JP2004179479A - 複合型電波吸収体 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、2.2〜2.8GHz(2.45GHz付近)においてTEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、4.8〜5.5GHz(5.2GHz付近)において、TEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、かつ5.2〜6.4GHz(5.8GHz付近)において、円偏波に対する反射減衰量が18dB以上であるITS,ETC,DSRCと無線LANの両方に有効な積層型電波吸収体の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、電波吸収特性の異なる複数の電波吸収層を積層した複合型電波吸収体において、反射層側に配置される第1の電波吸収層と、電波入射側に配置される第2の電波吸収層とを有し、前記第1の電波吸収層のインピーダンスをZ1とし、前記第2の電波吸収層のインピーダンスをZ2としたとき、Z1>Z2である複合型電波吸収体である。
【選択図】図1
【解決手段】本発明は、電波吸収特性の異なる複数の電波吸収層を積層した複合型電波吸収体において、反射層側に配置される第1の電波吸収層と、電波入射側に配置される第2の電波吸収層とを有し、前記第1の電波吸収層のインピーダンスをZ1とし、前記第2の電波吸収層のインピーダンスをZ2としたとき、Z1>Z2である複合型電波吸収体である。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電波の遮蔽や吸収のために使用される電波吸収体に関し、特に2.45GHz付近と5.2GHz付近の両方の電波の遮蔽や吸収のために使用される電波吸収体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、電子機器からの電波の漏洩、外部からの電波の侵入、構造物による電波の反射等を防止する目的で、様々な電波吸収体が使用されている。 例えば、5.8GHz付近の円偏波を用いるITS(高度道路交通システム)、DSRC(狭域通信システム)、ETC(高速道路自動料金システム)では、料金所などの構造物からの反射ノイズを低減する目的で使用され、また、2.45GHz付近または5.2GHz付近のTEM波、TE波、TM波を用いて室内で無線によるデータ通信を行う無線LANでは、通信エラーを低減する目的で電波吸収体が使用されている。
なお、円偏波とは電波が伝搬するにつれて電界方向が回転している波であり、路面や車体などからの反射が多い環境において反射を低減する効果が大きいので用いられている。TEM波とは電界も磁界も進行方向に垂直で完全な横波になっているもの、TE波とは電界が進行方向に垂直で磁界が進行方向に成分を持って縦横波となるもの、TM波とは磁界が進行方向に垂直で電界が進行方向に成分を持って縦横波となるものをいう。
【0003】
このようにITS,ETC,DSRCと無線LANの両方のシステムが同時に利用される場合、電波吸収体にも両方に有効な反射減衰量が要求される。
ここで両方に有効な反射減衰量とは、2.2〜2.8GHz(2.45GHz付近)においてTM波、TE波、TEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、4.8〜5.5GHz(5.2GHz付近)において、TM波、TE波、TEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、かつ5.2GHz〜6.4GHz(5.8GHz付近)において、円偏波に対する反射減衰量が18dB以上である。
【0004】
一方、電波吸収体として、薄型でありながら電波の吸収特性に優れている積層型電波吸収体が知られている(例えば、特許文献1参照)。複合型電波吸収体は、電波吸収特性の異なる複数の電波吸収層を積層したものである。
特許文献1にも記載されているように、従来の積層型電波吸収体においては、反射層側に配置される第1の電波吸収層のインピーダンスをZ1、電波入射側に配置される第2の電波吸収層のインピーダンスをZ2としたとき、Z1<Z2にするのが当業者の常識であった。377Ωの空間から入射した電波が、電波吸収層を経て、インピーダンス0Ωの導体である電波反射層に至るとき、インピーダンスの変化が徐々に減少してゆくことからの固定観念であったと推測される。
【0005】
【特許文献1】特開2000−31686号公報 (請求項1ほか)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の積層型電波吸収体では、ITS,ETC,DSRCと無線LANの両方に有効な反射減衰量を満足できないのが現状であった。その原因は不明であった。
【0007】
