JP2004188609A - 屋外貼付用ハードコートフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】ガラス製窓やプラスチック製窓の屋外側の外側表面に貼付しうる非常に高度な耐擦傷性と耐候性とを発現し、生産性に優れたハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】透明基材フィルムの一方の面に、活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(a)と紫外線吸収剤を含む活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層及びポリシラザンを含む被覆組成物(B)の硬化物であるシリカ層が順次設けられ、該基材フィルムの反対面に粘着剤層を介して剥離シートが設けられていることを特徴とするハードコートフィルム。
【選択図】図1
【解決手段】透明基材フィルムの一方の面に、活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(a)と紫外線吸収剤を含む活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層及びポリシラザンを含む被覆組成物(B)の硬化物であるシリカ層が順次設けられ、該基材フィルムの反対面に粘着剤層を介して剥離シートが設けられていることを特徴とするハードコートフィルム。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、建造物等のガラス製窓やプラスチック製窓の外側表面に貼着されて使用される、耐磨耗性、耐候性および透明性に著しく優れ、かつ高い生産性を有するハードコートフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガラスや開口部に用いられる透明合成樹脂基材に赤外線遮蔽機能や紫外線遮蔽機能、飛散防止機能等を付与するために各種プラスチックフィルムが貼付される場合が増えてきている。これらのプラスチックフィルムには、通常、耐擦傷性も要求されるため表面にハードコート処理が施されたハードコートフィルムが用いられる。
【0003】
従来のハードコートフィルムでは、耐候性が不充分であったため、ウインドウフィルムは、一般に窓ガラスなどの内側表面に貼付されている。一方、フィルムを貼付する場合の作業性や、飛び石等に対する耐衝撃性付与の観点等から屋外側の外側表面に貼付しうる耐候性に優れたハードコートフィルムが強く求められている。
【0004】
このようなハードコートフィルムとして、例えば特許文献1には、透明基材フィルムの表面に紫外線遮蔽層およびシロキサン結合をもつケイ素化合物を含有するハードコート層が順次設けられたハードコートフィルムが記載されている。しかし、前記公報に記載されたハードコートフィルムは、屋外側に貼着して長期間使用する場合に要求される耐候性や耐擦傷性を充分満足しうるものではない。特に基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを使用する場合には耐候性能が特に問題となる。また、シロキサン結合をもつケイ素化合物を含有するハードコート層として、無機シリカ系化合物を主成分として含有する層が具体的に記載されているが、当該無機シリカ系化合物としてはテトラアルコキシシランの加水分解物が例示されているのみであり、テトラアルコキシシランを原料としてシリカを形成する場合には比較的長時間の加熱が必要とされるために生産性に問題がある。
【0005】
特許文献2には、複数の樹脂フィルムを積層してなる多層基材の一方の面にシリコーン系ハードコート層が設けられたハードコートフィルムが記載されている。しかしながら、当該ハードコートフィルムは、依然として耐擦傷性を充分満足しうるものではなく、また生産性にも問題がある。
【0006】
特許文献3は本願の先願であり、その明細書には、ガラス表面に貼るための粘着剤層と、該粘着剤層を介して貼着される樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの表面に設けられるハードコート層とを備え、前記粘着剤層および前記ハードコート層が紫外線吸収剤を含有することを特徴とする保護フィルムが記載されている。しかし、前記ハードコート層の最外層がポリシラザンを含有する被覆組成物の硬化物、すなわちシリカ層である場合の具体的例については記載されていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−309813号公報(特許請求の範囲、6頁5行〜12行)
【特許文献2】
特開2002−36441号公報(特許請求の範囲、5頁25行〜6頁9行)
【特許文献3】
特願2002−17484号(特許請求の範囲、段落0048)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる点に鑑み、ガラス製窓等の外側表面貼付用としての実用に耐えうる高い耐候性、耐擦傷性を有し、かつ高い生産性を有するハードコートフィルムを提供することをその目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の手段を提供するものである。
(1)透明基材フィルムの一方の面に、活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(a)と紫外線吸収剤を含む活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層およびポリシラザンを含む被覆組成物(B)の硬化物であるシリカ層が順次設けられ、該基材フィルムの反対面に粘着剤層を介して剥離シートが設けられていることを特徴とするガラス製窓またはプラスチック製窓の外側表面貼付用ハードコートフィルム。
(2)透明基材フィルムが同一または異種の複数の樹脂フィルムを積層してなる多層フィルムである、(1)に記載のハードコートフィルム。
【0010】
本発明のハードコートフィルムは、活性エネルギ線硬化性被覆組成物の硬化物の層およびポリシラザンを含む被覆組成物の硬化物であるシリカ層からなるハードコート層を有しており、シリカの被膜である最外層が相対的に柔らかい基材フィルムに直接積層されているのではなく、耐磨耗性の高い硬い硬化物内層上に積層されている。このためフィルムに対して傷を付けようとして加えられた外力による最外層の変位が小さくなることで、通常の無機質被膜が与える以上の耐擦傷性が得られる。
【0011】
本発明のハードコートフィルムは、基材フィルムの表面に紫外線吸収剤を含有するハードコート層を有するので耐候性に優れており、ガラス製窓やプラスチック製窓の屋外側に貼って長期間使用できる。
【0012】
本発明のハードコートフィルムは、最外層にポリシラザンを含む被覆組成物(B)の硬化物であるシリカ層が設けられているが、基材フィルムを長時間高温下に曝すことなく、ポリシラザンを紫外線の照射により短時間で硬化させ緻密なシリカ層を得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のハードコートフィルムに用いられる透明基材フィルムとしては、特に制限はなく、様々なプラスチックフィルムの中から、状況に応じて適宜選択して用いることができる。このプラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエチレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂などからなるフィルムが挙げられる。これらの中でも本発明においては、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂からなるフィルムが好ましく用いられる。また、樹脂は単一の組成でもよく、複数の樹脂をブレンドしたものでもよい。樹脂フィルムの厚さは適宜選択できるが、通常、25〜200μmが好ましい。
【0014】
透明基材フィルムは上記プラスチックフィルムからなる単層のフィルムでも、上記プラスチックフィルムを同一または異種積層してなる多層フィルムであってもよい。
【0015】
特に被覆組成物(A)の硬化物の層と直接接するプラスチックフィルムがポリカーボネート系樹脂からなる場合には、ハードコートフィルムの充分な機械的強度を確保する意味で透明基材フィルムは多層フィルムであることが好ましい。
【0016】
多層フィルムのフィルム一層当りの膜厚は、一般的には10〜200μm、さらに好ましくは50〜150μm程度が好適である。また、この多層フィルムを構成する各フィルムは、所望により着色または蒸着されていてもよく、また紫外線吸収剤や光安定剤を含んでいてもよい。フィルムの積層は、種々の汎用手段で行われ、たとえば接着剤あるいは粘着剤を用いた積層であってもよく、また接着剤等を用いないドライラミネーションであってもよく、さらにこれらを組合せてもよい。また、一方のフィルムの上に、他方のフィルムを形成する液状物質を塗布した後、液状物質を硬化させることで多層フィルムを得ることもできる。
【0017】
ここで単層フィルムまたは多層フィルムの全厚は、特に制限はないが、通常は500μm以下、好ましくは100〜200μmの範囲である。
【0018】
なお、透明基材フィルムと活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層との密着性を高めるために、透明基材フィルムの表面処理や下塗り処理を行うことが好ましい。表面処理としては、たとえばコロナ放電処理、プラズマ(グロー放電)処理、高周波スパッタエッチング処理、アルカリ溶液処理などの公知の方法を採用できる。また、下塗り処理としては、たとえば、ウレタン系エマルション、ポリエステル系エマルションなどの易接着剤を塗布すればよい。透明基材フィルムと活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層との間には必要であれば熱可塑性アクリル樹脂などの他の合成樹脂からなる第3の層が存在していてもよい。
【0019】
次に、透明基材フィルムの表面に形成される活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層について説明する。なお、活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層は、1層の硬化物層で構成されていてもよく、種類の異なる2層以上の硬化物から構成されていてもよい。
【0020】
活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層はポリシラザンの硬化物であるシリカ層と高い密着性を有する。また、透明基材フィルムとも高い密着性を有する。この活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層と透明基材フィルムとの間に第3の層が存在する場合、その層は両者に対し充分な密着性を有することが好ましい。さらにこの活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層は充分な耐擦傷性を有する。
