JP2004183723A - 防振装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】振動発生部からの振動を一層効果的に吸収することができ、特に、大荷重負荷時における動特性を改善することができる、緩衝体を有する防振装置の簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具1と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具2と、筒状金具1と取付金具2との間に、空間部3を有するように配置された弾性体4と、空間部3の内部に設置された緩衝体6とからなる防振装置の製造方法であって、筒状金具1の中に、取付金具2に固定する弾性体4と、緩衝体6とを挿入し、その後、筒状金具1の端面1Aを折り曲げて、弾性体4及び緩衝体6の抜けを防止する防振装置の製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具1と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具2と、筒状金具1と取付金具2との間に、空間部3を有するように配置された弾性体4と、空間部3の内部に設置された緩衝体6とからなる防振装置の製造方法であって、筒状金具1の中に、取付金具2に固定する弾性体4と、緩衝体6とを挿入し、その後、筒状金具1の端面1Aを折り曲げて、弾性体4及び緩衝体6の抜けを防止する防振装置の製造方法。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車、一般産業用機械等に適用して振動発生部からの振動を吸収する防振装置の製造方法に関するものであり、特に、エンジンマウントやトルクロッドのブッシュに好適な防振装置の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両の振動発生部となるエンジンと振動受信部となる車体との間には、エンジンマウントとしての防振装置が設置されており、エンジンで発生する振動をこの防振装置が吸収し、車体側に伝達されるのを阻止して乗り心地を向上させている。
【0003】
そして特に、前部にエンジンを配置し、前輪を駆動するFFタイプの自動車等にあっては、発進時等の大きなトルク反力を吸収するため、防振装置として、ゴムブッシュをブラケットに固定し、シャフトで連結したトルクロッドが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
例えば、図3は、トルクロッドのゴムブッシュ等として使用されている従来の防振装置を示すものであり、筒状金具11と取付金具12とをゴム弾性体14で連結してゴムブッシュとし、そのゴムブッシュをブラケット21に圧入して固定した正面図を示すものである(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−114226号公報 (第2頁、図1−7)
【特許文献2】
特開平6−74275号公報 (第2−3頁、図1−3)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3に示す従来の防振装置では、たわみが大きくなり、空間部13におけるゴム弾性体14が筒状金具11と接触するストッパ当りが発生すると、たわみに対する荷重が急激に増加してしまう。
【0007】
このストッパ当りに対し、更なる乗り心地の向上を図るためには、第1に、ストッパの初期当りを軟らかくすること、第2に、ストッパ当り後の静特性を確保しつつ、動特性を改善することが求められ、そのためには、弾性体に加えて、緩衝体を直列に配置することが有効となる。
【0008】
そこで本発明は、振動発生部からの振動を一層効果的に吸収することができ、特に、大荷重負荷時における動特性を改善することができる、緩衝体を有する防振装置の簡便な製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであって、その要旨は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体と、空間部の内部に設置された緩衝体とからなる防振装置の製造方法であって、筒状金具の中に、取付金具に固定する弾性体と、緩衝体とを挿入し、その後、筒状金具の端面を折り曲げて、弾性体及び緩衝体の抜けを防止する防振装置の製造方法に係るものである。
【0010】
