JP2004184674A - 波長可変光フィルタ - Google Patents
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Abstract
【課題】誘電体多層膜フィルタ素子を用いた波長可変フィルタにおいて、長時間の連続運転を可能とし、小型で高速で高性能の波長可変フィルタを実現すること。
【解決手段】DCモータ11にエンコーダ12、減速ギア13を設ける。減速ギア13によって減速した回転テーブル14上に誘電体多層膜フィルタ15を設ける。制御部16によって回転テーブル14を回転制御して誘電体多層膜フィルタ15を回転させ、入射角度に応じた波長選択特性を得るようにしている。
【選択図】 図1
【解決手段】DCモータ11にエンコーダ12、減速ギア13を設ける。減速ギア13によって減速した回転テーブル14上に誘電体多層膜フィルタ15を設ける。制御部16によって回転テーブル14を回転制御して誘電体多層膜フィルタ15を回転させ、入射角度に応じた波長選択特性を得るようにしている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光通信や光計測、光診断等の分野で用いられる波長可変光フィルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在のインターネットをはじめとした情報通信需要の大容量化、高速化へのニーズの高まりに従い光通信技術の進展が強く求められている。波長1.5μm帯での光波長多重通信技術(WDM)は光伝送容量の拡大を求めて、高密度光波長多重通信(DWDM)へ移行している。DWDM技術においては、EDFA等の光増幅器の適用が可能なCバンド帯(1530−1565nm)やLバンド帯(1565−1610nm)が使用されている。これらのバンド内で光信号の伝送容量を拡大するために、適用する光信号成分の波長間隔が次第に密になり始めている。光波長1550nm付近においては、周波数間隔(波長間隔)が200GHz(1.6nm)、100GHz(0.8nm)、50GHz(0.4nm)へと狭帯域化しつつある。
【0003】
このようなDWDM技術において、例えばCバンド帯における100GHz間隔の光通信ネットワークシステムにおいては、1本の光ファイバー中を伝搬するチャンネル1(波長1530nm)からチャンネル43(波長1565nm)の複数の光信号成分より、任意のチャンネルの光信号成分を選択し取り出したり(Drop機能)、そのチャンネルへ必要な光信号成分を入力する機能(Add機能)が求められている。このような機能を実現するために挟帯域のフィルタにおいて波長を可変できる機能を有することが必要となる。
【0004】
また、監視目的や、ネットワークシステムの安定運用のためのモニタ装置として、光ファイバー中を伝搬している複数の光信号成分の光波長や、光量レベル、あるいは信号対雑音比(SN比)等を分析評価するために、狭帯域なバンドパスフィルタの波長を変化させて、波長成分ごとに分析評価することができる波長可変光フィルタが求められている。
【0005】
このような波長可変フィルタとして、誘電体多層膜を用いた干渉型光フィルタが用いられている。そして誘電体多層膜に波長可変性を与える方法の1つとして、フィルタを傾斜させたり回転させる方法がある。図8において基板1上にはλ/4の光学厚さを主体とする高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層した周知の誘電体多層膜2が形成される。そしてその法線に対して角度θで入射させる。誘電体多層膜2の基本膜厚である1/4光学膜厚は、薄膜の物理膜厚をd、その屈折率をn、基準波長をλ0 とすると、垂直入射(θ=0度)の場合、
n・d=λ0 /4 ・・・(1)
で与えられる。そして光線が多層膜の薄膜内を角度θi で伝搬する場合を考えると、(1)式は次式で書き直される。
n・d・cosθi =λ0 /4 ・・・(2)
この式より、入射光線の薄膜中の角度を増加させることによって、選択波長は短波長側に変化することが分かる。そして入射角θに対するフィルムの中心波長の変化は図9に示されるように、2次曲線に沿って低下する。従って、光線の入射角θが0度付近に比べて大きくなると、単位入射角当りの波長変化量は増大する。このことより高い波長精度を実現するためには、最大入射角付近において十分な角度分解能が要求される。一般的にはフィルタへの光線入射角は最大20度程度まで使用されるが、この場合のフィルタを回転させる回転角度の分解能は0.1度以下という高分解能が要求される。
【0006】
従来は誘電体多層膜フィルタを傾斜あるいは回転させるために、特許文献1では超音波モータとエンコーダを用いた波長可変フィルタが提案されている。又特許文献2には、テコヨークの原理と圧電アクチュエータを併用した波長可変フィルタが提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−241083号公報
【特許文献2】
特開平6−281813号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら特許文献1の場合には、超音波モータ部の磨耗による駆動能力の劣化のため1000時間以上の連続運転が困難であるという欠点があった。又特許文献2の場合には、テコヨークを使用しており、駆動電源に100V以上の高圧電源を別途用意しなければならないこと、更にはテコヨーク支持部の摩耗現象のため特許文献1の場合と同様に1000時間以上の連続運転が困難であるという欠点があった。
【0009】
更に誘電体多層膜フィルタでは光線の入射角度が0°(垂直入射)以外の場合はバンドパスフィルタの中心波長がS偏光モード及びP偏光モードに対して異なる波長特性を有し、入射角度が増加するに従い、各偏光モードのフィルタ中心波長の差が急激に増加するという欠点があった。そのため入射角度が増加するに従い各偏光モードに対するフィルタ特性は異なるふるまいを有し、入射光線に対するフィルタの特性が劣化し、0°入射のときとは異なる特性になるという欠点があった。
【0010】
本発明はこのような誘電体多層膜フィルタを傾斜又は回転させて波長可変特性を実現するようにした波長可変光フィルタにおいて、小型、高速で高精度の特徴を有する波長可変光フィルタを実現することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1の発明は、DCモータと,前記DCモータの回転を減速させる減速機構と、前記減速機構に連結され、前記DCモータの回転に応じて光を入射させる入射角を回転させる誘電体多層膜フィルタと、を具備することを特徴とするものである。
【0012】
本願の請求項2の発明は、請求項1の波長可変光フィルタにおいて、前記DCモータ及び前記減速機構のいずれかに接続され、前記DCモータの回転位置を検出するエンコーダと、前記エンコーダの出力を用いて前記DCモータにフィードバックすることにより、前記DCモータの回転量を制御する制御部と、を更に有することを特徴とするものである。
【0013】
本願の請求項3の発明は、請求項1又は2の波長可変光フィルタにおいて、前記減速機構に取付けられる回転テーブルと、前記回転テーブルに固定された少なくとも2枚の誘電体多層膜フィルタと、を有することを特徴とするものである。
【0014】
