JP2008298598A - 微小流体素子とその利用方法およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】液体を導入するための導入口と排出するための排出口を有する空間と該空間内に固定されたポリマーとを有する微小流体素子であって、前記ポリマーは液体中の成分によって膨潤し、且つ飽和状態まで膨潤した際に空間の断面を閉塞させないことを特徴とする微小流体素子。液体を搬送する際に空間内に固定したポリマーが膨潤して流路内微小構造を形成する。本発明は、また微小流体素子を液体試料の濃縮素子、分子相互作用反応素子などとしての利用、及び素子の利用方法と製造方法を開示する。
【選択図】図2
Description
前記ポリマーを膨潤させた状態で前記空間内に固定する工程と、
前記ポリマーを乾燥させる工程と、
を少なくとも含むことを特徴とする微小流体素子の製造方法である。
本発明において開示する空間とは、液体を導入するための導入口と排出するための排出口を有し且つ、その内部にポリマーが配置されている空間である。そして、導入した液体の成分によりポリマーが膨潤しても導入口から排出口に対して空間断面全体を閉塞せず、優先的に液体が流れる設計可能な微小流路が確保されている空間を指す。
本発明において開示するポリマーの固定とは、上記概念で示す空間内にポリマーを直接的に、化学あるいは物理固定することと少なくともポリマーを包含する材料として空間内に間接的に化学あるいは物理固定することを意味する。固定されたポリマーは、液体の搬送により脱離しないことを特徴とする。固定方法は従来公知の固定法が用いることができる。例えば、基板表面の接着向上処理や基板やポリマーの表面の化学修飾などが挙げられる。また、ポリマーの配置とは、ポリマーが飽和状態まで膨潤した際のポリマーのサイズ・形状あるいはポリマーを包含する材料のサイズ・形状を加味して設計し、配置することを意味する。配置する際にポリマーは乾燥していても含水膨潤していても良い。飽和状態までポリマーが膨潤した状態で、前記空間の導入口から排出口に対してポリマーあるいはポリマー含有材料が空間断面の全体を閉塞せず、優先的に液体が流れる微小流路が確保できればポリマーをどんな形状でも空間内に配置することができる。また、空間の一部分あるいは全面に配置することができる。パターン配置とは、空間内壁に均一に配置していない、部分的あるいは形状やサイズ、種類などが位置により異なることを示す。
本発明で開示するポリマーとは、液体成分により膨潤するポリマーを示し、例えばハイドロゲル(=吸水性ポリマー)、オルガノゲルが挙げられる。分離能を有するポリマーとは、ポリマー成分の架橋度を制御しており、架橋密度により低分子はポリマーの膨潤によりポリマー内に取り込まれることため、分子サイズにより低分子と高分子を選択的に分離することが可能である。更に、生体内の分子の場合、ホルモンや低分子タンパク質、低分子化合物などを含む低分子量分子は高分子タンパク質と複合体を形成することで安定化することがある。そのような生体内分子を微小流体素子に導入する際に、複合体中の低分子化合物も高分子として選択的に分離することもできる。
本発明で開示する濃縮素子とは、該微小流体素子に導入する液体が分析試料であり、ポリマーを膨潤させる成分が分析試料中の成分である場合の素子を指す。該微小流体素子への試料導入により気泡の滞留を抑えた微小構造体の構築と同時に分析試料の濃縮が可能になる。さらにポリマーが分子サイズにより分子を分離する機能をもつことが望ましい。
本発明で開示する分子相互作用反応素子とは、ポリマーが飽和状態まで膨潤した際の空間断面の閉塞しない、微小構造体中の導通領域が形成されることによってできる、液体が優先的に流れる場を与える素子を指す。バイオ分子計測に該素子を用いる場合は、該素子に生体分子捕捉プローブ分子を包含していることを特徴とする。液体が優先的に流れる場は、液体の空間内での拡散範囲を極めて小さくすることができ、ポリマーの材質やサイズ、配置と空間の形状や構成する部材の選定などは効率よく分子相互作用を行えるように設計が可能である。
本発明で開示する分子相互作検出とは、該微小流体素子を分子相互作用反応の検出に用いる場合を指す。検出方法はどんな方法でも良く、微小流体素子を検出用途に用いていれば特に規定されない。また、ポリマーの材質やサイズ、配置と空間の形状や構成する部材の選定など検出方法によって設計が可能である。
