JP2004181655A - プラスチック光学部材の製造方法とプラスチック光ファイバ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも内壁部が、重合性モノマーと、前記重合性モノマーとの重合体の波長589nmにおける屈折率差が0.1以下である他の少なくとも1種の重合性モノマーとの共重合体からなる中空状構造体を形成する第一の工程と、前記構造体の中空部に、前記の少なくとも二種類の重合性モノマーと、前記重合性モノマーの共重合体と異なる屈折率を有する化合物とを注入し、前記重合性モノマーを共重合させて、共重合体からなる領域を形成する第二の工程とを含むプラスチック光学部材の製造方法であって、前記構造体の少なくとも前記内壁部が、前記中空部へ注入する少なくとも二種類の重合性モノマーと同一で、且つその組成比が実質的に同一の共重合体からなるプラスチック光学部材の製造方法である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプラスチック光学部材の製造方法の技術分野に属し、特に、屈折率分布型プラスチック光伝送体の性能向上に寄与する技術分野に属する。
【0002】
【従来の問題】
プラスチック光学部材は、同一の構造を有する石英系の光学部材と比較して、製造および加工が容易であること、および低価格であること等の利点があり、近年、光ファイバおよび光レンズなど種々の応用が試みられている。プラスチック光ファイバは、素線が全てプラスチックで構成されているため、伝送損失が石英系と比較してやや大きいという短所を有するものの、良好な可撓性を有し、軽量で、加工性がよく、石英系光ファイバと比較して口径の大きいファイバとして製造し易く、さらに低コストに製造可能であるという長所を有する。従って、伝送損失の大きさが問題とならいない程度の短距離用の光通信伝送媒体として種々検討されている。
【0003】
プラスチック光ファイバは、一般的には、重合体をマトリックスとする有機化合物からなる芯(本明細書において「コア部」と称する)とコア部と屈折率が異なる(一般的には低屈折率の)有機化合物からなる外殻(本明細書において「クラッド部」と称する)とから構成される。特に、中心から外側に向かって屈折率の分布を有するコア部を備えた屈折率分布型プラスチック光ファイバは、伝送する光信号の帯域を大きくすることが可能なため、高い伝送容量を有する光ファイバとして最近注目されている。この屈折率分布型プラスチック光ファイバの製法の一つに、界面ゲル重合法を利用して、光ファイバ母材(本明細書において、「プリフォーム」と称する)を作製し、その後、前記プリフォームを延伸する方法がある。この製造方法では、まず、クラッド部となるポリフッ化ビニリデンや、ポリメタクリレート(PMMA)等の重合体からなる円筒管を作製する。
円筒管の製法としては、例えば、樹脂を溶融して押し出す方法や、メチルメタクリレート(MMA)等のモノマーを、充分な剛性のある容器に入れて、該容器を回転させつつ、モノマーを重合させる方法などが挙げられる。
【0004】
次に、該円筒管の中空部に屈折率分布を有するコア部を形成する。コア部に屈折率分布を付与する方法として、屈折率分布の異なる2種以上の重合性混合物の積層状物を同心円状に押出して形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1)。また、プリフォームを重合により得る方法として、重合体からなるクラッド部の内部に、該クラッド部を形成する重合体と異なる屈折率を有するコア部を形成可能なモノマー及び重合開始剤等を含む混合物を滴下しながら加熱重合する方法(例えば、特許文献2および3);重合体からなる円筒管内にモノマー、重合性の屈折率上昇剤、および重合開始剤からなる混合物を充填後、加熱重合してコア部を形成して、コア部に含有される屈折率調整剤等の濃度分布によって屈折率の分布を生じされる方法(例えば、特許文献4);および屈折率の異なる重合体の配合比を連続的に変化させる方法(例えば、特許文献5);が開示されている。このようにして得られたプリフォームを、180℃〜250℃程度の雰囲気中で熱延伸することにより、屈折率分布型プラスチック光ファイバが得られる。
【0005】
【特許文献1】
特開平2−16504号公報
【特許文献2】
特開平5−181023号公報
【特許文献3】
特開平6−194530号公報
【特許文献4】
国際公開WO93/08488号公報
【特許文献5】
特開平4−9730号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献4等に記載されているような、重合性の屈折率上昇剤で屈折率の分布を付与する場合、屈折率分布領域は共重合組成比の異なるポリマーのミクロなブレンド構造となり、過剰な散乱が発生するため充分な透明性有するプラスチック光ファイバを再現性良く生産するのが困難である。また、単一ポリマーに非重合性の屈折率上昇剤を用いて屈折率分布を形成する場合、単一ポリマーの持つガラス転移温度が屈折率上昇剤により低下し、耐熱性を損ねる場合がある。
【0007】
本発明は前記諸問題に鑑みなされたものであって、プラスチック光学部材を製造する際に伝送損失性能を損なうことなく、優れた耐熱性・耐湿性などを有するプラスチック光学部材の製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意検討を図った結果、プラスチック光学部材の製造方法において、前述の部分的な異なる共重合組成によって起こる散乱に起因する性能劣化をコア部形成前の中空管内壁組成によって解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。より詳細には、プラスチックからなる中空管の中空部で重合性モノマーを重合させて屈折率分布領域を形成するプラスチック光学部材の製造方法において、該中空管の少なくとも内壁を形成する際に用いた2種類以上の重合性モノマーと実質的に同一の組成比の2種類以上の重合性モノマーに屈折率調整剤を添加した組成物を中空部に注入して共重合し、該屈折率調整剤の濃度分布に基づく屈折率分布を有する共重合体からなる領域を形成することで、プラスチック光学部材の透明性および伝送損失性能を損なうことなく、耐熱性および耐湿性などが向上し、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 少なくとも内壁部が、重合性モノマーと、前記重合性モノマーとの重合体の波長589nmにおける屈折率差が0.1以下である他の少なくとも1種の重合性モノマーとの共重合体である中空状構造体を形成する第一の工程と、前記構造体の中空部に、前記の少なくとも二種類の重合性モノマーと、前記重合性モノマーの共重合体と異なる屈折率を有する化合物とを注入し、前記重合性モノマーを共重合させて、共重合体からなる領域を形成する第二の工程とを含むプラスチック光学部材の製造方法であって、前記構造体の少なくとも内壁部が、前記中空部へ注入する少なくとも二種類の重合性モノマーと同一で、且つその組成比が実質的に同一の共重合体からなるプラスチック光学部材の製造方法。
