JP2004183158A - ピッチコントロール組成物およびピッチの付着抑制方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】クラフトパルプ製造工程の製造装置類へのピッチの付着・堆積を抑制することができるピッチコントロール組成物およびピッチの付着抑制方法を提供することである。
【解決手段】ポリカルボン酸またはそのアルカリ塩と、不飽和カルボン酸および不飽和スルホン酸を単量体として含むアニオン性共重合体またはそのアルカリ塩とを含有するピッチコントロール組成物である。また、このピッチコントロール組成物をクラフトパルプ製造工程に添加するピッチの付着抑制方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリカルボン酸またはそのアルカリ塩と、不飽和カルボン酸および不飽和スルホン酸を単量体として含むアニオン性共重合体またはそのアルカリ塩とを含有するピッチコントロール組成物である。また、このピッチコントロール組成物をクラフトパルプ製造工程に添加するピッチの付着抑制方法である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クラフトパルプ製造工程において、原料木材に由来するパルプ中のピッチがクラフトパルプ製造装置類に付着するのを抑制するためのピッチコントロール組成物およびピッチの付着抑制方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
クラフトパルプ製造工程においてパルプ製造装置類(例えば、パルプ希釈装置、配管、脱水設備など)に付着・堆積する汚れは、主として原料木材に由来する樹脂酸誘導体、脂肪酸誘導体、リグニン誘導体などを含有するピッチである。このようなピッチが脱水設備に付着すると、目詰まりを引き起こすことによって脱水効率を低下させ、白色度の低下などパルプの品質を低下させることになる。また、堆積して肥大化したピッチが剥がれてパルプに付着すると、抄紙工程において紙の汚点や欠点となって品質を低下させる原因となる。一方、付着・堆積したピッチの除去は、製造ラインを停止したうえで行わなければならないため、生産性や作業性の低下を引き起こすことになる。
【0003】
特に、近年は、樹脂分が多く本来パルプ化に適していない木材原料が使用されるようになるなど、パルプ製造条件が厳しくなっており、ピッチによる弊害は増加傾向にある。このような生産効率の低下やパルプ品質の低下を招くピッチの付着・堆積を抑制するべく、従来から界面活性剤や微粉タルク等を用いたピッチコントロールが行われている。
【0004】
一方、パルプの原料木材には脂肪酸誘導体成分が含まれており、アルカリ蒸解工程において加水分解されて脂肪酸などのカルボン酸化合物が生成される。また、原料木材やパルプ製造工程で使用される用水には少量ながらもカルシウム成分が含まれている。これらの成分が結合すると不溶性の金属石鹸である脂肪酸カルシウム等が生成し、これがピッチの凝集を誘発してフィルター洗浄機、チェスト、配管内などに付着・堆積する。
【0005】
この不溶性金属石鹸は原料木材に含まれる天然ピッチと比べて極性が低く、界面活性剤などによるピッチコントロールや分散洗浄が困難である。したがって、従来から行なわれている界面活性剤や微粉タルクを用いたピッチコントロール方法では十分な効果が得られていない。
【0006】
また、下記特許文献1では2−アクリルアミド−2−アルカンスルホン酸のアルカリ塩を単量体とした重合体を用いたピッチコントロール剤が提案されているが、上記のようにカルシウムなどの存在下で不溶性の金属石鹸が生成された場合には、界面活性剤や微粉タルクなどの場合と同様に十分な効果を発揮するには至っていない。
【0007】
このため、パルプ製造工程ではピッチが付着・堆積し、これを除去する為に年に数回、配管や製造設備の洗浄を行っているのが実情である。また、ピッチの付着・堆積を抑制し作業性を向上させるために、これらのピッチコントロール剤の使用量を増やしても、それに見合うだけの効果が得られない場合が多く、逆に様々な弊害を引き起こす原因となるおそれもある。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−200485号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、クラフトパルプ製造工程の製造装置類へのピッチの付着・堆積を抑制することができるピッチコントロール組成物およびピッチの付着抑制方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねる過程で、ポリカルボン酸と、特定のアニオン性共重合体とを併用することで、パルプ製造装置類へのピッチの付着・堆積の抑制・防止効果が飛躍的に高まるという知見を得、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のピッチコントロール組成物は、ポリカルボン酸またはそのアルカリ塩と、不飽和カルボン酸および不飽和スルホン酸を単量体として含むアニオン性共重合体またはそのアルカリ塩とを含有することを特徴とする。前記アルカリ塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0012】