そこで本発明は、2.2〜2.8GHz(2.45GHz付近)においてTEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、4.8〜5.5GHz(5.2GHz付近)において、TEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、かつ5.2〜6.4GHz(5.8GHz付近)において、円偏波に対する反射減衰量が18dB以上であるITS,ETC,DSRCと無線LANの両方に有効な積層型電波吸収体の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、電波吸収特性の異なる複数の電波吸収層1,2を積層した複合型電波吸収体9において、反射層5側に配置される第1の電波吸収層1と、電波入射側に配置される第2の電波吸収層2とを有し、前記第1の電波吸収層1のインピーダンスをZ1とし、前記第2の電波吸収層2のインピーダンスをZ2としたとき、Z1>Z2であることを特徴とする複合型電波吸収体である。
【0009】
本発明の第2は、電波吸収特性の異なる複数の電波吸収層1,2,3を積層した複合型電波吸収体9において、反射層5側に配置される第1の電波吸収層1と、電波入射側に配置される第2の電波吸収層2と、第1の電波吸収層1と第2の電波吸収層2との間に第3の電波吸収層3とを有し、前記第1の電波吸収層1のインピーダンスをZ1とし、前記第2の電波吸収層2のインピーダンスをZ2とし、前記第3の電波吸収層3のインピーダンスをZ3としたとき、Z1>Z3かつZ2>Z3であることを特徴とする複合型電波吸収体である。
【0010】
本発明の第3は、2.2〜2.8GHz(2.45GHz付近)においてTM波、TE波、TEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、4.8〜5.5GHz(5.2GHz付近)においてTM波、TE波、TEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、かつ5.2〜6.4GHz(5.8GHz付近)において円偏波に対する反射減衰量が18dB以上であることを特徴とする複合型電波吸収体である。
【0011】
本発明の第4は、本発明の第1において、前記第1の電波吸収層1の吸収帯の中心周波数をf1、前記第2の電波吸収層2の吸収帯の中心周波数をf2としたとき、比f1/f2が2または1/2のいずれでもない複合型電波吸収体である。
比f1/f2が2または1/2のいずれかである場合、2つの周波数の関係において、一方の層が電波吸収層として働く場合、他方の層は電波反射層として働く結果、電波吸収体としての機能に支障をきたすからである。
【0012】
【発明の実施の形態】
(作用)
本発明者は、積層型電波吸収体において各層のインピーダンスの大小関係を従来の常識から逆転することにより、ITS,ETC,DSRCと無線LANの両方に有効な反射減衰量を満足できることを知見した。
電波吸収層の各層のインピーダンスを電波到来方向から徐々に小さくする従来の常識的な構成によると、反射減衰量は18dB未満となる問題のあることに気づいた。例えば、2.45GHzに電波吸収能のピークを有する電波吸収層と、5.2GHzに電波吸収能のピークを有する電波吸収層とを積層して積層型電波吸収体を構成した場合、両方のピークが重なり双峰性の電波吸収特性を呈するものの、そのピークは2GHzと4.5GHzとピークがずれて、ITS,ETC,DSRCと無線LANの両方を満足する特性が得られなくなることを見出した。
【0013】
本発明に係る積層型広帯域電波吸収体を、図1を用いて説明する。図1は本発明の一形態に係る積層型広帯域電波吸収体の断面図である。電波の到来方向から、ゴムや樹脂に磁性粉を分散した電波吸収層2、ゴムや樹脂に磁性粉を分散した電波吸収層1、導電性材料や樹脂に導電性材料を分散した電波反射層5、を順次積層し一体化して構成している。
【0014】
電波反射層5は金属箔などの導電性材料や、樹脂に導電性材料を分散したもので構成できる。
電波反射層5に分散する導電性を有する材料は、例えばカーボン繊維や金属繊維であって、これを可撓性樹脂中に分散させシート状に成形する。電波反射層5は面抵抗値を100kΩ□以下とするのが望ましい。100kΩ□を超えると電波が透過して効率よい吸収ができなくなるからである。
【0015】
電波吸収層1、2に分散する磁性粉は、比重が6.0以上の金属や合金で、例えばFe−Cr−Al系合金、カルボニル鉄合金、アモルファス合金、Fe−Si系合金、モリブデンパーマロイ、スーパーマロイなどが使用できる。
あるいはフェライトなどの金属酸化物でもよい。また、Fe−Cu−Nb−Si−B系からなるナノ結晶化合金から水アトマイズ法により粒形状粉をアトライタにて摩砕することにより製造した扁平形状粉であって、これを可撓性樹脂中に分散させシート状に成形してもよい。
これらの金属磁性粉の表面は、酸化防止剤が施されていることが好ましい。
【0016】
電波吸収層1、2に金属磁性体粉を用いる場合、その分散量は60〜90mass%が好ましい。60mass%未満であると吸収性能が低下し、90mass%を超えると材料代が高価になるばかりでなく、重量が重く、柔軟性、耐久性等が低下し実用上好ましくない。
