JP2006043696A - 物質分離デバイスおよび物質分離方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 流体中の2種以上の物質を、連続的に高度に分離することが可能な、物質分離デバイスを提供する。
【解決手段】 試料である流体を流通させる分離用流路3と、分離用流路3の下流端に形成された第1流出口6と、分離用流路3の第1流出口6側の壁面の一部に設けられた、第1物質を保持できる第1保持部1と、を有する。このような分離用流路3が、複数段にわたって接続されている。
【選択図】 図1
【解決手段】 試料である流体を流通させる分離用流路3と、分離用流路3の下流端に形成された第1流出口6と、分離用流路3の第1流出口6側の壁面の一部に設けられた、第1物質を保持できる第1保持部1と、を有する。このような分離用流路3が、複数段にわたって接続されている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、流体に含まれる物質を連続的に分離することのできる物質分離デバイス、および流体に含まれる物質を連続的に分離することのできる物質分離方法に関する。
マイクロ流体デバイスは、微小な毛細管状の流路などの反応場で反応を行うものである。このマイクロ流体デバイスは、(1)反応装置や反応溶液の熱容量が小さく、迅速な温度変化が可能で温度分布も小さくできるため、副生成物が少ないこと、(2)拡散支配である微小反応場で反応を行うため、特に不均一反応系の反応速度が大幅に増すこと、(3)反応条件を短時間で変化させることが容易な連続反応装置を構築できるため、時間当たりの試行回数を多くできること、(4)微量の試薬量で反応が行えるため、多数並列運転が容易であることなどの理由で、合成反応のスクリーニングに向いている。また、最適条件が求まると、スケールアップの検討を行うことなくナンバリングアップシステムにより、直ちに生産が可能であることなどの特徴があり、今後の化学反応装置として期待されている。
上述したマイクロ流体デバイスの用途の多くは合成生成物の分離を必要とするが、マイクロ流体デバイスに組み込める高効率の分離手段は限られている。マイクロ流体デバイスに組み込んで、流体に含有される2種以上の物質、例えば、均一に混合した2種以上の流体、溶質と溶媒、溶液中の2種以上の溶質、分散質と分散媒、分散液中の2種以上の分散質、溶液中の分断質と溶質などを、濃縮、精製、回収、分析などの目的で互いに分離する方法として、透析法、クロマトグラフィー、電気泳動法などが知られている。これらの中で、クロマトグラフィーや電気泳動法は、分離段数を大きくすることができるため、特性の差が小さく分離しにくい物質を明瞭に分離することが可能である。しかしながら、回分法でしか実施できないため、分取装置や流路切替バルブなどの精密な時間制御が可能な制御装置を必要とする上、生産装置の濃縮、精製、回収方法としては処理量が不足していた。透析法は連続分離が可能であるが、処理速度が遅く、また、分子量や特性が近い分子を分離するには分離能が低いため用途が限定される上、多量の透析液を必要とする。
また、マイクロ流体デバイスではなく通常スケールの分離方法であるが、ゼオライトや活性炭を充填したカラムに分離すべき溶液を流して、該溶液に含有される溶質を吸着させ、その後、温度やpHなどを変化させて脱着する条件とし、洗浄液で該溶質を洗い出して採取するカラム式吸着分離法は、化学工学でいう単位操作の一つとして周知である。しかしながら、この方法をマイクロ流体デバイスで実施しようとすると、導入液の原溶液/洗浄液の切り替え、及び流出液の「溶質が除去された溶液」/「溶質が濃縮された洗浄液」の切り替え操作やそのためのバルブが必要であり、複雑な構造の高価なマイクロ流体デバイスを必要とする上、マイクロ流体デバイスの特長である多数並列運転が困難となるという問題があった。
一方、本発明者等の出願による特許文献1には、微少量の互いに混和しない液体を層状に接触させて安定して流すことにより液液間物質移動を行わしめ、その後、互いに接触している液体を再び連続的に分離、回収することのできる微小ケミカルデバイスとして、微小ケミカルデバイス内に毛細管状の流路を有し、該流路の内面が、水との接触角が25゜以下の低接触角部分と、水との接触角が低接触角部分のそれより10゜以上高い高接触角部分を有し、かつ、低接触角部分と高接触角部分がそれぞれ流路の上流端から下流端にわたって途切れずに連続している微小ケミカルデバイスが開示されている。しかし、これは、相互に混和しない2種の液体を流路に導入し、層状に接触させて安定して流すためのデバイスであって、均一に相溶している溶液に含まれる物質の分離に関する記述はなく、当該分離を行うための構成についても開示されていない。
また、本発明者等の出願による特許文献2には、微少量の互いに混和しない液体を接触させた後それらを分離し、連続的に抽出や油水分離ができる微小ケミカルデバイスとして、微小ケミカルデバイス内に毛細管状の流路を有し、該流路の下流端において、内面が、水との接触角が25°以下である低接触角部分と、水との接触角が低接触角部分のそれより10°以上高い高接触角部分を有し、かつ、断面積が毛細管状の流路の2〜1000倍である分液室を有し、分液室の低接触角部分と高接触角部分からそれぞれ流出路が形成されている微小ケミカルデバイスが開示されている。しかし、この場合も、相互に混和しない2種の液体を流路に導入し、前記分液室において該2種の液体を分離して流出させるためのデバイスであって、均一に相溶している溶液に含まれる物質の分離に関する記述はなく、当該分離を行うための構成についても開示されていない。
特開2001−137613号公報
特開2000−262871号公報
本発明が解決しようとする課題は、均一に混合された2種以上の流体、溶質と溶媒、2種以上の溶質などの、流体中の2種以上の物質を、バルブ操作を必要とせずに、連続的に高度に分離することが可能な物質分離デバイスおよび物質分離方法を提供することにある。
本発明者は、試料である流体を流す分離用流路の内面の一方の側に、分離対象物質を保持できる第1保持部を形成して、該第1保持部近辺に於ける該分離対象物質の取り込みと放出の濃度を増し、この分離用流路の下流端に於ける第1保持側と他の側にそれぞれ第1流出口および第2流出口を形成して、第1流出口からは該分離対象物質が濃縮された流体を、第2流出口からは該分離対象物質が希釈された、及び/又は該分離対象物質以外の物質が濃縮された流体を、それぞれ取り出すことにより分離しうることを見出した。
すなわち、本発明は、流体中の第1物質および第2物質を相互に分離するマイクロデバイスであって、前記流体を流通させる分離用流路と、前記分離用流路の下流端に形成された第1流出口および第2流出口と、前記分離用流路の前記第1流出口側の壁面の一部に設けられた、前記第1物質を保持できる第1保持部と、を有する物質分離デバイスを提供する。
また、本発明は、流体中の第1物質および第2物質を相互に分離する方法であって、(I)前記第1物質を保持できる第1保持部を壁面の一部に備えた分離用流路に、前記流体を流入させる工程と、(II)前記第1保持部に前記第1物質を取り込ませる工程と、(III)前記第1保持部から前記第1物質を放出させ、前記第1物質の濃縮溶液を前記第1保持部の下流側端部から取り出し、前記第1物質の希釈溶液および/または前記第2物質の濃縮溶液を前記第1保持部の下流側端部の他端部から取り出す工程と、を有する物質分離方法を提供する。
本発明は、流体に溶解した状態で含有される2種以上の物質、例えば、均一に混合した2種以上の流体、溶質と溶媒、溶液中の2種以上の溶質を、濃縮、精製、回収、除去、分析などの目的で互いに分離することが可能な物質分離デバイスおよび物質分離方法を提供する。また、流路切り替えやバルブ操作が必要な回分法でなく、連続的に分離することが可能な物質分離デバイスおよび物質分離方法を提供することができる。従って、クロマトグラフィーなどのように、時間制御プログラムでサンプルを採取する操作は必要なく、カラム式吸着分離のように、流路切替バルブを切り替える必要もない。また、本発明の物質分離デバイスは、単に多段に接続するだけで高濃度の分離液を得ることが出来るため、従来の膜分離デバイスをスタックして使用する場合のように、各段毎にポンプを必要とすることもないため、ポンプをマイクロ流体デバイス中に組み込み、一つのマイクロ・トータル・アナリシス・システム(μ−TAS)とすることも容易である。
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。また、同じ目的機能の構造体は同じ番号で示した。
本発明の物質分離デバイスおよび物質分離方法は、2種以上の物質を含有する溶液中の第1物質および第2物質を相互に分離するデバイスと方法を提供するものである。ここで溶液中の第1物質および第2物質は、液状の物質でも固体状の物質であってもよい。またこれら物質を溶解した溶液は、いずれか一方の物質が他方の物質を溶解したものでも、両物質が他の溶媒に溶解したものであってもよい。このような溶液中の第1物質および第2物質としては、均一に混合した2種以上の流体における第1流体と第2流体、溶質と溶媒、溶液中の2種以上の溶質などが例示できる。均一に混合した2種以上の流体の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシド、アセトン、イソプロピルアルコール、エタノールなどの水溶性有機液体と水との混合物などが挙げられる。溶質と溶媒の例としては、ポリ(又はオリゴ)ヌクレオチド、糖鎖、ポリ(又はオリゴ)ペプチドなどの生化学物質の水溶液(ここで言う水溶液は緩衝液溶液を含む)、種々の化学物質の水溶液や有機溶剤溶液などが挙げられる。2種以上の溶質の例としては、互に塩基配列の異なるポリ(又はオリゴ)ヌクレオチド、互に配列の異なる糖鎖、互に配列の異なるポリ(又はオリゴ)ペプチドなどの生化学物質、光学異性体、合成反応の生成物と副生成物、その他種々の化学物質が挙げられる。本発明の分離方法は、これらの中で、特に濃度が希薄な系で効果を発揮する。例えば上記生化学物質の水溶液、水中に微量溶解した水溶性溶剤などである。
以下、説明の煩雑化を避けるために、流体中の2種類の物質(第1物質および第2物質)を分離する場合を例にして説明する。この時、第1物質および第2物質は、流体中の任意の2物質であって良く、例えば、溶媒に溶解している2種類の溶質であっても良いし、均一に混合した2種以上の流体であっても良いし、溶媒と溶質であっても良いが、特に、溶媒に溶解している2種類の溶質を念頭に置いて説明する。3種以上の物質を分離する場合については、以下の具体的な機構や方法の項で説明する。
[物質分離デバイスの基本構成]
本発明の物質分離デバイスの基本構成は、流体中の第1物質および第2物質を相互に分離するマイクロデバイスであって、前記流体を流通させる分離用流路と、前記分離用流路の下流端に形成された第1流出口および第2流出口と、前記分離用流路の前記第1流出口側の壁面の一部に設けられた、前記第1物質を保持できる第1保持部とを有する構成である。好適には前記分離用流路が、さらに前記分離用流路の前記第2流出口側の壁面の一部に設けられた、前記第2物質を保持できる第2保持部を有する構成である。以下、当該構成につき具体例を挙げながら説明する。
本発明の物質分離デバイスの基本構成は、流体中の第1物質および第2物質を相互に分離するマイクロデバイスであって、前記流体を流通させる分離用流路と、前記分離用流路の下流端に形成された第1流出口および第2流出口と、前記分離用流路の前記第1流出口側の壁面の一部に設けられた、前記第1物質を保持できる第1保持部とを有する構成である。好適には前記分離用流路が、さらに前記分離用流路の前記第2流出口側の壁面の一部に設けられた、前記第2物質を保持できる第2保持部を有する構成である。以下、当該構成につき具体例を挙げながら説明する。
〔立体型〕
図1は本発明の実施形態である立体型物質分離デバイスの図であり、図1(a)は平面図、図1(b)はA−A線における側面断面図である。本実施形態の物質分離デバイス100は、内部層23の両面にそれぞれ第1外部層22および第2外部層24が積層され、第1外部層22の外側には基材21が積層され、第2外部層24の外側にはカバー層25が積層されている。また、分離用流路3が内部層23に形成され、分離用流路3の第1外部層22側の内表面に第1保持部1が形成されている。分離用流路3の長さ方向の一端が流入口5とされ、基材21と第1外部層22を貫通し、該流入口5に連絡する穴が開けられて導入口15とされている。第1外部層22には、分離用流路3の流出口6と第1取出口7を連絡する第1連絡流路8が形成され、第2外部層24には、分離用流路3の流出口16と第2取出口17を連絡する第2連絡流路18が形成されている。第1取出口7は、基材21を貫通し、第1外部層22に形成された第1連絡流路8に連絡する穴として形成され、第2取出口17は、基材21、第1外部層22、及び内部層23を貫通し、第2外部層24に形成された第2連絡流路18に連絡する穴として形成されている。即ち、導入口15から導入された流体は、流入口5から分離用流路3に入って分離用流路3を流れ、その一部は第1流出口6から図中上方へ流出して、第1連絡流路8を通って第1取出口7から本物質分離デバイス外へ流出する。また、残る一部は第2流出口16から図中下方へ流出して、第2連絡流路18を通って第2取出口17から本物質分離デバイス外へ流出する。
図1は本発明の実施形態である立体型物質分離デバイスの図であり、図1(a)は平面図、図1(b)はA−A線における側面断面図である。本実施形態の物質分離デバイス100は、内部層23の両面にそれぞれ第1外部層22および第2外部層24が積層され、第1外部層22の外側には基材21が積層され、第2外部層24の外側にはカバー層25が積層されている。また、分離用流路3が内部層23に形成され、分離用流路3の第1外部層22側の内表面に第1保持部1が形成されている。分離用流路3の長さ方向の一端が流入口5とされ、基材21と第1外部層22を貫通し、該流入口5に連絡する穴が開けられて導入口15とされている。第1外部層22には、分離用流路3の流出口6と第1取出口7を連絡する第1連絡流路8が形成され、第2外部層24には、分離用流路3の流出口16と第2取出口17を連絡する第2連絡流路18が形成されている。第1取出口7は、基材21を貫通し、第1外部層22に形成された第1連絡流路8に連絡する穴として形成され、第2取出口17は、基材21、第1外部層22、及び内部層23を貫通し、第2外部層24に形成された第2連絡流路18に連絡する穴として形成されている。即ち、導入口15から導入された流体は、流入口5から分離用流路3に入って分離用流路3を流れ、その一部は第1流出口6から図中上方へ流出して、第1連絡流路8を通って第1取出口7から本物質分離デバイス外へ流出する。また、残る一部は第2流出口16から図中下方へ流出して、第2連絡流路18を通って第2取出口17から本物質分離デバイス外へ流出する。
内部層23、第1外部層22、第2外部層24、基材21、及びカバー層25を構成する素材は任意であり、例えば、ガラス、ステンレススチールなどの金属、シリコンなどの半導体、石英などの結晶、セラミック、炭素、有機重合体などが使用できる。その有機重合体には、ポリジメチルシロキサンのように、厳密には無機重合体に分類される場合もるが通常は有機重合体として扱うものも含まれる。これらの材料にはそれぞれ長短があり、目的の分離系に応じて好適なものを選択すればよい。特に有機重合体は、後述の流路内壁の保持性を調節する自由度が高く、また高い保持性を持たせ易いため、特に高い耐熱性や耐有機溶剤性が要求される系以外では好ましい。有機重合体に次いで、流路内壁の保持性の調節が比較的容易なガラスを選択することが好ましい。
