JP2004183516A - バルブメカニズム - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、ロッカアームにバルブの予備的な開閉を行わせるシリンダ部を形成した場合であっても、バルブのリフト量の調整が容易であり、かつ長時間運転しても上記シリンダ部から油圧がリークする等の不具合の生じないバルブシステムを提供することを主目的とするものである。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、上記ロッカアームの他端部下面には、シリンダと上記シリンダ内に収納されたピストンとを有するシリンダ部を形成し、上記ピストンおよびピストンの下側に形成されたボール部は、上記ピストンから上記ボール部底面までの距離を調整する距離調整手段を有することを特徴とするバルブメカニズムを提供する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのバルブメカニズムに関するものであり、特に圧縮開放ブレーキもしくは内部EGRなどを行うのに適したバルブメカニズムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
膨張行程の途中で排気バルブを補助的に開弁させることによりピストンに加わる膨張力を軽減してエンジンブレーキの効きを改善するようにした圧縮開放型ブレーキ、あるいは、吸入行程の途中で排気バルブを一時的に開弁させることにより排気ポートに残留する排気の一部をシリンダ内に戻して燃焼温度を制御するようにした内部EGRはよく知られている。
【0003】
このように排気バルブを補助的に開閉させるために、特許文献1には、ロッカアームのバルブを押圧する側の端部下面にシリンダおよびシリンダ内に収納されたピストンからなるシリンダ部を形成し、上記ピストン上面に形成される油室内に油圧を加えることによりピストンを押し下げ、これにより排気バルブに所定のリフト量を与えるシステムが開示されている。
【0004】
しかしながら、各気筒間で寸法上のバラツキがあることから、このようなバラツキを調整する手段が必要とされていた。また、このような排気バルブのリフト量は、ブレーキの効きを大きく左右するものであることから、微調整が必要である。
【0005】
さらに、上述したように、特許文献1に記載された方法では、ピストンの下部に形成されたボール部が、それを収納するように配置されたシート部を介してバルブステムを押圧するのであるが、ロッカアームの動きが、ロッカシャフトを中心とした円運動であり、必ずしも垂直にバルブステムを押圧するものとは限らない。したがって、シリンダ内におけるピストンに対して抉るような力が働き、結果としてシリンダ部でのシール不良等の問題が生じる場合があった。
【0006】
【特許文献1】
特表平8−500872号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ロッカアームにバルブの予備的な開閉を行わせるシリンダ部を形成した場合であっても、バルブのリフト量の調整が容易であり、かつ長時間運転しても上記シリンダ部から油圧がリークする等の不具合の生じないバルブシステムを提供することを主目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載するように、カムシャフトに並設されたカムと、前記カムの回転に伴い基端部が揺動し得るようにロッカシャフトに軸支されたロッカアームと、前記ロッカアームの他端部の揺動に連動して開閉駆動を行うバルブとを有するエンジンのバルブメカニズムにおいて、
前記ロッカアームの他端部下面には、シリンダと前記シリンダ内に収納されたピストンとを有するシリンダ部が形成され、前記ピストンの上面にはシリンダ内面との間に油室が形成され、前記ピストンの下面にはシート部を介して前記バルブのバルブステムを下方に押圧するボール部が形成されており、
前記ロッカシャフトには、ロッカシャフト内油路を介して油圧供給手段に接続された油圧ポートが設けられており、前記油圧ポートに対向するロッカアーム側には、前記ロッカアーム内に形成されたロッカアーム内油路を介して前記油室と接続する制御ポートが設けられており、さらに、エンジンの運転状態に応答して前記油室と圧油供給手段とを接続または切断する制御機構が設けられ、
前記ピストンおよび前記ボール部は、前記ピストンから前記ボール部底面までの距離を調整する距離調整手段を有していることを特徴とするバルブメカニズムを提供する。
【0009】
