JP2004182417A - 自動給紙装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】装置の大型化や大幅なコストアップを招くことのない、単純な構成の重送防止機構を備えた自動給紙装置を提供する。
【解決手段】自動給紙装置の積載部には圧板16がその上端部の回転支軸16bを中心に回動可能に取り付けられ、圧板16は給紙ローラ11側に付勢されている。圧板16の移動は、その下端部に設けられたカム16aと、給紙ローラ11と共に回転するカム22aとによって制御される。給紙ローラ11側に付勢されたトルクリミッタ12は、給紙ローラ11との間に用紙を挟みこんで用紙との摩擦力によって圧板16上の用紙の束から用紙を1枚ずつ分離する。給紙ローラ11は、自動給紙装置以外の装置にも駆動力を伝達する駆動源からクラッチ手段を介して駆動力が伝達されることで回転し、圧板16上の用紙を給紙ローラ11に当接させる際にトルクリミッタ12を給紙ローラ11に当接させる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数枚積載された用紙の束から1枚ずつ用紙を取り出して搬送する自動給紙装置に関し、さらに詳細には、一度の給紙動作時に複数の用紙が送り出されるといったいわゆる重送を防止する機構を備えた自動給紙装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、リタード方式の重送防止機構を備えた自動給紙装置としては、積載されたシートを給紙ローラに圧接させる圧板を給紙ローラに向けて付勢したり、圧板を給紙ローラから離れる方向に移動させる動作を、給紙ローラの軸上のカムを用いてその軸の回転により駆動させる方式などが用いられている。この方式においては、給紙ローラ側への圧板の付勢時には給紙ローラを遅い速度で駆動させて、圧板上のシートの給紙ローラとの当接速度を抑え、給紙ローラへの用紙の当接時の衝撃音を低減させていた。
【0003】
また、モータからの駆動力を給紙ローラへ伝達する際に、その伝達系の途中で駆動力を他のユニットにも伝達するために遊星ギアクラッチなどを用いることがある。この場合、モータを低速度で駆動しても給紙ローラの軸上のカムを圧板のカムが押すことにより遊星ギアのギア係合部が離れ、給紙ローラの先廻り現象が起こるので、給紙ローラとの用紙の当接速度を抑えることができず、結果として衝撃音を低減させることができなかった。
【0004】
さらに、摩擦分離手段の付勢について、上記給紙ローラへの用紙の当接時と同時、あるいは連続して行われるために、騒音のピーク値が上昇したり、連続した衝撃音が耳障りであった。
【0005】
そして、各種用紙サイズに対応するために、用紙基準側に給紙ローラと摩擦分離手段を有する構成においては、非基準側に用紙の側面をガイドするサイドガイドと一体で可動とした、もう一対の給紙ローラと摩擦分離手段を設けるか、非基準側に摩擦分離手段を持たない補助ローラを設けていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように従来の自動給紙装置においては、圧板によるシートと給紙ローラとの当接速度を抑え、当接時の衝撃音を抑えるためにはいくつかの制約があった。すなわち、積載されたシートを給紙ローラに当接させるための圧板を備えた自動給紙装置においては、自動給紙装置専用のモータ等の駆動源を使用し、装置の大型化および高コスト化を招いていた。
【0007】
本発明の目的は、装置の大型化や大幅なコストアップを招くことのない、単純な構成の重送防止機構を備えた自動給紙装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の自動給紙装置は、シート材の束が積載される積載部と、前記積載部に積載されたシート材を送り出すために回転する給送ローラと、前記給送ローラに当接するように移動可能に支持され、前記給送ローラとの間にシート材を挟み込むようにシート材に当接して、該シート材との摩擦力によって前記シート材を前記積載部上のシート材の束から1枚ずつ分離するための摩擦分離手段と、前記積載部上のシート材を押圧して前記給送ローラに当接させる動作、および前記積載部上のシート材を前記給送ローラから離間させる動作を行うために前記積載部に移動可能に設けられた押圧部材と、前記給送ローラの回転軸に設けられて前記給送ローラと共に回転し、前記押圧部材を移動させる動作を制御するためのカム部材と、前記押圧部材の移動により前記積載部上のシート材を前記給送ローラに当接させる際に前記給送ローラに前記摩擦分離手段を当接させる動作を制御する制御手段とを有する。
【0009】
前記給送ローラは、駆動力の伝達を断続するクラッチ手段を介して駆動源からの駆動力が伝達されることによって回転するものであることが好ましい。
【0010】
前記摩擦分離手段としては、前記摩擦分離手段は、前記給送ローラとの間に挟み込まれたシート材の移動に伴って回転するように回動可能に支持されたリタードローラを用いることができる。
【0011】
さらに、前記クラッチ手段としては、遊星ギアクラッチまたはばねクラッチを用いることができる。
【0012】
また、前記摩擦分離手段を、待機時に前記給送ローラとの当接位置に位置するように制御することが好ましい。
【0013】
そして、前記給送ローラは用紙基準側のみとして、非基準側方向に向かって、前記押圧部材とガイドの距離を離す構成とすることができる。
【0014】
