JP2004183725A - 防振装置及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】振動発生部からの振動を一層効果的に吸収することができ、特に、大荷重負荷時における動特性を改善することができる防振装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具1と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具2と、筒状金具1と取付金具2との間に、空間部3を有するように配置された弾性体4と、空間部3を隔てて弾性体4と対峙する弾性ストッパ5とからなり、弾性ストッパ5の内部に、弾性ストッパ5と異なるバネ特性を有する緩衝体6が充填されている防振装置、及び、空間部3に押え治具31を挿入し、その後、筒状金具1の外部から緩衝体6を充填することにより、空間部3を所望の形状とする防振装置の製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具1と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具2と、筒状金具1と取付金具2との間に、空間部3を有するように配置された弾性体4と、空間部3を隔てて弾性体4と対峙する弾性ストッパ5とからなり、弾性ストッパ5の内部に、弾性ストッパ5と異なるバネ特性を有する緩衝体6が充填されている防振装置、及び、空間部3に押え治具31を挿入し、その後、筒状金具1の外部から緩衝体6を充填することにより、空間部3を所望の形状とする防振装置の製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車、一般産業用機械等に適用して振動発生部からの振動を吸収する防振装置及びその製造方法に関するものであり、特に、エンジンマウントやトルクロッドのブッシュに好適な防振装置及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両の振動発生部となるエンジンと振動受信部となる車体との間には、エンジンマウントとしての防振装置が設置されており、エンジンで発生する振動をこの防振装置が吸収し、車体側に伝達されるのを阻止して乗り心地を向上させている。
【0003】
そして特に、前部にエンジンを配置し、前輪を駆動するFFタイプの自動車等にあっては、発進時等の大きなトルク反力を吸収するため、防振装置として、ゴムブッシュをブラケットに固定し、シャフトで連結したトルクロッドが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
例えば、図3は、トルクロッドのゴムブッシュ等として使用されている従来の防振装置を示すものであり、筒状金具11と取付金具12とをゴム弾性体14で連結してゴムブッシュとし、そのゴムブッシュをブラケット21に圧入して固定した正面図を示すものである(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−114226号公報 (第2頁、図1−7)
【特許文献2】
特開平6−74275号公報 (第2−3頁、図1−3)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3に示す従来の防振装置では、たわみが大きくなり、空間部13におけるゴム弾性体14が筒状金具11と接触するストッパ当りが発生すると、たわみに対する荷重が急激に増加してしまう。
【0007】
このストッパ当りに対し、更なる乗り心地の向上を図るためには、第1に、ストッパの初期当りを軟らかくすること、第2に、ストッパ当り後の静特性を確保しつつ、動特性を改善することが求められる。
【0008】
そこで本発明は、振動発生部からの振動を一層効果的に吸収することができ、特に、大荷重負荷時における動特性を改善することができる防振装置及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであって、その第1の要旨は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体と、空間部を隔てて弾性体と対峙する弾性ストッパとからなり、弾性ストッパの内部に、弾性ストッパと異なるバネ特性を有する緩衝体が充填されている防振装置に係るものである。
【0010】
そして好ましくは、緩衝体の静的バネ定数ks及び動的バネ定数kdが弾性ストッパよりも小さい防振装置に係るものである。なお、緩衝体はウレタンフォームであることが好ましい。また、弾性ストッパの内部には、弾性突起を設けておくこともできる。
