JP2004175037A - インクジェットヘッド及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】圧電基板4に刻設された溝に形成されたインク室40の両側を画成する隔壁の上面とカバー部材5とを貼り合わせることにより、インクを吐出するためのエネルギーを発生させるように形成された第一のインク室40Aと、カバー部材5と隔壁の上面との間に隙間を形成することにより、第一のインク室40Aのそれぞれに連通するように形成された第二のインク室40Nと、を設け、さらに、第二のインク室40Nの両側を画成する隔壁41の片側面が研削されて駆動電極が存在しない研削面42の隔壁高さ方向の寸法を、第一のインク室40A方向に向かって連続的に減少させている。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェットプリンタのキャリッジに搭載されるインクジェットヘッド及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のインクジェットヘッドの構造について、図19及び図20を参照しつつ説明する。
まず、第一の従来技術として、図19に示すような、溝加工を行うダイシングブレードの円弧形状(R形状)を利用することによりインク室内の電極を、アクチュエーター基板の表面に引き出すようにしたものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
図19は、インク室の断面を表すインクジェットヘッドの横断面図であり、このインクジェットヘッド200は、インク室を隔てる隔壁が形成されているアクチュエーター部材211と、共通インク室214が形成されているカバー部材213を接着剤で貼り合わせてなり、インク吐出方向側の端面にノズルプレート207が接着されている。
【0004】
インクジェットヘッド200は、紙面右から、インクを吐出するエネルギーを発生させるインク室215、インク室215内の電極216を外部に引き出すための円弧状部分212、アクチュエーター部材表面に引き出され外部駆動用IC210と接続するための接続部分202からなり、それぞれ電極が形成されている。
【0005】
その接続部分202に対して、例えば、外部駆動用IC210と導通しているフレキシブル基板204を、異方性導電膜を介して電気的に接続することで、外部駆動用IC210で制御された電位はフレキシブル基板204、外部駆動用IC210と接続するための部分202、円弧状部分212、インクを吐出するエネルギーを発生させるインク室215の順に伝わり、インクを吐出するエネルギーを発生させるインク室215を隔てる隔壁間に電位差を与えることにより、インクを吐出するためのエネルギーが発生する。この構成では、インク室はダイシングマシンを用いて作製することが一般的で、円弧状部分212はダイシングブレードの円弧形状を転写した形となっている。
【0006】
ダイシングブレードは一般に外径50〜80mmのものが殆どであり、この円弧状部分の長さは、インク室の深さを200〜300μmとすると、深さによって多少差はあるものの、インク室の概ね4〜6mm程度を要し、さらに、外部駆動用IC210と接続するための部分202は、少なくとも約1〜2mm程度は必要である。よって、インク室の電極を引き出し外部駆動用IC210と電気的に接続するために、5〜8mm程度の長さで電極を引き延ばしている。
【0007】
一方、インクを吐出するためのエネルギーを発生させるインク室215は、概ね1〜2mm程度でよい。即ち、第一の従来技術では、インク室内の電極を外部に引き出すために、全長は6〜10mm程度が必要とされ、その内、実質的にインクを吐出させるために必要なエリアは1〜2mmにすぎない。
【0008】
このようなインクジェットヘッドの構成では、インク室を隔てる隔壁側面に電極を形成しその間に電位差を印加することで、インクを吐出するエネルギーを発生するが、インクを吐出するエネルギーを発生させるインク室215以外の円弧状部分212においても隔壁を介して電極は設けられているために、その部分において不要な静電容量を持つ。
【0009】
この不要な静電容量により、静電容量が大きくなりアクチュエーター駆動に際して、印加駆動波形が鈍ることで高速駆動による高速印字が困難になるという問題があった。この印加駆動波形の鈍りは、印加電圧を上昇させることで改善できるが、印加電圧を上げることでアクチュエーターの駆動による発熱量が増大してアクチュエーターの温度が上昇することによりインク粘度が変化して、安定で高精度な印字が行えなくなるという問題、高い電圧を印加できる駆動用ICはコスト高になるという問題、さらには低消費電力化が困難でなるという問題があった。今後、更にインクジェットヘッドの高密度化により、ノズルの狭ピッチ化が進んでくると静電容量は更に大きくなり、上記の問題は一層深刻になる。
【0010】
さらに、この構造は、インクの吐出に寄与する部分はインクの吐出エネルギーを発生させるインク室部分215だけであるにもかかわらず、電極の引き出しのためにヘッド後端を延長しているため、全長が長くなり、材料使用量が多く、材料コストが高くなるという問題があった。
【0011】
また、全長が大きいほど、一括してプロセス処理可能な大面積基板1枚当たりの取れ数が少なくなるために、その分ヘッドチップ当たりのプロセスコストが増大する。結果として、全長が大きくなることにより、インクジェットヘッド1チップ当たりのコストが高くなり、それ以上のコスト低減を行うことは困難であった。
【0012】
上記のような問題を解決するために、本出願人らは、材料コストを抑え、静電容量も小さく、安価なインクジェットヘッドを製造するために、次のような構造(第二の従来技術)を考案し、他の特許出願を行った。図20は、本出願人らが出願しているインクジェットヘッドの構成を示す横断面図である(例えば、特許文献3参照)。
【0013】
この図20に示す第二の従来技術における前記第一の従来技術との大きな違いは、インクジェットヘッド後端部の溝内に外部接続用電極を充填することにより、インク室の円弧形状に依存しないで、インク室の電極を外部に引き出せるようにしたことである。
【0014】
第一の従来技術と同様に、インク室とインク室を隔てる隔壁を有するアクチュエーター部材211と、共通インク室214を有するカバー部材213を貼り合わせてインクジェットヘッドは構成されており、ヘッド後端部(紙面左端)のインク室内に導電性樹脂205が充填されている。
【0015】
ヘッド後端面には、それぞれのインク室内に充填された導電性樹脂205が露出しており、導電性樹脂205に対して略等ピッチに配線パターンが形成されたフレキシブル基板209を異方性導電膜を介して当接することにより、電気的にコンタクトさせる。
【0016】
このようなインクジェットヘッド構造では、インクジェットヘッドの全長はインクの吐出に寄与するインク室部分1〜2mmに加えて、外部接続用電極を配置しインク流路を確保するために1〜2mm引き延ばすだけで十分である。よって、アクチュエーター部材の材料コストを削減することができる。
【0017】
また、静電容量の低減により、駆動周波数を高くすることができるため、高速印字が可能となり、駆動電圧の低減が行えるため駆動用ICの低耐電圧化が行えることから駆動用ICコストと駆動消費電力の低減化が可能となる。
【0018】
【特許文献1】
特開平4−259563号公報(段落「0018」,図4)
【特許文献2】
特開2002−178518号公報(段落「0005」,図7)
【特許文献3】
特開2002−210954号公報(段落「0035」,「004
9」,図6)
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
まず、第一の従来技術では、前述したように、インク室の円弧形状に頼って電極引き出しを行うために、不要な静電容量が増加し、静電容量が大きくなりアクチュエーター駆動に際して、印加駆動波形が鈍ることで高速駆動による高速印字が困難になるという問題があった。
【0020】
この印加駆動波形の鈍りは、印加電圧を上昇させることで改善できるが、印加電圧を上げることでアクチュエーターの誘電損失による発熱量が増大してアクチュエーターの温度が上昇することによりインク粘度が変化して、安定で高精度な印字が行えないという問題と高い電圧を印加できる駆動用ICはコスト高になるという問題と低消費電力化が困難であるという問題があった。
【0021】
今後、更にインクジェットヘッドの高密度化により、ノズルの狭ピッチ化が進んでくると静電容量は更に大きくなり、上記の問題は一層深刻になる。
【0022】
さらに、本来、インクの吐出に寄与する部分は、インクの吐出エネルギーを発生するインク室部分だけであるにもかかわらず、電極の引き出しのためにヘッド後端を延ばしている構造であるため全長が長くなり、材料使用量が多く、材料コストが高くつくという問題があった。
【0023】
さらに、全長が大きいほど、一括してプロセス処理可能な大面積基板1枚当たりの取れ数が少なくなるために、その分プロセスコストが増大する。結果として、全長が大きいことは、インクジェットヘッド1チップ当たりのコストを高くする大きな要因となるため、インクジェットヘッド自体を低コスト化することは難しかった。
【0024】
そこで、本出願人らは、インク室の円弧形状に頼らず、インク室内に導電性物質を充填してその充填物質を介して電極を引き出すことを考案した。この思想により、第一の従来技術では、全長が最低6mmは必要であったものが、第2の従来技術では約2〜3mmにまで短縮することが可能となり、インクジェットヘッドの低コスト化と、不要な静電容量の低減による高速印字化が可能となった。
【0025】
しかしながら、第2の従来技術は、圧電体から構成されるインク室を隔てる隔壁の間に液状の導電性樹脂を流し込んだ後に硬化させて固形化することにより、隔壁側面にある電極と導通する外部接続用電極を形成する。この外部接続用電極は、2つの隔壁に挟まれた部分に形成しており、長期使用に伴い、圧電体である隔壁と導電性樹脂からなる外部接続用電極の間に亀裂・ワレが入り、最悪の場合は隔壁の側面に設けられている電極と外部接続用電極が断線するとうい不具合が生じる虞が大きかった。
【0026】
この原因としては、第一に、2つの隔壁の間に充填された液状の導電樹脂が硬化の過程で硬化収縮して、隔壁と導電性樹脂の間で常に引っ張り応力が残留していることがある。第二に、隔壁材である圧電体と導電性樹脂の線膨張係数は、両者の材料を最適に選定したとしても、2〜3倍程度は異なる。ゆえに、インク吐出駆動の際に生じる熱により、長期使用に伴って繰り返し応力が発生して疲労し、最悪の場合は疲労破壊してしまうことが懸念される。
【0027】
本発明は、このような実情に鑑みてなされ、その第一の目的は、不要な静電容量を抑えて、高速印字が可能でコンパクトなインクジェットヘッド及びその製造方法を提供することであり、第二の目的は、長期使用においても高い電気的接続信頼性を維持することができるインクジェットヘッド及びその製造方法を提供することである。
【0028】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。
【0029】
(1)インク室の両側を画成する隔壁の両側面に互いに絶縁された駆動電極を付設し、該隔壁間に電圧を印加することにより、前記インク室からインクを吐出させるエネルギーを発生させるように構成し、かつ、前記隔壁の片側面後部には、前記駆動電極が存在しない部分を設けたことを特徴とする
このように、インク室を区画する隔壁の両側面に駆動電極を設け、その間に電圧を印加することにより、インクを吐出するためのエネルギーを発生するインクジェットヘッドでは、隔壁を介して対向している駆動電極間に静電容量が存在する。
【0030】
インクジェットヘッドは、インクを吐出するエネルギーを発生させる部分と、駆動電極を外部回路に引き出し、さらにインクをインク室駆動部に導入する部分からなり、このインクを吐出するエネルギーを発生する部分以外において存在する不要な静電容量は、インクジェットヘッドの駆動時に、発熱と高速駆動波形の鈍りを生じさせるため、高速印字の妨げとなる。
【0031】
この構成においては、非駆動部分となる隔壁の片側面後部に駆動電極を設けない部分を有している。このことにより、非駆動部分の隔壁の一側面にある電極で駆動電極を外部接続回路に引き出す機能を維持したまま、他側面には駆動電極を設けない部分を有することにより、隔壁を介して対向する電極面積が少なくなり、不要な静電容量を低減させることができ、これにより、発熱を抑え、高速駆動印字が可能となる。
【0032】