本発明で開示する液体攪拌とは、該微小流体素子内の固定されているポリマーが液体中の成分によって膨潤し、空間内に微小構造体を形成し且つ飽和状態まで膨潤した際に空間の断面を閉塞していないことを利用するものである。その微小構造体を空間内に乱流や遷移流を発生することができるようにポリマーを設計配置し、液体の攪拌に適用する場合の微小流体素子を意味する。ポリマーの材質やサイズ、配置は特に規定しないが、攪拌が効率よく行えるように設計することができる。
本実施例では、図2に示した微小流体素子を作製し、気泡の滞留がないことを確認する。本実施例の微小流体素子の作製方法を説明する。まず、マイクロアレイ用スライドガラス(松浪ガラス工業)105に深さ100μm、幅が導入排出口部位で最小100μm、ポリマー固定部位にあたる部位で最大500μmの寸法の空間103をドライエッチングにより形成する。スライドガラス105のサイズは、短手25.4mm、長手76.2mm、厚み1mmである。次に100μm径の導入口101と排出口102の穴加工を施したスライドガラスと同サイズのガラス蓋106下面を大気プラズマ処理により表面改質処理する。続いて下記に示すポリマー成分を乾燥厚みが10μm、20μm、30μm、40μmになるように塗布する。表面改質をすることによりガラスとポリマーとの接着力を向上できる。次に塗膜を100℃、30分間乾燥させる。その後、電子線照射装置(キュアトロン、株式会社NHVコーポレーション)を用いて、加速電圧175kV、10Mradの電子線を塗膜に照射することによって架橋し、シート状吸水性ポリマーを作製する。次に、レーザー加工でポリマー形成領域寸法500μm角の領域のみを蓋上に残し、蓋106と基板105をエポキシ樹脂で接着し、微小流体素子を作製する。対照実験用に、該ポリマー固定領域に当たる部位に予め30、60、90μm厚のガラス製微小構造体をガラス加工により作製した蓋106を用いて微小流体素子を用意する。
ポリマー成分
・ポリアクリルアミド 30%
・メチレンビスアクリルアミド 1%
水:メタノール(4:3)の溶媒に上記濃度で可溶化したもの
本微小流体素子にPBSバッファー(0.1 M NaCl, 10 mM リン酸ナトリウム(pH 7.4))を20μl/min.で空間内に液体を充填し、30min.静置する。液体充填中の気泡の滞留と静置後のポリマー膨潤厚をそれぞれ、目視と共焦点顕微鏡により確認する。各微小流体素子で実験を5回繰り返し(N = 5)行い平均値で評価する(表1)。No.4は、ポリマーが膨潤して蓋と接触したためバッファーが流れない。膨潤後厚と膨潤厚倍率は明示していない(表1参照)。
実施例1で示す乾燥時30μm厚のポリマーが固定されている微小流体素子を濃縮素子に利用して本発明の実施形態を説明する。まず、10μM 抗BSA抗体のPBS溶液を導入口101から20μl/min.の速度で導入し、空間103に充填された状態で30min.静置した後、同速度で排出口102から排出した溶液の濃度を分光光度計で測定する。結果として、濃度が約20μMとなり、およそ2倍に濃縮することができる。
本実施例では、図12に示した微小流体素子を作製し、分子相互作用の場を与える素子と分子相互作用検出素子として利用する実施形態を説明する。図12に示す微小流体素子の作製方法は基本的に実施例1の作製方法を踏襲する。異なる点はプローブ分子の基板105への固定に関してのみであり、以下に示すように調製する。まず、加工した基板105表面をポリLリジンコートして、100μMのBSA水溶液を市販のアレイヤーにより50μm間隔、スポット径100μmで3×3スポットを作製して乾燥固定した後、5%スキムミルク溶液に1時間浸漬して室温で乾燥させる。その処理基板を基板105として使用する。基板106に固定するポリマーの厚みは乾燥時30μm厚のものを使用する。基板105上のBSA分子固定部位は蓋106のポリマー固定領域上に合わせる(図12)。同時にポリマーを固定しない図12に示す構成の微小流体素子を対照実験用素子として作製する。まず、本微小流体素子にPBSバッファーを導入口101より20μl/min.で導入し、空間をPBSバッファーで充填した状態で30min.静置してポリマーを膨潤させる。その後、連続して100μMのCy3標識した抗BSA抗体PBS溶液を5μl/min.で30min.間フローし、引き続きPBSバッファーを同流速で20min.流し洗浄する。対照実験用の微小流体素子も同様に100μMのCy3標識した抗BSA抗体PBS溶液を5μl/min.で30min.間フローして、その後PBSバッファーを同流速で20min.洗浄する。その後、蛍光顕微鏡でプローブ固定領域の蛍光イメージを取得し、蛍光強度をシオンイメージ(Sion社)で数値化する。結果として、対照実験で得られる蛍光強度を1とすると、本微小流体素子は、およそ10倍の強度が期待できる。