本願の請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項の波長可変光フィルタにおいて、前記誘電体多層膜フィルタは、基板上に複数の基本共振器構造を積層して構成される誘電体多層膜バンドパスフィルタであって、前記基本共振器構造は、第1のスタック層と、スペーサ層と、第2のスタック層とがこの順に積層されたものであり、前記第1のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長の光学膜厚の誘電体薄膜より構成されるものであり、前記スペーサ層は、少なくとも4層以上の、1/4波長の光学膜厚の整数倍の膜厚を有する高屈折率材と低屈折率材の層を交互に積層した誘電体薄膜より構成され、これらの各層の整数倍数の係数の総和は正の偶数に等しいものであり、前記第2のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長の膜厚の誘電体薄膜より構成されることを特徴とするものである。
【0015】
本願の請求項5の発明は、請求項1〜3のいずれか1項の波長可変光フィルタにおいて、前記誘電体多層膜フィルタは、基板上に複数の基本共振器構造を積層して構成される誘電体多層膜バンドパスフィルタであって、前記基本共振器構造は、第1のスタック層と、スペーサ層と、第2のスタック層とがこの順に積層されたものであり、前記第1のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長もしくはその奇数倍の光学膜厚の誘電体薄膜より構成され、奇数の層数から成るものであり、前記スペーサ層は、1/2波長の光学膜厚の整数倍の膜厚を有する高屈折率材と低屈折率材のいずれかの層であり、前記第2のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長もしくはその奇数倍の膜厚の誘電体薄膜より構成され、奇数の層数から成ることを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
まずこの実施の形態の波長可変フィルタは以下の特性を満足することを目的とする。
小型:寸法100×100×50mm以下であること。
高速:チャンネル切替え時間が1 秒以下であること。
高精度:波長分解能が50pm以下であること。
長寿命:連続運転1000時間以上であること。
操作性:使用電源電圧が24V以下であること。
【0017】
図1は本発明の実施の形態1による波長可変フィルタの駆動系を示す図である。この実施の形態ではフィルタを回転させるためのモータとして、直流(DC)モータ11を使用する。そしてこのDCモータ11の回転軸にはエンコーダ12、減速機構として減速ギア13を接続しておく。そして減速ギア13の主軸には回転テーブル14を取付ける。この回転テーブル14上には誘電体多層膜フィルタ15が設けられている。誘電体多層膜フィルタ15は回転テーブル4上の回転軸に沿って取付けられている。エンコーダ12は例えばアブソリュート型のエンコーダを用い、その回転角度情報を制御部16に伝える。制御部16はその入力に基づいてDCモータ11をフィードバック制御し、所望の回転角度となるように制御する。誘電体多層膜フィルタ15には光ファイバ17よりコリメートレンズ18を介して平行光が入射される。又誘電体多層膜フィルタ15を通過した光を受光する位置に、コリメートレンズ19を介して受光用の光ファイバ20が設けられる。そしてDCモータ11を回転させると、減速ギア13によって減速され、回転テーブル14上に配置された誘電体多層膜フィルタ15が回転し、透過波長を変化させることができる。
【0018】
尚ここではDCモータ11の軸の両側にエンコーダ12と減速ギア13を設けているが、より高精度の回転角度情報を得るために減速ギア13の出力側にエンコーダ12を設けてもよい。
【0019】
次に誘電体多層膜フィルタ15について説明する。誘電体多層膜フィルタとしては回転角度が小さい0°付近の回転角を用いる場合には、従来の誘電体多層膜フィルタをそのまま用いることができる。又入射光の偏光面がS偏光、P偏光のいずれか一方であれば、偏光方向の相違による特性変化の影響を受けないため、任意の角度で用いることができる。又偏光に依存しない波長可変フィルタ特性を実現するために、以下のような第1,第2の誘電体多層膜フィルタ15A又は15Bを用いるようにしてもよい。
【0020】
(実施の形態2)
偏光方向の依存性の少ない第1の誘電体多層膜フィルタ15Aは、基板上に好ましくは4層の基本共振器構造を積層して構成される誘電体多層膜バンドパスフィルタであって、基本共振器構造は、第1のスタック層と、スペーサ層と、第2のスタック層とがこの順に積層されたものである。第1のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長の光学膜厚の誘電体薄膜より構成される。スペーサ層は、少なくとも4層以上の、1/4波長の光学膜厚の整数倍の膜厚を有する高屈折率材と低屈折率材の層を交互に積層した誘電体薄膜より構成され、これらの各層の整数倍数の係数の総和は正の偶数に等しいものである。又第2のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長の膜厚の誘電体薄膜より構成されることを特徴とするものである。
【0021】
又より具体的には、基板上に好ましくは4層の基本共振器構造を積層して構成される誘電体多層膜バンドパスフィルタであって、少なくとも最初と最後の基本共振器構造を除く基本共振器構造は、
A=[(XY)n (ai Xbi Y)j (YX)n rY]
で表されるものである。ここでXは1/4波長の光学膜厚を有する高屈折率材又は低屈折率材の誘電体薄膜であり、Yはそれ以外の屈折率材の1/4波長の光学膜厚を有する誘電体薄膜であり、iは1〜jまでの値をとる自然数であり、n,b1 ,a2 ,b2 は1以上の整数であり、b3 ,a4 ,b4 ・・・は0又は1以上の整数であり、a1 ,a3 の少なくとも一方は1以上の整数であり、a1 +b1 +a2 +・・・ai +bi の総和は正の偶数であり、rは1以上の正の奇数であり、これらの値は各基本共振器構造毎に決められることを特徴とするものである。
【0022】
この基本共振器構造は、第1、第2のスタック層がスペーサ層に対して対称な鏡像の関係にあることが好ましい。この誘電体多層膜バンドパスフィルタの基本共振器構造は、各基本共振器のスペーサ構造が全て同一としてもよい。又誘電体多層膜フィルタの基本共振器構造は、他の共振器構造と連結される際に低屈折率材及び高屈折率材のいずれかの1/4波長の光学膜厚の奇数倍の膜厚の結合層を介して接続することが好ましい。
【0023】
このような条件を満たした場合に、光線の入射角を0から増加し、フィルタ中心波長を可変する方式においてフィルタ波長可変範囲は50nm以上で、且つ偏光モード間のフィルタ中心波長の差は±200pm以下となる。そして共振器構造を4重以上とすることによって、必要なフィルタ特性をシャープにすることができる。
【0024】
本発明の誘電体多層膜バンドパスフィルタにおいては、基板には使用波長域において透明な広範囲な材料、例えば光学結晶、光学ガラス、石英、透明プラスチック、ポリマー材等を適用できる。誘電体多層膜バンドパスフィルタを構成する光学薄膜材料には、適用波長域において透明で一般的に使用されている材料から選択することができる。
【0025】
高屈折率膜、低屈折率膜としては、例えば屈折率が1.23〜5.67までの範囲では、フッ化カルシウムCaF2 (屈折率1.23)、フッ化マグネシウムMgF2 (屈折率1.38)、二酸化シリコンSiO2 (屈折率1.46)、酸化マグネシウムMgO(屈折率1.80)、五酸化タンタルTa2 O5 (屈折率2.15)、五酸化ニオブNb2 O5 (屈折率2.24)、二酸化チタンTiO2 (屈折率2.45)、セレン化亜鉛ZnSe(屈折率2.40)、テルル化鉛PbTe(屈折率5.67)、窒化アルミニウムAlN(屈折率1.94)、窒化シリコンSi3 N4 (屈折率1.95)、シリコンSi(屈折率3.4)、ゲルマニウムGe(屈折率4.0)、等の光学材料が用いられている。これらの光学薄膜のうち2種を高屈折率膜H、低屈折率膜Lとして選択する。
【0026】
