JP2004174835A - 水性コート液並びにこれを用いた画像記録方法及び記録物 - Google Patents
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Abstract
【課題】顔料インク画像上に塗布可能で、該画像の耐擦性を高め、記録面の光沢ムラを低減し得る水性コート液並びにこれを用いた画像記録方法及び記録物を提供すること。
【解決手段】本発明の水性コート液は、記録媒体上に記録された記録画像に塗布されて使用されるもので、少なくともポリマー微粒子を含有し、液温20℃における表面張力が25mN/m以下であることを特徴とする。表面張力を斯かる範囲に調整するため、さらに、フッ素系あるいはシリコーン系の界面活性剤を含有させることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明の水性コート液は、記録媒体上に記録された記録画像に塗布されて使用されるもので、少なくともポリマー微粒子を含有し、液温20℃における表面張力が25mN/m以下であることを特徴とする。表面張力を斯かる範囲に調整するため、さらに、フッ素系あるいはシリコーン系の界面活性剤を含有させることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐擦性、耐光性、耐水性、光沢感などを高める目的で、記録媒体上に記録された記録画像に塗布される水性コート液並びにこれを用いた画像記録方法及び記録物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、紙やプラスチックフィルムなどの記録媒体上に記録された画像の耐擦性、耐光性、耐水性、光沢感などを高める目的で、該記録媒体上に該画像を被覆する被膜(保護層)を設けることが行われている。この保護層の形成方法としては、ラミネートフィルムを記録媒体上に接着させる方法と、皮膜形成能を有するコート液を記録媒体上に塗布する方法が知られている。後者のいわゆるリキッドラミネート法は、前者のいわゆるフィルムラミネート法に比べて、装置の大型化や複雑化を招かず、比較的低コストで保護層を形成できるというメリットを有している。リキッドラミネート法に関し、本出願人は、本願の先の出願に係る特許文献1において、水、ポリマー微粒子及び浸透剤を含有し、20℃における表面張力が40mN/m以下であるコート液を開示している。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−201428号公報
【0004】
また、記録媒体への画像記録方法には、オフセット印刷方式、感熱転写方式、インクジェット記録方式、静電トナー記録方式など種々の方式があり、なかでもインクジェット記録方式は、印刷版が不要で多色印刷を高速且つ容易に行うことができるため、種々の分野において近年急速に普及している。インクジェット記録方式は、記録ヘッド(インクジェットヘッド)の微小なジェットノズルからインクの液滴を吐出させて記録媒体に付着させる印刷方式であり、電気−機械変換素子や電気−熱変換素子などを用いてインクの吐出を行う。
【0005】
近年のインクジェット記録技術の革新的な進歩により、現在では、画質及び保存性(経時による品質劣化の生じにくさ)の点で実用上十分満足できるレベルのインクジェット記録物を作製することが可能となっているものの、銀塩写真と比較するとまだ不十分な点があるのが現状である。特に、保存性の点で、インクジェット記録物は銀塩写真に大きく差をあけられており、保存性の改良がインクジェット記録技術の重要な課題の一つとなっている。本発明者らは、現在主流となっている水溶性染料を使用した染料インクではこの課題の解決が困難であると考え、染料インクに比して色再現性の点で若干難があるものの、耐水性や耐光性等に優れる顔料系色材を使用した水性顔料インクに着目し、これを主体としたインクジェット記録について種々の検討を行っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
顔料インクを用いて記録媒体上に記録された記録画像(顔料インク画像)は、耐擦性が低く、指などで軽く擦っただけで顔料粒子が脱落し、記録画像の一部あるいは全部が欠損したり、インクが打ち込まれていない記録媒体の地部分が汚れたりするという問題があった。また、顔料インクにより画像が形成されたインクジェット記録物は、印刷部分と非印刷部分(白地部分)との間、あるいは印刷部分でも着色剤の種類や付着量が異なる部分間などで光沢差が生じるいわゆる光沢ムラが発生し、記録物としての価値が低下するという問題もあった。光沢ムラは、特に、光沢度の高い記録媒体を用いた場合に目立つ傾向があり、高品位の銀塩写真調の記録物を作製する上で大きな問題となっていた。
【0007】
そこで、上記リキッドラミネート法により顔料インク画像上に被膜(保護層)を形成して、該画像の耐光性や耐水性など共に耐擦性を高め、さらに光沢ムラを低減させることが考えられる。しかしながら、上記特許文献1に開示されているコート液は、顔料インク画像上に塗布しようとしてもはじかれてしまい、耐擦性や光沢ムラの改善効果に乏しいものであった。顔料インクを用いたインクジェット記録に関する技術開発は、染料インクを用いたものと比べてまだ日が浅く、顔料インクに対応したコート液は未だ開示されていない。
【0008】
従って、本発明の目的は、顔料インク画像上に塗布可能で、該画像の耐擦性を高め、光沢ムラを低減し得る水性コート液並びにこれを用いた画像記録方法及び記録物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、記録媒体上に記録された記録画像に塗布される水性コート液であって、少なくともポリマー微粒子を含有し、液温20℃における表面張力が25mN/m以下であることを特徴とする水性コート液を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
また、本発明は、記録媒体の被記録面に顔料インクを吐出させて画像を記録するインクジェット記録工程と、該インクジェット記録工程を経た該被記録面に、上記水性コート液を塗布する後処理工程とを備えたことを特徴とする画像記録方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、色材が付着した記録媒体上に、該色材を被覆する被膜を設けてなる記録物において、該被膜が、上記水性コート液から形成されていることを特徴とする記録物を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、先ず、本発明の水性コート液について詳細に説明する。
【0013】
本発明の水性コート液は、紙などの記録媒体上に記録された記録画像に塗布されて使用されるもので、ポリマー微粒子及び水を必須成分として含有する。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水を用いることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理された水は、カビやバクテリアの発生を防止して長期保存を可能とする点で好ましい。
【0014】
上記ポリマー微粒子としては、紙などの記録媒体(記録画像)上で被膜(保護層)を形成し得る樹脂からなるものが用いられる。このような樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。特に、ポリアクリル酸、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸共重合体又はポリエチレンの何れかからなるポリマー微粒子は、被膜の透明性と耐擦性を高いレベルで両立させることが可能となるため好ましい。ポリマー微粒子を水性コート液中に含有させるに当たっては、ポリマー微粒子そのものを水性コート液に直接添加することもできるし、ポリマー微粒子を分散質とする水性エマルジョンとして添加することもできる。
【0015】
また、上記ポリマー微粒子としては、水性コート液の最低造膜温度(JIS K6800に準拠。以下、MFTという)が、好ましくは−20〜130℃、更に好ましくは0〜100℃となるようなものを使用することが好ましい。水性コート液のMFTがこの範囲にあると、水性コート液が通常使用される環境下で、特別な加熱装置などを別途用いなくとも容易に被膜を形成させることができ、且つ塗布前にゲル化したりするおそれがなく、インクジェット方式による塗布を行うのに必要な吐出安定性を確保することができる。
【0016】
