JP2004177161A - マイクロ流体デバイスおよび微小ケミカルデバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】分散溶液が極少量であっても、該分散溶液からの分散質の分離を効率良く行うことができるマイクロ流体デバイスを提供する。
【解決手段】部材内に、第二の層3aの欠損部(直線部4a、5aおよび分岐部6a)、第三の層11の欠損部(直線部4b、5bおよび分岐部6b)、および第四の層3cの欠損部(直線部4c、5cおよび分岐部6c)からなる流路が形成され、該流路の中途に、第二の層3aの突起18aおよび第四の層3cの突起18cを縦桟とし第三の層11の板状部19を横桟とする、流路の断面よりも小さい開口部を有するグリッド面が設けられたマイクロ流体デバイス。
【選択図】 図1
【解決手段】部材内に、第二の層3aの欠損部(直線部4a、5aおよび分岐部6a)、第三の層11の欠損部(直線部4b、5bおよび分岐部6b)、および第四の層3cの欠損部(直線部4c、5cおよび分岐部6c)からなる流路が形成され、該流路の中途に、第二の層3aの突起18aおよび第四の層3cの突起18cを縦桟とし第三の層11の板状部19を横桟とする、流路の断面よりも小さい開口部を有するグリッド面が設けられたマイクロ流体デバイス。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、部材中に微小な流路を有するとともに該流路の中途に分離機構が設けられたマイクロ流体デバイスおよびこれを用いた微小ケミカルデバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
分散溶液から分散質を分離する方法として、例えば、無数の微小な空孔を有する多孔膜を通過させて分離する膜分離法、または分散質が分散媒に比べて比重が大きいことを利用し、遠心分離する方法等が一般に知られている。
【0003】
それらの中で、微量の流体を取り扱うマイクロ流体デバイスにおける分離方法としては、分離膜が好適である。このような観点から、本発明者等の出願によるマイクロ流体デバイス内部に多孔質膜を組み込み、分離する方法が開示されている(特許文献1参照。)。しかしながら、分離膜は細孔の孔径分布を持つため、分離精度に劣るものであった。また、同じ理由で、遮断対象となる溶質の一部が分離膜を透過することを防ぐためには、十分小さい平均孔径の分離膜を使用する必要があり、大きな圧力損失を発生していた。
一方、本発明者等の出願による、毛細管状の流路中の液体の脱気機構を有するマイクロ流体デバイスにおいて、気体は透過するが液体は透過しない隔壁の構造の一例として、複数のスリット状の細孔を有する構造が開示されている(特許文献1及び特許文献2参照。)。これらのスリット構造は、前記のように水は透過しないが、仮に、透過可能な液体の濾過に使用できるとしても、該スリット構造は、断面の縦横比が大きく、寸法異方性のある溶質の濾過、分離を行うには、やはり精度が低かった。該スリットの縦横比を1に近づけると、濾過面積が不足して圧力損失が増すと共に、溶質によって閉塞し易いという欠点があった。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−102681号公報(第8−9頁)
【特許文献2】
特開2002−018271号公報(第9頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、極微量の分散溶液からの分散質の分離を高い精度で、圧力損失が低く、目詰まりせずに行うことができるマイクロ流体デバイスおよびこれを用いた微小ケミカルデバイスを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、毛細管状の流路(4a、4b、4c、5a、5b、5c、6a、6b、6c)を有し、該流路の中途に、該流路の断面よりも小さい開口部が縦横にそれぞれ2列以上形成されたグリッド面(18a、18c、19)が設けられていることを特徴とするマイクロデバイスを提供する。該グリッド面は前流路の断面を横断して形成される。ここで言うグリッド面とは縦横に前記開口部がそれぞれ2列以上形成された格子状構造物を指し、開口部とはグリッド面を貫通する一つ一つの細孔のことを指す。本発明において、グリッド部は分散溶液から分散質を分離するための分離手段として設けられる。
本発明のマイクロ流体デバイスによれば、毛細管状の流路内を移送される流体がグリッド面を通過する際に、該グリッド面の開口部を通過できない分離対象物が流体から分離される。したがって、マイクロ流体デバイスの流路に分散溶液を供給するとともに、グリッド面の開口部を分散質が通過できない大きさに設定することによって、分散溶液から分散質を分離することができる。また、分散溶液が極少量であっても分散質の分離を高い精度で行うことができるうえ、圧力損失が低く、目詰まりが生じにくい。さらに、分散溶液の吸収が無いので回収効率も良い。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のマイクロ流体デバイスにおいて、前記グリッド面に達した流体のうち、該グリッド面を通過した一部が移送される流路と、該グリッド面を通過しなかった他部が移送される流路が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、流路に供給された分散溶液のうち、グリッド面の開口部を通過した分散媒が流路内を移送されるとともに、グリッド面の開口部を通過できない分散質を、供給時よりも高い濃度で含む分散溶液が別の流路内を移送される。これにより、グリッド面の開口部を通過できない分散質が、グリッド面の上流側に滞留するのを防止することができ、分散質が除去された分散媒、および分散質を高濃度で含む分散溶液を回収することができる。
【0008】
本発明のマイクロ流体デバイスにおいて、流路の(断面の幅×高さ)が(0.5μm×0.5μm)〜(3mm×3mm)の範囲内であることが好ましく、(1μm×1μm)〜(1mm×1mm)の範囲内であることがより好ましい。
ここで、流路の断面とは、流路の長さ方向、すなわち流体の移送方向に対して垂直な面に沿う断面である(以下、同様)。流路の断面積は好ましくは0.25μm2〜9mm2であり、更に好ましくは1μm2〜1mm2である。流路の断面形状は任意であり、矩形(角が丸められた矩形を含む。以下同様)、スリット状、台形、半円等であり得る。
流路の断面の寸法が小さいほど流路を通過する流体の移送速度が低下する傾向にあり、作業効率が悪くなる。また、流路の断面の寸法が大きいほど、分離に必要な流体の量が多くなるので、毛細管状の流路を用いることによって極小量の流体でも分離できるというメリットが減少する。
流路の移送方向における長さは任意であり、用途目的により好適な長さを採り得る。また、流路の移送方向における形状も任意であり、移送方向において流路の断面形状や断面積が変化してもよい。
【0009】
本発明のマイクロ流体デバイスにおいて、前記グリッド面における開口部の(断面の幅×高さ)は、(0.3μm×0.3μm)〜(100μm×100μm)の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、(1μm×1μm)〜(50μm×50μm)の範囲内である。ここで言う、開口部の(断面の幅×高さ)(以下、開口部の断面と呼ぶ)とは、開口部を通過する流体の移送方向に対して垂直な面に沿う断面である。開口部の断面の寸法は、流体中の分離対象となる分散質の大きさに応じて、該分離対象が通過できない大きさに設定される。開口部の断面の寸法が上記範囲未満であると、圧力損失が増し、開口部を通過する流体の移送速度が著しく低下する。該開口部の断面の寸法の上限は、本発明のマイクロ流体デバイスの流路の断面寸法未満である。
開口部の断面の形状は任意であり、矩形などの多角形(角が丸められた多角形傾を含む。以下同様)、円、楕円、スリット状、台形、半円等であり得る。特に、開口部の断面の縦横比(前記断面における幅:高さの比)は0.8:1.0〜1.0:0.8が好ましい。このように開口部の断面の縦横比を1に近くすれば、寸法異方性のある溶質に対する濾過性能が向上するので好ましい。
開口部の断面の寸法は、開口部を通過する流体の移送方向において、均一でもよく、変化していてもよい。後者の場合は、開口部の断面の寸法の最も小さい部分が、分離対象となる分散質が通過できない大きさであればよい。この場合、開口部を通過する流体の移送方向において、最も上流側にある開口部の断面の寸法が最も小さくなることが、目詰まり防止の点から好ましい。開口部の断面積を開口部を通過する流体の移送方向で増大させることにより、同じ最小孔径を持ちながら圧力損失を低下させることが出来る。
開口部を通過する流体の移送方向に平行な開口部(グリッド面)の長さは特に限定されないが、短すぎるとグリッド面の強度の低下を招きがちであるし、製造が困難となる。一方、長すぎると圧力損失が大きくなるので、好ましくは1μm〜1mmの範囲内、より好ましくは10μm〜500μmの範囲内とされる。
【0010】
前記グリッド面内の開口部の配列様式は任意である。開口部が16個であるグリッド面では、例えば縦2列×横8列、縦4列×横4列または縦8列×横2列の配列様式の開口部を持つことが可能である。このような場合、縦横に配列する開口部の個数が同数に近いグリッド面の方がマイクロ流体デバイス上面から見たグリッド面の占有面積が小さくなり、マイクロ流体デバイスを小型化出来るため好適である。
【0011】
前記グリッド面における開口部の数は4以上であれば特に限定されないが、分散溶液からの分離時間を早めるためには4〜10000が好ましく、100〜1000がより好ましい。開口部数が過多である場合には、開口部で留まる分散溶液が多くなるために、目的とする量の分離された溶液を得るのに必要な分散溶液の量が増えるため、効率的な分離が困難となる。前記の範囲内とすれば、極少量からの分離を効率よく行うことが可能である。
【0012】