[2] 中空部を有する構造体を作製する第一の工程と、前記構造体の中空部に、二種類以上の重合性モノマーと、前記二種類以上の重合性モノマーの共重合体と異なる屈折率を有する化合物とを注入し、前記二種類以上の重合性モノマーを共重合させて、前記構造体の中空部に該共重合体からなる領域を形成する第二の工程とを含み、前記二種類以上の重合性モノマーのそれぞれの単独重合体の波長589nmにおける屈折率の差が0.1以下であり、且つ前記構造体の少なくとも内壁部が前記二種類以上の重合性モノマーと実質的に同一の質量比の共重合体からなるプラスチック光学部材の製造方法。
[3] 前記第二の工程により、中心から外側に向かって屈折率の分布を有する共重合体からなる領域を形成する[1]または[2]に記載のプラスチック光学部材の製造方法。
【0010】
[4] 前記二種類以上の重合性モノマーのうち、最も含有割合の高い重合性モノマーの単独重合体のガラス転移点が、その他の重合性モノマーの単独重合体のガラス転移点より低い[1]〜[3]のいずれかに記載のプラスチック学光学部材の製造方法。
[5] クラッド部とコア部とからなるプラスチック光学部材の製造方法であって、前記第一の工程により、前記共重合体からなるクラッド部となる中空部を有する構造体を作製し、前記第二の工程により、前記共重合体と異なる屈折率を有する化合物の濃度分布に基づく屈折率の分布を有する前記共重合体からなるコア部となる領域を形成する[1]〜[4]のいずれかに記載のプラスチック光学部材の製造方法。
[6] クラッド部とコア部とからなるプラスチック光学部材の製造方法であって、クラッド部となる中空部を有する構造体を作製する工程を含み、前記第一の工程により、前記構造体の内面に前記共重合体からなる層を形成し、前記第二の工程により、前記共重合体と異なる屈折率を有する化合物の濃度分布に基づく屈折率の分布を有する前記共重合体からなるコア部となる領域を形成する[1]〜[5]のいずれかに記載のプラスチック光学部材の製造方法。
[7] [1]〜[6]のいずれかの製造方法によって製造された光学部材を延伸加工して得られるプラスチック光ファイバ。
【0011】
なお、本明細書において、「中心から外側に向かって屈折率の分布を有する」とは、中心から外側に向かう特定の方向において屈折率の分布があればよく、例えば、前記コア部となる領域が円柱形状の場合は、該円柱の断面の中心から半径方向外側に向かって屈折率の分布があれば足りるものであり、円柱の長尺方向にも屈折率の分布があることを必要とするものではない。
【0012】
なお、本明細書において、「プラスチック光学部材」という用語は最も広義に解釈する必要があり、延伸処理工程によって得られるプラスチック光ファイバのほか、光学レンズ、光導波路等、プラスチック光学部材の全般を含む概念として用いる。また、本明細書では、ファイバを延伸加工する前のプリフォームも含まれるものとする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のプラスチック光学部材の製造方法は、例えば、クラッド部とコア部(またはクラッド部とコア部と、双方の間にアウターコア層を有する)プラスチック光学部材の製造に適用することができる。後述の本発明の第一の工程によってクラッド部となる中空管を、そして第二の工程によってコア部を形成する。この第一および第二の工程を経て、コア部およびクラッド部となる領域をそれぞれ有するプリフォームが得られ、得られたプリフォームを用途に応じて加工することで種々の形態の光学部材を作製することができる。例えば、プリフォームを延伸すれば光ファイバが得られ、プリフォームを断面方向にスライスすることで導光材を、さらに屈折率分布を持ったプリフォームである場合はレンズを得ることができる。
【0014】
上記した製造方法において、本発明はコア部とクラッド部とからなるプラスチック光学部材およびまたはそのプリフォームを作製することを特徴とする。さらには、コア部、クラッド部、およびコア部とクラッド部との間に一層以上のアウターコア層を有するプラスチック光学部材を作製することもできる。前者の構造の光学部材を製造する場合は、前記第一の工程により、クラッド部となる構造体を作製し、後者の構造の光学部材を製造する場合は、前記第一の工程において、クラッド部と該クラッドの内面に一層以上のアウターコア層とを有する構造体を作製する。
【0015】
以下、本発明の製造方法の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態は、二種類以上の重合性モノマーを共重合させて、クラッド部となる共重合体からなる中空管を得る第一の工程と、前記中空管の中空部に、前記二種類以上の重合性モノマー、およびこれらの重合性モノマーの共重合体と異なる屈折率を有する化合物を注入し、前記二種類以上の重合性モノマーを前記第一の工程と実質的に同一の組成比で共重合させて、コア部となる領域を形成しプリフォームを得る第二の工程と、前記プリフォームを加工する第三の工程とを含み、前記二種類以上の重合性モノマーのそれぞれの単独重合体の波長589nmにおける屈折率の差が0.1以下であるプラスチック光学部材の製造方法である。
【0016】
