JP2004183159A - 防汚性繊維 - Google Patents
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Abstract
【課題】ガムピッチ汚れに対する防汚性に優れ、抄紙ワイヤーおよび抄紙ドライヤーカンバスなどの抄紙機用織物の構成素材として有用な防汚性を有するモノフィラメントを代表とする繊維を提供する。
【解決手段】ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物0.5〜50重量%とエポキシ化ポリアミド50〜99.5重量%、および好ましくは更にポリエポキシ化合物を含む混合反応硬化物が繊維表面に付着または含浸されている防汚性繊維。
【選択図】なし。
【解決手段】ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物0.5〜50重量%とエポキシ化ポリアミド50〜99.5重量%、および好ましくは更にポリエポキシ化合物を含む混合反応硬化物が繊維表面に付着または含浸されている防汚性繊維。
【選択図】なし。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などの粘着性汚れ物(ガムピッチ汚れ)が付着し難く、かつ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を有し、特に抄紙ワイヤーや抄紙ドライヤーカンバスなどの抄紙機用織物の構成素材として好適な防汚性繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、ポリフェニレンスルフィドおよびポリアミドなどの熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントに代表される繊維は、優れた抗張力および耐熱性などを有していることから、従来より抄紙業界における抄紙ワイヤー、抄紙ドライヤーカンバスおよび抄紙プレスフェルトなどの構成素材として広く使用されてきた。
【0003】
しかしながら、抄紙工程においては、紙原料中に存在する各種填料、スライム、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などの汚れ物が、熱可塑性樹脂製繊維からなる抄紙用織物類に付着することにより、濾水効率の低下、搾水効率の低下および乾燥効率の低下などの工程上の問題を生じるばかりか、これら汚れ物が紙へ転写することによる製品紙の品位低下などが重大な問題となっていた。
【0004】
このような問題に対処するために、フッ素系のポリマを添加したポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献1参照)が提案され、一部使用されてきたが、この方法では、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などの粘着性汚れ物(以下、ガムピッチ汚れという)の付着に対しては十分な防汚効果がないため、さらなる改善が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】
再公表 国際公開番号 WO 92/07126号公報(第1〜11頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、ガムピッチ汚れが付着し難く、かつ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を有し、特に抄紙ワイヤーや抄紙ドライヤーカンバスなどの抄紙機用織物の構成素材として好適な防汚性繊維の提供を目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物0.5〜50重量%とエポキシ化ポリアミド50〜99.5重量%とからなる混合反応硬化物が該繊維表面に付着または含浸されていることを特徴とする防汚性繊維によって達成できる。
【0008】
なお、本発明の防汚性繊維においては、混合反応硬化物が、更にポリエポキシ化合物を含む混合反応硬化物であること、
前記ポリエポキシ化合物が、グリセロールポリグリシジルエーテルおよびソルビトールポリグリシジルエーテルから選ばれた少なくとも1種であること、
前記炭素数8〜20のアルキルイソシアネートが、オクタデシルイソシアネートであること、
前記防汚性繊維が、下記(1)〜(10)の布粘着テープ水中貼付剥離法により測定した布粘着テープ剥離応力が110cN/cm以下であること、
記
(1)厚さ150〜250μm、横巾30mm、縦長さ120mmのポリエチレンテレフタレート製2軸延伸フィルムを2枚用意し、各々のフィルムの30mm巾の一端同士を重ならないように合わせて、この合わせ面に、片面に粘着剤の塗布された25mm×25mmサイズの布粘着テープを、前記2枚のフィルムの両端に渡るように貼付することにより、接合部で縦方向に繋ぎ合わされた見かけの縦長さ約240mm、横巾30mmのフィルムを作成する。
(2)前記の2枚が繋ぎ合わされたフィルムの前記布粘着テープの貼付されていない面のどちらか半分(一枚のフィルム)に、横巾10mm、縦長さ120mmの両面粘着テープ(日東電工(株)製品、No.523または同等品)を、前記フィルムと前記両面粘着テープの横巾方向のセンターを合わせて長手方向に揃えて貼付する。
(3)長さ約200mmに切断した繊維試料を、前記両面粘着テープを貼付したフィルムの粘着テープ上に、前記フィルムの長手方向と平行に隙間無く貼付し、前記両面粘着テープの長手方向の両端からはみ出している前記繊維の余端を鋏で切除し、繊維試料貼付フィルムを得る。
(4)底の平坦な平バット内に硝子板(厚さ約8mm、縦約200mm、横約80mm)を敷き、この硝子板表面が約15mm沈む位置になるまで前記平バットに水を注ぐ。
(5)前記平バットの水中に、前記(3)で作成した繊維試料貼付フィルムを浸漬し、30分間放置する。
(6)水中の前記繊維試料貼付フィルムを、繊維貼付面を上向き、かつ繊維面が左側になるようにしてから、横巾10mm、縦長さ150mmに切断した片面に粘着剤が塗布された布粘着テープ(ニチバン(株)製、段ボール包装用強粘着テープ<LS>No.101Nまたは同等品)を水中に入れ、この布粘着テープの長手方向左端を前記繊維試料貼付フィルムの繊維面左端と合わせて、前記繊維上に前記布粘着テープを仮貼付する。次いで、前記繊維面右端に約30mm残っている前記布粘着テープを、前記フィルム面にしっかりと貼付する。
(7)前記繊維貼付フィルムを裏返して、前記(1)で2枚のフィルムを繋ぎ合わせるために貼付した前記布粘着テープを取り除く。
(8)前記繊維貼付フィルムの繊維貼付面を上向きにし、この繊維貼付フィルムを繊維貼付部分が硝子板上に完全に乗るようにセットして、前記繊維の表面に仮貼付されている前記布粘着テープ上に、重量1.43Kg、巾50mm、直径86mmのゴムローラーを、前記布粘着テープを重ねたフィルムの右長手方向から片道走行させ、水中で前記布粘着テープを前記繊維試料に貼付して剥離応力測定用試料を作成する。
(9)前記剥離応力測定用試料を水中から取り出し、前記2枚のフィルムの接合部を支点にして、前記布粘着テープの貼付面が内側になるように山折りし、次いで山折りの支点部から繊維上に貼付されている前記布粘着テープを長さ約10mm剥がし、露出した繊維貼付フィルム端部を、引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)の上チャックの中央部にセットし、一方の繊維の貼付されていない前記フィルムの下端(山折りの裾部)を、前記引張試験器の下チャックの中央部にセットして、引張速度100mm/分、チャートスピード100mm/分の条件で剥離応力を測定し、剥離応力の高い山と剥離応力の低い谷とが交互に連なった剥離応力チャートを得る。
(10)得られた剥離応力チャートの最初の剥離応力の高い山から約20mm後の剥離応力の高い山を始点として、一個一個の交互の山と谷各40点の剥離応力を読み取り、その平均値をもって剥離応力とし、この測定作業((1)から(10))を10回繰返し、その平均値を布粘着テープ剥離応力とする。
【0009】
前記繊維がモノフィラメントであること、
前記繊維が、飽和ポリエステル、ポリフェニレンスルフィドおよびポリアミドから選ばれた一種を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂製繊維であること、
前記繊維を構成する飽和ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであること、
前記防汚性繊維が、抄紙機用織物の構成素材用繊維であること、
前記防汚性繊維が抄紙ワイヤーまたは抄紙ドライヤーカンバスの構成素材用繊維であることが、
いずれも好ましい条件であり、これらの条件の少なくとも一つの条件を満たすことによって一層優れた効果の取得を期待することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明における繊維は、天然繊維、再生繊維および合成繊維などのいかなるものであってもよいが、中でも熱可塑性樹脂製繊維が好ましい。
【0012】
熱可塑性樹脂としては、熱可塑性を有する繊維形成性ポリマであればいかなるものでもよく、例えば、各種の芳香族、脂肪族または脂環族のジカルボン酸とグリコールとからなる各種飽和ポリエステル類、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートおよびポリブチレン(サクシネート/アジペート)共重合体などの各種生分解性ポリマ類、ポリフェニレンスルフィド類、ナイロン6、ナイロン66を代表とする各種ポリアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどの各種ポリオレフィン類、各種ポリスチレン類、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリレート類、各種ポリエーテル類、熱可塑性ポリウレタンなどの各種熱可塑性エラストマー類、およびエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどの各種フッ素樹脂類などを挙げることができる。これらのポリマから選ばれた一種または2種以上を、目的に応じて溶融混合または複合するなど適宜組み合わせて使用することができる。
【0013】
これらの熱可塑性樹脂の中でも、飽和ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSという)およびポリアミドから選ばれた一種を50重量%以上含有することが好ましい。また、飽和ポリエステルの中ではポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)が好適である。
【0014】
上記した各種熱可塑性樹脂は、目的に応じて公知の有機・無機の各種添加剤を含有することができ、例えば異種の熱可塑性樹脂類、各種合成・重合触媒残渣、各種抗酸化剤、耐光剤、難燃剤、ヨウ化銅、ヨウ化カリウムなどの老化防止剤、酸化チタン、酸化珪素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、炭化ケイ素、硫酸バリウム、クレイ、タルク、カオリン、カーボンブラックなどの無機粒子・顔料類、フタロシアニン金属系、コバルト青などの各種有機顔料、ステアリン酸金属塩類、エチレンビスステアリルアミド、ステアリン酸、メタ珪酸カルシウム、含水珪酸マグネシウム、アミノシラン、メラミンシアヌレート、アイオノマー類、金属イオン封鎖剤、包接化合物、着色防止剤、帯電防止剤、ワックス類、シリコーンオイル、各種界面活性剤、各種強化繊維類、および熱可塑性樹脂が飽和ポリエステルの場合には耐加水分解性を改善するための各種カルボジイミド化合物、各種エポキシ化合物および各種オキサゾリン化合物などを含有することができる。