(2)前記隔壁の側面に設けられている駆動電極の内、前記インク室を介して対向している駆動電極は互いに同電位に設定され、かつ、前記隔壁の一部に外部の駆動回路と導通される外部接続用電極が埋設され、該外部接続用電極は、隣接するインク室にそれぞれ出現面を有し、さらに、その外部接続用電極の一方の出現面上には前記駆動電極が形成され、かつ、他方の出現面は、前記駆動電極が存在しない部分にあることを特徴とする。
【0033】
この構成においては、隔壁の一部に外部接続用電極が埋設されており、左右のインク室に出現する外部接続用電極の出現面の一方に駆動電極と導通している電極と接続し、他方の出現面には電極を設けない。
【0034】
よって、インク室を介して対向している駆動電極は、隔壁側面を含むインク室内壁に沿って外部接続用電極の出現面に導通され、さらに外部接続用電極中を導通して、外部駆動回路に接続される。即ち、インク室内で同電位の駆動電極は、隣接する一方の隔壁中の外部接続用電極にそれぞれ引き出すことができ、それぞれのインク室内の電極の電位を個々に制御することが可能となる。
【0035】
隔壁中に外部接続用電極を埋設することにより、電極の引き出し部分を小さくすることが可能となるため、全長を短くすることができ、かつ、不要な静電容量が少なくなるため、発熱量が少なくなり、高速印字が可能となる。
【0036】
さらに、一般に外部接続用電極を埋設する構造では、外部接続用電極材料と隔壁材料の熱膨張係数の違いにより、クラックやワレが生じる虞があるが、この構成のように、隔壁中に外部接続用電極を埋設し、インク室により、それぞれの外部接続用電極を分離している場合には、熱膨張係数の違いによる応力は、その殆どが開放されるため、クラックやワレなどの不具合が生じることなく長期使用にも耐える高い信頼性を確保することができる。
【0037】
(3)前記外部接続用電極は、ノズル接続面とは反対側の後端部に配設され、かつ、その後端面に露出していることを特徴とする。
【0038】
この構成においては、外部接続用電極はノズル接続面の反対面であるインクジェットヘッド後端面に露出しており、後端面に出現している外部接続用電極に対して、外部駆動用回路と導通している配線パターンを位置合わせして接続することができる。
【0039】
即ち、外部接続用電極はある一定の体積を有したものであり、その外部接続用電極を分断した際に、切断面に出現する外部接続用電極面を接続面として用いることができるため、インク室内の駆動電極をインク室方向に延長することなく、外部接続用電極部分で屈曲させて引き出すことが可能となる。
【0040】
よって、電極を引き出す部分の長さが短くて済むため、不要な静電容量が少なくなり、材料コストも少なくなり、大面積基板を用いた一括処理時の取れ数を多くすることが可能となる。そのため、コンパクト化が可能となり、1ヘッド当たりの製造コストを低減することもでき、かつ、高速印字が可能となる。
【0041】
さらに、ノズル面と平行なインクジェットヘッド後端面を用いて外部駆動回路と導通している配線パターンを接続することができるため、インクジェットヘッドを組み込む装置の構成の自由度が高くなり、電機接続の信頼性も向上する。
【0042】
(4)前記後端部のインク室底部分には、駆動電極が存在しないことを特徴とする。
【0043】
この構成においては、インク室の底部分に電極を設けていないことにより、まず、不要な静電容量を低減することができる。さらに前記(3)項のように、インクジェット後端面に出現した外部接続用電極面に対して配線パターンを接続する場合に、本構成を採用しなければ、隔壁中に埋設した外接続用電極とその外接続用電極と導通していない側の隣接するインク室内の底部にある電極の端子間距離は配線パターン幅に比べて狭くなるため、配線パターンの位置合わせ精度が低下すると、配線パターンを介して両者が短絡してしまう虞が生じる。
【0044】
そこで、本発明では、インク室底部に電極を設けないことにより、配線パターンのアライメントに多少ずれが生じても短絡する虞を少なくし、電機接続の信頼性を向上させるようにしている。
【0045】
(5)前記後端部のインク室内には、非導電性樹脂が充填されていることを特徴とする。
【0046】
この構成においては、後端部の隔壁中に外部接続用電極を埋設したインクジェットヘッドであって、外部接続用電極埋設部分の近傍のインク室内に非導電性樹脂を充填している。このインクジェットヘッドは、外部接続用電極に、配線パターンを機械的に押し当てて接着したり、ワイヤーボンディングなどのように機械的なツールで押し当てて接合を行うため、外部接続用電極は、機械的強度が高いことが望ましい。
【0047】
さらに、剛性が低いと電機接続後の長期使用の際に、接続部で断線が生じる可能性がある。本発明の構成を採用しない場合には、隔壁に埋設された外部接続用電極はその左右は空間であるインク室で構成されているため、十分な強度を確保するには、隔壁と外部接続用電極の強度を上げなければならない。
【0048】
しかし、この構成のように、インクジェットヘッドの後端部のインク室内に非導電性樹脂を充填することにより、インクジェットヘッドの外部接続用電極の剛性を強化することが可能となる。よって、隔壁及び外部接続用電極の機械的な強度を向上させることができる。なお、非導電性樹脂は硬化後の熱膨張係数を隔壁材の熱膨張係数と同等にしておくことが望ましい。
【0049】
また、インクジェットヘッドの後端面に出現した外部接続用電極に対して、外部接続用電極ピッチと略等ピッチに配線が形成されたフレキシブル基板を異方性導電膜等を介して接続する場合、外部接続用電極の出現面と非導電性樹脂の露出面を面一状にしておく(後端部から見て後端面内に凹凸を無くす)ことで、外部接続用電極の出現面だけでなく非導電性樹脂の露出面を利用して、フレキシブル基板と外部接続用電極を接続するための異方性導電膜等による機械的な保持面積を増加させることができる。
【0050】
よって、この構成により、インクジェットヘッドの電機接続を担う後端部において、外部接続用電極の機械的な強度を確保すると共に、外部駆動回路と導通している配線パターンを接続するための接着面積を増加させた、電機接続の信頼性と耐久性を向上させることができる。
【0051】
(6)前記非導電性樹脂は、前記インク室内の前記外部接続用電極の出現面を閉塞していることを特徴とする。
【0052】
この構成では、インク室内にある外部接続用電極の出現面は、非導電性樹脂により被装されて、インク室内側面に露出していない。隔壁の両面に出現する外部接続用電極面の内、一方の面には隔壁側面に形成した駆動電極と導通している電極が形成されて、駆動電極と外部の駆動用回路は外部接続用電極を介して導通されており、隔壁上の駆動電極と導通する電極は、外部接続用電極面上に真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ処理法などを用いて形成されている。
【0053】
この構成を用いない場合、外部接続用電極と隔壁上の駆動電極と導通する電極の接合部分は、インク室内に露出したままとなり、経時劣化により、外部接続用電極と隔壁上の駆動電極と導通する電極の接合部分が、剥離し、断線する虞がある。本発明の第一の効果は、この電気的接合部分を樹脂によりモールドすることにより、機械的な強度を高め、経時劣化による剥離、断線を抑えることが可能になることである。
【0054】
さらに、本発明の構成を用いることにより、前述した電気的接合部分と電機接続に寄与しないもう一方の外部接続用電極面は、非導電性樹脂によりモールドされて、インクが充填される実効的なインク室内に露出しなくなる。よって、油性インクを吐出させる場合、電気的接合部分にインクが接触して時間経過と共に腐食を起こす虞をなくすことができる。
【0055】
また、水性インクを吐出させる場合、インク室内に露出している全ての電極は、パラキシレン膜などの絶縁膜により確実にカバーされて、水性インクが直接コンタクトしないようにする必要がある。
【0056】
しかしながら、隔壁材料上に成膜される電極と外部接続用電極露出面上に成膜される電極の面性状は異なるため、本発明の構成を採用しない場合には両者を確実にカバーリッジできる条件で絶縁膜を形成しなければない。しかし、これは技術的なハードルが高く、結果としてプロセスコストを増大させる。
【0057】
よって、本発明の第二の効果は、電気接合部分の腐食の虞がなく、また電極を保護する保護膜(水性インク使用時の絶縁膜も含む)の耐久性が高く、長期使用においても高い信頼性を得られることである。
【0058】
(7)前記非導電性樹脂は、前記インク室内においてインク吐出方向に向けて徐々に高さが減少するなだらかな傾斜面状に形成されることを特徴とする。
【0059】
この構成では、インクジェットヘッドの後端部に充填された非導電性樹脂は、インク吐出方向に向かってなだらかに高さが減少している。
【0060】
前記(5)項に記載のように、インクジェット後端面の外部接続用電極露出面にフレキシブル基板を接合する構成において、後端部のインク室内に非導電性樹脂が充填されていないと、隔壁とフレキシブル基板の間に直角の部分が形成される。このような部分があると、インク充填時にエアーのかみ込み、チャンネル毎の吐出力に差を生じさせる一因となる。
【0061】
そこで、本発明はインク室内に非導電性樹脂を充填すると共に、インク吐出方向に向けてなだらかに高さが減少する形状にすることにより、隔壁とフレキシブル基板の間の直角部分をなくしている。よって、本発明により、インク室内でのエアーのかみ込みがなくなり、インク吐出の安定性が向上する。
【0062】
(8)前記インク室は、厚み方向に分極処理されて複数の溝が刻設された圧電基板に、カバー部材を貼り合わせることにより、前記溝内に形成され、かつ、
前記インク室の両側を画成する隔壁の上面と前記カバー部材とを貼り合わせることにより、インクを吐出するためのエネルギーを発生させるように形成された第一のインク室と、前記カバー部材と前記隔壁の上面との間に形成された隙間により、前記第一のインク室のそれぞれに連通するように形成された第二のインク室と、を前記インク室内に設け、さらに、
前記第二のインク室の両側を画成する隔壁の片側面が研削されることにより形成された研削面の前記隔壁高さ方向の寸法を、前記第一のインク室方向に向かって連続的に減少させていることを特徴とする。
【0063】
この構成では、厚み方向に分極した圧電体に溝と溝を隔てる隔壁を複数形成すると共に、隔壁上面にカバー部材を接着されたインク吐出に寄与する第一のインク室と、カバー部材と隔壁上面との間に隙間を有する第二のインク室を有するインクジェットにおいて、インク吐出に寄与しない第二のインク室の片側の側面を研削して電極を除去する。さらに、その研削面の隔壁高さ方向の長さが、第一のインク室の方向に向かって連続的に減少している。
【0064】
このような構成とすることにより、製造コストが安価となり、かつ、高性能を確保することができる。さらに、隔壁の片面を研削する場合、未研削面と研削面の間で段差が生じ、この段差部はインク充填時にエアー溜まりとなる可能性があるが、本発明では、インクが充填される第二のインク室の後端方向から第一のインク室方向へ研削面の深さが減少しているため、インクの充填時にエアーをかみ込みにくくなり、エアー溜まりが非常に少なくなる。また、インク吐出にあたって、第一のインク室で発生させた圧力波は第二のインク室にも伝搬するが、その際に、第二のインク室の断面形状がなだらかに変化するため、余分な残留振動が発生せず、インク吐出性能が安定化する。
【0065】
(9)前記第二のインク室の両側を画成する隔壁の後端部に前記外部接続用電極を有すると共に、前記研削面内に前記外部接続用電極の隔壁側面の露出面が内包されていることを特徴とする。
【0066】
この構成おいては、インクジェットヘッドの後端部に外部接続用電極を有し、その外部接続用電極はインク室隔壁の左右に露出している。また、隔壁片面が研削されて、電極が除去された研削面を有し、さらにこの研削面内に外部接続用電極の隔壁側面の露出面が内包されている。
【0067】
言い換えれば、隔壁上面からの外部接続用電極の充填高さが前記研削面の隔壁上面からの深さよりも小さくなっている。このような構成にすることにより、隔壁中の外部接続用電極と研削された側の電極は絶縁される。従って、第二のインク室の隔壁の片面を研削することにより、不要な静電容量を減らすと同時に、インク室側面に形成した電極により短絡している外部接続用電極をそれぞれ分離することができる。
【0068】
よって、本発明を用いることにより、全長を短くして製造コストを低減し不要な静電容量を少なくすることができ、かつ、不要な電極を減らすことにより不要な静電容量をさらに減らすことができると共に、不要な電極を減らす工程と同一の動作で外部接続用電極を電気的に分離して駆動制御用の電極とすることができる。よって、高性能で耐久性のあるコンパクトなインクジェットヘッドを技術的に容易に作製することができ、安価に提供することができる。