そして好ましくは、筒状金具の中に、最初に緩衝体を挿入し、その後、弾性体を挿入する防振装置の製造方法に係るものである。また、弾性体をゴムとして、筒状金具の中に挿入する前に、取付金具と予め加硫接着することが好ましく、緩衝体をウレタンフォームとして、筒状金具の中に圧縮して挿入することが好ましい。更に、緩衝体を挿入する部位の筒状金具に、弾性ストッパを固定することが好ましく、この場合、弾性ストッパをゴムとして、緩衝体を挿入する前に、筒状金具と予め加硫接着することが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の方法によって製造される防振装置は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体とからなっている。
【0012】
即ち、筒状金具と取付金具とを連結する弾性体の防振効果によって、振動の入力に対する減衰機能と絶縁機能を持ち、例えば、車両の振動発生部となるエンジンと振動受信部となる車体との間にあって、エンジンで発生する振動を吸収し、車体側に伝達されるのを阻止するものである。従って、本発明の方法によって製造される防振装置は、一般的な荷重負荷時の振動の入力に対し、従来のものと同等の性能を発揮する。
【0013】
そして更に、弾性体のない空間部の内部に緩衝体が設置されている。即ち、弾性体に加えて、緩衝体が直列に配置されることにより、ストッパの初期当りが軟らかくなると共に、ストッパ当り後の静特性を確保しつつ、動特性が改善されている。
【0014】
この点について更に詳述すると、例えば、FFタイプの自動車は発進時に大きなトルク反力が発生し、エンジンの回転移動に伴う大荷重負荷時に弾性体のたわみが急激に進行し、筒状金具と接触するストッパ当りに至る。
【0015】
この際、従来の防振装置のように緩衝体がなければ、弾性体が突然に筒状金具と接触することになるが、本発明の方法によって製造される防振装置では弾性体と共に緩衝体がたわみ、ストッパ当り時に弾性体と筒状金具との間に緩衝体が介在する分だけ初期当りが軟らかくなるのである。
【0016】
しかも、ストッパ当り後において、緩衝体がたわみ切った状態では緩衝体の存在を無視できることから、弾性体のみによる従来と同様の静特性が確保される。一方、動特性は、緩衝体のたわみ変化を伴うことになるから、弾性体と緩衝体とが共に作用し、緩衝体が介在する分だけ特性が改善されるのである。
【0017】
このような緩衝体の作用効果は防振対象等によって求められるものが異なるので、弾性体等との関係は必要に応じて適宜設定すればよいが、エンジンマウントやトルクロッドのブッシュに適用する場合には、特に、弾性ストッパとの関係が重要となる。
【0018】
即ち、ストッパ当り後のたわみ−荷重曲線を所望のものとするには、弾性体とは別に弾性ストッパを設け、弾性体と筒状金具とが直接当らないようにすることが効果的である。
【0019】
そして、特にエンジンマウントやトルクロッドのブッシュに適用するに際しては、弾性ストッパよりも緩衝体の静的バネ定数ksを小さく設定することによって、たわみ−荷重曲線の曲率の増加を滑らかにすることが可能となり、ストッパの初期当りが軟らかくなる結果、乗り心地が向上するのである。
【0020】
また、弾性ストッパよりも緩衝体の動的バネ定数kdを小さく設定することによって、ストッパ当り後のたわみの増加を抑制しつつ、ストッパ当り後の防振装置全体の動的バネ定数を小さくすることが可能となる。
【0021】
即ち、たわみが抑制される結果、エンジンの移動量が増加せず、エンジンルーム内のスペースを悪化させることがないのである。しかも、動的バネ定数が大きくなると騒音の伝達も増えてしまうが、動的バネ定数を小さくできる結果、静かな室内を実現できるのである。
【0022】
このような防振装置の製造に際しては、緩衝体の設置が問題となる。即ち、空間部の内部に、簡便かつ確実に緩衝体を設置する必要があるのである。そこで、本発明の製造方法は、筒状金具の中に、取付金具に固定する弾性体と、緩衝体とを挿入し、その後、筒状金具の端面を折り曲げて、弾性体及び緩衝体の抜けを防止している。従って、挿入及び加締めだけで、上記の防振装置を製造することができるのである。
【0023】
ところで、弾性体や弾性ストッパには、ゴム(特に、NRやSBR系ゴム)が好適に使用されるが、緩衝体の静的バネ定数ksや動的バネ定数kdを弾性ストッパよりも小さくするには、緩衝体を合成樹脂発泡体(特に、ウレタンフォーム)で形成することが効果的である。
【0024】
この場合、緩衝体となるウレタンフォームの挿入性を考慮すると、筒状金具の中に、最初に緩衝体(ウレタンフォーム)を挿入し、その後、弾性体(ゴム)を挿入することが簡便である。また、ゴムからなる弾性体は、筒状金具の中に挿入する前に、取付金具と予め加硫接着しておけば、一層簡便に製造できる。更に、緩衝体がウレタンフォームの場合、筒状金具の中に圧縮して挿入すればウレタンフォームが動かず、その後の加締めが簡単になる。