【0017】
電波吸収層1、2にはフェライトを用いる場合、その分散量は65〜92mass%が好ましい。65mass%未満であると吸収性能が低下し、92mass%を超えると生産性が悪くなり、重量が重く、柔軟性、耐久性等が低下し実用上好ましくない。
【0018】
電波吸収層1、2や電波反射層5のバインダとして用いる樹脂やゴムは、柔軟性があり、比重が1.5以下であり、耐候性を有する例えばアクリル樹脂、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコン樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂等である。
【0019】
電波反射層5、電波吸収層1、2の層厚さは、それぞれ0.5〜5mmが好ましい。0.5mm未満であると、吸収性能が低下し、5mmを超えると積層した場合の材料代が高価になるばかりでなく、重量が重く、柔軟性が低下し実用上好ましくない。
また積層した全体の厚さは3〜8mmとすることが好ましい。3mm未満であると、吸収性能が低下し、8mmを超えると積層した場合の材料代が高価になるばかりでなく、重量が重く、柔軟性が低下し実用上好ましくない。
【0020】
(実施例1)
電波反射層5として厚み0.1mmのアルミ箔を用いた。カルボニル鉄粉をクロロプレンゴム中に78mass%分散させ、2.5mmの厚さにシート化し電波吸収層1を形成した。フェライト粉を、クロロプレンゴム中に85mass%分散させ、1.3mmの厚さにシート化し電波吸収層2を形成した。これら3種類のシートを順次積層し熱圧着で一体化することにより、図1に断面を模式的に示すように、全体の厚さが3.8mmの積層型電波吸収体9を形成した。
インピーダンス・アナライザによって、電波吸収層1と電波吸収層2について測定周波数2.45GHzと5.2GHzの各々でインピーダンスを測定したところ、表1(単位は[Ω])に示すように、電波吸収層1のインピーダンスをZ1とし、電波吸収層2のインピーダンスをZ2としたとき、Z1>Z2であった。
【0021】
【表1】
【0022】
この積層型電波吸収体9の電波吸収性能を、入射角30度のタイムドメイン法で評価した結果、TM波と円偏波の両方に対して、おのおの表2、表3(単位は[dB])に示すように、2.2〜2.8GHz(2.45GHz付近)においてTEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、4.8〜5.5GHz(5.2GHz付近)において、TEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、かつ5.2〜6.4GHz(5.8GHz付近)において、円偏波に対する反射減衰量18dB以上という所望の電波吸収特性が得られた。
なお、TM波のみならずTE波、TEM波についても同様に良好であった。
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
(比較例1)
(実施例1)の構成で、従来どおり電波吸収層1と電波吸収層2を逆にしたところ、表2、表3に示すように所望の電波吸収特性が得られなかった。
【0026】
(実施例2)
図2は、別の実施例に係る積層型電波吸収体の断面図である。電波反射層5は(実施例1)と同じく厚み0.1mmのアルミ箔を用いた。電波吸収層1はカルボニル鉄粉をクロロプレンゴム中に78mass%分散させ厚み2mmとし、電波吸収層2はNi−Znフェライトを80mass%分散させ厚み1.5mmとし、電波吸収層3はMn−Znフェライトを88mass%分散させ厚み0.8mmとした。
各層のインピーダンスを表4(単位は[Ω])に示す。電波吸収層1のインピーダンスをZ1、電波吸収層2のインピーダンスをZ2、電波吸収層3のインピーダンスをZ3としたとき、Z1>Z3かつZ2>Z3の関係がある。
【0027】
【表4】
【0028】
この積層型広帯域電波吸収体9の電波吸収性能を評価した結果、TEM波と円偏波の両方に対して、おのおの表5、表6(単位は[dB])に示すように、1.4GHz〜3.4GHz(2.45.2GHz付近)においてTEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、4GHz〜6GHz(5.2GHz付近)において、TEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、かつ5.2GHz〜6.4GHz(5.8GHz付近)において、円偏波に対する反射減衰量18dB以上が得られた。
なお、TM波のみならずTE波、TEM波についても同様に良好であった。
【0029】
【表5】
【0030】
【表6】
【0031】
(比較例2)
(実施例2)の構成で、従来どおり電波吸収層2、電波吸収層3、電波吸収層1の順にインピーダンスが小さくなる構成にしたところ、表5、表6に示すように所望の電波吸収特性が得られなかった。