物質分離デバイス100は、基材21、第1外部層22、内部層23、第2外部層24及びカバー層25を密着積層された状態で固着して構成されている。固着は、接着剤による接着であっても良いし、接着剤を用いない固着であっても良いし、各層間が液密である状態で、ネジやクランプなどで固定されていてもよい。また、例えばマイクロ光造形法などの方法により、各層を別々に形成することなく一体成型されていて、各層が層として認識されなくても良いし、また例えば、射出成型や切削やエッチングなどの方法により、上記のうちの複数の層、例えば基材21と第1外部層22や、第2外部層24とカバー層25が、それぞれ一体成型された部材とされていて、該部材に於いては各層が層として認識されなくても良い。物質分離デバイス100の外形は任意であり、例えば板状(直板状、曲板状を含む)、シート(フィルム、ベルト、リボンなどを含む)状、棒状、球状などであって良い。これらの中で、板状又はシート状であることが、製造の容易さ、他のマイクロ流体デバイスと一体化することの容易さ、昇降温する使用方法の場合に昇降温速度を高くできるため好ましい。
(分離用流路)
内部層23には、該層の欠損部として、毛細管状の分離用流路3が形成されている。分離用流路3の断面形状は任意であり、例えば正方形や長方形などの矩形、台形、三角形、五角形、六角形、円形、半円形などであってよい。これらの中で、矩形、台形、または半円形とすることが、製造の容易性から好ましい。なお、角部を有する断面形状の場合には、その角部に丸面取りが施された形状であっても良い。
内部層23には、該層の欠損部として、毛細管状の分離用流路3が形成されている。分離用流路3の断面形状は任意であり、例えば正方形や長方形などの矩形、台形、三角形、五角形、六角形、円形、半円形などであってよい。これらの中で、矩形、台形、または半円形とすることが、製造の容易性から好ましい。なお、角部を有する断面形状の場合には、その角部に丸面取りが施された形状であっても良い。
本発明の物質分離デバイスが、上記のように内部層の両面に外部層を積層して構成されている場合には、分離用流路は、内部層の貫通溝によって構成されていると設計が容易であるため好ましい。後述する多段構造の場合には、該内部層に積層された外部層に、上流段の分離用流路における流出口と下流段の分離用流路における流入口とを接続する連絡流路が、外部層に形成されていることが好ましい。
(第1保持部)
分離用流路3の断面の周の一部の内壁には、分離対象である第1物質を保持でき、好ましくは、分離対象である第1物質に対して第2物質に対するよりも高い保持性を示し、かつ、第1物質に対して内壁の他の部分より高い保持性を示す第1保持部1が形成されている。ここで言う「保持性」は、吸着、吸収、膨潤、水和、疎水結合、水素結合、静電気力、誘電相互作用その他の任意の相互作用に基づくものであってよい。例えば第1物質がDNAである場合には、第1保持部1は該DNAに対して相補的な塩基配列を持つプローブDNAの固定化表面であり得る。第1物質が特に生化学物質である場合には、第1保持部1は、第1物質に対して選択的な親和力を示すプローブの固定部位であり得る。プローブとしては、化学物質、生化学物質、生物組織等であり得る。選択的な親和力は、例えば抗原と抗体、酵素と基質、ポリヌクレオチドの対立鎖、立体選択性吸着物質であり得る。第1物質が取り込まれる部分は、第1保持部の表面及び/又は内部であってよい。又、第1保持部は、立体選択性を持った吸着サイトであることも好ましい。
分離用流路3の断面の周の一部の内壁には、分離対象である第1物質を保持でき、好ましくは、分離対象である第1物質に対して第2物質に対するよりも高い保持性を示し、かつ、第1物質に対して内壁の他の部分より高い保持性を示す第1保持部1が形成されている。ここで言う「保持性」は、吸着、吸収、膨潤、水和、疎水結合、水素結合、静電気力、誘電相互作用その他の任意の相互作用に基づくものであってよい。例えば第1物質がDNAである場合には、第1保持部1は該DNAに対して相補的な塩基配列を持つプローブDNAの固定化表面であり得る。第1物質が特に生化学物質である場合には、第1保持部1は、第1物質に対して選択的な親和力を示すプローブの固定部位であり得る。プローブとしては、化学物質、生化学物質、生物組織等であり得る。選択的な親和力は、例えば抗原と抗体、酵素と基質、ポリヌクレオチドの対立鎖、立体選択性吸着物質であり得る。第1物質が取り込まれる部分は、第1保持部の表面及び/又は内部であってよい。又、第1保持部は、立体選択性を持った吸着サイトであることも好ましい。
ここで、「保持できる」とは、第1保持部への取り込みと放出、例えば相互作用が吸着の場合には吸着と脱着、相互作用が吸収の場合には吸収と放出、が可能であって、長時間運転した後にも、より多くの第1物質が取り込み−放出されることを言う。従って、第1物質が取り込まれるものの第1保持部に固定されて放出されない場合は、十分多量の試料溶液を流した後には取り込みサイトとして働かなくなる為、「保持できる」ことにはならない。第1保持部1は、取り込み−放出の量が多いことが、分離効率が向上し、高濃度の原液まで分離できるため好ましい。
前記保持性は、例えばクロマトグラフィーの担体のように一定温度の条件で平衡として生じるものであっても良いし、温度を変えることにより、取り込みと放出が起こりうるものであっても良く、本発明の分離方法に応じて好適な取り込みと放出の程度を選択すればよい。温度を変えることにより、取り込みと放出が特に効率良く起こりうる相互作用としては、吸着、ゲル/固体転移点を有する温度応答性ゲルへの吸収、ポリ(又はオリゴ)ヌクレオチドのハイブリダイゼーションと脱ハイブリダイゼーション、水素結合を例示できる。
第1保持部1の表面形状は任意であり、滑らかな表面、凹凸構造、多孔質体粉末が固定された表面、多孔質層、層状のゲルが付着した構造、分離すべき溶液に溶解する鎖状ポリマーが流路壁に化学的に結合した構造などであってよい。これらの中で、プローブなどの固定量を増すために表面積を大きく取れる多孔質体を有する表面、即ち、多孔質粉末固定表面又は多孔質層が好ましく、特に多孔質層が好ましい。多孔質層の厚みは好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上、最も好ましくは5μm以上である。また、分離用流路の高さとの関係で好ましい多孔質体の厚みは、該多孔質体が形成された面から流路の対向面までの距離の1/100以上、さらに好ましくは1/30以上、最も好ましくは1/10以上である。該多孔質体の厚みの上限は、流路の対向面までの距離である。上記のような厚みを持つ多孔質体とすることで、分離効率を高くすることができる。
該多孔質体は、少なくとも深さ方向に細孔が連通している、いわゆる連通多孔質体であれば任意である。細孔形状は、例えば互いに連絡した細胞状の空洞から成る海綿(スポンジ)状、細孔と構造体の構造が等価であるギロイド構造、互いに接触して固着された粉体粒子の間隙として形成された焼結体状、互いに平行な多数の毛細管状やスリット状などの流路の束、不織布又は編織体の繊維の間隙等であり得る。
前記多孔質体の平均孔径は任意であるが、分離用流路3の直径より細いことが好ましく、0.1〜50μmが好ましく、0.5〜20μmが更に好ましい。この範囲未満であると拡散による物質の混合に時間を有することになり、分離効率が低下する。またこの範囲を超えると、吸着サイト数が減少するため、やはり分離効率が低下する。分離用流路3の断面が、第1保持部1である多孔質体と第2保持部2である多孔質体で完全に占められていて、それ以外の空間がない場合には、これらの多孔質体の孔径は、3〜50μmが好ましく、5〜20μmが更に好ましい。この範囲未満では、圧力損失が過大となる。
前記多孔質体の素材は、多孔質体を形成できる素材であれば任意であり、例えば酸化珪素、アルミナ、ゼオライト、ガラス、セラミック、炭素、金属、有機重合体等から、分析対象により好適な素材を選択すればよい。これらの中で、有機重合体は、多孔質体の形成が容易であり、表面特性の制御も容易であるために好ましい。その中でも、活性エネルギー線硬化性樹脂が、微小な分離用流路3内に多孔質体を形成することが容易であるため特に好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂による多孔質体及びその製造方法は、例えば本発明者等の出願による特開平7−316336号に記載のものを使用できる。この方法は、まず多孔質体を形成すべき分離用流路の壁面に、エネルギー線重合性化合物と、該化合物は溶解するがその重合体は溶解又は膨潤させない相分離剤との混合物をコーティングする。次に、コーティング部分に紫外線などの活性エネルギー線を照射し、エネルギー線重合性化合物を重合硬化させると同時に相分離させて多孔質体と成し、多孔質内の相分離剤を洗浄除去するものである。エネルギー線重合性化合物としては、例えばアクリロイル基やマレイミド基を有するモノマー又はオリゴマーを好適に使用することができる。また、前記多孔質体の素材が活性エネルギー線硬化性樹脂以外の物である場合には、例えば、ジルゲル法、湿式相分離法、乾式相分離法、共連続ミクロ相分離体の一方の成分の溶出除去法、粉体の焼結法など、各素材に応じた公知の方法を使用できる。
第1保持部1は分離用流路3の断面の周の一部の内壁を占めていて、分離用流路3の長さ方向に実質的に連続している。このとき、第1保持部1は、分離用流路3を流れる流体の流線方向に対して略平行であればよいが、完全に平行であることが好ましい。また、第1保持部1は、部分的に途切れる場所があってもよいが、途切れないことが好ましい。このようにすることにより、分離能を向上させることができる。
第1保持部1が分離用流路3の断面の周上において占める範囲は任意であるが、20〜50%が好ましい。分離用流路3の断面形状が矩形である場合には、第1保持部1はその長い方の一辺として形成することが好ましい。このとき、第1保持部1の形成面からその対向面までの平均距離は1〜500μmが好ましく、3〜300μmがより好ましく、5〜150μmがさらに好ましい。この範囲未満では圧力損失が大きくなり、大規模なポンプが必要となる上、分離の処理量も減じる。逆に、この範囲を超えると、分離操作に時間を要し、分離効率が低下するからである。分離用流路の長さ方向に於いて、部分的にこの距離以外の部分があってもよい。また第1保持部1からその対向面までの距離は、上記保持部が例えば多孔質体のように厚みのある構造である場合には、その厚みの表面から対向面までの距離を言う。但し、後述のように、分離用流路3が第2保持部を有し、第1保持部と第2保持部が共に多孔質層である場合には、これらの表面は互いに接していて良い。分離用流路3の、第1保持部1から対抗面までの距離は、流入口5付近で小さく、流出口6、16付近で大きいことも好ましい。このとき、流入口5付近において上記平均距離未満であることも好ましいし、流出口付近において上記平均距離を超えることも好ましい。このような構造とすることによって、分離能と分離効率を増すことが出来る。
物質分離デバイス100を板状又はシート状とし、該板面又はシート面と平行に分離用流路3の流線を配置して、なおかつ、第1保持部1を該板面又はシート面と平行に形成することが、製造の容易性から最も好ましい。次いで、第1保持部1を該板面又はシート面に垂直に設けることが、製造が比較的容易であって好ましい。そのほか、分離用流路毎、或いは分離用流路の段毎に、第1保持部1の形成面が異なっていても良い。
上記各分離用流路3の一本の長さは任意であるが、10μm〜30cmが好ましく、50μm〜10cmがより好ましく、100μm〜3cmがさらに好ましい。分離用流路3の好ましい長さは、上記第1保持部1と第2保持部2との距離に依存し、第1保持部1と第2保持部2との平均距離の2〜1000倍が好ましく、3〜100倍がより好ましく、5〜50倍がさらに好ましい。この範囲とすることによって、十分な分離能と、良好なスペースファクターを持つ物質分離デバイスを構築できる。
分離用流路3の第1保持部以外の内壁の少なくとも一部には、第2物質に対して第1保持部より高い保持性を示し、かつ、第2物質に対して該内壁の他の部分より高い保持性を示す第2保持部2を設けることも好ましい。即ち、第1保持部と第2保持部は、分離すべき物質に対して互いに異なる保持性を示す。例えば分離すべき物質が異なる塩基配列を持つ2種のDNAである場合には、第1保持部1は一方のDNAに対して相補的な塩基配列を持つプローブDNAの固定化表面、第2保持部2は他方のDNAに対して相補的な塩基配列を持つプローブDNAの固定化表面であり得る。このように、分離すべき物質が特に生化学物質である場合には、第1保持部1と第2保持部2は、これらの生化学物質に対して異なる選択的親和性をもつプローブであり得る。第2保持部が第2物質に対して示す保持性と親和性の詳細については、第1保持部1が第1物質に対して示すものと同様である。なお、第1物質と第1保持部との間の親和性と、第2物質と第2保持部との間の親和性とは、種類が異なっていても良い。
第2保持部を設けることによって、より分離の選択性と効率を上げることが出来る。例えば、第1物質路第2物質とが溶液中の2種類の溶質である場合のように3成分以上の溶液中の2成分である場合には、第1保持部のみが設けられたデバイスでは、溶液中の第1物質は濃縮されるが、第2物質は希釈されず、第2物質の濃度は不変であるため、いかに第1物質の濃度を高めても、第1物質の純度向上には限界がある。しかし、第2保持部を設けることによって、第1物質の濃縮と第2物質の希釈が同時に行えるため、第1物質及び第2物質の純度を高くすることが出来る。このように、第2保持部を設けた分離デバイスは、溶液中の2種の溶質の分離に特に好適である。
第2保持部2が形成されている場合には、第1保持部1と第2保持部2は分離用流路3の断面の周上において異なる範囲を占めていて、互いに交差することなく、それぞれ分離用流路3の長さ方向に実質的に連続している。第2保持部2についても、分離用流路3を流れる流体の流線方向に対する平行性や連続状態については前記第1保持部1と同様である。
第2保持部2が形成されている場合には、それぞれが分離用流路3の断面の周上において占める範囲は、どちらもなるべく大きい方が分離すべき物質の保持量が増すため好ましい。第1保持部1と第2保持部2は、流路断面の周上で互いに端部を接して1/2ずつを占めても良いが、第1保持部1と第2保持部2との境界部に両者と異なる保持性を持つ境界領域(非保持部又は第3保持部)を設けて、間を開けることが、両保持部から放出された第1物質と第2物質の再混合を防ぐために好ましい。従って、分離用流路の壁面が一対の平行面を含み、第1保持部および第2保持部は、前記一対の平行面に設けられていることが好ましい。例えば、分離用流路3の断面形状が矩形である場合には、第1保持部1と第2保持部2は対向する長辺に形成し、2つの短辺をそれぞれ境界領域とすることが好ましい。なお、分離用流路が積層構造を有する場合には、第1保持部および/または第2保持部は、外部層における内部層側の表面に設けられている構成であると作製が容易となり好ましい。このとき、第1保持部1と第2保持部2との平均距離は、上記第2保持部がない場合の第1保持部から対向面までの距離と同様である。
但し、分離用流路3が第2保持部を有し、第1保持部と第2保持部が共に多孔質層である場合には、これらの表面は互いに接していて良い。該互いに接している場合には、留阿智は多孔質層の内部のみを流れる。第2保持部が形成されていて、分離用流路3の断面が、第1保持部1である多孔質体と第2保持部2である多孔質体で完全に占められていて、それ以外の空間がない場合には、分離用流路3の断面形状が分離能や分離効率に与える影響は比較的小さくなる。この場合、分離用流路3の断面形状として製造が容易な形状を採用することが好ましく、特に矩形、台形、円、楕円とすることが好ましい。