本発明によれば、ピストンおよびボール部に上記ピストンから上記ボール部底面までの距離を調整する距離調整手段を有するものであるので、各気筒間のバラツキの調整およびリフト量の微調整を行うことができる。
【0010】
上記請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載するように、前記ピストン下面には、嵌合部が形成されており、前記嵌合部は、前記シリンダ部内に設けられている前記ピストンの下端位置を決定するシリンダー下部ストッパーに形成された筒状部と嵌合されていることが好ましい。上記ピストン下面には嵌合部が形成されており、上記シリンダー下部ストッパーに形成された筒状部と嵌合されているので、ボール部がシート部を介してバルブステムを押圧する際に斜めに当った場合でも、上記ピストンとシリンダ内面とに加わる抉る力を低減することが可能となり、結果的に長期間使用しても油圧がリークする等の不具合が生じることを防止することができる。
【0011】
上記請求項1または請求項2に記載の発明においては、請求項3に記載するように、上記距離調整手段が、上記嵌合部と上記ボール部上端と螺合し、ボール部を軸方向に回転させて距離を調整する距離調整手段であり、上記嵌合部と上記筒状部とが軸方向に回転不能に嵌合されていることが好ましい。上記ボール部を回転させて高さを調整する際に、上記嵌合部と筒状部とが回転不能に嵌合されているので、ピストン自体が回転することがなく、高さの調製等が容易に可能となる。
【0012】
上記請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項4に記載するように、上記油室と接続するように上記ピストンの上面から上記ボール部底部にかけて貫通孔が形成され、上記ボール部底部が、上記ピストンの動きに伴い上記シート部を介して上記バルブステムを押圧する際には、上記ボール部底部と上記シート部上面とが密着して上記貫通孔をシールするように形成されていることが好ましい。このような貫通孔が形成されていることにより、油室内のオイルの抜けが早く、応答性が向上するからである。
【0013】
上記請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載された発明においては、請求項5に記載するように、上記制御機構が、エンジンの運転状態に応答して油圧ポートを圧油供給手段とオイルパンとに切換接続する制御弁であることが好ましい。容易に油室へのオイルの供給を制御することができるからである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のエンジンのバルブメカニズムについて説明する。
【0015】
図1(a)は、本発明のバルブメカニズムの一実施態様を示すものであり、カムシャフトに並設されたカム1と、上記カム1の回転に伴い基端部3aが揺動し得るようにロッカシャフト2に軸支されたロッカアーム3とが示されている。このロッカアーム3においては、カム1の回転に応じて基端部3aが押し上げられると、ロッカアーム3の他端部3bは逆に押し下げられ、このロッカアーム3の揺動に連動してバルブステム4が昇降駆動し、バルブの開閉駆動が行われる。
【0016】
さらに、本実施態様においては、ロッカアーム3の他端部3b下面に、シリンダ部5が形成されている。このシリンダ部5は、シリンダ6と、このシリンダ6内に昇降自在に嵌合・収納されているピストン7とを有する。当該シリンダ部5を構成するピストン7の上面には、シリンダ6内面との間に油室8が形成され、当該油室8と制御ポート10および油圧ポート9とがロッカアーム3内に形成されたロッカアーム内油路11を介して接続されている。また、シリンダ6の内面には、ピストン7が昇降駆動する際に、ピストン7の上端位置を決めるシリンダー上部ストッパー12aと、下端位置を決定するシリンダー下部ストッパー12bとが設けられている。
【0017】
さらに、本実施態様においては、上記ピストン7の下面に、後述する距離調整手段24および嵌合部26を介して、底部が曲面状のボール部13が設けられている。このようなボール部13の下方には、ボール部13底部を覆うように、シート部14が配置されている。当該シート部14は、外部から力が加えられていない状態において、ボール部13底部とシート部14内部との間に所定の空間が形成されるように配置されている。
【0018】
また、本実施態様においては、上述したシリンダー下部ストッパー12bにおいて、ピストン7の下面と当接し、ピストン7の下端位置を決定する部分以外に筒状部25を形成しており、この筒状部25内には、ピストン7の下面に形成されている嵌合部26が嵌合している。これにより、ボール部13がシート部14を介してバルブステム4を押圧する際に斜めに当った場合でも、上記ピストン7とシリンダ6内面とに加わる抉る力を低減することが可能となり、結果的に長期間使用しても油圧がリークする等の不具合が生じることを防止することができるのである。
