JP4141727B2 - インクジェットヘッドおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、インクジェットプリンタおよびその製造方法に関し、より特定的には、インクジェットプリンタのヘッド構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドに設けられた微小なノズル孔から印字データに応じてインクの微小な液滴を噴出することで、紙等の媒体に画像を印刷する。このようなインクジェットヘッドの方式の一つに圧電方式がある。
【0003】
この圧電方式のインクジェットヘッドの構造を図14(A),(B)に示す。なお、図14(A)は圧電方式のインクジェットヘッドの構成を示す側面図であり、図14(B)は圧電方式のインクジェットヘッドの内部構成を示す、図14(A)のXIV−XIV線矢視断面図である。
【0004】
インクの液滴が噴出されるノズル孔107は、ノズルプレート106に複数個配置されている。ノズル孔107のそれぞれには、インク室104が設けられている。インク室104は、圧電基板101、カバー部材102およびノズルプレート106によって構成されており、インク室104の内壁には電極108が形成されている。電極108の後端部(ノズル孔107とは反対側)には、導電材105が充填されており、この導電材105に外部接続端子109を接続する。
【0005】
インクの流れは、図14(B)を参照した場合、インク室104の後端部側(上流側)からインクを供給し、共通インク室103を通じてインク室104へ流れこむようになっている。
【0006】
外部接続端子109および導電材105を通じて電極108に印字データに応じた電圧を印加すると、このインク室104の壁部が変形し、インク室104内のインクを加圧する。その結果、このインクがノズル孔107から噴出される。
【0007】
インク室104の後端部側(上流側)には、カバー部材102によって構成される共通インク室103が設けられている。この共通インク室103は、すべてのインク室104と連通しており、ここから各インク室104へインクが供給されるようになっている。
【0008】
インクの供給は、電極108に加圧時とは逆の電圧を印加することでなされる。すなわち、加圧時とは逆の電圧を印加するとインク室104の壁部が外側に凸となるように変形し、インク室104内が負圧となる。その結果、共通インク室103からこのインク室104にインクが流入する。
【0009】
このような圧電方式では、電圧を加減し圧電体の変形を制御することによってインクの加圧量およびインク噴出滴量をコントロールできるため、階調印刷が容易であるという特徴が得られる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の技術におけるインクジェットヘッドの構造では、印字速度をあげるため、駆動周波数を上げ単位時間当たりのインク吐出回数を増加させると、吐出後のインク室内の圧力の残留振動により後続のインク吐出が不安定になるという問題がある。
【0011】
このインク吐出の不安定の原因は、インク室104を加圧すると、そのインク室104のノズル孔107からインクが噴出するのと同時に圧力波(振動)が生じる。この圧力波がインク室104と共通インク室103との界面(インク室104と共通インク室103との連通部)で水撃作用により大部分が反射し減衰せずにインク室104に戻り、後続するインクの噴出特性に悪影響を生じさせるためと考えられる。
【0012】
特に駆動周波数を増加させた場合には残った圧力波が減衰しない内に後続するインクが吐出されるため、後続するインクの吐出速度が大きく変動し、場合によっては吐出が不安定になり、インク吐出が止まってしまうこともあった。
【0013】
このため、たとえば、特開2000−43252公報に開示されているように、インク室の加圧によって生じる圧力波を吸収するために多孔質のウレタン、フッソ樹脂製の濾過用フィルタ等、その他の振動吸収体をインク室104と共通インク室103との連通部に設けるようにしたものが提案されている。
【0014】
しかしながら、インクジェットヘッド内にインク室の加圧によって生じる圧力波を吸収するダンパ効果を有す振動吸収体を形成、配置した場合には、インクジェットヘッドの構造が複雑化、それにともなう、インクジェットヘッドの生産性の悪化、製造コストも高価なものとなる。さらに、これらの振動吸収体は、インクジェットヘッドの基体を形成した後、組み立て工程で配置する必要があるため、これによっても、インクジェットヘッドの生産性の悪化、製造コストの上昇を招いてしまう。
【0015】
したがって、本願発明は上記の課題である圧力波の残留振動を解決するためになされたものであり、インクジェットヘッドの構造が複雑化せず、さらに大量生産にも適した構造で、圧力波が急速に減衰し、吐出が安定で高速印字が可能な、インクジェットプリンタ用のインクジェットヘッドを提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明に基づいたインクジェットヘッドのある局面においては、圧電性材料を含む基板に設けられた複数の溝に対してその開口部を塞ぐようにカバーウェハーを接着することによって複数のインク室が形成されたインクジェットヘッドにおいて、吐出を行なうインク室のそれぞれが、インクの吐出に寄与する第1のインク室と、第1のインク室と連通し残留振動を抑える第2のインク室を一対として構成されており、第2のインク室を区画する第2のチャンネル壁の剛性が第1のインク室を区画する第1のチャンネル壁の剛性に比べ十分低いことを特徴とする。
【0017】
この構成により、インク吐出に寄与する第1のインク室で発生した圧力波は、第1のインク室と一対で構成されており第1のインク室と共通インク室の間に設けられている第2のインク室へ大部分が進行し吸収・減衰され、また、第1のインク室と第2のインク室の界面で反射し第1のインク室へ戻る圧力は非常に少なく、インク吐出後の残留振動を抑制することができる。したがって、高速印字、および高精細印字を行っても、印字データに忠実な高品質な印字が可能である。
【0018】
また、本発明のインクジェットヘッドの他の局面においては、第2のチャンネル壁の一部が第1のチャンネル壁の構成材料に比べて剛性の低い低剛性材料からなることを特徴とする。
【0019】
この構成では、部分的に低剛性材料を埋設した圧電基板にダイシング加工等の機械加工を行なうことにより第1のインク室と第2のインク室を同時に形成することが可能であり、インク吐出を行なう第1のインク室と、インクの制振効果を担う第2のインク室を、複数のインクジェットヘッドが得られる大面積基板の段階で設けることができるため、小片化したのちにそれぞれに設置する必要がなく量産性が良い。
【0020】
さらに、一般に圧電材料は静電容量が大きいが、第2のインク室の内側面に設けられている電極は第1のインク室内にある電極をインクジェットヘッド後端部へ引き出すためのものであり、その寄生容量は大きい。本発明により、第2のインク室を区画するチャンネル壁の構成部材が圧電材料以外の材料で構成されるため、第2のチャンネル壁が圧電材料で構成されている場合に比べ寄生容量が少なく、省エネルギー駆動が可能で、かつ印字レスポンスが良く高性能なインクジェットヘッドを提供することが可能となる。加えて、圧電基板中に埋設した低剛性部材の有無によりインク室の吐出駆動の有無が決定されるため、吐出に寄与するインク室の長さ精度は圧電基板の調製精度にのみに依存する。よって、吐出に寄与するインク室の長さ、いわゆるアクティブ長の加工精度が高いインクジェットヘッドを作製することができ、高画質、高速印字への対応に不可欠な加工精度の良い短アクティブ長ヘッドを安定して提供することが可能となる。
【0021】
また、本発明のインクジェットヘッドのさらに他の局面においては、第2のチャンネル壁の頂上部と接着されるカバーウエハー部材面が、第1のチャンネル壁の頂上部と接着されるカバーウエハー部材面に比べ剛性の低い低剛性材料からなることを特徴とする。