本発明の作用としては、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基がピッチの中核をなす不溶性金属石鹸に含まれる金属イオンを捕捉(キレート)してピッチの凝集性を低下させ、さらに前記アニオン性共重合体が遊離した脂肪酸誘導体に吸着して保護コロイドを形成し、強酸の官能基であるスルホン酸の作用によってピッチが水中でより安定に分散することにより、ピッチの粘着性が低下し、ピッチの凝集・付着・堆積が抑制・防止されるものと考えられる。
【0013】
このように、本発明では、ポリカルボン酸と特定のアニオン性共重合体とを併用することにより、これらをそれぞれ単独で添加する場合に得られるピッチ障害の防止効果を大きく上回る相乗的な効果が得られる。その結果、ピッチ障害により、例えば脱水効率の低下に伴って白色度が低下するのを抑制し、パルプに含まれる樹脂分の洗浄効率の低下に伴ってピッチがパルプに付着し紙に汚点や欠点が発生するのを抑制し、さらに配管や製造設備の洗浄頻度を減少させることによって生産性および作業性を向上させることができる。
【0014】
本発明において、前記ポリカルボン酸またはそのアルカリ塩は、分子量が500〜100000であるのが好ましい。
【0015】
また、前記アニオン性共重合体またはそのアルカリ塩において、前記不飽和カルボン酸がアクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸およびイタコン酸から選ばれる少なくとも1種であり、前記不飽和スルホン酸がスチレンスルホン酸、アクリルアミドt−ブチルスルホン酸およびイソプレンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種であり、これらを共重合させた前記アニオン性共重合体またはそのアルカリ塩は、分子量が2000〜200000であるのが好ましい。
【0016】
本発明のピッチの付着抑制方法は、上記のピッチコントロール組成物をクラフトパルプ製造工程に添加することを特徴とする。この付着抑制方法では、前記ピッチコントロール組成物をパルプ重量に対して0.001〜0.1重量%添加するのが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のピッチコントロール組成物およびピッチの付着抑制方法について詳細に説明する。
【0018】
<ピッチコントロール組成物>
本発明のピッチコントロール組成物は、ポリカルボン酸またはそのアルカリ塩と、アニオン性共重合体またはそのアルカリ塩とを含有する。ポリカルボン酸およびアニオン性共重合体のアルカリ塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0019】
前記ポリカルボン酸およびアニオン性共重合体をアルカリ塩の形態とするには、単量体としてアルカリ塩を使用するか、あるいは重合後にアルカリ塩とすればよい。
【0020】
前記ポリカルボン酸の単量体としては、例えばアクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸およびイタコン酸から選ばれる少なくとも1種の不飽和カルボン酸が挙げられる。また、これらの単量体のアルカリ塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)を使用してもよい。ポリカルボン酸またはそのアルカリ塩の分子量は500〜100000、好ましくは1000〜10000、より好ましくは1000〜5000であるのがよい。前記ポリカルボン酸は、上記不飽和カルボン酸から選ばれる2種以上の単量体を共重合させて得られる2元以上の共重合体であってもよく、あるいは上記不飽和カルボン酸を単量体とする単独重合体、例えばアクリル酸およびそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種を単量体とする単独重合体であってもよい。
【0021】
前記アニオン性共重合体は、不飽和カルボン酸および不飽和スルホン酸を単量体として含む。前記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸およびイタコン酸から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。また、前記不飽和スルホン酸としては、スチレンスルホン酸、アクリルアミドt−ブチルスルホン酸およびイソプレンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。また、これらの単量体のアルカリ塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)を使用してもよい。アニオン性共重合体またはそのアルカリ塩の分子量は2000〜200000、好ましくは2000〜20000、より好ましくは5000〜10000であるのがよい。なお、前記アニオン性共重合体は、前記不飽和カルボン酸および前記不飽和スルホン酸以外の他の単量体を含む3元以上の共重合体であってもよい。