【0069】
(10)前記第二のインク室における前記カバー部材と前記隔壁上面との間に形成される隙間が、5〜20μmに設定されていることを特徴とする。
【0070】
従来のように、第二のインク室の上面が百〜数百μm空いていると、第一のインク室内で生じた圧力波はインク供給経路とは逆方向に進行していく波と、インクジェットヘッド内の第一のインク室と第二のインク室との界面で反射する波が生じる。
【0071】
この界面で反射し第一のインク室に戻っていく波が、次の吐出のための圧力波と干渉することを防ぐために、従来はこの反射波により生じる残留振動が収まるまで次の吐出を待たなければならず、駆動周波数を低下させて印字速度を抑えざるを得なかった。
【0072】
しかしながら、本発明のように第二のインク室を区画する隔壁の上面とカバー部材との間に5〜20μmの幅を有する空間を設けることにより、第一のインク室で発生した圧力波は、第二のインク室を経由し、第一のインク室より遠いインク供給側まで伝搬するうちに徐々に隣接するインク室にインクが伝搬することにより減衰する。
【0073】
また、そのインク供給上流側で発生する反射波の影響が少なく、さらに第一のインク室と第二のインク室の界面で反射して第一のインク室に戻る圧力波も非常に少なくなる。よって、残留振動が抑えられることにより、高速印字が可能となる。
【0074】
(11)円盤状の研削ブレードの盤面を、前記隔壁の側面に対して平行に配置し、前記隔壁の上面方向から高さ方向に接近させることにより、前記隔壁の側面に形成された前記駆動電極を研削除去することを特徴とする。
【0075】
この製造方法においては、隔壁が形成されているアクチュエーター基板の隔壁上面方向から、円盤状の研削ブレードを隔壁の高さ方向より近接させながら隔壁側面を研削することにより、隔壁側面は研削ブレードの形状を転写した円弧状の研削面を容易に形成することができ、この円弧形状により研削面はなだらかにその高さが変化する形状となる。
【0076】
そして、この工程は、インクジェットヘッドのアクチュエーター部材が複数個搭載された基板に対して、カバー部材を貼り合わせる前に一括して加工することが可能であるため、複数個分のアクチュエーター部材の隔壁の研削加工を一括して行うことができるため、タクトタイムの短縮が容易となり、製造コストの低減化が可能となる。
【0077】
(12)円盤状の研削ブレードの盤面を、前記隔壁の側面に対して平行に配置し、前記隔壁の上面方向から高さ方向に接近させることにより、前記隔壁の側面に形成された前記駆動電極を研削除去し、かつ、前記インク室の底面の電極をも研削除去することを特徴とする。
【0078】
この製造方法においては、隔壁が形成されているアクチュエーター基板の隔壁上面方向から、円盤状の研削ブレードを隔壁の高さ方向より接近させながら隔壁側面を研削することにより、隔壁側面は研削ブレードの形状を転写した円弧状の研削面を形成することができ、この円弧形状により研削面はなだらかにその高さが変化する形状となる。
【0079】
そして、隔壁側面を研削する工程と同一の工程で、インク室底面の電極も研削除去することで、不要な静電容量を低減することができ、さらには、隣接する端子間距離を広くすることができるため、配線パターンのアライメントずれが生じても、短絡する虞がなく、電機接続信頼性の高いインクジェットヘッドを、効率的に製造することができる。
【0080】
(13)インク室となる溝を刻設する工程と、前記溝の側面と底面に駆動電極及び引き出し電極を形成する工程と、前記溝の側面に形成された駆動に寄与しない電極を除去する工程と、を備え、
前記各工程は、複数組のインクジェットヘッド構成部材を有して厚み方向に分極処理された圧電基板上で一括して行われることを特徴とする。
【0081】
この製造方法においては、複数個分のインクジェットヘッドのアクチュエーター部材となる大面積のアクチュエーター基板に対して、インク室となる溝を形成し、次にインク室を隔てる隔壁の側面に駆動電極及び引き出し電極を形成した後、引き出し電極の一部を研削等により除去する。
【0082】
これにより、ヘッドチップのアクチュエーター部材を、個々に逐一製造するのではなく、複数個分をバッチ処理で作製することが可能であるため、タクトタイムを短縮させて、コストの低減化が可能となる。
【0083】
(14)インクジェットヘッド後端相当部に充填溝を刻設する工程と、前記充填溝に外部接続用電極材を充填する工程と、前記外部接続用電極材が充填された溝に対して直交方向にインク室となる溝を刻設する工程と、前記インク室となる溝の側面と底面に駆動電極及び引き出し電極を形成する工程と、前記外部接続用電極材の内、前記溝の一側面の露出面上に出現した部分を除去する工程と、を備え、
前記各工程は、複数組のインクジェットヘッド構成部材を有して厚み方向に分極処理された圧電基板上で一括して行われることを特徴とする。
【0084】
この製造方法においては、まず、複数個分のインクジェットヘッドのアクチュエーター部材となる大面積のアクチュエーター基板に対して、インクジェットヘッドの後端部に相当する部分に充填溝を形成した後、その充填溝に外部接続用電極となる部材を充填・固定する。
【0085】
その後、充填溝に対して直交する方向にインク室となる溝を刻設することにより、外部接続用電極をインクジェットヘッド後端相当部の隔壁の一部とし、次に、インク室を隔てる隔壁の側面に駆動電極及び引き出し電極を形成した後、隔壁中にある外部接続用電極の隔壁両面の露出面の一方面上に形成された引き出し電極を研削除去する。
【0086】
これにより、ヘッドチップの後端部に外部接続用電極を有するアクチュエーター部材を、個々に逐一製造するのではなく、複数個分をバッチ処理で作製することが可能となるため、タクトタイムを短縮させて、製造コストの低減化が可能となる。即ち、隔壁内に外部接続用電極を設けることにより、全長を短くすることができ、さらに不要な静電容量を低減できるコンパクトなインクジェットヘッドを、低コストで製造することができる。
【0087】
(15)インクジェットヘッド後端相当部に充填溝を刻設する工程と、前記充填溝に外部接続用電極材を充填する工程と、前記外部接続用電極材を充填した部分近傍を前記基板面から凹ませる工程と、前記充填溝に対して直交方向にインク室となる溝を刻設する工程と、前記溝の側面と底面に駆動電極及び引き出し電極を形成する工程と、前記外部接続用電極材の内、前記溝の一側面の露出面上に出現した部分を除去する工程と、前記外部接続用電極材を充填した部分近傍のインク室内に非導電性樹脂を充填する工程と、を備え、
前記各工程は、複数組のインクジェットヘッド構成部材を有して厚み方向に分極処理された圧電基板上で一括して行われることを特徴とする。
【0088】
この製造方法においては、まず、複数個分のインクジェットヘッドのアクチュエーター部材となる大面積のアクチュエーター基板に対して、インクジェットヘッドの後端部に相当する部分に充填溝を形成した後、その充填溝に外部接続用電極となる部材を充填・固定する。
【0089】
次に、外部接続用電極材充填部の近傍を、機械研削等により基板面から凹ませた後、充填溝に対して直交する方向にインク室となる溝を刻設することにより、外部接続用電極をインクジェットヘッド後端相当部の隔壁の一部とする。次いで、インク室を隔てる隔壁の側面に駆動電極及び引き出し電極を形成した後、隔壁中にある外部接続用電極の隔壁両面の露出面の一方面上に形成された引き出し電極を研削除去した後、外部接続用電極材充填部近傍のインク室内に非導電性樹脂を充填することにより、外部接続用電極の露出面を全て非導電性樹脂で塞ぐようにする。
【0090】
これにより、個々に逐一製造するのではなく、複数個分をバッチ処理で作製することが可能となるため、タクトタイムを短縮させて、インクジェットヘッドを低コストで製造することが可能となる。即ち、隔壁内に外部接続用電極を設けることにより、全長を短くすることができ、さらに不要な静電容量を低減でき、かつ、長期使用においても耐久性が高いコンパクトなインクジェットヘッドを低コストで製造することができる。
【0091】
(16)前記充填溝に外部接続用電極材を充填する工程は、金属粒子を混在させたペースト状物質を充填溝内にディスペンサーを用いて充填溝方向に走査して充填する工程と、充填後に硬化させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0092】
この製造方法は、外部接続用電極材を充填する工程として、金属粒子を混在させたペースト状物質を充填溝内にディスペンサーを用いて充填溝方向に走査して充填した後、硬化させるものである。
【0093】
金属粒子を混在させたペースト状物質は、充填時は液状で硬化後に固形化すると共に導電性を示すもので、充填が容易である上に、硬化と共に充填溝の形状に沿って固着するので接着剤などで固定する必要がない。
【0094】
よって、外部接続用電極を有するインクジェットヘッドのアクチュエーター部材を、個々に逐一製造するのではなく、複数個分をバッチ処理で作製することが非常に容易となり、インクジェットヘッドを低コストで製造することが可能となる。
【0095】
(17)前記外部接続用電極材を充填した部分近傍を基板面から凹ませる工程は、前記充填溝に対して直交方向にインク室となる溝を刻設する工程の前に、研削ブレードを充填溝方向に走査させることにより行うことを特徴とする。
【0096】
この製造方法は、充填溝内に充填された外部接続用電極の上面部分を、インク室となる溝を刻設する前に、充填溝方向に研削ブレードを走査させて研削して、基板表面から凹ませるものである。効果としては、まず第一に、充填の工程において基板上面から盛り上がった不要な外部接続用電極を、インク室を刻設する工程の前に除去しておくことにより、インク室を刻設する工程でのツールの負荷を低減することが可能となる。
【0097】
例えばダイシングブレードを用いる場合には、摩耗量及び目詰まりを低減し、溝深さを高精度に保つことができる。さらに、ツールに対する負荷が低減されると共に、溝が刻設されるアクチュエーター基板に対しても負荷が低減するために、より高速で加工を行っても溝を隔てる隔壁にワレやクラックが生じない。
【0098】
さらに、前記(16)項のように、非導電性樹脂により外部接続用電極の露出面を被装することにより耐久性が向上するインクジェットヘッドにおいて、外部接続用電極があるインクジェットヘッド後端部の隔壁の構成は、隔壁上面側から、非導電性樹脂、外部接続用電極、圧電部材の順に積層されている必要がある。
【0099】
そこで、外部接続用電極の充填部分を基板表面に対して凹ませておくことで、非導電性樹脂をインク室内に充填することにより隔壁側面に露出した外部接続用電極面を塞ぐ工程において、同時に隔壁上面に露出した外部接続用電極面を塞ぐことが可能となる。
【0100】
さらに、インク室を刻設した後に充填溝方向(即ち、インク室直交方向)に研削ブレードを走査させると、インク室を隔てる隔壁を直交方向に研削することになるため、隔壁に機械的ダメージを与える虞があり、加工速度を上げることができず、たとえ十分に加工速度を落としたとしても、突発的に隔壁の倒れ・ワレが生じるため、歩留まりが良くない。
【0101】
しかしながら、インク室を刻設する工程の前に、予め隔壁上面を基板に対して凹ませておくことにより、略平板状の基板に凹型の溝を形成するだけでよいため、十分に加工速度を上げても、アクチュエーター基板に機械的ダメージがなく、その後に刻設される隔壁に倒れ・ワレが生じることはない。
【0102】
従って、本発明を用いることにより、ツールの摩耗量及び目詰まりを低減して溝深さを高精度に保つことができ、さらにはインク室を隔てる隔壁にワレや倒れがなく製造歩留まりがよいインクジェットヘッドを製造することが可能となる。
【0103】
(18)前記溝の側面に形成された駆動に寄与しない電極を除去する工程は、前記インク室の幅よりも狭い幅を有するダイシングブレードを用いた機械研削により行うことを特徴とする。
【0104】
この製造方法は、隔壁側面の駆動に寄与しない電極を除去する工程で、隔壁側面の駆動に寄与しない電極を、ダイシングブレードを備えたダイシングマシンを用いて、隔壁の片側面を機械研削して電極を除去する。その際、使用するダイシングブレードの厚みがインク室幅よりも小さいものを選び、ダイシングブレードの片面を隔壁の片面にだけ当接させながら、隔壁上面から下方向へ研削していく。
【0105】
このような方法により、主に半導体の製造装置として使用され、入手が容易で機械コストも比較的安価な、ダイシングマシンを用い、隔壁の側面の不要な電極を除去することが可能となる。また、インク室となる溝は、ダイシングマシンを用いて刻設する場合は、装置を共用することができるため、結果として製造コストを抑えることができる。