【0022】
この構成により、圧電基板中に低剛性部材を設ける必要がなく、圧電基板への加工プロセスは従来技術通りの加工プロセスを踏襲でき、複雑な工程を必要としない。ゆえに、請求項1に係る発明の効果を有するインクジェットヘッドを容易に作製することが可能となる。また、カバーウエハ部材2に低剛性部材3を設けるプロセスについては、基本的にはザグリ加工を行い、低剛性部材を充填するだけで良く、圧電基板への加工プロセスとは別に加工を行なうことが可能であり、量産時のタクトタイム短縮に繋がる。
【0023】
また、本発明のインクジェットヘッドのさらに他の局面においては、インクジェットヘッドの構造に関して、低剛性材料が樹脂材料であることを特徴とする。
【0024】
低剛性材料として樹脂材料を用いることにより、材料コストが安価で、さらに埋め込み工程、硬化工程、並びに不要部除去工程において、プロセスが簡便でプロセスコストが安価でインクジェットヘッドを作製することが可能であり、したがってインクジェットヘッドの低コスト化が可能となる。さらに、樹脂材料は比誘電率が低いため、寄生容量が低減し、省エネルギー駆動が可能で、かつ印字レスポンスが早く高性能なインクジェットヘッドを提供することが可能となる。
【0025】
また、本発明のインクジェットヘッドのさらに他の局面においては、低剛性材料が多孔質系材料であることを特徴とする。
【0026】
インクの制振作用を担う第2のインク室を構成する壁部の一部に多孔質系材料を用いることにより、互いに隣接する第2のインク室間において、残留振動は減衰し、インクの流れだけを保つことができる。よって、より高速印字化に伴い、特定ノズルの連続吐出時に懸念されるインクの供給を遅延無く行なうことが可能となる。また、多孔質系材料は、通常材料に比べ振動吸収効果が大きく、残留振動を急速に減衰させることができる。したがって、高速印字、および高精細印字を行っても、印字データに忠実な高品質な印字が可能である。また、必要な第2のインク室の長さが短くて良いため、インクジェットヘッドの小型化が可能であり、したがって製造コストが低く、寄生容量も少ない高性能なインクジェットヘッドを提供することが可能となる。
【0027】
また、本発明のインクジェットヘッドのさらに他の局面においては、第2のチャンネル壁の頂上部近傍の断面形状が凸型であることを特徴とする。
【0028】
この構成により、ダイシング加工などの簡便な加工方法で第1のインク室と第2のインク室を区分することが可能であり、さらに第2のインク室を区画する第2のチャンネル壁の剛性を低くすることができる。
【0029】
また、本発明のインクジェットヘッドのさらに他の局面においては、インクジェットヘッドの構造に関して、第2のチャンネル壁の頂上部に溝平行方向に溝が設けられており、第2のチャンネル壁の頂上部の断面形状が凹型であることを特徴とする。
【0030】
この構成により、ダイシング加工などの簡便な加工方法で第1のインク室と第2のインク室を区分することが可能であり、さらに第2のインク室を区画する第2のチャンネル壁の剛性を低くすることができる。本発明を請求項2乃至3に記載の発明と併用することにより、第2のチャンネル壁の剛性を非常に低減することが可能となり、第1のインク室が発生するインク吐出効果は大きなものとなる。
【0031】
さらに、第2のチャンネル壁の頂上部に凹んだ領域、すなわち空気室が形成されるため、第2のチャンネル壁で生じる寄生容量が低減され、省エネルギー駆動が可能で、かつ印字レスポンスが早く高性能なインクジェットヘッドを提供することが可能となる。
【0032】
また、本発明のインクジェットヘッドのさらに他の局面においては、インクジェットヘッドの構造に関して、第2のチャンネル壁の頂上部において、チャンネル壁に直交した方向に複数の溝が設けられていることを特徴とする。
【0033】
この構成により、容易に第2のインク室を区画する第2のチャンネル壁の剛性を低くすることができると共に、残留振動が減衰する範囲内で隣接インク室間のインクのやりとりを行なうことが可能となる。よって、より高速印字化に伴い、特定ノズルの連続吐出時に懸念されるインクの供給を遅延無く行なうことが可能となり、高性能のインクジェットヘッドを提供することが可能となる。
【0034】
また、本発明のインクジェットヘッドの製造方法のある局面においては、複数の溝が形成された圧電基板と、カバー部材を張り合わせることによりインク室が形成されるインクジェットヘッドの製造方法において、凹部を有する圧電基板の該凹部に該圧電基板より低剛性の材料を形成する工程と、上記圧電基板に(上記低剛性材料を分断するように)平行かつ複数の溝を形成する工程と、上記低剛性材料が形成された領域内であって、上記複数の溝の形成方向に対して直角方向に導電性樹脂を塗布する工程とを少なくとも有することを特徴としている。
【0035】
この製造方法により、上述した効果を有するインクジェットヘッドを、大面積の基板から複数加工することが可能であり、量産に適し、製造コストを下げることができる。
【0036】
また、本発明のインクジェットヘッドの製造方法のさらに他の局面においては、複数の溝が形成された圧電基板と、カバー部材を張り合わせることによりインク室が形成されるインクジェットヘッドの製造方法において、凹部を有するカバー部材の該凹部に上記圧電基板より低剛性の材料を形成する工程と、上記カバー部材と、平行かつ複数の溝が形成された圧電基板工程とを張り合わせる工程とを少なくとも有することを特徴としている。
【0037】
この製造方法により、上述した効果を有するインクジェットヘッドを、大面積の基板から複数加工することが可能であり、量産に適し、製造コストを下げることができる。さらに、圧電基板への加工プロセスとは別に加工を行なうことが可能であり、量産時のタクトタイム短縮に繋がる。
【0038】
また、本発明のインクジェットヘッドの製造方法のさらに他の局面においては、複数の溝が形成された圧電基板と、カバー部材を張り合わせることによりインク室が形成されるインクジェットヘッドの製造方法において、圧電基板に平行かつ複数の溝を形成する工程と、上記溝(チャンネル壁)の両側面に電極を形成する工程と、チャンネル壁の頂上部の一部が凸部もしくは凹部となるように、チャンネル壁をチャンネル壁形成方向に渡ってダイシング加工する工程とを少なくとも有することを特徴としている。
【0039】
この構成により、ダイシング加工で、インク室となる溝を形成する工程と、第2のチャンネル壁の剛性を低くする工程を、同一のダイシング装置で共用することが可能である。ゆえに、新たな設備投資が必要なく、製造コストを低減することが可能となる。さらに、電極を形成した後、第2のチャンネル壁を加工するため、凸型の場合は不要な電極面積を減らし、凹型の場合は途中に空気室が設けられるため、寄生容量を削減することが可能となる。
【0040】
また、本発明のインクジェットヘッドの製造方法のさらに他の局面においては、複数の溝が形成された圧電基板と、カバー部材を張り合わせることによりインク室が形成されるインクジェットヘッドの製造方法において、圧電基板に平行かつ複数の溝を形成する工程と、上記溝(チャンネル壁)の両側面に電極を形成する工程と、チャンネル壁の頂上部の一部をチャンネル壁形成方向とは直角方向に渡ってダイシング加工する工程とを少なくとも有することを特徴としている。
【0041】
この構成により、ダイシング加工で、インク室となる溝を形成する工程と、第2のチャンネル壁の剛性を低くする工程、隣接する第2のインク室間にインク室間流路を形成する工程を同一のダイシング装置で共用することが可能である。ゆえに、新たな設備投資が必要なく、製造コストを低減することが可能となる。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に基いたインクジェットヘッドおよびその製造方法の各実施の形態について、図を参照しながら説明する。
【0043】
(実施の形態1)
