JP2004189507A - 圧電セラミックスおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】主成分としてMII(MIIはSr、BaおよびCaから選択される元素)、Ln(Lnはランタノイドから選択される少なくとも1種の元素)、Bi、TiならびにOを含有するビスマス層状化合物であり、MIIBi4Ti4O15型結晶を含み、MII中の原子比をSrxBayCazで表したとき、x+y+z=1、0≦x<1、0<y≦0.9、0≦z<1であり、第1副成分としてMnを含有し、第2副成分としてCu、AgおよびSiから選択される少なくとも1種の元素を含有する圧電セラミックス。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レゾネータ、圧力センサ等の分野に幅広く応用可能な圧電セラミックスおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電体は、外部から応力を受けることによって電気分極が変化する圧電効果と、電界を印加することにより歪みを発生する逆圧電効果とを有する材料である。圧電体は、圧力や変形を測定するためのセンサ、レゾネータ、アクチュエータなどに応用されている。
【0003】
現在実用化されている圧電材料の大部分は、正方晶系または菱面体晶系のPZT(PbZrO3−PbTiO3固溶体)系や、正方晶系のPT(PbTiO3)系などのペロブスカイト構造を有する強誘電体が一般的である。そして、これらに様々な副成分を添加することにより、様々な要求特性への対応がはかられている。
【0004】
しかし、PZT系やPT系の圧電材料は、実用的な組成ではキュリー点が300〜350℃程度のものが多い。これに対し現在のはんだ付け工程における処理温度は、通常、230〜250℃なので、キュリー点が300〜350℃程度の圧電材料ははんだ付け工程において特性劣化を生じやすい。しかも、鉛を含まないはんだ(鉛フリーはんだ)が実用化されると、はんだ付け工程における処理温度はさらに高くなる。したがって、圧電材料のキュリー点を高くすることは極めて重要である。
【0005】
また、これら鉛系圧電材料は、低温でも揮発性の極めて高い酸化鉛(PbO)を多量(60〜70質量%程度)に含んでいるため、生態学的な見地および公害防止の面からも好ましくない。具体的には、これら鉛系圧電材料をセラミックスや単結晶として製造する際には、焼成、溶融等の熱処理が不可避であり、工業レベルで考えた場合、揮発性成分である酸化鉛の大気中への揮発、拡散量は極めて多量となる。また、製造段階で放出される酸化鉛は回収可能であるが、工業製品として市場に出された圧電材料に含有される酸化鉛は、現状ではその殆どが回収不能であり、これらが広く環境中に放出された場合、公害の原因となることは避けられない。
【0006】
鉛を全く含有しない圧電材料としては、例えば、正方晶系に属するペロブスカイト構造のBaTiO3がよく知られているが、これはキュリー点が120℃と低いため、実用的ではない。
【0007】
キュリー点を500℃以上にできる圧電体としては、例えばビスマス層状化合物が知られている。しかし、鉛を全く含有しないビスマス層状化合物は、圧電体として重要な特性である電気機械結合係数が小さいという問題がある。さらに、レゾネータに適用する場合に重要となるQmaxが小さいという問題もある。Qmaxとは、位相角の最大値をθmaxとしたときのtanθmaxである。すなわち、Xをリアクタンス、Rをレジスタンスとしたとき、共振周波数と反共振周波数との間におけるQ(=|X|/R)の最大値である。Qmaxが大きいほど発振が安定し、また、低電圧での発振が可能となる。
【0008】
特許文献1(特開2001−192267号公報)には、鉛を全く含有しないビスマス層状化合物のQmaxを向上させる発明が記載されている。同公報に記載された圧電セラミックスは、ビスマス層状化合物としてMIIBi4Ti4O15型結晶(MIIはSr、BaおよびCaの少なくとも1種)を含み、さらにランタノイド酸化物およびMn酸化物を含有する。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−192267号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
圧電セラミックスは、出発原料を混合して仮焼し、得られた仮焼物を成形して焼成することにより製造される。焼成に際しては、十分な圧電特性が得られる焼成温度範囲が広く、かつ、焼成温度の下限が低ければ、焼成温度の変動の影響を受けにくいため量産上きわめて有利であり、かつ、エネルギー消費の点でも有利である。
【0011】
