JP2004182503A - 電気二重層キャパシタ電極用炭素材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】原料の制約を受けず、単位体積当たりの静電容量が高い優れた電気二重層キャパシタ電極用炭素材料の製造方法を提供する。
【解決手段】400℃以上600℃未満の反応器内に粒状または粉末状の熱処理済み製品を予め仕込み、当該反応器中に撹拌下に原料重質油またはピッチを供給することによって粒状または粉末状の重質油またはピッチの熱処理品を製造する工程、該熱処理品をさらに600〜850℃で熱処理して重質油またはピッチの仮焼品を製造する工程、および該仮焼品1重量部に対して1〜6重量部のアルカリ金属化合物を混合し、不活性雰囲気下400〜1000℃で加熱して賦活処理品を製造する工程を有することを特徴とする電気二重層キャパシタ電極用炭素材料の製造方法。
【選択図】 無
【解決手段】400℃以上600℃未満の反応器内に粒状または粉末状の熱処理済み製品を予め仕込み、当該反応器中に撹拌下に原料重質油またはピッチを供給することによって粒状または粉末状の重質油またはピッチの熱処理品を製造する工程、該熱処理品をさらに600〜850℃で熱処理して重質油またはピッチの仮焼品を製造する工程、および該仮焼品1重量部に対して1〜6重量部のアルカリ金属化合物を混合し、不活性雰囲気下400〜1000℃で加熱して賦活処理品を製造する工程を有することを特徴とする電気二重層キャパシタ電極用炭素材料の製造方法。
【選択図】 無
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気二重層キャパシタ用電極用炭素材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気二重層キャパシタ(以下EDLC)は、大電流充放電が可能で、長寿命かつ高温安定性に優れるため、例えばハイブリッド自動車などの蓄電デバイスとして理想的な特性を有している。ところが、これまでのEDLCはエネルギー密度が不充分であることが大きな欠点となっていた。
【0003】
現在、EDLCの分極性電極材料としては、ヤシ殼、コークス、フェノール樹脂等を水蒸気や二酸化炭素等によって賦活した高比表面積を有する活性炭が使われている。しかしながら、これらの原料から高い静電容量を有する高比表面積の活性炭を得るために賦活度を上げていくと、電極材の嵩密度が低くなり、EDLCのエネルギー密度を高くできないという問題があった。
【0004】
最近、コークスやメソカーボンマイクロビーズ、あるいはメソフェーズピッチ系炭素繊維などの易黒鉛化性炭素からアルカリ金属化合物を用いた賦活(以下アルカリ賦活)によって高い静電容量の活性炭を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3参照。)。
また、特定のピッチ原料を熱処理、賦活処理することで優れたEDLC用活性炭が得られることが開示されており(特許文献4参照。)、アルカリ賦活に供する出発原料の選択および処理条件の選択が高い静電容量の活性炭を得るために重要であることが明らかになりつつある。
【0005】
【特許文献1】
特許第2548546号公報
【特許文献2】
特許第2634658号公報
【特許文献3】
特許第3149504号公報
【特許文献4】
特開2002−93667号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
コークスは安価な原料であるが、原料あるいは熱処理条件の制約を受け、金属分や硫黄分などの不純物も多く、高性能な材料が得られない。また、メソカーボンマイクロビーズも製造法の制約を受け、収率が低いため非常に高価である。メソフェーズピッチ系炭素繊維の場合は、紡糸・不融化工程を経るために原料ピッチの性状の制約を受けること、繊維状であるため電極を作製する際に充填密度が粒状に較べて上がらず、結果として単位体積当たりの静電容量が低くなるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、従来技術における上記のような課題を解決し、原料の制約を受けず、単位体積当たりの静電容量が高い優れたEDLC電極用炭素材料の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、電極炭素材料の出発原料、処理方法、処理条件等を詳細に検討した結果、400℃以上600℃未満の反応器内に粒状または粉末状の熱処理済み製品を予め仕込み、当該反応器中に撹拌下に原料重質油またはピッチを供給することによって粒状または粉末状の重質油またはピッチの熱処理品を製造する工程、該熱処理品をさらに600〜850℃で熱処理して重質油またはピッチの仮焼品を製造する工程、該仮焼品1重量部に対して1〜6重量部のアルカリ金属化合物を混合し、不活性雰囲気下400〜1000℃で加熱して賦活処理品を製造する工程で構成される製造プロセスを採用することによって、高性能のEDLC電極用炭素材料が製造できることを見いだし本発明に到達した。