【0022】
前記アニオン性共重合体中における前記不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸のモル比(カルボン酸:スルホン酸)は、特に限定されるものではないが、1:9〜9:1、好ましくは1:6〜6:1、より好ましくは1:3〜5:1であるのがよい。
【0023】
ピッチコントロール組成物中の前記ポリカルボン酸と前記アニオン性共重合体の重量比(ポリカルボン酸:アニオン性共重合体)は、1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2、より好ましくは4:6〜6:4であるのがよい。
【0024】
前記ポリカルボン酸およびアニオン性共重合体は、前記した単量体を例えばラジカル重合させることによって得られる。重合を溶媒中で行う場合、溶媒としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、イソプロピルアルコール、水などが挙げられる。重合開始剤としては、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられる。このようにして得られたポリカルボン酸およびアニオン性共重合体は、それらを重合反応液のまま混合してもよく、あるいは溶媒などを除去した固形物の形態で混合してもよい。
【0025】
<ピッチの付着抑制方法>
本発明のピッチの付着抑制方法では、上記のようにして得られるピッチコントロール組成物をクラフトパルプ製造工程中のパルプスラリーに添加する。ピッチコントロール組成物を添加する場所は特に限定されるものではないが、クラフトパルプ製造工程のピッチ付着障害の発生箇所またはその前工程のパルプスラリーに添加するのが好ましい。また、パルプ脱水装置に装着されているシャワー設備に圧入してシャワー水とともに噴霧したり、パルプ脱水濾液が前工程の脱水設備の洗浄やパルプ希釈などに用いられる場合にはこのパルプ脱水濾液に添加してもピッチ付着障害を防止する良好な効果が得られる。
【0026】
ピッチコントロール組成物は、通常、ポリカルボン酸およびアニオン性共重合体を前記重量比の範囲で水に溶解させた水溶液の形態でクラフトパルプ製造工程に添加されるが、ポリカルボン酸およびアニオン性共重合体を水に溶解させずに固体の形態で添加することもできる。
【0027】
ピッチコントロール組成物の添加量は、使用原料木材、パルプ脱水設備の種類などに応じて適宜決定すればよいが、通常、パルプ重量(固形分)に対して0.001〜0.1重量%、好ましくは0.005〜0.05重量%であるのがよい。
【0028】
また、本発明の効果を損なわない範囲において、他の工程洗浄剤、例えば消泡剤、スケールコントロール剤、スライムコントロール剤および他のピッチコントロール剤を併用してもよい。ただし、カチオン性高分子やカチオン性界面活性剤については、高濃度で混合すると凝集・沈殿を生じ、相互に効果が消滅してしまうおそれがあるので、カチオン性高分子やカチオン性界面活性剤と本発明のピッチコントロール組成物とを併用する際には、これらの添加場所を十分に離す必要がある。
【0029】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0030】
実施例1〜15および比較例1〜14
<試験液の調製>
製紙工場のクラフトパルプ製造工程にて採取したピッチを100℃で乾燥させて恒量化し、これをエタノール33.3%およびベンゼン66.7%の混合溶媒で抽出し、その抽出分を擬似ピッチとした。この擬似ピッチをエタノール:ベンゼン=1:2混合溶媒に溶解し、10%擬似ピッチ溶液を調製した。
【0031】
一方、200ccガラスビーカーにイオン交換水200ccを入れ、このイオン交換水中に、カルシウムイオン濃度が300ppmとなるように塩化カルシウムを溶解させ、さらに、実施例1〜15では表1に示す化合物1(下記の化合物A〜Cのうちの1種)および化合物2(下記の化合物D〜Mのうちの1種)を所定濃度になるように、比較例1〜13では表2に示す化合物(下記化合物A,B,D〜J,L〜Oのうちの1種)を所定濃度になるようにそれぞれ添加し(但し、比較例14では無添加)、マグネティックスターラーで攪拌して水溶液をそれぞれ得た。この水溶液に前記擬似ピッチ溶液2.0gを添加・分散させて試験液を得た。なお、塩化カルシウムを溶解させた理由は、擬似ピッチとカルシウムイオンが反応してカルシウム石鹸を生成し易くし、問題となる金属石鹸に対するピッチコントロール性能を評価しやすいようにするためである。
【0032】
<ピッチコントロール性能評価試験>
