JP2004182901A - 天然石粒の生分解性樹脂による結合体、その成型品及び製法 - Google Patents
天然石粒の生分解性樹脂による結合体、その成型品及び製法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】水が比較的容易に通過でき、各種形状の成形品にも適用可能な、天然素材からなる部分以外の人工物からなる素材の部分が生分解性を有する環境汚染の少ない材料及びそれを少なくとも用いた成型品、並びにこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】最大径が1mm〜30mmの天然石粒1同士間が生分解性樹脂2により結合された結合体からなり、前記生分解性樹脂2が前記天然石粒1間の間隙の全部を塞がず水が通過しうる連通路3が形成されている天然石粒の生分解性樹脂による結合体。
【選択図】 図1
【解決手段】最大径が1mm〜30mmの天然石粒1同士間が生分解性樹脂2により結合された結合体からなり、前記生分解性樹脂2が前記天然石粒1間の間隙の全部を塞がず水が通過しうる連通路3が形成されている天然石粒の生分解性樹脂による結合体。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然石粒の生分解性樹脂による結合体及びその成型品ならびにこれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、砂利や砕石などの比較的小さめの大きさの天然石粒を結合したものは、コンクリートなどが典型的な材料であり、各種の用途、成型品として用いられており、もちろん、道路や崖、河川の岸の法面などや、公園、住宅造成地の法面などのパネルなどにも用いられている。
【0003】
また近年、天然石粒状物をアクリル系樹脂などで結合したシート状の建築物用の化粧板も用いられている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−309949号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、コンクリートなどは、通常、砂利や砕石などの天然石粒同士間がバインダー成分であるセメントにより結合された結合体からなっているが、一般的には天然石粒同士間が隙間なくセメントで充填されており、天然石粒同士間に水が簡単に通過しうる連通路などは残されていない。また、コンクリートは、生分解性がなく、コンクリートからなる成型品は、廃棄の際に地球環境を汚染することになる。
【0006】
また前述したシート状の建築物用の化粧板も天然石粒状物同士間がバインダー成分である非生分解性樹脂であるアクリル系樹脂などで結合されているが、天然石粒状物同士間が隙間なく非生分解性樹脂であるアクリル系樹脂などで充填されており、天然石粒状物同士間に水が簡単に通過しうる連通路などは残されていない。また、アクリル系樹脂などは、生分解性がなく、廃棄の際に地球環境を汚染すると言う問題もある。
【0007】
上述の様な、通常は水が簡単には通過できない素材ではなく、雨や水が通過しうる方が好ましい素材からなる成型品の用途もいろいろあり、また、廃棄の際に環境を汚さず、人工物からなる素材の部分が生分解性を有する材料があれば、各種の用途が期待される。
【0008】
本発明は水が比較的容易に通過でき、各種形状の成型品にも適用可能で、天然素材からなる部分とそれ以外の人工物からなる素材の部分とからなり、人工物からなる素材の部分が生分解性を有する環境汚染の少ない結合体からなる材料及びそれを少なくとも用いた成型品、並びにこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、以下に示すような、天然石粒の生分解性樹脂による結合体及びその成型品ならびにこれらの製造方法を提供するものである。
【0010】
(1)本発明の天然石粒の生分解性樹脂による結合体は、最大径が1mm〜30mmの天然石粒同士間が生分解性樹脂により結合された結合体からなり、前記生分解性樹脂が前記天然石粒間の間隙の全部を塞がず水が通過しうる連通路が形成されていることを特徴とする。
【0011】
(2)また、本発明の成型品の発明は、上記(1)の天然石粒同士間が生分解性樹脂により結合された結合体(請求項1〜7のいずれかの結合体に相当)からなる成型品である。
【0012】
(3)また、本発明の天然石粒の生分解性樹脂による結合体の製造方法は、最大径が1mm〜30mmの天然石粒と前記天然石粒の重量に対し固形分の重量で2〜30重量%の生分解性樹脂のエマルジョンとを混合し、そのまま又は所望の成形型に入れ、加熱して生分解性樹脂のエマルジョンを固化させて天然石粒同士間を結合することにより、前記生分解性樹脂が前記天然石粒間の間隙の全部を塞がずに水が通過しうる連通路が形成されている天然石粒の生分解性樹脂による結合体の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の天然石粒の生分解性樹脂による結合体は、最大径が1mm〜30mmの天然石粒同士間が生分解性樹脂により結合された結合体からなり、前記生分解性樹脂が前記天然石粒間の間隙の全部を塞がず水が通過しうる連通路が形成されているものからなる。
【0014】
すなわち、天然石粒同士間を生分解性樹脂で接着する際に、用いる生分解性樹脂の量を、前記天然石粒間の間隙の全部を塞いでしまうほど多量に使用せずに、水を流した場合に、水が通過しうる連通路が残される程度で且つ結合体としての形状を保持するに必要な量の生分解性樹脂で接着されている。
【0015】
生分解性樹脂は、種類によっても異なるが1〜10年で分解するので、本発明の結合体が使用済みになってこれを廃棄した場合においても、生分解性樹脂が分解後、残るのは、天然石粒であり、従って、地球環境を汚染することがない。
【0016】
本発明の結合体は、コンクリートなどのように、水の通過性が悪いものではないので、例えば、道路の法面工事の際の斜め格子状の鉄筋コンクリート枠の枠内に取り付けられる板状パネルなどに使用すると、雨水の通過性がよいので、給水・排水性能がよく、土砂の崩落を抑え、同様に河川の岸などの法面工事の際などにも適用でき、結合材の役割を果たしている生分解性樹脂は、工事した法面の土砂が固まったころ分解し、天然石粒のみが残るので、環境を汚染せず、その後、草が生えたり、植林も可能となって、美感も良好に保つことができる。雨水の地面へのしみこみも妨げず、地下水などの自然の水の循環も保つことができる。
【0017】
天然石粒としては、天然石の小粒、すなわち、最大径が1〜30mmの小粒であれば、その素材、すなわち天然石の種類は特に限定されず、各種の火成岩、堆積岩、変成岩などが使用可能である。そのうちでも、モルデナイトゼオライト凝灰石粒は特に好ましい。モルデナイトゼオライト凝灰岩は天然のゼオライト質凝灰岩の一種であり、例えば、福井県福井市川西地域などで産出される。モルデナイトゼオライト凝灰岩は、微細多孔質であり、見掛け比重が平均1.16で天然石としては極めて軽く、チッソ、リン、アンモニアの吸着性能にも優れており、また、河川などの水の浄化機能も有する。天然石粒がモルデナイトゼオライト凝灰石粒の場合には、容量5Lのテドラーバック中100ppm濃度のアンモニアをモルデナイトゼオライト凝灰石粒5gで約15分でアンモニア臭を消臭する性能を有しているので、例えばトイレの壁やドアーなどの素材にシート状に成形した本発明の結合体を用いると、消臭効果があり好適であると共に、軽いので、施工も容易になる。また、モルデナイトゼオライト凝灰石粒は、微多孔性であるので、毛細管現象により、水を保持させる用途にも好適に用いられる。例えば、モルデナイトゼオライト凝灰石粒を用いた本発明の結合体を植木鉢の形に成形して植木鉢として使用する場合に、植木鉢の下の受け皿に水を満たしておくと毛細管現象により適度の水分補給も行うことができる。
【0018】
生分解性樹脂の種類も本発明の目的が達成できるものであれば特に限定されず、ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトン、カプロラクトンと他のヒドロキシカルボン酸との共重合体などが挙げられるが、このうちでも特にポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体が好ましい。ポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体は、弱酸性でまた抗菌性を有しており、トイレなどの部材に使用した場合好適であり、モルデナイトゼオライト凝灰石粒とポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体との組み合わせの場合は、アンモニア臭の消臭機能と抗菌性が発揮され好ましい。
【0019】
また、前述した道路の法面、河川の岸の法面などの工事の際の鉄筋コンクリート枠の枠内に取り付けられるパネルなどに使用するとポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体などの作用により、ポリ乳酸等が生分解せずに残存している間は、防草効果も発揮され好ましい。
【0020】
一方、植木鉢に適用した場合には、植木鉢の中に入れる土などにはポリ乳酸などの弱酸性の影響はほとんど及ばず抗菌性も有していることから、細菌や不要なコケ類、ヤスデ、ダンゴムシなどの不快虫の繁殖を抑える効果も発揮され好ましい。
【0021】
本発明の結合体に用いる天然石粒の大きさは、最大径が1〜30mm、好ましくは、3〜8mmの小粒のものが用いられる。最大径が1mmよりも小さいと、結合体を天然石粒間の間隙の全部を塞がずに水が通過しうる連通路が残されている状態にするのに手間がかかり、最大径が30mmよりも大きくなると、成型品とする場合に小さい成型品では成形しにくい。3〜8mmの場合には、結合体を天然石粒間の間隙の全部を塞がずに水が通過しうる連通路が残されている状態にするのも容易であり、成型品とする場合にも成形し易く好ましい。天然石粒の大きさが最大径が1〜30mmとの意味は、最大径が1mmよりも小さいものや、最大径が30mmより大きいものが少しでも入っていてはダメと言う意味ではなく、本発明の目的が達成しうる範囲で混在することは差し支えない。最大径が1〜30mm、好ましくは3〜8mmのものが、使用する天然石粒の全重量に対して、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より一層好ましくは80重量%以上、最も好ましくは95重量%以上であることが好ましい。
【0022】
生分解性樹脂の使用割合は、天然石粒の比重や大きさによって異なり、比重の大きい天然石粒を用いる場合には、比重の小さい天然石粒を用いる場合に比べて、生分解性樹脂を同じ体積量用いても、天然石粒の重量に対する生分解性樹脂の重量割合は小さくなる。天然石粒の大きさが小さいほど、天然石粒の比表面積が一般には大きくなるので、生分解性樹脂の使用割合は多少多くなる傾向にある。