そして薄膜の成膜は、例えば電子ビーム蒸着法、イオンアシスト蒸着法、DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタ法、分子線エピタキシー(MBE)法、化学気相蒸着(CVD),ディップコーティング法など、従来より用いられている製法が使用できる。フィルタを構成する多層膜設計においては、市販されている膜設計ソフトウェアが使用できる。例えばTFCalc(Software Spectra Inc.)、Essential Macload (Thin−Film Center, Inc.)などは光通信業界において主に使用されている。
【0027】
(実施の形態3)
次に偏光方向の依存性の少ない第2の誘電体多層膜フィルタ15Bについて説明する。第2の誘電体多層膜フィルタは、基板上に好ましくは4層の基本共振器構造を積層して構成される誘電体多層膜バンドパスフィルタであって、基本共振器構造は、第1のスタック層と、スペーサ層と、第2のスタック層とがこの順に積層されたものである。第1のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長もしくはその奇数倍の光学膜厚の誘電体薄膜より構成され、奇数の層数から成るものである。スペーサ層は、1/2波長の光学膜厚の整数倍の膜厚を有する高屈折率材と低屈折率材のいずれかの層である。第2のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長もしくはその奇数倍の膜厚の誘電体薄膜より構成され、奇数の層数から成ることを特徴とするものである。
【0028】
より具体的には、基板上に好ましくは4層の基本共振器構造を積層して構成される誘電体多層膜バンドパスフィルタであって、少なくとも最後の基本共振器構造を除く基本共振器構造は、
A=[(XbY)a X]dY[X(cYX)a ]eY
で表されるものである。ここでXは1/4波長の光学膜厚を有する高屈折率材又は低屈折率材の誘電体薄膜であり、Yはそれ以外の屈折率材の1/4波長の光学膜厚を有する誘電体薄膜であり、[(XbY)a X]は第1のスタック層であり、dYはスペーサ層であり、[X(cYX)a ]は第2のスタック層であり、aは自然数であり、b,cは3以上の正の奇数であり、dは0又は正の偶数であり、eは正の奇数であり、これらの値は各基本共振器構造毎に決められることを特徴とするものである。
【0029】
この基本共振器構造は、第1、第2のスタック層がスペーサ層に対して対称な鏡像の関係にあることが好ましい。この誘電体多層膜バンドパスフィルタの基本共振器構造は、各基本共振器のスペーサ構造が全て同一としてもよい。又誘電体多層膜フィルタの基本共振器構造は、他の共振器構造と連結される際に低屈折率材及び高屈折率材のいずれかの1/4波長の光学膜厚の奇数倍の膜厚の結合層を介して接続することが好ましい。
【0030】
このような条件を満たした場合に、光線の入射角を0から増加し、フィルタ中心波長を可変する方式においてフィルタ波長可変範囲は50nm以上で、且つ偏光モード間のフィルタ中心波長の差は±200pm以下となる。そして本発明では共振器構造を4重以上とすることによって必要なフィルタ特性をシャープにすることができる。この誘電体多層膜フィルタの基板や各高屈折率膜、低屈折率膜についても前述のものと同様である。
【0031】
【実施例】
(実施例1)
次に本発明の実施例1について説明する。本実施例1は、図1と同一の構造を有するものであって、DCモータとして、ドイツのFAULHABER社のDCミニモータを採用する。同モータは減速比41:1の減速ギア及びエンコーダを内蔵している。寸法がφ16、長さは40mm程度と小型であり、さらにギアダウン後の角度分解能は0. 004度と高分解能である。この分解能は誘電体多層膜フィルタへの光線の入射角度が20度付近において、波長分解能としておよそ20pmに相当しており、十分な特性である。さらに、応答性は20度の回転運動に対しても50msを要す程度と高速性を示している。駆動電圧は5Vから24Vより選択可能で、10000時間以上の連続運転が可能である。さらに−30〜+85℃までの温度範囲での使用が可能である。
【0032】
又誘電体多層膜フィルタとして前述した偏光モード間のフィルタ中心波長特性が分離しない第1の誘電体多層膜フィルタ15Aを用いる。このバンドパスフィルタは200GHz周波数間隔用の光通信ネットワークに用いられる5重共振器構造のバンドパスフィルタである。ここで設計波長λ0 は1610nmとした。基板として(株)オハラ製結晶ガラスWMS−15を使用した。高屈折率膜Hとして、誘電体薄膜Ta2 O5 (屈折率nH =2.15)を用い、低屈折率膜LとしてSiO2 膜(屈折率nL =1.46)を用いた。誘電体多層膜バンドパスフィルタの膜構造を以下に示す。
基板/
(HL)6 2H 3L 2H L(LH)6 L
((HL)7 2H 3L 2H L(LH)7 L)3
(HL)6 2H 3L 2H L(LH)5 1.0136L 0.7034H 0.5721L/空気(屈折率1.0)
【0033】
図2(a)は本実施例による誘電体多層膜バンドパスフィルタの膜構造を示す図であり、基板21上に第1〜第5の共振器構造22,23,24,25,26が積層されている。図2(b)は第1の共振器構造22の構造を示している。第1の共振器構造22は、(HL)6 から成る第1のスタック層22−1、2H3L2HLから成るスペーサ層22−2、(LH)6 から成る第2のスタック層22−3、及びLから成る結合層22−4から成り立っている。第2〜第4の共振器構造は、第1,第2のスタック層の層数を除いて第1の同一の共振器構造と同一であり、これらの共振器構造が4層積層されている。最終の第5の共振器構造のみが最後の3層の膜厚がわずかに異なっている。
【0034】
各共振器構造のスペーサ層の構成は全て同一で、a1 =2,b1 =3,a2 =2,b2 =1である。各層の係数の合計、即ちa1 +b1 +a2 +b2 は8であり、偶数となっている。第5の共振器構造の最後の3層は空気層(屈折率1.0)との整合を高め、挿入損失を低減し、且つ透過バンド内のフィルタ特性を平坦化するために最適化された。多層膜の総数は152層、全体の物理膜厚は40μmである。各偏光モードに対応するバンドパスフィルタの半値全幅の平均値は1nmである。入射角度0°の場合は図3(a)にフィルタの透過特性を示すように、フィルタの中心波長は1610nmである。この図に示されるようにS偏光とP偏光及びその平均(Ave)を示す曲線は重なっている。入射角度21°の場合は図3(b)に示すように、中心波長1573nmであり、入射角度の変化により37nmの波長可変性を有していることがわかる。又フィルタの透過バンド帯域は平坦性に優れ、低挿入損失で且つS偏光とP偏光の挿入損失差も極めて少ない特性を示している。偏光特性もS偏光の中心波長はP偏光の透過バンド幅内に収まっており、S偏光及びP偏光のフィルタ透過特性は入射角度を増加しても夫々大きな歪みがないことがわかる。
【0035】
(実施例2)
次に本発明の実施例2について説明する。本実施例2はモータ11、減速ギア12、エンコーダ13及び回転テーブル14は前述した実施例1と同様のものと同一である。ここではフィルタのみを偏光依存性の少ない第2のタイプの誘電体多層膜フィルタ15Bとしたものである。このフィルタとしては、200GHz周波数間隔用の光通信ネットワークに用いられる5重共振器構造のバンドパスフィルタである。ここで設計波長λ0 は1560nmとした。基板として(株)オハラ製結晶ガラスBK7を使用した。高屈折率膜Hとして、誘電体薄膜Nb2 O5 (屈折率nH =2.25)を用い、低屈折率膜LとしてSiO2 膜(屈折率nL =1.47)を用いた。誘電体多層膜バンドパスフィルタの膜構造を以下に示す。
基板/
(H3L)5 H 2L H (3LH)5 9L
[(H3L)6 H 2L H (3LH)6 9L]3