【0009】
即ち本発明は、400℃以上600℃未満の反応器内に粒状または粉末状の熱処理済み製品を予め仕込み、当該反応器中に撹拌下に原料重質油またはピッチを供給することによって粒状または粉末状の重質油またはピッチの熱処理品を製造する工程、該熱処理品をさらに600〜850℃で熱処理して重質油またはピッチの仮焼品を製造する工程、および該仮焼品1重量部に対して1〜6重量部のアルカリ金属化合物を混合し、不活性雰囲気下400〜1000℃で加熱して賦活処理品を製造する工程を有することを特徴とする電気二重層キャパシタ電極用炭素材料の製造方法に関するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる原料としては重質油またはピッチが用いられる。その性状は特に限定されないが、ナフタレン、メチルナフタレン、アントラセン、フェナントレン、アセナフテン、アセナフチレン、ピレン等の縮合多環炭化水素を超強酸触媒の弗化水素・三弗化硼素存在下で重合させて得られる合成系重質油あるいはピッチは、他のピッチ類と異なり、純度が高く、性状を自由に制御可能であることから好適に用いられる。
【0011】
本発明では、原料重質油あるいはピッチから熱処理品を製造する工程として、以下に述べるような特定の熱処理方法が採用される。すなわち、400℃以上600℃未満の反応器内に粒状または粉末状の熱処理済み製品を予め仕込み、当該反応器中に撹拌下に原料重質油またはピッチを供給することによって粒状または粉末状の重質油またはピッチの熱処理品を製造する方法が採用される。
【0012】
この方法では、添加した重質油またはピッチは、加熱によりまず低粘度の液体となって、予め仕込んだ粒状または粉末状のピッチ熱処理品(戻し媒と呼ぶ)の表面上に分散する。その後、熱による重合反応が進むことで、最終的には不融不溶な熱処理物と変化する。戻し媒は撹拌によって常に流動状態が保たれているので、ピッチの反応によって生成するガスは速やかに系外に排出され、小さな容積の反応器で効率よく熱処理を行うことができる。
【0013】
ピッチは戻し媒表面上に分散して重合が進み、戻し媒の流動によるせん断を受けながら固化するので、得られた熱処理品の光学組織はモザイク組織となる。また、急昇温によって熱処理を受けるために、粒子内部に微細な欠陥(空隙)が多数存在することが推測される。このような独特の性状がこの後のアルカリ賦活工程における効率的な賦活を可能とし、ひいては単位体積当たりの静電容量が高い優れたEDLC電極用炭素材料のための前駆体となる。
【0014】
反応器の温度が400℃以下の場合は、重質油またはピッチの熱重合反応が遅いために安定して運転できない。一方、後述するように、本発明においては賦活工程の前に600℃以上の温度で仮焼品の性状を制御することが活性炭のEDLC性能の観点で好ましいので、溶融するピッチ類の熱処理を伴う本熱処理工程は600℃未満で行い、次工程の仮焼工程と区別するのが好ましい。また、600℃以上では強度を維持できる安価な金属材質が入手困難であり、工業的にも好ましくない。
【0015】
反応器内は基本的に窒素等の不活性雰囲気とするのが好ましいが、制御された酸素等の酸化性ガスをわずかに共存させて熱処理することも可能である。
【0016】
使用される反応器は、粒状または粉末状のピッチ熱処理品を十分に撹拌できるような撹拌装置を付属した漕型の反応器、撹拌できるパドルを備えた筒型の反応器、あるいはロータリーキルン等が使用できる。例えば、漕型反応器を使用する場合は特開平7−286181号公報に記載されたような撹拌羽根の回転軸を傾けて設置した反応器が好ましく利用できる。
【0017】
予め反応器に仕込んでおく粒状または粉末状のピッチ熱処理品は、最初は静置法等で製造した流れ組織の熱処理品を使用せざるを得ないが、反応を継続していくうちに新しいモザイク組織の熱処理品にほぼ完全に置換される。勿論、予め仕込んでおく熱処理品として、本発明の方法で得られたものを用いても良い。
【0018】
熱処理品はさらに600〜850℃で熱処理されて仮焼品とされる。仮焼品の炭素に対する水素の原子比を0.10〜0.30とするのが、その後のアルカリ賦活工程における効率的な賦活を可能とし、ひいては単位体積当たりの静電容量が高い優れたEDLC電極用炭素材料のために好ましい。
