JP2004124334A - 防汚性繊維および工業用織物 - Google Patents
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Abstract
【課題】木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などのガムピッチ汚れが付着し難く、かつ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を有した防汚性繊維および抄紙ワイヤーや抄紙ドライヤーカンバスなどの抄紙機用織物などの提供を目的とする。
【解決手段】5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有する防汚性繊維およびこの防汚性繊維を使用した工業用織物。
【選択図】 なし
【解決手段】5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有する防汚性繊維およびこの防汚性繊維を使用した工業用織物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘着性の汚れに対する優れた防汚性を有する繊維およびこの繊維を使用した防汚性に優れた工業用織物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、ポリフェニレンスルフィドおよびポリアミドなどの熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントに代表される繊維は、優れた抗張力および耐熱性などを有していることから、従来より抄紙業界における抄紙ワイヤー、抄紙ドライヤーカンバスおよび抄紙プレスフェルトなどの構成素材として広く使用されてきた。
【0003】
しかしながら、抄紙工程においては、紙原料中に存在する各種填料、スライム、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などの汚れ物が、熱可塑性樹脂製繊維からなる抄紙用織物類に付着することにより、濾水効率の低下、搾水効率の低下および乾燥効率の低下などの工程上の問題を生じるばかりか、これら汚れ物が紙へ転写することによる製品紙の品位低下などが重大な問題となっていた。
【0004】
このような問題に対処するために、フッ素系のポリマを添加したポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献1参照)が提案され、一部使用されてきたが、この従来の熱可塑性樹脂繊維では、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などの粘着性汚れ物(以下、ガムピッチ汚れという)の付着に対して十分な防汚効果がないことから、さらなる改善が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】
再公表国際公開番号 WO 92/07126号公報(第1〜11頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などのガムピッチ汚れが付着し難く、かつ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を有した防汚性繊維およびこの防汚性繊維からなる工業用織物、特に抄紙ワイヤーや抄紙ドライヤーカンバスなどの抄紙機用織物の提供を目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を達成するために、本発明の防汚性繊維は、繊維の表面に、5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を含有することを特徴とする。
【0008】
なお本発明の防汚性繊維においては、
前記5−スルホイソフタル酸誘導体が、5−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩であること、
前記5−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩におけるアルカリ金属がナトリウムであること、
前記ポリカルボジイミド化合物が、下記一般式〔I〕で表される化合物であること、
【0009】
【化5】
【0010】
(一般式〔I〕中のR 1 は、下記一般式〔II〕、および下記一般式〔III 〕または下記一般式〔IV〕との混合物の残基を表し、下記一般式〔II〕、および下記一般式〔III 〕または下記一般式〔IV〕との混合モル比率が1:1〜1:19である。また、一般式〔I〕中のnは1〜10の正数を表す。
【0011】
【化6】
【0012】
(一般式〔II〕中のpは4〜30の整数を表し、R2 は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【0013】
【化7】
【0014】
(一般式〔III 〕中のqは1〜3の整数を表し、R3 は炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基を表す。また、R4 は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【0015】
【化8】
【0016】
(一般式〔IV〕中のR5 は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R6 は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
前記繊維が繊維形成性熱可塑性ポリマからなる繊維であること、
前記繊維を構成する繊維形成性熱可塑性ポリマがポリエチレンテレフタレートであること、および
前記繊維がモノフィラメントであること
が、いずれも好ましい条件であり、これらの条件の少なくとも一つの条件を満たすことによって一層優れた効果の取得を期待することができる。
【0017】
また、本発明の工業用織物は、上記の防汚性繊維を少なくとも一部に使用したことを特徴とし、抄紙機に装着する織物、特に抄紙ワイヤーに適用した場合に最良に効果を発現する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の防汚性繊維および工業用織物について詳細に説明する。
【0019】
本発明の防汚性繊維は、繊維表面に5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を含有するものである。
【0020】
本発明における5−スルホイソフタル酸誘導体とは、5−スルホイソフタル酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールなどに代表されるジオール類とのエステル類および5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩から選ばれた1種以上であり、なかでも5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩が好ましい。アルカリ金属としてはリチウム、カリウムおよびナトリウムなどを挙げることができ、とりわけ5−スルホイソフタル酸ナトリウムが好ましい。5−スルホイソフタル酸ナトリウムは、関東化学社他から市販されており、これを購入使用することができる。
【0021】
本発明におけるポリカルボジイミド化合物とは、1分子中に2個以上のカルボジイミド基を有する化合物のことである。ポリカルボジイミドとしては種々のものが知られているが、なかでも親水性を有する水性ポリカルボジイミド化合物の場合には、繊維への付与を水系で行うことができるため安全性に優れかつ製造装置の防爆化を必要としないなどの点で好ましい効果が期待できる。
【0022】
水性ポリカルボジイミド化合物の具体例としては、例えば、特開平7−330849号公報に開示されているテトラメチルキシリレンジイソシアネート由来の水性ポリカルボジイミド化合物および特開2000−7642号公報に開示されている4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシナネート由来の水性ポリカルボジイミド化合物などを挙げることができる。なかでも4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシナネート由来の水性ポリカルボジイミド化合物であるところの下記一般式〔I〕で表されるポリカルボジイミド化合物が特に好ましい。