上記ポリマー微粒子の含有量は、水性コート液中、好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは3〜10重量%である。ポリマー微粒子の含有量が1重量%未満では、記録画像の保護効果に乏しく、15重量%超では、水性コート液をインクジェット方式により塗布する場合に必要な吐出安定性を確保出来ない。尚、ポリマー微粒子を水性エマルジョンとして使用する場合は、斯かる含有量は樹脂固形分量に相当する。
【0017】
そして、本発明の水性コート液は、液温20℃における表面張力が25mN/m以下である。表面張力が25mN/m超のコート液を、顔料インクを用いて記録媒体上に記録された記録画像(顔料インク画像)の如き顔料系色材付着部分に塗布した場合、該色材表面で該コート液がはじかれてしまうため、最終的に形成される被膜はピンホールの様な気泡を含んだものとなり、光沢ムラの低減を図ることは出来ない。また、この被膜は気泡を含んでいるため実用上十分な膜強度を有しておらず、耐擦性の向上効果にも乏しい。このような理由から、本発明では上記表面張力を25mN/m以下に規定して、顔料インク画像の耐擦性の向上と光沢ムラの低減を図っているが、光沢ムラをより確実に低減させる観点から、上記表面張力は20mN/m未満とすることが好ましい。
【0018】
また、上記水性コート液の表面張力の下限値は、インク滲みの防止やインクジェット吐出安定性の確保の観点から、13〜15mN/m程度とすることが好ましい。
【0019】
水性コート液の表面張力は、上記ポリマー微粒子の種類や含有量などにも影響されるため、上記表面張力25mN/m以下を達成するためには、これらを適宜調整することも重要であるが、適切な表面張力調整剤を用いることが最も効果があり重要である。本発明で好ましく用いられる表面張力調整剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、イソアミルアルコール、メチルアミルアルコールなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用することができる。これらのうち、特に、フッ素系界面活性剤及び/又はシリコーン系界面活性剤は、少量で表面張力を変動させることが可能で表面張力調整能に優れており、本発明で好ましく用いられる。
【0020】
上記フッ素系界面活性剤は、親水基及び疎水基を有する通常の界面活性剤において、該疎水基中の炭素原子(C)に結合した水素原子(H)の一部又は全部をフッ素原子(F)で置換したものである。該親水基は、イオン性、非イオン性の何れでもよく、特に限定されない。フッ素系界面活性剤としては、例えば、一般式Rf−COOM、Rf−OSO3M、Rf−SO3M、Rf−PO2(OH)2などで表される陰イオン性フッ素系界面活性剤;一般式Rf−NR’R”HXなどで表される陽イオン性フッ素系界面活性剤;一般式Rf−OH、一般式Rf−BNR’(CH2)nOH、Rf−BN(C2H4O)nHなどで表される非イオン性フッ素系界面活性剤が挙げられる。ここで、Rfは、アルキル基中のHの一部又は全部をFで置換したフッ化炭素基を表し、Mは、H又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を表し、Xは、ハロゲン酸銀を表し、R’及びR”は、それぞれH又は低級アルキル基を表し、Bは、CO又はSO2を表す。
【0021】
また、上記シリコーン系界面活性剤は、親水基及び疎水基を有する通常の界面活性剤において、該疎水基の主鎖にケイ素原子(Si)を含むものである。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、一般式(CH3)3Si〔OSi(CH3)2〕x(C2H4O)yCH3で表されるポリエーテル変性シリコーンオイルが代表的な例として挙げられ、この他にも一般式R1−Si−R2R3R4−COOHなどで表される陰イオン性界面活性剤が挙げられる。ここで、x及びyは、それぞれ1〜15の整数を表し、R1〜R4は、それぞれH又は低級アルキル基を表す。
【0022】
上記表面張力調整剤の含有量は、水性コート液中、好ましくは0.1〜30重量%、更に好ましくは0.2〜10重量%である。表面張力調整剤の含有量が0.1重量%未満では、表面張力25mN/m以下の達成が困難であり、30重量%超では、顔料インク画像に水性コート液を塗布した際にインク滲みを生じるおそれがあり、また、水性コート液中に気泡が生じ易く、水性コート液をインクジェット方式により塗布する場合に必要な吐出安定性を確保出来ないおそれがある。
【0023】
本発明の水性コート液には、上記の水、ポリマー微粒子及び表面張力調整剤以外に、必要に応じ、下記の如き各種添加剤の1種又は2種以上を含有させることができる。
【0024】
本発明の水性コート液には、インクジェット方式により塗布する場合に必要な吐出安定性を確保するため、湿潤剤を含有させることが好ましい。湿潤剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール等の多価アルコール類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等の尿素類;マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、マルトース等の糖類等が挙げられる。
【0025】
また、本発明の水性コート液には、吐出安定性の確保や記録媒体への浸透性を高める観点から、浸透剤を含有させることが好ましい。浸透剤としては、例えば、メタノール、n−プロピルアルコール、イソブタノール、n−ペンタノール等の低級アルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類等が挙げられる。
【0026】
上記湿潤剤及び上記浸透剤の含有量は、それぞれ、水性コート液中、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは5〜30重量%である。
【0027】
本発明の水性コート液に含有可能なその他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、消光剤、酸化防止剤、耐水化剤、防黴剤、防腐剤、増粘剤、流動性改良剤、pH調整剤、消泡剤、抑泡剤、レベリング剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0028】
次に、本発明の記録物について説明する。本発明の記録物は、色材が付着した記録媒体上に、該色材を被覆する被膜を設けてなる記録物において、該被膜が、上記水性コート液から形成されていることを特徴とする。上記水性コート液を用いた被膜の形成方法は、後述する本発明の画像記録方法における形成方法が適用できる。
【0029】
上記の色材が付着した記録媒体とは、印刷済みの記録媒体(記録物)である。印刷方法(色材の付着方法)としては、例えば、インクジェット記録方式、昇華転写方式、溶融転写方式、オフセット印刷方式、静電トナー記録方式などが挙げられ、特に制限されない。
【0030】
上記色材としては各種染料や顔料などが使用でき、特に制限されないが、上述したように、上記水性コート液は、特に顔料系色材の付着部分に対して有効であり、該部分に塗布してもはじかれることなく、保護層として機能し得る被膜を形成することができる。顔料系色材は、一般に記録画像の耐水性や耐光性などに優れており、染料系色材を用いた場合に比して、本発明に係る被膜と相俟って高画質・高保存性の記録物を提供し得るため、本発明で好ましく用いられる。顔料系色材としては、例えば、酸化チタン及び酸化鉄、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックなどの無機系顔料;アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどの有機系顔料などが挙げられる。
【0031】
また、上記記録媒体としては、印刷が可能なものであればよく、特に制限されない。例えば、上質紙、再生紙、コピー用紙、ボンド紙、インクジェット記録用紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、樹脂被覆紙(レジンコート紙)、バライタ紙、板紙、和紙、不織布;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム等が挙げられる。
【0032】