【0019】
賦活に用いられる賦活剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属化合物が用いられるが、中でも水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが最も好ましい。
【0020】
アルカリ賦活の方法や装置は特に限定されないが、仮焼品1重量部に対して1〜6重量部のアルカリ金属化合物を均一に混合し容器に充填し、窒素やアルゴンなどの不活性気体雰囲気下の加熱炉中で、室温から400〜1000℃まで昇温加熱して0.5〜20時間保持される。反応温度は、400℃より低いと反応が進行し難く賦活度が上がらず、1000℃より高いと金属カリウムの析出、飛散等による反応装置の侵食の問題が激しく起こるため、600〜900℃の温度で賦活処理するのがより好ましい。
【0021】
EDLC用の電極を作製する際は、活性炭は平均粒径で通常1〜50μm、好ましくは平均粒径5〜30μmの範囲になるよう粒度調整されたものを用いる。なお、粉砕は熱処理品、仮焼品、賦活品のいずれの時期において実施してもかまわない。
【0022】
粉砕機は衝撃式粉砕機やジェットミル等から適宜、最適機種が選択される。分級機についても機械式分級機、風力式分級機等から適宜、最適機種が選択される。
【0023】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0024】
<実施例1>
弗化水素・三弗化硼素の共存下、ナフタレンを重合させてメソフェ−ズピッチ(メトラー法軟化点:230℃)を合成した。得られたピッチを熱処理するため、窒素雰囲気下5℃/分で530℃まで昇温し、この温度で1時間保持した。室温まで冷却したのち、粗粉砕して平均粒径が約0.5mmの戻し媒用メソフェーズピッチ熱処理品を得た。
次に、撹拌機を装備した直径170mm、高さ170mmの漕型反応器の中に、この熱処理品200gを戻し媒として予め仕込み、撹拌しながら、窒素気流下550℃に昇温した。ここへ、該メソフェーズピッチを毎分10gの速度で反応器に加え、全体で300g投入した。投入終了後、550℃で10分間保持した後、反応器を冷却し内容物を取り出したところ、400gの粒状の熱処理品が得られた。得られた熱処理品400gから200gを戻し媒として反応器中に戻し、2回目の反応を行った。この操作を7回繰り返し、約99%の置換率のメソフェーズピッチ熱処理品を得た。
該熱処理品を管状炉中、窒素雰囲気下5℃/分で720℃まで昇温して、この温度で2時間保持して仮焼品を得た。得られた仮焼品の炭素に対する水素の原子比(H/C)は0.16であった。
【0025】
仮焼品を衝撃式粉砕器により平均粒径15μmに粉砕し、得られた仮焼品粉末1重量部に対して2重量部の水酸化カリウムを均一に混合し、窒素雰囲気下5℃/分で750℃まで昇温し、この温度で2時間保持した。室温まで冷却したのち2−プロパノール中に投入し、濾液が中性になるまで濾過、水洗を繰り返した。得られた活性炭を活性炭:導電性フィラー(ケッチェンブラック):結着剤(テフロン(登録商標))の重量比90:5:5で混合し電極を作成した。電極評価はガラス製2極式セルを用い、一対の電極の間にグラスファイバー製セパレータを挟みセルに収容した。電解液はテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート((C2H5)4NBF4)を1モル/リットル溶解したプロピレンカーボネートを用いた。
Ar雰囲気中、室温下、10mA/gの定電流で電圧2.7Vまで充電し、さらに2.7Vで2時間充電を行った後、10mA/gの定電流で0Vまで放電した。これを3回繰り返した。次に、充放電の定電流を100mA/gとして同様に充放電を行い、放電された電気量から静電容量を算出した。静電容量は正負極両極中の炭素重量(活性炭およびケッチェンブラック)を基準とし、下式に従って算出した。また、体積当たりの静電容量Cv(F/cc)は重量当たりの静電容量Cw(F/g)に電極の密度を乗ずることにより算出した。
(式)静電容量Cw(F/g)=放電電気量(AH/g)×3600/2.7
その結果、重量当り静電容量34.0F/g、体積当り静電容量31.6F/cc、電極密度0.93g/ccと優れた値を示した。結果を表1にまとめた。
【0026】
<比較例1>