前記試験液中にステンレス鋼(SUS304)製のテストピース(サイズ:6cm×8cm)を浸漬し、試験液を40℃で保温しながらスターラーで1時間撹拌した。撹拌終了後、テストピースを試験液から取り出し、60℃で風乾させて恒量化した後、その重量を測定して擬似ピッチの付着量を算出した。また、粒度分布計を用いて、テストピースを取り出した後の試験液中の擬似ピッチの平均粒子径を求めた。ここで、テストピースへの擬似ピッチの付着量が少ないほど試験液のピッチ付着抑制性能が高いことを示し、擬似ピッチの平均粒子径が小さいほど試験液のピッチ凝集抑制性能が高いことを示す。また、得られた擬似ピッチ付着量および平均粒子径から、下記式(1)および(2)を用いて付着抑制率および凝集抑制率をそれぞれ算出した。
【数1】
A:ブランク(比較例14)の付着量
B:実施例1〜15,比較例1〜13の付着量
【数2】
C:ブランク(比較例14)の平均粒子径
D:実施例1〜15,比較例1〜13の平均粒子径
【0033】
<評価試験に使用した化合物>
化合物A:ポリアクリル酸(分子量1500)のNa塩
化合物B:ポリアクリル酸(分子量5000)のNa塩
化合物C:ポリアクリル酸(分子量50000)のNa塩
化合物D:アクリル酸−スチレンスルホン酸(1:1モル比)共重合体(分子量5000)のNa塩
化合物E:アクリル酸−スチレンスルホン酸(1:1モル比)共重合体(分子量10000)のNa塩
化合物F:アクリル酸−スチレンスルホン酸(1:1モル比)共重合体(分子量100000)のNa塩
化合物G:アクリル酸−スチレンスルホン酸(1:3モル比)共重合体(分子量10000)のNa塩
化合物H:アクリル酸−スチレンスルホン酸(5:1モル比)共重合体(分子量12000)のNa塩
化合物I:アクリル酸−アクリルアミドt−ブチルスルホン酸(1:1モル比)共重合体(分子量8000)のNa塩
化合物J:アクリル酸−イソプレンスルホン酸(1:1モル比)共重合体(分子量12000)のNa塩
化合物K:マレイン酸−スチレンスルホン酸(1:1モル比)共重合体(分子量10000)のNa塩
化合物L:メタクリル酸−スチレンスルホン酸(1:1モル比)共重合体(分子量5000)のNa塩
化合物M:イタコン酸−スチレンスルホン酸(1:1モル比)共重合体(分子量10000)のNa塩
化合物N:微粒子タルク
化合物O:ポリオキシエチレン(14モル)ラウリルエーテル(ノニオン界面活性剤)
【0034】
<評価結果>
結果を表1および表2に示す。
【表1】
【表2】
表1および表2から明らかなように、2種の化合物(ポリカルボン酸とアニオン性共重合体)を併用した実施例1〜15は、1種の化合物のみを使用した比較例1〜13および化合物を添加していない比較例14と比べて、擬似ピッチの付着量が少なく、試験液中の擬似ピッチの平均粒子径が小さいことから、ピッチの付着性および凝集性が低減されていることがわかる。
【0035】
実施例16,比較例15〜17
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)およびNBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)を日産500トン生産している製紙工場において、パルプ製造設備でピッチ付着による障害が恒常的に発生していた。パルプ製造設備の中でも特にフィルターウォッシャー、パルプ希釈装置、スクリーンおよびこれらを繋ぐ配管内壁へのピッチ付着が著しい。付着したピッチは時折、パルプと一緒に持ち込まれ、後々抄紙機にてピッチ障害(紙の汚点や欠点)を引き起こす。そのために、この製紙工場ではパルプ製造設備の洗浄を年3回程度行っている。
【0036】
このような設備に対し、フィルターウォッシャーのシャワー洗浄水に前記化合物Aおよび/または化合物Dを、パルプ重量(固形分)に対する割合が表3に示す値となるように連続的に添加し(但し、比較例17は無添加)、4ヶ月間パルプの製造を行った。その後、下記の5つの箇所において4ヶ月間に堆積したピッチの付着量(付着厚さ)を測定した。結果を表3に示す。
【0037】
<ピッチ付着量測定箇所>
1:希釈スクリュー
2:クッションタンク内壁
3:クッションタンク撹拌装置の軸付近
4:フィルターウォッシャーのストリップロールおよびシュート板
5:晒し工程パルプ移送配管内壁
【0038】
【表3】
表3から、化合物Aまたは化合物Dをそれぞれ単独で使用した比較例15,比較例16と比べて、化合物Aと化合物Dを併用した実施例16では、化合物の合計添加量は同じであるにもかかわらず、ピッチの付着量が著しく低減していることがわかる。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、クラフトパルプ製造工程の製造装置類へのピッチの付着・堆積を抑制することができるので、製造装置類の洗浄頻度を減少させ、生産効率および作業効率を向上させることができ、しかも紙の白色度の低下や紙に汚点や欠点が発生するのを抑制することができる。これにより、クラフトパルプおよび紙の製造コストを低減することができるという効果がある。
【発明の属する技術分野】