本発明の目的は、鉛を含まず、キュリー点が高く、安定した発振および低電圧での発振が可能な圧電セラミックスを製造する際に、最適焼成温度の下限を下げることにより最適焼成温度範囲を広くすることである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、下記(1)〜(7)の本発明により達成される。
(1) 主成分としてMII(MIIはSr、BaおよびCaから選択される元素)、Ln(Lnはランタノイドから選択される少なくとも1種の元素)、Bi、TiならびにOを含有するビスマス層状化合物であり、MIIBi4Ti4O15型結晶を含み、MII中の原子比をSrxBayCazで表したとき、
x+y+z=1、
0≦x<1、
0<y≦0.9、
0≦z<1
であり、
第1副成分としてMnを含有し、
第2副成分としてCu、AgおよびSiから選択される少なくとも1種の元素を含有する圧電セラミックス。
(2) 第2副成分のCu、AgおよびSiを、それぞれCu2O、Ag2OおよびSiO2に換算してこれらの合計含有量を算出したとき、合計含有量が0.17質量%以下である上記(1)の圧電セラミックス。
(3) Cuが含有される場合、Cu2Oに換算した含有量が0.01質量%以上0.05質量%未満であり、
Agが含有される場合、Ag2Oに換算した含有量が0.07〜0.12質量%であり、
Siが含有される場合、SiO2に換算した含有量が0.02質量%以上0.075質量%未満である上記(1)または(2)の圧電セラミックス。
(4) 厚みすべり振動モードで駆動される圧電デバイスに適用される上記(1)〜(3)のいずれかの圧電セラミックス。
(5) 第1副成分の含有量がMnO換算で1質量%以下である上記(1)〜(4)のいずれかの圧電セラミックス。
(6)
原子比Ln/(Ln+MII)が
0<Ln/(Ln+MII)<0.5
である上記(1)〜(5)のいずれかの圧電セラミックス。
(7) 主成分としてMII(MIIはSr、BaおよびCaから選択される元素)、Ln(Lnはランタノイドから選択される少なくとも1種の元素)、Bi、TiならびにOを含有するビスマス層状化合物であり、MIIBi4Ti4O15型結晶を含み、MII中の原子比をSrxBayCazで表したとき、
x+y+z=1、
0≦x<1、
0<y≦0.9、
0≦z<1
であり、
第1副成分としてMnを含有し、
第2副成分としてSi、CuおよびAgから選択される少なくとも1種の元素を含有する圧電セラミックスを製造するに際し、
成形体を1130℃以下で焼成する工程を設ける圧電セラミックスの製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の圧電セラミックスは、厚みすべり振動モードで駆動される圧電デバイスに適用されることが好ましい。その理由を以下に説明する。
【0014】
本発明者らが、(Sr,Ba,Ca)Bi4Ti4O15系ビスマス層状化合物について研究を重ねた結果、厚み縦基本振動では比較的高いQmaxが得られることが確認できたが、スプリアス振動が多くなり、その結果、安定した発振が不可能となることがわかった。そこで本発明者らは、厚み縦振動の3次高調波で圧電特性を測定した。その結果、スプリアス振動は減少するが、Qmaxが小さくなってしまうことがわかった。さらに本発明者らは、厚みすべり基本振動で圧電特性を測定したところ、スプリアス振動が少なく、かつ、十分に大きなQmaxが得られることがわかった。
【0015】
また、比較的低温で焼成された圧電セラミックスは、厚み縦振動モードで駆動すると高特性が得られにくいが、厚みすべり振動モードで駆動する場合には高特性が得られやすい。
【0016】
本発明の圧電セラミックスは、主成分としてMII(MIIはSr、BaおよびCaから選択される元素)、Bi、TiおよびOを含有するビスマス層状化合物であり、MIIBi4Ti4O15型結晶を含む複合酸化物である。
【0017】
MII中の原子比をSrxBayCazで表したとき、
x+y+z=1、
0≦x<1、
0<y≦0.9、
0≦z<1
である。Baが含まれないと、発振周波数の温度依存性が大きくなる。なお、Ba含有による効果を十分に発揮させるためには、
0.2≦y
であることが好ましい。一方、MIIに占めるBaの比率yが高くなりすぎると、焼成時に圧電セラミックスが溶融しやすくなる。
【0018】
本発明者らの実験によれば、厚みすべり振動を用いる場合には、共振周波数の温度特性が比較的急峻となり、発振周波数の温度依存性が比較的大きくなることがわかった。そこで、さらに実験を重ねた結果、MII中の原子比を以下に示すように最適化することにより、共振周波数の温度特性をかなり平坦にできることがわかった。具体的には、共振周波数の温度特性の平坦化のためには、MII中の原子比を
x/6+0.2≦y≦0.8
