JP2004183724A - 防振装置及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】振動発生部からの振動を一層効果的に吸収することができ、特に、大荷重負荷時における動特性を改善することができる防振装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具1と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具2と、筒状金具1と取付金具2との間に、空間部3を有するように配置された弾性体4とからなり、空間部3の内部に、金属弾性体6Aと非金属弾性体6Bとの複合体6が設置されている防振装置、及び、予め非金属弾性体6Aと金属弾性体6Bとの複合体6を形成し、その後、空間部3の内部に、複合体6を挿入する防振装置の製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具1と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具2と、筒状金具1と取付金具2との間に、空間部3を有するように配置された弾性体4とからなり、空間部3の内部に、金属弾性体6Aと非金属弾性体6Bとの複合体6が設置されている防振装置、及び、予め非金属弾性体6Aと金属弾性体6Bとの複合体6を形成し、その後、空間部3の内部に、複合体6を挿入する防振装置の製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車、一般産業用機械等に適用して振動発生部からの振動を吸収する防振装置及びその製造方法に関するものであり、特に、エンジンマウントやトルクロッドのブッシュに好適な防振装置及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両の振動発生部となるエンジンと振動受信部となる車体との間には、エンジンマウントとしての防振装置が設置されており、エンジンで発生する振動をこの防振装置が吸収し、車体側に伝達されるのを阻止して乗り心地を向上させている。
【0003】
そして特に、前部にエンジンを配置し、前輪を駆動するFFタイプの自動車等にあっては、発進時等の大きなトルク反力を吸収するため、防振装置として、ゴムブッシュをブラケットに固定し、シャフトで連結したトルクロッドが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
例えば、図3は、トルクロッドのゴムブッシュ等として使用されている従来の防振装置を示すものであり、筒状金具11と取付金具12とをゴム弾性体14で連結してゴムブッシュとし、そのゴムブッシュをブラケット21に圧入して固定した正面図を示すものである(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−114226号公報 (第2頁、図1−7)
【特許文献2】
特開平6−74275号公報 (第2−3頁、図1−3)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3に示す従来の防振装置では、たわみが大きくなり、空間部13におけるゴム弾性体14が筒状金具11と接触するストッパ当りが発生すると、たわみに対する荷重が急激に増加してしまう。
【0007】
このストッパ当りに対し、更なる乗り心地の向上を図るためには、第1に、ストッパの初期当りを軟らかくすること、第2に、ストッパ当り後の静特性を確保しつつ、動特性を改善することが求められる。
【0008】
そこで本発明は、振動発生部からの振動を一層効果的に吸収することができ、特に、大荷重負荷時における動特性を改善することができる防振装置及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであって、その第1の要旨は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体とからなり、空間部の内部に、金属弾性体と非金属弾性体との複合体が設置されている防振装置に係るものである。
【0010】
そして好ましくは、金属弾性体がスチールウールであり、非金属弾性体がウレタンフォームである防振装置に係るものである。また、複合体が設置された部位の筒状金具には、弾性ストッパが固定されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の第2の要旨は、このような防振装置の製造方法であって、予め金属弾性体と非金属弾性体との複合体を形成し、その後、空間部の内部に、複合体を挿入する防振装置の製造方法に係るものである。
【0012】
そして好ましくは、型内にスチールウールを挿入し、その後、ウレタン原料を注入して発泡させることにより、金属弾性体となるスチールウールと非金属弾性体となるウレタンフォームとの複合体を得る防振装置の製造方法に係るものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の防振装置は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体とからなっている。
【0014】
即ち、筒状金具と取付金具とを連結する弾性体の防振効果によって、振動の入力に対する減衰機能と絶縁機能を持ち、例えば、車両の振動発生部となるエンジンと振動受信部となる車体との間にあって、エンジンで発生する振動を吸収し、車体側に伝達されるのを阻止するものである。従って、本発明の防振装置は、一般的な荷重負荷時の振動の入力に対し、従来のものと同等の性能を発揮する。