本発明のマイクロ流体デバイスにおいて、グリッド面は、前記開口部を通過する流体の移送方向に垂直な面内で縦横各2列以上の開口部を有する。開口部を縦横各2列以上設けることによって、開口部の大きさおよび配列の自由度が増し、縦横比が1に近い開口部を多数形成し易くなる。化学工学分野で周知のように、同じ断面積の開口部が同じ数だけ設けられていても、個々の開口部の縦横比が1に近いほど流路を通過する流体の圧力損失が小さくなるため、分散溶液からの分散質の分離速度が向上する。また、各開口部の縦横比を1に近くすることによって、異方性のある分散質の分離精度が向上する。これに対して、グリッド面に開口部が縦又は横に一列である場合は、特に開口部の孔径(断面積)が小さい場合には、流路断面積の内、該流路断面積に比べて微小な開口部が一列に並んだ断面積しか有効に利用されず、分散溶液が流路を通過すること自体が困難となる。
このような構造のグリッド面は、例えば公知のマイクロ光造形法で流路と同時に形成することが出来るし、別途、公知のフォトリソグラフィーで形成して、流路のしかるべき位置に装着することもできる。
しかしながら、前記グリッド面は、それぞれ一列に並んだ開口部を有する複数の層が、前記開口部を通過する流体の移送方向に対して垂直方向に積層された構造とすることが、前記グリッド部をマイクロ流体デバイスのその他の部分と同時に形成出来るため生産性が高く、好ましい。その際、それぞれの層に形成された開口部の、積層された厚み方向での配列様式は任意であり、例えば、直線状に並んでいても良いし、斜めやジグザグ配列であっても良いし、ランダムであっても良い。
かかる構成によれば、例えばエネルギー線硬化性組成物を使用したパターン露光法や、フォトリソグラフィーにより、グリッド面を、毛細管状の流路の中途に、容易に形成することができる。これらの層は、グリッド面と同時に流路などの構造部分も含有し、それらの構造も同時に形成するものであることが好ましい。
【0013】
例えば、表面に凹溝を有し、該凹溝の中途に前記グリッド面の縦桟となる突起が設けられた第一の部材および第二の部材を、前記表面どうしが向かい合うように配し、前記第一の部材と第二の部材との間に、前記凹溝と重なる位置に、厚さ方向に貫通する欠損部が形成され、かつ前記突起を覆う位置に、前記グリッド面の横桟となる板状部が設けられた第3の部材を介在させた構成とすることができる。
かかる構成によれば、前記一列に並んだ複数の開口部を有する層を2層備えたグリッド面が形成される。
【0014】
または、前記第一の部材と第二の部材との間に、前記第3の部材を2層以上設けるとともに、該第3の部材と第3の部材との間に、前記欠損部と重なる位置に、厚さ方向に貫通する欠損部が形成され、かつ前記板状部と重なる位置に、前記グリッド面の縦桟となる突起が設けられた第四の部材を介在させた構成とすることもできる。
かかる構成によれば、前記一列に並んだ複数の開口部を有する層を3層以上備えたグリッド面が形成される。
【0015】
本発明のマイクロ流体デバイスにおいて、一つの流路内にグリッド面を任意の位置に、複数設けることができる。また複数のグリッド面を設ける場合、開口部の大きさ、および流体の移送方向におけるグリッド面の長さはグリッド面毎に独立して設定することができる。ここでの「一つの流路」とは、1つの供給口から1つの流出口に至る流路を言い、1つの供給口から1つの流出口に至るまでの間に流路が分岐、合流、あるいは分岐した後合流している場合は各支流をそれぞれ「一つの流路」と称する。
例えば、十字型の分岐部分において4本ある流路の内、少なくとも一本は供給口へ連通する流路であるが、それ以外の流路への3つの進入口の一部またはすべてにグリッド面を設置することが可能である。
また、グリッド面が設けられた流路の下流に別のグリッド面を設けてもよい。一つの流路に複数のグリッド面を設ける場合、グリッド面間の距離は任意であるが、特に流体の移送方向において、順次断面積が減少する開口部を有する複数のグリッド面を0.5μm〜3mmの間隔で断続的に設けると、溶質によって目詰まりしにくいと言う利点が得られる。この場合のグリッド面どうしの、より好ましい間隔は1μm〜1mmである。
【0016】
また本発明は、本発明のマイクロ流体デバイスに、前記流路内を移送される流体に対して物理的変化および/または化学的変化および/または生物学的変化を生じさせる手段を設けてなる微小ケミカルデバイスを提供する。
本発明における物理的変化および/または化学的変化および/または生物学的変化を生じさせる手段は、特に限定されず、本発明のマイクロ流体デバイスの内部に設けられるものであってもよく、該デバイスに付設して設けられるものであってもよい。デバイスの内部に設けられる前記手段としては、例えば、流体を移送するための流路に連通して設けられた、反応場となる流路(反応槽を含む);バルブ機構;抽出、濾過などの物理化学的処理機構;分析機構;検出機構などが挙げられる。なお、デバイス内に前記手段を設ける場合、該手段に係る部分(例えば反応槽部分など)では、流路の断面寸法が上記した好ましい範囲を超えてもよいが、少なくともグリッド面を挟む上流側および下流側の流路における断面寸法が上記した範囲内であることが好ましい。
本発明の微小ケミカルデバイスによれば、毛細管状の流路に流体を供給し、該流体が流路内を移送される間に、該流体を用いた反応や分析または分離などを実施することができる。
【0017】
本発明の微小ケミカルデバイスは、例えば、化学、生化学などの微小反応デバイス(マイクロリアクター)や、集積型DNA分析デバイス、微小電気泳動デバイス、微小クロマトグラフィーデバイス、微小膜分離デバイス、微小抽出デバイスなどの微小分析デバイスを含み、それぞれの用途に応じて必要な物理的変化および/または化学的変化および/または生物学的変化を生じさせる手段を備えている。
本発明の微小ケミカルデバイスは、化学、生化学、農業、林業、水産業、医療、食品工業、製薬工業、環境保全、犯罪捜査、スポーツ、その他の広範な分野において使用され、とりわけ、これらの分野に於ける血液分析デバイスとして有用である。具体的には、全血からの血清分離デバイスに好適である。
【0018】
【実施例】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施例について説明する。図1は本実施例のマイクロ流体デバイスを示した分解斜視図であり、図2は図1中のII−II線に沿う断面図である。
本実施例のマイクロ流体デバイスは、板状の下基材1上に第一の層2および第二の層3aがこの順に積層されている。第二の層3aには、その厚さ方向に貫通する欠損部が形成されている。欠損部は、直線部4a、5aと該直線部の中途から垂直に分岐した分岐部6aとからなる略T字状であり、この欠損部の内側面と第一の層2の上面とで凹溝が形成されている。
以下、分岐部6aの幅方向をX方向、長さ方向をY方向、深さ方向をZ方向という。
凹溝内において、分岐部6aの直線部4a、5a側の端部には5個の突起18aが設けられている。突起18aは、第二の層3aの一部からなり、第一の層2上にX方向に沿って等間隔で並んでいる。
欠損部における直線部4a、5aおよび分岐部6aの幅は50μm、深さは10μmである。突起18aの、Y方向に垂直な断面における形状は矩形で、その幅は4μm、高さは10μmであり、X方向において隣り合う突起18aどうしの間隔は5μmである。また、突起18aをZ方向から見た形状は角が丸められた矩形で、そのY方向における長さは10μmである。
本実施例において、第一の層2、および第二の層3aが本発明における第一の部材を構成している。
【0019】
第二の層3a上には第三の層11が積層されている。第三の層11には、第二の層3aの凹溝、すなわち欠損部の直線部4a、5aおよび分岐部6aと重なる位置に、厚さ方向に貫通する略T字状の欠損部(直線部4b、5bおよび分岐部6b)が形成されている。ただし、第三の層11における、第二の層3aの突起18aを覆う位置には欠損部が形成されておらず、突起18aの上部に架けわたされた板状部19となっている。
本実施例において、第三の層11が本発明の第三の部材を構成している。
【0020】
第三の層11上には、第四の層3cおよび第五の層12がこの順に積層されている。第四の層3cには第二の層3aの欠損部(直線部4a、5aおよび分岐部6a)および突起18aと同じ形状の、厚さ方向に貫通する欠損部(直線部4c、5cおよび分岐部6c)および突起18cが形成されている。
本実施例において、第四の層3cの欠損部の内側面と第五の層12の下面とで凹溝が形成されており、この第四の層3cおよび第五の層12が本発明における第二の部材を構成している。
【0021】
さらに、第五の層12上には第六の層13および上基材14がこの順に積層されている。第五の層12、第六の層13、および上基材14における、第四の層3cの欠損部(直線部4c、5cおよび分岐部6c)の3つの端部とそれぞれ重なる位置には、該第五の層12、第六の層13、および上基材14を貫通する3つ円形の孔が穿設されている。すなわち、上基材14には第一の孔15a、第二の孔16a、第三の孔17aが形成されており、第六の層13にも第一の孔15b、第二の孔16b、第三の孔17bが形成されており、第五の層12にも第一の孔15c、第二の孔16c、第三の孔17cが形成されている。
【0022】
本実施例のマイクロ流体デバイスにあっては、第一の層2の上面を底面とし、第五の層12の下面を天面とし、第二の層3a、第三の層11、および第四の層3cの欠損部の内側面を側面とする略T字状の流路が形成されている。また、該略T字状の流路の分岐部の直線部側の端部には、第二の層3aおよび第四の層3cの突起18a、18cが縦桟をなし、第三の層11の板状部19が横桟をなし、これら縦桟と横桟とで仕切られた開口部を有するグリッド面が形成されている。本実施例のマイクロ流体デバイスにおいて、グリッド面は、開口部を有する層が2層(第二の層3aおよび第四の層3c)、Z方向に積層されている。
【0023】
そして、例えば上基材14の第一の孔15aから流体を供給すると、該流体は、第六の層13の第一の孔15b、および第五の層12の第一の孔15cを順に通り、第四の層3cの直線部4cと第三の層11の直線部4bと第二の層3aの直線部4aとからなる流路内を移送される。