【0019】
このような本実施態様におけるバルブメカニズムにおいて、ピストン上面からボール部底部までの距離は、各気筒間においてばらつきが生じる場合がある。これは、部品の寸法差や、シリンダ内等に取り付ける際に生じる寸法差等の蓄積により発生するものである。このようなばらつきは、各気筒間においてリフト量に違いを生じさせ、各々気筒間における精密な制御を困難とする。
【0020】
そこで、本実施態様においては、このような各気筒間におけるピストン上面からボール部底部までの距離のばらつきを解消するため、距離調整手段を設けている。以下、この距離調整手段について説明する。
【0021】
本実施態様における距離調整手段は、ピストン上面からボール部底面までの距離を調整するものである。このような距離調整手段は、ピストン上面からボール部底面までの長さを調整することが可能な手段であれば特に限定はされない。具体的には、ピストンの下面に形成されている嵌合部とボール部とに螺合し、ボール部を軸方向に回転させることにより、ピストン上面からボール部底部までの長さを調整する手段を挙げることができる。さらに、このような距離調整手段とした場合には、シリンダー下部ストッパーに形成された筒状部と、上記嵌合部とが回転不能に嵌合されていることが好ましい。ボール部を回転させて高さを調整する際に、上記嵌合部と筒状部とが回転不能に嵌合されているので、ピストン自体が回転することがなく、高さの調製等が容易に可能となるからである。
【0022】
このような距離調整手段について図1を用いて具体的に説明する。図1に示すように、ピストン7上面からボール部13底部までの距離のばらつきを調整する距離調整手段24がシリンダ部5に設けられている。当該距離調整手段24は、ボール部13上端に位置するナット24bと、嵌合部26およびボール部13上端に螺合するアジャストスクリュー24aと、アジャストスクリュー24aを固定するロックナット24cを有している。上記アジャストスクリュー24aの一端には、ボール部13上端に位置するナット24bが設けられており、これによりボール部13およびアジャストスクリュー24aを回転させて上記距離の調整を行う。さらに、上記アジャストスクリュー24aの他端部分は、ピストン7の下面に形成されている嵌合部26に螺合している。
【0023】
このような距離調整手段24において、ナット24bを用いてボール部13を軸方向に回転させることにより、ボール部13と一体となってアジャストスクリュー24aを嵌合部26内に螺合させることができるため、この際、必要な位置まで嵌合部26内にアジャストスクリュー24aを嵌合させ、その位置でロックナット24cを用いて固定することによりピストン7上面からボール部13底部までの距離を調節することができるのである。このような距離調整手段24を用いることにより各気筒間のバラツキの調整およびリフト量の微調整を行うことができる。
【0024】
さらに、このような距離調整手段24とした場合、上記嵌合部26は、シリンダ6内に設けられたシリンダー下部ストッパー12bにより形成されている筒状部25内に回転不能に嵌合されていることが好ましい。すなわち、ボール部13を軸方向に回転させてピストン7上面からボール部13底部までの距離を調整する際に、嵌合部26自体も共に回転することが妨げられることから、高さの調節が容易となるからである。具体的に、筒状部25内に嵌合部26を軸方向に回転不能に嵌合させる手段としては、特に限定はされないが、具体的には、筒状部25の横断面の形状を角を有する形状とし、嵌合部26の横断面の形状も筒状部25の形状に合致した形状とする手段を挙げることができる。例えば、角を有する形状としては、六角形や四角形等の多角形を挙げることができる。
【0025】
また、本実施態様においては、図2に示すように、ピストン7の上面からボール部13の底部にかけて貫通する貫通孔15が形成されていてもよい。本実施態様においては、嵌合部26とボール部13上端とには上述した距離調整手段24が設けられているため、このような貫通孔15を設ける場合には、例えば、上述したアジャストストリュー24aの一端から他端にかけても貫通孔を形成し、当該アジャストスクリュー24a内の貫通孔を経由してピストン7の上面からボール部13の底部にかけて貫通する貫通孔を設けることにより貫通孔15を形成することが可能である。
【0026】
