JP2004179312A - 密閉容器の取り扱い方法及びクリーン手袋 - Google Patents
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Abstract
【課題】密閉容器が帯電することによって密閉容器の開閉時に空気中のパーティクルが密閉容器に付着したり、またもともと密閉容器に付着していたパーティクルがウエーハ上に移動したりすることが減り安定した品質のウエーハを供給できるようにした密閉容器の取り扱い方法及びクリーン手袋を提供する。
【解決手段】半導体基板を収納した又は収納しない半導体基板収納用密閉容器を取り扱う工程において、該密閉容器の材料の帯電列順位に近い帯電列順位を有する材料によって少なくとも掌部分を形成したクリーン手袋を用い、静電気の発生を抑えた状態で該密閉容器を取り扱うようにした。
【選択図】 図1
【解決手段】半導体基板を収納した又は収納しない半導体基板収納用密閉容器を取り扱う工程において、該密閉容器の材料の帯電列順位に近い帯電列順位を有する材料によって少なくとも掌部分を形成したクリーン手袋を用い、静電気の発生を抑えた状態で該密閉容器を取り扱うようにした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高純度の半導体材料を収納するために用いられる半導体基板、例えばシリコンウエーハ(以下単にウエーハということがある)収納用の密閉容器の取り扱い方法及びその際に用いるクリーンルーム用のクリーン手袋に関する。
【0002】
【関連技術】
従来、メモリーデバイスなどに用いられる半導体基板材料として用いられるシリコンウエーハの製造方法は、一般にチョクラルスキー(Czochralski;CZ)法や浮遊帯域溶融(Floating Zone;FZ)法等を使用して単結晶インゴットを製造する単結晶成長工程と、この単結晶インゴットをスライスし、少なくとも一主面が鏡面状に加工されるウエーハ製造(加工)工程とからなる。このような工程を経たウエーハがデバイスの製造工程(デバイス会社)に出荷され、ウエーハ上に素子が形成される。
【0003】
ウエーハ製造(加工)工程は、単結晶インゴットをスライスして薄円板状のウエーハを得るスライス工程と、該スライス工程によって得られたウエーハの割れ、欠けを防止するためにその外周部を面取りする面取り工程と、このウエーハを平坦化するラッピング工程と、面取り及びラッピングされたウエーハに残留する加工歪みを除去するエッチング工程と、そのウエーハ表面を鏡面化する研磨(ポリッシング)工程と、研磨されたウエーハを洗浄して、これに付着した研磨剤や異物を除去する洗浄工程を有している。上記ウエーハ加工工程は、主な工程を示したもので、他に熱処理工程等の工程が加わったり、同じ工程を多段で行ったり、工程順が入れ換えられたりする。鏡面研磨されたウエーハ(以下、PWと言うことがある)は、その後、品質検査等が行われ、ウエーハを25枚程度の単位で図3に示したような密閉容器(キャリア、運搬用ボックス、出荷用ボックス、収納容器又は単にボックスなどと呼ばれることもある)に入れ、ラミネート袋等で包装し、ダンボールに入れるなどしてデバイス会社(デバイス工程;通常別会社)に出荷される。
【0004】
鏡面研磨ウエーハ(ウエーハ加工メーカーの最終製品)は、わずかなゴミの付着等も問題であり、通常、仕上げ洗浄や検査及びウエーハの密閉容器への収納(ボックス詰め)はクリーンルーム中で扱われる。
【0005】
また、クリーンルーム内で、例えば、シリコンウエーハの検査を行う場合、発汗により手の表面から生じるナトリウム、カリウムその他の成分による材質の汚染を防止するためにポリエチレン(以下、PEと略す)系やポリプロピレン(以下、PPと略す)系の樹脂シートで作製されたクリーン手袋を着用して材料の取り扱い処理が施されている。しかし、これらの材質では作業性が悪い(フィットしない)、パーティクルの面で問題となることがあるなどの理由から、今日ではポリ塩化ビニル系(以下、PVCと略す)あるいはポリウレタン系の樹脂シートを材料とした手袋が主に用いられている。
【0006】
同様にウエーハ製造工程の最終製品を収納する密閉容器の開閉時や、密閉容器のラミネート袋への梱包、持ち運びなどについてもこのようなクリーン手袋が用いられている。
【0007】
これらのクリーン手袋の中には材料自体の抵抗率を下げることなどにより、静電気の衝撃を緩やかに除去する為の帯電防止処理が施されていることもある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ウエーハを鏡面加工した後の製品ウエーハでは、その表面にパーティクルが存在しないことが重要である。しかし、ウエーハ自体に十分な洗浄等を行い、パーティクルを除去しても、密閉容器に収納し、デバイス会社に出荷した後にパーティクルが増加している等の問題が起きる事があった。この場合、デバイス会社(デバイス工程)で再洗浄をする必要が生じるなどの問題があった。
【0009】
また、出荷前にウエーハ上のパーティクルを確認すると検査工程では確認されなかったウエーハでもパーティクルが増えている場合があった。
【0010】
この問題に対し、密閉容器に付着した(付着している)パーティクルや外部に浮遊しているパーティクルの影響が考えられた。本発明者が鋭意調査した結果、特に密閉容器に付着した(付着している)パーティクルが密閉容器に帯電している静電気の作用により密閉容器に付着したり離れたりすることによって悪影響を及ぼすことが明らかになった。
【0011】
上記したようなクリーン手袋自体の材料の抵抗率を下げ静電気を防止するための帯電防止処理が施されているものを用いれば、上記した静電気の作用による悪影響はある程度改善できるものの、クリーン手袋を形成する材料の材質によっては密閉容器との相性が悪く、例えば出荷段階の密閉容器の取り扱いにおいては、クリーン手袋で密閉容器に触れることにより、ますます密閉容器が帯電する。また誘導帯電等により密閉容器内部の基板までも帯電させる可能性があることが考えられた。このようにクリーン手袋の材料により様々な点で悪影響を及ぼすことがある。