本発明は、クラフトパルプ製造工程において、原料木材に由来するパルプ中のピッチがクラフトパルプ製造装置類に付着するのを抑制するためのピッチコントロール組成物およびピッチの付着抑制方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
クラフトパルプ製造工程においてパルプ製造装置類(例えば、パルプ希釈装置、配管、脱水設備など)に付着・堆積する汚れは、主として原料木材に由来する樹脂酸誘導体、脂肪酸誘導体、リグニン誘導体などを含有するピッチである。このようなピッチが脱水設備に付着すると、目詰まりを引き起こすことによって脱水効率を低下させ、白色度の低下などパルプの品質を低下させることになる。また、堆積して肥大化したピッチが剥がれてパルプに付着すると、抄紙工程において紙の汚点や欠点となって品質を低下させる原因となる。一方、付着・堆積したピッチの除去は、製造ラインを停止したうえで行わなければならないため、生産性や作業性の低下を引き起こすことになる。
【0003】
特に、近年は、樹脂分が多く本来パルプ化に適していない木材原料が使用されるようになるなど、パルプ製造条件が厳しくなっており、ピッチによる弊害は増加傾向にある。このような生産効率の低下やパルプ品質の低下を招くピッチの付着・堆積を抑制するべく、従来から界面活性剤や微粉タルク等を用いたピッチコントロールが行われている。
【0004】
一方、パルプの原料木材には脂肪酸誘導体成分が含まれており、アルカリ蒸解工程において加水分解されて脂肪酸などのカルボン酸化合物が生成される。また、原料木材やパルプ製造工程で使用される用水には少量ながらもカルシウム成分が含まれている。これらの成分が結合すると不溶性の金属石鹸である脂肪酸カルシウム等が生成し、これがピッチの凝集を誘発してフィルター洗浄機、チェスト、配管内などに付着・堆積する。
【0005】
この不溶性金属石鹸は原料木材に含まれる天然ピッチと比べて極性が低く、界面活性剤などによるピッチコントロールや分散洗浄が困難である。したがって、従来から行なわれている界面活性剤や微粉タルクを用いたピッチコントロール方法では十分な効果が得られていない。
【0006】
また、下記特許文献1では2−アクリルアミド−2−アルカンスルホン酸のアルカリ塩を単量体とした重合体を用いたピッチコントロール剤が提案されているが、上記のようにカルシウムなどの存在下で不溶性の金属石鹸が生成された場合には、界面活性剤や微粉タルクなどの場合と同様に十分な効果を発揮するには至っていない。
【0007】
このため、パルプ製造工程ではピッチが付着・堆積し、これを除去する為に年に数回、配管や製造設備の洗浄を行っているのが実情である。また、ピッチの付着・堆積を抑制し作業性を向上させるために、これらのピッチコントロール剤の使用量を増やしても、それに見合うだけの効果が得られない場合が多く、逆に様々な弊害を引き起こす原因となるおそれもある。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−200485号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、クラフトパルプ製造工程の製造装置類へのピッチの付着・堆積を抑制することができるピッチコントロール組成物およびピッチの付着抑制方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねる過程で、ポリカルボン酸と、特定のアニオン性共重合体とを併用することで、パルプ製造装置類へのピッチの付着・堆積の抑制・防止効果が飛躍的に高まるという知見を得、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のピッチコントロール組成物は、ポリカルボン酸またはそのアルカリ塩と、不飽和カルボン酸および不飽和スルホン酸を単量体として含むアニオン性共重合体またはそのアルカリ塩とを含有することを特徴とする。前記アルカリ塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0012】
本発明の作用としては、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基がピッチの中核をなす不溶性金属石鹸に含まれる金属イオンを捕捉(キレート)してピッチの凝集性を低下させ、さらに前記アニオン性共重合体が遊離した脂肪酸誘導体に吸着して保護コロイドを形成し、強酸の官能基であるスルホン酸の作用によってピッチが水中でより安定に分散することにより、ピッチの粘着性が低下し、ピッチの凝集・付着・堆積が抑制・防止されるものと考えられる。
【0013】
このように、本発明では、ポリカルボン酸と特定のアニオン性共重合体とを併用することにより、これらをそれぞれ単独で添加する場合に得られるピッチ障害の防止効果を大きく上回る相乗的な効果が得られる。その結果、ピッチ障害により、例えば脱水効率の低下に伴って白色度が低下するのを抑制し、パルプに含まれる樹脂分の洗浄効率の低下に伴ってピッチがパルプに付着し紙に汚点や欠点が発生するのを抑制し、さらに配管や製造設備の洗浄頻度を減少させることによって生産性および作業性を向上させることができる。
