JP2004175257A - 車両の操舵装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】操舵ハンドルの中立位置における安定性および車両の直進安定性を向上させる。
【解決手段】運転者の操舵ハンドルの回動操作に対して反力を付与するために流体反力発生装置14が設けられる。この流体反力発生装置14は、操舵ハンドルに回転シャフト11を介して連結されたロータ42と、ロータ42を収容するハウジング41を備えている。ハウジング41内は、磁性粉末を混入させた非ニュートラル流体であるビンガム流体で満たされており、ビンガム流体内にはコイル44により磁場が形成される。ビンガム流体のロータ42に対する摩擦力と、磁場によるビンガム流体の粘性の変化により操舵反力が制御される。また、回転シャフト11には電動モータも接続され、同モータによっても操舵反力が付与される。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、操向車輪を転舵するための操舵ハンドルの回動操作に対して操舵反力を付与するようにした車両の操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、操舵ハンドルに回転シャフトを介して連結されて同操舵ハンドルと一体的に回転するロータと、ロータを収容するとともに高粘性流体(シリコンオイル)を満たしたハウジングとを備え、ロータの回転時に高粘性流体の摩擦反力によって操舵ハンドルの回動に対して摩擦反力を付与する技術は知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平1−153379号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の装置にあっては、ロータの回転速度に比例した摩擦反力がロータに付与されるが、操舵ハンドルの微低速回転時における摩擦反力は極めて小さいので、操舵ハンドルの中立位置における安定性に乏しく、車両の直進安定性を向上させることができない。
【0005】
【発明の概要】
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、微低速で回転する操舵ハンドルに対してもある程度大きな摩擦反力を付与することができるようにして、操舵ハンドルの中立位置における安定性を良好にし、車両の直進安定性を向上させた車両の操舵装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、操舵ハンドルの回動に応じて操向車輪を転舵する車両の操舵装置において、操舵ハンドルに回転シャフトを介して連結されて同操舵ハンドルと一体的に回転するロータと、ロータを収容するとともに、ロータの停止状態から回転状態への変化時に大きく非線形に変化する摩擦反力をロータに付与する非ニュートン流体を満たしたハウジングとを備えたことにある。この場合、前記非ニュートン流体としてビンガム流体を採用するとよい。これによれば、微低速で回転する操舵ハンドルに対しても、ある程度大きな摩擦反力を付与することができるので、操舵ハンドルの中立位置における安定性が良好になり、車両の直進安定性が向上する。
【0007】
また、本発明の他の特徴は、非ニュートン流体に磁性粉末を含ませて磁気粘性をもたせ、さらに、磁力線を発生して非ニュートン流体内に磁場を形成する磁力線発生手段を設けたことにある。この場合、磁力線発生手段を、永久磁石または電磁石で構成できる。これによれば、非ニュートン流体の粘性が増加するので、より大きな反力を得ることができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、ロータと一体回転して前記磁性粉末を含ませた非ニュートン流体を撹拌する撹拌手段を設けたことにある。これによれば、ロータの回転に伴って磁性粉末が撹拌されて沈殿しなくなるので、磁性粉末による非ニュートン流体の粘性を常に高く保つことができて、同磁性粉末による反力発生機能を常に維持できる。また、撹拌手段として、フィンのような突起部をロータに設ければ、この突起部の非ニュートン流体に対する抵抗により、より大きな反力を得ることができるようにもなる。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、さらに、ハウジングの内面と対向するロータの外面の少なくとも一部に段差を設けたことにある。これによれば、磁場により集められた磁性粉末が、ロータの回転時に同ロータの段差によって移動する非ニュートン流体に対してオリフィスのように機能するので、より大きな反力を得ることができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、電磁石による磁場の形成態様を変更制御する磁場態様制御手段を設けたことにある。この場合、磁場態様制御手段を、電磁石に対する通電態様を制御する通電態様制御手段で構成するとよい。これによれば、磁場の形成態様を変更制御することにより、ロータの回転に対する反力を可変制御できるので、操舵ハンドルの種々の回動操作に対して的確な反力を付与できる。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、操向車輪の転舵の限界を検出して、同転舵の限界の検出時に磁場態様制御手段を制御して電磁石による磁場を強める転舵限界制御手段とを設けたことにある。これによれば、操舵ハンドルの回動によって操向車輪を限界まで転舵した場合、電磁石による磁場態様の制御により、操舵ハンドルの回動操作に対する反力が増加制御されるので、従前の車両における操向車輪のエンドあたりが的確にシミュレートされて、操舵フィーリングが良好になる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、操向車輪の転舵の遅れを検出して、同転舵の遅れの検出時に磁場態様制御手段を制御して電磁石による磁場を強める転舵遅れ制御手段とを設けたことにある。これによれば、操向車輪の転舵に遅れが生じた場合には、電磁石による磁場態様の制御により、操舵ハンドルの回動操作に対する反力が増加制御されるので、従前の車両における操向車輪の転舵遅れが的確にシミュレートされて、操舵フィーリングが良好になる。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、前記非ニュートン流体による反力付与装置に加えて、操舵ハンドルに回転シャフトを介して連結されて同操舵ハンドルの回動に対して反力を付与する電動モータを備えたことにある。これによれば、操舵ハンドルの回動に対してより大きな反力を付与できるようになると同時に、電動モータの制御により自由度の高い反力の付与制御が可能になる。特に、磁性粉末を含む非ニュートン流体を用いるとともに、電磁石によって非ニュートン流体に磁場を形成するようにした場合には、電動モータおよび電磁石の通電制御により高度な反力制御が可能になると同時に、電動モータおよび電磁石の両制御系の一方に異常が発生しても、一方の制御により操舵ハンドルの回動に対する反力の制御が可能になる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、操舵ハンドルの回動に応じて操向車輪を転舵する車両の操舵装置において、操舵ハンドルに回転シャフトを介して連結されて同操舵ハンドルと一体的に回転するロータと、ロータを収容するとともに、磁気粘性をもたせるために磁性粉末を含ませた流体を満たしたハウジングと、通電により磁力線を発生して流体内に磁場を形成する電磁石と、操舵ハンドルに回転シャフトを介して連結されて同操舵ハンドルの回動に対して反力を付与する電動モータと、電磁石と電動モータへの通電量の比率を操舵ハンドルの回動状態に応じて制御する通電制御手段とを備えたことにある。
【0015】
この場合、例えば、操舵ハンドルが切り込み操作されている場合、または操舵ハンドルが中立位置付近で保舵されている場合に、他の場合に比べて、電磁石への通電比率を電動モータに対する通電比率よりも大きくするとよい。これによれば、電動モータが効率よく反力を発生できない状態において、流体による大きな反力を利用することができ、大きな反力を確保したうえで、電動モータの小型化、電力消費の節約および電動モータの発熱量の低減が可能になる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、磁性粉末を含ませた非ニュートン流体を用いた反力付与装置において、磁力線を発生して非ニュートン流体内に磁場を形成する永久磁石と、通電により磁力線を発生して非ニュートン流体内に磁場を形成する電磁石との両者を備えたことにある。この場合も、非ニュートン流体としてビンガム流体を採用するとよい。これによれば、電磁石の通電制御により、操舵ハンドルの回動操作に対する反力を自由に制御でき、電磁石および永久磁石の両磁場の形成により反力の可変範囲を大きくすることもでき、また電磁石の通電制御系の異常時にも永久磁石による反力を確保できる。