上記の通りの発明では、給送ローラによってシート材を1枚ずつ送り出すために、給送ローラと摩擦分離手段の間にシート材に挟み込ませて積載部上のシート材の束からシート材を1枚ずつ分離する自動給紙装置において、積載部上のシート材を押圧して給送ローラに当接させるための押圧部材を給送ローラの回転軸上のカム部材によって移動させる際に制御手段によって摩擦分離手段を給送ローラに当接させることにより、そのカム部材が押圧部材からの力を受けてその力で給送ローラが回転させられようとしても、摩擦分離手段からの制動力によって給送ローラの先廻り現象が抑えられる。例えば、駆動源からの駆動力を、クラッチ手段を介して給送ローラに伝達して給送ローラを回転させる構成においても、押圧部材を移動させるために給送ローラ上のカム部材が力を受けた際に、そのカム部材による給送ローラの回転力でクラッチ手段の駆動力の伝達が解除されることがなく、給送ローラの先廻り現象が発生することがない。このような構成によれば、自動給紙装置とは別の装置を駆動するための駆動源によって給送ローラを駆動させる場合でも、積載部上のシート材が給送ローラに当接する速度を抑え、それらが当接する時の衝撃音を低減させることができる。その結果、自動給紙装置や、それが装着される記録装置などにおいて、自動給紙装置専用の駆動源を設ける必要がなくなり、装置の複雑化や大型化、コストの増加を招くことなしに、シート材の重送を防止した給紙機構が実現される。
【0015】
さらに、前記摩擦分離手段を、待機時に前記給送ローラとの当接位置に位置するように制御することによって、摩擦分離手段の付勢について、上記給紙ローラへの用紙の当接時と時間的間隔を持つことができ、騒音のピーク値の抑制効果や、連続した衝撃音を回避することが実現可能となる。
【0016】
そして、前記給送ローラは用紙基準側のみとして、非基準側方向に向かって、前記押圧部材とガイドの距離を離す構成とすることによって、補助ローラや該補助ローラに対応する圧板上の分離シート、圧板ばね、給紙コロなどを削除することができ、さらなるコストダウンを可能とした、単純な構成の重送防止機構を備えた自動給紙装置を提供することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る自動給紙装置(ASF:Automatic Sheet Feeder)の全体の構成を模式的に示す斜視図である。
【0019】
図1および図2に示すように本実施形態の自動給紙装置では、そのフレーム(枠組み)となるASFベース15に給紙軸10が回転可能に取り付けられている。給紙軸10の一部には、用紙などのシート材を搬送するための給紙ローラ(給送ローラ)11が取り付けられており、給紙軸10はASFベース15上で給紙ローラ11を回転可能に支持している。また、給紙軸10における給紙ローラ11に近接する部分には、給紙ローラ11の回転角度が所定の範囲内にある時に給紙ローラ11への用紙の接触を防止する給紙コロ18が回転可能に取り付けられている。自動給紙装置上で用紙を分離する動作に関わる摩擦分離手段としてのトルクリミッタ12は、図2に基づいて後述するようにそれを回転可能に支持するホルダ27を介してASFベース15に取り付けられている。そのホルダ27およびASFベース15に取り付けられたばねによって、トルクリミッタ12は給紙ローラ11に向かう方向に押圧されている。本実施形態では、トルクリミッタ12として、給紙ローラ11との間に用紙を挟み込むように給紙ローラ11側に付勢されてその用紙と圧接すると共に、給紙ローラ11との間に挟み込まれた用紙の移動に伴って回転するように回動可能に支持されたリタードローラが用いられている。
【0020】
また、給紙軸10上で給紙ローラ11と同位相で幅の広い用紙種に対して、給紙ローラ11の送りを補助するための補助ローラ40が取り付けられている。そして、給紙ローラ10と同様に補助ローラ40の近接部には、補助ローラ40の回転角度が所定の範囲内にある時に補助ローラ40への用紙の接触を防止する給紙コロ18が回転可能に取り付けられている。
【0021】
さらに給紙軸10上には給紙ローラ10と補助ローラ40の中央部での用紙の浮きを抑制するために両ローラと同位相のガイド10aが形成されている。
【0022】
自動給紙装置から送り出される用紙が複数枚重なって供給されることの防止、いわゆる重送の防止に係わる戻し用部材としての戻しレバー13も、ASFベース15に揺動可能に複数個取り付けられている。各戻しレバー13もばねによって一方向に付勢されている。ASFベース15の一端部には、戻しレバー13を駆動するための制御カム14が配置されている。制御カム14は、それぞれの戻しレバー13を駆動するための部材に取り付けられており、その部材と共に回動可能に支持されている。
【0023】
ASFベース15は、使用状態の姿勢で斜めに傾斜する傾斜部を有しており、その傾斜部の上面に、用紙の束を給紙ローラ11に向けて押圧するための押圧部材として圧板16が取り付けられている。圧板16は、ASFベース15との間に取り付けられた不図示の圧板ばねによって給紙ローラ11側へと付勢されている。圧板16上に載置された用紙の束が圧板16と圧板ばねによって給紙ローラ11側に押圧される。圧板16には、サイドガイド17が、図1に示されるように給紙ローラ11による用紙の搬送方向Aと交差する矢印C方向にスライド可能に取り付けられている。サイドガイド17は、圧板16上の用紙を矢印C方向で位置決めするためのものである。
【0024】
本実施形態の自動給紙装置は、記録装置などの他の装置に取り付けられ、その装置と一体化して使用することを前提として設計されており、この自動給紙装置自体には駆動源が備えられていない。そのため、本実施形態の自動給紙装置は、例えば記録装置の本体側から駆動力が伝達されて駆動される被駆動装置として構成されている。以下では、自動給紙装置が記録装置に装着される場合を例にとって説明するが、自動給紙装置が装着される装置は記録装置に限定されない。
【0025】
本実施形態の自動給紙装置は、大きく分けて用紙積載部、給紙・分離部、および重送防止部から成り立っている。まず、最初に用紙積載部の構成について説明する。
【0026】