【0015】
そして、本発明の防振装置は特徴的に、弾性体のない空間部の内部に、金属弾性体と非金属弾性体との複合体が設置されている。即ち、弾性体に加えて、特定の複合体を直列に配置することにより、ストッパの初期当りを軟らかくすると共に、ストッパ当り後の静特性を確保しつつ、動特性を改善している。
【0016】
この点について更に詳述すると、例えば、FFタイプの自動車は発進時に大きなトルク反力が発生し、エンジンの回転移動に伴う大荷重負荷時に弾性体のたわみが急激に進行し、筒状金具と接触するストッパ当りに至る。
【0017】
この際、従来の防振装置のように複合体がなければ、弾性体が突然に筒状金具と接触することになるが、本発明の防振装置では弾性体と共に複合体がたわみ、ストッパ当り時に弾性体と筒状金具との間に複合体が介在する分だけ初期当りが軟らかくなるのである。
【0018】
しかも、ストッパ当り後において、複合体がたわみ切った状態では複合体の存在を無視できることから、弾性体のみによる従来と同様の静特性が確保される。一方、動特性は、複合体のたわみ変化を伴うことになるから、弾性体と複合体とが共に作用し、複合体が介在する分だけ特性が改善されるのである。
【0019】
このような複合体の作用効果は防振対象等によって求められるものが異なるので、弾性体等との関係は必要に応じて適宜設定すればよいが、エンジンマウントやトルクロッドのブッシュに適用する場合には、特に、弾性ストッパとの関係が重要となる。
【0020】
即ち、ストッパ当り後のたわみ−荷重曲線を所望のものとするには、弾性体とは別に弾性ストッパを設け、弾性体と筒状金具とが直接当らないようにすることが効果的である。この場合、複合体が設置された部位の筒状金具に弾性ストッパを固定し、弾性体と弾性ストッパとの間に複合体が挟まれるようにする。
【0021】
そして、特にエンジンマウントやトルクロッドのブッシュに適用するに際しては、弾性ストッパよりも複合体の静的バネ定数ksを小さく設定することによって、たわみ−荷重曲線の曲率の増加を滑らかにすることが可能となり、ストッパの初期当りが軟らかくなる結果、乗り心地が向上するのである。
【0022】
また、弾性ストッパよりも複合体の動的バネ定数kdを小さく設定することによって、ストッパ当り後のたわみの増加を抑制しつつ、ストッパ当り後の防振装置全体の動的バネ定数を小さくすることが可能となる。
【0023】
即ち、たわみが抑制される結果、エンジンの移動量が増加せず、エンジンルーム内のスペースを悪化させることがないのである。しかも、動的バネ定数が大きくなると騒音の伝達も増えてしまうが、動的バネ定数を小さくできる結果、静かな室内を実現できるのである。
【0024】
ところで、弾性体や弾性ストッパには、ゴム(特に、NRやSBR系ゴム)が好適に使用されるが、複合体の静的バネ定数ksや動的バネ定数kdを弾性ストッパよりも小さくするには、複合体の構成要素である金属弾性体をスチールウールとし、非金属弾性体をウレタンフォームとすることが効果的である。
【0025】
また、スチールウールとウレタンフォームとの複合体を得るには、型内にスチールウールを挿入し、その後、ウレタン原料を注入して発泡させればよい。そして、この複合体を空間部の内部に挿入すれば、本発明の防振装置を簡便に製造することができる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の好ましい実施の形態の具体例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の防振装置の一例を示す正面図である。図1に示す実施例の防振装置は、自動車のエンジンと車体との間に設置されるトルクロッドであって、一対のブラケット21がシャフト22で連結されている。
【0027】
そして、ブラケット21には、筒状金具1と、取付金具2と、筒状金具1と取付金具2とを連結する弾性体4とからなるブッシュが圧入され、一方の取付金具2がエンジンに、他方の取付金具2が車体に接続される。
【0028】
ここで、弾性体4はNR系ゴムからなり、空間部3の内部には、金属弾性体6A(スチールウール)と非金属弾性体6B(ウレタンフォーム)との複合体6が設置され、複合体6が設置された部位の筒状金具1には、NR系ゴムからなる弾性ストッパ5が固定されている。
【0029】
図2は、図1の実施例に使用する複合体6の製造方法を示す概念図である。図2に示す通り、型30内に金属弾性体6A(スチールウール)を挿入した後、ウレタン原料を注入して発泡させることにより、金属弾性体6A(スチールウール)と非金属弾性体6B(ウレタンフォーム)との複合体6を得る。そして、この複合体6を空間部3の内部に挿入すれば、図1に示す実施例の防振装置が製造できる。
【0030】
なお、複合体6の静的バネ定数ks及び動的バネ定数kdは、弾性体4及び弾性ストッパ5よりも小さく、図1に示す実施例のブッシュ部分(ブラケット21及びシャフト22を除いた部分)と、更に複合体6を取り除いた比較例のたわみ−荷重曲線をグラフ化したところ、実施例は比較例に対してたわみ−荷重曲線の曲率の増加が滑らかになっていた。
【0031】
また、荷重8kNにおいて、動変位±0.05mm、100Hz及び400Hzで動特性を測定したところ、静的バネ定数ks(荷重8kN)は、比較例よりも実施例(ブッシュ部分)の方が、緩衝体6の存在によって10%程度上がっていたが、動的バネ定数kdは、約20%(100Hz)〜約25%(400Hz)下がっていた。