【0014】
本発明において、前記ポリカルボン酸またはそのアルカリ塩は、分子量が500〜100000であるのが好ましい。
【0015】
また、前記アニオン性共重合体またはそのアルカリ塩において、前記不飽和カルボン酸がアクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸およびイタコン酸から選ばれる少なくとも1種であり、前記不飽和スルホン酸がスチレンスルホン酸、アクリルアミドt−ブチルスルホン酸およびイソプレンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種であり、これらを共重合させた前記アニオン性共重合体またはそのアルカリ塩は、分子量が2000〜200000であるのが好ましい。
【0016】
本発明のピッチの付着抑制方法は、上記のピッチコントロール組成物をクラフトパルプ製造工程に添加することを特徴とする。この付着抑制方法では、前記ピッチコントロール組成物をパルプ重量に対して0.001〜0.1重量%添加するのが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のピッチコントロール組成物およびピッチの付着抑制方法について詳細に説明する。
【0018】
<ピッチコントロール組成物>
本発明のピッチコントロール組成物は、ポリカルボン酸またはそのアルカリ塩と、アニオン性共重合体またはそのアルカリ塩とを含有する。ポリカルボン酸およびアニオン性共重合体のアルカリ塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0019】
前記ポリカルボン酸およびアニオン性共重合体をアルカリ塩の形態とするには、単量体としてアルカリ塩を使用するか、あるいは重合後にアルカリ塩とすればよい。
【0020】
前記ポリカルボン酸の単量体としては、例えばアクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸およびイタコン酸から選ばれる少なくとも1種の不飽和カルボン酸が挙げられる。また、これらの単量体のアルカリ塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)を使用してもよい。ポリカルボン酸またはそのアルカリ塩の分子量は500〜100000、好ましくは1000〜10000、より好ましくは1000〜5000であるのがよい。前記ポリカルボン酸は、上記不飽和カルボン酸から選ばれる2種以上の単量体を共重合させて得られる2元以上の共重合体であってもよく、あるいは上記不飽和カルボン酸を単量体とする単独重合体、例えばアクリル酸およびそのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種を単量体とする単独重合体であってもよい。
【0021】
前記アニオン性共重合体は、不飽和カルボン酸および不飽和スルホン酸を単量体として含む。前記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸およびイタコン酸から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。また、前記不飽和スルホン酸としては、スチレンスルホン酸、アクリルアミドt−ブチルスルホン酸およびイソプレンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。また、これらの単量体のアルカリ塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)を使用してもよい。アニオン性共重合体またはそのアルカリ塩の分子量は2000〜200000、好ましくは2000〜20000、より好ましくは5000〜10000であるのがよい。なお、前記アニオン性共重合体は、前記不飽和カルボン酸および前記不飽和スルホン酸以外の他の単量体を含む3元以上の共重合体であってもよい。
【0022】
前記アニオン性共重合体中における前記不飽和カルボン酸と不飽和スルホン酸のモル比(カルボン酸:スルホン酸)は、特に限定されるものではないが、1:9〜9:1、好ましくは1:6〜6:1、より好ましくは1:3〜5:1であるのがよい。
【0023】
ピッチコントロール組成物中の前記ポリカルボン酸と前記アニオン性共重合体の重量比(ポリカルボン酸:アニオン性共重合体)は、1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2、より好ましくは4:6〜6:4であるのがよい。
【0024】
前記ポリカルボン酸およびアニオン性共重合体は、前記した単量体を例えばラジカル重合させることによって得られる。重合を溶媒中で行う場合、溶媒としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、イソプロピルアルコール、水などが挙げられる。重合開始剤としては、過酸化ベンゾイルなどの過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物などが挙げられる。このようにして得られたポリカルボン酸およびアニオン性共重合体は、それらを重合反応液のまま混合してもよく、あるいは溶媒などを除去した固形物の形態で混合してもよい。