【0023】
従って、生分解性樹脂の使用割合は、天然石粒の重量に対し、通常2〜30重量%が好ましく、より好ましくは、5〜20重量%である。特に、天然石粒が、モルデナイトゼオライト凝灰石粒の場合には、見掛け比重が小さいので、生分解性樹脂の使用割合は、天然石粒の重量に対し、5〜30重量%が好ましく、より好ましくは10〜20重量%である。
【0024】
生分解性樹脂の使用割合をこの範囲とすることにより、結合体として天然石粒が、ぽろぽろ剥がれ落ちることなく、結合体としての形状を保持でき、必要な強度を保持することができ好ましい。また、この範囲の量とすることにより、前記生分解性樹脂が前記天然石粒間の間隙の全部を塞がずに水が通過しうる連通路が残され、従って水が通過しうる連通路が形成されている結合体とするに好都合な量である。あまりに生分解性樹脂の使用割合が多すぎると、前記生分解性樹脂が前記天然石粒間の間隙のほとんどを塞いでしまい、水が通過しうる連通路が残されている状態にすることが困難となり、水が通過しうる連通路が形成されている結合体を得ることができにくくなる。また、生分解性樹脂の使用割合が多くなると、コストも高くなる傾向になるので、不必要に、多量に使用することはコストの上昇を招くので、目的に応じて、必要な使用割合を選定することが好ましい。
【0025】
本発明の天然石粒の生分解性樹脂による結合体の製造方法としては、前記所定の範囲の大きさの天然石粒と前記天然石粒の重量に対し固形分の重量で2〜30重量%の生分解性樹脂のエマルジョンとを混合し(攪拌して混合することが好ましい。)、そのまま又は所望の成形型に入れ、加熱して生分解性樹脂のエマルジョンを固化させて天然石粒同士間を結合することにより本発明の天然石粒の生分解性樹脂による結合体を得ることができる。生分解性樹脂のエマルジョンは、水性のエマルジョンが好ましく、濃度が高すぎる場合には、水で適宜希釈して使用すればよい。
【0026】
生分解性樹脂のエマルジョンの使用割合は、生分解性樹脂の固形分の重量にして、前述した通り、天然石粒の重量に対し、通常2〜30重量%が好ましく、より好ましくは、5〜20重量%である。特に、天然石粒が、モルデナイトゼオライト凝灰石粒の場合には、見掛け比重が小さいので、生分解性樹脂の使用割合は、天然石粒の重量に対し、5〜30重量%が好ましく、より好ましくは10〜20重量%である。
【0027】
生分解性樹脂のエマルジョンの使用割合をこの範囲とすることにより、得られた結合体が、その構成成分である天然石粒が、結合体からぽろぽろ剥がれ落ちることなく、結合体としての形状を保持でき、必要な強度を保持することができ好ましい。また、この範囲の量とすることにより、前記生分解性樹脂が前記天然石粒間の間隙の全部を塞がずに水が通過しうる連通路が残され、その結果水が通過しうる連通路が形成されている結合体とするに好都合な量である。
【0028】
天然石粒と生分解性樹脂のエマルジョンとを混合した後は、特に成形する必要がない場合にはそのままの状態で加熱し生分解性樹脂のエマルジョンを固化させて天然石粒同士間を結合することにより本発明の結合体を得ることができる。通常は、目的に応じて所望の形に成形して用いるので、成型品にする場合には、天然石粒と生分解性樹脂のエマルジョンとを混合した後、所望の成形型に入れ、加熱して生分解性樹脂のエマルジョンを固化させて天然石粒同士間を結合することにより、本発明の結合体からなる成型品をえることができる。
【0029】
加熱処理は、生分解性樹脂の種類によって異なるが、通常、150〜220℃で30分〜90分程度であり、例えば、オーブンなどの中で加熱し、生分解性樹脂のエマルジョンを固化させて天然石粒同士間を結合すればよい。成形型にヒーターなどの加熱手段が設けられている場合には、それらを使用すればよい。
【0030】
本発明の天然石粒同士間が生分解性樹脂により結合された結合体からなる成型品としては、目的に応じて、成形可能な任意の形状の成型品とすることができる。例えば、立方体状、パネル状、筒状、半円筒状、樋状、棒状、円錐状、角錐状、球状、枠状の形状のいずれか1つの形状、あるいは、これらの形状のものの1種又は2種以上を2つ以上組み合わせた部分を少なくとも有する形状の成型品など、成形しうる限りその形状は任意である。
【0031】
少数の例としては、シート状(板状)のトイレ用の壁材又はドアー用材料、道路の法面や河川の岸の法面工事の鉄筋コンクリート枠の枠内に取り付けられる平板状パネル、あるいは、公園、宅地造成地などの法面工事に用いられるパネル、そのほか、植木鉢、河川水浄化用ブロック、葦などの水生植物育成用の苗床容器(本発明において水生植物とは、水辺に生えて、水底の土中に根を張る植物を言う。)などが挙げられる。
【0032】
以下、本発明の理解を容易にするために、具体的、実施の形態例を挙げて、更に本発明を説明する。
【0033】
実施の形態例1
ポリ乳酸水性エマルジョン(固形分50重量%含有)原液を当該原液の重量の50重量%に相当する量の水で希釈して固形分33.3重量%含有のポリ乳酸エマルジョンを調整し、最大径が3〜8mmのモルデナイトゼオライト凝灰石粒(平均見掛け比重1.16)に、この石粒の重量に対し、前記希釈ポリ乳酸エマルジョンの固形分が15重量%となるような割合で混合し、へらを用いて攪拌し、モルデナイトゼオライト凝灰石粒とポリ乳酸エマルジョンの混合物を調整した。この混合物を縦20cm、横30cm、深さ3cmのパネル成形用のトレイに入れ、これをオーブンで200℃、1時間加熱した。得られたモルデナイトゼオライト凝灰石粒のポリ乳酸樹脂による結合体からなる縦20cm、横30cm、厚さ3cmのパネルが得られた。この結合体からなる試作パネルが、生分解性樹脂が天然石粒間の間隙の全部を塞がず水が通過しうる連通路が残されている天然石粒の生分解性樹脂による結合体に相当すること、すなわち、水が通過しうる連通路が形成されている結合体であることをテストするため、次の実験を行った。
【0034】
得られた試作パネルをほぼ水平に保持し、試作パネル上面の垂直方向5cm上方から、口径10mmの水道蛇口より試作パネル上面に向かって、毎分9リットルの水を流した。試作パネル上面においての水の飛散は、直径約12cmにとどまり、水は溢れることなく試作パネル内を通過しパネル下面より流れ落ちた。これにより、本実施の形態例の結合体からなる試作パネルが、水が通過しうる連通路が形成されている結合体であること、しかも、水の流通がかなり良好な結合体であることが分かった。従って、このような結合体を、例えば、道路の法面工事の際のパネルやブロックなどに適用すると、雨水の通過性がよいので、給水・排水性能がよく、土砂の崩落を抑え、結合材の役割を果たしている生分解性樹脂は、工事した法面の土砂が固まったころ分解し、天然石粒のみが残るので、環境を汚染せず、美感も良好に保つことができる。雨水の地面へのしみこみも妨げず、自然の水の循環、すなわち地下水流の変化などへの悪影響を少なくすることができる。また法面近傍の地面内部にしみ込んだ雨水が法面から外部に出ようとする場合でも排水性能がよく、水を逃がすこともできる結合体とし得ることが理解される。
【0035】
図1に本発明の結合体の一実施の形態の模式的概念図を示した。1が天然石粒、この実施の形態例ではモルデナイトゼオライト凝灰石粒であり、2が生分解性樹脂、この実施の形態例ではポリ乳酸であり、本発明の結合体においては、生分解性樹脂2は前記天然石粒1同士間の間隙の全部を塞がず水が通過しうる連通路3が形成されている。
【0036】
実施の形態例2
本発明の結合体からなる成型品の一例である植木鉢について図2を用いて説明する。
【0037】
ポリ乳酸水性エマルジョン(固形分50重量%含有)原液を当該原液の重量の50重量%に相当する量の水で希釈して固形分33.3重量%含有のポリ乳酸エマルジョンを調整し、最大径が3〜8mmのモルデナイトゼオライト凝灰石粒(平均見掛け比重1.16)に、この石粒の重量に対し、前記希釈ポリ乳酸エマルジョンの固形分が15重量%となるような割合で混合し、へらを用いて攪拌し、モルデナイトゼオライト凝灰石粒とポリ乳酸エマルジョンの混合物を調整した。この混合物を、通常の形の植木鉢(但し、通常の植木鉢底面に設けられている排水用の穴は存在しない)を成形しうる成形型に入れ、これをオーブンで200℃、1時間加熱した。得られたモルデナイトゼオライト凝灰石粒のポリ乳酸樹脂による結合体からなる図2に示したような形の植木鉢が得られた。図2は、得られた植木鉢の斜視図であるが、結合体を詳細に描くのは一部のみとし、他の大部分は、外形のみで描いている。尚、この図では見えないが、この植木鉢は上述したように通常の植木鉢底面に開いている排水用の穴は存在しない構造の植木鉢とした。排水用の穴が設けられていなくても、本発明の結合体は天然石粒間に、水が通過しうる連通路が形成されているので、排水性が良好だからである。従って、土をこの植木鉢に入れる際に、通常の植木鉢のように、植木鉢底面に設けられている排水用の穴を、土がその穴からこぼれ落ちないように、しかし排水性は保持する様に適宜の大きさの石などをあてがうなどしてから、土を入れると言うようなことをしなくてもよい。もちろん、必要に応じて、通常の植木鉢底面に設けられてている排水用の穴を開けた植木鉢としてもよい。
【0038】
この植木鉢は、モルデナイトゼオライト凝灰石粒のポリ乳酸樹脂による結合体からなるので、植木鉢の中に入れる土などにはポリ乳酸による弱酸性の影響はほとんど及ばず抗菌性も有していることから、細菌や不要なコケ類、ヤスデ、ダンゴムシなどの不快虫の繁殖を抑える効果も発揮され好ましい。モルデナイトゼオライト凝灰石粒(平均比重1.16)用いているので、大きな形状の植木鉢とした場合にも、通常の陶器などの素材の植木鉢に比べて軽い、また、モルデナイトゼオライト凝灰石粒は、微多孔性であるので、毛細管現象により水を保持でき、従って、植木鉢の下の受け皿に水を満たしておくと毛細管現象により適度の水分補給も行うことができる。
【0039】
また、生分解性樹脂で天然石であるモルデナイトゼオライト凝灰石粒を結合しているので、植木鉢が破損して、そのかけらを捨てた場合でも、地上に放置しておけば生分解性樹脂が分解し、結合が解かれた天然石粒が残るのみとなり、地面を人工的な非自然物で汚染することがなく、地球環境を汚染しない。
【0040】
また、必要なら、木などの植物の苗を植え付けた本実施形態例の植木鉢をそのまま、地面に埋め込む使い方をした場合には、やがて、生分解性樹脂が分解し、結合が解かれた天然石粒が残るのみとなり、木が更に生長する場合に、元の植木鉢の範囲より根が広がって成長できる。
【0041】
実施の形態例3
次に、図3〜図7を用いて本発明の結合体から構成される部分を有する成型品の一例である水生植物育成用の苗床容器について説明する。
【0042】
図3が水生植物育成用の苗床容器の斜視図、図4が平面図、図5が図3のA−A’方向断面の端面図、図6が底面図、図7が使用状態を説明するための断面図である。