【0012】
本発明は、上記した種々の問題点に鑑みてなされたもので、密閉容器が帯電することによって密閉容器の開閉時に空気中のパーティクルが密閉容器に付着したり、またもともと密閉容器に付着していたパーティクルがウエーハ上に移動したりすることが減り安定した品質のウエーハを供給できるようにした密閉容器の取り扱い方法及びクリーン手袋を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
特に密閉容器が帯電することによって密閉容器の開閉時に空気中のパーティクルが密閉容器に付着したり、また密閉容器の蓋を閉めた状態で密閉容器外部からクリーン手袋を用いて取り扱っただけでも密閉容器の内部に付着したパーティクルがウエーハ上に移動したりする現象があることがわかった。
【0014】
このような問題は、取り扱われる密閉容器とクリーン手袋の相性が問題であることが明らかとなった。
【0015】
そこで、上記問題点を解決する為、本発明の密閉容器の取り扱い方法は、半導体基板を収納した又は収納しない半導体基板収納用密閉容器を取り扱う工程において、該密閉容器の材料の帯電列順位に近い帯電列順位を有する材料によって少なくとも掌部分を形成したクリーン手袋を用い、静電気の発生を抑えた状態で該密閉容器を取り扱うことを特徴とする。
【0016】
今まで密閉容器を取り扱う上で、クリーン手袋から生じるパーティクル等については注意され、クリーン手袋自体の静電気などが問題視されていたが、密閉容器自体の帯電、特にクリーン手袋で密閉容器を取り扱う際に生じる静電気等の影響についてはまったく考慮されていなかった。本発明方法のように、密閉容器とクリーン手袋の材質、特に帯電列順位に注意し、取り扱うことで密閉容器を帯電させることなくパーティクルの発生(移動)が少ない状態で処理することができる。
【0017】
本発明方法によれば、前記密閉容器を前記クリーン手袋で取り扱う場合に発生する帯電電位を相対的に低く、例えば1kv以下に抑えることによって、静電気の影響を排除し、パーティクルの発生を抑止することが可能となる。
【0018】
特に、前記密閉容器を構成する材料がポリカーボネート樹脂であり、前記クリーン手袋の少なくとも掌部分を形成する材料としてポリカーボネート樹脂の帯電列順位に近い帯電列順位を有する材料を用いることによって、静電気の発生を効果的に抑えた状態で密閉容器を取り扱うことが可能となる。
【0019】
現在大型半導体基板(例えば直径300mmのシリコンウエーハ)を収納する密閉容器は、ほとんどがポリカーボネート樹脂製のものでできており、このような密閉容器を取り扱う上で帯電列順位に着目し、クリーン手袋を選択し使用することが重要である。
【0020】
本発明方法において用いられるクリーン手袋としては、ポリカーボネート樹脂製の密閉容器を取り扱う上で少なくともクリーン手袋の掌部分に弗素樹脂フィルムが形成されている構造とするのが好ましい。本発明のクリーン手袋は、クリーンルーム用のクリーン手袋であって、少なくとも掌部分が弗素樹脂フィルムで形成されていることを特徴とする。
【0021】
ポリカーボネート樹脂製の密閉容器を扱うには、帯電列順位の観点及びクリーン手袋自体からのパーティクルの発生等を考慮すると、少なくとも掌部分に弗素樹脂フィルムが形成されているクリーン手袋が好適に用いられることがわかった。
【0022】
クリーン手袋の少なくとも掌部分を形成する弗素樹脂として、密閉容器と帯電列順位の近いPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)又はFEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)等を主成分とした材料を用いると静電気の発生が効果的に防止できる利点がある。
【0023】
また、弗素樹脂フィルム表面に微小凹凸部が形成された構造とするとさらに好ましい。このようにすることで、密閉容器を取り扱う際にクリーン手袋と密閉容器との接触面積を減らすことができ帯電しにくくなり、静電気等の影響を更に防ぐことができる。
【0024】
前記密閉容器を形成する材料の帯電列順位と前記クリーン手袋の少なくとも掌部分を形成する材料の帯電列順位の差はできるだけ小さくする必要がある。つまり、前記密閉容器を前記クリーン手袋にて取り扱う場合に発生する帯電電位を相対的に低く抑えることで安定してパーティクルの発生を抑えることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のクリーン手袋の一つの実施の形態を添付図面中、図1及び図2に基づいて説明するが、図示例は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0026】
図1は本発明に係るクリーン手袋の一つの実施の形態を示す部分切欠斜視図である。図2は図1の要部の断面図である。本実施の形態においては、シリコンウエーハ等の半導体基板を収納、搬送する容器として主に用いられているポリカーボネート樹脂製の密閉容器(図3)を例に、この密閉容器を取り扱う上で好適なクリーン手袋及び取り扱い方法について説明する。
【0027】
図1において、10は本発明のクリーン手袋である。該クリーン手袋10は、手に密着する内面部分12と該内面部分12の外面を被覆するように設けられる外面部分14とから構成されている。該内面部分12は従来から主に用いられているポリウレタン系の材料等で形成されている。また、該外面部分14は弗素樹脂フィルムで形成されている。
【0028】
このような構成とすることによって、図3に示したようなポリカーボネート樹脂製の密閉容器20を取り扱う上で好適なクリーン手袋として使用できる。なお、図3において、20aは容器本体、20bは蓋体である。