まず、図1から図8を参照して、実施の形態1におけるインクジェットヘッド10Aおよびその製造方法について説明する。なお、図1および図2は、本実施の形態におけるインクジェットヘッド10Aの構造を示す図であり、図3から図8は、本実施の形態におけるインクジェットヘッド10Aの製造方法を示す断面図である。
【0044】
(インクジェットヘッド10Aの構造)
図1および図2を参照して、本実施の形態のインクジェットヘッド10Aの内部構造を説明する。なお、図1は、インクジェットヘッド10Aの内部構造を示す縦断面図である。また、図2(A)は図1中のII(A)−II(A)線矢視断面図であり、図2(B)は図1中のII(B)−II(B)線矢視断面図である。なお、図1は、図2(A),(B)中のI−I線矢視断面に対応する図である。
【0045】
(基本構成)
このインクジェットヘッド10Aは、等間隔で複数の溝加工を施された圧電基板1と、溝開口部を塞ぐよう貼り合わせられたカバーウエハ部材2とにより、インク室4となる長方形状の断面を有する空間が形成されており、図左右方向に貫通している。
【0046】
インクジェットヘッド10Aのインクを吐出する側である図1の左端面にはノズルプレート6が接着剤により貼り合わせられており、圧電基板1の溝、カバーウエハ部材2、ノズルプレート6により、インクを加圧し吐出させ、あるいはインク内の残留振動を抑える役割を担うインク室4が設けられている。
【0047】
一方、インクを供給する側である図1の右端面にはインクタンク(図示省略)に接続され、インクをインクジェットヘッド10Aに供給する役割を担うマニフォールド7が複数のインク室4を覆うように取付られており、封止部材(図示省略)により漏れないようになっている。インクはインクタンクおよびインクチューブ(図示省略)を通じてマニフォールド7に供給された後、インクジェットヘッド10A内に設けられた共通インク室15を介して、各区画に分けられている複数のインク室4に供給される。インク室4に供給されたインクはノズルプレート6に設けられたノズル孔60よりインク滴として吐出される。
【0048】
(特徴的構造)
次に、インクジェットヘッド10Aの内部構成の詳細について、図1および図2を参照して説明する。本実施の形態のインクジェットヘッド10Aの構造的特徴は、インク室4が、インク吐出力の発生を担う第1のインク室41と、インク液の制振を担う第2のインク室42からなることである。図1ではノズルプレート6側から順に、A.A.部分が第1のインク室41、N.A.部分が第2のインク室42となる。後述するが、第1インク室41と第2のインク室との区分は、インク室4を区画するチャンネル壁の剪断方向の剛性の違いに起因する。
【0049】
図2(A)は図1のインクジェットヘッド10AのII(A)−II(A)横断面図であり、吐出力の発生を担う第1のインク室41を含むA.A.部分の横断面図である。圧電基板1は基体1aと、溝深さの略半分の厚さの薄板1bがエポキシ系接着剤により貼り合わせて構成されている。基体1aおよび薄板1bは、図中において上下方向に分極している同一の圧電材料であるが、基体1aと薄板1bとでは分極方向が異なる。
【0050】
より具体的には、基体1aは図中の上方向が+に分極しているのに対して、薄板1bは図中の下方向が+に分極している。この圧電基板1に薄板1b側から溝加工を施し、カバーウエハ部材2を貼り合わせることで第1のインク室41が形成される。
【0051】
第1のインク室41を構成する部分のカバーウエハ部材2の第1のチャンネル壁11との接合部分は、圧電基板と同等の剛性を有するセラミックス基板、例えば圧電基板、快削性セラミクスなどで構成されている。
【0052】
第1のインク室41の内側面には全域に渡って電極51が形成されており、それぞれのインク室4内の電極は後述する電気接続方法により個別に外部駆動用ICに電気的に接続されて、インク室4を介して対向している電極は常に同電位である。
【0053】
一方、第1のインク室41を隔てる第1のチャンネル壁11の間には、外部駆動用ICが与える任意の電位差を印加することが可能である。圧電体により構成されて図中の上下方向に分極している第1のチャンネル壁11に電極51により分極方向に対して直交方向に印字データに応じた電圧を印加することにより、第1のチャンネル壁11がせん断方向にすべり変形する。この変形力がインクを吐出させる力となる。
【0054】
図2(B)は図1のインクジェットヘッド10のII(B)−II(B)横断面である。インク液の残留振動の低減を担う第1のインク室42を含むN.A.部分の横断面図である。圧電基板1は基本的に前述のA.A.部を含む横断面図と同様に基体1aと薄板1bが貼り合わせられた構成であるが、薄板1bの一部に、圧電体とは異なる低剛性材料3がカバーウエハ部材2と接着される側に埋め込まれた構造を有している。
【0055】
電極52は第2のインク室42の内側面全域にも形成されており、この部分の電極52は第1のインク室41内の電極51をインクジェットヘッド10Aの後端部まで引き延ばす役目を担う。さらに、図1において、インクジェットヘッド10Aの後端部の第2のインク室42内には、導電部材8が充填されており、インクジェットヘッド10Aの後端面には導電部材8が露出している。なお、この導電部材8はインク室4内にのみ充填されているため、各インク室4内にある導電部材8は隣接するインク室4内の導電部材と互いに電気的に短絡することはない。
【0056】
電気的に互いに独立した導電部材8に対して、インク室アレイと略等ピッチで引き出し電極がパターニングされているフレキシブル基板9を、アライメント(位置合わせ)しながら異方性導電膜を介して電気的に接続する。このフレキシブル基板9は外部駆動用IC(図示省略)に接続されている。すなわち、外部駆動用ICにより印字データに応じて印加される電圧は、フレキシブル基板9に設けられた引き出し電極、インク室後端部に埋め込まれた導電部材8、第2のインク室42の側面に設けられた電極52、第1のインク室41の側面に設けられた電極51、の順に伝搬し、インク吐出を行なう。
【0057】
図2(B)に示すように、第2のインク室42を隔てる第2のチャンネル壁12は、壁高さ方向に向かって圧電材ではない低剛性部材3および圧電材料1が積層された構造である。したがって、第2のチャンネル壁12は剛性が低く、さらに第2のチャンネル壁12中の一部が圧電材料では無いため、第2のチャンネル壁12の厚さ方向への剪断力はチャンネル壁が全て圧電材料から構成されている第1のチャンネル壁11に比べ非常に小さく、第2のインク室42内のインク液は第2のチャンネル壁12の剪断変形による影響をほとんど受けることはない。
【0058】
すなわち、第2のチャンネル壁12の側面には第1のインク41室内の電極51をインクジェットヘッドの後端部側へ引き出すための電極は形成されているが、その電極により発生する圧電材料の剪断力は小さく、さらに剪断力を得るチャネル壁12はそれ自身が剛性が低いためインク液にして圧力を印加しインク吐出力を発生することはない。
【0059】
第1のチャンネル壁11の変形により、壁部が第1のインク室41の外側に変形するとインクがマニフォールド7、共通インク室15、第2のインク室42を通じて第1のインク室41に供給および充填される。逆に、内側に変形するとその第1のインク室41内のインクが加圧されノズル孔60を通じてインクが噴出する。
【0060】
インクが噴出するのと同時に第1のインク室41で生じた圧力波は、インクの供給経路とは逆に第2のインク室42、共通インク室15の順に進行していく波と、第1のインク室41と第2のインク室42の界面で反射してくる波に分かれる。
【0061】
しかし、本実施の形態では、この圧力波は、大部分が第1のインク室41のそれぞれと連通し、かつ隣接するインク室とはチャンネル壁12を介して隔てられた空間、すなわち第2のインク室42を伝わっていくため、第1のインク室41と第2のインク室42との界面で反射し、第1のインク室41へ戻る圧力波は非常に少なくなる。
【0062】
したがって、任意の第1のインク室41内で生じた圧力波が、第1のインク室41と第2のインク室42の界面で反射して第1のインク室41へ伝搬することはなく、このような圧力波の残留振動を抑制することが可能となる。