自動給紙装置の用紙積載部は、ASFベース15の一部から突出して設けられた用紙搬送基準部15aを用紙の側方での基準とし、用紙搬送基準部15aと反対側で用紙の側方を規制するためのサイドガイド17と、圧板16とから構成されている。自動給紙装置が用紙の搬送を休止しているいわゆる待機状態においては、圧板16は、給紙ローラ11から遠ざかる方向において所定の位置に止まっており、その際には給紙ローラ11と圧板16の間に、複数枚の用紙を積載するのに充分な間隙が確保されている。
【0027】
本実施形態の自動給紙装置は、所定の幅の範囲内にある任意の用紙幅に適応するように設計されているので、複数枚の用紙を給紙ローラ11と圧板16の間隙に用紙搬送基準部15aに沿わせて載置した後、サイドガイド17を図1の矢印C方向に移動させて用紙幅に合わせることにより、載置された用紙の束は搬送方向と交差する方向への移動が規制されて、安定した搬送が可能となる。サイドガイド17は圧板16に摺動可能に取り付けられているが、サイドガイド17は、それが不用意に動かないように、圧板16に刻まれたラッチ溝と係合して固定できるように構成されている。そのため、サイドガイド17を移動させる時には、サイドガイド17に設けられたレバー部を操作して圧板16とのラッチを解除し、移動させることになる。
【0028】
積載部にセットされる用紙は、重力によって下方に付勢されるが、その下方先端は、ASFベース15に固定して設けられた用紙先端基準部15bに突き当たることになる。本実施形態においては、給紙時の用紙への負荷を低減するために、用紙先端基準部15bはリブ形状となっている。
【0029】
ここで、自動給紙装置の駆動機構部について図2を参照して説明する。図2は、図1に示される矢印B方向から自動給紙装置を見た模式的側面図である。
【0030】
図2に示すようにASFベース15の側面には、入力ギア20、ダブルギア21、給紙軸ギア22、コントロールギア23、および制御カム14が配置されている。入力ギア20は、自動給紙装置が記録装置の本体に装着された際にその本体側のギアと係合し、そのギアからの駆動力を受ける。ダブルギア21は、径の異なる2つのギア部が同軸の状態で一体となったものであり、ダブルギア21の小さい径のギア部が入力ギア20と係合している。入力ギア20に伝達された駆動力が、ダブルギア21を介してその次段のギアに伝達される。
【0031】
給紙軸ギア22は、給紙軸10の一端部に固定されると共にダブルギア21の大きい径のギア部と係合しており、ダブルギア21からの駆動力を給紙軸10や次段のギアに伝達する。コントロールギア23は給紙軸ギア22と係合しており、紙軸ギア22から伝達された駆動力によって戻しレバー13とトルクリミッタ12の駆動を制御する。コントロールギア23の片面には、制御カム14の駆動動作を制御するために制御カム14と係合するカム23aが形成されている。付勢ばね25の一端部は、制御カム14の側面に形成された係止部に取り付けられ、他端部は、ASFベース15に形成された係止部に取り付けられている。この付勢ばね25は、制御カム14をその一方の回転方向に付勢し、それによって戻しレバー13に対する制御カム14の相対的な回転角を、カム23aの回転動作に応じて所定の角度に規定するためのものである。上述したようにトルクリミッタ12を回転自在に支持するホルダ27とASFベース15のそれぞれには押圧ばね26が取り付けられており、その押圧ばね26によってトルクリミッタ12が給紙ローラ11に向かう方向に押圧されている。
【0032】
記録装置の本体に備えられたギアから伝達される駆動力は入力ギア20を、図2に示される矢印B方向に回転させる。入力ギア20に伝達された駆動力は、そのギアよりも回転速度が減速されて回転するダブルギア21を介して給紙軸ギア22に伝達され、それによって給紙軸ギア22を図2の矢印A方向に回転させる。給紙軸ギア22に伝達された駆動力はさらにコントロールギア23に伝達されるが、ここで給紙軸ギア22とコントロールギア23は1:1の減速比で連結されているため、それらのギアは常に同期した角度位相で回転している。
【0033】
制御カム14の側面には、その面から突出するカムフォロワ(cam follower)部14bが形成されており、付勢ばね25により付勢される制御カム14のカムフォロワ部14bが常にカム23aに倣うことによって、制御カム14は給紙軸10と同期して駆動制御される。さらには、コントロールギア23のカム23a側とは反対面に設けられた不図示のカムにより、図5に基づいて後述する制御カム28が駆動され、制御カム28の動作に伴ってトルクリミッタ12の位置が給紙軸10と同期して駆動制御される。よって、コントロールギア23のカム23a側とは反対面に設けられたそのカムおよび制御カム28から、トルクリミッタ12を移動させる動作を制御する制御手段が構成されている。トルクリミッタ12はホルダ27によって回転可能に保持されているが、ホルダ27自身も回転中心を持って回転可能に支持されており、上述したように押圧ばね26の作用によってトルクリミッタ12は給紙ローラ11に向かう方向に付勢されている。付勢ばね25による制御カム14の付勢を、後述するような必要なタイミングで解除し、トルクリミッタ12を給紙ローラ11から離間させるために、前述の制御カム28によりトルクリミッタ12の駆動を制御している。
【0034】
以上で説明した構成が駆動機構部であり、次では、給紙・分離部の構成について説明する。
【0035】
図7〜図10はそれぞれ、図1に示される自動給紙装置の動作を示す側面図である。これらの図では、圧板16、給紙ローラ11、およびトルクリミッタ12の関係を説明するためにそれらの周辺部のみが示されている。
【0036】