尚、光沢ムラは、前述したように、光沢度の高い記録媒体を使用した場合に特に問題となるため、光沢ムラ防止性(光沢感の向上)に優れるという本発明の特長が活かされるという点で、上記記録媒体としては、被記録面(色材付着面)の75度鏡面光沢度(JIS P8142に準拠)が30%以上であるものを用いることが好ましい。このような光沢度の高い記録媒体には、塗工紙も非塗工紙も含まれ、キャスト法などにより鏡面光沢仕上げされた塗工紙などが挙げられ、市販品としては、セイコーエプソン社製の「PM写真用紙」(75度鏡面光沢度47%)、「フォトプリント紙2」(75度鏡面光沢度59%)、「MC光沢紙」(75度鏡面光沢度39%)、「MC写真用紙」(75度鏡面光沢度35%)等がある。
【0033】
本発明の記録物における上記被膜の厚みは、被膜形成前の記録物が本来有していた風合いや質感を変化させず、また被膜形成により懸念されるブロッキングを起こさずに、記録画像の耐擦性や光沢ムラなどを改善する観点から、1〜15μmが好ましく、2〜10μmが更に好ましい。このような薄い被膜(少ないコート液塗布量)は、該被膜の形成材料として上記水性コート液を用いることにより可能となるもので、従来のこの種のコート液(表面張力25mN/m超のコート液)を用いて上記のような薄い被膜を形成した場合は、特に、顔料インク印刷部分と非印刷部分との間の光沢差(光沢ムラ)を充分に低減させることが出来ない。
【0034】
次に、上記水性コート液を用いた本発明の画像記録方法について詳細に説明する。
【0035】
本発明の画像記録方法は、記録媒体の被記録面に顔料インクを吐出させて画像を記録するインクジェット記録工程と、該インクジェット記録工程を経た該被記録面に、上記水性コート液を塗布する後処理工程とを備えている。
【0036】
上記インクジェット記録工程は、公知のインクジェット方式の記録装置(インクジェットプリンタ)を用いて行うことができる。インクの吐出はインクジェットプリンタのインクジェットヘッドが行う。インクジェット方式には、ノズルから一定時間間隔でインクを吐出し続け、吐出されたインク液滴を偏向させることにより画像を形成するコンティニュアス方式と、画像データに対応してインクを吐出させるオンデマンド方式とがあり、何れの方式でもよいが、細かい打ち込み制御が可能、廃液量が少ない等の点で、オンデマンド方式が好ましい。また、インク吐出制御方式には、ピエゾ素子などの電気−機械変換素子を用いて電圧により制御する方式や、電気−熱変換素子などを用いて熱エネルギーにより制御する方式等があるが、特に制限されない。
【0037】
上記後処理工程では、上記インクジェット記録工程を経た記録媒体の被記録面のうち、少なくとも顔料インクの付着部分(記録画像)に、上記水性コート液を塗布する。記録画像とインクが付着していない非記録部分との間の面質差が問題となる場合は、インクの付着の有無に拘わらず、記録媒体の被記録面の全面に上記水性コート液を塗布することが好ましい。
【0038】
上記水性コート液の塗布方法は、特に限定されず、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、サイズプレス等の公知の塗工装置を用いて塗布する方法や、スプレー、インクジェットヘッド等を用いて記録媒体と非接触で塗布する方法等を採ることができる。特に、インクジェット方式による水性コート液の塗布は、塗布パターンや塗布量の変更に対応し易いため好ましい。また、上記インクジェット記録工程におけるインク吐出方式と同じ方式により塗布することにより、記録物の生産スピードの高速化が図れるという効果もある。さらに、水性コート液の塗布前後で記録物の面質を変化させないためには(通常、面質は変化しないことが望まれる)、塗布量はなるべく少ないことが好ましいところ、インクジェット方式による塗布は、他の塗布方法に比して、このような低塗布量のコントロールを容易に行うことができるという効果もある。尚、インクジェットプリンタを用いて水性コート液を塗布する場合、上記インクジェット記録工程及び上記後処理工程でそれぞれ別々のインクジェットプリンタを用いることもできるし、後述する実施形態のように、一台のインクジェットプリンタで両工程を行うこともできる。
【0039】
上記水性コート液の塗布量は、特に制限されないが、記録画像の耐擦性、光沢感などについて優れた改善効果を得ると共に、速やかな被膜の形成、ブロッキングの防止、被膜形成前の記録物本来の風合いや質感の低下の防止などを図る観点から、固形分換算で好ましくは1〜15g/m2、更に好ましくは2〜10g/m2である。
【0040】
本発明の画像記録方法には、水性コート液の被膜化の促進や、記録物の保護層に起因するブロッキングの防止などを図る観点から、必要に応じ、上記後処理工程後に、記録媒体を加熱乾燥する加熱工程を具備させることができる。この加熱工程は、赤外線式加熱装置や熱風加熱装置などの公知の加熱装置を用いて常法通り行うことができる。インクジェットプリンタの適当な箇所、例えば、排紙口付近などにこのような加熱装置を設置すれば、該インクジェットプリンタに記録媒体を1回給紙する(1パス)だけで、全ての工程(インクジェット記録工程、後処理工程、加熱工程)を行うことが可能となり、記録物の高速生産が可能となる。
【0041】
上記加熱工程における加熱温度や加熱時間(ラインスピード)等の加熱条件は、いわゆるブリスター(火ぶくれ)を発生させずに皮膜形成が効率良く行えるように適宜設定すればよい。記録媒体の含水量が多く、湿った状態にある場合は、これを高温で一気に加熱乾燥するとブリスターを生じ易いので、例えば、乾燥ゾーン1は風乾、乾燥ゾーン2は60℃熱風乾燥、乾燥ゾーン3は130℃熱風乾燥というように、多段乾燥で緩やかに乾燥することが好ましい。
【0042】
本発明で用いる顔料インクとしては、通常のインクジェット記録で使用できるものであればよく、特に制限されない。インクジェット記録用の顔料インクは、上述の如き顔料系色材を含有させた水系インクが一般的であり、通常、保湿や浸透調整等のため、更に各種有機溶剤や界面活性剤等が含有されている。顔料系色材は、界面活性剤等の分散剤が無添加あるいはごく少量添加の水性媒体中に分散及び/又は溶解が可能ないわゆる自己分散型顔料(表面改質顔料などとも呼ばれる)でも良く、自己分散型ではない通常の顔料でも良い。インク中の顔料系色材の含有量は、インクに要求される特性等を考慮して適宜調整され、通常、0.5〜30重量%程度である。カラー画像を形成する場合は、イエロー、マゼンタ及びシアンの減法混色の3原色のインク、あるいはこれにブラックその他の色のインクを加えた4色以上のインクを用いる。
【0043】
本発明の画像記録方法は、例えば、次のようにして実施することができる。
【0044】
図1は、本発明の画像記録方法の一実施形態の実施に使用するインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。図1に示すインクジェットプリンタ10は、紙送りモータ11で駆動されるプラテンローラ12により記録媒体Mを矢標A方向に搬送し、キャリッジ13上に搭載されたインクジェットヘッド20が、記録媒体Mの被記録面に、インクタンク30から供給される各色顔料インク及びオーバーコート液をそれぞれ吐出した後、これを図示しない排紙口より搬出するようになしてある。キャリッジ13は、キャリッジベルト14を介してキャリッジモータ15に連結されており、ガイドレール16上を摺動して、矢標A方向と直交する矢標B1又はB2方向に往復走査するようになっている。また、図示しない上記排紙口の近傍には、記録媒体Mの被記録面に対し熱風を送風することが可能な熱風乾燥装置(図示せず)が設けられており、必要に応じ、排紙前に記録媒体Mを加熱できるようになっている。
【0045】
図2は、インクジェットヘッド20のノズル開口面20aの概略正面図である。図2中、21及び26は、水性コート液を吐出するノズル列であり、22,23,24,25は、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の顔料インクを吐出するノズル列である。このように、主走査方向の両端のノズル列を水性コート液吐出用とすることで、双方向(B1及びB2)印字が可能となり印字高速性が上がる。
【0046】
このような構成のインクジェットプリンタ10において、インクジェットヘッド20は、矢標B1方向に走査される場合、記録媒体Mの被記録面に対して、先ず、ノズル列22,23,24,25よりY、M、C、Kの各色顔料インクを順次打ち込んでインクジェット記録を行い(インクジェット記録工程)、続いて、ノズル列26より水性コート液をベタ打ちする(後処理工程)。矢標B1方向に走査される場合は、ノズル列21は使用しない。インクジェットヘッド20は、記録領域の矢標B1方向終端に到達し、記録媒体Mが矢標A方向に所定量搬送された後、矢標B2方向に走査される。矢標B2方向に走査される場合は、先ず、ノズル列25,24,23,22より各色顔料インクを打ち込んで記録を行い(インクジェット記録工程)、続いて、ノズル列21より水性コート液をベタ打ちする(後処理工程)。矢標B2方向に走査される場合は、ノズル列26は使用しない。