【0021】
本発明において、被覆組成物(A)としては、紫外線吸収剤を含有し、硬化性成分として活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(a)(以下、単に多官能性化合物(a)という。)を含む被覆組成物を用いることが好ましい。なお、以下の説明において、アクリロイル基およびメタクリロイル基を総称して(メタ)アクリロイル基といい、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートなどの表現も同様とする。
【0022】
本発明における多官能性化合物(a)としては、たとえば特開平11−240103号公報の段落番号0016〜0020、0023〜0047に記載された化合物が挙げられる。
【0023】
好ましい多官能性化合物(a)としては、(メタ)アクリロイル基から選ばれる1種以上の重合性官能基を2個以上(特には2〜50個が好ましく、さらには3〜30個が好ましい。)有する化合物が挙げられる。なかでも(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する化合物、すなわち多価アルコールなどの2個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるポリエステルが好ましい。また、上記重合性官能基以外に種々の官能基や結合を有する化合物であってもよい。特に、ウレタン結合を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物(以下、アクリルウレタンという。)と、ウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。
【0024】
上記アクリルウレタンとしては、ペンタエリスリトールやその多量体であるポリペンタエリスリトール、ポリイソシアネートおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの反応生成物であるアクリルウレタンであり、かつ活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を3個以上(より好ましくは4〜20個)有する多官能性化合物、ペンタエリスリトールやポリペンタエリスリトールの水酸基含有ポリ(メタ)アクリレートと、ポリイソシアネートとの反応生成物であるアクリルウレタンであり、かつ活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を3個以上(より好ましくは4〜20個)有する多官能性化合物が挙げられる。
【0025】
また、ウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、ペンタエリスリトール系ポリ(メタ)アクリレートまたはイソシアヌレート系ポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、ペンタエリスリトール系ポリ(メタ)アクリレートとは、ペンタエリスリトールまたはポリペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸とのポリエステル(好ましくは活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を4〜20個有する)をいう。
【0026】
また、イソシアヌレート系ポリ(メタ)アクリレートとは、トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートまたはトリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートの1モルに、1〜6モルのカプロラクトンまたはアルキレンオキシドを付加して得られる化合物と、(メタ)アクリル酸とのポリエステル(好ましくは活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を2〜3個有する)をいう。
【0027】
本発明においては、上記の好ましい多官能性化合物と、他の活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(特に多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート)とを併用してもよい。
【0028】
被覆組成物(A)において多官能性化合物(a)とともに、活性エネルギ線によって重合しうる重合性官能基を1個有する単官能性化合物が含まれていてもよい。なお、単官能性とは活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を1個有することを意味し、重合性官能基以外の官能基を有していてもよい。この単官能性化合物としては(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、特にアクリロイル基を有する化合物が好ましい。
【0029】
被覆組成物(A)においてこの単官能性化合物を使用する場合、多官能性化合物(a)とこの単官能性化合物との合計に対するこの単官能性化合物の割合は、特に限定されないが0〜60質量%が適当である。単官能性化合物の割合が多すぎると硬化塗膜の硬さが低下し耐磨耗性が不充分となるおそれがある。多官能性化合物(a)とこの単官能性化合物との合計に対する単官能性化合物のより好ましい割合は0〜30質量%である。
【0030】
多官能性化合物(a)とともに使用できる単官能性化合物としては、たとえば分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。そのような単官能性化合物は、水酸基、エポキシ基などの官能基を有していてもよい。好ましい単官能性化合物は(メタ)アクリル酸エステル、すなわち(メタ)アクリレートである。
【0031】
具体的な単官能性化合物としてはたとえば以下の化合物がある。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物。
【0032】
被覆組成物(A)には、更に必須成分として紫外線吸収剤を含有する。紫外線吸収剤としては合成樹脂用紫外線吸収剤として通常使用されているようなベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、フェニルトリアジン系紫外線吸収剤などが好ましい。
【0033】
具体的化合物としては、たとえば以下に示すような化合物が挙げられる。2−[4−(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、オクチル−3−{3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル}プロピオネート、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2−{2−ヒドロキシ−5−(2−アクリロイルオキシエチル)フェニル}ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル−3−(3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロピオネート。
【0034】
なお、被覆組成物(A)が多官能性化合物(a)を含有する組成物であることから、上記した具体的化合物中、2−{2−ヒドロキシ−5−(2−アクリロイルオキシエチル)フェニル}ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル−3−(3−ベンゾトリアゾール−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロピオネートなど分子内に光重合性の官能基を持つものが特に好ましい。
【0035】
活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)における紫外線吸収剤の添加量は、通常は上記活性エネルギ線硬化性成分100質量部に対して0.1〜50質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。紫外線吸収剤の使用量が少な過ぎると充分な耐候性を発現できず、樹脂フィルムの着色が生じやすくなる。一方、紫外線吸収剤の使用量が多過ぎると紫外線吸収剤がブリードアウトしやすくなり、さらには活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)を充分に硬化できない場合がある。
【0036】
活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)は、上記基本的成分の他に、溶剤や種々の機能性配合剤を含むことができる。
【0037】
溶剤は通常必須の成分であり、多官能性化合物(a)が特に低粘度の液体でない限り溶剤が使用される。溶剤としては、多官能性化合物(a)を硬化成分とする被覆用組成物に通常使用される溶剤を使用できる。さらに基材フィルムの種類により適切な溶剤を選択して用いることが好ましい。
【0038】
被覆組成物(A)における溶剤の含有割合は、必要とする組成物の粘度、目的とする硬化被膜の厚さ、乾燥温度条件などにより適宜変更できる。通常は被覆組成物(A)中の硬化性成分に対して100倍質量以下、好ましくは0.1〜50倍質量用いる。
【0039】
上記溶剤としては、低級アルコール類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類、酢酸n−ブチル、ジエチレングリコールモノアセテートなどのエステル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類等が好ましいが、なかでも、耐溶剤性の低い芳香族ポリカーボネート樹脂の被覆には低級アルコール類、セロソルブ類、エステル類、それらの混合物などが適当である。
【0040】
本発明においては、多官能性化合物(a)を活性エネルギ線(特に紫外線)で効率よく硬化させるために、通常被覆組成物(A)は光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、公知のものを使用でき、入手容易な市販のものを使用できる。透明硬化物層において複数の光重合開始剤を使用してもよい。
【0041】
光重合開始剤としては、具体的にはアリールケトン系光重合開始剤(例えばアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシロキシムエステル類等)、含硫黄系光重合開始剤(例えばスルフィド類、チオキサントン類等)、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、ジアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤等が使用できる。
【0042】
さらに具体的には、特開平11−240103号公報の段落番号0081〜0085に記載された化合物が挙げられる。なかでも、本発明においては、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤が好ましい。また、光重合開始剤はアミン類などの光増感剤と組み合わせて使用することもできる。