圧板16は、使用状態の姿勢の上端部に回転支軸16bを持ち、その回転支軸16bを中心にして回転移動が可能である。その圧板16の動作は、ばねとカムにより規制されている。給紙ローラ11に向かう方向への圧板16の付勢は、圧板16が回転するようにそれが不図示の圧板ばねによって押圧されることで行われている。圧板16の下端部にはカム16aが設けられている。一方、図2に示した給紙軸ギア22の給紙ローラ11側の面にはカム22aが設けられており、そのカム22aが図7から図10のそれぞれに示されている。カム22aは、後述するように給紙ローラ11の回転角が所定の範囲内にある時に圧板16のカム16aと当接する。図7、図8、図9、図10の順番で給紙ローラ11が矢印A方向に回転していき、カム16aがカム22aの上から滑り落ちることにより、圧板16が圧板ばねの付勢力で回転支軸16bを中心に回転移動させられる。
【0037】
このようにしてカム16aがカム22aの上を滑り落ちる際には、給紙軸10にカム16aの押圧力による回転トルクT1が発生する。ここで、図8に示されるようにカム16aがカム22aの上から滑り落ちる前にすでにトルクリミッタ12が給紙ローラ11に当接しているため、その回転トルクT1は、トルクリミッタ12のトルクによって給紙ローラ11にかかる制動トルクT2よりも小さく(T1<T2)設定されている。そのため、不図示のモータなどの駆動源から自動給紙装置以外のユニット(例えば記録装置に備えられた不図示の回復系ユニット)にも駆動力を伝達できるように、駆動力の伝達を断続する後述の遊星ギアクラッチ(図11)を介して駆動源からの駆動力を給紙ローラに伝達する構成においても、圧板ばねによる圧板16への回転付勢力により給紙ローラ11が先廻りするということが、トルクリミッタ12からの制動力によってなくなる。
【0038】
図11は、本実施形態の自動給紙装置で用いられる遊星ギアクラッチを示す模式的側面図である。図11に示される遊星ギアクラッチでは、不図示のモータにより駆動される太陽ギア30の回転中心軸にギアホルダ32が回動自在に取り付けられている。ギアホルダ32の先端部には遊星ギア31が太陽ギアと噛み合うように回動可能に取り付けられている。遊星ギア31は、ギアホルダ32の回転方向に応じてASF第1ギア33(ギアホルダ32が矢印L方向に回転した場合)または回復系第1ギア34(ギアホルダ32が矢印M方向に回転した場合)に係合可能に構成されている。
【0039】
ASF第1ギア33は、不図示のギア列を介してASFユニットすなわち本実施形態の自動給紙装置に駆動力を伝達する。また、回復系第1ギア34は、不図示の回復系ユニットに駆動力を伝達する。例えば、もし、給紙ローラ11がモータよりも速い速度で回転しようとした場合、ASF第1ギア33は、図11に示される側面から見て時計方向に回転して、遊星ギア31との噛み合いがはずれ、その結果、給紙ローラ11はモータの駆動速度よりも速い速度で回転してしまう。
【0040】
一方、前述のように圧板16が給紙ローラ11から離間する方向への移動は、給紙ローラ11の回転に伴ってカム22aがカム16aを押すことにより圧板16が回転移動することで行われる。
【0041】
以上のように圧板16が付勢される、または離間する動作は、後述する所定のタイミングにより行われ、それによって自動給紙装置での給紙動作が行われる。
【0042】
次に、自動給紙装置の給紙・分離部の構成についてさらに説明する。
【0043】
給紙ローラ11に対する圧板16の付勢および離間が上述のように所定のタイミングによって行われる動作により、圧板16上に載置された用紙の束は給紙ローラ11に押圧される。この押圧と共に、給紙ローラ11は回転駆動されるので、圧板16上に積載された用紙束のうち最上位にある用紙が給紙ローラ11に接し、その最上位の用紙が給紙ローラ11との摩擦力により搬送される。このように給紙ローラ11は摩擦力により用紙を搬送するので、給紙ローラ11の材質としては、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン共重合体)など高摩擦係数を持ったゴムや、発泡ウレタンなどを好適に用いることができる。
【0044】
なお、前述したように圧板16を離間させる機構は、給紙軸ギア22と同軸に設けられたカム22aを用いて構成されているが、給紙軸10において図2に示される給紙軸ギア23側とは反対側にも同様のカムがあり、それらのカムによって圧板16の両端部を同時に押さえることにより、圧板16が均一に回転移動するように構成されている。
【0045】
次では、給紙・分離部の構成について引き続いてさらに説明する。
【0046】
圧板16上に積載された用紙の束のうち最上位の用紙が給紙ローラ11により搬送されるが、その際、基本的には給紙ローラ11と最上位の用紙との間の摩擦力が、最上位の用紙とその直下の用紙との間の摩擦力より大きい場合が多いので、最上位の用紙のみが搬送されることが多い。しかしながら、例えば用紙の裁断時に用紙の端部にできるバリの影響がある場合や、静電気による用紙同士の貼り付きが有る場合や、表面の摩擦係数が非常に大きい用紙を使用する場合などには、給紙ローラ11によって圧板16上から複数枚の用紙が一度に引き出される場合がある。その時には、本実施形態においては以下の方法によって、圧板16上の用紙の束から最上位の用紙のみを分離する。
【0047】
本実施形態では、給紙ローラ11の表面において、用紙が給紙ローラ11に最初に接する点よりも搬送方向下流側でトルクリミッタ12が給紙ローラ11に当接するように、トルクリミッタ12が給紙ローラ11に押圧されている。トルクリミッタ12自身はホルダ27に回転可能に保持されているだけで、能動的に回転駆動していない。但し、ここではトルクリミッタ12の支軸は固定され、この固定支軸とトルクリミッタ12の間に、金属あるいはプラスチックなどで形成されたコイルばねが収納されており、トルクリミッタ12が所定の角度まで回転し、そのコイルばねが固定支軸に巻き付いたところでコイルばねと固定支軸が相対的に滑ることによって所定トルクを維持するように構成されている。トルクリミッタ12の表面は、給紙ローラ11と同程度の摩擦係数を持つようにゴムや発泡ウレタンなどで構成されている。このような構成により、給紙ローラ11とトルクリミッタ12の間に用紙が入っていない時には、トルクリミッタ12は給紙ローラ11の回転に伴ってそれに従動して回転する。