【0063】
(インクジェットヘッド10Aの製造方法)
次に、本実施の形態におけるインクジェットヘッド10Aの製造方法について、図3から図8を参照して説明する。まず、図3に示すように圧電基板1は、同一の圧電材である、薄板1bおよび基体1aを分極方向が互いに反対となるように貼り合わせた基板(シェブロン基板)からなり、この圧電基板1の薄板1b側に凹み部分20を設ける。
【0064】
薄板1bの厚みは0.14mm、基体1aの厚みは0.76mmである。凹み部分20はインクジェットヘッドとして構成された場合に、図1に示したN.A.部分となり基板内の凹み部分20の配置はA.A.部分とN.A.部分の比率、インク室アレイの配列数等によって異なる。本実施の形態では短辺4.6mm、長辺13mmの開口部を有する凹み部分20を、短辺方向に7.2mmのピッチで構成した。凹み部分20の深さは約0.1mm〜0.3mmである。凹み部分20の加工方法は次の通りである。
【0065】
エッチングによる加工方法:圧電基板1にレジストをパターニングし、王水でエッチングすることで凹み部分20を形成する。この加工方法は、バッチ処理が可能であり、量産に適している。
【0066】
サンドブラストによる加工方法:圧電基板1にドライフィルムレジストをパターニングし、SiC、Al2O3等の粒子を高圧力で吹き付けることで凹み部分20を形成する。この加工方法は、他の除去加工方式と比較して加工速度が速い。また、外注加工で対応することも可能である。
【0067】
ダイシングブレード等による研削加工方法:圧電基板1に対してダイシングブレードを上下させてダイシングブレードの外径を転写させる加工方法(いわゆるチョッパー加工)により凹み部分20を形成する。この加工方法は、ダイシングブレード70(図7参照)の加工方向にはダイシングブレード70のRが転写されるため、加工方向側の始終端近傍には深さが緩やかに減少する部分ができるが、インク室となる溝形成方向に対して本加工方向を直交させておけば、インクジェットヘッドとしての特性に影響しないようにすることができる。
【0068】
次に、図4を参照して、凹み部分20に低剛性部材3を充填しする。加工方法は次の通りである。
【0069】
樹脂を充填する加工方法:凹み部20に対して、熱硬化型もしくは紫外線硬化型の液状樹脂をディスペンサー等で充填したのち硬化させる。凹み部20以外の樹脂の残留については、硬化前にスキージで圧電基板1面に対し、面位置以上に盛り上がる領域が生じないように機械的に除去しておく。または、硬化後に除去する(後工程で行なう研削工程と兼ねることも可能である)。充填樹脂としては、エポキシ系樹脂、ゴム性樹脂、発泡性樹脂などが挙げられる。
【0070】
低剛性セラミクス材を充填する加工方法:凹み部20に対して、粉末状のセラミクス材を充填し焼成する方法である。密度を粗にすることで、焼成後のセラミクス材の剛性を低くすることができる。また、後述するように粗密度セラミクス材は多孔質材的な特性を示すため、隣接インク室間でインク補完を行なうことが可能となる。凹み部20以外のセラミクス材の残留については、硬化前にスキージで圧電基板1に対し面位置以上に盛り上がる領域が生じないように機械的に除去しておく。または、硬化後に除去する(後工程で行なう研削工程と兼ねることも可能である)。
【0071】
なお、上記各方法に限らず、薄板となる圧電材料をインゴットの状態(スライスして薄板化する前の状態)で孔あけ加工を行い、樹脂もしくは低剛性セラミクス材を充填し硬化させたのちスライス加工して薄板化し、基体材と貼り合わせて所望の圧電基板を得ることも可能である。本方法は大量生産に適する。
【0072】
次に、図5を参照して、圧電基板1にダイシングブレードを用いて、インク室4となる溝加工を施す。溝の深さは280μm、幅80μmであり、170μmピッチで凹み部20の短辺方向に対して略平行に複数個設けられる。それぞれの溝にその内側面が圧電基板1の圧電材料のみから成る部分と、圧電材料と低剛性部材3が溝内に露出する部分が形成される。後に、前者がインクの吐出に寄与する第1のインク室41となり、後者がインクの制震作用を担う第2のインク室42となる。
【0073】
次に、図6を参照して、溝4の内側面に電極5を形成する。さらにインクジェットヘッド後端部となる部分に導電部材8を充填する加工を行なう。電極5は溝開口部方向から、銅ターゲットを用いてスパッタリングにより成膜を行い、溝内側面と溝を隔てる壁の頂上部に電極が形成される。次に、ディスペンサを用いて、溝に対して直交方向に低剛性部材3の略中心位置に一文字に液状の導電性樹脂80を充填し、硬化させる。この導電性樹脂80の溝内に充填された部分が、後にインクジェットヘッドの導電部材8となる。
【0074】
次に、図7を参照して、インク室4内に導電性樹脂80を充填させた圧電基板1に対して、ダイシングブレード70を上下させて、ダイシングブレード70の外径を転写させる加工方法(いわゆるチョッパー加工)により、導電性樹脂80からなる導電部材8と、インク室4の一部の除去加工を行い各インク室4同士の絶縁性を確保するように、共通インク室15とを形成する。共通インク室15は、インクジェットヘッド後端部の溝内に導電性部材8が埋め込まれたことによりマニフォールドとインク室の間のインク供給が妨げられるのを防ぐための役目も備えている。
【0075】
さらに、ダイシングブレード70により、溝方向に壁の頂上部に形成されている電極を除去する。なお、溝加工前に圧電基板1表面にドライフィルムレジストを貼り付け、溝加工および電極形成を行ない、その後、ドライフィルムレジストをリフトオフすることにより、壁頂上部に電極を形成しないようにしておくと、溝方向に壁の頂上部に形成されている電極を除去する工程は不要となる。
【0076】
次に、図8を参照して、カバーウエハ部材2を圧電基板1にエポキシ系接着剤を用いて貼り合わせ、加熱硬化させる。加熱硬化後、インクジェットヘッド10Aが所望のサイズとなるように、ダイシングブレードを用いて切断加工する。この加工により、インクジェットヘッドの後端面に導電部材の切断面が露出する。
【0077】
以上の製造方法においては、大面積の圧電基板1およびカバーウエハ部材2を用いることにより、バッチ処理が可能となり、圧電基板1とカバーウエハ部材2とを接着したウエハーを切断することにより複数個のインクジェットヘッド10Aを同時に得ることが可能となる。
【0078】
次に、厚み50μmのポリイミドシートに直径20μmの孔(いわゆるノズル60)がインク室アレイと略等ピッチで空けられているノズルプレート6を、インクジェットヘッド10Aの前端面(図1の左端面)にエポキシ系接着剤を用いて接着する。一方、インクジェットヘッド10Aの後端面(図1の右端面)に露出している導電部材8に対して、インク室アレイと略等ピッチで引き出し電極がパターニングされているフレキシブル基板9を、アライメントしながら異方性導電膜を介して電気的に接続する。このフレキシブル基板9は外部駆動用IC(図示省略)に接続される。
【0079】
その後、インクジェットヘッド10Aの後端面に、共通インク室15およびフレキシブル基板9を覆うようにマニフォールド7をエポキシ系接着剤により接着し、インクの漏れが生じないように接着された周囲部分を封止剤(図示省略)により封止する。以上の工程により、図1および図2に示す、本実施の形態におけるインクジェットヘッド10Aが完成する。
【0080】
なお、本実施の形態においては、インクジェットヘッドのA.A.部分の長さは約1.15mm、N.A.部分の長さは約2.15mmであり、全長を約3.3mmとした。A.A.部分に対するN.A.部分の長さの比率は0.5以上であれば、N.A.部分のインク室4による制振効果が得られるが、比率を1以上にすることが望ましい。
【0081】
また、第2のインク室42を隔てる第2のチャンネル壁12を構成する低剛性部材3として、多孔質系材料を用いることにより、残留振動は減衰し、インクの流れだけを保つことができる。よって、より高速印字化に伴い、特定ノズルの連続吐出時に懸念されるインクの供給を、遅延無く行なうことが可能となる。また、多孔質系材料は、通常材料に比べ振動吸収効果が大きく、残留振動を急速に減衰させることができる。