【0043】
被覆組成物(A)における光重合開始剤の量は、硬化性成分(多官能性化合物(a)と単官能性化合物の合計)100質量部に対して0.01〜20質量部とするのが好ましく、特には0.1〜10質量部とするのが好ましい。
【0044】
被覆組成物(A)には、必要に応じて、光安定剤、酸化防止剤、熱重合防止剤などの安定剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、顔料、分散剤、帯電防止剤、防曇剤などの界面活性剤類、酸、アルカリおよび塩類などから選ばれる硬化触媒等を適宜配合して用いてもよい。
【0045】
被覆組成物(A)には、耐候性を考慮し、特に光安定剤を配合することが好ましい。光安定剤としては合成樹脂用光安定剤として通常使用されているようなヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。光安定剤の具体例としては以下のような化合物がある。N−メチル−4−メタクリロイロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート。
【0046】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、トリフェニルホスファイト等のリン系酸化防止剤等を使用できる。レベリング剤としては、シリコーン樹脂系レベリング剤、アクリル樹脂系レベリング剤等を使用できる。消泡剤としては、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン樹脂系消泡剤等を使用できる。増粘剤としては、ポリメチルメタクリレート系ポリマー、水添ひまし油系化合物、脂肪酸アミド系化合物等を使用できる。
【0047】
このような被覆組成物(A)を硬化させる活性エネルギ線としては特に紫外線が好ましい。しかし、紫外線に限定されず、電子線やその他の活性エネルギ線を使用できる。紫外線源としてはキセノンランプ、パルスキセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等が使用できる。
【0048】
被覆組成物(A)を用いて形成される硬化物の層の厚さは1〜50μmであることが好ましい。この層厚が50μm超では、活性エネルギ線による硬化が不充分になり透明基材フィルムとの密着性が損なわれやすく好ましくない。また、1μm未満では、この層の耐摩耗性が不充分となるおそれがあり、またこの層の上のシリカ層の耐摩耗性や耐擦傷性が充分発現できないおそれがある。より好ましい層厚は2〜30μmである。
【0049】
次にポリシラザンを含む被覆組成物(B)の硬化物であるシリカ層について説明する。
【0050】
被覆剤組成物(B)は、ポリシラザンのみからなるかまたはポリシラザンを含む硬化性の組成物からなる。被覆剤組成物(B)は、ポリシラザン以外に溶剤、触媒、その他の添加剤を含む硬化性の組成物であってもよい。
【0051】
ポリシラザンは、(−Si−N−)の繰り返し単位を2以上有する重合体であり、この化学式においてケイ素原子(4価)の残りの2つの結合手、窒素原子(3価)の残りの1つの結合手には、それぞれ水素原子または有機基(アルキル基など)が結合している。また、上記繰り返し単位のみからなる線状構造の重合体ばかりでなく、上記ケイ素原子の残りの2つの結合手の一方または両方と上記窒素原子の結合手とが結合して環状構造が形成されていてもよい。重合体は環状構造のみの繰り返しからなっていてもよく、一部に環状構造を有する線状の重合体であってもよい。
【0052】
これらポリシラザンについては、例えば特開平9−31333号公報やそこで引用されている文献に記載されているようなポリシラザンがあり、そのようなポリシラザンを本発明におけるポリシラザンとして使用できる。また、特開平9−31333号公報やそこで引用されている文献に記載されているような変性ポリシラザンもまた本発明におけるポリシラザンとして使用できる。
【0053】
ポリシラザンは酸素存在下で分解し窒素原子が酸素原子に置換してシリカが形成される。ポリシラザンから形成されるシリカは加水分解性シラン化合物から形成されるシリカに比較してより緻密なシリカが形成される。たとえば、ペルヒドロポリシラザンから形成されたシリカは、4官能性の加水分解性シラン化合物(たとえばテトラアルコキシシラン)から形成されたシリカに比較してより緻密であり耐摩耗性等の表面特性が優れている。
【0054】
ポリシラザンとしては実質的に有機基を含まないポリシラザン(ペルヒドロポリシラザン)、アルコキシ基などの加水分解性基がケイ素原子に結合したポリシラザン、ケイ素原子や窒素原子にアルキル基などの有機基が結合しているポリシラザンなどがある。このようなポリシラザンはケイ素原子に加水分解性基を有している場合は硬化の際の加水分解反応により実質的に有機基を含まないシリカが形成される。特にペルヒドロポリシラザンはその焼成温度の低さおよび焼成後の硬化被膜の緻密さの点で好ましい。
【0055】
なお、ペルヒドロポリシラザンが充分に硬化した硬化物は窒素原子をほとんど含まないシリカとなる。また、ケイ素原子の一部または全部にアルキル基などの有機基が結合しているポリシラザンの場合は、それから形成される有機基を含むシリカがペルヒドロポリシラザンから形成されるシリカに比較して耐摩耗性等の表面特性が劣ることはあっても、より強靭な硬化被膜が得られまた厚膜化が可能であるので、目的によってはペルヒドロポリシラザンよりも好ましい。
【0056】
ケイ素原子に結合した有機基を有するポリシラザンの場合、その有機基としては炭化水素基やハロゲン化炭化水素基が好ましく、特にアルキル基などの炭化水素基が好ましい。これら有機基の炭素数は、特に限定されずたとえば20以下のものであればよいが、少ないことが好ましく、4以下が特に好ましい。また、有機基が長鎖ポリフルオロアルキル基であるポリシラザンも好ましい。長鎖ポリフルオロアルキル基含有ポリシラザンの硬化物はその表面に長鎖ポリフルオロアルキル基が存在することにより、表面に撥水性、非付着性等の特性を有する。長鎖ポリフルオロアルキル基としては、炭素数4〜16の直鎖状ペルフルオロアルキル基を有する炭素数2〜4のポリメチレン基が好ましい。
【0057】
ポリシラザンは、鎖状、環状もしくは架橋構造を有する重合体、または分子内にこれらの複数の構造の混合物からなる。また、ポリシラザンの分子量は数平均分子量で200〜50000であるのが好ましい。数平均分子量が200未満では焼成しても均一な硬化被膜が得られにくく、50000超では溶剤に溶解しがたくなり、また被覆組成物(B)が粘稠になるおそれがあることより、好ましくない。
【0058】
被覆組成物(B)は、ポリシラザンの他、以下の溶剤や機能性配合剤を含有していてもよい。溶剤としては、炭化水素類、ハロゲン化水素類、エーテル類、エステル類、ケトン類等が使用できるが、特には、キシレンまたはジブチルエーテルが好ましい。溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度を調節するために、複数の種類の溶剤を混合して用いてもよい。被覆組成物(B)における溶剤の含有割合は、採用される塗布方法およびポリシラザンの構造や平均分子量などによって異なるが、被覆組成物(B)の固形分濃度が0.5〜80質量%となるように溶剤を添加して調製するのが好ましい。
【0059】
機能性配合剤としては、帯電防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤などの安定剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、顔料、分散剤、シランカップリング等の密着性付与剤を適宜配合して用いてもよい。
【0060】
被覆組成物(B)を用いて形成される硬化物の層の厚さは0.05〜10μmであることが好ましい。この最外層の層厚が10μm超では、耐擦傷性等の表面特性のそれ以上の向上が期待できないうえ、層が脆くなり被覆成形品のわずかな変形によってもこの層にクラック等が生じやすくなる。また、0.05μm未満では、このハードコート層表面の耐擦傷性が充分発現できないおそれがある。より好ましい層厚は0.1〜3μmである。
【0061】
被覆組成物(B)の硬化物からなる層はJIS R3212における耐摩耗性試験による試験回数500回後の曇価(摩耗試験後の曇価と摩耗試験前の曇価との差)が5%未満の耐摩耗性を有することが好ましい。当該層の耐摩耗性は試験回数500回後の曇価が4.5%以下であることがより好ましく、4%以下であることが特に好ましい。
【0062】
上記のような2種類の被覆組成物(A)、(B)を用いて形成される2層のハードコート層を形成する方法としては特開平11−240103号公報の段落番号0115〜0125に記載の被覆手法を採用できる。
【0063】
本発明においては、上記ハードコート層が形成された透明基材フィルムの反対面に粘着剤層を介して剥離シートが設けられている。
【0064】
粘着剤層を形成する粘着剤としては粘着テープやシール等に使用されている公知の粘着剤を使用しうる。たとえば天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系、ポリビニルエーテル系、ウレタン系、シリコーン系等が挙げられる。これら粘着剤は、1種単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
【0065】
粘着剤には、さらに必要に応じて粘着付与剤、充填剤、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤等を配合することができる。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。充填剤としては、亜鉛華、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。軟化剤としては、プロセスオイル、液状ゴム、可塑剤等が挙げられる。酸化防止剤としては、アニリド系、フェノール系、チオエステル系が挙げられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等が挙げられ、架橋剤としては、エポキシ系、イソシアナート系、金属キレート系等が挙げられる。
【0066】
この粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜50μmの範囲である。また、この粘着剤層の上に設けられる剥離シートとしては、例えばグラシン紙、コート紙、ラミネート紙などの紙および各種プラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗付したものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0067】
本発明のハードコートフィルムは、特にガラス製窓やプラスチック製窓などの外側表面貼付用として好適に用いられる。使用する場合は、剥離シートを剥がし、粘着剤層面が対象物に接するようにして貼付すればよい。また、必要であれば、本発明のハードコートフィルムの硬化物の層以外の任意の層に着色・印刷を施したり、熱線遮断機能等の付与をすることができる。