ナフタレンを重合させて合成したメソフェーズピッチ(メトラー軟化点290℃)を、330℃に保ったL/D=0.15/0.1(mm)のノズルを用い、300m/分の速度で紡糸して平均直径12μmφのピッチ繊維を得た。該ピッチ繊維を、NO2を1%含んだ空気雰囲気中、昇温速度2℃/分で210℃まで昇温、さらに30分保持した。得られた不融化繊維を窒素雰囲気中720℃で仮焼した後、粉砕した。仮焼品粉末1重量部に対して2重量部の水酸化カリウムを均一に混合し、窒素雰囲気下5℃/分で750℃まで昇温し、この温度で2時間保持した。室温まで冷却したのち2−プロパノール中に投入し、濾液が中性になるまで濾過、水洗を繰り返した。
得られた活性炭について実施例1と同様に静電容量を求めたところ、重量当り静電容量32.0F/g、体積当り静電容量25.6F/cc、電極密度0.80g/ccであり、電極密度が上がらないために体積当り静電容量が低くなった。結果を表1にまとめた。
【0027】
<比較例2>
実施例1で用いたものと同じ熱処理品(熱処理品のH/C=0.35)を、仮焼工程を経ずに、実施例1と同様に750℃で2時間賦活処理を行った。得られた活性炭について実施例1と同様に静電容量を求めたところ、重量当り静電容量28.0F/g、体積当り静電容量17.1F/cc、電極密度0.61g/ccと低下した。結果を表1にまとめた。
【0028】
<比較例3>
実施例1において、仮焼条件を870℃−2時間(仮焼品のH/C=0.08)とし、実施例1と同様に750℃で2時間賦活処理を行って活性炭を得た。実施例1と同様に静電容量を求めたところ、重量当り静電容量20.0F/g、体積当り静電容量22.0F/cc、電極密度1.10g/ccであり、電極密度は高かったが、重量当り静電容量が低下した。結果を表1にまとめた。
【0029】
【表1】
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、電極密度が高く、単位体積当たりの静電容量が高いEDLC電極用炭素材料を、原料の制約を受けず、効率よく製造することができるので、工業的な意味はきわめて大きい。本材料を用いることによってエネルギー密度の高いEDLCが実現でき、ハイブリッド自動車等の電源ととして非常に有用となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気二重層キャパシタ用電極用炭素材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気二重層キャパシタ(以下EDLC)は、大電流充放電が可能で、長寿命かつ高温安定性に優れるため、例えばハイブリッド自動車などの蓄電デバイスとして理想的な特性を有している。ところが、これまでのEDLCはエネルギー密度が不充分であることが大きな欠点となっていた。
【0003】
現在、EDLCの分極性電極材料としては、ヤシ殼、コークス、フェノール樹脂等を水蒸気や二酸化炭素等によって賦活した高比表面積を有する活性炭が使われている。しかしながら、これらの原料から高い静電容量を有する高比表面積の活性炭を得るために賦活度を上げていくと、電極材の嵩密度が低くなり、EDLCのエネルギー密度を高くできないという問題があった。
【0004】
最近、コークスやメソカーボンマイクロビーズ、あるいはメソフェーズピッチ系炭素繊維などの易黒鉛化性炭素からアルカリ金属化合物を用いた賦活(以下アルカリ賦活)によって高い静電容量の活性炭を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、および特許文献3参照。)。
また、特定のピッチ原料を熱処理、賦活処理することで優れたEDLC用活性炭が得られることが開示されており(特許文献4参照。)、アルカリ賦活に供する出発原料の選択および処理条件の選択が高い静電容量の活性炭を得るために重要であることが明らかになりつつある。
【0005】
【特許文献1】
特許第2548546号公報
【特許文献2】
特許第2634658号公報
【特許文献3】
特許第3149504号公報
【特許文献4】
特開2002−93667号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