【0082】
(実施の形態2)
次に、図9および図10を参照して、実施の形態2におけるインクジェットヘッド10Bおよびその製造方法について説明する。
【0083】
(インクジェットヘッド10Bの構造)
図9および図10を参照して、本実施の形態のインクジェットヘッド10Bの内部構造を説明する。なお、図9は、インクジェットヘッド10Bの内部構造を示す縦断面図である。また、図10(A)は図9中のX(A)−X(A)線矢視断面図であり、図10(B)は図9中のX(B)−X(B)線矢視断面図である。なお、図9は、図10(A),(B)中のIX−IX線矢視断面に対応する図である。
【0084】
このインクジェットヘッド10Bの基本構成は、上記実施の形態1におけるインクジェットヘッド10Aと同じであるため、同一または相当部分には、同一の参照番号を付し、詳細な説明は省略する。
【0085】
(特徴的構造)
次に、インクジェットヘッド10Bの内部構成について、図9および図10を参照して説明する。本実施の形態のインクジェットヘッド10Bの構造的特徴は、第2のインク室42を構成する第2のチャンネル壁12の頂上部と接着されるカバーウエハ部材2の面に、第1のインク室41を構成する第1のチャンネル壁11の頂上部と接着されるカバーウエハ部材2の面とは比べ、剛性の低い低剛性材料を設けている点にある。
【0086】
図10(A)は図9のインクジェットヘッド10BのX(A)−X(A)の横断面であり、吐出力の発生を担う第1のインク室41を含むA.A.部分の横断面図である。圧電基板1は基体1aと、溝深さの略半分の厚みの薄板1bがエポキシ系接着剤により貼り合わせて構成されている。基体1aおよび薄板1bは、図中において上下方向に分極している同一の圧電材料であるが、基体1aと薄板1bでは分極方向が異なる。
【0087】
より具体的には、基体1aは図中の上方向が+に分極しているのに対して、薄板1bは図中の下方向が+に分極している。この圧電基板1に薄板1b側から溝加工を施し、カバーウエハ部材2を貼り合わせることで第1のインク室41が形成される。第1のインク室41を構成する部分のカバーウエハ部材2の第1のチャンネル壁11との接合部分は、圧電基板と同等の剛性を有するセラミックス基板、例えば圧電基板、快削性セラミクスなどで構成されている。
【0088】
第1のインク室41の内側面には全域に渡って電極51が形成されており、それぞれのインク室内の電極は実施例1において説明したものと同様の電気接続方法により個別に外部駆動用ICに電気的に接続されて、インク室を介して対向している電極は常に同電位である。
【0089】
一方、第1のインク室41を隔てる第1のチャンネル壁11の間には、外部駆動用ICが与える任意の電位差を印加することが可能である。圧電体により構成されて図中の上下方向に分極している第1のチャンネル壁11に電極51により分極方向に対して直交方向に印字データに応じた電圧を印加することにより、第1のチャンネル壁11がせん断方向にすべり変形する。この変形力がインクを吐出させる力となる。
【0090】
図10(B)は図9のインクジェットヘッド10のX(B)−X(B)横断面である。インク液の残留振動の低減を担う第1のインク室42を含むN.A.部分の横断面図である。第2のインク室42を構成する第2のチャンネル壁12が接着される側のカバーウエハ部材2中には、カバーウエハ部材2の基体より剛性の低い低剛性部材3が埋め込まれており、第2のチャンネル壁12の頂上部は低剛性部材3と接着されている。
【0091】
電極52は第2のインク室42の内側面全域にも形成されており、この部分の電極52は第1のインク室41内の電極51をインクジェットヘッド10Bの後端部まで引き延ばす役目を担う。さらに、図9において、インクジェットヘッド10Bの後端部の第2のインク室42内には、導電部材8が充填されており、インクジェットヘッド10Bの後端面には導電部材8が露出している。なお、この導電部材8はインク室4内にのみ充填されているため、各インク室4内にある導電部材8は隣接するインク室4内の導電部材と互いに電気的に短絡することはない。
【0092】
電気的に互いに独立した導電部材8に対して、インク室アレイと略等ピッチで引き出し電極がパターニングされているフレキシブル基板9を、アライメント(位置合わせ)しながら異方性導電膜を介して電気的に接続する。このフレキシブル基板9は外部駆動用IC(図示省略)に接続されている。すなわち、外部駆動用ICにより印字データに応じて印加される電圧は、フレキシブル基板9に設けられた引き出し電極、インク室後端部に埋め込まれた導電部材8、第2のインク室側面に設けられた電極52、第1のインク室41の側面に設けられた電極51、の順に伝搬し、インク吐出を行なう。
【0093】
図10(B)に示すように、第2のインク室42を隔てる第2のチャンネル壁12は、低剛性部材3と貼り合わせられているため、壁から発生する剪断力は非常に小さくなる。よって、第2のインク室42内において第2のチャンネル壁12はインク液に対して圧力を印加しインク吐出力を発生することはない。
【0094】
第1のチャンネル壁11の変形により、壁部が第1のインク室41の外側に変形するとインクがマニフォールド7、共通インク室15、第2のインク室42を通じて第1のインク室41に供給および充填される。逆に、内側に変形するとその第1のインク室41内のインクが加圧されノズル孔60を通じてインクが噴出する。
【0095】
インクが噴出するのと同時に第1のインク室41で生じた圧力波は、インクの供給経路とは逆に第2のインク室42、共通インク室15の順に進行していく波と、第1のインク室41と第2のインク室42の界面で反射してくる波に分かれる。
【0096】
しかし、本実施の形態では、この圧力波は、大部分が第1のインク室41のそれぞれと連通し、かつ隣接するインク室とはチャンネル壁12を介して隔てられた空間、すなわち第2のインク室42を伝わっていくため、第1のインク室41と第2のインク室42との界面で反射し、第1のインク室41へ戻る圧力波は非常に少なくなる。
【0097】
したがって、任意の第1のインク室41内で生じた圧力波が、第1のインク室41と第2のインク室42の界面で反射して第1のインク室41へ伝搬することはなく、このような圧力波の残留振動を抑制することが可能となる。
【0098】
(インクジェットヘッド10Bの製造方法)
次に、本実施例の製造法を述べる。本実施例の製造方法は、上記実施の形態1において説明したものと類似する部分が多いため重複する部分は省く。実施の形態1では、圧電基板1中に低剛性部材3を設けていたが、本実施の形態ではカバーウエハ部材2側に低剛性部材3を設けている。
【0099】
カバーウエハ部材2に低剛性部材3を埋め込む方法としては、実施の形態1において圧電基板に凹み加工を行った後、低剛性部材を埋設する方法と同一の方法を用いることができる。すなわち、カバーウエハ部材2に対してエッチング加工方法、サンドブラスト加工方法、またはダイシング加工方法により凹み部分を形成し、凹み部分に樹脂、または低剛性セラミクスを充填し硬化させ、充填部材がカバーウエハ部材2に対して面位置となるように面研削を行なう。
【0100】
圧電基板は薄板1b、基体1aからなるシェブロン基板に薄板1b側から溝加工を施し、スパッタリングにより電極を形成した後、ディスペンサーを用いて溝直交方向に導電性樹脂を充填する。チャンネル壁頂上部の電極と溝内に充填されていない導電性樹脂を、ダイシング加工、または研削加工により除去し、圧電基板を調製する。
【0101】
上述したように、低剛性部材を埋設したカバーウエハ部材2と、インク室となる溝が形成された圧電基板を、低剛性部材とチャンネル壁が当接するようにアライメントしながら、エポキシ系接着剤を用いて接着する。その後、ダイシング加工により小片化して、図9および図10に示す、インクジェットヘッド10Bを得る。なお、ノズル接着、フレキシブル基板接続、および、マニフォールド接着等については上記実施の形態1と同様であるためその説明を省略する。