(H3L)5 H 2L H (3LH)4 0.686L 1.4974H/空気(屈折率1.0)
【0036】
図4(a)は本実施例による誘電体多層膜バンドパスフィルタの膜構造を示す図であり、基板31上に第1〜第5の共振器構造32,33,34,35,36が積層されている。図4(b)は第1の共振器構造32の構造を示している。第1の共振器構造32は、(H3L)5 Hから成る第1のスタック層32−1、3Lから成るスペーサ層32−2、H(3LH)5 から成る第2のスタック層32−3、及び9Lから成る結合層32−4から成り立っている。第2〜第4の共振器構造33〜35は、第1,第2のスタック層の層数を除いて第1の同一の共振器構造と同一であり、これらの共振器構造が3層積層されている。最終の第5の共振器構造のみの最後の2層の膜厚がわずかに異なっている。
【0037】
各共振器構造のスペーサ層の構成は全て同一で、2Lであり、a=5又は6,b=3,c=3,d=2,e=9である。第5の共振器構造の最後の2層は空気層(屈折率1.0)との整合を高め、挿入損失を低減し、且つ透過バンド内のフィルタ特性を平坦化するために最適化された。多層膜の総数は131層、全体の物理膜厚は68.1μmである。各偏光モードに対応するバンドパスフィルタの半値全幅の平均値は0.9nmである。入射角度0°の場合は図5(a)にフィルタの透過特性を示すように、フィルタの中心波長は1560nmである。この図に示されるようにS偏光とP偏光及びその平均(Ave)を示す曲線は重なっている。入射角度24°の場合は図5(b)に示すように、中心波長1508.3nmであり、入射角度の変化により50.7nmの波長可変性を有していることがわかる。又フィルタの透過バンド帯域は平坦性に優れ、低挿入損失で且つS偏光とP偏光の挿入損失差も極めて少ない特性を示している。偏光特性もS偏光の中心波長はP偏光の透過バンド幅内に収まっており、S偏光及びP偏光のフィルタ透過特性は入射角度を増加しても夫々大きな歪みがないことがわかる。この実施例2においても実施例1と同様の効果が得られる。
【0038】
(実施例3)
次に本発明の実施例3について説明する。この実施例では実施例1と同一のDCモータ11、エンコーダ12、減速ギア13、制御部16を用い、回転テーブル14上に図6に示すように4つのフィルタを回転対称に配置したものである。このフィルタは図6に示すように回転軸及び回転テーブル14に垂直になるように直立して4つの誘電体多層膜フィルタ41,42,43,44を取付ける。各フィルタは例えば実施例1又は2のいずれかと同様の膜構造を有するものとし、その中心波長のみが夫々1610nm、1580nm、1550nm、1520nmと互いに異なっている。各フィルタはフィルタへの光線入射角0度から21度の範囲で波長可変性として30nm以上が得られている。DCモータ11を回転させて任意の光信号成分を含む光が入射する1つのフィルタを選択すると共に、選択したフィルタへの入射角度を変える。こうすれば広い波長選択の範囲で波長が選択され、いずれかの波長成分を持つ透過光として出力される。
【0039】
図7には本実施例に用いた誘電体多層膜フィルタの波長可変特性を示す。この図において(F41,0°)はフィルタ41にθ=0°で光を入射したときの特性を示しており、(F41,21°)はθ=21°としたときの特性を示している。他も同様である。こうすれば波長1610nmから波長1485nmまで波長可変域として125nmの広帯域特性が得られている。なお、2つのフィルタでおなじフィルタ特性をカバーしている波長域、例えば1574nmから1580nmなどでは、重複して波長掃引しないように片方のフィルタのみ作用するように制御プログラムにてあらかじめ設定しておけばよい。
【0040】
DCモータ1には実施例1で示したものと同じDCモータと減速ギア13と用いているため、分解能は0. 004度と高分解能である。この分解能は誘電体多層膜フィルタへの光線の入射角度が20度付近において、波長分解能としておよそ20pmに相当しており、十分な特性である。波長1610nmから波長1485nmまでの波長掃引には、回転テーブル14をおよそ291度回転させる必要があるが、その場合でも応答性は0.7秒を要す程度と高速性を示している。駆動電圧は5Vから24Vより選択可能で、10000時間以上の連続運転が可能である。さらに−30〜+85℃までの温度範囲での使用が可能である。
【0041】
以上により、実施例1の効果に加えて4枚の波長可変域の異なる誘電体多層膜フィルタを用いて、おのおのの誘電体多層膜フィルタへの光線の入射角を0度から21度の範囲で変えることにより、誘電体多層膜フィルタの中心波長は1610nmから1485nmまで、125nmの広帯域波長可変性を有しており、かつ透過バンド域内において偏光依存性も十分小さく抑えられている。
【0042】
尚実施例3では4枚の誘電体多層膜フィルタを用いているが、回転テーブル上に配置できる任意の数のフィルタを用いてもよいことはいうまでもない。
【0043】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明によれば、高分解能のDCモータを用いることによって波長分解能を改善することができ、又小型で連続運転時間を改善することができる。更に使用電源電圧が例えば24V以下と低く、高電圧を用いる必要がなくなる。又請求項4,5に記載の誘電体多層膜フィルタを用いることによって入射角度を大きくしていっても偏光モード間の特性の変動がほとんどなく、フィルタ特性を劣化させることがない。従ってこれらの波長可変フィルタを光通信や光計測、光診断等に用いることによって優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における波長可変光フィルタの駆動系の一例を示す配置図である。
【図2】実施例1の誘電体多層膜フィルタの構造を示す図である。
【図3】実施例1に用いられる誘電体多層膜フィルタの入射角0°及び21°のときの透過特性を示す図である。
【図4】実施例2による誘電体多層膜フィルタの構造を示す図である。
【図5】実施例2に用いられる誘電体多層膜フィルタの入射角0°及び24°のときの透過特性を示す図である。
【図6】実施の形態3による波長可変光フィルタのフィルタの配置を示す図である。
【図7】実施の形態3による波長可変光フィルタのフィルタ特性を示す図である。
【図8】誘電体多層膜フィルタへの光線入射角の定義を示す図である。
【図9】多層膜フィルタへの光線入射角とフィルタの中心波長の関係を示す図である。
【符号の説明】
11 DCモータ
12 エンコーダ
13 減速ギア
14 回転テーブル
15,15A,15B,41〜44 誘電体多層膜フィルタ
17,19 光ファイバ
18,20 コリメートレンズ
21,31 基板
22,32 第1共振器構造
23,33 第2共振器構造
24,34 第3共振器構造
25,35 第4共振器構造
26,36 第5共振器構造
【発明の属する技術分野】
本発明は光通信や光計測、光診断等の分野で用いられる波長可変光フィルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在のインターネットをはじめとした情報通信需要の大容量化、高速化へのニーズの高まりに従い光通信技術の進展が強く求められている。波長1.5μm帯での光波長多重通信技術(WDM)は光伝送容量の拡大を求めて、高密度光波長多重通信(DWDM)へ移行している。DWDM技術においては、EDFA等の光増幅器の適用が可能なCバンド帯(1530−1565nm)やLバンド帯(1565−1610nm)が使用されている。これらのバンド内で光信号の伝送容量を拡大するために、適用する光信号成分の波長間隔が次第に密になり始めている。光波長1550nm付近においては、周波数間隔(波長間隔)が200GHz(1.6nm)、100GHz(0.8nm)、50GHz(0.4nm)へと狭帯域化しつつある。