第2保持部を有する場合には、第2保持部の表面状態は上記第1保持部と同様である。第1保持部1および第2保持部2の多孔質体の厚みは同じでなくとも良いが、同程度であることが、分離能を増す意味で好ましい。また、第一保持部および第2保持部が多孔質体で形成されている場合には、これら表面間が100μm以下であることが好ましい。また、多孔質体の細孔径が例えば3〜50μmと大きく、多孔質体中を流れる流体の圧力損失がそれほど高くならない場合には、第1保持部1および第2保持部2の多孔質体の厚みの和が分離用流路の高さに等しく形成されて、両多孔質体が完全に接触している形態も好ましく、第1保持部1および第2保持部2の厚みが共に流路の対向壁までの距離の1/2とされていることがさらに好ましい。このような形態とすることによって、分離能を高くすることが出来る。
(流入口)
図1の本実施形態に於いては、流入口5は分離用流路3の上流端において、第1保持部1側に設けられているが、分離用流路の断面の任意の位置に設けて良い。例えば、第1保持部1の対向面側、あるいは側面側に設けてもよいし、分離用流路断面と同じ断面形状に設けてもよい。流入口5は本分離デバイスをマイクロ流体デバイスの一部に形成し、マイクロ流体デバイス内の他の機構、例えばポンプ機構やバルブ機構に接続しても良い。また、本分離デバイスを多段に接続する場合には、全段の流出口に接続してもよい。
図1の本実施形態に於いては、流入口5は分離用流路3の上流端において、第1保持部1側に設けられているが、分離用流路の断面の任意の位置に設けて良い。例えば、第1保持部1の対向面側、あるいは側面側に設けてもよいし、分離用流路断面と同じ断面形状に設けてもよい。流入口5は本分離デバイスをマイクロ流体デバイスの一部に形成し、マイクロ流体デバイス内の他の機構、例えばポンプ機構やバルブ機構に接続しても良い。また、本分離デバイスを多段に接続する場合には、全段の流出口に接続してもよい。
(第1流出口および第2流出口)
分離用流路3には、分離すべき第1物質が濃縮された流体を流出させる第1流出口6と、第1物質が希釈された流体を流出させる第2流出口16とが形成されている。第1流出口6は、分離用流路の断面内に於いて、第1保持部1に近接して配置され、第2流出口16は、第1保持部1に対して第1流出口より遠くに配置されている。好ましくは同断面内に於いて、第1流出口6は第1保持部1に接する位置に配設され、第2流出口16はその対向面に接する位置に配設される。更に好ましくは、第1流出口6が第1保持部1の内部に配設され、第2流出口16はその対向面に接する位置に配設する。
分離用流路3には、分離すべき第1物質が濃縮された流体を流出させる第1流出口6と、第1物質が希釈された流体を流出させる第2流出口16とが形成されている。第1流出口6は、分離用流路の断面内に於いて、第1保持部1に近接して配置され、第2流出口16は、第1保持部1に対して第1流出口より遠くに配置されている。好ましくは同断面内に於いて、第1流出口6は第1保持部1に接する位置に配設され、第2流出口16はその対向面に接する位置に配設される。更に好ましくは、第1流出口6が第1保持部1の内部に配設され、第2流出口16はその対向面に接する位置に配設する。
第2保持部2が形成されている場合には、同断面内に於いて、第1流出口6は好ましくは第1保持部1に接するとともに第2保持部2とは接しない位置に配設され、第2流出口16は第2保持部2に接するとともに第1保持部1とは接しない位置に配設される。更に好ましくは、第1保持部1の内部に第1流出口6が配設され、第2保持部2の内部に第2流出口16が配設される。
勿論、各流出口は分離用流路3の下流側端部に設けられることが、死容積が無くなることによって分離能の低下が防がれ好ましい。そこで、本実施形態では、第1保持部1の下流側端部に第1流出口6を形成し、第1保持部1の対抗面の下流側端部に第2流出口16を形成する。このように、両流出口を分離用流路3の内壁の対向面に設け、流体が第1流出口6および第2流出口16から互いに逆方向へ流出することが、流出口付近での再混合が抑制され、分離能が高くなるため好ましい。また、上記流出口付近において、第1物質と第2物質との拡散による再混合が生じて分離能が低下することを防ぐために、分離用流路の長さ方向の流出口寸法は短いことが好ましく、さらに、各流出口の断面積を分離用流路の断面積より小さく、好ましくは1/2より小さくして、この部分での流速を増すことも好ましい。
第1保持部とその対向面、第1流出口および第2流出口、ならびに連絡流路の配置について、上記立体型以外に、例えば次の二つの形態があり得る。
〔半立体型〕
図2は半立体型の実施形態の説明図であり、図2(a)は平面図、図2(b)はB−B線に於ける側面断面図、(c)はC−C線に於ける側面断面図である。半立体型では、内部層23は基材側内部層23aとカバー層側内部層23bの2層から成っていて、第1外部層22と第2外部層24は省略されている。基材側内部層23aとカバー層側内部層23b内に形成された分離用流路3となる欠損部は合わされて略矩形の分離用流路3を形成し、その分離用流路3の基材21側の面に第1保持部1を形成する。
図2は半立体型の実施形態の説明図であり、図2(a)は平面図、図2(b)はB−B線に於ける側面断面図、(c)はC−C線に於ける側面断面図である。半立体型では、内部層23は基材側内部層23aとカバー層側内部層23bの2層から成っていて、第1外部層22と第2外部層24は省略されている。基材側内部層23aとカバー層側内部層23b内に形成された分離用流路3となる欠損部は合わされて略矩形の分離用流路3を形成し、その分離用流路3の基材21側の面に第1保持部1を形成する。
分離用流路3の下流側端部における断面の、第1保持部1側の、基材側内部層23aの厚み分が第1流出口6とされ、第1保持部の対向面側のカバー層側内部層23bの厚み分が第2流出口16とされる。一方、基材側内部層23aには、第1流出口6から第1取出口7に連絡する第1連絡流路8が設けられ、カバー側内部層23bには、第2流出口16から第2取出口17に連絡する第2連絡流路18が設けられる。即ち、分離用流路3およびその下流端である流出口6,16までは、基材側内部層23aとカバー側内部層23bの欠損部は完全に重なり合い断面は矩形を呈するが[図2(b)]、流出口6、16から下流方向に進むにつれ、平面内の横方向に少しずつずれて[図2(c)]、最終的には互いに独立した連絡流路8、18となる。
半立体型は、流出口6、16の断面形状が、高さに対して幅が大きい場合には、第1保持部1から脱着した物質を含む濃縮液が第1流出口6から流出する前に、第2流出口16から流出する希釈液と再混合して分離能を低下させがちである。また、第2保持部が設けられている場合には、第1保持部1および第2保持部2からそれぞれ脱着した物質が第1流出口6と第2流出口16からそれぞれ流出する前に再混合して分離能を低下させがちである。これを防ぐために、流出口6、16の断面形状は、高さ/幅の比が好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.7以上、最も好ましくは1以上である。高さ/幅の比の上限は製造可能であれば高いほど好ましく、特に制約を設ける必要はないが、製造の容易さの点から、10以下が好ましく、5以下が更に好ましく、3以下が最も好ましい。また、再混合による分離能の低下を防ぐために、第1流出口6と第2流出口16は、図3に示すように、曲率を持って互いに逆方向へ曲げられていることが好ましい。
分離用流路3の高さ/幅の比が上記流出口の高さ/幅の比に比べて小さい場合には、流出口に近づくにつれ上記の比になるように幅を徐々に狭めることが好ましい。
半立体型においても、必要に応じて、分離用流路3の第1保持部1の対向面に第2保持部2を形成しても良い。
半立体型においても、必要に応じて、分離用流路3の第1保持部1の対向面に第2保持部2を形成しても良い。
〔平面型〕
図3は平面型の態様の説明図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は側面図である。平面型の態様では、内部層23に断面矩形状の分離用流路3を形成し、その分離用流路3における内部層23と垂直な一方の側面に、第1保持部1を形成する。その第1保持部1の下流側端部に、内部層23と垂直な面内において開口する第1流出口6、および該第1流出口6の対向面の側面に第2流出口16を設ける。そして、その第1流出口6および第2流出口16を第1取出口7、第2取出口17にそれぞれ接続する第1連絡流路8及び第2連絡流路18を、分離用流路3と同じ内部層23に形成する。内部層23の表面に積層した第1外部層22及び第2外部層24は省略される。また、必要に応じて、断面矩形状の分離用流路の、第1保持部に対向する側の内壁に第2保持部2を設けても良い。
図3は平面型の態様の説明図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は側面図である。平面型の態様では、内部層23に断面矩形状の分離用流路3を形成し、その分離用流路3における内部層23と垂直な一方の側面に、第1保持部1を形成する。その第1保持部1の下流側端部に、内部層23と垂直な面内において開口する第1流出口6、および該第1流出口6の対向面の側面に第2流出口16を設ける。そして、その第1流出口6および第2流出口16を第1取出口7、第2取出口17にそれぞれ接続する第1連絡流路8及び第2連絡流路18を、分離用流路3と同じ内部層23に形成する。内部層23の表面に積層した第1外部層22及び第2外部層24は省略される。また、必要に応じて、断面矩形状の分離用流路の、第1保持部に対向する側の内壁に第2保持部2を設けても良い。
なお、立体型と平面型との折衷型として、第1外部層22や第2外部層24を形成し、第1流出口6に接続される連絡流路8又は第2流出口16に接続される連絡流路18の一方又は両方を、部分的に該第1外部層22や第2外部層24に形成してもよい。このような折衷型は、多段配置の分離デバイスに好適に用いられる。
上記構成の中でも、図1に示す立体型の態様では、第1外部層22における内部層23側の表面(および、第2保持部を有する場合には第2外部層24における内部層23側の表面)に第1保持部1(および、第2保持部を有する場合には第2保持部2)を形成した上で、各外部層22,24を内部層23の両面に積層すればよく、製造の簡易性に優れている。一方、半立体型の態様においても、基材21(および、第2保持部を有する場合にはカバー層25)における内部層23側の表面に第1保持部1(および、第2保持部を有する場合には第2保持部2)を形成した上で、該基材21とカバー層25を内部層23に積層すれば良く、製造の簡易性に優れているが、流出口に於ける再混合の少なさでは立体型の方が優れていて、分離効率を高くしやすい。そこで以下の段階的配置の実施形態では、立体型の態様を例にして説明する。
[分離用流路の段階的配置]
上述した分離用流路を複数形成して連続に接続する構成、すなわち、上流から下流にかけて分離用流路が複数段にわたって配置され、該複数段のうちの任意の連続した二段において、上流段における第1の分離用流路の第1流出口が、下流段における第2の分離用流路の流入口に接続され、第1の分離用流路の第2流出口が、下流段における第3の分離用流路の流入口に接続されている構成により、分離能を向上させることが出来る。
上述した分離用流路を複数形成して連続に接続する構成、すなわち、上流から下流にかけて分離用流路が複数段にわたって配置され、該複数段のうちの任意の連続した二段において、上流段における第1の分離用流路の第1流出口が、下流段における第2の分離用流路の流入口に接続され、第1の分離用流路の第2流出口が、下流段における第3の分離用流路の流入口に接続されている構成により、分離能を向上させることが出来る。
段数が3段以上の場合には、上流から下流にかけて分離用流路が複数段にわたって配置され、該複数段のうちの任意の連続した3段において、上流段における第1の分離用流路の第1流出口が、中流段における第2の分離用流路の流入口に接続されるとともに、第1の分離用流路の第2流出口が、中流段における第3の分離用流路の流入口に接続され、中流段における第2の分離用流路の前記第1流出口が、下流段における第4の分離用流路の流入口に接続されるとともに、第2の分離用流路の前記第2流出口が、下流段における第5の分離用流路の流入口に接続され、中流段における第3の分離用流路の第2流出口が、下流段における第6の分離用流路の流入口に接続されるとともに、第3の分離用流路の前記第1流出口が、前記第5の分離用流路の流入口に接続されている構成であることが好ましい。
具体的な分離用流路の段階的配置の実施態様を図5、図6に示す。本実施態様では、上流から下流にかけて立体型の分離用流路3が複数段にわたって配置され、第一段における第1の分離用流路3aの第1流出口6が、第二段における第2の分離用流路3bの流入口5に連絡流路38でもって接続され、前記第1の分離用流路3aの第2流出口16が、第二段における第3の分離用流路3cの流入口5に連絡流路48でもって接続されている。
さらに、第二段における第2の分離用流路3bの第1流出口6が、第三段における第4の分離用流路3dの流入口5に連絡流路38でもって接続され、前記第2の分離用流路3bの第2流出口16が、第三段における第5の分離用流路3eの流入口5に連絡流路48でもって接続されている。また、第二段における第3の分離用流路3cの第1流出口6が、前記第5の分離用流路3eの流入口5に連絡流路38でもって接続され、前記第3の分離用流路3cの第2流出口16が、第三段における第6の分離用流路3fの流入口5に連絡流路48でもって接続されている。
このとき、第三段以降の分離用流路の流入口についても、分離用流路断面内に於ける位置は任意である。例えば、上流段の各流出口からの連絡流路を一つにまとめて次段の流入口5に接続しても良く、それぞれを別々に設けられた流入口5に接続しても良い。別々に設けられた流入口5としては、例えば、分離用流路の上流端に於いて、第1保持部側とその対向面側に設けられた2つの流入口であり得る。このように、分離用流路断面内の異なる位置に流入させても、分離用流路断面の寸法を上記の範囲とすることにより、拡散によって混合し、本発明の分離機能を発揮しうる。
ここで、第二段における第2の分離用流路3bの第2流出口16と、第3の分離用流路3cの第1流出口6とが、第三段において異なる分離用流路の流入口に接続されているのではなく、同一の第5の分離用流路3eの流入口5に接続されている。いま、当初試料に含まれる第1物質および第2物質の濃度をそれぞれ50%ずつと仮定する。その試料を第1の分離用流路3aに流入させると、試料に含まれる第1物質が第1保持部1に引き寄せられ、第2物質が第2保持部2に引き寄せられる。その結果、第1の分離用流路3aの第1流出口6から流出する試料は、例えば第1物質の濃度が60%に上昇するとともに、第2物質の濃度が40%に下降する。さらに、この試料を第2の分離用流路3bに流入させると、上記と同様に第1物質が第1保持部1に引き寄せられ、第2物質が第2保持部2に引き寄せられる。その結果、第2の分離用流路3bの第1流出口6から流出する試料は、例えば第1物質の濃度が70%に上昇するとともに、第2物質の濃度が30%に下降する。逆に、第2の分離用流路3bの第2流出口16から流出する試料は、例えば第1物質の濃度が50%に下降するとともに、第2物質の濃度が50%に上昇することになる。
ここで、第2の分離用流路3bの第2流出口16から流出する試料Bは、前段で第1物質の濃度が濃縮された後、当該段で第2物質の濃度が濃縮されたものである。同様に、第3の分離用流路3cの第1流出口6から流出する試料Cは、前段で第2物質の濃度が濃縮された後、当該段で第1物質の濃度が濃縮されたものである。したがって、試料Bおよび試料Cを異なる分離用流路で分離処理する利益はない。そこで、試料Bおよび試料Cを異なる分離用流路に流入させるのではなく、同一の分離用流路3eに流入させればよい。
即ち、本実施形態における分離用流路の段階的配置は、1段毎に分離用流路が1本ずつ増える配置である。このような接続構造とすることによって、1本の分離用流路3がそれぞれ次段の2本の分離用流路に接続された構造、即ち、1段毎に流路数が2倍になる構造に比べて流路数を少なくでき、スペースファクターが向上する。