【0025】
なお、弾性ストッパを設ける場合には、緩衝体を挿入する部位の筒状金具に固定すればよく、この際、弾性ストッパがゴムならば、緩衝体を挿入する前に、筒状金具と予め加硫接着しておくことで、簡便に製造できる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の好ましい実施の形態の具体例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の防振装置の製造方法の一例を示す概念図である。図1に示す実施例の製造方法は、弾性体4がNR系ゴムなので、取付金具2と予め加硫接着されている。また、NR系ゴムの弾性ストッパ5も、緩衝体6を挿入する部位の筒状金具1に予め加硫接着されている。
【0027】
そして、筒状金具1の中に、最初にウレタンフォームの緩衝体6を挿入し、その後、弾性体4を挿入する。なお、ウレタンフォームの緩衝体6は、筒状金具1の中に圧縮して挿入し、抜け落ちないようにしておく。
【0028】
次に、筒状金具1の端面1Aを折り曲げて、弾性体4及び緩衝体6の抜けを防止する。なお、図1に示す実施例によって製造される防振装置は、自動車のエンジンと車体との間に設置される、一対のブラケットがシャフトで連結されたトルクロッドであるが、筒状金具1がそのままブラケットになっているので、トルクロッドを製造する際の部品点数が削減される。
【0029】
図2は、本発明の防振装置の製造方法によって製造された防振装置(トルクロッド)の一例を示す正面図である。図2に示す防振装置において、緩衝体6の静的バネ定数ks及び動的バネ定数kdは、弾性体4及び弾性ストッパ5よりも小さく、ブッシュ部分(シャフト22を除いた部分)と、更に緩衝体6を取り除いた比較例のたわみ−荷重曲線をグラフ化したところ、実施例は比較例に対してたわみ−荷重曲線の曲率の増加が滑らかになっていた。
【0030】
また、荷重8kNにおいて、動変位±0.05mm、100Hz及び400Hzで動特性を測定したところ、静的バネ定数ks(荷重8kN)は、比較例よりも実施例(ブッシュ部分)の方が、緩衝体6の存在によって10%程度上がっていたが、動的バネ定数kdは、約20%(100Hz)〜約25%(400Hz)下がっていた。
【0031】
従って、本発明の方法によって製造された防振装置は、たわみの増加が抑制され、かつ、動的バネ定数が顕著に小さくなっており、動倍率(kd/ks)が低いことが確認された。
【0032】
【発明の効果】
本発明の防振装置の製造方法は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体と、空間部の内部に設置された緩衝体とからなる防振装置の製造に際し、筒状金具の中に、取付金具に固定する弾性体と、緩衝体とを挿入し、その後、筒状金具の端面を折り曲げて、弾性体及び緩衝体の抜けを防止しているので、たわみの増加が抑制され、動的バネ定数が小さい防振装置を、簡便かつ確実に製造することができる。特に、筒状金具をそのままトルクロッドのブラケットにすれば、部品点数の削減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明における防振装置の製造方法の実施例を示す概念図である。
【図2】図2は、本発明の防振装置の製造方法によって製造された防振装置の一例を示す正面図である。
【図3】図3は、従来の防振装置を示す正面図である。
【符号の説明】
1‥筒状金具
1A‥端面
2‥取付金具
3‥空間部
4‥弾性体
5‥弾性ストッパ
6‥緩衝体
11‥筒状金具
12‥取付金具
13‥空間部
14‥弾性体
22‥シャフト
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車、一般産業用機械等に適用して振動発生部からの振動を吸収する防振装置の製造方法に関するものであり、特に、エンジンマウントやトルクロッドのブッシュに好適な防振装置の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、車両の振動発生部となるエンジンと振動受信部となる車体との間には、エンジンマウントとしての防振装置が設置されており、エンジンで発生する振動をこの防振装置が吸収し、車体側に伝達されるのを阻止して乗り心地を向上させている。
【0003】
そして特に、前部にエンジンを配置し、前輪を駆動するFFタイプの自動車等にあっては、発進時等の大きなトルク反力を吸収するため、防振装置として、ゴムブッシュをブラケットに固定し、シャフトで連結したトルクロッドが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