【0043】
本実施の形態例の水生植物育成用の苗床容器は、本発明の天然石粒の生分解性樹脂による結合体からなる容器本体部分10と生分解性樹脂からなるパイプ状の複数本の脚部11とからなっている。容器本体部分10は下方部に穴あきの底部を有する筒状体からなる。すなわち容器本体部分10は筒状体部分12と底部13とからなり、底部13のほぼ中央部には葦などの水生植物の苗16を保持するための苗床15(図5参照)を挿入するための穴14が設けられている。苗床15は、生分解性繊維からなる綿状物などを使用する。筒状体の下方部の縁より更に生分解性樹脂からなるパイプ状の複数本の脚部11が設けられている。容器本体部分10は、上記実施の形態例2と同様に、モルデナイトゼオライト凝灰石粒のポリ乳酸樹脂による結合体からほぼ同様にして形成したものである。
【0044】
すなわち、ポリ乳酸水性エマルジョン(固形分50重量%含有)原液を当該原液の重量の50重量%に相当する量の水で希釈して固形分33.3重量%含有のポリ乳酸エマルジョンを調整し、最大径が3〜8mmのモルデナイトゼオライト凝灰石粒(平均見掛け比重1.16)に、この石粒の重量に対し、前記希釈ポリ乳酸エマルジョンの固形分が15重量%となるような割合で混合し、へらを用いて攪拌し、モルデナイトゼオライト凝灰石粒とポリ乳酸エマルジョンの混合物を調整した。この混合物を、容器本体部分10を成形しうる成形型に入れ、あらかじめ成形された生分解性樹脂(ポリ乳酸など)からなるパイプ状の複数本の脚部11の先端部を筒状体の下方部の縁から容器本体部分10の内部に差し込んだ後、これをオーブンで200℃、1時間加熱して、モルデナイトゼオライト凝灰石粒とポリ乳酸樹脂のエマルジョンの混合物からなる容器本体部分10を結合体に固化させる。脚部11も同時に容器本体部分10に固着する。
【0045】
かくして得られた、本実施形態の水生植物育成用の苗床容器は、図7に示したように、葦などの水生植物の苗16を、ポリ乳酸繊維その他の生分解性繊維の綿状物からなる苗床15で保持して、底部13の穴14に固定し、池、湖、川の水底19の土20に脚部11を差し込むことによって、容器本体部分10が水流や波などで倒れたり移動したりするのを防止する。図7中、18は水面、17は水生植物の根を示している。特に限定するものではないが、図示した態様の苗床容器としては、筒状体部分12の直径は10〜20cm、厚さ1〜3cm、高さ10〜50cm、底部13の穴14の直径は2〜3cm程度、脚部の長さ5〜30cm、脚部の太さ直径0.5〜2cmが程度のものが好ましい。
【0046】
かくして、本実施形態の水生植物育成用の苗床容器を用いて、水生植物の苗を植えつけることにより、苗床容器なしに直接植えつけた場合に生じる水流や波などで水生植物の苗が倒れたり、水底の土から根が抜け出てしまったりする問題を解決することができ水生植物の苗の定着性を向上させることができる。また、苗床容器を構成する容器本体部分10は水が通過しうる連通路が形成されている本発明の結合体からなるので、容器本体部分10内の水は、容器本体外の水と流通性があり、容器本体部分10内の水が新鮮な容器本体外の水と入れ替わり得るので、容器本体部分10内の水が長期間よどむことによる水生植物の苗への悪影響も緩和できる。しかも、苗床容器をこのまま放置しても、苗床容器は、その構成成分である生分解性樹脂が生分解した後には、天然石粒がばらばらになって水底に残るのみであり、何等、河川、湖、池、沼などを汚染しないばかりでなく、モルデナイトゼオライト凝灰石粒は、河川、湖、池、沼などの水を浄化する作用があり、極めて好ましい。
【0047】
以上、図示した本実施形態の水生植物育成用の苗床容器は、筒状体部分12が円筒状であるものを示したが、円筒状に限定されるものではなく、断面形状が各種多角形筒状などであってもよいし、筒状体の径は、上から下まで同じである必要はなく、水生植物育成用の苗床容器としての目的が達成される限り変化してもよい。苗床15を挿入するための穴14も図示したものは底部13のほぼ中央部に1個設けられた態様のものを示したが、水生植物育成用の苗床容器としての目的が達成される限り、底部13の面積を大きくして、穴14を2個以上設ける態様としてもよい。脚部11は生分解性樹脂からなるパイプ状のものを用いたが、棒状でもよいし、例えば先細りのテーパー状の棒状物などであってもよい。要するに、水底の土に差し込むことによって、容器本体部分10が水流や波などで倒れたり移動したりするのを防止できる機能が発揮できればよい。また、脚部11は、この実施の形態例では2本のものを示したが、それより多くて設けても差し支えない。
【0048】
実施の形態例4
次に、図8〜図11を用いて本発明の結合体を用いたその成型品の一例である道路法面工事の際に用いられる鉄筋コンクリート枠の中央部(枠内)に取り付けられる板状パネルについて説明する。
【0049】
図8が、鉄筋コンクリート枠とその枠内に取り付けられている本発明の結合体からなる板状パネルが道路法面に施工された状態を表す平面図である。図9が鉄筋コンクリート枠とその枠内に取り付けられている本発明の結合体からなる板状パネル1単位を示した平面図、図10が図9のA−A’断面図、図11が鉄筋コンクリート枠とその中央部に取り付けられている本発明の結合体からなる板状パネルが道路法面に施工された状態を表す道路並びにその近傍の断面模式図である。
【0050】
まず、本発明の結合体からなる板状パネル31自体は、ほぼ正方形の板状パネルの形状を有している。この板状パネル31は、実施の形態例1とほぼ同様に、ポリ乳酸水性エマルジョン(固形分50重量%含有)原液を当該原液の重量の50重量%に相当する量の水で希釈して固形分33.3重量%含有のポリ乳酸エマルジョンを調整し、最大径が3〜8mmのモルデナイトゼオライト凝灰石粒(平均見掛け比重1.16)に、この石粒の重量に対し、前記希釈ポリ乳酸エマルジョンの固形分が15重量%となるような割合で混合し、へらを用いて攪拌し、モルデナイトゼオライト凝灰石粒とポリ乳酸エマルジョンの混合物を調整した。この混合物をパネル成形用のトレイに入れ、これをオーブンで200℃、1時間加熱して製造した。得られたモルデナイトゼオライト凝灰石粒のポリ乳酸樹脂による結合体からなるパネルは、生分解性樹脂が天然石粒間の間隙の全部を塞がず水が通過しうる連通路が残されている天然石粒の生分解性樹脂による結合体からなるものであり、水が通過しうる連通路が形成されている。
【0051】
道路法面には、図10からも明らかなように、鉄筋コンクリート枠30が固定用杭33で施工対象法面の原面34に固定され、鉄筋コンクリート枠30の枠内に、本発明の結合体からなる板状パネル31が取り付けられている。図10において、32は鉄筋を示している。
【0052】
図11においては、35が鉄筋コンクリート枠とその枠内に取り付けられた本発明の結合体からなる板状パネルを簡略化して表示したものである。斜面に降った雨(雨水40を矢印で示した)は、そのほとんどが、本発明の結合体からなる板状パネルを通過して、地中39にしみこみ、施工前の自然環境に近い地面の水分吸収量となる。したがって、地下水脈38の変動などへの悪影響を少なくすることが可能となる。37は道路の路面、36は排水溝を示している。また、大量の雨が降って法面内の地中39の斜面内の水分が飽和状態を超えても、従来のように本発明の結合体からなる板状パネルの代わりにコンクリートパネルを使用している場合には、ところどころに排水パイプが設けられてそこから排水されるようになっているが、そのような従来の排水パイプでの排水に比べて、本発明の結合体を用いた場合には、排水面積がトータルで大きくなるのでスムーズに排水される。
また、従来のように本発明の結合体からなる板状パネルの代わりにコンクリートパネルを使用している場合には、雨水が通過しないので、法面に降った雨水はほとんどが地中に透過せず、地中にしみこまずに排水溝36より直接、川に排水されるので、地下水の状況に変化を生じやすい。
【0053】
そして、本発明のパネル設置当初は、コンクリート枠30内の土砂の流出を止める役割と初期の除草作業省力化のための防草効果の役割を果たすが、数年後、モルデナイトゼオライト凝灰石粒を結合しているポリ乳酸樹脂が分解してくると同時に防草効果もなくなっくる。その時点では斜面の表面も安定し地固めのできた状態になる。したがって、緑化のためにコンクリート枠内に草木を植えつけることもできるし、必要なら、新たに新しい本発明の結合体からなるパネルをはめこんで、引き続き数年防草効果を付与することもできる。いずれにせよ、残るのは天然石粒のみであり、地球環境の汚染を抑制することができる。尚、特に限定するものではないが、コンクリート枠30の外辺一辺の寸法は、通常500〜1000mm程度であり、コンクリート枠の幅は通常、100〜150mm程度である。従って本発明の結合体からなるパネルの一辺の長さは200〜800mm、厚みは、20〜80mm程度のものが用いられる。尚、コンクリート枠の厚みは特に限定するものではないが、通常、100〜200mm程度のものが用いられる。
【0054】
尚、上記の実施の形態では、道路の法面工事の際に適用される例を示したが、道路の法面だけでなく、一般に、がけ崩れなど斜面の崩れる恐れのあるような法面に適用可能であり、河川の岸の法面工事、崩れる恐れのある崖の法面工事などにも同様に適用可能である。
【0055】
実施の形態例5
次に、図12〜図14を用いて本発明の結合体を用いたその成型品の一例であるがけ崩れの恐れはないが、風雨により自然に崩れるおそれのある斜面(新たに造成した宅地用造成地の区画斜面や公園の小さめの斜面など)の工事当初の保護に用いられる、裏側に滑り止め用固定突起を具備した法面保護用板状パネルについて説明する。
【0056】
図12が法面保護用板状パネルの側面図、図13が法面保護用板状パネルの裏面図、図14が本発明の結合体からなる法面保護用板状パネルが公園の小さめの土手斜面に施工された状態を表す土手斜面道近傍の断面模式図である。
【0057】
まず、本発明の結合体からなる法面保護用板状パネル50は、平面図は図示していないがほぼ正方形の形状である。この法面保護用板状パネル50は、図12、図13からも明らかなように、天然石粒の生分解性樹脂による結合体からなる板状パネル部51とその裏側に設けられた天然石粒の生分解性樹脂による結合体からなる滑り止め用固定突起52を具備した法面保護用板状パネルからなっている。
【0058】
実施の形態例1とほぼ同様に、ポリ乳酸水性エマルジョン(固形分50重量%含有)原液を当該原液の重量の50重量%に相当する量の水で希釈して固形分33.3重量%含有のポリ乳酸エマルジョンを調整し、最大径が3〜8mmのモルデナイトゼオライト凝灰石粒(平均見掛け比重1.16)に、この石粒の重量に対し、前記希釈ポリ乳酸エマルジョンの固形分が15重量%となるような割合で混合し、へらを用いて攪拌し、モルデナイトゼオライト凝灰石粒とポリ乳酸エマルジョンの混合物を調整した。この混合物を法面保護用板状パネル成形用の型に入れ、これをオーブンで200℃、1時間加熱して製造した。得られたモルデナイトゼオライト凝灰石粒のポリ乳酸樹脂による結合体からなる法面保護用板状パネルは、生分解性樹脂が天然石粒間の間隙の全部を塞がず水が通過しうる連通路が形成されている天然石粒の生分解性樹脂による結合体からなるものである。