【0032】
以上、実施例を用いて本発明を具体的に説明したが、本発明は、実施例に限定されるものではない。各層のインピーダンスを調整する手段としては、金属や合金、酸化物などの磁性体をバインダとして機能する樹脂やゴムなどに分散してなる各層において、磁性体の複素透磁率、寸法・形状、混合率や樹脂やゴムなどの複素誘電率、層の厚みなど、種々の因子を適宜組み合わせることができる。あるいは孔を穿孔することによりインピーダンスを調整することもできる。この場合、電波吸収層の各層を同一組成のものとして所望のインピーダンス大小関係を実現できる。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、積層型電波吸収体における各層のインピーダンスの大小関係を従来のものとは逆に構成することによって、ITS,ETC,DSRCと無線LANの両方に有効な反射減衰量を満足できる電波吸収体を提供できるのでインテリジェント交通システムに限らず、今後進展が期待されるコンビニエンスストアなどにおける料金収受システムなどITS,ETC,DSRCと無線LANの両方が共存するシステムへの発展に寄与は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の別実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 第1の電波吸収層
2 第2の電波吸収層
3 第3の電波吸収層
5 電波反射層
9 積層型電波吸収体
Z1 第1の電波吸収層1のインピーダンス
Z2 第2の電波吸収層2のインピーダンス
Z3 第3の電波吸収層3のインピーダンス
【発明の属する技術分野】
本発明は、電波の遮蔽や吸収のために使用される電波吸収体に関し、特に2.45GHz付近と5.2GHz付近の両方の電波の遮蔽や吸収のために使用される電波吸収体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、電子機器からの電波の漏洩、外部からの電波の侵入、構造物による電波の反射等を防止する目的で、様々な電波吸収体が使用されている。 例えば、5.8GHz付近の円偏波を用いるITS(高度道路交通システム)、DSRC(狭域通信システム)、ETC(高速道路自動料金システム)では、料金所などの構造物からの反射ノイズを低減する目的で使用され、また、2.45GHz付近または5.2GHz付近のTEM波、TE波、TM波を用いて室内で無線によるデータ通信を行う無線LANでは、通信エラーを低減する目的で電波吸収体が使用されている。
なお、円偏波とは電波が伝搬するにつれて電界方向が回転している波であり、路面や車体などからの反射が多い環境において反射を低減する効果が大きいので用いられている。TEM波とは電界も磁界も進行方向に垂直で完全な横波になっているもの、TE波とは電界が進行方向に垂直で磁界が進行方向に成分を持って縦横波となるもの、TM波とは磁界が進行方向に垂直で電界が進行方向に成分を持って縦横波となるものをいう。
【0003】
このようにITS,ETC,DSRCと無線LANの両方のシステムが同時に利用される場合、電波吸収体にも両方に有効な反射減衰量が要求される。
ここで両方に有効な反射減衰量とは、2.2〜2.8GHz(2.45GHz付近)においてTM波、TE波、TEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、4.8〜5.5GHz(5.2GHz付近)において、TM波、TE波、TEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、かつ5.2GHz〜6.4GHz(5.8GHz付近)において、円偏波に対する反射減衰量が18dB以上である。
【0004】
一方、電波吸収体として、薄型でありながら電波の吸収特性に優れている積層型電波吸収体が知られている(例えば、特許文献1参照)。複合型電波吸収体は、電波吸収特性の異なる複数の電波吸収層を積層したものである。
特許文献1にも記載されているように、従来の積層型電波吸収体においては、反射層側に配置される第1の電波吸収層のインピーダンスをZ1、電波入射側に配置される第2の電波吸収層のインピーダンスをZ2としたとき、Z1<Z2にするのが当業者の常識であった。377Ωの空間から入射した電波が、電波吸収層を経て、インピーダンス0Ωの導体である電波反射層に至るとき、インピーダンスの変化が徐々に減少してゆくことからの固定観念であったと推測される。
【0005】
【特許文献1】特開2000−31686号公報 (請求項1ほか)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の積層型電波吸収体では、ITS,ETC,DSRCと無線LANの両方に有効な反射減衰量を満足できないのが現状であった。その原因は不明であった。
【0007】