【0048】
給紙ローラ11とトルクリミッタ12の間に1枚の用紙が入った場合には、給紙ローラ11と用紙の間の摩擦力による搬送力の方が、所定のトルクで従動するトルクリミッタ12による用紙への制動力よりも大きいため、その用紙は、トルクリミッタ12を従動させつつ搬送される。しかし、2枚の用紙が給紙ローラ11とトルクリミッタ12の間に入った場合には、給紙ローラ11側にある用紙と給紙ローラ11との間の摩擦力が2枚の用紙間の摩擦力に比べて大きく、またトルクリミッタ12側にある用紙とトルクリミッタ12との間の摩擦力が2枚の用紙間の摩擦力に比べて大きくなるため、それらの用紙間で滑りが生じる。その結果、給紙ローラ11側にある用紙のみが搬送され、トルクリミッタ12側にある用紙は、トルクリミッタ12の回転の停止と共にその場に停止して搬送されない。以上で説明した構成が、トルクリミッタ12を使用して、重なり合った用紙を分離する分離部の概略である。
【0049】
次に、重送防止部の構成を説明する。
【0050】
上述のように、2枚程度の用紙が給紙ローラ11とトルクリミッタ12のニップ間に入ってきても用紙を分離することは可能であるが、それ以上の枚数が入ってきたり、あるいは2枚の用紙が入って給紙ローラ11側の用紙のみが搬送された後にニップ付近に用紙を残したまま次の用紙を連続して給紙しようとした場合には、複数枚の用紙が同時に搬送される現象いわゆる重送が発生する可能性がある。この現象を防止するために本実施形態の自動給紙装置に重送防止部を設けている。重送防止部は、上述した駆動機構部における制御カム14および戻しレバー13などから構成されている。
【0051】
図3は、戻しレバー13と制御カム14の関連を示す模式的斜視図を示す斜視図である。
【0052】
本実施形態の自動給紙装置には戻しレバー13が4本備えられており、それらの戻しレバー13が、図3に示すように互いに間隔をおいて円筒状の回転軸13bに設けられてそれらが一体となっている。回転軸13bの一端部が回動自在に嵌合する穴が制御カム14に形成されており、その穴に回転軸13bの一端部が挿入されることで、制御カム14は、回転軸13bと同軸の状態で回転軸13bの一端部に取り付けられている。
【0053】
制御カム14には、回転軸13bの一端面から延びる突起13aが図2および図3のように挿入される凹形状の切り欠きが円弧状に形成されており、その切り欠きに突起13aが係合することによって回転軸13bと制御カム14との相対的な回転角度を規制している。このように回転軸13bと制御カム14の相対的な回転が可能な範囲において、それらの相対的な回転を一方向に片寄せしておくために、回転軸13bと制御カム14のそれぞれにばね24が取り付けられている。このような構成により、制御カム14を図2の矢印C方向に回転させた時には戻しレバー13は制御カム14と同期して回転するが、制御カム14を固定して戻しレバー13を図2の矢印Cとは反対方向に回転させた時には、戻しレバー13が制御カム14とは独立して所定の角度範囲だけ回転移動することができる。
【0054】
上述した駆動機構部の説明のようにコントロールギア23の回転に同期して戻しレバー13が動作するが、以下ではそれらの基本的な動作について説明する。
【0055】
図4は、戻しレバー13の動作を説明するために自動給紙装置においてコントロールギア23や制御カム14などを含む部分を示した側面図であって、図4(a)から図4(d)の各図では、その説明に必要な構成要素のみを図2から抽出している。
【0056】
戻しレバー13は基本的に3種類のポジションを取り得る。
【0057】
図4(a)は、給紙動作が開始した直後の状態を示している。給紙動作の開始直後では、給紙待機中に新たに用紙を積載される可能性があるため、その用紙先端を所定の用紙先端部基準15bまで戻す動作を行う。この戻しレバー13位置が図4矢印B方向に最も移動した位置である。戻しレバー13がこの位置にくると、先行していた用紙の先端は完全に用紙先端部基準15bまで押し戻される。
【0058】
次に、コントロールギア23が図4(a)の矢印D方向に回転し、制御カム14のカムフォロワ部14bがコントロールギア23のカム23aから外れると、戻しレバー13は付勢ばね25の付勢力によって図4(a)の矢印E方向に回転する。
【0059】
図4(b)は、戻しレバー13が矢印E方向に最も回転移動した状態を示している。この時、制御カム14の側面から突出した突起14aが、コントロールギア23のカム23a側と反対側の面に設けられたフランジ部に当接することで停止し、戻しレバー13が所定の位置に位置決めされている。
【0060】
図4(c)は、図5(b)の状態からコントロールギア23が矢印D方向にさらに回転し、給紙動作の途中で戻しレバー13を図4(a)の位置まで戻した状態を示している。この状態では戻しレバー13の位置自体は、図4(a)に示した位置とほぼ同じである。
【0061】
図4(d)は、自動給紙装置における給紙動作の待機時での戻しレバー13の位置を示している。給紙動作の待機時は、前述のように用紙の通過経路中に戻しレバー13の先端部を侵入させることにより、自動給紙装置への用紙のセット時に用紙の先端部が自動給紙装置の奥まで不用意に入り込んでしまうことを防止している。
【0062】
図5は、図4(d)に示される待機状態を用紙の通過経路と関連させて示した自動給紙装置の模式的側断面図である。この図5には、図1に示される一点鎖線Dに沿った断面を矢印B方向から見た図が示されている。
【0063】