【0017】
また、本発明の他の特徴は、永久磁石による磁力線を打ち消す方向に電磁石を通電する通電制御手段を設けたことにある。これによれば、電磁石の通電制御系の異常時にも、永久磁石による反力を確保できると同時に、同反力が電磁石の通電制御系の正常時に比べて激減しないようにすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る車両の操舵装置を概略的に示している。この操舵装置は、操舵ハンドル10の回動に応じて、操向車輪である左右前輪20a,20bを左右に転舵するものである。
【0019】
操舵ハンドル10は回転シャフト11の上端に固定されており、回転シャフト11は操舵ハンドル10と一体的に回転する。回転シャフト11の下端には、反力発生用の電動モータ12が減速機13を介して接続されている。この電動モータ12は、その回転トルクに応じて、減速機13を介して操舵ハンドル10の回動操作に対して反力を付与する。なお、電動モータ12はモータ反力発生装置を構成する。回転シャフト11の中間には、流体反力発生装置14が組み付けられている。
【0020】
流体反力発生装置14は、図示しない車体部材に固定されて、図2に示すように、上面および下面の中心位置にて軸線方向に回転シャフト11を回動可能に貫通させた円筒状かつ非磁性材料で構成したハウジング41を備えている。ハウジング41は、回転シャフト11の外周面上に固定された円柱状のロータ42を収容している。また、ハウジング41と回転シャフト11の間には図示しないシール部材が介装されており、回転シャフト11およびロータ42の外面とハウジング41の内面との間に形成された内部空間R1は密閉されている。
【0021】
この内部空間R1は、磁性粉末(磁性体からなる粉末)を混入させたビンガム流体で満たされている。このビンガム流体は、非ニュートン流体の一種であって、剪断率の「0」からの増加に対して剪断応力を正の値から増加させる特性を有する。言いかえると、ビンガム流体は、ロータ42の停止状態から回転状態への変化に対して大きく非線形に変化する摩擦反力をロータ42に付与する非ニュートン流体である。なお、図2では内部空間R1を広く描いているが、ロータ42の回転に対して大きな摩擦反力を与えるために、実際には、この内部空間R1は極めて狭い。すなわち、ハウジング41の内面とロータ42の外面との間の隙間は、極めて小さく設定されている。
【0022】
また、ロータ42の回転に対してより大きな摩擦反力を付与するために、ロータ42の外周面上に、同外周面から突出したフィン42aが螺旋状かつ一体的に形成されている。このフィン42aの間隔、高さ、ロータ42の回転方向に対する角度などは、要求される前記摩擦反力の大きさによって決定される。また、このフィン42aは、ビンガム流体内の磁性粉末の沈殿を避けるために、ビンガム流体を撹拌する機能も有しており、本発明の撹拌手段を構成するものである。なお、大きな摩擦反力を得るとともにビンガム流体を撹拌する機能を有するものであれば、前記螺旋状のフィン42aに代えて、ロータ42の外周面に方形、円形などの各種形状に突出した突出部を設けるようにしてもよい。
【0023】
ハウジング41の内周面上には、周方向の適宜位置にて、鉄心43およびコイル44で構成した電磁石からなる磁力線発生器が組み付けられている。鉄心43は、円柱状の鉄棒をコ字状に曲げて構成されている。コイル44は、鉄心の中央部に巻かれており、樹脂45によりモールドされている。このように構成した磁力線発生器は、内部空間R1の適宜箇所に磁場を形成して、ビンガム流体中に混入させた磁性粉末の移動を制限することにより、ビンガム流体によるロータ42の回転に対する摩擦反力を大きくするように機能する。なお、コイル44の数は、要求される前記摩擦反力に応じて決められる。
【0024】
ふたたび、図1の説明に戻り、左右前輪20a,20bは、ラックバー21の両端に、左右タイロッド22a,22bおよび左右ナックルアーム23a,23bを介して転舵可能に連結されている。ラックバー21は、軸線方向に変位可能に図示しない車体に支持されて、同変位に応じて左右前輪20a,20bを左右に転舵する。ラックバー21には、ピニオンギヤ24が噛み合っている。ピニオンギヤ24は、回転シャフト25および減速機26を介して転舵用の電動モータ27に接続されている。このような構成により、電動モータ27が回転すると、同回転は減速機26によって減速されて回転シャフト25を介してピニオンギヤ24に伝達される。そして、ピニオンギヤ24の回転により、ラックバー21が軸線方向に変位して、左右前輪20a,20bが転舵される。
【0025】
次に、前述した操舵反力発生用の電動モータ12および転舵用の電動モータ27の回転と、流体反力発生装置14内のコイル44の通電を制御するための電気制御装置30について説明する。この電気制御装置30は、電子制御ユニット31、操舵角センサ32、転舵角センサ33および車速センサ34を備えている。電子制御ユニット31は、CPU、ROM、RAM、タイマなどからなるマイクロコンピュータを主要構成部品とし、図4の操舵制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行して、電動モータ12、27の回転および流体反力発生装置14内のコイル44の通電を制御する。
【0026】
操舵角センサ32は、回転シャフト11に組み付けられて、同シャフト11の中立位置からの回転角すなわち操舵ハンドル10の操舵角θを検出して電子制御ユニット31に供給する。転舵角センサ33は、回転シャフト25に組み付けられて、同シャフト25の中立位置からの回転角すなわち左右前輪20a,20bの転舵角φを検出して電子制御ユニット31に供給する。これらの操舵角θおよび転舵角ψは、中立位置を「0」として、左方向の角度を正で表すとともに右方向の角度を負で表す。車速センサ34は、変速機の出力軸の回転速度に基づいて車速Vを検出して電子制御ユニット31に供給する。
【0027】
このように構成した車両の操舵装置においては、減速機13がその機構内の摩擦力変化および電動モータ12の慣性に大きく影響されるため、運転者のハンドル操作に対して目標とする操舵反力を付与し難い、特に中立付近にある操舵ハンドル10の操作に対して的確な反力を付与できない。この欠点を解決するために、図1に示す車両の操舵装置を、図3に示すように、減速機13を省略して電動モータ12を回転シャフト11に直結するように変形することが、運転者の操舵操作に対する反力の制御上好ましい。ただし、この変形例の場合には、減速機13の省略のために、出力が大きくかつ制御精度のよい電動モータを用いる必要がある。他の構成については、図1の場合と同じである。
【0028】
次に、上記のように構成した車両の操舵装置の動作を説明するが、図1に示す車両の操舵装置と図3に示す車両の操舵装置における電気制御装置30による制御動作は同じであるので、これらの動作について同時に説明する。車両のイグニッションスイッチの投入後、電子制御ユニット31は図4の操舵制御プログラムを所定の短時間ごとに繰り返し実行する。この操舵制御プログラムの実行はステップS10にて開始され、ステップS11にて操舵角センサ32、転舵角センサ33および車速センサ34からハンドル操舵角θ、前輪転舵角ψおよび車速Vをそれぞれ入力する。そして、ステップS12にて、ハンドル操舵角θに応じて左右前輪20a,20bの目標転舵角ψ*を計算する。なお、この計算においては、ハンドル操舵角θに対する目標転舵角ψ*の関係を表し、ハンドル操舵角θとほぼ比例関係にある目標転舵角ψ*を記憶したテーブルが参照される。
【0029】
前記ステップS12の処理後、ステップS13にて、前記入力した前輪転舵角ψが前記計算した目標転舵角ψ*に一致するように、電動モータ27の回転を制御する。この電動モータ27の回転は、減速機26および回転シャフト25を介してピニオンギヤ24に伝達され、同ピニオンギヤ24とラックバー21の作用により同ラックバー21の直線運動に変換される。そして、ラックバー21の軸線方向の変位はタイロッド22a,22bおよびナックルアーム23a,23bを介して左右前輪20a,20bに伝達され、左右前輪20a,20bは操舵ハンドル10の回動操作に応じて転舵される。