【0068】
【実施例】
以下、本発明を実施例(例1〜3)、比較例(例4)に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0069】
なお、各例においては、以下の粘着剤層形成のための粘着剤溶液および粘着剤層を積層した剥離シートを用いた。
【0070】
<粘着剤層形成のための粘着剤溶液の作製>
ブチルアクリレート/アクリル酸=96/4(モル比)のモノマー組成からなる共重合体であって、質量平均分子量50万のアクリル酸系樹脂を固形成分とする、固形分25質量%のトルエン溶液99.7質量部に、架橋成分として0.3質量部のヘキサメチレンジイソシアネートの3量体を3質量部のt−ブタノールに溶解して加え、充分撹拌混合して粘着剤溶液を調製した。
【0071】
<粘着剤層を積層した剥離シートの作製>
シリコーン剥離処理を施した厚さ38μmのポリエステルフィルムに上記粘着剤溶液をブレードコーターを用いて塗工して100℃で3分間オーブン加熱乾燥し、厚さ20μmの粘着剤層を積層した剥離シートを得た。
【0072】
<活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の成分>
活性エネルギ線硬化性成分、紫外線吸収剤、光重合開始剤、光安定剤として、以下に示すものを用いた。
(1)活性エネルギ線硬化性成分
a−1:水酸基を有するジペンタエリスリトールポリアクリレートと部分ヌレート化ヘキサメチレンジイソシアネートの反応生成物であるウレタンアクリレート(1分子あたり平均15個のアクリロイル基を含有)、
a−2:カプロラクトン変性トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート(東亞合成社製アロニクスM−325)、
a−3:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。
【0073】
(2)紫外線吸収剤
2−[4−(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン。
【0074】
(3)光重合開始剤
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド。
【0075】
(4)光安定剤
N−メチル−4−メタクリロイロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン。
【0076】
<ハードコートフィルムの作製>
[例1]
撹拌機および冷却管を装着した200mLの4つ口フラスコに、イソプロピルアルコール7.0g、酢酸ブチル28.0g、光重合開始剤0.33g、紫外線吸収剤1.0g、PMMA樹脂2.0gおよび光安定剤0.44gを加え溶解させ、続いて活性エネルギ線硬化性成分(a−1)10.0gと、活性エネルギ線硬化性成分(a−2)10.0gを加え常温で1時間撹拌して被覆組成物(A−1)を得た。
【0077】
ポリカーボネートフィルム(100mm角、厚さ100μm、商品名「レキサン」、SPパシフィック社製)の上にダイコート法により被覆組成物(A−1)を連続塗工(ウェット厚み15μm)して、130℃の熱風循環オーブン中で2分間保持し溶剤を除去した後、これを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて100mJ/cm2(波長300〜390nm領域の紫外線積算エネルギ量、以下同様)の紫外線を照射し、膜厚6μmの部分硬化した硬化物層を形成した。
【0078】
次に、この表面にさらにペルヒドロポリシラザンのキシレン溶液(固形分20質量%、ペルヒドロポリシラザンの数平均分子量700、クラリアントジャパン株式会社製 商品名「V110」。以下、被覆組成物(B−1)という。)をダイコート法を用いて連続塗工(ウェット厚さ4μm)して、130℃の熱風循環オーブン中で3分間保持し溶剤を除去した。その後、これを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射し、被覆組成物(A−1)の部分硬化した硬化物層を完全硬化させると共に、被覆組成物(B−1)の硬化を促進し、膜厚6.8μmの硬化物層を形成し、積層体1を得た。
【0079】
そして、積層体1の硬化物層と反対側の面に、上記粘着剤層を積層した剥離シートの粘着剤層を貼り合わせて、図1のハードコートフィルムを作製した。
【0080】
[例2]
ポリカーボネートフィルム(100mm角、厚さ50μm、商品名「レキサン」、GE製)に、上記粘着剤溶液をブレードコーターを用いて塗工し、100℃で3分間オーブン加熱乾燥し、厚さ20μmの粘着剤層を形成し、当該粘着剤層を前記積層体1の硬化物層と反対側の面に貼り合わせ、積層体2を得た。
【0081】
そして、積層体2の硬化物層と反対側の面に、上記粘着剤層を積層した剥離シートの粘着剤層を貼り合わせて、図2のハードコートフィルムを作製した。
【0082】
[例3]
撹拌機および冷却管を装着した200mLの4つ口フラスコに、イソプロピルアルコール7.0g、酢酸ブチル28.0g、光重合開始剤0.33g、紫外線吸収剤1.0g、PMMA樹脂2.0gおよび光安定剤0.44gを加え溶解させ、続いて活性エネルギ線硬化性成分(a−3)20.0gを加え常温で1時間撹拌して被覆組成物(A−2)を得た。
【0083】
そして、ポリカーボネートフィルム(100mm角、厚さ100μm、商品名「レキサン」、SPパシフィック社製)の上にダイコート法により被覆組成物(A−2)を連続塗工(ウェット厚み15μm)して、130℃の熱風循環オーブン中で2分間保持し溶剤を除去した。その後、これを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて100mJ/cm2の紫外線を照射し、膜厚6μmの部分硬化した硬化物層を形成した。
【0084】
次に、この表面にさらにペルヒドロポリシラザンのキシレン溶液(固形分20質量%、ペルヒドロポリシラザンの数平均分子量1000、クラリアントジャパン株式会社製 商品名「L110」。以下、被覆組成物(B−2)という。)をダイコート法を用いて連続塗工(ウェット厚さ4μm)して、130℃の熱風循環オーブン中で3分間保持し溶剤を除去した。その後、これを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射し、被覆組成物(A−2)の部分硬化物を完全硬化させると共に、被覆組成物(B−2)の硬化を促進し、膜厚6.8μmの硬化物層を形成し、積層体3を得た。
【0085】
一方、ポリエチレンテレフタレートフィルム(100mm角、厚さ50μm、東洋紡績(株)製A4300)に、上記粘着剤溶液をブレードコーターを用いて塗工して100℃で3分間オーブン加熱乾燥し、厚さ20μmの粘着剤層を形成し、当該粘着剤層を前記積層体3の硬化物層と反対側の面に貼り合わせ、積層体4を得た。
【0086】
さらに、別のポリカーボネートフィルム(100mm角、厚さ50μm、商品名「レキサン」、GE社製)に、上記粘着剤溶液をブレードコーターを用いて塗工して100℃で3分間オーブン加熱乾燥し、厚さ20μmの粘着剤層を形成し、当該粘着剤層を前記積層体4の硬化物層と反対側の面に貼り合わせ、積層体5を得た。
【0087】
そして、積層体5の硬化物層と反対側の面に、上記粘着剤層を積層した剥離シートの粘着剤層を貼り合わせて、図3のハードコートフィルムを作製した。
【0088】
[例4]
ポリカーボネートフィルム(100mm角、厚さ100μm、商品名「レキサン」、SPパシフィック社製)の上に乾燥膜厚が6μmになるようにダイコート法により紫外線吸収剤含有アクリル樹脂(日本ダクロシャムロック製ソルガードプライマー85B−2)を塗工し、100℃で1分間乾燥し、プライマー層を設けた。次に、シリコーン系ハードコート剤(日本ダクロシャムロック製ソルガードNP−730)を塗工した。120℃で60分間保持することにより、最外層を完全に硬化させ、積層体6を得た。
【0089】
別に、ポリカーボネートフィルム(100mm角、厚さ50μm、商品名「レキサン」、GE社製)に、上記粘着剤溶液をブレードコーターを用いて塗工して100℃で3分間オーブン加熱乾燥し、厚さ20μmの粘着剤層を形成し、当該粘着剤層を前記積層体6の硬化物層と反対側の面に貼り合わせ、積層体7を得た。
【0090】
そして、積層体7の硬化物層と反対側の面に、上記粘着剤層を積層した剥離シートの粘着剤層を貼り合わせて、図4のハードコートフィルムを作製した。
【0091】
上記の各例で得られたハードコートフィルムを用いて各種物性の測定および評価を以下に示す方法で行った。その結果を表1に示した。
【0092】
[初期曇価]
上記の各例で得られたハードコートフィルムの粘着剤層から剥離シートを剥がし、ソーダライムガラス板(100mm角、厚さ6mm)に貼り合わせた後、0.1MPaの圧力で全体を押えつけて試験サンプルを作製した(以下、試験サンプルという。)。試験サンプルについて、4ヵ所の曇価(%)をヘーズメータで測定し、その平均値を算出した。
【0093】
[耐磨耗性]
上記試験サンプルについて、JIS−R3212における耐磨耗試験法により、2つのCS−10F磨耗輪にそれぞれ500gの重りを組み合わせ500回転させたときの曇価をヘーズメータにて測定した。曇価の測定は磨耗サイクル軌道の4カ所で行い、平均値を算出した。耐磨耗性としては、(磨耗試験後曇価)−(磨耗試験前曇価)(%)の値を示す。
【0094】
[密着性]
上記試験サンプルに剃刀の刃で1mm間隔で縦横それぞれ11本の切れ目を付け、100個の碁盤目を作った。そして、市販のセロハンテープをよく密着させた後、90度手前方向に急激にはがした際の、被膜が剥離せずに残存した碁盤目の数(個)を表した。
【0095】
[耐候性]
上記試験サンプルについて、サンシャインウエザーメータを用いてブラックパネル温度63℃で、降雨12分、乾燥48分のサイクルで、1500時間硬化物層面を暴露後、上記密着性および外観の評価を行った。
【0096】
[引裂強度]
ハードコートフィルムの剥離シートを剥がしたものについて、ASTM D−1044に準じて引裂強度を測定した。
【0097】
【表1】
【0098】
【発明の効果】
本発明のハードコートフィルムは、ガラス製窓やプラスチック製窓の屋外側の外側表面に貼付しうる優れた耐擦傷性と耐候性を有するものであり、連続塗工も可能な高い生産性をも兼ね備えたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】例1で作製したハードコートフィルムの断面模式図である。
【図2】例2で作製したハードコートフィルムの断面模式図である。
【図3】例3で作製したハードコートフィルムの断面模式図である。
【図4】例4で作製したハードコートフィルムの断面模式図である。
【符号の説明】
PC:ポリカーボネート
PET:ポリエチレンテレフタレート
1:積層体1
2:積層体2
3:積層体3
4:積層体4
5:積層体5
6:積層体6
7:積層体7