【0102】
(実施の形態3)
次に、図11を参照して、実施の形態3におけるインクジェットヘッド10Cおよびその製造方法について説明する。本実施の形態におけるインクジェットヘッド10Cは、第2のインク室42を構成する第2のチャンネル壁12の壁頂上部の断面を上向きの凸型形状12aとすることにより、第2のチャンネル壁12の剛性を低くしたものである。なお、本実施の形態に係るインクジェットヘッド10Cの横断面は上記実施の形態2において説明したものと同一であるため、重複する説明は省略する。
【0103】
(特徴的構造)
図11(A)はインクジェットヘッド10Cの第1のインク室41の縦断面図(図9の中のX(A)−X(A)に対応する断面図)であり、構成については上述した実施の形態1および2と同様である。第1のチャンネル壁11は壁厚が溝深さ方向に渡って一定であり、印字データーに応じてインク吐出を行なうエネルギーを発生することができる。
【0104】
一方、図11(B)は、インクジェットヘッド10Cの第2のインク室42の縦断面図(図9の中のX(B)−X(B)に対応する断面図)である。第2のチャンネル壁12は頂上部近傍において壁厚が薄くなり、断面形状が上方に向かった凸型形状12aを有している。凸型形状12aを備える第2のチャンネル壁12の頂上部がカバーウエハ部材2中の低剛性部材3と接着され、第2のインク室42を構成している。
【0105】
この構成により、第2のチャンネル壁12の剛性は非常に低くなり、電圧を印加しても第2のインク室42内のインクに対して圧力を与えることはない。本実施の形態では第1のチャンネル壁11および第2のチャンネル壁12の厚壁部分の厚みが約90μmに対して、第2のチャンネル壁12の頂上部の厚みが約40μmとなるように設定した。
【0106】
(インクジェットヘッド10Cの製造方法)
インクジェットヘッド10Cの製造方法は、上記実施の形態2において説明したものと同様に、一部低剛性部材を埋設したカバーウエハ部材2と、シェブロン型の圧電基板1に溝加工、電極形成を行った後、第2のチャンネル壁12となる部分を、溝加工に用いたブレードに対して50μm厚みがあるダイシングブレードで溝方向に溝加工を行なう(第1のチャンネル壁11を研削しないようにチョッパー加工する)。
【0107】
これにより、第2のチャンネル壁12の壁頂上部を凸型に形成する。その後、ディスペンサーを用いて溝直交方向に導電性樹脂を充填する。そして、チャンネル壁頂上部の電極と溝内に充填されていない導電性樹脂を、ダイシング加工、もしくは研削加工により除去し、圧電基板を調製する。
【0108】
低剛性部材を埋設したカバーウエハ部材2と、インク室となる溝が形成された圧電基板とを、低剛性部材と第2のチャンネル壁12の頂上部とが当接するようにアライメントしながら、エポキシ系接着剤を用いて接着する。その後、ダイシング加工により小片化してインクジェットヘッド10Cを得る。その後のノズル接着、フレキシブル基板接続、マニフォールド接着等については実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0109】
(実施の形態4)
次に、図12を参照して、実施の形態4におけるインクジェットヘッド10Dおよびその製造方法について説明する。本実施の形態におけるインクジェットヘッド10D、第2のインク室42を構成する第2のチャンネル壁12の壁頂上部の断面が下向きに凹型形状12cとすることにより、第2のチャンネル壁12の剛性を低くしたものである。なお、本実施の形態に係るインクジェットヘッドDの横断面は実施の形態2において説明したものと同一であるため、重複する説明は省略する。
【0110】
(特徴的構造)
図12(A)はインクジェットヘッド10Dの第1のインク室41の縦断面図(図9の中のX(A)−X(A)に対応する断面図)であり、構成については上述した実施の形態1および2と同様である。第1のチャンネル壁11は壁厚が溝深さ方向に渡って一定であり、印字データーに応じてインク吐出を行なうエネルギーを発生することができる。
【0111】
一方、図12(B)は、インクジェットヘッド10Dの第2のインク室42の縦断面図(図9の中のX(B)−X(B)に対応する断面図)である。第2のチャンネル壁12は頂上部近傍において壁の中央部に溝が加工され、断面形状が下方に向かった凹型形状12cを有している。凹型形状12cを備える第2のチャンネル壁12の頂上部がカバーウエハ部材2中の低剛性部材3と接着され、第2のインク室42を構成している。
【0112】
この構成により、第2のチャンネル壁12の剛性は非常に低くなり、電圧を印加しても第2のインク室42内のインクに対して圧力を与えることはない。本実施の形態では第1のチャンネル壁11および第2のチャンネル壁12の厚壁部分の厚みが90μmに対して、第2のチャンネル壁12の頂上部に形成される溝の幅が50μmとなるように設定した。
【0113】
(インクジェットヘッド10Dの製造方法)
インクジェットヘッド10Dの製造方法は、上記実施の形態2において説明したものと同様に、一部低剛性部材を埋設したカバーウエハ部材2と、シェブロン型の圧電基板に溝加工、電極形成を行った後、第2のチャンネル壁の壁厚中央部をダイシングブレードを用いて溝方向に溝加工を行なう(第1のチャンネル壁上を研削しないようにチョッパー加工する)。
【0114】
第2のチャンネル壁12の壁頂上に幅50μm、深さ100μmの溝を設け、壁頂上部を凹型形状12cに形成する。その後、ディスペンサを用いて溝直交方向に導電性樹脂を充填する。その後、チャンネル壁頂上部の電極と溝内に充填されていない導電性樹脂を、ダイシング加工、またはは研削加工により除去し、圧電基板を調製する。
【0115】
低剛性部材を埋設したカバーウエハ部材2と、インク室となる溝が形成された圧電基板を、低剛性部材と第2のチャンネル壁12の頂上部が当接するようにアライメントしながら、エポキシ系接着剤を用いて接着する。その後、ダイシング加工により小片化してインクジェットヘッド10Dを得る。その後のノズル接着、フレキシブル基板接続、マニフォールド接着等については実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
【0116】
(実施の形態5)
次に、図13を参照して、実施の形態5におけるインクジェットヘッド10Eおよびその製造方法について説明する。本実施の形態に係るインクジェットヘッド10Eの構造は概ね上記実施の形態1に係るインクジェットヘッド10Aと同じであるため、詳細な説明は説明は省略する。なお、図13は、図2(A),(B)中のI−I線矢視断面に対応する、インクジェットヘッド10Eの横断面図である。
【0117】
(特徴的構造)
本実施の形態におけインクジェットヘッド10Eの特徴的構造は、実施の形態1のインクジェットヘッド10Aの構造と比べた場合、第2のインク室42内に、インク室に対して直交する方向に複数のインク室に渡り連通する、浅溝からなるインク室間流路16が設けられている点にある。
【0118】
図13に示すように、第2のインク室42を構成する第2のチャンネル壁12の頂上部近傍に、インク室間流路16が、インク室となる溝と直交する方向(紙面直交方向)に幅50μm、深さ20μmの溝形状、100μmピッチで複数設けられている。
【0119】
このインク室間流路16の条件は、第2のインク室42のインク室長手方向1mm当たりのインク室流路16の開口面積が4×107μm2以下であれば隣接するインク室に残留振動が伝搬して印字に悪影響をおよぼすことなく、隣接する第2のインク室間でインクの補充が可能となり高速印字が可能となる。
【0120】
(インクジェットヘッド10Eの製造方法)
インクジェットヘッド10Eの製造方法は、上記実施の形態1において説明したものと同様に、図7に示す工程において、低剛性部材3の所定表面領域にインク室間流路16を構成する凹み加工を行なう工程を追加する。その他は、実施の形態1の場合と同じである。
【0121】