【0106】
また、インク室となる溝を刻設する工程と隔壁の側面を研削する工程を同一の装置で行うことにより、装置特有の機械精度を同一にすることができるため隔壁を研削する工程の加工誤差が小さくなり、歩留まりを向上させることができる。
【0107】
(19)前記溝の側面に形成された駆動に寄与しない電極を除去する工程では、前記ダイシングブレードの盤面を、前記溝の側面に対して平行に配置し、前記溝の上面方向から高さ方向に接近させることにより、前記溝の側面に形成された前記駆動電極を研削除去することを特徴とする。
【0108】
この製造方法においては、隔壁が形成されているアクチュエーター基板の隔壁上面方向から、ダイシングブレードを隔壁の高さ方向より近接させながら隔壁側面を研削することにより、隔壁側面はダイシングブレードの形状を転写した円弧形状の研削面を容易に形成することができ、この円弧形状により研削面はなだらかにその高さが変化する形状となる。
【0109】
さらに、この工程は、インクジェットヘッドのアクチュエーター部が複数個搭載された基板に対して、カバー部材を貼り合わせる前に一括して加工することが可能であるため、複数個分のアクチュエーター部の隔壁の研削加工を一括して行うことができるため、タクトタイムの短縮が容易となり、製造コストの低減化が可能となる。
【0110】
(20)前記溝の側面に形成された駆動に寄与しない電極を除去する工程では、前記ダイシングブレードの盤面を、前記溝の側面に対して平行に配置し、前記溝の上面方向から高さ方向に接近させることにより、前記溝の側面に形成された前記駆動電極を研削除去し、かつ、前記インク室の底面の電極をも研削除去することを特徴とする。
【0111】
この製造方法においては、まず、隔壁が形成されているアクチュエーター基板の隔壁上面方向から、ダイシングブレードを隔壁の高さ方向より近接させながら隔壁側面を研削することにより、隔壁側面はダイシングブレードの形状を転写した円弧形状の研削面を形成することができ、この円弧形状により研削面はなだらかにその高さが変化する形状となる。
【0112】
さらに、隔壁側面を研削する工程と同一の工程で、インク室底面の電極も研削除去することで、前記(19)項の効果に加えて、前記(4)項で説明したように、インク室の底部分に電極を設けないことにより、不要な静電容量を低減することができ、さらには、隣接する端子間距離を広くすることができるため、配線パターンのアライメントずれが生じても、短絡する虞がなく、電機接続信頼性を向上させることができる。
【0113】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態に係るインクジェットヘッド及びその製造方法について図面を参照しつつ説明する。
【0114】
《実施の形態1》
〈インクジェットヘッドの構成〉
図2は、インクジェットヘッドの縦断面を示す。このインクジェットヘッドは、図示のように、ヘッドチップ1のインク吐出側である紙面右端面にはノズルプレート2が接着される一方、左端面には外部駆動用回路と導通している外部配線3が電気的及び機械的に接続されて、微少なインク滴を吐出できるように構成されている。
【0115】
ノズルプレート2には、直径20μm程度の微少なノズル孔20が紙面奥方向に向けて複数配列して形成されている。ノズルプレート2は、例えば厚み70μm程度のポリイミドフィルムを基体として、エキシマレーザを用いて、ノズル孔20を開設することで得られる。
【0116】
外部配線3は、後述するインク室と略等ピッチで配列している配線パターンであり、異方性導電膜を介して、後述するヘッドチップ1中の外部接続用電極にそれぞれアライメントして接続され、図示しない外部の駆動用ICと接続される。この外部配線3の素材としては、例えば銅配線が形成されているフレキシブル基板などを挙げることができる。
【0117】
ヘッドチップ1は、インク室40の両側を画成する隔壁41が形成されるアクチュエーター基板(圧電基板)4とカバー部材5を張り合わせて構成されている。カバー部材5は、圧電基板などのセラミックス材からなり、基準面に対して5〜20μm掘り下げられた狭隙部50と、基準面に対して数百μm掘り下げられた共通インク室51を有している。
【0118】
アクチュエーター基板4は、厚み方向(紙面上下方向)に分極した圧電体からなり、インク室40を画成する隔壁41が紙面奥方向に交互に配列し、隔壁側面には電極7が形成されている。また、ヘッドチップ1の後端面(紙面左端面)には外部接続用電極6が埋設されている。
【0119】
図1は、アクチュエーター基板4のインク室40の構成を示し、図2のヘッドチップ1のアクチュエーター部材だけを矢印A方向から見た斜視図である。インク室40は隔壁41によりそれぞれ区切られており、ヘッド後端面11にある隔壁41の一部は外部接続用電極6が埋設されている。
【0120】
インク室40を形成する溝は、インク吐出方向である矢印B方向に向かって深さが徐々に増す円弧形状となっており、溝の側面及び底面には、電極7が形成されている。ヘッド後端面11側の隔壁41の片面には、研削されて電極が無くなった研削面42が形成されている。
【0121】
この研削面42は、隔壁上面からの研削面深さ、つまり研削面42における隔壁41の高さ方向の寸法が、矢印B方向に向かって徐々に減少するように形成されている。ヘッド後端面11近傍のインク室底面は、その大部分が底部研削面43となり、研削面42と同様に電極が除去されている。外部接続用電極6の研削面42側の露出面60は研削面42内に完全に包含されている。
【0122】
次に、図2及び図3により、このインクジェットヘッドの詳細な構成と駆動方法について説明する。
ヘッドチップ1は、その役割の違いから、大きく2つの部分に大別できる。まず、その一つは、インクを吐出するためのエネルギーを発生させる部分であるアクト部12であり、この部分は図2の紙面上のヘッドチップ右側の部分に相当する。他の一つは、インク吐出のエネルギーを発生せず、アクト部12のインク室内で発生した残留振動を低減し、また、アクト部12のインク室内にある駆動電極を外部に引き出す役目を担うノンアクト部13である。この部分は図2の紙面上のヘッドチップ左側の部分に相当する。アクト部12とノンアクト部13の相違点は、後述するように、隔壁41とカバー部材5が接着されているか否かである。
【0123】
次に、アクト部12におけるインク室の形状とその駆動方法について、図3を用いて説明する。図3(a)は、アクト部12のインク室の横断面の模式図であり、図2のXA−XA断面に相当する。インク室40は、アクチュエーター基板4に形成された溝と、溝の開口部を塞ぐように張り合わせられたカバー部材5により、四方が囲まれて、その断面は略長方形状である。
【0124】
駆動電極70(70a、70b,70c)はインク室40(40ab,40bc)の両側を画成する隔壁41(41ab,41bc)の側面とカバー部材5に対向するインク室底面にわたって被着形成されており、インク室40を介して対向している駆動電極70,70はいずれも同電位となる。アクチュエーター基板4は、インク室深さの略半分の厚みの薄板4aと厚板4bからなり、いずれも厚み方向に分極した圧電体であるが、薄板4aと厚板4bは分極方向が互いに逆向きになるように張り合わされている。
【0125】
ここで、インク室40bからインクを吐出するためのエネルギーを発生する場合を例として説明すると、図3(a)に示すように、厚み方向に分極した圧電体の駆動電極70bに対して逆位相の電位を駆動電極70aおよび駆動電極70cに与えると、隔壁41abは<型に、隔壁41bcは>型に変形し、インク室40bは<>型に拡大される。
【0126】
これにより、インク室40bは負圧となり、共通インク室51側から圧力波が進行してくる。次に、インク室40b内に圧力波が進行してきてその反射波と重ね合わせられ、インク室40b内が正圧となるタイミングで、駆動電極70bと、駆動電極70aおよび駆動電極70cの電位を反転させることにより、隔壁41abは>型に、隔壁41bcは<型に変形し、インク室40bは><型に縮小され、インク室40b内は高い圧力波が形成されて、ノズル孔20(図2参照)からインクが吐出される。
【0127】
ところで、隔壁41が“く ”の字に変形して圧力波を生成するためには、隔壁自体の剛性が必要とされ、かつ、隔壁41の上下が固定されていなければならない。ゆえに、カバー部材5によって隔壁41の上面が固定され、その隔壁間に形成される空間部が、インクを吐出するためのエネルギーを発生させるインク室となり、これを第一のインク室40A(図2参照)と称する。なお、隣接する駆動電極間に電位を印可する場合、隔壁を介して対向している駆動電極間に静電容量が存在し、圧電体の透電損失による隔壁の発熱及び静電容量の充放電動作のため外部駆動用ICは発熱する。
【0128】
次に、ノンアクト部13の役割について、図3(b)により説明する。図3(b)は、ノンアクト部13のインク室の横断面の模式図であり、図2のXB−XB断面に相当する。ノンアクト部13のインク室40においては、隔壁41の上面がカバー部材5と接着されておらず、隔壁41とカバー部材5との間に、5〜20μmの隙間が設けられている。
【0129】
このように、隔壁41の上面がカバー部材5と接着されていないため、第一のインク室40Aの隔壁41と同一の構成(薄板と厚板の分極した圧電体の張り合わせ)であっても剛性が低い。また、第一のインク室40Aの駆動と同様の電位差をかけても、くの字に変形することなく、インクを吐出するためのエネルギーを発生しない。このインク室を第二のインク室40N(図2参照)と称する。
【0130】
この第二のインク室40Nの両側を画成する隔壁41(41ac,41bc)の側面には第一のインク室40A内の駆動電極70bと導通している引き出し電極71bが形成されているが、引き出し電極71bは隔壁41の左右側面で、その面積が異なる。即ち、図3(b)のように隔壁41の左側には引き出し電極71bは全面に形成されているのに対して、隔壁41の右側には研削面42bがあるため、その面積だけ引き出し電極71bの面積が減少している。
【0131】
隔壁41を介して対向している引き出し電極71間にも、静電容量が存在し、その静電容量により隔壁41、及び外部駆動用ICは発熱するが、上述のように、研削面積分だけ対向電極は減少するため、静電容量が減少し、その分の発熱は抑えられる。これにより、高速印字が可能となる。なお、引き出し電極71は、第一のインク室40A内の駆動電極70を後述する外部接続用電極6に導通させるために必要である。
【0132】
さらに、ノンアクト部13は、カバー部材5と隔壁41の上面に5〜20μmの隙間を設けることにより、第一のインク室40Aで発生した残留圧力波を減衰させる役目を担う。これは、第一のインク室40Aで発生した圧力波がインク吐出方向と反対側にも進行する際に、5〜20μmの隙間を設けておくことで、第二のインク室40Nと第一のインク室40Aの境界で生じる水撃作用により第一のインク室40A側に反射するのを最小限に抑えることができるからである。
【0133】
次に、ノンアクト部13の後端部である、ヘッドチップ1の後端面を図3(c)に示す。ヘッドチップ1の後端面11では、隔壁41の一部が外部接続用電極6(6a,6b,6c)により構成されており、かつ、後端面11に外部接続用電極6が露出している。また、カバー部材5には、共通インク室51が形成されており、カバー部材5と隔壁41の上面との間のギャップは数百μmになっている。
【0134】
隔壁41の一側面(紙面左側面)には、引き出し電極71(71a,71b,71c)が形成されており、一部は隔壁内の外部接続用電極6上に形成されている。一方、隔壁41の他側面(紙面右側面)には、引き出し電極はなく研削面42(42a,42b,42c)が形成されている。また、インク室底面は、底部研削面43が形成されており、底部にあった電極の大半が研削除去されている。
【0135】
図3により、電気的接続を整理すると、第一のインク室40Aで対向している駆動電極70(70a,70b,70c)は、インク室底部において短絡して一つに集約されて、駆動電極70から隔壁側面上に伸延された第二のインク室40Nの引き出し電極71に接続されており、さらに、ヘッドチップ後端部においては、引き出し電極71は隔壁中に埋設された外部接続用電極6に接続されている。
【0136】
図3(c)のように、外部接続用電極6のインク室内の露出面の内、一側面(隔壁41の紙面左側面)上には引き出し電極71が形成され、電気的に導通しているが、他側面(隔壁41の紙面右側面)は、研削面42上にあり、外部接続用電極6の露出面60は研削面42に内包されている。