【0015】
本発明の繊維の形態は、マルチフィラメント、短繊維、綿状、モノフィラメントおよびそれらを撚糸したものなどのいかなるものであってもよく、何等限定されるものではないが、繊維の用途が抄紙ワイヤーおよび抄紙ドライヤーカンバスおよび抄紙プレスフェルトの基布などの抄紙機用織物等の工業用織物の構成素材用である場合には、モノフィラメントであることが特に好ましい。
【0016】
本発明におけるモノフィラメントは、一本の単糸からなる連続糸であり、一本で使用される他に、この一本の単糸からなる連続糸を複数本組合せたもの、さらには複数本組合せた単糸を撚り合わせたものなどを含むものである。
【0017】
また、本発明における繊維の断面形状は任意であり、例えば丸、楕円、3角、T、Y、H、+、5葉,6葉,7葉,8葉などの多葉形状、正方形、長方形、菱形、繭型および馬蹄型などを挙げることができ、また、これらの形状を一部変更したものであってもよい。さらには、これら各種断面形状の繊維を適宜組み合わせて用いることができる。
【0018】
さらに、本発明における繊維の構造としては、単一構造の他に、芯鞘複合構造、海成分または島成分として配した海島複合構造およびバイメタル状に組み合わされた複合構造および中空構造などであってもよい。
【0019】
本発明における繊維がモノフィラメントである場合における断面の直径は、用途によって適宜選択することができるが、0.01〜3mmの範囲が最もよく使用される。
【0020】
本発明における繊維の必要強度は、用途により異なるが、概ね1.0cN/dtex以上であることが好ましい。
【0021】
本発明の防汚性繊維は、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物0.5〜50重量%とエポキシ化ポリアミド50〜99.5重量%とからなるを含有する混合反応硬化物を該繊維表面に付着または含浸されているものである。
【0022】
本発明におけるポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物とは、エチレンイミンの分岐重合体であるポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物(以下、PEI−ALKIという)である。
【0023】
前記PEI−ALKIとしては、例えばポリエチレンイミンとオクチルイソシアネート、ノニルイソシアネート、デシルイソシアネート、ウンデシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、トリデシルイソシアネート、テトラデシルイソシアネート、ペンタデシルイソシアネート、ヘキサデシルイソシアネート、ヘプタデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ノナデシルイソシアネートおよびエイコシルイソシアネートなどのモノイソシアネートとの付加物を挙げることができ、これらの中でもポリエチレンイミンとオクタデシルイソシアネートとの付加物が一層優れた対ガムピッチ防汚性が得られるため好ましい。
【0024】
本発明におけるPEI−ALKIは、公知の方法によりポリエチレンイミンに炭素数8〜20のアルキルイソシアネートを付加反応させることにより得ることができる。
【0025】
この場合におけるポリエチレンイミンのイミン基への炭素数8〜20のアルキルイソシアネートの付加反応率としては、イミン基の40〜100%がアルキルイソシアネートと反応したものが使用できる。
【0026】
上記PEI−ALKIの付加反応率が高いほど、得られる繊維の防汚性が優れたものとなるが、反面、表面活性の低いポリオレフィン類、フッ素樹脂類およびポリエステル類からなる繊維表面に上記付加物を含有させた場合には、繊維と付加物との密着性が低下する傾向が認められるため、付加物の付加反応率としては50%〜80%のものが好ましい。
【0027】
なお、ポリエチレンイミンとオクタデシルイソシアネートとの付加物(以下、PEI−ODIという)については、“エポミン”(登録商標)RP−20((株)日本触媒製品)、“エポミン”(登録商標)RP−10W(水性液)((株)日本触媒製品)として市販されており、これらを購入して使用することができる。
【0028】
本発明におけるエポキシ化ポリアミドとは、ポリアミド1分子内にエポキシ基を最低1個、好ましくは複数個含有するポリアミドである。
【0029】
前記エポキシ化ポリアミドにおけるポリアミドの種類としては、その分子の繰り返し単位中に1個以上のアミド基を有するポリマであればいずれでもよく、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロンMXD6、ナイロン612、各種ポリアミドのアミド基の少なくとも一部をメトキシメチル化したメトキシメチル化ポリアミド、ナイロン6/66共重合体、ε−カプロラクタムやω−ラウロラクタム等のラクタム類と2−アミノエチルピペラジンとの重縮合物、ε−カプロラクタムやω−ラウロラクタム等のラクタム類とポリエチレングリコールジアンモニウムアジペートとの重縮合物、ε−カプロラクタムやω−ラウロラクタム等のラクタム類と2−アミノエチルピペラジンおよびポリエチレングリコールジアンモニウムアジペートとの重縮合物等のポリアミド、ダイマーもしくはトリマー不飽和脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとから得られるポリアミド、ポリアルキレンポリアミンとジシアンジアミドとから得られるポリアミド、アルキレンジアミン類およびポリアルキレンポリアミンから選ばれるポリアミン(a),尿素類(b),二塩基性カルボン酸類(c)、ラクタム類(d)とから得られるポリアミド等を挙げることができるが、これらに何等限定されるものではない。
【0030】
前記エポキシ化ポリアミドの製造は、前記したポリアミドに、定法によってエピハロヒドリン類、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン類またはポリグリシジル化合物から選ばれた少なくとも1種を反応させることによって得ることができる。
【0031】
これらのエポキシ化ポリアミドの中では、水溶性のエポキシ化ポリアミドを採用するのが本発明の繊維の製造が容易であることから好適である。
【0032】
水溶性のエポキシ化ポリアミドとしては、例えばε−カプロラクタムやω−ラウロラクタム等のラクタム類とポリエチレングリコールジアンモニウムアジペートとの重縮合物にエピハロヒドリン類、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン類またはポリグリシジル化合物から選ばれた少なくとも1種を反応させたもの、ε−カプロラクタムやω−ラウロラクタム等のラクタム類とポリエチレングリコールジアンモニウムアジペートとの重縮合物にエピハロヒドリン類、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン類またはポリグリシジル化合物から選ばれた少なくとも1種を反応させたもの、ダイマーもしくはトリマー不飽和脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとから得られるポリアミドにエピハロヒドリン類、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン類またはポリグリシジル化合物から選ばれた少なくとも1種を反応させたもの、ポリアルキレンポリアミンとジシアンジアミドとから得られるポリアミドにエピハロヒドリン類、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン類またはポリグリシジル化合物から選ばれた少なくとも1種を反応させたもの、アルキレンジアミン類およびポリアルキレンポリアミンから選ばれたポリアミン(a),尿素類(b),二塩基性カルボン酸類(c)、ラクタム類(d)とから得られるポリアミドにエピハロヒドリン類、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン類またはポリグリシジル化合物から選ばれた少なくとも1種を反応させたもの等を挙げることができるが、これらに何等限定されるものではない。
【0033】
なお、水溶性のエポキシ化ポリアミドについては、水溶液として市販されており、例えばSumirez(登録商標)Resin 650,675,6615および6625(住友化学工業(株)製品)などを購入し使用することができる。
【0034】
本発明における、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物とエポキシ化ポリアミドとからなる混合反応硬化物の混合量比は、繊維への付着均一性、密着性およびガムピッチに対する防汚性とのバランスが優れた繊維を得るために重要な特性であり、前記、混合反応硬化物の混合量比は炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物が0.5〜50重量%とエポキシ化ポリアミドが50〜99.5重量%の範囲であり、更に好ましくはポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物が1〜40重量%とエポキシ化ポリアミドが60〜99重量%の範囲がより好ましい。さらには、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物が3〜30重量%とエポキシ化ポリアミドが70〜97重量%の範囲が特に好ましい。
【0035】
前記、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物が0.5重量%未満では、繊維への付着均一性、密着性が不十分となり、ガムピッチに対する防汚性が劣る傾向となる。
【0036】
また、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物が50重量%を越えると、水との親和性が劣り、例えばパルプ水スラリーから湿紙を漉き揚げる織物である抄紙ワイヤーの構成糸などの水と接触する用途には不適当なものとなる傾向となるため好ましくない。
【0037】
本発明の防汚性繊維が、表面に付着または含浸する混合反応硬化物が更にポリエポキシ化合物を含む混合反応硬化物であると、混合反応硬化物と繊維との密着性が向上し防汚耐久性が一層良好となるため好ましい。
【0038】
ポリエポキシ化合物としては、例えばポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテルおよびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらのポリエポキシ化合物中では特に水との親和性の良好なポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルおよびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどの水溶性を有するポリエポキシド化合物であることが好ましく、中でもグリセロールポリグリシジルエーテルまたはソルビトールポリグリシジルエーテルから選ばれた少なくとも1種であることが更に好ましい。