【0030】
次に、ステップS14,S15にて、流体反力発生装置14および反力発生用の電動モータ12がそれぞれ正常であるかを判定する。この流体反力発生装置14の正常判定の方法としては種々考えられるが、同判定は、例えば、電子制御ユニット31内に含まれていてコイル44の断線、短絡などを検出する検出回路出力に基づいて行われる。また、電動モータ12の正常判定の方法としても種々考えられるが、同判定は、例えば、電子制御ユニット31内に含まれていて電動モータ12の巻線の断線、短絡などを検出する検出回路出力に基づいて行われる。
【0031】
まず、流体反力発生装置14および電動モータ12が共に正常である場合について説明する。この場合、ステップS14,S15にてそれぞれ「Yes」と判定し、ステップS16にて第1反力制御ルーチンを実行する。この第1反力制御ルーチンの詳細は図5に示されており、その実行がステップS30にて開始される。この実行開始後、ステップS31にて前記図4のステップS11にて入力したハンドル操舵角θを時間微分することによりハンドル操舵速度θvを計算し、ステップS32,S33の判定処理を実行する。ステップS32の判定処理は操舵ハンドル10が切り込み中か否かを判定するもので、具体的には、前記計算したハンドル操舵速度θvの絶対値|θv|の時間微分値d|θv|/dtが所定値以上であるか否かを判定する。ステップS33の判定処理は操舵ハンドル10がニュートラル付近で保舵中であるか否かを判定するもので、具体的には、前記時間微分値d|θv|/dtが所定値以下であり、かつハンドル操舵角θの絶対値|θ|が所定値以下であるか否かを判定する。
【0032】
操舵ハンドル10が切り込み中であれば、ステップS32にて「Yes」と判定し、ステップS34にて反力分配比RTを「1」より小さな正の所定値ra1に設定する。操舵ハンドル10がニュートラル付近で保舵中であれば、ステップS33にて「Yes」と判定して、ステップS35にて反力分配比RTを「1」より小さな正の所定値ra2に設定する。また、操舵ハンドル10が切り込み中でも、ニュートラル付近で保舵中でもなければ、ステップS32,S33にてそれぞれ「No」と判定して、ステップS36にて反力分配比RTを「1」より小さな正の所定値rbに設定する。反力分配比RTとは、流体反力発生装置14による操舵反力と電動モータ12による反力の分担比を決定するものである。所定値ra1,ra2,rbは、ra1>rb,ra2>rbの関係にある。
【0033】
次に、ステップS37にて流体反力用の第1〜第3マップを参照して、ハンドル操舵速度θv、ハンドル操舵角θおよび車速Vに応じて、流体反力用の第1〜第3通電量I11,I12,I13をそれぞれ決定する。これらの第1〜第3マップは、電子制御ユニット31のメモリ内に予め用意されている。
【0034】
第1マップはハンドル操舵速度θvに対する第1通電量I11を記憶するもので、第1通電量I11は、図8に示すように、ハンドル操舵速度θvが「0」のとき正の所定値となり、ハンドル操舵速度θvの絶対値|θv|が増加するに従って徐々に増加する。これは、後述するコイル44に対する通電制御により、操舵ハンドル10の操作開始時には操舵ハンドル10を軽快に回動操作できるようにし、操舵ハンドル10の速い回動操作に対して安定感を付与するためである。
【0035】
第2マップはハンドル操舵角θに対する第2通電量I12を記憶するもので、第2通電量I12は、図9の実線で示すように、ハンドル操舵角θが「0」付近にあるとき正の所定値となり、ハンドル操舵角θの絶対値|θ|の僅かな増加時には僅かに減少し、同絶対値|θ|のさらなる増加に従って徐々に増加する。これは、後述するコイル44に対する通電制御により、操舵ハンドル10の中立位置からの操作開始時には操舵ハンドル10を軽快に回動操作できるようにし、操舵ハンドル10の大舵角操舵時には操作感を付与するためである。また、ハンドル操舵角θの「0」付近で第2通電量I12を若干増加させているのは、操舵ハンドル10の中立安定性を高めるためである。
【0036】
第3マップは車速Vに対する第3通電量I13を記憶するもので、第3通電量I13は、図10に示すように、車速Vが「0」のとき正の所定値となり、同車速Vが増加するに従って徐々に増加する。これは、後述するコイル44に対する通電制御により、車両の低車速走行時における操舵ハンドル10の末切り時には同操舵ハンドル10を軽快に回動操作できるようにし、車両の高速走行時には操舵ハンドル10の回動操作に対して安定感を付与するためである。
【0037】
前記ステップS37の処理後、ステップS38にて下記数1の演算の実行により、流体反力用の総通電量I10を計算する。
【0038】
【数1】
10=(I11+I12+I13)・RT
【0039】
なお、上記数1に代えて、下記数2を用いて総通電量I10を計算するようにしてもよい。
【0040】
【数2】
10=(I11+I12)・I13・RT
【0041】
そして、ステップS39にて総通電量I10に等しい電流をコイル44に流す。これにより、鉄心43は磁化され、同鉄心43の一端部から出力された磁力線が鉄心43の他端部に入力するので、ハウジング41の内部空間R1内には磁場が形成される。この磁場の形成により、ハンドル磁性粉末を混入させたビンガム流体は移動し難く、すなわちビンガム流体の粘性が増す。そして、この粘性は、磁場が強くなるに従って大きくなって、ロータ42の回転に対して大きな反力トルクを付与するので、コイル44への前記総通電量I10が大きくなるに従って、より大きな反力トルクが操舵ハンドル10の回動操作に対して付与されることになる。
【0042】
次に、ステップS40にてモータ反力用の第1〜第3マップを参照して、ハンドル操舵速度θv、ハンドル操舵角θおよび車速Vに応じて、モータ反力用の第1〜第3通電量I21,I22,I23をそれぞれ決定する。これらの第1〜第3マップは、電子制御ユニット31のメモリ内に予め用意されている。
【0043】
第1マップはハンドル操舵速度θvに対する第1通電量I21を記憶するもので、第1通電量I21は、図11の実線で示すように、ハンドル操舵速度θvの絶対値|θv|が所定範囲内にあるときハンドル操舵速度θvに対して所定の傾きで比例変化し、かつ絶対値|θv|が所定範囲を超えるとハンドル操舵速度θvに対して前記傾きよりも大きな傾きで比例変化する。これは、後述する電動モータ12に対する通電制御により、操舵ハンドル10の操作開始時には操舵ハンドル10を軽快に回動操作できるようにし、操舵ハンドル10の速い回動操作時に対して安定感を付与するためである。なお、この場合における第1通電量I21の正負の符号は、電動モータ12の回転方向を表していて、操舵ハンドル10の回動に対して反力トルクが付与されるように定められている。
【0044】
第2マップはハンドル操舵角θに対する第2通電量I22を記憶するもので、第2通電量I22は、図12に示すように、ハンドル操舵角θの絶対値|θ|が所定範囲内にあるとき「0」に保たれ、かつ絶対値|θv|が所定範囲を超えると、ハンドル操舵角θが正であればハンドル操舵角θの増加に対して徐々に増加し、ハンドル操舵角θが負であればハンドル操舵角θの減少に対して徐々に減少する。これは、後述する電動モータ12に対する通電制御により、操舵ハンドル10の中立位置からの操作開始時には操舵ハンドル10を軽快に回動操作できるようにし、操舵ハンドル10の大舵角操舵時には操作感を付与するためである。なお、この場合における第2通電量I22の正負の符号は、電動モータ12の回転方向を表していて、操舵ハンドル10を中立位置に復帰させようとするトルクが操舵ハンドル10に付与されるように定められている。
【0045】
第3マップは車速Vに対する第3通電量I23を記憶するもので、第3通電量I23は、図13に示すように、車速Vが「0」のとき正の所定値となり、同車速Vが増加するに従って徐々に増加する。これは、後述する電動モータ12に対する通電制御により、車両の低車速走行時における操舵ハンドル10の末切り時には同操舵ハンドル10を軽快に回動操作できるようにし、車両の高速走行時には操舵ハンドル10の回動操作に対して安定感を付与するためである。
【0046】
前記ステップS40の処理後、ステップS41にて下記数3の演算の実行により、モータ反力用の総通電量I20を計算する。
【0047】
【数3】
20=(I21+I22)・I23・(1−RT)
【0048】