また、本発明の第二の実施形態は、クラッド部となる重合体からなる中空管を作製するクラッド部作製工程と、前記中空管の中空部で二種類以上の重合性モノマーを共重合させて、中空管の内面に共重合体からなるアウターコア層を形成する第一の工程と、前記アウターコア層を有する中空管の中空部に前記二種類以上の重合性モノマー、およびこれらの重合性モノマーの共重合体と異なる屈折率を有する化合物を注入し、前記二種類以上の重合性モノマーを前記第一の工程と実質的に同一の組成比で共重合させて、コア部となる領域を形成しプリフォームを得る第二の工程と、前記プリフォームを加工する第三の工程とを含み、前記二種類以上の重合性モノマーのそれぞれの単独重合体の波長589nmにおける屈折率の差が0.1以下であるプラスチック光学部材の製造方法である。
【0017】
前記第一の工程では、二種類以上の重合性モノマーを共重合させて、共重合体からなるクラッド部またはアウターコア層を形成し、前記第二の工程では、二種類以上の重合性モノマーを前記第一の工程と実質的に同一の組成比で共重合させてコア部を形成する。実質的に同一というのは、充分な光の導波を達成する屈折率分布機構が二種以上のモノマーの共重合体により形成されないことを意味する。二種類以上のモノマーを用いる場合、コア部作製時におけるそれらの質量比が、クラッド部またはアウターコア部の作製時における質量比に対して全質量の±10%の範囲であると、共重合体によるコア−クラッド界面およびコア−アウターコア界面でのミクロな相分離構造を抑制できる点で好ましく、±5%の範囲であるのがより好ましい。なお、三種類以上の重合性モノマーを用いた場合は、最も質量比の差が大きい重合性モノマーの質量比の「差」をいうものとする。
また、クラッド部およびアウターコア層は、伝送される光信号をコア部に留めるため、コア部の屈折率より低い屈折率を有しているのが好ましい。
【0018】
従来、光学部材のコア部を異種のモノマー用いて作製する場合は、屈折率分布構造を形成することを目的としていた。即ち、界面ゲル重合法などを利用して、重合の進行方向に沿って、共重合比に傾斜を持たせて、屈折率分布構造を形成していた。かかる態様では、2種以上の重合性モノマーは、それぞれの単独重合体の屈折率の差が大きくなる組み合わせで選択され、クラッド部またはアウターコア層を構成している共重合体とは異なる組成比で異種モノマーを共重合する必要があった。しかし、本発明では、2種類以上のモノマーを屈折率分布形成のために用いるのではなく、屈折率調整剤の添加による重合体のガラス転移温度が低下するのを軽減するため、さらに重合体の剛性および耐吸湿性等の改善のために用いている。コア部の形成において、クラッド部またはアウターコア層を構成している共重合体と実質的に同一の組成比で異種のモノマーを共重合させるとともに、屈折率調整剤を該共重合体中に含有させることにより、プラスチック光学部材の透明性および伝送損失性能を損なうことなく、耐熱性および耐湿性などを向上させている。
【0019】
以下、前記実施形態の各工程に用いられる材料について説明する。
前記重合性モノマーとしては、例えば、国際公開WO93/08488号公報に記載されているようなメチルメタクリレート(MMA)、重水素化メチルメタクリレート(MMA−d8)、トリフルオロエチルメタクリレート(3FMA)、ベンジルメタクリレート(BzMA)、等が挙げられ、その他のメタアクリル系モノマーとしては、分岐状炭化水素基を有するもの、例えば、イソプロピルメタクリレート(IPMA)、t−ブチルメタクリレート(tBMA)や、炭素数7〜20の脂環式炭化水素基を有するもの、例えば、イソボルニルメタルリレート(IBXMA)、ノルボルニルメタクリレート(NBXMA)等が挙げられる。光学部材の耐熱性を向上させるため、二種類以上の重合性モノマーのうち少なくとも一種類以上の重合性モノマーの重合体のガラス転移温度(Tg)は他の重合性モノマーのTgより高いものを用いるのが好ましく、例えば、MMAを主成分モノマーとした場合には副成分モノマーとしてイソボルニルメタクリレート(IBXMA)などを用いるのが好ましい。塊状重合が容易かつランダム共重合が可能である原料を選択し、コア部を形成するのが好ましい。
【0020】
これらより複数のモノマーを選択して共重合体を形成する。この共重合の組み合わせはその共重合比の分布に基づいたガラス転移温度や剛性および吸水性の改善等のために用いる。組成比はモノマーの相溶性や目的用途を満たすように任意に組み合わせることができるが、ランダムに近い共重合を行うためにモノマーの反応性比は0.5〜1.5の範囲であるのが好ましく、0.8〜1.2の範囲であるのがより好ましい。この共重合体は屈折率分布形成のために用いるのではないため、その屈折率は波長589nmにおける屈折率差が好ましくは0.1以下、より好ましくは0.05以下であるようなモノマーを組み合わせる事ができる。なお、伝送性能を向上させるためなどの目的で屈折率分布形成を行う場合は、後述の屈折率調整剤を用いることで屈折率分布を付与することができる。
【0021】
また、光学部材を近赤外光用途に用いる場合は、構成するC−H結合の振動モードに起因した吸収損失が起こるために、国際公開WO93/08488号公報に記載されているようにC−H結合の水素原子を重水素原子で置換したモノマーを用いるのが好ましい。また、重合性モノマーが有する水素原子を重水素原子(D)またはハロゲン原子(X)で置換したモノマーを用いるのも好ましい。特定の波長領域において、C−H結合に起因する光伝送損失が生じるが、HをDまたはXで置き換えることにより、この伝送損失を生じる波長域を長波長化することができ、伝送信号光の損失を軽減することができる。これらはクラッド部と同様に、重合後の透明性を損なわないためにも、不純物や散乱源となる異物は低減させることが望ましい。
【0022】
二種類以上の重合性モノマーのそれぞれの重合体の屈折率の差が、波長589nmの屈折率において0.1以下であるのが好ましい。双方の屈折率差が前記範囲であると、透明性がより高い光学部材を作製することができる。
【0023】
前記第一および第二の工程において、重合性モノマーを共重合する際に、重合状態や重合速度を制御したり、熱延伸工程に適する分子量に制御することを目的として、重合開始剤および連鎖移動剤を添加することができる。