例えば、図3は、トルクロッドのゴムブッシュ等として使用されている従来の防振装置を示すものであり、筒状金具11と取付金具12とをゴム弾性体14で連結してゴムブッシュとし、そのゴムブッシュをブラケット21に圧入して固定した正面図を示すものである(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−114226号公報 (第2頁、図1−7)
【特許文献2】
特開平6−74275号公報 (第2−3頁、図1−3)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3に示す従来の防振装置では、たわみが大きくなり、空間部13におけるゴム弾性体14が筒状金具11と接触するストッパ当りが発生すると、たわみに対する荷重が急激に増加してしまう。
【0007】
このストッパ当りに対し、更なる乗り心地の向上を図るためには、第1に、ストッパの初期当りを軟らかくすること、第2に、ストッパ当り後の静特性を確保しつつ、動特性を改善することが求められ、そのためには、弾性体に加えて、緩衝体を直列に配置することが有効となる。
【0008】
そこで本発明は、振動発生部からの振動を一層効果的に吸収することができ、特に、大荷重負荷時における動特性を改善することができる、緩衝体を有する防振装置の簡便な製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたものであって、その要旨は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体と、空間部の内部に設置された緩衝体とからなる防振装置の製造方法であって、筒状金具の中に、取付金具に固定する弾性体と、緩衝体とを挿入し、その後、筒状金具の端面を折り曲げて、弾性体及び緩衝体の抜けを防止する防振装置の製造方法に係るものである。
【0010】
そして好ましくは、筒状金具の中に、最初に緩衝体を挿入し、その後、弾性体を挿入する防振装置の製造方法に係るものである。また、弾性体をゴムとして、筒状金具の中に挿入する前に、取付金具と予め加硫接着することが好ましく、緩衝体をウレタンフォームとして、筒状金具の中に圧縮して挿入することが好ましい。更に、緩衝体を挿入する部位の筒状金具に、弾性ストッパを固定することが好ましく、この場合、弾性ストッパをゴムとして、緩衝体を挿入する前に、筒状金具と予め加硫接着することが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の方法によって製造される防振装置は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体とからなっている。
【0012】
即ち、筒状金具と取付金具とを連結する弾性体の防振効果によって、振動の入力に対する減衰機能と絶縁機能を持ち、例えば、車両の振動発生部となるエンジンと振動受信部となる車体との間にあって、エンジンで発生する振動を吸収し、車体側に伝達されるのを阻止するものである。従って、本発明の方法によって製造される防振装置は、一般的な荷重負荷時の振動の入力に対し、従来のものと同等の性能を発揮する。
【0013】
そして更に、弾性体のない空間部の内部に緩衝体が設置されている。即ち、弾性体に加えて、緩衝体が直列に配置されることにより、ストッパの初期当りが軟らかくなると共に、ストッパ当り後の静特性を確保しつつ、動特性が改善されている。
【0014】
この点について更に詳述すると、例えば、FFタイプの自動車は発進時に大きなトルク反力が発生し、エンジンの回転移動に伴う大荷重負荷時に弾性体のたわみが急激に進行し、筒状金具と接触するストッパ当りに至る。
【0015】
この際、従来の防振装置のように緩衝体がなければ、弾性体が突然に筒状金具と接触することになるが、本発明の方法によって製造される防振装置では弾性体と共に緩衝体がたわみ、ストッパ当り時に弾性体と筒状金具との間に緩衝体が介在する分だけ初期当りが軟らかくなるのである。
【0016】
しかも、ストッパ当り後において、緩衝体がたわみ切った状態では緩衝体の存在を無視できることから、弾性体のみによる従来と同様の静特性が確保される。一方、動特性は、緩衝体のたわみ変化を伴うことになるから、弾性体と緩衝体とが共に作用し、緩衝体が介在する分だけ特性が改善されるのである。
【0017】
このような緩衝体の作用効果は防振対象等によって求められるものが異なるので、弾性体等との関係は必要に応じて適宜設定すればよいが、エンジンマウントやトルクロッドのブッシュに適用する場合には、特に、弾性ストッパとの関係が重要となる。
【0018】
即ち、ストッパ当り後のたわみ−荷重曲線を所望のものとするには、弾性体とは別に弾性ストッパを設け、弾性体と筒状金具とが直接当らないようにすることが効果的である。