なお、上記数3に代えて、下記数4の演算の実行により、総通電量I20を計算するようにしてもよい。この場合、sig[I21+I22]は、I21+I22が「0」であるとき「0」であり、I21+I22が正であるとき「1」となり、かつI21+I22が負であるとき「−1」となる関数である。
【0049】
【数4】
20=(I21+I22+sig[I21+I22]・I23)・(1−RT)
【0050】
そして、ステップS42にて総通電量I20に等しい電流を電動モータ12に流して、ステップS43にてこの第1反力制御ルーチンの実行を終了する。電動モータ12は、この通電制御により、減速機13および回転シャフト11を介して操舵ハンドル10に対し、通電方向に対応した回転方向に通電量に応じた大きさのトルクを付与する。ただし、前記図3の変形例の場合には、電動モータ12は回転シャフト11を介して操舵ハンドル10に対して前記トルクを直接的に付与する。この場合、前述のように、第1通電量I21によって電動モータ12に流れる電流の向きは操舵ハンドル10の回動に対して反力トルクを付与するように定められているとともに、第2通電量I22によって電動モータ12に流れる電流の向きは操舵ハンドル10を中立位置に復帰させるトルクが作用するように定められている。したがって、前記総通電量I20が大きくなるに従って、より大きな反力トルクが操舵ハンドル10の操舵操作および保舵操作に対して付与されることになる。
【0051】
このように上記実施形態およびその変形例によれば、電動モータ12によるモータ反力と流体反力発生装置14による流体反力の両者が、運転者による操舵ハンドル10の回動操作に対して付与されることになる。特に、流体反力発生装置14として、ハウジング41内には非ニュートン流体としてビンガム流体が満たされ、同ビンガム流体は、ロータ42の停止状態から回転状態への変化時に大きく非線形に変化する摩擦反力をロータ42に付与する。したがって、微低速で回転する操舵ハンドル10に対しても、ある程度大きな摩擦反力を付与することができるので、操舵ハンドル10の中立位置における安定性が良好になり、車両の直進安定性が向上する。
【0052】
また、上記実施形態およびその変形例においては、ビンガム流体には磁性粉末を混入させて磁気粘性をもたせるとともに、ハウジング41内に鉄心43およびコイル44からなる磁力線発生器を設けてビンガム流体内に磁場を形成するようにした。したがって、ビンガム流体の粘性が増加して、より大きな操舵反力を得ることができる。
【0053】
また、ロータ42には撹拌手段としてのフィン42aを設けて、磁性粉末を混入させたビンガム流体を撹拌するようにした。ロータ42の回転に伴って磁性粉末が撹拌されて沈殿しなくなるので、磁性粉末によるビンガム流体の粘性を常に高く保つことができて、同磁性粉末による反力発生機能を常に維持できる。また、このフィン42aはロータ42外周面から突出したものであるので、同フィン42aのビンガム流体に対する抵抗により、より大きな操舵反力を得ることができるようにもなる。さらに、このフィンの傾き、形状などを変更することにより、ビンガム流体に対する抵抗を種々に変更できて、的確な操舵反力の付与が可能となる。
【0054】
また、電子制御ユニット31は、図5のステップS37〜S39の処理により、ハンドル操舵速度θv、ハンドル操舵角θおよび車速Vに応じて、コイル44への通電態様を制御するようにした。したがって、図14に示すように、車両の運転状態および運動状態に応じて、操舵ハンドル10の操舵操作に対する反力を可変制御できるので、操舵ハンドル10の種々の回動操作に対して的確な操舵反力を付与できる。
【0055】
さらに、上記実施形態および変形例においては、流体反力発生装置14に加えて電動モータ12を設けて、これらの両者により、操舵ハンドル10の回動操作に対する反力を付与するようにした。したがって、操舵ハンドル10の回動に対してより大きな反力を付与できるようになると同時に、電動モータの制御により自由度の高い反力の付与制御が可能になる。また、操舵反力の付与のために、2つのアクチュエータを用いたので、各アクチュエータとしての流体反力発生装置14および電動モータ12をそれぞれ小型に構成できる。
【0056】
さらに、流体反力発生装置14による反力付与により、操舵ハンドル10の回動に対して、ヒステリシス特性をもった良好な操舵反力の付与が可能になる。すなわち、電動モータ12による反力付与制御においては、図15(A)に示すように、ハンドル操舵角θに対して比例的に変化する反力トルクしか得られない。この場合、ハンドル操舵速度θvに関しては簡単化のために無視しているが、ハンドル操舵速度θvを考慮しても、中立位置にある操舵ハンドル10を回動操作し始めるときには、反力トルクは最初「0」であり、操舵ハンドル10が中立付近にある状態では反力トルクは極めて小さい。これに対して、ビンガム流体による反力トルクはハンドル操舵速度θvに対して図15(B)のような変化特性を示す。すなわち、中立位置にある操舵ハンドル10を回動操作し始めた場合でも、ある程度大きな反力トルクが付与される。そして、これらの電動モータ12による反力トルクと流体反力発生装置14に反力トルクとの合成トルクは、図15(C)に示すように、中立位置付近にある操舵ハンドル10の操作に対しても大きな反力トルクをもつ特性、すなわちヒステリシスをもった特性となる。したがって、上記実施形態によれば、操舵ハンドル10の操舵操作に対して的確な反力を付与できるようになり、特に中立位置付近にある操舵ハンドル10の操舵操作を安定にできる。
【0057】
また、これらの2つのアクチュエータの反力分担をステップS32〜S36により制御するようにした。具体的には、操舵ハンドル10の切り込み時には、流体反力発生装置14による反力分担が大きくなるように制御した。流体反力発生装置14は、ロータ42の回転に対して摩擦力を付与するものであるので、速い速度で回動される操舵ハンドル10に対して反力を付与することを得意とする。したがって、大きな反力を必要とする操舵ハンドル10の切り込み時に大きな反力を付与できるとともに、電動モータ12の小型化、電力消費の節約および電動モータ12の発熱量の低減が可能になる。
【0058】
また、操舵ハンドル10が中立位置付近で保舵されている場合にも、他の場合に比べて、流体反力発生装置14による反力分担が大きくなるように制御した。そもそも、電動モータ12は、低速においては低効率でしかトルクを発生することができず、これに対して流体反力発生装置は特にビンガム流体そのものが反力(剪断力)を備えているために、低速回転するロータ42の回転に対しても高効率で反力を発生できる。これにより、操舵ハンドル10の中立位置付近における保舵に対して、流体反力発生装置14による充分な反力を得た上で、電動モータ12の小型化、電力消費の節約および電動モータ12の発熱量の低減が可能になる。
【0059】
次に、流体反力発生装置14は正常であるが、電動モータ12に異常が発生した場合について説明する。この場合、図4のステップS14にて「Yes」、ステップS15にて「No」と判定して、ステップS17に進む。ステップS17においては、電動モータ12に異常が発生していることを、図示しないランプ、音発生器などを作動させて運転者に知らせる。
【0060】
前記ステップS17の処理後、ステップS18にて第2反力制御ルーチンを実行する。この第2反力制御ルーチンの詳細は図6に示されており、その実行がステップS50にて開始される。この実行開始後、ステップS51にて上述した図5のステップS31の場合と同様にしてハンドル操舵速度θvを計算する。そして、ステップS52にて、上述した図5のステップS37の場合と同様にして、流体反力用の第1〜第3マップを参照して、ハンドル操舵速度θv、ハンドル操舵角θおよび車速Vに応じて、流体反力用の第1〜第3通電量I11,I12,I13をそれぞれ決定する。このステップS52の処理後、ステップS53にて下記数5の演算の実行により、流体反力用の総通電量I10を計算する。
【0061】
【数5】
10=(I11+I12+I13)・K
【0062】
なお、上記数5に代えて、下記数6を用いて総通電量I10を計算するようにしてもよい。
【0063】
【数6】
10=(I11+I12)・I13・K
【0064】
上記数5,6の係数Kは、少なくとも上記数1,2の反力分配比RT(所定値ra1,ra2またはrb)よりも大きな所定値である。そして、ステップS54にて総通電量I10に等しい電流をコイル44に流して、ステップS55にてこの第2反力制御ルーチンの実行を終了する。この結果、電動モータ12に異常が発生して同電動モータ12による操舵反力の付与が不能になっても、流体反力発生装置14による操舵反力の付与が可能となるので、運転者は適切な操舵反力を感じながら操舵ハンドル10を回動操作することができる。また、この場合、係数Kを上記電動モータ12および流体反力発生装置14が正常な場合に比べて大きく設定するようにしたので、電動モータ12による操舵反力が得られなくても支障がない。