【0011】
また、本発明の第2の要旨は、このような防振装置の製造方法であって、空間部に押え治具を挿入し、その後、筒状金具の外部から緩衝体を充填することにより、空間部を所望の形状とする防振装置の製造方法に係るものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の防振装置は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体と、空間部を隔てて弾性体と対峙する弾性ストッパとからなっている。
【0013】
即ち、筒状金具と取付金具とを連結する弾性体の防振効果によって、振動の入力に対する減衰機能と絶縁機能を持ち、例えば、車両の振動発生部となるエンジンと振動受信部となる車体との間にあって、エンジンで発生する振動を吸収し、車体側に伝達されるのを阻止するものである。従って、本発明の防振装置は、一般的な荷重負荷時の振動の入力に対し、従来のものと同等の性能を発揮する。また、弾性ストッパは、弾性体と筒状金具とが直接当らないようにするために設けられるものである。
【0014】
そして、本発明の防振装置は特徴的に、弾性ストッパの内部に、弾性ストッパと異なるバネ特性を有する緩衝体が充填されている。即ち、弾性体に加えて、緩衝体を直列に配置することにより、ストッパの初期当りを軟らかくすると共に、ストッパ当り後の静特性を確保しつつ、動特性を改善している。
【0015】
この点について更に詳述すると、例えば、FFタイプの自動車は発進時に大きなトルク反力が発生し、エンジンの回転移動に伴う大荷重負荷時に弾性体のたわみが急激に進行し、弾性ストッパと接触するストッパ当りに至る。
【0016】
この際、従来の防振装置のように緩衝体がなければ、弾性体と弾性ストッパとの接触によって、たわみに対して荷重が大きく増加することとなるが、本発明の防振装置では弾性ストッパと共に緩衝体がたわみ、ストッパ当り時に弾性ストッパの内部に緩衝体が存在する分だけ初期当りが軟らかくなるのである。
【0017】
しかも、ストッパ当り後において、緩衝体がたわみ切った状態では緩衝体の存在を無視できることから、弾性体のみによる従来と同様の静特性が確保される。一方、動特性は、緩衝体のたわみ変化を伴うことになるから、弾性体と緩衝体とが共に作用し、緩衝体が介在する分だけ特性が改善されるのである。
【0018】
このような緩衝体の作用効果は防振対象等によって求められるものが異なるので、弾性体等との関係は必要に応じて適宜設定すればよいが、エンジンマウントやトルクロッドのブッシュに適用する場合には、特に、弾性ストッパとの関係が重要となる。
【0019】
特にエンジンマウントやトルクロッドのブッシュに適用するに際しては、弾性ストッパよりも緩衝体の静的バネ定数ksを小さく設定することによって、たわみ−荷重曲線の曲率の増加を滑らかにすることが可能となり、ストッパの初期当りが軟らかくなる結果、乗り心地が向上するのである。
【0020】
また、弾性ストッパよりも緩衝体の動的バネ定数kdを小さく設定することによって、ストッパ当り後のたわみの増加を抑制しつつ、ストッパ当り後の防振装置全体の動的バネ定数を小さくすることが可能となる。
【0021】
即ち、たわみが抑制される結果、エンジンの移動量が増加せず、エンジンルーム内のスペースを悪化させることがないのである。しかも、動的バネ定数が大きくなると騒音の伝達も増えてしまうが、動的バネ定数を小さくできる結果、静かな室内を実現できるのである。
【0022】
ところで、弾性体や弾性ストッパには、ゴム(特に、NRやSBR系ゴム)が好適に使用されるが、緩衝体の静的バネ定数ksや動的バネ定数kdを弾性ストッパよりも小さくするには、緩衝体を合成樹脂発泡体(特に、ウレタンフォーム)で形成することが効果的である。
【0023】
そして、軟質ウレタンフォームには、高い伸び特性等の長所を持つが、加水分解による劣化という欠点のあるポリエステルフォームと、加水分解を起こすことのないポリエーテルフォームとがあるが、本発明の防振装置は、弾性ストッパの内部にウレタンフォームを充填するので、露出による加水分解の心配がなく、初期性能を維持できることから、種々の特性に優れたポリエステルフォームを使用することができるという特色がある。
【0024】