【0039】
なお、前記水溶性を有するポリエポキシ化合物のグリセロールポリグリシジルエーテルは、例えば市販品である“デナコール”(登録商標)EX−313(ナガセ化成工業(株)製品)、また、ソルビトールポリグリシジルエーテルは、例えば市販品である“デナコール”(登録商標)EX−614B(ナガセ化成工業(株)製品)などを購入して使用することができる。
【0040】
前記ポリエポキシ化合物の配合量は、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物0.5〜50重量%とエポキシ化ポリアミド50〜99.5重量%の範囲において混合量比は任意に設計できるが、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物100重量部に対して1〜50重量部が好ましい傾向にある。
【0041】
本発明の防汚性繊維は、下記(1)〜(10)の布粘着テープ水中貼付剥離法により測定した布粘着テープ剥離応力が110cN/cm以下であることが好ましく、80cN/cm以下であることが更に好ましく、ガムピッチ汚れが付着し難く、かつ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を有するための重要な要件である。
【0042】
記
(1)厚さ150〜250μm、横巾30mm、縦長さ120mmのポリエチレンテレフタレート製2軸延伸フィルムを2枚用意し、各々のフィルムの30mm巾の一端同士を重ならないように合わせて、この合わせ面に、片面に粘着剤の塗布された25mm×25mmサイズの布粘着テープを、前記2枚のフィルムの両端に渡るように貼付することにより、接合部で縦方向に繋ぎ合わされた見かけの縦長さ約240mm、横巾30mmのフィルムを作成する。
(2)前記の2枚が繋ぎ合わされたフィルムの前記布粘着テープの貼付されていない面のどちらか半分(一枚のフィルム)に、横巾10mm、縦長さ120mmの両面粘着テープ(日東電工(株)製品、No.523または同等品)を、前記フィルムと前記両面粘着テープの横巾方向のセンターを合わせて長手方向に揃えて貼付する。
(3)長さ約200mmに切断した繊維試料を、前記両面粘着テープを貼付したフィルムの粘着テープ上に、前記フィルムの長手方向と平行に隙間無く貼付し、前記両面粘着テープの長手方向の両端からはみ出している前記繊維の余端を鋏で切除し、繊維試料貼付フィルムを得る。
(4)底の平坦な平バット内に硝子板(厚さ約8mm、縦約200mm、横約80mm)を敷き、この硝子板表面が約15mm沈む位置になるまで前記平バットに水を注ぐ。
(5)前記平バットの水中に、前記(3)で作成した繊維試料貼付フィルムを浸漬し、30分間放置する。
(6)水中の前記繊維試料貼付フィルムを、繊維貼付面を上向き、かつ繊維面が左側になるようにしてから、横巾10mm、縦長さ150mmに切断した片面に粘着剤が塗布された布粘着テープ(ニチバン(株)製、段ボール包装用強粘着テープ<LS>No.101Nまたは同等品)を水中に入れ、この布粘着テープの長手方向左端を前記繊維試料貼付フィルムの繊維面左端と合わせて、前記繊維上に前記布粘着テープを仮貼付する。次いで、前記繊維面右端に約30mm残っている前記布粘着テープを、前記フィルム面にしっかりと貼付する。
(7)前記繊維貼付フィルムを裏返して、前記(1)で2枚のフィルムを繋ぎ合わせるために貼付した前記布粘着テープを取り除く。
(8)前記繊維貼付フィルムの繊維貼付面を上向きにし、この繊維貼付フィルムを繊維貼付部分が硝子板上に完全に乗るようにセットして、前記繊維の表面に仮貼付されている前記布粘着テープ上に、重量1.43Kg、巾50mm、直径86mmのゴムローラーを、前記布粘着テープを重ねたフィルムの右長手方向から片道走行させ、水中で前記布粘着テープを前記繊維試料に貼付して剥離応力測定用試料を作成する。
(9)前記剥離応力測定用試料を水中から取り出し、前記2枚のフィルムの接合部を支点にして、前記布粘着テープの貼付面が内側になるように山折りし、次いで山折りの支点部から繊維上に貼付されている前記布粘着テープを長さ約10mm剥がし、露出した繊維貼付フィルム端部を引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)の上チャックの中央部にセットし、一方の繊維の貼付されていない前記フィルムの下端(山折りの裾部)を、前記引張試験器の下チャックの中央部にセットして、引張速度100mm/分、チャートスピード100mm/分の条件で剥離応力を測定し、剥離応力の高い山と剥離応力の低い谷とが交互に連なった剥離応力チャートを得る。
(10)得られた剥離応力チャートの最初の剥離応力の高い山から約20mm後の剥離応力の高い山を始点として、一個一個の交互の山と谷各40点の剥離応力を読み取り、その平均値をもって剥離応力とし、この測定作業((1)から(10))を10回繰返し、その平均値を布粘着テープ剥離応力とする。
【0043】
なお、上記した布粘着テープ水中貼付剥離法で布粘着テープ剥離応力を測定することにより、モノフィラメントを織物に加工することなく、対象とするモノフィラメントを構成素材とする抄紙機用織物などのガムピッチ汚れに対する防汚性を定量的に評価することが可能である。
【0044】
本発明の防汚性繊維の製造方法は、例えば公知の方法により熱可塑性樹脂を溶融押出しした後、未延伸段階、多段延伸系の延伸と延伸の間、延伸後および熱セット後などの任意の段階において、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物とエポキシ化ポリアミドからなる混合物を、水や各種有機溶剤の溶液あるいはエマルジョンとし、これを繊維にコーティングまたはスプレーする方法、またはこの溶液あるいはエマルジョンに繊維を浸積して含浸させる方法などを採用することができる。また、上記組成物には必要に応じてポリエポキシ化合物等の硬化剤、更に必要に応じて公知の界面活性剤等を含ませることができる。
【0045】
特に、水溶液やエマルジョン等の水性液として繊維にコーテイング、スプレー、含浸などの方法で付与し、エアーワイパー、バキュームワイパー、プレスなどによって付与量を調整した後、80℃〜250℃の温度で1秒〜10分間定長下で熱処理することで反応硬化する方法が好ましい。また、コーティング前に公知の各種界面活性剤類をあらかじめ付与した繊維に、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物とエポキシ化ポリアミドを含む組成物を付与する方法を採用してもよい。
【0046】
繊維に含浸またはコーティングする場合における、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物とエポキシ化ポリアミドからなる混合物の水溶液またはエマルジョン濃度は任意に設計できるが、0.005〜10重量%の濃度範囲が好ましく、0.01〜5重量%の濃度範囲がより好ましく、更には0.03〜3重量%の濃度範囲が好ましい。
【0047】
本発明の繊維における、上記組成物の付着量または含浸量は任意であるが、熱処理後の付着量または含浸量として0.001〜1重量%の範囲が好ましく、0.003〜0.5重量%の範囲がより好ましい。付着量または含浸量の測定は、上記混合物を付与した繊維と上記混合物を付与しないこと以外は上記混合物を付与した繊維と同一条件で製造した繊維との同一長さにおける重量の差から求めることができる。
【0048】
本発明の防汚性モノフィラメントは、優れた防汚性を生かして、主として抄紙ワイヤーや抄紙ドライヤーカンバスなどの抄紙機用織物の構成素材用繊維として使用される。すなわち、抄紙原料には、フレッシュパルプ以外に、回収段ボール古紙が混合される場合が多く、この回収段ボール古紙には、いわゆるガムテープが貼付されているために、回収段ボール古紙を混合した原料パルプ水性液は、粘着性の強いガムテープ糊が混入したものとなる。そのために、例えば紙の漉き上げ工程で原料パルプ水性液に曝される抄紙ワイヤー表面には、操業中にガムピッチ汚れが付着蓄積し、濾水効率の低下、搾水効率の低下、さらには漉き揚げた紙の均一性阻害および抄紙ワイヤーに付着したガムピッチ汚れが製品である紙へ転写し、紙の品位を低下させるなどのトラブルが発生する。したがって、抄紙機用織物を構成するモノフィラメントには、ガムピッチ汚れに対する優れた防汚性が必要とされている。しかるに、上記した布粘着テープ水中貼付剥離法により測定した布粘着テープ剥離応力が110cN/cm以下、特に好ましくは80cN/cm以下であるモノフィラメントは、従来のモノフィラメントに比較して、ガムピッチ汚れに対する優れた防汚性を発現することができるのである。
【0049】
本発明の防汚性繊維は、優れた防汚性を有しており種々の用途に使用することができるものであるが、前記したように卓越したガムピッチ汚れに対する防汚性を有するものであることから、パルプの漉き揚げ工程で使用される織物である抄紙ワイヤー、漉き揚げたパルプを搾水する工程で使用される抄紙プレスフェルトのバットおよびフェルト基布織物および搾水した湿紙やコーティング紙などを乾燥する工程で使用される織物である抄紙ドライヤーカンバスなどの各種抄紙機用織物の構成素材用繊維として好適であり、特に本発明の防汚性繊維をモノフィラメントの形態で抄紙ワイヤーおよび抄紙ドライヤーカンバスの構成素材用繊維として好適に使用することができる。
【0050】
かくして提供される本発明の防汚性繊維は、従来にない卓越したガムピッチ汚れに対する防汚性を有するものであり、産業上の利用価値が大なるものである。
【0051】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
<繊維表面の水接触角の測定方法>
繊維径0.25mmのモノフィラメント1本を両面接着テープを貼った長さ20mm、巾5mmのガラス板表面に固定して測定試料とし、20℃の雰囲気下において、エルマ光学(株)製ゴニオメーターの試料台上にセットし、該測定試料のモノフィラメント表面にマイクロシリンジで2マイクロリットルを付着させ、水滴の付着角度を測定した。この測定作業を10回繰返し、その平均値をモノフィラメントの繊維表面の水接触角とした。
【0052】
[実施例1、比較例1]
ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物とエポキシ化ポリアミドとからなる混合物およびポリエポキシ化合物を含む混合水性処理液の調合を下記条件で実施した。
【0053】
ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物には、PEI−ODIを約12重量%と界面活性剤類約6重量%とを含有する水性液である“エポミン”(登録商標)RP−10W((株)日本触媒製品)(以下、RP−10Wという)を用いた。
【0054】
エポキシ化ポリアミドには、エポキシ化ポリアミドを25重量%含有した水溶液である“Sumirez”(登録商標)Resin 675(住友化学(株)製品)(以下、Resin 675という)を用いた。
【0055】
また、ポリエポキシ化合物としては、グリセロールポリグリシジルエーテルである“デナコール”(登録商標)EX−313(ナガセ化成工業(株)製品)(以下、EX−313という))を用いた。
【0056】
<PEI−ODIとエポキシ化ポリアミドとの混合水性液の調合方法>