【0065】
また、本実施形態では、電動モータ12および流体反力発生装置14の両者による反力発生の場合も、流体反力発生装置14のみによる反力発生の場合も、同一特性の第1〜第3通電量I11,I12,I13を用いるようにした。しかし、これに代えて、流体反力発生装置14のみによる反力発生の場合には、電動モータ12および流体反力発生装置14の両者による反力発生の場合とは異なる特性の第1〜第3通電量I11,I12,I13を用いるようにしてもよい。例えば、流体反力発生装置14は操舵ハンドル10が回動されて初めて、すなわちロータ42が回転して初めて反力が付与され、操舵ハンドル10が一定回転位置に静止していれば、反力(保舵反力)が発生しない。実際には、操舵ハンドル10を保舵していても、ハンドル操舵角θの微小な変動があるので、あたかも保舵反力が働くように作用する。しかしながら、所望の回転位置で操舵ハンドル10を保舵した後、操舵ハンドル10をさらに切り込む場合には操舵反力が不足気味となり、操舵ハンドル10を切り戻す場合には操舵反力が超過気味となる。
【0066】
このような点を改善するために、第2通電量I12として、図9の破線で示すように、操舵ハンドル10の切り込み時には図9上側の破線で示す特性の第2通電量I12を用い、操舵ハンドル10の切り戻し時には図9下側の破線で示す特性の第2通電量I12を用いるようにするとよい。この場合、図9の両破線特性にそれぞれ従ったハンドル操舵角θに対する第2通電量I12を予め用意して電子制御ユニット31のメモリ内に記憶しておく。そして、図6のステップS52にて、ハンドル操舵角θの絶対値|θ|の時間微分値d|θ|/dtが正であれば、すなわち前記絶対値|θ|が増加傾向にあれば、図9上側の破線特性に従った第2通電量I12をハンドル操舵角θに応じて決定する。また、前記時間微分値d|θ|/dtが負であれば、すなわち前記絶対値|θ|が減少傾向にあれば、図9下側の破線特性に従った第2通電量I12をハンドル操舵角θに応じて決定するようにするとよい。その他の動作については、上述した場合と同じである。
【0067】
また、このように電動モータ12の異常に伴い流体反力発生装置14のみによって操舵反力を発生すると、流体反力発生装置14の負荷が過大に成り過ぎる場合がある。したがって、電動モータ12の異常直後においては、異常前との操舵反力の急変を回避するために、流体反力発生装置14への通電量を増大させるが、その後においては状況に応じて流体反力発生装置14への通電量を緩和するようにするとよい。この場合、流体反力発生装置14の温度、流体反力発生装置14(コイル44)に流れる電流などを測定して、流体反発生装置14の負担が過大にならない限りにおいては流体反力発生装置14への通電量を大きく保ち、流体反発生装置14の負担が過大になる場合には流体反力発生装置14への通電量を減少させるようにする。
【0068】
次に、電動モータ12は正常であるが、流体反力発生装置14に異常が発生した場合について説明する。この場合、図4のステップS14にて「No」、ステップS19にて「Yes」と判定して、ステップS20に進む。ステップS20においては、流体反力発生装置14に異常が発生していることを、図示しないランプ、音発生器などを作動させて運転者に知らせる。
【0069】
前記ステップS20の処理後、ステップS21にて第3反力制御ルーチンを実行する。この第3反力制御ルーチンの詳細は図7に示されており、その実行がステップS60にて開始される。この実行開始後、ステップS61にて上述した図5のステップS31の場合と同様にしてハンドル操舵速度θvを計算する。そして、ステップS62にて、上述した図5のステップS40の場合と同様にして、モータ反力用の第1〜第3マップを参照して、ハンドル操舵速度θv、ハンドル操舵角θおよび車速Vに応じて、モータ反力用の第1〜第3通電量I21,I22,I23をそれぞれ決定する。このステップS62の処理後、ステップS63にて下記数7の演算の実行により、モータ反力用の総通電量I20を計算する。
【0070】
【数7】
20=(I21+I22)・I23・K
【0071】
なお、上記数7に代えて、下記数8を用いて総通電量I20を計算するようにしてもよい。
【0072】
【数8】
20=(I21+I22+sig[I21+I22]・I23)・(1−RT)
【0073】
上記数7,8の係数Kは、少なくとも上記数3,4の反力分配比1−RT(所定値1−ra1,1−ra2または1−rb)よりも大きな所定値である。また、前記数8中の関数sig[I21+I22]は、上述した数4の場合と同じである。そして、ステップS64にて総通電量I20に等しい電流を電動モータ12に流して、ステップS65にてこの第3反力制御ルーチンの実行を終了する。この結果、流体反力発生装置14に異常が発生して同流体反力発生装置14による操舵反力の付与が不能になっても、電動モータ12による操舵反力の付与が可能となるので、運転者は適切な操舵反力を感じながら操舵ハンドル10を回動操作することができる。また、この場合、係数Kを上記電動モータ12および流体反力発生装置14が正常な場合に比べて大きく設定するようにしたので、流体反力発生装置14による操舵反力が得られなくても支障がない。
【0074】
また、本実施形態では、電動モータ12および流体反力発生装置14の両者による反力発生の場合も、電動モータ12のみによる反力発生の場合も、同一特性の第1〜第3通電量I21,I22,I23を用いるようにした。しかし、これに代えて、電動モータ12のみによる反力発生の場合には、電動モータ12および流体反力発生装置14の両者による反力発生の場合とは異なる特性の第1〜第3通電量I21,I22,I23を用いるようにしてもよい。例えば、流体反力発生装置14は操舵ハンドル10が回動時に、特に回転速度が大きくなると、大きな操舵反力を発生する。そのために、操舵ハンドル10の回動に対する電動モータ12による操舵反力が不足気味となる。
【0075】
このような点を改善するために、第1通電量I21として、図11の破線で示す特性の第1通電量I21を用いるようにするとよい。この場合、図11の破線特性にそれぞれ従ったハンドル操舵速度θvに対する第1通電量I21を予め用意して電子制御ユニット31のメモリ内に記憶しておく。そして、図7のステップS62の処理にて、図11の破線特性に従った第1通電量I21をハンドル操舵速度θvに応じて決定するようにするとよい。その他の動作については、上述した場合と同じである。
【0076】
また、このように流体反力発生装置14の異常に伴い電動モータ12のみによって操舵反力を発生すると、電動モータ12の負荷が過大に成り過ぎる場合がある。したがって、流体反力発生装置14の異常直後においては、異常前との操舵反力の急変を回避するために、電動モータ12への通電量を増大させるが、その後においては状況に応じて電動モータ12への通電量を緩和するようにするとよい。この場合、電動モータ12の温度、電動モータ12に流れる電流などを測定して、電動モータ12の負担が過大にならない限りにおいては電動モータ12への通電量を大きく保ち、電動モータ12の負担が過大になる場合には電動モータ12への通電量を減少させるようにする。
【0077】
次に、上記のように構成した流体反力発生装置14の変形例について説明する。第1変形例は、図16に示すように、各鉄心43内に永久磁石46を介装させている。他の構成は、上記実施形態と同一である。これによれば、永久磁石46から発生される磁力線は、鉄心43を通って磁性粉末を混入させたビンガム流体内に磁場を形成する。したがって、永久磁石46によって形成される磁力線の向きと、コイル44によって形成される磁力線の向きとを一致させるように、電子制御ユニット31がコイル44を通電制御すれば、永久磁石46による磁力線とコイル44による磁力線とを重畳させた磁場をビンガム流体内に形成できて、ビンガム流体による操舵反力の可変範囲を大きくすることが可能になる。また、上記実施形態の図5のステップS39および図6のステップS54の処理によるコイル44への通電量を減らすことができるとともに、図5のステップS42および図7のステップS64の処理による電動モータ12への通電量を減らすこともできる。さらに、コイル44への通電制御系の異常時にも、流体反力発生装置14の永久磁石46による磁性粉末を用いた操舵反力も確保できる。
【0078】