【0029】
上記した弗素樹脂フィルム製の外面部分14としては、図1の例では内面部分12の全外面を被覆する場合を図示したが、該外面部分14は内面部分12の全外面を被覆することは必ずしも必要ではなく、少なくともクリーン手袋10の掌部分10aが弗素樹脂フィルム(外面部分14)によって被覆形成されていればよい。
【0030】
また、図示例では、クリーン手袋10は、内面部分12と弗素樹脂フィルムの外面部分14とからなる二層構造の場合を例示したが、この種の二層構造に限定されるものではなく、弗素樹脂フィルム単層や三層以上の構造としてもよいことは勿論である。どのような構成の場合であっても、少なくとも密閉容器20と接触するクリーン手袋10の部分の材料の帯電列順位が密閉容器20の帯電列順位と近いことが必須である。
【0031】
図1及び図2において、14aは弗素樹脂フィルムの外面部分14の表面に突設された微小凸部である。この微小凸部14aを設けることによって、密閉容器20を取り扱う際にクリーン手袋10と密閉容器20との接触面積を減らすことができ帯電しにくくなり、静電気等の影響をさらに防ぐことができる。なお、図示例では、微小凸部14aを形成した場合を示したが、弗素樹脂フィルムの外面に微小凹凸部が形成されればよいもので、多数の微小凸条等を形成して微小凹凸部とすることもできる。
【0032】
上記したようなポリウレタン系材料の手袋の表面に弗素樹脂フィルムによる連続皮膜の被着層を形成するには、市販の弗素樹脂粉末を溶融させて全面に塗布するか、予め弗素樹脂フィルムを手袋状に形成したものをポリウレタン系材料の手袋の外面に重ね合わせ接着させる等の手法を用いることができる。
【0033】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0034】
(実験例1)
まず、クリーン手袋に用いられている材料毎にポリカーボネートへ接触した時のポリカーボネート自身の帯電量を比較した。実験は、上記材料をポリカーボネート樹脂に一定回数擦り付け、その時に発生する電位を振動電極型表面電位計で一定の距離に固定して測定したものである。同じ実験を10回繰り返し行った。
【0035】
クリーン手袋に用いられている材料として、次の材料A〜Iについての帯電電位を調べた。
材料A:天然ゴム製の手袋、
材料B:ニトリルゴム(1)製の手袋、
材料C:熱可塑性ポリウレタンエラストマー+ポリウレタンフィルム(250μm)の手袋、
材料D:熱可塑性ポリウレタンエラストマー製の手袋、
材料E:熱可塑性ポリウレタンエラストマー+ポリウレタンフィルム(90μm)の手袋、
材料F:ベルトロン(商標:誘電性炭素粒子を含むポリマーをポリエステルでサンドイッチ)入りナイロン+ポリウレタンフィルム(15μm)の手袋、
材料G:材料Fと同材料でポリウレタンフィルムなしの手袋、
材料H:ニトリルゴム(2)製の手袋、
材料I:ニトリルゴム(3)製の手袋。
(材料B,材料H及び材料Iは異なったメーカーのものを用いており完全に同じ材料ではない)
【0036】
上記した各材料についての帯電電位の測定結果を図4に示す。図4に示されるように、クリーン手袋として用いる材料により静電気の発生状況がかなり異なる。従来用いられていたポリウレタン系材料及び及びニトリルゴム系材料の手袋ではポリカーボネートを帯電させる効果が大きいことが判明した。
【0037】
(実験例2)
次に静電気とウエーハ上に存在するパーティクルの関係を調べた。図5に示したように、先ず初めにポリカーボネート樹脂製の密閉容器20を従来のクリーン手袋(ポリウレタン系材料)Gをもちいることで帯電させ、微粒子P((株)龍角散製、龍角散粉末)が存在する環境の中で開放した。これにより密閉容器の内部(特に蓋の部分)に微粒子Pが付着した状態の密閉容器が得られる。次に、あらかじめ除電したウエーハWを密閉容器20内に1枚入れ蓋をした〔図5(a)〕。この間は全て密閉容器を帯電させた従来のクリーン手袋(ポリウレタン系材料)Gを用い処理した〔図5(b)〕。
【0038】
蓋をした後、振動等を防いだ状態で直ぐに密閉容器20を開放し、ウエーハWを取り出し、ウエーハW上に存在するパーティクルPを確認した。確認の結果、大変多くの微粒子Pが付着していた〔図5(c)〕。
【0039】
これは、帯電していた密閉容器20に、従来のクリーン手袋Gを接触させた為、クリーン手袋Gと密閉容器20との間に電界が集中し、パーティクルPの密閉容器20への吸引力が無くなり、わずかながらでも帯電しているウエーハWの方に吸引されたと考えられる。
【0040】
密閉容器20に対する帯電を低く抑えるような手袋を接触させていれば、電界が集中することはないのでウエーハ表面への微粒子の移動は少ない。
【0041】
従って、静電気の発生しないようなクリーン手袋を使用することが重要であるが、前述した実験例1の中で使用できそうな材料は、材料Gのベルトロン(商標:誘電性炭素粒子を含むポリマーをポリエステルでサンドイッチ)入りナイロン及び材料Aの天然ゴム性の手袋である。
【0042】
(実験例3)
次に本発明者らは更にクリーン手袋の好ましい材料がないか調査した。クリーン手袋とポリカーボネート樹脂製との帯電列を考慮し、以下の材料J〜Nについて確認した。
材料J:PE(ポリエチレン)
材料K:PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)
材料L:セルロース
材料M:天然ゴム(実験例1のAと同様)
材料N:PVC(ポリ塩化ビニル)
【0043】
実験は、上記材料をポリカーボネート樹脂に一定回数擦り付け、その時に発生する電位を振動電極型表面電位計で一定の距離に固定して測定したものである。同じ実験を5回行った。
【0044】