なお、以上の説明では、分極方向の異なる2枚の圧電基板を張り合わせた構造のインクジェットヘッドについて説明したが、単一の圧電基板を用いて、該圧電基板のチャンネル壁の上半分にだけ電極を形成する構造のインクジェットヘッドについても適用できることはいうまでもない。
【0122】
また、上記実施の形態3から5に示すインクジェットヘッドの特徴的構造を、適宜上記実施の形態1および2インクジェットヘッドに適用して、さらなるインクジェットヘッドの特性の向上を図ることも可能である。
【0123】
したがって、今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0124】
【発明の効果】
この発明に基づいたインクジェットヘッドのある局面によれば、インク吐出に寄与する第1のインク室で発生した圧力波は、第1のインク室と一対で構成されており第1のインク室と共通インク室の間に設けられている第2のインク室へ大部分が進行し吸収・減衰される。また、第1のインク室と第2のインク室との界面で反射し第1のインク室へ戻る圧力は非常に少なく、インク吐出後の残留振動を抑制することができる。したがって、高速印字、および高精細印字を行っても、印字データに忠実な高品質な印字が可能である。
【0125】
この発明に基づいたインクジェットヘッドの他の局面によれば、部分的に低剛性材料を埋設した圧電基板にダイシング加工等の機械加工を行なうことにより第1のインク室と第2のインク室を同時に形成することが可能となる。また、インク吐出を行なう第1のインク室と、インクの制振効果を担う第2のインク室を、複数のインクジェットヘッドが得られる大面積基板の段階で設けることができるため、小片化したのちにそれぞれに設置する必要がなく量産性が良い。
【0126】
さらに、一般に圧電材料は静電容量が大きいが、第2のインク室の内側面に設けられている電極は第1のインク室内にある電極をインクジェットヘッド後端部へ引き出すためのものであり、その寄生容量は大きい。しかし、本発明によれば、第2のインク室を区画するチャンネル壁の構成部材が圧電材料以外の材料で構成されるため、第2のチャンネル壁が圧電材料で構成されている場合に比べ寄生容量が少なく、省エネルギー駆動が可能で、かつ、印字レスポンスが良く高性能なインクジェットヘッドを提供することが可能となる。
【0127】
また、さらに、圧電基板中に埋設した低剛性部材の有無によりインク室の吐出駆動の有無が決定されるため、吐出に寄与するインク室の長さ精度は圧電基板の調製精度にのみに依存する。よって、吐出に寄与するインク室の長さ、いわゆるアクティブ長の加工精度が高いインクジェットヘッドを作製することができ、高画質、高速印字への対応に不可欠な加工精度の良い短アクティブ長ヘッドを安定して提供することが可能となる。
【0128】
また、この発明に基づいたインクジェットヘッドのさらに他の局面によれば、圧電基板中に低剛性部材を設ける必要がなく、圧電基板への加工プロセスは従来技術通りの加工プロセスを踏襲でき、複雑な工程を必要としない。ゆえに、本発明の構成を有するインクジェットヘッドを容易に作製することが可能となる。
【0129】
また、カバーウエハ部材に低剛性部材を設けるプロセスについては、基本的にはザグリ加工を行い、低剛性部材を充填するだけで良く、圧電基板への加工プロセスとは別に加工を行なうことが可能であり、量産時のタクトタイム短縮に繋がる。
【0130】
また、この発明に基づいたインクジェットヘッドのさらに他の局面によれば、低剛性材料が樹脂材料であることにより、材料コストが安価で、さらに埋め込み工程、硬化工程、並びに不要部除去工程において、プロセスが簡便でプロセスコストが安価でインクジェットヘッドを作製することが可能となり、その結果、インクジェットヘッドの低コスト化が可能となる。さらに、樹脂材料は比誘電率が低いため、寄生容量が低減し、省エネルギー駆動が可能で、かつ印字レスポンスが早く高性能なインクジェットヘッドを提供することが可能となる。
【0131】
また、この発明に基づいたインクジェットヘッドのさらに他の局面によれば、低剛性材料が多孔質系材料であることにより、インクの制振作用を担う第2のインク室を構成する壁部の一部に多孔質系材料を用いることにより、互いに隣接する第2のインク室間において、残留振動は減衰し、インクの流れだけを保つことができる。よって、より高速印字化に伴い、特定ノズルの連続吐出時に懸念されるインクの供給を遅延無く行なうことが可能となる。
【0132】
また、多孔質系材料は、通常材料に比べ振動吸収効果が大きく、残留振動を急速に減衰させることができる。したがって、高速印字、および高精細印字を行っても、印字データに忠実な高品質な印字が可能である。また、必要な第2のインク室の長さが短くて良いため、インクジェットヘッドの小型化が可能であり、したがって製造コストが低く、寄生容量も少ない高性能なインクジェットヘッドを提供することが可能となる。
【0133】
また、この発明に基づいたインクジェットヘッドのさらに他の局面によれば、第2のチャンネル壁の頂上部近傍の断面形状が凸型に設けられることにより、ダイシング加工などの簡便な加工方法で第1のインク室と第2のインク室を区分することが可能である。また、第2のインク室を区画する第2のチャンネル壁の剛性を低くすることができる。
【0134】
また、本発明を上記各発明のインクジェットヘッドと併用させることで、第2のチャンネル壁の剛性を非常に低減することが可能となり、第1のインク室が発生するインク吐出効果は大きなものとなる。
【0135】
また、この発明に基づいたインクジェットヘッドのさらに他の局面によれば、第2のチャンネル壁の頂上部に溝平行方向に溝が設けられ、第2のチャンネル壁の頂上部の断面形状が凹型であることにより、ダイシング加工などの簡便な加工方法で第1のインク室と第2のインク室を区分することが可能となる。さらに第2のインク室を区画する第2のチャンネル壁の剛性を低くすることができる。また、本発明を請上記発明のインクジェットヘッドに併用することにより、第2のチャンネル壁の剛性を非常に低減することが可能となり、第1のインク室が発生するインク吐出効果は大きなものとなる。
【0136】
さらに、第2のチャンネル壁の頂上部に凹んだ領域、すなわち空気室が形成されるため、第2のチャンネル壁で生じる寄生容量が低減され、省エネルギー駆動が可能で、かつ印字レスポンスが早く高性能なインクジェットヘッドを提供することが可能となる。
【0137】
また、この発明に基づいたインクジェットヘッドのさらに他の局面によれば、第2のチャンネル壁の頂上部において、チャンネル壁に直交した方向に複数の溝が設けられていることにより、容易に第2のインク室を区画する第2のチャンネル壁の剛性を低くすることができると共に、残留振動が減衰する範囲内で隣接インク室間のインクのやりとりを行なうことが可能となる。よって、より高速印字化に伴い、特定ノズルの連続吐出時に懸念されるインクの供給を遅延無く行なうことが可能となり、高性能のインクジェットヘッドを提供することが可能となる。
【0138】
また、この発明に基づいたインクジェットヘッドの製造方法のある局面によれば、圧電基板に第2のインク室となる領域に凹み部分を形成する工程と、該凹み部分に低剛性材料を充填する工程と、インク室となる溝加工を行なう工程を、少なくとも含むことを特徴とすることにより、上述した効果を有するインクジェットヘッドを、大面積の基板から複数加工することが可能であり、量産に適し、製造コストを下げることができる。
【0139】
また、この発明に基づいたインクジェットヘッドの製造方法の他の局面によれば、カバー部材に、第2のインク室となる領域に凹み部分を形成する工程と、該凹み部分に低剛性材料を充填する工程とを少なくとも含むことにより、上述した効果を有するインクジェットヘッドを、大面積の基板から複数加工することが可能であり、量産に適し、製造コストを下げることができる。さらに、圧電基板への加工プロセスとは別に加工を行なうことが可能であり、量産時のタクトタイム短縮に繋がる。
【0140】