【0025】
<ピッチの付着抑制方法>
本発明のピッチの付着抑制方法では、上記のようにして得られるピッチコントロール組成物をクラフトパルプ製造工程中のパルプスラリーに添加する。ピッチコントロール組成物を添加する場所は特に限定されるものではないが、クラフトパルプ製造工程のピッチ付着障害の発生箇所またはその前工程のパルプスラリーに添加するのが好ましい。また、パルプ脱水装置に装着されているシャワー設備に圧入してシャワー水とともに噴霧したり、パルプ脱水濾液が前工程の脱水設備の洗浄やパルプ希釈などに用いられる場合にはこのパルプ脱水濾液に添加してもピッチ付着障害を防止する良好な効果が得られる。
【0026】
ピッチコントロール組成物は、通常、ポリカルボン酸およびアニオン性共重合体を前記重量比の範囲で水に溶解させた水溶液の形態でクラフトパルプ製造工程に添加されるが、ポリカルボン酸およびアニオン性共重合体を水に溶解させずに固体の形態で添加することもできる。
【0027】
ピッチコントロール組成物の添加量は、使用原料木材、パルプ脱水設備の種類などに応じて適宜決定すればよいが、通常、パルプ重量(固形分)に対して0.001〜0.1重量%、好ましくは0.005〜0.05重量%であるのがよい。
【0028】
また、本発明の効果を損なわない範囲において、他の工程洗浄剤、例えば消泡剤、スケールコントロール剤、スライムコントロール剤および他のピッチコントロール剤を併用してもよい。ただし、カチオン性高分子やカチオン性界面活性剤については、高濃度で混合すると凝集・沈殿を生じ、相互に効果が消滅してしまうおそれがあるので、カチオン性高分子やカチオン性界面活性剤と本発明のピッチコントロール組成物とを併用する際には、これらの添加場所を十分に離す必要がある。
【0029】
【実施例】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0030】
実施例1〜15および比較例1〜14
<試験液の調製>
製紙工場のクラフトパルプ製造工程にて採取したピッチを100℃で乾燥させて恒量化し、これをエタノール33.3%およびベンゼン66.7%の混合溶媒で抽出し、その抽出分を擬似ピッチとした。この擬似ピッチをエタノール:ベンゼン=1:2混合溶媒に溶解し、10%擬似ピッチ溶液を調製した。
【0031】
一方、200ccガラスビーカーにイオン交換水200ccを入れ、このイオン交換水中に、カルシウムイオン濃度が300ppmとなるように塩化カルシウムを溶解させ、さらに、実施例1〜15では表1に示す化合物1(下記の化合物A〜Cのうちの1種)および化合物2(下記の化合物D〜Mのうちの1種)を所定濃度になるように、比較例1〜13では表2に示す化合物(下記化合物A,B,D〜J,L〜Oのうちの1種)を所定濃度になるようにそれぞれ添加し(但し、比較例14では無添加)、マグネティックスターラーで攪拌して水溶液をそれぞれ得た。この水溶液に前記擬似ピッチ溶液2.0gを添加・分散させて試験液を得た。なお、塩化カルシウムを溶解させた理由は、擬似ピッチとカルシウムイオンが反応してカルシウム石鹸を生成し易くし、問題となる金属石鹸に対するピッチコントロール性能を評価しやすいようにするためである。
【0032】
<ピッチコントロール性能評価試験>
前記試験液中にステンレス鋼(SUS304)製のテストピース(サイズ:6cm×8cm)を浸漬し、試験液を40℃で保温しながらスターラーで1時間撹拌した。撹拌終了後、テストピースを試験液から取り出し、60℃で風乾させて恒量化した後、その重量を測定して擬似ピッチの付着量を算出した。また、粒度分布計を用いて、テストピースを取り出した後の試験液中の擬似ピッチの平均粒子径を求めた。ここで、テストピースへの擬似ピッチの付着量が少ないほど試験液のピッチ付着抑制性能が高いことを示し、擬似ピッチの平均粒子径が小さいほど試験液のピッチ凝集抑制性能が高いことを示す。また、得られた擬似ピッチ付着量および平均粒子径から、下記式(1)および(2)を用いて付着抑制率および凝集抑制率をそれぞれ算出した。
【数1】
A:ブランク(比較例14)の付着量
B:実施例1〜15,比較例1〜13の付着量
【数2】
C:ブランク(比較例14)の平均粒子径
D:実施例1〜15,比較例1〜13の平均粒子径
【0033】
<評価試験に使用した化合物>
化合物A:ポリアクリル酸(分子量1500)のNa塩
化合物B:ポリアクリル酸(分子量5000)のNa塩
化合物C:ポリアクリル酸(分子量50000)のNa塩
化合物D:アクリル酸−スチレンスルホン酸(1:1モル比)共重合体(分子量5000)のNa塩
化合物E:アクリル酸−スチレンスルホン酸(1:1モル比)共重合体(分子量10000)のNa塩
化合物F:アクリル酸−スチレンスルホン酸(1:1モル比)共重合体(分子量100000)のNa塩