このような貫通孔15は、ボール部13底部がシート部14を介してバルブステム4を押圧していない場合には、シート部14内部とボール部13底部との間には所定の空間が形成されているので、開放状態となる。一方、後述するように油室8が油密状態となり、この状態でボール部13がシート部14を介してバルブステム4を押圧する場合は、少なくとも貫通孔15が形成されている部分のボール部13底部とシート部14内部とは密着するので、これにより貫通孔15の下側はシールされることとなる。
【0027】
このようにピストン7の上面からボール部13底部にかけて貫通孔15を設けることにより、例えば、油室8が油密状態にあり、ロッカアーム3の基端部3aがカム1により押し上げられ、ボール部13底部がシート部14を介してバルブステム4を押圧している場合には、貫通孔15はシート部14内部によりシールされているため、油室8内のオイルが貫通孔15から漏れるおそれがなく、油密状態を維持することができる。一方、このような状態から、油室8内の油圧の供給が停止され、油室8内の油密状態が解除された場合は、ボール部13底部からシート部14は離れ、貫通孔15は開放となる。したがって、貫通孔15からオイルが流出し、さらに、シート部14は可動な状態でボール部13に設けられているため、オイルは、ボール部13とシート部14との隙間から排出される。これにより、油室8は油密状態から速やかに油圧を低下させることができるため、通常運転への復帰に対する応答性を向上させることができるのである。
【0028】
また、このように貫通孔15を設けた場合において、ボール部13底部が、ピストン7の動きに伴い、シート部14を介してバルブステム4を押圧している際に、貫通孔15をより良好にシールする手段としては、例えば、図2に示すように、シート部14内部において少なくとも貫通孔15が形成されているボール部13底部と当接する部分に、シール材16を設ける手段等を挙げることができる。このようにシール材16を設けることにより、ボール部13底部とシート部14内部とが当接している際のシール性を向上させることができる。したがって、ボール部13がピストン7の動きに伴い、シート部14を介してバルブステム4を押圧している際に、貫通孔15からの油漏れを十分に防止することができる。
【0029】
さらに、本実施態様においては、図2に示すように、ピストン7の側面にO−リング17を設けることが好ましい。ボール部13がピストン7の動きに伴い、シート部14を介してバルブステム4を押圧している際には、油室8に過度な油圧がかかる場合があり、このような過度な油圧は、シリンダ部5においてシリンダ6内面とピストン7とにおける摺動部分から油圧がリークするといった不都合を引き起こす可能性がある。しかしながら、このようにピストン7の側面にO−リング17を設けることにより、O−リング17がシリンダ6内面へ密着するため、特に、油室8が油密状態にある際に、シリンダ6内面とピストン7とにおける摺動部分からの油漏れを防止することができる。従って、ボール部13がピストン7の動きに伴い、シート部14を介してバルブステム4を押圧している際に、油室8内部の油圧の低下を防止することができる。
【0030】
さらに、図3に示すように、ピストン7の最下端位置を決定するシリンダー下部ストッパー12b上面には、スプリング18が配置されていることが好ましい。このようなスプリング18を設けることにより、油室8が油密状態にあり、ボール部13がシート部14を介してバルブステム4を押圧している状態から、油圧の供給が停止され、油室8の油密状態が解除されて、通常運転に復帰する際に、スプリング18の作用により、素早くピストン7は上方へ押し上げられ、貫通孔15から速やかにオイルを油室8外へ排出させることができるため、より一層ピストン7の応答性を向上させることができ、通常運転への復帰をスムースに行うことができるからである。
【0031】
また、図1(a)に示すように、ピストン7が昇降自在に嵌合されているシリンダ部5においては、ピストン7が昇降駆動する際に、その上端位置を決めるシリンダー上部ストッパー12aおよび下端位置を決定するシリンダー下部ストッパー12bが設けられている。このようにシリンダー上部ストッパー12aおよびシリンダー下部ストッパー12bを設けることにより、これらのストッパーによりストロークを所望の大きさに規定することができる。
【0032】
このようなピストン7のストロークを一定に規定するシリンダー上部ストッパー12a、シリンダー下部ストッパー12bとしては、ピストン7が所望のストローク範囲以外に昇降することを阻止できるものであれば特に限定はされない。具体的には、シリンダ部5の径方向内側に張り出すように凸部を設ける場合や、シリンダ部5の上方または下方の側壁をシリンダ部5の径方向内側に張り出すように形成する場合、さらにピストン7の内径よりも開口部分の内径が狭いワッシャーを設置する場合等を挙げることができる。
