急激に低下して、フューエルカット復帰回転数を下回ることを防止できる。
【0056】
以上のようにして、本実施の形態に係るECT_ECUによると、減速フューエルカットの開始時において、トルクコンバータのロックアップクラッチの係合が遅れても、モータジェネレータをモータとして作動させることにより、エンジンの回転数の低下を抑制して、エンジンの回転数をフューエルカット復帰回転数以上に維持することができる。これにより、フューエルカットの時間を長くすることができ、その結果、車両の燃費が向上する。
【0057】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る制御装置が搭載された車両のパワートレインの構成を示す図である。
【図2】図1に示す自動変速機のスケルトン図である。
【図3】図1に示す自動変速機の作動係合状態を表わす図である。
【図4】フューエルカット領域を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るECT_ECUで実行される処理の制御構造を示すフローチャートである。
【図6】フューエルカットの開始時およびフューエルカットからの復帰時のタイミングチャートを示す図である。
【符号の説明】
100 エンジン、110 エンジンイナーシャ、200 トルクコンバータ、210 ロックアップクラッチ、220 ポンプ羽根車、230 タービン羽根車、300 自動変速機、400 ECT_ECU、500 モータジェネレータ、600 インバータ、700 オイルポンプ。

Claims (8)

  1. エンジンと、前記エンジンに対して動力を伝達する電動機と、ロックアップクラッチを有する流体継手とを搭載した車両の制御装置であって、
    前記車両の減速中に前記ロックアップクラッチをスリップ状態および係合状態のいずれかにさせて、前記エンジンの回転数が所定回転数よりも高い時に前記エンジンへの燃料供給を停止させるフューエルカットを実行するためのフューエルカット実行手段と、
    前記フューエルカット実行手段により前記ロックアップクラッチが解放状態からスリップ状態および係合状態のいずれかに移行するまでの間において、前記電動機によりエンジン回転数の低下を抑制するように、前記電動機を制御するための制御手段とを含む、制御装置。
  2. 前記フューエルカット実行手段は、前記ロックアップクラッチが解放状態から、スリップ状態および係合状態のいずれかへの移行を開始したことに応答して、前記フューエルカットを実行するための手段を含む、請求項1に記載の制御装置。
  3. 前記制御手段は、前記ロックアップクラッチが解放状態から、スリップ状態および係合状態のいずれかへ移行したことに応答して、前記エンジン回転数の低下を抑制する制御を終了するように、前記電動機を制御するための手段を含む、請求項1に記載の制御装置。
  4. 前記制御装置は、
    前記制御手段が前記電動機を制御することにより前記エンジン回転数の低下を抑制することが可能であるか否かを判断するための判断手段と、
    前記判断手段により可能であると判断されるときには、前記所定回転数を低くするように変更するための変更手段とをさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の制御装置。
  5. エンジンと、前記エンジンに対して動力を伝達する電動機と、ロックアップクラッチを有する流体継手とを搭載した車両の制御方法であって、
    前記車両の減速中に前記ロックアップクラッチをスリップ状態および係合状態のいずれかにさせて、前記エンジンの回転数が所定回転数よりも高い時に前記エンジンへの燃料供給を停止させるフューエルカットを実行するフューエルカット実行ステップと、
    前記フューエルカット実行ステップにより前記ロックアップクラッチが解放状態からスリップ状態および係合状態のいずれかに移行するまでの間において、前記電動機によりエンジン回転数の低下を抑制するように、前記電動機を制御する制御ステップとを含む、制御方法。
  6. 前記フューエルカット実行ステップは、前記ロックアップクラッチが解放状態から、スリップ状態および係合状態のいずれかへの移行を開始したことに応答して、前記フューエルカットを実行するステップを含む、請求項5に記載の制御方法。
  7. 前記制御ステップは、前記ロックアップクラッチが解放状態から、スリップ状態および係合状態のいずれかへ移行したことに応答して、前記エンジン回転数を抑制する制御を終了するように、前記電動機を制御するステップを含む、請求項5に記載の制御方法。
  8. 前記制御方法は、
    前記制御ステップにおいて前記電動機を制御することにより前記エンジン回転数の低下を抑制することが可能であるか否かを判断する判断ステップと、
    前記判断ステップにて可能であると判断されるときには、前記所定回転数を低くするように変更する変更ステップとをさらに含む、請求項5〜7のいずれかに記載の制御方法。
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