重合開始剤としては、用いるモノマーに応じて適宜選択することができる。例えば、国際公開WO93/08488号公報に記載されているような、過酸化ベンゾイル(BPO)、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−t−ブチルパーオキシド(PBD)、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル4,4,ビス(t−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などが挙げられる。更に、ジメチルアゾビスイソブチレートなどのアゾ系開始剤も好適に用いることができる。なお、これら重合開始剤は、2種類以上を併用して使用してもよい。
【0024】
連鎖移動剤は、主に重合体の分子量の調整のために用いられ、モノマーに応じて適宜選択することができる。モノマーとしてメチルメタクリレート系モノマーを用いた場合は、連鎖移動剤としては、例えば国際公開WO93/08488号公報に記載のような、アルキルメルカプタン類(n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いるのが好ましく、中でも、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのが好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。なお、前記連鎖移動剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0025】
前記重合開始剤や連鎖移動剤の添加量については特に制限はないが、重合開始剤は、一般的には重合性モノマーに対して0.10〜1.00質量%添加するのが好ましく、0.40〜0.60質量%添加するのがより好ましい。連鎖移動剤は、一般的にはモノマーに対して、0.10〜0.40質量%添加するのが好ましく、0.15〜0.30質量%添加するのがより好ましい。
【0026】
前記第二の工程において、中心から外側に向かって屈折率の分布を有するコア部(以下、「屈折率分布型コア部」と称する)を形成すると、高い伝送容量を有する屈折率分布型プラスチック光ファイバとなるので好ましい。屈折率分布型コア部は、前記第二の工程において、屈折率調整剤を用いることにより形成できる。屈折率調整剤は、コア部の原料となるモノマーに添加した後、重合することにより、コア部に含有させることができる。屈折率調整剤は、国際公開WO93/08488号公報や特開平5−173026号公報に記載されているような、モノマーの合成によって生成される重合体との比較において溶解性パラメータとの差が7(cal/cm3)1/2以内であると共に、屈折率の差が0.001以上であり、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して、屈折率が高くなる性質を有するものをいう。この性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、いずれも用いることができる。例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジルnブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ビフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)、および特開平8−110421号公報に記載されているものなどが挙げられる。なお、これらの化合物中に存在する水素原子を重水素やフッ素などに置換した化合物も広い波長域での透明性を向上させる目的で用いることができる。中でも、BEN、DPS、TPP、DPSOが好ましい。また、特開平08−110420号公報に記載されているように、この屈折率調整剤が、70℃以下で固体である材料を用いると、屈折率調整剤のモビリティーを抑えて延伸加工する場合は、延伸時に拡散し難くなるので好ましい。
【0027】
前記屈折率調整剤の添加量は、屈折率上昇の程度やポリマーマトリクスとの関係によって変化するが、一般的に好ましい範囲としては重合性組成物の1〜30質量%、より好ましくは3〜25質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。
【0028】
屈折率調整剤の濃度および分布を調整することによって、プラスチック光ファイバ内部の屈折率を所望の値に変化させることができる。その添加量は、用途および組み合わされるコア部原料の重合性モノマーなどに応じて適宜選ばれる。
【0029】
その他、コア部およびクラッド部には、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができる。例えば、クラッド部およびコア部の耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として使用することができる。これらの添加剤も、前記原料モノマーに添加した後、重合することによって、コア部およびクラッド部に含有させることができる。
【0030】
以下、前記第一および第二の実施の形態の各工程について詳細に説明する。
第二の実施の形態は、クラッド部となる重合体からなる中空管を作製する。該工程に用いる、クラッド部を構成する材料については特に制限されず、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。特に、コア部との屈折率差を確保するため、フッ素を有するポリマーを用いるのが好ましく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化(メタ)アクリル酸エステル系樹脂が好ましい。また、アモルファスポリオレフィン樹脂などを用いることができる。クラッド部となる中空管は、一旦、重合体を作製した後、押し出し成形等の成形技術を利用して、中空管に成形することで作製することができる。また、後述する第一の工程の如く、重合容器を回転させつつ重合性モノマーを重合することによって作製することもできる。
【0031】