【0033】
なお、本実施態様においては、シリンダー下部ストッパー12bにより形成される筒状部25の形状は、上述したように、嵌合部26とボール部13上端と螺合し、ボール部13を軸方向に回転させて距離を調整する距離調整手段24とした場合には、筒状部25に嵌合されている嵌合部26が軸方向に回転不能となるような形状であることが好ましい。
【0034】
一方、ロッカシャフト2には、ロッカシャフト2内油路21を介して油圧供給手段に接続している油圧ポート9を設ける一方、ロッカアーム3側には、この油圧ポート9に対向する位置に制御ポート10が設けられている。そして、制御ポート10と油室8とは、ロッカアーム3内に設けられたロッカアーム内油路11を介して接続されている。上記油圧ポート9と制御ポート10とは、少なくともロッカアーム3の他端部3bが下降してシート部14がバルブステム4を押し下げるとき以外、すなわち、排気バルブである場合は排気行程、吸気バルブである場合は吸気行程以外の工程において接続されるように、通常配置されるが、これに限定されるものではなく、全工程において接続されるように油圧ポートおよび制御ポートを形成してもよく、後述するようにカムに凹部を設ける場合は、その凹部の位置でのみ接続するように配置してもよい。
【0035】
上述したロッカシャフト内油路21には、図1(b)に示すような圧油供給手段が接続されている。すなわち、図1(b)に示すように、エンジンの運転にともなって駆動される油圧ポンプ22を圧油供給手段として設け、この油圧ポンプ22とロッカシャフト内油路21とが接続しているのである。
【0036】
さらに、エンジンの運転状態に応答して、このような油圧ポンプ22を有する圧油供給手段と上記油室8とを接続または切断する制御機構が設けられている。このような制御機構としては、上記油室8へのオイルの供給を制御することが可能な手段であれば特に限定はされないが、具体的には、図1(b)に示すように、上記油圧ポンプ22の吐出口に制御弁19のポンプポート19aを接続し、制御弁19には、ポンプポート19aの他に開放ポート19bおよび出力ポート19cが設けられており、出力ポート19cが、上記ロッカシャフト内油路21に接続されている制御機構を挙げることができる。このような制御機構において、上記開放ポート19bは、エンジンのオイルパン23に開放させ、制御弁19は、図示しないコントローラの指令により油圧ポート9を油圧ポンプ22の吐出口とオイルパン23に切換接続することにより、油室8へのオイルの供給を制御している。
【0037】
ロッカアーム3の他端部3b下面に形成されたシリンダ部5は、シート部14を介してバルブステム4と当接している。ロッカアーム3の基端部3a先端にはローラ等を介してカム1を当接させることにより、エンジンの運転にともなってカム1が回転駆動されると、ロッカアーム3は揺動する。このロッカアーム3の揺動と連動してロッカアーム3の他端部3bの下端に位置するボール部13が昇降駆動し、このような昇降駆動するボール部13により、シート部14を介してバルブステム4が押し下げられてバルブが開かれる。
【0038】
カム1は、吸気行程もしくは排気行程においてバルブを押し下げるノーズ1aを備えている。ノーズ1aにより吸気もしくは排気行程においてロッカアーム3などを介して吸気もしくは排気バルブを開弁作動させる。
【0039】
本実施態様においては、このようなカム1に、図4に示すように、シリンダ部5において形成されるバルブのリフト量を吸収する凹部1bが形成されていてもよい。
【0040】
カム1に上記シリンダ部5において形成される上記バルブのリフト量を吸収する凹部1bを形成することにより、カム1の凹部1bがロッカアーム3の基端部3aと接する領域において圧油供給手段からの油圧を油室8に加えるようにすると、比較的小さな圧力で少なくともバルブのリフト量の距離分だけシリンダ6内のピストン7を押し上げることが可能となる。この後、図1(b)に示すように、上記制御弁19のロッカシャフト内油路21に接続される出力ポート9cを閉じて上記油室8内を油密状態とすることによりバルブに対し所定のリフト量分下げた状態で運転することができ、圧油供給手段やピストン7の径が小さい場合であっても問題の無いバルブメカニズムとすることができる。
【0041】