【0023】
【化9】
【0024】
(一般式〔I〕中のR 1 は、下記一般式〔II〕、および下記一般式〔III 〕または下記一般式〔IV〕との混合物の残基を表し、下記一般式〔II〕、および下記一般式〔III 〕または下記一般式〔IV〕との混合モル比率が1:1〜1:19である。また、一般式〔I〕中のnは1〜10の正数を表す。
【0025】
【化10】
【0026】
(一般式〔II〕中のpは4〜30の整数を表し、R2 は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【0027】
【化11】
【0028】
(一般式〔III 〕中のqは1〜3の整数を表し、R3 は炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基を表す。また、R4 は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【0029】
【化12】
【0030】
(一般式〔IV〕中のR5 は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R6 は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
上記一般式〔I〕を構成する残基R 1 を構成する元の化合物の1種であるところの上記一般式〔II〕で表される化合物は、アルコキシ基で片末端封鎖されたポリ(エチレンオキサイド)であり、具体的にはポリ(エチレンオキサイド)モノメチルエーテルおよびポリ(エチレンオキサイド)モノエチルエーテルなどを挙げることができ、なかでもポリ(エチレンオキサイド)モノメチルエーテルが好適である。
【0031】
また、上記一般式〔I〕を構成する残基R 1 を構成する元の化合物の1種であるところの上記一般式〔III 〕で表される化合物は、アルコキシ基で片末端封鎖されたポリ(アルキレンレンオキサイド)であり、具体的にはポリ(プロピレンオキサイド)モノメチルエーテル、ポリ(プロピレンオキサイド)モノエチルエーテルおよびポリ(プロピレンオキサイド)モノフェニルエーテルなどを挙げることができ、中でもポリ(プロピレンオキサイド)モノメチルエーテルが好適である。
【0032】
また、また、上記一般式〔I〕を構成する残基R 1 を構成する元の化合物の1種であるところの上記一般式〔IV〕で表される化合物は、ジアルキルアミノアルコール類であり、具体的には3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、3−ジエチルアミノ−1−プロパノールおよび1−ジエチルアミノ−2−プロパノールなどを挙げることができ、なかでも1−ジエチルアミノ−2−プロパノールが好適である。
【0033】
上記一般式〔I〕の水性ポリカルボジイミド化合物の製造は、特開2000−7642号公報に記載された方法で行うことができる。すなわち、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートにカルボジイミド化触媒である3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドを加え、脱二酸化炭素を伴う縮合反応により、イソシアネート末端のポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)を合成し、次いで上記一般式〔II〕で表されるアルコキシ基で片末端封鎖されたポリ(エチレンオキサイド)と、上記一般式〔III 〕で表されるアルコキシ基で片末端封鎖されたポリ(アルキレンレンオキサイド)または一般式 〔IV〕で表されるジアルキルアミノアルコール類とを、上記一般式〔II〕で表される化合物と、上記一般式〔III 〕で表される化合物または一般式〔IV〕で表される化合物との混合モル比が1:1〜1:19となるような割合で加え、付加反応せしめることにより行うことができる。
【0034】
このようにして得られた上記一般式〔I〕で表される水性ポリカルボジイミド化合物は、優れた親水性を有するものであねため、合成反応終了後に水を加えて撹拌することにより、均一で保存安定性の良好な水エマルジョンとすることができる。
【0035】
上記した本発明における水性ポリカルボジイミド化合物の水エマルジョンは、市販品として“カルボジライト”(登録商標)Eタイプ(日清紡績(株)製品)として市販されており、これを購入して使用することができる。
【0036】
本発明における繊維は、天然繊維、合成繊維および再生繊維のいずれでもよいが、なかでも繊維形成性熱可塑性ポリマからなる繊維が好適である。繊維形成性熱可塑性ポリマとしては特に制限はなく、例えばポリオレフィン類、ポリアミド類、芳香族または脂肪族飽和ポリエステル類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリエーテルケトン類およびポリイミド類などを挙げることができる。これらの中でも芳香族または脂肪族飽和ポリエステル類が好ましく、とりわけポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0037】
本発明における繊維の形態は、短繊維、フィラメント、綿状などいずれでもよいが、フィラメントが好ましく、とりわけモノフィラメントである場合には、工業用織物の構成素材として好適である。
【0038】
本発明における繊維の断面形状は円形、異形など特に限定はなくいずれでもよい。またモノフィラメントの直径は任意であるが0.05mm〜2mmの範囲が一般的である。
【0039】
本発明の5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有する繊維の製造は、5−スルホイソフタル酸誘導体と水性ポリカルボジイミド化合物とを、5−スルホイソフタル酸誘導体のカルボキシル基または水酸基当量と水性ポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基当量とがほぼ同量になる量比(適宜増減可能である)で0.1〜5重量%濃度の水エマルジョンまたは水溶液を調合し(以下、水性処理液という)、次いで前記水性処理液を上記した繊維に付与し、60℃〜250℃の温度で0.5秒間〜3分間熱処理することにより行うことができる。前記水性処理液には、公知の濡れ性を改善するための各種界面活性剤類および硬化助剤としてのポリエポキシド化合物類およびブロックドイソシアネート化合物類などを添加することも好ましい。
【0040】
前記水性処理液の繊維への付与は、繊維の製造工程で任意に行うことができる。繊維が熱可塑性ポリマからなるものである場合には、溶融紡出されて巻き取られるまでの工程でオンライン付与する方法、いったん巻き取った後に別途付与処理を行う方法など任意である。更には、織物に製織した後の繊維に付与処理することもできる。前記水性処理液の繊維への付与方法としては、含浸、スプレーおよびロールコーティングなど任意に選択することができる。
【0041】
本発明の防汚性繊維は、5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有するものであるために繊維表面が親水性を示し、油性粘着物に対する優れた防汚性を有するものであることから、各種工業用織物の構成素材として好適であり、本発明の繊維を使用した工業用織物は優れた防汚性を発揮する。
【0042】
特に、本発明の防汚性繊維を使用した工業用織物は、抄紙機に装着される抄紙ワイヤー、抄紙ドライヤーカンバスおよび抄紙プレスフェルト基布などとして好適である。なかでも、パルプの漉き揚げ工程で使用される抄紙ワイヤーとして好適である。
【0043】
本発明の抄紙ワイヤーとしては、ポリエチレンテレフタレートを主ポリマとするモノフィラメントからなる平織り、2重以上の多重織り構造の織物であり、一部にポリアミドなどの他ポリマからなるモノフィラメントを交織したものであってもよい。
【0044】
紙の主原料は本来パルプであるが、近年資源保護の観点から古紙・故紙の再生利用が盛んに行われ、特に段ボールに代表される板紙分野では古紙・故紙の再生利用が高い。段ボール古紙はガムテープが貼付されており、更には段ボール成型用の糊も含有しているため、ガムテープの粘着糊や段ボール成型用粘着糊が紙原料液中に混入し、漉き揚げ用織物である抄紙ワイヤーに粘着性の汚れが付着・蓄積して製紙操業性や紙品質を低下させるという問題が発生するようになった。