前記第一の実施形態では、前記第一の工程により、クラッド部となる中空状(例えば円筒形状)の管を作製し、前記第二の実施形態では、前記第一の工程により、前記クラッド部作製工程で得られた中空管の内面に前述の共重合組成を有するアウターコア層を形成する。アウターコア層は続く第2の工程である(インナーコア部の)重合において、たとえば界面ゲル重合でコア部を形成する際に重合反応を進める等を目的として設ける。中空の円筒管の製法としては、例えば国際公開WO93/08488号公報に記載されている様な製造方法が挙げられる。例えば、円筒形状の重合容器に、クラッド部の原料となるモノマーを注入し、該重合容器を回転(好ましくは、円筒の軸を水平に維持した状態で回転)させつつ、前記モノマーを重合させることにより、重合体からなる円筒管を作製することができる。重合容器内には、モノマーとともに、重合開始剤、連鎖移動剤、および所望により添加される安定剤などを注入することができる。重合温度および重合時間は、用いるモノマーによって異なるが、一般的には、重合温度は60〜90℃であるのが好ましく、重合時間は5〜24時間であるのが好ましい。この時に、特開平8−110419号公報に記載されている様に、原料をプレ重合して原料粘度を上昇させてから行ってもよい。また、重合に使用する容器が回転によって変形してしまうと、得られる円筒管に歪みを生じさせることから、充分な剛性を持つ金属管・ガラス管を用いることが望ましい。アウターコア層の形成も、同様に行うことができる。
【0032】
前記クラッド部(以下、「クラッド部」および「円筒管」という場合は、内面にアウターコア層を有する「クラッド部」および「円筒管」も含むこととする)となる円筒管は、第二の工程でコア部の原料となる重合性モノマー等を注入できるように、底部を有しているのが好ましい。底部は前記円筒管を構成している重合体と密着性および接着性に富む材質であるのが好ましい。また、底部を前記円筒管と同一の重合体で構成することもできる。重合体からなる底部は、例えば、重合容器を回転させて重合する(以下、「回転重合」という場合がある)前もしくは後に、重合容器を垂直に静置した状態で、重合容器内に少量の重合性モノマーを注入し、重合することによって形成することができる。
【0033】
前記回転重合後に、残存するモノマーや開始剤を完全に反応させることを目的として、該回転重合の重合温度より高い温度で得られた構造体に加熱処理を施してもよく、所望の中空管が得られた後、未重合の組成物を取り除いてもよい。
【0034】
前記第二の工程では、前記第一の工程で作製したクラッド部の中空部に、重合性モノマー等を注入し、該中空部中で重合性モノマーを重合する。重合法は、重合後の残留物の観点から溶媒等を用いない界面ゲル重合法が特に好ましい。この界面ゲル重合法を用いることで、重合性モノマーの重合は、前記円筒管のゲル効果によって、粘度の高くなった内壁表面から断面の半径方向、中心に向かって進行する。重合性モノマーに前記屈折率調整剤を添加して重合すると、前記円筒管を構成している重合体に対して親和性の高いモノマーが前記円筒管の内壁面に偏在して重合し、外側には屈折率調整剤濃度が低い重合体が形成される。中心に向かうに従って、形成された重合体中の該屈折率調整剤の比率が増加する。このようにして、コア部となる領域内に屈折率調整剤の濃度分布が生じ、この濃度分布に基づいて、連続した屈折率の分布が導入される。
【0035】
上記説明したように、第二の工程において、形成されるコア部となる領域に屈折率の分布が導入されるが、屈折率が互いに異なる部分間は熱挙動も互いに異なるので、重合を一定温度で行うと、その熱挙動の違いからコア部となる領域は、重合反応に対して発生する体積収縮の応答性が変化し、プリフォーム内部に気泡が混入する、もしくはミクロな空隙が発生し、得られたプリフォームを加熱延伸した際に多数の気泡が発生する可能性がある。重合温度が低すぎると、重合効率が低下し、反応終了までに時間がかかってしまい、生産性を著しく損なう。また、重合が不完全となって光透過性が低下し、作製される光ファイバの光伝送能を損なう。一方、初期の重合温度が高すぎると、コア部となる領域の収縮に対して応答緩和できず、気泡発生の傾向が著しい。そのため、モノマーによって適切な温度範囲を選んで重合させることが望ましい。例えば、典型的なメタクリレート系のモノマーを主成分として使用した場合には、好ましくは、50℃〜150℃、更に好ましくは80℃〜140℃である。また、重合収縮に対する応答性を高めるために加圧した不活性ガス中で重合させることも好ましい。例えば、初期重合温度を100〜110℃に4〜48時間維持し、120〜140℃まで昇温して24〜48時間重合するのが好ましい。重合温度および重合時間によって、用いる開始剤は異なるが、前記重合条件においては、高温分解型の開始剤、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)や2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)などが好ましく用いられる。なお、昇温は段階的に行っても、連続的に行ってもよいが、昇温にかける時間は短いほうがよい。さらに、重合前のモノマーを減圧雰囲気で脱水および脱気することでさらに気泡の発生を低減させることができる。
【0036】
重合は、加圧状態で行うのが好ましい(以下、加圧状態で行う重合を「加圧重合」という)。加圧重合を行う場合は、前記重合性組成物を注入したクラッド部となる円筒管を、治具の中空部に挿入して、治具に支持された状態で重合を行うのが好ましい。前記治具は、前記構造体を挿入可能な中空を有する形状であり、該中空部は前記構造体と類似の形状を有しているのが好ましい。本実施の形態では、クラッド部となる構造体が円筒管であるので、前記治具も円筒形状であるのが好ましい。治具は、加圧重合中に前記円筒管が変形するのを抑制するとともに、加圧重合が進むに従ってコア部となる領域が収縮するのを緩和可能に支持する。従って、治具の中空部は、前記クラッド部となる円筒管の外径より大きい径を有し、前記クラッド部となる円筒管を非密着状態で支持するのが好ましい。前記治具の中空部は、前記クラッド部となる円筒管の外径に対して0.1%〜40%だけ大きい径を有しているのが好ましく、10〜20%だけ大きい径を有しているのがより好ましい。
【0037】