コークスは安価な原料であるが、原料あるいは熱処理条件の制約を受け、金属分や硫黄分などの不純物も多く、高性能な材料が得られない。また、メソカーボンマイクロビーズも製造法の制約を受け、収率が低いため非常に高価である。メソフェーズピッチ系炭素繊維の場合は、紡糸・不融化工程を経るために原料ピッチの性状の制約を受けること、繊維状であるため電極を作製する際に充填密度が粒状に較べて上がらず、結果として単位体積当たりの静電容量が低くなるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、従来技術における上記のような課題を解決し、原料の制約を受けず、単位体積当たりの静電容量が高い優れたEDLC電極用炭素材料の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、電極炭素材料の出発原料、処理方法、処理条件等を詳細に検討した結果、400℃以上600℃未満の反応器内に粒状または粉末状の熱処理済み製品を予め仕込み、当該反応器中に撹拌下に原料重質油またはピッチを供給することによって粒状または粉末状の重質油またはピッチの熱処理品を製造する工程、該熱処理品をさらに600〜850℃で熱処理して重質油またはピッチの仮焼品を製造する工程、該仮焼品1重量部に対して1〜6重量部のアルカリ金属化合物を混合し、不活性雰囲気下400〜1000℃で加熱して賦活処理品を製造する工程で構成される製造プロセスを採用することによって、高性能のEDLC電極用炭素材料が製造できることを見いだし本発明に到達した。
【0009】
即ち本発明は、400℃以上600℃未満の反応器内に粒状または粉末状の熱処理済み製品を予め仕込み、当該反応器中に撹拌下に原料重質油またはピッチを供給することによって粒状または粉末状の重質油またはピッチの熱処理品を製造する工程、該熱処理品をさらに600〜850℃で熱処理して重質油またはピッチの仮焼品を製造する工程、および該仮焼品1重量部に対して1〜6重量部のアルカリ金属化合物を混合し、不活性雰囲気下400〜1000℃で加熱して賦活処理品を製造する工程を有することを特徴とする電気二重層キャパシタ電極用炭素材料の製造方法に関するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる原料としては重質油またはピッチが用いられる。その性状は特に限定されないが、ナフタレン、メチルナフタレン、アントラセン、フェナントレン、アセナフテン、アセナフチレン、ピレン等の縮合多環炭化水素を超強酸触媒の弗化水素・三弗化硼素存在下で重合させて得られる合成系重質油あるいはピッチは、他のピッチ類と異なり、純度が高く、性状を自由に制御可能であることから好適に用いられる。
【0011】
本発明では、原料重質油あるいはピッチから熱処理品を製造する工程として、以下に述べるような特定の熱処理方法が採用される。すなわち、400℃以上600℃未満の反応器内に粒状または粉末状の熱処理済み製品を予め仕込み、当該反応器中に撹拌下に原料重質油またはピッチを供給することによって粒状または粉末状の重質油またはピッチの熱処理品を製造する方法が採用される。
【0012】
この方法では、添加した重質油またはピッチは、加熱によりまず低粘度の液体となって、予め仕込んだ粒状または粉末状のピッチ熱処理品(戻し媒と呼ぶ)の表面上に分散する。その後、熱による重合反応が進むことで、最終的には不融不溶な熱処理物と変化する。戻し媒は撹拌によって常に流動状態が保たれているので、ピッチの反応によって生成するガスは速やかに系外に排出され、小さな容積の反応器で効率よく熱処理を行うことができる。
【0013】
ピッチは戻し媒表面上に分散して重合が進み、戻し媒の流動によるせん断を受けながら固化するので、得られた熱処理品の光学組織はモザイク組織となる。また、急昇温によって熱処理を受けるために、粒子内部に微細な欠陥(空隙)が多数存在することが推測される。このような独特の性状がこの後のアルカリ賦活工程における効率的な賦活を可能とし、ひいては単位体積当たりの静電容量が高い優れたEDLC電極用炭素材料のための前駆体となる。
【0014】
反応器の温度が400℃以下の場合は、重質油またはピッチの熱重合反応が遅いために安定して運転できない。一方、後述するように、本発明においては賦活工程の前に600℃以上の温度で仮焼品の性状を制御することが活性炭のEDLC性能の観点で好ましいので、溶融するピッチ類の熱処理を伴う本熱処理工程は600℃未満で行い、次工程の仮焼工程と区別するのが好ましい。また、600℃以上では強度を維持できる安価な金属材質が入手困難であり、工業的にも好ましくない。
【0015】
反応器内は基本的に窒素等の不活性雰囲気とするのが好ましいが、制御された酸素等の酸化性ガスをわずかに共存させて熱処理することも可能である。
【0016】
使用される反応器は、粒状または粉末状のピッチ熱処理品を十分に撹拌できるような撹拌装置を付属した漕型の反応器、撹拌できるパドルを備えた筒型の反応器、あるいはロータリーキルン等が使用できる。例えば、漕型反応器を使用する場合は特開平7−286181号公報に記載されたような撹拌羽根の回転軸を傾けて設置した反応器が好ましく利用できる。