【0045】
しかるに、本発明の防汚性繊維を構成糸として使用した抄紙ワイヤーは、抄紙ワイヤーを構成する親水性を有する繊維の表面に漉き揚げ時に水が吸着され、上記した粘着性汚れが繊維表面に直接強固に付着することを抑制する作用を生じることになるため、粘着性汚れが付着し難く、かつ汚れを洗浄し易い優れた防汚性を有するものとなる。
【0046】
本発明の防汚性繊維および工業用織物の粘着物汚れに対する防汚性の評価は次のモデル評価方法で行った。
<繊維の粘着物汚れに対する防汚性の評価方法>
(1)厚さ150〜250μ、横巾30mm、縦長さ120mmのポリエチレンテレフタレート製2軸延伸フィルムを2枚用意し、各々のフィルムの30mm巾の一端同士を重ならないように合わせて、この合わせ面に、片面に粘着剤の塗布された25mm×25mmサイズの布粘着テープを、前記2枚のフィルムの両端に渡るように貼付することにより、接合部で縦方向に繋ぎ合わされた見かけの縦長さ約240mm、横巾30mmのフィルムを作成する。
(2)前記の2枚が繋ぎ合わされたフィルムの前記粘着テープの貼付されていない面のどちらか半分(一枚のフィルム)に、横巾10mm、縦長さ120mmの両面粘着テープ(日東電工(株)製品、No.523または同等品)を、前記フィルムと前記両面粘着テープの横巾方向のセンターを合わせて長手方向に揃えて貼付する。
(3)長さ約20cmに切断した繊維試料を、前記両面粘着テープを貼付したフィルムの粘着テープ上に、前記フィルムの長手方向と平行に隙間なく貼付し、前記両面粘着テープの長手方向の両端からはみ出している前記繊維の余端を鋏で切除する。
(4)底の平坦な平バット内に硝子板(厚さ8mm、縦250mm、横100mm)を敷き、この硝子板表面が約15mm沈む位置になるまで前記平バットに水を注ぐ。
(5)前記平バットの水中に、前記(3)で作成した繊維試料貼付フィルムを浸漬し、30分間放置する。
(6)水中の前記繊維試料貼付フィルムを、繊維貼付面を上向き、かつ繊維面が左側になるようにしてから、横巾10mm、縦長さ150mmに切断した片面に粘着剤が塗布された布粘着テープ(ニチバン(株)製、段ボール包装用強粘着テープ<LS>No.101Nまたは同等品)を水中に入れ、この布粘着テープの長手方向左端を前記繊維試料貼付フィルムの繊維面左端と合わせて、前記繊維上に前記布粘着テープを仮貼付する。次いで、前記繊維面右端に約30mm残っている前記布粘着テープを、前記フィルム面にしっかりと貼付する。
(7)前記繊維貼付フィルム裏返して、前記(1)で2枚のフィルムを繋ぎ合わせるために貼付した前記布粘着テープを取り除く。
(8)前記繊維貼付フィルムの繊維貼付面を上向きにし、この繊維貼付フィルムを繊維貼付部分が硝子板上に完全に乗るようにセットして、前記繊維の表面に仮貼付されている前記布粘着テープ上に、重量1.43Kg、巾5cm、直径8.6cmのゴムローラーを、前記布粘着テープを重ねたフィルムの長手方向に片道走行させることにより、水中で前記布粘着テープを前記繊維試料に貼付して剥離応力測定用試料を作成する。
(9)前記剥離応力測定用試料を水中から取り出し、前記2枚のフィルムの接合部を支点にして、前記布粘着テープの添付面が内側になるように山折りし、次いで山折りの支点部から繊維上に貼付されている前記布粘着テープを長さ約1cm剥がした端部を、テンシロンの上チャックにセットし、一方の繊維の貼付されていない前記フィルムの下端(山折りの裾部)の端を、前記テンシロンの下チャックにセットして、引張速度100mm/分、チャートスピード100mm/分の条件で剥離応力を測定し、剥離応力の高い山と剥離応力の低い谷とがほぼ交互に連なった剥離応力チャートを得る。
(10)得られた剥離応力チャートの最初の剥離応力の高い山から約2cm後の剥離応力の高い山を始点として、一個一個の交互の山と谷各40点の剥離応力を読み取り、その平均値をもって剥離応力とし、この測定3回の剥離応力平均値を求める。
【0047】
本発明の防汚性繊維および5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有しないこと以外は本発明の繊維と同様に行って得た繊維(以下、ブランク繊維という)について上記の評価を行い、本発明の繊維の剥離応力平均値のブランク繊維の剥離応力平均値に対する比率を百分率で表した数値を、繊維の粘着物汚れに対する防汚性評価基準とする。
<工業用織物の粘着物汚れに対する防汚性の評価方法>
(1)織物を、この織物の経糸方向を長手方向として120mm×50mmの長方形に切断して織物片を作成する(ここで、この織物片が抄紙機上で紙と接触する面を「表面」、紙と接触しない面を「裏面」とする)。
(2)厚さ150〜250μm、横巾50mm、縦長さ120mmのポリエチレンテレフタレート製2軸延伸フィルム片を1枚用意し、前記(1)の織物片の「裏面」を上にして、この織物片とフィルム片の短辺の一端同士を重ならないように合わせて、片面に粘着剤の塗布された布粘着テープ(約25mm×25mm)を、前記織物片とフィルム片の両端に渡るように貼付し、前記織物片とフィルム片とが縦方向に繋ぎ合わされた試料を作成する。
(3)底の平坦な平バット内に硝子板(厚さ8mm、縦250mm、横100mm)を敷き、この硝子板表面が約15mm沈む位置になるまで前記平バットに水を注ぐ。
(4)前記平バットの水中に、前記(2)で作成した試料を浸漬し、30分間放置する。
(5)水中の前記試料の織物片の「表面」を上向き、かつ前記織物片が左側になるようにしてから、横巾25mm、縦長さ150mmに切断した片面に粘着剤が塗布された布粘着テープ(ニチバン(株)製、段ボール包装用強粘着テープ<LS>No.101Nまたは同等品)を水中に入れ、この布粘着テープの長手方向左端を前記織物片の左端と合わせ、かつ前記織物片と布粘着テープの長手方向に平行な中心とを合わせて、前記織物片に前記布粘着テープを仮貼付する。次いで、前記織物片の右端に約30mm残っている前記布粘着テープを、前記フィルム面にしっかりと貼付する。
(6)前記布粘着テープ貼付試料を裏返して、前記(1)で織物とフィルムとを繋ぎ合わせるために貼付した前記布粘着テープを取り除く。
(7)前記布粘着テープ貼付試料の「表面」を上向きにし、前記織物片が硝子板上に完全に乗るようにセットして、前記織物片に仮貼付されている前記布粘着テープ上に、重量1.43Kg、巾5cm、直径8.6cmのゴムローラーを、前記布粘着テープを重ねたフィルムの長手方向に片道走行させることにより、水中で前記布粘着テープを前記布粘着テープ貼付試料の「表面」に貼付して剥離応力測定用試料を作成する。
(8)前記剥離応力測定用試料を水中から取り出し、前記織物片とフィルムとの接合部を支点にして、前記布粘着テープ添付面が内側になるように山折りし、次いで山折りの支点部から前記織物片に貼付されている前記布粘着テープを長さ約1cm剥がした端部を、テンシロンの上チャックにセットし、一方の前記織物片の貼付されていない前記フィルムの下端(山折りの裾部)の端を、前記テンシロンの下チャックにセットして、引張速度100mm/分、チャートスピード100mm/分の条件で剥離応力を測定し、剥離応力の高い山と剥離応力の低い谷とがほぼ交互に連なった剥離応力チャートを得る。
(9)得られた剥離応力チャートの最初の剥離応力の高い山から2cm後の剥離応力の高い山を始点として、一個一個の交互の山と谷各40点の剥離応力を読み取り、その平均値をもって剥離応力とし、この測定3回の平均値を求める。
【0048】
本発明の防汚性繊維を使用した織物およびブランク繊維を使用した織物について上記の評価を行い、本発明の防汚性繊維を使用した織物の剥離応力平均値のブランク繊維を、使用した織物の剥離応力平均値に対する比率を百分率で表した数値を、織物の粘着物汚れに対する防汚性評価基準とする。
【0049】
かくして得られる本発明の防汚性繊維およびこの防汚性繊維を少なくとも一部に使用した抄紙ワイヤーをはじめとする工業用織物は、粘着性の汚れに対する優れた防汚性を有することから産業上の利用価値が高いものである。
【0050】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
〔参考例1〕(前記一般式〔I〕の水性ポリカルボジイミド化合物の製造−1)