該流体の一部は、グリッド面の開口部、すなわち第四の層3cの突起部18cの間隙および第二の層3aの突起部18aの間隙を通過した後、第四の層3cの分岐部6cと第三の層11の分岐部6bと第二の層3aの分岐部6aとからなる流路内を移送され、第五の層12の第三の孔17cおよび第六の層13の第三の孔17bを順に通って、上基材14の第三の孔17aから流出される。
また前記流体の他部は、第四の層3cの直線部5cと第三の層11の直線部5bと第二の層3aの直線部5aとからなる流路内を移送され、第五の層12の第二の孔16cおよび第六の層13の第二の孔16bを順に通って、上基材14の第二の孔16aから流出される。
【0024】
したがって、本実施例のマイクロ流体デバイスによれば、分散溶液を上基材14の第一の孔15aから供給すると、該分散溶液はT字状の流路に移送され、グリッド面の開口部を通過した分散媒が上基材14の第三の孔17aから流出されるとともに、グリッド面の開口部を通過できない分散質を、供給時の分散溶液よりも高い濃度で含む液体が上基材14の第二の孔16aから流出されるので、これにより分散溶液の固液分離を行うことができる。
【0025】
本実施例では、3つの第一の孔15a、15b、15cからなる流路、3つの第二の孔16a、16b、16cからなる流路、および3つの第三の孔17a、17b、17cからなる流路の、流体の移送方向(Z方向)に対して垂直方向に沿う断面形状は円形であり、第二ないし第四の層3a、11、3cに形成された欠損部によって形状が規定される略T字状の流路の、流体の移送方向(X方向またはY方向)に対して垂直方向に沿う断面形状は矩形であるが、流路の断面形状は適宜変更可能である。
【0026】
マイクロ流体デバイスを構成する部材の素材、すなわち本実施例における下基材1、第一ないし第六の層2、3a、11、3c、12、13、および上基材14は、流路やグリッド面がその形状を保持できる硬度と強度を有し、流路に流す液体が実質的に不透過性である素材であれば任意である。具体例としては、有機または無機高分子重合体(以下、単に「重合体」と称する)、結晶、ガラス、セラミック、金属、半導体、炭素等であってよい。特に溝状の流路の形成に寄与する部材、本実施例では第二ないし第四の層3a、11、3cは、成形しやすさの点から、重合体であることが好ましい。
重合体は、熱可塑性重合体であっても、熱硬化重合体であってもよいが、成形性の良い熱可塑性重合体、あるいは活性エネルギー線硬化重合体が好ましい。
【0027】
また、マイクロ流体デバイスの、移送される流体と接触し得る面は親水性とすることが好ましい。
本明細書において、表面が親水性であるとは、水との接触角が90度以下であることを言う。流路表面の水との接触角は、より好ましくは45度以下、さらに好ましくは35度以下、最も好ましくは25度以下である。接触角の下限はゼロであってもよい。
本実施例では、第一ないし第六の層2、3a、11、3c、12、13および上基材14の材料として親水性を有する材料を用いるか、または、これらの各部材に流路を形成した後、内側面の一部または全部に表面処理を施して親水性を付与することが好ましい。
親水性を有する材料としては、例えば親水基を含む活性エネルギー線硬化性化合物の硬化物等が挙げられる。また親水性を付与するための表面処理方法としては、例えばコロナ処理等が挙げられる。
【0028】
活性エネルギー線硬化性化合物としては、1分子中に2個以上のエチレン性二重結合を有する物が好ましい。中でも、反応性の高い(メタ)アクリロイル基含有化合物(以下、「(メタ)アクリロイル」は、「メタクリロイル又はアクリロイル」を意味する。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル」などについても同様である。)やビニルエーテル類、また光重合開始剤の不存在下でも硬化するマレイミド基を有する化合物が好ましい。
【0029】
また、活性エネルギー線硬化性化合物として、重合性オリゴマー(プレポリマーとも呼ばれる)も用いることもでき、例えば、質量平均分子量が500〜50000のものが挙げられる。そのような重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0030】
これらの活性エネルギー線硬化性化合物は、単独で用いることもでき、また、2種類以上を混合して用いることもできる。また親水性の付与、粘度の調整、接着性の増強などの目的で、単官能モノマー、例えば、単官能(メタ)アクリル系モノマーを混合することも可能である。
【0031】
活性エネルギー線硬化性化合物は、これを必須成分とし、必要に応じて、その他の成分を混合してなる活性エネルギー線硬化性組成物として用いることが好ましい。その他の成分としては、例えば、活性エネルギー線硬化性化合物と共重合可能な単官能の重合性化合物、重合開始剤、重合遅延剤や重合禁止剤、溶剤、増粘剤、改質剤、着色剤等が挙げられる。
【0032】
活性エネルギー線硬化性組成物に、必要に応じて含有させることのできる単官能の重合性化合物は、使用する活性エネルギー線硬化性化合物と共重合可能なものであれば任意であるが、(メタ)アクリロイル基含有化合物であることが好ましい。
【0033】
活性エネルギー線が光である場合に使用する光重合開始剤は、特に制限はなく、公知慣用の、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤を使用することができる。
【0034】
活性エネルギー線硬化性組成物にマレイミド基を有する活性エネルギー線硬化性化合物または単官能モノマーを使用する場合は、マレイミド基が光重合開始剤としての機能を有するので、必ずしも前記光重合開始剤を使用する必要がない。マレイミド基の含有量が少ないときは光重合開始剤を添加するが、その量は少なくてすむ。
【0035】
活性エネルギー線硬化性組成物に添加する光重合開始剤の使用量は、0.005〜20質量%の範囲が好ましく、0.05〜5質量%の範囲が特に好ましい。
【0036】
活性エネルギー線硬化性組成物に、必要に応じて含有させることができる重合遅延剤や重合禁止剤としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−フェニルスチレン、p−オクチルスチレン、p−(4−ペンチルシクロヘキシル)スチレン、p−フェニルスチレン、 p−(p−エトキシフェニル)フェニルスチレン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、4,4′−ジビニルビフェニル、2−ビニルナフタレン等のエネルギー線硬化性化合物としては重合速度の低いビニル系モノマー;tert−ブチルフェノール、ジオクチルフェノールなどのヒンダントフェノール類等が挙げられる。
【0037】
本実施例のマイクロ流体デバイスは、例えば下基材1上に、第一の層2、欠損部が形成された第二の層3a、欠損部が形成された第三の層11、欠損部が形成された第四の層3c、第五の層12、第六の層13、および上基材14を順に積層して接着一体化し、第五の層12、第六の層13、および上基材14の所定位置に孔を穿設することによって製造することができる。
【0038】
欠損部を形成する方法は任意であり、例えば、射出成型、溶剤キャスト法、溶融レプリカ法、エネルギー線硬化レプリカ法、切削、フォトリソグラフィー(エネルギー線リソグラフィーを含む。以下同様)、エッチング法、蒸着法、気相重合法等を用いることができる。
また、本実施例では、第一の層2上に、厚さ方向に貫通する欠損部が形成された第二の層3aを積層したが、第一の層2を用いず、第二の層3aよりも厚い部材の上面に、上記に挙げた方法等で断面凹状の溝を形成してもよい。同様に、第四の層3cに欠損部を形成する代わりに、第四の層3cよりも厚い部材の下面に、上記に挙げた方法等で断面凹状の溝を形成してもよい。この場合、第五の層12は用いなくてもよい。
【0039】
このようにして得られるマイクロ流体デバイスは、さらに他の任意の部材や、他のマイクロ流体デバイスと積層や接着することもできる。
また、マイクロ流体デバイスを用いて微小ケミカルデバイスを構成する場合には、流路以外に、例えば、貯液槽、反応槽、分析機構など微小ケミカルデバイスとして必要な構造を、同様の方法を用いて形成することができる。
【0040】
なお、本実施例のマイクロ流体デバイスは、全体の外形を板状としたが、これに限定されるものではなく、用途目的に応じた形状を採りうる。例えば、板状のほかに、フィルム状(シート状、リボン状などを含む。以下同様)、塗膜状、棒状、管状、円筒状、その他複雑な形状の成型物などであり得る。他のマイクロ流体デバイスとの一体化しやすさ及び成形しやすさの面からは、フィルム状又は板状であることが好ましい。
【0041】
また、本実施例では、グリッド面の縦桟となる突起が形成された層として、第二の層3aと第四の層3cの2層を用い、これらの間にグリッド面の横桟となる板状部を供えた第三の層11を介在させたが、縦桟となる突起が形成された層を3層以上、横桟となる板状部が形成された層を挟みながら積層させた構成としてもよい。
【0042】
また、本実施例ではグリッド面の開口部の形状を、縦桟としての突起18a、18cと、横桟としての板状部19とで仕切られた断面略矩形としたが、これに限らず、流路内部を移送される流体中の、分離しようとする分離対象物(分散質)が通過できない大きさの開口部であればよく、形状は適宜変更することができる。
【0043】
以下、具体的な実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、各々「質量部」及び「質量%」を表わす。
【0044】
[エネルギー線照射装置]
200wメタルハライドランプが組み込まれたウシオ電機株式会社製のマルチライト200型露光装置用光源ユニットを用いた。紫外線強度は50mw/cm2である。
【0045】
[製造例1]
〔活性エネルギー線硬化性組成物(i)の調製〕