なお、弾性ストッパの内部を全て緩衝体にしてしまうと、弾性ストッパ本来の機能が損なわれることも考えられるので、弾性ストッパの内部に、緩衝体とは別の弾性突起を設けておくこともできる。この場合、弾性突起は、弾性ストッパと一体に設けても、別物の取り付けでもよい。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の好ましい実施の形態の具体例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の防振装置の一例を示す正面図である。図1に示す実施例の防振装置は、自動車のエンジンと車体との間に設置されるトルクロッドであって、一対のブラケット21がシャフト22で連結されている。
【0026】
そして、ブラケット21には、筒状金具1と、取付金具2と、筒状金具1と取付金具2とを連結する弾性体4とからなるブッシュが圧入され、一方の取付金具2がエンジンに、他方の取付金具2が車体に接続される。
【0027】
ここで、弾性体4はNR系ゴムからなり、同じくNR系ゴムからなる弾性ストッパ5が、空間部3を隔てて弾性体4と対峙している。そして、弾性ストッパ5の内部には、弾性突起7が一体的に形成されており、また、軟質ポリエステルフォームの緩衝体6が充填されている。
【0028】
なお、緩衝体6の静的バネ定数ks及び動的バネ定数kdは、弾性体4及び弾性ストッパ5よりも小さく、図1に示す実施例のブッシュ部分(ブラケット21及びシャフト22を除いた部分)と、更に緩衝体6を充填していない比較例のたわみ−荷重曲線をグラフ化したところ、実施例は比較例に対してたわみ−荷重曲線の曲率の増加が滑らかになっていた。
【0029】
また、荷重8kNにおいて、動変位±0.05mm、100Hz及び400Hzで動特性を測定したところ、静的バネ定数ks(荷重8kN)は、比較例よりも実施例(ブッシュ部分)の方が、緩衝体6の存在によって10%程度上がっていたが、動的バネ定数kdは、約20%(100Hz)〜約25%(400Hz)下がっていた。
【0030】
従って、実施例の防振装置は、たわみの増加が抑制され、かつ、動的バネ定数が顕著に小さくなっており、動倍率(kd/ks)が低いことが確認された。
【0031】
図2は、本発明の防振装置の製造方法の一例を示す概念図である。図2(A)に示す通り、緩衝体6を充填するため、筒状金具1には開口が設けられ、弾性ストッパ5には空間が設けられている。そして、図2(B)に示す通り、充填口30Aを有する型30内に筒状金具1を挿入すると共に、空間部3に押え治具31を挿入し、その後、ウレタン原料を注入して発泡させる。
【0032】
すると、押え治具31によって弾性ストッパ5の変形が制限されるので、たとえ弾性ストッパ5の肉厚が薄くても、発泡圧力による変形を防止できる。そのため、空間部3を所望の形状としつつ、弾性ストッパ5の内部にウレタンフォームの緩衝体6が充填され、かつ、ウレタンフォームは弾性ストッパ5によって外部と遮断される。そして最後に、型30から抜き出してブラケット21に圧入すれば、図1に示すようなトルクロッドが製造される。
【0033】
【発明の効果】
本発明の防振装置は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体と、空間部を隔てて弾性体と対峙する弾性ストッパとからなり、弾性ストッパの内部に、弾性ストッパと異なるバネ特性を有する緩衝体が充填されているので、振動発生部からの振動を一層効果的に吸収することができ、大荷重負荷時における動特性を改善することができる。
【0034】
また、本発明の防振装置の製造方法は、空間部に押え治具を挿入し、その後、筒状金具の外部から緩衝体を充填することにより、空間部を所望の形状とするので、極めて簡便に、弾性ストッパの内部に緩衝体が充填された防振装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の防振装置の実施例を示す正面図である。
【図2】図2は、本発明の防振装置の製造方法の一例を示す概念図である。
【図3】図3は、従来の防振装置を示す正面図である。
【符号の説明】
1‥筒状金具
2‥取付金具
3‥空間部
4‥弾性体
5‥弾性ストッパ
6‥緩衝体
7‥弾性突起
11‥筒状金具
12‥取付金具
13‥空間部
14‥弾性体
21‥ブラケット
22‥シャフト
30‥型
30A‥充填口
31‥押え治具
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車、一般産業用機械等に適用して振動発生部からの振動を吸収する防振装置及びその製造方法に関するものであり、特に、エンジンマウントやトルクロッドのブッシュに好適な防振装置及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両の振動発生部となるエンジンと振動受信部となる車体との間には、エンジンマウントとしての防振装置が設置されており、エンジンで発生する振動をこの防振装置が吸収し、車体側に伝達されるのを阻止して乗り心地を向上させている。