4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシナネート578gとカルボジイミド化触媒である3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド2.9gを、N2 ガス置換した撹拌機付きのフラスコ中に仕込み、撹拌しながら180℃で15時間反応させることにより、イソシアネート末端を有するポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)(重合度n=約4)を得た。次いで、前記フラスコ中に前記一般式〔II〕で表される化合物であるポリ(エチレンオキサイド)モノメチルエーテル(重合度p=約12)48.5gと前記一般式〔III 〕で表される化合物であるプロピレングリコールモノメチルエーテル71.4gの混合物(混合モル比率=1:約9)を添加し、150℃で5時間反応させた。反応後に80℃に冷却し、蒸留水930gを徐々に加え、末端がポリ(エチレンオキサイド)モノメチルエーテル残基とプロピレングリコールモノメチルエーテル残基(混合モル比率=1:約9)とで封鎖されたポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)(重合度n=約4)を40重量%含有する水溶液を得た(以下、ポリカルボジイミド水性液〔A〕という)。得られたポリカルボジイミド水性液の一部を採取し水分を除去してポリカルボジイミドのカルボジイミド含有濃度を調べたところ、1当量/333gであった。
【0051】
次いで、前記ポリカルボジイミド水性液〔A〕7.1重量部と5−スルホイソフタル酸誘導体である5−スルホイソフタル酸ナトリウム(関東化学(株)商品)2.9重量部および蒸留水990重量部を十分混合した(以下、処理液〔A〕という)。
〔参考例2〕(前記一般式〔I〕の水性ポリカルボジイミド化合物の製造−2)4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシナネート578gとカルボジイミド化触媒である3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド2.9gを、N2 ガス置換した撹拌機付きのフラスコ中に仕込み、撹拌しながら180℃で15時間反応させることにより、イソシアネート末端を有するポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)(重合度n=約4)を得た。次いで前記フラスコ中に前記一般式〔II〕で表される化合物であるポリ(エチレンオキサイド)モノメチルエーテル(重合度p=約12)48.5gと前記一般式〔IV〕で表される化合物であるN,N’−ジメチルイソプロパノールアミン79.5gの混合物(混合モル比率=1:約9)を添加し、150℃で5時間反応させた。反応後に80℃に冷却し、蒸留水979gを徐々に加え、末端がポリ(エチレンオキサイド)モノメチルエーテル残基とN,N’−ジエチルイソプロパノールアミン残基(混合モル比率=1:約9)とで封鎖されたポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)(重合度n=約4)を40重量%含有する水溶液を得た(以下、ポリカルボジイミド水性液〔B〕という)。得られたポリカルボジイミド水性液の一部を採取し水分を除去してポリカルボジイミドのカルボジイミド含有濃度を調べたところ、1当量/340gであった。
【0052】
次いで、前記ポリカルボジイミド水性液〔B〕7.1重量部と5−スルホイソフタル酸誘導体である5−スルホイソフタル酸ナトリウム(関東化学(株)商品)2.9重量部および蒸留水990重量部を十分混合した(以下、処理液〔B〕という)。
〔実施例1,2および比較実施例1〕
前記参考例1で得た処理液〔A〕を、公知の溶融紡糸法モノフィラメント製造装置のヒートセットゾーンの直前に設けたディップ槽に仕込んだ。
【0053】
公知の方法で溶融重縮合し更に固相重合することにより製造した〔η〕1.05のポリエチレンテレフタレート(以下、PETという。)チップを使用して、公知の方法で溶融紡糸・延伸し、延伸ゾーンから出たPET製モノフィラメントを、上記の処理液〔A〕が入ったディップ槽に導入することにより、PETモノフィラメントに上記処理液〔A〕を付与した。次いで、ディップ槽から出たモノフィラメントに付着した過剰な処理液をエアーワイパーで除去した後、このモノフィラメントをヒートセットゾーンに導入し、235℃で1.6秒間熱処理することによって、ポリカルボジイミド化合物と5−スルホイソフタル酸ナトリウムの反応とモノフィラメントのヒートセットとを同時に行い、続いて定法により油剤を付与しボビンに巻き取ることにより、5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有するPETモノフィラメントを得た(実施例1)。
【0054】
また、実施例1における処理液〔A〕を、参考例2で得た処理液〔B〕に変更したこと以外は、実施例1と同様に行なうことにより、5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有するPETモノフィラメントを得た(実施例2)。
【0055】
一方、比較のために、実施例1における処理液〔A〕の付与を行わない以外は、実施例1と同様に行なうことにより、PETモノフィラメントを得た(比較実施例1)。
【0056】
なお、実施例1および実施例2で得た5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有するPETモノフィラメントの表面に存在する5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物の量を、比較実施例1で得たPETモノフィラメントとの重量法で測定したところ、各々約0.1重量%であった。
【0057】
実施例1,2および比較実施例1で得たPETモノフィラメントについて、前記した<繊維の粘着物汚れに対する防汚性の評価>を行った結果、比較実施例1のモノフィラメントに対する実施例1のモノフィラメントのガムテープ剥離応力比率は13%であり、比較実施例1のモノフィラメントに対する実施例2のモノフィラメントのガムテープ剥離応力比率は14%であった。これらの結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
この結果から本発明の繊維である5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有するPETモノフィラメントは、粘着物汚れに対する優れた防汚性を有するものであることがわかる。
〔実施例3,4および比較実施例2〕
実施例1,2および比較実施例1で得たPETモノフィラメントを、各々経糸および緯糸に使用して平織抄紙ワイヤーを3種製織した。この平織り物3種について、前記した<織物の粘着物汚れに対する防汚性の評価>を行った結果、比較実施例1のモノフィラメントを使用した抄紙ワイヤーに対する実施例1のモノフィラメントを使用した抄紙ワイヤーのガムテープ剥離応力比率は12%であり、比較実施例1のモノフィラメント使用した抄紙ワイヤーに対する実施例2のモノフィラメントを使用した抄紙ワイヤーのガムテープ剥離応力比率は13%であった。これらの結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
この結果から、本発明の防汚性繊維である5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有するPETモノフィラメントを使用した工業用織物である抄紙ワイヤーは、粘着物汚れに対する優れた防汚性を有するものであることがわかる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有する防汚性繊維およびこの防汚性繊維を使用した抄紙ワイヤーを代表とする工業用織物は、粘着物汚れに対する優れた防汚性を有しており、産業上の利用価値の高いものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘着性の汚れに対する優れた防汚性を有する繊維およびこの繊維を使用した防汚性に優れた工業用織物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、ポリフェニレンスルフィドおよびポリアミドなどの熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントに代表される繊維は、優れた抗張力および耐熱性などを有していることから、従来より抄紙業界における抄紙ワイヤー、抄紙ドライヤーカンバスおよび抄紙プレスフェルトなどの構成素材として広く使用されてきた。