即ち、本実施形態における分離用流路の段階的配置は、1段毎に分離用流路が1本ずつ増える配置である。このような接続構造とすることによって、1本の分離用流路3がそれぞれ次段の2本の分離用流路に接続された構造、即ち、1段毎に流路数が2倍になる構造に比べて流路数を少なくでき、スペースファクターが向上する。
分離用流路3の段数は、1段又は2段であってもよいが、3段以上が好ましく、4段以上が更に好ましく、5段以上が最も好ましい。多段の段階的配置とすることによって、単段での分離能が低い分離対象も良好に分離することができる。勿論、1つの分離用流路3における分離能が優れる系に於いては、段数を少なくすることができる。段数の上限は特に制限はないが、製造の容易さの点から、1000段以下が好ましく、100段以下が更に好ましい。本発明においては、このように多段接続型の分離デバイスとしても、膜分離装置とは異なって各段毎にポンプを要しないため、構造が極めて単純となり、容易にマイクロ流体デバイス内に組み込むことができる。
本実施形態では、各段に含まれる分離用流路3の本数は、第一段から第n段(但し、nは正の整数)までの範囲の上流部段においては段数と同じ本数の分離用流路が形成されている。なお、上記第n段以降の下流部段においても段数と同じ本数の分離用流路を形成してもよいが、本実施形態では、第n段以降にはほぼ一定本数の分離用流路が形成されている。即ち、第n段以降には交互にn本およびn−1本の分離用流路が形成されている。このような構成にすることによって、スペースファクターを高く維持しながら、濃縮流体の収率を増すことが出来る。
(濃縮溶液の取出口)
そして、最下流段における複数の分離用流路の流出口のうち、各段における分離用流路の第1流出口の通過回数が最多となる前記流体の流出口が、前記流体を取り出す第1取出口に接続され、最下流段における複数の分離用流路の流出口のうち、各段における分離用流路の第2流出口の通過回数が最多となる前記流体の流出口が、前記流体を取り出す第2取出口に接続されていることにより、各々の流出口から第1物質、第2物質がそれぞれ取り出される。
そして、最下流段における複数の分離用流路の流出口のうち、各段における分離用流路の第1流出口の通過回数が最多となる前記流体の流出口が、前記流体を取り出す第1取出口に接続され、最下流段における複数の分離用流路の流出口のうち、各段における分離用流路の第2流出口の通過回数が最多となる前記流体の流出口が、前記流体を取り出す第2取出口に接続されていることにより、各々の流出口から第1物質、第2物質がそれぞれ取り出される。
図5の実施態様においては、最下流段における複数の分離用流路の流出口のうち、各段における分離用流路3の第1流出口6の通過回数が最多となる流体の流出口6zが、取出流路42を介して、第1物質の濃縮溶液を取り出す第1取出口7に接続されている。また、各段における分離用流路3の第2流出口16の通過回数が最多となる流体の流出口16zが、取出流路44を介して、第1物質の希釈溶液を取り出す第2取出口17に接続されている。その他の流出口は取出流路43によりまとめられて第3取出口27に接続されている。
第2保持部2が設けられる場合には、第1取出口7からは第1物質の濃縮溶液が取り出され、第2取出口17からは第2物質の濃縮溶液が取り出され、第3取出口27からは第1物質も第2物質も希釈された溶液が取り出される。
第2保持部2が設けられる場合には、第1取出口7からは第1物質の濃縮溶液が取り出され、第2取出口17からは第2物質の濃縮溶液が取り出され、第3取出口27からは第1物質も第2物質も希釈された溶液が取り出される。
なお本実施形態では、第n段以降の各段における分離用流路の本数が交互にn本およびn−1本とされている。この場合、分離用流路3の本数がn本となる段における各分離用流路3の流出口のうち、上流段における分離用流路3の第1流出口6の通過回数が最多となる流体の流出口が、取出流路42を介して第1取出口7に接続され、上流段における分離用流路3の第2流出口16の通過回数が最多となる流体の流出口が、取出流路44を介して第2取出口17に接続されている。
分離用流路3へ分離原液を導入する導入口15並びに上述した第1取出口7および第2取出口17の形成位置や形状は任意であり、分離デバイス外への開口部であってよいし、接続配管が接続されていてもよいし、該分離デバイスと一体化されたマイクロ流体デバイスの何らかの機構、例えば反応用流路、に接続されていても良い。
(連絡流路の配置)
上述したように、本発明の好ましい実施形態である略矩形の分離用流路の場合には、第1保持部とその対向面、第1流出口および第2流出口、ならびに連絡流路の配置について、例えば立体型、半立体型、及び平面型の三つの態様があり得る。分離用流路の段階的配置においては、これらの分離用流路を任意に組み合わせて配置すればよいが、使用する各分離用流路のタイプを同じにすることが、製造が容易であり好ましい。
上述したように、本発明の好ましい実施形態である略矩形の分離用流路の場合には、第1保持部とその対向面、第1流出口および第2流出口、ならびに連絡流路の配置について、例えば立体型、半立体型、及び平面型の三つの態様があり得る。分離用流路の段階的配置においては、これらの分離用流路を任意に組み合わせて配置すればよいが、使用する各分離用流路のタイプを同じにすることが、製造が容易であり好ましい。
(立体型の部材構成)
図5、図6は立体型の態様の説明図であるが、該立体型の態様では、第1外部層22に形成された連絡流路38を下流側次段の分離用流路の流入口5に、第1保持部1が設けられた側から接続し、第2外部層24に形成された連絡流路48を下流側次段の分離用流路の流入口5に、第1保持部1が設けられた側とは逆の側から接続するものである。
図5、図6は立体型の態様の説明図であるが、該立体型の態様では、第1外部層22に形成された連絡流路38を下流側次段の分離用流路の流入口5に、第1保持部1が設けられた側から接続し、第2外部層24に形成された連絡流路48を下流側次段の分離用流路の流入口5に、第1保持部1が設けられた側とは逆の側から接続するものである。
図8は、内部層23の平面図である。内部層23には、分離用流路3がその長さ方向に沿って複数段に配置され、各段には複数本の分離用流路3が平行に配置されている。
図7は、第1外部層22の平面図である。第1外部層22には、各段の分離用流路3の第1流出口6から、下流側次段の分離用流路3の流入口5まで、それぞれ連絡流路38が形成されている。
図9は、第2外部層24の平面図である。第2外部層24には、各段の分離用流路3の第2流出口16から、下流側次段の分離用流路3の流入口5まで、それぞれ連絡流路48が形成されている。
図10は、分離用流路および連絡流路の分解斜視図である。流入口5から分離用流路3aに流入し、その第1流出口6から流出した流体は、第1外部層22に形成された連絡流路38を介して、下流側次段の分離用流路3bの流入口5に流入するようになっている。また、分離用流路3aの第2流出口16から流出した流体は、第2外部層24に形成された連絡流路48を介して、下流側次段の分離用流路3cの流入口5に流入するようになっている。
図7は、第1外部層22の平面図である。第1外部層22には、各段の分離用流路3の第1流出口6から、下流側次段の分離用流路3の流入口5まで、それぞれ連絡流路38が形成されている。
図9は、第2外部層24の平面図である。第2外部層24には、各段の分離用流路3の第2流出口16から、下流側次段の分離用流路3の流入口5まで、それぞれ連絡流路48が形成されている。
図10は、分離用流路および連絡流路の分解斜視図である。流入口5から分離用流路3aに流入し、その第1流出口6から流出した流体は、第1外部層22に形成された連絡流路38を介して、下流側次段の分離用流路3bの流入口5に流入するようになっている。また、分離用流路3aの第2流出口16から流出した流体は、第2外部層24に形成された連絡流路48を介して、下流側次段の分離用流路3cの流入口5に流入するようになっている。
すなわち、図5に示す第一段第一列(各段において並列に配された分離用流路を「列」として表し、第1物質が最も濃縮される列を第一列と称する。)の分離用流路3aの第1流出口6(以下、この流出口を「流出口[1,1,A]」と称する場合がある。第n段第i列(n,iは正の整数)の第1流出口6も同様に、「流出口[n,i,A]」と称する場合がある。)は、第二段第一列の分離用流路3bの流入口5に接続されており、流出口[1,1,A]から流出する流体は第二段第一列の分離用流路3bに導かれる。一方、第一段第一列の分離用流路3aの第2流出口16(以下、この流出口を流出口[1,1,B]と称する場合がある。第n段第i列の第2流出口16も同様に「流出口[n,i,B]」と称する場合がある。)は、第二段第二列の分離用流路3cの流入口5に接続されており、流出口[1,1,B]から流出する流体は第二段第二列の分離用流路3cの流入口5に導かれる。同様に、第n段第i列の流出口[n,i,a]は、第(n+1)段第i列の分離用流路の流入口に接続されており、第n段第i列の分離用流路の流出口[n,i,B]は、第(n+1)段第(i+1)列の分離用流路の5に接続されている。
分離用流路をN段で構成し、第N段をN本の流路で構成する形態に於いては、最終段(第N段)の流出口[N,1,A]からは第1物質が最も濃縮された溶液が、また流出口[N,N,B]からは第1物質が最も希釈された溶液が流出する。又、第2保持部を有する場合には、最終段(第N段)の流出口[N,1,A]からは第1物質が最も濃縮された溶液が、また流出口[N,N,B]からは第2物質が最も濃縮された溶液が流出する。
〔濃縮溶液量の確保〕
しかしながら上記の段階的配置を採用した場合、各流出口からの流出量を均等と仮定すると、第1物質が最大に濃縮される流出口[N,1,A]および第1物質が最大に希釈される流出口[N,N,B]から採取される溶液の合計量は、第一段の分離用流路の流入口5に供給した原液の1/Nに減少し、段数が増えるほど収率が低下することになる。この不都合を回避する手段として下記の3つの手段が好ましいものとして挙げられる。
しかしながら上記の段階的配置を採用した場合、各流出口からの流出量を均等と仮定すると、第1物質が最大に濃縮される流出口[N,1,A]および第1物質が最大に希釈される流出口[N,N,B]から採取される溶液の合計量は、第一段の分離用流路の流入口5に供給した原液の1/Nに減少し、段数が増えるほど収率が低下することになる。この不都合を回避する手段として下記の3つの手段が好ましいものとして挙げられる。
(第1手段)
第1の手段は、上流段における複数の分離用流路の断面積の総和が、下流段における複数の分離用流路の断面積の総和と略同一に形成されているものである。任意の段(上流部段と称する)における複数の分離用流路の断面積の総和を、それより下流の任意の段(下流部段と称する)における複数の分離用流路の断面積の総和と略同一とする構成である。これは任意の二つの段について行えるが、全段について分離用流路の断面積の総和を略同一とすることが好ましい。これにより、上流段における分離用流路の本数が少なくても、濃縮溶液の取出量を増加させることが可能になる。具体的には、第n段(n=1〜N)に含まれる分離用流路がn本である場合には、第n段の分離用流路の流路断面積を、最終段である第N段の分離用流路の断面積の略N/n倍にする。そして、第一段の分離用流路の流入口5に供給する原液の量をN倍とすることにより最終段の流出口[N,1,A]および[N,N,B]から、全ての分離用流路の断面積が同じ場合のN倍の流量で濃縮溶液を採取することができる。
第1の手段は、上流段における複数の分離用流路の断面積の総和が、下流段における複数の分離用流路の断面積の総和と略同一に形成されているものである。任意の段(上流部段と称する)における複数の分離用流路の断面積の総和を、それより下流の任意の段(下流部段と称する)における複数の分離用流路の断面積の総和と略同一とする構成である。これは任意の二つの段について行えるが、全段について分離用流路の断面積の総和を略同一とすることが好ましい。これにより、上流段における分離用流路の本数が少なくても、濃縮溶液の取出量を増加させることが可能になる。具体的には、第n段(n=1〜N)に含まれる分離用流路がn本である場合には、第n段の分離用流路の流路断面積を、最終段である第N段の分離用流路の断面積の略N/n倍にする。そして、第一段の分離用流路の流入口5に供給する原液の量をN倍とすることにより最終段の流出口[N,1,A]および[N,N,B]から、全ての分離用流路の断面積が同じ場合のN倍の流量で濃縮溶液を採取することができる。
ただし、分離用流路の流路断面積を拡大する際に、第1保持部1とその対向面との距離(第2保持部2が設けられる場合には第1保持部1と第2保持部との間の距離)を大きくすることは、分離すべき溶液を極めて低い流速で流さないと、分離能が低下して好ましくない。そこで、第1保持部1とその対向面の距離を変えずに、流路幅のみを広げることが好ましい。しかし、これも、製造上の制限がある。これを解決するために、流路内に支柱や壁を設ける方法、或いは、分離用流路を完全に並列に多数本接続する方法がある。ここで言う完全に並列に接続するとは、流入口5、第1流出口6、および第2流出口16を全て並列に接続することを言う(実施例5参照)。この場合、各流路の断面積を全て同じと仮定すると、第n段の分離用流路の本数を、最終段である第N段の分離用流路の本数の略N/n倍にする。但し、流路の本数は自然数なので、N/nの値が整数にならない場合には、それに近い整数にすればよい。
本手段は、外部層における内部層側の表面に第1保持部1(および、第2保持部2が設けられる場合には第2保持部)を形成した物質分離デバイスの場合に好適である。この場合、分離用流路における第1保持部1とその対向面との距離(または、第2保持部2が設けられる場合には第1保持部1と第2保持部との間の距離)は内部層23の厚さによって固定されるが、流路幅の拡大は容易に実施可能だからである。
(第2手段)
第2の手段は、前記上流段における分離用流路の流路長を、前記下流段における分離用流路の流路長より長くする構成である。これにより、上流段における分離用流路の本数が少なくても、該流路に高い流速で溶液を流すことにより、濃縮溶液の取出量を増加させることが可能になる。具体的には、第n段に含まれる分離用流路がn本である場合には、第n段の分離用流路の流路長を、最終段である第N段の分離用流路の流路長の略n/N倍にする。そして、第一段の分離用流路の流入口5に供給する原液の量をN倍とすることにより、最終段の流出口[N,1,A]および[N,N,B]から、全ての分離用流路の長さが同じ場合のN倍の流量で濃縮溶液を採取することができる。
第2の手段は、前記上流段における分離用流路の流路長を、前記下流段における分離用流路の流路長より長くする構成である。これにより、上流段における分離用流路の本数が少なくても、該流路に高い流速で溶液を流すことにより、濃縮溶液の取出量を増加させることが可能になる。具体的には、第n段に含まれる分離用流路がn本である場合には、第n段の分離用流路の流路長を、最終段である第N段の分離用流路の流路長の略n/N倍にする。そして、第一段の分離用流路の流入口5に供給する原液の量をN倍とすることにより、最終段の流出口[N,1,A]および[N,N,B]から、全ての分離用流路の長さが同じ場合のN倍の流量で濃縮溶液を採取することができる。
本手段は、内部層の側面側の内壁面に第1保持部1(および、第2保持部2が設けられる場合には第2保持部)が形成された物質分離デバイスの場合に好適である。この場合、流路幅を拡大すると、第1保持部1とその対向面との距離(または、第2保持部2が設けられる場合には第1保持部1と第2保持部との間の距離)が増加して、分離能が低下することになる。また、流路高さは内部層23の厚さによって固定される。しかしながら、流路長の伸縮は容易に実施可能だからである。勿論、第1の手段と第2の手段を併用しても良い。
(第3手段)