【0032】
従って、実施例の防振装置は、たわみの増加が抑制され、かつ、動的バネ定数が顕著に小さくなっており、動倍率(kd/ks)が低いことが確認された。
【0033】
【発明の効果】
本発明の防振装置は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体とからなり、空間部の内部に、金属弾性体と非金属弾性体との複合体が設置されているので、振動発生部からの振動を一層効果的に吸収することができ、大荷重負荷時における動特性を改善することができる。
【0034】
また、本発明の防振装置の製造方法は、予め金属弾性体と非金属弾性体との複合体を形成し、その後、空間部の内部に、複合体を挿入するだけであり、この複合体も、型内にスチールウールを挿入し、その後、ウレタン原料を注入して発泡させれば、極めて簡便に金属弾性体(スチールウール)と非金属弾性体(ウレタンフォーム)との複合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の防振装置の実施例を示す正面図である。
【図2】図2は、図1の実施例に使用する複合体の製造方法を示す概念図である。
【図3】図3は、従来の防振装置を示す正面図である。
【符号の説明】
1‥筒状金具
2‥取付金具
3‥空間部
4‥弾性体
5‥弾性ストッパ
6‥複合体
6A‥金属弾性体
6B‥非金属弾性体
11‥筒状金具
12‥取付金具
13‥空間部
14‥弾性体
21‥ブラケット
22‥シャフト
30‥型
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車、一般産業用機械等に適用して振動発生部からの振動を吸収する防振装置及びその製造方法に関するものであり、特に、エンジンマウントやトルクロッドのブッシュに好適な防振装置及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両の振動発生部となるエンジンと振動受信部となる車体との間には、エンジンマウントとしての防振装置が設置されており、エンジンで発生する振動をこの防振装置が吸収し、車体側に伝達されるのを阻止して乗り心地を向上させている。
【0003】
そして特に、前部にエンジンを配置し、前輪を駆動するFFタイプの自動車等にあっては、発進時等の大きなトルク反力を吸収するため、防振装置として、ゴムブッシュをブラケットに固定し、シャフトで連結したトルクロッドが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
例えば、図3は、トルクロッドのゴムブッシュ等として使用されている従来の防振装置を示すものであり、筒状金具11と取付金具12とをゴム弾性体14で連結してゴムブッシュとし、そのゴムブッシュをブラケット21に圧入して固定した正面図を示すものである(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−114226号公報 (第2頁、図1−7)
【特許文献2】
特開平6−74275号公報 (第2−3頁、図1−3)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3に示す従来の防振装置では、たわみが大きくなり、空間部13におけるゴム弾性体14が筒状金具11と接触するストッパ当りが発生すると、たわみに対する荷重が急激に増加してしまう。
【0007】
このストッパ当りに対し、更なる乗り心地の向上を図るためには、第1に、ストッパの初期当りを軟らかくすること、第2に、ストッパ当り後の静特性を確保しつつ、動特性を改善することが求められる。
【0008】
そこで本発明は、振動発生部からの振動を一層効果的に吸収することができ、特に、大荷重負荷時における動特性を改善することができる防振装置及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであって、その第1の要旨は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体とからなり、空間部の内部に、金属弾性体と非金属弾性体との複合体が設置されている防振装置に係るものである。
【0010】
そして好ましくは、金属弾性体がスチールウールであり、非金属弾性体がウレタンフォームである防振装置に係るものである。また、複合体が設置された部位の筒状金具には、弾性ストッパが固定されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の第2の要旨は、このような防振装置の製造方法であって、予め金属弾性体と非金属弾性体との複合体を形成し、その後、空間部の内部に、複合体を挿入する防振装置の製造方法に係るものである。
【0012】
そして好ましくは、型内にスチールウールを挿入し、その後、ウレタン原料を注入して発泡させることにより、金属弾性体となるスチールウールと非金属弾性体となるウレタンフォームとの複合体を得る防振装置の製造方法に係るものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の防振装置は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体とからなっている。
【0014】