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車、建造物等のガラス製窓やプラスチック製窓の外側表面に貼着されて使用される、耐磨耗性、耐候性および透明性に著しく優れ、かつ高い生産性を有するハードコートフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ガラスや開口部に用いられる透明合成樹脂基材に赤外線遮蔽機能や紫外線遮蔽機能、飛散防止機能等を付与するために各種プラスチックフィルムが貼付される場合が増えてきている。これらのプラスチックフィルムには、通常、耐擦傷性も要求されるため表面にハードコート処理が施されたハードコートフィルムが用いられる。
【0003】
従来のハードコートフィルムでは、耐候性が不充分であったため、ウインドウフィルムは、一般に窓ガラスなどの内側表面に貼付されている。一方、フィルムを貼付する場合の作業性や、飛び石等に対する耐衝撃性付与の観点等から屋外側の外側表面に貼付しうる耐候性に優れたハードコートフィルムが強く求められている。
【0004】
このようなハードコートフィルムとして、例えば特許文献1には、透明基材フィルムの表面に紫外線遮蔽層およびシロキサン結合をもつケイ素化合物を含有するハードコート層が順次設けられたハードコートフィルムが記載されている。しかし、前記公報に記載されたハードコートフィルムは、屋外側に貼着して長期間使用する場合に要求される耐候性や耐擦傷性を充分満足しうるものではない。特に基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを使用する場合には耐候性能が特に問題となる。また、シロキサン結合をもつケイ素化合物を含有するハードコート層として、無機シリカ系化合物を主成分として含有する層が具体的に記載されているが、当該無機シリカ系化合物としてはテトラアルコキシシランの加水分解物が例示されているのみであり、テトラアルコキシシランを原料としてシリカを形成する場合には比較的長時間の加熱が必要とされるために生産性に問題がある。
【0005】
特許文献2には、複数の樹脂フィルムを積層してなる多層基材の一方の面にシリコーン系ハードコート層が設けられたハードコートフィルムが記載されている。しかしながら、当該ハードコートフィルムは、依然として耐擦傷性を充分満足しうるものではなく、また生産性にも問題がある。
【0006】
特許文献3は本願の先願であり、その明細書には、ガラス表面に貼るための粘着剤層と、該粘着剤層を介して貼着される樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの表面に設けられるハードコート層とを備え、前記粘着剤層および前記ハードコート層が紫外線吸収剤を含有することを特徴とする保護フィルムが記載されている。しかし、前記ハードコート層の最外層がポリシラザンを含有する被覆組成物の硬化物、すなわちシリカ層である場合の具体的例については記載されていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−309813号公報(特許請求の範囲、6頁5行〜12行)
【特許文献2】
特開2002−36441号公報(特許請求の範囲、5頁25行〜6頁9行)
【特許文献3】
特願2002−17484号(特許請求の範囲、段落0048)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる点に鑑み、ガラス製窓等の外側表面貼付用としての実用に耐えうる高い耐候性、耐擦傷性を有し、かつ高い生産性を有するハードコートフィルムを提供することをその目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の手段を提供するものである。
(1)透明基材フィルムの一方の面に、活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(a)と紫外線吸収剤を含む活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層およびポリシラザンを含む被覆組成物(B)の硬化物であるシリカ層が順次設けられ、該基材フィルムの反対面に粘着剤層を介して剥離シートが設けられていることを特徴とするガラス製窓またはプラスチック製窓の外側表面貼付用ハードコートフィルム。
(2)透明基材フィルムが同一または異種の複数の樹脂フィルムを積層してなる多層フィルムである、(1)に記載のハードコートフィルム。
【0010】
本発明のハードコートフィルムは、活性エネルギ線硬化性被覆組成物の硬化物の層およびポリシラザンを含む被覆組成物の硬化物であるシリカ層からなるハードコート層を有しており、シリカの被膜である最外層が相対的に柔らかい基材フィルムに直接積層されているのではなく、耐磨耗性の高い硬い硬化物内層上に積層されている。このためフィルムに対して傷を付けようとして加えられた外力による最外層の変位が小さくなることで、通常の無機質被膜が与える以上の耐擦傷性が得られる。
【0011】
本発明のハードコートフィルムは、基材フィルムの表面に紫外線吸収剤を含有するハードコート層を有するので耐候性に優れており、ガラス製窓やプラスチック製窓の屋外側に貼って長期間使用できる。
【0012】
本発明のハードコートフィルムは、最外層にポリシラザンを含む被覆組成物(B)の硬化物であるシリカ層が設けられているが、基材フィルムを長時間高温下に曝すことなく、ポリシラザンを紫外線の照射により短時間で硬化させ緻密なシリカ層を得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のハードコートフィルムに用いられる透明基材フィルムとしては、特に制限はなく、様々なプラスチックフィルムの中から、状況に応じて適宜選択して用いることができる。このプラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリエチレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂などからなるフィルムが挙げられる。これらの中でも本発明においては、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂からなるフィルムが好ましく用いられる。また、樹脂は単一の組成でもよく、複数の樹脂をブレンドしたものでもよい。樹脂フィルムの厚さは適宜選択できるが、通常、25〜200μmが好ましい。
【0014】
透明基材フィルムは上記プラスチックフィルムからなる単層のフィルムでも、上記プラスチックフィルムを同一または異種積層してなる多層フィルムであってもよい。
【0015】
特に被覆組成物(A)の硬化物の層と直接接するプラスチックフィルムがポリカーボネート系樹脂からなる場合には、ハードコートフィルムの充分な機械的強度を確保する意味で透明基材フィルムは多層フィルムであることが好ましい。
【0016】
多層フィルムのフィルム一層当りの膜厚は、一般的には10〜200μm、さらに好ましくは50〜150μm程度が好適である。また、この多層フィルムを構成する各フィルムは、所望により着色または蒸着されていてもよく、また紫外線吸収剤や光安定剤を含んでいてもよい。フィルムの積層は、種々の汎用手段で行われ、たとえば接着剤あるいは粘着剤を用いた積層であってもよく、また接着剤等を用いないドライラミネーションであってもよく、さらにこれらを組合せてもよい。また、一方のフィルムの上に、他方のフィルムを形成する液状物質を塗布した後、液状物質を硬化させることで多層フィルムを得ることもできる。
【0017】
ここで単層フィルムまたは多層フィルムの全厚は、特に制限はないが、通常は500μm以下、好ましくは100〜200μmの範囲である。
【0018】
なお、透明基材フィルムと活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層との密着性を高めるために、透明基材フィルムの表面処理や下塗り処理を行うことが好ましい。表面処理としては、たとえばコロナ放電処理、プラズマ(グロー放電)処理、高周波スパッタエッチング処理、アルカリ溶液処理などの公知の方法を採用できる。また、下塗り処理としては、たとえば、ウレタン系エマルション、ポリエステル系エマルションなどの易接着剤を塗布すればよい。透明基材フィルムと活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層との間には必要であれば熱可塑性アクリル樹脂などの他の合成樹脂からなる第3の層が存在していてもよい。
【0019】
次に、透明基材フィルムの表面に形成される活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層について説明する。なお、活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層は、1層の硬化物層で構成されていてもよく、種類の異なる2層以上の硬化物から構成されていてもよい。
【0020】
活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層はポリシラザンの硬化物であるシリカ層と高い密着性を有する。また、透明基材フィルムとも高い密着性を有する。この活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層と透明基材フィルムとの間に第3の層が存在する場合、その層は両者に対し充分な密着性を有することが好ましい。さらにこの活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層は充分な耐擦傷性を有する。
【0021】
本発明において、被覆組成物(A)としては、紫外線吸収剤を含有し、硬化性成分として活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(a)(以下、単に多官能性化合物(a)という。)を含む被覆組成物を用いることが好ましい。なお、以下の説明において、アクリロイル基およびメタクリロイル基を総称して(メタ)アクリロイル基といい、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレートなどの表現も同様とする。
【0022】
本発明における多官能性化合物(a)としては、たとえば特開平11−240103号公報の段落番号0016〜0020、0023〜0047に記載された化合物が挙げられる。
【0023】
好ましい多官能性化合物(a)としては、(メタ)アクリロイル基から選ばれる1種以上の重合性官能基を2個以上(特には2〜50個が好ましく、さらには3〜30個が好ましい。)有する化合物が挙げられる。なかでも(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有する化合物、すなわち多価アルコールなどの2個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるポリエステルが好ましい。また、上記重合性官能基以外に種々の官能基や結合を有する化合物であってもよい。特に、ウレタン結合を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物(以下、アクリルウレタンという。)と、ウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。