図5に示すように給紙ローラ11の周面には、給紙ローラ11の断面形状がD字形となるように、給紙ローラ11の回転軸と平行な方向に延びるDカット面11dが平面部として形成されている。よって、給紙ローラ11が一回転することによって給紙された用紙の先端部が記録装置の本体側で把持された後は、Dカット面11dがトルクリミッタ12側に向かってそれと対向することで給紙ローラ11とトルクリミッタ12の間に隙間が形成され、その隙間を用紙の後半の部分が通過していく構成となっている。このような構成では、用紙の通過経路全体がくの字型に曲がっているため、用紙の剛性によって用紙が給紙ローラ11に巻き付こうとするので、用紙に対して何もしないと、表面の摩擦係数が大きい給紙ローラ11に用紙が接触して用紙に大きな摩擦負荷を与えることになる。これを防止するために、給紙軸10における給紙ローラ11の近傍には、用紙との摩擦係数が低く、かつ用紙と共に容易に従動する給紙コロ18が設けられている。
【0064】
次に、本実施形態の自動給紙装置の機構における各構成部品の互いの関連動作についてタイミングチャートを用いて説明する。
【0065】
図6は、本実施形態の自動給紙装置の動作を示すタイミングチャートである。図6には、圧板16の位置、戻しレバー13の位置、トルクリミッタ12の位置、および給紙ローラ11aの回転角度を示している。
【0066】
図6において、給紙ローラ11の回転角度0°は、図5に示した待機状態を示している。図5の待機状態から一連の動作がスタートする。この時には、圧板16は給紙ローラ11から離間した位置すなわち離間位置に保持され、戻しレバー13は図4(d)の位置にある。また、トルクリミッタ12は給紙ローラ11から退避した位置すなわち退避位置にあり、給紙ローラ11のDカット面11dはトルクリミッタ12に対向している。
【0067】
次に、給紙ローラ11が角度Aまで回転すると、まず、制御カム28が動作し、トルクリミッタ12が退避位置から圧接位置へと移動を開始する。この時、給紙ローラ11、トルクリミッタ12、および圧板16は、図7に示した状態にある。
【0068】
次に、給紙ローラ11が角度Bまで回転すると、戻しレバー13が制御カム14によって図4(a)の位置に移動して、待機時に自動給紙装置上で不揃いになった可能性のある用紙の先端を用紙先端基準部15bまで戻し始める。
【0069】
次に、給紙ローラ11の回転角が角度C近傍で、給紙ローラ11の曲面部がトルクリミッタ12に対向する位置に回転すると同時に、給紙ローラ11側への圧接方向に移動してきたトルクリミッタ12が移動完了し、給紙ローラ11の曲面部とトルクリミッタ12が圧接される。この時、トルクリミッタ12は給紙ローラ11に従動するので、トルクリミッタ12中のコイルばねが所定のトルクまでチャージされる。
【0070】
次に、給紙ローラ11の回転角が角度Kで、圧板16の固定が解除され、圧板16やその上の用紙が給紙ローラ11側に向かう方向に移動し始める。給紙ローラ11、トルクリミッタ12、および圧板16は、図8に示した状態にある。この時、前述したようにトルクリミッタ12がすでに給紙ローラ11に当接しているため、不図示のモータから自動給紙装置以外のユニット(例えば不図示の回復系ユニット)にも駆動力が伝達可能に遊星ギアクラッチを介して給紙ローラ11に伝達される構成でも、圧板ばねによる圧板16の回転付勢力により給紙ローラ11が先廻りするということが、トルクリミッタ12からの制動力によってなくなる。すなわち、図11に示した遊星ギアクラッチにおいて、遊星ギア31がASF第1ギア33と噛み合っている状態で圧板16からカム22aを介して給紙軸10に回転付勢力がかかっても、遊星ギア31とASF第1ギア33の係合が外れて給紙ローラ11が先廻りするということがなくなる。
【0071】
次に、給紙ローラ11の回転角が角度Dで、戻しレバー13が図4(b)の位置まで一気に移行して、用紙の通過経路から完全に退避する。戻しレバー13が退避したところで、図9や図10に示した状態を経て、図5に示されるように圧板16上に積載された用紙19の束のうち最上位にある用紙19が給紙ローラ11に圧接される。圧接されると、前述のように用紙の搬送が開始される。
【0072】
ここからしばらくは1枚の用紙が連続して搬送され、前述のように用紙が複数枚重なった状態で搬送されてしまった場合には、重なった用紙が分離部で分離されるなどして、記録装置の本体に向けて用紙が搬送される(図1に示した矢印A方向)。搬送された用紙の先端部は記録装置本体側で把持され、その用紙が記録装置本体と給紙ローラ11の共動によって搬送され出すと、給紙動作は上述の重送防止動作に入る。
【0073】
次に、給紙ローラ11の回転角が角度E近傍で、戻しレバー13が、図4(c)の矢印F方向へ回転し始める。
【0074】
次に、給紙ローラ11の回転角が角度F近傍で、圧板16の離間動作が開始される。圧板16が給紙ローラ11から離れる方向に移動されると、圧板16上の主たる用紙の給紙ローラ11への圧接が解除されるため、用紙の搬送力は減少する。また、この直後に給紙ローラ11のDカット面11dが、圧板16が取り付けられた圧板部に対向してくる。しかし、トルクリミッタ12と給紙ローラ11は依然圧接しているので、用紙の搬送は引き続き行われている。
【0075】
次に、給紙ローラ11の回転角が角度G近傍で、制御カム28の動作によって、給紙ローラ11へのトルクリミッタ12の圧接が解除され始める。この圧接が解除されると、給紙ローラ11への用紙の圧接力はなくなるので、自動給紙装置側では用紙の保持力はなくなる(本体側では保持している)。ちょうど、この用紙保持力が無くなったタイミングで、戻しレバー13が用紙の通過経路に侵入しだし、給紙ローラ11とトルクリミッタ12のニップ部付近に次の用紙の先端が残っていた場合には、戻しレバー13の先端部によって用紙の先端が掻き戻されて行く。
【0076】
次に、給紙ローラ11の回転角が角度H付近で、戻しレバー13が図4(c)の位置まで完全に戻され、給紙されている最中の用紙を除く他の全ての用紙の先端が用紙先端基準部15bまで逆方向に搬送される。
【0077】