この結果を図6に示す。PE、PFA,セルロ−ス、天然ゴムの電位は1kV以下であり、従来使用しているPVCよりはるかにポリカーボネートに対する影響は小さく、帯電しにくかった。中でも、PFAは天然ゴムの帯電状況のばらつきよりはるかに安定しておりかつ、PEやセルロース等に比べパーティクルの発生が少なく好ましい。従って、PFAを用いたクリーン手袋を作成した。
【0045】
帯電量は、環境などの影響により測定自体にばらつきがあるため正確な数値限定はできないが、特に密閉容器の材料に対する接触帯電(あるいは摩擦帯電)の小さくなるようなクリーン手袋の材料(帯電列順位の近い材料同士)で密閉容器を取り扱えば、おおよそ1kV以下の電位であり、クリーン手袋と密閉容器を接触することにより発生する静電気の影響を抑えることができ、密閉容器に付着しているパーティクルがウエーハ上へ移動する等の現象を抑えることができた。
【0046】
またクリーン手袋に用いる材料もその材料に添加する物質により、帯電のし易さが変化してしまうことがある。特に天然ゴムなどでは添加物によるばらつきが大きく、PFAのような弗素樹脂系材料の手袋が好ましかった。いずれの物質及び添加物を使用するにしろ、手袋の状態にした後、一旦、密閉容器への帯電状況を確認し、静電気の発生しないクリーン手袋を用いることが重要である。さらにクリーン手袋であるからには、手袋自体からの発塵や、金属汚染がないものが好ましく、この点からも弗素樹脂系材料からなる手袋が好ましかった。例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)などを主成分とし、帯電列順位が密閉容器に近い弗素樹脂であることが好ましい。
【0047】
(実施例1)
本発明のPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)製クリーン手袋を用いて、ウエーハの収納された密閉容器を取り扱った例を示す。鏡面研磨したウエーハを洗浄・乾燥し、新品の密閉容器(出荷用ボックス)に収納されたウエーハを、検査工程、出荷工程において取り扱った。検査工程では密閉容器を解放してウエーハの出し入れを行い、また出荷工程では密閉容器の外部にラミネート材を包装する等の作業を行っている。このような工程で処理した後、ウエーハ上のパーティクルを確認した。
【0048】
本実施例では、これらすべての工程でPFA製クリーン手袋を用いた。本発明のクリーン手袋を用い処理した後、ウエーハ上のパーティクルを確認したが、その増減は観察されずパーティクルの移動(付着)はなかった。
【0049】
(比較例1)
従来のポリウレタン系のクリーン手袋を用いた。実施例1と同様にこのような手袋を用い処理した後、ウエーハ上のパーティクルを確認したところ、パーティクルの移動(付着)が観察された。
【0050】
上述したように、密閉容器の帯電列順位に近い帯電列順位を有する材料によって製造されたクリーン手袋を用いて密閉容器を取り扱うことにより、密閉容器の外部の環境から密閉容器の内部にパーティクルが入り込むことを防ぎ、かつ密閉容器内のパーティクルが新たに飛び出すことを防ぐことができる。このような作用が相乗して、常にウエーハ表面の汚染を伴うことなしに密閉容器をハンドリング処理することが可能となる。
【0051】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術範囲に包含される。
【0052】
例えば、密閉容器を取り扱う工程として、特にパーティクルの発生が問題となるウエーハ製造工程におけるウエーハを収納した密閉容器を取り扱う工程、例えばウエーハ検査工程、密閉容器の包装工程を例に説明したが、これに限らず、本発明方法及びクリーン手袋はウエーハを収納しない密閉容器を取り扱う工程である密閉容器自体の製造工程、例えば成型工程や密閉容器の検査工程で使用しても密閉容器を帯電させること無く取り扱うことができパーティクルの付着等を防止することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上述べたごとく、本発明によれば、密閉容器が帯電することによって密閉容器の解放時に空気中のパーティクルが密閉容器に付着したり、またもともと密閉容器に付着していたパーティクルがウエーハ上に移動したりすることが減り安定した品質のウエーハを供給できるという効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るクリーン手袋の一つの実施の形態を示す部分切欠斜視図である。
【図2】図1の要部の断面図である。
【図3】密閉容器の一例を示す斜視図である。
【図4】実験例1におけるクリーン手袋の各種材料と帯電電位との関係を示すグラフである。
【図5】実験例2における微粒子のウエーハへの転写又は移動の状態を示す概念的模式図で、(a)は密閉容器の内面に微粒子が付着している状態、(b)は従来のクリーン手袋によって密閉容器に触れることによって密閉容器内面の微粒子がウエーハに転写又は移動する状態、(c)は微粒子が表面に転写又は移動したウエーハをそれぞれ示す。
【図6】実験例3における各種材料と発生電位との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10:クリーン手袋、10a:掌部分、12:内面部分、14:外面部分、14a:微小凸部、20:密閉容器、20a:容器本体、20b:蓋体、P:微粒子、W:ウエーハ。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高純度の半導体材料を収納するために用いられる半導体基板、例えばシリコンウエーハ(以下単にウエーハということがある)収納用の密閉容器の取り扱い方法及びその際に用いるクリーンルーム用のクリーン手袋に関する。
【0002】
【関連技術】