【0003】
そして特に、前部にエンジンを配置し、前輪を駆動するFFタイプの自動車等にあっては、発進時等の大きなトルク反力を吸収するため、防振装置として、ゴムブッシュをブラケットに固定し、シャフトで連結したトルクロッドが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
例えば、図3は、トルクロッドのゴムブッシュ等として使用されている従来の防振装置を示すものであり、筒状金具11と取付金具12とをゴム弾性体14で連結してゴムブッシュとし、そのゴムブッシュをブラケット21に圧入して固定した正面図を示すものである(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−114226号公報 (第2頁、図1−7)
【特許文献2】
特開平6−74275号公報 (第2−3頁、図1−3)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3に示す従来の防振装置では、たわみが大きくなり、空間部13におけるゴム弾性体14が筒状金具11と接触するストッパ当りが発生すると、たわみに対する荷重が急激に増加してしまう。
【0007】
このストッパ当りに対し、更なる乗り心地の向上を図るためには、第1に、ストッパの初期当りを軟らかくすること、第2に、ストッパ当り後の静特性を確保しつつ、動特性を改善することが求められる。
【0008】
そこで本発明は、振動発生部からの振動を一層効果的に吸収することができ、特に、大荷重負荷時における動特性を改善することができる防振装置及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであって、その第1の要旨は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体と、空間部を隔てて弾性体と対峙する弾性ストッパとからなり、弾性ストッパの内部に、弾性ストッパと異なるバネ特性を有する緩衝体が充填されている防振装置に係るものである。
【0010】
そして好ましくは、緩衝体の静的バネ定数ks及び動的バネ定数kdが弾性ストッパよりも小さい防振装置に係るものである。なお、緩衝体はウレタンフォームであることが好ましい。また、弾性ストッパの内部には、弾性突起を設けておくこともできる。
【0011】
また、本発明の第2の要旨は、このような防振装置の製造方法であって、空間部に押え治具を挿入し、その後、筒状金具の外部から緩衝体を充填することにより、空間部を所望の形状とする防振装置の製造方法に係るものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の防振装置は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体と、空間部を隔てて弾性体と対峙する弾性ストッパとからなっている。
【0013】
即ち、筒状金具と取付金具とを連結する弾性体の防振効果によって、振動の入力に対する減衰機能と絶縁機能を持ち、例えば、車両の振動発生部となるエンジンと振動受信部となる車体との間にあって、エンジンで発生する振動を吸収し、車体側に伝達されるのを阻止するものである。従って、本発明の防振装置は、一般的な荷重負荷時の振動の入力に対し、従来のものと同等の性能を発揮する。また、弾性ストッパは、弾性体と筒状金具とが直接当らないようにするために設けられるものである。
【0014】
そして、本発明の防振装置は特徴的に、弾性ストッパの内部に、弾性ストッパと異なるバネ特性を有する緩衝体が充填されている。即ち、弾性体に加えて、緩衝体を直列に配置することにより、ストッパの初期当りを軟らかくすると共に、ストッパ当り後の静特性を確保しつつ、動特性を改善している。
【0015】
この点について更に詳述すると、例えば、FFタイプの自動車は発進時に大きなトルク反力が発生し、エンジンの回転移動に伴う大荷重負荷時に弾性体のたわみが急激に進行し、弾性ストッパと接触するストッパ当りに至る。
【0016】
この際、従来の防振装置のように緩衝体がなければ、弾性体と弾性ストッパとの接触によって、たわみに対して荷重が大きく増加することとなるが、本発明の防振装置では弾性ストッパと共に緩衝体がたわみ、ストッパ当り時に弾性ストッパの内部に緩衝体が存在する分だけ初期当りが軟らかくなるのである。
【0017】