【0017】
予め反応器に仕込んでおく粒状または粉末状のピッチ熱処理品は、最初は静置法等で製造した流れ組織の熱処理品を使用せざるを得ないが、反応を継続していくうちに新しいモザイク組織の熱処理品にほぼ完全に置換される。勿論、予め仕込んでおく熱処理品として、本発明の方法で得られたものを用いても良い。
【0018】
熱処理品はさらに600〜850℃で熱処理されて仮焼品とされる。仮焼品の炭素に対する水素の原子比を0.10〜0.30とするのが、その後のアルカリ賦活工程における効率的な賦活を可能とし、ひいては単位体積当たりの静電容量が高い優れたEDLC電極用炭素材料のために好ましい。
【0019】
賦活に用いられる賦活剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属化合物が用いられるが、中でも水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが最も好ましい。
【0020】
アルカリ賦活の方法や装置は特に限定されないが、仮焼品1重量部に対して1〜6重量部のアルカリ金属化合物を均一に混合し容器に充填し、窒素やアルゴンなどの不活性気体雰囲気下の加熱炉中で、室温から400〜1000℃まで昇温加熱して0.5〜20時間保持される。反応温度は、400℃より低いと反応が進行し難く賦活度が上がらず、1000℃より高いと金属カリウムの析出、飛散等による反応装置の侵食の問題が激しく起こるため、600〜900℃の温度で賦活処理するのがより好ましい。
【0021】
EDLC用の電極を作製する際は、活性炭は平均粒径で通常1〜50μm、好ましくは平均粒径5〜30μmの範囲になるよう粒度調整されたものを用いる。なお、粉砕は熱処理品、仮焼品、賦活品のいずれの時期において実施してもかまわない。
【0022】
粉砕機は衝撃式粉砕機やジェットミル等から適宜、最適機種が選択される。分級機についても機械式分級機、風力式分級機等から適宜、最適機種が選択される。
【0023】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0024】
<実施例1>
弗化水素・三弗化硼素の共存下、ナフタレンを重合させてメソフェ−ズピッチ(メトラー法軟化点:230℃)を合成した。得られたピッチを熱処理するため、窒素雰囲気下5℃/分で530℃まで昇温し、この温度で1時間保持した。室温まで冷却したのち、粗粉砕して平均粒径が約0.5mmの戻し媒用メソフェーズピッチ熱処理品を得た。
次に、撹拌機を装備した直径170mm、高さ170mmの漕型反応器の中に、この熱処理品200gを戻し媒として予め仕込み、撹拌しながら、窒素気流下550℃に昇温した。ここへ、該メソフェーズピッチを毎分10gの速度で反応器に加え、全体で300g投入した。投入終了後、550℃で10分間保持した後、反応器を冷却し内容物を取り出したところ、400gの粒状の熱処理品が得られた。得られた熱処理品400gから200gを戻し媒として反応器中に戻し、2回目の反応を行った。この操作を7回繰り返し、約99%の置換率のメソフェーズピッチ熱処理品を得た。
該熱処理品を管状炉中、窒素雰囲気下5℃/分で720℃まで昇温して、この温度で2時間保持して仮焼品を得た。得られた仮焼品の炭素に対する水素の原子比(H/C)は0.16であった。
【0025】
仮焼品を衝撃式粉砕器により平均粒径15μmに粉砕し、得られた仮焼品粉末1重量部に対して2重量部の水酸化カリウムを均一に混合し、窒素雰囲気下5℃/分で750℃まで昇温し、この温度で2時間保持した。室温まで冷却したのち2−プロパノール中に投入し、濾液が中性になるまで濾過、水洗を繰り返した。得られた活性炭を活性炭:導電性フィラー(ケッチェンブラック):結着剤(テフロン(登録商標))の重量比90:5:5で混合し電極を作成した。電極評価はガラス製2極式セルを用い、一対の電極の間にグラスファイバー製セパレータを挟みセルに収容した。電解液はテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート((C2H5)4NBF4)を1モル/リットル溶解したプロピレンカーボネートを用いた。
Ar雰囲気中、室温下、10mA/gの定電流で電圧2.7Vまで充電し、さらに2.7Vで2時間充電を行った後、10mA/gの定電流で0Vまで放電した。これを3回繰り返した。次に、充放電の定電流を100mA/gとして同様に充放電を行い、放電された電気量から静電容量を算出した。静電容量は正負極両極中の炭素重量(活性炭およびケッチェンブラック)を基準とし、下式に従って算出した。また、体積当たりの静電容量Cv(F/cc)は重量当たりの静電容量Cw(F/g)に電極の密度を乗ずることにより算出した。