そこで本発明は、2.2〜2.8GHz(2.45GHz付近)においてTEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、4.8〜5.5GHz(5.2GHz付近)において、TEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、かつ5.2〜6.4GHz(5.8GHz付近)において、円偏波に対する反射減衰量が18dB以上であるITS,ETC,DSRCと無線LANの両方に有効な積層型電波吸収体の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1は、電波吸収特性の異なる複数の電波吸収層1,2を積層した複合型電波吸収体9において、反射層5側に配置される第1の電波吸収層1と、電波入射側に配置される第2の電波吸収層2とを有し、前記第1の電波吸収層1のインピーダンスをZ1とし、前記第2の電波吸収層2のインピーダンスをZ2としたとき、Z1>Z2であることを特徴とする複合型電波吸収体である。
【0009】
本発明の第2は、電波吸収特性の異なる複数の電波吸収層1,2,3を積層した複合型電波吸収体9において、反射層5側に配置される第1の電波吸収層1と、電波入射側に配置される第2の電波吸収層2と、第1の電波吸収層1と第2の電波吸収層2との間に第3の電波吸収層3とを有し、前記第1の電波吸収層1のインピーダンスをZ1とし、前記第2の電波吸収層2のインピーダンスをZ2とし、前記第3の電波吸収層3のインピーダンスをZ3としたとき、Z1>Z3かつZ2>Z3であることを特徴とする複合型電波吸収体である。
【0010】
本発明の第3は、2.2〜2.8GHz(2.45GHz付近)においてTM波、TE波、TEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、4.8〜5.5GHz(5.2GHz付近)においてTM波、TE波、TEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、かつ5.2〜6.4GHz(5.8GHz付近)において円偏波に対する反射減衰量が18dB以上であることを特徴とする複合型電波吸収体である。
【0011】
本発明の第4は、本発明の第1において、前記第1の電波吸収層1の吸収帯の中心周波数をf1、前記第2の電波吸収層2の吸収帯の中心周波数をf2としたとき、比f1/f2が2または1/2のいずれでもない複合型電波吸収体である。
比f1/f2が2または1/2のいずれかである場合、2つの周波数の関係において、一方の層が電波吸収層として働く場合、他方の層は電波反射層として働く結果、電波吸収体としての機能に支障をきたすからである。
【0012】
【発明の実施の形態】
(作用)
本発明者は、積層型電波吸収体において各層のインピーダンスの大小関係を従来の常識から逆転することにより、ITS,ETC,DSRCと無線LANの両方に有効な反射減衰量を満足できることを知見した。
電波吸収層の各層のインピーダンスを電波到来方向から徐々に小さくする従来の常識的な構成によると、反射減衰量は18dB未満となる問題のあることに気づいた。例えば、2.45GHzに電波吸収能のピークを有する電波吸収層と、5.2GHzに電波吸収能のピークを有する電波吸収層とを積層して積層型電波吸収体を構成した場合、両方のピークが重なり双峰性の電波吸収特性を呈するものの、そのピークは2GHzと4.5GHzとピークがずれて、ITS,ETC,DSRCと無線LANの両方を満足する特性が得られなくなることを見出した。
【0013】
本発明に係る積層型広帯域電波吸収体を、図1を用いて説明する。図1は本発明の一形態に係る積層型広帯域電波吸収体の断面図である。電波の到来方向から、ゴムや樹脂に磁性粉を分散した電波吸収層2、ゴムや樹脂に磁性粉を分散した電波吸収層1、導電性材料や樹脂に導電性材料を分散した電波反射層5、を順次積層し一体化して構成している。
【0014】
電波反射層5は金属箔などの導電性材料や、樹脂に導電性材料を分散したもので構成できる。
電波反射層5に分散する導電性を有する材料は、例えばカーボン繊維や金属繊維であって、これを可撓性樹脂中に分散させシート状に成形する。電波反射層5は面抵抗値を100kΩ□以下とするのが望ましい。100kΩ□を超えると電波が透過して効率よい吸収ができなくなるからである。
【0015】
電波吸収層1、2に分散する磁性粉は、比重が6.0以上の金属や合金で、例えばFe−Cr−Al系合金、カルボニル鉄合金、アモルファス合金、Fe−Si系合金、モリブデンパーマロイ、スーパーマロイなどが使用できる。
あるいはフェライトなどの金属酸化物でもよい。また、Fe−Cu−Nb−Si−B系からなるナノ結晶化合金から水アトマイズ法により粒形状粉をアトライタにて摩砕することにより製造した扁平形状粉であって、これを可撓性樹脂中に分散させシート状に成形してもよい。
これらの金属磁性粉の表面は、酸化防止剤が施されていることが好ましい。
【0016】
電波吸収層1、2に金属磁性体粉を用いる場合、その分散量は60〜90mass%が好ましい。60mass%未満であると吸収性能が低下し、90mass%を超えると材料代が高価になるばかりでなく、重量が重く、柔軟性、耐久性等が低下し実用上好ましくない。