しかも、ストッパ当り後において、緩衝体がたわみ切った状態では緩衝体の存在を無視できることから、弾性体のみによる従来と同様の静特性が確保される。一方、動特性は、緩衝体のたわみ変化を伴うことになるから、弾性体と緩衝体とが共に作用し、緩衝体が介在する分だけ特性が改善されるのである。
【0018】
このような緩衝体の作用効果は防振対象等によって求められるものが異なるので、弾性体等との関係は必要に応じて適宜設定すればよいが、エンジンマウントやトルクロッドのブッシュに適用する場合には、特に、弾性ストッパとの関係が重要となる。
【0019】
特にエンジンマウントやトルクロッドのブッシュに適用するに際しては、弾性ストッパよりも緩衝体の静的バネ定数ksを小さく設定することによって、たわみ−荷重曲線の曲率の増加を滑らかにすることが可能となり、ストッパの初期当りが軟らかくなる結果、乗り心地が向上するのである。
【0020】
また、弾性ストッパよりも緩衝体の動的バネ定数kdを小さく設定することによって、ストッパ当り後のたわみの増加を抑制しつつ、ストッパ当り後の防振装置全体の動的バネ定数を小さくすることが可能となる。
【0021】
即ち、たわみが抑制される結果、エンジンの移動量が増加せず、エンジンルーム内のスペースを悪化させることがないのである。しかも、動的バネ定数が大きくなると騒音の伝達も増えてしまうが、動的バネ定数を小さくできる結果、静かな室内を実現できるのである。
【0022】
ところで、弾性体や弾性ストッパには、ゴム(特に、NRやSBR系ゴム)が好適に使用されるが、緩衝体の静的バネ定数ksや動的バネ定数kdを弾性ストッパよりも小さくするには、緩衝体を合成樹脂発泡体(特に、ウレタンフォーム)で形成することが効果的である。
【0023】
そして、軟質ウレタンフォームには、高い伸び特性等の長所を持つが、加水分解による劣化という欠点のあるポリエステルフォームと、加水分解を起こすことのないポリエーテルフォームとがあるが、本発明の防振装置は、弾性ストッパの内部にウレタンフォームを充填するので、露出による加水分解の心配がなく、初期性能を維持できることから、種々の特性に優れたポリエステルフォームを使用することができるという特色がある。
【0024】
なお、弾性ストッパの内部を全て緩衝体にしてしまうと、弾性ストッパ本来の機能が損なわれることも考えられるので、弾性ストッパの内部に、緩衝体とは別の弾性突起を設けておくこともできる。この場合、弾性突起は、弾性ストッパと一体に設けても、別物の取り付けでもよい。
【0025】
【実施例】
以下、本発明の好ましい実施の形態の具体例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の防振装置の一例を示す正面図である。図1に示す実施例の防振装置は、自動車のエンジンと車体との間に設置されるトルクロッドであって、一対のブラケット21がシャフト22で連結されている。
【0026】
そして、ブラケット21には、筒状金具1と、取付金具2と、筒状金具1と取付金具2とを連結する弾性体4とからなるブッシュが圧入され、一方の取付金具2がエンジンに、他方の取付金具2が車体に接続される。
【0027】
ここで、弾性体4はNR系ゴムからなり、同じくNR系ゴムからなる弾性ストッパ5が、空間部3を隔てて弾性体4と対峙している。そして、弾性ストッパ5の内部には、弾性突起7が一体的に形成されており、また、軟質ポリエステルフォームの緩衝体6が充填されている。
【0028】
なお、緩衝体6の静的バネ定数ks及び動的バネ定数kdは、弾性体4及び弾性ストッパ5よりも小さく、図1に示す実施例のブッシュ部分(ブラケット21及びシャフト22を除いた部分)と、更に緩衝体6を充填していない比較例のたわみ−荷重曲線をグラフ化したところ、実施例は比較例に対してたわみ−荷重曲線の曲率の増加が滑らかになっていた。
【0029】
また、荷重8kNにおいて、動変位±0.05mm、100Hz及び400Hzで動特性を測定したところ、静的バネ定数ks(荷重8kN)は、比較例よりも実施例(ブッシュ部分)の方が、緩衝体6の存在によって10%程度上がっていたが、動的バネ定数kdは、約20%(100Hz)〜約25%(400Hz)下がっていた。
【0030】
従って、実施例の防振装置は、たわみの増加が抑制され、かつ、動的バネ定数が顕著に小さくなっており、動倍率(kd/ks)が低いことが確認された。
【0031】
図2は、本発明の防振装置の製造方法の一例を示す概念図である。図2(A)に示す通り、緩衝体6を充填するため、筒状金具1には開口が設けられ、弾性ストッパ5には空間が設けられている。そして、図2(B)に示す通り、充填口30Aを有する型30内に筒状金具1を挿入すると共に、空間部3に押え治具31を挿入し、その後、ウレタン原料を注入して発泡させる。