【0137】
また、隔壁上面の外部接続用電極6の露出面も電極が形成されていない。このようにして、例えば、インク室40b内の駆動電極70bは、引き出し電極71bを介して外部接続用電極6bに接続されており、隣接する外部接続用電極6a及び6cとは、互いに絶縁されている。
【0138】
次に、図3(c)の破線にて表しているように、外部接続用電極6と略等ピッチで、フレキシブル基板3上に形成された銅線パターン30を外部接続用電極6にアライメントして、図示しない異方性導電膜を介して接着する。このフレキシブル基板3は、外部駆動用ICと導通している。
【0139】
このような構成により、外部駆動用ICから送られた電位信号は、フレキシブル基板3、外部接続用電極6、引き出し電極71、駆動電極70の順に伝搬し、駆動制御される。
【0140】
インクはヘッド後端面に開口している共通インク室51を塞ぐように接着された図示しないマニフォールドから、共通インク室51、第二のインク室40N、第一のインク室40Aの順に供給されて、外部駆動用ICから送られた電位信号に応じて、該当するインク室からノズル孔20を通じてインク滴が吐出される。
【0141】
〈インクジェットヘッドの製造方法〉
次に、実施の形態1で説明したインクジェットヘッドの製造方法について説明する。
まず、複数個のアクチュエーター部材となるアクチュエーター基板4の製造方法について説明する。例えば、図4に示すように、アクチュエーター基板4は、0.5〜1mm程度の厚みを有する基材(厚板)4bと、後の工程で形成するインク室の略半分程度の厚みを有する薄板4aをエポキシ系接着剤で貼り合わせたものであり、基材4bと薄板4aは、厚み方向に分極した圧電体であるが、その分極方向がそれぞれ反対になっている。また、基材4bは紙面上方向に分極した圧電体基板であり、一方薄板4aは紙面下方向に分極した圧電体基板である。
【0142】
(A−1の工程)
本工程では、外部接続用電極6を充填する充填溝をアクチュエーター基板4に形成する。アクチュエーター基板4は、68mm角の正方形の基板であり、この基板の薄板4a側に、幅1mm、深さ0.1mmの突っ切り溝である充填溝61を7.2mmピッチで形成する(68mm角基板には、計9本の充填溝61が形成される)。
【0143】
図4は、アクチュエーター基板4の一部の断面図であり、ダイシングブレード100を高速回転させながら、紙面奥方向に走査させた後、紙面左右方向にオフセットして同様の動作を繰り返すことにより、紙面奥方向に続いている充填溝61を7.2mmピッチで形成することができる。
【0144】
(A−2の工程)
本工程では、充填溝61に、外部接続用電極6となる材料(外部接続用電極材)を充填する。図5は、図4と同様にアクチュエーター基板4の一部の断面図であり、紙面奥方向に続いている充填溝61に、ディスペンサー101を用いて金属粒子を混在させたペースト63(例えば銀ペースト)を充填する。
【0145】
充填は、ディスペンサー101を充填溝61上に配置し、ディスペンサー101に圧力を印可してニードルからペーストを放出させながら、充填溝に沿って走査することにより行う(ディスペンサーは紙面奥方向に走査する)。一つの充填溝61へのペースト63の充填が完了した後、紙面左右方向にオフセットさせて同様の動作を繰り返すことにより、アクチュエーター基板4上に形成した全ての充填溝61の中にペースト63を充填する。
【0146】
次に、充填したペースト63を硬化させる。本実施の形態では、外部接続用電極材として銀ペーストを用い、この銀ペーストは100℃雰囲気中で2時間放置することにより、固形化し、電気伝導性を有するものである。液状のペースト63は硬化されて、外部接続用電極材64になる。
【0147】
(A−3の工程)
本工程では、アクチュエーター基板4に、インク室となる溝を形成する。図6は、図5と同様にアクチュエーター基板4の一部の断面図であり、紙面奥方向に充填溝61と充填溝61内に充填された外部接続用電極材64が続いている。このアクチュエーター基板4の薄板4b側に、充填溝61に対して直交する方向に高速に回転している薄い厚みのダイシングブレード103を走査させてアクチュエーター基板4の左右方向に連なる溝を形成する。
【0148】
1回走査させることにより1本の溝が形成されるが、紙面奥方向にインク室配置密度と略等ピッチでオフセットをかけて同様の動作を複数回繰り返すことにより、アクチュエーター基板4に複数のインク室となる溝を形成することができる。なお、インク室となる溝は、深さが一定の突っ切り溝でもよいが、本実施の形態では、充填溝61の直交方向(紙面右方向)にダイシングブレード103を走査させながら、図6に示すようにダイシングブレード103の高さを上下させることにより、外部接続用電極材64近傍の溝深さが他の部分より浅くなっている溝を形成した。
【0149】
インク室となる溝の形状(深さ及び幅)の最適値は、アクチュエーター基板4の特性、インク室の配置密度、アクティブ長等により異なるが、本実施の形態では、インク室密度300dpiでは幅40μm、最大深さ240μm、インク室密度150dpiでは幅80μm、最大深さ240μmの溝を形成し、外部接続用電極材64近傍の最小深さが共に110μmとなるようにダイシングブレード103の上下動を制御した。紙面奥方向に一文字に連なっていた外部接続用電極材64は、この溝入れ加工により細分化して外部接続用電極6となる。
【0150】
図7は、上述のように加工を行ったアクチュエーター基板4の一部分を示す斜視図であり、図示のように、紙面左右方向に同様の形状が連なり、さらに紙面奥方向にも同様のインク室が複数個配列されているアクチュエーター基板4の一部である。また、最前列のインク室は中央部分を切断した形状で表している。なお、アクチュエーター基板4の薄板と基体の貼り合わせ層は、省略している。
【0151】
アクチュエーター基板4は、紙面左右に連なるインク室40と、インク室40を隔てる隔壁41が交互に配列してなり、隔壁41の一部に外部接続用電極6が埋め込まれている。インク室40は、2つの外部接続用電極6のほぼ中間位置が最も深く(図7の構造の右若しくは左端)、外部接続用電極6の埋設位置に近づくに従って徐々にその深さが減少し、外部接続用電極位置(図7の構図の中央部)で最もその深さが浅くなっている。
【0152】
紙面奥方向に向かって一文字に連なっていた外部接続用電極材64は(A−3の工程)のインク室溝を形成する工程で、外部接続用電極6として隔壁41の一部となり、それぞれ細分化されると共に、個々の外部接続用電極6は電気的に絶縁される。
【0153】
(B−1の工程)
本工程では、駆動電極及び引き出し電極を形成する。電極の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などにより、金属膜をインク室側面に形成する方法が挙げられ、これらの内どれを用いても電極形成は可能である。本実施の形態では、図8に示すように、無電解メッキ法によりインク室40の底部分、インク室40を隔てる隔壁41の側面、隔壁41の上面の全てに、厚み0.5μmの銅膜からなる電極7を形成した。
【0154】
さらに、隔壁41の一部を構成している外部接続用電極6の露出面上にも同様に無電界メッキにより銅膜が形成され、この段階では、個々の外部接続用電極6は、隔壁41の側面及びインク室40の底面に形成された電極7を介して、一旦導通する。なお、アクチュエーター基板4の裏面には、マスキングを行い、無電界メッキ後にマスクを剥離することにより、電極7が付かないようにした。
【0155】
(B−2の工程)
本工程では、外部接続用電極6が埋め込まれている近傍の隔壁の片側の電極7を除去する。本実施の形態では、図9に示すように、ダイシングマシンに備えられた、インク室40の幅よりも厚みが薄いダイシングブレード105を用いて、隔壁側面とダイシングブレード側面が平行になるようにダイシングブレード105を配置し、外部接続用電極6の中央線(図の破線)とダイシングブレード105の中心が一致する位置より、隔壁41の上面側からアクチュエーター基板4の厚み方向に、ダイシングブレード105を接近させることで、ダイシングブレード105の片側面(図ではブレードの裏側)で、隔壁41の片側の側面を上方から下方に向けて研削する。
【0156】
なお、隔壁41の厚みは約10μm程度減少する。隔壁41の片側面(図では隔壁41の手前面)にダイシングブレード105の円弧形状を転写するような形で研削面42を形成しながら、隔壁41の下方向に進んだダイシングブレード105は、外部接続用電極6近傍のインク室41の底面部分に到達し、その一部を研削してインク室底面に形成されていた電極7を除去して底部研削面43を形成する。
【0157】
所定の高さまで降下したダイシングブレード105は、一旦上昇し、インク室溝直交方向にインク室ピッチと略等ピッチだけオフセットをかけて、同様の動作を繰り返す。アクチュエーター基板4中に計9列形成されている外部接続用電極アレイの全てについて、この作業を行うため、アクチュエーター基板4中の外部接続用電極6の数と同じ回数だけ、この動作が繰り返されることになる。
【0158】
本実施の形態では、外径50mmのダイシングブレード105を用い、隔壁上面位置から基板厚み方向に最大深さ120μmとなるまで、ダイシングブレード105を降下させた。これにより、隔壁側面に形成された研削面42は、隔壁上部の弦長は約4.8mmとなる。充填溝に充填されている外部接続用電極6の隔壁上面(基板表面)からの高さは、充填溝深さと同様に100μmである。
【0159】
一方、研削面42及び底面研削部43を形成するためのブレード研削加工は、隔壁上面から120μmの深さまで行う。この工程により、B−1の工程で隔壁側面の外部接続用電極露出面上に形成された電極の内、片側面の電極は完全に除去され、研削面42の面内に外部接続用電極露出面60が完全に含まれる。
【0160】
(B−3の工程)
本工程では、隔壁上面を含むアクチュエーター基板4の上面の不要な電極を除去する。即ち、機械研削により、基板表面を均一な高さにすると共に、基板表面にある不要な電極〔例えば、(A−2の工程)にて基板表面から突出した外部接続用電極6、(B−1の工程)にて隔壁上面に形成された電極7〕を除去する。
【0161】
研削方法としては、ラッピング研削、ダイシング研削などで行うことが可能である。本実施の形態では、ダイシングマシンに備えられた厚手のダイシングブレードを用いて研削を行い、隔壁側面とダイシングブレードの側面が平行になるようにダイシングブレードを配置し、インク室溝と同様の方向(図10の紙面左右方向)に同じ高さを保ったまま移動させることにより、基板表面の高さを均一にすると共に、(A−2の工程)にて基板表面から突出した不要な外部接続用電極、(B−1の工程)にて隔壁上面に形成された不要な電極を除去した。
【0162】
以上の工程により、図10のようなアクチュエーター基板4を得ることができる。なお、図10のアクチュエーター基板4は一部を示すものであり、その左右及び前後に、同様の形状が繰り返されている。一つのインク室側面及び底面には略U字型に電極7が形成されており、一方の側面(図10では、隔壁41の裏面側の隠れている部分)では、隔壁中に埋設されている外部接続用電極6の露出面上にも形成され、インク室側面の電極7と外部接続用電極6は導通している。
【0163】
他方の側面(図10では、隔壁41の研削面42を有する面側)の外部接続用電極6の露出面は研削面42内にあるため、電極7と外部接続用電極6は電気的に絶縁されている。即ち、一つの外部接続用電極6に注目すると、紙面奥側のインク室の電極7とは導通しているが、紙面手前側の電極7とは導通せず、奥側の電極7はその手前の隔壁中に埋設された外部接続用電極6に引き出されている。
【0164】
(C−1の工程)
本工程では、図11に示すような、複数のカバー部材5を含むカバー基板5Aを作製する。そのカバー基板5Aは、アクチュエーター基板4と同程度の熱膨張係数を有し、また、機械加工性もアクチュエーター基板4と同程度のものを用いることが望ましい。
【0165】
カバー基板5Aは、アクチュエーター基板4と大きさは等しく、平板状に第2のインク室のカバー部となる深さ5〜20μmの長方形の開口の凹み50Aと共通インク室51となる深さ200μmの長方形の開口の凹み51Aをそれぞれ複数有する。これらの凹み50A,51Aは機械研削、化学的エッチング、サンドブラストなどにより形成することが可能である。
【0166】
本実施の形態では、ドライフィルムによりパターニングを施した後に選択的にブラストする作業を、大きな凹み51A、小さな凹み50Aの順に繰り返すことにより作製した。このようにして作製したカバー基板5Aの一部の断面が、図11に示されている。カバー基板5Aは、紙面左右幅4.9mmの浅い凹み50Aと、浅い凹み50Aの中央に紙面左右幅2mmの共通インク室51Aが形成されている。