【0047】
上記のようにして顔料インク及び水性コート液が打ち込まれた記録媒体Mは、その打ち込み終了部分から順次上記排紙口を経て外部へ排出される際、必要に応じ、上記熱風乾燥装置により、所定の温度で加熱される(加熱工程)。
【0048】
このようなインクジェットヘッド20の双方向(B1及びB2)走査と、各走査終了時の記録媒体Mの搬送と、必要に応じ加熱処理とが繰り返されることにより、目的とする耐擦性などに優れた記録物(被膜付き記録物)が得られる。
【0049】
尚、本発明の記録方法は、記録媒体の被記録面に顔料インクを吐出させて画像を記録するインクジェット記録工程と、該インクジェット記録工程を経た該被記録面に、上記水性コート液を塗布する後処理工程とを備えていればよく、使用する顔料インクの種類や数、インクジェットプリンタの具体的構成、水性コート液の塗布(吐出、打ち込み)パターン等は、上記実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0050】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び本発明の効果を示す試験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例により何等制限されるものではない。
【0051】
(水性コート液の調製)
下記〔表1〕に示す組成の水性コート液を調製し、それぞれ、実施例1〜7、比較例1〜2及び参考例のサンプルとした。
【0052】
【表1】
【0053】
(記録物の作製)
顔料インクジェットプリンタ(「MC2000」セイコーエプソン製)を用いて、記録媒体(「PM写真用紙」セイコーエプソン製)の被記録面の片面の全面に対して、シアン、マゼンタ、イエローのOD=1のカラーパッチを印刷し(インクジェット記録工程)、次いで、別のインクジェットプリンタ(「EM930C」セイコーエプソン製)のシアンインクと上記水性コート液とを入れ替えたものを用いて、該被記録面の全面に、シアンOD=1となるベタパターンで上記水性コート液を吐出させて塗布した(後処理工程)。水性コート液の塗布量は、乾燥後の被膜(保護層)の厚みが4μmとなるように調整した。次いで、この記録媒体を、内部温度を80℃に設定した恒温槽に入れて1分間放置した(加熱工程)。このようにして、上記各水性コート液を使用した記録物(被膜付き記録物)を作製し、それぞれ、実施例1〜7及び比較例1〜2のサンプルとした。尚、参考例のサンプルとした上記水性コート液は、上記顔料インクジェットプリンタで吐出させることが出来ず、記録物を作製することが出来なかった。
【0054】
〔試験例〕
上記各水性コート液(参考例を除く)について、吐出安定性を下記の方法により評価した。また、上記各記録物について、耐擦性、光沢ムラ、インク滲みを下記の方法により評価した。これらの結果を下記〔表2〕に示す。
【0055】
(吐出安定性の評価方法)
インクジェットプリンタMC2000のインクジェットヘッドの主走査方向両端に位置するインクカートリッジ内のインクと上記水性コート液とを入れ替えて、図2に示すようなノズル配置としたものを用いて、C、M、Y、Kの4色を用いたコンポジットパターン上に上記水性コート液を吐出させる印字パターンで、OKトップコートNを1000枚印字してこれらの印字面を目視で観察し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:水性コート液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が5箇所以内であり、目詰まりを起こした際にクリーニング動作3回以内で復帰した。吐出安定性に優れる。
B:水性コート液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が10箇所以内であり、目詰まりを起こした際にクリーニング動作5回以内で復帰した。実用上問題なし。
C:水性コート液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が10箇所を超えており、目詰まりを起こした際にクリーニング動作5回超で復帰した。実用に堪えない。
【0056】
(耐擦性の評価方法)
上記記録物の記録面上に、消しゴム(幅20mm)を傾斜度60度で固定し、1kgの荷重をかけた状態で10往復擦った後の該記録面の状態を目視で観察し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:記録面にキズ、ハガレがない。耐擦性良好。
B:記録面にキズが入るが、実用上問題なし。
C:記録面にハガレが発生する。実用に堪えない。
【0057】
(光沢ムラの評価方法)
上記記録物のY、M、CのカラーパッチのJIS Z8741に準ずる60度鏡面光沢度、及び非印刷部分の該60度鏡面光沢度をそれぞれ測定し、これらの間の差(面内光沢度差)を求め、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:面内光沢度差10未満。水性コート液塗布後は光沢ムラはほとんど観られない。
B:面内光沢度差10以上20未満。水性コート液塗布後も光沢ムラは多少観られるが問題ないレベル。
C:面内光沢度差20以上。水性コート液塗布前後も光沢ムラが顕著で実用に堪えない。
【0058】
(インク滲みの評価方法)
上記記録物のY、M、Cのカラーパッチの印刷部−非印刷部の境界線から、該非印刷部へ2mm離れた部分を3箇所選び、光学濃度計を用いて各箇所の光学濃度(OD)を測定し、それらの平均値を算出した。この平均値と、予め算出しておいた上記水性コート液塗布前の上記3箇所のODの平均値との差(最大濃度変化量)を求め、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:最大濃度変化量0.1未満。インク滲み無く、問題なし。
B:最大濃度変化量0.1以上。インク滲みがひどく、実用に堪えない。
【0059】
【表2】
【0060】
【発明の効果】
本発明の水性コート液は、顔料インク画像などの顔料系色材が付着した記録媒体の該色材付着部分に塗布可能で、耐擦性や光沢ムラの改善効果に優れる。また、少ない塗布量で優れた効果が得られるので、被膜形成前の記録物本来の風合いや質感などを大きく変化させるおそれがない。また、吐出安定性にも優れており、インクジェットヘッドから吐出させても目詰まりなどを起こすおそれがない。
【0061】
また、本発明の画像記録方法は、吐出安定性に優れる上記水性コート液をインクジェット方式により塗布するので、被膜形成前の記録物本来の風合いや質感などを損なわないような低塗布量のコントロールが可能であり、高画質・高品位で保存性にも優れる記録物を安定して効率よく製造することができる。
【0062】
また、本発明の記録物は、被膜の作用により記録画像の耐擦性に優れ、光沢ムラやインク滲みなどの無い高画質・高品位の記録物である。特に、記録画像を形成する色材として顔料系色材を使用した場合は、被膜の効果と相俟って、経時劣化し難く、保存性に非常に優れた記録物となる。また、被膜を薄くしても充分な耐擦性、光沢ムラ改善効果が得られるので、不快なギラツキなどがなく、風合いに優れた高品位の記録物となりうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像記録方法の一実施形態の実施に使用するインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すインクジェットヘッドのノズル開口面の概略正面図である
【符号の説明】
10 インクジェットプリンタ
11 紙送りモータ
12 プラテンローラ
13 キャリッジ
14 キャリッジベルト
15 キャリッジモータ
16 ガイドロール
20 インクジェットヘッド
20a ノズル開口面
21〜26 ノズル列
30 インクタンク
M 記録媒体