次に、給紙ローラ11の回転角が角度J付近で、制御カム14の回転角度が図4(d)に示した角度に戻り、戻しレバー13が図4(d)の待機状態の位置に戻される。
【0078】
以上で、給紙ローラ11の1回転に同期した、自動給紙装置の制御は終了する。
【0079】
以上で説明したように本実施形態の自動給紙装置では、給紙ローラ11とトルクリミッタ12によって圧板16上の用紙を1枚ずつ分離して送り出す自動給紙装置において、圧板16を給紙ローラ11の回転軸上のカム22aによって移動させる際にトルクリミッタ12を給紙ローラ11に当接させる。これにより、カム22aが圧板16からの力を受けてその力で給紙ローラ11が回転させられようとしても、トルクリミッタ12からの制動力によって給紙ローラ11の先廻り現象が抑えられる。すなわち、駆動源からの駆動力を、その駆動力の伝達を断続するクラッチ手段を介して給紙ローラ11に伝達して給紙ローラ11を回転させる構成においても、圧板16を移動させるために給紙軸10上のカム22aが力を受けた際に、カム22aによる給紙ローラ11の回転力でクラッチ手段の駆動力の伝達が解除されることがなく、給紙ローラ11の先廻り現象が発生することがない。このような構成によれば、自動給紙装置とは別の装置を駆動するための駆動源によって給紙ローラ11を駆動させる場合でも、積載部上の用紙が給紙ローラ11に当接する速度を抑え、それらが当接する時の衝撃音を低減させることができる。その結果、自動給紙装置や、それが装着される記録装置などにおいて、動給紙装置専用の駆動源を設ける必要がなくなり、装置の複雑化や大型化、コストの増加を招くことなしに、シート材の重送を防止した給紙機構が実現される。
【0080】
なお、本実施形態の自動給紙装置の分離部では、用紙を分離するために、トルクリミッタを使用した摩擦分離方式を使用したが、本発明の趣旨はこれには拘束されず、摩擦パッドを用いた摩擦分離方式など、あらゆる種類の分離方式を分離部に適応可能であることは言うまでもない。
【0081】
また、本実施形態では、モータからの駆動力を駆動力伝達機構を介して給紙ローラ11へ伝達する際に、その駆動力伝達機構の途中で、自動給紙装置とは異なる他のユニットにも駆動力を伝達するために遊星ギアクラッチを使用したが、本発明の趣旨はこれには拘束されず、ばねを用いて構成されたばねクラッチなども駆動力伝達機構に対して適応可能であることは言うまでもない。
【0082】
(第2実施例)
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。
【0083】
第2実施例では第1実施例と同様の構成のもとに、コントロールギア23を形状変更(以下コントロールギア23′(不図示))し、ホルダ27およびトルクリミッタ12のタイミングを変更した例である。図12は、本発明の第2実施形態に係る自動給紙装置(ASF:Automatic Sheet Feeder)の動作を示す、タイミングチャートである。
【0084】
図12には、圧板16の位置、戻しレバー13の位置、トルクリミッタ12の位置、および給紙ローラ11aの回転角度を示している。
【0085】
図12において、給紙ローラ11の回転角度0°は、待機状態であり、ここから一連の動作がスタートする。そして、第1実施例と異なる点は、該待機状態においてトルクリミッタ12は、ホルダ27がASFベース15に突き当たった位置で給紙ローラ11に当接可能位置にある。しかし、給紙ローラ11はDカット面11dでトルクリミッタ12に対向しているため、トルクリミッタ12と給紙ローラ11は当接していない。当接は角度M以降となるが、給紙ローラ11の回転でトルクリミッタ12を微小量h下げるのみであるため、この時の騒音は発生しない。
【0086】
これは、一連動作の後半領域の角度Lにおいて、コントロールギア23′によって、トルクリミッタ12を給紙ローラ11との当接可能位置に移動させているためである。
【0087】
他の部分については実施例1と同様であり、第1実施例と同様にトルクリミッタ12からの制動力によって給紙ローラ11の先廻り現象が抑えることでの用紙の給紙ローラ11への衝撃音の抑制効果に加え、トルクリミッタ12の付勢について、上記給紙ローラ11への用紙の当接時と時間的間隔を持つことができ、騒音のピーク値を抑制効果や、連続した衝撃音を回避することが可能となる。
【0088】
その結果、自動給紙装置や、それが装着される記録装置などにおいて、装置の複雑化や大型化、コストの増加を招くことなしに、さらに静音効果のあるシート材の重送を防止した給紙機構が実現される。
【0089】
(第3実施例)
次に、本発明の第3の実施形態について図面を参照して説明する。
【0090】
第3実施例では第1実施例と同様の構成のもとに、給紙軸10を形状変更(以下給紙軸10′)し、補助ローラ40および補助ローラ40に近接する給紙コロ18を削除した例である。図13は、本発明の第3実施形態に係る自動給紙装置(ASF:Automatic Sheet Feeder)の全体の構成を模式的に示す斜視図である。
【0091】
図13において、ガイド10′aは実施例1と同形状、ガイド10′bは、実施例1の補助ローラ40よりも小さく構成している。ここでは、給紙ローラ11の外径がφ42、ガイド10′aがφ41、ガイド10′bがφ37として、非基準側に向かって、外径を小さく設定している。
【0092】
この構成によれば、ガイド10′a、10′bによって、用紙の浮きなどを確実に抑制することができるとともに、圧板16の給紙ローラ11への当接時において、部品公差、部品強度による圧板16の反りや変形等が発生時に、搬送力を発生しないガイド10′a、10′bに対して、用紙が付勢されることはないため、給送への影響はない。
【0093】
この構成によれば、上述の第1、第2実施例の効果に加え、補助ローラが削除可能となり、これに対応する給紙コロ、分離シート、圧板ばね等を削除することができ、さらなる装置の簡略化が可能となる。