活性エネルギー線硬化性化合物として、質量平均分子量約2000の大日本インキ化学工業株式会社製3官能ウレタンアクリレートオリゴマー「ユニディックV−4263」60部、第一工業製薬株式会社製1,6−ヘキサンジオールジアクリレート「ニューフロンティアHDDA」20部、第一工業製薬株式会社製ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート「N−177E」(両親媒性の単量体)20部、及び光重合開始剤としてチバガイギー社製1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュア184」5部を均一に混合して活性エネルギー線硬化性組成物(i)を調製した。
【0046】
〔活性エネルギー線硬化性組成物(ii)の調製〕
活性エネルギー線硬化性化合物として、質量平均分子量約2000の大日本インキ化学工業株式会社製3官能ウレタンアクリレートオリゴマー「ユニディックV−4263」60部、第一工業製薬株式会社製1,6−ヘキサンジオールジアクリレート「ニューフロンティアHDDA」20部、第一工業製薬株式会社製ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート「N−177E」(両親媒性の単量体)20部、光重合開始剤としてチバガイギー社製1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュア184」5部、及び重合遅延剤として関東化学株式会社製2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン0.5部を均一に混合して活性エネルギー線硬化性組成物(ii)を調製した。
【0047】
〔マイクロ流体デバイスの作製〕
下基材1として旭化成社製ポリアクリレート板「デラグラスA−999 1.0番」を用い、これに127μmのバーコーターを用いて活性エネルギー線硬化性組成物(i)を塗布し、50mw/cm2の紫外線を窒素雰囲気中で3秒間照射して、第一の層2となる塗膜を半硬化させた。
【0048】
この半硬化状態の塗膜上に、スピンコーターを用いて活性エネルギー線硬化性組成物(ii)を塗布し、図3に示すフォトマスク21を介して50mw/cm2の紫外線を窒素雰囲気で3秒間照射して、第二の層3aとなる塗膜を半硬化させた。フォトマスク21は第二の層3aに形成される略T字状の欠損部(直線部4a、5aおよび分岐部6a)に対応する形状の遮蔽部(図中斜線で示す)22を有しており、この遮蔽部22以外の部分に紫外線が照射されるようになっている。遮蔽部22の、分岐部6aの直線部4a、5a側の端部において、グリッド面の縦桟となる突起18aに対応する部位は紫外線が透過する透過部となっている。
続いて、エタノールにて第二の層3aとなる塗膜の、紫外線が照射されていない未硬化の活性エネルギー線硬化性組成物(ii)を洗浄除去することにより、該塗膜に略T字状の欠損部を形成した。略T字状の欠損部(直線部4a、5aのY方向,および分岐部6aのX方向)の幅は50μm、Z方向の深さは10μmであった。また分岐部6aの端部に形成された突起18aのX方向における幅は4μm、Y方向における幅は10μm、高さは10μm、隣り合う突起どうしの間隔は5μmであった。
【0049】
これとは別に、一時的な支持体(図示せず)として5cm×5cm×30μmの二村化学工業社製ポリプロピレン製フィルム「二軸延伸ポリプロピレンフィルム「太閤」FOR 30番」を使用し、この上にスピンコーターを用いて活性エネルギー線硬化性組成物(ii)を塗布して第三の層11となる塗膜を形成し、図4に示すフォトマスク31を介して50mw/cm2の紫外線を窒素雰囲気で3秒間照射して、該塗膜を半硬化させた。フォトマスク31には、前記第二の層3aに形成される略T字状の欠損部(直線部4c、5cおよび分岐部6a)のうち、突起18aを覆う部分を除く部分に対応する形状の遮蔽部(図中斜線で示す)32を有しており、この遮蔽部32以外の部分に紫外線が照射されるようになっている。そして、エタノールにて第三の層11となる塗膜の、紫外線が照射されていない未硬化の活性エネルギー線硬化性組成物(ii)を洗浄除去することにより、該塗膜に略T字状で分岐部分に板状部19を有する欠損部を形成した。
このようにして形成された第三の層11となる塗膜を、上記で形成した第二の層3a上に密着させ、一時的な指示体であるポリプロピレン製フィルムを介して紫外線を更に30秒間照射して、第一の層2、第二の層3a、および第三の層11を硬化させた。このようにして、下基材1、第一の層2、第二の層3a、および第三の層11を接着一体化した後、一時的な支持体を剥離した。
【0050】
次いで、第三の層11上に、スピンコーターを用いて活性エネルギー線硬化性組成物(ii)を塗布し、図3に示すフォトマスク21を介して50mw/cm2の紫外線を窒素雰囲気で3秒間照射して、第四の層3cとなる塗膜を半硬化させた。フォトマスク21は前記第二の層3aとなる塗膜に対する紫外線照射時に用いたのと同形状のものが使用した。すなわち、第四の層3cに形成される略T字状の欠損部(直線部4c、5cおよび分岐部6c)に対応する形状の遮蔽部(図中斜線で示す)22を有しており、該遮蔽部22の、分岐部6cの直線部4c、5c側の端部においては、グリッド面の縦桟となる突起18cに対応する部位が透過部となっている。そして、第四の層3cとなる塗膜表面の、紫外線が照射されていない未硬化の活性エネルギー線硬化性組成物(ii)を、エタノールにて洗浄除去することにより、該塗膜に略T字状の欠損部を形成した。該塗膜に形成された欠損部の形状は前記第二の層3aに形成された欠損部と同形状であった。
【0051】
これとは別に、一時的な支持体(図示せず)として5cm×5cm×30μmのポリプロピレン製フィルムを使用し、この上にスピンコーターを用いて活性エネルギー線硬化性組成物(i)を塗布して第五の層12となる塗膜を形成し、該塗膜の全面に50mw/cm2の紫外線を窒素雰囲気中にて3秒間照射し、該塗膜を半硬化させた。次いで、半硬化状態とされた第五の層12となる塗膜を、上記第四の層3cとなる塗膜上に密着させ、一時的な支持体であるポリプロピレン製フィルムを介して、紫外線を更に30秒間照射して第四の層3cおよび第五の層12を硬化させた。このようにして、第三の層11上に第四の層3cおよび第五の層12を接着一体化した後、一時的な支持体を剥離した。
【0052】
〔接続口の形成〕
この後、第五の層12上に活性エネルギー線硬化性組成物(i)を塗布して第六の層13となる塗膜を形成し、さらにその上に上基材14として、下基材1と同じ旭化成社製ポリアクリレート板「デラグラスA−999 1.0番」(5cm×5cm×1mm)の板を重ね合わせ、50mw/cm2の紫外線を窒素雰囲気中にて塗膜全面に40秒間照射し、第六の層13を硬化させた。これにより第五の層12上に第六の層13および上基板14が接着一体化された。
次いで、第五の層12、第六の層13、および上基材14の、第四の層3cにおける略T字状の欠損部(直線部4c、5cおよび分岐部6c)の3つの端部とそれぞれ重なる位置に、ドリルにて直径1mmの孔を3つ穿ち、第一の孔15a,15b,15c、第二の孔16a,16b,16c、第三の孔17a,17b,17cをそれぞれ形成した。
さらに、これら3つの孔にそれぞれ内径3mm、高さ5mmのポリ塩化ビニル管を接着して、マイクロ流体デバイスを得た。
【0053】
[実施例1]
製造例1で得られたマイクロ流体デバイスの、第一の孔15aに接続されたポリ塩化ビニル管から、直径約6μmのカーボン粉体を水に分散させてなる分散溶液を供給し、このポリ塩化ビニル管にシリンジを接続して、供給した分散溶液が第二の孔16aから流出するまで加圧した。
その間に、分散媒である水の一部が第三の孔17aから流出された。第三の孔17aから流出された水にカーボン粉体は含まれておらず、カーボン粉体がグリッド面を通過しなかったことが確認された。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の分散溶液から分散質を分離する方法では分離が困難だった微少量溶液からの分散質の分離も行うことが可能である。また、グリッド面の開口部の大きさを分離対象の大きさに応じて設定することによって、分散溶液からの分散質の分離を非常に効果的に、かつ高い精度で行うことができるうえ、圧力損失を低くしたり、目詰まりを生じ難くしたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマイクロ流体デバイスの一実施例を示した分解斜視図である。
【図2】図1中のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示すマイクロ流体デバイスを製造する際に用いるフォトマスクを示した平面図である。
【図4】図1に示すマイクロ流体デバイスを製造する際に用いるフォトマスクを示した平面図である。
【符号の説明】
1 下基板
2 第一の層
3a 第二の層
3c 第四の層
4a,4b,4c,5a,5b,5c 直線部(欠損部)、
6a,6b,6c 分岐部(欠損部)
11 第三の層
12 第五の層
13 第六の層
14 上基板
15a,15b,15c 第一の孔
16a,16b,16c 第二の孔
17a,17b,17c 第三の孔
18a、18c 突起(グリッド面の縦桟)
19 板状部(グリッド面の横桟)
【発明の属する技術分野】
本発明は、部材中に微小な流路を有するとともに該流路の中途に分離機構が設けられたマイクロ流体デバイスおよびこれを用いた微小ケミカルデバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
分散溶液から分散質を分離する方法として、例えば、無数の微小な空孔を有する多孔膜を通過させて分離する膜分離法、または分散質が分散媒に比べて比重が大きいことを利用し、遠心分離する方法等が一般に知られている。
【0003】