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐擦性、耐光性、耐水性、光沢感などを高める目的で、記録媒体上に記録された記録画像に塗布される水性コート液並びにこれを用いた画像記録方法及び記録物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、紙やプラスチックフィルムなどの記録媒体上に記録された画像の耐擦性、耐光性、耐水性、光沢感などを高める目的で、該記録媒体上に該画像を被覆する被膜(保護層)を設けることが行われている。この保護層の形成方法としては、ラミネートフィルムを記録媒体上に接着させる方法と、皮膜形成能を有するコート液を記録媒体上に塗布する方法が知られている。後者のいわゆるリキッドラミネート法は、前者のいわゆるフィルムラミネート法に比べて、装置の大型化や複雑化を招かず、比較的低コストで保護層を形成できるというメリットを有している。リキッドラミネート法に関し、本出願人は、本願の先の出願に係る特許文献1において、水、ポリマー微粒子及び浸透剤を含有し、20℃における表面張力が40mN/m以下であるコート液を開示している。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−201428号公報
【0004】
また、記録媒体への画像記録方法には、オフセット印刷方式、感熱転写方式、インクジェット記録方式、静電トナー記録方式など種々の方式があり、なかでもインクジェット記録方式は、印刷版が不要で多色印刷を高速且つ容易に行うことができるため、種々の分野において近年急速に普及している。インクジェット記録方式は、記録ヘッド(インクジェットヘッド)の微小なジェットノズルからインクの液滴を吐出させて記録媒体に付着させる印刷方式であり、電気−機械変換素子や電気−熱変換素子などを用いてインクの吐出を行う。
【0005】
近年のインクジェット記録技術の革新的な進歩により、現在では、画質及び保存性(経時による品質劣化の生じにくさ)の点で実用上十分満足できるレベルのインクジェット記録物を作製することが可能となっているものの、銀塩写真と比較するとまだ不十分な点があるのが現状である。特に、保存性の点で、インクジェット記録物は銀塩写真に大きく差をあけられており、保存性の改良がインクジェット記録技術の重要な課題の一つとなっている。本発明者らは、現在主流となっている水溶性染料を使用した染料インクではこの課題の解決が困難であると考え、染料インクに比して色再現性の点で若干難があるものの、耐水性や耐光性等に優れる顔料系色材を使用した水性顔料インクに着目し、これを主体としたインクジェット記録について種々の検討を行っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
顔料インクを用いて記録媒体上に記録された記録画像(顔料インク画像)は、耐擦性が低く、指などで軽く擦っただけで顔料粒子が脱落し、記録画像の一部あるいは全部が欠損したり、インクが打ち込まれていない記録媒体の地部分が汚れたりするという問題があった。また、顔料インクにより画像が形成されたインクジェット記録物は、印刷部分と非印刷部分(白地部分)との間、あるいは印刷部分でも着色剤の種類や付着量が異なる部分間などで光沢差が生じるいわゆる光沢ムラが発生し、記録物としての価値が低下するという問題もあった。光沢ムラは、特に、光沢度の高い記録媒体を用いた場合に目立つ傾向があり、高品位の銀塩写真調の記録物を作製する上で大きな問題となっていた。
【0007】
そこで、上記リキッドラミネート法により顔料インク画像上に被膜(保護層)を形成して、該画像の耐光性や耐水性など共に耐擦性を高め、さらに光沢ムラを低減させることが考えられる。しかしながら、上記特許文献1に開示されているコート液は、顔料インク画像上に塗布しようとしてもはじかれてしまい、耐擦性や光沢ムラの改善効果に乏しいものであった。顔料インクを用いたインクジェット記録に関する技術開発は、染料インクを用いたものと比べてまだ日が浅く、顔料インクに対応したコート液は未だ開示されていない。
【0008】
従って、本発明の目的は、顔料インク画像上に塗布可能で、該画像の耐擦性を高め、光沢ムラを低減し得る水性コート液並びにこれを用いた画像記録方法及び記録物を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、記録媒体上に記録された記録画像に塗布される水性コート液であって、少なくともポリマー微粒子を含有し、液温20℃における表面張力が25mN/m以下であることを特徴とする水性コート液を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
また、本発明は、記録媒体の被記録面に顔料インクを吐出させて画像を記録するインクジェット記録工程と、該インクジェット記録工程を経た該被記録面に、上記水性コート液を塗布する後処理工程とを備えたことを特徴とする画像記録方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、色材が付着した記録媒体上に、該色材を被覆する被膜を設けてなる記録物において、該被膜が、上記水性コート液から形成されていることを特徴とする記録物を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、先ず、本発明の水性コート液について詳細に説明する。
【0013】
本発明の水性コート液は、紙などの記録媒体上に記録された記録画像に塗布されて使用されるもので、ポリマー微粒子及び水を必須成分として含有する。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水を用いることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理された水は、カビやバクテリアの発生を防止して長期保存を可能とする点で好ましい。
【0014】
上記ポリマー微粒子としては、紙などの記録媒体(記録画像)上で被膜(保護層)を形成し得る樹脂からなるものが用いられる。このような樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。特に、ポリアクリル酸、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸共重合体又はポリエチレンの何れかからなるポリマー微粒子は、被膜の透明性と耐擦性を高いレベルで両立させることが可能となるため好ましい。ポリマー微粒子を水性コート液中に含有させるに当たっては、ポリマー微粒子そのものを水性コート液に直接添加することもできるし、ポリマー微粒子を分散質とする水性エマルジョンとして添加することもできる。
【0015】
また、上記ポリマー微粒子としては、水性コート液の最低造膜温度(JIS K6800に準拠。以下、MFTという)が、好ましくは−20〜130℃、更に好ましくは0〜100℃となるようなものを使用することが好ましい。水性コート液のMFTがこの範囲にあると、水性コート液が通常使用される環境下で、特別な加熱装置などを別途用いなくとも容易に被膜を形成させることができ、且つ塗布前にゲル化したりするおそれがなく、インクジェット方式による塗布を行うのに必要な吐出安定性を確保することができる。
【0016】
上記ポリマー微粒子の含有量は、水性コート液中、好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは3〜10重量%である。ポリマー微粒子の含有量が1重量%未満では、記録画像の保護効果に乏しく、15重量%超では、水性コート液をインクジェット方式により塗布する場合に必要な吐出安定性を確保出来ない。尚、ポリマー微粒子を水性エマルジョンとして使用する場合は、斯かる含有量は樹脂固形分量に相当する。
【0017】
そして、本発明の水性コート液は、液温20℃における表面張力が25mN/m以下である。表面張力が25mN/m超のコート液を、顔料インクを用いて記録媒体上に記録された記録画像(顔料インク画像)の如き顔料系色材付着部分に塗布した場合、該色材表面で該コート液がはじかれてしまうため、最終的に形成される被膜はピンホールの様な気泡を含んだものとなり、光沢ムラの低減を図ることは出来ない。また、この被膜は気泡を含んでいるため実用上十分な膜強度を有しておらず、耐擦性の向上効果にも乏しい。このような理由から、本発明では上記表面張力を25mN/m以下に規定して、顔料インク画像の耐擦性の向上と光沢ムラの低減を図っているが、光沢ムラをより確実に低減させる観点から、上記表面張力は20mN/m未満とすることが好ましい。
【0018】
また、上記水性コート液の表面張力の下限値は、インク滲みの防止やインクジェット吐出安定性の確保の観点から、13〜15mN/m程度とすることが好ましい。
【0019】