【0167】
この2段階の凹み形状は、紙面左右方向に7.2mmピッチで複数形成されている。なお、この2段階の凹み形状の共通インク室51の中央位置とアクチュエーター基板4に埋設した外部接続用電極6はそれぞれの基板のエッジから同一の位置になるようにしている。
【0168】
(C−2の工程)
本工程では、(B−3の工程)で作製したアクチュエーター基板4と(C−1の工程)で作製したカバー基板5Aを貼り合わせて、ヘッドチップ基板を形成する工程である。アクチュエーター基板4とカバー基板5Aは、基板サイズが同一であり、アクチュエーター基板4の外部接続用電極6とカバー基板5Aの共通インク室51は基板上で同一の位置になるように形成されている。
【0169】
図12は、アクチュエーター基板4とカバー基板5Aを貼り合わせたときの断面図であり、インク室は紙面左右方向に連なっている。また、アクチュエーター基板4とカバー基板5Aを接着剤により貼りあわせて得られたヘッドチップ基板10は、紙面左右方向に図示した構造が連続しており、図示したものはその一部である。
【0170】
図示のように、アクチュエーター基板4とカバー基板5Aを、外部接続用電極6と共通インク室51の中央がそれぞれ一致するようにして、貼り合わせる。接着剤は、エポキシ系接着剤を用い、外周面に均一に接着剤層を形成した金属ローラーを、カバー基板5Aに当接させることにより、カバー基板5A上に接着剤を転写した。貼り合わせ後は、熱を与えて硬化させた。
【0171】
(C−3の工程)
本工程では、ヘッドチップ基板10をダイシングにより小片化してヘッドチップ1を作製する。図12に示すように、ヘッドチップ基板10の外部接続用電極6の中央部(C−C)と2つの外部接続用電極6の中間位置(D−D)をそれぞれ切断位置としてダイシングを行い、1枚のヘッドチップ基板10から複数のヘッドチップ1,…を作製した。
【0172】
外部接続用電極6の中央部(C−C)を切断することによりインクジェットヘッドの後端面を形成すると共に、後端面に外部接続用電極6を露出させる。一方、外部接続用電極6の中間位置(D−D)を切断することにより、ノズルプレート2を接合するノズル面を形成する。なお、ダイシング切断では、破線を中心にして幅0.3mmの切りしろで切断が行われ、ヘッドチップ1の全長(紙面左右方向の長さ)は3.3mmとなる。
【0173】
(C−4の工程)
本工程では、ヘッドチップ1をもとに、インクジェットヘッドを構成する。即ち、まず第一にインクジェットヘッド後端面の外部接続用電極に対して、略等ピッチで配線パターンが形成されているフレキシブル基板を異方性導電膜等を介して接合し外部接続用電極と配線パターンを電気的に導通させる。
【0174】
次に、インク材として、水溶性インクか非水溶性であっても電極を腐食するおそれのあるものを用いる場合は、電極保護膜としてパラキシレン膜を成膜する。パラキシレン膜は、ダイマーを昇華させてヘッドチップが格納されている真空チャンバー内に導入することで、狭い隙間であるインク室内にも昇華物が侵入し、インク室側面に接触することで、エネルギーを失い逐次成膜されるため、インク室内の全ての面上に均一に保護膜を形成することができる。
【0175】
そして、ノズル面側にノズルプレートを接合する。ヘッドチップ後端面には、共通インク室の開口部を塞ぐように、インクタンクと繋がっているマニフォールドを接着し、インクが漏れないように封止材を用いて封止する。
【0176】
以上の工程〔(A−1の工程)〜(C−4の工程)〕によりインクジェットヘッドが完成する。
【0177】
《実施の形態2》
〈インクジェットヘッドの構成〉
本実施の形態のインクジェットヘッドを図13及び図14により説明する。図13は、実施の形態2のインクジェットヘッドの後端面を示し、図14はインクジェットヘッドの縦断面を示す。このインクジェットヘッドの構成は、概ね実施の形態2の構成と同一であるが、ヘッドチップ後端部のインク室内に非導電性樹脂8が充填されている点が異なる。
【0178】
即ち、カバー部材5の構成、非導電性樹脂8を除いたアクチュエーター基板4の構成は全て同一であり、ヘッドチップ後端部の隔壁中に外部接続用電極6を埋設し、第二のインク室40Nの隔壁の片面に研削面42が形成されている点などは、全て同一であり、重複部分の説明は省略する。
【0179】
図14に示すように、非導電性樹脂8はヘッドチップ1の後端部(紙面左側)のインク室内に充填されており、インク吐出方向(紙面右方向)に向かって徐々に高さが減少するなだらかな傾斜面状に形成され、第一のインク室40Aに到達することなく、その充填が完了している。また、隔壁41中に埋設した外部接続用電極6の隔壁側面の露出面及び隔壁上面の露出面を被覆している。
【0180】
図13はヘッドチップ後端面の図であり、実施の形態1における図3(c)の相当するものである。なお、アクト部12の横断面を表す図3(a)及びノンアクト部13の横断面を表す図3(b)は本実施の形態2においても同一であるため、重複する説明は省く。図11のように、隔壁41中に埋設された外部接続用電極6は、片面において引き出し電極71と接続されている。
【0181】
インク室内には非導電性樹脂8が充填されており、外部接続用電極6上に形成されている引き出し電極71部分、及び外部接続用電極6の研削面42側の露出部分をモールドしている。さらに、共通インク室51側である隔壁41上面の外部接続用電極6の露出面上にも非導電性樹脂8がモールドされている。なお、図14の第一のインク室40A及び第二のインク室40Nの隔壁上面に相当するYA−YA線は、図13では非導電性樹脂8の上面に相当し、外部接続用電極6の上面を表すYB−YB線はYA−YA線よりも低い位置にある。
【0182】
非導電性樹脂8は、シリカ若しくはアルミナのフィラーを混入して隔壁材と同程度の線膨張係数となるように調整されており、また、ヤング率は隔壁材に比べて小さいものを選択することが望ましい。
【0183】
〈インクジェットヘッドの製造方法〉
実施の形態2のインクジェットヘッドの製造方法について説明する。本実施の形態は、前述の実施の形態1と類似した部分があるため、その製造方法と同じ部分についての説明は省略する。
【0184】
アクチュエーター基板4は実施の形態1と同一のものを用い、(A−1の工程)及び(A−2の工程)は同一であり、アクチュエーター基板4に充填溝61が施され、充填溝61内に外部接続用電極材63が充填されたアクチュエーター基板4が完成する。
【0185】
(A−2−1の工程)
(A−2の工程)の後に行われる本工程では、外部接続用電極材を充填した部分をアクチュエーター基板面から凹ませる。この工程では、図5のアクチュエーター基板4の横断面図に示すように充填溝61内に外部接続用電極材63を充填したアクチュエーター基板4をもとに、図15に示すように、紙面奥方向に一文字に充填されている外部接続用電極6の上側を、充填溝幅より幅広の厚み(例えば1.5〜2mm程度)を有するダイシングブレード106を充填溝方向(紙面奥方向)に走査させることにより、外部接続用電極の上面をアクチュエーター基板表面により凹んだ部分である凹み65を形成する。
【0186】
この凹み65の深さは、アクチュエーター基板表面に対して概ね数十μmである。一本の充填溝内に充填された外部接続用電極上を研削した後、充填溝と等ピッチで紙面左右方向にオフセットをかけて、アクチュエーター基板全面の外部接続用電極上を研削し、凹ませる。
【0187】
次に、行われる(A−3の工程)であるインク室を形成する工程は、実施の形態1と同一である。さらに、(B−1の工程)である駆動電極及び引き出し電極を形成する工程、及び(B−2の工程)の外部接続用電極が埋め込まれている近傍の隔壁の片側の電極を除去する工程も、同一であり、図7、図8及び図9では外部接続用電極が基板面に対して凸になっているのに対して、本実施の形態では外部接続用電極部分が基板面に対して凹んでいる点が異なるだけである。
【0188】
このようにして作製したアクチュエーター基板4のインク室方向の断面図は図16のようになる。図16に示すように、アクチュエーター基板4は、インク室と、インク室を隔てる隔壁41からなり、隔壁側面の片側には研削面42が形成されている。さらに隔壁41の一部として、外部接続用電極6が設けられており、外部接続用電極6はアクチュエーター基板4の表面(隔壁41の上面)に対して、凹み65を有している。
【0189】
(B−2−1の工程)
(B−2の工程)の後に行われる本工程では、このアクチュエーター基板4の外部接続用電極6がある部分のインク室内に、外部接続用電極、隔壁上面に非導電性樹脂を充填する。この工程では、図17に示すように、ディスペンサー107を用いて、液状の非導電性樹脂8を外部接続用電極上に塗布する。外部接続用電極上をインク室方向に対して直交方向(紙面奥方向)にディスペンサー107を走査させることにより、外部接続用電極近傍のインク室内と、隔壁上の外部接続用電極露出面上に、非導電性樹脂8を充填し、(A−2−1の工程)で形成した凹み65も非導電性樹脂8により充填する。
【0190】
そして、非導電性樹脂8により外部接続用電極6は完全にモールドされると共に、インク室内に充填される非導電性樹脂8はディスペンサー走査位置を中心にして、図17のように略山形状を形成する。その後、非導電性樹脂8は加熱硬化されて、充填時の形状を保持したまま固形化する。
【0191】
本工程の後に行われる(B−3の工程)は、基板上面の不要な電極を除去する工程であり、実施の形態1と同じである。ここで、本実施の形態では、不要な電極だけでなく、図18のように厚手のダイシングブレード108をインク室方向である図矢印方向に高さを均一にして走査させることにより、(B−2−1の工程)において塗布した非導電性樹脂8も同時に研削し、アクチュエーター基板面と非導電性樹脂8の研削面を面一状にする。
【0192】
以後の工程は、実施の形態1で説明した(C−1の工程)から(C−4の工程)と同一であるため説明は省略する。
【0193】
《その他の実施の形態》
実施の形態1及び2では、外部接続用電極材として金属微粒子を混在させたペースト状のものを用いたが、本発明は、これに限定されることなく、例えば、外部接続用電極の素材(外部接続用電極材)として、ハンダペーストなどのペースト状物質を用いてもよい。また、前記充填溝と略同一の大きさに成形された金属物質を、充填溝内に埋め込み、エポキシ系接着剤等で固定してすることにより、外部接続用電極として用いてもよい。
【0194】
外部接続用電極は、アクチュエーターとなる基板の一部に予め埋設し、その基板にインク室隔壁を加工することにより、インク室隔壁の一部となる。ここで、硬化前はペースト状であり硬化後に固形化して導通特性を有するペースト状物質を用いれば、埋設部分の形状自由度が高く、埋設する充填工程が容易で、大面積のアクチュエーター基板を用いた大量生産を行う場合に製造コストを低減することができる。
【0195】
さらに、ペースト状物質として、導電性接着剤やハンダペーストなどの溶媒が有機溶剤であるものを用いる場合は、アクチュエーター基板のキュリー点以下の硬化温度で硬化が可能であるため、埋め込み後の硬化時にアクチュエーター基板の電気的機械的特性を損なう虞がない。
【0196】
また、機械加工が容易であるため、インク室隔壁形成時に導電性樹脂部分を一部切削する際のブレード摩耗が少ない。従って、大面積基板を用いた大量生産に対して製造コストが低く、製造歩留まりも良く、加工精度の高く高品位のインクジェットヘッドを提供することができる。
【0197】
そして、外部接続用電極として、金属物質を用いる場合には、機械的強度が高く、フレキシブル基板などをコンタクトして接続する際に、接続部の機械的強度が高く、接続信頼性を高めることができる。さらに、接続方法として、異方性導電膜などの有機樹脂系接着材含有物を用いることなく、例えばワイヤーボンディングなどのような金属拡散接合により電気的に接続することができる。
【0198】
金属拡散接合を用いる場合は、非常に電気的接続安定性が高く、また製造プロセスが技術的に簡便であるため、製造歩留まりを高めることができる。従って、電気的接続が確実で、製造コストが低いインクジェットヘッドを提供することができる。
【0199】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は、以下の効果を奏する。
【0200】