(式)静電容量Cw(F/g)=放電電気量(AH/g)×3600/2.7
その結果、重量当り静電容量34.0F/g、体積当り静電容量31.6F/cc、電極密度0.93g/ccと優れた値を示した。結果を表1にまとめた。
【0026】
<比較例1>
ナフタレンを重合させて合成したメソフェーズピッチ(メトラー軟化点290℃)を、330℃に保ったL/D=0.15/0.1(mm)のノズルを用い、300m/分の速度で紡糸して平均直径12μmφのピッチ繊維を得た。該ピッチ繊維を、NO2を1%含んだ空気雰囲気中、昇温速度2℃/分で210℃まで昇温、さらに30分保持した。得られた不融化繊維を窒素雰囲気中720℃で仮焼した後、粉砕した。仮焼品粉末1重量部に対して2重量部の水酸化カリウムを均一に混合し、窒素雰囲気下5℃/分で750℃まで昇温し、この温度で2時間保持した。室温まで冷却したのち2−プロパノール中に投入し、濾液が中性になるまで濾過、水洗を繰り返した。
得られた活性炭について実施例1と同様に静電容量を求めたところ、重量当り静電容量32.0F/g、体積当り静電容量25.6F/cc、電極密度0.80g/ccであり、電極密度が上がらないために体積当り静電容量が低くなった。結果を表1にまとめた。
【0027】
<比較例2>
実施例1で用いたものと同じ熱処理品(熱処理品のH/C=0.35)を、仮焼工程を経ずに、実施例1と同様に750℃で2時間賦活処理を行った。得られた活性炭について実施例1と同様に静電容量を求めたところ、重量当り静電容量28.0F/g、体積当り静電容量17.1F/cc、電極密度0.61g/ccと低下した。結果を表1にまとめた。
【0028】
<比較例3>
実施例1において、仮焼条件を870℃−2時間(仮焼品のH/C=0.08)とし、実施例1と同様に750℃で2時間賦活処理を行って活性炭を得た。実施例1と同様に静電容量を求めたところ、重量当り静電容量20.0F/g、体積当り静電容量22.0F/cc、電極密度1.10g/ccであり、電極密度は高かったが、重量当り静電容量が低下した。結果を表1にまとめた。
【0029】
【表1】
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、電極密度が高く、単位体積当たりの静電容量が高いEDLC電極用炭素材料を、原料の制約を受けず、効率よく製造することができるので、工業的な意味はきわめて大きい。本材料を用いることによってエネルギー密度の高いEDLCが実現でき、ハイブリッド自動車等の電源ととして非常に有用となる。
Claims (2)
- 400℃以上600℃未満の反応器内に粒状または粉末状の熱処理済み製品を予め仕込み、当該反応器中に撹拌下に原料重質油またはピッチを供給することによって粒状または粉末状の重質油またはピッチの熱処理品を製造する工程、該熱処理品をさらに600〜850℃で熱処理して重質油またはピッチの仮焼品を製造する工程、および該仮焼品1重量部に対して1〜6重量部のアルカリ金属化合物を混合し、不活性雰囲気下400〜1000℃で加熱して賦活処理品を製造する工程を有することを特徴とする電気二重層キャパシタ電極用炭素材料の製造方法。
- 重質油またはピッチが、縮合多環式炭化水素またはこれを含有する物質を弗化水素・三弗化硼素の存在下で重合させて得られた重質油またはピッチであることを特徴とする請求項1に記載の電気二重層キャパシタ電極用炭素材料の製造方法。
Priority Applications (1)
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JP2002349828A JP2004182503A (ja) | 2002-12-02 | 2002-12-02 | 電気二重層キャパシタ電極用炭素材料の製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007103069A (ja) * | 2005-09-30 | 2007-04-19 | Denso Corp | リチウム二次電池用電極及びその製造方法並びにリチウム二次電池 |
-
2002
- 2002-12-02 JP JP2002349828A patent/JP2004182503A/ja active Pending
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