それらの中で、微量の流体を取り扱うマイクロ流体デバイスにおける分離方法としては、分離膜が好適である。このような観点から、本発明者等の出願によるマイクロ流体デバイス内部に多孔質膜を組み込み、分離する方法が開示されている(特許文献1参照。)。しかしながら、分離膜は細孔の孔径分布を持つため、分離精度に劣るものであった。また、同じ理由で、遮断対象となる溶質の一部が分離膜を透過することを防ぐためには、十分小さい平均孔径の分離膜を使用する必要があり、大きな圧力損失を発生していた。
一方、本発明者等の出願による、毛細管状の流路中の液体の脱気機構を有するマイクロ流体デバイスにおいて、気体は透過するが液体は透過しない隔壁の構造の一例として、複数のスリット状の細孔を有する構造が開示されている(特許文献1及び特許文献2参照。)。これらのスリット構造は、前記のように水は透過しないが、仮に、透過可能な液体の濾過に使用できるとしても、該スリット構造は、断面の縦横比が大きく、寸法異方性のある溶質の濾過、分離を行うには、やはり精度が低かった。該スリットの縦横比を1に近づけると、濾過面積が不足して圧力損失が増すと共に、溶質によって閉塞し易いという欠点があった。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−102681号公報(第8−9頁)
【特許文献2】
特開2002−018271号公報(第9頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、極微量の分散溶液からの分散質の分離を高い精度で、圧力損失が低く、目詰まりせずに行うことができるマイクロ流体デバイスおよびこれを用いた微小ケミカルデバイスを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、毛細管状の流路(4a、4b、4c、5a、5b、5c、6a、6b、6c)を有し、該流路の中途に、該流路の断面よりも小さい開口部が縦横にそれぞれ2列以上形成されたグリッド面(18a、18c、19)が設けられていることを特徴とするマイクロデバイスを提供する。該グリッド面は前流路の断面を横断して形成される。ここで言うグリッド面とは縦横に前記開口部がそれぞれ2列以上形成された格子状構造物を指し、開口部とはグリッド面を貫通する一つ一つの細孔のことを指す。本発明において、グリッド部は分散溶液から分散質を分離するための分離手段として設けられる。
本発明のマイクロ流体デバイスによれば、毛細管状の流路内を移送される流体がグリッド面を通過する際に、該グリッド面の開口部を通過できない分離対象物が流体から分離される。したがって、マイクロ流体デバイスの流路に分散溶液を供給するとともに、グリッド面の開口部を分散質が通過できない大きさに設定することによって、分散溶液から分散質を分離することができる。また、分散溶液が極少量であっても分散質の分離を高い精度で行うことができるうえ、圧力損失が低く、目詰まりが生じにくい。さらに、分散溶液の吸収が無いので回収効率も良い。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のマイクロ流体デバイスにおいて、前記グリッド面に達した流体のうち、該グリッド面を通過した一部が移送される流路と、該グリッド面を通過しなかった他部が移送される流路が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、流路に供給された分散溶液のうち、グリッド面の開口部を通過した分散媒が流路内を移送されるとともに、グリッド面の開口部を通過できない分散質を、供給時よりも高い濃度で含む分散溶液が別の流路内を移送される。これにより、グリッド面の開口部を通過できない分散質が、グリッド面の上流側に滞留するのを防止することができ、分散質が除去された分散媒、および分散質を高濃度で含む分散溶液を回収することができる。
【0008】
本発明のマイクロ流体デバイスにおいて、流路の(断面の幅×高さ)が(0.5μm×0.5μm)〜(3mm×3mm)の範囲内であることが好ましく、(1μm×1μm)〜(1mm×1mm)の範囲内であることがより好ましい。
ここで、流路の断面とは、流路の長さ方向、すなわち流体の移送方向に対して垂直な面に沿う断面である(以下、同様)。流路の断面積は好ましくは0.25μm2〜9mm2であり、更に好ましくは1μm2〜1mm2である。流路の断面形状は任意であり、矩形(角が丸められた矩形を含む。以下同様)、スリット状、台形、半円等であり得る。
流路の断面の寸法が小さいほど流路を通過する流体の移送速度が低下する傾向にあり、作業効率が悪くなる。また、流路の断面の寸法が大きいほど、分離に必要な流体の量が多くなるので、毛細管状の流路を用いることによって極小量の流体でも分離できるというメリットが減少する。
流路の移送方向における長さは任意であり、用途目的により好適な長さを採り得る。また、流路の移送方向における形状も任意であり、移送方向において流路の断面形状や断面積が変化してもよい。
【0009】
本発明のマイクロ流体デバイスにおいて、前記グリッド面における開口部の(断面の幅×高さ)は、(0.3μm×0.3μm)〜(100μm×100μm)の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、(1μm×1μm)〜(50μm×50μm)の範囲内である。ここで言う、開口部の(断面の幅×高さ)(以下、開口部の断面と呼ぶ)とは、開口部を通過する流体の移送方向に対して垂直な面に沿う断面である。開口部の断面の寸法は、流体中の分離対象となる分散質の大きさに応じて、該分離対象が通過できない大きさに設定される。開口部の断面の寸法が上記範囲未満であると、圧力損失が増し、開口部を通過する流体の移送速度が著しく低下する。該開口部の断面の寸法の上限は、本発明のマイクロ流体デバイスの流路の断面寸法未満である。
開口部の断面の形状は任意であり、矩形などの多角形(角が丸められた多角形傾を含む。以下同様)、円、楕円、スリット状、台形、半円等であり得る。特に、開口部の断面の縦横比(前記断面における幅:高さの比)は0.8:1.0〜1.0:0.8が好ましい。このように開口部の断面の縦横比を1に近くすれば、寸法異方性のある溶質に対する濾過性能が向上するので好ましい。
開口部の断面の寸法は、開口部を通過する流体の移送方向において、均一でもよく、変化していてもよい。後者の場合は、開口部の断面の寸法の最も小さい部分が、分離対象となる分散質が通過できない大きさであればよい。この場合、開口部を通過する流体の移送方向において、最も上流側にある開口部の断面の寸法が最も小さくなることが、目詰まり防止の点から好ましい。開口部の断面積を開口部を通過する流体の移送方向で増大させることにより、同じ最小孔径を持ちながら圧力損失を低下させることが出来る。
開口部を通過する流体の移送方向に平行な開口部(グリッド面)の長さは特に限定されないが、短すぎるとグリッド面の強度の低下を招きがちであるし、製造が困難となる。一方、長すぎると圧力損失が大きくなるので、好ましくは1μm〜1mmの範囲内、より好ましくは10μm〜500μmの範囲内とされる。
【0010】
前記グリッド面内の開口部の配列様式は任意である。開口部が16個であるグリッド面では、例えば縦2列×横8列、縦4列×横4列または縦8列×横2列の配列様式の開口部を持つことが可能である。このような場合、縦横に配列する開口部の個数が同数に近いグリッド面の方がマイクロ流体デバイス上面から見たグリッド面の占有面積が小さくなり、マイクロ流体デバイスを小型化出来るため好適である。
【0011】
前記グリッド面における開口部の数は4以上であれば特に限定されないが、分散溶液からの分離時間を早めるためには4〜10000が好ましく、100〜1000がより好ましい。開口部数が過多である場合には、開口部で留まる分散溶液が多くなるために、目的とする量の分離された溶液を得るのに必要な分散溶液の量が増えるため、効率的な分離が困難となる。前記の範囲内とすれば、極少量からの分離を効率よく行うことが可能である。
【0012】
本発明のマイクロ流体デバイスにおいて、グリッド面は、前記開口部を通過する流体の移送方向に垂直な面内で縦横各2列以上の開口部を有する。開口部を縦横各2列以上設けることによって、開口部の大きさおよび配列の自由度が増し、縦横比が1に近い開口部を多数形成し易くなる。化学工学分野で周知のように、同じ断面積の開口部が同じ数だけ設けられていても、個々の開口部の縦横比が1に近いほど流路を通過する流体の圧力損失が小さくなるため、分散溶液からの分散質の分離速度が向上する。また、各開口部の縦横比を1に近くすることによって、異方性のある分散質の分離精度が向上する。これに対して、グリッド面に開口部が縦又は横に一列である場合は、特に開口部の孔径(断面積)が小さい場合には、流路断面積の内、該流路断面積に比べて微小な開口部が一列に並んだ断面積しか有効に利用されず、分散溶液が流路を通過すること自体が困難となる。
このような構造のグリッド面は、例えば公知のマイクロ光造形法で流路と同時に形成することが出来るし、別途、公知のフォトリソグラフィーで形成して、流路のしかるべき位置に装着することもできる。
しかしながら、前記グリッド面は、それぞれ一列に並んだ開口部を有する複数の層が、前記開口部を通過する流体の移送方向に対して垂直方向に積層された構造とすることが、前記グリッド部をマイクロ流体デバイスのその他の部分と同時に形成出来るため生産性が高く、好ましい。その際、それぞれの層に形成された開口部の、積層された厚み方向での配列様式は任意であり、例えば、直線状に並んでいても良いし、斜めやジグザグ配列であっても良いし、ランダムであっても良い。
かかる構成によれば、例えばエネルギー線硬化性組成物を使用したパターン露光法や、フォトリソグラフィーにより、グリッド面を、毛細管状の流路の中途に、容易に形成することができる。これらの層は、グリッド面と同時に流路などの構造部分も含有し、それらの構造も同時に形成するものであることが好ましい。
【0013】
例えば、表面に凹溝を有し、該凹溝の中途に前記グリッド面の縦桟となる突起が設けられた第一の部材および第二の部材を、前記表面どうしが向かい合うように配し、前記第一の部材と第二の部材との間に、前記凹溝と重なる位置に、厚さ方向に貫通する欠損部が形成され、かつ前記突起を覆う位置に、前記グリッド面の横桟となる板状部が設けられた第3の部材を介在させた構成とすることができる。