(1)非駆動部分となる隔壁の片側面後部に駆動電極を設けない部分を有しているので、非駆動部分の隔壁の一方面にある電極で駆動電極を外部接続回路に引き出す機能を維持したまま、他方面には電極を設けない部分を有することにより、隔壁を介して対向する電極面積が少なくなり、不要な静電容量を低減させることができ、これにより、発熱を抑え、高速駆動印字が可能となる。
【0201】
(2)隔壁の一部に外部接続用電極が埋設されており、左右のインク室に出現する外部接続用電極の出現面の一方に駆動電極と導通している電極と接続し、他方の出現面には電極を設けないので、インク室を介して対向している駆動電極は、隔壁側面を含むインク室内壁に沿って外部接続用電極の出現面に導通され、さらに外部接続用電極中を導通して、外部駆動回路に接続される。従って、インク室内で同電位の駆動電極は、隣接する一方の隔壁中の外部接続用電極にそれぞれ引き出すことができ、それぞれのインク室内の電極の電位を個々に制御することが可能となる。
【0202】
また、隔壁中に外部接続用電極を埋設することにより、電極の引き出し部分を小さくすることが可能となるため、全長が短くすることができ、かつ、不要な静電容量が少なくなるため、発熱量が少なくなり、高速印字が可能となる。
【0203】
さらに、隔壁中に外部接続用電極を埋設し、インク室により、それぞれの外部接続用電極を分離しているので、熱膨張係数の違いによる応力は、その殆どが開放されるため、クラックやワレなどの不具合が生じることのない長期使用にも耐える高い信頼性を確保することができる。
【0204】
(3)外部接続用電極をノズル接続面の反対面であるインクジェットヘッド後端面に露出させているので、後端面に出現している外部接続用電極に対して、外部駆動用回路と導通している配線パターンを位置合わせして接続することができる。
【0205】
また、製作工程で、外部接続用電極を分断した際に、切断面に出現する外部接続用電極面を接続面として用いることができるため、インク室内の駆動電極をインク室方向に延長することなく、外部接続用電極部分で屈曲させて引き出すことが可能となる。
【0206】
従って、電極を引き出す部分の長さが短くて済むため、不要な静電容量が少なくなり、材料コストも少なくなり、大面積基板を用いた一括処理時の取れ数を多くすることが可能となる。これにより、コンパクト化が可能となり、1ヘッド当たりの製造コストを低減することもでき、かつ、高速印字が可能となる。
【0207】
しかも、ノズル面と平行なインクジェットヘッド後端面を用いて外部駆動回路と導通している配線パターンを接続することができるため、インクジェットヘッドを組み込む装置の構成の自由度が高くなり、電機接続の信頼性も向上する。
【0208】
(4)インク室の底部分に電極を設けていないので、不要な静電容量を低減することができ、かつ、配線パターンのアライメントに多少ずれが生じても短絡する虞が少なくなり、電機接続の信頼性が向上する。
【0209】
(5)インクジェットヘッドの後端部のインク室内に非導電性樹脂を充填するので、インクジェットヘッドの電機接続を担う後端部において、外部接続用電極の機械的な強度を確保できると共に、外部駆動回路と導通している配線パターンを接続するための接着面積が増加するため、電機接続の信頼性と耐久性を向上させることができる。
【0210】
(6)インク室内にある外部接続用電極の出現面が、非導電性樹脂により電気的接合部分がモールドされているので、機械的な強度が向上し、経時劣化による剥離、断線を抑えることが可能になる。
【0211】
さらに、電気的接合部分と電機接続に寄与しないもう一方の外部接続用電極面は、非導電性樹脂によりモールドされて、インクが充填される実効的なインク室内に露出しなくなる。よって、油性インクを吐出させる場合、電気的接合部分にインクが接触し時間経過と共に腐食を起こす虞をなくすことができる。また、電極を保護する保護膜(水性インク使用時の絶縁膜も含む)の耐久性が高く、長期使用においても高い信頼性を得ることができることである。
【0212】
(7)インクジェットヘッドの後端部に充填された非導電性樹脂は、インク吐出方向に向かってなだらかに高さが減少しているので、隔壁とフレキシブル基板の間の直角部分がなくなっているため、インク室内のエアーのかみ込みがなくなり、インク吐出の安定性が向上する。
【0213】
(8)厚み方向に分極した圧電体に溝と溝を隔てる隔壁を複数形成すると共に、隔壁上面にカバー部材を接着されたインク吐出に寄与する第一のインク室と、カバー部材と隔壁上面との間に隙間を有する第二のインク室とを有するインクジェットヘッドにあって、インク吐出に寄与しない第二のインク室の片側の側面を研削して電極を除去すると共に、その研削面の隔壁高さ方向の長さが、第一のインク室の方向に向かって連続的に減少しているので、製造コストが安価となり、かつ、高性能を確保することができる。
【0214】
さらに、インクが充填される第二のインク室の後端方向から第一のインク室方向へ研削面の深さが減少しているため、インクの充填時にエアーをかみ込みにくくなり、エアー溜まりが非常に少なくなる。また、インク吐出にあたって、第一のインク室で発生させた圧力波は第二のインク室にも伝搬するが、その際に、第二のインク室の断面形状はなだらかに変化するため、余分な残留振動が発生せず、インク吐出性能が安定化する。
【0215】
(9)インクジェットヘッドの後端部に外部接続用電極を有し、その外部接続用電極はインク室隔壁の左右に露出している。また、隔壁片面が研削されて、電極が除去された研削面を有し、さらにこの研削面内に外部接続用電極の隔壁側面の露出面が内包されているので、隔壁中の外部接続用電極と研削された側の電極は絶縁されるため、第二のインク室の隔壁の片面を研削することにより、不要な静電容量を減らすと同時に、インク室側面に形成した電極により短絡している外部接続用電極をそれぞれ分離することができる。
【0216】
従って、全長を短くして製造コストを低減し不要な静電容量を少なくすることができ、かつ、不要な電極を減らすことにより不要な静電容量をさらに低減することができると共に、不要な電極を減らす工程と同一の動作で外部接続用電極を電気的に分離して駆動制御用の電極とすることができるため、高性能で、耐久性のあるコンパクトなインクジェットヘッドを技術的に容易に作製することができ、安価に提供することができる。
【0217】
(10)第二のインク室を区画する隔壁の上面とカバー部材との間に5〜20μmの幅を有する空間を設けるので、第一のインク室で発生した圧力波は、第二のインク室を経由し、第一のインク室より遠いインク供給側まで伝搬するうちに徐々に隣接するインク室にインクが伝搬することにより減衰する。
【0218】
また、そのインク供給上流側で発生する反射波の影響が少なく、さらに第一のインク室と第二のインク室の界面で反射して第一のインク室に戻る圧力波も非常に少なくなるため、残留振動が抑えられ、高速印字が可能となる。
【0219】
(11)隔壁が形成されているアクチュエーター基板の隔壁上面方向から、円盤状の砥石を隔壁の高さ方向より近接させながら隔壁側面を研削することにより、隔壁側面は円盤状の砥石の形状を転写した円弧状の研削面を容易に形成することができ、この円弧形状により研削面はなだらかにその高さが変化する形状とすることができる。
【0220】
さらに、この工程は、インクジェットヘッドのアクチュエーター部が複数個搭載された基板に対して、カバー部材を貼り合わせる前に一括して加工することが可能であるため、複数個分のアクチュエーター部の隔壁の研削加工を一括して行うことができるため、タクトタイムの短縮が容易となり、製造コストの低減化が可能となる。
【0221】
(12)隔壁が形成されているアクチュエーター基板の隔壁上面方向から、円盤状の砥石を隔壁の高さ方向より近接させながら隔壁側面を研削することにより、隔壁側面は円盤状の砥石の形状を転写した円弧状の研削面を形成することができ、この円弧形状により研削面はなだらかにその高さが変化する形状とすることができる。
【0222】
さらに、隔壁側面を研削する工程と同一の工程で、インク室底面の電極も研削除去することで、前記(4)項で説明したように、インク室の底部分に電極を設けないことにより、不要な静電容量を低減することができ、さらには、隣接する端子間距離を広くすることができるため、配線パターンのアライメントずれが生じても、短絡する虞がなく、電機接続信頼性の高いインクジェットヘッドを、効率的に製造することができる。
【0223】
(13)複数個分のインクジェットヘッドのアクチュエーター部材となる大面積のアクチュエーター基板に対して、インク室となる溝を形成し、次にインク室を隔てる隔壁の側面に駆動電極及び引き出し電極を形成した後、引き出し電極の一部を研削等により除去するので、ヘッドチップのアクチュエーター部材を、個々に逐一製造するのではなく、複数個分をバッチ処理で作製することが可能となるため、タクトタイムを短縮させて、製造コストの低減化が可能となる。
【0224】
(14)複数個分のインクジェットヘッドのアクチュエーター部材となる大面積のアクチュエーター基板に対して、インクジェットヘッドの後端部に相当する部分に充填溝を形成した後、その充填溝に外部接続用電極となる部材を充填・固定し、しかる後に、充填溝に対して直交する方向にインク室となる溝を刻設することにより、外部接続用電極をインクジェットヘッド後端相当部の隔壁の一部とし、次に、インク室を隔てる隔壁の側面に駆動電極及び引き出し電極を形成した後、隔壁中にある外部接続用電極の隔壁両面の露出面の一方面上に形成された引き出し電極を研削除去するので、ヘッドチップの後端部に外部接続用電極を有するアクチュエーター部材を、個々に逐一製造するのではなく、複数個分をバッチ処理で作製することが可能となるため、タクトタイムを短縮させて、製造コストの低減化が可能となる。また、隔壁内に外部接続用電極を設けることにより、全長を短くすることができ、かつ、不要な静電容量を低減して高速印字が可能なコンパクトなインクジェットヘッドを、安価に提供することができる。
【0225】
(15)複数個分のインクジェットヘッドのアクチュエーター部材となる大面積のアクチュエーター基板に対して、インクジェットヘッドの後端部に相当する部分に充填溝を形成した後、その充填溝に外部接続用電極となる部材を充填・固定し、次に、外部接続用電極材充填部の近傍を、機械研削等により基板面から凹ませた後、充填溝に対して直交する方向にインク室となる溝を刻設することにより、外部接続用電極をインクジェットヘッド後端相当部の隔壁の一部とし、次に、インク室を隔てる隔壁の側面に駆動電極及び引き出し電極を形成した後、隔壁中にある外部接続用電極の隔壁両面の露出面の一方面上に形成された引き出し電極を研削除去し、しかる後に、外部接続用電極材充填部近傍のインク室内に非導電性樹脂を充填し、外部接続用電極の露出面を全て非導電性樹脂で塞ぐので、インクジェットヘッドを個々に逐一製造するのではなく、複数個分をバッチ処理で作製することが可能となるため、タクトタイムを短縮させて、低コストでの製造が可能となる。また、隔壁内に外部接続用電極を設けることにより、全長を短くすることができ、さらに不要な静電容量を低減でき、かつ、長期使用においても耐久性が高いコンパクトなインクジェットヘッドを、安価に提供することができる。
【0226】
(16)外部接続用電極材を充填する工程として、金属粒子を混在させたペースト状物質を充填溝内にディスペンサーを用いて充填溝方向に走査して充填した後、硬化させるので、金属粒子を混在させたペースト状物質は、充填時は液状で硬化後に固形化すると共に導電性を示し、充填が容易である上に、硬化と共に充填溝の形状に沿って固着するので接着剤などで固定する必要がない。従って、外部接続用電極を有するインクジェットヘッドのアクチュエーター部材を、個々に逐一製造するのではなく、複数個分をバッチ処理で作製することが非常に容易となり、インクジェットヘッドを低コストで製造することが可能となる。
【0227】
(17)充填溝内に充填された外部接続用電極の上面部分を、インク室となる溝を刻設する前に、充填溝方向に研削ブレードを走査させて研削して、基板表面から凹ませるので、充填の工程において基板上面から盛り上がった不要な外部接続用電極を、インク室を刻設する工程の前に除去しておくことにより、インク室を刻設する工程でのツールの負荷を低減することが可能となる。
【0228】
例えばダイシングブレードを用いる場合には、摩耗量及び目詰まりを低減し、溝深さを高精度に保つことができる。さらに、ツールに対する負荷が低減されると共に、溝が刻設されるアクチュエーター基板に対しても負荷が低減するために、より高速で加工を行っても溝を隔てる隔壁にワレやクラックが生じない。
【0229】
そして、外部接続用電極の充填部分を基板表面に対して凹ませておくことで、非導電性樹脂をインク室内に充填することにより隔壁側面に露出した外部接続用電極面を塞ぐ工程において、同時に隔壁上面に露出した外部接続用電極面を塞ぐことが可能となる。