上記の構成からなるエンジンのバルブメカニズムにおいて、エンジンの運転にともなって、図1(b)に示す油圧ポンプ22が駆動されると、オイルパン23のオイルが油圧ポンプ22から吐出されて制御弁19のポンプポート19aに供給される。また、エンジンが通常の状態で運転されているときは制御弁19のポンプポート19aが閉じられて出力ポート19cが開放ポート19bに接続されている。従って、油圧ポンプ22から吐出されたオイルは逆止弁20を通ってロッカシャフト内油路21内に供給されるが、制御弁19の出力ポート19cが開放ポート19bに接続されているために、油圧ポンプ22から吐出されたオイルは逆止弁20を通ってオイルパン23に戻されて油室8の圧力は大気圧とほぼ等しくなっている。
【0042】
この状態で、図1(a)に示すカム1を回転させると、ロッカアーム3の他端部3b下面が下がり、ボール部13は、シート部14を介してバルブステム4を押圧して押し下げようとするが、バルブステム4は排気バルブの開弁付勢力で上昇位置に保持されようとしている。したがって、ピストン7がシリンダー上部ストッパー12aに当接するまでは、ピストン7の上昇にともなって油室8のオイルはロッカアーム内油路11から制御ポート10および油圧ポート9に逆流し、ロッカシャフト内油路21から制御弁19を通ってオイルパン23にオイルが流出するために、排気バルブは閉弁状態に保持される。
【0043】
さらに、ロッカアーム3の揺動角度が大きくなってピストン7がシリンダー上部ストッパー12aに当接すると、ピストン7はロッカアーム3と一体となって下降するために、シリンダ部5の下降にともなってバルブステム4が押し下げられて排気バルブが開かれる。
【0044】
一方、排気バルブを所定のリフト量で開弁しておくことによりブレーキ力を得る場合は、以下のような制御が行われる。すなわち、カム1を回転させて凹部1bがロッカアーム3のローラに接触した際に、図1(b)に示す制御弁19を、油圧ポンプ22から吐出される圧力がポンプポート19aから出力ポート19c、ロッカシャフト内油路21等を経て、油室8に加わるように図示略のコントローラにより制御する。ここで、ロッカアーム3の基端部3aのローラが図4に示す凹部1bに接触していることから、ボール部13底部は、シート部14を介しても、バルブステム4の表面から離れた状態となっている。したがって、油室8に加わる油圧ポンプ22の吐出圧力が比較的小さい場合や、ピストン7の径が比較的小さい場合であっても、容易に凹部1bで他端部3bが上昇した距離分だけピストン7を下方に押し下げることができる。この量を必要なリフト量としておくことにより、上述したような油圧ポンプ22の吐出圧力が小さい場合やピストン7の径が小さい場合であっても対応することが可能となる。
【0045】
そして、必要なリフト量分だけピストン7を押し下げた後、図示略のコントローラにより、図1(b)に示す出力ポート19cを閉じるように制御弁19を制御する。これにより、油室8は油密状態となる。したがって、その後は、油圧ポンプ22の吐出圧力やピストン7の径に関係なく、上記必要なリフト量分だけ排気バルブを押し下げた状態で、排気バルブはカム1のプロファイルにしたがって開弁駆動される。
【0046】
本実施態様においては、上記バルブが排気バルブである場合には、カム1には吸気行程でバルブのリフト量を吸収するように上記凹部1bが形成されていることが好ましい。このように凹部1bを形成することにより、吸気行程におけるポンピングロスの大幅な減少を防止することができるからである。
【0047】
また、図示しないコントローラからの指令により図1(b)に示す制御弁19が出力ポート19cをポンプポート19aに接続させているときは、エンジンの運転中は油圧ポンプ22の吐出圧力が油圧ポート9に供給保持されている。従って、この場合は制御ポート10からオイルが流出しないために、ピストン7がシリンダー上部ストッパー12aに当接する以前に油室8は油密状態となり、シリンダ部5の下降当初から、バルブステム4を押し下げることになり、排気バルブはカム1のプロフィールに従って開弁駆動される。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0049】