【0003】
しかしながら、抄紙工程においては、紙原料中に存在する各種填料、スライム、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などの汚れ物が、熱可塑性樹脂製繊維からなる抄紙用織物類に付着することにより、濾水効率の低下、搾水効率の低下および乾燥効率の低下などの工程上の問題を生じるばかりか、これら汚れ物が紙へ転写することによる製品紙の品位低下などが重大な問題となっていた。
【0004】
このような問題に対処するために、フッ素系のポリマを添加したポリエステルモノフィラメント(例えば、特許文献1参照)が提案され、一部使用されてきたが、この従来の熱可塑性樹脂繊維では、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などの粘着性汚れ物(以下、ガムピッチ汚れという)の付着に対して十分な防汚効果がないことから、さらなる改善が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】
再公表国際公開番号 WO 92/07126号公報(第1〜11頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、木材ピッチおよび回収ダンボール古紙原料に付着していたガムテープ粘着糊などのガムピッチ汚れが付着し難く、かつ付着したガムピッチ汚れを洗浄しやすいなどの優れた防汚性を有した防汚性繊維およびこの防汚性繊維からなる工業用織物、特に抄紙ワイヤーや抄紙ドライヤーカンバスなどの抄紙機用織物の提供を目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を達成するために、本発明の防汚性繊維は、繊維の表面に、5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を含有することを特徴とする。
【0008】
なお本発明の防汚性繊維においては、
前記5−スルホイソフタル酸誘導体が、5−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩であること、
前記5−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩におけるアルカリ金属がナトリウムであること、
前記ポリカルボジイミド化合物が、下記一般式〔I〕で表される化合物であること、
【0009】
【化5】
【0010】
(一般式〔I〕中のR 1 は、下記一般式〔II〕、および下記一般式〔III 〕または下記一般式〔IV〕との混合物の残基を表し、下記一般式〔II〕、および下記一般式〔III 〕または下記一般式〔IV〕との混合モル比率が1:1〜1:19である。また、一般式〔I〕中のnは1〜10の正数を表す。
【0011】
【化6】
【0012】
(一般式〔II〕中のpは4〜30の整数を表し、R2 は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【0013】
【化7】
【0014】
(一般式〔III 〕中のqは1〜3の整数を表し、R3 は炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基を表す。また、R4 は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【0015】
【化8】
【0016】
(一般式〔IV〕中のR5 は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R6 は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
前記繊維が繊維形成性熱可塑性ポリマからなる繊維であること、
前記繊維を構成する繊維形成性熱可塑性ポリマがポリエチレンテレフタレートであること、および
前記繊維がモノフィラメントであること
が、いずれも好ましい条件であり、これらの条件の少なくとも一つの条件を満たすことによって一層優れた効果の取得を期待することができる。
【0017】
また、本発明の工業用織物は、上記の防汚性繊維を少なくとも一部に使用したことを特徴とし、抄紙機に装着する織物、特に抄紙ワイヤーに適用した場合に最良に効果を発現する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の防汚性繊維および工業用織物について詳細に説明する。
【0019】
本発明の防汚性繊維は、繊維表面に5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を含有するものである。
【0020】
本発明における5−スルホイソフタル酸誘導体とは、5−スルホイソフタル酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールなどに代表されるジオール類とのエステル類および5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩から選ばれた1種以上であり、なかでも5−スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩が好ましい。アルカリ金属としてはリチウム、カリウムおよびナトリウムなどを挙げることができ、とりわけ5−スルホイソフタル酸ナトリウムが好ましい。5−スルホイソフタル酸ナトリウムは、関東化学社他から市販されており、これを購入使用することができる。
【0021】
本発明におけるポリカルボジイミド化合物とは、1分子中に2個以上のカルボジイミド基を有する化合物のことである。ポリカルボジイミドとしては種々のものが知られているが、なかでも親水性を有する水性ポリカルボジイミド化合物の場合には、繊維への付与を水系で行うことができるため安全性に優れかつ製造装置の防爆化を必要としないなどの点で好ましい効果が期待できる。
【0022】
水性ポリカルボジイミド化合物の具体例としては、例えば、特開平7−330849号公報に開示されているテトラメチルキシリレンジイソシアネート由来の水性ポリカルボジイミド化合物および特開2000−7642号公報に開示されている4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシナネート由来の水性ポリカルボジイミド化合物などを挙げることができる。なかでも4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシナネート由来の水性ポリカルボジイミド化合物であるところの下記一般式〔I〕で表されるポリカルボジイミド化合物が特に好ましい。
【0023】
【化9】
【0024】
(一般式〔I〕中のR 1 は、下記一般式〔II〕、および下記一般式〔III 〕または下記一般式〔IV〕との混合物の残基を表し、下記一般式〔II〕、および下記一般式〔III 〕または下記一般式〔IV〕との混合モル比率が1:1〜1:19である。また、一般式〔I〕中のnは1〜10の正数を表す。
【0025】
【化10】
【0026】
(一般式〔II〕中のpは4〜30の整数を表し、R2 は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【0027】
【化11】
【0028】
(一般式〔III 〕中のqは1〜3の整数を表し、R3 は炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基を表す。また、R4 は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【0029】
【化12】
【0030】
(一般式〔IV〕中のR5 は炭素数1〜5のアルキル基を表し、R6 は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