【0019】
そして、特にエンジンマウントやトルクロッドのブッシュに適用するに際しては、弾性ストッパよりも緩衝体の静的バネ定数ksを小さく設定することによって、たわみ−荷重曲線の曲率の増加を滑らかにすることが可能となり、ストッパの初期当りが軟らかくなる結果、乗り心地が向上するのである。
【0020】
また、弾性ストッパよりも緩衝体の動的バネ定数kdを小さく設定することによって、ストッパ当り後のたわみの増加を抑制しつつ、ストッパ当り後の防振装置全体の動的バネ定数を小さくすることが可能となる。
【0021】
即ち、たわみが抑制される結果、エンジンの移動量が増加せず、エンジンルーム内のスペースを悪化させることがないのである。しかも、動的バネ定数が大きくなると騒音の伝達も増えてしまうが、動的バネ定数を小さくできる結果、静かな室内を実現できるのである。
【0022】
このような防振装置の製造に際しては、緩衝体の設置が問題となる。即ち、空間部の内部に、簡便かつ確実に緩衝体を設置する必要があるのである。そこで、本発明の製造方法は、筒状金具の中に、取付金具に固定する弾性体と、緩衝体とを挿入し、その後、筒状金具の端面を折り曲げて、弾性体及び緩衝体の抜けを防止している。従って、挿入及び加締めだけで、上記の防振装置を製造することができるのである。
【0023】
ところで、弾性体や弾性ストッパには、ゴム(特に、NRやSBR系ゴム)が好適に使用されるが、緩衝体の静的バネ定数ksや動的バネ定数kdを弾性ストッパよりも小さくするには、緩衝体を合成樹脂発泡体(特に、ウレタンフォーム)で形成することが効果的である。
【0024】
この場合、緩衝体となるウレタンフォームの挿入性を考慮すると、筒状金具の中に、最初に緩衝体(ウレタンフォーム)を挿入し、その後、弾性体(ゴム)を挿入することが簡便である。また、ゴムからなる弾性体は、筒状金具の中に挿入する前に、取付金具と予め加硫接着しておけば、一層簡便に製造できる。更に、緩衝体がウレタンフォームの場合、筒状金具の中に圧縮して挿入すればウレタンフォームが動かず、その後の加締めが簡単になる。
【0025】
なお、弾性ストッパを設ける場合には、緩衝体を挿入する部位の筒状金具に固定すればよく、この際、弾性ストッパがゴムならば、緩衝体を挿入する前に、筒状金具と予め加硫接着しておくことで、簡便に製造できる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の好ましい実施の形態の具体例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の防振装置の製造方法の一例を示す概念図である。図1に示す実施例の製造方法は、弾性体4がNR系ゴムなので、取付金具2と予め加硫接着されている。また、NR系ゴムの弾性ストッパ5も、緩衝体6を挿入する部位の筒状金具1に予め加硫接着されている。
【0027】
そして、筒状金具1の中に、最初にウレタンフォームの緩衝体6を挿入し、その後、弾性体4を挿入する。なお、ウレタンフォームの緩衝体6は、筒状金具1の中に圧縮して挿入し、抜け落ちないようにしておく。
【0028】
次に、筒状金具1の端面1Aを折り曲げて、弾性体4及び緩衝体6の抜けを防止する。なお、図1に示す実施例によって製造される防振装置は、自動車のエンジンと車体との間に設置される、一対のブラケットがシャフトで連結されたトルクロッドであるが、筒状金具1がそのままブラケットになっているので、トルクロッドを製造する際の部品点数が削減される。
【0029】
図2は、本発明の防振装置の製造方法によって製造された防振装置(トルクロッド)の一例を示す正面図である。図2に示す防振装置において、緩衝体6の静的バネ定数ks及び動的バネ定数kdは、弾性体4及び弾性ストッパ5よりも小さく、ブッシュ部分(シャフト22を除いた部分)と、更に緩衝体6を取り除いた比較例のたわみ−荷重曲線をグラフ化したところ、実施例は比較例に対してたわみ−荷重曲線の曲率の増加が滑らかになっていた。
【0030】
また、荷重8kNにおいて、動変位±0.05mm、100Hz及び400Hzで動特性を測定したところ、静的バネ定数ks(荷重8kN)は、比較例よりも実施例(ブッシュ部分)の方が、緩衝体6の存在によって10%程度上がっていたが、動的バネ定数kdは、約20%(100Hz)〜約25%(400Hz)下がっていた。
【0031】
従って、本発明の方法によって製造された防振装置は、たわみの増加が抑制され、かつ、動的バネ定数が顕著に小さくなっており、動倍率(kd/ks)が低いことが確認された。
【0032】
【発明の効果】