また、永久磁石46によって形成される磁力線の向きとコイル44によって形成される磁力線の向きとが反対になるように、電子制御ユニット31がコイル44を通電制御するようにしてもよい。この場合、コイル44による操舵反力の制御においては、永久磁石46による磁力線をコイル44による磁力線で打ち消したうえで、コイル44による通電量を図8(A)(B)(C)による特性に従って決定するようにするとよい。したがって、上記実施形態の図5のステップS42および図6のステップS54の処理によるコイル44への通電量を上記実施形態の場合に比べて大きくする必要がある。これによれば、コイル44の通電制御系の異常時にも、永久磁石46による反力を確保できると同時に、同反力がコイル44の通電制御系の正常時に比べて激減しないようにすることができる。
【0079】
次に、上記のように構成した流体反力発生装置14の第2変形例について説明すると、図17はこの第2変形例に係る流体反力発生装置50を縦断面図により示している。この流体反力発生装置50も、上面および下面の中心位置にて軸線方向に回転シャフト11を回動可能に貫通させた円筒状かつ非磁性材料で構成したハウジング51を備えている。ハウジング51は、回転シャフト11の外周面上に固定された円柱状のロータ52を収容している。また、ハウジング51と回転シャフト11の間には図示しないシール部材が介装されており、回転シャフト11およびロータ52の外面とハウジング51の内面との間に形成された内部空間R1は密閉されている。
【0080】
この内部空間R1は、上記実施形態と同様に、磁性粉末を混入させたビンガム流体で満たされている。このビンガム流体は、上記実施形態と同様な機能を有する。なお、この場合も、図17では内部空間R1を広く描いているが、ロータ52の回転に対して大きな摩擦反力を与えるために、実際には、この内部空間R1は極めて狭い。ロータ52には、図17および図18に示すように、一部を残して周方向に沿った溝52aが形成されている。一方、ハウジング51には、樹脂53によってモールドされていて円柱の鉄心54にコイル55を巻いた複数の電磁石が周方向の適宜箇所にて埋め込まれている。鉄心54およびコイル55かららなる電磁石の磁極面はロータ52の外周面(溝52a)に対向している。
【0081】
このように構成した第2変形例に係る流体反力発生装置50においても、上記実施形態と同様に、電子制御ユニット31によって通電制御される。したがって、この第2変形例に係る流体反力発生装置50を用いた車両の操舵装置においても、磁性粉末を混入させたビンガム流体とロータ52との摩擦により、上記実施形態と同様な反力が操舵ハンドル10の回動操作に対して付与される。また、ロータ52の外周面であって溝52aを形成しない部分は溝52aの底面に対して突出部を形成するので、ロータ52の回転に伴ってビンガム流体が撹拌され、磁性粉末の沈殿を避けることができる。したがって、この場合も、操舵ハンドル10の回動に対して、的確な操舵反力が常に維持される。
【0082】
また、この第2変形例においては、ロータ52の外周面上の溝52aの非形成部分は本発明の段差に対応するもので、ロータ52の外周面とハウジング51の内周面との間の通路面積を周方向の一部において異ならせている。一方、コイル55への通電により、ビンガム流体内に混入された磁性粉末は鉄心54の磁極面に対向した位置に集中する。この場合、前記溝52aの非形成部分が鉄心54の近傍位置に近づいた状態では、同溝52aの非形成部分と前記集中した磁性粉末とにより、ビンガム流体に対するオリフィス機能が実現される。したがって、これによれば、上記実施形態の場合に比べ、さらに大きな操舵反力を得ることができる。
【0083】
このような第2変形例においては、ロータ52の外周面上に溝52aの非形成部分を一箇所だけ設けるようにしたが、ロータ52の外周面上に溝52aの非形成部分を複数箇所設けるようにしてもよい。また、鉄心54およびコイル55からなる電磁石の数に関しても、必要に応じて適当な数だけ設けるようにすればよい。
【0084】
さらに、この第2変形例に係る流体反力発生装置50においても、上記第1変形例に係る流体反力発生装置14と同様に、コイル55に加えて永久磁石を設けるようにしてもよい。この場合、永久磁石をコイル55による磁力線の進行方向に一致するように鉄心54内に介装または鉄心54と直列に配置するようにしてもよいし、ハウジング51の周方向に沿った適宜位置であって鉄心54およびコイル55と周方向の異なる位置に配置するようにしてもよい。
【0085】
次に、第3変形例に係る流体反力発生装置60について説明すると、図19はこの第3変形例に係る流体反力発生装置60を縦断面図により示している。この流体反力発生装置60は、前記第2変形例に係る流体反力発生装置50の一部を変形したもので、磁性粉末を混入させたビンガム流体で満たした円筒状のハウジング61内に、回転シャフト11に固定した第1ロータ62および第2ロータ63を収容している。第1ロータ62は、図19および図20(A)に示すように、全周にわたって半径を等しく形成した円柱状に形成されている。第2ロータ63は、図19および図20(B)に示すように、段差63a,63bを境に半径の異なる小径部63cおよび大径部63dを備えたほぼ円柱状に形成されている。
【0086】
一方、ハウジング51には、樹脂64によってモールドされていて円柱の第1および第2鉄心65,66に第1および第2コイル67,68をそれぞれ巻いた各複数の第1および第2電磁石が周方向の適宜箇所にて埋め込まれている。第1鉄心65および第1コイル67からなる1組の第1電磁石の磁極面は第1ロータ62の外周面に対向している。第2鉄心66および第2コイル68からなる1組の第2電磁石の磁極面は第2ロータ62の外周面に対向している。
【0087】
このように構成した第3変形例に係る流体反力発生装置60においても、上記実施形態と同様に、電子制御ユニット31によって第1および第2コイル67,68が通電制御される。したがって、この第3変形例に係る流体反力発生装置50を用いた車両の操舵装置においても、磁性粉末を混入させたビンガム流体と第1および第2ロータ62,63との摩擦により、上記実施形態と同様な反力が操舵ハンドル10の回動操作に対して付与される。また、この第3変形例においては、ビンガム流体と摩擦作用するロータとして第1および第2ロータ62,63を設けたので、より大きな反力を得ることができる。また、第2ロータ63の段差63a,63bの作用により、ロータ52の回転に伴ってビンガム流体が撹拌され、磁性粉末の沈殿を避けることができる。したがって、この場合も、操舵ハンドル10の回動に対して、的確な操舵反力が常に維持される。
【0088】
また、この第3変形例においては、前記第2変形例と同様に、第2ロータ63の外周上において、段差63a,63bを境に小径部63cと大径部63dとでハウジング61の内周面との間の通路面積を周方向の一部において異ならせている。そして、この場合も、コイル68への通電により、ビンガム流体内に混入された磁性粉末は第2鉄心66の磁極面に対向した位置に集中する。この場合、第2ロータ63の段差63a,63bが第2鉄心66の磁極面に近傍位置に近づいた状態では、第2ロータ63の段差63a,63bと前記集中した磁性粉末とにより、ビンガム流体に対するオリフィス機能が実現される。したがって、これによれば、前記変形例に係る流体反力発生装置50と同様に、上記実施形態の場合に比べ、さらに大きな操舵反力を得ることができる。
【0089】
このような第3変形例においては、第2ロータ63の外周面に2つの段差63a,63bを設けるようにしたが、さらに多くの段差を設けるようにしてもよい。また、第1ロータ62にも段差を設けるようにしてもよい。また、第1鉄心65および第1コイル67からなる第1電磁石の数に関しても、第2鉄心66および第2コイル68からなる第2電磁石の数に関しても、必要に応じて適当な数だけ設けるようにすればよい。さらに、この第3変形例に係る流体反力発生装置60においても、前記第2変形例の場合と同様に、第1および第2コイル67,68に加えて永久磁石を設けるようにしてもよい。
【0090】
また、前記第3変形例のように複数組のコイル67,68を備えている場合には、上記実施形態における図5のステップS39の処理を図21のステップS70〜S73のように変形することもできる。ステップS70においては左右前輪20a,20bの転舵限界(言いかえれば、操舵ハンドル10の操舵限界)が判定され、ステップS71においては操舵ハンドル10の操舵操作に対する左右前輪20a,20bの転舵遅れが判定される。
【0091】