で表される範囲内に設定することが好ましい。この範囲は、図1に示す三元組成図中のハッチング領域である。
【0019】
本発明の圧電セラミックスは、Qmax向上のためにランタノイド酸化物を含有する。ランタノイドは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuであり、これらのうちでは、La、Nd、Sm、Gd、Dy、Ho、ErおよびYbの少なくとも1種が好ましく、Laが最も好ましい。ランタノイドをLnで表したとき、圧電セラミックス中における原子比Ln/(Ln+MII)は、好ましくは
0<Ln/(Ln+MII)<0.5
であり、より好ましくは
0.03≦Ln/(Ln+MII)≦0.3
である。Ln/(Ln+MII)が大きすぎると、Qmaxがかえって低くなってしまう。Ln酸化物の添加によるQmaxの向上は、焼結性の向上によると考えられる。
【0020】
本発明の圧電セラミックスは、第1副成分としてMnを含有し、第2副成分として、Si、CuおよびAgから選択される少なくとも1種の元素を含有する。主成分であるLnに加え第1副成分を含有することにより、Qmaxがさらに向上する。また、第2副成分を含有することにより、Qmaxおよび電気機械結合係数k15をほとんど低下させることなく最適焼成温度(十分な圧電特性が得られる焼成温度)の下限を低くすることができ、その結果、最適焼成温度範囲を広くできる。第2成分のうちでは、特にCuが好ましい。
【0021】
第1副成分であるMnの含有量は、MnO換算で好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下である。Mn含有量が多すぎると、絶縁抵抗が低くなって分極処理が困難となる。一方、Mn添加による効果を十分に発揮させるためには、MnはMnOに換算して0.2質量%以上含有されることが好ましく、0.3質量%以上含有される場合、特に効果が高くなる。
【0022】
第2副成分であるCu、AgおよびSiをそれぞれCu2O、Ag2OおよびSiO2に換算してこれらの合計含有量を算出したとき、合計含有量は好ましくは0.17質量%以下である。第2副成分の含有量が多すぎると、Qmaxおよび/またはk15の低下が大きくなる。第2副成分添加による効果を十分に発揮させるためには、各元素ごとに酸化物換算含有量を、
Cu2O :0.01質量%以上0.05質量%未満、特に0.04質量%以下、
Ag2O :0.07〜0.12質量%、好ましくは0.08〜0.1質量%、
SiO2 :0.02質量%以上0.075質量%未満、特に0.05質量%以下
とすることが好ましい。各元素について、含有量が多すぎるとQmaxおよび/またはk15の低下が大きくなり、含有量が少なすぎると、最適焼成温度範囲を広くできるという本発明の効果が不十分となる。
【0023】
本発明の圧電セラミックスは、ビスマス層状化合物であるMIIBi4Ti4O15型結晶を含み、実質的にこの結晶から構成されていることが好ましいが、完全に均質でなくても、例えば異相を含んでいてもよい。この圧電セラミックス中において、LnはMIIBi4Ti4O15型結晶のMIIサイトを主に置換していると考えられるが、一部が他のサイトを置換していてもよく、また、一部が結晶粒界に存在していてもよい。
【0024】
本発明の圧電セラミックスの全体組成は、一般に(MII 1−aLna)Bi4Ti4O15に、第1副成分の酸化物および第2副成分の酸化物が付加されたものとすればよいが、これらから偏倚していてもよい。例えば、Tiに対するMII+Lnの比率や、Tiに対するBiの比率が、化学量論組成から±5%程度ずれていてもよい。例えば、Tiに対するBiの比率をより高くすることで、Qmaxをより高くすることが可能である。また、酸素量も、金属元素の価数や酸素欠陥などに応じて変化し得る。
【0025】
本発明の圧電セラミックスには、不純物ないし微量添加物としてPb酸化物、Cr酸化物、Fe酸化物等が含有されていてもよいが、これらの酸化物の含有量は、PbO、Cr2O3、Fe2O3などの化学量論組成の酸化物に換算してそれぞれ全体の0.5質量%以下であることが好ましく、これらの酸化物の合計でも0.5質量%以下であることがより好ましい。これらの酸化物の含有量が多すぎると、本発明の効果を損なうことがある。なお、本発明の圧電セラミックスにはPbが含まれないことが最も好ましいが、0.5質量%程度の含有量であれば実質的に問題はない。
【0026】
本発明の圧電セラミックスの結晶粒は、紡錘状ないし針状である。その平均結晶粒径は特に限定されないが、長軸方向において、好ましくは1〜10μm、より好ましくは3〜5μmである。
【0027】
本発明の圧電セラミックスのキュリー点は、少なくとも380℃以上とすることができ、430℃以上とすることも容易である。
【0028】