前記クラッド部となる円筒管を治具の中空部に挿入した状態で、重合容器内に配置することができる。重合容器内において、前記クラッド部となる円筒管は、円筒の高さ方向を垂直にして配置されるのが好ましい。前記治具に支持された状態で前記クラッド部となる円筒管を、重合容器内に配置した後、前記重合容器内を加圧することができる。窒素等の不活性ガスで重合容器内を加圧し、不活性ガス雰囲気下で加圧重合を進行させるのが好ましい。重合時の加圧の好ましい範囲については、用いるモノマーによって異なるが、重合時の圧は、一般的には0.05〜1.0MPa程度が好ましい。
【0038】
以上の工程を経て、光学部材のプリフォームを得ることができる。
【0039】
前記第三の工程では、得られたプリフォームを加工して、所望の形態とする。例えば、プリフォームを延伸することで、プラスチック光ファイバとすることができる。
延伸は、例えば、プリフォームを加熱炉(例えば円筒状の加熱炉)等の内部を通過させることによって加熱し、溶融させた後、引き続き連続して延伸紡糸するのが好ましい。加熱温度は、プリフォームの材質等に応じて適宜決定することができるが、一般的には、180〜250℃が好ましい。延伸条件(延伸温度等)は、得られたプリフォームの径、所望のプラスチック光ファイバの径および用いた材料等を考慮して、適宜決定することができる。特に、屈折率分布型光ファイバにおいては、その断面の中心方向から円周に向け屈折率が変化する構造を有するため、この分布を破壊しないように、均一に加熱且つ延伸紡糸する必要がある。従って、プリフォームの加熱には、プリフォームを断面方向において均一に加熱可能である円筒形状の加熱炉等を用い、且つ延伸紡糸は、中心位置を一定に保つ調芯機構を有する延伸紡糸装置を用いて行うのが好ましい。また、線引張力は、特開平7−234322号公報に記載されているように、溶融したプラスチックを配向させるために10g以上とすることができ、もしくは特開平7−234324号公報に記載されているように、溶融延伸後に歪みを残さないようにするために100g以下とすることが好ましい。また、特開平8−106015号公報に記載されているように、延伸の際に予備加熱工程を実施する方法などを採用することもできる。
【0040】
以上の方法によって得られたファイバについては、得られる素線の破断伸びや硬度を、特開平7−244220号公報に記載されている様に規定することで、ファイバの曲げや側圧特性を改善することができる。
【0041】
第三の工程を経て製造されたプラスチック光ファイバは、そのままの形態で種々の用途に供することができる。また、保護や補強を目的として、その外側に被覆層を有する形態、繊維層を有する形態、および/または複数のファイバを束ねた形態で、種々の用途に供することができる。
被覆工程は、例えばファイバ素線に被覆を設ける場合では、ファイバ素線の通る穴を有する対向したダイスにファイバ素線を通し、対向したダイス間に溶融した被覆用の樹脂を満たし、ファイバ素線をダイス間を移動させることで実施することができる。被覆層は、可撓時に内部のファイバへの応力から保護するため、ファイバ素線と融着していないことが望ましい。さらに、被覆工程において、ファイバ素線は、溶融した樹脂と接すること等により、熱的ダメージを受ける。この熱的ダメージが最小限となるように、ファイバ素線の移動速度に設定し、且つ被覆層として低温で溶融できる樹脂を選ぶことが好ましい。
なお、被覆層の厚みは、被覆層用樹脂の溶融温度や、ファイバ素線の引き抜き速度、被覆層の冷却温度によって調整することができる。
その他、ファイバに被覆層を形成する方法としては、光学部材に塗布したモノマーを重合させる方法、シートを巻き付ける方法、押し出し成形した中空管に光学部材を通す方法などが知られている。
【0042】
素線を被覆することにより、プラスチック光ファイバケーブルの製造が可能となる。その際にその被覆の形態として、被覆材とプラスチック光ファイバ素線の界面が全周にわたって接して被覆されている密着型の被覆と、被覆材とプラスチック光ファイバ素線の界面に空隙を有するルース型被覆がある。ルース型被覆では、例えば、コネクターとの接続部などにおいて被覆層を剥離した場合、その端面の空隙から水分が浸入して長手方向に拡散されるおそれがあるため、通常は密着型が好ましい。しかし、ルース型被覆では、被覆と素線が密着していないので、ケーブルにかかる応力や熱をはじめとするダメージの多くを被覆材層で緩和させることができ、素線にかかるダメージを軽減させることができるので、使用目的によっては好ましく用いることができる。水分の伝播については、空隙部に流動性を有するゲル状の半固体や粉粒体を充填することで、端面からの水分伝播を防止できる。さらにこれらの半固体や粉粒体に耐熱や機械的機能の向上などの水分伝播防止と異なる機能を併せ持つようにすることで、より高い性能の被覆を形成できる。
ルース型被覆は、クロスヘッドダイの押出し口ニップルの位置を調整し、減圧装置を加減して空隙層を形成することで作製できる。空隙層の厚みは、前述のニップル厚みと空隙層を加圧/減圧することで調整が可能である。
【0043】
さらに、必要に応じて被覆層(1次被覆層)の外周にさらに被覆層(2次被覆層)を設けてもよい。2次被覆層に難燃剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、昇光剤、滑剤などを導入してもよく、耐透湿性能を満足する限りにおいては、1次被覆層にも導入は可能である。
なお、難燃剤については臭素を始めとするハロゲン含有の樹脂や添加剤や燐含有のものがあるが、毒性ガス低減などの安全性の観点で、難燃剤として金属水酸化物を加えるのが主流となりつつある。金属水酸化物はその内部に結晶水として水分を有しており、またその製法過程での付着水が完全に除去できないため、金属水酸化物による難燃性被覆は本発明の対透湿性被覆(1次被覆層)の外層被覆(2次被覆層)として設けることが望ましい。
【0044】
また、複数の機能を付与させるために、様々な機能を有する被覆を積層させてもよい。例えば、難燃化以外に、素線の吸湿を抑制するためのバリア層や水分を除去するための吸湿材料、例えば吸湿テープや吸湿ジェルを被覆層内や被覆層間に有することができ、また可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や発泡層等の緩衝材、剛性を挙げるための強化層など、用途に応じて選択して設けることができる。樹脂以外にも構造材として、高い弾性率を有する繊維(いわゆる抗張力繊維)および/または剛性の高い金属線等の線材を熱可塑性樹脂に含有すると、得られるケーブルの力学的強度を補強することができることから好ましい。
抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が挙げられる。また、金属線としてはステンレス線、亜鉛合金線、銅線などが挙げられる。いずれのものも前述したものに限定されるものではない。その他に、保護のための金属管の外装、架空用の支持線や、配線時の作業性を向上させるための機構を組み込むことができる。
【0045】
また、ケーブルの形状は使用形態によって、素線を同心円上にまとめた集合ケーブルや、一列に並べたテープ心線と言われる態様、さらにそれらを押え巻やラップシースなどでまとめた集合ケーブルなど、用途に応じて選ぶことができる。
【0046】
本発明の光学部材としての光ファイバ、および光ファイバケーブルを用いて光信号を伝送するシステムには、種々の発光素子、受光素子、他の光ファイバ、光バス、光スターカプラ、光信号処理装置、接続用光コネクター等で構成される。それらに関する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)等の他、特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号等の各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号等の各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号等に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号等の各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号等の公報に記載の光信号処理装置;特開2001−86537号公報等に記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号等の公報に記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号等の各公報に記載のマルチファンクションシステム;などを参考にすることができる。
【0047】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0048】
[実施例1]
予定するプリフォームの外径に対応する内径を有する充分な剛性を持った内径22mmおよび長さ600mmの円筒状の重合容器に、水分を100ppm以下に除去したメチルメタクリレート(MMA)と副成分モノマーに該当するイソボルニルメタクリレート(IBXMA)を8:2の混合液体を所定量注入した。重合開始剤としてジメチルアゾビスイソブチレートをMMAに対して0.5質量%、連鎖移動剤(分子量調整剤)としてn−ドデシルメルカプタンをMMAに対して0.62質量%配合した。その後、MMA溶液が注入された重合容器を減圧下において5分間超音波脱気を行った後、密封し、MMA溶液の注入された重合容器を60℃湯浴中に入れ、震盪を加えながら2時間予備重合を行った。その後、該重合容器を60℃下にて水平状態(円筒の高さ方向が水平となる状態)に保持し、3000rpmにて回転させながら1時間加熱重合後、70℃に昇温し更に4時間加熱重合した。その後、90℃で24時間の熱処理し、メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレートの共重合体からなる円筒管を得た。この際のMMAポリマーおよびIBXMAポリマーの屈折率は589nm波長帯においてそれぞれ1.492と1.500であった。
【0049】
次に、MMA/IBXMA共重合体からなる円筒管の中空部に、コア部の原料として円筒管の共重合組成と全く同一な8:2の重量比で混合されたMMA/IBXMA(水分を100ppm以下に除去したもの)溶液と、屈折率調整剤として硫化ジフェニルをMMAに対して12.5質量%混合した溶液を、精度0.2μmの四フッ化エチレン製メンブランフィルターで濾過しつつ、濾液を直接注入した。重合開始剤としてジ−t−ブチルパーオキサイド(十時間半減期温度は123.7℃)をMMAに対し0.016質量%、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタンをMMAに対し0.27重量%配合した。このMMA等を注入したPMMAからなる円筒管は減圧下にて5分間超音波脱気を行った後に、該PMMA円筒管外径に対し9%だけ広い内径を持つガラス管内に挿入した状態で、加圧重合容器に垂直に静置した。その後、加圧重合容器内を窒素雰囲気に置換した後、0.1Mpaまで加圧し、IBXMAよりも沸点の低いMMAの沸点Tb(100℃)を基準とし、(Tb−10)℃以上で、且つMMA/IBXMAのガラス転移温度(Tg:115℃)以下である100℃で、48時間加熱重合した。なお、IBXMAの沸点は127℃/15mmHgである。その後、加圧量を0.8Mpaに増加させPMMAのTg℃以上で且つ(Tg+40)℃以下である120℃で、24時間加熱重合および熱処理を行い、重合完了後、加圧量を0.1Mpaに保持したまま0.01℃/minの冷却速度にてプリフォームのコア部Tg以下となる80℃まで降温した後にプリフォームを得た。なお、100℃におけるジ−t−ブチルパーオキサイドの半減期は180時間で、120℃における半減期は15時間である。
【0050】
得られたプリフォームには、重合完了時に体積収縮による気泡の混入はなかった。また、得られたファイバのガラス転移温度はコア中心部で90℃、ファイバ外周部で115℃であった。このプリフォームを230℃の熱延伸により線引きを行い、直径約700〜800μmのプラスチック光ファイバを製造した。延伸工程において、プリフォームには気泡の発生は観察されず、安定して300mのファイバを得ることができた。得られたファイバの伝送損失値を測定したところ、波長650nmにて170dB/kmであった。また、得られたファイバ100mの伝送帯域を測定したところ、1.5GHzであった。