第3の手段は、第n段において分離用流路がi本配され、n又はiの少なくともいずれかが2以上であり、第n段において分離用流路の第1流出口の通過回数が最多となる前記流体の流出口が、前記流体を取り出す第1取出口に接続され、第2流出口の通過回数が最多となる前記流体の流出口が、前記流体を取り出す第2取出口に接続されてなり、第n段以降の段における分離用流路がi本配された段の分離用流路の流出口のうち、当該段より上流段において、前記流体が第1流出口を通過する回数をl、前記流体が第2流出口を通過する回数をmとした際に、l−mが最も大きい流出口が、前記第1取出口に接続され、m−lが最も大きい流出口が、第2取出口に接続されている構成である。具体的には、段数と列数とが同じ場合には、n本の分離用流路を含む第n段の流出口[n,1,A]が第1取出口7に接続され、流出口[n,n,B]が第2取出口17に接続されている。これらの流出口から採取される濃縮溶液の純度は、最終段の流出口[N,1,A]および[N,N,B]から採取される濃縮溶液の純度より低くなるが、採取される濃縮溶液の量を増加させることができる。勿論、第1の手段および/または第2の手段を併用しても良い。
第3の手段は、第n段において分離用流路がi本配され、n又はiの少なくともいずれかが2以上であり、第n段において分離用流路の第1流出口の通過回数が最多となる前記流体の流出口が、前記流体を取り出す第1取出口に接続され、第2流出口の通過回数が最多となる前記流体の流出口が、前記流体を取り出す第2取出口に接続されてなり、第n段以降の段における分離用流路がi本配された段の分離用流路の流出口のうち、当該段より上流段において、前記流体が第1流出口を通過する回数をl、前記流体が第2流出口を通過する回数をmとした際に、l−mが最も大きい流出口が、前記第1取出口に接続され、m−lが最も大きい流出口が、第2取出口に接続されている構成である。具体的には、段数と列数とが同じ場合には、n本の分離用流路を含む第n段の流出口[n,1,A]が第1取出口7に接続され、流出口[n,n,B]が第2取出口17に接続されている。これらの流出口から採取される濃縮溶液の純度は、最終段の流出口[N,1,A]および[N,N,B]から採取される濃縮溶液の純度より低くなるが、採取される濃縮溶液の量を増加させることができる。勿論、第1の手段および/または第2の手段を併用しても良い。
第3の手段のように、境界段の分離用流路の流出口を取出口に接続することにより、当該流出口の下流範囲段に新たな分離用流路を設ける必要がなくなるので、前記境界段より下流側の任意の段(下流範囲段と称する)における分離用流路の本数の増加が抑制される。すなわち、前記境界段に至るまでは段数と共に該段の分離用流路数が増加するが、境界段以降は、段数nが増しても分離用流路数が増加しない。この場合、第n段の分離用流路数を、段数nがある値(n1とする)の段(境界段)では概ねnとし、段数nがn1を超える範囲(下流範囲段)では概ねn1で一定とする。なお、一段おきに流出口を取出口に接続すれば、nがn1を超える範囲(下流範囲段)における流路数は、nが増加するごとに交互にn1および(n1−1)となる。このようにすることによって、最小の流路数で所定値以上に分離(濃縮)された溶液を、多量に採取することができる。しかも、境界段以降、一段おきに溶液が取り出される分だけ下流側次段に流入する流体量は減少して行くから、十分多数の下流範囲段を設けると、最終的には導入された溶液のほとんどが第1取出口7又は第2取出口17から分離されて取り出される。即ち、分離の収率が向上する。
なお、本実施形態では少なくとも、最下流段における複数の分離用流路の流出口のうち、各段における分離用流路3の第1流出口6の通過回数が最多となる流体の流出口が第1取出口7に接続され、各段における分離用流路3の第2流出口16の通過回数が最多となる流体の流出口が第2取出口17に接続されている。これに加えて、最下流段における複数の分離用流路の流出口のうち、各段における分離用流路3の第1流出口6の通過回数が比較的多くなる複数の流出口をまとめて第1取出口7に接続するとともに、各段における分離用流路3の第2流出口16の通過回数が比較的多くなる複数の流出口をまとめて第2取出口17に接続してもよい。この場合、隣接するいくつかの流出口をまとめて第1取出口7または第2取出口17に接続することになり、所定値以上に分離(濃縮)された溶液を多量に採取することができる。
〔その他の機構〕
上述した本実施形態の構成に対して、以下の構成を付加してもよい。
各流路の流量比を調節するために、各分離用流路や各連絡流路の断面積や流路長を変えることも可能であるし、流路の任意の部分に流量調節バルブを設けることも可能である。例えば、最終段の流出口[N,1,A]および流出口[N,I,B](但し、Iは第n段の分離用流路数)からの流出量を調節するバルブを設けることも好ましい。
上述した本実施形態の構成に対して、以下の構成を付加してもよい。
各流路の流量比を調節するために、各分離用流路や各連絡流路の断面積や流路長を変えることも可能であるし、流路の任意の部分に流量調節バルブを設けることも可能である。例えば、最終段の流出口[N,1,A]および流出口[N,I,B](但し、Iは第n段の分離用流路数)からの流出量を調節するバルブを設けることも好ましい。
また、最終段の分離用流路における複数の流出口のうち、取出口に接続されていない流出口を、上流段の分離用流路における流入口5にポンプを介して接続してもよい。具体的には、取出口に接続されていない流出口を還流口27に接続し、この還流口27をポンプを介して第一段の分離用流路3aの流入口5に接続する。なお、第一段以外の分離用流路に接続することも可能であり、濃度に応じて、複数の分離用流路に接続することも可能である。これにより、取出口に接続されていない流出口から流出した流体を、上流段の分離用流路に還流させることが可能になり、試料を効率的に利用することができる。
ポンプは、マイクロ流体デバイスに組み込まれたポンプを好ましく使用することができる。
ポンプは、マイクロ流体デバイスに組み込まれたポンプを好ましく使用することができる。
[物質分離方法]
以下に本発明の物質分離方法を説明するが、下記に記載されていない細部については、本発明の物質分離デバイスの項で説明した内容と同じである。
以下に本発明の物質分離方法を説明するが、下記に記載されていない細部については、本発明の物質分離デバイスの項で説明した内容と同じである。
〔基本構成〕
本発明の物質分離方法は、試料である流体を流す分離用流路の内壁の一方の側に、第1物質を保持できる第1保持部を形成して、該第1保持部に於いて第1物質の取り込みと放出を行わせ、分離用流路の下流端に於ける第1保持側と他の側にそれぞれ設けられた第1流出口から第1物質が濃縮された流体を、第2流出口から第1物質が希釈された溶液や第2物質が濃縮された溶液を得る。また、必要に応じて、分離用流路の第2流出口側の壁面に第2物質に対してより高い保持性を示す第2保持部を設けた分離デバイスを使用することも出来る。
本発明の物質分離方法は、試料である流体を流す分離用流路の内壁の一方の側に、第1物質を保持できる第1保持部を形成して、該第1保持部に於いて第1物質の取り込みと放出を行わせ、分離用流路の下流端に於ける第1保持側と他の側にそれぞれ設けられた第1流出口から第1物質が濃縮された流体を、第2流出口から第1物質が希釈された溶液や第2物質が濃縮された溶液を得る。また、必要に応じて、分離用流路の第2流出口側の壁面に第2物質に対してより高い保持性を示す第2保持部を設けた分離デバイスを使用することも出来る。
すなわち、流体中の第1物質および第2物質を相互に分離する方法であって、(I)前記第1物質を保持できる第1保持部を壁面の一部に備えた分離用流路に、前記流体を流入させる工程と、(II)前記第1保持部に前記第1物質を取り込ませる工程と、(III)前記第1保持部から前記第1物質を放出させ、前記第1物質の濃縮溶液を前記第1保持部の下流側端部から取り出し、前記第1物質の希釈溶液および/または前記第2物質の濃縮溶液を前記第1保持部の下流側端部の他端部から取り出す工程とを有する方法により物質を分離する方法である。
導入する流体が、2種の流体の混合流体、溶質と溶媒、分散質と分散媒であるような2成分系の場合には、前記第1保持部側の第1流出口から第1物質が濃縮された流体を取り出し、前記第2流出口から第1物質が希釈され、相対的に第2物質が濃縮されたた流体を取り出す。第2保持部が設けられている場合には、さらに分離の効率が増す。
導入する流体が、例えば溶質(又は分散質)である第1物質と第2物質、及び共通の溶媒(又は分散媒)から成るような、3成分系の場合には、前記第1流出口から第1物質が濃縮された流体を取り出し、前記第2流出口からは第1物質が希釈された流体を取り出す。この時、第2物質については、前期第1保持部の第2物質に対する保持性や、第1保持部以外の内壁面部分の第2物質に対する保持性の影響を受ける。例えば、第1保持部が第2物質に対して、第1物質に対するよりは弱い保持性を示す場合には、第1流出口からは第1物質より程度は低いが濃縮された第2物質が流出し、第2流出口からは第1物質より程度は低いが希釈された第2物質が流出する。第1保持部が第2物質に対して保持性を示さない場合には、第1流出口及び第2流出口からは第2物質が濃縮も希釈もされない流体が流出する。前記分離用流路に、第2物質に対して保持性を示す第2保持部が形成されている場合には、第1流出口からは第2物質が希釈された流体が流出し、第2流出口からは第2物質が濃縮された流体が流出する。
流体に含まれる3種以上の物質を互いに分離する場合には、まず、その内の2種を分離出来る分離デバイスを用いて分離し、該分離デバイスの第1取出口7、第2取出口17の一方又は両方に、残りの物質を分離することが出来る分離デバイスを接続することによって、分離することが出来る。或いは、前記分離用流路の第1保持部、第2保持部以外の壁面に第3保持部を有し、該第3保持部の側に第3流出口が設けられた分離デバイスを用いて分離することも出来る。流体に含まれる4種の物質を互いに分離する場合も同様である。
以下には流体に含まれる2種類の溶質(第1物質および第2物質)を分離する場合を例にして説明する。
流入口から分離すべき流体を導入して分離用流路に流す。このとき、流体が分離用流路を層流で流れている状態、または、移送を一時停止した状態で、流体中の第1物質を拡散によって第1保持部に取り込ませる(以下、本操作工程を「取り込み工程」と称する場合がある)。この時、取り込み工程の時間を、第1保持部から最も遠い、第1保持部の対向面付近にある第1物質も、拡散によって第1保持部へ移動させるに十分な時間をとることにより、第1保持部に取り込まれるようにする。
流入口から分離すべき流体を導入して分離用流路に流す。このとき、流体が分離用流路を層流で流れている状態、または、移送を一時停止した状態で、流体中の第1物質を拡散によって第1保持部に取り込ませる(以下、本操作工程を「取り込み工程」と称する場合がある)。この時、取り込み工程の時間を、第1保持部から最も遠い、第1保持部の対向面付近にある第1物質も、拡散によって第1保持部へ移動させるに十分な時間をとることにより、第1保持部に取り込まれるようにする。
拡散によって流体中を物質が移動する速度は、フィックの拡散の第2法則より、拡散距離の2乗平均の根(以下、平均拡散距離という)は時間の平方根に比例することが示される。平均拡散距離が100μmの時、水中での拡散に要する時間は、例えばエタノール(分子量46)の場合約6秒、1本鎖オリゴヌクレオチド(25塩基、分子量約8500)の場合約60秒、ミオシン(分子量約54万)の場合約600秒と計算される。平均拡散距離が10μmの時は、拡散に要する時間は上記の1/100となる。
従って、分離用流路内の流体の滞留時間は、第1保持部からその対向壁面までの距離が100μmである場合には、略上記平均拡散距離が100μmの場合の拡散に要する時間以上とすることが好ましい。例えば、分離すべき物質の分子量が分子量8500程度である場合には略60秒以上とすることが好ましい。この時間以上とすることにより、第1物質が第1保持部に十分に取り込まれて、高い分離効率が実現される。但し、例えばポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションのように、取り込みに選択性を発現させるためには時間を要する為、この場合には、上記拡散に要する時間より更に長時間とすることが好ましい。滞留時間の上限は特に限定する必要はないが、好ましくは10分以下、より好ましくは3分以下、最も好ましくは1分以下である。該滞留時間を上記上限以下とすることによって、分離の処理量を増すことが出来る。即ち、分離すべき物質の分子量が高いほど、分離用流路の第1保持部からその対向面までの距離を小さくすることが、短い滞留時間で十分な取り込みが行われ、分離の処理量を増すことが出来るため好ましい。
分離用流路の下流端において、流体は第1流出口と第2流出口に分かれて流出するが、このとき、分離用流路内を流れる流速を、レイノルズ数が2300未満として層流で流すことにより、第1保持部から放出された(以下、該放出させる工程を「放出工程」と称する場合がある)第1物質は、第1保持部側の第1流出口からより多く流出することになる。本発明の分離デバイスを用いると、分離用流路の断面積が十分に小さいため乱流に成りにくく、流体を層流で流すことが出来る。
本物質分離方法において、分離効率を高くするためには、放出工程に於いて、第1保持部から放出された第1物質を、第1保持部の対向面付近を流れてきた流体となるべく再混合させることなく、第1流出口から流出させることが重要である。再混合を防ぐためには、分離デバイスの流出口の構造を前記のように再混合しにくい形状に設計することのほか、第1保持部から放出された第1物質が拡散で再混合する前に第1保持部から流出するような流速を選択することが重要である。これについては、下記の温度変化法の項に記載する。
〔一定温度法〕
本発明の物質分離方法は一定温度条件で行うことが出来る。この場合、第1保持部に取り込まれた第1物質は、第1保持部近辺で取り込みと放出を繰り返しながら分離用流路内を流れ、分離用流路の下流端に達し、主として第1流出口より流出する。即ち本方法においては取り込み工程と放出工程が同時に行われる。
本法は、温度変化の必要がないため操作が容易であり省エネである。しかし、一段での分離能は後述の温度変化法より低い。これを軽減するため、第1保持部の第1物質取り込み可能量を多くすることが好ましい。
なお、本方法は、分離すべき流体を連続的に注入して分離するものである。従って試料溶液の注入開始から定常状態に達するまでの間は、必ずしも所定の分離がなされない場合がある。ただし、この間もクロマトグラフィーのように時間分割プログラムで欠き取出口から流出する溶液を採取することは可能である。なお、ここで言う連続的注入とは、回分法でないという意味であって、間欠的注入や流量が変化する注入も含む。
本発明の物質分離方法は一定温度条件で行うことが出来る。この場合、第1保持部に取り込まれた第1物質は、第1保持部近辺で取り込みと放出を繰り返しながら分離用流路内を流れ、分離用流路の下流端に達し、主として第1流出口より流出する。即ち本方法においては取り込み工程と放出工程が同時に行われる。
本法は、温度変化の必要がないため操作が容易であり省エネである。しかし、一段での分離能は後述の温度変化法より低い。これを軽減するため、第1保持部の第1物質取り込み可能量を多くすることが好ましい。
なお、本方法は、分離すべき流体を連続的に注入して分離するものである。従って試料溶液の注入開始から定常状態に達するまでの間は、必ずしも所定の分離がなされない場合がある。ただし、この間もクロマトグラフィーのように時間分割プログラムで欠き取出口から流出する溶液を採取することは可能である。なお、ここで言う連続的注入とは、回分法でないという意味であって、間欠的注入や流量が変化する注入も含む。
〔温度変化法〕