【0017】
電波吸収層1、2にはフェライトを用いる場合、その分散量は65〜92mass%が好ましい。65mass%未満であると吸収性能が低下し、92mass%を超えると生産性が悪くなり、重量が重く、柔軟性、耐久性等が低下し実用上好ましくない。
【0018】
電波吸収層1、2や電波反射層5のバインダとして用いる樹脂やゴムは、柔軟性があり、比重が1.5以下であり、耐候性を有する例えばアクリル樹脂、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコン樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂等である。
【0019】
電波反射層5、電波吸収層1、2の層厚さは、それぞれ0.5〜5mmが好ましい。0.5mm未満であると、吸収性能が低下し、5mmを超えると積層した場合の材料代が高価になるばかりでなく、重量が重く、柔軟性が低下し実用上好ましくない。
また積層した全体の厚さは3〜8mmとすることが好ましい。3mm未満であると、吸収性能が低下し、8mmを超えると積層した場合の材料代が高価になるばかりでなく、重量が重く、柔軟性が低下し実用上好ましくない。
【0020】
(実施例1)
電波反射層5として厚み0.1mmのアルミ箔を用いた。カルボニル鉄粉をクロロプレンゴム中に78mass%分散させ、2.5mmの厚さにシート化し電波吸収層1を形成した。フェライト粉を、クロロプレンゴム中に85mass%分散させ、1.3mmの厚さにシート化し電波吸収層2を形成した。これら3種類のシートを順次積層し熱圧着で一体化することにより、図1に断面を模式的に示すように、全体の厚さが3.8mmの積層型電波吸収体9を形成した。
インピーダンス・アナライザによって、電波吸収層1と電波吸収層2について測定周波数2.45GHzと5.2GHzの各々でインピーダンスを測定したところ、表1(単位は[Ω])に示すように、電波吸収層1のインピーダンスをZ1とし、電波吸収層2のインピーダンスをZ2としたとき、Z1>Z2であった。
【0021】
【表1】
【0022】
この積層型電波吸収体9の電波吸収性能を、入射角30度のタイムドメイン法で評価した結果、TM波と円偏波の両方に対して、おのおの表2、表3(単位は[dB])に示すように、2.2〜2.8GHz(2.45GHz付近)においてTEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、4.8〜5.5GHz(5.2GHz付近)において、TEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、かつ5.2〜6.4GHz(5.8GHz付近)において、円偏波に対する反射減衰量18dB以上という所望の電波吸収特性が得られた。
なお、TM波のみならずTE波、TEM波についても同様に良好であった。
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
(比較例1)
(実施例1)の構成で、従来どおり電波吸収層1と電波吸収層2を逆にしたところ、表2、表3に示すように所望の電波吸収特性が得られなかった。
【0026】
(実施例2)
図2は、別の実施例に係る積層型電波吸収体の断面図である。電波反射層5は(実施例1)と同じく厚み0.1mmのアルミ箔を用いた。電波吸収層1はカルボニル鉄粉をクロロプレンゴム中に78mass%分散させ厚み2mmとし、電波吸収層2はNi−Znフェライトを80mass%分散させ厚み1.5mmとし、電波吸収層3はMn−Znフェライトを88mass%分散させ厚み0.8mmとした。
各層のインピーダンスを表4(単位は[Ω])に示す。電波吸収層1のインピーダンスをZ1、電波吸収層2のインピーダンスをZ2、電波吸収層3のインピーダンスをZ3としたとき、Z1>Z3かつZ2>Z3の関係がある。
【0027】
【表4】
【0028】
この積層型広帯域電波吸収体9の電波吸収性能を評価した結果、TEM波と円偏波の両方に対して、おのおの表5、表6(単位は[dB])に示すように、1.4GHz〜3.4GHz(2.45.2GHz付近)においてTEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、4GHz〜6GHz(5.2GHz付近)において、TEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、かつ5.2GHz〜6.4GHz(5.8GHz付近)において、円偏波に対する反射減衰量18dB以上が得られた。
なお、TM波のみならずTE波、TEM波についても同様に良好であった。
【0029】
【表5】
【0030】
【表6】
【0031】
(比較例2)
(実施例2)の構成で、従来どおり電波吸収層2、電波吸収層3、電波吸収層1の順にインピーダンスが小さくなる構成にしたところ、表5、表6に示すように所望の電波吸収特性が得られなかった。