【0003】
このようなDWDM技術において、例えばCバンド帯における100GHz間隔の光通信ネットワークシステムにおいては、1本の光ファイバー中を伝搬するチャンネル1(波長1530nm)からチャンネル43(波長1565nm)の複数の光信号成分より、任意のチャンネルの光信号成分を選択し取り出したり(Drop機能)、そのチャンネルへ必要な光信号成分を入力する機能(Add機能)が求められている。このような機能を実現するために挟帯域のフィルタにおいて波長を可変できる機能を有することが必要となる。
【0004】
また、監視目的や、ネットワークシステムの安定運用のためのモニタ装置として、光ファイバー中を伝搬している複数の光信号成分の光波長や、光量レベル、あるいは信号対雑音比(SN比)等を分析評価するために、狭帯域なバンドパスフィルタの波長を変化させて、波長成分ごとに分析評価することができる波長可変光フィルタが求められている。
【0005】
このような波長可変フィルタとして、誘電体多層膜を用いた干渉型光フィルタが用いられている。そして誘電体多層膜に波長可変性を与える方法の1つとして、フィルタを傾斜させたり回転させる方法がある。図8において基板1上にはλ/4の光学厚さを主体とする高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層した周知の誘電体多層膜2が形成される。そしてその法線に対して角度θで入射させる。誘電体多層膜2の基本膜厚である1/4光学膜厚は、薄膜の物理膜厚をd、その屈折率をn、基準波長をλ0 とすると、垂直入射(θ=0度)の場合、
n・d=λ0 /4 ・・・(1)
で与えられる。そして光線が多層膜の薄膜内を角度θi で伝搬する場合を考えると、(1)式は次式で書き直される。
n・d・cosθi =λ0 /4 ・・・(2)
この式より、入射光線の薄膜中の角度を増加させることによって、選択波長は短波長側に変化することが分かる。そして入射角θに対するフィルムの中心波長の変化は図9に示されるように、2次曲線に沿って低下する。従って、光線の入射角θが0度付近に比べて大きくなると、単位入射角当りの波長変化量は増大する。このことより高い波長精度を実現するためには、最大入射角付近において十分な角度分解能が要求される。一般的にはフィルタへの光線入射角は最大20度程度まで使用されるが、この場合のフィルタを回転させる回転角度の分解能は0.1度以下という高分解能が要求される。
【0006】
従来は誘電体多層膜フィルタを傾斜あるいは回転させるために、特許文献1では超音波モータとエンコーダを用いた波長可変フィルタが提案されている。又特許文献2には、テコヨークの原理と圧電アクチュエータを併用した波長可変フィルタが提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−241083号公報
【特許文献2】
特開平6−281813号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら特許文献1の場合には、超音波モータ部の磨耗による駆動能力の劣化のため1000時間以上の連続運転が困難であるという欠点があった。又特許文献2の場合には、テコヨークを使用しており、駆動電源に100V以上の高圧電源を別途用意しなければならないこと、更にはテコヨーク支持部の摩耗現象のため特許文献1の場合と同様に1000時間以上の連続運転が困難であるという欠点があった。
【0009】
更に誘電体多層膜フィルタでは光線の入射角度が0°(垂直入射)以外の場合はバンドパスフィルタの中心波長がS偏光モード及びP偏光モードに対して異なる波長特性を有し、入射角度が増加するに従い、各偏光モードのフィルタ中心波長の差が急激に増加するという欠点があった。そのため入射角度が増加するに従い各偏光モードに対するフィルタ特性は異なるふるまいを有し、入射光線に対するフィルタの特性が劣化し、0°入射のときとは異なる特性になるという欠点があった。
【0010】
本発明はこのような誘電体多層膜フィルタを傾斜又は回転させて波長可変特性を実現するようにした波長可変光フィルタにおいて、小型、高速で高精度の特徴を有する波長可変光フィルタを実現することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1の発明は、DCモータと,前記DCモータの回転を減速させる減速機構と、前記減速機構に連結され、前記DCモータの回転に応じて光を入射させる入射角を回転させる誘電体多層膜フィルタと、を具備することを特徴とするものである。
【0012】
本願の請求項2の発明は、請求項1の波長可変光フィルタにおいて、前記DCモータ及び前記減速機構のいずれかに接続され、前記DCモータの回転位置を検出するエンコーダと、前記エンコーダの出力を用いて前記DCモータにフィードバックすることにより、前記DCモータの回転量を制御する制御部と、を更に有することを特徴とするものである。
【0013】
本願の請求項3の発明は、請求項1又は2の波長可変光フィルタにおいて、前記減速機構に取付けられる回転テーブルと、前記回転テーブルに固定された少なくとも2枚の誘電体多層膜フィルタと、を有することを特徴とするものである。
【0014】
本願の請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項の波長可変光フィルタにおいて、前記誘電体多層膜フィルタは、基板上に複数の基本共振器構造を積層して構成される誘電体多層膜バンドパスフィルタであって、前記基本共振器構造は、第1のスタック層と、スペーサ層と、第2のスタック層とがこの順に積層されたものであり、前記第1のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長の光学膜厚の誘電体薄膜より構成されるものであり、前記スペーサ層は、少なくとも4層以上の、1/4波長の光学膜厚の整数倍の膜厚を有する高屈折率材と低屈折率材の層を交互に積層した誘電体薄膜より構成され、これらの各層の整数倍数の係数の総和は正の偶数に等しいものであり、前記第2のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長の膜厚の誘電体薄膜より構成されることを特徴とするものである。
【0015】
本願の請求項5の発明は、請求項1〜3のいずれか1項の波長可変光フィルタにおいて、前記誘電体多層膜フィルタは、基板上に複数の基本共振器構造を積層して構成される誘電体多層膜バンドパスフィルタであって、前記基本共振器構造は、第1のスタック層と、スペーサ層と、第2のスタック層とがこの順に積層されたものであり、前記第1のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長もしくはその奇数倍の光学膜厚の誘電体薄膜より構成され、奇数の層数から成るものであり、前記スペーサ層は、1/2波長の光学膜厚の整数倍の膜厚を有する高屈折率材と低屈折率材のいずれかの層であり、前記第2のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長もしくはその奇数倍の膜厚の誘電体薄膜より構成され、奇数の層数から成ることを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
まずこの実施の形態の波長可変フィルタは以下の特性を満足することを目的とする。
小型:寸法100×100×50mm以下であること。
高速:チャンネル切替え時間が1 秒以下であること。
高精度:波長分解能が50pm以下であること。
長寿命:連続運転1000時間以上であること。
操作性:使用電源電圧が24V以下であること。
【0017】