蒸留水968.827重量部、RP−10Wを5.833重量部(PEI−ODI混合量比:10.0重量%)、Resin 675を25.2重量部、およびEX−313を0.14重量部(対PEI−ODI配合量比:20重量%)を撹拌装置付きの混合槽に入れ、撹拌混合することにより、PEI−ODIとエポキシ化ポリアミドとを0.7重量%含有し、PEI−ODIとエポキシ化ポリアミドとの混合重量比率がPEI−ODI:エポキシ化ポリアミド=10:90の混合水性処理液を得た。
【0057】
上記の混合水性処理液を、モノフィラメント製造装置の熱セットゾーンの直後に設けたディップ槽に仕込んだ。
【0058】
熱可塑性樹脂であるPETを公知の方法で溶融紡糸・延伸・熱セットし、熱セットゾーンから出た直径0.25mmのPET製モノフィラメントを上記の混合物水性処理液が入ったディップ槽に導入することにより、該モノフィラメントに上記混合水性処理液を付与した。次いで、ディップ槽から出た該モノフィラメントに付着した過剰な混合水性処理液をエアーワイパーで除去した後、該モノフィラメントを加熱炉内に導入し240℃で1.6秒間熱処理し巻き取ることにより、該モノフィラメント表面に前記混合反応硬化物を約0.02重量%含有する本発明のPET製モノフィラメントを得た。
【0059】
このようにして得られた、PET製モノフィラメントの布粘着ガムテープ水中貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力は、32cN/cmであり、水接触角は41°であった。結果を表1に示す。
【0060】
比較のために、実施例1における、混合物水性処理液の付与を省略した以外は、実施例1と同様にしてPET製モノフィラメントを得た。得られたPET製モノフィラメントの布粘着ガムテープ水中貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力は349cN/cmであり、水接触角は72°であった。結果を比較例1として表1に併示する。
【0061】
前記実施例1および比較例1の結果から実施例1で得られた本発明のPET製モノフィラメントは、ガムピッチ汚れに対する防汚性と親水性に優れたものであり、抄紙ワイヤー等の構成糸として好適であることがわかる。
【0062】
[比較例2]
比較のために、実施例1における処理液のResin 675の添加を省略し、RP−10Wの量を58.333重量部に変更し、EX−313を1.4重量部(対PEI−ODI配合量比:20重量%)に変更し、蒸留水940.267重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行ってPET製モノフィラメントを得た。
【0063】
得られたPET製モノフィラメントを実施例1と同様に布粘着ガムテープ水中貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力は、183cN/cmと実施例1に比較して高く、ガムピッチ汚れに対する防汚性に劣るものであった。さらに、得られたPET製モノフィラメントの水接触角は95°と現行のPET製モノフィラメントである比較例1の水接触角72°に比較し高いことから水との親和性が劣るものであった。結果を表1に併示する。
【0064】
[比較例3]
実施例1の混合物水性処理液へのRP−10Wの添加を省略し、エポキシ化ポリアミドであるResin 675の量を28.0重量部に変更し、蒸留水972.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行ったところ、該処理液がPET製モノフィラメント表面でハジキを生じ均一な付与ができなかったため実験を中止した。
【0065】
[実施例2]
実施例1におけるRP−10Wを0.35重量部(PEI−ODI混合量比:0.6重量%)に変更し、Resin 675を27.832重量部(PEI−ODIとエポキシ化ポリアミドとの混合重量比率がPEI−ODI:エポキシ化ポリアミド=0.6:99.4)に変更し、EX−313を0.008重量部(対PEI−ODI配合量比:20重量%)に変更し、蒸留水971.81重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行って本発明のPET製モノフィラメントを得た。
【0066】
得られたPET製モノフィラメントの布粘着ガムテープ水中貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力は68cN/cmであり、水接触角は25°であった。結果を表1に併示する。実施例2で得た本発明のPET製モノフィラメントは、ガムピッチ汚れに対する防汚性に優れ、さらに水接触角も現行のPET製モノフィラメントよりも低く抄紙ワイヤー等の構成糸として好適であることがわかる。
[実施例3]
実施例1におけるRP−10Wを28.0重量部(PEI−ODI混合量比:48重量%)に変更し、Resin 675を14.56重量部(PEI−ODIとエポキシ化ポリアミドとの混合重量比率がPEI−ODI:エポキシ化ポリアミド=48:52)に変更し、EX−313を0.672重量部(対PEI−ODI配合量比:20重量%)に変更し、蒸留水956.768重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行って本発明のPET製モノフィラメントを得た。
【0067】
得られたPET製モノフィラメントの布粘着ガムテープ水中貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力は63cN/cm、および水接触角は71°であった。結果を表1に併示する。実施例3で得た本発明のPET製モノフィラメントは、ガムピッチ汚れに対する防汚性に優れ、抄紙ワイヤー等の構成糸として好適であることがわかる。
【0068】
[実施例4]
実施例1のグリセロールポリグリシジルエーテルをソルビドールポリグリシジルエーテルである“デナコール”(登録商標)EX−614B(ナガセ化成工業(株)製品)(以下、EX−614B)に変更した以外は、実施例1と同様に行って、本発明のPET製モノフィラメントを得た。
【0069】
得られたPET製モノフィラメントの布粘着ガムテープ水中貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力は36cN/cm、および水接触角は43°であった。結果を表1に併示する。実施例4で得た本発明のPET製モノフィラメントは、ガムピッチ汚れに対する防汚性に優れ、さらに水接触角も現行のPET製モノフィラメントよりも低く抄紙ワイヤー等の構成糸として好適であることがわかる。
【0070】
[実施例5、6および比較例4、5]
実施例1におけるPETをPPSに変更した以外は、実施例1と同様に行って本発明のPPS製モノフィラメントを得た(実施例5)。
【0071】
また、実施例1におけるPETをナイロン6に変更し、加熱炉内の熱処理条件を180℃で1.4秒間に変更した以外は、実施例1と同様に行って本発明のナイロン6製モノフィラメントを得た(実施例6)。
【0072】
得られた、PPSおよびナイロン6製モノフィラメントの布粘着ガムテープ水中貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力は各々34cN/cm、31cN/cmであり、水接触角は各々44°、39°であった。結果を表1に表示する。
【0073】
比較のために実施例5、6における混合水性処理液の付与を省略した以外は実施例5、6と同様に行って得たPPS製モノフィラメント(比較例4)およびナイロン6製モノフィラメント(比較例5)の布粘着ガムテープ水中貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力は各々338cN/cm、221cN/cmであり、水接触角は各々73°、63°であった。結果を表1に併示する。
【0074】
実施例5、6および比較例4、5の結果から、本発明のPPS製モノフィラメントおよびナイロン6製モノフィラメントはガムピッチ汚れに対する防汚性と親水性に優れたものであり抄紙ワイヤー等の構成糸として好適であることがわかる。
【0075】
【表1】
【0076】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の防汚性モノフィラメントは、卓越したガムピッチ汚れに対する防汚性を有するものであることから、パルプの漉き揚げ工程で使用される織物抄紙ワイヤー、漉き揚げたパルプを搾水する工程で使用される抄紙プレスフェルト基布および搾水した湿紙やコーティング紙などを乾燥する抄紙ドライヤーカンバスなどの各種抄紙機用織物の構成素材として有用であり、特に抄紙ワイヤーおよび抄紙ドライヤーカンバスの構成素材として好適である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などの粘着性汚れ物(ガムピッチ汚れ)が付着し難く、かつ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を有し、特に抄紙ワイヤーや抄紙ドライヤーカンバスなどの抄紙機用織物の構成素材として好適な防汚性繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、ポリフェニレンスルフィドおよびポリアミドなどの熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントに代表される繊維は、優れた抗張力および耐熱性などを有していることから、従来より抄紙業界における抄紙ワイヤー、抄紙ドライヤーカンバスおよび抄紙プレスフェルトなどの構成素材として広く使用されてきた。
【0003】
しかしながら、抄紙工程においては、紙原料中に存在する各種填料、スライム、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などの汚れ物が、熱可塑性樹脂製繊維からなる抄紙用織物類に付着することにより、濾水効率の低下、搾水効率の低下および乾燥効率の低下などの工程上の問題を生じるばかりか、これら汚れ物が紙へ転写することによる製品紙の品位低下などが重大な問題となっていた。
【0004】
このような問題に対処するために、フッ素系のポリマを添加したポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献1参照)が提案され、一部使用されてきたが、この方法では、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などの粘着性汚れ物(以下、ガムピッチ汚れという)の付着に対しては十分な防汚効果がないため、さらなる改善が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】
再公表 国際公開番号 WO 92/07126号公報(第1〜11頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、ガムピッチ汚れが付着し難く、かつ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を有し、特に抄紙ワイヤーや抄紙ドライヤーカンバスなどの抄紙機用織物の構成素材として好適な防汚性繊維の提供を目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物0.5〜50重量%とエポキシ化ポリアミド50〜99.5重量%とからなる混合反応硬化物が該繊維表面に付着または含浸されていることを特徴とする防汚性繊維によって達成できる。
【0008】
なお、本発明の防汚性繊維においては、混合反応硬化物が、更にポリエポキシ化合物を含む混合反応硬化物であること、