即ち、筒状金具と取付金具とを連結する弾性体の防振効果によって、振動の入力に対する減衰機能と絶縁機能を持ち、例えば、車両の振動発生部となるエンジンと振動受信部となる車体との間にあって、エンジンで発生する振動を吸収し、車体側に伝達されるのを阻止するものである。従って、本発明の防振装置は、一般的な荷重負荷時の振動の入力に対し、従来のものと同等の性能を発揮する。
【0015】
そして、本発明の防振装置は特徴的に、弾性体のない空間部の内部に、金属弾性体と非金属弾性体との複合体が設置されている。即ち、弾性体に加えて、特定の複合体を直列に配置することにより、ストッパの初期当りを軟らかくすると共に、ストッパ当り後の静特性を確保しつつ、動特性を改善している。
【0016】
この点について更に詳述すると、例えば、FFタイプの自動車は発進時に大きなトルク反力が発生し、エンジンの回転移動に伴う大荷重負荷時に弾性体のたわみが急激に進行し、筒状金具と接触するストッパ当りに至る。
【0017】
この際、従来の防振装置のように複合体がなければ、弾性体が突然に筒状金具と接触することになるが、本発明の防振装置では弾性体と共に複合体がたわみ、ストッパ当り時に弾性体と筒状金具との間に複合体が介在する分だけ初期当りが軟らかくなるのである。
【0018】
しかも、ストッパ当り後において、複合体がたわみ切った状態では複合体の存在を無視できることから、弾性体のみによる従来と同様の静特性が確保される。一方、動特性は、複合体のたわみ変化を伴うことになるから、弾性体と複合体とが共に作用し、複合体が介在する分だけ特性が改善されるのである。
【0019】
このような複合体の作用効果は防振対象等によって求められるものが異なるので、弾性体等との関係は必要に応じて適宜設定すればよいが、エンジンマウントやトルクロッドのブッシュに適用する場合には、特に、弾性ストッパとの関係が重要となる。
【0020】
即ち、ストッパ当り後のたわみ−荷重曲線を所望のものとするには、弾性体とは別に弾性ストッパを設け、弾性体と筒状金具とが直接当らないようにすることが効果的である。この場合、複合体が設置された部位の筒状金具に弾性ストッパを固定し、弾性体と弾性ストッパとの間に複合体が挟まれるようにする。
【0021】
そして、特にエンジンマウントやトルクロッドのブッシュに適用するに際しては、弾性ストッパよりも複合体の静的バネ定数ksを小さく設定することによって、たわみ−荷重曲線の曲率の増加を滑らかにすることが可能となり、ストッパの初期当りが軟らかくなる結果、乗り心地が向上するのである。
【0022】
また、弾性ストッパよりも複合体の動的バネ定数kdを小さく設定することによって、ストッパ当り後のたわみの増加を抑制しつつ、ストッパ当り後の防振装置全体の動的バネ定数を小さくすることが可能となる。
【0023】
即ち、たわみが抑制される結果、エンジンの移動量が増加せず、エンジンルーム内のスペースを悪化させることがないのである。しかも、動的バネ定数が大きくなると騒音の伝達も増えてしまうが、動的バネ定数を小さくできる結果、静かな室内を実現できるのである。
【0024】
ところで、弾性体や弾性ストッパには、ゴム(特に、NRやSBR系ゴム)が好適に使用されるが、複合体の静的バネ定数ksや動的バネ定数kdを弾性ストッパよりも小さくするには、複合体の構成要素である金属弾性体をスチールウールとし、非金属弾性体をウレタンフォームとすることが効果的である。
【0025】
また、スチールウールとウレタンフォームとの複合体を得るには、型内にスチールウールを挿入し、その後、ウレタン原料を注入して発泡させればよい。そして、この複合体を空間部の内部に挿入すれば、本発明の防振装置を簡便に製造することができる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の好ましい実施の形態の具体例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の防振装置の一例を示す正面図である。図1に示す実施例の防振装置は、自動車のエンジンと車体との間に設置されるトルクロッドであって、一対のブラケット21がシャフト22で連結されている。
【0027】
そして、ブラケット21には、筒状金具1と、取付金具2と、筒状金具1と取付金具2とを連結する弾性体4とからなるブッシュが圧入され、一方の取付金具2がエンジンに、他方の取付金具2が車体に接続される。
【0028】
ここで、弾性体4はNR系ゴムからなり、空間部3の内部には、金属弾性体6A(スチールウール)と非金属弾性体6B(ウレタンフォーム)との複合体6が設置され、複合体6が設置された部位の筒状金具1には、NR系ゴムからなる弾性ストッパ5が固定されている。
【0029】
図2は、図1の実施例に使用する複合体6の製造方法を示す概念図である。図2に示す通り、型30内に金属弾性体6A(スチールウール)を挿入した後、ウレタン原料を注入して発泡させることにより、金属弾性体6A(スチールウール)と非金属弾性体6B(ウレタンフォーム)との複合体6を得る。そして、この複合体6を空間部3の内部に挿入すれば、図1に示す実施例の防振装置が製造できる。
【0030】
なお、複合体6の静的バネ定数ks及び動的バネ定数kdは、弾性体4及び弾性ストッパ5よりも小さく、図1に示す実施例のブッシュ部分(ブラケット21及びシャフト22を除いた部分)と、更に複合体6を取り除いた比較例のたわみ−荷重曲線をグラフ化したところ、実施例は比較例に対してたわみ−荷重曲線の曲率の増加が滑らかになっていた。
【0031】