水性コート液の表面張力は、上記ポリマー微粒子の種類や含有量などにも影響されるため、上記表面張力25mN/m以下を達成するためには、これらを適宜調整することも重要であるが、適切な表面張力調整剤を用いることが最も効果があり重要である。本発明で好ましく用いられる表面張力調整剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、イソアミルアルコール、メチルアミルアルコールなどが挙げられ、これらの1種又は2種以上を併用することができる。これらのうち、特に、フッ素系界面活性剤及び/又はシリコーン系界面活性剤は、少量で表面張力を変動させることが可能で表面張力調整能に優れており、本発明で好ましく用いられる。
【0020】
上記フッ素系界面活性剤は、親水基及び疎水基を有する通常の界面活性剤において、該疎水基中の炭素原子(C)に結合した水素原子(H)の一部又は全部をフッ素原子(F)で置換したものである。該親水基は、イオン性、非イオン性の何れでもよく、特に限定されない。フッ素系界面活性剤としては、例えば、一般式Rf−COOM、Rf−OSO3M、Rf−SO3M、Rf−PO2(OH)2などで表される陰イオン性フッ素系界面活性剤;一般式Rf−NR’R”HXなどで表される陽イオン性フッ素系界面活性剤;一般式Rf−OH、一般式Rf−BNR’(CH2)nOH、Rf−BN(C2H4O)nHなどで表される非イオン性フッ素系界面活性剤が挙げられる。ここで、Rfは、アルキル基中のHの一部又は全部をFで置換したフッ化炭素基を表し、Mは、H又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を表し、Xは、ハロゲン酸銀を表し、R’及びR”は、それぞれH又は低級アルキル基を表し、Bは、CO又はSO2を表す。
【0021】
また、上記シリコーン系界面活性剤は、親水基及び疎水基を有する通常の界面活性剤において、該疎水基の主鎖にケイ素原子(Si)を含むものである。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、一般式(CH3)3Si〔OSi(CH3)2〕x(C2H4O)yCH3で表されるポリエーテル変性シリコーンオイルが代表的な例として挙げられ、この他にも一般式R1−Si−R2R3R4−COOHなどで表される陰イオン性界面活性剤が挙げられる。ここで、x及びyは、それぞれ1〜15の整数を表し、R1〜R4は、それぞれH又は低級アルキル基を表す。
【0022】
上記表面張力調整剤の含有量は、水性コート液中、好ましくは0.1〜30重量%、更に好ましくは0.2〜10重量%である。表面張力調整剤の含有量が0.1重量%未満では、表面張力25mN/m以下の達成が困難であり、30重量%超では、顔料インク画像に水性コート液を塗布した際にインク滲みを生じるおそれがあり、また、水性コート液中に気泡が生じ易く、水性コート液をインクジェット方式により塗布する場合に必要な吐出安定性を確保出来ないおそれがある。
【0023】
本発明の水性コート液には、上記の水、ポリマー微粒子及び表面張力調整剤以外に、必要に応じ、下記の如き各種添加剤の1種又は2種以上を含有させることができる。
【0024】
本発明の水性コート液には、インクジェット方式により塗布する場合に必要な吐出安定性を確保するため、湿潤剤を含有させることが好ましい。湿潤剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール等の多価アルコール類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等の尿素類;マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、マルトース等の糖類等が挙げられる。
【0025】
また、本発明の水性コート液には、吐出安定性の確保や記録媒体への浸透性を高める観点から、浸透剤を含有させることが好ましい。浸透剤としては、例えば、メタノール、n−プロピルアルコール、イソブタノール、n−ペンタノール等の低級アルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類等が挙げられる。
【0026】
上記湿潤剤及び上記浸透剤の含有量は、それぞれ、水性コート液中、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは5〜30重量%である。
【0027】
本発明の水性コート液に含有可能なその他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、消光剤、酸化防止剤、耐水化剤、防黴剤、防腐剤、増粘剤、流動性改良剤、pH調整剤、消泡剤、抑泡剤、レベリング剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0028】
次に、本発明の記録物について説明する。本発明の記録物は、色材が付着した記録媒体上に、該色材を被覆する被膜を設けてなる記録物において、該被膜が、上記水性コート液から形成されていることを特徴とする。上記水性コート液を用いた被膜の形成方法は、後述する本発明の画像記録方法における形成方法が適用できる。
【0029】
上記の色材が付着した記録媒体とは、印刷済みの記録媒体(記録物)である。印刷方法(色材の付着方法)としては、例えば、インクジェット記録方式、昇華転写方式、溶融転写方式、オフセット印刷方式、静電トナー記録方式などが挙げられ、特に制限されない。
【0030】
上記色材としては各種染料や顔料などが使用でき、特に制限されないが、上述したように、上記水性コート液は、特に顔料系色材の付着部分に対して有効であり、該部分に塗布してもはじかれることなく、保護層として機能し得る被膜を形成することができる。顔料系色材は、一般に記録画像の耐水性や耐光性などに優れており、染料系色材を用いた場合に比して、本発明に係る被膜と相俟って高画質・高保存性の記録物を提供し得るため、本発明で好ましく用いられる。顔料系色材としては、例えば、酸化チタン及び酸化鉄、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラックなどの無機系顔料;アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどの有機系顔料などが挙げられる。
【0031】
また、上記記録媒体としては、印刷が可能なものであればよく、特に制限されない。例えば、上質紙、再生紙、コピー用紙、ボンド紙、インクジェット記録用紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、樹脂被覆紙(レジンコート紙)、バライタ紙、板紙、和紙、不織布;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム等が挙げられる。
【0032】
尚、光沢ムラは、前述したように、光沢度の高い記録媒体を使用した場合に特に問題となるため、光沢ムラ防止性(光沢感の向上)に優れるという本発明の特長が活かされるという点で、上記記録媒体としては、被記録面(色材付着面)の75度鏡面光沢度(JIS P8142に準拠)が30%以上であるものを用いることが好ましい。このような光沢度の高い記録媒体には、塗工紙も非塗工紙も含まれ、キャスト法などにより鏡面光沢仕上げされた塗工紙などが挙げられ、市販品としては、セイコーエプソン社製の「PM写真用紙」(75度鏡面光沢度47%)、「フォトプリント紙2」(75度鏡面光沢度59%)、「MC光沢紙」(75度鏡面光沢度39%)、「MC写真用紙」(75度鏡面光沢度35%)等がある。
【0033】
本発明の記録物における上記被膜の厚みは、被膜形成前の記録物が本来有していた風合いや質感を変化させず、また被膜形成により懸念されるブロッキングを起こさずに、記録画像の耐擦性や光沢ムラなどを改善する観点から、1〜15μmが好ましく、2〜10μmが更に好ましい。このような薄い被膜(少ないコート液塗布量)は、該被膜の形成材料として上記水性コート液を用いることにより可能となるもので、従来のこの種のコート液(表面張力25mN/m超のコート液)を用いて上記のような薄い被膜を形成した場合は、特に、顔料インク印刷部分と非印刷部分との間の光沢差(光沢ムラ)を充分に低減させることが出来ない。
【0034】
次に、上記水性コート液を用いた本発明の画像記録方法について詳細に説明する。
【0035】
本発明の画像記録方法は、記録媒体の被記録面に顔料インクを吐出させて画像を記録するインクジェット記録工程と、該インクジェット記録工程を経た該被記録面に、上記水性コート液を塗布する後処理工程とを備えている。
【0036】