前記ポリエポキシ化合物が、グリセロールポリグリシジルエーテルおよびソルビトールポリグリシジルエーテルから選ばれた少なくとも1種であること、
前記炭素数8〜20のアルキルイソシアネートが、オクタデシルイソシアネートであること、
前記防汚性繊維が、下記(1)〜(10)の布粘着テープ水中貼付剥離法により測定した布粘着テープ剥離応力が110cN/cm以下であること、
記
(1)厚さ150〜250μm、横巾30mm、縦長さ120mmのポリエチレンテレフタレート製2軸延伸フィルムを2枚用意し、各々のフィルムの30mm巾の一端同士を重ならないように合わせて、この合わせ面に、片面に粘着剤の塗布された25mm×25mmサイズの布粘着テープを、前記2枚のフィルムの両端に渡るように貼付することにより、接合部で縦方向に繋ぎ合わされた見かけの縦長さ約240mm、横巾30mmのフィルムを作成する。
(2)前記の2枚が繋ぎ合わされたフィルムの前記布粘着テープの貼付されていない面のどちらか半分(一枚のフィルム)に、横巾10mm、縦長さ120mmの両面粘着テープ(日東電工(株)製品、No.523または同等品)を、前記フィルムと前記両面粘着テープの横巾方向のセンターを合わせて長手方向に揃えて貼付する。
(3)長さ約200mmに切断した繊維試料を、前記両面粘着テープを貼付したフィルムの粘着テープ上に、前記フィルムの長手方向と平行に隙間無く貼付し、前記両面粘着テープの長手方向の両端からはみ出している前記繊維の余端を鋏で切除し、繊維試料貼付フィルムを得る。
(4)底の平坦な平バット内に硝子板(厚さ約8mm、縦約200mm、横約80mm)を敷き、この硝子板表面が約15mm沈む位置になるまで前記平バットに水を注ぐ。
(5)前記平バットの水中に、前記(3)で作成した繊維試料貼付フィルムを浸漬し、30分間放置する。
(6)水中の前記繊維試料貼付フィルムを、繊維貼付面を上向き、かつ繊維面が左側になるようにしてから、横巾10mm、縦長さ150mmに切断した片面に粘着剤が塗布された布粘着テープ(ニチバン(株)製、段ボール包装用強粘着テープ<LS>No.101Nまたは同等品)を水中に入れ、この布粘着テープの長手方向左端を前記繊維試料貼付フィルムの繊維面左端と合わせて、前記繊維上に前記布粘着テープを仮貼付する。次いで、前記繊維面右端に約30mm残っている前記布粘着テープを、前記フィルム面にしっかりと貼付する。
(7)前記繊維貼付フィルムを裏返して、前記(1)で2枚のフィルムを繋ぎ合わせるために貼付した前記布粘着テープを取り除く。
(8)前記繊維貼付フィルムの繊維貼付面を上向きにし、この繊維貼付フィルムを繊維貼付部分が硝子板上に完全に乗るようにセットして、前記繊維の表面に仮貼付されている前記布粘着テープ上に、重量1.43Kg、巾50mm、直径86mmのゴムローラーを、前記布粘着テープを重ねたフィルムの右長手方向から片道走行させ、水中で前記布粘着テープを前記繊維試料に貼付して剥離応力測定用試料を作成する。
(9)前記剥離応力測定用試料を水中から取り出し、前記2枚のフィルムの接合部を支点にして、前記布粘着テープの貼付面が内側になるように山折りし、次いで山折りの支点部から繊維上に貼付されている前記布粘着テープを長さ約10mm剥がし、露出した繊維貼付フィルム端部を、引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)の上チャックの中央部にセットし、一方の繊維の貼付されていない前記フィルムの下端(山折りの裾部)を、前記引張試験器の下チャックの中央部にセットして、引張速度100mm/分、チャートスピード100mm/分の条件で剥離応力を測定し、剥離応力の高い山と剥離応力の低い谷とが交互に連なった剥離応力チャートを得る。
(10)得られた剥離応力チャートの最初の剥離応力の高い山から約20mm後の剥離応力の高い山を始点として、一個一個の交互の山と谷各40点の剥離応力を読み取り、その平均値をもって剥離応力とし、この測定作業((1)から(10))を10回繰返し、その平均値を布粘着テープ剥離応力とする。
【0009】
前記繊維がモノフィラメントであること、
前記繊維が、飽和ポリエステル、ポリフェニレンスルフィドおよびポリアミドから選ばれた一種を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂製繊維であること、
前記繊維を構成する飽和ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであること、
前記防汚性繊維が、抄紙機用織物の構成素材用繊維であること、
前記防汚性繊維が抄紙ワイヤーまたは抄紙ドライヤーカンバスの構成素材用繊維であることが、
いずれも好ましい条件であり、これらの条件の少なくとも一つの条件を満たすことによって一層優れた効果の取得を期待することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明における繊維は、天然繊維、再生繊維および合成繊維などのいかなるものであってもよいが、中でも熱可塑性樹脂製繊維が好ましい。
【0012】
熱可塑性樹脂としては、熱可塑性を有する繊維形成性ポリマであればいかなるものでもよく、例えば、各種の芳香族、脂肪族または脂環族のジカルボン酸とグリコールとからなる各種飽和ポリエステル類、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートおよびポリブチレン(サクシネート/アジペート)共重合体などの各種生分解性ポリマ類、ポリフェニレンスルフィド類、ナイロン6、ナイロン66を代表とする各種ポリアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどの各種ポリオレフィン類、各種ポリスチレン類、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリレート類、各種ポリエーテル類、熱可塑性ポリウレタンなどの各種熱可塑性エラストマー類、およびエチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどの各種フッ素樹脂類などを挙げることができる。これらのポリマから選ばれた一種または2種以上を、目的に応じて溶融混合または複合するなど適宜組み合わせて使用することができる。
【0013】
これらの熱可塑性樹脂の中でも、飽和ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSという)およびポリアミドから選ばれた一種を50重量%以上含有することが好ましい。また、飽和ポリエステルの中ではポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)が好適である。
【0014】
上記した各種熱可塑性樹脂は、目的に応じて公知の有機・無機の各種添加剤を含有することができ、例えば異種の熱可塑性樹脂類、各種合成・重合触媒残渣、各種抗酸化剤、耐光剤、難燃剤、ヨウ化銅、ヨウ化カリウムなどの老化防止剤、酸化チタン、酸化珪素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、炭化ケイ素、硫酸バリウム、クレイ、タルク、カオリン、カーボンブラックなどの無機粒子・顔料類、フタロシアニン金属系、コバルト青などの各種有機顔料、ステアリン酸金属塩類、エチレンビスステアリルアミド、ステアリン酸、メタ珪酸カルシウム、含水珪酸マグネシウム、アミノシラン、メラミンシアヌレート、アイオノマー類、金属イオン封鎖剤、包接化合物、着色防止剤、帯電防止剤、ワックス類、シリコーンオイル、各種界面活性剤、各種強化繊維類、および熱可塑性樹脂が飽和ポリエステルの場合には耐加水分解性を改善するための各種カルボジイミド化合物、各種エポキシ化合物および各種オキサゾリン化合物などを含有することができる。
【0015】
本発明の繊維の形態は、マルチフィラメント、短繊維、綿状、モノフィラメントおよびそれらを撚糸したものなどのいかなるものであってもよく、何等限定されるものではないが、繊維の用途が抄紙ワイヤーおよび抄紙ドライヤーカンバスおよび抄紙プレスフェルトの基布などの抄紙機用織物等の工業用織物の構成素材用である場合には、モノフィラメントであることが特に好ましい。
【0016】
本発明におけるモノフィラメントは、一本の単糸からなる連続糸であり、一本で使用される他に、この一本の単糸からなる連続糸を複数本組合せたもの、さらには複数本組合せた単糸を撚り合わせたものなどを含むものである。
【0017】
また、本発明における繊維の断面形状は任意であり、例えば丸、楕円、3角、T、Y、H、+、5葉,6葉,7葉,8葉などの多葉形状、正方形、長方形、菱形、繭型および馬蹄型などを挙げることができ、また、これらの形状を一部変更したものであってもよい。さらには、これら各種断面形状の繊維を適宜組み合わせて用いることができる。
【0018】
さらに、本発明における繊維の構造としては、単一構造の他に、芯鞘複合構造、海成分または島成分として配した海島複合構造およびバイメタル状に組み合わされた複合構造および中空構造などであってもよい。
【0019】
本発明における繊維がモノフィラメントである場合における断面の直径は、用途によって適宜選択することができるが、0.01〜3mmの範囲が最もよく使用される。
【0020】
本発明における繊維の必要強度は、用途により異なるが、概ね1.0cN/dtex以上であることが好ましい。
【0021】
本発明の防汚性繊維は、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物0.5〜50重量%とエポキシ化ポリアミド50〜99.5重量%とからなるを含有する混合反応硬化物を該繊維表面に付着または含浸されているものである。
【0022】
本発明におけるポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物とは、エチレンイミンの分岐重合体であるポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物(以下、PEI−ALKIという)である。
【0023】
前記PEI−ALKIとしては、例えばポリエチレンイミンとオクチルイソシアネート、ノニルイソシアネート、デシルイソシアネート、ウンデシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、トリデシルイソシアネート、テトラデシルイソシアネート、ペンタデシルイソシアネート、ヘキサデシルイソシアネート、ヘプタデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ノナデシルイソシアネートおよびエイコシルイソシアネートなどのモノイソシアネートとの付加物を挙げることができ、これらの中でもポリエチレンイミンとオクタデシルイソシアネートとの付加物が一層優れた対ガムピッチ防汚性が得られるため好ましい。
【0024】
本発明におけるPEI−ALKIは、公知の方法によりポリエチレンイミンに炭素数8〜20のアルキルイソシアネートを付加反応させることにより得ることができる。
【0025】
この場合におけるポリエチレンイミンのイミン基への炭素数8〜20のアルキルイソシアネートの付加反応率としては、イミン基の40〜100%がアルキルイソシアネートと反応したものが使用できる。
【0026】
上記PEI−ALKIの付加反応率が高いほど、得られる繊維の防汚性が優れたものとなるが、反面、表面活性の低いポリオレフィン類、フッ素樹脂類およびポリエステル類からなる繊維表面に上記付加物を含有させた場合には、繊維と付加物との密着性が低下する傾向が認められるため、付加物の付加反応率としては50%〜80%のものが好ましい。