【0059】
公園の土手斜面54には、図14からも明らかなように、施工対象斜面54に沿って、斜面土中に滑り止め用固定突起52を食い込ませて施工対象斜面54上に本発明の結合体からなる法面保護用板状パネル50が取り付けられている。
【0060】
図14において、斜面に降った雨(雨水53)は、そのほとんどが、本発明の結合体からなる法面保護用板状パネル50を通過して、施工対象斜面54の地中にしみこみ、施工前の自然環境に近い地面の水分吸収量となる。したがって、地下水脈58の変動などへの悪影響を少なくすることも可能となる。
【0061】
もちろん、大量の雨(雨水53)が降って斜面54内の地中の水分が飽和状態を超えても、法面保護用板状パネル50を通過してスムーズに排水される。
【0062】
そして、本発明の法面保護用板状パネルを設置すると、防草効果があり景観も損なわず雨水、地下水の自然な給排水を行い、かつ斜面の土砂の流出や崩れを防止できる。また、自然石そのままの色で法面保護用板状パネル50を成形するが、必要に応じて顔料などで緑色などに着色することも可能である。
【0063】
数年後、モルデナイトゼオライト凝灰石粒を結合しているポリ乳酸樹脂が分解したころには、斜面54は地固めのできた状態になり、形状も安定したものになる。また、ポリ乳酸樹脂が分解することによって酸性成分も分解され、草木の生長も可能になる。ポリ乳酸樹脂が分解した後、残るのは天然石粒のみであり、地球環境の汚染を抑制することができる。尚、特に限定するものではないが、本実施の形態の法面保護用板状パネル50の外辺一辺の寸法は通常、300〜500mm程度であり、厚さは通常、10〜50mm程度が好ましい。
【0064】
【発明の効果】
本発明の結合体は、水が比較的容易に通過でき、各種形状の成型品にも適用可能で、天然素材からなる部分(天然石粒からなる部分)と、それ以外の人工物からなる素材の部分(生分解性樹脂からなる部分)からなり、前記人工物からなる素材の部分が生分解性を有している環境汚染の少ない天然石粒の生分解性樹脂による結合体を提供できる。最大径が1mm〜30mmの天然石粒を生分解性樹脂で結合して作成できるので、任意の形状の成型品とすることができる。
【0065】
本発明の結合体は使用済みになって廃棄された場合において、生分解性樹脂が分解するので、残るのは、天然石粒であり、従って、地球環境を汚染することがない。
【0066】
天然石粒がモルデナイトゼオライト凝灰石粒の場合には、見掛け比重が平均1.16で天然石としては極めて軽く、アンモニアの吸着性能にも優れており消臭効果がありトイレの壁、ドアーなどにも有用である。また、河川の水の浄化機能も有する結合体とすることができる。また、モルデナイトゼオライト凝灰石粒は、微多孔性であるので、毛細管現象により、水を保持させる用途にも好適に用いられる。例えば、モルデナイトゼオライト凝灰石粒を用いた本発明の結合体を植木鉢の形に成形して植木鉢として使用する場合に、植木鉢の下の受け皿に水を満たしておくと毛細管現象により適度の水分補給も行うことができる。
【0067】
また、生分解性樹脂として、ポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体を用いる場合には、弱酸性でまた抗菌性を有しており、トイレなどの部材に好適に使用できる。また、法面工事のパネルなどに用いる場合には、透水性がありながら、防草効果を有し、分解後は、草木の生長も可能になり地球環境を破壊しない。
【0068】
特に、モルデナイトゼオライト凝灰石粒とポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体との組み合わせの場合は、アンモニア臭の消臭機能と抗菌性が発揮され好ましい。
【0069】
以上のような優れた特性を有する本発明の結合体は、道路の法面工事の際の格子状の鉄筋コンクリート枠の枠内に取り付けられる板状パネルなどに使用すると、雨水の通過性がよいので、給水・排水性能がよく、土砂の崩落を抑え、同様に河川の岸などの法面工事の際などに適用でき、結合材の役割を果たしている生分解性樹脂は、工事した法面の土砂が固まったころ分解し、天然石粒のみが残るので、環境を汚染せず、その後、草が生えたり、植林も可能となって、美感も良好に保つことができる。雨水の地面へのしみこみも妨げず、従って地下水などの自然の水の循環への悪影響も少なくすることができる。また、生分解性樹脂として、ポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体を用いた場合には、防草効果が発揮され、一方、これらの樹脂が分解後は、草木の生長も可能になり地球環境を破壊しない。
【0070】
また、がけ崩れの恐れはないが、風雨により自然に崩れるおそれのある斜面(新たに造成した宅地用造成地の区画斜面や公園の小さめの斜面など)の工事当初の保護に用いられる、裏側に滑り止め用固定突起を具備した法面保護用板状パネルとして用いた場合にも、雨水の地面、斜面への自然な給排水が可能であり、従って地下水などの自然の水の循環への悪影響も少なくすることができる。かつ斜面の土砂の流出や崩れを防止できる。また、生分解性樹脂として、ポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体を用いた場合には、防草効果が発揮され、一方、これらの樹脂が分解後は、草木の生長も可能になり地球環境を破壊しない。
【0071】
植木鉢に適用した場合には、結合体は水が通過しうる連通路を有しているので、植木鉢底面に開いている排水用の穴を設ける必要がなく、土を入れた場合に排水用の穴からこぼれる恐れがない。生分解性樹脂として、ポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体を用いた場合には、細菌や不要なコケ類、ヤスデ、ダンゴムシなどの不快虫の繁殖を抑える効果も発揮され好ましい。また天然石粒として、モルデナイトゼオライト凝灰石粒(平均比重1.16)用いた場合には、大きな形状の植木鉢とした場合にも、通常の陶器などの素材の植木鉢に比べて軽い、また、モルデナイトゼオライト凝灰石粒は、微多孔性であるので、毛細管現象により水を保持でき、従って、植木鉢の下の受け皿に水を満たしておくと毛細管現象により適度の水分補給も行うことができる。
【0072】
また、水生植物育成用の苗床容器に適用した場合には、苗床容器本体には水が通過しうる連通路が形成されているので、苗床容器本体内の水が長時間よどむことによる水生植物の苗への悪影響も緩和できる。しかも、苗床容器をこのまま放置しても、苗床容器は、その構成成分である生分解性樹脂が生分解した後には、天然石粒がばらばらになって水底に残るのみであり、何等、河川、湖、池、沼などを汚染しないばかりでなく、天然石粒としてモルデナイトゼオライト凝灰石粒を用いた場合には、河川、湖、池、沼などの水を浄化する作用があり、極めて好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の結合体の一実施の形態の模式的概念図。
【図2】本発明の結合体を用いた植木鉢の斜視図。
【図3】本発明の結合体からなる構成部分を有する成型品の一例の水生植物育成用の苗床容器の斜視図。
【図4】図3の水生植物育成用の苗床容器の平面図。
【図5】図3のA−A’方向断面の端面図。
【図6】図3の水生植物育成用の苗床容器の底面図。
【図7】図3の水生植物育成用の苗床容器の使用状態を説明するための断面図。
【図8】鉄筋コンクリート枠とその枠内に取り付けられている本発明の結合体からなる板状パネルが道路法面に施工された状態を表す平面図。
【図9】鉄筋コンクリート枠とその枠内に取り付けられている本発明の結合体からなる板状パネル1単位を示した平面図。
【図10】図9のA−A’断面図。
【図11】鉄筋コンクリート枠とその中央部に取り付けられている本発明の結合体からなる板状パネルが道路法面に施工された状態を表す道路並びにその近傍の断面模式図。
【図12】本発明の結合体を用いた法面保護用板状パネルの側面図。
【図13】図12の法面保護用板状パネルの裏面図。
【図14】図12の法面保護用板状パネルが公園の小さめの土手斜面に施工された状態を表す土手斜面道近傍の断面模式図。
【符号の説明】
1 天然石粒
2 生分解性樹脂
3 水が通過しうる連通路
10 容器本体部分
11 脚部
12 筒状体部分
13 底部
14 苗床15を挿入するための穴
15 苗床
16 水生植物の苗
17 水生植物の根
18 水面
19 水底
20 土
30 鉄筋コンクリート枠
31 結合体からなる板状パネル
32 鉄筋
33 固定用杭
34 施工対象法面の原面
35 鉄筋コンクリート枠とその枠内に取り付けられた本発明の結合体からなる板状パネルを簡略化して表示したもの
36 排水溝
37 道路の路面
38 地下水脈
39 地中
40 雨水
50 法面保護用板状パネル
51 板状パネル部
52 滑り止め用固定突起
53 雨水
54 施工対象斜面
58 地下水脈
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然石粒の生分解性樹脂による結合体及びその成型品ならびにこれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、砂利や砕石などの比較的小さめの大きさの天然石粒を結合したものは、コンクリートなどが典型的な材料であり、各種の用途、成型品として用いられており、もちろん、道路や崖、河川の岸の法面などや、公園、住宅造成地の法面などのパネルなどにも用いられている。
【0003】
また近年、天然石粒状物をアクリル系樹脂などで結合したシート状の建築物用の化粧板も用いられている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−309949号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、コンクリートなどは、通常、砂利や砕石などの天然石粒同士間がバインダー成分であるセメントにより結合された結合体からなっているが、一般的には天然石粒同士間が隙間なくセメントで充填されており、天然石粒同士間に水が簡単に通過しうる連通路などは残されていない。また、コンクリートは、生分解性がなく、コンクリートからなる成型品は、廃棄の際に地球環境を汚染することになる。
【0006】
また前述したシート状の建築物用の化粧板も天然石粒状物同士間がバインダー成分である非生分解性樹脂であるアクリル系樹脂などで結合されているが、天然石粒状物同士間が隙間なく非生分解性樹脂であるアクリル系樹脂などで充填されており、天然石粒状物同士間に水が簡単に通過しうる連通路などは残されていない。また、アクリル系樹脂などは、生分解性がなく、廃棄の際に地球環境を汚染すると言う問題もある。