【0230】
また、インク室を刻設する工程の前に、予め隔壁上面を基板に対して凹ませておくことにより、略平板状の基板に凹型の溝を形成するだけでよいため、十分に加工速度を上げても、アクチュエーター基板に機械的ダメージがなく、その後に刻設される隔壁に倒れ・ワレが生じることはない。従って、ツールの摩耗量及び目詰まりを低減して溝深さを高精度に保つことができ、さらにはインク室を隔てる隔壁にワレや倒れがなく製造歩留まりがよいインクジェットヘッドを製造することが可能となる。
【0231】
(18)溝の側面に形成された駆動に寄与しない電極を除去する工程は、インク室の幅よりも狭い幅を有するダイシングブレードを用いた機械研削により行うので、主に半導体の製造装置として使用され、入手が容易で機械コストも比較的安価な、ダイシングマシンを用い、隔壁の側面の不要な電極を除去することが可能となる。
【0232】
また、インク室となる溝をダイシングマシンを用いて刻設する場合は、装置を共用することができるため、結果として製造コストを抑えることができる。さらに、インク室となる溝を刻設する工程と隔壁の側面を研削する工程を同一の装置で行うことにより、装置特有の機械精度を同じにすることができるため隔壁を研削する工程の加工誤差が小さく、歩留まりを向上させることができる。
【0233】
(19)隔壁が形成されているアクチュエーター基板の隔壁上面方向から、ダイシングブレードを隔壁の高さ方向より近接させながら隔壁側面を研削するので、隔壁側面は、ダイシングブレードの形状を転写した円弧状の研削面を容易に形成することができ、この円弧形状により研削面はなだらかにその高さが変化する形状となる。
【0234】
さらに、この工程は、インクジェットヘッドのアクチュエーター部が複数個搭載された基板に対して、カバー部材を貼り合わせる前に一括して加工することが可能であるため、複数個分のアクチュエーター部の隔壁の研削加工を一括して行うことができるため、タクトタイムの短縮が容易となり、製造コストの低減化が可能となる。
【0235】
(20)隔壁が形成されているアクチュエーター基板の隔壁上面方向から、ダイシングブレードを隔壁の高さ方向より近接させながら隔壁側面を研削することにより、隔壁側面はダイシングブレードの形状を転写した円弧状の研削面を形成することができ、この円弧形状により研削面はなだらかにその高さが変化する形状となる。
【0236】
さらに、隔壁側面を研削する工程と同一の工程で、インク室底面の電極も研削除去することで、前記(19)項の効果に加えて、前記(4)項で説明したように、インク室の底部分に電極を設けないことにより、不要な静電容量を低減することができ、さらには、隣接する端子間距離を広くすることができるため、配線パターンのアライメントずれが生じても、短絡する虞がなく、電機接続信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係るインクジェットヘッド後端部の斜視図である。
【図2】同インクジェットヘッドの縦断面図である
【図3】同インクジェットヘッドの横断面図である
【図4】同アクチュエーター基板に充填溝を形成する工程の説明図である。
【図5】同アクチュエーター基板の充填溝に外部接続用電極材を充填する工程の説明図である。
【図6】同アクチュエーター基板にインク室となる溝を形成する工程の説明図である。
【図7】同インク室となる溝が形成されたアクチュエーター基板の斜視図である。
【図8】同アクチュエーター基板に電極を形成する工程の説明図である。
【図9】同アクチュエーター基板の電極を除去する工程の説明図である。
【図10】同アクチュエーター基板の不要な電極を除去する工程の説明図である。
【図11】同カバー基板の断面図である。
【図12】同ヘッドチップ基板の小片化工程の説明図である
【図13】同実施の形態2に係るインクジェットヘッドの横断面図である。
【図14】同インクジェットヘッドの縦断面図である。
【図15】同アクチュエーター基板の外部接続用電極を充填した部分を凹ませる工程の説明図である。
【図16】同アクチュエーター基板のインク室方向の断面図である。
【図17】同液状の非導電性樹脂を外部接続用電極に塗布する工程の説明図である。
【図18】同アクチュエーター基板上の不要な電極と非導電性樹脂を除去する工程の説明図である。
【図19】従来のインクジェットヘッドの一例を示す縦断面図である。
【図20】従来のインクジェットヘッドの別の例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
4−圧電基板
5−カバー部材
6−外部接続用電極
7−電極
8−非導電性樹脂
40−インク室,溝
40A−第一のインク室
40N−第二のインク室
41−隔壁
42−研削面
60−露出面
61−充填溝
64−外部接続用電極材
65−凹み
70−駆動電極
71−引き出し電極
100,103,105,106,108−ダイシングブレード
101,107−ディスペンサー
Claims (20)
- インク室の両側を画成する隔壁の両側面に互いに絶縁された駆動電極を付設し、該隔壁間に電圧を印加することにより、前記インク室からインクを吐出させるエネルギーを発生させるように構成し、かつ、前記隔壁の片側面後部には、前記駆動電極が存在しない部分を設けたことを特徴とするインクジェットヘッド。
- 前記隔壁の側面に設けられている駆動電極の内、前記インク室を介して対向している駆動電極は互いに同電位に設定され、かつ、前記隔壁の一部に外部の駆動回路と導通される外部接続用電極が埋設され、該外部接続用電極は、隣接するインク室にそれぞれ出現面を有し、さらに、その外部接続用電極の一方の出現面上には前記駆動電極が形成され、かつ、他方の出現面は、前記駆動電極が存在しない部分にあることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
- 前記外部接続用電極は、ノズル接続面とは反対側の後端部に配設され、かつ、その後端面に露出していることを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド。
- 前記後端部のインク室底部分には、駆動電極が存在しないことを特徴とする請求項3に記載のインクジェットヘッド。
- 前記後端部のインク室内には、非導電性樹脂が充填されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のインクジェットヘッド。
- 前記非導電性樹脂は、前記インク室内の前記外部接続用電極の出現面を閉塞していることを特徴とする請求項5に記載のインクジェットヘッド。
- 前記非導電性樹脂は、前記インク室内においてインク吐出方向に向けて徐々に高さが減少するなだらかな傾斜面状に形成されることを特徴とする請求項5または6に記載のインクジェットヘッド。
- 前記インク室は、厚み方向に分極処理されて複数の溝が刻設された圧電基板に、カバー部材を貼り合わせることにより、前記溝内に形成され、かつ、
前記インク室の両側を画成する隔壁の上面と前記カバー部材とを貼り合わせることにより、インクを吐出するためのエネルギーを発生させるように形成された第一のインク室と、前記カバー部材と前記隔壁の上面との間に形成された隙間により、前記第一のインク室のそれぞれに連通するように形成された第二のインク室と、を前記インク室内に設け、さらに、
前記第二のインク室の両側を画成する隔壁の片側面が研削されることにより形成された研削面の前記隔壁高さ方向の寸法を、前記第一のインク室方向に向かって連続的に減少させていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のインクジェットヘッド。 - 前記第二のインク室の両側を画成する隔壁の後端部に前記外部接続用電極を有すると共に、前記研削面内に前記外部接続用電極の隔壁側面の露出面が内包されていることを特徴とする請求項8に記載のインクジェットヘッド。
- 前記第二のインク室における前記カバー部材と前記隔壁上面との間に形成される隙間が、5〜20μmに設定されていることを特徴とする請求項8または9に記載のインクジェットヘッド。
- 円盤状の研削ブレードの盤面を、前記隔壁の側面に対して平行に配置し、前記隔壁の上面方向から高さ方向に接近させることにより、前記隔壁の側面に形成された前記駆動電極を研削除去することを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- 円盤状の研削ブレードの盤面を、前記隔壁の側面に対して平行に配置し、前記隔壁の上面方向から高さ方向に接近させることにより、前記隔壁の側面に形成された前記駆動電極を研削除去し、かつ、前記インク室の底面の電極をも研削除去することを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
- インク室となる溝を刻設する工程と、
前記溝の側面と底面に駆動電極及び引き出し電極を形成する工程と、
前記溝の側面に形成された駆動に寄与しない電極を除去する工程と、を備え、前記各工程は、複数組のインクジェットヘッド構成部材を有して厚み方向に分極処理された圧電基板上で一括して行われることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。 - インクジェットヘッド後端相当部に充填溝を刻設する工程と、
前記充填溝に外部接続用電極材を充填する工程と、
前記外部接続用電極材が充填された溝に対して直交方向にインク室となる溝を刻設する工程と、
前記インク室となる溝の側面と底面に駆動電極及び引き出し電極を形成する工程と、
前記外部接続用電極材の内、前記溝の一側面の露出面上に出現した部分を除去する工程と、を備え、
前記各工程は、複数組のインクジェットヘッド構成部材を有して厚み方向に分極処理された圧電基板上で一括して行われることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。 - インクジェットヘッド後端相当部に充填溝を刻設する工程と、
前記充填溝に外部接続用電極材を充填する工程と、
前記外部接続用電極材を充填した部分近傍を基板面から凹ませる工程と、
前記充填溝に対して直交方向にインク室となる溝を刻設する工程と、
前記溝の側面と底面に駆動電極及び引き出し電極を形成する工程と、
前記外部接続用電極材の内、前記溝の一側面の露出面上に出現した部分を除去する工程と、
前記外部接続用電極材を充填した部分近傍のインク室内に非導電性樹脂を充填する工程と、を備え、
前記各工程は、複数組のインクジェットヘッド構成部材を有して厚み方向に分極処理された圧電基板上で一括して行われることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。 - 前記充填溝に外部接続用電極材を充填する工程は、
金属粒子を混在させたペースト状物質を充填溝内にディスペンサーを用いて充填溝方向に走査して充填する工程と、
充填後に硬化させる工程と、を含むことを特徴とする請求項14または15に記載のインクジェットヘッドの製造方法。 - 前記外部接続用電極材を充填した部分近傍を基板面から凹ませる工程は、
前記充填溝に対して直交方向にインク室となる溝を刻設する工程の前に、研削ブレードを充填溝方向に走査させることにより行うことを特徴とする請求項15または16に記載のインクジェットヘッドの製造方法。 - 前記溝の側面に形成された駆動に寄与しない電極を除去する工程は、
前記インク室の幅よりも狭い幅を有するダイシングブレードを用いた機械研削により行うことを特徴とする請求項15ないし17のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。 - 前記溝の側面に形成された駆動に寄与しない電極を除去する工程では、
前記ダイシングブレードの盤面を、前記溝の側面に対して平行に配置し、前記溝の上面方向から高さ方向に接近させることにより、前記溝の側面に形成された前記駆動電極を研削除去することを特徴とする請求項13ないし18のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。 - 前記溝の側面に形成された駆動に寄与しない電極を除去する工程では、
前記ダイシングブレードの盤面を、前記溝の側面に対して平行に配置し、前記溝の上面方向から高さ方向に接近させることにより、前記溝の側面に形成された前記駆動電極を研削除去し、かつ、前記インク室の底面の電極をも研削除去することを特徴とする請求項13ないし18のいずれかに記載のインクジェットヘッドの製造方法。
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