この転舵限界の判定においては、図4のステップS11にて入力した前輪転舵角ψの絶対値|ψ|が、左右前輪20a,20bの左右への最大転舵角に対応する所定値を越えたとき転舵限界を判定する。また、これに代えて、図4のステップS11にて入力したハンドル操舵角θの絶対値|θ|が、操舵ハンドル10の左右への最大操舵角に対応する所定値を越えたとき転舵限界を判定してもよい。転舵遅れの判定においては、図4のステップS11にて入力した前輪転舵角ψと、図4のステップS12にて計算した目標転舵角ψ*の差ψ−ψ*の絶対値|ψ−ψ*|が所定値を越えたとき、転舵遅れを判定する。
【0092】
そして、転舵限界に達しておらず、かつ転舵遅れも発生していなければ、ステップS70,S71にて共に「No」と判定し、ステップS72にて、ステップS38の処理によって計算された総通電量I10に応じて第1コイル67のみを通電制御する。これにより、この場合には、上記実施形態と同様な流体反力発生装置60による操舵反力が操舵ハンドル10の回動操作に対して付与される。一方、転舵限界に達していたり、転舵遅れが発生している場合には、ステップS70,S71のいずれかにて「Yes」と判定し、ステップS73にて、ステップS38の処理によって計算された総通電量I10に応じて第1および第2コイル67、68の両者を通電制御する。これにより、この場合には、前記よりも大きな操舵反力が、操舵ハンドル10の回動操作に対して付与される。特に、前述したオリフィス効果のために、極めて大きな操舵反力が付与される。
【0093】
その結果、この変形例の制御によれば、操舵ハンドル10の回動によって左右前輪20a,20bを限界まで転舵した場合、流体反力発生装置60によって操舵ハンドル10の回動操作に対する反力が非常に増加制御されるので、従前の車両における操向車輪(左右前輪20a,20b)のエンドあたりが的確にシミュレートされて、操舵フィーリングが良好になる。また、左右前輪20a,20bに転舵遅れが生じた場合にも、流体反力発生装置60によって操舵ハンドル10の回動操作に対する反力が非常に増加制御されるので、従前の車両における操向車輪の転舵遅れが的確にシミュレートされて、操舵フィーリングが良好になる。
【0094】
また、前記説明では、電動モータ12による反力付与に並行して行う第1反力制御ルーチンのステップS39(図5)の処理に代えて、図21のステップS70〜S73からなる制御を行うようにした。しかし、この制御は、電動モータ12に異常が発生したときに実行される第2反制御ルーチンにも適用できる。この場合、図6のステップS54の処理を前記ステップS70〜S73の処理で置換すればよい。
【0095】
次に、第4変形例に係る流体反力発生装置70について説明すると、図22はこの第4変形例に係る流体反力発生装置70を縦断面図により示している。この流体反力発生装置70は、前記第2変形例に係る流体反力発生装置50の一部を変形したもので、磁性粉末を混入させたビンガム流体で満たした円筒状のハウジング71内に、回転シャフト11に固定したロータ72を収容している。ロータ72は、図22および図23に示すように、周方向に沿って徐々に半径を異ならせて、外周面の一部に段差72aを設けている。
【0096】
一方、ハウジング71には、上記第2変形例の場合と同様に、樹脂73によってモールドされていて円柱の第1鉄心74に第1コイル75を巻いた複数の第1電磁石が周方向の適宜箇所にて埋め込まれて、ロータ72の外周面に対向している。この第1電磁石に加えて、ハウジング71の上面部および下面部にも、樹脂76によってモールドされていて円柱の第2鉄心77に第2コイル78を巻いた複数の第2電磁石が周方向の適宜箇所にて埋め込まれて、ロータ72の上面及び下面に対向している。
【0097】
このように構成した第4変形例に係る流体反力発生装置70においても、上記実施形態と同様に、電子制御ユニット31によって第1および第2コイル75,78が通電制御される。したがって、この第4変形例に係る流体反力発生装置70を用いた車両の操舵装置においても、磁性粉末を混入させたビンガム流体とロータ72との摩擦により、上記実施形態と同様な反力が操舵ハンドル10の回動操作に対して付与される。また、ロータ72の段差72aの作用により、ロータ72の回転に伴ってビンガム流体が撹拌され、磁性粉末の沈殿を避けることができる。したがって、この場合も、操舵ハンドル10の回動に対して、的確な操舵反力が常に維持される。
【0098】
また、この第4変形例においては、前記第2および第3変形例と同様に、ロータ72の外周上において、段差72aによりハウジング61の内周面との間の通路面積を周方向の一部において異ならせている。そして、この場合も、第1コイル75への通電により、ビンガム流体内に混入された磁性粉末は第1鉄心74の磁極面に対向した位置に集中する。この場合、ロータ72の段差72aが第1鉄心74の近傍位置に近づいた状態では、ロータ72の段差72aと前記集中した磁性粉末とにより、ビンガム流体に対するオリフィス機能が実現される。したがって、これによっても、大きな操舵反力を得ることができる。
【0099】
このような第4変形例においても、ロータ72の外周面に1つの段差72aのみを設けるようにしたが、複数の段差を設けるようにしてもよい。また、第1鉄心74および第1コイル75からなる第1電磁石の数に関しても、第2鉄心77および第2コイル78からなる第2電磁石の数に関しても、必要に応じて適当な数だけ設けるようにすればよい。さらに、この第4変形例に係る流体反力発生装置70においても、前記第2および第3変形例の場合と同様に、第1および第2コイル75,78に加えて永久磁石を設けるようにしてもよい。
【0100】
また、この第4変形例においても、上記図21のステップS70〜S73の制御を適用して、転舵限界および転舵遅れの制御を的確に行うことができる。ただし、この場合には、第1コイル75への通電による操舵反力が第2コイル78の通電による操舵反力よりも大きいので、転舵限界でなく、かつ転舵遅れのない状態におけるステップS72の通電制御時には、第2コイル78のみを通電制御するようにするとよい。そして、転舵限界であり、または転舵遅れの発生した状態におけるステップS73の通電制御時には、第1および第2コイル75,78の両方を通電制御するようにするとよい。
【0101】
以上、本発明の実施形態およびその各種変形例について説明したが、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形も可能である。
【0102】
例えば、上記実施形態および各種変形例においては、ハンドル操舵速度θv、ハンドル操舵角θおよび車速Vに応じて操舵反力の大きさを制御するようにしたが、これらの一部に代え、またはこれらに加えて、ハンドル操舵加速度、操向車輪の転舵反力、路面摩擦係数(車両環境情報)、ヨーレートなどに応じて操舵反力を制御するようにしてもよい。
【0103】
ハンドル操舵加速速度に応じて操舵反力を制御する場合、上記実施形態における図5〜図7の各反力制御ルーチンのステップS31,S51,S61の処理によって計算したハンドル操舵速度θvを、電子制御ユニット31のプログラム処理によってさらに時間微分して、ハンドル操舵加速度を計算する。そして、ハンドル操舵加速度の絶対値が増加するに従って、電動モータ12による反力および流体反力発生装置14,50,60,70による反力のいずれか一方または両方を増加させるように制御して、操舵ハンドル10の操舵操作を安定させるようにするとよい。
【0104】
また、操向車輪の転舵反力に応じて操舵反力を制御する場合、図1および図3に破線で示すように回転シャフト25に転舵反力(転舵トルク)を検出する転舵反力センサ35を組み付けるようにする。そして、この検出転舵反力が大きくなるに従って、電動モータ12による反力および流体反力発生装置14,50,60,70による反力のいずれか一方または両方を増加させるように制御して、左右前輪20a,20bの転舵状態を操舵ハンドル10の操作に反映させるようにするとよい。
【0105】
また、路面摩擦係数またはヨーレートに応じて操舵反力を制御する場合、図1および図3に破線で示すように操向路面の摩擦係数を検出する路面摩擦係数検出装置またはヨーレートセンサなどの検出装置36を設けて、路面摩擦係数またはヨーレートを検出できるようにする。そして、検出路面摩擦係数が大きくなるに従って、電動モータ12による反力および流体反力発生装置14,50,60,70による反力のいずれか一方または両方を増加させるように制御して、走行路面の状態を操舵ハンドル10の操作に反映させるようにするとよい。また、検出ヨーレートが大きくなるに従って、電動モータ12による反力および流体反力発生装置14,50,60,70による反力のいずれか一方または両方を増加させるように制御して、操舵ハンドル10の操舵操作を安定させるとよい。