【0007】
上述の様な、通常は水が簡単には通過できない素材ではなく、雨や水が通過しうる方が好ましい素材からなる成型品の用途もいろいろあり、また、廃棄の際に環境を汚さず、人工物からなる素材の部分が生分解性を有する材料があれば、各種の用途が期待される。
【0008】
本発明は水が比較的容易に通過でき、各種形状の成型品にも適用可能で、天然素材からなる部分とそれ以外の人工物からなる素材の部分とからなり、人工物からなる素材の部分が生分解性を有する環境汚染の少ない結合体からなる材料及びそれを少なくとも用いた成型品、並びにこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、以下に示すような、天然石粒の生分解性樹脂による結合体及びその成型品ならびにこれらの製造方法を提供するものである。
【0010】
(1)本発明の天然石粒の生分解性樹脂による結合体は、最大径が1mm〜30mmの天然石粒同士間が生分解性樹脂により結合された結合体からなり、前記生分解性樹脂が前記天然石粒間の間隙の全部を塞がず水が通過しうる連通路が形成されていることを特徴とする。
【0011】
(2)また、本発明の成型品の発明は、上記(1)の天然石粒同士間が生分解性樹脂により結合された結合体(請求項1〜7のいずれかの結合体に相当)からなる成型品である。
【0012】
(3)また、本発明の天然石粒の生分解性樹脂による結合体の製造方法は、最大径が1mm〜30mmの天然石粒と前記天然石粒の重量に対し固形分の重量で2〜30重量%の生分解性樹脂のエマルジョンとを混合し、そのまま又は所望の成形型に入れ、加熱して生分解性樹脂のエマルジョンを固化させて天然石粒同士間を結合することにより、前記生分解性樹脂が前記天然石粒間の間隙の全部を塞がずに水が通過しうる連通路が形成されている天然石粒の生分解性樹脂による結合体の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の天然石粒の生分解性樹脂による結合体は、最大径が1mm〜30mmの天然石粒同士間が生分解性樹脂により結合された結合体からなり、前記生分解性樹脂が前記天然石粒間の間隙の全部を塞がず水が通過しうる連通路が形成されているものからなる。
【0014】
すなわち、天然石粒同士間を生分解性樹脂で接着する際に、用いる生分解性樹脂の量を、前記天然石粒間の間隙の全部を塞いでしまうほど多量に使用せずに、水を流した場合に、水が通過しうる連通路が残される程度で且つ結合体としての形状を保持するに必要な量の生分解性樹脂で接着されている。
【0015】
生分解性樹脂は、種類によっても異なるが1〜10年で分解するので、本発明の結合体が使用済みになってこれを廃棄した場合においても、生分解性樹脂が分解後、残るのは、天然石粒であり、従って、地球環境を汚染することがない。
【0016】
本発明の結合体は、コンクリートなどのように、水の通過性が悪いものではないので、例えば、道路の法面工事の際の斜め格子状の鉄筋コンクリート枠の枠内に取り付けられる板状パネルなどに使用すると、雨水の通過性がよいので、給水・排水性能がよく、土砂の崩落を抑え、同様に河川の岸などの法面工事の際などにも適用でき、結合材の役割を果たしている生分解性樹脂は、工事した法面の土砂が固まったころ分解し、天然石粒のみが残るので、環境を汚染せず、その後、草が生えたり、植林も可能となって、美感も良好に保つことができる。雨水の地面へのしみこみも妨げず、地下水などの自然の水の循環も保つことができる。
【0017】
天然石粒としては、天然石の小粒、すなわち、最大径が1〜30mmの小粒であれば、その素材、すなわち天然石の種類は特に限定されず、各種の火成岩、堆積岩、変成岩などが使用可能である。そのうちでも、モルデナイトゼオライト凝灰石粒は特に好ましい。モルデナイトゼオライト凝灰岩は天然のゼオライト質凝灰岩の一種であり、例えば、福井県福井市川西地域などで産出される。モルデナイトゼオライト凝灰岩は、微細多孔質であり、見掛け比重が平均1.16で天然石としては極めて軽く、チッソ、リン、アンモニアの吸着性能にも優れており、また、河川などの水の浄化機能も有する。天然石粒がモルデナイトゼオライト凝灰石粒の場合には、容量5Lのテドラーバック中100ppm濃度のアンモニアをモルデナイトゼオライト凝灰石粒5gで約15分でアンモニア臭を消臭する性能を有しているので、例えばトイレの壁やドアーなどの素材にシート状に成形した本発明の結合体を用いると、消臭効果があり好適であると共に、軽いので、施工も容易になる。また、モルデナイトゼオライト凝灰石粒は、微多孔性であるので、毛細管現象により、水を保持させる用途にも好適に用いられる。例えば、モルデナイトゼオライト凝灰石粒を用いた本発明の結合体を植木鉢の形に成形して植木鉢として使用する場合に、植木鉢の下の受け皿に水を満たしておくと毛細管現象により適度の水分補給も行うことができる。
【0018】
生分解性樹脂の種類も本発明の目的が達成できるものであれば特に限定されず、ポリ乳酸、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリカプロラクトン、カプロラクトンと他のヒドロキシカルボン酸との共重合体などが挙げられるが、このうちでも特にポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体が好ましい。ポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体は、弱酸性でまた抗菌性を有しており、トイレなどの部材に使用した場合好適であり、モルデナイトゼオライト凝灰石粒とポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体との組み合わせの場合は、アンモニア臭の消臭機能と抗菌性が発揮され好ましい。
【0019】
また、前述した道路の法面、河川の岸の法面などの工事の際の鉄筋コンクリート枠の枠内に取り付けられるパネルなどに使用するとポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体などの作用により、ポリ乳酸等が生分解せずに残存している間は、防草効果も発揮され好ましい。
【0020】
一方、植木鉢に適用した場合には、植木鉢の中に入れる土などにはポリ乳酸などの弱酸性の影響はほとんど及ばず抗菌性も有していることから、細菌や不要なコケ類、ヤスデ、ダンゴムシなどの不快虫の繁殖を抑える効果も発揮され好ましい。
【0021】
本発明の結合体に用いる天然石粒の大きさは、最大径が1〜30mm、好ましくは、3〜8mmの小粒のものが用いられる。最大径が1mmよりも小さいと、結合体を天然石粒間の間隙の全部を塞がずに水が通過しうる連通路が残されている状態にするのに手間がかかり、最大径が30mmよりも大きくなると、成型品とする場合に小さい成型品では成形しにくい。3〜8mmの場合には、結合体を天然石粒間の間隙の全部を塞がずに水が通過しうる連通路が残されている状態にするのも容易であり、成型品とする場合にも成形し易く好ましい。天然石粒の大きさが最大径が1〜30mmとの意味は、最大径が1mmよりも小さいものや、最大径が30mmより大きいものが少しでも入っていてはダメと言う意味ではなく、本発明の目的が達成しうる範囲で混在することは差し支えない。最大径が1〜30mm、好ましくは3〜8mmのものが、使用する天然石粒の全重量に対して、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より一層好ましくは80重量%以上、最も好ましくは95重量%以上であることが好ましい。
【0022】
生分解性樹脂の使用割合は、天然石粒の比重や大きさによって異なり、比重の大きい天然石粒を用いる場合には、比重の小さい天然石粒を用いる場合に比べて、生分解性樹脂を同じ体積量用いても、天然石粒の重量に対する生分解性樹脂の重量割合は小さくなる。天然石粒の大きさが小さいほど、天然石粒の比表面積が一般には大きくなるので、生分解性樹脂の使用割合は多少多くなる傾向にある。
【0023】
従って、生分解性樹脂の使用割合は、天然石粒の重量に対し、通常2〜30重量%が好ましく、より好ましくは、5〜20重量%である。特に、天然石粒が、モルデナイトゼオライト凝灰石粒の場合には、見掛け比重が小さいので、生分解性樹脂の使用割合は、天然石粒の重量に対し、5〜30重量%が好ましく、より好ましくは10〜20重量%である。
【0024】
生分解性樹脂の使用割合をこの範囲とすることにより、結合体として天然石粒が、ぽろぽろ剥がれ落ちることなく、結合体としての形状を保持でき、必要な強度を保持することができ好ましい。また、この範囲の量とすることにより、前記生分解性樹脂が前記天然石粒間の間隙の全部を塞がずに水が通過しうる連通路が残され、従って水が通過しうる連通路が形成されている結合体とするに好都合な量である。あまりに生分解性樹脂の使用割合が多すぎると、前記生分解性樹脂が前記天然石粒間の間隙のほとんどを塞いでしまい、水が通過しうる連通路が残されている状態にすることが困難となり、水が通過しうる連通路が形成されている結合体を得ることができにくくなる。また、生分解性樹脂の使用割合が多くなると、コストも高くなる傾向になるので、不必要に、多量に使用することはコストの上昇を招くので、目的に応じて、必要な使用割合を選定することが好ましい。
【0025】
本発明の天然石粒の生分解性樹脂による結合体の製造方法としては、前記所定の範囲の大きさの天然石粒と前記天然石粒の重量に対し固形分の重量で2〜30重量%の生分解性樹脂のエマルジョンとを混合し(攪拌して混合することが好ましい。)、そのまま又は所望の成形型に入れ、加熱して生分解性樹脂のエマルジョンを固化させて天然石粒同士間を結合することにより本発明の天然石粒の生分解性樹脂による結合体を得ることができる。生分解性樹脂のエマルジョンは、水性のエマルジョンが好ましく、濃度が高すぎる場合には、水で適宜希釈して使用すればよい。
【0026】
生分解性樹脂のエマルジョンの使用割合は、生分解性樹脂の固形分の重量にして、前述した通り、天然石粒の重量に対し、通常2〜30重量%が好ましく、より好ましくは、5〜20重量%である。特に、天然石粒が、モルデナイトゼオライト凝灰石粒の場合には、見掛け比重が小さいので、生分解性樹脂の使用割合は、天然石粒の重量に対し、5〜30重量%が好ましく、より好ましくは10〜20重量%である。
【0027】
生分解性樹脂のエマルジョンの使用割合をこの範囲とすることにより、得られた結合体が、その構成成分である天然石粒が、結合体からぽろぽろ剥がれ落ちることなく、結合体としての形状を保持でき、必要な強度を保持することができ好ましい。また、この範囲の量とすることにより、前記生分解性樹脂が前記天然石粒間の間隙の全部を塞がずに水が通過しうる連通路が残され、その結果水が通過しうる連通路が形成されている結合体とするに好都合な量である。