図1は本発明の実施の形態1による波長可変フィルタの駆動系を示す図である。この実施の形態ではフィルタを回転させるためのモータとして、直流(DC)モータ11を使用する。そしてこのDCモータ11の回転軸にはエンコーダ12、減速機構として減速ギア13を接続しておく。そして減速ギア13の主軸には回転テーブル14を取付ける。この回転テーブル14上には誘電体多層膜フィルタ15が設けられている。誘電体多層膜フィルタ15は回転テーブル4上の回転軸に沿って取付けられている。エンコーダ12は例えばアブソリュート型のエンコーダを用い、その回転角度情報を制御部16に伝える。制御部16はその入力に基づいてDCモータ11をフィードバック制御し、所望の回転角度となるように制御する。誘電体多層膜フィルタ15には光ファイバ17よりコリメートレンズ18を介して平行光が入射される。又誘電体多層膜フィルタ15を通過した光を受光する位置に、コリメートレンズ19を介して受光用の光ファイバ20が設けられる。そしてDCモータ11を回転させると、減速ギア13によって減速され、回転テーブル14上に配置された誘電体多層膜フィルタ15が回転し、透過波長を変化させることができる。
【0018】
尚ここではDCモータ11の軸の両側にエンコーダ12と減速ギア13を設けているが、より高精度の回転角度情報を得るために減速ギア13の出力側にエンコーダ12を設けてもよい。
【0019】
次に誘電体多層膜フィルタ15について説明する。誘電体多層膜フィルタとしては回転角度が小さい0°付近の回転角を用いる場合には、従来の誘電体多層膜フィルタをそのまま用いることができる。又入射光の偏光面がS偏光、P偏光のいずれか一方であれば、偏光方向の相違による特性変化の影響を受けないため、任意の角度で用いることができる。又偏光に依存しない波長可変フィルタ特性を実現するために、以下のような第1,第2の誘電体多層膜フィルタ15A又は15Bを用いるようにしてもよい。
【0020】
(実施の形態2)
偏光方向の依存性の少ない第1の誘電体多層膜フィルタ15Aは、基板上に好ましくは4層の基本共振器構造を積層して構成される誘電体多層膜バンドパスフィルタであって、基本共振器構造は、第1のスタック層と、スペーサ層と、第2のスタック層とがこの順に積層されたものである。第1のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長の光学膜厚の誘電体薄膜より構成される。スペーサ層は、少なくとも4層以上の、1/4波長の光学膜厚の整数倍の膜厚を有する高屈折率材と低屈折率材の層を交互に積層した誘電体薄膜より構成され、これらの各層の整数倍数の係数の総和は正の偶数に等しいものである。又第2のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長の膜厚の誘電体薄膜より構成されることを特徴とするものである。
【0021】
又より具体的には、基板上に好ましくは4層の基本共振器構造を積層して構成される誘電体多層膜バンドパスフィルタであって、少なくとも最初と最後の基本共振器構造を除く基本共振器構造は、
A=[(XY)n (ai Xbi Y)j (YX)n rY]
で表されるものである。ここでXは1/4波長の光学膜厚を有する高屈折率材又は低屈折率材の誘電体薄膜であり、Yはそれ以外の屈折率材の1/4波長の光学膜厚を有する誘電体薄膜であり、iは1〜jまでの値をとる自然数であり、n,b1 ,a2 ,b2 は1以上の整数であり、b3 ,a4 ,b4 ・・・は0又は1以上の整数であり、a1 ,a3 の少なくとも一方は1以上の整数であり、a1 +b1 +a2 +・・・ai +bi の総和は正の偶数であり、rは1以上の正の奇数であり、これらの値は各基本共振器構造毎に決められることを特徴とするものである。
【0022】
この基本共振器構造は、第1、第2のスタック層がスペーサ層に対して対称な鏡像の関係にあることが好ましい。この誘電体多層膜バンドパスフィルタの基本共振器構造は、各基本共振器のスペーサ構造が全て同一としてもよい。又誘電体多層膜フィルタの基本共振器構造は、他の共振器構造と連結される際に低屈折率材及び高屈折率材のいずれかの1/4波長の光学膜厚の奇数倍の膜厚の結合層を介して接続することが好ましい。
【0023】
このような条件を満たした場合に、光線の入射角を0から増加し、フィルタ中心波長を可変する方式においてフィルタ波長可変範囲は50nm以上で、且つ偏光モード間のフィルタ中心波長の差は±200pm以下となる。そして共振器構造を4重以上とすることによって、必要なフィルタ特性をシャープにすることができる。
【0024】
本発明の誘電体多層膜バンドパスフィルタにおいては、基板には使用波長域において透明な広範囲な材料、例えば光学結晶、光学ガラス、石英、透明プラスチック、ポリマー材等を適用できる。誘電体多層膜バンドパスフィルタを構成する光学薄膜材料には、適用波長域において透明で一般的に使用されている材料から選択することができる。
【0025】
高屈折率膜、低屈折率膜としては、例えば屈折率が1.23〜5.67までの範囲では、フッ化カルシウムCaF2 (屈折率1.23)、フッ化マグネシウムMgF2 (屈折率1.38)、二酸化シリコンSiO2 (屈折率1.46)、酸化マグネシウムMgO(屈折率1.80)、五酸化タンタルTa2 O5 (屈折率2.15)、五酸化ニオブNb2 O5 (屈折率2.24)、二酸化チタンTiO2 (屈折率2.45)、セレン化亜鉛ZnSe(屈折率2.40)、テルル化鉛PbTe(屈折率5.67)、窒化アルミニウムAlN(屈折率1.94)、窒化シリコンSi3 N4 (屈折率1.95)、シリコンSi(屈折率3.4)、ゲルマニウムGe(屈折率4.0)、等の光学材料が用いられている。これらの光学薄膜のうち2種を高屈折率膜H、低屈折率膜Lとして選択する。
【0026】
そして薄膜の成膜は、例えば電子ビーム蒸着法、イオンアシスト蒸着法、DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタ法、分子線エピタキシー(MBE)法、化学気相蒸着(CVD),ディップコーティング法など、従来より用いられている製法が使用できる。フィルタを構成する多層膜設計においては、市販されている膜設計ソフトウェアが使用できる。例えばTFCalc(Software Spectra Inc.)、Essential Macload (Thin−Film Center, Inc.)などは光通信業界において主に使用されている。
【0027】
(実施の形態3)
次に偏光方向の依存性の少ない第2の誘電体多層膜フィルタ15Bについて説明する。第2の誘電体多層膜フィルタは、基板上に好ましくは4層の基本共振器構造を積層して構成される誘電体多層膜バンドパスフィルタであって、基本共振器構造は、第1のスタック層と、スペーサ層と、第2のスタック層とがこの順に積層されたものである。第1のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長もしくはその奇数倍の光学膜厚の誘電体薄膜より構成され、奇数の層数から成るものである。スペーサ層は、1/2波長の光学膜厚の整数倍の膜厚を有する高屈折率材と低屈折率材のいずれかの層である。第2のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長もしくはその奇数倍の膜厚の誘電体薄膜より構成され、奇数の層数から成ることを特徴とするものである。
【0028】
より具体的には、基板上に好ましくは4層の基本共振器構造を積層して構成される誘電体多層膜バンドパスフィルタであって、少なくとも最後の基本共振器構造を除く基本共振器構造は、
A=[(XbY)a X]dY[X(cYX)a ]eY