【0032】
以上、実施例を用いて本発明を具体的に説明したが、本発明は、実施例に限定されるものではない。各層のインピーダンスを調整する手段としては、金属や合金、酸化物などの磁性体をバインダとして機能する樹脂やゴムなどに分散してなる各層において、磁性体の複素透磁率、寸法・形状、混合率や樹脂やゴムなどの複素誘電率、層の厚みなど、種々の因子を適宜組み合わせることができる。あるいは孔を穿孔することによりインピーダンスを調整することもできる。この場合、電波吸収層の各層を同一組成のものとして所望のインピーダンス大小関係を実現できる。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、積層型電波吸収体における各層のインピーダンスの大小関係を従来のものとは逆に構成することによって、ITS,ETC,DSRCと無線LANの両方に有効な反射減衰量を満足できる電波吸収体を提供できるのでインテリジェント交通システムに限らず、今後進展が期待されるコンビニエンスストアなどにおける料金収受システムなどITS,ETC,DSRCと無線LANの両方が共存するシステムへの発展に寄与は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の別実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 第1の電波吸収層
2 第2の電波吸収層
3 第3の電波吸収層
5 電波反射層
9 積層型電波吸収体
Z1 第1の電波吸収層1のインピーダンス
Z2 第2の電波吸収層2のインピーダンス
Z3 第3の電波吸収層3のインピーダンス
Claims (4)
- 電波吸収特性の異なる複数の電波吸収層を積層した複合型電波吸収体において、反射層側に配置される第1の電波吸収層と、
電波入射側に配置される第2の電波吸収層とを有し、
前記第1の電波吸収層のインピーダンスをZ1とし、
前記第2の電波吸収層のインピーダンスをZ2としたとき、
Z1>Z2であることを特徴とする複合型電波吸収体。 - 電波吸収特性の異なる複数の電波吸収層を積層した複合型電波吸収体において、反射層側に配置される第1の電波吸収層と、
電波入射側に配置される第2の電波吸収層と、
第1の電波吸収層と第2の電波吸収層との間に第3の電波吸収層とを有し、
前記第1の電波吸収層のインピーダンスをZ1とし、
前記第2の電波吸収層のインピーダンスをZ2とし、
前記第3の電波吸収層のインピーダンスをZ3としたとき、
Z1>Z3かつZ2>Z3であることを特徴とする複合型電波吸収体。 - 2.2〜2.8GHz(2.45GHz付近)においてTM波、TE波、TEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、
4.8〜5.5GHz(5.2GHz付近)においてTM波、TE波、TEM波に対する反射減衰量が18dB以上であり、
かつ5.2〜6.4GHz(5.8GHz付近)において円偏波に対する反射減衰量が18dB以上であることを特徴とする複合型電波吸収体。 - 前記第1の電波吸収層の吸収帯の中心周波数をf1、前記第2の電波吸収層の吸収帯の中心周波数をf2としたとき、比f1/f2が2または1/2のいずれでもない請求項1記載の複合型電波吸収体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002345385A JP2004179479A (ja) | 2002-11-28 | 2002-11-28 | 複合型電波吸収体 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002345385A JP2004179479A (ja) | 2002-11-28 | 2002-11-28 | 複合型電波吸収体 |
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JP2004179479A true JP2004179479A (ja) | 2004-06-24 |
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ID=32706573
Family Applications (1)
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JP (1) | JP2004179479A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR102023397B1 (ko) * | 2019-05-13 | 2019-09-20 | 국방과학연구소 | 양면형 전파흡수체 |
-
2002
- 2002-11-28 JP JP2002345385A patent/JP2004179479A/ja active Pending
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