例えば、上記実施態様では主として排気バルブを開閉駆動するバルブメカニズムに本発明を適用しているが、これを吸気バルブのバルブメカニズムに適用してエンジンの運転状態に応答して吸気バルブの開弁時期を最適制御することもできる。さらに、上記実施態様においては油圧ポンプ22で圧油供給手段を構成しているが、エンジンに装備されているオイルポンプで圧油供給手段を構成することもできる。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、ピストンおよびボール部に、上記ピストンから上記ボール部底面までの距離を調整する距離調整手段を有するものであるので、各気筒間のバラツキの調整およびリフト量の微調整を行うことができる。また、上記ピストン下面には嵌合部が形成されており、前記シリンダー下部ストッパーに形成された筒状部と嵌合されているので、ボール部がシート部を介してバルブステムを押圧する際に斜めに当った場合でも、前記ピストンとシリンダ内面とに加わる抉る力を低減することが可能となり、結果的に長期間使用しても油圧がリークする等の不具合が生じることを防止することができるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明のバルブメカニズムの一例を示す概略断面図であり、(b)はそれに用いられる圧油手段の一例を示す説明図である。
【図2】本発明におけるシリンダ部、嵌合部、ボール部およびシート部の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明におけるシリンダ部、嵌合部、ボール部およびシート部の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のバルブメカニズムの他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 … カム
2 … ロッカシャフト
3 … ロッカアーム
3a … 基端部
3b … 他端部
4 … バルブステム
5 … シリンダ部
6 … シリンダ
7 … ピストン
8 … 油室
9 … 油圧ポート
10 … 制御ポート
11 … ロッカアーム内油路
12a … シリンダー上部ストッパー
12b … シリンダー下部ストッパー
13 … ボール部
14 … シート部
15 … 貫通孔
21 … ロッカシャフト内油路
22 … 油圧ポンプ
24 … 距離調整手段
25 … 筒状部
26 … 嵌合部

Claims (5)

  1. カムシャフトに並設されたカムと、前記カムの回転に伴い基端部が揺動し得るようにロッカシャフトに軸支されたロッカアームと、前記ロッカアームの他端部の揺動に連動して開閉駆動を行うバルブとを有するエンジンのバルブメカニズムにおいて、
    前記ロッカアームの他端部下面には、シリンダと前記シリンダ内に収納されたピストンとを有するシリンダ部が形成され、前記ピストンの上面にはシリンダ内面との間に油室が形成され、前記ピストンの下面にはシート部を介して前記バルブのバルブステムを下方に押圧するボール部が形成されており、
    前記ロッカシャフトには、ロッカシャフト内油路を介して油圧供給手段に接続された油圧ポートが設けられており、前記油圧ポートに対向するロッカアーム側には、前記ロッカアーム内に形成されたロッカアーム内油路を介して前記油室と接続する制御ポートが設けられており、さらに、エンジンの運転状態に応答して前記油室と圧油供給手段とを接続または切断する制御機構が設けられ、
    前記ピストンおよび前記ボール部は、前記ピストンから前記ボール部底面までの距離を調整する距離調整手段を有していることを特徴とするバルブメカニズム。
  2. 前記ピストン下面には、嵌合部が形成されており、前記嵌合部は、前記シリンダ部内に設けられている前記ピストンの下端位置を決定するシリンダー下部ストッパーに形成された筒状部と嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載のバルブメカニズム。
  3. 前記距離調整手段が、前記嵌合部と前記ボール部上端と螺合し、ボール部を軸方向に回転させて距離を調整する距離調整手段であり、前記嵌合部と前記筒状部とが軸方向に回転不能に嵌合されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバルブメカニズム。
  4. 前記油室と接続するように前記ピストンの上面から前記ボール部底部にかけて貫通孔が形成され、前記ボール部底部が、前記ピストンの動きに伴い前記シート部を介して前記バルブステムを押圧する際には、前記ボール部底部と前記シート部上面とが密着して前記貫通孔をシールするように形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかのに記載のバルブメカニズム。
  5. 前記制御機構が、エンジンの運転状態に応答して油圧ポートを圧油供給手段とオイルパンとに切換接続する制御弁であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のバルブメカニズム。
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