【0032】
すると、押え治具31によって弾性ストッパ5の変形が制限されるので、たとえ弾性ストッパ5の肉厚が薄くても、発泡圧力による変形を防止できる。そのため、空間部3を所望の形状としつつ、弾性ストッパ5の内部にウレタンフォームの緩衝体6が充填され、かつ、ウレタンフォームは弾性ストッパ5によって外部と遮断される。そして最後に、型30から抜き出してブラケット21に圧入すれば、図1に示すようなトルクロッドが製造される。
【0033】
【発明の効果】
本発明の防振装置は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体と、空間部を隔てて弾性体と対峙する弾性ストッパとからなり、弾性ストッパの内部に、弾性ストッパと異なるバネ特性を有する緩衝体が充填されているので、振動発生部からの振動を一層効果的に吸収することができ、大荷重負荷時における動特性を改善することができる。
【0034】
また、本発明の防振装置の製造方法は、空間部に押え治具を挿入し、その後、筒状金具の外部から緩衝体を充填することにより、空間部を所望の形状とするので、極めて簡便に、弾性ストッパの内部に緩衝体が充填された防振装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の防振装置の実施例を示す正面図である。
【図2】図2は、本発明の防振装置の製造方法の一例を示す概念図である。
【図3】図3は、従来の防振装置を示す正面図である。
【符号の説明】
1‥筒状金具
2‥取付金具
3‥空間部
4‥弾性体
5‥弾性ストッパ
6‥緩衝体
7‥弾性突起
11‥筒状金具
12‥取付金具
13‥空間部
14‥弾性体
21‥ブラケット
22‥シャフト
30‥型
30A‥充填口
31‥押え治具
Claims (6)
- 振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具(1)と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具(2)と、筒状金具(1)と取付金具(2)との間に、空間部(3)を有するように配置された弾性体(4)と、空間部(3)を隔てて弾性体(4)と対峙する弾性ストッパ(5)とからなり、弾性ストッパ(5)の内部に、弾性ストッパ(5)と異なるバネ特性を有する緩衝体(6)が充填されていることを特徴とする防振装置。
- 緩衝体(6)の静的バネ定数ksが、弾性ストッパ(5)よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の防振装置。
- 緩衝体(6)の動的バネ定数kdが、弾性ストッパ(5)よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載の防振装置。
- 緩衝体(6)が、ウレタンフォームであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の防振装置。
- 弾性ストッパ(5)の内部に、弾性突起(7)が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の防振装置。
- 振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具(1)と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具(2)と、筒状金具(1)と取付金具(2)との間に、空間部(3)を有するように配置された弾性体(4)と、空間部(3)を隔てて弾性体(4)と対峙する弾性ストッパ(5)とからなり、弾性ストッパ(5)の内部に、弾性ストッパ(5)と異なるバネ特性を有する緩衝体(6)が充填された防振装置の製造方法であって、空間部(3)に押え治具(31)を挿入し、その後、筒状金具(1)の外部から緩衝体(6)を充填することにより、空間部(3)を所望の形状とすることを特徴とする防振装置の製造方法。
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JP2002349532A JP2004183725A (ja) | 2002-12-02 | 2002-12-02 | 防振装置及びその製造方法 |
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-
2002
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