かかる構成によれば、前記一列に並んだ複数の開口部を有する層を2層備えたグリッド面が形成される。
【0014】
または、前記第一の部材と第二の部材との間に、前記第3の部材を2層以上設けるとともに、該第3の部材と第3の部材との間に、前記欠損部と重なる位置に、厚さ方向に貫通する欠損部が形成され、かつ前記板状部と重なる位置に、前記グリッド面の縦桟となる突起が設けられた第四の部材を介在させた構成とすることもできる。
かかる構成によれば、前記一列に並んだ複数の開口部を有する層を3層以上備えたグリッド面が形成される。
【0015】
本発明のマイクロ流体デバイスにおいて、一つの流路内にグリッド面を任意の位置に、複数設けることができる。また複数のグリッド面を設ける場合、開口部の大きさ、および流体の移送方向におけるグリッド面の長さはグリッド面毎に独立して設定することができる。ここでの「一つの流路」とは、1つの供給口から1つの流出口に至る流路を言い、1つの供給口から1つの流出口に至るまでの間に流路が分岐、合流、あるいは分岐した後合流している場合は各支流をそれぞれ「一つの流路」と称する。
例えば、十字型の分岐部分において4本ある流路の内、少なくとも一本は供給口へ連通する流路であるが、それ以外の流路への3つの進入口の一部またはすべてにグリッド面を設置することが可能である。
また、グリッド面が設けられた流路の下流に別のグリッド面を設けてもよい。一つの流路に複数のグリッド面を設ける場合、グリッド面間の距離は任意であるが、特に流体の移送方向において、順次断面積が減少する開口部を有する複数のグリッド面を0.5μm〜3mmの間隔で断続的に設けると、溶質によって目詰まりしにくいと言う利点が得られる。この場合のグリッド面どうしの、より好ましい間隔は1μm〜1mmである。
【0016】
また本発明は、本発明のマイクロ流体デバイスに、前記流路内を移送される流体に対して物理的変化および/または化学的変化および/または生物学的変化を生じさせる手段を設けてなる微小ケミカルデバイスを提供する。
本発明における物理的変化および/または化学的変化および/または生物学的変化を生じさせる手段は、特に限定されず、本発明のマイクロ流体デバイスの内部に設けられるものであってもよく、該デバイスに付設して設けられるものであってもよい。デバイスの内部に設けられる前記手段としては、例えば、流体を移送するための流路に連通して設けられた、反応場となる流路(反応槽を含む);バルブ機構;抽出、濾過などの物理化学的処理機構;分析機構;検出機構などが挙げられる。なお、デバイス内に前記手段を設ける場合、該手段に係る部分(例えば反応槽部分など)では、流路の断面寸法が上記した好ましい範囲を超えてもよいが、少なくともグリッド面を挟む上流側および下流側の流路における断面寸法が上記した範囲内であることが好ましい。
本発明の微小ケミカルデバイスによれば、毛細管状の流路に流体を供給し、該流体が流路内を移送される間に、該流体を用いた反応や分析または分離などを実施することができる。
【0017】
本発明の微小ケミカルデバイスは、例えば、化学、生化学などの微小反応デバイス(マイクロリアクター)や、集積型DNA分析デバイス、微小電気泳動デバイス、微小クロマトグラフィーデバイス、微小膜分離デバイス、微小抽出デバイスなどの微小分析デバイスを含み、それぞれの用途に応じて必要な物理的変化および/または化学的変化および/または生物学的変化を生じさせる手段を備えている。
本発明の微小ケミカルデバイスは、化学、生化学、農業、林業、水産業、医療、食品工業、製薬工業、環境保全、犯罪捜査、スポーツ、その他の広範な分野において使用され、とりわけ、これらの分野に於ける血液分析デバイスとして有用である。具体的には、全血からの血清分離デバイスに好適である。
【0018】
【実施例】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施例について説明する。図1は本実施例のマイクロ流体デバイスを示した分解斜視図であり、図2は図1中のII−II線に沿う断面図である。
本実施例のマイクロ流体デバイスは、板状の下基材1上に第一の層2および第二の層3aがこの順に積層されている。第二の層3aには、その厚さ方向に貫通する欠損部が形成されている。欠損部は、直線部4a、5aと該直線部の中途から垂直に分岐した分岐部6aとからなる略T字状であり、この欠損部の内側面と第一の層2の上面とで凹溝が形成されている。
以下、分岐部6aの幅方向をX方向、長さ方向をY方向、深さ方向をZ方向という。
凹溝内において、分岐部6aの直線部4a、5a側の端部には5個の突起18aが設けられている。突起18aは、第二の層3aの一部からなり、第一の層2上にX方向に沿って等間隔で並んでいる。
欠損部における直線部4a、5aおよび分岐部6aの幅は50μm、深さは10μmである。突起18aの、Y方向に垂直な断面における形状は矩形で、その幅は4μm、高さは10μmであり、X方向において隣り合う突起18aどうしの間隔は5μmである。また、突起18aをZ方向から見た形状は角が丸められた矩形で、そのY方向における長さは10μmである。
本実施例において、第一の層2、および第二の層3aが本発明における第一の部材を構成している。
【0019】
第二の層3a上には第三の層11が積層されている。第三の層11には、第二の層3aの凹溝、すなわち欠損部の直線部4a、5aおよび分岐部6aと重なる位置に、厚さ方向に貫通する略T字状の欠損部(直線部4b、5bおよび分岐部6b)が形成されている。ただし、第三の層11における、第二の層3aの突起18aを覆う位置には欠損部が形成されておらず、突起18aの上部に架けわたされた板状部19となっている。
本実施例において、第三の層11が本発明の第三の部材を構成している。
【0020】
第三の層11上には、第四の層3cおよび第五の層12がこの順に積層されている。第四の層3cには第二の層3aの欠損部(直線部4a、5aおよび分岐部6a)および突起18aと同じ形状の、厚さ方向に貫通する欠損部(直線部4c、5cおよび分岐部6c)および突起18cが形成されている。
本実施例において、第四の層3cの欠損部の内側面と第五の層12の下面とで凹溝が形成されており、この第四の層3cおよび第五の層12が本発明における第二の部材を構成している。
【0021】
さらに、第五の層12上には第六の層13および上基材14がこの順に積層されている。第五の層12、第六の層13、および上基材14における、第四の層3cの欠損部(直線部4c、5cおよび分岐部6c)の3つの端部とそれぞれ重なる位置には、該第五の層12、第六の層13、および上基材14を貫通する3つ円形の孔が穿設されている。すなわち、上基材14には第一の孔15a、第二の孔16a、第三の孔17aが形成されており、第六の層13にも第一の孔15b、第二の孔16b、第三の孔17bが形成されており、第五の層12にも第一の孔15c、第二の孔16c、第三の孔17cが形成されている。
【0022】
本実施例のマイクロ流体デバイスにあっては、第一の層2の上面を底面とし、第五の層12の下面を天面とし、第二の層3a、第三の層11、および第四の層3cの欠損部の内側面を側面とする略T字状の流路が形成されている。また、該略T字状の流路の分岐部の直線部側の端部には、第二の層3aおよび第四の層3cの突起18a、18cが縦桟をなし、第三の層11の板状部19が横桟をなし、これら縦桟と横桟とで仕切られた開口部を有するグリッド面が形成されている。本実施例のマイクロ流体デバイスにおいて、グリッド面は、開口部を有する層が2層(第二の層3aおよび第四の層3c)、Z方向に積層されている。
【0023】
そして、例えば上基材14の第一の孔15aから流体を供給すると、該流体は、第六の層13の第一の孔15b、および第五の層12の第一の孔15cを順に通り、第四の層3cの直線部4cと第三の層11の直線部4bと第二の層3aの直線部4aとからなる流路内を移送される。
該流体の一部は、グリッド面の開口部、すなわち第四の層3cの突起部18cの間隙および第二の層3aの突起部18aの間隙を通過した後、第四の層3cの分岐部6cと第三の層11の分岐部6bと第二の層3aの分岐部6aとからなる流路内を移送され、第五の層12の第三の孔17cおよび第六の層13の第三の孔17bを順に通って、上基材14の第三の孔17aから流出される。
また前記流体の他部は、第四の層3cの直線部5cと第三の層11の直線部5bと第二の層3aの直線部5aとからなる流路内を移送され、第五の層12の第二の孔16cおよび第六の層13の第二の孔16bを順に通って、上基材14の第二の孔16aから流出される。
【0024】
したがって、本実施例のマイクロ流体デバイスによれば、分散溶液を上基材14の第一の孔15aから供給すると、該分散溶液はT字状の流路に移送され、グリッド面の開口部を通過した分散媒が上基材14の第三の孔17aから流出されるとともに、グリッド面の開口部を通過できない分散質を、供給時の分散溶液よりも高い濃度で含む液体が上基材14の第二の孔16aから流出されるので、これにより分散溶液の固液分離を行うことができる。
【0025】
本実施例では、3つの第一の孔15a、15b、15cからなる流路、3つの第二の孔16a、16b、16cからなる流路、および3つの第三の孔17a、17b、17cからなる流路の、流体の移送方向(Z方向)に対して垂直方向に沿う断面形状は円形であり、第二ないし第四の層3a、11、3cに形成された欠損部によって形状が規定される略T字状の流路の、流体の移送方向(X方向またはY方向)に対して垂直方向に沿う断面形状は矩形であるが、流路の断面形状は適宜変更可能である。
【0026】
マイクロ流体デバイスを構成する部材の素材、すなわち本実施例における下基材1、第一ないし第六の層2、3a、11、3c、12、13、および上基材14は、流路やグリッド面がその形状を保持できる硬度と強度を有し、流路に流す液体が実質的に不透過性である素材であれば任意である。具体例としては、有機または無機高分子重合体(以下、単に「重合体」と称する)、結晶、ガラス、セラミック、金属、半導体、炭素等であってよい。特に溝状の流路の形成に寄与する部材、本実施例では第二ないし第四の層3a、11、3cは、成形しやすさの点から、重合体であることが好ましい。