上記インクジェット記録工程は、公知のインクジェット方式の記録装置(インクジェットプリンタ)を用いて行うことができる。インクの吐出はインクジェットプリンタのインクジェットヘッドが行う。インクジェット方式には、ノズルから一定時間間隔でインクを吐出し続け、吐出されたインク液滴を偏向させることにより画像を形成するコンティニュアス方式と、画像データに対応してインクを吐出させるオンデマンド方式とがあり、何れの方式でもよいが、細かい打ち込み制御が可能、廃液量が少ない等の点で、オンデマンド方式が好ましい。また、インク吐出制御方式には、ピエゾ素子などの電気−機械変換素子を用いて電圧により制御する方式や、電気−熱変換素子などを用いて熱エネルギーにより制御する方式等があるが、特に制限されない。
【0037】
上記後処理工程では、上記インクジェット記録工程を経た記録媒体の被記録面のうち、少なくとも顔料インクの付着部分(記録画像)に、上記水性コート液を塗布する。記録画像とインクが付着していない非記録部分との間の面質差が問題となる場合は、インクの付着の有無に拘わらず、記録媒体の被記録面の全面に上記水性コート液を塗布することが好ましい。
【0038】
上記水性コート液の塗布方法は、特に限定されず、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、サイズプレス等の公知の塗工装置を用いて塗布する方法や、スプレー、インクジェットヘッド等を用いて記録媒体と非接触で塗布する方法等を採ることができる。特に、インクジェット方式による水性コート液の塗布は、塗布パターンや塗布量の変更に対応し易いため好ましい。また、上記インクジェット記録工程におけるインク吐出方式と同じ方式により塗布することにより、記録物の生産スピードの高速化が図れるという効果もある。さらに、水性コート液の塗布前後で記録物の面質を変化させないためには(通常、面質は変化しないことが望まれる)、塗布量はなるべく少ないことが好ましいところ、インクジェット方式による塗布は、他の塗布方法に比して、このような低塗布量のコントロールを容易に行うことができるという効果もある。尚、インクジェットプリンタを用いて水性コート液を塗布する場合、上記インクジェット記録工程及び上記後処理工程でそれぞれ別々のインクジェットプリンタを用いることもできるし、後述する実施形態のように、一台のインクジェットプリンタで両工程を行うこともできる。
【0039】
上記水性コート液の塗布量は、特に制限されないが、記録画像の耐擦性、光沢感などについて優れた改善効果を得ると共に、速やかな被膜の形成、ブロッキングの防止、被膜形成前の記録物本来の風合いや質感の低下の防止などを図る観点から、固形分換算で好ましくは1〜15g/m2、更に好ましくは2〜10g/m2である。
【0040】
本発明の画像記録方法には、水性コート液の被膜化の促進や、記録物の保護層に起因するブロッキングの防止などを図る観点から、必要に応じ、上記後処理工程後に、記録媒体を加熱乾燥する加熱工程を具備させることができる。この加熱工程は、赤外線式加熱装置や熱風加熱装置などの公知の加熱装置を用いて常法通り行うことができる。インクジェットプリンタの適当な箇所、例えば、排紙口付近などにこのような加熱装置を設置すれば、該インクジェットプリンタに記録媒体を1回給紙する(1パス)だけで、全ての工程(インクジェット記録工程、後処理工程、加熱工程)を行うことが可能となり、記録物の高速生産が可能となる。
【0041】
上記加熱工程における加熱温度や加熱時間(ラインスピード)等の加熱条件は、いわゆるブリスター(火ぶくれ)を発生させずに皮膜形成が効率良く行えるように適宜設定すればよい。記録媒体の含水量が多く、湿った状態にある場合は、これを高温で一気に加熱乾燥するとブリスターを生じ易いので、例えば、乾燥ゾーン1は風乾、乾燥ゾーン2は60℃熱風乾燥、乾燥ゾーン3は130℃熱風乾燥というように、多段乾燥で緩やかに乾燥することが好ましい。
【0042】
本発明で用いる顔料インクとしては、通常のインクジェット記録で使用できるものであればよく、特に制限されない。インクジェット記録用の顔料インクは、上述の如き顔料系色材を含有させた水系インクが一般的であり、通常、保湿や浸透調整等のため、更に各種有機溶剤や界面活性剤等が含有されている。顔料系色材は、界面活性剤等の分散剤が無添加あるいはごく少量添加の水性媒体中に分散及び/又は溶解が可能ないわゆる自己分散型顔料(表面改質顔料などとも呼ばれる)でも良く、自己分散型ではない通常の顔料でも良い。インク中の顔料系色材の含有量は、インクに要求される特性等を考慮して適宜調整され、通常、0.5〜30重量%程度である。カラー画像を形成する場合は、イエロー、マゼンタ及びシアンの減法混色の3原色のインク、あるいはこれにブラックその他の色のインクを加えた4色以上のインクを用いる。
【0043】
本発明の画像記録方法は、例えば、次のようにして実施することができる。
【0044】
図1は、本発明の画像記録方法の一実施形態の実施に使用するインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。図1に示すインクジェットプリンタ10は、紙送りモータ11で駆動されるプラテンローラ12により記録媒体Mを矢標A方向に搬送し、キャリッジ13上に搭載されたインクジェットヘッド20が、記録媒体Mの被記録面に、インクタンク30から供給される各色顔料インク及びオーバーコート液をそれぞれ吐出した後、これを図示しない排紙口より搬出するようになしてある。キャリッジ13は、キャリッジベルト14を介してキャリッジモータ15に連結されており、ガイドレール16上を摺動して、矢標A方向と直交する矢標B1又はB2方向に往復走査するようになっている。また、図示しない上記排紙口の近傍には、記録媒体Mの被記録面に対し熱風を送風することが可能な熱風乾燥装置(図示せず)が設けられており、必要に応じ、排紙前に記録媒体Mを加熱できるようになっている。
【0045】
図2は、インクジェットヘッド20のノズル開口面20aの概略正面図である。図2中、21及び26は、水性コート液を吐出するノズル列であり、22,23,24,25は、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の顔料インクを吐出するノズル列である。このように、主走査方向の両端のノズル列を水性コート液吐出用とすることで、双方向(B1及びB2)印字が可能となり印字高速性が上がる。
【0046】
このような構成のインクジェットプリンタ10において、インクジェットヘッド20は、矢標B1方向に走査される場合、記録媒体Mの被記録面に対して、先ず、ノズル列22,23,24,25よりY、M、C、Kの各色顔料インクを順次打ち込んでインクジェット記録を行い(インクジェット記録工程)、続いて、ノズル列26より水性コート液をベタ打ちする(後処理工程)。矢標B1方向に走査される場合は、ノズル列21は使用しない。インクジェットヘッド20は、記録領域の矢標B1方向終端に到達し、記録媒体Mが矢標A方向に所定量搬送された後、矢標B2方向に走査される。矢標B2方向に走査される場合は、先ず、ノズル列25,24,23,22より各色顔料インクを打ち込んで記録を行い(インクジェット記録工程)、続いて、ノズル列21より水性コート液をベタ打ちする(後処理工程)。矢標B2方向に走査される場合は、ノズル列26は使用しない。
【0047】
上記のようにして顔料インク及び水性コート液が打ち込まれた記録媒体Mは、その打ち込み終了部分から順次上記排紙口を経て外部へ排出される際、必要に応じ、上記熱風乾燥装置により、所定の温度で加熱される(加熱工程)。
【0048】
このようなインクジェットヘッド20の双方向(B1及びB2)走査と、各走査終了時の記録媒体Mの搬送と、必要に応じ加熱処理とが繰り返されることにより、目的とする耐擦性などに優れた記録物(被膜付き記録物)が得られる。
【0049】
尚、本発明の記録方法は、記録媒体の被記録面に顔料インクを吐出させて画像を記録するインクジェット記録工程と、該インクジェット記録工程を経た該被記録面に、上記水性コート液を塗布する後処理工程とを備えていればよく、使用する顔料インクの種類や数、インクジェットプリンタの具体的構成、水性コート液の塗布(吐出、打ち込み)パターン等は、上記実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0050】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び本発明の効果を示す試験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例により何等制限されるものではない。
【0051】
(水性コート液の調製)