従来、メモリーデバイスなどに用いられる半導体基板材料として用いられるシリコンウエーハの製造方法は、一般にチョクラルスキー(Czochralski;CZ)法や浮遊帯域溶融(Floating Zone;FZ)法等を使用して単結晶インゴットを製造する単結晶成長工程と、この単結晶インゴットをスライスし、少なくとも一主面が鏡面状に加工されるウエーハ製造(加工)工程とからなる。このような工程を経たウエーハがデバイスの製造工程(デバイス会社)に出荷され、ウエーハ上に素子が形成される。
【0003】
ウエーハ製造(加工)工程は、単結晶インゴットをスライスして薄円板状のウエーハを得るスライス工程と、該スライス工程によって得られたウエーハの割れ、欠けを防止するためにその外周部を面取りする面取り工程と、このウエーハを平坦化するラッピング工程と、面取り及びラッピングされたウエーハに残留する加工歪みを除去するエッチング工程と、そのウエーハ表面を鏡面化する研磨(ポリッシング)工程と、研磨されたウエーハを洗浄して、これに付着した研磨剤や異物を除去する洗浄工程を有している。上記ウエーハ加工工程は、主な工程を示したもので、他に熱処理工程等の工程が加わったり、同じ工程を多段で行ったり、工程順が入れ換えられたりする。鏡面研磨されたウエーハ(以下、PWと言うことがある)は、その後、品質検査等が行われ、ウエーハを25枚程度の単位で図3に示したような密閉容器(キャリア、運搬用ボックス、出荷用ボックス、収納容器又は単にボックスなどと呼ばれることもある)に入れ、ラミネート袋等で包装し、ダンボールに入れるなどしてデバイス会社(デバイス工程;通常別会社)に出荷される。
【0004】
鏡面研磨ウエーハ(ウエーハ加工メーカーの最終製品)は、わずかなゴミの付着等も問題であり、通常、仕上げ洗浄や検査及びウエーハの密閉容器への収納(ボックス詰め)はクリーンルーム中で扱われる。
【0005】
また、クリーンルーム内で、例えば、シリコンウエーハの検査を行う場合、発汗により手の表面から生じるナトリウム、カリウムその他の成分による材質の汚染を防止するためにポリエチレン(以下、PEと略す)系やポリプロピレン(以下、PPと略す)系の樹脂シートで作製されたクリーン手袋を着用して材料の取り扱い処理が施されている。しかし、これらの材質では作業性が悪い(フィットしない)、パーティクルの面で問題となることがあるなどの理由から、今日ではポリ塩化ビニル系(以下、PVCと略す)あるいはポリウレタン系の樹脂シートを材料とした手袋が主に用いられている。
【0006】
同様にウエーハ製造工程の最終製品を収納する密閉容器の開閉時や、密閉容器のラミネート袋への梱包、持ち運びなどについてもこのようなクリーン手袋が用いられている。
【0007】
これらのクリーン手袋の中には材料自体の抵抗率を下げることなどにより、静電気の衝撃を緩やかに除去する為の帯電防止処理が施されていることもある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ウエーハを鏡面加工した後の製品ウエーハでは、その表面にパーティクルが存在しないことが重要である。しかし、ウエーハ自体に十分な洗浄等を行い、パーティクルを除去しても、密閉容器に収納し、デバイス会社に出荷した後にパーティクルが増加している等の問題が起きる事があった。この場合、デバイス会社(デバイス工程)で再洗浄をする必要が生じるなどの問題があった。
【0009】
また、出荷前にウエーハ上のパーティクルを確認すると検査工程では確認されなかったウエーハでもパーティクルが増えている場合があった。
【0010】
この問題に対し、密閉容器に付着した(付着している)パーティクルや外部に浮遊しているパーティクルの影響が考えられた。本発明者が鋭意調査した結果、特に密閉容器に付着した(付着している)パーティクルが密閉容器に帯電している静電気の作用により密閉容器に付着したり離れたりすることによって悪影響を及ぼすことが明らかになった。
【0011】
上記したようなクリーン手袋自体の材料の抵抗率を下げ静電気を防止するための帯電防止処理が施されているものを用いれば、上記した静電気の作用による悪影響はある程度改善できるものの、クリーン手袋を形成する材料の材質によっては密閉容器との相性が悪く、例えば出荷段階の密閉容器の取り扱いにおいては、クリーン手袋で密閉容器に触れることにより、ますます密閉容器が帯電する。また誘導帯電等により密閉容器内部の基板までも帯電させる可能性があることが考えられた。このようにクリーン手袋の材料により様々な点で悪影響を及ぼすことがある。
【0012】
本発明は、上記した種々の問題点に鑑みてなされたもので、密閉容器が帯電することによって密閉容器の開閉時に空気中のパーティクルが密閉容器に付着したり、またもともと密閉容器に付着していたパーティクルがウエーハ上に移動したりすることが減り安定した品質のウエーハを供給できるようにした密閉容器の取り扱い方法及びクリーン手袋を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
特に密閉容器が帯電することによって密閉容器の開閉時に空気中のパーティクルが密閉容器に付着したり、また密閉容器の蓋を閉めた状態で密閉容器外部からクリーン手袋を用いて取り扱っただけでも密閉容器の内部に付着したパーティクルがウエーハ上に移動したりする現象があることがわかった。
【0014】
このような問題は、取り扱われる密閉容器とクリーン手袋の相性が問題であることが明らかとなった。
【0015】
そこで、上記問題点を解決する為、本発明の密閉容器の取り扱い方法は、半導体基板を収納した又は収納しない半導体基板収納用密閉容器を取り扱う工程において、該密閉容器の材料の帯電列順位に近い帯電列順位を有する材料によって少なくとも掌部分を形成したクリーン手袋を用い、静電気の発生を抑えた状態で該密閉容器を取り扱うことを特徴とする。
【0016】