【0024】
上記アクリルウレタンとしては、ペンタエリスリトールやその多量体であるポリペンタエリスリトール、ポリイソシアネートおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの反応生成物であるアクリルウレタンであり、かつ活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を3個以上(より好ましくは4〜20個)有する多官能性化合物、ペンタエリスリトールやポリペンタエリスリトールの水酸基含有ポリ(メタ)アクリレートと、ポリイソシアネートとの反応生成物であるアクリルウレタンであり、かつ活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を3個以上(より好ましくは4〜20個)有する多官能性化合物が挙げられる。
【0025】
また、ウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、ペンタエリスリトール系ポリ(メタ)アクリレートまたはイソシアヌレート系ポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、ペンタエリスリトール系ポリ(メタ)アクリレートとは、ペンタエリスリトールまたはポリペンタエリスリトールと(メタ)アクリル酸とのポリエステル(好ましくは活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を4〜20個有する)をいう。
【0026】
また、イソシアヌレート系ポリ(メタ)アクリレートとは、トリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートまたはトリス(ヒドロキシアルキル)イソシアヌレートの1モルに、1〜6モルのカプロラクトンまたはアルキレンオキシドを付加して得られる化合物と、(メタ)アクリル酸とのポリエステル(好ましくは活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を2〜3個有する)をいう。
【0027】
本発明においては、上記の好ましい多官能性化合物と、他の活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(特に多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート)とを併用してもよい。
【0028】
被覆組成物(A)において多官能性化合物(a)とともに、活性エネルギ線によって重合しうる重合性官能基を1個有する単官能性化合物が含まれていてもよい。なお、単官能性とは活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を1個有することを意味し、重合性官能基以外の官能基を有していてもよい。この単官能性化合物としては(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、特にアクリロイル基を有する化合物が好ましい。
【0029】
被覆組成物(A)においてこの単官能性化合物を使用する場合、多官能性化合物(a)とこの単官能性化合物との合計に対するこの単官能性化合物の割合は、特に限定されないが0〜60質量%が適当である。単官能性化合物の割合が多すぎると硬化塗膜の硬さが低下し耐磨耗性が不充分となるおそれがある。多官能性化合物(a)とこの単官能性化合物との合計に対する単官能性化合物のより好ましい割合は0〜30質量%である。
【0030】
多官能性化合物(a)とともに使用できる単官能性化合物としては、たとえば分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。そのような単官能性化合物は、水酸基、エポキシ基などの官能基を有していてもよい。好ましい単官能性化合物は(メタ)アクリル酸エステル、すなわち(メタ)アクリレートである。
【0031】
具体的な単官能性化合物としてはたとえば以下の化合物がある。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物。
【0032】
被覆組成物(A)には、更に必須成分として紫外線吸収剤を含有する。紫外線吸収剤としては合成樹脂用紫外線吸収剤として通常使用されているようなベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、フェニルトリアジン系紫外線吸収剤などが好ましい。
【0033】
具体的化合物としては、たとえば以下に示すような化合物が挙げられる。2−[4−(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、オクチル−3−{3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル}プロピオネート、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2−{2−ヒドロキシ−5−(2−アクリロイルオキシエチル)フェニル}ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル−3−(3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロピオネート。
【0034】
なお、被覆組成物(A)が多官能性化合物(a)を含有する組成物であることから、上記した具体的化合物中、2−{2−ヒドロキシ−5−(2−アクリロイルオキシエチル)フェニル}ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル−3−(3−ベンゾトリアゾール−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロピオネートなど分子内に光重合性の官能基を持つものが特に好ましい。
【0035】
活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)における紫外線吸収剤の添加量は、通常は上記活性エネルギ線硬化性成分100質量部に対して0.1〜50質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。紫外線吸収剤の使用量が少な過ぎると充分な耐候性を発現できず、樹脂フィルムの着色が生じやすくなる。一方、紫外線吸収剤の使用量が多過ぎると紫外線吸収剤がブリードアウトしやすくなり、さらには活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)を充分に硬化できない場合がある。
【0036】
活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)は、上記基本的成分の他に、溶剤や種々の機能性配合剤を含むことができる。
【0037】
溶剤は通常必須の成分であり、多官能性化合物(a)が特に低粘度の液体でない限り溶剤が使用される。溶剤としては、多官能性化合物(a)を硬化成分とする被覆用組成物に通常使用される溶剤を使用できる。さらに基材フィルムの種類により適切な溶剤を選択して用いることが好ましい。
【0038】
被覆組成物(A)における溶剤の含有割合は、必要とする組成物の粘度、目的とする硬化被膜の厚さ、乾燥温度条件などにより適宜変更できる。通常は被覆組成物(A)中の硬化性成分に対して100倍質量以下、好ましくは0.1〜50倍質量用いる。
【0039】
上記溶剤としては、低級アルコール類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類、酢酸n−ブチル、ジエチレングリコールモノアセテートなどのエステル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類等が好ましいが、なかでも、耐溶剤性の低い芳香族ポリカーボネート樹脂の被覆には低級アルコール類、セロソルブ類、エステル類、それらの混合物などが適当である。
【0040】
本発明においては、多官能性化合物(a)を活性エネルギ線(特に紫外線)で効率よく硬化させるために、通常被覆組成物(A)は光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、公知のものを使用でき、入手容易な市販のものを使用できる。透明硬化物層において複数の光重合開始剤を使用してもよい。
【0041】
光重合開始剤としては、具体的にはアリールケトン系光重合開始剤(例えばアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、アルキルアミノベンゾフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、ベンゾイルベンゾエート類、α−アシロキシムエステル類等)、含硫黄系光重合開始剤(例えばスルフィド類、チオキサントン類等)、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、ジアシルホスフィンオキシド系光重合開始剤等が使用できる。
【0042】
さらに具体的には、特開平11−240103号公報の段落番号0081〜0085に記載された化合物が挙げられる。なかでも、本発明においては、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤が好ましい。また、光重合開始剤はアミン類などの光増感剤と組み合わせて使用することもできる。
【0043】
被覆組成物(A)における光重合開始剤の量は、硬化性成分(多官能性化合物(a)と単官能性化合物の合計)100質量部に対して0.01〜20質量部とするのが好ましく、特には0.1〜10質量部とするのが好ましい。
【0044】
被覆組成物(A)には、必要に応じて、光安定剤、酸化防止剤、熱重合防止剤などの安定剤、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、顔料、分散剤、帯電防止剤、防曇剤などの界面活性剤類、酸、アルカリおよび塩類などから選ばれる硬化触媒等を適宜配合して用いてもよい。
【0045】
被覆組成物(A)には、耐候性を考慮し、特に光安定剤を配合することが好ましい。光安定剤としては合成樹脂用光安定剤として通常使用されているようなヒンダードアミン系光安定剤が好ましい。光安定剤の具体例としては以下のような化合物がある。N−メチル−4−メタクリロイロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート。
【0046】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、トリフェニルホスファイト等のリン系酸化防止剤等を使用できる。レベリング剤としては、シリコーン樹脂系レベリング剤、アクリル樹脂系レベリング剤等を使用できる。消泡剤としては、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン樹脂系消泡剤等を使用できる。増粘剤としては、ポリメチルメタクリレート系ポリマー、水添ひまし油系化合物、脂肪酸アミド系化合物等を使用できる。