【0028】
天然石粒と生分解性樹脂のエマルジョンとを混合した後は、特に成形する必要がない場合にはそのままの状態で加熱し生分解性樹脂のエマルジョンを固化させて天然石粒同士間を結合することにより本発明の結合体を得ることができる。通常は、目的に応じて所望の形に成形して用いるので、成型品にする場合には、天然石粒と生分解性樹脂のエマルジョンとを混合した後、所望の成形型に入れ、加熱して生分解性樹脂のエマルジョンを固化させて天然石粒同士間を結合することにより、本発明の結合体からなる成型品をえることができる。
【0029】
加熱処理は、生分解性樹脂の種類によって異なるが、通常、150〜220℃で30分〜90分程度であり、例えば、オーブンなどの中で加熱し、生分解性樹脂のエマルジョンを固化させて天然石粒同士間を結合すればよい。成形型にヒーターなどの加熱手段が設けられている場合には、それらを使用すればよい。
【0030】
本発明の天然石粒同士間が生分解性樹脂により結合された結合体からなる成型品としては、目的に応じて、成形可能な任意の形状の成型品とすることができる。例えば、立方体状、パネル状、筒状、半円筒状、樋状、棒状、円錐状、角錐状、球状、枠状の形状のいずれか1つの形状、あるいは、これらの形状のものの1種又は2種以上を2つ以上組み合わせた部分を少なくとも有する形状の成型品など、成形しうる限りその形状は任意である。
【0031】
少数の例としては、シート状(板状)のトイレ用の壁材又はドアー用材料、道路の法面や河川の岸の法面工事の鉄筋コンクリート枠の枠内に取り付けられる平板状パネル、あるいは、公園、宅地造成地などの法面工事に用いられるパネル、そのほか、植木鉢、河川水浄化用ブロック、葦などの水生植物育成用の苗床容器(本発明において水生植物とは、水辺に生えて、水底の土中に根を張る植物を言う。)などが挙げられる。
【0032】
以下、本発明の理解を容易にするために、具体的、実施の形態例を挙げて、更に本発明を説明する。
【0033】
実施の形態例1
ポリ乳酸水性エマルジョン(固形分50重量%含有)原液を当該原液の重量の50重量%に相当する量の水で希釈して固形分33.3重量%含有のポリ乳酸エマルジョンを調整し、最大径が3〜8mmのモルデナイトゼオライト凝灰石粒(平均見掛け比重1.16)に、この石粒の重量に対し、前記希釈ポリ乳酸エマルジョンの固形分が15重量%となるような割合で混合し、へらを用いて攪拌し、モルデナイトゼオライト凝灰石粒とポリ乳酸エマルジョンの混合物を調整した。この混合物を縦20cm、横30cm、深さ3cmのパネル成形用のトレイに入れ、これをオーブンで200℃、1時間加熱した。得られたモルデナイトゼオライト凝灰石粒のポリ乳酸樹脂による結合体からなる縦20cm、横30cm、厚さ3cmのパネルが得られた。この結合体からなる試作パネルが、生分解性樹脂が天然石粒間の間隙の全部を塞がず水が通過しうる連通路が残されている天然石粒の生分解性樹脂による結合体に相当すること、すなわち、水が通過しうる連通路が形成されている結合体であることをテストするため、次の実験を行った。
【0034】
得られた試作パネルをほぼ水平に保持し、試作パネル上面の垂直方向5cm上方から、口径10mmの水道蛇口より試作パネル上面に向かって、毎分9リットルの水を流した。試作パネル上面においての水の飛散は、直径約12cmにとどまり、水は溢れることなく試作パネル内を通過しパネル下面より流れ落ちた。これにより、本実施の形態例の結合体からなる試作パネルが、水が通過しうる連通路が形成されている結合体であること、しかも、水の流通がかなり良好な結合体であることが分かった。従って、このような結合体を、例えば、道路の法面工事の際のパネルやブロックなどに適用すると、雨水の通過性がよいので、給水・排水性能がよく、土砂の崩落を抑え、結合材の役割を果たしている生分解性樹脂は、工事した法面の土砂が固まったころ分解し、天然石粒のみが残るので、環境を汚染せず、美感も良好に保つことができる。雨水の地面へのしみこみも妨げず、自然の水の循環、すなわち地下水流の変化などへの悪影響を少なくすることができる。また法面近傍の地面内部にしみ込んだ雨水が法面から外部に出ようとする場合でも排水性能がよく、水を逃がすこともできる結合体とし得ることが理解される。
【0035】
図1に本発明の結合体の一実施の形態の模式的概念図を示した。1が天然石粒、この実施の形態例ではモルデナイトゼオライト凝灰石粒であり、2が生分解性樹脂、この実施の形態例ではポリ乳酸であり、本発明の結合体においては、生分解性樹脂2は前記天然石粒1同士間の間隙の全部を塞がず水が通過しうる連通路3が形成されている。
【0036】
実施の形態例2
本発明の結合体からなる成型品の一例である植木鉢について図2を用いて説明する。
【0037】
ポリ乳酸水性エマルジョン(固形分50重量%含有)原液を当該原液の重量の50重量%に相当する量の水で希釈して固形分33.3重量%含有のポリ乳酸エマルジョンを調整し、最大径が3〜8mmのモルデナイトゼオライト凝灰石粒(平均見掛け比重1.16)に、この石粒の重量に対し、前記希釈ポリ乳酸エマルジョンの固形分が15重量%となるような割合で混合し、へらを用いて攪拌し、モルデナイトゼオライト凝灰石粒とポリ乳酸エマルジョンの混合物を調整した。この混合物を、通常の形の植木鉢(但し、通常の植木鉢底面に設けられている排水用の穴は存在しない)を成形しうる成形型に入れ、これをオーブンで200℃、1時間加熱した。得られたモルデナイトゼオライト凝灰石粒のポリ乳酸樹脂による結合体からなる図2に示したような形の植木鉢が得られた。図2は、得られた植木鉢の斜視図であるが、結合体を詳細に描くのは一部のみとし、他の大部分は、外形のみで描いている。尚、この図では見えないが、この植木鉢は上述したように通常の植木鉢底面に開いている排水用の穴は存在しない構造の植木鉢とした。排水用の穴が設けられていなくても、本発明の結合体は天然石粒間に、水が通過しうる連通路が形成されているので、排水性が良好だからである。従って、土をこの植木鉢に入れる際に、通常の植木鉢のように、植木鉢底面に設けられている排水用の穴を、土がその穴からこぼれ落ちないように、しかし排水性は保持する様に適宜の大きさの石などをあてがうなどしてから、土を入れると言うようなことをしなくてもよい。もちろん、必要に応じて、通常の植木鉢底面に設けられてている排水用の穴を開けた植木鉢としてもよい。
【0038】
この植木鉢は、モルデナイトゼオライト凝灰石粒のポリ乳酸樹脂による結合体からなるので、植木鉢の中に入れる土などにはポリ乳酸による弱酸性の影響はほとんど及ばず抗菌性も有していることから、細菌や不要なコケ類、ヤスデ、ダンゴムシなどの不快虫の繁殖を抑える効果も発揮され好ましい。モルデナイトゼオライト凝灰石粒(平均比重1.16)用いているので、大きな形状の植木鉢とした場合にも、通常の陶器などの素材の植木鉢に比べて軽い、また、モルデナイトゼオライト凝灰石粒は、微多孔性であるので、毛細管現象により水を保持でき、従って、植木鉢の下の受け皿に水を満たしておくと毛細管現象により適度の水分補給も行うことができる。
【0039】
また、生分解性樹脂で天然石であるモルデナイトゼオライト凝灰石粒を結合しているので、植木鉢が破損して、そのかけらを捨てた場合でも、地上に放置しておけば生分解性樹脂が分解し、結合が解かれた天然石粒が残るのみとなり、地面を人工的な非自然物で汚染することがなく、地球環境を汚染しない。
【0040】
また、必要なら、木などの植物の苗を植え付けた本実施形態例の植木鉢をそのまま、地面に埋め込む使い方をした場合には、やがて、生分解性樹脂が分解し、結合が解かれた天然石粒が残るのみとなり、木が更に生長する場合に、元の植木鉢の範囲より根が広がって成長できる。
【0041】
実施の形態例3
次に、図3〜図7を用いて本発明の結合体から構成される部分を有する成型品の一例である水生植物育成用の苗床容器について説明する。
【0042】
図3が水生植物育成用の苗床容器の斜視図、図4が平面図、図5が図3のA−A’方向断面の端面図、図6が底面図、図7が使用状態を説明するための断面図である。
【0043】
本実施の形態例の水生植物育成用の苗床容器は、本発明の天然石粒の生分解性樹脂による結合体からなる容器本体部分10と生分解性樹脂からなるパイプ状の複数本の脚部11とからなっている。容器本体部分10は下方部に穴あきの底部を有する筒状体からなる。すなわち容器本体部分10は筒状体部分12と底部13とからなり、底部13のほぼ中央部には葦などの水生植物の苗16を保持するための苗床15(図5参照)を挿入するための穴14が設けられている。苗床15は、生分解性繊維からなる綿状物などを使用する。筒状体の下方部の縁より更に生分解性樹脂からなるパイプ状の複数本の脚部11が設けられている。容器本体部分10は、上記実施の形態例2と同様に、モルデナイトゼオライト凝灰石粒のポリ乳酸樹脂による結合体からほぼ同様にして形成したものである。
【0044】
すなわち、ポリ乳酸水性エマルジョン(固形分50重量%含有)原液を当該原液の重量の50重量%に相当する量の水で希釈して固形分33.3重量%含有のポリ乳酸エマルジョンを調整し、最大径が3〜8mmのモルデナイトゼオライト凝灰石粒(平均見掛け比重1.16)に、この石粒の重量に対し、前記希釈ポリ乳酸エマルジョンの固形分が15重量%となるような割合で混合し、へらを用いて攪拌し、モルデナイトゼオライト凝灰石粒とポリ乳酸エマルジョンの混合物を調整した。この混合物を、容器本体部分10を成形しうる成形型に入れ、あらかじめ成形された生分解性樹脂(ポリ乳酸など)からなるパイプ状の複数本の脚部11の先端部を筒状体の下方部の縁から容器本体部分10の内部に差し込んだ後、これをオーブンで200℃、1時間加熱して、モルデナイトゼオライト凝灰石粒とポリ乳酸樹脂のエマルジョンの混合物からなる容器本体部分10を結合体に固化させる。脚部11も同時に容器本体部分10に固着する。
【0045】
かくして得られた、本実施形態の水生植物育成用の苗床容器は、図7に示したように、葦などの水生植物の苗16を、ポリ乳酸繊維その他の生分解性繊維の綿状物からなる苗床15で保持して、底部13の穴14に固定し、池、湖、川の水底19の土20に脚部11を差し込むことによって、容器本体部分10が水流や波などで倒れたり移動したりするのを防止する。図7中、18は水面、17は水生植物の根を示している。特に限定するものではないが、図示した態様の苗床容器としては、筒状体部分12の直径は10〜20cm、厚さ1〜3cm、高さ10〜50cm、底部13の穴14の直径は2〜3cm程度、脚部の長さ5〜30cm、脚部の太さ直径0.5〜2cmが程度のものが好ましい。
【0046】