下記〔表1〕に示す組成の水性コート液を調製し、それぞれ、実施例1〜7、比較例1〜2及び参考例のサンプルとした。
【0052】
【表1】
【0053】
(記録物の作製)
顔料インクジェットプリンタ(「MC2000」セイコーエプソン製)を用いて、記録媒体(「PM写真用紙」セイコーエプソン製)の被記録面の片面の全面に対して、シアン、マゼンタ、イエローのOD=1のカラーパッチを印刷し(インクジェット記録工程)、次いで、別のインクジェットプリンタ(「EM930C」セイコーエプソン製)のシアンインクと上記水性コート液とを入れ替えたものを用いて、該被記録面の全面に、シアンOD=1となるベタパターンで上記水性コート液を吐出させて塗布した(後処理工程)。水性コート液の塗布量は、乾燥後の被膜(保護層)の厚みが4μmとなるように調整した。次いで、この記録媒体を、内部温度を80℃に設定した恒温槽に入れて1分間放置した(加熱工程)。このようにして、上記各水性コート液を使用した記録物(被膜付き記録物)を作製し、それぞれ、実施例1〜7及び比較例1〜2のサンプルとした。尚、参考例のサンプルとした上記水性コート液は、上記顔料インクジェットプリンタで吐出させることが出来ず、記録物を作製することが出来なかった。
【0054】
〔試験例〕
上記各水性コート液(参考例を除く)について、吐出安定性を下記の方法により評価した。また、上記各記録物について、耐擦性、光沢ムラ、インク滲みを下記の方法により評価した。これらの結果を下記〔表2〕に示す。
【0055】
(吐出安定性の評価方法)
インクジェットプリンタMC2000のインクジェットヘッドの主走査方向両端に位置するインクカートリッジ内のインクと上記水性コート液とを入れ替えて、図2に示すようなノズル配置としたものを用いて、C、M、Y、Kの4色を用いたコンポジットパターン上に上記水性コート液を吐出させる印字パターンで、OKトップコートNを1000枚印字してこれらの印字面を目視で観察し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:水性コート液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が5箇所以内であり、目詰まりを起こした際にクリーニング動作3回以内で復帰した。吐出安定性に優れる。
B:水性コート液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が10箇所以内であり、目詰まりを起こした際にクリーニング動作5回以内で復帰した。実用上問題なし。
C:水性コート液のノズル抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が10箇所を超えており、目詰まりを起こした際にクリーニング動作5回超で復帰した。実用に堪えない。
【0056】
(耐擦性の評価方法)
上記記録物の記録面上に、消しゴム(幅20mm)を傾斜度60度で固定し、1kgの荷重をかけた状態で10往復擦った後の該記録面の状態を目視で観察し、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:記録面にキズ、ハガレがない。耐擦性良好。
B:記録面にキズが入るが、実用上問題なし。
C:記録面にハガレが発生する。実用に堪えない。
【0057】
(光沢ムラの評価方法)
上記記録物のY、M、CのカラーパッチのJIS Z8741に準ずる60度鏡面光沢度、及び非印刷部分の該60度鏡面光沢度をそれぞれ測定し、これらの間の差(面内光沢度差)を求め、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:面内光沢度差10未満。水性コート液塗布後は光沢ムラはほとんど観られない。
B:面内光沢度差10以上20未満。水性コート液塗布後も光沢ムラは多少観られるが問題ないレベル。
C:面内光沢度差20以上。水性コート液塗布前後も光沢ムラが顕著で実用に堪えない。
【0058】
(インク滲みの評価方法)
上記記録物のY、M、Cのカラーパッチの印刷部−非印刷部の境界線から、該非印刷部へ2mm離れた部分を3箇所選び、光学濃度計を用いて各箇所の光学濃度(OD)を測定し、それらの平均値を算出した。この平均値と、予め算出しておいた上記水性コート液塗布前の上記3箇所のODの平均値との差(最大濃度変化量)を求め、下記評価基準により評価した。
評価基準
A:最大濃度変化量0.1未満。インク滲み無く、問題なし。
B:最大濃度変化量0.1以上。インク滲みがひどく、実用に堪えない。
【0059】
【表2】
【0060】
【発明の効果】
本発明の水性コート液は、顔料インク画像などの顔料系色材が付着した記録媒体の該色材付着部分に塗布可能で、耐擦性や光沢ムラの改善効果に優れる。また、少ない塗布量で優れた効果が得られるので、被膜形成前の記録物本来の風合いや質感などを大きく変化させるおそれがない。また、吐出安定性にも優れており、インクジェットヘッドから吐出させても目詰まりなどを起こすおそれがない。
【0061】
また、本発明の画像記録方法は、吐出安定性に優れる上記水性コート液をインクジェット方式により塗布するので、被膜形成前の記録物本来の風合いや質感などを損なわないような低塗布量のコントロールが可能であり、高画質・高品位で保存性にも優れる記録物を安定して効率よく製造することができる。
【0062】
また、本発明の記録物は、被膜の作用により記録画像の耐擦性に優れ、光沢ムラやインク滲みなどの無い高画質・高品位の記録物である。特に、記録画像を形成する色材として顔料系色材を使用した場合は、被膜の効果と相俟って、経時劣化し難く、保存性に非常に優れた記録物となる。また、被膜を薄くしても充分な耐擦性、光沢ムラ改善効果が得られるので、不快なギラツキなどがなく、風合いに優れた高品位の記録物となりうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像記録方法の一実施形態の実施に使用するインクジェット記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すインクジェットヘッドのノズル開口面の概略正面図である
【符号の説明】
10 インクジェットプリンタ
11 紙送りモータ
12 プラテンローラ
13 キャリッジ
14 キャリッジベルト
15 キャリッジモータ
16 ガイドロール
20 インクジェットヘッド
20a ノズル開口面
21〜26 ノズル列
30 インクタンク
M 記録媒体
Claims (10)
- 記録媒体上に記録された記録画像に塗布される水性コート液であって、少なくともポリマー微粒子を含有し、液温20℃における表面張力が25mN/m以下であることを特徴とする水性コート液。
- フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、イソアミルアルコール及びメチルアミルアルコールからなる群から選ばれる1種又は2種以上の表面張力調整剤を含有することを特徴とする請求項1記載の水性コート液。
- 上記表面張力調整剤の含有量が0.1〜30重量%であることを特徴とする請求項2記載の水性コート液。
- 最低造膜温度が−20〜130℃であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の水性コート液。
- 上記記録画像が、顔料インクを用いたインクジェット記録方式により記録されたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の水性コート液。
- 記録媒体の被記録面に顔料インクを吐出させて画像を記録するインクジェット記録工程と、該インクジェット記録工程を経た該被記録面に、請求項1〜4の何れかに記載の水性コート液を塗布する後処理工程とを備えたことを特徴とする画像記録方法。
- 上記水性コート液の塗布をインクジェット方式により行うことを特徴とする請求項6記載の画像記録方法。
- 色材が付着した記録媒体上に、該色材を被覆する被膜を設けてなる記録物において、該被膜が、請求項1〜4の何れかに記載の水性コート液から形成されていることを特徴とする記録物。
- 上記色材が顔料系色材であることを特徴とする請求項8記載の記録物。
- 上記被膜の厚みが1〜15μmであることを特徴とする請求項8又は9記載の記録物。
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- 2002-11-26 JP JP2002342499A patent/JP2004174835A/ja not_active Withdrawn
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