上記一般式〔I〕を構成する残基R 1 を構成する元の化合物の1種であるところの上記一般式〔II〕で表される化合物は、アルコキシ基で片末端封鎖されたポリ(エチレンオキサイド)であり、具体的にはポリ(エチレンオキサイド)モノメチルエーテルおよびポリ(エチレンオキサイド)モノエチルエーテルなどを挙げることができ、なかでもポリ(エチレンオキサイド)モノメチルエーテルが好適である。
【0031】
また、上記一般式〔I〕を構成する残基R 1 を構成する元の化合物の1種であるところの上記一般式〔III 〕で表される化合物は、アルコキシ基で片末端封鎖されたポリ(アルキレンレンオキサイド)であり、具体的にはポリ(プロピレンオキサイド)モノメチルエーテル、ポリ(プロピレンオキサイド)モノエチルエーテルおよびポリ(プロピレンオキサイド)モノフェニルエーテルなどを挙げることができ、中でもポリ(プロピレンオキサイド)モノメチルエーテルが好適である。
【0032】
また、また、上記一般式〔I〕を構成する残基R 1 を構成する元の化合物の1種であるところの上記一般式〔IV〕で表される化合物は、ジアルキルアミノアルコール類であり、具体的には3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、3−ジエチルアミノ−1−プロパノールおよび1−ジエチルアミノ−2−プロパノールなどを挙げることができ、なかでも1−ジエチルアミノ−2−プロパノールが好適である。
【0033】
上記一般式〔I〕の水性ポリカルボジイミド化合物の製造は、特開2000−7642号公報に記載された方法で行うことができる。すなわち、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートにカルボジイミド化触媒である3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシドを加え、脱二酸化炭素を伴う縮合反応により、イソシアネート末端のポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)を合成し、次いで上記一般式〔II〕で表されるアルコキシ基で片末端封鎖されたポリ(エチレンオキサイド)と、上記一般式〔III 〕で表されるアルコキシ基で片末端封鎖されたポリ(アルキレンレンオキサイド)または一般式 〔IV〕で表されるジアルキルアミノアルコール類とを、上記一般式〔II〕で表される化合物と、上記一般式〔III 〕で表される化合物または一般式〔IV〕で表される化合物との混合モル比が1:1〜1:19となるような割合で加え、付加反応せしめることにより行うことができる。
【0034】
このようにして得られた上記一般式〔I〕で表される水性ポリカルボジイミド化合物は、優れた親水性を有するものであねため、合成反応終了後に水を加えて撹拌することにより、均一で保存安定性の良好な水エマルジョンとすることができる。
【0035】
上記した本発明における水性ポリカルボジイミド化合物の水エマルジョンは、市販品として“カルボジライト”(登録商標)Eタイプ(日清紡績(株)製品)として市販されており、これを購入して使用することができる。
【0036】
本発明における繊維は、天然繊維、合成繊維および再生繊維のいずれでもよいが、なかでも繊維形成性熱可塑性ポリマからなる繊維が好適である。繊維形成性熱可塑性ポリマとしては特に制限はなく、例えばポリオレフィン類、ポリアミド類、芳香族または脂肪族飽和ポリエステル類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリエーテルケトン類およびポリイミド類などを挙げることができる。これらの中でも芳香族または脂肪族飽和ポリエステル類が好ましく、とりわけポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0037】
本発明における繊維の形態は、短繊維、フィラメント、綿状などいずれでもよいが、フィラメントが好ましく、とりわけモノフィラメントである場合には、工業用織物の構成素材として好適である。
【0038】
本発明における繊維の断面形状は円形、異形など特に限定はなくいずれでもよい。またモノフィラメントの直径は任意であるが0.05mm〜2mmの範囲が一般的である。
【0039】
本発明の5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有する繊維の製造は、5−スルホイソフタル酸誘導体と水性ポリカルボジイミド化合物とを、5−スルホイソフタル酸誘導体のカルボキシル基または水酸基当量と水性ポリカルボジイミド化合物のカルボジイミド基当量とがほぼ同量になる量比(適宜増減可能である)で0.1〜5重量%濃度の水エマルジョンまたは水溶液を調合し(以下、水性処理液という)、次いで前記水性処理液を上記した繊維に付与し、60℃〜250℃の温度で0.5秒間〜3分間熱処理することにより行うことができる。前記水性処理液には、公知の濡れ性を改善するための各種界面活性剤類および硬化助剤としてのポリエポキシド化合物類およびブロックドイソシアネート化合物類などを添加することも好ましい。
【0040】
前記水性処理液の繊維への付与は、繊維の製造工程で任意に行うことができる。繊維が熱可塑性ポリマからなるものである場合には、溶融紡出されて巻き取られるまでの工程でオンライン付与する方法、いったん巻き取った後に別途付与処理を行う方法など任意である。更には、織物に製織した後の繊維に付与処理することもできる。前記水性処理液の繊維への付与方法としては、含浸、スプレーおよびロールコーティングなど任意に選択することができる。
【0041】
本発明の防汚性繊維は、5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有するものであるために繊維表面が親水性を示し、油性粘着物に対する優れた防汚性を有するものであることから、各種工業用織物の構成素材として好適であり、本発明の繊維を使用した工業用織物は優れた防汚性を発揮する。
【0042】
特に、本発明の防汚性繊維を使用した工業用織物は、抄紙機に装着される抄紙ワイヤー、抄紙ドライヤーカンバスおよび抄紙プレスフェルト基布などとして好適である。なかでも、パルプの漉き揚げ工程で使用される抄紙ワイヤーとして好適である。
【0043】
本発明の抄紙ワイヤーとしては、ポリエチレンテレフタレートを主ポリマとするモノフィラメントからなる平織り、2重以上の多重織り構造の織物であり、一部にポリアミドなどの他ポリマからなるモノフィラメントを交織したものであってもよい。
【0044】
紙の主原料は本来パルプであるが、近年資源保護の観点から古紙・故紙の再生利用が盛んに行われ、特に段ボールに代表される板紙分野では古紙・故紙の再生利用が高い。段ボール古紙はガムテープが貼付されており、更には段ボール成型用の糊も含有しているため、ガムテープの粘着糊や段ボール成型用粘着糊が紙原料液中に混入し、漉き揚げ用織物である抄紙ワイヤーに粘着性の汚れが付着・蓄積して製紙操業性や紙品質を低下させるという問題が発生するようになった。
【0045】
しかるに、本発明の防汚性繊維を構成糸として使用した抄紙ワイヤーは、抄紙ワイヤーを構成する親水性を有する繊維の表面に漉き揚げ時に水が吸着され、上記した粘着性汚れが繊維表面に直接強固に付着することを抑制する作用を生じることになるため、粘着性汚れが付着し難く、かつ汚れを洗浄し易い優れた防汚性を有するものとなる。
【0046】
本発明の防汚性繊維および工業用織物の粘着物汚れに対する防汚性の評価は次のモデル評価方法で行った。
<繊維の粘着物汚れに対する防汚性の評価方法>
(1)厚さ150〜250μ、横巾30mm、縦長さ120mmのポリエチレンテレフタレート製2軸延伸フィルムを2枚用意し、各々のフィルムの30mm巾の一端同士を重ならないように合わせて、この合わせ面に、片面に粘着剤の塗布された25mm×25mmサイズの布粘着テープを、前記2枚のフィルムの両端に渡るように貼付することにより、接合部で縦方向に繋ぎ合わされた見かけの縦長さ約240mm、横巾30mmのフィルムを作成する。
(2)前記の2枚が繋ぎ合わされたフィルムの前記粘着テープの貼付されていない面のどちらか半分(一枚のフィルム)に、横巾10mm、縦長さ120mmの両面粘着テープ(日東電工(株)製品、No.523または同等品)を、前記フィルムと前記両面粘着テープの横巾方向のセンターを合わせて長手方向に揃えて貼付する。