【0106】
また、上記実施形態および各種変形例においては、本発明をステアバイワイヤ方式の車両の操舵装置に適用した例について説明した。しかし、本発明は、操舵ハンドル10と操向車輪である左右前輪20a,20bが機械的に連結されている車両の操舵装置にも適用できるものである。これによっても、油圧式、電動モータのみでは困難であった複雑な操舵反力の制御が可能になり、車両の操向安定性と良好な操舵フィーリングが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両の操舵装置の概略図である。
【図2】図1の流体反力発生装置の縦断面図である。
【図3】前記車両の操舵装置の変形例の概略図である。
【図4】図1の電子制御ユニットによって実行される操舵制御プログラムのフローチャートである。
【図5】図4の第1反力制御ルーチンの詳細フローチャートである。
【図6】図4の第2反力制御ルーチンの詳細フローチャートである。
【図7】図4の第3反力制御ルーチンの詳細フローチャートである。
【図8】ハンドル操舵速度に対する流体反力用の第1通電量の変化特性を示すグラフである。
【図9】ハンドル操舵角に対する流体反力用の第2通電量の変化特性を示すグラフである。
【図10】車速に対する流体反力用の第3通電量の変化特性を示すグラフである。
【図11】ハンドル操舵速度に対するモータ反力用の第1通電量の変化特性を示すグラフである。
【図12】ハンドル操舵角に対するモータ反力用の第2通電量の変化特性を示すグラフである。
【図13】車速に対するモータ反力用の第3通電量の変化特性を示すグラフである。
【図14】磁性粉末を混入させたビンガム流体の反力トルクの変化状態を説明するための説明図である。
【図15】(A)はハンドル操舵角に対するモータによる反力特性を示すグラフであり、(B)はハンドル操舵速度に対するビンガム流体による反力特性を示すグラフであり、(C)は前記モータおよびビンガム流体による合成反力特性を示すグラフである。
【図16】図2の流体反力発生装置の第1変形例に係る流体反力発生装置の縦断面図である。
【図17】図2の流体反力発生装置の第2変形例に係る流体反力発生装置の縦断面図である。
【図18】図17のA−A線に沿って見たロータの横断面図である。
【図19】図2の流体反力発生装置の第3変形例に係る流体反力発生装置の縦断面図である。
【図20】(A)は図19のA−A線に沿って見た第1ロータの横断面図であり、(B)は図19のB−B線に沿って見た第2ロータの横断面図である。
【図21】前記第3変形例に係る流体反力発生装置に適用され、上記実施形態の第1および第2反力制御ルーチンの一部を変形したフローチャートである。
【図22】図2の流体反力発生装置の第4変形例に係る流体反力発生装置の縦断面図である。
【図23】図22のA−A線に沿って見たロータの横断面図である。
【符号の説明】
10…操舵ハンドル、11…回転シャフト、12…電動モータ、13…減速機、14…流体反力発生装置、20a,20b…前輪(操向車輪)、27…電動モータ、30…電気制御装置、31…電子制御ユニット、32…操舵角センサ、33…転舵角センサ、34…車速センサ、41…ハウジング、42…ロータ、42a…フィン、43…鉄心、44…コイル、46…永久磁石、50,60,70…流体反力発生装置、51,61,71…ハウジング、52,62,63,72…ロータ、52a…溝、63a,63b,72a…段差、54,65,66,74,77…鉄心、55,67,68,75,78…コイル。

Claims (16)

  1. 操舵ハンドルの回動に応じて操向車輪を転舵する車両の操舵装置において、
    操舵ハンドルに回転シャフトを介して連結されて同操舵ハンドルと一体的に回転するロータと、
    前記ロータを収容するとともに、前記ロータの停止状態から回転状態への変化時に大きく非線形に変化する摩擦反力を前記ロータに付与する非ニュートン流体を満たしたハウジングとを備えたことを特徴とする車両の操舵装置。
  2. 前記請求項1に記載した車両の操舵装置において、
    前記非ニュートン流体としてビンガム流体を採用した車両の操舵装置。
  3. 前記請求項1または2に記載した車両の操舵装置において、
    前記非ニュートン流体に磁性粉末を含ませて磁気粘性をもたせ、さらに、
    磁力線を発生して前記非ニュートン流体内に磁場を形成する磁力線発生手段を設けたことを特徴とする車両の操舵装置。
  4. 前記請求項3に記載した車両の操舵装置において、
    前記磁力線発生手段を永久磁石で構成した車両の操舵装置。
  5. 前記請求項3に記載した車両の操舵装置において、
    前記磁力線発生手段を電磁石で構成した車両の操舵装置。
  6. 前記請求項3ないし5のうちのいずれか一つに記載した車両の操舵装置において、
    前記ロータと一体回転して前記非ニュートン流体を撹拌する撹拌手段を設けたことを特徴とする車両の操舵装置。
  7. 前記請求項3ないし6のうちのいずれか一つに記載した車両の操舵装置において、
    前記ハウジングの内面と対向する前記ロータの外面の少なくとも一部に段差を設けたことを特徴とする車両の操舵装置。
  8. 前記請求項5に記載した車両の操舵装置において、さらに
    前記電磁石による磁場の形成態様を変更制御する磁場態様制御手段を設けたことを特徴とする車両の操舵装置。
  9. 前記請求項8に記載した車両の操舵装置において、
    前記磁場態様制御手段を、前記電磁石に対する通電態様を制御する通電態様制御手段で構成した車両の操舵装置。
  10. 前記請求項8または9に記載した車両の操舵装置において、さらに、
    操向車輪の転舵の限界を検出して、同転舵の限界の検出時に前記磁場態様制御手段を制御して前記電磁石による磁場を強める転舵限界制御手段とを設けたことを特徴とする車両の操舵装置。
  11. 前記請求項8ないし10のうちのいずれか一つに記載した車両の操舵装置において、さらに、
    操向車輪の転舵の遅れを検出して、同転舵の遅れの検出時に前記磁場態様制御手段を制御して前記電磁石による磁場を強める転舵遅れ制御手段とを設けたことを特徴とする車両の操舵装置。
  12. 前記請求項1ないし11のうちのいずれか一つに記載した車両の操舵装置において、さらに、
    操舵ハンドルに前記回転シャフトを介して連結されて同操舵ハンドルの回動に対して反力を付与する電動モータを備えたことを特徴とする車両の操舵装置。
  13. 操舵ハンドルの回動に応じて操向車輪を転舵する車両の操舵装置において、
    操舵ハンドルに回転シャフトを介して連結されて同操舵ハンドルと一体的に回転するロータと、
    前記ロータを収容するとともに、磁気粘性をもたせるために磁性粉末を含ませた流体を満たしたハウジングと、
    通電により磁力線を発生して前記流体内に磁場を形成する電磁石と、
    操舵ハンドルに前記回転シャフトを介して連結されて同操舵ハンドルの回動に対して反力を付与する電動モータと、
    前記電磁石と前記電動モータへの通電量の比率を操舵ハンドルの回動状態に応じて制御する通電制御手段と
    を備えたことを特徴とする車両の操舵装置。
  14. 操舵ハンドルの回動に応じて操向車輪を転舵する車両の操舵装置において、
    操舵ハンドルに回転シャフトを介して連結されて同操舵ハンドルと一体的に回転するロータと、
    前記ロータを収容するとともに、前記ロータの停止状態から回転状態への変化時に大きく非線形に変化する摩擦反力を前記ロータに付与する非ニュートン流体であって、磁気粘性をもたせるために磁性粉末を含ませた非ニュートン流体を満たしたハウジングと、
    磁力線を発生して前記非ニュートン流体内に磁場を形成する永久磁石と、
    通電により磁力線を発生して前記非ニュートン流体内に磁場を形成する電磁石とを備えたことを特徴とする車両の操舵装置。
  15. 前記請求項14に記載した車両の操舵装置において、
    前記非ニュートン流体としてビンガム流体を採用した車両の操舵装置。
  16. 前記請求項14または15に記載した車両の操舵装置において、
    前記永久磁石による磁力線を打ち消す方向に前記電磁石を通電する通電制御手段を設けたことを特徴とする車両の操舵装置。
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