第1保持部の第1物質に対する保持性が温度依存性を有するとき、例えば、吸着や、ゲル/固体転移点を有するゲルへの吸収、等の場合には、この特性を利用して、一段で高能率に分離することが出来る。保持性の温度変化は、例えば吸着の場合には、吸着量は低温で多く、高温で低下する。吸収その他の取り込み機構の場合にも、同様の特性を示す。しかし、温度応答性ゲルによる吸収の場合には、例えばポリ−N−イソプロピリアクリルアミドゲルのように、低温でゲル状態となって吸収量が増し、高温で固体となって吸収量が減少する例もある。本発明では、これらの特性に合わせて運転条件を変えることが出来る。
第1保持部の第1物質に対する保持性が温度依存性を有するとき、例えば、吸着や、ゲル/固体転移点を有するゲルへの吸収、等の場合には、この特性を利用して、一段で高能率に分離することが出来る。保持性の温度変化は、例えば吸着の場合には、吸着量は低温で多く、高温で低下する。吸収その他の取り込み機構の場合にも、同様の特性を示す。しかし、温度応答性ゲルによる吸収の場合には、例えばポリ−N−イソプロピリアクリルアミドゲルのように、低温でゲル状態となって吸収量が増し、高温で固体となって吸収量が減少する例もある。本発明では、これらの特性に合わせて運転条件を変えることが出来る。
前記の工程(I)〜(III)を有する方法においては、前記(II)の工程における保持部の温度と、前記(III)の工程における保持部の温度とを異なる温度とする方法や、前記(II)の工程を前記(III)の工程における前記保持部の温度とは異なる温度において保持部を一定時間保持することにより、流体の流入および取り出しを実質的に停止させる工程とする方法などにより好ましく実施できる。
低温で取り込み量が増す系の例で説明すると、取り込み工程に於いては低温で第1物質を第1保持部に取り込ませ、放出工程において第1保持部を高温にして第1物質を放出させると共に、第1流出口から流出させる。このとき、取り込み工程の時間は、十分な量の第1物質が第1保持部に取り込まれるだけの滞留時間とし、かつ、放出工程の時間は、拡散による再混合の量が少ない時間とすることが好ましい。そのため、取り込み工程における滞留時間を長くし、放出工程は、出来るだけ急速に昇温し、高い流速で流出させることが好ましい。放出工程に要する時間は、第1保持部からその対向壁面までの距離を平均拡散距離としたときの、平均拡散距離の拡散に要する時間より短くすることが好ましい。例えば第1保持部からその対向壁面までの距離が100μmの場合で、分離すべき物質の分子量が分子量8500程度である場合には略60秒以上とすることが好ましい。放出工程に要する時間の下限は、短いことそれ自体による不都合はなく、例えば1msであっても良いが、圧力損失が大きくなり、ポンプや分離デバイスの耐圧性を増す必要が出てくるし、また、昇降温時間をそれほど短くできないため、過剰に短くしても無意味なため、0.01秒以上が好ましく、0.1秒以上が好ましい。
昇降温方法は任意であり、温調ブロックのプログラムコントロール、異なる温度に調節された温調ブロック間の乗せ替え、湯などの液体への浸漬、温調された気体の吹きつけ、赤外線加熱、レーザー加熱、マイクロ波加熱を例示できる。放出工程に於いて、所定の温度まで昇温又は降温するために用する時間が長くては、その間に再混合が生じる恐れがある。レーザー加熱、マイクロ波加熱がデバイスをあまり加熱することなく、選択的に流体を加熱することによって、温度の上昇速度を大きく出来るため好ましい。また、その他の加熱冷却方法の場合にも、本発明の物質分離デバイスを使用すれば、デバイスの熱容量が小さいため、温度の上昇下降を速やかに、例えば秒オーダーで行うことが出来るため、上記放出工程に要する時間の下限をこのような短時間にすることができる。
放出工程の後、取り込み工程を再び繰り返すことも出来る。放出工程終了後の冷却速度は任意である。放出工程の温度で次回の取り込み工程を行い、その後、所定の取り込み工程温度へ降温することも、選択的吸着の選択性を増すことが出来るために好ましい。
〔段階的配置による物質分離方法〕
段階的配置による物質分離方法に於いては、本発明になる段階的配置型物質分離デバイスの任意の段の分離用流路の流出口から流出させた溶液を、下流側次段の分離用流路に流入させ、第1取出口7、第2取出口17、及び第3取出口27からそれぞれ分離された溶液を取り出す。段階的配置においては、第3取出口を形成して、そこから流体を取り出しうることが、一段型物質分離デバイスを使用した分離方法と異なる。
段階的配置による物質分離方法に於いては、本発明になる段階的配置型物質分離デバイスの任意の段の分離用流路の流出口から流出させた溶液を、下流側次段の分離用流路に流入させ、第1取出口7、第2取出口17、及び第3取出口27からそれぞれ分離された溶液を取り出す。段階的配置においては、第3取出口を形成して、そこから流体を取り出しうることが、一段型物質分離デバイスを使用した分離方法と異なる。
詳細には、流入口と、第1流出口および第2流出口と、前記第1流出口側の壁面の一部に設けられた、前記第1物質を保持できる第1保持部を備えた分離用流路が、上流から下流にかけて複数段にわたって配置されたものを使用して、(i)上流段における第1の分離用流路に、前記流体を流入させる工程と、(ii)前記第1の分離用流路の第1保持部に前記第1物質を取り込ませる工程と、(iii)前記第1の分離用流路の第1保持部から前記第1物質を放出させ、前記第1の分離用流路の第1流出口から流出した前記流体を、下流段における第2の分離用流路に流入させるとともに、前記第1の分離用流路の第2流出口から流出した前記流体を、下流段における第3の分離用流路に流入させる工程と、(iv)最下流段における複数の前記分離用流路の流出口のうち、前記各段における前記分離用流路の前記第1流出口の通過回数が最多となる前記流体の流出口から、前記第1物質を含む流体を取り出すとともに、最下流段における複数の前記分離用流路の流出口のうち、前記各段における前記分離用流路の前記第2流出口の通過回数が最多となる前記流体の流出口から、前記第2物質を含む流体を取り出す工程とにより、物質を分離する方法である。
この場合、導入する流体が、第1物質と第2物質が均一に溶解した流体や、溶質と溶媒であるような2成分系の場合には、前記第1保持部側の第1流出口からは第1物質が濃縮された流体を取り出し、前記第2流出口からは第1物質が希釈され、相対的に第2物質が濃縮された流体を取り出すことが出来る。第3流出口からは中間濃度の第1物質と第2物質が取り出される。分離用流路3に第2保持部が設けられている場合には、さらに分離の効率が増す。
また例えば、導入する流体が、溶質である第1物質と第2物質、及びそれらの共通の溶媒から成る3成分系の場合には、前記第1流出口からは第1物質が濃縮された流体を取り出し、前記第2流出口からは第1物質が希釈された流体を取り出し、第3流出口からは第1物質の中間濃度の流体を取り出すことが出来る。この時、第2物質については、前期第1保持部の第2物質に対する保持性や、第1保持部以外の壁面部分の第2物質に対する保持性の影響を受ける。例えば、第1保持部が第2物質に対して、第1物質に対するよりは弱い保持性を示す場合には、第1流出口からは第1物質より程度は低いが濃縮された第2物質が流出し、第2流出口からは第1物質より程度は低いが希釈された第2物質が流出し、第3流出口からは中間濃度の第2物質が流出する。第1保持部が第2物質に対して保持性を示さない場合には、第1流出口、第2流出口、及び第3流出口からは第2物質が濃縮も希釈もされない流体が流出する。前記分離用流路3に、第2物質に対して保持性を示す第2保持部が形成されている場合には、第1流出口からは第2物質が希釈された流体が流出し、第2流出口からは第2物質が濃縮された流体が流出し、第3流出口からは第1物質も第2物質も希釈された流体、即ち濃縮された溶媒が流出する。即ち、一つの物質分離デバイスで3成分の分離が可能である。よって、段階的配置による物質分離方法においては、第2保持部を設けた物質分離デバイスを用いることが特に好ましい。
段階的配置を使用して温度変化させる方法の場合には、放出工程において、流体は放出工程の温度で下流側次段の分離用流路3に流入する。よって、流入させた後、移送を実質的に停止し、取り込み工程の温度に変化させて、次の取り込み工程を行う。又は、連続する任意の二段(上流段と下流段とする)の間の連絡流路部を、放出工程に於いても温度上昇しないようにして、上流段の流出口から流出する流体を連絡流路内で温度を低下させ、下流段の流入口に流入させても良い。このような温度分布は、レーザーやマイクロ波による流体を選択的に加熱する場合に効果的に実施できる。
上記(i)〜(iv)の工程を有する方法においては、複数段にわたって配置された分離用流路の各段において、前記(ii)の工程の温度と前記(iii)の工程の温度を、異なる温度で分離する方法により好適に実施できる。
濃縮溶液量の確保における第1手段、第2手段、及び第3手段の各使用方法はこれら物質分離デバイスの項で述べたものと同様である。但し、第1手段又は第2手段を使用しない場合には、任意の3つの連続する段に注目したとき、上流段から中流段へ溶液が送られたとき、1回の送液で中流段や下流段の分離用流路3が満たされない場合が生じる。しかし、このような場合でも、前記上流段の体積分だけが、分離されて中流段から下流段へ移送される為分離可能である。しかし、処理効率が悪化するため、前記第1手段又は第2手段を使用することが好ましい。
〔異なる分離デバイスの直列配置〕
例えば溶液に含まれる3種以上の溶質を互いに分離する場合には、まず、その内の2種を分離出来る分離デバイスを用いて分離し、該分離デバイスの第1取出口7、第2取出口17、及び/又は第3取出口27に残りの物質を分離することが出来る分離デバイスを接続することによって、分離することが出来る。
例えば溶液に含まれる3種以上の溶質を互いに分離する場合には、まず、その内の2種を分離出来る分離デバイスを用いて分離し、該分離デバイスの第1取出口7、第2取出口17、及び/又は第3取出口27に残りの物質を分離することが出来る分離デバイスを接続することによって、分離することが出来る。
「物質分離デバイスの作製および物質分離方法」
以下、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例の範囲に限定されるものではない。
図4は、実施例1の物質分離デバイスの平面図及び側面図である。実施例1の物質分離デバイスは、内部層23の両面にそれぞれ第1外部層22および第2外部層24を固着し、第1外部層22の外側に基材21を固着し、第2外部層24の外側にカバー層25を固着して構成されていて、内部層23に分離用流路3が形成され、分離用流路3に面した第1外部層22に第1保持部が形成され、第1外部層22に第1連絡流路8が形成され、第2外部層24に第2連絡流路18が形成され、内部層23と第1外部層22との境界面第1流出口6が設けられ、内部層23と第2外部層24との境界面に第2流出口16が設けられたものである。
以下、実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例の範囲に限定されるものではない。
図4は、実施例1の物質分離デバイスの平面図及び側面図である。実施例1の物質分離デバイスは、内部層23の両面にそれぞれ第1外部層22および第2外部層24を固着し、第1外部層22の外側に基材21を固着し、第2外部層24の外側にカバー層25を固着して構成されていて、内部層23に分離用流路3が形成され、分離用流路3に面した第1外部層22に第1保持部が形成され、第1外部層22に第1連絡流路8が形成され、第2外部層24に第2連絡流路18が形成され、内部層23と第1外部層22との境界面第1流出口6が設けられ、内部層23と第2外部層24との境界面に第2流出口16が設けられたものである。
[分離デバイスの作製]
まず、本実施例における紫外線照射および蛍光特性測定の方法について説明する。
(紫外線ランプ#1による照射)
3kWメタルハライドランプを光源とするアイグラフィックス株式会社製のUE031−353CHC型UV照射装置を用いて、波長365nmで強度40mW/cm2の紫外線を、特に指定が無い限り室温、窒素雰囲気中で照射した。
(紫外線ランプ#2による照射)
250W高圧水銀ランプを光源とするウシオ電機株式会社製のマルチライト250Wシリーズ露光装置用光源ユニットを用いて、波長365nmで強度50mW/cm2の紫外線を、特に指定が無い限り室温、窒素雰囲気中で照射した。
(蛍光強度測定方法)
蛍光強度は、ライカ株式会社製の共焦点レーザー顕微鏡TCS−NTを用いて測定した。
まず、本実施例における紫外線照射および蛍光特性測定の方法について説明する。
(紫外線ランプ#1による照射)
3kWメタルハライドランプを光源とするアイグラフィックス株式会社製のUE031−353CHC型UV照射装置を用いて、波長365nmで強度40mW/cm2の紫外線を、特に指定が無い限り室温、窒素雰囲気中で照射した。
(紫外線ランプ#2による照射)
250W高圧水銀ランプを光源とするウシオ電機株式会社製のマルチライト250Wシリーズ露光装置用光源ユニットを用いて、波長365nmで強度50mW/cm2の紫外線を、特に指定が無い限り室温、窒素雰囲気中で照射した。
(蛍光強度測定方法)
蛍光強度は、ライカ株式会社製の共焦点レーザー顕微鏡TCS−NTを用いて測定した。
次に、本実施例における製膜液および組成物の調整方法について説明する。本実施例1は、多孔質層を「反応誘発型相分離法」によって製造する。
(組成物X1の調製)
エネルギー線重合性化合物として、平均分子量2000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー「ユニディックV−4263」(大日本インキ化学工業株式会社製)を70部、ヘキサンジオールジアクリレート「ニューフロンティアHDDA」(第1工業製薬株式会社製)を30部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュアー184」(チバガイギー社製)を3部、及び重合遅延剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(関東化学株式会社製)を0.5部、それぞれ混合して組成物X1を調製した。
(組成物X1の調製)
エネルギー線重合性化合物として、平均分子量2000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー「ユニディックV−4263」(大日本インキ化学工業株式会社製)を70部、ヘキサンジオールジアクリレート「ニューフロンティアHDDA」(第1工業製薬株式会社製)を30部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュアー184」(チバガイギー社製)を3部、及び重合遅延剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(関東化学株式会社製)を0.5部、それぞれ混合して組成物X1を調製した。
(組成物X2の調製)
エネルギー線重合性化合物として、前記「ユニディックV−4263」を80部、前記「ニューフロンティアHDDA」を20部、光重合開始剤として前記「イルガキュアー184」を2部、それぞれ混合して組成物X2を調製した。
エネルギー線重合性化合物として、前記「ユニディックV−4263」を80部、前記「ニューフロンティアHDDA」を20部、光重合開始剤として前記「イルガキュアー184」を2部、それぞれ混合して組成物X2を調製した。
(製膜液Y1の調製)
エネルギー線重合性化合物として、前記「ユニディックV−4263」を72質量部、ジシクロペンタニルジアクリレート「R−684」(日本化薬株式会社製)を18質量部、メタクリル酸グリシジル(和光純薬工業株式会社製)を10質量部、孔形成剤としてデカン酸メチル(和光純薬工業株式会社製)を180質量部、揮発性の良溶剤としてアセトンを10質量部、紫外線重合開始剤として前記「イルガキュアー184」を3質量部、それぞれ均一に混合して製膜液Y1を調製した。