かくして、本実施形態の水生植物育成用の苗床容器を用いて、水生植物の苗を植えつけることにより、苗床容器なしに直接植えつけた場合に生じる水流や波などで水生植物の苗が倒れたり、水底の土から根が抜け出てしまったりする問題を解決することができ水生植物の苗の定着性を向上させることができる。また、苗床容器を構成する容器本体部分10は水が通過しうる連通路が形成されている本発明の結合体からなるので、容器本体部分10内の水は、容器本体外の水と流通性があり、容器本体部分10内の水が新鮮な容器本体外の水と入れ替わり得るので、容器本体部分10内の水が長期間よどむことによる水生植物の苗への悪影響も緩和できる。しかも、苗床容器をこのまま放置しても、苗床容器は、その構成成分である生分解性樹脂が生分解した後には、天然石粒がばらばらになって水底に残るのみであり、何等、河川、湖、池、沼などを汚染しないばかりでなく、モルデナイトゼオライト凝灰石粒は、河川、湖、池、沼などの水を浄化する作用があり、極めて好ましい。
【0047】
以上、図示した本実施形態の水生植物育成用の苗床容器は、筒状体部分12が円筒状であるものを示したが、円筒状に限定されるものではなく、断面形状が各種多角形筒状などであってもよいし、筒状体の径は、上から下まで同じである必要はなく、水生植物育成用の苗床容器としての目的が達成される限り変化してもよい。苗床15を挿入するための穴14も図示したものは底部13のほぼ中央部に1個設けられた態様のものを示したが、水生植物育成用の苗床容器としての目的が達成される限り、底部13の面積を大きくして、穴14を2個以上設ける態様としてもよい。脚部11は生分解性樹脂からなるパイプ状のものを用いたが、棒状でもよいし、例えば先細りのテーパー状の棒状物などであってもよい。要するに、水底の土に差し込むことによって、容器本体部分10が水流や波などで倒れたり移動したりするのを防止できる機能が発揮できればよい。また、脚部11は、この実施の形態例では2本のものを示したが、それより多くて設けても差し支えない。
【0048】
実施の形態例4
次に、図8〜図11を用いて本発明の結合体を用いたその成型品の一例である道路法面工事の際に用いられる鉄筋コンクリート枠の中央部(枠内)に取り付けられる板状パネルについて説明する。
【0049】
図8が、鉄筋コンクリート枠とその枠内に取り付けられている本発明の結合体からなる板状パネルが道路法面に施工された状態を表す平面図である。図9が鉄筋コンクリート枠とその枠内に取り付けられている本発明の結合体からなる板状パネル1単位を示した平面図、図10が図9のA−A’断面図、図11が鉄筋コンクリート枠とその中央部に取り付けられている本発明の結合体からなる板状パネルが道路法面に施工された状態を表す道路並びにその近傍の断面模式図である。
【0050】
まず、本発明の結合体からなる板状パネル31自体は、ほぼ正方形の板状パネルの形状を有している。この板状パネル31は、実施の形態例1とほぼ同様に、ポリ乳酸水性エマルジョン(固形分50重量%含有)原液を当該原液の重量の50重量%に相当する量の水で希釈して固形分33.3重量%含有のポリ乳酸エマルジョンを調整し、最大径が3〜8mmのモルデナイトゼオライト凝灰石粒(平均見掛け比重1.16)に、この石粒の重量に対し、前記希釈ポリ乳酸エマルジョンの固形分が15重量%となるような割合で混合し、へらを用いて攪拌し、モルデナイトゼオライト凝灰石粒とポリ乳酸エマルジョンの混合物を調整した。この混合物をパネル成形用のトレイに入れ、これをオーブンで200℃、1時間加熱して製造した。得られたモルデナイトゼオライト凝灰石粒のポリ乳酸樹脂による結合体からなるパネルは、生分解性樹脂が天然石粒間の間隙の全部を塞がず水が通過しうる連通路が残されている天然石粒の生分解性樹脂による結合体からなるものであり、水が通過しうる連通路が形成されている。
【0051】
道路法面には、図10からも明らかなように、鉄筋コンクリート枠30が固定用杭33で施工対象法面の原面34に固定され、鉄筋コンクリート枠30の枠内に、本発明の結合体からなる板状パネル31が取り付けられている。図10において、32は鉄筋を示している。
【0052】
図11においては、35が鉄筋コンクリート枠とその枠内に取り付けられた本発明の結合体からなる板状パネルを簡略化して表示したものである。斜面に降った雨(雨水40を矢印で示した)は、そのほとんどが、本発明の結合体からなる板状パネルを通過して、地中39にしみこみ、施工前の自然環境に近い地面の水分吸収量となる。したがって、地下水脈38の変動などへの悪影響を少なくすることが可能となる。37は道路の路面、36は排水溝を示している。また、大量の雨が降って法面内の地中39の斜面内の水分が飽和状態を超えても、従来のように本発明の結合体からなる板状パネルの代わりにコンクリートパネルを使用している場合には、ところどころに排水パイプが設けられてそこから排水されるようになっているが、そのような従来の排水パイプでの排水に比べて、本発明の結合体を用いた場合には、排水面積がトータルで大きくなるのでスムーズに排水される。
また、従来のように本発明の結合体からなる板状パネルの代わりにコンクリートパネルを使用している場合には、雨水が通過しないので、法面に降った雨水はほとんどが地中に透過せず、地中にしみこまずに排水溝36より直接、川に排水されるので、地下水の状況に変化を生じやすい。
【0053】
そして、本発明のパネル設置当初は、コンクリート枠30内の土砂の流出を止める役割と初期の除草作業省力化のための防草効果の役割を果たすが、数年後、モルデナイトゼオライト凝灰石粒を結合しているポリ乳酸樹脂が分解してくると同時に防草効果もなくなっくる。その時点では斜面の表面も安定し地固めのできた状態になる。したがって、緑化のためにコンクリート枠内に草木を植えつけることもできるし、必要なら、新たに新しい本発明の結合体からなるパネルをはめこんで、引き続き数年防草効果を付与することもできる。いずれにせよ、残るのは天然石粒のみであり、地球環境の汚染を抑制することができる。尚、特に限定するものではないが、コンクリート枠30の外辺一辺の寸法は、通常500〜1000mm程度であり、コンクリート枠の幅は通常、100〜150mm程度である。従って本発明の結合体からなるパネルの一辺の長さは200〜800mm、厚みは、20〜80mm程度のものが用いられる。尚、コンクリート枠の厚みは特に限定するものではないが、通常、100〜200mm程度のものが用いられる。
【0054】
尚、上記の実施の形態では、道路の法面工事の際に適用される例を示したが、道路の法面だけでなく、一般に、がけ崩れなど斜面の崩れる恐れのあるような法面に適用可能であり、河川の岸の法面工事、崩れる恐れのある崖の法面工事などにも同様に適用可能である。
【0055】
実施の形態例5
次に、図12〜図14を用いて本発明の結合体を用いたその成型品の一例であるがけ崩れの恐れはないが、風雨により自然に崩れるおそれのある斜面(新たに造成した宅地用造成地の区画斜面や公園の小さめの斜面など)の工事当初の保護に用いられる、裏側に滑り止め用固定突起を具備した法面保護用板状パネルについて説明する。
【0056】
図12が法面保護用板状パネルの側面図、図13が法面保護用板状パネルの裏面図、図14が本発明の結合体からなる法面保護用板状パネルが公園の小さめの土手斜面に施工された状態を表す土手斜面道近傍の断面模式図である。
【0057】
まず、本発明の結合体からなる法面保護用板状パネル50は、平面図は図示していないがほぼ正方形の形状である。この法面保護用板状パネル50は、図12、図13からも明らかなように、天然石粒の生分解性樹脂による結合体からなる板状パネル部51とその裏側に設けられた天然石粒の生分解性樹脂による結合体からなる滑り止め用固定突起52を具備した法面保護用板状パネルからなっている。
【0058】
実施の形態例1とほぼ同様に、ポリ乳酸水性エマルジョン(固形分50重量%含有)原液を当該原液の重量の50重量%に相当する量の水で希釈して固形分33.3重量%含有のポリ乳酸エマルジョンを調整し、最大径が3〜8mmのモルデナイトゼオライト凝灰石粒(平均見掛け比重1.16)に、この石粒の重量に対し、前記希釈ポリ乳酸エマルジョンの固形分が15重量%となるような割合で混合し、へらを用いて攪拌し、モルデナイトゼオライト凝灰石粒とポリ乳酸エマルジョンの混合物を調整した。この混合物を法面保護用板状パネル成形用の型に入れ、これをオーブンで200℃、1時間加熱して製造した。得られたモルデナイトゼオライト凝灰石粒のポリ乳酸樹脂による結合体からなる法面保護用板状パネルは、生分解性樹脂が天然石粒間の間隙の全部を塞がず水が通過しうる連通路が形成されている天然石粒の生分解性樹脂による結合体からなるものである。
【0059】
公園の土手斜面54には、図14からも明らかなように、施工対象斜面54に沿って、斜面土中に滑り止め用固定突起52を食い込ませて施工対象斜面54上に本発明の結合体からなる法面保護用板状パネル50が取り付けられている。
【0060】
図14において、斜面に降った雨(雨水53)は、そのほとんどが、本発明の結合体からなる法面保護用板状パネル50を通過して、施工対象斜面54の地中にしみこみ、施工前の自然環境に近い地面の水分吸収量となる。したがって、地下水脈58の変動などへの悪影響を少なくすることも可能となる。
【0061】
もちろん、大量の雨(雨水53)が降って斜面54内の地中の水分が飽和状態を超えても、法面保護用板状パネル50を通過してスムーズに排水される。
【0062】
そして、本発明の法面保護用板状パネルを設置すると、防草効果があり景観も損なわず雨水、地下水の自然な給排水を行い、かつ斜面の土砂の流出や崩れを防止できる。また、自然石そのままの色で法面保護用板状パネル50を成形するが、必要に応じて顔料などで緑色などに着色することも可能である。
【0063】
数年後、モルデナイトゼオライト凝灰石粒を結合しているポリ乳酸樹脂が分解したころには、斜面54は地固めのできた状態になり、形状も安定したものになる。また、ポリ乳酸樹脂が分解することによって酸性成分も分解され、草木の生長も可能になる。ポリ乳酸樹脂が分解した後、残るのは天然石粒のみであり、地球環境の汚染を抑制することができる。尚、特に限定するものではないが、本実施の形態の法面保護用板状パネル50の外辺一辺の寸法は通常、300〜500mm程度であり、厚さは通常、10〜50mm程度が好ましい。
【0064】
【発明の効果】
本発明の結合体は、水が比較的容易に通過でき、各種形状の成型品にも適用可能で、天然素材からなる部分(天然石粒からなる部分)と、それ以外の人工物からなる素材の部分(生分解性樹脂からなる部分)からなり、前記人工物からなる素材の部分が生分解性を有している環境汚染の少ない天然石粒の生分解性樹脂による結合体を提供できる。最大径が1mm〜30mmの天然石粒を生分解性樹脂で結合して作成できるので、任意の形状の成型品とすることができる。
【0065】
本発明の結合体は使用済みになって廃棄された場合において、生分解性樹脂が分解するので、残るのは、天然石粒であり、従って、地球環境を汚染することがない。
【0066】