重合体は、熱可塑性重合体であっても、熱硬化重合体であってもよいが、成形性の良い熱可塑性重合体、あるいは活性エネルギー線硬化重合体が好ましい。
【0027】
また、マイクロ流体デバイスの、移送される流体と接触し得る面は親水性とすることが好ましい。
本明細書において、表面が親水性であるとは、水との接触角が90度以下であることを言う。流路表面の水との接触角は、より好ましくは45度以下、さらに好ましくは35度以下、最も好ましくは25度以下である。接触角の下限はゼロであってもよい。
本実施例では、第一ないし第六の層2、3a、11、3c、12、13および上基材14の材料として親水性を有する材料を用いるか、または、これらの各部材に流路を形成した後、内側面の一部または全部に表面処理を施して親水性を付与することが好ましい。
親水性を有する材料としては、例えば親水基を含む活性エネルギー線硬化性化合物の硬化物等が挙げられる。また親水性を付与するための表面処理方法としては、例えばコロナ処理等が挙げられる。
【0028】
活性エネルギー線硬化性化合物としては、1分子中に2個以上のエチレン性二重結合を有する物が好ましい。中でも、反応性の高い(メタ)アクリロイル基含有化合物(以下、「(メタ)アクリロイル」は、「メタクリロイル又はアクリロイル」を意味する。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル」などについても同様である。)やビニルエーテル類、また光重合開始剤の不存在下でも硬化するマレイミド基を有する化合物が好ましい。
【0029】
また、活性エネルギー線硬化性化合物として、重合性オリゴマー(プレポリマーとも呼ばれる)も用いることもでき、例えば、質量平均分子量が500〜50000のものが挙げられる。そのような重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0030】
これらの活性エネルギー線硬化性化合物は、単独で用いることもでき、また、2種類以上を混合して用いることもできる。また親水性の付与、粘度の調整、接着性の増強などの目的で、単官能モノマー、例えば、単官能(メタ)アクリル系モノマーを混合することも可能である。
【0031】
活性エネルギー線硬化性化合物は、これを必須成分とし、必要に応じて、その他の成分を混合してなる活性エネルギー線硬化性組成物として用いることが好ましい。その他の成分としては、例えば、活性エネルギー線硬化性化合物と共重合可能な単官能の重合性化合物、重合開始剤、重合遅延剤や重合禁止剤、溶剤、増粘剤、改質剤、着色剤等が挙げられる。
【0032】
活性エネルギー線硬化性組成物に、必要に応じて含有させることのできる単官能の重合性化合物は、使用する活性エネルギー線硬化性化合物と共重合可能なものであれば任意であるが、(メタ)アクリロイル基含有化合物であることが好ましい。
【0033】
活性エネルギー線が光である場合に使用する光重合開始剤は、特に制限はなく、公知慣用の、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤を使用することができる。
【0034】
活性エネルギー線硬化性組成物にマレイミド基を有する活性エネルギー線硬化性化合物または単官能モノマーを使用する場合は、マレイミド基が光重合開始剤としての機能を有するので、必ずしも前記光重合開始剤を使用する必要がない。マレイミド基の含有量が少ないときは光重合開始剤を添加するが、その量は少なくてすむ。
【0035】
活性エネルギー線硬化性組成物に添加する光重合開始剤の使用量は、0.005〜20質量%の範囲が好ましく、0.05〜5質量%の範囲が特に好ましい。
【0036】
活性エネルギー線硬化性組成物に、必要に応じて含有させることができる重合遅延剤や重合禁止剤としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−フェニルスチレン、p−オクチルスチレン、p−(4−ペンチルシクロヘキシル)スチレン、p−フェニルスチレン、 p−(p−エトキシフェニル)フェニルスチレン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、4,4′−ジビニルビフェニル、2−ビニルナフタレン等のエネルギー線硬化性化合物としては重合速度の低いビニル系モノマー;tert−ブチルフェノール、ジオクチルフェノールなどのヒンダントフェノール類等が挙げられる。
【0037】
本実施例のマイクロ流体デバイスは、例えば下基材1上に、第一の層2、欠損部が形成された第二の層3a、欠損部が形成された第三の層11、欠損部が形成された第四の層3c、第五の層12、第六の層13、および上基材14を順に積層して接着一体化し、第五の層12、第六の層13、および上基材14の所定位置に孔を穿設することによって製造することができる。
【0038】
欠損部を形成する方法は任意であり、例えば、射出成型、溶剤キャスト法、溶融レプリカ法、エネルギー線硬化レプリカ法、切削、フォトリソグラフィー(エネルギー線リソグラフィーを含む。以下同様)、エッチング法、蒸着法、気相重合法等を用いることができる。
また、本実施例では、第一の層2上に、厚さ方向に貫通する欠損部が形成された第二の層3aを積層したが、第一の層2を用いず、第二の層3aよりも厚い部材の上面に、上記に挙げた方法等で断面凹状の溝を形成してもよい。同様に、第四の層3cに欠損部を形成する代わりに、第四の層3cよりも厚い部材の下面に、上記に挙げた方法等で断面凹状の溝を形成してもよい。この場合、第五の層12は用いなくてもよい。
【0039】
このようにして得られるマイクロ流体デバイスは、さらに他の任意の部材や、他のマイクロ流体デバイスと積層や接着することもできる。
また、マイクロ流体デバイスを用いて微小ケミカルデバイスを構成する場合には、流路以外に、例えば、貯液槽、反応槽、分析機構など微小ケミカルデバイスとして必要な構造を、同様の方法を用いて形成することができる。
【0040】
なお、本実施例のマイクロ流体デバイスは、全体の外形を板状としたが、これに限定されるものではなく、用途目的に応じた形状を採りうる。例えば、板状のほかに、フィルム状(シート状、リボン状などを含む。以下同様)、塗膜状、棒状、管状、円筒状、その他複雑な形状の成型物などであり得る。他のマイクロ流体デバイスとの一体化しやすさ及び成形しやすさの面からは、フィルム状又は板状であることが好ましい。
【0041】
また、本実施例では、グリッド面の縦桟となる突起が形成された層として、第二の層3aと第四の層3cの2層を用い、これらの間にグリッド面の横桟となる板状部を供えた第三の層11を介在させたが、縦桟となる突起が形成された層を3層以上、横桟となる板状部が形成された層を挟みながら積層させた構成としてもよい。
【0042】
また、本実施例ではグリッド面の開口部の形状を、縦桟としての突起18a、18cと、横桟としての板状部19とで仕切られた断面略矩形としたが、これに限らず、流路内部を移送される流体中の、分離しようとする分離対象物(分散質)が通過できない大きさの開口部であればよく、形状は適宜変更することができる。
【0043】
以下、具体的な実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、各々「質量部」及び「質量%」を表わす。
【0044】
[エネルギー線照射装置]
200wメタルハライドランプが組み込まれたウシオ電機株式会社製のマルチライト200型露光装置用光源ユニットを用いた。紫外線強度は50mw/cm2である。
【0045】
[製造例1]
〔活性エネルギー線硬化性組成物(i)の調製〕
活性エネルギー線硬化性化合物として、質量平均分子量約2000の大日本インキ化学工業株式会社製3官能ウレタンアクリレートオリゴマー「ユニディックV−4263」60部、第一工業製薬株式会社製1,6−ヘキサンジオールジアクリレート「ニューフロンティアHDDA」20部、第一工業製薬株式会社製ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート「N−177E」(両親媒性の単量体)20部、及び光重合開始剤としてチバガイギー社製1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュア184」5部を均一に混合して活性エネルギー線硬化性組成物(i)を調製した。
【0046】
〔活性エネルギー線硬化性組成物(ii)の調製〕
活性エネルギー線硬化性化合物として、質量平均分子量約2000の大日本インキ化学工業株式会社製3官能ウレタンアクリレートオリゴマー「ユニディックV−4263」60部、第一工業製薬株式会社製1,6−ヘキサンジオールジアクリレート「ニューフロンティアHDDA」20部、第一工業製薬株式会社製ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート「N−177E」(両親媒性の単量体)20部、光重合開始剤としてチバガイギー社製1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュア184」5部、及び重合遅延剤として関東化学株式会社製2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン0.5部を均一に混合して活性エネルギー線硬化性組成物(ii)を調製した。
【0047】
〔マイクロ流体デバイスの作製〕
下基材1として旭化成社製ポリアクリレート板「デラグラスA−999 1.0番」を用い、これに127μmのバーコーターを用いて活性エネルギー線硬化性組成物(i)を塗布し、50mw/cm2の紫外線を窒素雰囲気中で3秒間照射して、第一の層2となる塗膜を半硬化させた。
【0048】