で表されるものである。ここでXは1/4波長の光学膜厚を有する高屈折率材又は低屈折率材の誘電体薄膜であり、Yはそれ以外の屈折率材の1/4波長の光学膜厚を有する誘電体薄膜であり、[(XbY)a X]は第1のスタック層であり、dYはスペーサ層であり、[X(cYX)a ]は第2のスタック層であり、aは自然数であり、b,cは3以上の正の奇数であり、dは0又は正の偶数であり、eは正の奇数であり、これらの値は各基本共振器構造毎に決められることを特徴とするものである。
【0029】
この基本共振器構造は、第1、第2のスタック層がスペーサ層に対して対称な鏡像の関係にあることが好ましい。この誘電体多層膜バンドパスフィルタの基本共振器構造は、各基本共振器のスペーサ構造が全て同一としてもよい。又誘電体多層膜フィルタの基本共振器構造は、他の共振器構造と連結される際に低屈折率材及び高屈折率材のいずれかの1/4波長の光学膜厚の奇数倍の膜厚の結合層を介して接続することが好ましい。
【0030】
このような条件を満たした場合に、光線の入射角を0から増加し、フィルタ中心波長を可変する方式においてフィルタ波長可変範囲は50nm以上で、且つ偏光モード間のフィルタ中心波長の差は±200pm以下となる。そして本発明では共振器構造を4重以上とすることによって必要なフィルタ特性をシャープにすることができる。この誘電体多層膜フィルタの基板や各高屈折率膜、低屈折率膜についても前述のものと同様である。
【0031】
【実施例】
(実施例1)
次に本発明の実施例1について説明する。本実施例1は、図1と同一の構造を有するものであって、DCモータとして、ドイツのFAULHABER社のDCミニモータを採用する。同モータは減速比41:1の減速ギア及びエンコーダを内蔵している。寸法がφ16、長さは40mm程度と小型であり、さらにギアダウン後の角度分解能は0. 004度と高分解能である。この分解能は誘電体多層膜フィルタへの光線の入射角度が20度付近において、波長分解能としておよそ20pmに相当しており、十分な特性である。さらに、応答性は20度の回転運動に対しても50msを要す程度と高速性を示している。駆動電圧は5Vから24Vより選択可能で、10000時間以上の連続運転が可能である。さらに−30〜+85℃までの温度範囲での使用が可能である。
【0032】
又誘電体多層膜フィルタとして前述した偏光モード間のフィルタ中心波長特性が分離しない第1の誘電体多層膜フィルタ15Aを用いる。このバンドパスフィルタは200GHz周波数間隔用の光通信ネットワークに用いられる5重共振器構造のバンドパスフィルタである。ここで設計波長λ0 は1610nmとした。基板として(株)オハラ製結晶ガラスWMS−15を使用した。高屈折率膜Hとして、誘電体薄膜Ta2 O5 (屈折率nH =2.15)を用い、低屈折率膜LとしてSiO2 膜(屈折率nL =1.46)を用いた。誘電体多層膜バンドパスフィルタの膜構造を以下に示す。
基板/
(HL)6 2H 3L 2H L(LH)6 L
((HL)7 2H 3L 2H L(LH)7 L)3
(HL)6 2H 3L 2H L(LH)5 1.0136L 0.7034H 0.5721L/空気(屈折率1.0)
【0033】
図2(a)は本実施例による誘電体多層膜バンドパスフィルタの膜構造を示す図であり、基板21上に第1〜第5の共振器構造22,23,24,25,26が積層されている。図2(b)は第1の共振器構造22の構造を示している。第1の共振器構造22は、(HL)6 から成る第1のスタック層22−1、2H3L2HLから成るスペーサ層22−2、(LH)6 から成る第2のスタック層22−3、及びLから成る結合層22−4から成り立っている。第2〜第4の共振器構造は、第1,第2のスタック層の層数を除いて第1の同一の共振器構造と同一であり、これらの共振器構造が4層積層されている。最終の第5の共振器構造のみが最後の3層の膜厚がわずかに異なっている。
【0034】
各共振器構造のスペーサ層の構成は全て同一で、a1 =2,b1 =3,a2 =2,b2 =1である。各層の係数の合計、即ちa1 +b1 +a2 +b2 は8であり、偶数となっている。第5の共振器構造の最後の3層は空気層(屈折率1.0)との整合を高め、挿入損失を低減し、且つ透過バンド内のフィルタ特性を平坦化するために最適化された。多層膜の総数は152層、全体の物理膜厚は40μmである。各偏光モードに対応するバンドパスフィルタの半値全幅の平均値は1nmである。入射角度0°の場合は図3(a)にフィルタの透過特性を示すように、フィルタの中心波長は1610nmである。この図に示されるようにS偏光とP偏光及びその平均(Ave)を示す曲線は重なっている。入射角度21°の場合は図3(b)に示すように、中心波長1573nmであり、入射角度の変化により37nmの波長可変性を有していることがわかる。又フィルタの透過バンド帯域は平坦性に優れ、低挿入損失で且つS偏光とP偏光の挿入損失差も極めて少ない特性を示している。偏光特性もS偏光の中心波長はP偏光の透過バンド幅内に収まっており、S偏光及びP偏光のフィルタ透過特性は入射角度を増加しても夫々大きな歪みがないことがわかる。
【0035】
(実施例2)
次に本発明の実施例2について説明する。本実施例2はモータ11、減速ギア12、エンコーダ13及び回転テーブル14は前述した実施例1と同様のものと同一である。ここではフィルタのみを偏光依存性の少ない第2のタイプの誘電体多層膜フィルタ15Bとしたものである。このフィルタとしては、200GHz周波数間隔用の光通信ネットワークに用いられる5重共振器構造のバンドパスフィルタである。ここで設計波長λ0 は1560nmとした。基板として(株)オハラ製結晶ガラスBK7を使用した。高屈折率膜Hとして、誘電体薄膜Nb2 O5 (屈折率nH =2.25)を用い、低屈折率膜LとしてSiO2 膜(屈折率nL =1.47)を用いた。誘電体多層膜バンドパスフィルタの膜構造を以下に示す。
基板/
(H3L)5 H 2L H (3LH)5 9L
[(H3L)6 H 2L H (3LH)6 9L]3
(H3L)5 H 2L H (3LH)4 0.686L 1.4974H/空気(屈折率1.0)
【0036】
図4(a)は本実施例による誘電体多層膜バンドパスフィルタの膜構造を示す図であり、基板31上に第1〜第5の共振器構造32,33,34,35,36が積層されている。図4(b)は第1の共振器構造32の構造を示している。第1の共振器構造32は、(H3L)5 Hから成る第1のスタック層32−1、3Lから成るスペーサ層32−2、H(3LH)5 から成る第2のスタック層32−3、及び9Lから成る結合層32−4から成り立っている。第2〜第4の共振器構造33〜35は、第1,第2のスタック層の層数を除いて第1の同一の共振器構造と同一であり、これらの共振器構造が3層積層されている。最終の第5の共振器構造のみの最後の2層の膜厚がわずかに異なっている。
【0037】
各共振器構造のスペーサ層の構成は全て同一で、2Lであり、a=5又は6,b=3,c=3,d=2,e=9である。第5の共振器構造の最後の2層は空気層(屈折率1.0)との整合を高め、挿入損失を低減し、且つ透過バンド内のフィルタ特性を平坦化するために最適化された。多層膜の総数は131層、全体の物理膜厚は68.1μmである。各偏光モードに対応するバンドパスフィルタの半値全幅の平均値は0.9nmである。入射角度0°の場合は図5(a)にフィルタの透過特性を示すように、フィルタの中心波長は1560nmである。この図に示されるようにS偏光とP偏光及びその平均(Ave)を示す曲線は重なっている。入射角度24°の場合は図5(b)に示すように、中心波長1508.3nmであり、入射角度の変化により50.7nmの波長可変性を有していることがわかる。又フィルタの透過バンド帯域は平坦性に優れ、低挿入損失で且つS偏光とP偏光の挿入損失差も極めて少ない特性を示している。偏光特性もS偏光の中心波長はP偏光の透過バンド幅内に収まっており、S偏光及びP偏光のフィルタ透過特性は入射角度を増加しても夫々大きな歪みがないことがわかる。この実施例2においても実施例1と同様の効果が得られる。
【0038】