(3)長さ約20cmに切断した繊維試料を、前記両面粘着テープを貼付したフィルムの粘着テープ上に、前記フィルムの長手方向と平行に隙間なく貼付し、前記両面粘着テープの長手方向の両端からはみ出している前記繊維の余端を鋏で切除する。
(4)底の平坦な平バット内に硝子板(厚さ8mm、縦250mm、横100mm)を敷き、この硝子板表面が約15mm沈む位置になるまで前記平バットに水を注ぐ。
(5)前記平バットの水中に、前記(3)で作成した繊維試料貼付フィルムを浸漬し、30分間放置する。
(6)水中の前記繊維試料貼付フィルムを、繊維貼付面を上向き、かつ繊維面が左側になるようにしてから、横巾10mm、縦長さ150mmに切断した片面に粘着剤が塗布された布粘着テープ(ニチバン(株)製、段ボール包装用強粘着テープ<LS>No.101Nまたは同等品)を水中に入れ、この布粘着テープの長手方向左端を前記繊維試料貼付フィルムの繊維面左端と合わせて、前記繊維上に前記布粘着テープを仮貼付する。次いで、前記繊維面右端に約30mm残っている前記布粘着テープを、前記フィルム面にしっかりと貼付する。
(7)前記繊維貼付フィルム裏返して、前記(1)で2枚のフィルムを繋ぎ合わせるために貼付した前記布粘着テープを取り除く。
(8)前記繊維貼付フィルムの繊維貼付面を上向きにし、この繊維貼付フィルムを繊維貼付部分が硝子板上に完全に乗るようにセットして、前記繊維の表面に仮貼付されている前記布粘着テープ上に、重量1.43Kg、巾5cm、直径8.6cmのゴムローラーを、前記布粘着テープを重ねたフィルムの長手方向に片道走行させることにより、水中で前記布粘着テープを前記繊維試料に貼付して剥離応力測定用試料を作成する。
(9)前記剥離応力測定用試料を水中から取り出し、前記2枚のフィルムの接合部を支点にして、前記布粘着テープの添付面が内側になるように山折りし、次いで山折りの支点部から繊維上に貼付されている前記布粘着テープを長さ約1cm剥がした端部を、テンシロンの上チャックにセットし、一方の繊維の貼付されていない前記フィルムの下端(山折りの裾部)の端を、前記テンシロンの下チャックにセットして、引張速度100mm/分、チャートスピード100mm/分の条件で剥離応力を測定し、剥離応力の高い山と剥離応力の低い谷とがほぼ交互に連なった剥離応力チャートを得る。
(10)得られた剥離応力チャートの最初の剥離応力の高い山から約2cm後の剥離応力の高い山を始点として、一個一個の交互の山と谷各40点の剥離応力を読み取り、その平均値をもって剥離応力とし、この測定3回の剥離応力平均値を求める。
【0047】
本発明の防汚性繊維および5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有しないこと以外は本発明の繊維と同様に行って得た繊維(以下、ブランク繊維という)について上記の評価を行い、本発明の繊維の剥離応力平均値のブランク繊維の剥離応力平均値に対する比率を百分率で表した数値を、繊維の粘着物汚れに対する防汚性評価基準とする。
<工業用織物の粘着物汚れに対する防汚性の評価方法>
(1)織物を、この織物の経糸方向を長手方向として120mm×50mmの長方形に切断して織物片を作成する(ここで、この織物片が抄紙機上で紙と接触する面を「表面」、紙と接触しない面を「裏面」とする)。
(2)厚さ150〜250μm、横巾50mm、縦長さ120mmのポリエチレンテレフタレート製2軸延伸フィルム片を1枚用意し、前記(1)の織物片の「裏面」を上にして、この織物片とフィルム片の短辺の一端同士を重ならないように合わせて、片面に粘着剤の塗布された布粘着テープ(約25mm×25mm)を、前記織物片とフィルム片の両端に渡るように貼付し、前記織物片とフィルム片とが縦方向に繋ぎ合わされた試料を作成する。
(3)底の平坦な平バット内に硝子板(厚さ8mm、縦250mm、横100mm)を敷き、この硝子板表面が約15mm沈む位置になるまで前記平バットに水を注ぐ。
(4)前記平バットの水中に、前記(2)で作成した試料を浸漬し、30分間放置する。
(5)水中の前記試料の織物片の「表面」を上向き、かつ前記織物片が左側になるようにしてから、横巾25mm、縦長さ150mmに切断した片面に粘着剤が塗布された布粘着テープ(ニチバン(株)製、段ボール包装用強粘着テープ<LS>No.101Nまたは同等品)を水中に入れ、この布粘着テープの長手方向左端を前記織物片の左端と合わせ、かつ前記織物片と布粘着テープの長手方向に平行な中心とを合わせて、前記織物片に前記布粘着テープを仮貼付する。次いで、前記織物片の右端に約30mm残っている前記布粘着テープを、前記フィルム面にしっかりと貼付する。
(6)前記布粘着テープ貼付試料を裏返して、前記(1)で織物とフィルムとを繋ぎ合わせるために貼付した前記布粘着テープを取り除く。
(7)前記布粘着テープ貼付試料の「表面」を上向きにし、前記織物片が硝子板上に完全に乗るようにセットして、前記織物片に仮貼付されている前記布粘着テープ上に、重量1.43Kg、巾5cm、直径8.6cmのゴムローラーを、前記布粘着テープを重ねたフィルムの長手方向に片道走行させることにより、水中で前記布粘着テープを前記布粘着テープ貼付試料の「表面」に貼付して剥離応力測定用試料を作成する。
(8)前記剥離応力測定用試料を水中から取り出し、前記織物片とフィルムとの接合部を支点にして、前記布粘着テープ添付面が内側になるように山折りし、次いで山折りの支点部から前記織物片に貼付されている前記布粘着テープを長さ約1cm剥がした端部を、テンシロンの上チャックにセットし、一方の前記織物片の貼付されていない前記フィルムの下端(山折りの裾部)の端を、前記テンシロンの下チャックにセットして、引張速度100mm/分、チャートスピード100mm/分の条件で剥離応力を測定し、剥離応力の高い山と剥離応力の低い谷とがほぼ交互に連なった剥離応力チャートを得る。
(9)得られた剥離応力チャートの最初の剥離応力の高い山から2cm後の剥離応力の高い山を始点として、一個一個の交互の山と谷各40点の剥離応力を読み取り、その平均値をもって剥離応力とし、この測定3回の平均値を求める。
【0048】
本発明の防汚性繊維を使用した織物およびブランク繊維を使用した織物について上記の評価を行い、本発明の防汚性繊維を使用した織物の剥離応力平均値のブランク繊維を、使用した織物の剥離応力平均値に対する比率を百分率で表した数値を、織物の粘着物汚れに対する防汚性評価基準とする。
【0049】
かくして得られる本発明の防汚性繊維およびこの防汚性繊維を少なくとも一部に使用した抄紙ワイヤーをはじめとする工業用織物は、粘着性の汚れに対する優れた防汚性を有することから産業上の利用価値が高いものである。
【0050】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
〔参考例1〕(前記一般式〔I〕の水性ポリカルボジイミド化合物の製造−1)
4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシナネート578gとカルボジイミド化触媒である3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド2.9gを、N2 ガス置換した撹拌機付きのフラスコ中に仕込み、撹拌しながら180℃で15時間反応させることにより、イソシアネート末端を有するポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)(重合度n=約4)を得た。次いで、前記フラスコ中に前記一般式〔II〕で表される化合物であるポリ(エチレンオキサイド)モノメチルエーテル(重合度p=約12)48.5gと前記一般式〔III 〕で表される化合物であるプロピレングリコールモノメチルエーテル71.4gの混合物(混合モル比率=1:約9)を添加し、150℃で5時間反応させた。反応後に80℃に冷却し、蒸留水930gを徐々に加え、末端がポリ(エチレンオキサイド)モノメチルエーテル残基とプロピレングリコールモノメチルエーテル残基(混合モル比率=1:約9)とで封鎖されたポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)(重合度n=約4)を40重量%含有する水溶液を得た(以下、ポリカルボジイミド水性液〔A〕という)。得られたポリカルボジイミド水性液の一部を採取し水分を除去してポリカルボジイミドのカルボジイミド含有濃度を調べたところ、1当量/333gであった。