【0047】
このような被覆組成物(A)を硬化させる活性エネルギ線としては特に紫外線が好ましい。しかし、紫外線に限定されず、電子線やその他の活性エネルギ線を使用できる。紫外線源としてはキセノンランプ、パルスキセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等が使用できる。
【0048】
被覆組成物(A)を用いて形成される硬化物の層の厚さは1〜50μmであることが好ましい。この層厚が50μm超では、活性エネルギ線による硬化が不充分になり透明基材フィルムとの密着性が損なわれやすく好ましくない。また、1μm未満では、この層の耐摩耗性が不充分となるおそれがあり、またこの層の上のシリカ層の耐摩耗性や耐擦傷性が充分発現できないおそれがある。より好ましい層厚は2〜30μmである。
【0049】
次にポリシラザンを含む被覆組成物(B)の硬化物であるシリカ層について説明する。
【0050】
被覆剤組成物(B)は、ポリシラザンのみからなるかまたはポリシラザンを含む硬化性の組成物からなる。被覆剤組成物(B)は、ポリシラザン以外に溶剤、触媒、その他の添加剤を含む硬化性の組成物であってもよい。
【0051】
ポリシラザンは、(−Si−N−)の繰り返し単位を2以上有する重合体であり、この化学式においてケイ素原子(4価)の残りの2つの結合手、窒素原子(3価)の残りの1つの結合手には、それぞれ水素原子または有機基(アルキル基など)が結合している。また、上記繰り返し単位のみからなる線状構造の重合体ばかりでなく、上記ケイ素原子の残りの2つの結合手の一方または両方と上記窒素原子の結合手とが結合して環状構造が形成されていてもよい。重合体は環状構造のみの繰り返しからなっていてもよく、一部に環状構造を有する線状の重合体であってもよい。
【0052】
これらポリシラザンについては、例えば特開平9−31333号公報やそこで引用されている文献に記載されているようなポリシラザンがあり、そのようなポリシラザンを本発明におけるポリシラザンとして使用できる。また、特開平9−31333号公報やそこで引用されている文献に記載されているような変性ポリシラザンもまた本発明におけるポリシラザンとして使用できる。
【0053】
ポリシラザンは酸素存在下で分解し窒素原子が酸素原子に置換してシリカが形成される。ポリシラザンから形成されるシリカは加水分解性シラン化合物から形成されるシリカに比較してより緻密なシリカが形成される。たとえば、ペルヒドロポリシラザンから形成されたシリカは、4官能性の加水分解性シラン化合物(たとえばテトラアルコキシシラン)から形成されたシリカに比較してより緻密であり耐摩耗性等の表面特性が優れている。
【0054】
ポリシラザンとしては実質的に有機基を含まないポリシラザン(ペルヒドロポリシラザン)、アルコキシ基などの加水分解性基がケイ素原子に結合したポリシラザン、ケイ素原子や窒素原子にアルキル基などの有機基が結合しているポリシラザンなどがある。このようなポリシラザンはケイ素原子に加水分解性基を有している場合は硬化の際の加水分解反応により実質的に有機基を含まないシリカが形成される。特にペルヒドロポリシラザンはその焼成温度の低さおよび焼成後の硬化被膜の緻密さの点で好ましい。
【0055】
なお、ペルヒドロポリシラザンが充分に硬化した硬化物は窒素原子をほとんど含まないシリカとなる。また、ケイ素原子の一部または全部にアルキル基などの有機基が結合しているポリシラザンの場合は、それから形成される有機基を含むシリカがペルヒドロポリシラザンから形成されるシリカに比較して耐摩耗性等の表面特性が劣ることはあっても、より強靭な硬化被膜が得られまた厚膜化が可能であるので、目的によってはペルヒドロポリシラザンよりも好ましい。
【0056】
ケイ素原子に結合した有機基を有するポリシラザンの場合、その有機基としては炭化水素基やハロゲン化炭化水素基が好ましく、特にアルキル基などの炭化水素基が好ましい。これら有機基の炭素数は、特に限定されずたとえば20以下のものであればよいが、少ないことが好ましく、4以下が特に好ましい。また、有機基が長鎖ポリフルオロアルキル基であるポリシラザンも好ましい。長鎖ポリフルオロアルキル基含有ポリシラザンの硬化物はその表面に長鎖ポリフルオロアルキル基が存在することにより、表面に撥水性、非付着性等の特性を有する。長鎖ポリフルオロアルキル基としては、炭素数4〜16の直鎖状ペルフルオロアルキル基を有する炭素数2〜4のポリメチレン基が好ましい。
【0057】
ポリシラザンは、鎖状、環状もしくは架橋構造を有する重合体、または分子内にこれらの複数の構造の混合物からなる。また、ポリシラザンの分子量は数平均分子量で200〜50000であるのが好ましい。数平均分子量が200未満では焼成しても均一な硬化被膜が得られにくく、50000超では溶剤に溶解しがたくなり、また被覆組成物(B)が粘稠になるおそれがあることより、好ましくない。
【0058】
被覆組成物(B)は、ポリシラザンの他、以下の溶剤や機能性配合剤を含有していてもよい。溶剤としては、炭化水素類、ハロゲン化水素類、エーテル類、エステル類、ケトン類等が使用できるが、特には、キシレンまたはジブチルエーテルが好ましい。溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度を調節するために、複数の種類の溶剤を混合して用いてもよい。被覆組成物(B)における溶剤の含有割合は、採用される塗布方法およびポリシラザンの構造や平均分子量などによって異なるが、被覆組成物(B)の固形分濃度が0.5〜80質量%となるように溶剤を添加して調製するのが好ましい。
【0059】
機能性配合剤としては、帯電防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤などの安定剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、顔料、分散剤、シランカップリング等の密着性付与剤を適宜配合して用いてもよい。
【0060】
被覆組成物(B)を用いて形成される硬化物の層の厚さは0.05〜10μmであることが好ましい。この最外層の層厚が10μm超では、耐擦傷性等の表面特性のそれ以上の向上が期待できないうえ、層が脆くなり被覆成形品のわずかな変形によってもこの層にクラック等が生じやすくなる。また、0.05μm未満では、このハードコート層表面の耐擦傷性が充分発現できないおそれがある。より好ましい層厚は0.1〜3μmである。
【0061】
被覆組成物(B)の硬化物からなる層はJIS R3212における耐摩耗性試験による試験回数500回後の曇価(摩耗試験後の曇価と摩耗試験前の曇価との差)が5%未満の耐摩耗性を有することが好ましい。当該層の耐摩耗性は試験回数500回後の曇価が4.5%以下であることがより好ましく、4%以下であることが特に好ましい。
【0062】
上記のような2種類の被覆組成物(A)、(B)を用いて形成される2層のハードコート層を形成する方法としては特開平11−240103号公報の段落番号0115〜0125に記載の被覆手法を採用できる。
【0063】
本発明においては、上記ハードコート層が形成された透明基材フィルムの反対面に粘着剤層を介して剥離シートが設けられている。
【0064】
粘着剤層を形成する粘着剤としては粘着テープやシール等に使用されている公知の粘着剤を使用しうる。たとえば天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系、ポリビニルエーテル系、ウレタン系、シリコーン系等が挙げられる。これら粘着剤は、1種単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
【0065】
粘着剤には、さらに必要に応じて粘着付与剤、充填剤、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、架橋剤等を配合することができる。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。充填剤としては、亜鉛華、酸化チタン、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。軟化剤としては、プロセスオイル、液状ゴム、可塑剤等が挙げられる。酸化防止剤としては、アニリド系、フェノール系、チオエステル系が挙げられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等が挙げられ、架橋剤としては、エポキシ系、イソシアナート系、金属キレート系等が挙げられる。
【0066】
この粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜50μmの範囲である。また、この粘着剤層の上に設けられる剥離シートとしては、例えばグラシン紙、コート紙、ラミネート紙などの紙および各種プラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗付したものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0067】
本発明のハードコートフィルムは、特にガラス製窓やプラスチック製窓などの外側表面貼付用として好適に用いられる。使用する場合は、剥離シートを剥がし、粘着剤層面が対象物に接するようにして貼付すればよい。また、必要であれば、本発明のハードコートフィルムの硬化物の層以外の任意の層に着色・印刷を施したり、熱線遮断機能等の付与をすることができる。
【0068】
【実施例】
以下、本発明を実施例(例1〜3)、比較例(例4)に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0069】
なお、各例においては、以下の粘着剤層形成のための粘着剤溶液および粘着剤層を積層した剥離シートを用いた。
【0070】
<粘着剤層形成のための粘着剤溶液の作製>
ブチルアクリレート/アクリル酸=96/4(モル比)のモノマー組成からなる共重合体であって、質量平均分子量50万のアクリル酸系樹脂を固形成分とする、固形分25質量%のトルエン溶液99.7質量部に、架橋成分として0.3質量部のヘキサメチレンジイソシアネートの3量体を3質量部のt−ブタノールに溶解して加え、充分撹拌混合して粘着剤溶液を調製した。
【0071】
<粘着剤層を積層した剥離シートの作製>
シリコーン剥離処理を施した厚さ38μmのポリエステルフィルムに上記粘着剤溶液をブレードコーターを用いて塗工して100℃で3分間オーブン加熱乾燥し、厚さ20μmの粘着剤層を積層した剥離シートを得た。
【0072】
<活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の成分>
活性エネルギ線硬化性成分、紫外線吸収剤、光重合開始剤、光安定剤として、以下に示すものを用いた。
(1)活性エネルギ線硬化性成分