本発明の防振装置の製造方法は、振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具と、筒状金具と取付金具との間に、空間部を有するように配置された弾性体と、空間部の内部に設置された緩衝体とからなる防振装置の製造に際し、筒状金具の中に、取付金具に固定する弾性体と、緩衝体とを挿入し、その後、筒状金具の端面を折り曲げて、弾性体及び緩衝体の抜けを防止しているので、たわみの増加が抑制され、動的バネ定数が小さい防振装置を、簡便かつ確実に製造することができる。特に、筒状金具をそのままトルクロッドのブラケットにすれば、部品点数の削減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明における防振装置の製造方法の実施例を示す概念図である。
【図2】図2は、本発明の防振装置の製造方法によって製造された防振装置の一例を示す正面図である。
【図3】図3は、従来の防振装置を示す正面図である。
【符号の説明】
1‥筒状金具
1A‥端面
2‥取付金具
3‥空間部
4‥弾性体
5‥弾性ストッパ
6‥緩衝体
11‥筒状金具
12‥取付金具
13‥空間部
14‥弾性体
22‥シャフト
Claims (6)
- 振動受信部又は振動発生部の何れか一方に取り付けられる筒状金具(1)と、振動発生部又は振動受信部の他方に取り付けられる取付金具(2)と、筒状金具(1)と取付金具(2)との間に、空間部(3)を有するように配置された弾性体(4)と、空間部(3)の内部に設置された緩衝体(6)とからなる防振装置の製造方法であって、筒状金具(1)の中に、取付金具(2)に固定する弾性体(4)と、緩衝体(6)とを挿入し、その後、筒状金具(1)の端面(1A)を折り曲げて、弾性体(4)及び緩衝体(6)の抜けを防止することを特徴とする防振装置の製造方法。
- 筒状金具(1)の中に、最初に緩衝体(6)を挿入し、その後、弾性体(4)を挿入することを特徴とする請求項1に記載の防振装置の製造方法。
- 弾性体(4)がゴムであり、筒状金具(1)の中に挿入する前に、取付金具(2)と予め加硫接着することを特徴とする請求項1又は2に記載の防振装置の製造方法。
- 緩衝体(6)がウレタンフォームであり、筒状金具(1)の中に圧縮して挿入することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の防振装置の製造方法。
- 緩衝体(6)を挿入する部位の筒状金具(1)に、弾性ストッパ(5)を固定することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の防振装置の製造方法。
- 弾性ストッパ(5)がゴムであり、緩衝体(6)を挿入する前に、筒状金具(1)と予め加硫接着することを特徴とする請求項5に記載の防振装置の製造方法。
Priority Applications (1)
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JP2002349530A JP2004183723A (ja) | 2002-12-02 | 2002-12-02 | 防振装置の製造方法 |
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JP2008024267A (ja) * | 2006-07-25 | 2008-02-07 | Toyo Tire & Rubber Co Ltd | トルクロッド |
JP2008196610A (ja) * | 2007-02-13 | 2008-08-28 | Toyo Tire & Rubber Co Ltd | 防振装置 |
JP2015209941A (ja) * | 2014-04-28 | 2015-11-24 | 株式会社ブリヂストン | 防振装置 |
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2002
- 2002-12-02 JP JP2002349530A patent/JP2004183723A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008024267A (ja) * | 2006-07-25 | 2008-02-07 | Toyo Tire & Rubber Co Ltd | トルクロッド |
JP2008196610A (ja) * | 2007-02-13 | 2008-08-28 | Toyo Tire & Rubber Co Ltd | 防振装置 |
JP4633751B2 (ja) * | 2007-02-13 | 2011-02-16 | 東洋ゴム工業株式会社 | 防振装置 |
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