天然石粒がモルデナイトゼオライト凝灰石粒の場合には、見掛け比重が平均1.16で天然石としては極めて軽く、アンモニアの吸着性能にも優れており消臭効果がありトイレの壁、ドアーなどにも有用である。また、河川の水の浄化機能も有する結合体とすることができる。また、モルデナイトゼオライト凝灰石粒は、微多孔性であるので、毛細管現象により、水を保持させる用途にも好適に用いられる。例えば、モルデナイトゼオライト凝灰石粒を用いた本発明の結合体を植木鉢の形に成形して植木鉢として使用する場合に、植木鉢の下の受け皿に水を満たしておくと毛細管現象により適度の水分補給も行うことができる。
【0067】
また、生分解性樹脂として、ポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体を用いる場合には、弱酸性でまた抗菌性を有しており、トイレなどの部材に好適に使用できる。また、法面工事のパネルなどに用いる場合には、透水性がありながら、防草効果を有し、分解後は、草木の生長も可能になり地球環境を破壊しない。
【0068】
特に、モルデナイトゼオライト凝灰石粒とポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体との組み合わせの場合は、アンモニア臭の消臭機能と抗菌性が発揮され好ましい。
【0069】
以上のような優れた特性を有する本発明の結合体は、道路の法面工事の際の格子状の鉄筋コンクリート枠の枠内に取り付けられる板状パネルなどに使用すると、雨水の通過性がよいので、給水・排水性能がよく、土砂の崩落を抑え、同様に河川の岸などの法面工事の際などに適用でき、結合材の役割を果たしている生分解性樹脂は、工事した法面の土砂が固まったころ分解し、天然石粒のみが残るので、環境を汚染せず、その後、草が生えたり、植林も可能となって、美感も良好に保つことができる。雨水の地面へのしみこみも妨げず、従って地下水などの自然の水の循環への悪影響も少なくすることができる。また、生分解性樹脂として、ポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体を用いた場合には、防草効果が発揮され、一方、これらの樹脂が分解後は、草木の生長も可能になり地球環境を破壊しない。
【0070】
また、がけ崩れの恐れはないが、風雨により自然に崩れるおそれのある斜面(新たに造成した宅地用造成地の区画斜面や公園の小さめの斜面など)の工事当初の保護に用いられる、裏側に滑り止め用固定突起を具備した法面保護用板状パネルとして用いた場合にも、雨水の地面、斜面への自然な給排水が可能であり、従って地下水などの自然の水の循環への悪影響も少なくすることができる。かつ斜面の土砂の流出や崩れを防止できる。また、生分解性樹脂として、ポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体を用いた場合には、防草効果が発揮され、一方、これらの樹脂が分解後は、草木の生長も可能になり地球環境を破壊しない。
【0071】
植木鉢に適用した場合には、結合体は水が通過しうる連通路を有しているので、植木鉢底面に開いている排水用の穴を設ける必要がなく、土を入れた場合に排水用の穴からこぼれる恐れがない。生分解性樹脂として、ポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体を用いた場合には、細菌や不要なコケ類、ヤスデ、ダンゴムシなどの不快虫の繁殖を抑える効果も発揮され好ましい。また天然石粒として、モルデナイトゼオライト凝灰石粒(平均比重1.16)用いた場合には、大きな形状の植木鉢とした場合にも、通常の陶器などの素材の植木鉢に比べて軽い、また、モルデナイトゼオライト凝灰石粒は、微多孔性であるので、毛細管現象により水を保持でき、従って、植木鉢の下の受け皿に水を満たしておくと毛細管現象により適度の水分補給も行うことができる。
【0072】
また、水生植物育成用の苗床容器に適用した場合には、苗床容器本体には水が通過しうる連通路が形成されているので、苗床容器本体内の水が長時間よどむことによる水生植物の苗への悪影響も緩和できる。しかも、苗床容器をこのまま放置しても、苗床容器は、その構成成分である生分解性樹脂が生分解した後には、天然石粒がばらばらになって水底に残るのみであり、何等、河川、湖、池、沼などを汚染しないばかりでなく、天然石粒としてモルデナイトゼオライト凝灰石粒を用いた場合には、河川、湖、池、沼などの水を浄化する作用があり、極めて好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の結合体の一実施の形態の模式的概念図。
【図2】本発明の結合体を用いた植木鉢の斜視図。
【図3】本発明の結合体からなる構成部分を有する成型品の一例の水生植物育成用の苗床容器の斜視図。
【図4】図3の水生植物育成用の苗床容器の平面図。
【図5】図3のA−A’方向断面の端面図。
【図6】図3の水生植物育成用の苗床容器の底面図。
【図7】図3の水生植物育成用の苗床容器の使用状態を説明するための断面図。
【図8】鉄筋コンクリート枠とその枠内に取り付けられている本発明の結合体からなる板状パネルが道路法面に施工された状態を表す平面図。
【図9】鉄筋コンクリート枠とその枠内に取り付けられている本発明の結合体からなる板状パネル1単位を示した平面図。
【図10】図9のA−A’断面図。
【図11】鉄筋コンクリート枠とその中央部に取り付けられている本発明の結合体からなる板状パネルが道路法面に施工された状態を表す道路並びにその近傍の断面模式図。
【図12】本発明の結合体を用いた法面保護用板状パネルの側面図。
【図13】図12の法面保護用板状パネルの裏面図。
【図14】図12の法面保護用板状パネルが公園の小さめの土手斜面に施工された状態を表す土手斜面道近傍の断面模式図。
【符号の説明】
1 天然石粒
2 生分解性樹脂
3 水が通過しうる連通路
10 容器本体部分
11 脚部
12 筒状体部分
13 底部
14 苗床15を挿入するための穴
15 苗床
16 水生植物の苗
17 水生植物の根
18 水面
19 水底
20 土
30 鉄筋コンクリート枠
31 結合体からなる板状パネル
32 鉄筋
33 固定用杭
34 施工対象法面の原面
35 鉄筋コンクリート枠とその枠内に取り付けられた本発明の結合体からなる板状パネルを簡略化して表示したもの
36 排水溝
37 道路の路面
38 地下水脈
39 地中
40 雨水
50 法面保護用板状パネル
51 板状パネル部
52 滑り止め用固定突起
53 雨水
54 施工対象斜面
58 地下水脈
Claims (13)
- 最大径が1mm〜30mmの天然石粒同士間が生分解性樹脂により結合された結合体からなり、前記生分解性樹脂が前記天然石粒間の間隙の全部を塞がず水が通過しうる連通路が形成されていることを特徴とする天然石粒の生分解性樹脂による結合体。
- 生分解性樹脂の使用割合が、天然石粒の重量に対し、2〜30重量%である請求項1に記載の天然石粒の生分解性樹脂による結合体。
- 生分解性樹脂の使用割合が、天然石粒の重量に対し、5〜20重量%である請求項1に記載の天然石粒の生分解性樹脂による結合体。
- 天然石粒が、モルデナイトゼオライト凝灰石粒からなる請求項1に記載の天然石粒の生分解性樹脂による結合体。
- 生分解性樹脂の使用割合がモルデナイトゼオライト凝灰石粒の重量に対し、5〜30重量%である請求項4に記載の天然石粒の生分解性樹脂による結合体。
- 生分解性樹脂の使用割合がモルデナイトゼオライト凝灰石粒の重量に対し、10〜20重量%である請求項4に記載の天然石粒の生分解性樹脂による結合体。
- 生分解性樹脂が、ポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜6のいずれかに記載の天然石粒の生分解性樹脂による結合体。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の天然石粒の生分解性樹脂による結合体からなる成型品。
- 成型品が、立方体状、パネル状、筒状、半円筒状、樋状、棒状、円錐状、角錐状、球状、枠状の形状から選ばれたのいずれか少なくとも1つの形状部分を有する成型品である請求項8に記載の天然石粒の生分解性樹脂による結合体からなる成型品。
- 成型品が、少なくとも請求項1〜7のいずれかに記載の天然石粒の生分解性樹脂による結合体からなる部分を有する成型品であって、(a)請求項1〜7のいずれかに記載の天然石粒の生分解性樹脂による結合体からなる法面施工用コンクリート枠内に取り付けられる板状パネル、(b)請求項1〜7のいずれかに記載の天然石粒の生分解性樹脂による結合体からなる板状パネルであって、裏側に滑り止め用固定突起を具備した法面保護用板状パネル、(c)請求項1〜7のいずれかに記載の天然石粒の生分解性樹脂による結合体からなる植木鉢、又は(d)請求項1〜7のいずれかに記載の天然石粒の生分解性樹脂による結合体からなる下方部に穴あきの底部を有する筒状体の下方部の縁より更に生分解性樹脂からなる棒状ないしパイプ状の複数本の脚部を備えた水生植物育成用の苗床容器から選ばれたいずれかの成型品。
- 最大径が1mm〜30mmの天然石粒と前記天然石粒の重量に対し固形分の重量で2〜30重量%の生分解性樹脂のエマルジョンとを混合し、そのまま又は所望の成形型に入れ、加熱して生分解性樹脂のエマルジョンを固化させて天然石粒同士間を結合することにより、前記生分解性樹脂が前記天然石粒間の間隙の全部を塞がずに水が通過しうる連通路が形成されている天然石粒の生分解性樹脂による結合体の製造方法。
- 天然石粒がモルデナイトゼオライト凝灰石粒である請求項11に記載の天然石粒の生分解性樹脂による結合体の製造方法。
- 生分解性樹脂のエマルジョンが、ポリ乳酸又は乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体から選ばれた少なくとも1種の生分解性樹脂のエマルジョンである請求項11又は12のいずれかに記載の天然石粒の生分解性樹脂による結合体の製造方法。
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JP2006328240A (ja) * | 2005-05-26 | 2006-12-07 | Dai Ichi Kogyo Seiyaku Co Ltd | 保形性に優れた腐植質を含む火山灰造粒物 |
JP2010024534A (ja) * | 2008-07-24 | 2010-02-04 | Kao Corp | 表面処理鋼板用洗浄剤組成物 |
WO2017208590A1 (ja) * | 2016-06-03 | 2017-12-07 | 株式会社クレハ | 結合剤、資材、および、資材の製造方法 |
-
2002
- 2002-12-04 JP JP2002352911A patent/JP2004182901A/ja not_active Withdrawn
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