【0027】
なお、ポリエチレンイミンとオクタデシルイソシアネートとの付加物(以下、PEI−ODIという)については、“エポミン”(登録商標)RP−20((株)日本触媒製品)、“エポミン”(登録商標)RP−10W(水性液)((株)日本触媒製品)として市販されており、これらを購入して使用することができる。
【0028】
本発明におけるエポキシ化ポリアミドとは、ポリアミド1分子内にエポキシ基を最低1個、好ましくは複数個含有するポリアミドである。
【0029】
前記エポキシ化ポリアミドにおけるポリアミドの種類としては、その分子の繰り返し単位中に1個以上のアミド基を有するポリマであればいずれでもよく、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロンMXD6、ナイロン612、各種ポリアミドのアミド基の少なくとも一部をメトキシメチル化したメトキシメチル化ポリアミド、ナイロン6/66共重合体、ε−カプロラクタムやω−ラウロラクタム等のラクタム類と2−アミノエチルピペラジンとの重縮合物、ε−カプロラクタムやω−ラウロラクタム等のラクタム類とポリエチレングリコールジアンモニウムアジペートとの重縮合物、ε−カプロラクタムやω−ラウロラクタム等のラクタム類と2−アミノエチルピペラジンおよびポリエチレングリコールジアンモニウムアジペートとの重縮合物等のポリアミド、ダイマーもしくはトリマー不飽和脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとから得られるポリアミド、ポリアルキレンポリアミンとジシアンジアミドとから得られるポリアミド、アルキレンジアミン類およびポリアルキレンポリアミンから選ばれるポリアミン(a),尿素類(b),二塩基性カルボン酸類(c)、ラクタム類(d)とから得られるポリアミド等を挙げることができるが、これらに何等限定されるものではない。
【0030】
前記エポキシ化ポリアミドの製造は、前記したポリアミドに、定法によってエピハロヒドリン類、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン類またはポリグリシジル化合物から選ばれた少なくとも1種を反応させることによって得ることができる。
【0031】
これらのエポキシ化ポリアミドの中では、水溶性のエポキシ化ポリアミドを採用するのが本発明の繊維の製造が容易であることから好適である。
【0032】
水溶性のエポキシ化ポリアミドとしては、例えばε−カプロラクタムやω−ラウロラクタム等のラクタム類とポリエチレングリコールジアンモニウムアジペートとの重縮合物にエピハロヒドリン類、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン類またはポリグリシジル化合物から選ばれた少なくとも1種を反応させたもの、ε−カプロラクタムやω−ラウロラクタム等のラクタム類とポリエチレングリコールジアンモニウムアジペートとの重縮合物にエピハロヒドリン類、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン類またはポリグリシジル化合物から選ばれた少なくとも1種を反応させたもの、ダイマーもしくはトリマー不飽和脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとから得られるポリアミドにエピハロヒドリン類、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン類またはポリグリシジル化合物から選ばれた少なくとも1種を反応させたもの、ポリアルキレンポリアミンとジシアンジアミドとから得られるポリアミドにエピハロヒドリン類、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン類またはポリグリシジル化合物から選ばれた少なくとも1種を反応させたもの、アルキレンジアミン類およびポリアルキレンポリアミンから選ばれたポリアミン(a),尿素類(b),二塩基性カルボン酸類(c)、ラクタム類(d)とから得られるポリアミドにエピハロヒドリン類、α,γ−ジハロ−β−ヒドリン類またはポリグリシジル化合物から選ばれた少なくとも1種を反応させたもの等を挙げることができるが、これらに何等限定されるものではない。
【0033】
なお、水溶性のエポキシ化ポリアミドについては、水溶液として市販されており、例えばSumirez(登録商標)Resin 650,675,6615および6625(住友化学工業(株)製品)などを購入し使用することができる。
【0034】
本発明における、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物とエポキシ化ポリアミドとからなる混合反応硬化物の混合量比は、繊維への付着均一性、密着性およびガムピッチに対する防汚性とのバランスが優れた繊維を得るために重要な特性であり、前記、混合反応硬化物の混合量比は炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物が0.5〜50重量%とエポキシ化ポリアミドが50〜99.5重量%の範囲であり、更に好ましくはポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物が1〜40重量%とエポキシ化ポリアミドが60〜99重量%の範囲がより好ましい。さらには、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物が3〜30重量%とエポキシ化ポリアミドが70〜97重量%の範囲が特に好ましい。
【0035】
前記、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物が0.5重量%未満では、繊維への付着均一性、密着性が不十分となり、ガムピッチに対する防汚性が劣る傾向となる。
【0036】
また、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物が50重量%を越えると、水との親和性が劣り、例えばパルプ水スラリーから湿紙を漉き揚げる織物である抄紙ワイヤーの構成糸などの水と接触する用途には不適当なものとなる傾向となるため好ましくない。
【0037】
本発明の防汚性繊維が、表面に付着または含浸する混合反応硬化物が更にポリエポキシ化合物を含む混合反応硬化物であると、混合反応硬化物と繊維との密着性が向上し防汚耐久性が一層良好となるため好ましい。
【0038】
ポリエポキシ化合物としては、例えばポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテルおよびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどを挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらのポリエポキシ化合物中では特に水との親和性の良好なポリグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルおよびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどの水溶性を有するポリエポキシド化合物であることが好ましく、中でもグリセロールポリグリシジルエーテルまたはソルビトールポリグリシジルエーテルから選ばれた少なくとも1種であることが更に好ましい。
【0039】
なお、前記水溶性を有するポリエポキシ化合物のグリセロールポリグリシジルエーテルは、例えば市販品である“デナコール”(登録商標)EX−313(ナガセ化成工業(株)製品)、また、ソルビトールポリグリシジルエーテルは、例えば市販品である“デナコール”(登録商標)EX−614B(ナガセ化成工業(株)製品)などを購入して使用することができる。
【0040】
前記ポリエポキシ化合物の配合量は、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物0.5〜50重量%とエポキシ化ポリアミド50〜99.5重量%の範囲において混合量比は任意に設計できるが、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物100重量部に対して1〜50重量部が好ましい傾向にある。
【0041】
本発明の防汚性繊維は、下記(1)〜(10)の布粘着テープ水中貼付剥離法により測定した布粘着テープ剥離応力が110cN/cm以下であることが好ましく、80cN/cm以下であることが更に好ましく、ガムピッチ汚れが付着し難く、かつ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を有するための重要な要件である。
【0042】
記
(1)厚さ150〜250μm、横巾30mm、縦長さ120mmのポリエチレンテレフタレート製2軸延伸フィルムを2枚用意し、各々のフィルムの30mm巾の一端同士を重ならないように合わせて、この合わせ面に、片面に粘着剤の塗布された25mm×25mmサイズの布粘着テープを、前記2枚のフィルムの両端に渡るように貼付することにより、接合部で縦方向に繋ぎ合わされた見かけの縦長さ約240mm、横巾30mmのフィルムを作成する。
(2)前記の2枚が繋ぎ合わされたフィルムの前記布粘着テープの貼付されていない面のどちらか半分(一枚のフィルム)に、横巾10mm、縦長さ120mmの両面粘着テープ(日東電工(株)製品、No.523または同等品)を、前記フィルムと前記両面粘着テープの横巾方向のセンターを合わせて長手方向に揃えて貼付する。
(3)長さ約200mmに切断した繊維試料を、前記両面粘着テープを貼付したフィルムの粘着テープ上に、前記フィルムの長手方向と平行に隙間無く貼付し、前記両面粘着テープの長手方向の両端からはみ出している前記繊維の余端を鋏で切除し、繊維試料貼付フィルムを得る。
(4)底の平坦な平バット内に硝子板(厚さ約8mm、縦約200mm、横約80mm)を敷き、この硝子板表面が約15mm沈む位置になるまで前記平バットに水を注ぐ。
(5)前記平バットの水中に、前記(3)で作成した繊維試料貼付フィルムを浸漬し、30分間放置する。
(6)水中の前記繊維試料貼付フィルムを、繊維貼付面を上向き、かつ繊維面が左側になるようにしてから、横巾10mm、縦長さ150mmに切断した片面に粘着剤が塗布された布粘着テープ(ニチバン(株)製、段ボール包装用強粘着テープ<LS>No.101Nまたは同等品)を水中に入れ、この布粘着テープの長手方向左端を前記繊維試料貼付フィルムの繊維面左端と合わせて、前記繊維上に前記布粘着テープを仮貼付する。次いで、前記繊維面右端に約30mm残っている前記布粘着テープを、前記フィルム面にしっかりと貼付する。
(7)前記繊維貼付フィルムを裏返して、前記(1)で2枚のフィルムを繋ぎ合わせるために貼付した前記布粘着テープを取り除く。
(8)前記繊維貼付フィルムの繊維貼付面を上向きにし、この繊維貼付フィルムを繊維貼付部分が硝子板上に完全に乗るようにセットして、前記繊維の表面に仮貼付されている前記布粘着テープ上に、重量1.43Kg、巾50mm、直径86mmのゴムローラーを、前記布粘着テープを重ねたフィルムの右長手方向から片道走行させ、水中で前記布粘着テープを前記繊維試料に貼付して剥離応力測定用試料を作成する。