今まで密閉容器を取り扱う上で、クリーン手袋から生じるパーティクル等については注意され、クリーン手袋自体の静電気などが問題視されていたが、密閉容器自体の帯電、特にクリーン手袋で密閉容器を取り扱う際に生じる静電気等の影響についてはまったく考慮されていなかった。本発明方法のように、密閉容器とクリーン手袋の材質、特に帯電列順位に注意し、取り扱うことで密閉容器を帯電させることなくパーティクルの発生(移動)が少ない状態で処理することができる。
【0017】
本発明方法によれば、前記密閉容器を前記クリーン手袋で取り扱う場合に発生する帯電電位を相対的に低く、例えば1kv以下に抑えることによって、静電気の影響を排除し、パーティクルの発生を抑止することが可能となる。
【0018】
特に、前記密閉容器を構成する材料がポリカーボネート樹脂であり、前記クリーン手袋の少なくとも掌部分を形成する材料としてポリカーボネート樹脂の帯電列順位に近い帯電列順位を有する材料を用いることによって、静電気の発生を効果的に抑えた状態で密閉容器を取り扱うことが可能となる。
【0019】
現在大型半導体基板(例えば直径300mmのシリコンウエーハ)を収納する密閉容器は、ほとんどがポリカーボネート樹脂製のものでできており、このような密閉容器を取り扱う上で帯電列順位に着目し、クリーン手袋を選択し使用することが重要である。
【0020】
本発明方法において用いられるクリーン手袋としては、ポリカーボネート樹脂製の密閉容器を取り扱う上で少なくともクリーン手袋の掌部分に弗素樹脂フィルムが形成されている構造とするのが好ましい。本発明のクリーン手袋は、クリーンルーム用のクリーン手袋であって、少なくとも掌部分が弗素樹脂フィルムで形成されていることを特徴とする。
【0021】
ポリカーボネート樹脂製の密閉容器を扱うには、帯電列順位の観点及びクリーン手袋自体からのパーティクルの発生等を考慮すると、少なくとも掌部分に弗素樹脂フィルムが形成されているクリーン手袋が好適に用いられることがわかった。
【0022】
クリーン手袋の少なくとも掌部分を形成する弗素樹脂として、密閉容器と帯電列順位の近いPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)又はFEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)等を主成分とした材料を用いると静電気の発生が効果的に防止できる利点がある。
【0023】
また、弗素樹脂フィルム表面に微小凹凸部が形成された構造とするとさらに好ましい。このようにすることで、密閉容器を取り扱う際にクリーン手袋と密閉容器との接触面積を減らすことができ帯電しにくくなり、静電気等の影響を更に防ぐことができる。
【0024】
前記密閉容器を形成する材料の帯電列順位と前記クリーン手袋の少なくとも掌部分を形成する材料の帯電列順位の差はできるだけ小さくする必要がある。つまり、前記密閉容器を前記クリーン手袋にて取り扱う場合に発生する帯電電位を相対的に低く抑えることで安定してパーティクルの発生を抑えることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のクリーン手袋の一つの実施の形態を添付図面中、図1及び図2に基づいて説明するが、図示例は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0026】
図1は本発明に係るクリーン手袋の一つの実施の形態を示す部分切欠斜視図である。図2は図1の要部の断面図である。本実施の形態においては、シリコンウエーハ等の半導体基板を収納、搬送する容器として主に用いられているポリカーボネート樹脂製の密閉容器(図3)を例に、この密閉容器を取り扱う上で好適なクリーン手袋及び取り扱い方法について説明する。
【0027】
図1において、10は本発明のクリーン手袋である。該クリーン手袋10は、手に密着する内面部分12と該内面部分12の外面を被覆するように設けられる外面部分14とから構成されている。該内面部分12は従来から主に用いられているポリウレタン系の材料等で形成されている。また、該外面部分14は弗素樹脂フィルムで形成されている。
【0028】
このような構成とすることによって、図3に示したようなポリカーボネート樹脂製の密閉容器20を取り扱う上で好適なクリーン手袋として使用できる。なお、図3において、20aは容器本体、20bは蓋体である。
【0029】
上記した弗素樹脂フィルム製の外面部分14としては、図1の例では内面部分12の全外面を被覆する場合を図示したが、該外面部分14は内面部分12の全外面を被覆することは必ずしも必要ではなく、少なくともクリーン手袋10の掌部分10aが弗素樹脂フィルム(外面部分14)によって被覆形成されていればよい。
【0030】
また、図示例では、クリーン手袋10は、内面部分12と弗素樹脂フィルムの外面部分14とからなる二層構造の場合を例示したが、この種の二層構造に限定されるものではなく、弗素樹脂フィルム単層や三層以上の構造としてもよいことは勿論である。どのような構成の場合であっても、少なくとも密閉容器20と接触するクリーン手袋10の部分の材料の帯電列順位が密閉容器20の帯電列順位と近いことが必須である。
【0031】
図1及び図2において、14aは弗素樹脂フィルムの外面部分14の表面に突設された微小凸部である。この微小凸部14aを設けることによって、密閉容器20を取り扱う際にクリーン手袋10と密閉容器20との接触面積を減らすことができ帯電しにくくなり、静電気等の影響をさらに防ぐことができる。なお、図示例では、微小凸部14aを形成した場合を示したが、弗素樹脂フィルムの外面に微小凹凸部が形成されればよいもので、多数の微小凸条等を形成して微小凹凸部とすることもできる。
【0032】
上記したようなポリウレタン系材料の手袋の表面に弗素樹脂フィルムによる連続皮膜の被着層を形成するには、市販の弗素樹脂粉末を溶融させて全面に塗布するか、予め弗素樹脂フィルムを手袋状に形成したものをポリウレタン系材料の手袋の外面に重ね合わせ接着させる等の手法を用いることができる。