【0094】
その結果、自動給紙装置や、それが装着される記録装置などにおいて、装置が簡略化されたシート材の重送を防止した給紙機構が実現される。
【0095】
なお、本実施形態のガイドは、給紙軸と一体の例を示したが、本発明はこれに拘束されず、給紙軸への別部材取付けや記録装置本体の外装を利用したガイドなどであっても適応可能であることは自明である。
【0096】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、給送ローラと摩擦分離手段によって積載部上のシート材の束からシート材を1枚ずつ分離して送り出す自動給紙装置において、積載部上のシート材を押圧して給送ローラに当接させるための押圧部材を給送ローラの回転軸上のカム部材によって移動させる際に制御手段によって摩擦分離手段を給送ローラに当接させることにより、例えば駆動源からの駆動力を、クラッチ手段を介して給送ローラに伝達する構成でも、摩擦分離手段からの制動力によって給送ローラの先廻り現象が抑えられるので、自動給紙装置専用の駆動源を使用する必要がなくなる。よって、自動給紙装置や、それが装着される装置において、装置の複雑化や大型化、コストの増加を招くことなしに、容易にシート材の重送を防止できる給紙機構が提供される。
【0097】
さらに、前記摩擦分離手段を、待機時に前記給送ローラとの当接位置に位置するように制御することによって、摩擦分離手段の付勢について、上記給紙ローラへの用紙の当接時と時間的間隔を持つことができ、騒音のピーク値を抑制効果や、連続した衝撃音を回避することが実現可能となる。
【0098】
そして、前記給送ローラは用紙基準側のみとして、非基準側方向に向かって、前記押圧部材とガイドの距離を離す構成とすることによって、装置を簡略化した自動給紙装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動給紙装置の全体の構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示される矢印B方向から自動給紙装置を見た模式的側面図である。
【図3】戻しレバーと制御カムの関連を示す模式的斜視図である。
【図4】戻しレバーの動作を説明するために自動給紙装置においてコントロールギアや制御カムなどを含む部分を示した側面図である。
【図5】図4に示される待機状態を用紙の通過経路と関連させて示した自動給紙装置の模式的側断面図である。
【図6】本発明の自動給紙装置の動作を示す、タイミングチャートである。
【図7】自動給紙装置の動作を示す側面図である。
【図8】自動給紙装置の動作を示す側面図である。
【図9】自動給紙装置の動作を示す側面図である。
【図10】自動給紙装置の動作を示す側面図である。
【図11】自動給紙装置で用いられる遊星ギアクラッチの構成を示す模式的側面図である。
【図12】第2実施例の自動給紙装置の動作を示す、タイミングチャートである。
【図13】本発明の第3実施例に係る自動給紙装置の全体の構成を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
10 給紙軸
11 給紙ローラ
11d Dカット面
12 トルクリミッタ
13 戻しレバー
13a 突起
13b 回転軸
14 制御カム
14a 突起
14b カムフォロワ部
15 ASFベース
15a 用紙搬送基準部
15b 用紙先端基準部
16 圧板
16a,22a,23a カム
16b 回転支軸
17 サイドガイド
18 給紙コロ
19 用紙
20 入力ギア
21 ダブルギア
22 給紙軸ギア
23 コントロールギア
23a カム
24 ばね
25 付勢ばね
26 押圧ばね
27 ホルダ
28 制御カム
30 太陽ギア
31 遊星ギア
32 ギアホルダ
33 ASF第1ギア
34 回復系第1ギア
40 補助ローラ

Claims (7)

  1. シート材の束が積載される積載部と、
    前記積載部に積載されたシート材を送り出すために回転する給送ローラと、
    前記給送ローラに当接するように移動可能に支持され、前記給送ローラとの間にシート材を挟み込むようにシート材に当接して、該シート材との摩擦力によって前記シート材を前記積載部上のシート材の束から1枚ずつ分離するための摩擦分離手段と、
    前記積載部上のシート材を押圧して前記給送ローラに当接させる動作、および前記積載部上のシート材を前記給送ローラから離間させる動作を行うために前記積載部に移動可能に設けられた押圧部材と、
    前記給送ローラの回転軸に設けられて前記給送ローラと共に回転し、前記押圧部材を移動させる動作を制御するためのカム部材と、
    前記押圧部材の移動により前記積載部上のシート材を前記給送ローラに当接させる際に前記給送ローラに前記摩擦分離手段を当接させる動作を制御する制御手段とを有する自動給紙装置。
  2. 前記給送ローラは、駆動力の伝達を断続するクラッチ手段を介して駆動源からの駆動力が伝達されることによって回転するものである請求項1に記載の自動給紙装置。
  3. 前記摩擦分離手段は、前記給送ローラとの間に挟み込まれたシート材の移動に伴って回転するように回動可能に支持されたリタードローラである請求項1に記載の自動給紙装置。
  4. 前記クラッチ手段は遊星ギアクラッチである請求項1に記載の自動給紙装置。
  5. 前記クラッチ手段は、ばねを用いて構成されたばねクラッチである請求項1に記載の自動給紙装置。
  6. 前記摩擦分離手段を、待機時に前記給送ローラとの当接位置に位置するように制御したことを特徴とする請求項1に記載の自動給紙装置。
  7. 前記給送ローラを用紙基準側の1ヶ所にするとともに、非基準側方向に向かって、前記押圧部材とガイドの距離を離す構成とすることを特徴とする自動給紙装置。
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