エネルギー線重合性化合物として、前記「ユニディックV−4263」を72質量部、ジシクロペンタニルジアクリレート「R−684」(日本化薬株式会社製)を18質量部、メタクリル酸グリシジル(和光純薬工業株式会社製)を10質量部、孔形成剤としてデカン酸メチル(和光純薬工業株式会社製)を180質量部、揮発性の良溶剤としてアセトンを10質量部、紫外線重合開始剤として前記「イルガキュアー184」を3質量部、それぞれ均一に混合して製膜液Y1を調製した。
(基材側部材の形成)
厚さ1mmのアクリル板を基材21として使用し、該基材21上にスピンコーターにて組成物X1を塗工し、該塗膜の第1連絡流路8を形成すべき部分(図4参照)以外の部分に、紫外線ランプ#2によりフォトマスクを介して紫外線を120秒間照射して製膜液X1を半硬化させ、第1外部層22を形成した。その後、紫外線の非照射部分に残された未硬化の組成物X1を50%エタノール水溶液で洗浄除去し、第1連絡流路8となる溝を形成した。
厚さ1mmのアクリル板を基材21として使用し、該基材21上にスピンコーターにて組成物X1を塗工し、該塗膜の第1連絡流路8を形成すべき部分(図4参照)以外の部分に、紫外線ランプ#2によりフォトマスクを介して紫外線を120秒間照射して製膜液X1を半硬化させ、第1外部層22を形成した。その後、紫外線の非照射部分に残された未硬化の組成物X1を50%エタノール水溶液で洗浄除去し、第1連絡流路8となる溝を形成した。
該第1外部層22の上にスピンコーターにて組成物Y1を塗工し、該塗膜の分離用流路3を形成すべき部分(図4参照)に、紫外線ランプ#2によりフォトマスクを介して紫外線を40秒間照射して照射部分の製膜液Y1を多孔質状に硬化させ、紫外線の非照射部分に残された未硬化の組成物Y1を50%エタノール水溶液で洗浄除去し、次いで、多孔質層33の細孔内部に残された孔形成剤をn−ヘキサンで洗浄除去して、多孔質層33を形成した。
厚さ80μmのポリエチレンテラフタレート(PET)シートを一時的な支持体(図示略)として、この上にバーコーターにて組成物X1を塗工し、分離用流路3を形成すべき部分以外の未硬化塗膜に、紫外線ランプ#2によりフォトマスクを通して紫外線を120秒間照射して半硬化させ、一時的な支持体(図示略)上に内部層23を形成した。 次いで、紫外線の非照射部分に残された未硬化の組成物X1を50%エタノール水溶液により洗浄除去し、分離用流路3となる内部層23の欠損部を形成した。その後、該分離用流路3となる内部層23の欠損部を、前記基材21上に形成された第1外部層22の多孔質層33と位置を合わせて積層し、その状態で、紫外線ランプ#2により紫外線を30秒間照射して硬化を進めて固着した。その後、一時的な支持体(図示略)を内部層23から剥離し、第1外部層22の上に内部層23が固着された部材を得た。この部材の表面には底面に多孔質層33が形成された分離用流路3となる溝が形成されていた
(プローブDNAの固定)
上記で作製した溝の中に、5重量%ポリアリルアミン(分子量15000、日東紡株式会社製)水溶液を配し、60℃で1時間静置し、ポリアリルアミン中の一部のアミノ基を多孔質層33中のエポキシ基と反応させた。その後、流水で15分間洗浄して、多孔質層33へのアミノ基の導入を行った。
上記で作製した溝の中に、5重量%ポリアリルアミン(分子量15000、日東紡株式会社製)水溶液を配し、60℃で1時間静置し、ポリアリルアミン中の一部のアミノ基を多孔質層33中のエポキシ基と反応させた。その後、流水で15分間洗浄して、多孔質層33へのアミノ基の導入を行った。
上記アミノ基を導入した多孔質層33を含む基材を、5質量%のグルタルアルデヒド(和光純薬工業株式会社製)水溶液中に入れ、50℃で2時間静置して、ポリアリルアミン中のほぼ全てのアミノ基をグルタルアルデヒド中の片方のアルデヒド基と反応させた。その後、流水で10分洗浄して、多孔質層33へのアルデヒド基の導入を行った。
上記アルデヒド基を導入した多孔質体33に、5'末端にアミノ修飾したDNA(プローブN0、長さ20塩基、エスペックオリゴサービス株式会社製)の濃度50μM水溶液を2μL滴下して、湿度100%、50℃にて15時間静置し、DNAの末端アミノ基を多孔質層33のアルデヒド基と反応させた。さらに、0.2質量%のテトラヒドロ硼酸ナトリウム水溶液中に入れ、5分間還元反応させた。次いで、0.2XSSC/0.1%SDS溶液で洗浄し(0.2XSSCは0.03MNaCl,3mMクエン酸ナトリウム水溶液であり、0.1%SDSは0.1質量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液である)、0.2×SSCでリンスし、更に蒸留水で洗浄し、自然乾燥させて、多孔質層33にDNA(プローブN0)を固定した。以上により、多孔質体33の細孔表面にDNA(プローブN0)が固定された第1保持部1を構成した。
(カバー層側部材の形成)
厚さ80μmのポリエチレンテラフタレート(PET)シートを一時的な支持体(図示略)として、この上にバーコーターにて組成物X2を塗工し、該未硬化塗膜に、紫外線ランプ#1により紫外線を1秒間照射して半硬化させ、カバー層25を形成した。
カバー層25の上に、バーコーターにて組成物X1を塗工し、フォトマスクを通して、該未硬化塗膜の第2連絡流路18を形成すべき部分(図4参照)以外の部分に、紫外線ランプ#2により紫外線を120秒間照射して製膜液X1を半硬化させ、第2外部層24を形成した。その後、紫外線の非照射部分に残された未硬化の組成物X1を50%エタノール水溶液で洗浄除去し、第1連絡流路8となる溝を形成し、カバー層側部材とした。
厚さ80μmのポリエチレンテラフタレート(PET)シートを一時的な支持体(図示略)として、この上にバーコーターにて組成物X2を塗工し、該未硬化塗膜に、紫外線ランプ#1により紫外線を1秒間照射して半硬化させ、カバー層25を形成した。
カバー層25の上に、バーコーターにて組成物X1を塗工し、フォトマスクを通して、該未硬化塗膜の第2連絡流路18を形成すべき部分(図4参照)以外の部分に、紫外線ランプ#2により紫外線を120秒間照射して製膜液X1を半硬化させ、第2外部層24を形成した。その後、紫外線の非照射部分に残された未硬化の組成物X1を50%エタノール水溶液で洗浄除去し、第1連絡流路8となる溝を形成し、カバー層側部材とした。
(2つの部材の固着)
前記カバー層側部材の第2外部層24を、前記基材側部材の第1外部層22に位置を合わせて積層し、その状態で、紫外線ランプ#1により紫外線を60秒間照射して硬化を進めて固着した。その後、一時的な支持体(図示略)をカバー層25から剥離し、図1に示したような分離デバイス前駆体を得た。
前記カバー層側部材の第2外部層24を、前記基材側部材の第1外部層22に位置を合わせて積層し、その状態で、紫外線ランプ#1により紫外線を60秒間照射して硬化を進めて固着した。その後、一時的な支持体(図示略)をカバー層25から剥離し、図1に示したような分離デバイス前駆体を得た。
(その他の構造の形成)
次に、分離用流路3の流入口5となる端部において、ドリルを用いて、基材21、及び第1外部層22に直径0.5mmの穴を開けて流入口5を形成した。同様にして、連絡流路8の端部において、基材21に直径0.3mmの穴を開けて取出口7を形成し、内径8mm、高さ10mmの管を取出口7に接着し貯液槽37とした。また同様にして、連絡流路18の端部において、基材21、第1外部層22、および内部層23に直径0.3mmの穴を開けて取出口17を形成し、内径8mm、高さ10mmの管を取出口17に接着し貯液槽37とした。
次に、分離用流路3の流入口5となる端部において、ドリルを用いて、基材21、及び第1外部層22に直径0.5mmの穴を開けて流入口5を形成した。同様にして、連絡流路8の端部において、基材21に直径0.3mmの穴を開けて取出口7を形成し、内径8mm、高さ10mmの管を取出口7に接着し貯液槽37とした。また同様にして、連絡流路18の端部において、基材21、第1外部層22、および内部層23に直径0.3mmの穴を開けて取出口17を形成し、内径8mm、高さ10mmの管を取出口17に接着し貯液槽37とした。
以上のようにして、DNA(プローブN0)が固定された第1保持部1を備えた分離デバイス100を作製した。分離デバイス100の外形は100mm×25mm×1.4mmである。各部の寸法は、基材21の厚みが1mmであり、第1外部層22、内部層23、第2外部層24、及びカバー層25の厚みは全て約100μmであり、多孔質層の厚みは約5μm、多孔質層の細孔径は約1μmである。また、分離用流路3の寸法は、幅が約500μm、高さが95μm、長さが約40mmであり、分離用流路3は流出口付近で幅が約100μmになるよう、徐々に狭められている。第1連絡流路8及び第2連絡流路18は、幅が約100μm、高さが約100μm、長さが約30mmであり、第1流出口6及び第2流出口16寸法は、幅が100μm、分離用流路3の長さ方向の寸法が100μmであった。上記の寸法から、分離用流路3の容積は約1.9μl(mm3)となる。
[物質分離方法]
〔温度変化法〕
(準備)
分離実験用の原溶液として、プローブN0と相補的な塩基配列を有し、蛍光色素Cy3で標識された20塩基1本鎖DNA(F0)の1μMの緩衝液溶液を、アスピレーターで減圧しつつ超音波洗浄機に1分間掛けて脱気したものを使用した。
〔温度変化法〕
(準備)
分離実験用の原溶液として、プローブN0と相補的な塩基配列を有し、蛍光色素Cy3で標識された20塩基1本鎖DNA(F0)の1μMの緩衝液溶液を、アスピレーターで減圧しつつ超音波洗浄機に1分間掛けて脱気したものを使用した。
分離デバイス100の分離用流路3部分の上面に1mm厚のアクリル板(図示略)を断熱材として置き、該分離デバイス100を54℃に調節された温調プレート(図示略)の上に乗せた。この状態で分離用流路3の温度は50℃であった。
導入口15に、マイクロシリンジポンプ(図示略)から原溶液を5μl/分で30分間導入したところ、第1取出口7及び第2取出口17から流出する溶液の蛍光強度は当初ほぼゼロであったが、徐々に増えて行き、一定強度に収束した。
(取り込み工程)
分離デバイス100を上記の54℃に調節された温調プレート(図示略)の上に乗せ、ポンプを止めて1分間静置した。第1回目の取り込み工程に限り、該2分間の間に、第1取出口7及び第2取出口17の貯液槽37に溜まった液を抜き出し、貯液槽を空にした。
分離デバイス100を上記の54℃に調節された温調プレート(図示略)の上に乗せ、ポンプを止めて1分間静置した。第1回目の取り込み工程に限り、該2分間の間に、第1取出口7及び第2取出口17の貯液槽37に溜まった液を抜き出し、貯液槽を空にした。
(放出工程)
次いで、分離デバイス100を105℃に調節された温調プレート(図示略)の上に載せ替え、10秒経過後から6秒間、ポンプを190μl/分の流速で運転することにより、新たな原溶液を分離用流路3に導入すると同時に該溶液にて分離用流路3内の溶液を押し出した。なお、別途、分離用流路3部分の昇温状態を測定したところ、乗せ替えた10秒後に約80℃、16秒後には約90℃であった。
次いで、分離デバイス100を105℃に調節された温調プレート(図示略)の上に載せ替え、10秒経過後から6秒間、ポンプを190μl/分の流速で運転することにより、新たな原溶液を分離用流路3に導入すると同時に該溶液にて分離用流路3内の溶液を押し出した。なお、別途、分離用流路3部分の昇温状態を測定したところ、乗せ替えた10秒後に約80℃、16秒後には約90℃であった。
上記の取り込み工程と放出工程を交互にそれぞれ30回繰り返し、第1取出口7と第2取出口17の貯液槽37に溜まった溶液を採取し、蛍光分光光度系にて蛍光強度を測定した。その結果、原溶液の蛍光強度を基準として、第1取出口から取り出された溶液の蛍光強度比[即ちDNA(F0)の濃度比]は1.24、第2取出口17から取り出された溶液の蛍光強度比は0.76であった。
〔一定温度法〕
分離デバイス100を上記の54℃に調節された温調プレート(図示略)の上に乗せたまま、マイクロシリンジポンプ(図示略)を1.0μl/分の一定速度で連続的に60分間運転し、第1取出口7と第2取出口17の貯液槽に溜まった溶液を採取した。その結果、原溶液の蛍光強度を基準として、第1取出口から取り出された溶液の蛍光強度比[即ちDNA(F0)の濃度比]は1.05、第2取出口17から取り出された溶液の蛍光強度は0.95であった。
分離デバイス100を上記の54℃に調節された温調プレート(図示略)の上に乗せたまま、マイクロシリンジポンプ(図示略)を1.0μl/分の一定速度で連続的に60分間運転し、第1取出口7と第2取出口17の貯液槽に溜まった溶液を採取した。その結果、原溶液の蛍光強度を基準として、第1取出口から取り出された溶液の蛍光強度比[即ちDNA(F0)の濃度比]は1.05、第2取出口17から取り出された溶液の蛍光強度は0.95であった。
本実施例では、立体型の多段配置型物質分離デバイスであって、前記実施態様の第3手段の例を示す。
図5、図6は、実施例2の物質分離デバイスの平面図及び側面断面図である。実施例1と同様の方法で、図5、図6に示された形状の段階配置型の立体型の分離デバイスを作製した。但し、多孔質層は、分離用流路3の内壁となる部分以外の第1外部層22表面にも形成されているが、分離用流路3の内壁となる部分以外の場所は組成物X1を塗布し、流路3に相対する部分以外の部分に紫外線照射することによって該硬化樹脂で目止めされて非多孔質とされ、分離用流路3の第1外部層22側の内壁にのみ多孔質層33が残されて第1保持部1とされている。又、同じ構造の多孔質層34が、分離用流路3の第2外部層24側の内壁に形成されて第2保持部2とされている。
図5、図6は、実施例2の物質分離デバイスの平面図及び側面断面図である。実施例1と同様の方法で、図5、図6に示された形状の段階配置型の立体型の分離デバイスを作製した。但し、多孔質層は、分離用流路3の内壁となる部分以外の第1外部層22表面にも形成されているが、分離用流路3の内壁となる部分以外の場所は組成物X1を塗布し、流路3に相対する部分以外の部分に紫外線照射することによって該硬化樹脂で目止めされて非多孔質とされ、分離用流路3の第1外部層22側の内壁にのみ多孔質層33が残されて第1保持部1とされている。又、同じ構造の多孔質層34が、分離用流路3の第2外部層24側の内壁に形成されて第2保持部2とされている。
本実施例2の物質分離デバイスは、分離用流路3が21段にわたって直列接続されている。また、各段における分離用流路3の本数は、第一段が1本、第二段が2本と順次増加し、第十一段以降は交互に11本および10本となっている。そして、分離用流路3の本数が11本となる段(奇数段)における各分離用流路3の流出口のうち、その上流段における分離用流路3の第1流出口6の通過回数が最多となる流体の流出口が、取出流路42を介して第1取出口7に接続されている。また、その上流段における分離用流路3の第2流出口16の通過回数が最多となる流体の流出口が、取出流路44を介して第2取出口17に接続されている。さらに、その他の流出口が、取出流路43を介して第3取出口27に接続されている。
実施例2の物質分離デバイスは、内部層23の両面に第1外部層22および第2外部層24を固着して構成され、内部層23に分離用流路3が構成され、第1外部層の外側に基材21が設けられ、第2外部層24の外側にカバー層25が設けられた立体型である。そして、第1外部層22における内部層23側の表面に第1保持部1および第1流出口6が設けられ、第2外部層24における内部層23側の表面に第2保持部2および第2流出口16が設けられている。
実施例2の物質分離デバイス各部の寸法は、外形が50mm×50mm×2.365mmであり、分離用流路3の寸法は幅が約300μm、長さが約1mm、高さが約60μm(多孔質層1の厚み約5μm、および多孔質層2の厚み約5μmを含む)、第1連絡流路38,第2連絡流路48、取出流路42、44は幅が約100μm、高さが約60μm、流入口5および流出口6、16の直径が約300μmである。