【0033】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0034】
(実験例1)
まず、クリーン手袋に用いられている材料毎にポリカーボネートへ接触した時のポリカーボネート自身の帯電量を比較した。実験は、上記材料をポリカーボネート樹脂に一定回数擦り付け、その時に発生する電位を振動電極型表面電位計で一定の距離に固定して測定したものである。同じ実験を10回繰り返し行った。
【0035】
クリーン手袋に用いられている材料として、次の材料A〜Iについての帯電電位を調べた。
材料A:天然ゴム製の手袋、
材料B:ニトリルゴム(1)製の手袋、
材料C:熱可塑性ポリウレタンエラストマー+ポリウレタンフィルム(250μm)の手袋、
材料D:熱可塑性ポリウレタンエラストマー製の手袋、
材料E:熱可塑性ポリウレタンエラストマー+ポリウレタンフィルム(90μm)の手袋、
材料F:ベルトロン(商標:誘電性炭素粒子を含むポリマーをポリエステルでサンドイッチ)入りナイロン+ポリウレタンフィルム(15μm)の手袋、
材料G:材料Fと同材料でポリウレタンフィルムなしの手袋、
材料H:ニトリルゴム(2)製の手袋、
材料I:ニトリルゴム(3)製の手袋。
(材料B,材料H及び材料Iは異なったメーカーのものを用いており完全に同じ材料ではない)
【0036】
上記した各材料についての帯電電位の測定結果を図4に示す。図4に示されるように、クリーン手袋として用いる材料により静電気の発生状況がかなり異なる。従来用いられていたポリウレタン系材料及び及びニトリルゴム系材料の手袋ではポリカーボネートを帯電させる効果が大きいことが判明した。
【0037】
(実験例2)
次に静電気とウエーハ上に存在するパーティクルの関係を調べた。図5に示したように、先ず初めにポリカーボネート樹脂製の密閉容器20を従来のクリーン手袋(ポリウレタン系材料)Gをもちいることで帯電させ、微粒子P((株)龍角散製、龍角散粉末)が存在する環境の中で開放した。これにより密閉容器の内部(特に蓋の部分)に微粒子Pが付着した状態の密閉容器が得られる。次に、あらかじめ除電したウエーハWを密閉容器20内に1枚入れ蓋をした〔図5(a)〕。この間は全て密閉容器を帯電させた従来のクリーン手袋(ポリウレタン系材料)Gを用い処理した〔図5(b)〕。
【0038】
蓋をした後、振動等を防いだ状態で直ぐに密閉容器20を開放し、ウエーハWを取り出し、ウエーハW上に存在するパーティクルPを確認した。確認の結果、大変多くの微粒子Pが付着していた〔図5(c)〕。
【0039】
これは、帯電していた密閉容器20に、従来のクリーン手袋Gを接触させた為、クリーン手袋Gと密閉容器20との間に電界が集中し、パーティクルPの密閉容器20への吸引力が無くなり、わずかながらでも帯電しているウエーハWの方に吸引されたと考えられる。
【0040】
密閉容器20に対する帯電を低く抑えるような手袋を接触させていれば、電界が集中することはないのでウエーハ表面への微粒子の移動は少ない。
【0041】
従って、静電気の発生しないようなクリーン手袋を使用することが重要であるが、前述した実験例1の中で使用できそうな材料は、材料Gのベルトロン(商標:誘電性炭素粒子を含むポリマーをポリエステルでサンドイッチ)入りナイロン及び材料Aの天然ゴム性の手袋である。
【0042】
(実験例3)
次に本発明者らは更にクリーン手袋の好ましい材料がないか調査した。クリーン手袋とポリカーボネート樹脂製との帯電列を考慮し、以下の材料J〜Nについて確認した。
材料J:PE(ポリエチレン)
材料K:PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)
材料L:セルロース
材料M:天然ゴム(実験例1のAと同様)
材料N:PVC(ポリ塩化ビニル)
【0043】
実験は、上記材料をポリカーボネート樹脂に一定回数擦り付け、その時に発生する電位を振動電極型表面電位計で一定の距離に固定して測定したものである。同じ実験を5回行った。
【0044】
この結果を図6に示す。PE、PFA,セルロ−ス、天然ゴムの電位は1kV以下であり、従来使用しているPVCよりはるかにポリカーボネートに対する影響は小さく、帯電しにくかった。中でも、PFAは天然ゴムの帯電状況のばらつきよりはるかに安定しておりかつ、PEやセルロース等に比べパーティクルの発生が少なく好ましい。従って、PFAを用いたクリーン手袋を作成した。
【0045】
帯電量は、環境などの影響により測定自体にばらつきがあるため正確な数値限定はできないが、特に密閉容器の材料に対する接触帯電(あるいは摩擦帯電)の小さくなるようなクリーン手袋の材料(帯電列順位の近い材料同士)で密閉容器を取り扱えば、おおよそ1kV以下の電位であり、クリーン手袋と密閉容器を接触することにより発生する静電気の影響を抑えることができ、密閉容器に付着しているパーティクルがウエーハ上へ移動する等の現象を抑えることができた。
【0046】
またクリーン手袋に用いる材料もその材料に添加する物質により、帯電のし易さが変化してしまうことがある。特に天然ゴムなどでは添加物によるばらつきが大きく、PFAのような弗素樹脂系材料の手袋が好ましかった。いずれの物質及び添加物を使用するにしろ、手袋の状態にした後、一旦、密閉容器への帯電状況を確認し、静電気の発生しないクリーン手袋を用いることが重要である。さらにクリーン手袋であるからには、手袋自体からの発塵や、金属汚染がないものが好ましく、この点からも弗素樹脂系材料からなる手袋が好ましかった。例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)などを主成分とし、帯電列順位が密閉容器に近い弗素樹脂であることが好ましい。
【0047】
(実施例1)