本発明の圧電セラミックスは、レゾネータ、高温用センサ、超音波発生素子等に好適である。
【0029】
製造方法
次に、本発明の圧電セラミックスを製造する方法について説明する。
【0030】
まず、出発原料として、酸化物、または、焼成により酸化物に変わりうる化合物、例えば、炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、硝酸塩等、具体的にはMIICO3、Bi2O3、TiO2、La2O3、副成分の酸化物または水酸化物等の粉末を用意し、これらをボールミル等により湿式混合する。
【0031】
次いで仮焼する。なお、通常、仮焼前に仮成形する。仮焼温度は、好ましくは700〜1000℃、より好ましくは750〜850℃である。仮焼温度が低すぎると、化学反応が十分に終了せず、仮焼が不十分となる。一方、仮焼温度が高すぎると、仮成形体が焼結し始めるため、その後の粉砕が困難となる。仮焼時間は特に限定されないが、通常、1〜3時間とすることが好ましい。
【0032】
得られた仮焼物をスラリー化し、ボールミル等を用いて湿式粉砕する。この粉砕により得られる粉末の平均粒径は特に限定されないが、その後の成形のしやすさを考慮すると、1〜5μm程度とすることが好ましい。
【0033】
湿式粉砕後、仮焼物の粉末を乾燥し、乾燥物に水を少量(4〜8質量%程度)添加した後、100〜400MPa程度の圧力でプレス成形して、成形体を得る。この際、ポリビニルアルコール等のバインダを添加してもよい。
【0034】
次いで、成形体を焼成し、圧電セラミックスを得る。焼成温度は好ましくは1130℃以下とし、焼成時間は好ましくは1〜5時間程度とする。焼成温度が高すぎると、Qmaxおよび電気機械結合係数k15が低くなってしまう。本発明では、第2副成分を添加することにより、最適焼成温度の下限を下げることができ、その結果、最適焼成温度範囲を拡大できる。第2副成分を添加しない場合には、最適焼成温度範囲は10℃程度であるが、第2副成分を添加することにより最適焼成温度範囲が20℃程度以上まで拡大する。なお、焼成温度の具体的な下限値は、圧電セラミックスの組成によっても異なるが、通常、1080℃である。
【0035】
焼成は空気中で行ってもよく、空気中よりも酸素分圧の低い雰囲気や高い雰囲気、あるいは純酸素雰囲気中で行ってもよい。
【0036】
焼成後、分極処理を施す。分極処理の条件は、圧電セラミックスの組成に応じて適宜決定すればよいが、通常、分極温度は150〜250℃、分極時間は1〜30分間、分極電界は抗電界の1.1倍以上とすればよい。
【0037】
【実施例】
以下の手順で、表1〜表3に示す圧電セラミックスサンプルを作製した。
【0038】
主成分の出発原料として、SrCO3、BaCO3、CaCO3、Bi2O3、TiO2、La2O3の各粉末を、第1副成分の出発原料としてMnCO3粉末を、第2副成分の出発原料としてMgCO3、V2O5、Al2O3、In2O3、Tl2O3、GeO2の各粉末を用意し、これらを最終組成が(Sr0.333Ba0.667)0.9La0.1Bi4Ti4O15+副成分酸化物となるように配合し、純水中でジルコニアボールを利用したボールミルにより16時間湿式混合した。最終組成における含有量は、第1副成分のMnがMnO換算で0.31質量%であり、第2副成分については酸化物換算値を表1〜表3に示す。
【0039】
次いで、混合物を十分に乾燥し、仮成形した後、空気中において2時間仮焼した。仮焼温度は800〜1000℃の範囲から選択した。得られた仮焼物を乳鉢で粗粉砕した後、さらに、らいかい機で粉砕した。次いで、ボールミルで16時間微粉砕した後、乾燥した。次いで、バインダとして純水を6質量%加えた後、プレス成形し、平面寸法40mm×40mm、厚さ13mmの仮成形体を得た。この仮成形体を真空パックした後、245MPaの圧力で静水圧プレスにより成形した。
【0040】
得られた成形体を焼成した。焼成は、Biの蒸発を防ぐためにMgO製の密閉容器中で行った。焼成温度は表1〜表3に示す値とし、焼成時間は4時間とした。
【0041】
得られた焼結体から、平面寸法30mm×10mm、厚さ5.5mmのブロックを切り出した後、その上下面にAg電極を塗布し、650℃で10分間熱処理を施して焼き付けた。
【0042】
次いで、250℃のシリコーンオイルバス中において、1.1×EC(MV/m)以上の電界を1分間印加して分極処理を施した。なお、上記ECは、250℃における各焼結体の抗電界である。
【0043】
分極されたブロックから、平面寸法30mm×5.5mm、厚さ0.45mmの板状体を切り出した後、ラップ研磨して厚さを155μmとし、さらに、分極方向が短辺と平行となるように、平面寸法7mm×4.5mmに切り出してチップを得た。このチップの上下面に、厚みすべり振動を評価するためのCu電極を蒸着法により形成した。このCu電極の寸法は、直径1.4mm、厚さ2μmとした。