(実施例3)
次に本発明の実施例3について説明する。この実施例では実施例1と同一のDCモータ11、エンコーダ12、減速ギア13、制御部16を用い、回転テーブル14上に図6に示すように4つのフィルタを回転対称に配置したものである。このフィルタは図6に示すように回転軸及び回転テーブル14に垂直になるように直立して4つの誘電体多層膜フィルタ41,42,43,44を取付ける。各フィルタは例えば実施例1又は2のいずれかと同様の膜構造を有するものとし、その中心波長のみが夫々1610nm、1580nm、1550nm、1520nmと互いに異なっている。各フィルタはフィルタへの光線入射角0度から21度の範囲で波長可変性として30nm以上が得られている。DCモータ11を回転させて任意の光信号成分を含む光が入射する1つのフィルタを選択すると共に、選択したフィルタへの入射角度を変える。こうすれば広い波長選択の範囲で波長が選択され、いずれかの波長成分を持つ透過光として出力される。
【0039】
図7には本実施例に用いた誘電体多層膜フィルタの波長可変特性を示す。この図において(F41,0°)はフィルタ41にθ=0°で光を入射したときの特性を示しており、(F41,21°)はθ=21°としたときの特性を示している。他も同様である。こうすれば波長1610nmから波長1485nmまで波長可変域として125nmの広帯域特性が得られている。なお、2つのフィルタでおなじフィルタ特性をカバーしている波長域、例えば1574nmから1580nmなどでは、重複して波長掃引しないように片方のフィルタのみ作用するように制御プログラムにてあらかじめ設定しておけばよい。
【0040】
DCモータ1には実施例1で示したものと同じDCモータと減速ギア13と用いているため、分解能は0. 004度と高分解能である。この分解能は誘電体多層膜フィルタへの光線の入射角度が20度付近において、波長分解能としておよそ20pmに相当しており、十分な特性である。波長1610nmから波長1485nmまでの波長掃引には、回転テーブル14をおよそ291度回転させる必要があるが、その場合でも応答性は0.7秒を要す程度と高速性を示している。駆動電圧は5Vから24Vより選択可能で、10000時間以上の連続運転が可能である。さらに−30〜+85℃までの温度範囲での使用が可能である。
【0041】
以上により、実施例1の効果に加えて4枚の波長可変域の異なる誘電体多層膜フィルタを用いて、おのおのの誘電体多層膜フィルタへの光線の入射角を0度から21度の範囲で変えることにより、誘電体多層膜フィルタの中心波長は1610nmから1485nmまで、125nmの広帯域波長可変性を有しており、かつ透過バンド域内において偏光依存性も十分小さく抑えられている。
【0042】
尚実施例3では4枚の誘電体多層膜フィルタを用いているが、回転テーブル上に配置できる任意の数のフィルタを用いてもよいことはいうまでもない。
【0043】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明によれば、高分解能のDCモータを用いることによって波長分解能を改善することができ、又小型で連続運転時間を改善することができる。更に使用電源電圧が例えば24V以下と低く、高電圧を用いる必要がなくなる。又請求項4,5に記載の誘電体多層膜フィルタを用いることによって入射角度を大きくしていっても偏光モード間の特性の変動がほとんどなく、フィルタ特性を劣化させることがない。従ってこれらの波長可変フィルタを光通信や光計測、光診断等に用いることによって優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における波長可変光フィルタの駆動系の一例を示す配置図である。
【図2】実施例1の誘電体多層膜フィルタの構造を示す図である。
【図3】実施例1に用いられる誘電体多層膜フィルタの入射角0°及び21°のときの透過特性を示す図である。
【図4】実施例2による誘電体多層膜フィルタの構造を示す図である。
【図5】実施例2に用いられる誘電体多層膜フィルタの入射角0°及び24°のときの透過特性を示す図である。
【図6】実施の形態3による波長可変光フィルタのフィルタの配置を示す図である。
【図7】実施の形態3による波長可変光フィルタのフィルタ特性を示す図である。
【図8】誘電体多層膜フィルタへの光線入射角の定義を示す図である。
【図9】多層膜フィルタへの光線入射角とフィルタの中心波長の関係を示す図である。
【符号の説明】
11 DCモータ
12 エンコーダ
13 減速ギア
14 回転テーブル
15,15A,15B,41〜44 誘電体多層膜フィルタ
17,19 光ファイバ
18,20 コリメートレンズ
21,31 基板
22,32 第1共振器構造
23,33 第2共振器構造
24,34 第3共振器構造
25,35 第4共振器構造
26,36 第5共振器構造
Claims (5)
- DCモータと,
前記DCモータの回転を減速させる減速機構と、
前記減速機構に連結され、前記DCモータの回転に応じて光を入射させる入射角を回転させる誘電体多層膜フィルタと、を具備することを特徴とする波長可変光フィルタ。 - 前記DCモータ及び前記減速機構のいずれかに接続され、前記DCモータの回転位置を検出するエンコーダと、
前記エンコーダの出力を用いて前記DCモータにフィードバックすることにより、前記DCモータの回転量を制御する制御部と、を更に有することを特徴とする請求項1記載の波長可変光フィルタ。 - 前記減速機構に取付けられる回転テーブルと、前記回転テーブルに固定された少なくとも2枚の誘電体多層膜フィルタと、を有することを特徴とする請求項1又は2記載の波長可変光フィルタ。
- 前記誘電体多層膜フィルタは、基板上に複数の基本共振器構造を積層して構成される誘電体多層膜バンドパスフィルタであって、
前記基本共振器構造は、第1のスタック層と、スペーサ層と、第2のスタック層とがこの順に積層されたものであり、
前記第1のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長の光学膜厚の誘電体薄膜より構成されるものであり、
前記スペーサ層は、少なくとも4層以上の、1/4波長の光学膜厚の整数倍の膜厚を有する高屈折率材と低屈折率材の層を交互に積層した誘電体薄膜より構成され、これらの各層の整数倍数の係数の総和は正の偶数に等しいものであり、
前記第2のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長の膜厚の誘電体薄膜より構成されるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の波長可変光フィルタ。 - 前記誘電体多層膜フィルタは、基板上に複数の基本共振器構造を積層して構成される誘電体多層膜バンドパスフィルタであって、
前記基本共振器構造は、第1のスタック層と、スペーサ層と、第2のスタック層とがこの順に積層されたものであり、
前記第1のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長もしくはその奇数倍の光学膜厚の誘電体薄膜より構成され、奇数の層数から成るものであり、
前記スペーサ層は、1/2波長の光学膜厚の整数倍の膜厚を有する高屈折率材と低屈折率材のいずれかの層であり、
前記第2のスタック層は、高屈折率材と低屈折率材とを交互に積層した1/4波長もしくはその奇数倍の膜厚の誘電体薄膜より構成され、奇数の層数から成るものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の波長可変光フィルタ。
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2002
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