また、この発明に基づいたインクジェットヘッドの製造方法のさらに他の局面によれば、圧電基板にインク室となる溝加工を行なう工程と、インク室内側面に電極を形成する工程と、第2のチャンネル壁の頂上部近傍が凸型もしくは凹型となるように第2のチャンネル壁上にダイシング加工を行なう工程を少なくとも含むことにより、ダイシング加工で、インク室となる溝を形成する工程と、第2のチャンネル壁の剛性を低くする工程を、同一のダイシング装置で共用することが可能である。
【0141】
その結果、新たな設備投資が必要なく、製造コストを低減することが可能となる。さらに、電極を形成した後、第2のチャンネル壁を加工するため、凸型の場合は不要な電極面積を減らし、凹型の場合は途中に空気室が設けられるため、寄生容量を削減することが可能となる。
【0142】
また、この発明に基づいたインクジェットヘッドの製造方法のさらに他の局面によれば、ダイシング加工で、インク室となる溝を形成する工程と、第2のチャンネル壁の剛性を低くする工程、隣接する第2のインク室間にインク室間流路を形成する工程を同一のダイシング装置で共用することが可能である。その結果、新たな設備投資が必要なく、製造コストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1におけるインクジェットヘッド10Aの内部構造を示す縦断面図である。
【図2】 (A)は図1中のII(A)−II(A)線矢視断面図であり、(B)は図1中のII(B)−II(B)線矢視断面図である。
【図3】 実施の形態1におけるインクジェットヘッド10Aの製造方法を示す第1断面工程図である。
【図4】 実施の形態1におけるインクジェットヘッド10Aの製造方法を示す第2断面工程図である。
【図5】 実施の形態1におけるインクジェットヘッド10Aの製造方法を示す第3断面工程図である。
【図6】 実施の形態1におけるインクジェットヘッド10Aの製造方法を示す第4断面工程図である。
【図7】 実施の形態1におけるインクジェットヘッド10Aの製造方法を示す第5断面工程図である。
【図8】 実施の形態1におけるインクジェットヘッド10Aの製造方法を示す第6断面工程図である。
【図9】 実施の形態2におけるインクジェットヘッド10Bの内部構造を示す縦断面図である。
【図10】 (A)は図9中のX(A)−X(A)線矢視断面図であり、(B)は図9中のX(B)−X(B)線矢視断面図である。
【図11】 実施の形態3におけるインクジェットヘッド10Cの内部構造を示す横断面図であり、(A)は図9中のX(A)−X(A)線矢視断面に対応する図であり、(B)は図9中のX(B)−X(B)線矢視断面に対応する図である。
【図12】 実施の形態4におけるインクジェットヘッド10Dの内部構造を示す横断面図であり、(A)は図9中のX(A)−X(A)線矢視断面に対応する図であり、(B)は図9中のX(B)−X(B)線矢視断面に対応する図である。
【図13】 実施の形態5におけるインクジェットヘッド10Eの内部構造を示す横断面図であり、図2(A),(B)中のI−I線矢視断面に対応する図である。
【図14】 (A)は従来のインクジェットヘッドの横断面図であり、(B)は、(A)中のXIV−XIV線矢視断面図である。
【符号の説明】
1 圧電基板、2 カバーウエハ部材、3 低剛性部材、4 インク室、5 電極、6 ノズルプレート、7 マニフォールド、8 導電部材、9 フレキシブル基板、10A,10B,10C,10D,10E インクジェットヘッド、11 第1のチャンネル壁、12 第2のチャンネル壁、15 共通インク室、16 インク室間流路、20 凹み部分、41 第1のインク室、42 第2のインク室、51 第1のチャンネル壁側面の電極、52 第2のチャンネル壁側面の電極、60 ノズル孔、70 ダイシングブレード。
Claims (7)
- 圧電性材料を含む基板に設けられた複数の溝に対してその開口部を塞ぐようにカバーウェハーを配置することによって複数のインク室が設けられ、インクの液滴を吐出するノズル孔が設けられたインクジェットヘッドであって、
インクの吐出を行なうインク室のそれぞれが、前記ノズル孔側に設けられた前記インクの吐出に寄与する第1のインク室と、前記第1のインク室と連通し残留振動を抑えるための第2のインク室とを一対として構成されており、
前記第2のチャンネル壁の頂上部近傍の断面形状が、凸型形状であることを特徴とする、インクジェットヘッド。 - 圧電性材料を含む基板に設けられた複数の溝に対してその開口部を塞ぐようにカバーウェハーを配置することによって複数のインク室が設けられ、インクの液滴を吐出するノズル孔が設けられたインクジェットヘッドであって、
インクの吐出を行なうインク室のそれぞれが、前記ノズル孔側に設けられた前記インクの吐出に寄与する第1のインク室と、前記第1のインク室と連通し残留振動を抑えるための第2のインク室とを一対として構成されており、
前記第2のチャンネル壁の頂上部に溝平行方向に溝が設けられ、前記第2のチャンネル壁の頂上部近傍の断面形状が凹型形状であることを特徴とする、インクジェットヘッド。 - 圧電性材料を含む基板に設けられた複数の溝に対してその開口部を塞ぐようにカバーウェハーを配置することによって複数のインク室が設けられ、インクの液滴を吐出するノズル孔が設けられたインクジェットヘッドであって、
インクの吐出を行なうインク室のそれぞれが、前記ノズル孔側に設けられた前記インクの吐出に寄与する第1のインク室と、前記第1のインク室と連通し残留振動を抑えるための第2のインク室とを一対として構成されており、
前記第2のチャンネル壁の頂上部において、チャンネル壁に直交した方向に複数の溝を含むことを特徴とする、インクジェットヘッド。 - 圧電基板と、前記圧電基板にカバー部材を張り合わせることによりインク室が形成されるインクジェットヘッドの製造方法であって、
凹部が形成された圧電基板のこの凹部に、前記圧電基板より低剛性の材料を埋設する工程と、
前記圧電基板に、前記低剛性材料を分断するように、相互に平行な複数の溝を形成してチャンネル壁を設ける工程と、
上記溝の両側面に電極を形成する工程と、
前記カバー部材と、前記圧電基板とを張り合わせる工程と、
を備える、インクジェットヘッドの製造方法。 - 圧電基板と、前記圧電基板にカバー部材を張り合わせることによりインク室が形成されるインクジェットヘッドの製造方法であって、
前記圧電基板に平行かつ複数の溝を形成してチャンネル壁を設ける工程と、
上記溝の両側面に電極を形成する工程と、
あらかじめ凹部を有するカバー部材の前記凹部に前記圧電基板より低剛性の材料を設ける工程と、
前記カバー部材の前記凹部側と、前記圧電基板の溝形成側とを張り合わせる工程と、
を備える、インクジェットヘッドの製造方法。 - 圧電基板と、前記圧電基板にカバー部材を張り合わせることによりインク室が形成されるインクジェットヘッドの製造方法であって、
前記圧電基板に平行かつ複数の溝を形成してチャンネル壁を設ける工程と、
前記溝の両側面に電極を形成する工程と、
前記チャンネル壁の頂上部の一部が凸部もしくは凹部となるように、前記チャンネル壁を前記チャンネル壁形成方向に渡ってダイシング加工する工程と、
あらかじめ凹部を有するカバー部材の前記凹部に前記圧電基板より低剛性の材料を設ける工程と、
前記カバー部材の前記凹部側と、前記圧電基板の溝形成側とを張り合わせる工程と、
を備える、インクジェットヘッドの製造方法。 - 圧電基板と前記圧電基板にカバー部材を張り合わせることによりインク室が形成されるインクジェットヘッドの製造方法であって、
前記圧電基板に平行かつ複数の溝を形成してチャンネル壁を設ける工程と、
上記溝の両側面に電極を形成する工程と、
前記チャンネル壁の頂上部の一部を前記チャンネル壁形成方向とは直交する方向に渡ってダイシング加工により、複数の凹部溝を形成する工程と、
前記圧電基板に形成された前記溝に、前記圧電基板より低剛性の材料を埋設する工程と、
前記カバー部材と、前記圧電基板とを張り合わせる工程と、
を備える、インクジェットヘッドの製造方法。
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