本発明のPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)製クリーン手袋を用いて、ウエーハの収納された密閉容器を取り扱った例を示す。鏡面研磨したウエーハを洗浄・乾燥し、新品の密閉容器(出荷用ボックス)に収納されたウエーハを、検査工程、出荷工程において取り扱った。検査工程では密閉容器を解放してウエーハの出し入れを行い、また出荷工程では密閉容器の外部にラミネート材を包装する等の作業を行っている。このような工程で処理した後、ウエーハ上のパーティクルを確認した。
【0048】
本実施例では、これらすべての工程でPFA製クリーン手袋を用いた。本発明のクリーン手袋を用い処理した後、ウエーハ上のパーティクルを確認したが、その増減は観察されずパーティクルの移動(付着)はなかった。
【0049】
(比較例1)
従来のポリウレタン系のクリーン手袋を用いた。実施例1と同様にこのような手袋を用い処理した後、ウエーハ上のパーティクルを確認したところ、パーティクルの移動(付着)が観察された。
【0050】
上述したように、密閉容器の帯電列順位に近い帯電列順位を有する材料によって製造されたクリーン手袋を用いて密閉容器を取り扱うことにより、密閉容器の外部の環境から密閉容器の内部にパーティクルが入り込むことを防ぎ、かつ密閉容器内のパーティクルが新たに飛び出すことを防ぐことができる。このような作用が相乗して、常にウエーハ表面の汚染を伴うことなしに密閉容器をハンドリング処理することが可能となる。
【0051】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術範囲に包含される。
【0052】
例えば、密閉容器を取り扱う工程として、特にパーティクルの発生が問題となるウエーハ製造工程におけるウエーハを収納した密閉容器を取り扱う工程、例えばウエーハ検査工程、密閉容器の包装工程を例に説明したが、これに限らず、本発明方法及びクリーン手袋はウエーハを収納しない密閉容器を取り扱う工程である密閉容器自体の製造工程、例えば成型工程や密閉容器の検査工程で使用しても密閉容器を帯電させること無く取り扱うことができパーティクルの付着等を防止することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上述べたごとく、本発明によれば、密閉容器が帯電することによって密閉容器の解放時に空気中のパーティクルが密閉容器に付着したり、またもともと密閉容器に付着していたパーティクルがウエーハ上に移動したりすることが減り安定した品質のウエーハを供給できるという効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るクリーン手袋の一つの実施の形態を示す部分切欠斜視図である。
【図2】図1の要部の断面図である。
【図3】密閉容器の一例を示す斜視図である。
【図4】実験例1におけるクリーン手袋の各種材料と帯電電位との関係を示すグラフである。
【図5】実験例2における微粒子のウエーハへの転写又は移動の状態を示す概念的模式図で、(a)は密閉容器の内面に微粒子が付着している状態、(b)は従来のクリーン手袋によって密閉容器に触れることによって密閉容器内面の微粒子がウエーハに転写又は移動する状態、(c)は微粒子が表面に転写又は移動したウエーハをそれぞれ示す。
【図6】実験例3における各種材料と発生電位との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10:クリーン手袋、10a:掌部分、12:内面部分、14:外面部分、14a:微小凸部、20:密閉容器、20a:容器本体、20b:蓋体、P:微粒子、W:ウエーハ。
Claims (9)
- 半導体基板を収納した又は収納しない半導体基板収納用密閉容器を取り扱う工程において、該密閉容器の材料の帯電列順位に近い帯電列順位を有する材料によって少なくとも掌部分を形成したクリーン手袋を用い、静電気の発生を抑えた状態で該密閉容器を取り扱うことを特徴とする密閉容器の取り扱い方法。
- 前記密閉容器を前記クリーン手袋にて取り扱う場合に発生する帯電電位を相対的に低く抑えることを特徴とする請求項1記載の密閉容器の取り扱い方法。
- 前記密閉容器を構成する材料がポリカーボネート樹脂であり、前記クリーン手袋の少なくとも掌部分を形成する材料がポリカーボネート樹脂の帯電列順位に近い帯電列順位を有することを特徴とする請求項1又は2記載の密閉容器の取り扱い方法。
- 前記クリーン手袋の少なくとも掌部分を形成する材料が弗素樹脂フィルムであることを特徴とする請求項3記載の密閉容器の取り扱い方法。
- 前記半導体基板を収納した密閉容器を取り扱う工程が、ウエーハ製造工程のウエーハ検査工程又は密閉容器の包装工程であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の密閉容器の取り扱い方法。
- 前記半導体基板を収納しない密閉容器を取り扱う工程が、密閉容器製造工程の成型工程又は密閉容器の検査工程であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の密閉容器の取り扱い方法。
- クリーンルーム用のクリーン手袋であって、少なくとも掌部分が弗素樹脂フィルムで形成されていることを特徴とするクリーン手袋。
- 前記弗素樹脂が、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)又はFEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体))であることを特徴とする請求項7記載のクリーン手袋。
- 前記弗素樹脂フィルムの表面に微小凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項7又は8記載のクリーン手袋。
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