実施例3の物質分離デバイスでは、任意の連続する2つの段について、上流段における分離用流路の断面積の総和が、下流段における複数の分離用流路の断面積の総和と略同一になるように形成した。
図11、図12は、実施例3の物質分離デバイスの連続する2段部分の部分平面図と側面図である。実施例3では、対向配置された一対の平面の隙間に、分離用流路3が形成されている。その一対の平面の内側には、それぞれ第1保持部1および第2保持部2が形成され、両者の間隔(すなわち分離用流路の厚さ)は、スペーサ36により一定(約55μm)に保持されている。各分離用流路3の幅は、流入口5から暫時拡大されている。第1保持部1および第2保持部2の下流側端部には、それぞれ複数の第1流出口6および第2流出口16が所定間隔(約600μmおき)に配設されている。上流段の分離用流路3aにおける複数の第1流出口6に接続された複数本の第1連絡流路38は、一本に合流されて下流段における分離用流路3bの流入口5に接続されている。同様に、上流段の分離用流路3aにおける複数の第2流出口16に接続された複数本の第2連絡流路48は、一本に合流されて下流段における分離用流路3cの流入口5に接続されている。
表1に、各段における分離用流路の本数および幅を示す。なお、各段における分離用流路3の厚さは略一定であるから、分離用流路の幅は流路断面積に比例している。表1からわかるように、実施例2では、段数と同じ本数の分離用流路3が各段に形成されている。一方、分離用流路の幅は、下流段から上流段にかけて広くなっている。そして、分離用流路の幅と本数との積は、各段とも略一致している。すなわち、上流段における複数の分離用流路の断面積の総和が、下流段における複数の分離用流路の断面積の総和と、略同一になっている。
実施例3の物質分離デバイスによれば、上流段における分離用流路の本数が少なくても、多量の試料を流通させることができるので、濃縮溶液の取出量を確保することが可能になる。
実施例4の物質分離デバイスでは、立体型の物質分離デバイスにおいて、第1保持部1と第2保持部2が形成されていて、該第1保持部1と第2保持部2は多孔質層で形成されていて、その合計の厚みが分離用流路の高さに等しい物質分離デバイスを形成した。
図13は、実施例4の物質分離デバイスの側面断面図である。実施例4では、デカン酸メチル(和光純薬工業株式会社製)の添加量を180質量部とした製膜液Y1の代わりに、その添加量を350質量部としたこと以外は製膜液Y1と同じ組成の、製膜液Y2を使用した。この製膜液Y2を樹脂層1の内面に塗工し、紫外線ランプ#1により紫外線を照射して硬化させ、多孔質層33を形成した。実施例2では約5μmであった多孔質層33の厚さが、約30μmに形成されている。また、実施例2では約1μmであった多孔質層33の平均孔径が、デカン酸メチルの添加量を増加させることにより、約8μmに形成されている。
次に、多孔質層33の上に、スピンコーターにて組成物X1を塗工し、多孔質層33に含浸させた。フォトマスクを通して、分離用流路3、や取出流路43を形成すべき部分以外の部分に、紫外線ランプ#2により紫外線を照射することにより、照射部分における多孔質体を目止め(非多孔質化)し、目止めされなかった多孔質層33にDNA(N0)を固定した。そして、分離用流路3となる溝の両端部に、ドリルを用いて孔を穿ち、流入口5および第1流出口6を形成した。
上述した第1内部層23aと同様にして、DNA(N1)が固定された多孔質層34を持つ第2内部層23bを作製した。そして、第1内部層23aの多孔質層33の表面と第2内部層23bの多孔質体34の表面とを密着させ、紫外線ランプAにより紫外線を照射することにより、両プレートを完全に固着した。これにより、第1保持部1の多孔質層33と第2保持部2の多孔質体34との間隙が0となり、両者によって厚さ約60μmの分離用流路3が形成された。
実施例4では、分離用流路3をすべて保持部により構成したので、物質の分離能を向上させることができる。なお、多孔質33、34の平均孔径は約8μmと大きく形成されているので、流体の流通を妨げることはない。
「物質分離デバイスの作成」
前記カバー層側部材の第2外部層24の表面にも多孔質層34を形成し、前記分離用流路3の前記第1保持部1の対向面に、図1に示されたものと同様の第2保持部2を形成したこと、及び、該第2保持部には、第1保持部に固定したDNA(プローブN0)とは1塩基だけ配列の異なるDNA(プローブN1)を固定したこと、以外は実施例1と同様の物質分離デバイスを作製した。
前記カバー層側部材の第2外部層24の表面にも多孔質層34を形成し、前記分離用流路3の前記第1保持部1の対向面に、図1に示されたものと同様の第2保持部2を形成したこと、及び、該第2保持部には、第1保持部に固定したDNA(プローブN0)とは1塩基だけ配列の異なるDNA(プローブN1)を固定したこと、以外は実施例1と同様の物質分離デバイスを作製した。
「物質分離方法」
分離実験用の原溶液として、前記蛍光色素Cy3で標識された1本鎖DNA(F0)、及び、前記プローブN1と相補的な塩基配列を有し、蛍光色素Cy5で標識された20塩基1本鎖DNA(F1)の各1μM混合緩衝液溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にして温度変化法で分離実験を行った。
分離実験用の原溶液として、前記蛍光色素Cy3で標識された1本鎖DNA(F0)、及び、前記プローブN1と相補的な塩基配列を有し、蛍光色素Cy5で標識された20塩基1本鎖DNA(F1)の各1μM混合緩衝液溶液を使用したこと以外は、実施例1と同様にして温度変化法で分離実験を行った。
その結果、原溶液のCy3とCy5の蛍光強度を基準として、第1取出口から取り出された溶液のCy3の蛍光強度比[即ちDNA(F0)の濃度比]は1.08、Cy5の蛍光強度比[即ちDNA(F1)の濃度比]は0.93、第2取出口17から取り出された溶液のCy3の蛍光強度比は0.93、Cy5の蛍光強度比は1.08であった。
「物質分離デバイスの作成」
段数が3であること、及び、分離用流路3の寸法が下記のようであること以外は実施例3と同様の物質分離デバイスを作製した。分離用流路の寸法は、第1段が、高さ100μm、幅1500μm、長さ3cm、第2段が、高さ100μm、幅750μm、長さ3cm、第3段が、高さ100μm、幅500μm、長さ3cmとした。
「物質分離方法」
段数が3であること、及び、分離用流路3の寸法が下記のようであること以外は実施例3と同様の物質分離デバイスを作製した。分離用流路の寸法は、第1段が、高さ100μm、幅1500μm、長さ3cm、第2段が、高さ100μm、幅750μm、長さ3cm、第3段が、高さ100μm、幅500μm、長さ3cmとした。
「物質分離方法」
分離実験用の原溶液として、実施例5と同様のDNA混合溶液を使用し、ポンプからの1回の送液時間を15秒としたこと以外は実施例1と同様にして温度変化法で分離実験を行った。
その結果、原溶液のCy3とCy5の蛍光強度を基準として、第1取出口から取り出された溶液のCy3の蛍光強度比[即ちDNA(F0)の濃度比]は1.25、Cy5の蛍光強度比[即ちDNA(F1)の濃度比]は0.75、第2取出口17から取り出された溶液のCy3の蛍光強度比は0.75、Cy5の蛍光強度比は1.25であった。
1‥第1保持部 2‥第2保持部 3‥分離用流路 5‥流入口 6‥第1流出口 7‥第1取出口 8,38‥第1連絡流路 15‥導入口 16‥第2流出口 17‥第2取出口 18,48‥第2連絡流路 33、34‥多孔質層 36‥スペーサ 42,43,44‥取出流路
Claims (21)
- 流体中の第1物質および第2物質を相互に分離するマイクロデバイスであって、
前記流体を流通させる分離用流路と、
前記分離用流路の下流端に形成された第1流出口および第2流出口と、
前記分離用流路の前記第1流出口側の壁面の一部に設けられた、前記第1物質を保持できる第1保持部と、
を有することを特徴とする物質分離デバイス。 - 前記分離用流路が、さらに前記分離用流路の前記第2流出口側の壁面の一部に設けられた、前記第2物質を保持できる第2保持部を有することを特徴とする請求項1に記載の物質分離デバイス。
- 上流から下流にかけて前記分離用流路が複数段にわたって配置され、該複数段のうちの任意の連続した2段において、
上流段における第1の分離用流路の第1流出口が、下流段における第2の分離用流路の流入口に接続され、
前記第1の分離用流路の第2流出口が、下流段における第3の分離用流路の流入口に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の物質分離デバイス。 - 上流から下流にかけて前記分離用流路が複数段にわたって配置され、該複数段のうちの任意の連続した3段において、
上流段における第1の分離用流路の第1流出口が、中流段における第2の分離用流路の流入口に接続されるとともに、前記第1の分離用流路の第2流出口が、中流段における第3の分離用流路の流入口に接続され、
中流段における前記第2の分離用流路の第1流出口が、下流段における第4の分離用流路の流入口に接続されるとともに、前記第2の分離用流路の第2流出口が、中流段における第5の分離用流路の流入口に接続され、
中流段における前記第3の分離用流路の第2流出口が、下流段における第6の分離用流路の流入口に接続されるとともに、前記第3の分離用流路の第1流出口が、前記第5の分離用流路の流入口に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の物質分離デバイス。 - 最下流段における複数の前記分離用流路の流出口のうち、前記各段における前記分離用流路の前記第1流出口の通過回数が最多となる前記流体の流出口が、前記流体を取り出す第1取出口に接続され、
最下流段における複数の前記分離用流路の流出口のうち、前記各段における前記分離用流路の前記第2流出口の通過回数が最多となる前記流体の流出口が、前記流体を取り出す第2取出口に接続されていることを特徴とする請求項3または4に記載の物質分離デバイス。 - 上流段における複数の前記分離用流路の断面積の総和は、下流段における複数の前記分離用流路の断面積の総和と略同一に形成されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の物質分離デバイス。
- 最下流段における複数の前記分離用流路の流出口のうち、前記第1取出口が接続された流出口および前記第2取出口が接続された流出口以外の流出口が、上流段における前記分離用流路の流入口に接続されていることを特徴とする請求項5に記載の物質分離デバイス。
- 請求項3又は4に記載の物質分離デバイスにおいて、
第n段において前記分離用流路がi本配され、n又はiの少なくともいずれかが2以上であり、
第n段において前記分離用流路の前記第1流出口の通過回数が最多となる前記流体の流出口が、前記流体を取り出す第1取出口に接続され、前記第2流出口の通過回数が最多となる前記流体の流出口が、前記流体を取り出す第2取出口に接続されてなり、
第n段以降の段における前記分離用流路がi本配された段の前記分離用流路の流出口のうち、当該段より上流段において、前記流体が第1流出口を通過する回数をl、前記流体が第2流出口を通過する回数をmとした際に、l−mが最も大きい流出口が、前記第1取出口に接続され、m−lが最も大きい流出口が、前記第2取出口に接続されていることを特徴とする物質分離デバイス。 - 前記分離用流路の壁面は、一対の平行面を含み、
前記第1保持部および前記第2保持部は、前記一対の平行面に設けられていることを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項に記載の物質分離デバイス。 - 前記物質分離デバイスは、内部層の両面に外部層を積層して構成され、
前記分離用流路は、前記内部層の貫通溝によって構成され、
上流段の前記分離用流路における前記流出口と下流段の前記分離用流路における前記流入口とを接続する連絡流路が、前記外部層に形成されていることを特徴とする請求項3〜9のいずれか一項に記載の物質分離デバイス。 - 前記第1保持部および/または前記第2保持部は、前記外部層における前記内部層側の表面に設けられていることを特徴とする請求項10に記載の物質分離デバイス。
- 前記分離用流路は、前記物質分離デバイスの内部層に形成され、
前記第1保持部および前記第2保持部並びに前記第1流出口および前記第2流出口は、前記内部層における前記分離用流路の内壁に設けられていることを特徴とする請求項2〜9のいずれか一項に記載の物質分離デバイス。 - 前記第1保持部および/または前記第2保持部は、多孔質体で構成されていることを特
徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の物質分離デバイス。 - 前記第1保持部の表面と前記第2保持部の表面との間隙が、1μm以上500μm以
下であることを特徴とする請求項2〜12のいずれか一項に記載の物質分離デバイス。 - 前記第1保持部および前記第2保持部が多孔質体で構成されており、
前記第1保持部の表面と前記第2保持部の表面との間隙が、100μm以下であること
を特徴とする請求項2〜12のいずれか一項に記載の物質分離デバイス。 - 流体中の第1物質および第2物質を相互に分離する方法であって、
(I)前記第1物質を保持できる第1保持部を壁面の一部に備えた分離用流路に、前記流体を流入させる工程と、
(II)前記第1保持部に前記第1物質を取り込ませる工程と、
(III)前記第1保持部から前記第1物質を放出させ、前記第1物質の濃縮溶液を前記第1保持部の下流側端部から取り出し、前記第1物質の希釈溶液および/または前記第2物質の濃縮溶液を前記第1保持部の下流側端部の他端部から取り出す工程と、
を有することを特徴とする物質分離方法。 - 前記(II)の工程における前記保持部の温度と、前記(III)の工程における前記保持部の温度とが異なる温度であることを特徴とする請求項16に記載の物質分離方法。
- 前記(II)の工程が、前記(III)の工程における前記保持部の温度とは異なる温度において前記保持部を一定時間保持することにより、前記流体の流入および取り出しを実質的に停止させる工程である請求項17に記載の物質分離方法。
- 流体に含まれる第1物質および第2物質を相互に分離する方法であって、
流入口と、第1流出口および第2流出口と、前記第1流出口側の壁面の一部に設けられた、前記第1物質を保持できる第1保持部を備えた分離用流路が、上流から下流にかけて複数段にわたって配置され、
(i)上流段における第1の分離用流路に、前記流体を流入させる工程と、
(ii)前記第1の分離用流路の第1保持部に前記第1物質を取り込ませる工程と、
(iii)前記第1の分離用流路の第1保持部から前記第1物質を放出させ、前記第1の分離用流路の第1流出口から流出した前記流体を、下流段における第2の分離用流路に流入させるとともに、前記第1の分離用流路の第2流出口から流出した前記流体を、下流段における第3の分離用流路に流入させる工程と、
(iv)最下流段における複数の前記分離用流路の流出口のうち、前記各段における前記分離用流路の前記第1流出口の通過回数が最多となる前記流体の流出口から、前記第1物質を含む流体を取り出すとともに、最下流段における複数の前記分離用流路の流出口のうち、前記各段における前記分離用流路の前記第2流出口の通過回数が最多となる前記流体の流出口から、前記第2物質を含む流体を取り出す工程と、
を有することを特徴とする物質分離方法。 - 前記複数段にわたって配置された前記分離用流路の各段において、前記(ii)の工程の温度と前記(iii )の工程の温度が、異なる温度であることを特徴とする請求項19に記載の物質分離方法。
- 前記分離用流路の前記他端部の側の壁面の一部に、前記第2物質を保持できる第2保持部が設けられていることを特徴とする請求項16〜20のいずれかに記載の物質分離方法。
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