また、荷重8kNにおいて、動変位±0.05mm、100Hz及び400Hzで動特性を測定したところ、静的バネ定数ks(荷重8kN)は、比較例よりも実施例(ブッシュ部分)の方が、緩衝体6の存在によって10%程度上がっていたが、動的バネ定数kdは、約20%(100Hz)〜約25%(400Hz)下がっていた。
【0032】
従って、実施例の防振装置は、たわみの増加が抑制され、かつ、動的バネ定数が顕著に小さくなっており、動倍率(kd/ks)が低いことが確認された。
【0033】
【発明の効果】
本発明の防振装置は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体とからなり、空間部の内部に、金属弾性体と非金属弾性体との複合体が設置されているので、振動発生部からの振動を一層効果的に吸収することができ、大荷重負荷時における動特性を改善することができる。
【0034】
また、本発明の防振装置の製造方法は、予め金属弾性体と非金属弾性体との複合体を形成し、その後、空間部の内部に、複合体を挿入するだけであり、この複合体も、型内にスチールウールを挿入し、その後、ウレタン原料を注入して発泡させれば、極めて簡便に金属弾性体(スチールウール)と非金属弾性体(ウレタンフォーム)との複合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の防振装置の実施例を示す正面図である。
【図2】図2は、図1の実施例に使用する複合体の製造方法を示す概念図である。
【図3】図3は、従来の防振装置を示す正面図である。
【符号の説明】
1‥筒状金具
2‥取付金具
3‥空間部
4‥弾性体
5‥弾性ストッパ
6‥複合体
6A‥金属弾性体
6B‥非金属弾性体
11‥筒状金具
12‥取付金具
13‥空間部
14‥弾性体
21‥ブラケット
22‥シャフト
30‥型
Claims (6)
- 振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具(1)と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具(2)と、筒状金具(1)と取付金具(2)との間に、空間部(3)を有するように配置された弾性体(4)とからなり、空間部(3)の内部に、金属弾性体(6A)と非金属弾性体(6B)との複合体(6)が設置されていることを特徴とする防振装置。
- 金属弾性体(6A)が、スチールウールであることを特徴とする請求項1に記載の防振装置。
- 非金属弾性体(6B)が、ウレタンフォームであることを特徴とする請求項1又は2に記載の防振装置。
- 複合体(6)が設置された部位の筒状金具(1)に、弾性ストッパ(5)が固定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の防振装置。
- 振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具(1)と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具(2)と、筒状金具(1)と取付金具(2)との間に、空間部(3)を有するように配置された弾性体(4)とからなり、空間部(3)の内部に、金属弾性体(6A)と非金属弾性体(6B)との複合体(6)が設置された防振装置の製造方法であって、予め金属弾性体(6A)と非金属弾性体(6B)との複合体(6)を形成し、その後、空間部(3)の内部に、複合体(6)を挿入することを特徴とする防振装置の製造方法。
- 型内にスチールウールを挿入し、その後、ウレタン原料を注入して発泡させることにより、金属弾性体(6A)となるスチールウールと非金属弾性体(6B)となるウレタンフォームとの複合体(6)を得ることを特徴とする請求項5に記載の防振装置の製造方法。
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ID=32752036
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002349531A Pending JP2004183724A (ja) | 2002-12-02 | 2002-12-02 | 防振装置及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004183724A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008024267A (ja) * | 2006-07-25 | 2008-02-07 | Toyo Tire & Rubber Co Ltd | トルクロッド |
JP2008196611A (ja) * | 2007-02-13 | 2008-08-28 | Toyo Tire & Rubber Co Ltd | 防振装置 |
-
2002
- 2002-12-02 JP JP2002349531A patent/JP2004183724A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008024267A (ja) * | 2006-07-25 | 2008-02-07 | Toyo Tire & Rubber Co Ltd | トルクロッド |
JP2008196611A (ja) * | 2007-02-13 | 2008-08-28 | Toyo Tire & Rubber Co Ltd | 防振装置 |
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