この半硬化状態の塗膜上に、スピンコーターを用いて活性エネルギー線硬化性組成物(ii)を塗布し、図3に示すフォトマスク21を介して50mw/cm2の紫外線を窒素雰囲気で3秒間照射して、第二の層3aとなる塗膜を半硬化させた。フォトマスク21は第二の層3aに形成される略T字状の欠損部(直線部4a、5aおよび分岐部6a)に対応する形状の遮蔽部(図中斜線で示す)22を有しており、この遮蔽部22以外の部分に紫外線が照射されるようになっている。遮蔽部22の、分岐部6aの直線部4a、5a側の端部において、グリッド面の縦桟となる突起18aに対応する部位は紫外線が透過する透過部となっている。
続いて、エタノールにて第二の層3aとなる塗膜の、紫外線が照射されていない未硬化の活性エネルギー線硬化性組成物(ii)を洗浄除去することにより、該塗膜に略T字状の欠損部を形成した。略T字状の欠損部(直線部4a、5aのY方向,および分岐部6aのX方向)の幅は50μm、Z方向の深さは10μmであった。また分岐部6aの端部に形成された突起18aのX方向における幅は4μm、Y方向における幅は10μm、高さは10μm、隣り合う突起どうしの間隔は5μmであった。
【0049】
これとは別に、一時的な支持体(図示せず)として5cm×5cm×30μmの二村化学工業社製ポリプロピレン製フィルム「二軸延伸ポリプロピレンフィルム「太閤」FOR 30番」を使用し、この上にスピンコーターを用いて活性エネルギー線硬化性組成物(ii)を塗布して第三の層11となる塗膜を形成し、図4に示すフォトマスク31を介して50mw/cm2の紫外線を窒素雰囲気で3秒間照射して、該塗膜を半硬化させた。フォトマスク31には、前記第二の層3aに形成される略T字状の欠損部(直線部4c、5cおよび分岐部6a)のうち、突起18aを覆う部分を除く部分に対応する形状の遮蔽部(図中斜線で示す)32を有しており、この遮蔽部32以外の部分に紫外線が照射されるようになっている。そして、エタノールにて第三の層11となる塗膜の、紫外線が照射されていない未硬化の活性エネルギー線硬化性組成物(ii)を洗浄除去することにより、該塗膜に略T字状で分岐部分に板状部19を有する欠損部を形成した。
このようにして形成された第三の層11となる塗膜を、上記で形成した第二の層3a上に密着させ、一時的な指示体であるポリプロピレン製フィルムを介して紫外線を更に30秒間照射して、第一の層2、第二の層3a、および第三の層11を硬化させた。このようにして、下基材1、第一の層2、第二の層3a、および第三の層11を接着一体化した後、一時的な支持体を剥離した。
【0050】
次いで、第三の層11上に、スピンコーターを用いて活性エネルギー線硬化性組成物(ii)を塗布し、図3に示すフォトマスク21を介して50mw/cm2の紫外線を窒素雰囲気で3秒間照射して、第四の層3cとなる塗膜を半硬化させた。フォトマスク21は前記第二の層3aとなる塗膜に対する紫外線照射時に用いたのと同形状のものが使用した。すなわち、第四の層3cに形成される略T字状の欠損部(直線部4c、5cおよび分岐部6c)に対応する形状の遮蔽部(図中斜線で示す)22を有しており、該遮蔽部22の、分岐部6cの直線部4c、5c側の端部においては、グリッド面の縦桟となる突起18cに対応する部位が透過部となっている。そして、第四の層3cとなる塗膜表面の、紫外線が照射されていない未硬化の活性エネルギー線硬化性組成物(ii)を、エタノールにて洗浄除去することにより、該塗膜に略T字状の欠損部を形成した。該塗膜に形成された欠損部の形状は前記第二の層3aに形成された欠損部と同形状であった。
【0051】
これとは別に、一時的な支持体(図示せず)として5cm×5cm×30μmのポリプロピレン製フィルムを使用し、この上にスピンコーターを用いて活性エネルギー線硬化性組成物(i)を塗布して第五の層12となる塗膜を形成し、該塗膜の全面に50mw/cm2の紫外線を窒素雰囲気中にて3秒間照射し、該塗膜を半硬化させた。次いで、半硬化状態とされた第五の層12となる塗膜を、上記第四の層3cとなる塗膜上に密着させ、一時的な支持体であるポリプロピレン製フィルムを介して、紫外線を更に30秒間照射して第四の層3cおよび第五の層12を硬化させた。このようにして、第三の層11上に第四の層3cおよび第五の層12を接着一体化した後、一時的な支持体を剥離した。
【0052】
〔接続口の形成〕
この後、第五の層12上に活性エネルギー線硬化性組成物(i)を塗布して第六の層13となる塗膜を形成し、さらにその上に上基材14として、下基材1と同じ旭化成社製ポリアクリレート板「デラグラスA−999 1.0番」(5cm×5cm×1mm)の板を重ね合わせ、50mw/cm2の紫外線を窒素雰囲気中にて塗膜全面に40秒間照射し、第六の層13を硬化させた。これにより第五の層12上に第六の層13および上基板14が接着一体化された。
次いで、第五の層12、第六の層13、および上基材14の、第四の層3cにおける略T字状の欠損部(直線部4c、5cおよび分岐部6c)の3つの端部とそれぞれ重なる位置に、ドリルにて直径1mmの孔を3つ穿ち、第一の孔15a,15b,15c、第二の孔16a,16b,16c、第三の孔17a,17b,17cをそれぞれ形成した。
さらに、これら3つの孔にそれぞれ内径3mm、高さ5mmのポリ塩化ビニル管を接着して、マイクロ流体デバイスを得た。
【0053】
[実施例1]
製造例1で得られたマイクロ流体デバイスの、第一の孔15aに接続されたポリ塩化ビニル管から、直径約6μmのカーボン粉体を水に分散させてなる分散溶液を供給し、このポリ塩化ビニル管にシリンジを接続して、供給した分散溶液が第二の孔16aから流出するまで加圧した。
その間に、分散媒である水の一部が第三の孔17aから流出された。第三の孔17aから流出された水にカーボン粉体は含まれておらず、カーボン粉体がグリッド面を通過しなかったことが確認された。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の分散溶液から分散質を分離する方法では分離が困難だった微少量溶液からの分散質の分離も行うことが可能である。また、グリッド面の開口部の大きさを分離対象の大きさに応じて設定することによって、分散溶液からの分散質の分離を非常に効果的に、かつ高い精度で行うことができるうえ、圧力損失を低くしたり、目詰まりを生じ難くしたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマイクロ流体デバイスの一実施例を示した分解斜視図である。
【図2】図1中のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示すマイクロ流体デバイスを製造する際に用いるフォトマスクを示した平面図である。
【図4】図1に示すマイクロ流体デバイスを製造する際に用いるフォトマスクを示した平面図である。
【符号の説明】
1 下基板
2 第一の層
3a 第二の層
3c 第四の層
4a,4b,4c,5a,5b,5c 直線部(欠損部)、
6a,6b,6c 分岐部(欠損部)
11 第三の層
12 第五の層
13 第六の層
14 上基板
15a,15b,15c 第一の孔
16a,16b,16c 第二の孔
17a,17b,17c 第三の孔
18a、18c 突起(グリッド面の縦桟)
19 板状部(グリッド面の横桟)
Claims (9)
- 毛細管状の流路(4a、4b、4c、5a、5b、5c、6a、6b、6c)を有し、該流路の中途に、該流路の断面よりも小さい開口部が縦横にそれぞれ2列以上形成されたグリッド面(18a、18c、19)が設けられていることを特徴とするマイクロ流体デバイス。
- 前記グリッド面に達した流体のうち、該グリッド面を通過した一部が移送される流路(6a、6b、6c)と、該グリッド面を通過しなかった他部が移送される流路(5a、5b、5c)を有する請求項1に記載のマイクロ流体デバイス。
- 前記流路の(断面の幅×高さ)が(0.5μm×0.5μm)〜(3mm×3mm)の範囲内である請求項1または2のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
- 前記グリッド面における開口部の(断面の幅×高さ)が(0.3μm×0.3μm)〜(100μm×100μm)の範囲内である請求項1〜3のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
- 一つの流路内に設けられている前記グリッド面の数が4〜10000である請求項1〜4のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
- 前記グリッド面において、前記開口部を有する層(3a、3c)が2層以上、前記流路を移送される流体の移送方向に対して垂直方向に積層されている請求項1〜5のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
- 表面に凹溝(4a、5a、6a、4c、5c、6c)を有し、該凹溝の中途に前記グリッド面の縦桟となる突起(18a、18c)が設けられた第一の部材(2,3a)および第二の部材(3c、12)が、前記表面どうしが向かい合うように配されており、
前記第一の部材と第二の部材との間には、前記凹溝と重なる位置に、厚さ方向に貫通する欠損部(4b、5b、6b)が形成され、かつ前記突起を覆う位置に、前記グリッド面の横桟となる板状部(19)が設けられた第3の部材(11)が介在している請求項6に記載のマイクロ流体デバイス。 - 前記第一の部材と第二の部材との間に、前記第3の部材が2層以上設けられており、
該第3の部材と第3の部材との間には、前記欠損部と重なる位置に、厚さ方向に貫通する欠損部が形成され、かつ前記板状部と重なる位置に、前記グリッド面の縦桟となる突起が設けられた第四の部材が介在している請求項7に記載のマイクロ流体デバイス。 - 請求項1〜8のいずれかに記載のマイクロ流体デバイスに、前記流路内を移送される流体に対して物理的変化および/または化学的変化および/または生物学的変化を生じさせる手段を設けてなることを特徴とする微小ケミカルデバイス。
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