【0051】
得られたファイバを低粘度ポリエチレン(JPO(株)JAC06N)にて外径1.9mmの被覆を行った。得られた被覆つきファイバを13mの長さに切り取り、10mのファイバ部位を製小型環境試験機SH−240に静置し、環境試験機外部には両端から2mおよび1mの長さのファイバをそれぞれメレスグリオ(株)干渉フィルター(03FIR006)を挿入された安藤電気(株)製白色光源(AQ4303B)とアンリツ(株)光パワーメータ(ML910B)にアンリツ製FCコネクタ(MA9013A)にて接合した。その後、恒温恒湿槽を温度70℃−95%相対湿度に設定し、500時間後の光強度の減衰量を測定した所、1dBであった。
【0052】
[実施例2]
充分に剛性を有する内径20mm、長さ60cmの重合容器内へ押出し成形により作製した外径20mm、内径19mm、長さ60cmポリフッ化ビニリデン(PVDF)の中空管を挿入し、該PVDF中空管内へ、実施例1の中空管作製時に用いた所定量のMMA/IBXMA混合溶液を注入し、回転加熱重合して、前記PVDF中空管の内面に、MMA/IBXMAの共重合体からなる層を形成した。その後は、実施例1と同様にして、中空部で共重合を実施し、ファイバを作製した。延伸工程において、プリフォームには気泡の発生は観察されず、安定して300mのファイバを得ることができた。得られたファイバの伝送損失値を測定したところ、波長650nmにて170dB/kmであった。また、得られたファイバ100mの伝送帯域を測定したところ、1.0GHzであった。
【0053】
得られたファイバを低粘度ポリエチレン(JPO(株)JCA06N)にて外径1.9mmの被覆を行った。得られた被覆つきファイバを13mの長さに切り取り、10mのファイバ部位を製小型環境試験機SH−240に静置し、環境試験機外部には両端から2mおよび1mの長さのファイバをそれぞれメレスグリオ(株)製650nmバンドパスフィルタを挿入された安藤電気(株)製白色光源(AQ4303B)とアンリツ(株)光パワーメータ(ML910B)にアンリツ製FCコネクタ(MA9013A)にて接合した。その後、恒温恒湿槽を温度70℃−95%相対湿度に設定し、500時間後の光強度の減衰量を測定した所、1dBであった。
【0054】
[実施例3]
中空部への重合において用いるモノマーがMMA/IBXMA混合溶液であり、その組成比が中空管を構成する全重量に対し10%変化させ、質量比においてMMA:IBXMA=7:3の混合溶液を用い、100℃にて48時間重合後に中空部への重合温度を質量比が7:3であるMMA/IBXMA共重合体のTg+40℃以上である130℃で24時間の加熱重合および熱処理を行う事以外は実施例1と同様の方法でファイバを作製した。得られたファイバのコア中心部のTgは100℃、ファイバ外周部では120℃であり、伝送損失は180dB/kmであった。
【0055】
[実施例4]
母材の原料としてMMAとNBXMAを用いる以外は実施例1と同様の方法にてファイバを得た。得られたファイバの伝送損失は波長650nmにおいて180dB/kmであり、コア中心部のTgは95℃、ファイバ外周のTgは110℃であった。この時、MMAポリマーの屈折率は1.492でありNBXMAポリマーの屈折率は1.506であった。また、NBXMAの沸点は73℃/2mmHgである。
【0056】
[比較例1]
母材の原料としてPMMAのみを使用した以外は、実施例1および2と同様の方法でファイバを得た。ファイバのガラス転移温度はコア中心部が85℃、ファイバ外周部で106℃であった。更に実施例1と同様の方法で、温度70℃−95%相対湿度下で光強度の経時測定を行った所、100時間後の光強度減衰が30dBとなった。
【0057】
[比較例2]
母材の原料にMMAと6FMを用いた(MMA:6FM=8:2)以外は、実施例1および2と同様の方法にてプリフォームを作製した。得られたプリフォームのコア部は白濁し、得られたファイバの伝送損失は650nm波長帯において1500dB/kmであった。尚、6FMポリマーの屈折率は589nm波長帯において1.38あり、MMAポリマーとの屈折率の差は0.11であった。
[比較例3]
母材の原料にMMAとIBXMAを用い、クラッドの組成比を質量比でMMA:IBXMA=8:2、コアの組成比を全質量の50%変化させ質量比でMMA:IBXMA=3:7とした以外は、実施例1と同様の方法にてプリフォームを作製した。得られたプリフォームは外見上白濁は見られなかったが、このプリフォームを延伸し、得られたファイバの伝送損失を測定した所、300dB/kmであった。
【0058】
[実施例5]
母材を実施例2と同様の方法にて作製し、溶融延伸時にファイバの直径が350μmとなるように延伸を行った。得られたファイバの伝送性能は実施例2とほぼ同様のものが得られた。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、プラスチック光学部材を製造する際に伝送損失性能を損なうことなく、優れた耐熱性・耐湿性を有するプラスチック光学部材の製造方法を提供することができる。
Claims (3)
- 少なくとも内壁部が、重合性モノマーと、前記重合性モノマーとの重合体の波長589nmにおける屈折率差が0.1以下である他の少なくとも1種の重合性モノマーとの共重合体からなる中空状構造体を形成する第一の工程と、前記構造体の中空部に、前記の少なくとも二種類の重合性モノマーと、前記重合性モノマーの共重合体と異なる屈折率を有する化合物とを注入し、前記重合性モノマーを共重合させて、共重合体からなる領域を形成する第二の工程とを含むプラスチック光学部材の製造方法であって、前記構造体の少なくとも内壁部が、前記中空部へ注入する少なくとも二種類の重合性モノマーと同一で、且つその組成比が実質的に同一の共重合体からなるプラスチック光学部材の製造方法。
- 前記第二の工程により、中心から外側に向かって屈折率の分布を有する共重合体からなる領域を形成する請求項1に記載のプラスチック光学部材の製造方法。
- 請求項1または2に記載の製造方法で得られたプラスチック光学部材を延伸加工して得られるプラスチック光ファイバ
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