(9)前記剥離応力測定用試料を水中から取り出し、前記2枚のフィルムの接合部を支点にして、前記布粘着テープの貼付面が内側になるように山折りし、次いで山折りの支点部から繊維上に貼付されている前記布粘着テープを長さ約10mm剥がし、露出した繊維貼付フィルム端部を引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)の上チャックの中央部にセットし、一方の繊維の貼付されていない前記フィルムの下端(山折りの裾部)を、前記引張試験器の下チャックの中央部にセットして、引張速度100mm/分、チャートスピード100mm/分の条件で剥離応力を測定し、剥離応力の高い山と剥離応力の低い谷とが交互に連なった剥離応力チャートを得る。
(10)得られた剥離応力チャートの最初の剥離応力の高い山から約20mm後の剥離応力の高い山を始点として、一個一個の交互の山と谷各40点の剥離応力を読み取り、その平均値をもって剥離応力とし、この測定作業((1)から(10))を10回繰返し、その平均値を布粘着テープ剥離応力とする。
【0043】
なお、上記した布粘着テープ水中貼付剥離法で布粘着テープ剥離応力を測定することにより、モノフィラメントを織物に加工することなく、対象とするモノフィラメントを構成素材とする抄紙機用織物などのガムピッチ汚れに対する防汚性を定量的に評価することが可能である。
【0044】
本発明の防汚性繊維の製造方法は、例えば公知の方法により熱可塑性樹脂を溶融押出しした後、未延伸段階、多段延伸系の延伸と延伸の間、延伸後および熱セット後などの任意の段階において、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物とエポキシ化ポリアミドからなる混合物を、水や各種有機溶剤の溶液あるいはエマルジョンとし、これを繊維にコーティングまたはスプレーする方法、またはこの溶液あるいはエマルジョンに繊維を浸積して含浸させる方法などを採用することができる。また、上記組成物には必要に応じてポリエポキシ化合物等の硬化剤、更に必要に応じて公知の界面活性剤等を含ませることができる。
【0045】
特に、水溶液やエマルジョン等の水性液として繊維にコーテイング、スプレー、含浸などの方法で付与し、エアーワイパー、バキュームワイパー、プレスなどによって付与量を調整した後、80℃〜250℃の温度で1秒〜10分間定長下で熱処理することで反応硬化する方法が好ましい。また、コーティング前に公知の各種界面活性剤類をあらかじめ付与した繊維に、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物とエポキシ化ポリアミドを含む組成物を付与する方法を採用してもよい。
【0046】
繊維に含浸またはコーティングする場合における、ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物とエポキシ化ポリアミドからなる混合物の水溶液またはエマルジョン濃度は任意に設計できるが、0.005〜10重量%の濃度範囲が好ましく、0.01〜5重量%の濃度範囲がより好ましく、更には0.03〜3重量%の濃度範囲が好ましい。
【0047】
本発明の繊維における、上記組成物の付着量または含浸量は任意であるが、熱処理後の付着量または含浸量として0.001〜1重量%の範囲が好ましく、0.003〜0.5重量%の範囲がより好ましい。付着量または含浸量の測定は、上記混合物を付与した繊維と上記混合物を付与しないこと以外は上記混合物を付与した繊維と同一条件で製造した繊維との同一長さにおける重量の差から求めることができる。
【0048】
本発明の防汚性モノフィラメントは、優れた防汚性を生かして、主として抄紙ワイヤーや抄紙ドライヤーカンバスなどの抄紙機用織物の構成素材用繊維として使用される。すなわち、抄紙原料には、フレッシュパルプ以外に、回収段ボール古紙が混合される場合が多く、この回収段ボール古紙には、いわゆるガムテープが貼付されているために、回収段ボール古紙を混合した原料パルプ水性液は、粘着性の強いガムテープ糊が混入したものとなる。そのために、例えば紙の漉き上げ工程で原料パルプ水性液に曝される抄紙ワイヤー表面には、操業中にガムピッチ汚れが付着蓄積し、濾水効率の低下、搾水効率の低下、さらには漉き揚げた紙の均一性阻害および抄紙ワイヤーに付着したガムピッチ汚れが製品である紙へ転写し、紙の品位を低下させるなどのトラブルが発生する。したがって、抄紙機用織物を構成するモノフィラメントには、ガムピッチ汚れに対する優れた防汚性が必要とされている。しかるに、上記した布粘着テープ水中貼付剥離法により測定した布粘着テープ剥離応力が110cN/cm以下、特に好ましくは80cN/cm以下であるモノフィラメントは、従来のモノフィラメントに比較して、ガムピッチ汚れに対する優れた防汚性を発現することができるのである。
【0049】
本発明の防汚性繊維は、優れた防汚性を有しており種々の用途に使用することができるものであるが、前記したように卓越したガムピッチ汚れに対する防汚性を有するものであることから、パルプの漉き揚げ工程で使用される織物である抄紙ワイヤー、漉き揚げたパルプを搾水する工程で使用される抄紙プレスフェルトのバットおよびフェルト基布織物および搾水した湿紙やコーティング紙などを乾燥する工程で使用される織物である抄紙ドライヤーカンバスなどの各種抄紙機用織物の構成素材用繊維として好適であり、特に本発明の防汚性繊維をモノフィラメントの形態で抄紙ワイヤーおよび抄紙ドライヤーカンバスの構成素材用繊維として好適に使用することができる。
【0050】
かくして提供される本発明の防汚性繊維は、従来にない卓越したガムピッチ汚れに対する防汚性を有するものであり、産業上の利用価値が大なるものである。
【0051】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
<繊維表面の水接触角の測定方法>
繊維径0.25mmのモノフィラメント1本を両面接着テープを貼った長さ20mm、巾5mmのガラス板表面に固定して測定試料とし、20℃の雰囲気下において、エルマ光学(株)製ゴニオメーターの試料台上にセットし、該測定試料のモノフィラメント表面にマイクロシリンジで2マイクロリットルを付着させ、水滴の付着角度を測定した。この測定作業を10回繰返し、その平均値をモノフィラメントの繊維表面の水接触角とした。
【0052】
[実施例1、比較例1]
ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物とエポキシ化ポリアミドとからなる混合物およびポリエポキシ化合物を含む混合水性処理液の調合を下記条件で実施した。
【0053】
ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物には、PEI−ODIを約12重量%と界面活性剤類約6重量%とを含有する水性液である“エポミン”(登録商標)RP−10W((株)日本触媒製品)(以下、RP−10Wという)を用いた。
【0054】
エポキシ化ポリアミドには、エポキシ化ポリアミドを25重量%含有した水溶液である“Sumirez”(登録商標)Resin 675(住友化学(株)製品)(以下、Resin 675という)を用いた。
【0055】
また、ポリエポキシ化合物としては、グリセロールポリグリシジルエーテルである“デナコール”(登録商標)EX−313(ナガセ化成工業(株)製品)(以下、EX−313という))を用いた。
【0056】
<PEI−ODIとエポキシ化ポリアミドとの混合水性液の調合方法>
蒸留水968.827重量部、RP−10Wを5.833重量部(PEI−ODI混合量比:10.0重量%)、Resin 675を25.2重量部、およびEX−313を0.14重量部(対PEI−ODI配合量比:20重量%)を撹拌装置付きの混合槽に入れ、撹拌混合することにより、PEI−ODIとエポキシ化ポリアミドとを0.7重量%含有し、PEI−ODIとエポキシ化ポリアミドとの混合重量比率がPEI−ODI:エポキシ化ポリアミド=10:90の混合水性処理液を得た。
【0057】
上記の混合水性処理液を、モノフィラメント製造装置の熱セットゾーンの直後に設けたディップ槽に仕込んだ。
【0058】
熱可塑性樹脂であるPETを公知の方法で溶融紡糸・延伸・熱セットし、熱セットゾーンから出た直径0.25mmのPET製モノフィラメントを上記の混合物水性処理液が入ったディップ槽に導入することにより、該モノフィラメントに上記混合水性処理液を付与した。次いで、ディップ槽から出た該モノフィラメントに付着した過剰な混合水性処理液をエアーワイパーで除去した後、該モノフィラメントを加熱炉内に導入し240℃で1.6秒間熱処理し巻き取ることにより、該モノフィラメント表面に前記混合反応硬化物を約0.02重量%含有する本発明のPET製モノフィラメントを得た。
【0059】
このようにして得られた、PET製モノフィラメントの布粘着ガムテープ水中貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力は、32cN/cmであり、水接触角は41°であった。結果を表1に示す。
【0060】
比較のために、実施例1における、混合物水性処理液の付与を省略した以外は、実施例1と同様にしてPET製モノフィラメントを得た。得られたPET製モノフィラメントの布粘着ガムテープ水中貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力は349cN/cmであり、水接触角は72°であった。結果を比較例1として表1に併示する。
【0061】
前記実施例1および比較例1の結果から実施例1で得られた本発明のPET製モノフィラメントは、ガムピッチ汚れに対する防汚性と親水性に優れたものであり、抄紙ワイヤー等の構成糸として好適であることがわかる。
【0062】
[比較例2]
比較のために、実施例1における処理液のResin 675の添加を省略し、RP−10Wの量を58.333重量部に変更し、EX−313を1.4重量部(対PEI−ODI配合量比:20重量%)に変更し、蒸留水940.267重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行ってPET製モノフィラメントを得た。
【0063】
得られたPET製モノフィラメントを実施例1と同様に布粘着ガムテープ水中貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力は、183cN/cmと実施例1に比較して高く、ガムピッチ汚れに対する防汚性に劣るものであった。さらに、得られたPET製モノフィラメントの水接触角は95°と現行のPET製モノフィラメントである比較例1の水接触角72°に比較し高いことから水との親和性が劣るものであった。結果を表1に併示する。
【0064】
[比較例3]
実施例1の混合物水性処理液へのRP−10Wの添加を省略し、エポキシ化ポリアミドであるResin 675の量を28.0重量部に変更し、蒸留水972.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行ったところ、該処理液がPET製モノフィラメント表面でハジキを生じ均一な付与ができなかったため実験を中止した。
【0065】
[実施例2]
実施例1におけるRP−10Wを0.35重量部(PEI−ODI混合量比:0.6重量%)に変更し、Resin 675を27.832重量部(PEI−ODIとエポキシ化ポリアミドとの混合重量比率がPEI−ODI:エポキシ化ポリアミド=0.6:99.4)に変更し、EX−313を0.008重量部(対PEI−ODI配合量比:20重量%)に変更し、蒸留水971.81重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行って本発明のPET製モノフィラメントを得た。