a−1:水酸基を有するジペンタエリスリトールポリアクリレートと部分ヌレート化ヘキサメチレンジイソシアネートの反応生成物であるウレタンアクリレート(1分子あたり平均15個のアクリロイル基を含有)、
a−2:カプロラクトン変性トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート(東亞合成社製アロニクスM−325)、
a−3:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。
【0073】
(2)紫外線吸収剤
2−[4−(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン。
【0074】
(3)光重合開始剤
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド。
【0075】
(4)光安定剤
N−メチル−4−メタクリロイロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン。
【0076】
<ハードコートフィルムの作製>
[例1]
撹拌機および冷却管を装着した200mLの4つ口フラスコに、イソプロピルアルコール7.0g、酢酸ブチル28.0g、光重合開始剤0.33g、紫外線吸収剤1.0g、PMMA樹脂2.0gおよび光安定剤0.44gを加え溶解させ、続いて活性エネルギ線硬化性成分(a−1)10.0gと、活性エネルギ線硬化性成分(a−2)10.0gを加え常温で1時間撹拌して被覆組成物(A−1)を得た。
【0077】
ポリカーボネートフィルム(100mm角、厚さ100μm、商品名「レキサン」、SPパシフィック社製)の上にダイコート法により被覆組成物(A−1)を連続塗工(ウェット厚み15μm)して、130℃の熱風循環オーブン中で2分間保持し溶剤を除去した後、これを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて100mJ/cm2(波長300〜390nm領域の紫外線積算エネルギ量、以下同様)の紫外線を照射し、膜厚6μmの部分硬化した硬化物層を形成した。
【0078】
次に、この表面にさらにペルヒドロポリシラザンのキシレン溶液(固形分20質量%、ペルヒドロポリシラザンの数平均分子量700、クラリアントジャパン株式会社製 商品名「V110」。以下、被覆組成物(B−1)という。)をダイコート法を用いて連続塗工(ウェット厚さ4μm)して、130℃の熱風循環オーブン中で3分間保持し溶剤を除去した。その後、これを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射し、被覆組成物(A−1)の部分硬化した硬化物層を完全硬化させると共に、被覆組成物(B−1)の硬化を促進し、膜厚6.8μmの硬化物層を形成し、積層体1を得た。
【0079】
そして、積層体1の硬化物層と反対側の面に、上記粘着剤層を積層した剥離シートの粘着剤層を貼り合わせて、図1のハードコートフィルムを作製した。
【0080】
[例2]
ポリカーボネートフィルム(100mm角、厚さ50μm、商品名「レキサン」、GE製)に、上記粘着剤溶液をブレードコーターを用いて塗工し、100℃で3分間オーブン加熱乾燥し、厚さ20μmの粘着剤層を形成し、当該粘着剤層を前記積層体1の硬化物層と反対側の面に貼り合わせ、積層体2を得た。
【0081】
そして、積層体2の硬化物層と反対側の面に、上記粘着剤層を積層した剥離シートの粘着剤層を貼り合わせて、図2のハードコートフィルムを作製した。
【0082】
[例3]
撹拌機および冷却管を装着した200mLの4つ口フラスコに、イソプロピルアルコール7.0g、酢酸ブチル28.0g、光重合開始剤0.33g、紫外線吸収剤1.0g、PMMA樹脂2.0gおよび光安定剤0.44gを加え溶解させ、続いて活性エネルギ線硬化性成分(a−3)20.0gを加え常温で1時間撹拌して被覆組成物(A−2)を得た。
【0083】
そして、ポリカーボネートフィルム(100mm角、厚さ100μm、商品名「レキサン」、SPパシフィック社製)の上にダイコート法により被覆組成物(A−2)を連続塗工(ウェット厚み15μm)して、130℃の熱風循環オーブン中で2分間保持し溶剤を除去した。その後、これを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて100mJ/cm2の紫外線を照射し、膜厚6μmの部分硬化した硬化物層を形成した。
【0084】
次に、この表面にさらにペルヒドロポリシラザンのキシレン溶液(固形分20質量%、ペルヒドロポリシラザンの数平均分子量1000、クラリアントジャパン株式会社製 商品名「L110」。以下、被覆組成物(B−2)という。)をダイコート法を用いて連続塗工(ウェット厚さ4μm)して、130℃の熱風循環オーブン中で3分間保持し溶剤を除去した。その後、これを空気雰囲気中、高圧水銀灯を用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射し、被覆組成物(A−2)の部分硬化物を完全硬化させると共に、被覆組成物(B−2)の硬化を促進し、膜厚6.8μmの硬化物層を形成し、積層体3を得た。
【0085】
一方、ポリエチレンテレフタレートフィルム(100mm角、厚さ50μm、東洋紡績(株)製A4300)に、上記粘着剤溶液をブレードコーターを用いて塗工して100℃で3分間オーブン加熱乾燥し、厚さ20μmの粘着剤層を形成し、当該粘着剤層を前記積層体3の硬化物層と反対側の面に貼り合わせ、積層体4を得た。
【0086】
さらに、別のポリカーボネートフィルム(100mm角、厚さ50μm、商品名「レキサン」、GE社製)に、上記粘着剤溶液をブレードコーターを用いて塗工して100℃で3分間オーブン加熱乾燥し、厚さ20μmの粘着剤層を形成し、当該粘着剤層を前記積層体4の硬化物層と反対側の面に貼り合わせ、積層体5を得た。
【0087】
そして、積層体5の硬化物層と反対側の面に、上記粘着剤層を積層した剥離シートの粘着剤層を貼り合わせて、図3のハードコートフィルムを作製した。
【0088】
[例4]
ポリカーボネートフィルム(100mm角、厚さ100μm、商品名「レキサン」、SPパシフィック社製)の上に乾燥膜厚が6μmになるようにダイコート法により紫外線吸収剤含有アクリル樹脂(日本ダクロシャムロック製ソルガードプライマー85B−2)を塗工し、100℃で1分間乾燥し、プライマー層を設けた。次に、シリコーン系ハードコート剤(日本ダクロシャムロック製ソルガードNP−730)を塗工した。120℃で60分間保持することにより、最外層を完全に硬化させ、積層体6を得た。
【0089】
別に、ポリカーボネートフィルム(100mm角、厚さ50μm、商品名「レキサン」、GE社製)に、上記粘着剤溶液をブレードコーターを用いて塗工して100℃で3分間オーブン加熱乾燥し、厚さ20μmの粘着剤層を形成し、当該粘着剤層を前記積層体6の硬化物層と反対側の面に貼り合わせ、積層体7を得た。
【0090】
そして、積層体7の硬化物層と反対側の面に、上記粘着剤層を積層した剥離シートの粘着剤層を貼り合わせて、図4のハードコートフィルムを作製した。
【0091】
上記の各例で得られたハードコートフィルムを用いて各種物性の測定および評価を以下に示す方法で行った。その結果を表1に示した。
【0092】
[初期曇価]
上記の各例で得られたハードコートフィルムの粘着剤層から剥離シートを剥がし、ソーダライムガラス板(100mm角、厚さ6mm)に貼り合わせた後、0.1MPaの圧力で全体を押えつけて試験サンプルを作製した(以下、試験サンプルという。)。試験サンプルについて、4ヵ所の曇価(%)をヘーズメータで測定し、その平均値を算出した。
【0093】
[耐磨耗性]
上記試験サンプルについて、JIS−R3212における耐磨耗試験法により、2つのCS−10F磨耗輪にそれぞれ500gの重りを組み合わせ500回転させたときの曇価をヘーズメータにて測定した。曇価の測定は磨耗サイクル軌道の4カ所で行い、平均値を算出した。耐磨耗性としては、(磨耗試験後曇価)−(磨耗試験前曇価)(%)の値を示す。
【0094】
[密着性]
上記試験サンプルに剃刀の刃で1mm間隔で縦横それぞれ11本の切れ目を付け、100個の碁盤目を作った。そして、市販のセロハンテープをよく密着させた後、90度手前方向に急激にはがした際の、被膜が剥離せずに残存した碁盤目の数(個)を表した。
【0095】
[耐候性]
上記試験サンプルについて、サンシャインウエザーメータを用いてブラックパネル温度63℃で、降雨12分、乾燥48分のサイクルで、1500時間硬化物層面を暴露後、上記密着性および外観の評価を行った。
【0096】
[引裂強度]
ハードコートフィルムの剥離シートを剥がしたものについて、ASTM D−1044に準じて引裂強度を測定した。
【0097】
【表1】
【0098】
【発明の効果】
本発明のハードコートフィルムは、ガラス製窓やプラスチック製窓の屋外側の外側表面に貼付しうる優れた耐擦傷性と耐候性を有するものであり、連続塗工も可能な高い生産性をも兼ね備えたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】例1で作製したハードコートフィルムの断面模式図である。
【図2】例2で作製したハードコートフィルムの断面模式図である。
【図3】例3で作製したハードコートフィルムの断面模式図である。
【図4】例4で作製したハードコートフィルムの断面模式図である。
【符号の説明】
PC:ポリカーボネート
PET:ポリエチレンテレフタレート
1:積層体1
2:積層体2
3:積層体3
4:積層体4
5:積層体5
6:積層体6
7:積層体7
Claims (5)
- 透明基材フィルムの一方の面に、活性エネルギ線硬化性の重合性官能基を2個以上有する多官能性化合物(a)と紫外線吸収剤を含む活性エネルギ線硬化性被覆組成物(A)の硬化物の層およびポリシラザンを含む被覆組成物(B)の硬化物であるシリカ層が順次設けられ、該基材フィルムの反対面に粘着剤層を介して剥離シートが設けられていることを特徴とするハードコートフィルム。
- 透明基材フィルムが同一または異種の複数の樹脂フィルムを積層してなる多層フィルムである、請求項1記載のハードコートフィルム。
- 被覆組成物(A)の硬化物の層の厚さが1〜50μmである、請求項1、2記載のハードコートフィルム。
- 被覆組成物(B)の硬化物の層の厚さが0.05〜10μmである、請求項1、2または3記載のハードコートフィルム。
- 被覆組成物(B)の硬化物が、JIS R3212における耐摩耗性試験による試験回数500回後の曇価が5%未満である、請求項1、2、3または4記載のハードコートフィルム。
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-
2002
- 2002-12-06 JP JP2002355597A patent/JP2004188609A/ja not_active Withdrawn
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A761 | Written withdrawal of application |
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