【0051】
次いで、前記ポリカルボジイミド水性液〔A〕7.1重量部と5−スルホイソフタル酸誘導体である5−スルホイソフタル酸ナトリウム(関東化学(株)商品)2.9重量部および蒸留水990重量部を十分混合した(以下、処理液〔A〕という)。
〔参考例2〕(前記一般式〔I〕の水性ポリカルボジイミド化合物の製造−2)4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシナネート578gとカルボジイミド化触媒である3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド2.9gを、N2 ガス置換した撹拌機付きのフラスコ中に仕込み、撹拌しながら180℃で15時間反応させることにより、イソシアネート末端を有するポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)(重合度n=約4)を得た。次いで前記フラスコ中に前記一般式〔II〕で表される化合物であるポリ(エチレンオキサイド)モノメチルエーテル(重合度p=約12)48.5gと前記一般式〔IV〕で表される化合物であるN,N’−ジメチルイソプロパノールアミン79.5gの混合物(混合モル比率=1:約9)を添加し、150℃で5時間反応させた。反応後に80℃に冷却し、蒸留水979gを徐々に加え、末端がポリ(エチレンオキサイド)モノメチルエーテル残基とN,N’−ジエチルイソプロパノールアミン残基(混合モル比率=1:約9)とで封鎖されたポリ(ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)(重合度n=約4)を40重量%含有する水溶液を得た(以下、ポリカルボジイミド水性液〔B〕という)。得られたポリカルボジイミド水性液の一部を採取し水分を除去してポリカルボジイミドのカルボジイミド含有濃度を調べたところ、1当量/340gであった。
【0052】
次いで、前記ポリカルボジイミド水性液〔B〕7.1重量部と5−スルホイソフタル酸誘導体である5−スルホイソフタル酸ナトリウム(関東化学(株)商品)2.9重量部および蒸留水990重量部を十分混合した(以下、処理液〔B〕という)。
〔実施例1,2および比較実施例1〕
前記参考例1で得た処理液〔A〕を、公知の溶融紡糸法モノフィラメント製造装置のヒートセットゾーンの直前に設けたディップ槽に仕込んだ。
【0053】
公知の方法で溶融重縮合し更に固相重合することにより製造した〔η〕1.05のポリエチレンテレフタレート(以下、PETという。)チップを使用して、公知の方法で溶融紡糸・延伸し、延伸ゾーンから出たPET製モノフィラメントを、上記の処理液〔A〕が入ったディップ槽に導入することにより、PETモノフィラメントに上記処理液〔A〕を付与した。次いで、ディップ槽から出たモノフィラメントに付着した過剰な処理液をエアーワイパーで除去した後、このモノフィラメントをヒートセットゾーンに導入し、235℃で1.6秒間熱処理することによって、ポリカルボジイミド化合物と5−スルホイソフタル酸ナトリウムの反応とモノフィラメントのヒートセットとを同時に行い、続いて定法により油剤を付与しボビンに巻き取ることにより、5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有するPETモノフィラメントを得た(実施例1)。
【0054】
また、実施例1における処理液〔A〕を、参考例2で得た処理液〔B〕に変更したこと以外は、実施例1と同様に行なうことにより、5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有するPETモノフィラメントを得た(実施例2)。
【0055】
一方、比較のために、実施例1における処理液〔A〕の付与を行わない以外は、実施例1と同様に行なうことにより、PETモノフィラメントを得た(比較実施例1)。
【0056】
なお、実施例1および実施例2で得た5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有するPETモノフィラメントの表面に存在する5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物の量を、比較実施例1で得たPETモノフィラメントとの重量法で測定したところ、各々約0.1重量%であった。
【0057】
実施例1,2および比較実施例1で得たPETモノフィラメントについて、前記した<繊維の粘着物汚れに対する防汚性の評価>を行った結果、比較実施例1のモノフィラメントに対する実施例1のモノフィラメントのガムテープ剥離応力比率は13%であり、比較実施例1のモノフィラメントに対する実施例2のモノフィラメントのガムテープ剥離応力比率は14%であった。これらの結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
この結果から本発明の繊維である5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有するPETモノフィラメントは、粘着物汚れに対する優れた防汚性を有するものであることがわかる。
〔実施例3,4および比較実施例2〕
実施例1,2および比較実施例1で得たPETモノフィラメントを、各々経糸および緯糸に使用して平織抄紙ワイヤーを3種製織した。この平織り物3種について、前記した<織物の粘着物汚れに対する防汚性の評価>を行った結果、比較実施例1のモノフィラメントを使用した抄紙ワイヤーに対する実施例1のモノフィラメントを使用した抄紙ワイヤーのガムテープ剥離応力比率は12%であり、比較実施例1のモノフィラメント使用した抄紙ワイヤーに対する実施例2のモノフィラメントを使用した抄紙ワイヤーのガムテープ剥離応力比率は13%であった。これらの結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
この結果から、本発明の防汚性繊維である5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有するPETモノフィラメントを使用した工業用織物である抄紙ワイヤーは、粘着物汚れに対する優れた防汚性を有するものであることがわかる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を表面に含有する防汚性繊維およびこの防汚性繊維を使用した抄紙ワイヤーを代表とする工業用織物は、粘着物汚れに対する優れた防汚性を有しており、産業上の利用価値の高いものである。
Claims (10)
- 繊維の表面に、5−スルホイソフタル酸誘導体とポリカルボジイミド化合物との反応物を含有することを特徴とする防汚性繊維。
- 前記5−スルホイソフタル酸誘導体が、5−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1記載の防汚性繊維。
- 前記5−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩におけるアルカリ金属がナトリウムであることを特徴とする請求項2記載の防汚性繊維。
- 前記ポリカルボジイミド化合物が、下記一般式〔I〕で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の防汚性繊維。
- 前記繊維が繊維形成性熱可塑性ポリマからなる繊維であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の防汚性繊維。
- 前記繊維を構成する繊維形成性熱可塑性ポリマが、ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項5記載の防汚性繊維。
- 前記繊維がモノフィラメントであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の防汚性繊維。
- 請求項1〜7のいずれか1項記載の防汚性繊維を少なくとも一部に使用したことを特徴とする工業用織物。
- 前記工業用織物が抄紙機に装着する織物であることを特徴とする請求項8記載の工業用織物。
- 前記抄紙機に装着する織物が抄紙ワイヤーであることを特徴とする請求項9記載の工業用織物。
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