【0066】
得られたPET製モノフィラメントの布粘着ガムテープ水中貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力は68cN/cmであり、水接触角は25°であった。結果を表1に併示する。実施例2で得た本発明のPET製モノフィラメントは、ガムピッチ汚れに対する防汚性に優れ、さらに水接触角も現行のPET製モノフィラメントよりも低く抄紙ワイヤー等の構成糸として好適であることがわかる。
[実施例3]
実施例1におけるRP−10Wを28.0重量部(PEI−ODI混合量比:48重量%)に変更し、Resin 675を14.56重量部(PEI−ODIとエポキシ化ポリアミドとの混合重量比率がPEI−ODI:エポキシ化ポリアミド=48:52)に変更し、EX−313を0.672重量部(対PEI−ODI配合量比:20重量%)に変更し、蒸留水956.768重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行って本発明のPET製モノフィラメントを得た。
【0067】
得られたPET製モノフィラメントの布粘着ガムテープ水中貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力は63cN/cm、および水接触角は71°であった。結果を表1に併示する。実施例3で得た本発明のPET製モノフィラメントは、ガムピッチ汚れに対する防汚性に優れ、抄紙ワイヤー等の構成糸として好適であることがわかる。
【0068】
[実施例4]
実施例1のグリセロールポリグリシジルエーテルをソルビドールポリグリシジルエーテルである“デナコール”(登録商標)EX−614B(ナガセ化成工業(株)製品)(以下、EX−614B)に変更した以外は、実施例1と同様に行って、本発明のPET製モノフィラメントを得た。
【0069】
得られたPET製モノフィラメントの布粘着ガムテープ水中貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力は36cN/cm、および水接触角は43°であった。結果を表1に併示する。実施例4で得た本発明のPET製モノフィラメントは、ガムピッチ汚れに対する防汚性に優れ、さらに水接触角も現行のPET製モノフィラメントよりも低く抄紙ワイヤー等の構成糸として好適であることがわかる。
【0070】
[実施例5、6および比較例4、5]
実施例1におけるPETをPPSに変更した以外は、実施例1と同様に行って本発明のPPS製モノフィラメントを得た(実施例5)。
【0071】
また、実施例1におけるPETをナイロン6に変更し、加熱炉内の熱処理条件を180℃で1.4秒間に変更した以外は、実施例1と同様に行って本発明のナイロン6製モノフィラメントを得た(実施例6)。
【0072】
得られた、PPSおよびナイロン6製モノフィラメントの布粘着ガムテープ水中貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力は各々34cN/cm、31cN/cmであり、水接触角は各々44°、39°であった。結果を表1に表示する。
【0073】
比較のために実施例5、6における混合水性処理液の付与を省略した以外は実施例5、6と同様に行って得たPPS製モノフィラメント(比較例4)およびナイロン6製モノフィラメント(比較例5)の布粘着ガムテープ水中貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力は各々338cN/cm、221cN/cmであり、水接触角は各々73°、63°であった。結果を表1に併示する。
【0074】
実施例5、6および比較例4、5の結果から、本発明のPPS製モノフィラメントおよびナイロン6製モノフィラメントはガムピッチ汚れに対する防汚性と親水性に優れたものであり抄紙ワイヤー等の構成糸として好適であることがわかる。
【0075】
【表1】
【0076】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の防汚性モノフィラメントは、卓越したガムピッチ汚れに対する防汚性を有するものであることから、パルプの漉き揚げ工程で使用される織物抄紙ワイヤー、漉き揚げたパルプを搾水する工程で使用される抄紙プレスフェルト基布および搾水した湿紙やコーティング紙などを乾燥する抄紙ドライヤーカンバスなどの各種抄紙機用織物の構成素材として有用であり、特に抄紙ワイヤーおよび抄紙ドライヤーカンバスの構成素材として好適である。
Claims (10)
- ポリエチレンイミンと炭素数8〜20のアルキルイソシアネートとの付加物0.5〜50重量%とエポキシ化ポリアミド50〜99.5重量%とからなる混合反応硬化物が繊維表面に付着または含浸されていることを特徴とする防汚性繊維。
- 前記混合反応硬化物が、更にポリエポキシ化合物を含む混合反応硬化物であることを特徴とする請求項1記載の防汚性繊維。
- 前記ポリエポキシ化合物が、グリセロールポリグリシジルエーテルおよびソルビトールポリグリシジルエーテルから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の防汚性繊維。
- 前記炭素数8〜20のアルキルイソシアネートがオクタデシルイソシアネートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防汚性繊維。
- 前記防汚性繊維の、下記(1)〜(10)の布粘着テープ水中貼付剥離法により測定した布粘着テープ剥離応力が110cN/cm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の防汚性繊維。
記
(1)厚さ150〜250μm、横巾30mm、縦長さ120mmのポリエチレンテレフタレート製2軸延伸フィルムを2枚用意し、各々のフィルムの30mm巾の一端同士を重ならないように合わせて、この合わせ面に、片面に粘着剤の塗布された25mm×25mmサイズの布粘着テープを、前記2枚のフィルムの両端に渡るように貼付することにより、接合部で縦方向に繋ぎ合わされた見かけの縦長さ約240mm、横巾30mmのフィルムを作成する。
(2)前記の2枚が繋ぎ合わされたフィルムの前記布粘着テープの貼付されていない面のどちらか半分(一枚のフィルム)に、横巾10mm、縦長さ120mmの両面粘着テープ(日東電工(株)製品、No.523または同等品)を、前記フィルムと前記両面粘着テープの横巾方向のセンターを合わせて長手方向に揃えて貼付する。
(3)長さ約200mmに切断した繊維試料を、前記両面粘着テープを貼付したフィルムの粘着テープ上に、前記フィルムの長手方向と平行に隙間無く貼付し、前記両面粘着テープの長手方向の両端からはみ出している前記繊維の余端を鋏で切除し、繊維試料貼付フィルムを得る。
(4)底の平坦な平バット内に硝子板(厚さ約8mm、縦約200mm、横約80mm)を敷き、この硝子板表面が約15mm沈む位置になるまで前記平バットに水を注ぐ。
(5)前記平バットの水中に、前記(3)で作成した繊維試料貼付フィルムを浸漬し、30分間放置する。
(6)水中の前記繊維試料貼付フィルムを、繊維貼付面を上向き、かつ繊維面が左側になるようにしてから、横巾10mm、縦長さ150mmに切断した片面に粘着剤が塗布された布粘着テープ(ニチバン(株)製、段ボール包装用強粘着テープ<LS>No.101Nまたは同等品)を水中に入れ、この布粘着テープの長手方向左端を前記繊維試料貼付フィルムの繊維面左端と合わせて、前記繊維上に前記布粘着テープを仮貼付する。次いで、前記繊維面右端に約30mm残っている前記布粘着テープを、前記フィルム面にしっかりと貼付する。
(7)前記繊維貼付フィルムを裏返して、前記(1)で2枚のフィルムを繋ぎ合わせるために貼付した前記布粘着テープを取り除く。
(8)前記繊維貼付フィルムの繊維貼付面を上向きにし、この繊維貼付フィルムを繊維貼付部分が硝子板上に完全に乗るようにセットして、前記繊維の表面に仮貼付されている前記布粘着テープ上に、重量1.43Kg、巾50mm、直径86mmのゴムローラーを、前記布粘着テープを重ねたフィルムの右長手方向から片道走行させ、水中で前記布粘着テープを前記繊維試料に貼付して剥離応力測定用試料を作成する。
(9)前記剥離応力測定用試料を水中から取り出し、前記2枚のフィルムの接合部を支点にして、前記布粘着テープの貼付面が内側になるように山折りし、次いで山折りの支点部から繊維上に貼付されている前記布粘着テープを長さ約10mm剥がし、露出した繊維貼付フィルム端部を、引張試験器((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)の上チャックの中央部にセットし、一方の繊維の貼付されていない前記フィルムの下端(山折りの裾部)を、前記引張試験器の下チャックの中央部にセットして、引張速度100mm/分、チャートスピード100mm/分の条件で剥離応力を測定し、剥離応力の高い山と剥離応力の低い谷とが交互に連なった剥離応力チャートを得る。
(10)得られた剥離応力チャートの最初の剥離応力の高い山から約20mm後の剥離応力の高い山を始点として、一個一個の交互の山と谷各40点の剥離応力を読み取り、その平均値をもって剥離応力とし、この測定作業((1)から(10))を10回繰返し、その平均値を布粘着テープ剥離応力とする。 - 前記繊維がモノフィラメントであることを特徴とする請求項1記載の防汚性繊維。
- 前記繊維が、飽和ポリエステル、ポリフェニレンスルフィドおよびポリアミドから選ばれた一種を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂製繊維であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の防汚性繊維。
- 前記繊維を構成する飽和ポリエステルがポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項7に記載の防汚性繊維。
- 前記防汚性繊維が、抄紙機用織物の構成素材用繊維であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の防汚性繊維。
- 前記防汚性繊維が抄紙ワイヤーまたは抄紙ドライヤーカンバスの構成素材用繊維であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の防汚性繊維。
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JP2002352962A JP2004183159A (ja) | 2002-12-04 | 2002-12-04 | 防汚性繊維 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPWO2020022367A1 (ja) * | 2018-07-25 | 2021-08-05 | ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社 | 撥水剤、撥水性繊維製品の製造方法および撥水性繊維製品 |
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2002
- 2002-12-04 JP JP2002352962A patent/JP2004183159A/ja active Pending
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