【0044】
各サンプルについて、ヒューレットパッカード社製インピーダンスアナライザHP4194Aを用い、共振反共振法を利用して厚みすべり振動の基本波モードにおける電気機械結合係数k15を求め、また、厚みすべり振動の基本波モードにおけるQmaxを求めた。なお、k15は、下記式により算出し、Qmaxは前記したQ=|X|/Rにより求めた。結果を表1〜表3に示す。
【0045】
また、表1〜表3に示すサンプルについて、Qmaxが20以上かつk15が15以上となる焼成温度範囲(最適焼成温度範囲)を、表4に示す。なお、Qmaxが20以上であれば、最終デバイスとしたときに、IC駆動電圧である5Vで安定して発振させることが可能である。また、k15が15以上であれば、温度補正のための誘電体と組み合わせて最終デバイスにする際に、十分な補正効果が得られる。
【0046】
【数1】
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
上記各表から、本発明の効果が明らかである。すなわち、第2副成分を所定量含有する本発明サンプルは、第2副成分を含有しない比較サンプルに比べ、Qmaxおよびk15が大きく低下することなく最適焼成温度の下限が低くなっており、その結果、最適焼成温度範囲が拡大している。
【0052】
表1〜表3に示すサンプルのキュリー温度は、すべて382℃以上であった。表1〜表3に示す各サンプルを粉末X線回折法により解析したところ、MIIBi4Ti4O15型結晶の単一相となっていることが確認された。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、鉛を含まない圧電セラミックスにおいて、Qmaxおよび電気機械結合係数k15をほとんど低下させることなく最適焼成温度の下限を低くすることができ、その結果、最適焼成温度範囲を広くできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電セラミックスの好ましい組成範囲を示す三元組成図である。
Claims (7)
- 主成分としてMII(MIIはSr、BaおよびCaから選択される元素)、Ln(Lnはランタノイドから選択される少なくとも1種の元素)、Bi、TiならびにOを含有するビスマス層状化合物であり、MIIBi4Ti4O15型結晶を含み、MII中の原子比をSrxBayCazで表したとき、
x+y+z=1、
0≦x<1、
0<y≦0.9、
0≦z<1
であり、
第1副成分としてMnを含有し、
第2副成分としてCu、AgおよびSiから選択される少なくとも1種の元素を含有する圧電セラミックス。 - 第2副成分のCu、AgおよびSiを、それぞれCu2O、Ag2OおよびSiO2に換算してこれらの合計含有量を算出したとき、合計含有量が0.17質量%以下である請求項1の圧電セラミックス。
- Cuが含有される場合、Cu2Oに換算した含有量が0.01質量%以上0.05質量%未満であり、
Agが含有される場合、Ag2Oに換算した含有量が0.07〜0.12質量%であり、
Siが含有される場合、SiO2に換算した含有量が0.02質量%以上0.075質量%未満である請求項1または2の圧電セラミックス。 - 厚みすべり振動モードで駆動される圧電デバイスに適用される請求項1〜3のいずれかの圧電セラミックス。
- 第1副成分の含有量がMnO換算で1質量%以下である請求項1〜4のいずれかの圧電セラミックス。
- 原子比Ln/(Ln+MII)が
0<Ln/(Ln+MII)<0.5
である請求項1〜5のいずれかの圧電セラミックス。 - 主成分としてMII(MIIはSr、BaおよびCaから選択される元素)、Ln(Lnはランタノイドから選択される少なくとも1種の元素)、Bi、TiならびにOを含有するビスマス層状化合物であり、MIIBi4Ti4O15型結晶を含み、MII中の原子比をSrxBayCazで表したとき、
x+y+z=1、
0≦x<1、
0<y≦0.9、
0≦z<1
であり、
第1副成分としてMnを含有し、
第2副成分としてSi、CuおよびAgから選択される少なくとも1種の元素を含有する圧電セラミックスを製造するに際し、
成形体を1130℃以下で焼成する工程を設ける圧電セラミックスの製造方法。
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JP2010030832A (ja) * | 2008-07-29 | 2010-02-12 | Kyocera Corp | 圧電磁器およびそれを用いた圧電素子 |
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