化合物G:アクリル酸−スチレンスルホン酸(1:3モル比)共重合体(分子量10000)のNa塩
化合物H:アクリル酸−スチレンスルホン酸(5:1モル比)共重合体(分子量12000)のNa塩
化合物I:アクリル酸−アクリルアミドt−ブチルスルホン酸(1:1モル比)共重合体(分子量8000)のNa塩
化合物J:アクリル酸−イソプレンスルホン酸(1:1モル比)共重合体(分子量12000)のNa塩
化合物K:マレイン酸−スチレンスルホン酸(1:1モル比)共重合体(分子量10000)のNa塩
化合物L:メタクリル酸−スチレンスルホン酸(1:1モル比)共重合体(分子量5000)のNa塩
化合物M:イタコン酸−スチレンスルホン酸(1:1モル比)共重合体(分子量10000)のNa塩
化合物N:微粒子タルク
化合物O:ポリオキシエチレン(14モル)ラウリルエーテル(ノニオン界面活性剤)
【0034】
<評価結果>
結果を表1および表2に示す。
【表1】
【表2】
表1および表2から明らかなように、2種の化合物(ポリカルボン酸とアニオン性共重合体)を併用した実施例1〜15は、1種の化合物のみを使用した比較例1〜13および化合物を添加していない比較例14と比べて、擬似ピッチの付着量が少なく、試験液中の擬似ピッチの平均粒子径が小さいことから、ピッチの付着性および凝集性が低減されていることがわかる。
【0035】
実施例16,比較例15〜17
LBKP(広葉樹晒クラフトパルプ)およびNBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)を日産500トン生産している製紙工場において、パルプ製造設備でピッチ付着による障害が恒常的に発生していた。パルプ製造設備の中でも特にフィルターウォッシャー、パルプ希釈装置、スクリーンおよびこれらを繋ぐ配管内壁へのピッチ付着が著しい。付着したピッチは時折、パルプと一緒に持ち込まれ、後々抄紙機にてピッチ障害(紙の汚点や欠点)を引き起こす。そのために、この製紙工場ではパルプ製造設備の洗浄を年3回程度行っている。
【0036】
このような設備に対し、フィルターウォッシャーのシャワー洗浄水に前記化合物Aおよび/または化合物Dを、パルプ重量(固形分)に対する割合が表3に示す値となるように連続的に添加し(但し、比較例17は無添加)、4ヶ月間パルプの製造を行った。その後、下記の5つの箇所において4ヶ月間に堆積したピッチの付着量(付着厚さ)を測定した。結果を表3に示す。
【0037】
<ピッチ付着量測定箇所>
1:希釈スクリュー
2:クッションタンク内壁
3:クッションタンク撹拌装置の軸付近
4:フィルターウォッシャーのストリップロールおよびシュート板
5:晒し工程パルプ移送配管内壁
【0038】
【表3】
表3から、化合物Aまたは化合物Dをそれぞれ単独で使用した比較例15,比較例16と比べて、化合物Aと化合物Dを併用した実施例16では、化合物の合計添加量は同じであるにもかかわらず、ピッチの付着量が著しく低減していることがわかる。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、クラフトパルプ製造工程の製造装置類へのピッチの付着・堆積を抑制することができるので、製造装置類の洗浄頻度を減少させ、生産効率および作業効率を向上させることができ、しかも紙の白色度の低下や紙に汚点や欠点が発生するのを抑制することができる。これにより、クラフトパルプおよび紙の製造コストを低減することができるという効果がある。
Claims (6)
- ポリカルボン酸またはそのアルカリ塩と、不飽和カルボン酸および不飽和スルホン酸を単量体として含むアニオン性共重合体またはそのアルカリ塩とを含有することを特徴とするピッチコントロール組成物。
- 前記ポリカルボン酸またはそのアルカリ塩は、分子量が500〜100000である請求項1記載のピッチコントロール組成物。
- 前記不飽和カルボン酸がアクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸およびイタコン酸から選ばれる少なくとも1種であり、前記不飽和スルホン酸がスチレンスルホン酸、アクリルアミドt−ブチルスルホン酸およびイソプレンスルホン酸から選ばれる少なくとも1種であり、これらを共重合させた前記アニオン性共重合体またはそのアルカリ塩は、分子量が2000〜200000である請求項1記載のピッチコントロール組成物。
- 前記アルカリ塩がナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載のピッチコントロール組成物。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のピッチコントロール組成物をクラフトパルプ製造工程に添加することを特徴とするピッチの付着抑制方法。
- 前記ピッチコントロール組成物をパルプ重量に対して0.001〜0.1重量%添加する請求項5記載のピッチの付着抑制方法。
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