本実施例では、図12に示した微小流体素子を作製し、濃縮素子、分子相互作用の場を与える素子と分子相互作用検出素子として利用する実施形態を説明する。図12に示す微小流体素子の作製方法は実施例2の作製方法に順ずる。対照実験として、同時にポリマーを固定しない図12に示す構成の微小流体素子を対照実験用素子として作製する。まず、本微小流体素子に100μMのCy3標識した抗BSA抗体PBS溶液を導入口101より20μl/min.で導入し、空間を上記液体試料で充填した状態で30min.静置してポリマーを膨潤させ、且つ濃縮と反応をさせる。その後、PBSバッファーを5μl/min.で30min.フローして洗浄する。対照実験用の微小流体素子も同様に100μMのCy3標識した抗BSA抗体PBS溶液を20μl/min.導入し30min.間静置して、その後PBSバッファーを5μl/min.で30min.フローして洗浄する。その後、蛍光顕微鏡でプローブ固定領域の蛍光イメージを取得し、蛍光強度をシオンイメージ(Sion社)で数値化する。結果として、対照実験で得られる蛍光強度を1とすると、本微小流体素子は、15倍程度の蛍光強度上昇が期待できる。
102 排出口
103 空間 流路空間部
104 基板固定化ポリマー
105 基板
106 蓋
107 微小構造体
201 蓋固定化ポリマー
202 微小構造体
301 基板固定化ポリマー
302 微小構造体
401 蓋固定化ポリマー
402 微小構造体
501 蓋固定化ポリマー
502 基板固定化ポリマー
503 微小構造体
601 基板固定化ポリマー
602 微小構造体
701 基板固定化ポリマー
702 微小構造体
801 基板固定化ポリマー
802 微小構造体
901 蓋固定化ポリマー
902 基板固定化ポリマー
903 微小構造体
Claims (11)
- 液体を導入するための導入口と排出するための排出口を有する空間と該空間内に固定されたポリマーとを有する微小流体素子であって、前記ポリマーは液体中の成分によって膨潤し、且つ飽和状態まで膨潤した際に空間の断面を閉塞させないことを特徴とする微小流体素子。
- 前記液体が生体分子含有水溶液であり、前記成分が水分であり、前記ポリマーが吸水性ポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の微小流体素子。
- 請求項1または2に記載の微小流体素子において、前記ポリマーが前記空間内でパターン配置されていることを特徴とする微小流体素子。
- 前記空間が液体で充填され、前記ポリマーが飽和状態まで膨潤していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の微小流体素子。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の微小流体素子において、前記ポリマーが分子サイズにより分子を分離する機能を保有していることを特徴とする濃縮素子。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の微小流体素子において、前記空間内にプローブ分子が固定されていることを特徴とする分子相互作用反応素子。
- 前記空間の導入口より液体を導入する工程と、
前記液体により膨潤するポリマーが微小構造体を形成する工程と、
前記ポリマーの膨潤により前記液体の成分を分子サイズにより分離する工程と、
を少なくとも含むことを特徴とする、請求項5に記載の濃縮素子を用いた液体の濃縮方法。 - 前記空間の導入口より液体を導入する工程と、
前記液体により膨潤するポリマーが微小構造体を形成する工程と、
該微小構造体領域において導入する前記液体の成分とプローブ分子との相互作用反応をおこなう工程と、を少なくとも含むことを特徴とする、請求項6に記載の分子相互作用反応素子を用いた分子相互作用反応方法。 - 前記液体の成分と前記プローブ分子との相互作用反応を検出する工程を更に有することを特徴とする、請求項8に記載の分子相互作用検出方法。
- 前記空間の導入口より液体を導入する工程と、
前記液体により膨潤するポリマーが微小構造体を形成する工程と、
該微小構造体により液体が攪拌される工程と、
を少なくとも含む、請求項1乃至6のいずれかに記載の素子を用いた液体攪拌方法。 - 請求項1乃至6のいずれかに記載の微小流体素子の製造方法において、
前記ポリマーを膨潤させた状態で前記空間内に固定する工程と、
前記ポリマーを乾燥させる工程と、
を少なくとも含むことを特徴とする微小流体素子の製造方法。
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